08/06/10 平成20年度第1回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会議事録 平成20年度第1回 化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会 日時 平成20年6月10日(火) 13:00〜 場所 厚生労働省17階 専用第18会議室 ○大淵化学物質評価室長補佐 定刻になりましたので、ただいまから平成20年度第1回「化学物 質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会」を開催いたします。私は、化学物質評 価室の大淵と申します。座長が決まるまで進行をさせていただきます。よろしくお願いいたしま す。  会議の開催に当たりまして、冒頭ご注意等を申し上げます。本会議は、公開の形になってお り、後ほど議事録も公開の予定でございます。また傍聴者につきましては、発言はできないこと となっておりますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。  それでは、最初に事務局を代表いたしまして、安全衛生部長の鶴田よりご挨拶を申し上げま す。 ○鶴田安全衛生部長 開会に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。本日は、大変お忙しい 中、本検討会にご出席いただきましてありがとうございます。また、本年度もリスク評価検討会 にご協力いただきまして、重ねて感謝申し上げます。  ご存じのように、近年の化学物質対策は有害性だけではなく、リスクマネジメントの考え方が 国際的な流れとなっておりますので、厚生労働省におきましても、労働現場で使用される化学物 質に関するリスク評価を平成18年度から実施してきておりまして、本検討会は今年で3年目にな ります。  平成18年度は5物質、平成19年度は10物質についてリスク評価を実施し、それぞれの化学物質 のリスクに応じて、特定化学物質障害予防規則等による規制の強化を図ってまいっております。 本年度のリスク評価につきましては、化学物質の管理を適切に行い、労働者の健康障害防止を図 っていくために、リスク評価をスピードアップしていく必要があることから、評価対象物質を44 物質に増やすことといたしました。これらの物質の中には、有害物質のばく露作業報告制度の上 で該当する事業場が少なく、ばく露作業報告が見られなかった物質があるとともに、有害性に関 しても国内外で十分な評価情報がないものがあります。  今後は報告のあった事業場に対して実態調査を行うとともに、有害性情報の収集に努め、その 結果を踏まえてリスク評価を実施してまいりたいと考えております。物質数が格段に増えました ので、先生方には昨年、一昨年以上にご負担をおかけすることになりますが、是非ご協力のほど をよろしくお願い申し上げます。  また非常に暑くなってまいりましたので、6月1日からクールビズというものを国として推進し ておりますので、是非ご協力をお願い申し上げます。以上です。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それでは、続きまして出席者のご紹介をさせていただきます。本 検討会のメンバーは昨年と変わりませんが、所属、役職が変わられた先生方もいらっしゃいます ので、改めてご紹介をさせていただきたいと思います。  京都大学大学院教授の内山先生、産業技術総合研究所の江馬先生、中央労働災害防止協会労働 衛生調査分析センター技術顧問の櫻井先生、中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター所 長の清水先生、産業医科大学学長の和田先生です。慶應義塾大学の大前先生におかれましては、 本日は所用のため2時半ごろお見えの予定です。日本作業環境測定協会の本間先生におかれまし ては、本日はご欠席とのご連絡をいただいております。  事務局は、安全衛生部長の鶴田、労働衛生課長の金井、労働衛生課の調査官の濱本、環境改善 室副主任中央労働衛生専門官の古屋、同じく労働衛生課労働衛生専門官の石井です。続きまして 化学物質対策課長の榎本、化学物質評価室長の島田です。  これから議事に入りたいと思いますが、その前に座長の選任です。事務局としては、昨年、一 昨年に続きまして、櫻井先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。それでは櫻井先 生、よろしくお願いします。 ○櫻井座長 ご指名によりまして座長を務めますので、どうぞよろしくお願いいたします。それ では、議事に先立ちまして資料の確認を事務局からお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。皆様にお配りして ある資料の1枚目に会議次第、2枚目に配付資料一覧がありますので、それに沿って確認をお願い いたします。  資料1-1は検討会の開催要綱、資料1-2は参集者名簿、資料1-3はリスク評価事業のスケジュー ル案、資料1-4はばく露作業報告の書き方のリーフレット、資料1-5は平成20年度のリスク評価に おける考慮事項について、資料1-6はリスク評価物質有害性評価書、資料1-7はリスク評価物質の 評価値関係資料、資料1-8は有害物ばく露作業報告の概要、資料1-9はホルムアルデヒドを用いた 燻蒸作業における労働衛生対策について(案)、資料1-10はニッケル化合物の規制対象について (案)、資料1-11はニッケル化合物、砒素及びその化合物に係る特殊健康診断項目について、資 料1-12はニッケルチタンイエローについてです。  参考資料1は平成19年度の化学物質に係るリスク評価検討会の報告書、参考2は各物質の提案理 由書、参考3は国際機関における取扱い(ニッケル化合物関係)です。よろしいでしょうか。 ○櫻井座長 お手元に揃っておりますでしょうか。大丈夫のようですので先へ進みたいと思いま す。今年度第1回検討会ですので、今年度の検討事項のスケジュールについて、事務局から説明 をします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それでは、説明いたします。まず、資料1-1、資料1-2です。平成 18年度から個別の化学物質のリスク評価を開催しておりますが、今年度は開催要綱あるいはメン バー等の見直しが若干ありましたので、ご説明させていただきます。  まず開催要綱ですが、従来との変更点は、2の「検討事項」です。ここに(1)から(4)の項 目がありますが、(2)の「リスク評価に応じた対策について」を今年度から明記しました。従 来もこの検討会の中でご検討いただいていたわけですが、要綱上も明記したということです。  3の「構成等」ですが、(1)の「本検討会は、別紙1の参集者により構成するものとする」と いうところまでは従来と同じですが、そのあとに「別紙2の参集者により構成する健康診断に係 る小検討会を開催することとする」というのが新しいところです。それに伴って(2)、(3)、 (4)を若干修正しております。  「健康診断に係る小検討会」ですが、メンバーについては、資料1-2の名簿を見ていただきま すと、1-2の上のほうは従来からの検討会の先生方の名簿で、下のほうは「健康診断に係る小検 討会の参集者名簿」です。親検討会の中から大前先生、櫻井先生、清水先生、和田先生の4名の 先生に入っていただき、新しいメンバーとして大阪市立大学大学院の圓藤先生にも加わっていた だいております。このような形で本年度から会議のスタイル等が若干変わっております。  開催要綱に基づいての今年度の事業のスケジュールは資料1-3です。平成20年度の化学物質の リスク評価事業については、平成19年11月に有害物ばく露作業報告の対象物質の告示をしまし た。今回の報告対象は計44物質で、平成19年の10物質、平成18年の5物質より格段に増えていま す。  このばく露作業報告については、1〜3月にかけて各事業場から所轄の監督署に報告をいただい ており、44物質のうち25物質について報告があったところです。これを受けて本日第1回のリス ク評価検討会を開催させていただき、第2回については、今のところ予備日ということですが、8 月8日を予定しております。  その後、事業場におけるばく露実態調査を行い、こちらは委託事業で行う予定にしております が、その結果がまとまった段階で次の検討会を開催させていただきたいと思っており、その中で 44物質のリスク評価の検討、とりまとめを行ってまいります。  今年度の具体的な物質については、資料1-4としてばく露作業報告を行ったときに配付したパ ンフレットを付けておりますので、参考にしていただければと思います。念のため申し上げます と、ばく露作業報告については、ここに書いてある物質について含有量の裾切りが決まってお り、基本的には0.1%を超えて含有している物質で、かつ1事業場当たり年間500kg以上を製造 し、あるいは取り扱っている場合に監督署に報告していただくという制度になっています。  これが平成20年度のリスク評価事業のスケジュールですが、資料1-3に戻っていただき、平成 19年度のリスク評価対象物質の関係で、その後のフォローをしているものがありますので、それ についてもご説明させていただきます。  平成19年度については、10物質を評価して、そのうちニッケル化合物、砒素及びその化合物に ついては、特別規則で規制をすべきという報告をいただいており、それに基づいてさまざまな作 業をしているところです。そのうち健康診断の関係のフォローについてですが、この6月3日に 「健康診断に係る小検討会」を開催して、それぞれの物質についての健康診断項目を検討しまし た。  また、作業環境測定あるいは局所排気装置の性能については、本日この会議のあとで、「管理 濃度等検討会」を予定しており、その中で検討する予定になっています。これが平成19年度物質 のフォローの状況です。以上が事務局からの説明です。 ○櫻井座長 ただいまの説明の内容について質問はありますか。特にないようですので先へ進み たいと思います。議事次第では、本年度のリスク評価対象物質の検討がメインテーマで、それか ら行うことになっていますが、議事の都合があって順番を変えて、やや個別の問題の、平成18年 度に評価したホルムアルデヒド、平成19年度に評価したニッケル化合物、砒素、砒素化合物に関 する議題について、先に検討したいと思います。まずホルムアルデヒドについて事務局から説明 をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料1-9の「ホルムアルデヒドを用いて行う燻蒸作業における労 働衛生対策について(案)」です。資料に沿って説明しますと、ホルムアルデヒドの規制に関す る経緯については、ただいま座長からもお話がありましたとおり、平成18年度のリスク評価検討 会においてリスク評価を行い、そこにおいてヒトに対する発がん性の観点から、健康障害防止対 策を強化すべきとされました。それに基づいて労働安全衛生法施行令を改正して、ホルムアルデ ヒドを特定化学物質の「第3類物質」から「第2類物質」に変更しました。また特定化学物質障害 予防規則の改正も行い、ホルムアルデヒドの製造・取扱い事業者に対して発散抑制措置、作業環 境測定、健康診断等を義務付けています。  このような作業をしてきたわけですが、政省令改正を行った際の行政手続法に基づくパブリッ クコメント手続において、ホルムアルデヒドが燻蒸作業に用いられているという情報がありまし た。パブリックコメントの中では、どんな濃度基準で作業したらいいのかという質問だったので すが、この情報を踏まえて確認をしたところ、動物を輸入したときの検疫ですが、それに伴う燻 蒸作業においてホルムアルデヒドを使用していることが判明しました。