08/06/13 第7回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会議事録 第7回労働者派遣制度の在り方に関する研究会 1 日時 平成20年6月13日(金)13:30〜 2 場所 厚生労働省共用第8会議室 3 出席者     委員 阿部委員、有田委員、鎌田委員、橋本委員、山川委員   事務局 太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、       鈴木需給調整事業課長、田中派遣・請負労働企画官、       竹野需給調整事業課長補佐、飯郷需給調整事業課需給調整係長、       黒澤労働基準局監督課長補佐、矢野安全衛生部計画課長補佐、       河野労災補償部労災管理課長補佐 4 議題  均衡処遇の考え方、派遣元と派遣先の役割分担 ○座長(鎌田)   阿部委員がまだお見えでありませんが、ただいまから、第7回労働者派遣制度の在り 方に関する研究会を始めます。本日は労働基準局からもご出席いただいていますので、 ご紹介いたします。監督課課長補佐の黒澤さんです。安全衛生部計画課課長補佐の矢野 さんです。労災補償部労災管理課課長補佐の河野さんです。よろしくお願いします。  前回は、「派遣労働者の雇用の安定について」の第2回目として、期間制限、雇用契 約申込義務等等を中心にご議論いただきました。それでは本日の議題に入りたいと思い ます。本日は、均等・均衡処遇の考え方、派遣元と派遣先の役割分担の在り方について ご議論いただきます。なお、いわゆる「マージン」規制についても、以前本研究会で行 ったヒアリングで複数の関係者から論点として提起されたことを踏まえ、本日の議題に 加えたいと思います。本日の進め方ですが、まず前半で、均等・均衡処遇、いわゆる「 マージン」規制、教育訓練といった、派遣労働者の処遇にかかわる問題についてご議論 いただき、それから後半で、派遣元・派遣先の役割分担の在り方についてご議論いただ きたいと思います。  また、前回の研究会の議題のうち、派遣先企業における社員登用制度について、どの ように考えるか、派遣労働者のキャリアパス(常用雇用への道筋等)について、どのよ うに考えるか、の2点については、前回は時間の関係でご意見をいただいていませんで した。これらは、本日の議題である教育訓練とも関連があると考えられますので、併せ てご議論いただければと思います。それでは事務局から、前半部分についてのご説明を お願いします。 ○竹野補佐   本日は資料が4点あります。資料1は均等・均衡処遇の考え方、派遣先・派遣元の役割 分担の在り方についてということで、論点をお付けしています。論点は4点あって、4つ 目については後半の部分ということですから、前半部分の1から3について読み上げさせ ていただきます。  1は、派遣労働者の均等・均衡処遇について、「積極的に研究・検討すべき」との意 見があるが、特に、(1)パート労働者に係る均衡処遇と異なり、派遣労働者と派遣先の労 働者では雇用主が異なっていること、(2)比較対象労働者をどのように定めるか、(3)均等 ・均衡の対象となる処遇の範囲はどこまでかということを含め、どのように考えるか。  また、均等・均衡処遇のほかに、派遣労働者の働き方にふさわしい処遇の実現を図る ため、どのような対応が考えられるか。  2は、派遣契約単価と労働者に支払われる賃金の差(いわゆる「マージン」)につい て規制すべきとの意見があるが、どのように考えるか。今般の派遣元指針の改正により 、派遣元事業主は、派遣労働者及び派遣先が良質な派遣元事業主を適切に選択できるよ う、派遣料金の額や派遣労働者の賃金の額に関する情報を公開することとしているが、 これに加え、どのような対応が考えられるか。  3は、派遣労働者の教育訓練について、どのような内容が考えられるか。また、派遣 元・派遣先はそれぞれどのような責任を負うことが適当か。さらに、積極的に教育訓練 を行う派遣元・派遣先が評価される仕組みが考えられないか。以上です。  資料2に移ります。論点に係る公労使意見及びヒアリング時の発言ということで、前 回もこのような形で論点に即して公労使意見、それからヒアリング時の発言をお付けし ていますが、同じようなものです。かいつまんでご紹介します。資料2の1頁目、1点目 の均等・均衡処遇について労働者代表の意見として、欧州では均等・均衡は当たり前で あり、派遣労働者の賃金を含めた均等・均衡対遇について積極的に研究・検討すべき、 という意見があります。使用者代表からは、均等・均衡は、どこを基準にどうやって比 べる必要があるのか、よくわからない、という意見があります。ヒアリンク時の発言で すが、1点目に派遣協会から、外見上同じに見えても、責任の重さや成果の問われ方に 違いがあれば、一定の差はあるものと考える。JSGUからは、後段の部分ですが、派遣労 働者の職業能力の適切な評価をすべきではないか。職業能力や仕事に見合った公正な賃 金、派遣料金の確保が必要、といった意見が出ています。 資料2の2頁目、論点2のマ ージン規制についてですが、労働者代表意見として、派遣契約単価と労働者に支払われ る賃金の差(マージン)について規制をかけるべきである、という意見があります。使 用者代表意見として、いい人材であれば派遣料金が高くとも導入したい、ということも あり、上限規制は不適当、という意見が出ています。ヒアリング時の発言で、人材派遣 協会からは1ポツ目のいちばん下のところですが、取得率を人為的に定めることには賛 成できない、という意見でした。派遣ユニオンからは、適正なマージンを取っている会 社もあるが、そうでない会社もあるということで、例えば3割などのマージン率の上限 を政令で定めるような法律上の規制をしていくべき、という意見が出ています。  資料2の3頁目、論点3の教育訓練についてですが、労働者代表意見として1つ目のポツ です。派遣労働者の教育訓練の責任は派遣元にある。派遣元で一人前になる訓練をして、 どんな企業の求めにも応じて派遣できてこそ、人材ビジネスと呼べる、という意見があ ります。4つ目のポツで、派遣労働者の能力開発の責任を誰の責任で行うのか、しっか り位置付ける必要があるのではないか、という意見があります。使用者代表意見ですが、 3つ目のポツです。派遣先が派遣労働者に求める能力が多様化しており、派遣元で体系 的な訓練を行うことは難しい。また、派遣労働者についても、複数の派遣元に登録して いるケースが多いため、どのように訓練するのが合理的であるか、検討する必要がある。 2つ目のポツで、派遣元がお金をかけて教育をしっかりやった人が外に出てしまうこと もあり、派遣元が安心して教育ができる体制作りを検討しても良いのではないか、など の意見が出ています。ヒアリング時の発言として、派遣協会からですが、能力開発につ いては、エントリーレベルの方々が多く、ビジネスマナーやコミュニケーションといっ た基本的な研修で派遣を受け入れてもらえる仕事もあり、そのような形でキャリア形成 を図ることも可能。スタッフのキャリア形成を意識したマッチンクを実現することも大 事、という意見がありました。JSGUからは、派遣先の社員と同等の教育訓練機会を派遣 先が確保すること、派遣元が行う教育訓練に派遣労働者が参加できるように、派遣先が 配慮することが必要、といった発言がありました。資料2の説明は以上です。  資料3です。1頁目ですが、派遣労働者の均衡処遇に係る指針の規定の概要ということ で、現行の指針の内容をまとめたものを付けています。派遣元事業主、派遣先とそれぞ れ分けていますが、福利厚生、教育訓練、能力開発について、派遣元事業主については 派遣先の同種の労働者の実情を把握し、均衡に配慮した措置を講ずることということで 規定されています。続いて派遣先のほうですが、福利厚生については派遣元が行う派遣 先の同種の労働者の実情把握に協力すること。診療所、給食施設等の施設の利用に関す る便宜の供与を図るように努めることということがあります。教育訓練、能力開発に係 る派遣先の措置すべき内容ですが、派遣元が行う教育訓練や派遣労働者の自主的な能力 開発に可能な限り協力し、必要に応じた教育訓練に係る便宜を図ることとしています。 賃金等については基本的に定めがないということです。  資料3の2頁目、3頁目は派遣元・派遣先それぞれに分けて、法律の規定、指針の規定 を抜粋しています。資料3の4頁に移ります。パート労働者に係る均衡のとれた待遇の確 保の促進についてというタイトルで、平成19年のパート法の改正により均衡待遇という ことが盛り込まれました。この表の見方ですが、いちばん下に注釈があり、◎のところ についてはパートタイム労働者であることによる差別的取扱いの禁止、□については同 一の方法で決定する努力義務、○が実施義務・配慮義務、△が職務の内容、成果、意欲、 能力、経験等を勘案する努力義務ということで、それぞれ段階が設けられているという ことです。  (1)の通常の労働者、いわゆる正社員がいる場合には正社員ということになりますが、 通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者については、差別的取扱いの禁止という ことで各項目が◎になっています。それより下の通常の労働者と職務の内容と人材活用 の仕組みや運用などが同じパートタイム労働者であるとか、職務の内容だけが同じパー トタイム労働者であるといった場合には、それぞれ中身によって講ずべき措置が異なる ことになっています。  賃金については、職務関連賃金として基本給等について必要な配慮を図るということ があります。それ以外の退職手当等については差別的取扱いの禁止はありますが、それ 以外のところはないという形です。教育訓練についても、職務遂行に必要な能力を付与 するもの、それ以外のキャリアアップのための訓練などということで分けられています。 福利厚生についても同様に給食施設、休憩室等、派遣先で実際に利用するものについて は均衡を図るべきということですが、それ以外の慶弔休暇、社宅の貸与等については差 別的取扱いの禁止のみということです。  