08/06/18 第4回有期契約労働者の雇用管理の改善に関する研究会議事録 「第4回 有期契約労働者の雇用管理の改善に関する研究会」議事録 日  時 平成20年6月18日(水) 14:00〜 場  所 厚生労働省14階職業安定局第1会議室 出 席 者  ・参集者(50音順)   梅崎委員、奥田委員、佐藤委員、諏訪委員(座長)、原委員、藤川委員     ・オブザーバー   明治安田生命相互会社 古賀人事部次長、労働基準局監督課 黒澤監察官、   職業能力開発局総務課 平嶋補佐、   雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課 佐々木補佐  ・事務局   太田職業安定局長、荒井審議官(職業安定、援護担当)、宮野総務課長、   三上職業安定局雇用開発課長、本間職業安定局雇用開発課長補佐、   佐藤職業安定局雇用開発課長補佐 議  題  1 報告書(骨子)(素案)及びガイドライン(素案)について  2 その他 配布資料  資料1 報告書(素案)(概要版)  資料2 ガイドライン(素案)(概要版)  資料3 報告書(骨子)(素案)  資料4 ガイドライン(素案)   議  事 ○諏訪座長   時間となりましたので、ただいまから、第4回有期契約労働者の雇用管理の改善に関 する研究会を開催させていただきます。本日の議題は「報告書(骨子)(素案)及びガ イドライン(素案)について」です。前回の研究会におきましては、有期契約労働に関 する現状及び課題につきまして整理をいたしました。そこで議論いたしました内容を踏 まえまして、事務局において「報告書(骨子)(素案)」及び「ガイドライン(素案)」 を作成していただきました。本日は、これらの資料に基づきまして議論を深めまして、 最終回に当たる次回の研究会において「報告書」及び「ガイドライン」として、とりま とめたいと考えております。  では早速議事に入ります。最初に事務局から、机上配付しております資料1〜4につき まして、ご説明をお願いいたします。 ○本間雇用開発課長補佐  それでは事務局のほうから、お手元の資料に沿いまして説明させていただきます。資 料は1〜4までございますが、最初に資料1「研究会報告書(素案)(概要版)」と資料3 「研究会報告書(骨子)(素案)」、この2種類につきまして説明させていただきます。 今回の研究会報告書(素案)は、あくまでもたたき台ということで事務局で作成いたし ましたので、これをもとに今日ご議論いただきたいと思います。  最初に資料1の「概要版」を若干説明させていただきます。Iで「検討の経過」、II で「有期契約労働者に関する現状及び課題」を書いておりますが、第3回目の研究会に おきまして現状及び課題につきまして整理いたしましたので、ここの内容を中心にIIを 書いております。そしてIIIとしまして「有期契約労働者の雇用管理の改善に向けて」と いうことで、ガイドラインの策定と今後検討すべき課題を(1)〜(5)まで。大きく分 けまして、こういう3つの構成になっております。この内容につきまして、詳細を資料 3をもとに説明させていただきたいと思います。  資料3の1頁目をご覧いただきたいと思います。まず、(骨子)(素案)のI「検討の 経過」です。これは研究会設立の趣旨にも書いてございましたが、非正規労働者が若年 層を中心に増加傾向にあるということで、このまま雇用が不安定であったり、職業能力 の蓄積がなされないという問題がある。このような状況が続けば、中長期的には我が国 の競争力が低下し、生産性も低下し、不安定就労の増大、社会保障システムの脆弱化と いった問題を引き起こすおそれがあります。特に、昨年パート法が改正され、その他請 負等のガイドラインも出来ていますが、そういったもので位置づけられていない残った 部分があります。それが、「一週間の所定労働時間が通常の労働者と同一な有期契約労 働者」でございますが、これについては、その取組みが十分に行われていない状況にあ るということで、この研究会を2月から開催して、ガイドラインの策定に向けて現在検 討を行っているわけです。  IIは「現状及び課題」です。最初に1、これは第2回目の研究会でお示しいたしました が、推計ということで有期契約労働者数を出しております。資料によって幅があること を前提にしているのですが、約310万人程度。その内訳は、契約社員といわれている方 々が約99万人、嘱託社員が64万人、その他フルタイムパートという名称でも呼ばれて いる方々が146万人という推計がされております。  2では、今回の報告書でメインとする有期契約労働者のイメージを書いております。1 回目から3回目の研究会においていろいろ議論をしていく中で、勤務内容、例えば勤務 時間、職種、職務内容、責任の有無、こういったところにおきまして、単に有期契約労 働者といっても、かなり大きな幅があるということで、ここでは「一週間の所定労働時 間が通常の労働者と同一であり、かつ契約を数回更新しているような有期契約労働者」 を主な対象と想定して記述することを考えております。ただ、それ以外の有期契約労働 者に当てはまる課題や内容も当然多くございますので、そういったところについても活 用いただくことを考えております。あとは、この研究会のそもそもの趣旨として、若年 層の問題が非常に大きいということがございますので、主たる対象として考えているの が若年層であるということでお考えいただければと思います。  3は「現状及び課題」です。これは先ほど申し上げたとおり、前回の研究会で柱とし てお示しした内容を膨らませたものです。最初に(1)「契約期間・更新」の(1)のとこ ろをざっと言いますと、1回当たりの契約期間が1年以内とする事業所が約8割にのぼっ ている一方で、契約更新回数が6回以上、勤続年数も半数が3年超となっている。この中 には、雇用目的に照らして必要以上に短い契約期間を設定し、反復更新しているケース もあるということで、その期間の程度はどの程度がいいのかといったところもあります が、それで一律の判断を設けるのは非常に難しいところもございます。ただ、必要以上 に短い契約期間を定めて反復更新することのないように配慮するという労働契約法17条 2項がございますので、この辺の趣旨を徹底していくことが有意義であると書かせてい ただきました。  (2)ですが、契約更新を希望する人の割合は5割以上、今後継続して勤めたい方も「5年 超」と答えている方が多い。また、いまの会社の仕事に対する不満としては、「雇用が 不安定」というのが非常に多いということもございます。ただ、一方では、仕事に意欲 的に取り組むうえで重要だということで答えている内容としましては「雇用契約の更新」 「希望するだけ勤め続けられること」も非常に多くなっております。ただ、企業側から すると、勤続が短すぎると生産性が落ちるため、なるべく長く勤続してほしいと考えて いながら、人件費の節約、雇用調整が簡単であるといったところで、有期契約を選択す る事例も見られるということがございました。  こうした状況を踏まえて、雇用の安定と生産性の向上を図る観点から、契約期間の長 期化を促すことや、契約更新に関する条件が明示されていること、あとは、正社員登用 の機会を設けること、こういったことが労働者にとって安心感につながり、生産性の向 上にも寄与できるのではないかということです。  (3)ですが、契約更新において特に説明をしていない場合も中には見られるということ がございます。ですから、こういった場合には、更新の有無とか、更新する場合としな い場合の判断基準を契約締結時に明示しなければならないという「雇止め告示」が出さ れておりますので、こういったものの遵守を徹底することが労働者にとって安心感につ ながるのではないかということです。  続いて(4)ですが、有期契約としている理由が、企業、また労働者側の事情によっても さまざまであるということが一方ではございます。こういったことを考えますと、更新 に係る判断基準をどのように設定・運用すべきかについても一概には言えない。企業に おいても、そのノウハウが十分蓄積されていないという課題もあります。そういったこ とを踏まえて、「雇止め告示」の趣旨や内容の周知とともに、好事例の収集、普及を図 ることが必要ではないかとしております。  続いて(2)「労働条件・処遇」です。(1)ですが、有期契約労働者を雇用する主な理由 として、人件費の節約が非常に多くなっております。その内容としては、退職金や賞与、 また昇進・昇格制度がない割合が高く、なおかつ諸手当もないところが多いことです。 経済のグローバル化や技術革新の進展に伴って、どうしても人件費の削減圧力がかかっ ていることが原因であると言われておりますが、こういったことを踏まえつつも、企業 の生産性が向上しないと人件費の枠の増額も難しいとすることを考慮する必要はありま す。ただ、就業の実態にそぐわず不当に低い待遇となっている場合も危惧されるという ことがございますので、事業主は待遇の改善を図るよう、国としても事業主に促してい くことも有意義ではないかということで書かせていただきました。  (2)、会社や仕事に対する不満・不安では、賃金が安いというのが非常に多くございま す。一方で、有期契約労働者の処遇決定の際の正社員との均衡の考慮というのを調査で 見てみますと、「すべての有期契約労働者について考慮している」とする事業所の割合 は5割以下と低くなっているという状況にございます。これを踏まえて、均衡を考慮し つつ締結することや、待遇の決定に当たって考慮した事項について、労働者本人への説 明がなされ、労働者の理解が深まるようにすることが、労働意欲を向上させることにも つながりますし、有意義ではないかと思われます。さらに、募集・採用に当たりまして、 労働条件について、十分な情報が明示されることが望ましいのではないかと思われます。  (3)です。仕事に意欲的に取り組むうえで重要なことに関する調査というのがございま したが、その中で「仕事内容や働きぶりに応じた処遇」「仕事上の希望・不満を会社等 に伝える機会」を挙げる方が非常に多いということがございました。ですから、処遇に ついて労使で話し合う機会や窓口を整備することも有意義ではないかと思われます。  (4)ですが、評価制度がないとする事業所も多いというのが現状としてありました。で すから、そういう意味では、職務の実績や職業能力の評価及びその結果の処遇の向上へ の活用を促進することも有意義であると思われます。  (5)です。就業規則等に有期契約労働者の育児休業の規定を設けていない企業が非常に 多くなっているということがございます。制度適用対象外だったと答えている労働者も 多いという状況にありまして、育児・介護休業の取得条件をわかりやすく示して制度の 周知を徹底していくことで、取得を促進するということも有意義ではないかと思われま す。  続いて(3)「正社員登用について」です。(1)、有期で就業している理由としまして、 契約社員やその他の方では、正社員になりたいが職場がないとする割合は非常に高くな っております。特にフルタイム勤務の人の会社や仕事に対する不満・不安では正社員に なれないというのが非常に多くなっています。