これを踏まえて私どもで 検討した事項ということで、次の2となります。  現行の特化則においては、第5章の2で「特殊な作業等の管理」という章が設けられています。 ここでは特化物に共通の規制では十分管理できない特殊な作業等について、作業の実態に即した 特別な対策が定められています。そのうちの1つとして、第38条の14では、臭化メチル等、具体 的にはシアン化水素、臭化メチル、これらを含有する製剤ということになりますが、こういった ものを用いた燻蒸作業について管理対策が定められております。  今回、情報のあったホルムアルデヒドについても、燻蒸作業については従来の特化則の共通規 制だけでは十分管理ができないということで、すでにある第38条の14の燻蒸対策の中にホルムア ルデヒド、ホルムアルデヒドを含有する製剤についても対策を追加して、シアン化水素や臭化メ チルと同じような規制をかける必要があると考えております。  改正に当たり、現行の燻蒸対策について簡単にご説明したいと思います。まず規制の対象物が 特化則の第5条で定められています。シアン化水素、臭化メチル、シアン化水素を重量の1%を超 えて含有する製剤その他の物、臭化メチルを重量の1%を超えて含有する製剤その他の物が、現 在の規制対象物質になっています。  具体的な規制の内容は、特化則の第38条の14ですが、第38条の14は、大きく第1項と第2項に分 かれています。第1項については(1)〜(6)号までは燻蒸作業の種類によらない共通規定ということ で、燻蒸も燻蒸場所によってやり方が異なりますので、(7)号以降はその個別の内容です。(1)〜(6) 号については共通の規定ということで、作業をするときには目張りをするとか、投薬するときに は原則として外部から行うといったことが定められています。そのあと(7)号については、倉庫燻 蒸作業、コンテナー燻蒸作業についての規定、(8)号は天幕燻蒸作業、(9)号はサイロ燻蒸作業、(10) 号ははしけ燻蒸作業、(11)号は本船燻蒸作業となっています。  この中で濃度の関係については、(7)号、(10)号、(11)号で出てきます。燻蒸するときは、当然その 中は高濃度になっており、燻蒸作業が終わったあと、濃度を下げてからその中に入って労働者が 作業をすることになりますが、その際には作業場所の空気中の濃度を測定するという規定がそれ ぞれあります。そして第(12)号にあるとおり、その濃度測定の結果、一定濃度を越えた場合には労 働者を立ち入らせてはいけないという規定になっています。その濃度が具体的にはシアン化水素 については11mg/m3、単位を直すと10cm3/m3、臭化メチルが60mg/m3又は15cm3/m3になっています。  3頁の第2項については、ちょっと異なる観点での規制です。燻蒸場所あるいは隣接する居住室 等において、燻蒸作業以外の作業に労働者を従事させる場合の対策ですが、これも第1項と共通 のところがあります。空気中の濃度をまず測定しなさいということ。測定の結果、一定濃度を超 えた場合には労働者を立ち入らせてはならないということで、ここの場合の一定濃度というの は、第1項の第(12)号の基準と同じです。以上が現行の規制の概要です。  続いて、今回改正したい内容を説明します。1点目として、規制対象物質に次のものを追加し たいと考えます。ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドを重量の1%を超えて含有する製剤その 他の物。  2点目は具体的な規制内容です。シアン化水素・シアン化水素含有製剤、臭化メチル・臭化メ チル含有製剤に現在は規制があるわけですが、それと同一の規制内容をホルムアルデヒド、ホル ムアルデヒド含有製剤にもかけると考えています。  この場合の濃度の基準ですが、0.1mg/m3又は0.1cm3/m3、ppmに直すと0.1ppmということで、す でに定まっているホルムアルデヒドの管理濃度と同じ数値を考えています。  改正内容の3点目です。先ほどシアン化水素あるいは臭化メチルの現行の濃度基準を説明しま したが、この値は燻蒸の規定が定められた昭和50年以降見直しをしておらず、この間に管理濃度 については数値が変わっておりますので、今回の改正点としては燻蒸の場合の濃度基準について も最新の管理濃度に合わせたいと考えております。  シアン化水素については、現行の管理濃度が3ppmとなっており、それに合わせる形で基準値を 3mg/m3又は3cm3/m3としたいと考えます。臭化メチルについては、現行の管理濃度は5ppmとなって おりますが、現在開催中の管理濃度等検討会において1ppmに改正する方向で検討中であり、1ppm に決まった場合には、それに合わせるような形で燻蒸の濃度基準も決めたいということで、その 場合は4mg/m3又は1cm3/m3という値になります。  改正内容の4点目としては、今回の改正によりますと、3物質の濃度基準がそれぞれかなり厳し い数値になるので、実際の燻蒸の現場で燻蒸作業のあとに基準値以下に濃度を下げることが著し く困難な場合が予想されます。その場合の対応ということで、空気中の濃度を下げることが著し く困難な場合には、基準値を超えた場合でも、労働者に送気マスク、空気呼吸器あるいは隔離式 防毒マスクを使用させた場合には、立入りを可能とするような規定を新たに設けさせていただき たいと考えております。以上がホルムアルデヒドの燻蒸対策についての説明です。 ○櫻井座長 ホルムアルデヒドの燻蒸作業に関わるものについて、ホルムアルデヒドを対象物質 に加えるということと、濃度の基準を管理濃度に一致させること。著しく困難な場合には、空気 呼吸器や隔離式防毒マスクを使用させることによって立ち入ることを可能にするという3点です が、何かご質問、ご意見がありましたらお願いします。 ○和田委員 実際に現場で濃度を測ったことはあるのですか。 ○島田化学物質評価室長 特に試験データとして、燻蒸後の濃度を測ったものは入手しておりま せんが、現場においては先ほどご説明したように、検知管を使って気中濃度が予定の濃度まで下 がった以降に立ち入るという行為はしていることを確認しています。 ○櫻井座長 ほかに何かありますか。 ○内山委員 教えてください。実際には動物検疫の、動物を出したあとのその部屋全体を燻蒸す るということに使われているのですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 いま先生がおっしゃられたような作業と、毛皮、羽毛、あるいは 飼料の場合、それ自体についてもホルムアルデヒドで燻蒸するという作業もあると聞いておりま す。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。 ○和田委員 医学部の解剖室の濃度はどうなのですか。 ○島田化学物質評価室長 医学部の解剖、もちろんそれ以外の解剖にもホルムアルデヒドで浸漬 して保存されたご遺体や動物を使うことがあって、その場合にはかなり高い気中濃度になると伺 っております。これは局所排気等の措置をしないと管理濃度が守れないような状況だと聞いてい ます。 ○和田委員 そこは労働衛生の対象にはなりませんか。 ○島田化学物質評価室長 医学部や病院で働く医師が労働者の立場にある場合には、その方につ いては規制の対象になります。 ○和田委員 教官は対象になりますね。 ○櫻井座長 教育者もいますからね。 ○和田委員 この場合、整合性をどう考えるかということになりますね。あとは問題がないと思 います。 ○櫻井座長 ほかにありますか。では、この案の内容に沿って特化則の改正の作業を進めていた だくということでよろしいですか。では、そのように決めさせていただきます。  次に「ニッケル化合物の規制対象について」です。事務局から説明をお願いします。 ○島田化学物質評価室長 資料1-10と別添1の2つの資料に従って説明します。資料1-10は「ニッ ケル化合物に対する規制の対象について(案)」です。ニッケルの化合物については、「平成19 年度化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会」において、粉状のニッケル 化合物(ニッケルカルボニルを除く)の製造・取扱い作業について管理措置が必要とされていま す。これは参考1を見ますと、昨年度ご審議をいただいた評価結果が参考として付けられていま す。ここにあるニッケルの評価の結果と対策の方向ですが、粉状のニッケル化合物について、評 価値を超える個人ばく露量が測定されたため、粉状のニッケル化合物の製造・取扱い作業につい ては、局所排気装置等の設置、作業主任者の選任、作業環境測定の実施・評価、特殊健康診断の 実施等による適切な管理が必要と考えられる、という評価結果をいただいています。  これについては、併せて別添1を付けており、32頁の最後のパラグラフ、(4)リスクの判定及び 対策の方向性の3行目に、「個人ばく露測定においては、二次評価値のうち低い値を超えるもの が11事業場・計39人のデータのうち3事業場・計6データで見られるが、これは電池製造業務、メ ッキ液の製造業務及びニッケル化合物の製造業務における粉状のニッケル化合物の製造・取扱い 作業によるものである」ということを指摘していただいています。よって粉状のニッッケル化合 物の製造・取扱い作業については、局所排気装置等の設置の実施等による適切な管理が必要であ るということです。これは粉を扱う場合において、問題となるようなばく露レベルに達するとい う評価をいただいた上での決定です。  これを踏まえて、その後、制度の手続を進めたわけですが、資料1-10の次の頁に表がありま す。これは我が国の政府が諸外国に対して、我が国の規制についてしっかり説明をしていく必要 があるということに基づくアクション・プログラムです。このアクション・プログラムにおい て、外国政府及び企業から出された意見が2点ほど書かれています。  順を追って説明しますと、まず1番目は「粉状のニッケル化合物の定義」です。粉状のニッケ ル化合物を第2類物質として規制対象とする上で、「粉状」の定義として国際的な合意を反映 し、0.1mm以下の粒子を指すことを定義すべきであるということです。特に吸引による人体リス クを有する「粉状」の物質と、そのようなリスクを有しない「塊状」の物質を適切に区分するこ とは可能である、というご意見です。  2点目は「ニッケル及びニッケル化合物の化学種別及び暴露経路での重要性」ということで す。種々のニッケル形態間では、人体に対する潜在的な危険性に大きな相違点が存在する。硫化 ニッケルを高濃度で十分な期間吸引すれば、発がん性があることは認識されているものの、ニッ ケルそのものの粉塵には発がん性は認められていない。また特定のニッケル化合物による危険は 固有のばく露経路に生ずる。しかしながら、今回の規制の考え方が、ニッケルイオンを含有する すべての物質に同一の有害性があるとして、ニッケル及びニッケル化合物に特定の化合物のTLV を採用することとするのは誤りだ、という以上2点をいただいております。  これを事務局として検討した結果、まず1番目のニッケルの粉状の扱いです。これについては 最初の頁に「国際機関における取り扱い」で調査したところ、3点ほど参考例が挙がっていま す。米国産業衛生専門家会議(ACGIH)においては、ニッケルの許容濃度(TLV)として、気道の どの部分に沈着しても有害作用を発揮する粒子の質量濃度というものを採用しており、この粒子 についは、固体、液体のものを含み、流体力学的粒子径100μm以下のものとしております。  EUは、EUの指令に基づいてSafty Reportの作成を義務付ける対象として、ニッケル化合物につ いてはインハラブル・パウダーとして、当該粒子については、口又は鼻から吸入可能な物質の粒 子で流体力学的粒子径100μm未満としております。  