資料3の5頁に移ります。平成19年改正パート法の派遣労働者への適用についてという ことで、パート法は短時間労働者に対する措置ですけれども、派遣労働者にも適用され るということで、どのように適用されるかという考え方を整理しています。上の囲みで すが、派遣労働者は派遣元で雇用されていることから、パート法適用に当たっての「事 業主」は派遣元となります。したがって、派遣先で雇用されている正社員との均衡待遇 を図ることにはならない。  具体的には真ん中の図の下の部分の二重囲いになっているところですが、派遣労働者 で短時間労働者の方がいると仮定した場合に、それは派遣先の正社員との均衡というこ とではなく、同じ派遣元に雇われているフルタイムの派遣労働者と比較する形になりま す。資料3の6頁は参照条文です。  資料3の7頁ですが、これは諸外国の均等待遇の規定に係る資料です。EU指令案及びド イツ・フランスの均等待遇に係る規定の概要ということで付けています。1点目にEU指 令案ということで、いまEUの方でも議論の最中と聞いていますが、2002年11月段階のも のの案で、こういった形になっています。派遣労働者の基本的雇用・労働条件は、少な くとも、同一の業務に従事するために派遣先に直接雇用されたならば適用されるものと しなければならない、ということで、派遣先で直接雇われた場合と同じように定めるこ とが基本です。ただし例外があって、常用雇用の派遣労働者の賃金については例外を設 けることができる。また労使で協約を結んだ場合には、適用除外することができるとい った例外規定があります。  ドイツの制度についてですが、派遣先の労働者に適用される労働条件を下回る労働条 件を定める場合には許可がなされない。そのような定めをした場合には無効という決ま りがあります。これも例外があって、常用雇用の派遣労働者については適用されないし、 労働協約で異なる定めをしている場合には適用されないということがあります。  フランスについても同様に、派遣労働者の報酬は派遣先の労働者の報酬を下回っては ならないということがあり、EU指令案やドイツのように例外規定はないのですが、フラ ンスはもともと登録型のみのものとなっていて、常用型がないということです。そうい う違いがあります。  資料3の8頁は派遣労働者の年収です。これは第1回研究会にお出ししたものですので 説明は省略させていただきます。9頁についても賃金の差についてということで省略さ せていただきます。これらは論点の2つ目のマージン規制に係る資料として付けていま す。  資料3の10頁ですが、これは第3回の研究会で人材派遣協会からヒアリングした際に提 出いただいた資料をお付けしています。「派遣事業主は過剰な利益を得ているわけでは ありません」ということで、派遣料金の内訳としてスタッフ賃金が70%、社会保険料、 有給休暇自社担当分、販売管理費用といったものを引いて、営業利益が3.2%であると いう説明をいただいています。  資料3の11頁です。論点のほうに記載がありましたけれども、派遣元指針で情報の公 開をするということで、これは派遣元指針の改正により平成20年4月1日から適用されて いるものです。これはパンフレットに記載してあるものを付けていますが、右側をご覧 いただくと派遣料金の額、派遣労働者の賃金の額ということで、業種別に分けて1日8時 間当たりの額の平均額を出しています。賃金についても1日8時間当たりの平均額という ことで出しています。こういった情報を公開することを決めています。  資料3の12頁以降については、派遣労働者の教育訓練、福利厚生、苦情処理、中途契 約の解除について、これは過去に審議会の部会でも参考資料としてお付けしたものです が、それを付けています。説明は省略させていただきます。前半部分についての説明は 以上です。   ○座長   ありがとうございます。前半部分についてご討議をお願いしたいと思います。論点1 の均等・均衡処遇についてと、いわゆる「マージン」規制と2つの問題が出ています。 これも皆さんとご議論する意味でも、少し詳しい内容に立ち入って確認しておきたいと 思いますが、均等・均衡処遇についてはヨーロッパの制度などが、特に労働者代表意見 として積極的にこれを研究、検討すべきであるという主張がありました。そこで先ほど の資料の7頁に、EU指令案及びドイツ・フランスの均等待遇に係る規定の概要というこ とで説明がありました。実態というのはよくわからないのですが、橋本先生、ドイツで 労働協約で異なる定めをしている場合は適用されないとなっていますね。つまり労働協 約で、派遣会社と派遣労働者が属する労働組合で協約を結べば、いわゆる均等待遇原則 は適用除外になるということですね。どのぐらいのパーセントというか広がりがあるの でしょうか。もしおわかりであれば教えていただけますか。   ○橋本委員   この均等待遇義務というのが入ったのが、2003年から施行されている労働者派遣法な のですけれども、その但し書で、労働協約で異なる定めをしている場合には適用されな いという規定が入ったわけです。その後、この法律ができてから労働者派遣業における 労働協約締結に向けた取り組みが急速に進んだそうで、文献を見つけたところ、2004年 6月30日時点で、協約の締結主体は、いま鎌田先生がおっしゃったように、派遣労働者 の属している各産業別の労働組合が全部入った産業別組合の連合と、使用者団体、これ は人材派遣会社の使用者団体が2種類あるようですが、その使用者団体と産業別組合が 連合で締結した協約ができました。協約というのは原則として組合員にしか及ばないの ですが、組合員でない派遣労働者についても、その労働協約によるという個別労働契約 における援用規定によって約90%の派遣労働者に、この協約が適用されているという数 字を見ることができました。ほとんどこの労働協約が適用されてしまって、そこに派遣 労働者の賃金表もできていて1等級から9等級までありますが、1等級、2等級ぐらいが職 業訓練をしたことのない不熟練労働者ということです。最後の9等級は大学卒業相当程 度ということですが、独自の賃金表ができてそれが適用されているようです。   ○座長   そうしますと、一応、ドイツでは均等待遇の規定が導入されたわけですが、10%とい った限られた範囲でこの規定が適用されて、実態的には、派遣労働者のほとんどは人材 会社との間の協約に従ってやっているということですね。   ○橋本委員   はい。   ○座長   わかりました。本来であれば例外というのは少ないはずなのですが、例外が通常の状 態になっているということなのですね。   ○橋本委員   はい。   ○座長   私がよくわからないのは、かつては労働組合は派遣会社との協約をしないということ で、すごく反発していた時期がありますね。それが、この均等待遇の規定が導入されて からだと思いますが、急速に組織化というか協約を結ぶという方向にいったのではない かと思います。その辺のところは組合としての考え方として、つまり派遣先の労働者と の均等待遇というのは、組合の立場からすれば認めるということもあるかもしれないで すね、全くの想像としてはですけれども。ところが、実態はそうならずに派遣会社との 間の協約を結んで、いわばそのもとで労働条件を規制していくという方向に、組合とし ても流れていったということですね。その辺の背景で何かご存じのようなことがありま すか。   ○橋本委員   特にわからないですけれども、実際に組合員になっている派遣労働者は少ないので、 組織化を進めているという記事は読んだことがあります。   ○座長   なるほど。   ○橋本委員   ドイツが最初ではなくて、オランダがモデルであったということも文献に書いてあり ました。   ○有田委員   ひとつ伺いたいのですが、その協約の締結主体ですけれども、派遣労働者の産別組合 と相手方は使用者団体なのですか。それとも個別の派遣会社なのでしょうか。   ○橋本委員   派遣会社の入っている使用者団体です。   ○有田委員   産別の最低基準みたいなものが、協約で設定されているということになるわけですね 。これはあくまで例外なのでしょうけれども、原則の方でいくと、派遣先の労働者との 均等待遇ということになるわけですが、そうすると規定上、例えば派遣会社に対して、 今回派遣を受ける労働者と同種の労働者についての賃金の内容や決定方式等についての 開示義務みたいなものが課されているのでしょうか。   ○橋本委員   条文には、そのような義務は書いていなかったです。   ○座長   今のは外国の例ですが、日本法の中で均等あるいは均衡処遇ということを考えた場合 に、理念として、同一企業でない別会社の従業員同士の均等・均衡をすることをどう考 えるか、これはある意味で基本的な問題です。それと、これは多少技術論ということも ありますけれども、例えば派遣先の従業員と派遣労働者の均衡処遇を考えていった場合 に、派遣先の誰を比較対象にして、そしてどの範囲まで考えるのか。賃金も退職金とか 手当などいろいろあると思います。そういったことも含めて、もちろん教育訓練とかい ろいろあると思いますが、どの範囲の均衡を図るのかという問題があるように思います。 とりあえず基本的な考え方というのか、パートの場合は、同一企業の中での通常の労働 者とパート労働者との均衡ということだと思います。 そうすると、派遣労働者の均衡 処遇ということを考える場合には、派遣元の通常の労働者との均衡という考え方もあり ます。それから派遣先の労働者との均衡ということもあります。そうした場合は2つが 考えられるのですが、通常、私などの理解ですと、この均衡処遇といった場合、派遣先 の従業員との均衡と主張されているように思うのですが、労働側の先ほど紹介していた だいた意見の中で、その辺のところはどうなのでしょうか。つまり労働側の意見として、 派遣元の従業員との均衡ということも含んで主張されているのでしょうか。あるいは基 本的に派遣先を前提に均衡処遇ということを言われているのか。