契約更新を繰り返すのであれば正社員に してほしいという希望を持つ人も、男性で4割、女性で2割強で、「正社員登用機会が あること」が重要な要素になっています。  ただ、そういう転換制度がない所も実際に多くございます。企業側にとっても、有期 契約労働者を雇用する理由として、人件費の節約、雇用調整が容易であるといったこと が多いということもありますので、その辺の事情も当然勘案しなければいけない。特に フルタイム勤務の有期契約労働者がいる事業主におきましては、正社員への登用の機会 を設けることについて検討することが、有期契約労働者のモチベーション向上にもなり ますので、有意義ではないかと思われます。  (2)ですが、「ただし」ということで、規模や業種、工場、店舗といった種類によりま して、正社員登用制度の有無に差が出てきております。そういう登用制度の導入を促す 要因は個々の会社の状況によってもかなり異なっていることがございます。そういった 意味で、事業主に対して、正社員登用を促していくためには、きめ細かな相談支援等、 国としても何らかの対策を検討する必要があるのではないかと思われます。  一方で、すでに正社員登用に取り組んでいる企業もございますが、こういった所にお きましても、登用に係る基準の設定であるとか、登用後の処遇、あとは、従来からの正 社員との関係につきまして課題を抱えているといったことも話としては出てまいりまし たので、そういうことの解消のためにも、好事例の収集・普及が必要ではないかと思わ れます。  (3)です。一方で、労働者におきましても有期で働く事情はさまざまでして、すべての 人が正社員になることを希望しているわけではないということがございました。特に職 場の異動や責任を持つのがいやである、教えたりすることにも自信がないということで、 正社員登用を望まない方も予想以上に多いという話もございます。そういったものを勘 案しますと、有期の中に、職務内容や責任の程度、異動の有無等によっていくつかの段 階が認められるということで、正社員と比較して、より正社員に近く正社員登用に非常 に簡単に移行しやすい場合と、逆に正社員と有期の方の内容がかなりギャップが大きく 登用が非常に難しい場合、この2つがあるのかと考えられます。  ここに下線を引いてございますが、有期契約労働者につきましても、正社員転換を希 望する人と、有期の契約のままで待遇を上げてほしい人、この2つのパターンに大きく 分かれているのではないかと思われます。こうした状況を踏まえ、今後の就業形態に関 する希望に違いがある中で、多様な働き方へのニーズに対応しながら、正社員を希望す る人には正社員として登用される機会が開かれるよう、一方で、有期のままで働きたい 人には、そのレベルに応じて処遇の向上が図られるように、そういう方策を検討するこ とが有意義ではないかと思われます。  (4)では、それを受けて、「ライフステージに応じた多様な働き方」ということも最近 よく言われておりますので、正社員と有期の労働との間の行き来が可能になるようなこ とも有意義であると思われます。  次は(4)「能力開発について」です。(1)ですが、仕事に意欲的に取り組むうえで重要 なことに関する調査というのがございましたが、正社員になることを希望する人は「能 力を高める機会があること」を挙げる人が多いということがございました。労働者にと ってキャリアパスが明示されるということは、労働意欲を向上させることにもなります ので、それは事業主にとっても有意義ではないかと思われます。  (2)ですが、OFF-JTを実施している事業所割合が、非正規のほうは正社員の約半分とい うことがありましたし、業種によってもばらつきが大きいということもありました。特 に契約社員の能力開発意欲というのは、調査によりますと正社員並みなのですが、実際 に自己啓発を支援している事業所割合は、逆に正社員の半分ぐらいでした。内容におき ましても、受講料などの金銭的援助、就業時間の配慮、こういった面で正社員と比べて 低くなっているという状況にあります。  (3)で、OFF-JTとか自己啓発に関する支援を促進することが、有期契約労働者のキャリ アパスを考えるうえで有意義であると思われます。企業にとっても、人件費の節約とい う大もとの目的があるとは思うのですが、それで簡単に支援が増えることにならないと は思います。そういったことを踏まえながらも、国として、そういう施策を通じた事業 主への働きかけが必要になるのではないかと考えております。  (5)「その他」です。(1)ですが、さまざまな業種で有期の割合はばらつきがあるので すが、その中で、就業形態や性別で従事する職種も大きく異なっているという状況にご ざいました。この辺を考えまして、一定のパターン別の雇用管理事例を活用して、事業 主への啓発を促すことも有意義ではないかと思われます。  (2)ですが、職業生活に対する満足度に関する調査で、契約更新時の面談があるほうが、 ない場合よりも、仕事の内容・やりがい、職業生活全体についての満足度は高いという ことがございました。ですから、個人面談を積極的に取り入れることによって、その労 働者の能力を引き出すことができるのではないかと思われます。  (3)として、契約社員等でも社会保険の適用がない場合も見られております。この中に は、必要な場合でも加入させていない場合も考えられます。事業主にとっても、社会保 険料の事業主負担を抑制するということがあるのかと思われますが、このまま年金保険 の未加入が続けば、将来、公的年金の保障を十分に受けられないという問題も出てきま すので、社会保険への加入促進を図ることも有意義ではないかと思われます。  IIIは「有期契約労働者の雇用管理の改善に向けて」です。いままで話させていただい たような現状及び課題を受けまして、その保護に向けた施策のあり方に関しては今後の 課題として別途検討が必要と思われますが、この研究会におきましては、雇用管理の改 善に関して、現行の法制度の下で事業主が遵守すべき項目や一定の範囲で配慮すべき項 目、これをガイドラインとしてまず整備したい。また、非正規雇用の問題というのは、 先ほども申しましたような年金とか社会不安等にもつながる問題として非常に大きくク ローズアップされておりますので、雇用管理の改善を促進するための施策を国としても 講じていくことが重要だということで、検討すべき課題としてここに挙げております。  1の「ガイドラインの策定」というのは、別添資料4として付けております。2の「今 後検討すべき課題」として5つございます。(1)事業主への周知・啓発というのがあり、 今回ガイドラインをまとめることになります。これは国として初めて「有期契約労働者」 という視点でまとめたもので、そういう意味では一覧的に、有期についてこのガイドラ インで理解できるということがございますので、全国各地でセミナーを実施して、事業 主に周知・啓発していくということがまず必要ではないかと思われます。  (2)、そういう周知・啓発を図ったうえで、さらにハローワーク等におきまして担当 者を配置し、事業主への啓発・指導を行うことが一方で必要かと思われます。さらに、 専門的な人材、例えば社労士や中小企業診断士、こういった方々が、実際に正社員に転 換したいけれども、どうやったら転換できるのだろうかとか、そういう具体的な内容に 関する相談、労働条件、能力開発、福利厚生、諸々の雇用管理改善に向けた助言を的確 に行っていくことが有意義ではないのか、また、国としてそういった相談支援を実施す べきではないかということです。  (3)は、中小企業雇用安定化奨励金の拡充を検討ということで、これはこの4月から、 正社員転換をした場合、事業主に対する支援をするという奨励金制度が開設されており ますが、これに加えて更に、賃金や賞与等処遇の向上、OFF-JTや自己啓発による能力開 発、こういった支援に関する制度を設けて実際に支援した事業主に対して、この奨励金 を拡充して、国としても一定の支援を行うことを検討すべきではないかということです。  (4)は、雇用管理改善に取り組む事例の収集・普及です。先ほどの課題等でも出てま いりましたが、処遇改善、能力開発、あるいは育児休業の取得促進等で積極的に取り組 んでいる事業所を広く公表することで、事業主にこういうことを促していくことも必要 だということです。  最後の(5)は、有期契約労働者に関する調査研究です。今回いろいろ資料等を調べて みましたが、ここで対象としている有期契約労働者に関して、まだまだ十分な調査資料 がないということもありましたので、もう少し類型化して、雇用管理を具体的に図って いくための調査研究も必要ではないかといったことも考えられますので、そういったも のも国において検討したらどうかということでございます。  この(1)〜(5)につきましては、国においても来年度予算をこれから要求されてい くことがあるかと思われますので、その中で検討していただきたい項目です。  続いて資料2と資料4を簡単に説明させていただきます。こちらのほうは先ほどの別添 となっておりましたガイドラインの素案です。資料2は概要版です。項目的には、大きく 分けまして1 に「趣旨」を書いております。そして2 に「対象者」として、報告書と同 じような対象者と記載してあります。3 は「雇用に関し留意しなければならない項目」 ということで、現行の法令等を踏まえて整理いたしました。これは(1)〜(6)までご ざいます。右端に四角枠でそれぞれの出所を書きましたが、例えば基準法、契約法等、 有期契約労働者が特に必要と思われるような項目を整理いたしました。これ以外の項目 も当然あると思われますし、通常の労働者に適用されるものでまだ入っていないものも ございますが、そこまで入れていくかどうか、そのことも、この研究会でお話をいただ ければとは思います。最低限有期にとって必要なものということで整理いたしました。  4 は「有期契約労働者のよりよい雇用管理に向けて」ということで、(1)〜(5)ま で整理しております。これは法令等の根拠は特にございませんが、適宜事業主において 必要な項目について配慮していただくことで、有期契約労働者の雇用管理がよりよく図 れるということを書いております。  資料4に移っていただきたいと思います。1 の趣旨につきましては、研究会報告書の 検討の経過のところとほぼ同じ内容になっておりますので省略させていただきます。2 の対象のところも、先ほどの研究会報告書と基本的に同じです。3 が法令等を踏まえて 有期契約労働者に関して整理した部分ですが、7頁の下のほうにそれぞれの関係法令の 略称を示しておりますので参考にしていただきたいと思います。  次は8頁です。パート法が昨年改正されたときにパート指針が作られておりますが、 そこでも、一週間の所定労働時間が通常の労働者と同一な有期契約労働者にはパート法 そのものは直接適用されませんが、「パート法の趣旨が考慮されるべき」と記載されて おりますので、それについてこの頭のところで触れさせていただきました。  (1)「安定的な雇用関係に配慮した雇用環境の整備」ということで、こちらのほうは 基準法、契約法で整理したものです。