ISO(国際基準機関)ですが、ISOは国際基準において、インハラブル粒子として、空気で運ば れる口又は鼻から吸入されるすべての物質粒子で、風速4m/s未満の場合における流体力学的粒子 径が100μm未満のものとしています。  以上を検討したところでして、この結果を踏まえ、最初の柱書の第2パラグラフに書いてある 「その際の具体的な規制対象について」ということで、事務局として「ニッケル化合物(ニッケ ルカルボニルを除く)のうち、一般的な作業環境において吸入可能な粒子サイズのものとし、お おむね流体力学的粒子径0.1mm以下のものとする」という提案をさせていただきたいと思いま す。これについて、まずご審議をいただければと思います。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。何かご意見、ご質問ございますか。 ○和田委員 気道は確かにインハラブルで、このぐらいでいいと思うのですが、もし鼻腔の穿孔 とか、鼻の障害と考えた場合、この値で担保できるのでしょうか。もっと大きな粒子がこのよう な所に沈着してという可能性は否定できるということですか。気道のほうは確かにいいのです が、ニッケルでも、鼻腔が問題になることがありますが、その場合はどうなのですか、この値で いいのですか。 ○櫻井座長 インハラブル粒子は鼻腔も含んでいますので。 ○和田委員 0.1mm以上の粒子でも飛んできて鼻に付く可能性はかなりあるのではないかと思う のですが、それでいいかどうかです。 ○島田化学物質評価室長 いまのACGIHにおいては、和田委員からご指摘をいただいた点も踏ま えて、鼻から、あるいは口から入るという全体の気道を通してリスクのある粒子として、いまの 大きさを定義しており、そういう意味では鼻、口における問題も踏まえた数字だと理解しており ます。 ○和田委員 確かに鼻にもっと大きなものが入らないかというだけのことです。 ○島田化学物質評価室長 いまの「国際機関における取り扱い」のISOのところで、先ほどの説 明と重複しますが、ISOの場合には風速4m/sということで、通常の風あるいは空気の移動がある 中では、この粒子径でよろしいのではないかということです。確かに先生がおっしゃるとおり、 風が強いときなどにおいては、もっと大きな粒子が飛ぶ可能性があります。そういう場合も考慮 しなければいけないということで、私どもは提案については、一般的な作業環境ということで、 特に強風が吹く、あるいは特殊な環境下に置かれる場合については、この定義には属さないと考 えています。 ○櫻井座長 これは人が吸入するときの鼻腔における吸入の速度などが関わっているわけで、あ る程度以上大きいと吸入しない。 ○和田委員 鼻から入らないと言えますか。 ○櫻井座長 そういうデータになっていると、私は理解しています。 ○和田委員 いわゆる100μm以下のものでなければ、鼻から中へ入らないと言えるか言えないか の問題です。鼻腔穿孔とか、鼻腔がんなどを問題にした場合です。 ○櫻井座長 その先のニッケルの管理濃度を検討する際に出てくるテーマなのですが、鼻腔がん を想定して、それを考えると鼻への沈着も無視できないから、いわゆるレスピラブル粒子ではな くて、インハラブル粒子にするという論議になっておりますので、今までのデータから見ると、 これでいいのではないかと了解しております。 ○和田委員 国際的には問題はないと思いますが、作業の仕方で粉末がバーッと出た所で働いて いる人です。大きな粒子は当然こちらへ入ってくると思います。 ○櫻井座長 全然入らないと……気はしますがね。 ○和田委員 気道より末梢ではそうはないと思います。気道辺りで捉えられてしまうと思いま す。 ○内山委員 細かいことですが、いまPM10でも問題になっている「以下」と「未満」ですが。 ISOのほうは「未満」のものを言うということで、100は細かくいえば測らなくていいのではない かということです。いまアメリカと日本で、法律上のPM10、SPMの定義が「10μm未満」となって いるものと、「10μm以下」となっているものがありますので、日本は日本でこのまま行くしか ないと言っているのです。ここで以下とすると、今度はISOでは「100μm未満」となっている と、どちらで測ればいいのかという細かいことを聞いてくる方がいるのですが、この辺はいかが でしょうか。 ○櫻井座長 「未満」にするか、「以下」にするかですね。 ○島田化学物質評価室長 事務局としては、この科学的な根拠が十分議論された上で、それぞれ の機関が、それぞれの定義をされたと理解しています。そういう中で、「以下」と「未満」とい うことになりますと、「以下」のほうが大きな粒子も基本的に含むということですので、リスク を見て、「以下」とさせていただきましたが、そこについてはご審議いただければと思っていま す。 ○内山委員 例えばISO基準を満たしていますという機械を売り込んできたときに、厚労省の法 律では100μgmまで測らなければいけないということで,この機械では駄目だということになる らしいのです。ISOの国際基準で、これを満たした測定機械ですと言ったときに、「100未満」と なりますので、「以下」と「未満」のどちらかなということです。 ○櫻井座長 ISOに合わせたほうがいいだろうということですね。 ○内山委員 それはわかりません。 ○島田化学物質評価室長 それでは、そこの部分については私どもで関連の部署と相談をさせて いただいて、問題がなければ適正な表記をさせていただく形にしてよろしいでしょうか。 ○櫻井座長 一応ご検討いただいてですね。 ○清水委員 安全サイドから考えたら、「以下」のほうがいいということですね。 ○櫻井座長 これは実際に「0.1未満」とか、「以下」ですよということを証明しようと思った ら、サンプリングは、いわゆる普通のサンプラーでは無理で、測らなければいけない、形態学的 にたぶん測ることになると思います。そうすると、0.1ぴったりあるというのと、それ未満と若 干差が出てくる可能性があります。 ○島田化学物質評価室長 そうしますと、いまのご議論を踏まえて設定をさせていただいて、後 ほどご報告するようにいたします。 ○櫻井委員 そういうことでよろしいですか。一応念頭に置いて検討し、妥当な線に落ち着かせ ようという方向にさせていただきます。大きさについては0.1mmということでよろしいですか。 ありがとうございます。 ○和田委員 リスクについてのデータはかなりありますか、疫学調査による肺がんのデータと か、かなりありますか。 ○櫻井座長 ニッケルについてはわずかしかないようです。 ○和田委員 値をどのように決めるかということが、次に問題になる可能性があるのではないか と思います。 ○櫻井座長 値を決めるというのは。 ○和田委員 ニッケルで、いまのところは疫学をやって、インハラブルのものでどうだったとい う結果があればいいと思うのです。そうすれば数値はすぐ作れますが、いままでのデータはそう いうのがあまりないような気がします。 ○島田化学物質評価室長 そのようなデータがありましたら報告をさせていただきます。 ○櫻井座長 もう1つのは化学種の問題ですね。 ○島田化学物質評価室長 アクション・プログラムの2点目ですが、先ほどご指摘をいただいて おりますニッケル及びニッケル化合物の化学種別のばく露経路の重要性です。ここにご指摘をい ただいているものについては、1つは、ニッケルそのものの粉塵には発がん性が認められていな いということです。金属ニッケルについてご指摘をいただいていることについては、今回の評価 の中で、金属ニッケルについては発がん性等の懸念が認められないという判断をいただいてお り、そういう意味で今回の場合には、ニッケル化合物を対象としたということですので、その 旨、回答するつもりです。  それぞれの化学種別においてリスクが違うのではないかということですが、それについて回答 方針の中に記述しています。これについては、当該二次評価値は、WHOにおける可溶性ニッケ ル、酸化ニッケル及び亜硫化ニッケルの評価値を基に算定したものです。  ニッケル化合物の評価値については、可溶性ニッケルについては二次評価値:0.1mg/m3、不溶 性ニッケルについては、同じく0.2mg/m3、亜硫化ニッケルについては0.1mg/m3ということで、3つ の評価値の間には大きな違いはないということと、今回のばく露調査において確認をしたとこ ろ、精錬所等において複数化合物を製造し、取り扱うケースも多いことから、同一の二次評価値 を採用することとしたいということで、大きな差がない3つの可溶性、不溶性、亜硫化ニッケル については、0.1という形で二次評価値を出すことでよろしいのではないかということです。 ○櫻井座長 この件について何かご意見がありますか。それでは、ニッケルの問題については以 上で検討を終わります。同じくニッケル絡みですが、ニッケルチタンイエローについて、事務局 から説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 ニッケルチタンイエローについては、資料1-12、先生方には参考 としてパンフレットも付けております。  ニッケルチタンイエローは、ニッケル化合物の一種です。島田室長からお話をしましたアクシ ョン・プログラムによるオフィシャルな手続というわけではなかったのですが、私どもで検討会 を行い、報告書を発表していく中で、ニッケルチタンイエローの関係団体から意見があり、本 日、先生方に諮りたいということです。  ニッケルチタンイエローについては、その構造の特性等に鑑み、今後規制を予定しているニッ ケル化合物から除外してほしいという要望が、関係団体から提出されており、その概要は次に掲 げるとおりです。  ニッケルチタンイエローは、チタン、アンチモン、ニッケルを含む複合酸化物をというグルー プに分類される物質です。組成はこちらに書いてありますが、結晶構造の特徴として、酸化チタ ンと同様にルチル型結晶構造をとるという極めて安定なものです。ルチル型結晶構造について は、パンフレットの表紙をめくると左側の頁に書いてあります。白マルが酸素イオン、青のマル がチタン又はそれ以外の金属のイオンです。このような構造をとると、それぞれの構成成分によ る影響が非常に出にくい、という説明を団体から受けています。  特徴あるいは用途ですが、緑みのある黄色の顔料ということで、さまざまな用途で使用されて います。物性としては耐候性、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性に優れています。  2番目は、ニッケルチタンイエローの有害性ですが、今まで得られているデータによります と、急性毒性は示さない、皮膚刺激性は示さない。各種の毒性については、反復投与毒性、遺伝 毒性、生殖・発生毒性についてはないことが確認されています。発がん性については、発がん性 試験は行われていませんが、変異原性試験が陰性であり、また、薬物動態試験で生物学的利用が 認められていないことから、発がん性の可能性は極めて低いと考えられるというのが、団体から の意見です。  今回、ニッケルチタンイエローを規制対象のニッケル化合物から除外してほしいという根拠と しては、次の2点です。まず1点目として、米国の国家毒性プログラム(NTP)において、酸化ニ ッケルについて発がん性研究のデータが得られています。これについては、酸化ニッケルではラ ットで発がん性が認められていますが、団体からは、発がん性が認められる濃度と、平成19年度 に私どもが行ったリスク評価検討会の中で示した個人ばく露測定の値を比べたときに、個人ばく 露の最大値は0.3545mg/m3で、発がん性試験においてはこの濃度ではコントロールの場合と差が ない、つまり、発がんが見られないという状況なので安全ではないかということです。  