もしわかれば事務局の 方で、いかがですか。   ○田中企画官   特に具体的には書いてありませんけれども、ヒアリングの時の発言の中では、派遣先 と同じような仕事をしている正社員との均等待遇をどうするかという意見もありました し、派遣先と同じ仕事をしている派遣先の正社員の方との均衡ということを念頭におい て、ご発言なりご意見が出ているものと考えています。   ○座長   そうしますと、先ほどご紹介いただいた欧州では均等・均等は当たり前で、派遣労働 者の賃金を含めた均等・均衡というのは、まさにヨーロッパ型と言うのでしょうか、ヨ ーロッパ型ははっきり派遣先ですから、派遣先ということを想定して主張されていると いうことなのですかね。   ○田中企画官   ここの「全体の欧州では均等・均衡は当たり前であり」というところは、派遣労働者 が必ずしも派遣先との均等・均衡ということに限らず、一般的な労働者としての均等・ 均衡ということも入っているのではないかとは思いますが、後半の部分については、派 遣労働者と派遣先の正社員との均等・均衡というのは実現されるべきだという主張だと 思います。   ○座長   この「欧州では」というのは必ずしも派遣先でなくて、派遣元も含めているというこ と。 ○田中企画官   要は全体として均等・均衡という考え方があって、その中で派遣労働者と派遣先との 均等についても、こういうふうな法律なり何なりの形で適用されているので、そこの部 分も当たり前だということで、ここは2つの意味が含まれているのではないかと思いま す。 ○座長   なるほど、わかりました。ベルギーに派遣会社の国際組織がありますね。そこに取材 に行ったことがあるのです。私の記憶ですけど、そこでの議論の中で派遣元との均衡と いうのはわかるけど、派遣先ということについてその団体としては非常に大きな問題で、 これが今後、欧州の中でどうなるかということが論点なのだと言っていたものですから、 論点という意味では派遣先の従業員との均衡ということが問題で、必ずしも派遣元との 均衡が大きな争点になっていたわけではないような気がしていたのです。もう一度整理 しますが、派遣労働者と派遣先の従業員との間で均等ということを論ずるとすれば、ど ういった観点からこの問題を考えたらいいのかということになると思います。   ○有田委員   均衡とか均等ということですから、同一価値労働・同一賃金を超えているわけです。 派遣元と派遣先でやっている仕事が同じだから同じ賃金をというのは、同一価値労働・ 同一賃金ということから出てきやすいのかもしれないですが、それを超える部分の均等 ということになると、また違うことを考えないといけないのかなと思います。先ほど言 われた、同じ派遣会社で派遣労働者として働いているということであると、使用者が同 じで同じような仕事をしているのだから同じように扱えというのは、先ほどのパートの 場合と同じに考えればいいということで、割と考えやすいのでしょう。  全く違うのは、ちゃんとした請負で同一構内で同じような仕事をやっている、でも請 負なので指揮命令も受けていないというところで、本工の人と同じ仕事をしているから 均等待遇となるかというと、おそらくそこは難しいと思うのです。ただ、派遣の場合だ と、指揮命令を派遣先がしているというところが加わるので、そこから均等に扱えとい うことが規範的に出てくると考えられるかというのが、違いとしてはあるのかなと思い ます。   ○座長   今の先生のご意見ですと、派遣先が指揮命令しているということが、均等・均衡を考 える場合の1つの根拠になるのではないかと。   ○有田委員   例えば就労場所が同一構内であるからフリー施設として食堂の利用とか何とかという ことが、そこから直ちには出てきにくいだろうけれども、しかし、指揮命令を行使して いるという法的な関係はそこにあるわけですから、そこから何らか出てくるということ は考えられるのではないかと思います。  それと、今は派遣先との関係での均等待遇の問題ですが、別の派遣先に行っていて、 でも仕事内容は同じ仕事をしている人で、例えば派遣先の企業規模などの違いによって 派遣料金に違いがあり、それが派遣労働者に支払われる賃金に反映している場合に、こ こで両者の間で均等にということで、同一額の賃金にすると考えられるかというのも、 1つの論点となるのではないでしょうか。   ○座長   もう一度お願いします。    ○有田委員   例えばファイリングならファイリングの仕事で、同じ派遣会社からA社とB社という派 遣先の違う所に行っていて、でも仕事は全く同じことをしている時に、例えばA社の方 が非常に規模が大きいので高い派遣料金が取れてその分が賃金に反映されて派遣労働者 に支払われ、B社に派遣されている人よりも高い賃金が支払われている。これを、同じ 仕事をしている人なのだから、均等待遇で同じ賃金額というふうになるのかどうなのか。   ○座長   つまり同じ派遣会社の派遣労働者間の問題ですね。   ○有田委員   はい、そうです。そういう問題についてはどう考えるのか。均等待遇というときに、 派遣先に限定した立法政策として考えるということならいいですが、そうでなくて全般 的に均等待遇という言い方となると、今言ったように、同じ派遣会社で派遣されて派遣 先が違う、でもやっている仕事が同じという場合の扱いをどうするのかというのが、新 しい問題として出てきはしないかということです。   ○座長   こういうふうに理解しています。つまりA社という派遣会社から、A社の従業員である 派遣労働者をB社とC社に送った。B社とC社で同じ職務ですが、比較する労働者の賃金が 違う。そうするとA社の従業員である派遣労働者が、たまたまB社に行ったりC社に行っ たことによって結果的に差が出てくることになるわけです。それをどう考えるかという 問題ですね。   ○有田委員   例えば、恣意的に特定の人に対して優遇して規模の大きい所にばかり派遣し、そうで ない人については賃金の低い所に派遣する。同じファイリングの仕事をしているけれど も、そういう派遣をすることが許されるのかどうか。そういうことが出てこないかとい うことです。均等待遇とか均衡処遇というときには、両面を考える必要があるのか。ヨ ーロッパのように派遣先との間だけで考えればいいと見るのかということです。   ○座長   均等・均衡処遇というふうに考えると、法律をやっている人間は何となく理念で考え がちですが、経済を研究されている方は、1つの企業の中の均等・均衡ということと企 業横断的と言うのか、1つの企業を超えて均等・均衡ということを考える場合に、社会 的に賃金が一定の職種別の賃金になっていて、一定の相場というのができていればまだ しも、そういうものが仮にない所で、企業横断的な均等待遇ということをどう考えたら いいのか。阿部先生、何かご意見はありますか。   ○阿部委員   均等待遇というのが、あるいは均等処遇というのが、いわゆる正社員の間で企業をま たにかけて行われているかというと、たぶん行われていないはずなのです。というのも、 企業の報酬なり処遇なりというのは、その企業の売上げとか利益率といったものとも関 係してきます。どの企業も利益率や売上高が一緒かといったら、そんなことはないわけ です。ですから、そもそもそういう考え方があるのかというと、ないのではないかと思 います。あったら私の勉強不足ですけれども。  今の問題というのは、有田先生がおっしゃったことが私もそうだろうなと思いますし、 さらに付け加えて言えば、派遣労働者の方々というのが主に、いわゆる外部労働市場で 賃金が決定されるような仕事をなさっていて、正社員というのは外部労働市場に近いと ころからどんどん内部労働市場に入っていく。そういう内部労働市場という観点から処 遇を考えているのではないかと思います。  その外部労働市場と内部労働市場という観点から考えると、派遣労働者の人を派遣先 の社員と比較するというのが、一体どういうことなのかというのが私にはすぐにはピン とこない。だから内部労働市場の位置付けであれば均等処遇はあるのだろうなと思いま すが、内部労働市場にいないわけです。さらに派遣労働者の場合というのは、一時的な 仕事を担っていることが多いわけですから、そこの位置付けを内部労働市場にいる人た ちと一緒にするということは、ちょっと難しいのではないかというふうに思います。  ただ、処遇というのは例えば賃金決定のことを考えれば、賃金決定の要素というのは いろいろあると思います。例えば職務というのも賃金決定要素の1つですし、年齢や勤 続年数、その他いろいろあると思います。職務とか業務、仕事と言ったところで、それ こそ先ほど有田先生が言われた同一価値労働・同一賃金というところであれば、私はそ れはあってもいいと思います。ただ、内部労働市場にいる人間は、その上にいろいろな ものが積み上がっているわけですから、そもそも「均等処遇」と法律に書いたからとい って、それが実行可能かというと、私は実行可能ではないのではないかと思っています。   ○有田委員   今の点に関わるのかなと思いますが、先ほどのドイツの例で、ドイツはそういう意味 で産業レベルでの賃金を外部市場として設定するわけです。おそらく派遣先との間での 均等待遇と言っても、ドイツだって企業規模によって全然違うでしょうから、正社員に ついても、産別の賃金の上に各企業の業績に応じた上乗せがありますから、おそらくそ の比較が実際には難しいのでしょう。だから派遣労働者の組合が産別基準を設定するこ とにより、派遣労働者として働く場合の妥当な賃金水準の設定を集団的な労使自治に委 ねる仕組みとして、ある種の便法としてそういう例外扱いですけど、むしろそちらを本 筋的にしたいというのが、うがった見方かもしれませんけれども、本来の政策意図とし て背後にあったと理解できるのではないでしょうか。何かそんな気がするのです。  ただ、同じことが日本でできるかというと、確かに派遣労働者の方が加入している組 合というのは企業横断的なものではありますが、その組織率の問題や相手方の問題もあ るでしょう。