(1)は、契約期間、更新の有無の明示等の中でもそ れぞれ、契約期間の明示、更新の有無、判断基準の明示、労働者の理解の促進、書面確 認といったものがございます。この中身につきましては、脚注もしくは別添資料として 解説等を実際には付けさせていただきます。このままだと、事業主の方が読まれてもわ かりにくいといったこともございますので。例えば更新の判断基準として、具体的にど ういったものがあるのかといったことを付けさせていただこうと思っております。  (2)は契約期間についての配慮で、これは契約法や「雇止め告示」で、その目的に照ら した配慮、契約更新時の配慮が出てきます。  (3)雇用契約の遵守で、契約期間中の解雇です、あとは退職に関する事項の明示。解雇 の予告では、30日前にしなければいけないことを、また、退職時等の証明が必要だとい うことで、基準法等に基づいて書かせていただきました。  (4)は雇止めの予告及び雇止めの理由の明示です。ここは有期契約労働者に非常に特有 なところです。雇止めの予告は30日前に必要である。それから、雇止めの理由の明示が 「雇止め告示」に基づいて必要であるということで書いております。  続いて(2)「労働条件等の改善のための事項」です。最初に(1)労働条件の明示等とい うことで、契約の期間や就業場所や賃金等については明示しなければいけない。基準法 に基づいて、書面の交付により明示しなければいけないことになっております。ただ、 10頁の第2段落目「また」以下はパート法の条文を参照ということで、昇給の有無や退職 手当の有無、賞与の有無を文書の交付により明示しなさいということで「努めるべき」 と書いております。  その後もさらに同じです。待遇を決定するに当たって考慮した事項も説明するべきで あるということで、パート法と横並びになっております。イの労働者の理解の促進は契 約法、あとは書面の確認です。  (2)は就業規則の整備です。最初に、その作成及び届出ですが、これは、有期契約労働 者を含めて常時10人以上の事業主は作成しなければいけないとなっております。しかし 有期契約労働者を含めて、ということは意外と忘れているかもしれないということで書 かせていただきました。あとは作成の手続ということで、基準法に基づいて、過半数労 働組合とか過半数代表者の意見ということは書いておりますが、その後半の部分で、パ ート法を参照しまして、有期契約労働者に係る事項につきましては、有期契約労働者の 過半数代表者の意見をよく聞くように努めるべきというようにと、ここで書いておりま す。  (3)は、均衡考慮の原則及び仕事と生活の調和への配慮の原則です。これは契約法に載 っている2つの原則を書いております。  (4)は、通常の労働者との均衡のとれた待遇です。最初が賃金です。これは通常の労働 者との均衡を考慮しながら、経験等を勘案して賃金を決定するよう努めるべきというこ とで、これはパート法を参照にさせていただいております。また、職務に密接に関連し て支払われるもの以外の手当につきましても、通常労働者との均衡ということで書かせ ていただいています。また、福利厚生関係と苦情処理体制をそれぞれイとウで書きまし たが、こういったところも、基本的にはパート法の趣旨を考慮して載せました。  (5)は育児休業・介護休業等です。これは育介法という法律があり、その要件に該当す る場合がそれぞれございます。育児休業であれば、一年以上の期間引き続き雇用されて いること、さらに、養育する子が一歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見 込まれる者とかというのがございますが、こういう要件に該当する場合は拒むことがで きない。それは有期契約労働者にも当てはまるということで書いております。以下、介 護休暇制度や子の看護休暇制度についても同じです。  12頁にはその他ということで*のところにございますが、時間外労働の制限、深夜業 の免除、勤務時間の短縮措置等についても適用されるということを注意的に書いてあり ます。  (3)「キャリアパスへの配慮等(正社員投用)」です。これはパート法の12条第1項 を参照にしまして、募集を行う場合や配置を新たに行う場合には、有期契約労働者にも 周知する。また、申し出る機会を与えること。また、転換制度を設けるなどの措置を講 ずることが必要になってくると書いてあります。  (4)「教育訓練・能力開発の機会の付与」です。こちらもパート法の10条1項、2項 を参照しつつ書かせていただいております。通常の労働者に対する教育訓練は、有期契 約労働者に対しても実施するべきということです。  (5)「法令の遵守」では、労働者保護法令はさまざまあるが、そういったものも適用 があると、ある意味注意的に記載させていただきました。(2)は、安全衛生法で安全衛生 教育をやってくださいというのがございますので、これも注意的に記載させていただき ました。(3)は、雇用保険や健康保険等社会保険関係の加入も注意的に記載いたしました。  13頁にいきまして、(6)「法令等の周知」です。これは基準法の規定ですが、有期契 約労働者にも当然適用されますので周知してくださいということで、さまざまに列記し ておりますが、こういったものにつきましても周知をお願いしようということでござい ます。ここのところまでが法令等に基づいて記載するところです。  4 「有期契約労働者のよりよい雇用管理に向けて」は、特に法令等に根拠はございま せんが、適宜必要な項目について配慮すべきこと、望ましいこと、ということで整理し ております。(1)「安定的な雇用関係に配慮した雇用環境の整備」では、解雇する場合 や更新する場合でも、3年以上引き続き雇用されている場合で雇止めを行う場合には、ハ ローワークに再就職援助計画を提出して、再就職に関する支援を行うことも望ましいと 書いております。  (2)「労働条件等の改善のための事項」で、仕事内容や処遇について話し合う機会や 相談窓口、また個人面談を積極的に取り入れることが望ましいということです。(2)は、 昨年制定された「ワーク・ライフ・バランス憲章」と「行動指針」がございますので、 これの趣旨に配慮すること。(3)は、育児休業や短時間勤務制度を取った通常の労働者に 対し、経済的な支援を行った場合、事業主に対する支援がありますが、有期契約労働者 に対しても経済的支援を行うことが望ましいと書いております。  続いて14頁、(3)「キャリアパスへの配慮等」です。(1)では、できるだけ有期契約 労働者に対して具体的かつ明確に多様なキャリアパスを示すことが望ましい。(2)は、希 望に応じて職務経験の機会を付与して、職務内容や実績を評価するとともに、その結果 を処遇の向上に活用する。また、評価の結果を伝えながら、将来のキャリアパスに関す る相談に応じるのが望ましい。さらに、これは前回の研究会でちょっと出ておりました が、評価者の訓練も意外とされていないということがありましたので、この辺も実施す ることが望ましいと書かせていただきました。  (3)ですが、より高度な知識や技能を必要とし、また、より高度な責任を負う職務への 転換を希望する場合にも制度や労働条件を整備することが望ましい。(4)について、正社 員に登用された後の処遇につきましても、能力や経験、勤続等を踏まえて適正な処遇と なるよう配慮すること。(5)として、正社員と有期契約労働者の中間的な区分、例えば期 間の定めがない非正規職員、あるいは人事異動の範囲が限定される社員、そういったい くつかの社員区分を設けることも有意義ではないかということで書かせていただいてお ります。  (6)では、正社員登用を円滑にしていくために、社内でトライアル期間を設けて、正社 員の業務を一定期間体験させるような配慮も必要ではないかということです。  続いて(7)です。有期から一旦正規になったけれども、家庭の事情でまた有期に戻りた いという場合も当然出てくるかと思いますので、そういった場合にも対応可能な制度を 設けることが望ましいのではないかということです。  (8)、特にということで、最近フリーターの問題もさまざま出てきておりますので、職 業能力形成機会に恵まれなかった方には、教育訓練や正社員登用の機会の付与において 格別の配慮を企業としてすることが望ましいと書かせていただきました。  (4)は「教育訓練・能力開発の機会の付与」です。(1)として、教育訓練に係る設備や プログラムの充実等に留意して、計画的に教育訓練を実施してほしいということです。 (2)は、職業能力検定等を受けるための休暇の付与や時間の確保等必要な援助をすること が望ましいということ。(3)につきましては、業務の遂行に必要な技能、知識等に関する 情報の提供、相談機会の確保等を通じて職業能力の開発・向上を図ることができるよう な配慮をすることが望ましいということ。そして(4)ですが、職務経験、教育訓練等によ り高められた職業能力を適正に評価し、労働条件に適切に反映させることが望ましいと いうこと。(5)として、登用に当たり、登用者に対する研修を実施するなど、円滑に正社 員に移行できるよう配慮することが望ましいとされています。  最後は(5)「法令の遵守」で、労務管理や生産管理等事業体制の整備・改善を図るこ とが望ましいとなっています。  そして16頁と17頁に(参考)として、「雇用管理改善に関する取組事例」があります。 これはJILPTで事例調査を行っておりまして、それから抜粋したものです。一部加工して ございますが、こういったものも参考として付けて、ある意味ガイドラインの中身を、 具体的にいろいろ頑張っている企業もありますので、そういうものも参考にしていただ こうということです。長くなりましたが、私からは以上です。 ○諏訪座長  次回の報告書作成に向けて、今日皆様に是非いろいろなご指摘やアイディアをいただ きたいと思います。もちろん、いま説明をしていただきました資料1〜4までの間に何か ご疑問等がありましたら、遠慮なくご指摘いただきたいと思います。 ○佐藤委員  細かいところはいくつかあるのですが、それはちょっと置いて、やや大き目のことが 3つあるのです。1つは、「報告書」と「ガイドライン」、両者の関係です。「報告書」 で課題だと言ったことをすべて「ガイドライン」で盛るという対応関係で考えると、「 報告書」で言える範囲はかなり限定されてくるので、そこはあまりリジッドに考えなく ていいのではないかと私は思います。特に「ガイドライン」は、雇用管理改善のところ は別ですが、既存の法令なり指針のところしかたぶん書けないと思うので、それはしょ うがない。ただ、「報告書」のほうは、有期契約労働者の雇用管理改善で、「ガイドラ イン」に対応策として盛れないことについても、論点は指摘したほうがいいのではない か。そう整理するかどうかということなのですが、私はそのほうがいい。つまり、今回 の「ガイドライン」で対応できないけれども、中期的にはこういうことが大事ですよと いうようなことを「報告書」に書いたらどうかと思っているので、それを少し議論して いただければと思います。それが一つです。  