第2点としては、OECDのSIDSの初期評価会議に評価結果で、こちらはOECDの中で生産量の多い 化学物質について、各国が協力して有害性データを集めていこうという取組みでやられた評価で す。この中では、ラットに1日6時間で5日間60mg/m3の吸入性試験を行い、そこにおいては毒性の 臨床兆候は生じなかったとして、吸入した顔料は肺から排出されて、約50日で半減するというこ とでした。したがって、肺に残存することによる異常発生のリスクは低いと考えられるというも のです。それぞれの根拠資料は先生方にはお配りしており、あらかじめご覧いただいていると思 いますので、詳細な説明は省略させていただきたいと思います。概要は以上です。  団体からの要望としては、ニッケル化合物からニッケルチタンイエローを除外してほしいとい うことですが、それが妥当かどうかについて、先生方のご意見を頂戴したいと考えております。 ○櫻井座長 いかがですか。 ○江馬委員 NTPの発がん性試験で個人ばく露の最大値と、発がん性のあるレベルとどのぐらい の差があるのですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料の2頁の「チタンイエローの吸入暴露について」に2年間の吸 入研究ということで表が出ています。実際にやられたものとしては、酸化ニッケルの吸入の試験 で、酸化ニッケルそのもののばく露濃度のほうが動物実験のときの濃度が網掛けになっている箇 所です。その濃度をニッケルに換算した値がその次の列ですが、ニッケル換算にして0、0.5、 1.0、2.0という値での試験で、その際にどれだけの腫瘍が発生したかが、それぞれ右側に書いて あります。  一方、厚生労働省で実施したばく露実態調査は、同じ資料の4頁に表が出ています。これはい ろいろな測定結果をまとめて載せています。いちばん右側が個人ばく露測定の結果で、上から2 段目の0.3545mg/m3という値が個人ばく露の最大値です。 ○和田委員 酸化ニッケルは不溶性、溶性のどちらに入るのでしょうか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 不溶性です。 ○和田委員 酸化ニッケルの2年間の研究で、不溶性のものがどうして腎臓に腫瘍を発生させる のですか。ラットの実験では腎臓に腫瘍が出ていますね。 ○櫻井座長 腎臓にも出ていますね。2.5でちょっと増えていますね。コントロールもかなり出 るのだけれども。ただ、不溶性といっても、肺に沈着した場合、かなり溶けてしまうということ を考えると、酸化ニッケルは、先ほど中間的と言いましたが、不溶性と片付けられないような気 もします。 ○和田委員 どうなのでしょうか。 ○内山委員 もしチタンイエローが酸化ニッケルを代用すると考えれば、2頁の表からいくと、 ラットの特に雌なのですが、3番目の濃度の酸化ニッケルで1.25mg/m3で肺腫瘍が増えると。その 辺りをNOAELか、その下の0.62をNOAELとすれば、業界団体の方が言っておられる0.3より低いと ころでは大丈夫ではないかというのは、解釈の仕方が違うと思います。NOAELを、動物の種差 10、個体差10として不確実性係数100で割る。この場合、酸化ニッケルではなくてニッケル換 算、あるいはチタンイエローに換算した16.1mgあるいは32.2mgというのがNOAELだろうと思うの です。それを100で割れば0.16mg/m3ということで、ガイドラインなり基準を作ろうとすれば、そ の辺になるので、それは現在の0.3の最大値、平均値が0.1ですので、その辺の値かと思います。  この業界団体の方が解釈しているのは、16.1mgであまり影響がないから大丈夫なのではないか ということですが、これを何千人に1人、何万人に1人という確率で影響がでるところで見ようと 思ったら、不確実性はあるけれども外挿していくしかないのです。そうしますと、もし酸化ニッ ケルで代用しようとすれば、これは除外する理由にはならないです。 ○櫻井座長 除外する理由にはならない。他にいかがでしょうか。  私がもう1つ気になるのは、2番目の初期評価で、半減期は50日というのは長いです。通常、半 減期の7〜8倍で平衡に達するということから考えますと、ばく露を継続した場合、1年ぐらいは ずっと肺の濃度が上昇していく。ですから、この場合は5日間しかばく露していませんので、実 際にもう少し低い濃度でやったとしても、1年間継続したばく露では、肺の濃度がどこまでいく のかわからないです。  それともう1つは、「毒性の臨床兆候は生じなかった」と書いてありますが、データを見てみ ますと、肺の病理組織学的な所見を調べているわけではないです。それと重量も調べていないと いうことですので、おそらくニッケルチタンイエローそのものは、相当毒性は低いほうだろうと 想像はしますが、いまあるデータで除外する根拠というと、ちょっと無理ではないか。業界で述 べておられる(1)、(2)とも、根拠としては不十分だと私は考えています。 ○内山委員 先生のおっしゃった「SIDSの初期評価プロファイル」の細かい訳のところに、「組 織学的検査が行われていないので、信頼できるNOAELの同定ができない」と書いてありますの で、これはいい加減なことをやっているのではなくて、きちんと評価しています。だから、これ はNOAELとは言えないということでいかがでしょうか。 ○櫻井座長 それから、High Volume Chemicalsのようですので、もう1つは現場で非常にばく露 が少ない可能性もあるのですが、そういうデータも特にない、あるいはばく露しているかもしれ ない。それは何ともわからないから、いまの段階で適用除外というのは無理だと考えます。 ○清水委員 私も毒性データが足りないと思います。例えば変異原性試験が陰性と書いてありま すが、大体の金属化合物は変異原性試験をやっても出ませんから、あまり信用できないと言える かと思うのです。それから、この化学式で、チタン、アンチモン、ニッケルで、この混合比は変 わらないのですか。これは常にこの割合で作られるということでしょうか。あと、ここにさらに クロムも入ってきますよね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 構成比はパーセンテージの範囲という形で書かせていただいたの で、各社の製品によっても違う形になりますし、クロムが入ったものは名前が変わりまして、ク ロムチタンイエローという別分類ではあるのですが、そういう製品もあります。パンフレットに はそちらのことも書いてあります。 ○櫻井座長 団体からのご要望は除外してほしいということのようですが、この検討会ではそれ をいま認めることは難しいという結論でよろしゅうございますか。                  (異議なし) ○櫻井座長 そのようにさせていただきます。次に「健康診断に係る小検討会の結果」について です。ニッケル化合物と砒素及びその化合物の特殊健康診断項目について、6月3日に小検討会が 開催されました。その結果について事務局から説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料1-11「ニッケル化合物、砒素及びその化合物に係る特殊健康 診断項目について」というものです。6月3日に小検討会を開催したのですが、今回は「労働安全 衛生法における特殊健康診断等に関する検討会」との同時開催としております。こちらはすでに 特化則や有機則等で、特殊健康診断が義務付けられているものについて、健診項目を見直す会議 がありまして、その第1回目と、私どものほうの健康診断の小検討会を同時開催という形で、6月 3日に開催いたしました。私どものほうは、これから新しく規制をかけようというものの健康診 断の項目ということですが、安全衛生法全体の枠組みの中で、整合性のとれた健診項目にしてい くためには、両方の会議を同時に開催するのがいいと判断いたしました。  会議の際には、これから行う特殊健康診断の見直しの全体的な考え方を整理した上で、今回の 対象物のニッケル化合物、砒素及びその化合物の検討をしたわけですが、検討結果で得られたも のは、資料1-11になります。説明の都合上、2頁の「砒素及びその化合物」から説明させていた だきます。  砒素及びその化合物ですが、まず(1)の「考え方」です。現在、砒素化合物の中では、三酸 化砒素がすでに特定化学物質の第2類物質となっており、特化則の中で三酸化砒素の健康診断が 定められています。今度は三酸化砒素だけではなくて、単体の砒素、それ以外の砒素の化合物に ついても健康診断を行っていこうということで、その項目を検討したわけです。  また、昨年度のリスク評価においては、砒素化合物の中でも、アルシン、ガリウム砒素につい ては、実際の現場でのリスクが低いことが認められましたので、これについては規制対象から外 し、特殊健康診断からも外れることになりますので、それ以外の化合物について考えるというこ とです。  毒性の面から見て、三酸化砒素の健診項目をそれ以外の砒素化合物にも適用していくことが妥 当であろうということで、具体的な健康診断の項目を考えました。  従来の健康診断の三酸化砒素の健診項目は、この表の左側です。大きく「一次健診」、「二次 健診」の項目に分かれていますが、今回見直す案が右側で、見直し案としては、「三酸化砒素」 というタイトルが、「砒素及びその化合物(アルシン及びガリウム砒素を除く)」というタイト ルに変わります。  続いて、具体的な内容の変更点です。2)の「作業条件の簡易な調査」ですが、従来は「作業 条件の調査」は必ずしも受診者全員に共通ではなかったのですが、これからは一次健診の中で、 どの物質の場合にも入れていこうという考え方で、砒素及びその化合物の場合にもこれを入れる ということです。作業条件の調査は、二次健診の中にもともと入っているわけですが、二次健診 はかなり詳しい調査をするのに対して、一次健診の場合ですと、受診する労働者自身からの聞き 取り、あるいは事業場でやっている作業環境測定の結果を入手することによっての作業条件の 「簡易な」調査ということです。  次の見直し項目は、3)ですが、これは「三酸化砒素」を「砒素及びその化合物」に置き換え ただけです。左側の現行はあって右ではなくすというものが、「尿中のウロビリノーゲンの検 査」です。この尿中ウロビリノーゲンの検査については、現在、この三酸化砒素だけではなく て、他の物質でも、肝障害を与えるようなものについて、この項目が入っているわけですが、そ の必要性が薄れてきたということで、今回はこの項目は削除しようという考え方です。  二次健診の項目にいきます。2つ目の項目で、前半でエックス線関係の検査、真ん中辺りで、 現行の項目でいうと「毛髪若しくは尿中の砒素の量の測定」があります。今回の見直しについて は、尿中の砒素の関係から申し上げますと、現在は砒素の化合物の種類によらずに測定する形で すが、日本人の場合には、海草等も多く摂るため、食物由来の砒素もこれではカウントしてしま うので、その影響をできるだけ排除するために、砒素化合物の中でも、砒酸、亜砒酸、モノメチ ルアルソン酸に限定すべきではないかということです。毛髪中の砒素については、化合物の種類 ごとに定量的に測定することが困難ということで、食物由来のものと、そうでないものを区別で きないとなりますので、こちらについては健診項目からは落とすべきではないかということで す。  これが砒素及びその化合物の健診項目の案です。説明が漏れましたが、こういった項目につい ては、肺がんあるいは皮膚がんを早期に発見するという目的を持ちまして、このような健診項目 を立てています。  続いて1頁の「粉状のニッケル化合物に係る特殊健康診断項目」です。