使用者団体として当事者性があるものになっているのか。そこにもし協約 規制ということで設定できる可能性があるのであれば、こういうドイツ的なやり方で派 遣労働者の人たちの処遇の水準を上げていくのは、日本でも追求できる余地があるのか もしれません。そこら辺のところを私はよくわからないのですが、考えてみるのは有益 かなと思います。    ○山川委員   おっしゃっている賃金水準については、産業別で横断的な賃金水準みたいなものが日 本ではできているかという問題があり、それに賃金決定方式が雇用形態によって違って いる。いろいろ課題は多そうな感じが、特に日本の場合はします。  パート労働法の場合も、結局、均衡という場合に何と比較するかというのはかなり根 本的な問題でもあって、職務の同一性や人材活用の仕組みなどを要件にしているもので すから、派遣労働者に同様のことを考えるというのは、そもそも難しい面があるかなと いう感じがします。  しかし、他方で、このパート労働法でも必ずしもそういった同じように揃える実態的 な規制だけが全てではないわけです。例えば待遇の説明とか転換制度、これは言わば派 遣の中でも常用労働者への転換とか直接雇用の促進など、ある意味でもうやってきてい ることですが、そういった、結果的に均衡待遇が促進できるような措置というのも、考 える余地はあるのかなというふうに思います。  もう1点は、指揮命令が派遣先で行われているという有田先生が先ほど言われた点で すが、そうだとすれば、指揮命令の必要上行うことについて、それも均等待遇という概 念に入るのかどうかわかりませんが、現在でも40条で、福利厚生的なことについては、 派遣先の労働者が通常利用しているものについて便宜を図る努力義務があるとしていま す。これもある意味では似たような発想で、現にそこで働いているということでしたら、 それなりの対応をすべきだという観点もあり得るのかなと思います。   ○座長   今先生方のご意見を聞きながら、私も少し考えてみたところを発言したいと思います。 有田先生が同一価値労働・同一賃金原則というお話をされて、指揮命令の問題が1つ根 拠として考えられるのではないかという発言がありました。その問題はいま山川先生が おっしゃったように、今派遣法でもあるような均衡配慮の問題として考えるならともか く、一般的な均等待遇、企業横断的な均等待遇、均衡処遇という問題では少し問題があ るのではないかということです。さらにもう1つ別な観点として、同一の派遣会社の中 の派遣労働者が、行き先によって処遇に違いが出てくる問題をどう考えるかという点を 指摘されました。  阿部先生からは、内部労働市場の中でさまざまな観点から決まっている賃金を含めた 処遇が、外部労働市場で簡単に均等・均衡と言えるのだろうかということ。仮に職務と いうことで言えば、比較もあり得ないわけではないけれど、内部労働市場の場合の賃金 決定を含めた処遇の決定というのは、それだけではないだろうという指摘がありました。 山川先生からは、企業横断的な賃金水準が確立するかという問題もあるが、一方、賃金 決定方式という問題も考えるべきではないかということでした。  パートで、通常の労働者と短時間労働者との均等待遇というものが導入されましたが、 これは資料3の4頁にありますとおり、職務の内容だけでなく、その企業での人材活用の 仕組みや運用、あるいは契約期間など、これは阿部先生も指摘されたように、内部労働 市場の中で同一価値労働というか、1人の労働者が期待される職務、期待される仕事の 内容全体を含めて評価が行われているわけです。でもこういったものが同じであれば、 それはパートについても差別する合理的根拠はないだろうという考え方だと思います。  派遣については、派遣先の従業員との均等・均衡を考えた場合に、例えば人材活用の 仕組みや運用というのは派遣先の経営方針から成り立っているわけです。しかし、実際 に均等待遇の賃金を払うのは派遣元なわけです。そうすると根本的に問題をどう整理し たらいいのかということがあるのではないか。つまり派遣先で、派遣先の従業員が同一 価値労働ということで処遇されているものが、全く別会社で違う経営方針なり人材活用 の仕組みを持っている会社で、それに合わせて待遇も同一にしなければいけないかとい うと、ちょっと難しい問題が原理的にありそうだなと感じました。したがって、技術的 な観点からして比較すべき対象をどう考えるか。あるいは検討すべき処遇の中身という ことも、なかなか定まっていかないと思われるわけです。  ただ、現在、派遣法のもとで規定される均等配慮ですが、こういった観点ではないの だと私は思います。これはどういう観点から出来上がっていたかというと、例えば福利 厚生で派遣先の休憩室など派遣先でなければ対応できない、しかし一定期間、同じ職場 で働いている者に対して広い意味での組織の中での平等という観点から、こういったも のを努力してもらったらどうかということで、導入されていたのではないかと思います。  そして教育訓練についても同様に、例えば派遣先の従業員であれば新しいコンピュー タソフトの使い方とか、そういうものが教育訓練としてやられているにもかかわらず、 派遣労働者であるという、この1点から教育訓練から外れるというのは、職務を遂行す る上でも大きな問題であるし、そういう場合には派遣労働者は派遣元に対して、同様な 教育訓練を求めることにより、その派遣労働者がそのチームの中で適正な職務遂行が可 能になるのではないか。こういった観点から、この均衡配慮というのが入っているわけ です。今まで議論した同一価値労働・同一賃金とは違う観点から導入されてきたもので はないかと思っています。したがって、こういったことから申しますと、派遣について は派遣先従業員との均衡または均等待遇、処遇の問題は、もう少し慎重に考えなければ いけないのかなと思うわけです。  また戻っても結構ですが、いわゆる「マージン」規制の問題に少し議論を移していた だきたいと思います。これについては私はいつも疑問に思うというか、よくわからない のです。いわゆる「マージン」と言うのですが、これをどう理解したらいいのか。一般 にマージンとは何を言うのか。マージンとは何を意味するのか少し事務局からご説明い ただければと思います。   ○田中企画官   マージンについては特段の定義の規定はありませんけれども、日本語の用語としては 「差」「もうけ」「利ざや」「手数料」といったものが意味として載っています。もう けと言う場合もいろいろな範囲があって、粗利益を見るのであれば売上高から売上原価 を引いたもので、そこからさらに経費などが引かれていくようなものもあります。純利 益ということであれば、それからさらに損失や特別利益等を調整することになりますか ら、特段の、これであるという決まった使い方はないようです。そういったことから、 この論点の中でも、いわゆる「マージン」という形で書いています。今までのヒアリン グ等々を伺っていると、派遣契約の派遣料金から労働者に支払われる賃金の差のことを、 マージンという呼び方で呼んでいるのではないかと思っています。   ○座長   これも確認ですが、今ご説明いただいたとおり、いわゆる「マージン」というのは、 派遣料金から派遣労働者の賃金を引いた額ということですと、実際にはそれがすべて派 遣会社の純利益になるわけではなくて、私は資料3の10頁を見ながら言っているのです が、これは人材派遣協会に提出していただいた資料ですが、いわゆる法定福利費やその 他の原価に、教育研修、福利厚生、販売管理費といったものが実際には含まれているこ とになるわけです。  つまりマージン規制と言った場合に、例えば法定福利費といったものは当然加味しな ければいけないものであるわけです。そうすると派遣料金から派遣労働者の賃金を引い た額そのものが、一般的に問題だというのではなくて、不当に幅広くマージンを取って はいけないという趣旨なのでしょうかね、規制という場合には。   ○田中企画官   資料2の中にヒアリング時の発言ということで、派遣ユニオンからの発言を引用して いますけれども、その他のコストがかかるということで、その中の一定程度にしか利益 にならないということは承知の上で、派遣料金から賃金を引いた額をマージンと呼んで、 取りすぎているところがあるのではないかということですから、今座長がおっしゃった ような観点でおっしゃっているのだと理解しています。   ○座長   わかりました。そういうような問題の提起ということです。マージンという言葉が何 を意味しているのか、今ひとつ私も明確にイメージしていないのですが、どうでしょう か。   ○有田委員   例えば派遣ユニオンの方がそういう言い方でおっしゃるときに、その前提にある考え 方というのを推測するに、本来、派遣事業というのは他人の就業に介入して利益を得て いるのだから、ある意味中間搾取に当たるのだと。それを法律で適法化したから、それ には当たらないという認識がある。本来だったら、働いた労働者に全部支払われるべき ところを持っていく部分がある。そういう理解がまず前提にあるのかと思うのです。  一応、事業として適法なものとして行えるようになっていることを考えると、率その ものを法律で枠をはめるというのは確かになかなか難しいかと思います。今の制度だと、 その会社が全体としてやっているところの全部を平均して出しているのを、一件一件契 約締結時に、向こうからいくら派遣料金として貰って、そのうち賃金として出すのがこ れで、内訳はこうなっていますというのが、技術的に可能かどうかはともかく、できる のであればそういう形にすれば、お互いが納得の上での労働契約締結を 可能にする。  例えば、派遣事業としてかかる経費について、派遣労働者側の不満として考えられる のは、派遣会社が運営する会社の社員の賃金水準が我々と比べてあまりにも高いではな いかということを販売管理費用に見出す。そういう会社と契約するのはいやだと。その 辺がもう少し圧縮されたところで、自分たちの手元に少しでも多く賃金として来る会社 を選ぼうという行動ができるようになるのであれば、それはそれなりに大きな意味があ る。