2番目は、「報告書」のほうをやや広めにするとなると、有期契約でありながら何で契 約が更新されるという状況があるのかということを、きちっと分析したほうがいいのか なと思います。この「報告書」を見ると、企業側の理由でいうと、人件費等コスト削減、 あとは雇用調整が容易であるという2個です。例えば前者の人件費等コスト削減というこ とであれば、支払い能力が上がれば有期契約は減るのかです、単純に考えれば。一部そ の部分はあるけれども、減らないと私は思います。支払い能力があれば有期契約を減ら すのかというと、そんなことはないだろうと思うのです。その部分はゼロではないけれ ど、そんなに大きくないのではないか。ですから、人件費コスト削減の部分はあるのだ けれども、支払い能力が上がれば有期契約が減るのか。雇用調整が容易であるというこ とでも、これだけ更新されてしまっている人を見ると、裁判ともなると事実上はなかな か難しいのです。普通、実際上は容易でないのではないか。だから、なぜ有期契約であ りながら契約更新されているのかということを、もう少しきちっと書いたらと思うわけ です。  私は、コスト削減要因がゼロとは言いません。いちばん大きいのは、事業の不確実性 の増大です。やはり、予測がつかないというところが非常に大きいのではないか。結果 的に、振り返れば仕事はずっとありました。だけど、これから先を見たら仕事があるか どうか分からない。この状況はいちばん大きいと思うのです。単に需要変動だけではな い。事業環境、技術向上もそうだけれども、需要変動+事業の不確実性というのがいち ばん大きいかなと思うのです。そうすると、これはなかなか難しい話です。つまり、全 部無期にできるのかという話ともつながってくるわけです。  2番目は、現行の雇用保障ルールというものがいまの有期のジョブ雇用の人たちを想 定していなくて、キャリア雇用の人の雇用保障のルールがあるわけです。だけど、有期 の人はジョブ雇用なのです。ジョブで雇用している人たちの雇用保障と、キャリアで雇 用している人たちの雇用保障を、つまり、ジョブ雇用の人をそのままキャリアで雇用し ている人に載せられるかというと載せられないというのは、そこだろうと。  3つ目、これは人件費コストの削減にも関わるのですけれども、正社員のほうの処遇 を多元化できない、あるいは変えられない、硬直的だというところがある。つまり、有 期契約労働者の活用に合ったような処遇の仕組みを社員の中に作れないから有期にして いる側面もある。低いほうばかり想定するけれども、給与をたくさん払う場合もそうな のです。典型的なのは、トレーダーなどは給与を高くすることができないから有期にす る、そういうものもあるわけです。高い給与を払うというのと逆方向に社員の給与を掲 げるというのもある。  あとこの中で出てくるのは、正社員と有期契約労働者とで、有期のほうは生活関連手 当がない。本来これは社員のほうにあるほうが非合理なのです。社員のほうの生活関連 手当をなくせないから、逆に有期にする。もう1つは、社員のほうの処遇を多元化しに くい職務にリンクした給与制度とか、働きに見合って少し高くする、あるいは生活関連 手当をなくすとか、そういうことができにくいということが有期の労働者を作っている 側面もあるのです。ですから、なぜ有期契約が増えてきて契約更新されているのかと言 うのはやや狭すぎる、というのが2点目です。  3つ目、これは所々に出てくるのですが、それを踏まえると、正社員のほうの雇用の 仕組みなり処遇の仕組みを変えられないと、有期のほうも変えられないということを「 報告書」のほうでもう少し書けないか。「ガイドライン」の14頁、(3)の(5)に、中間的 な形態を作れと書いてある。ですから「ガイドライン」のほうに、社員のほうにも職務 限定型のキャリアとか、仕事リンクの強い処遇とかと作ると、いまの有期のジョブ雇用 の人たちは移りやすい。でも、そこは従来の社員と違って、例えば生活関連手当はない、 もしかしたら退職金もないかもしれないが、雇用は無期だと。しかし、そういうことが 「報告書」のほうには出てこないので、社員のほうの雇用なり処遇の仕方の見直しの必 要性みたいなことを書くかどうか。  もちろん、不利益変更は駄目だと書いていいと思うのです。パートのほうにはそう書 いてあるわけです。処遇の均衡というのは、パートのほうを上げろとは書いてないわけ です。これは何となく、有期のほうだけ上げろという書き方になっているわけです。パ ート労働法の枠組みというのは、均等・均衡にしなさいと言っているだけで、それが不 利益な変更でなければ、社員のほうを見直してもいいわけです。社員のほうは置いてお いて、有期のほうだけ変えるようなイメージで書かれてしまっているのですが、そうい う意味では両方を視野に入れるということが「報告書」のほうでは大事です。パート労 働法は、指針の考え方がそうなっていて、パートのほうを上げろなどと、どこにも書い てない。均衡・均等にしなさい、合理的な給与にしろとしか書いてないわけで、そうい う意味では社員のほうが合理的ではない場合もあるわけです。合理的でないとすれば、 そこを見直さなければ当然いけないわけで、そういうことがわかるように書いたらどう かということです。  あとは細かいところを1つだけ。1頁で、「検討の経緯」にはフルタイム有期を対象に しますと書いてあるのです、パート労働法が対象にしないフルタイムと。であれば、II 以降については当然フルタイム有期なのです。ところがIIの2に来ると、有期契約労働 者は勤務時間も多様だと書いてある。「フルタイム有期」と言ったのだから、勤務時間 はフルタイムなのです。初めに「フルタイム有期」と言ってしまったら、後ろは全部フ ルタイム有期で書いていくほうが分かりやすいかなと思います。 ○諏訪座長  構造的な問題に関わる重要なご指摘を得たと思いますので、いまの佐藤委員の問題提 起に関係してご意見があったら、ほかの委員の皆様から是非いただきたいと思います。 まず「ガイドライン」そのものは、いま現在どうするかということをどうしても書きま すから、夢のような話を書く、あるいは、他の条件が変わったときにこういうことがで きるではないかというようなことはなかなか言いづらいのですが、「報告書」はもう少 し長いタイムスパンで、雇用管理改善のためにはどうすべきかという問題提起をすると なると、中長期的な指摘をもう少し書いたほうがいいのではないかというご意見でした。 つまり、「報告書」と「ガイドライン」がピタッと1対1で対応する必要は必ずしもない のではないかというご指摘だったのですが、この点で皆様はいかがでしょうか。よろし いですか。では、ここは議論の前提にいたします。  2番目、有期になっているのは構造的な問題があるという問題に関して、もう少しき ちんと書いたほうがいいのではないか。つまり、いまの時代、事業の先行き不透明さか ら、契約型で活用するという流れがある一定の範囲で、いわば必然的に起きているので はないか。無くそうと思えば無くなるものなのだから無くしたほうがいい、という議論 であると実情と合わないのではないか。あるいは、正社員型みたいな働き方の場合は、 長い期間のキャリアを保障していくというような雇い方に対して、契約社員型の場合は、 一定期間のジョブを保障していくという雇用形態、ジョブがある限りはというものであ る。このように違ったパターンであるのにもかかわらず、それを一緒に、ない交ぜにし た議論をしても現実的ではないのではないか。私の要約が正しいかどうか分からないの ですが、このような構造的な側面に関しての記述あるいは考慮、指摘がもう少しあった ほうがいいのではないかという問題提起だったと思います。そこで、この点はどうでし ょうか。 ○奥田委員 私もその点で1点気になった点があります。ジョブ雇用、キャリア雇用というふうにき ちっと分けられる場合、それと、本来有期だったらジョブ雇用のはずなのだけれども、 実質的にはキャリア雇用になっているという場合がある。「ガイドライン」に関しては 有期雇用を制限していない現行法があるわけですから、「ガイドライン」で書ける範囲 というのは限られてくると思うのですが、佐藤委員がおっしゃったように、「報告書」 の中では、実際にジョブ雇用である人が実質的にキャリア雇用になっているというとこ ろに問題があるというか、そういう議論をしてきたという指摘はあってもいいかと思い ます。ただ、それを具体的な対策として「ガイドライン」にどこまで書くかというのは、 また別個の検討が必要だと思います。 ○佐藤委員  いまの点ですが、ジョブ雇用がキャリア雇用になった人は正社員にできるし、しなけ ればいけないのに何でしないのかと。しかし逆に、ずっとジョブ雇用でいる人も、有期 で繰り返しているのなら上に上げろというのもまた非現実的だと思うのです。できるも のはやらなければいけない。でも、現行の枠組みの中で、できない理由があるものもあ るということが分かるように書いたほうがいいのではないかということなのです。 ○諏訪座長  そういう言葉づかいはしていませんが、そんなニュアンスのことは少し書き込んであ っただろうと思うのです。しかし、もう少しはっきりと、わかりやすく書いたほうがい いというご指摘なのだろうと思います。この点で、ほかの委員からもご意見をいただき たいと思います。そうしますと。IIに関する佐藤委員のご指摘、それから、それの補足 的なご意見を奥田委員からいただきましたが、こういう側面に関しても、もう少し「報 告書」に盛り込む工夫をしてみる、ここもおおかたの皆様のご意見としてよろしゅうご ざいますか。  IIIで、正社員側のもう少し柔軟なあり方といいますか、キャリアパス等の多様化等が 進まないと、契約社員の正社員登用もなかなか進まない。かつてパートタイムの施策で 議論したことと同じような考え方を有期雇用契約者に関してもそういう色彩を「報告書」 の中で指摘したほうがいいのではないかというご提言だったと思うのですが、皆様、こ の点はいかがでしょうか。 ○奥田委員  ちょっと内容的な質問をさせていただきます。具体的に言いますと、今回いただいた 「ガイドライン」の14頁の(3)の(5)に、従来から議論してきた、正社員の中で、もう 少し区分を分けて、期間の定めがない正社員であっても責任度合が違うというような議 論をしてきたということで、これを挙げていただいているのは非常に重要だと私自身は 思っているのですが、佐藤委員がおっしゃったのは、これに限られるものではなくて、 これも含めて、もう少し広く体系的にということですか。     ○佐藤委員  これも1つです。あとは「報告書」の2頁の下「労働条件・処遇」で、有期には家族手 当もないとかと書いてある。何となくこれだと、そっちにも付けろみたいな感じがしま す。家族手当を有期ね。でも逆に言うと、本来であれば職務にリンクしたということで あれば社員にもなくすという話です。有期のほうがその限りにおいては、生活関連手当 がないのは合理的なのです。極端な言い方ですけれども、逆に言うと、そちらを変えら れないからそういうふうにしている側面もあるわけです。ですから処遇についても、社 員のほうを変えられないままにしておくという発想でいくのか、手当だけでなくもう少 し職能型の給与が上がってもいいのです。