こちらは従来健康診断 は行われていませんでしたので、新たに健診項目を立てるわけですが、他の特化物とできるだけ 整合性をとるという考え方で検討されました。  項目を読み上げていきますと、一次健診として、「業務経歴の調査」、「作業条件の簡易な調 査」、「ニッケル化合物による皮膚および気道の自他覚症状の既往歴の有無の検査」、「皮膚炎 等の皮膚所見の有無の検査」、「皮膚および気道の自他覚症状の有無の検査」です。二次健診に ついては、「作業条件の調査」、医師が必要と認める場合はということで、次の項目はすべてと いうことではなくて、それぞれの状態に応じて、いずれかのものを選んで検査をするということ です。(ア)「尿中のニッケル量の測定」、(イ)「胸部のエックス線直接撮影若しくは胸部CT 撮影、喀痰の細胞診」、(ウ)「皮膚パッチテスト、皮膚の病理学的検査、血液免疫学的検 査」、(エ)「腎尿細管機能検査」、(オ)「鼻腔の耳鼻科学的検査」ということで、こちらの ニッケル化合物については、肺がん、感作性の皮膚炎を早く見つけることを目的とした検査項目 となっています。以上が6月3日に開催された小検討会の結果です。 ○櫻井座長 ただいまの説明の内容について、ご質問、ご追加がありましたらどうぞ。                 (特になし) ○櫻井座長 先に進みます。戻りまして議事(2)の「平成20年度リスク評価対象物質のばく露 実態調査について」です。事務局から説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料1-8の「有害物ばく露作業報告の概要」です。先ほど本年度 のばく露作業報告、事業場から監督署に出してもらう作業報告の状況について簡単にご報告しま したが、それのもう少し具体的なものです。  全体で44物質のうち、25物質について報告がありまして、この表の中に数字が2列書かれてい ますが、左側は実際に報告のあった事業場の数です。これを見ておわかりいただけますように、 物質によっては非常に取扱い事業場数の少ないもの、1物質当たり2事業場、あるいは1事業場と いうものもあります。先ほどもご説明いたしましたが、ばく露作業報告自体が全事業場を調査す る目的あるいは形式になっていませんで、1年間で一定量以上を取り扱う事業場だけが対象とい うことですので、必ずしも全国にこの事業場だけということではないかもしれませんが、今回の 報告ではこれだけの数ということです。  今後この事業場の中から、いくつかずつ選んで、ばく露実態調査、すなわち現場での作業方法 を調べ、その場での作業環境測定や個人ばく露測定等を進めていくことになりますが、いまのと ころ予定している数が右側の数字です。「予定数」と書いているのは、この調査に協力してもら えるかを各都道府県にある労働局を通じて事業場と調整中であるため、この数で確定というわけ ではないことを意味しております。トータル数としては、これ以上はあまり増えないかもしれな いのですが、若干の数の出入りがあるかもしれない状況です。  今回、44物質中、25物質が報告ありで、逆に言えば19物質については報告がなかったというこ とで、今後報告のなかった物質についてどういう対応をしていくかも考えていかなければならな いかなというところです。事務局からの説明は以上です。 ○櫻井座長 ただいまのご説明について、ご質問等がありましたらどうぞ。報告事業者が多いと ころからは、代表的な職種を選んで対象を決めようとしているわけですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 そうです。用途を見て、ばく露が高くなる可能性があるようなも の、あるいは従事している労働者が多いようなものをできるだけピックアップして、いま調整中 です。 ○櫻井座長 ご意見はございますか。これは報告を承ったということで次に進みます。5番目、 有害性評価及び評価値についてです。今日の最後の議題ですが、これがたくさんあります。「平 成20年度リスク評価対象物質の有害性評価及び評価値について」事務局からご説明いただくわけ ですが、まず考慮すべき事項について説明してください。 ○島田化学物質評価室長 資料1-5です。「平成20年度リスク評価における考慮事項について」 ということで、考慮すべき事項を事務局でピックアップしました。平成20年度のリスク評価候補 物質についてはEUの評価2以上、またはIARCの2A以上の物質のうち我が国で未評価の44物質を対 象として行うことになっています。過去2年に比べて物質数は大幅に増加しています。平成18年 度に始めたときは5物質、平成19年度は10物質評価をいただいたところですが、平成20年度につ いては44物質で、かなり意欲的な評価数となっています。  もう1つ特徴的なことを申し上げると、先ほどから申し上げていますように、過去2年に比べて 増加しているとともに、本年度のリスク評価が効率的に進められる上で問題が2点ほどありま す。そのリスク評価の上で考慮いただくべき点の1点ですが、米国産業衛生専門家会議 (ACGIH)、または我が国の産業衛生学会の許容濃度が設定されていない候補物質について、二 次評価値の設定の考え方の考慮が必要だということです。  これについては、資料1-5の後ろに、平成19年度に改訂をいただいた「リスク評価の手法」、 これは評価のガイドライン的なものですが、これを定めていただいています。前段の部分につい ては、特に有害性の評価と、ばく露状況を把握した上でリスク評価をするという一般的なリスク 評価の考え方になっていますが、各論として、特に4頁から関係する部分があります。  これについては、リスクの判定方法ということですが、リスクの判定方法については、(4)に 「一次評価」ということで、発がん性の閾値がない場合については、ユニットリスクを用いたが んの過剰発生率が算定できる場合には、がんの過剰発生率の10−4に対応した濃度を一次評価値と して評価する、ということが決められています。  次の頁です。(イ)ですが、がんの過剰発生率が算定できない場合については、以下の部分に 従ってリスクの評価をしていく。この段階では定量的なリスクの判定ができないため、イの二次 評価に移行する。二次評価は5頁のいちばん下にあります。二次評価値の決定については、許容 濃度又はTLVが設定されている場合については、原測として、設定されている次のいずれかの濃 度を選定することになっています。両者の値がある場合については、両者が一致している場合は その値を、また両者が異なっている場合については、最新の知見を考慮して、日本産業衛生学会 が勧告している許容濃度と、米国産業衛生専門家会議が提言しているばく露限界のいずれかの値 を設定するということで、2つの濃度値が基本になっているということです。  しかし、許容濃度、またTLVが設定されていない場合というのが問題になってくるわけです。 昨年度までのガイドラインにおいては、設定されていない場合については、例えば米国のREL、 またはドイツのMAKが定められている場合については、最新の知見を考慮して、いずれかの値を 用いることにする、という書き振りをしています。  それから、併せて6頁につきましては、もしそういった値がない場合については、構造的に類 似した化学物質で有害性等の性質も類似していると思われる物質について、イの(ア)のi、イ の(ア)ii(i)の優先順位で、二次評価値を決定する。構造的に類似した化学物質の許容濃度 がない場合については、個別に検討を行って二次評価値を決定するということです。  44物質については、かなり多くの物質について、許容濃度、TLVが設定されていないものがあ ります。そういった中でどうやってこれを評価していくかについて、この場でご考慮いただけれ ばというのが第1点目です。  次に資料1-5の第2点目についてご説明いたします。先ほど大淵からご説明しました「ばく露作 業報告の提出がない場合のばく露評価のあり方について」ということです。労働安全衛生法につ きましては、500kgを超える物質の製造あるいは取扱いのある事業場に、ばく露作業報告の提出 を義務付けています。法律によって提出が義務付けられています外国では、例えばEUにおいて は、REACHという制度がありまして、これに基づいて1t以上について報告の義務付けがありま す。このように、その取扱い量、製造量について、一定程度以上の量を扱っているものについて 報告義務を課しているというのが、我が国及び諸外国における状況です。  我が国において提出のあった事業場に対しては、ばく露実態調査を行って、この結果を基にば く露評価を行っているということで、過去2年間進めてきていますが、候補物質が拡大する中 で、事業場当たりの製造・取扱いが500kgに満たないため、ばく露情報が入手できないケースも あります。こういったケースについては、少量の取扱い作業の中に特殊なばく露形態をとるよう なものがあり、これらが的確に把握されない場合には、規制上大きな問題が生じるということと なります。この点についてご考慮いただきたいということです。  併せて、先ほど説明した点とダブりますが、特に500kg以下の物質で、最近になって使用形態 あるいはばく露シナリオがはっきりしたケースがありますので、ご報告します。先ほどのホルム アルデヒドについては、医療現場において使われているものやホルムアルデヒド燻蒸しているも のについては、事業場当たりの使用量が500kgに満たないということで、報告が上がってこない 状況でした。特にホルムアルデヒドの燻蒸については、パブリックコメントの段階でそのような 作業があることが確認されたために、改めてどういった規制が必要かを検討したということで す。このように、500kg以下のものでも注目すべき例があるため、今後そういったことについて どうやって考慮していくべきかを、この場でご指摘いただきたいと思います。以上の2点が考慮 すべき事項です。よろしくご審議ください。 ○櫻井座長 かなり難しい課題ですが、今年の後半でリスク評価を行うときに、どうしても必要 なポイントになります。今日は結論は無理だと思いますが、問題点等について自由にご発言いた だいて、フリーディスカッションということで意見交換をするのがいいのではないかと思いま す。次回は8月にありますので、それに向けて今日のうちに問題点を自由にご議論いただきたい と思います。  まず二次評価値の設定の考え方からいきます。あらかじめ委員の方々には、こういった議題を 出すということでご連絡をして、それについてのコメントもいただいているように聞いています が。資料1-5でも、(1)、(2)、(3)と3つほど。 ○島田化学物質評価室長 すみません、説明が不十分でしたので改めて申し上げます。先ほどご 説明した二次評価値の考え方で、特にACGIHなり、産業衛生学会の許容濃度がない場合について は、これらについて新たな指標が必要になるということで、その際にこれらの指標がない場合の 方法として、3つほど提案させていただきました。そこにある(1)(2)(3)です。  1点目は、我々が基準としていた2つの基準値以外の外国機関において設定された濃度基準値 について、これを採用してはどうかということです。  2点目として、労働現場における労働環境の管理濃度、気中濃度を前提として考慮させていた だいているわけですが、ない場合について、例えば一般環境に関して策定された濃度基準値、い わゆる大気汚染の基準値ができている場合について、こういったものを採用する可能性です。  3点目は、発がん性以外の毒性試験で捉えた無毒性量を採用する、あるいはその他の毒性につ いて幅広く考慮するとの提案です。これらの点についてご審議いただきたいというのが、今日の 趣旨です。よろしくお願いいたします。 ○櫻井座長 (1)は、当然参考にすべき情報があればそれを採用する方向なのだと思いますが、2 番目の一般環境に関し策定された指針とか、基準等も、当然参考になるわけですが、これは使え るケースは稀ではないかと思いますが。 ○内山委員 確認なのですが、平成20年度ですから、対象物質は今回の44物質と考えていいので すよね。その中で、これは発がん分類で2A以上、あるいは2のものを選んでいるので、おそらく 個々の物質の問題だと思うのです。一般的に、こうやっていこうとはなかなか言えないので。と りあえず次回までにこういうユニットリスクとか、発がんの指標のない物質をリストアップして いただいて、その物質でどう考えていくかにしたほうが、一般的に全部を考えていくと、一般論 はやったけれども、この物質にこれが当てはまるかというと難しい面も出てくるので。 ○島田化学物質評価室長 いま内山委員からお話がありましたが、実はその資料を用意していま して、その資料の説明を先にさせていただきます。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料1-7をご覧ください。「平成20年度リスク評価物質の評価値 関係資料」ということで、44物質について、それぞれ一次評価値の候補、二次評価値の候補にな るような数字を掲載しています。上から順に見ていきますと、1番目のアルファ,アルファージク ロロトルエンの場合ですと、まだ委託事業での有害性評価がされていませんで、一次評価値を計 算していません。二次評価値については、可能な範囲で、産衛学会あるいはACGIHの数字は調べ ていますが、定まったものはないということです。いまのところ事業場の実態調査を予定してい ませんので、この物質については、この点は定めなくてもいいかなと思っています。  次のイソプレンの場合ですと、こちらは発がん性の閾値がある物質で、閾値は1.7ppmです。ア メリカのAIHAで定めている値を二次評価値の案として書いていますが、2ppmとなっています。  3番目のウレタンの場合ですと、がんの閾値はなしで、ユニットリスクを計算すると、 0.00046ppmです。二次評価値については関係するところの評価値があるかを調べましたが、いま のところ適切なものがない状況で、今後この検討会の中で検討していただく必要があるもので す。  4番目の2,3-エポキシプロピル=フェニルエーテルの場合ですと、発がんの閾値なし、ユニット リスクを計算しますと0.002ppmで、二次評価値の候補としてはACGIHの0.1ppmとなっています。  44物質すべてを挙げていくときりがないので、このぐらいにいたしますが、二次評価値の欄を ざっと見ていただきますと、先ほど3番のウレタンは「設定なし(要検討)」と書いていました が、同じような状況にあるのが、6番のオルトーニトロアニソール、9番の4-クロロ-2-メチルア ニリン及びその塩酸塩、14番の4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、15番の4,4′-ジアミノジフ ェニルスルフィド、16番の4,4′-ジアミノ-3,3′-ジメチルジフェニルメタン、32番の1,3-プロ パンスルトン、36番のベンゾ[a]アントラセン、37番のベンゾ[a]ピレン、38番のベンゾ [e]フルオラセン、42番の2-メトキシ-5-メチルアニリンといったところについては、二次評価 値の候補となる値がいま手元になく、かつこれからばく露実態調査をする予定ですので、何らか の評価値を決めておかなければリスク評価ができないものです。以上です。 ○内山委員 一般環境で策定されているものは、まずないです。 ○櫻井座長 ないですね。あれば使えますが、まずないです。 ○内山委員 少なくともこの中に関しては検討しなくてもいいかなと。 ○櫻井座長 そうすると、3番目の発がん以外の毒性試験で捉えた無毒性量。 ○江馬委員 これも内山委員が言われたように、個々の物質でデータがどのくらいあるのか、ど ういう試験があるのか、そのデータの質がどうかということで、不確実性係数を追加していくこ とはあるので、個々に検討しないとわからないと思います。 ○櫻井座長 今日この一般論の後で、個別のものにも入りますので、そこでいままとめられてい る情報から見当はある程度付くと思いますが、その場合に、いま江馬委員がおっしゃいましたよ うに、NOAELはこれでいいと決めたとして、不確実性係数を100を取るとか、1,000を取るとか決 めたとしたら、それはここの場で二次評価値を決めたことになるわけですね。 ○島田化学物質評価室長 そういう形になります。 ○櫻井座長 そういうことも可能なのですね。その際、それが発がんにかかわるデータである場 合と、そうでない場合とありますよね。それは個別に考えるしかないでしょうね。 ○江馬委員 そうだと思います。 ○櫻井座長 そうではないデータのNOAELが結構高い数値だったら、それのみ依存するというの は危険ですね。 ○江馬委員 はい、危険だと思います。 ○櫻井座長 そのようにざっとスクリーニング的に見たとしても、この場で決められるかなと思 われるもの以外に全くデータがないというか、NOAELに相当するような数値がないものがあり得 ますね。その場合はどうしますか。 ○和田委員 文献的にもう1回探してみて、どうしてもない場合に無理をして作るというのはお かしな話だと思うのです。科学的な根拠もなしに作ってしまうのはおかしな話で、それはしょう がないから検討中とならざるを得ないのではないかと思うのです。必ずしも全部決めなくてもい いのではないかと思います。 ○清水委員 昨年だったと思いますが、変異原性があって閾値なし、しかもユニットリスクもな い、何のデータもないというときに、類似化学構造から類推したこともあるのです。ですから、 個々を見ないとなかなかわからないのではないかと思うのです。 ○櫻井座長 類似物質が使えるのならば、それは。 ○清水委員 構造的に類似があればですね。個々に見ていかないと、なかなかわからないと思い ます。 ○櫻井座長 いま個別に見て、ユニットリスクのない場合とおっしゃいましたが、ユニットリス クだけはあるというケースが多いのです。一次評価値は相当低い数字だと。 ○和田委員 いままでの検討からいって、ユニットリスクだけで判断はできないと思います。で すから、それで根拠にするというのはできないのではないでしょうか。二次評価値は全然別のも ので考えていますから。 ○櫻井座長 ユニットリスクは、例えばカリフォルニアEPA等が出しているものを使って出して いますが、10-4を超えたから直ちに規制というスタンスは取っていないわけです。あくまでも二 次評価値を使っています。そうすると、なぜ一次評価値なんて使うのかということを、和田委員 は度々おっしゃいましたが、そのように出した一次評価値よりも低いというものと、それは超え るけれども二次評価値を使ったものというのを記録には残しておく、というスタンスではないか なという気がするのです、いままでの考え方は。  将来に見直しが必要になるとしたら、10-4未満だったものよりは、それを超えていたもののほ うが優先順位は高いだろうという感じなのですが、一次評価値はあるけれども、その他の情報は 何もなくて、それはペンディングにしておくというのか。  もう1つ暫定というように数値を考える可能性はないのでしょうか。何というか、統一した数 字を。 ○和田委員 かなり冒険ですよね、根拠があればいいですけれども。 ○清水委員 問題は実際に測ってみたら相当ばく露しているというような実態があった場合に、 どうするのか。 ○櫻井座長 実際にデータは出てきてしまうわけですので、それが一次評価値は当然超えている からこそ問題になるので、一次評価値を大きく超えていた場合、何も判断基準なしで、それをペ ンディングにするのか、何らかの予防的な立場から数値を考えるのか。何と言いましたか、農薬 では統一的な。 ○島田化学物質評価室長 食品残留の基準の中に一律基準というのがありまして、ポジティブリ ストという位置付けの中で、特定の残留値が決まっていない場合に適用する基準として、 0.01ppmというものが採用されているようです。 ○櫻井座長 そういう考え方があるようですが、その内容は私は詳しく知らないのですが。農薬 の場合はADIとかいろいろあるのに、なぜそれを使わないで一律基準を使うのかもわからないの ですが、考え方としては、一応統一基準を使っているようですね。 ○島田化学物質評価室長 私どもはその分野の専門ではないので、十分なご説明をできるかわか りませんが、国内において、あるいは国際機関において、先ほど先生の言われましたNOAELなど に基づいて、1日当たりの許容摂取量が決まっているようなものについては、その値を採用す る。ただ、途上国等から入ってくる場合に、国内でそういう登録がされていない、あるいは国際 機関のデータがあって、そういう数値が決まっていない場合の化学物質の使用があるようですの で、そういったものが入ってきた場合に、先ほどの統一基準を採用するというように伺っていま す。 ○櫻井座長 今日はフリーディスカッションですので、私のいまのような話を持ち出してみたの ですが、無理かもしれない。 ○和田委員 いままでの評価値、かなりばらばらでしょう。低いものもあるし高いものも。ある 程度のところにきていれば、それはいちばん下をとって決めて、とりあえずはということになる と思いますが。 ○櫻井座長 難しいでしょうね。 ○和田委員 ええ、かなりばらついていますからね。統一的にこれだというのは。かえって規制 オーバーになったりすることもあると思いますし。 ○櫻井座長 例えば私、ACGIHもたくさん勧告していますから、その中で発がんを考慮したと書 いてある物質が26物質ぐらいあるのです。それがいくつぐらいの数字で勧告されているかを見ま したら、ppmで表現されているものでは0.005ppm〜2ppm、400倍の差があります。それからmg/m3 で表現されているものでは、0.0005〜0.1、これは200倍の差があります。これのいちばん低い数 字を取るというのは現実的ではないだろうと。例えば中間の200倍というような差があるから、 その中間を取るとしたら、0.01mg/m3とか、ppmであったら0.1ppmを取るとか、そういうような考 え方も無理かもしれないけれどもあり得るかなということです。  ○和田委員 いままで我々が出した二次評価値というのは、すべてそれを満足しているのですか ね。 ○櫻井座長 まだいままでのとは比べてはないのです。 ○和田委員 安全性サイドからでは、いちばん低い値ということで。 ○櫻井座長 いちばん低い値を取る。取れるものなら取ってもいい。 ○和田委員 実際上は規制という形からいうと、規制オーバーになってしまう可能性があります ね。使うなということになってしまう。 ○櫻井座長 そうなるのはどうなのだろうという気もしますね。ですから、中間を取ったらこう いう数字になった。これが低過ぎるのかそれとも高過ぎるのか、いまのような数字ですね。無理 な発想かもしれませんが、あえて判断しないでペンディングにするという選択肢のほうがいいの かもしれない。でも、あまり高そうなものがあったら、やはり考えるということもあります。実 際にばく露のデータが出てきた。 ○和田委員 何かあったら屁理屈はいくらでも付けられますから。このぐらいにして、とりあえ ずは考えないで、そういうことにして、私は無理して全部決める必要はないと思います。 ○櫻井座長 オランダか何かで発がん物質について、このプレコーショナリアプローチ(予防的 アプローチ)というので、0.1mg/m3というのを使っているという情報を見ましたので、そういう 発想もあるのだなと思いました。労働環境。だけど0.1mgというのは、やや高めですよね。で も、まあないよりはいいのかもしれません。 ○大前委員 ドイツの場合は、実際に工学的対策でできる最低濃度という決め方がありますよ ね。そういう決め方はできないのですかね。