賃金水準をある程度上げていく方向に作用することが期待できるかもしれない。  派遣労働力の労働市場の中の需給関係により、そのようなことが期待できるかどうか という問題が根底にはあるので、どれぐらいの意味を持ち得るのかはわかりませんが、 可能性としてはそういう意味を持ち得るのではないか。いまは全体としても、1年単位 で示せということなのかわかりませんが、それでもそれなりの意味はかなりあると思い ます。選ぶときの判断の基準として、賃金に回ってくる部分が、この会社よりはこの会 社のほうが多いということで。  それも、後の能力開発との問題もあるので内訳がよくわかって、能開の部分はある程 度使っている、それだったら自分はそこに行けば能開のチャンスがあって、キャリアア ップにある程度期待できる。いずれにせよ、内訳をきちんと明示する、開示するという ことは、派遣で働く労働者にとっては非常に重要な情報を提供することになると思うの で、そういう方向を今よりもう一歩個別ごとにという形で進められるのであれば、その 方向が現実的にもいいのではないかと思います。   ○座長   今有田先生がおっしゃったのは、直接マージン規制というのはいかがなものか、とい う前提に立った上で、しかしながら情報公開というか、派遣料金と、派遣労働者が受け 取る賃金についての情報を派遣労働者に公開することにより、情報提供することにより 派遣労働者自身による選択を促すわけです。今有田先生が言われたのは会社全体の包括 的な情報公開ではなく、個別の派遣労働者についてということですね。   ○有田委員   可能であれば、個別の開示もということです。 ○座長   情報公開について、現行法の下ではどのようになっているかを説明していただき、個 別ということとは違いがあるのだということを説明していただけますか。   ○田中企画官   現行制度下においては、先般、派遣元指針を改正いたしました。資料の11頁ですが、 労働者派遣の実績、派遣料金の額、派遣労働者の賃金の額、教育・訓練、その他事業運 営の状況に関する情報を公開することになっています。事業運営の状況に関しての情報 ということですので、これについては情報運営の内容がわかるようなものであればよい ということ。個別の派遣料金の額、派遣労働者の賃金の額ではなくて、派遣元事業主が 事業運営として平均的にやっています、というような内容を公開する、ということを指 針上求めている制度です。   ○座長   そうすると、有田先生がおっしゃった、個々のAという労働者についての派遣料金と 賃金とが明らかになるという性格のものではないのですね。   ○田中企画官   特段、事業主がそのようにすることを妨げるものではありません。平均的な額という ことで、業務の種類別などでお示しすることを推奨していますので、ある程度自分の賃 金水準と比べてどうかということはわかると思います。自分の派遣就業について、これ だけについてと言われると、そこからどれだけずれているかというようなことになるの だろうと思います。   ○有田委員   そこで公開ということなのですが、これは一般的な意味での公開でいいので、派遣契 約を結ぶのに伴って労働契約を結んで派遣労働者を雇い入れる時に、契約締結段階でこ れを見せなさいということではないのですね。    ○鈴木課長  今回の指針は、いわゆる情報の一般的な開示、要は派遣先、それから派遣労働者が派 遣会社を選ぶ時の参考資料として開示するものということで、一般の個別開示、即ち就 業条件の明示と同じような意味での一般的なものではないということで整理をしていま す。   ○有田委員   そこの会社で派遣労働者として働くかどうかということを、契約締結に当たって意思 決定の判断材料として使えるような形になるというのが大事だと思うのです。その一件 一件でなくてもいいと思うのです。その会社としてどういう事業運営の仕方をしている のかということで、その会社で自分が派遣労働者として働くかどうかを決めることがで きる判断材料が示されればいいのです。  公開ということで、一般的なというときに、実際に契約しようとするときにどれぐら いアクセスが容易なのか、簡単に見られるのか。その場合でも、相当意識がないと、派 遣労働者もそういうことに目が向かないこともある。それを開示する、というのが1つ 入るだけでもだいぶ違ってくるような気もします。   ○阿部委員   私は、今の有田先生の意見には反対です。個々の情報を開示するということにどれだ けの意味があるかわかりません。派遣社員と派遣元が個別に交渉するというか、どうい う条件で働いているかをやり合うのはいいのですが、それを一般に向けて公開すること の意味がどこにあるのかがよくわからないのです。その全体の平均的なものを出すとい うのはわかるのですが、ただ一件一件の取引をやることに意味があるのだろうか。  これは例が間違っているかもしれませんが、我々が今着ている洋服の原価を見せろ、 ということをメーカーやデパートに言っているようなものなのです。デパートは儲けす ぎではないか、メーカーは儲けすぎではないかと言っているようなもので、それだった ら別の洋服屋へ行くよ、という話をするのかということになるのではないかと思ったの です。  もう1つあるのは、派遣労働者の時給というのは、今募集する際にはほとんどインタ ーネットに載っていたり、求人雑誌に載っていたりして公にされています。それを下回 ることはたぶん許されないはずなのです。派遣労働者の賃金も売上原価の下限で決まっ ているはずなのです。上の費用構造をどれだけやり取りするかということになると思う のです。派遣先も、この仕事だったらどれぐらいの時給の市場賃金であるかはわかって いるはずなので、あとは類推すれば費用構造は一緒なので、そんなに大きな問題がある のか。このマージンがなぜ問題になるのかといったときに、何が問題なのかがよくわか らないということなのです。   ○有田委員   誤解があると思いますが、個別のものについてというときには、それを公に向けて出 せというのではなくて、契約締結の資料として見せろというだけの話なのです。   ○阿部委員   それならいいと思います。それを第三者まで含めて、あるいは公開・公示しろという ことになると、何をやろうとしているのかがますますわからなくなる。   ○有田委員   今の制度として公開されているものを目にするかどうかわからないので、契約をする かしないかで交渉している時に、それを個別に相手の労働者に見せることを義務づける ような形に変えるのも1つの手ではないかということです。   ○阿部委員   ただ、技術的には結構難しいのだろうということはあります。採用時のコストをどの ように見るか。1人の派遣社員を採用するというのを、細かく分けて費用構造までわか っているかどうかさえちょっと心配だという気がします。一括で募集をかけたりします ので、その細かな一人ひとりに対する採用費用がわかるのか。この仕事はなかなか応募 がなかったという時に、派遣会社の人たちがどれだけ働いたか、という費用構造までは 見えないわけですから、そうすると平均値しかないです。そうすると、もともとと同じ 話になるのではないか。義務づけたとしても、どこまでメリットが出てくるかというと、 ないのではないかと思っています。義務づけることは可能でしょうけれども、そのメリ ットはそれほど大きくないのではないかと思うのです。   ○山川委員   情報公開の趣旨の問題で、およそ企業の財務状況を公開する趣旨よりは、応募してく る派遣労働者にどの程度のメリットがあるか。むしろ就業条件なり派遣条件をより明ら かにする方向を趣旨として捉えたほうがいいのではないかという感じがします。 全体としての平均的なコストの配分というのも、応募の際に考慮する事項ではあって、 気の利いた学生は有価証券報告書などを見て就職先を決めたりしています。  賃金のようなことですと、ある程度個別的にもわかることがあるでしょうし、教育・ 訓練などは、あなたにはこういう教育・訓練が提示されていますということで、自分た ちの賃金以外のメリットがどれぐらいあるかがわかれば、登録型の場合は何社も登録し ているようですから、その中で条件の良い所を選ぶという市場原理が利いてくると思い ます。労働者の待遇面を、より個別的なレベルで明らかにする。  パートタイム労働法も、待遇の決定の際に考慮した事項の説明を求めており、それを 通じて結果的に均衡を促進するという方向ですので、基本的には有田先生が言われたこ とと同じなのですが、派遣労働者にとって何がベネフィットになるかをより明確にし、 市場原理をより機能させるようにする工夫は、技術的にどれだけできるかはともかくと して、あるのではないかという感じがします。   ○座長   一般的に、労働条件明示は義務づけられています。いま山川先生がおっしゃったのは、 それを超えた部分ということですね。   ○山川委員   そもそも登録型ですと、労働契約は現実に派遣されるまで締結されないので、募集条 件のようなことを、より派遣に即して考えるということです。   ○有田委員   それでいくと、全く何もない関係とは違って、登録という関係がそこにあるわけです から、その登録という関係に基づいて、一般的な状況でいいので、どういうメリットが あるのかという部分について、今おっしゃったようなところを登録段階で開示させて、 いろいろ登録している中で選択できるような情報を取得できるという仕組みも1つの方 式としてはあり得るのだろうと思います。   ○座長   いくつかの提案があり、その中で直接原価を示せということではなくて、登録段階で 派遣労働者が選択できるような就業条件について、教育・訓練も含めて何らかの形で説 明をしてもらえるような仕組みを作ったらどうか。この点について、皆さん異論はない と思うのです。それが、法的義務に適しているのかどうかということになると、登録を どう考えるかということもあります。後のところで、良質の派遣・・・何でしたか。   ○飯郷係長   「優良な事業主を育て違法な事業主を淘汰するための仕組み」の回で議論していた だきます。   ○座長   優良な派遣会社を育てるということから言えば、その優良なということの判断をする のは派遣労働者になってきます。そういうところで、今言ったような問題をもう一度ご 議論いただくということでよろしいですか。それをどのように法的に考えるのかという のは、ここでは明確なプランはないということで議論していただきたいと思います。マ ージン規制については、今申しましたように有田先生が言ったような就業条件、それに 教育・訓練を含めた働く環境についての情報を提供したらどうか、という意味では今申 し上げたとおりです。  仮に3割という形でマージン規制をしたらどういうことが起きますか。法定福利費は 当然払わなければいけない。教育費はどうなるのでしょうか。こういう問題は立てられ ないのか。できるだけ利益を上げようというのは当然のことなので、派遣料金が決まっ ている中で、派遣労働者に支払う賃金と、派遣料金の額が何割という形で決めると、そ の中は先ほど言いましたように諸経費がさまざまに入っている。法定福利費は当然払わ なければいけない。その中で、できるだけ利鞘を増やすことになると、任意の部分はど んどん減らしていくことになるのか。   ○山川委員   減らせるところとして、広告費、教育・訓練費、派遣元の人件費ということになるの で、それらがしわ寄せを受ける可能性がある。広告費というのは、実際には減らせない 可能性がある。そうすると、派遣元の人件費か教育・訓練費が減らされる可能性もある かもしれないです。   ○座長   想定の上で話をすると、意図としては労働者のためにということで考えていることが、 実は結果として労働者が今までA会社が手厚く行っていた教育・訓練費を減らしていく インセンティブになる可能性があるのか。3割と決められてしまうと経済的にどうですか。   ○阿部委員   教育・訓練費もあると思いますが、より効率的なマッチングをする努力はなくなると 思います。   ○座長   効率的なというと、それが派遣労働者にとってポジティブな意味になるのか、ネガティ ブな意味になるのか。   ○阿部委員   それはわかりません。   ○座長   そのような問題も少し考えておかなければいけないのかと思います。マージン規制の 問題については、少し問題があるのではないかという感じをいま持っています。第3の 論点の教育・訓練についてご発言をお願いいたします。冒頭に申しましたが、前回の議 題で、派遣先企業における社員登用制度と、派遣労働者のキャリアパスが積み残しであ ります。これも教育・訓練と関連した部分もありますので、併せてご発言いただければ と思います。   ○阿部委員   教育の問題は非常に難しくて、どの企業でも通用する能力開発なのか、そうではなく て派遣先でしか有効ではないような能力や知識を高めるための教育なのか、ということ で全然次元が違うような気がします。前者のどの企業でも通用するようなスキル、能力 開発のための教育でしたら、派遣会社で行うことも可能だと思います。派遣先の企業で しか使えないような知識や能力のためにはそこでしかできないだろうというふうになっ ていると思うのです。  そもそも、派遣先で必要な知識が要求されれば要求されるほど、派遣社員を使うのは まずいだろう。だから、正社員でやるのではないかとは思っています。そうすると、ど の企業でも有効な知識が必要になるのではないかと思うのです。使用者代表の意見を見 ると、現実的にはそうではなくて、求められる能力が多様化していて、派遣元では体系 的な訓練が行えないとなっています。  先ほど言おうかと思ったのですが、実際に派遣労働者の賃金の分析をしているものを 見ますと、最初派遣先に行って、その後数カ月経って徐々に賃金が上がっています。と ころが、派遣先との契約が切れて、次の派遣先に派遣労働者が動いた時には、賃金が最 初のレベルに戻るのです。つまりこの上昇分というのは、派遣先で培った、そこでしか 使えないスキルで、派遣先が変わるとそのスキルがなくなってしまって、またそこで上 っていくという形になっています。  ただ、技術系は、派遣先が変わってもずうっと上っていく傾向が強そうなのです。そ この違いは何なのかと考えると、派遣先で評価される評価基準というのが、技術系以外 の場合はバラバラなのです。技術系というのは、ある程度市場で評価されるような能力 体系みたいなものがあり、そこで市場賃金みたいなものが作られている可能性がある。 これを前提にまず考えたほうがよいのではないか。  何を言いたかったかというと、教育については誰が負担するかを考えるということが 1つあります。派遣元の訓練に関して言えば、いま派遣元は教育・訓練をするインセン ティブはほとんどないのではないかと思うのです。それを付けるような、つまり派遣元 が教育・訓練するようなインセンティブを付けるようなものが何かあればいいと思って います。教育・訓練するということは、派遣労働者にとってもいいことなのですが、派 遣元にとってもいいという仕組みをどこかに作っておくことが教育・訓練をするインセ ンティブになるのだろうと思います。  私が考えたことは、雇用保険のところで離職率を下げるように教育・訓練をいっぱい して、良い派遣労働者をつくり、いろいろな派遣先に派遣できるようにする。その登録 した派遣会社から辞められないようにしたい。賃金水準を、キャリアパスを考えてあげ るということをするような派遣会社には、例えば雇用保険の料率を引き下げる。そうで はなくて、離職率が高い所は料率を上げるなどして、できるだけ教育をし、なおかつ賃 金も上げ、そして離職率を引き下げるようなインセンティブをうまく作ってやればいい のかと思います。  ただ、それを考えた後こういうのもあります。離職というのは会社都合だけではなく て、労働者の都合もあるので、その部分をどのように見るのかということも考えないと、 ちょっといびつな制度になってしまうのかと思います。何か今の状況を打破するような インセンティブを与えるということが、教育・訓練の問題については必要なのではない かと思います。   ○座長   今おっしゃったのは、雇用保険のメリット制みたいなものですね。    ○阿部委員   雇用保険というか、労災のメリット制です。    ○座長   労災にもありますけれども、雇用保険にも。    ○阿部委員   雇用保険のメリット制です。    ○座長   どのように組み入れられるのか、技術的な問題としてはよくわかりませんが、労災の 場合には意図的な労災というのはほとんどないと思うのです。雇用保険の場合には、事 業主都合だけではないですから、その辺をどう考えるかということです。とりあえず派 遣について、教育・訓練費用を保険で負担するという仕組みを作ったらどうかというこ とですか。   ○阿部委員   まだそこまではいっていないです。派遣元が教育にあまり熱心でないのは、費用をか けてもそれを回収できないという問題があるからなのです。だから、回収できるような 状況にしてあげる。そのためには、投資をした派遣労働者に、ずっとその派遣元にとど まれるようにしてやれば、まだ投資は回収できるという発想なのです。だから、離職率 のところに来るのです。    ○座長   あまりよく知らないので事務局にお伺いします。雇用保険で、離職率でメリット制み たいな発想というのは何かあるのですか。それに代替できるものはない、という前提で 議論されているのかと思っているのですが、離職率によって保険料率を上げ下げすると いうことでしょう。   ○太田局長   現行制度では基本的にないです。議論されたことはあるのですが、理論的にも難しく、 技術的にも非常に難しいということです。   ○座長   派遣に限って、という形での雇用保険制度も技術的にはかなり難しそうですね。どの ようにするのかわかりませんが、阿部先生がおっしゃったような趣旨で、ある意味で制 度的な提案ということですね。それ以外でも結構ですが。   ○山川委員   同じような発想に基づくのですが、結局一般的なトレーニングをしても、別の登録先 で就職してしまったりということがあるから、派遣元としてインセンティブが湧かない。 その結果どういうことになるかというと、全体として教育・訓練の底上げが図られなく て、それは派遣労働者にとっても不利益なばかりか、派遣業界全体にとっても不利益で はないかという感じがします。法律でというのは難しいかもしれませんが、派遣業界の 中で協調し、何か共通のトレーニングみたいなもののためにシステムを作る。法律で作 るといっても、それは雇用保険そのものとは結び付きにくいかもしれませんが、そうい うものを促進するというのはあり得るのか。つまり、自分たちだけが損をするわけでは ない、という仕組みを作ることはできないかということです。   ○有田委員   その考え方にはかなり共通したものがあります。制度化を考えるときに、二事業のと ころで負担するお金の部分の3/1000を、例えば派遣事業についてだけもう1/1000ぐらい を付加して徴収し、それを派遣事業全体として、派遣労働者の教育・訓練費用に充てる というような、いまの時代からすると逆行するのかもしれませんが、制度設計をすると、 何かそういう方向性もあり得るのではないか。  阿部先生とは逆で、今度はお金を取ってしまうのですけれども、それは登録型の場合 どっちにしても複数登録で、この間のヒアリングでも10社ほど登録しているということ を伺いましたが、どの段階で、誰がどのように負担するのか、というのを特定するのは 非常に難しい。そうすると、事業者全体で訓練費用を負担する形をとるのがいちばん現 実的かと思います。理屈としてはまだ難しいところがあるのですけれども、制度を作る 上ではいちばん考えやすいのかという気がいたします。   ○座長   教育・訓練については、個別にどういう対応ができるのかというのはなかなか難しい のですが、今言ったような業界特有の問題がありますので、私たちの議論としては、流 動性が高いがために、教育・訓練に対するインセンティブがなかなか派遣元に発生しな い、というのをどう克服していくかという1つの問題提起として、ここでは考えていき たいと思います。