でも仕事によってはもう少し仕事給型の給与 制度が入ったほうが、もしかしたらわざわざ有期契約という。そのために有期でやって いるのも一部ありますから、そういうものがなくなる可能性がある。そういうことがわ かるような書き方が、どこかにあるといいかなと思います。ただし、それが正社員のほ うの労働条件の不利益変更ということになると困るというのは、書いていいと思います。 もちろんそういうことは書いた上です。 ○諏訪座長  人事労務管理の大家に反論するようですが、キャリア保障型だったら、そういう家族 手当や何かがあっても、一概に直ちに不合理ということではないという気もするのです。 ○佐藤委員 それはそうです。 ○諏訪座長 だからジョブ型でいったら、確かにおかしいのです。 ○佐藤委員 そういうことです。 ○諏訪座長  つまり人に仕事が付くか、仕事に人が付くか、この違いがあって、ここの狭間のとこ ろでこの厄介な問題が起きている。社員の場合もかなり仕事に人が付くような形がいま 増えているにもかかわらず、そこら辺のところの整理がうまくいっていない。整理がう まくいかないから契約社員という形で外へ出してしまっているようなのは、やはり問題 ではないかという意味なのだろうと思います。 ○佐藤委員  そうです。ですから社員のほうは、私は仕事リンクで生活するのはあり得ると思いま すが、そこにほかの形の給与制度を作りにくくて、一度作っても、だんだんこっち側へ 寄せていく力学が働きやすい構造がある。ですから多元的な処遇制度ができればという こと。私は生活給であるのが悪いという意味ではなくて、それは合理的な部分もあるの ですが、もう少し多元化したほうがいいような働き方、活用が出てきているけれど、そ れは作りにくいということです。ですから、それは諏訪先生と変わらないというところ です。 ○諏訪座長  では具体的な表現等は、次回の案に反映する工夫をさせていただこうと思いますので、 最後に佐藤委員が言われたここをどうするかです。フルタイム有期が更新を何回か繰り 返すようなのがメインだとすると、そこに絞った形で報告書は書くべきか。それとも、 そこだけに絞るという意味もまたないのです。そうしなければいけないということはな い。もう少し有期雇用、契約社員というのは広がっていますから、その両方を目配りし ながら書くときに、ここは、いまあるタイプに対して書いている。別のところはこうい うタイプですよと、もう少しわかるように書いたほうがいい書き方にするのか、そこな のかなと思います。ここら辺は先生方のご意見をいただきたいと思います。事務局のほ うも、いまの最後のところ。 ○本間雇用開発課長補佐  ここのところは今回、報告書を作成するにあたり、確かに迷ったところでもあるので す。なかなか表現というか、盛り込み方というのは非常に難しいなというところです。 厚生労働省としての立場で報告書等も書くところがありますので、どちらかといったら、 できるだけ労使にとって中立の立場で書くというところで、その辺、書き方が、一応、 試みたところもあるのですが、なかなかそこは難しいなと思います。この省の中でも基 準局や均等局とかあって、そういった局との関係でも調整が難しいところが多いことも 正直なところあります。 ○太田職業安定局長  全体とすると、いま諏訪先生がおっしゃったようにフルタイムだけに限る理由もない ので、主なターゲットはフルタイムとしつつ、フルタイムでない部分もカバーする必要 がありますから、そこは少しめりはりを付けて、わかるようにやっていくということで はないかと思います。そこは少し整理をしてみたいと思います。 ○諏訪座長  いまの局長のご意見を受ければ、一般的にこうであると言った上で、特にこういうフ ルタイムの契約社員の場合は、あるいはフルタイムの契約社員で契約更新を繰り返すよ うな場合にはというふうに、濃淡を付けた記述の工夫をするということで、いかがでし ょうか。 ○佐藤委員  私は全然反対ではないです。ただ、読み手からすると、パートタイム労働法との関わ り合いはどうかというふうに、たぶん思うと思うので、ここの研究会は有期ですよね。 有期全体だけど議論のメインはフルタイムの有期で、パート労働法は短時間有期ではな いのですよね。そこは強いて言うと非正規の短時間です。それは有期とは限らない。だ けど読み手は何となくあっちは有期だと思っているから、そこだと思うのです。向こう は有期、無期関係ない。非正規のパートなのです。正社員の短時間は通常労働者でパー トも何もカバーしないということです。非正規労働者の短時間なので、その辺をわかる ように、どこかにちょっと書いておいていただいたほうがいいかなと思います。 ○太田職業安定局長  実際に指導する上でも、パートタイムは雇児局で基本的にはやっている。このフルタ イムの有期は職業安定局と。ちょっと縦割りになってしまうのも変ですけれども、実際、 この有期のガイドラインで指導をやっていく上では、フルタイムの有期を主なターゲッ トとしつつ、パートタイムについては、例えば地方の労働局の中の連絡体制の中で雇児 局につないでいく。そういう形の指導になるのかなと思っています。したがって報告書 なりガイドラインは、どこまで明確に書けるかはともかくとして、ある程度わかるよう に書く必要があるのかなというふうには思っています。 ○奥田委員  その場合に、報告書のターゲットとガイドラインのターゲットは同じですか。ガイド ラインがメインに出ますよね。指導とかの場合でもガイドラインが表に出て、そこはあ る程度限られたもので書き、報告書と同じである必要はない。 ○太田職業安定局長  さっきの議論と同じで、報告書のほうは議論のあったものを幅広に書いていただくこ とになると思います。 ○佐藤委員  ですから、パート労働法は短時間有期ではないのですが、パート労働法では有期を想 定したようなことが書かれている。枠組みは違うのですが、だんだん具体的なところに なると有期契約が多いから、それをどうするかというのは向こう側でも書かれているわ けです。こっちは有期だと言っても、読み手からするとどうなっているのかということ です。その辺を企業の方等が誤解を受けないようにやっていただくのが大事かなと思い ます。 ○太田職業安定局長  うまく整理が付くかどうかという問題はありますが、できる限り整理が付くようにし て、ただ、本当に現場を見るとなかなか難しい部分が出てくると思いますけれども、で きる限り整理をしていきたい。 ○藤川委員  ガイドラインの位置づけとして、実際に行政を営む人たちにとってのガイドラインと いう意味と、事業主にとってのガイドラインと2つの意味がありますからね。佐藤先生 がおっしゃったように、事業主に対する誤解を招かないようにするために、そっちをよ り重くするのであれば、対象者についてはガイドラインに今回書いたような形で載せず に、行政内部での規範があるではないですか、そこで書いていただくというやり方は可 能ですか。  つまり、実際の現場で指導するときに、何だかんだ言って2がメインだよと、ほかの ところはパート労働法でも書かれているからというような振り分けをしないと、行政も 苦しいところがあると思うので、それも大事ですよね。それを活かすとすれば、それは 別添で何と言うのでしたか。上から下に対する何でしたか。 ○太田職業安定局長 通達とか、そういうものですね。 ○藤川委員 そういう形で明示するということは可能ですか。 ○太田職業安定局長  そうですね。行政もそうですけれども、現場で受け取るほうが混乱しても困ると思い ますので、中でよく議論して、そういうことを整理できるようにしたいと思っています。 ○諏訪座長  言葉の上では分かれて、人々がそれぞれ違ったイメージを持っていますが、労働市場 あるいは企業の現場に行けば、かなり混在したり重なる部分がある現象で、そういう意 味では労働市場がかなり似ている部分に行政の側は違った部局が対応して、根拠になる 法令がまた違っている。こういう言わば過渡的な厄介な事情のもとで、できるだけ行政 側が混乱せず、また当然、現場の事業主や有期契約労働者の方々が、きちんと理解でき る工夫をお願いしますというご意見だろうということで、受けとめをお願いしたいと思 います。 ○佐藤委員  これは無理だと思いますが、もし可能であれば行政のほうの誤解を招かないようなこ と。本当はこれのガイドラインができれば、企業向けについてパートと一緒の別のもの を1つ作ると本当はいいのです。1つ読めば、パートのこともこっちもわかるというもの を作ってあげるのが本当は親切なのです、企業向けは。バラバラでなくて、両方まとめ た1個を作って提供しないと、企業としては「何で」と思います。ガイドラインを作る のはいいですよ、だけど企業側のパートのほうのものをセットのができればいちばんい い。なかなか難しいと思いますけれども。 ○太田職業安定局長  問題意識としてわかります。それも含めて検討します。企業側もそうですし、労働者 側もあると思います、裏表ですから。それぞれがわかりやすく、ただ、行政がどこまで できるかというのはありますので、それも含めて中で議論して、またご相談させていた だきたいと思います。 ○諏訪座長  呼称契約社員ですから、契約社員といえども労働時間はかなりばらつきがあるわけで す。したがって、そういう意味でパート法の適用対象になる人がいるわけなので、そこ は確かに重なる。いまの受け取る側の考え方からいけば、できるだけ現場で意味のある、 そして混乱を招かない工夫というのは是非お願いしたいと思います。この点で古賀さん、 企業の現場の気持としてはどうですか。 ○明治安田生命(古賀人事部次長)   当社は特殊な例かもしれませんが、第2回のときに申し上げたとおり、当社は通常の 労働者より短いものしか、この有期労働契約にしていませんので、そういう形態から言 えば、一本化していただいたほうがわかりやすいということはあると思います。もちろ ん、本田さんでしたか、同じような仕事で、同じような時間ということであれば、また 別の話になるのでしょうけれど、当社のような業態で、パートタイム労働法を意識した、 ある意味でも意識しているかもしれませんが、そういう形の業界では一本のほうがあり がたいとは思います。 ○諏訪座長  というわけですから、是非、あまりあるパターンだけに特化してしまって、何だ、う ち関係ないのとするのは、いろいろな現実がある上ではしかるべく配慮したほうがいい と思います。さはさりながら、そうすると今度は浅く広く焦点がぼけてしまいますから、 こんなタイプの場合はとりわけこうしなければとか、例えばこういうタイプはという切 り分けなのだろうと思います。なかなかこれは難しい作業だと思いますが、次回の報告 書素案等では、是非、ご配慮いただいて事務局に鋭意ご検討いただきたいと思います。  では佐藤委員からの問題提起の部分は、一応、これで検討したということで、それ以 外の問題提起をお願いしたいと思います。 ○藤川委員  佐藤先生のご指摘の2点に戻るのですが、報告書にそのような構造的分析を載せるこ とには大賛成なので異論はないです。