生体のほうからではなくて工学的のほうから技術的 に何か、そういう数字が決められれば、とりあえずはそれでいくというような考え方もあると思 うのですけれども。もともと生体のデータがなければ。 ○和田委員 いろいろな方法で発生が抑制できる最低のレベルが良いと思いますが。 ○大前委員 このぐらいのレベルといったら、工学的にいけるだろうということで。 ○和田委員 要するにフィージビリティを見るということです。当然、現在の技術の状況は必要 でしょうけれども。 ○大前委員 何らかの数字を考えるとしたら、生体のほうのデータがなければ、それくらいしか やりようがないのかもしれないのですけどね。ただ、誰がそれを決めるかという問題は別にあり ますが、工学的にどのぐらいの分析があればということですね。 ○櫻井座長 いくつかの選択肢が出てきましたので、今日はそればかり議論をするわけにもいき ませんので、これぐらいにして。 ○和田委員 ある程度、類似の作業においてフィージビリティを考えて、うまく最低のところで やっているぐらいのところを、とりあえず決めていくと。それ以上のものはちゃんと下げること ができるのなら、そこまで下げなさいと。 ○櫻井座長 2番目の少量で500kgの裾切りの問題。これはいかがでしょうか。 ○和田委員 これは決めた根拠は何なのですか。 ○櫻井座長 どなたか覚えておられますか。 ○和田委員 あまりにも数が多くなるから、この辺のところでとりあえずやっておこうというよ うな意味なのか。 ○島田化学物質評価室長 行政的な判断で500kg程度ということで決めたと伺っています。先ほ どEUのREACHの例で、その報告を求めるものを1tということにしていると説明しましたが、我が 国においてはより細かなところで、その値のばく露状況を報告いただくという趣旨で、その半分 の500kgと考えたということでございまして、特に化学的な根拠ということではないようです。  併せて申し上げますと、事業場に義務的な負担を負わせるということになりますと、一定程度 まとまった取扱いをしている所に限るという必要があると聞いています。  ○和田委員 プライオリティを付ける場合は、量とばく露異常者の数で、どれからやっていこう ということになるわけですが、どこまでいわゆるプライオリティ的な状況で、とりあえずここま でやりましょうということでしょう。 ○櫻井座長 もう1つ、もしかしたらPRTRの報告を求めるとき、裾切りをいくつにすると、どれ ぐらいカバーできるかという情報を整理していたような気がします。それも参考にしたのかなと 思いますが。 ○内山委員 いまおっしゃったように、逆に言うと、もう大きな工場は全部郊外に出て行ってし まって、中小の工場が残っているということで、アンケートを取って大体そのカバー率が6、7割 になるようにすると100kgだということです。都条令では、またもう少し低いところまでやって いる例もあります。たしかこれも500kgでカバー率でやったと思うのです。それ以上はやっても コストと労力との関係で、なかなか効率が上がらないということで500kgにしたと思いますの で、これはこれでいいと思いますが、先ほど和田委員がおっしゃったように、やはりばく露量と ハザードの積がリスクなので、これより小さくてもハザードが大きいものは取り上げたほうがい い気がいたします。 ○櫻井座長 労働環境ではもしかすると、年間の取扱い量が500kg以下でもひどいばく露があり 得る。ここの所にも特殊なばく露シナリオを有する場合というようなことがあるので、慎重に取 り扱う必要があるだろうというスタンスだと思うのですが、では、具体的にどうしたらいいとい う、いい方法があるかということです。 ○和田委員 発がん性の強さということは、ユニットリスクでやっていけばいいわけですね。 ○櫻井座長 はい、そうです。 ○和田委員 すべからくやりましょうと、そういう考え方が出てくると思うのですよ。 ○櫻井座長 特にいま発がん絡みの物質を取り扱っていますから、最初にこの課題はちょっと重 くのしかかるわけですね。 ○和田委員 そうですね。 ○櫻井座長 そうすると、何か特殊なばく露シナリオが想定されるような作業とか、あるいは特 にユニットリスクが大きいようなものについて考え直すか、ということもありますね。でも、基 本的。 ○和田委員 量と両方で考えていって、プライオリティを付けるだけのことですから。 ○櫻井座長 プライオリティをそういうことで、500未満について検討するかしないかについて のプライオリティを検討する必要があるかな。 ○和田委員 500以下でも発がん性が強い物質なのですね。それはやはり、ちゃんとやらなけれ ばいけないとなるのではないですか。 ○内山委員 やはり、ある程度ユニットリスクが大きいもの、NOAELが大きい物質で、いままで やってきた中で、例えばばく露量が多いと思われる作業というのは大体わかっているのですね。 開放系で作業をしているとか、原材料を混和しているとかいう作業形態をピックアップしていっ て、こういうのがあるかというのをマルを付けてもらう。そういう開放系でやっている、あるい は原材料を、あるいは点検のときも結構。普段は密閉でやっているけれども、点検作業、メンテ ナンスで開けるときには書くということを。それを何カ月単位でやっているのか、年単位でやっ ているのか。そういう作業形態を聞いていくのも1つの手かなと思います。そういう作業をやっ ている現場であれば、ある程度ばく露はあると考えて、それでリスクハザードの大きい物質であ れば考慮するというのも、1つかなと思うのですが。 ○和田委員 そういう現場では、局所換気とかは全くやっていないのですか。 ○島田化学物質評価室長 私どもの労働衛生上の義務付けがなくても、既にそういう局所換気な り、個別に防護用のマスクとかいったものをお使いになっている事例はたくさんございます。 ○和田委員 普通考えられる最高の局所排気をやって、それで濃度がどれぐらいになっているか というところで、それがフィージビリティだと思うのですね。その辺のところで線を引いてしま うとか、その辺を考えてもいいのではないかと思うのです。 ○島田化学物質評価室長 今いろいろご提案をいただきまして、特にユニットリスクとの関係、 それから発がんの閾値との関係で、少量の扱いについては、やはり議論が必要だということを伺 いましたので、この検討会の中で継続してご検討をいただけないだろうかというのが事務局の考 え方です。その辺りの提案を私どもから今させていただければと思っています。  お手元に資料の1-5の追加の形で資料を配らせていただきます。これにつきましては、いま先 生方からご指摘をいただいた点も含めて、500kgという裾切り以下のものであっても重要なもの があり、こういったものについて把握していく必要がありますが、ただ、これについては法律上 の義務ということでやる場合には、各事業場における負担がかかりますので、そういったところ をちゃんと考慮しなければいけないという点。それから逆に化学物質の管理は物質ごとに管理し ているため、事業場によっては非常に過剰な整備となる場合もあります。そういったことを事細 かに丁寧に考慮する必要があるのではないか、というのが事務局の考え方です。  そういう点で、今回配らせていただいた「主な検討内容」として2点ほど提案します。1点目の 「少量製造又は取扱い作業の把握が可能なばく露調査手法の策定について」は、いまお話をいた だいた点も含めて引き続きご検討をお願いしたいという点です。2点目の「少量製造又は取扱い における化学物質のリスク評価を踏まえた適切な規制措置のあり方について」は、特に非常に少 量のものを使っているような事業場における規制が、果たして適正かどうかということも含め て、ご議論をいただきたいと思っています。  この場で検討をお願いしたい点ですが、必要があれば、ほかの小委員会と同じような形で、頻 繁に集まっていただくような形にしまして、できればこの夏ぐらいまでにその辺りの検討をお願 いできないだろうかという提案です。よろしくご審議ください。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。比較的少量であってもその実体がわかるような調査手法。一 方、逆に少量であるにもかかわらず、過剰な規制がかかっているとしたら、それはどういうふう に取り扱うかという二面性になって、より正確なリスクに基づく対策に結び付くのだろうと思い ます。この場でご検討いただく、それと同時に必要に応じて小委員会のようなものを作って、や やインテンシブ(集中的)に期間を区切ってご検討をいただくという提案ですが、そういう方向 でよろしいですか。 ○和田委員 いまの議論を踏まえて、事務局でいろいろな叩き台みたいなものを考えていただけ れば、それに基づいてやりやすいのではないかと思うのです。 ○島田化学物質評価室長 ありがとうございました、いま和田委員からお話いただきましたよう に、私どもとして集められる情報、あるいはその辺りの提案をさせていただきつつ検討を進めて いきたいと思います。  また、先ほどの1点目の点につきましては、平成19年度に改訂をさせていただきましたが、評 価の手法がありますので、今日の議論を踏まえてその評価の手法を事務局で修正させていただ き、次の8月の検討会でご検討いただきたいと思います。 ○櫻井座長 では、そのように進めてください。あと10分ほどある時間を使いまして、評価値に ついて、各論に入りたいと思います。事務局からどうぞ。今日中にはとてもできないので残りは 8月に。 ○大淵化学物質評価室長補佐 今日、時間的に可能なところまで進めさせていただきます。資料 の1-7に戻っていただきます。先ほど途中まで簡単に説明いたしましたが、参考となる数値が現 段階ではないものについては、次回以降ご検討いただくことになるわけです。本日は、参考にな る値があるものについて、ここに掲げてある数値でよいか、あるいは複数の数値が挙がっている 場合等についてはどちらを選ぶか、といったご検討をお願いいたします。  順番にさせていただきます。資料の1頁からが数値のみの一覧表です。5頁からが二次評価値関 係ですが、その数値をどのような根拠で導いてきているかということの中で、特に発がん性が根 拠になっているかどうかがわかるような資料です。  資料1頁から順に見ていただきますと、まず1番目の物質はいまの段階では検討できない状況な ので2番から始めます。2番のイソプレンですが、こちらについては一次評価値の候補が1.7ppm、 二次評価値が、従来使っていなかったものですが、アメリカのAIHAという団体、米国産業衛生協 会という訳になるようですが、そこのWEEL、Work Place Environment Exposure Limitという数 字として、2ppmというのがありますが、こちらについてはどのようにさせていただいたらよろし いでしょうか。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。 ○和田委員 この団体は科学者が集まっているのか、それとも企業から集まっているのか、それ とも労働組合から集まっているのですか。 ○櫻井座長 このインダストリアルハイジニストが構成している。すると許容濃度等委員会も ACGIHもそうですよね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。 ○櫻井座長 インダストリアルハイジニスト。 ○和田委員 信憑性があるかどうかです。 ○櫻井座長 だけど、ACGIHではなくて、この団体といいますか。 ○和田委員 同じような信憑性があるかどうかだけのことで、あるということであれば ○櫻井座長 信憑性はあると。 ○和田委員 あるということであれば、いいのではないですか。 ○大前委員 提案理由は入ってましたね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 いま段階では事務局ではまだ提案理由が入手ができていなくて、 数字だけしかございません。 ○大前委員 たしか提案理由があったと思いますので、いずれ例えばACGIH値なり何なりに読み 比べれば、ある程度の質の評価はできるのではないかと思います。 ○櫻井座長 提案理由は確かにこの資料にはないです。 ○大淵化学物質評価室長補佐 5頁の表では提案理由は未入手ということで書いています。 ○櫻井座長 まだ未入手。 ○島田化学物質評価室長 引き続きその辺り探してみるようにします。 ○大前委員 古いのは持っているのですが、いつのがいちばん新しいのか知らないので。7、8年 前の提案理由書は持っているのですが、ただ、それ相当古い可能性があるので。 ○櫻井座長 7、8年前のものですか。新しいのがあるといいですね。 ○大前委員 あるといいですね。 ○島田化学物質評価室長 すみませんが大前委員の情報をいただきまして、事務局で資料を探す ようにします。 ○櫻井座長 では、その提案理由を見ないで、この場でというわけにもいかないですね。次、お 願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 3番のウレタンですが、こちらは一次評価値の候補は0.00046ppm ですが、一次評価値については、この値を使わせていただくことでよろしいでしょうか。 ○櫻井座長 一次評価値としてですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい、そういうことで。 ○櫻井座長 それはよろしいですね。 ○清水委員 一次評価値、それはいいと思います。 ○櫻井座長 次どうぞ。 ○大淵化学物質評価室長補佐 次は4番、2,3-エポキシプロピル=フェニルエーテルですが、一次 評価値の候補が0.002ppm、二次評価値がACGIHの値が0.1ppmですが、それぞれこの値を使わせて いただくことでよろしいでしょうか。ACGIHの提案理由ですが、5頁の4番のところで2001年に出 た値で、こちらの根拠としては「ヒトへの感作性及びラットへの鼻腔がんの可能性を最少にする 意図でTLVを設定している」という考え方で設定されているTLVです。 ○櫻井座長 設定年度は2001年、比較的新しいし、発がん性の考え方も入っているし、いいです ね。では、4番については皆さんいいだろうと言われるので、次お願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 5番のオルト-アニシジン、一次評価値が0.0025ppm、二次評価値 の候補がACGIH、日本産業衛生学会とも0.1ppmを提案しています。提案理由については5頁に ACGIH、産衛学会ともに2004年の提案ということです。ACGIHのほうから言いますと、労働者のメ トヘモグロビン血症による酸素欠乏症の可能性を最小限にする意図で、TLVを設定しているとい うことです。提案理由書の中にはマウス、ラットの発がん性試験で膀胱の移行上皮がんを誘発し たということもありましたが、数値を決める際には、必ずしもそこを考慮してということではな いように思います。  産衛学会については、毒性として問題となるのは、発がん性と血漿毒性であると。発がん性は ラット、マウスにおいて確認されており、血漿毒性はパラーアニシジンより強いとは想定しがた いが、発がん性を考慮して、できる限り低い値にする必要があるとして、許容濃度を設定してい るということで、こちらは発がんということも考慮においています。 ○大前委員 いまの産衛のTLVの血漿毒性は、たぶんこれ間違っていると思うので、血漿毒性、 おかしいですね。 ○櫻井座長 おかしいですね。そんな言葉。 ○大前委員 血液毒性か何かのことだと思うのですが、メトヘモグロビン血症だと思うのです が。 ○櫻井座長 溶血のことですね。 ○大前委員 ええ、これはたぶん。 ○大淵化学物質評価室長補佐 表現が。  ○大前委員 いや、字が間違っているのか、あるいはもともとの提案理由が間違っているのか、 あまり自信はないですけどね。たぶん血液毒性とかそういうことだと思います。何か間違いがあ る。 ○櫻井座長 血漿毒性というのは聞いたことがない。何か間違いがある。 ○大前委員 数字としては0.1ですね。 ○櫻井座長 皆さんよろしいですか。ではこれは0.1ppm。 ○中災防 プリントでは血液毒性になっています。 ○大淵化学物質評価室長補佐 すみません。失礼しました。6番を飛ばしまして7番のオルト-ニ トロトルエンです。こちらについては一次評価値の候補がありません。二次評価値については ACGIHでニトルトルエンのすべての異性体としてということですが、2ppmが提案されています。 そちらの提案理由としては5頁の7番のオルト-ニトロトルエンで、ACGIHの2006年の提案です。内 容としては、構造的に類似のアニリンのTLVに基づいてTLVを設定しているということで、メトヘ モグロビン血症を予防するための値ということで、がんは考慮していないということです。 ○櫻井座長 いかがですか。 ○大前委員 それは似ていると思いますが、アニリンと似ていると言われるとちょっと奇妙な気 がしますね。構造的にはアニリンと似ていると言われると、何となく奇妙な気がします。 ○櫻井座長 アミノ基とニトロ基が違うけれど、全くいまのところ、溶血毒性。 ○大前委員 だったらメトヘモグロビン血症の予防でいいと思います。 ○櫻井座長 これいいですかね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 2ppmでよろしいですか。 ○櫻井座長 はい。次お願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 8番の2-クロロ-1,3-ブタジエンです。一次評価値については、こ れから有害性評価書の作成を行いまして、その中で一次評価値については考えていきたいと思っ ています。二次評価値についてはACGIHで10ppmが提案されています。この10ppmの提案理由は5頁 です。ACGIHで1990年の提案でして、考え方としては上気道、それから目に対する刺激というこ とを根拠に10ppmが定められています。 ○大前委員 これは90年でちょっと古いかもしれないですね。これクロロプレンですよね。違い ましたか。別名クロロプレンですよね。 ○中災防 クロロプレン。 ○大前委員 クロロプレンだと思うので、もう少し何か別の評価の仕方があるのではないかと思 うのです。これはちょっと検討をしたほうがいいのではないかと私は思います。 ○櫻井座長 私もそう思います。上気道と目の刺激だけではなくて、視覚が考慮していない。こ れはどうしましょうか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 どういうやり方で検討させていただいたらよろしいでしょうか。 ほかにどういう値を参考にできるのか。 ○大前委員 そう言われると困るのですが。これは1,3-ブタジエンの塩素化物ですから、発がん の問題がどこかで出てくるのではないかと思うのです。刺激だけではいまこの場で決めるのは、 もう少し判断材料がほしいと思います。 ○櫻井座長 これにACGIHの提案理由というのが参考資料の14頁。 ○大淵化学物質評価室長補佐 参考資料2の14頁。 ○櫻井座長 これについては、今回のハザード情報がまだこれは出ていないのです。一次評価値 のところに、「平成20年度に有害性評価予定」と書いてありますけど。 ○大淵化学物質評価室長補佐 そうですね。評価書のほうはまだこれから作成になります。 ○櫻井座長 だからそれを待たないと。  ○大淵化学物質評価室長補佐 はい、では、評価書を待ってということで。 ○櫻井座長 要するにもっと新しい情報を加えて出していく。そのあとで検討をする。もう1つ ぐらいできますか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 わかりました。10番のコバルト化合物になります。今回のコバル ト化合物は、有害物のばく露作業報告については、塩化コバルト、硫酸コバルトに限定をして報 告を取っています。それはEUにおきましてコバルトの化合物のうち、この2種類だけがグループ2 に位置付けられているということで、この2つを取っています。  一次評価値については、いまのところ候補となる数字はありません。二次評価値については、 ACGIHでコバルトとして0.02mg/m3、産衛学会で同じくコバルトとして0.05mg/m3ということで、 数字は近いのですが、若干違っているという状況です。根拠の提案理由は5頁のいちばん下のと ころになります。まずACGIHですが、動物では種々の経路を通じたコバルトばく露試験で腫瘍形 成が認められているが、ヒトへの発がん性は不確実。コバルト及びその無機化合物について、ぜ んそくの進行や肺機能変性、心筋への影響を最小限にする意図でTLVを設定したというので、こ れが2006年です。同じく2006年に産衛学会の提案で、動物試験では発がん性は認められている。 平均コバルト0.06mg/m3ないしそれ以上で、気道の不可逆的な閉塞が認められることから、許容 濃度として0.05mg/m3を設定しているということです。 ○櫻井座長 低いほうなのでしょうかね。同じ2006年にACGIHと産業衛生学会と、ちょっと違っ た数字が出ていますが。 ○大前委員 これはたぶん見ているのはがんと、それからぜんそくなので、最後の判断で0.02に したか、0.05にしたか、それぐらいの差だと思いますので、これはカットしてもいいと思いま す。それから塩化コバルトと硫酸コバルトに限るというのが、ちょっと気になっていまして、こ れは限る必要があるのか。実際に測定したのはそうかもしれませんけど、特に限る何らかの理由 があるのでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 これは先ほど申し上げたEU等でのがんの発生の懸念が高いこの2つの 物質がその対象になっていたということでして、この場でその選択の適正も含めてご検討をいた だければと思います。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。 ○大前委員 産衛で2006年に討議した内容ははっきり記憶していないのですが、これ、やはり提 案理由は塩化コバルトとか硫酸コバルトでやったのですかね。あまり覚えていないのです。金属 系はみんな同じですが、いろいろな化合物があるので、もしいま言われたような理由で限定でき るのだったら、これでもいいと思いますが。限定しちゃっていいのかなという心配も若干ありま す。そのほか例えば水溶性のコバルトは大丈夫かみたいな、例えば硝酸コバルトは大丈夫かとい う話になってしまうと、硝酸コバルトが大丈夫とか、それは何で入らないのという話になってし まうとまずい気もするのです。だから、本当にこの2物質だけに限定していいのかどうか、やは りちょっと考える必要があるのではないかと思います。 ○島田化学物質評価室長 そこは事務局で関連の情報を集め、またご相談をさせていただくよう にします。 ○櫻井座長 今日は数字は低いほうでいいのですかね。予定の時間になりましたので、これで今 日のところは終わらせていただきます。 ○大淵化学物質評価室長補佐 次回は8月8日の金曜日、午前10時からということで、会場につき ましては調整中ですので、別途ご連絡を差し上げたいと思っています。 ○櫻井座長 今日はこれで終ります。ありがとうございました。 照会先: 労働基準局安全衛生部化学物質対策課                            化学物質評価室                電話03-5253-1111(内線5511)