具体的にそれをどう制度にとか、技術的に落とすのかというのは、今 ここでは難しいのではないかと思います。  社員登用制度とか、キャリアパスの問題についても似たような問題があります。派遣 先の社員登用制度を法的に義務づけると言ってみてもなかなか難しい。これも、派遣先 が紹介予定派遣以外のものについても、派遣労働者を登用するといった場合に、派遣労 働者に対して何らかの情報提供をするといったようなことではないかと思います。派遣 労働者のキャリアパス、派遣会社の中で、常用雇用への道筋というのも、派遣会社の労 務管理の中で工夫をしていただく。法的に何か義務づけるというようなものとは少し違 うような気もいたします。  しかし、これも考え方の基本としては、長く働く意欲があり、そのような技能・技術 を習得したいという派遣労働者については、常用雇用への道筋をちゃんと示すことによ り、教育・訓練を派遣元会社が施していくことがとても大切なことではないかと思いま す。   ○有田委員   常用化へということを考えて、どういう訓練が必要なのかという時に、先ほど阿部先 生が言われたように、今どういうスキルが派遣先で求められているのか、そのためのど ういう訓練が必要なのかという情報が入ってこないと、先ほどのような形で制度化する とき、派遣元の業界としてどういう教育・訓練をするのかということについて妥当なも のが出てこない。  派遣先でというときに、集団としてそういうものがどのようにつかまえられるかとい う問題があるのですが、何らかの情報が入ってくるような道筋を付けるような仕組みも 併せて考えておかないと、おそらく役に立たない訓練しか出てこないことになりかねな いので、そこを考える必要はあるのではないかと思います。   ○座長   第4の論点に移ります。元・先責任と私は言っているのですが、これについて事務局 から説明をお願いいたします。   ○竹野補佐   資料1の論点4を読み上げさせていただきます。社会・労働保険、時間外労働、安全衛 生、労災補償、未払賃金の立替払い、団体交渉、雇用責任等について、派遣元と派遣先 の重複責任とすべき等の意見がある。特に、労災補償については、ヒアリングでも派遣 先も責任を負うべきとする意見があったが、これら派遣元と派遣先の役割分担をどのよ うに考えるか。また、派遣受入れについて、派遣先労働組合への通知及び意見聴取を義 務づけるべきとの意見があるが、どのように考えるかということです。  資料の5頁に労使意見、ヒアリング時の発言が付いています。労働者代表の意見とし て、社会・労働保険は派遣元・派遣先の連帯責任とする検討も必要。時間外労働、安全 衛生、労災補償責任等について、派遣元・派遣先の重複規定とするべきということで、 実態的に派遣元・派遣先の両方に責任を負わせるべきだという意見です。使用者からは、 福利厚生のことについてありますけれども、企業側の配慮については企業差が大きいこ とから、法律での義務づけは適当ではないという意見があります。ヒアリング時の発言 は、人材派遣協会、派遣ユニオン、JSGUの言及があります。派遣先にも一定の責任を考 えてもらってはどうかという趣旨の意見がヒアリングでは出ておりました。  資料4で、現行の派遣元事業主・派遣先の責任分担です。現在は派遣法に基づき、事 業主の使用者責任を分配しているものがあります。これは、労働基準法、労働安全衛生 法、雇用機会均等法について、基本的には使用者に責任を負わせているものですが、派 遣就業の実態などを踏まえ、労働者保護の観点から、派遣先に課すことが適当であるも のについては派遣先に義務を負わせています。  派遣元事業主、派遣先、それから両方に責任を負わせているものがあります。労働基 準法の関係では、賃金、年次有給休暇、災害補償については派遣元事業主の責任とされ ております。労働時間、休憩、休日、時間外・休日労働は実際に派遣先で働かせること に関わってくるものですので、派遣先に責任があります。ただし、時間外労働について は36協定の範囲内でということがありますので、派遣元での36協定の範囲内で時間外・ 休日労働が可能となっております。強制労働の禁止等の規定については両方に課せられ ています。  労働安全衛生法の関係については、雇入れ時の安全衛生教育、一般健康診断について は派遣元が責任を負う。安全の関係とか、危険防止等のための事業者の講ずべき措置、 作業環境測定とか特殊健康診断とか、基本的に実際に作業をするに当たって必要となる 規定については、派遣先に義務が課せられています。双方に義務が課せられているもの もあります。  男女雇用機会均等法の関係ですが、これはセクハラの禁止については両方に課せられ ているという特例の規定があります。  資料の2頁は特例規定があるものではありませんが、労働者代表から意見が出ている、 労働・社会保険、団体交渉についてまとめたものです。労働・社会保険、団体交渉それ ぞれ両方とも派遣元事業主のみが責任を負う。団体交渉についても、その団体交渉応諾 義務は派遣元事業主のみが負うことにされています。  労働・社会保険の備考欄にありますが、派遣元事業主は、被保険者資格取得の有無等 について派遣先に通知しなければならないということで、これは法律上の義務がありま す。派遣先についても、未加入の理由が適正でないと考えられる場合には、派遣元に対 して加入させてから派遣するように求める、ということが指針で定められております。 説明は以上です。   ○座長   論点4の派遣元と派遣先の役割分担の在り方についてご発言をお願いいたします。な お、本日は労働基準局からもご出席をいただいておりますので、適宜制度や運用等につ いてご質問もしていただければと思います。   ○有田委員   36協定のことですが、どういう範囲の労働者に、どういう場合にということを当然規 定しておかなければいけないわけですから、専ら派遣ならともかく、多様な所に派遣し ている派遣会社で、36協定を締結するときに、具体的にあらゆる場面を想定し、相当広 範囲な形で36協定は締結されているのか、実例としてどういうものが多いのか。ただ、 それだとあまり36協定としての意味を持たなくなってしまうのではないかと思います。 この辺で現在問題点はないのかをお伺いします。   ○黒澤補佐   36協定については、今事務局から説明がありましたように、派遣元が締結することに なります。委員ご指摘の業務に関しては、36協定においてはその対象となる業務、対象 となる労働者の数、それから計算期間など具体的に定めることになっております。実物 は手元にはないのですが、そういう趣旨からいけば、対象業務を何か漠然と書いておく ことになりますと、それは法律の求めているところに合わないことになります。派遣労 働者でありましても当然やる業務があって、それに応じて働いているわけですので、基 本的にはその業務というのはきちんと押さえていただかなければいけないということに なります。   ○座長   とりわけ元・先責任ということですと、労災とか安全衛生が大きな問題になっており ます。安全衛生というのは、元・先責任の分担は行われているわけですが、労災補償で はいろいろ議論があるところです。山川先生いかがですか。   ○山川委員   労災補償という場合でも、制度としてはいろいろあるわけです。労基法上の災害補償 と、労災保険があって、実質は労災保険で現在は対応されていることがほとんどです。 そうだとすると、労災保険はどこが保険料を払っていても、業務上の災害であれば保険 給付はなされるということです。それによってどちらが保険料の支払いをするかによっ て、労働者への保険給付において差が出ることはないのではないかと思うのです。そう すると、災害補償だけの話かというと、それではあまり現実的な意味はないかと思いま す。  もう1つは、災害補償についても、派遣中の災害をどう見るかにかかわってきます。 派遣をしたということは、派遣元の業務ですので、その派遣中に災害に遭った場合には 、現在は出張でもそうですけれども、社内で働いていなくても、社外に出したという場 合には基本的に雇用主が業務災害として責任を負っている。出張と同じようなことにな るので、基本的には派遣元の業務災害ということに災害補償上もなるのではないかとい う感じがします。  労災保険料の分担ということはあり得るかもしれませんが、それも先ほどの原則から 言うと、完全に派遣先が分担するというのも説明しにくいです。保険料率自体がどのよ うに決まっているのかということにもよりますので、いろいろな所に派遣した場合にど うなるのかという問題。分担した場合に、メリット制がどう適用されるのかという問題 もあります。これは技術的なことなのですけれども、どのみち労働者に対する保険給付 は変わらないので、その辺で複雑なことをする必然性がどれだけあるのか ということはあるかと思います。  1点あり得るのは、座長の言われたように安全衛生の規制が派遣先にかかっているわ けですので、それに違反してそこで災害が起きた場合に、派遣先が何も責任を負わない というのはどういうものかという感じもあります。やや技術的なのですけれども、費用 徴収という、一定の法令違反があった時には、現在のところ保険料を払っている事業主 に支払った保険給付の方を請求できる制度があります。今の制度のままでは、派遣先が 法令違反を起こしても、その法令違反について費用徴収できない仕組みになっています から、安全衛生法上の責任分担を図った趣旨が、必ずしも労災保険のほうに反映されて いないという気がします。かなり技術的なのですけれども、そこはリンクさせることに よって、ある意味で責任分担を図ることができそうです。  逆に言うと、費用徴収制度による負担があるからこそ、派遣先できちんと安全衛生法 令を守るという抑制力が働く。費用徴収も、ある意味で責任分担という点では効果的か という気がするのですが、技術的な点についてはよく分かっていない部分があるかもし れません。   ○座長   難しい話になっていますので労働基準局の方に説明をしていただきたいのです。今、 費用徴収の問題、派遣先が災害事故を起こした場合の責任という問題が提起されました。 費用徴収ということの意味を説明していただければと思います。   ○河野補佐   費用徴収については、労災保険法第31条に規定があります。事業主の故意又は重大な 過失等によって発生した業務災害について保険給付を行った場合に、趣旨としては事業 主に注意を促すという意味で、保険給付に要した費用に相当する額の全部又は一部を徴 収するという仕組みです。  先ほど山川先生がおっしゃったように、現行労災保険法上の事業主は、派遣労働に関 しては派遣元ということになりますので、仮に派遣労働のところで、派遣先事業主の故 意又は重大な過失によって労災が発生した場合は、派遣先からは、派遣労働者の事業主 ではないことから、派遣先から費用徴収できない仕組みとなっているということです。   ○座長   理解のため確認をし直しますが、現在の制度で基本的に労災保険の保険料負担という のは、派遣元が負っているわけです。しかし、安全衛生に関しては一部というか、かな りの部分を派遣先が負っていることになっています。しかし、事故が起きるのは派遣先 になります。派遣元から送られた派遣労働者が、派遣先で事故を起こした。そういう場 合に、現行制度の下では費用徴収、即ち事業主が故意又は重大な過失によって災害を起 こした場合には、費用徴収という形で制裁的な規定があるわけです。それは、現行法で は派遣元に行ってしまうわけですね。   ○河野補佐   労災保険法上の事業主というのは、派遣労働の場合は派遣元事業主のみになります。 座長がおっしゃったように、概ね派遣労働者の労災というのは、その場所が派遣先とい うことが考えられますけれども、仮に派遣元の管理するエリアで災害が起こった場合、 それが派遣元事業主の故意又は重大な過失の場合であれば、この費用徴収の規定が派遣 元に適用されることになります。派遣先が故意又は重大な過失の場合には適用がないこ とになります。   ○座長   適用がないということなのですか。   ○河野補佐   労災保険法上の事業主というのは、派遣元です。   ○座長   わかりました。その辺のところで誤解がありました。第31条の定める費用徴収という のは、いま言ったような派遣先の事故の場合には費用徴収の行く先がないということに なるのですね。   ○河野補佐   そうです。   ○座長   そのようなことです。   ○山川委員   派遣先の保険料率はどのように計算するのか。派遣先がいろいろな所だったりする場 合に、派遣中の労働災害は、派遣したから、派遣先でその事故が起きたのだと考えた場 合には、保険料率も違ってくるのではないかと思いますが、その辺の実態はおわかりで すか。   ○河野補佐   労災保険率に関しては、派遣先での作業実態に基づいて適用事業を決めていくことに なります。派遣先での作業実態が数種の事業にわたる場合については、主たる作業実態 に基づき事業の種類を決定することとしており、主たる作業実態はそれぞれの作業に従 事する派遣労働者の数で、それぞれの労働者にかかる賃金総額等によって判断し、1つ の事業を適用することになります。   ○山川委員   製造中心とか、事務機器操作中心ということが実態として出てくれば、それを考慮し て決定することになるのでしょうか。   ○河野補佐   はい、そうです。   ○座長   よくわからないのですが、メリット制を派遣先の保険料率に反映してほしいという意 見もどこかで聞いたような気がするのです。もし仮にそういうことを技術的にやるとな ると想像のつかない部分もあるのですがどうなるのですか。派遣先の保険料率に反映さ せるということですが、保険料は派遣元が負うという原則の中で、メリットだけその料 率を派遣先に反映させる、というのは技術的にあり得るのですか。   ○河野補佐   派遣先は保険料を負担していないという根本的なところの整合性を図るのは難しいと 思います。その上で、仮に派遣先のメリットに反映させるとすると、派遣先と派遣元に 二重に災害リスクが反映されることになること、派遣先と派遣元で按分するとしてもそ の割合をどうするのか、その辺の問題はあると思います。また、派遣先のメリットに反 映させるということは、労災隠しを助長することもあるのかと思っております。   ○座長   派遣先の料率に反映させると、派遣先とすれば表に出したくないという気持が働くと いう意味ですね。   ○河野補佐   はい、そうです。   ○座長   費用徴収に関しては、今の説明では確かに派遣制度の中ではやや困った状態になって いると理解してよろしいですか。   ○河野補佐   派遣制度の中ではというよりは、労災保険制度の中において、事業主の故意又は重大 な過失等の場合に費用徴収をする、そして保険財政に返してもらうという仕組みをとっ ている趣旨に照らして、仮に派遣先事業主の故意又は重大な過失の場合には、その趣旨 が活かされない部分があるということです。   ○座長   それで、山川先生は、この部分については制度的に少し考えたほうがいいのではない かということですね。   ○山川委員   費用徴収制度の中に、派遣先が安全衛生規制の責任を分担している、ということを盛 り込んでもいいのではないかという発想です。   ○座長   これは、私もそのような感じがします。労働保険の保険料負担を、派遣先にも負担し てもらえないかという議論があるようですが、これはドイツの制度を少し想定したよう な意見なのかと思います。ドイツではどのようになっていましたか。  ○田中企画官   資料をどこでお出しをしたかいますぐにはわからないのですが、ドイツにおいて社会 保険料の納付は派遣元の責任になっております。派遣先も連帯保証責任を負うという形 になっていると伺っています。   ○座長   どうなっているか、というのは立法理由だからわからないですね。   ○有田委員   先ほどの教育・訓練のこととかかわって、3/1000の部分にプラスしてというときに、 派遣先にもそこの部分を担ってもらう。0.15/1000ずつという形で基金などを作り、そ れを能開事業の財源に充てるというような形は考えてもいいかと思います。  また、最終的に何かがあったときに、連帯責任をどう考えるのか、どこまでの問題に ついて派遣先も連帯して責任を負うべきと考えるのか。この先に議論されるという、良 質な派遣事業者を育成していくというか、逆に言えば悪質な業者を淘汰していく仕組み としても機能し得る。最終的に、派遣先も連帯して責任を負わなければいけないという ことになれば、ちゃんとした所を選んで派遣契約を結ぶような行動をとることになるで しょうから、そうすると悪質な事業者は市場から淘汰されていくことも期待できるでし ょう。  労働者にとっての最終的な責任を確保することに加え、もう1つの仕組みとしても連 帯責任というのを少し考えてみてもいいのではないかと思います。   ○座長   元・先責任の考え方というのはやや根が深くて、私の理解では大きくアメリカ型とヨ ーロッパ型という形で分けられるのではないかと思っています。どういうことかという と、アメリカというのは共同雇用という考え方があり、基本的に派遣先も適用される労 働法規の範囲内で、派遣先が使用者として位置づけられるという制度なわけです。  なぜそのような仕組みになっているかというのはいろいろ議論もあると思うのですが、 ところがヨーロッパでは、特にドイツでは常用雇用を前提にして考え始めたことから、 基本的に派遣元が雇用主で、派遣先は雇用責任を負わないという考え方がありました。  日本は、どちらかというとヨーロッパ型に近い考え方、つまり派遣元が雇用主であっ て、派遣先はユーザーであるということで考えられてきました。ただし、労働基準法と か安全衛生といったことで配分をしていますが、特に安全衛生では派遣先でなければ確 保できない事柄がありますので、そこについては責任を派遣先に負担させる、という仕 組みでできたものだと思います。  ここで、アメリカのように派遣先を使用者として位置づけるということは法制度上非 常に難しいし、またそのようになっていないということで、そこから元・先責任の位置 づけをし直すということも現行法では難しいし、制度的な改変を考えたとしても、かな り根本的な転換ということになると思います。  こういうことから、今議論になっていた労災の費用徴収の部分については、一定の在 り方についての提案がありましたし、それについては皆さん一致して納得されていると ころではないかと思います。そのほかの部分については、特段元・先責任の問題で、現 状においてこれを変えなければいけないということが強く問題になっているのか、もう 少し検討してみる必要があるのではないか。  ただ、今有田先生がおっしゃいましたように、派遣先に責任を負わせることにより、 派遣元のパフォーマンスを監視するという観点はあり得るかと思います。それは、後で 良質の派遣会社を増大させる問題とも関連しますので、そこで議論していただければと 思います。  最後の部分については私の時間配分で十分であったかどうかわかりませんが、本日の 議論はこの程度にしたいと思います。次回の研究会では、需給調整機能の強化というこ とで、事前面接、紹介予定派遣、専ら派遣等についてご議論いただきます。次回の日程 について事務局からお願いいたします。   ○田中企画官   次回の研究会は、6月27日(金)の14時から、職業安定局第1会議室で開催の予定です。   ○座長   本日の議論について、追加でご意見等がありましたら事務局までご連絡をお願いいた します。これをもちまして、第7回研究会は終了させていただきます。本日はお忙しい ところありがとうございました。 照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課需給調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5745)