それを前提に、結論から言うと何が言いたいかと いうと、どう分析しても、有期契約労働者であるべきでないというカテゴリーが出てく ると思います。割合は少ないですけれども。佐藤先生はそういうご意図があったかどう かわかりませんが、先ほど佐藤先生がおっしゃったものだと、有期契約労働者をすべて 正当化するというか。 ○佐藤委員 そういうことはない。 ○藤川委員  ないですね。だから分析として理由づけする中で、どうしても理由づけできない有期 契約労働者がいるということについても、報告書に載せていただきたいと思うのですが、 いかがですか。 ○諏訪座長  それは佐藤先生も反対するお気持は全くありませんので、当然、今までのトーンもそ ういうトーンです。ただ、そのトーンだけですべてをやってしまうと問題だということ だったと思います。 ○藤川委員  そのときに、なぜ有期なのか。つまりそれに2つあって、有期という形態自体の説明 がつかない場合がある。なぜ有期という形態なのかという形態面と、なぜ有期だと仕事 にふさわしい処遇にならないのか、2つ分かれると思います。いまの議論をガイドライ ンに仮に反映させるとすれば、前者については契約自由の原則からしてもあまり言えな いのかなと思いますが、2つ目については、私は踏み込んだことを言ってもいい場合が あり得るのではないかと思って、最後の回で検討してもいいのかなと思います。  どういう形で言うかというと、要するに雇用形態を理由とする差別禁止、性差別でも なく年齢差別でもなく人種差別でもない。雇用形態プロパーでも差別禁止というのは、 結果的に言える範囲は狭いと思いますが、そういうところについてガイドラインで示せ たらいいかなということで、ここの部分は私の新たな問題提起だと思います。そういう ことを考えましたので、ご検討いただければと思います。 ○諏訪座長  処遇の均衡、その他に関しては、この中で触れているのですが、もう一歩踏み込んだ ご発言がありました。この点はいかがですか。 ○藤川委員  これはガイドラインに絶対載せろということではありませんので、研究会の検討で検 討いただければということですし、温当なところで、報告書でこういう問題もあると、 将来の規制との絡みもあって、こういうことについても検討すべきであろう、という表 現にとどめていただいても結構だと私は思います。 ○諏訪座長  この研究会の検討課題からすると、いまの雇用形態に基づく差別禁止となるとちょっ と広がっていくのです。ほかにいっぱいいろいろな形態があり得るわけですし、そうい うふうに考えると、そういう広い枠組みの中でいま現在、前に一歩出るためには何に対 応すべきかというトーンで報告書は書くけれども、ひとつの将来のあるべき姿としては、 そういうような議論もあるということは書けるだろうと思います。 ○佐藤委員  いまのに関連して、パート労働法の差別的禁止の対象になるパートがありますね。あ そこについて、処遇についてはみんな揃えなさいとなっています。もちろん有期の場合 でも、たぶんあれの対象になるのは形式的に有期だというだけですけど、差別的禁止と 言ったときに、たぶん雇用契約を無期にしろとは、どこにも書いていないですね。だか ら雇用契約のほうは従来どおりのままで、たぶん有期で更新していってもいいのだろう と思うのです。そこのところがパート労働法で、ある面で差別的禁止の対象になるとこ ろでも無期契約にしろというものにはなっていないわけです。そういうところを、こっ ちで多少書くかどうかということはあるかもしれない。そういう理解でいいのですか。 そうですよね。基本的には契約について一切、特にどうしろというのはないですよね。 ○佐々木短時間・在宅労働課長補佐 ただ実質的に無期なのかということをみるだけです。。 ○佐藤委員 そう見なしうるけど、そうなのだから契約形状を変えろということはいっていない。 ○佐々木短時間・在宅労働課長補佐 そうです。 ○佐藤委員  そうですね。私の感じでは、処遇の均衡で、雇用保障の程度の均衡みたいな枠組みに はなっていないというのが私の理解です。 ○諏訪座長 そこは処遇という概念を広くとるか、狭くとるかの問題もあります。 ○佐藤委員 そうですね。 ○諏訪座長  そこはまだ完全には詰められていないところなのだろうと思います。ここでパート法 そのものをやっているわけではありませんので、もう一度我々の本来の課題に戻ります。 報告書ではどういう枠組みの中で議論があるか。そして我々の問題を将来的に考えてい くと、どういう広がりがあるのかということは指摘させていただくことにして、さはさ りながら、ガイドラインや当面の政策提言ではなかなか限られたところがありますので、 そこは少し整理をして事務局で検討していただこうと思います。ではほかのお気づきの 点がありましたら、お願いします。 ○梅崎委員  今までのお話で、契約社員の労働者が正社員と比べた場合、どういう点に不満を持つ かというのは非常に多様なものだということがわかってきて、それで、賃金はどうだ、 育児制度はどうだ、キャリアパスはどうだ、雇用の安定性はどうだと考えていて、それ をどのぐらい均等にしていくかという議論もあると思います。先ほど、多元的な処遇な のであって、契約社員のほうが何をいちばん近づけたいかというのもばらばらだという ことだと思います。  この書き方でいくと、要するに1個1個で書いていくから、賃金なら賃金はどうだ、育 児はどうだ、キャリアパスはどうだということで、ガイドラインはこういうふうに書い ていかなければいけないのだと思いますが、別次元のところで、この処遇のところに書 いてある「苦情処理体制の整備」というのは、もうちょっと踏み込んで書けないか。つ まり賃金、福利厚生などについて処理機関を求めなさいという書き方を、このガイドラ インで言うと「労働条件改善のための事項」というところに書いてあるわけですが、こ れは別に労働条件というものに区切らなくても、何らかの形で契約社員の人が何らかの 不満というか、意見を持ったときに作れるものということだと思います。だから問題は もっと多様なわけだから、むしろ別章にして話合いの場を作りましょうというのは、ま ず可能なのかどうかということ。  もう1つは、この苦情処理体制というのが苦情処理委員会みたいなものであるならば、 あまり企業では機能していないケースが多いと思うので、もうちょっと踏み込んだ形で、 こういう制度にしたらどうだとか、例えばこれは報告書のほうで入れることなのかもし れませんが、正社員で組合が組織化されていて、非正規で組合が組織化されていないと きに、非正規の人はどういう声の上げ方があるのかみたいなこと。もしくは両方ない場 合にはどういう意見の言い方があるのかというのを、もう少し検討してもらえればいい かなと思っています。 ○諏訪座長  梅崎先生のいまのご指摘も非常に重要なご指摘ですし、多様化すればするほど事前に 一律にやるだけでなく、問題が出てきたときに事後的に適切な対応をしていくという体 制も重要になっていく。こうした国際的にもいま議論されている流れに沿ったご指摘だ ろうと思います。先生方から何か関係してご意見がありますか。  いまの梅崎先生のご意見では2点あると思いますが、1つは、話合いとか苦情処理とか 何でもいいのですが、そういう協議の場といったものは、この有期雇用契約に特有の問 題では必ずしもないとなると、先ほどの藤川先生のご指摘と同じで、ちょっと守備範囲 をかなり超えた広がりを持つ問題だということが1点です。  もう1つは、ガイドライン等でどのように書くかということとは別に、実際にうまく 機能するだろうかという問題があろうかと思います。従業員代表のいろいろな実態もな かなか機能しない部分があると、よく指摘されていますので、こうした点にどう対応し たらうまく機能するようになるのか、関係者がより満足するようになるか、ここら辺の ところもガイドラインに書くときの重要なバックグラウンドの実情というのか、あるい はアイデアの問題かなと思います。こういうのは佐藤先生が何でもよくご存じなので、 何かアイデアがありますか。 ○佐藤委員  ガイドラインのほうに、パート労働法は事業主の説明責任が入りましたね。それに対 応するのはないのですね。入れていない。どこにありますか。 ○佐々木短時間・在宅労働課長補佐 30頁の、ここのところの2行です。 ○佐藤委員 あるのですね。では、一応あるのですね。 ○佐々木短時間・在宅労働課長補佐 ちょっと小さいですけど。 ○佐藤委員  そうすると、多少、その説明責任は入っていることは入っているのですね。そういう 意味では苦情処理というか、一応、横並びになっているので多少カバーできる。 ○三上雇用開発課長  苦情処理とか、割とこれは事業主向けにいろいろ施策を与えているのですが、事業主 だけではなくて、当然、労働者の側の対策といったことも必要だろうなということも言 っています。このペーパーでは、例えばパンフレットなどを作るときに、事業主向けの パンフレットだけということでなく、いわゆる労働者も裏打ちという形で、いわゆるこ ういう有期だと、こういうことが事業主にとっても守っていただかないといけないとか、 そういう形で事業主だけでなくて、労働者に対しても十分ガイドラインというのは、裏 表の関係で何か作っていく必要があるだろうなと思います。そういった意味では、そう いうパンフレットであるとか苦情相談といった部分についても、対応していく必要があ るだろうなと考えています。 ○藤川委員  いまの梅崎先生のご指摘と平仄が合うかどうか自信がないのですが、梅崎先生のご指 摘を、この有期契約労働者の労働条件に関する集団的な声の反映という形で捉えるとす ると、過半数代表者などで有期契約労働者の、そういうカテゴリーだけで代表者を作れ ということは言いませんので、ガイドラインで現実化するとすれば、そういう声に配慮 しろという一文を入れるとかは、比較的無理がないと思います。 ○梅崎委員 その場合、章を分けることはできるのですか。 ○藤川委員 これは労働条件のところだから。 ○佐藤委員 あまり、そういうのはないのですね。 ○梅崎委員 (労使の声の反映を聞く)というので、労使関係というのを書いていいのか。 ○藤川委員 一応、就業規則の整備のところで、事務局の方が作成されたものは10頁です。 ○梅崎委員 過半数代表ですね。 ○佐藤委員 それは「有期労働者の過半数代表の意見を」と書いてある。 ○藤川委員  これは、私の言ったのは労使協定のほうで、こっちは就業規則のほうです。しかも10 頁の(2)のイのほうは、「パート労働法の解釈からしても無理はない」のでいいと思いま すけど、さらにもうちょっと梅崎先生は本格的な、ストレクティブな声を反映させると いう意図をお持ちであれば、梅崎先生としてはさらに別のチャプターになれば、より望 ましいということなのでしょうけど、別のチャプターにするかどうかについては私はノ ーアイデアなので、違うやり方で同じ目的を実現するということで言うと、労使協定の 過半数代表者が有期契約労働者の実情とか声に配慮するように努めること、みたいなガ イドラインを入れておけばいいのではないかという意見でした。 ○諏訪座長 問題は、ガイドラインの名宛人が事業主のときはちょっとずれている。 ○藤川委員 そうなのです。 ○諏訪座長  個々の労働者向けに裏側からの解説をしても、個々の人にとってもなかなかそれは、 説かないよりはいいだろうけどという、こういうピタッとぶつからない。 ○藤川委員 おっしゃるとおりです。これは先ほど課長が指摘されたところでもあると思います。 ○諏訪座長  これは、実はさらにいろいろ厄介な管轄問題、その他もありますから、ちょっと事務 局でご検討いただいて、どういう形で考えるか。ただ、問題点としては、広がっていけ ば他のいろいろな労働者形態と関わるのですが、関係するわけですので、どういうふう に書くかを事務局と私も一緒に原案を考えさせていただきます。 ○佐藤委員  ガイドラインの14頁の(7)ですが、ほかにもあったかもわかりませんけれども、有期で 正社員になった人が、また有期に戻れるというのは書く必要があるかどうか。つまり契 約更新でもいろいろなルールが整備されて、均衡・均等処遇ができたときはあり得ると 思いますが、現状でこれを書く必要がるかどうか。特に社員になってしまえば家庭的事 情については、例えばそちらのほうで配慮しろというのはいろいろな法律の中であるわ けです。育児について育児介護休業法の中であるわけだし、だからこれは書かないほう がいいのではないか。とりあえず一方向で。行ったり来たりというと、まだそれを言う 状況にない。特にパートだと多少短時間ということはあるのですが、これはフルフルで すよね。一応、なった後の家庭的事情は、そちらの法律のほうでいろいろできるのでは ないか。例えば転勤等などについても、社員としての中で配慮しというのがあるわけで す。(7)は落としてもいいのではないか。  もちろん、もう少し先を考えれば、有期であったとしてもキャリアとか処遇がきちっ となった状況であれば書き込むというのはあるかもしれませんが、現状では落としたほ うがいい。もう1カ所ぐらい本文のほうでしたか、どこかにあったような気がしますが、 読んでいて感じた点です。 ○諏訪座長  今日は佐藤先生から次々と根本的なご意見をいただいていますが、ほかの先生方、こ の点はいかがでしょうか。 ○奥田委員 私も、それはそのほうがいいと思います。 ○諏訪座長  奥田委員も、そのほうがいいのではないかというご意見ですが、ほかの方はいかがで すか。では、この点も考えていただくということにしたいと思います。ほかにいかがで しょうか。   ○奥田委員  2点ほど細かい点を含めてなのですが、1つは、先ほど佐藤先生のほうからもお話が出 た10頁の説明のところです。パート法に連動ということでここに書いていただいたと思 いますが、私個人の意見としては、この説明というのは先ほどから出てきた有期契約の 処遇の違いということに関しても、結構大きなところではないかと思うので、更にとい う形ではなくて、例えばイとウと同じような頭に何か付くとか、それぐらいで書いてあ ったほうがいいのではないかと思うのが1点です。  もう1つは、ではどういうふうに整理するのかと言われると、先ほどからあまり浮か ばないのですが、このガイドラインを使用者が見た場合に、法律に基づいて当然遵守し なければいけないことと、遵守が望ましいことが割と項目ごとに並んでいて、あまり法 律のことをご存じない使用者であれば、これは絶対守らなければいけないけど、これは 違うというのが、たぶん区別が付かないのではないかと思います。それを見たときに、 ガイドラインとしてわかるのかどうかというのが気になったのです。ただ、ではどうい うふうに並べるのかというのがちょっと思い浮かばないので、意見だけで申し訳ないで すけど。 ○本間雇用開発課長補佐  実際、パンフレットを事業主向けに作るわけです。そのときに例えば色分けして、必 ず守らなければいけない条項と、そうではない望ましいレベル、努めるべきレベルの努 力義務のところと、そういうのがわかるような配慮をするとか、そういう感じでもよろ しいかと思います。 ○奥田委員 そうですね、そういうのもあり得るかと思います。 ○藤川委員  その点に関連して、あとで申し上げようと思ったのですが、いまの奥田先生の話に関 連です。もちろん管轄の問題もあると思いますが、これまでパートについても派遣につ いてもいろいろなパンフレットとかを読んで、ちょっとわかりづらいなと思ったのは、 ある意味、これは労基法上、当然だろうというところが意外と事業主の方でわかってい ない方が多くて、情けないことに学者でもわかっていないことが多かったりするのです。  ですから、ガイドラインに入れろとは申し上げませんが、いまの奥田先生のご指摘の めりはりを付けるという目的の中の一手段として、別表でもパンフレットでもどこに付 けてもいいのですが、全法律の適用について、特に有期契約労働者で疑問の余地がある ところについて、洗いざらいリストにするというのはいかがですか。例えば年休とか、 年休については基準の立場からすれば、そんなのは当然だというところがたくさんある のですが、意外と労働相談を受けていると「えっ、先生、そうだったんですか」という ことが多いのです。「でも、そうですから」と言っても、「いやあ、書いてないから、 俺やらないよ」みたいなことがあって、そういうのがあるといいなと私は思っています。 ○諏訪座長 有期だと年休要らないみたいな。 ○藤川委員 そうですね。あと健康診断の問題などもあります。 ○諏訪座長  確かにね。その点は今度の報告書も、雇用管理の改善以前の部分もかなりたくさん書 いてあるわけです。非常に複雑な法的関係が入り組んでいる部分に、◎とか△とかいろ いろ記号が付いていたと思います。まだわかりやすくないのですが、少しでもわかりや すくするための工夫をして書くということで、事務局が非常に苦労して書いてくださっ たわけです。これはこれだけで足りるかというと、ほかにもいろいろあることは事実な のです。おっしゃるとおりです。  ただ、問題は、そうなると本来の我々のターゲットは、実はこれは基準局の研究会で はなくて雇用管理の改善に関するガイドラインで、少しでもよくする方向で皆で知恵を 集めましょう、そのためにはこんなところが論点です。そのためにはこんなよその例も ありますから、お宅も考慮してみたらいかがですか。それは単に契約労働者たちの不満 や不安を解消するだけでなくて、それは会社にとっても間違いなくモチベーションを上 げて、キャリアの質を高めて、生産性や効率を高めるのですから、両者にとって幸せに なりますよと、こういうことを言おうとしているのに、あれ守れ、これ守れと、それば かりが出てくるのは、本当にこれは確かに守らせなければいけないのですが、どういう ふうに作っていったらいいか。半ば報告書というよりは、ガイドラインのほうの問題か もしれません。 ○藤川委員  私もガイドラインで細かく書くのは賛成しないのです。先生がおっしゃったようなと ころが我々のメインの目的ですから。しかし、雇用の安定という大きな目的から考えた ときに、雇用管理改善以前の問題も踏まえておくほうが、みんなにとってハッピーだと 思います。ですから我々の研究会の趣旨にも合う、一応、土俵の中に入るだろうなと思 います。ただ、ガイドラインに事細かく載せるのではなくて、別表とかで付けて誤解を 解くFAQみたいな形ですかね。書き方はもちろん問題があって、これはやらないと119条 ですよというのでなくて、誤解を解く、そしてより良い雇用管理改善に向けての前提を クリアするためのリストみたいな、そういう形で何とかならないかなということで発言 させていただきました。 ○諏訪座長  ご趣旨を全然否定する意味合いではないのです。問題は、どういうふうにそれを全体 の報告書やガイドラインの中で活かしていったらいいか。 ○佐藤委員  確かにどういう事業主を想定するかです。つまり、いまみたいに基本的なことを守っ ていないようなところまで含めて底上げ的なことを考えるか、それとも、ある程度そう いうことはやれていて、さらに有期として働いている人にも納得してもらうようなもの を作ろうとして、だけどやり方がわからない事業主を想定するのかだと思います。ただ、 雇用管理改善という趣旨からすると、たぶん後者かもしれない。そうすると底上げ的な 部分は確かにあるけれども、逆に言えばそういう会社は社員もやっていない。つまり社 員についてもやれていない所がたくさんあるわけです。社員がちゃんとやっていて、パ ートや有期がひどいというのはあまりない。全体的にレベルが低いという所が結構多い ので、そこをどうするか。  藤川委員の言われることはよくわかるのですが、雇用管理改善というと、底上げ的な ところは本当に必要最小限にするというのは、やむを得ないかなと思います。底上げの ところは、普通の行政の中でやってもらうしかないという気がしないでもない。それは 考え方だと思います。上をあげると、少し良くしようと思っている事業主を相手にする。 そういうところでないと読んでくれない。下のほうは、ある程度取り締まると脅さない とやってくれないところがある。そこは別のルートでやるしかないという整理の仕方で す。 ○荒井審議官  なかなか面白い議論で、私たちも実はこれは議論していたのです。仮に本当に世の中 の多くの事業主が、フルタイムの有期の方については、基準法の例えば有休のところの 規定の適用がないと思っていたとすると、それはそれで大きな問題ですから、それは書 いてもおかしくはないかもしれませんし、きちんと議論することはあり得ると思います。 ただ、そこまで大きな問題になっていないということだとすると、また別な議論がある と思いますので、基準局でも状況を聞きながら、諏訪先生とも相談させていただきたい と思います。 ○黒澤労働基準局監督課監察官  せっかく参加していますので。おそらく全体の作りは、また事務局のほうでご検討、 ご相談だと思いますが、例えば年休だともちろん有期でも適用されますけれども、藤川 委員がおっしゃっている場合だと、例えば期間が更新されて実質6カ月という場合だと 思います。実はその手の話は、ここはパートと有期を混同しているという別のご指摘も あり得るかもしれませんが、パート法のパンフレットなどには比例付与の話の後に、実 はその話も書いているのです。本当はそれはパートの話ではないのですが、佐藤委員も おっしゃるように、実質において有期とかなり重なるものですから書いている。そうい う観点からいけば、もちろん、こちらにその話を書くというのは全然筋の悪い話ではな くて、あとはまさにどこまでめりはりを付けるかという、全体の中で事務局とご相談だ と思っていますので、一応、そのことだけ申し上げておきます。 ○諏訪座長  いまのところだけ整理しておきます。雇用管理の改善の第一歩は、ともかくコンプラ イアンス問題であり、その点において基本をちゃんと守りましょうというのがあって、 それの上でどんなふうにより良いものを作っていくのがいいか。いいベンチマークにな るものが次々と出てくれば、やがてそれが将来の立法とか、さまざまな他の施策にも有 益な寄与をしていくわけですから、それを少しでも促進するためにガイドラインを作り ましょうという、こういう方向であることは間違いないのだろうと思います。  その上で、とはいえ、全部ベタッとやりますと何の意味もない。何のために作ったの かとなりかねないので、ターゲットをどう想定しながら工夫していくか。下手に議論す るとガイドラインもいろいろなものを作りましょうとなりますと、これも私はよくない と思います。これは重要な議論ですのでさらにお願いしたいと思います。 ○藤川委員  いまの諏訪先生の話とも絡むのですが、ターゲット論ということで言いますと、佐藤 先生の設定された枠組みの中であっても、なお私の主張が正当化できると思うのは、今 回の「今後検討すべき課題」の6頁のところにある(2)(3)は、パートと違って中小 企業対象なのです。確かに中小企業の中でも十分にやっている所で、さらにより良い事 例というのも考え、そういうターゲット限定も考えられると思いますが、中小企業はど ちらかというと、ひょっとしたら先生のおっしゃるとおり正社員も含めてみんなよくな い状況かもしれません。実証はできませんけれども、何となく経験則的に有期について はよりトラブルが多いなと思います。今回、助成金や相談支援、既にやっているものも 含めて中小企業というターゲットがありますから、一応、平仄は合うのかなと思います。 ○諏訪座長  では、この部分も今日、結論を出すというわけにいきませんので、少し叩き台になる 案を事務局と相談して、次回、先生方にご意見をいただこうと思います。  だんだん時間が迫ってまいりましたので、今まで指摘されていないもの、細かなとこ ろでも結構ですから、お気づきの点がありましたらご指摘いただきたいと思います。 ○明治安田生命(古賀人事部次長)  私が見てきて、いろいろな業界があるということは、ここに来て勉強させていただき ましたけれども、特に佐藤先生もおっしゃったのですが、今後の「有期契約労働者によ りよい雇用管理に向けて」というところで、例えば(2)のところです。「有期労働契約者 の希望に応じた職務経験の機会を付与し」とか、望ましいことというふうにはなってい ますけれど、当社の場合をとりますと、有期契約労働者というのはそもそも事務という ことで入っています。その意味で入社1年目でも事務ですので、給与等の点については 配慮していますが、事務等をずっとやっていくということで採用していますから、「望 ましいこと」となっているのは違和感があるということです。  それが発生するのが例えば採用経路です。先ほどキャリアかジョブかということでし たが、職能資格給、職務給中心になると言っても、新入社員にとっては将来的に職能資 格的なもの、職務給的なものが拡大するということで採用していますから、そこの点を 考えると、有期契約労働者に、最初から職務経験の機会を付与してというのは、ちょっ と当社の場合は違和感があるという感じがしました。  (5)について、これは佐藤先生の言われるとおりで、具体的なイメージが、ご承知のと おり2と関連しますけれど、地域型だけだったら総合職とか総合職的な職務とか、また 自動車運転手だったら自動車運転手ということで実際にやっているわけです。これがな ぜ理由とされているかというのが、もう少し具体化しないとわからないという気がして います。(6)についても、トライアル期間ということで、何にトライアルさせるのかとい うのが非常にわかりにくい。当業界が特殊かもしれませんけれど、そのような印象を持 っています。以上、印象だけで恐縮ですけれども。 ○諏訪座長  ありがとうございます。まさにそういうことであり、多様な有期契約がある中で、多 様性にうまく対応しながら、より良いものを作っていきましょうというメッセージでな くて、多様であるのに、ある一律の方に流し込むようなものだと、それは事業主の側か らすると非常に違和感が残る。つまり要望であっても何かやらなければいけないのでは ないか。先ほど奥田委員もおっしゃっていましたが、何かやらなければいけないのでは ないかとされると、いかがなものなのかというご趣旨だったろうと思います。ほかの業 界の方々、いろいろな方々がそれぞれありますので、企業規模がありますし業種がある、 職種もいろいろあるというふうに考えると、そこら辺は書き方の問題であろうかとも思 いますから、工夫をお願いしたいと思います。ほかに、いかがでしょうか。 ○奥田委員  もう1点、表現の問題ですが、報告書の4頁の(3)で下線を引いていなければ気にならな かったのですけど、太字で下線があるので少し気になったのです。正社員の転換を希望 するという人と、正社員転換はいろいろ条件があるので希望しないけれど、待遇はきち っと上げてほしい人ということだと思いますが、表現として、私は有期のままでいたい と思っている人がいるとはあまり思えないのです。思えないというのは、期間を外して もらって困ると思う人がいるわけではなくて、正社員に転換するとなるといろいろ条件 が入ってくるから、正社員にはなりたくない。だから結果として有期のままでいざるを 得ないのですが、でも有期でいることを希望している労働者というのは、よほど期間を 限定することで給料が高いということでないと、イメージとして考えられないのです。  例えばここであれば、有期のままでというふうに言わなくても、正社員転換を希望す る人と、転換は希望しないけれども待遇は上げてほしい人、というふうに表現していた だいたほうがピッタリくるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○諏訪座長  ここは前から指摘があるわけですが、契約社員と言っている中には2つあって、1つは 期間の限定が付くという側面と、もう1つは職務限定型と、処遇限定型あるいはキャリ ア限定型と、この2種類があって、先ほどの古賀さんのご意見もここにかかっていまし た。そのどちら側のほうに力点を置くかによって、すごく違ってくるのです。有期雇用 の契約と言うと両方が入っていますが、いまの奥田委員のご指摘は、期間限定のメリッ トというのは、むしろ事業主の側にあって、労働者の側にはそれほどない。しかしなが らジョブ限定とか何かは両者にとってそれぞれメリットがあり得る。そこら辺のところ のご指摘だったのだろうと思います。そこも工夫していただくことにします。ほかにい かがでしょうか。 ○藤川委員  3点ほど検討していただきたいと思うのですが、報告書で書くかガイドラインで書く か、それとも書かないか、または別の形かはさておいて。1点目は、我々の研究会のタ ーゲットとして、7頁の対象者という意味でのターゲットではなく別の角度からのター ゲットとして、どちらかというと若年者系というか、若年とまでは言えませんけど、少 なくとも高齢者雇用での有期雇用ではなかったと思うのです。とするならば、めりはり を付ける意味で、私も問題提起した割にはノーアイデアなのですけれども、報告書かガ イドラインか、どういうところに入れるかはさておき、そういう我々が主に想定してい るカテゴリーの有期契約労働者の人たちについて、雇用管理改善とか雇用の安定を図る にはどうしたらいいのかという言及が要るのではないかと思いますが、いかがでしょう かということです。  ノーアイデアと言いながら、あえて自分の考え方を言うと、特に若年ということにな ると30代も若年と言えば若年ですけど、20代の方の有期労働者ということにすると、大 学などとの連携が重要であるとか、そういう提言が可能かなと思います。  2つ目ですが、先ほどの佐藤先生の2点目の指摘に絡んで、私もこういう分析をしてく ださいというお願いを申し上げた点と絡みますけれども、突き詰めると、どうして企業 というのは有期にしてしまうのか。有期にせざるを得ない、あるいは有期にするほうが いいという場合はさておき、そうでない場合までどうして有期にこだわるのかというと、 私の考えでは人件費というところが重要なのだろうと思います。すなわち、仮にこれを 正社員にしても人件費が上がるから、トータルで上がるし下げられないから無理だとい うこと。こういう考え方が妥当かどうかは検証の余地がありますが、もし人件費という ことであれば、そして先ほど佐藤先生もおっしゃったように、合理的だけど変更ができ ないことを書けと言っても、そんな両立は普通あり得ないわけです。例えば、どうして も最終的な障害が人件費であれば、そしてどうしても正社員の人件費も下げざるを得な いとなるのであれば、それに対するサポート的な措置が要るのではないか。激変緩和措 置的な意味合いも含め、その場合に助成金というのもあり得ると思います。  何が言いたいかというと、佐藤先生の指摘された2点目に関しての指摘で恐縮ですが、 多くの場合、何が致命的に有期契約労働者を正しく扱う阻害要因になっているのか。あ るいは場合によっては正社員にすることの阻害要因となっているかを、めりはりを付け て指摘していただければありがたいなと思います。  3点目ですが、ガイドラインのところのこれも表現で、先ほどの奥田先生のご指摘と 連続性があるかもしれませんが、例えば、基本的に各法律や指針の当てはめということ でよろしいと思うのです。しかも全部について当てはめる必要はないと私も個人的には 思います。さりながら、例えば10頁のところで1つの例を言うと、(3)のアで「就業の実 態に応じて均衡を考慮する」とありますけど、これは法律をそのまま書いているわけで、 それが悪いとは言いません。法律をそのまま書いていいところもあるのですが、就業の 実態について有期契約労働者に当てはめた表現を、もうちょっと増やしてもいいのでは ないか。「有期契約労働者の就業の実態に応じて」というのが、いちばん情けない対応 方法ですけれども、もうちょっとこれ1行ぐらい踏まえて、「応じて」というけど、ど ういうことに気をつければいいのかについて当てはめるときに、表現を考えていただけ ればと思います。事務局の方は大変だと思いますが、私の3点の指摘は以上です。 ○諏訪座長  ありがとうございました。ほかに何かございますか。よろしいですか。それでは時間 も参りましたので、議題1の報告書及びガイドラインの案等に関する議論は、今日はこ のあたりにさせていただきます。あと議題の2つ目にその他というのが挙がっています が、何かございますか。委員の先生方から何かありますか。最後の宿題を出す機会です ので、もし何かありましたら、よろしいですか。では最後になりますが、次回のスケジ ュール等について事務局からご説明をお願いします。 ○本間雇用開発課長補佐  次回は第5回ということで最終回という形になりますが、7月17日の木曜日、午前10 時から12時の2時間で予定しています。場所はこの第1会議室です。よろしくお願いし ます。 ○諏訪座長  短期間に突っ走ることで皆様に大変ご無理申し上げましたが、次回、7月17日をもっ て報告書を何とかまとめたいと思っていますので、お忙しい中、各先生には是非、ご協 力のほどお願いしたいと思います。また今日もずいぶんたくさん論点のご指摘を、ある いはアイデアをいただきましたので、これらを踏まえて事務局では鋭意、次回に向けて ご検討いただきたいと思います。ほかに何かございませんか。なければ本日は以上をも ちまして研究会を終了させていただきます。ありがとうございました。 照会先   厚生労働省職業安定局雇用開発課雇用管理係    TEL03(5253)1111(内線5805)