08/06/05 薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会第2回議事録 薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政 のあり方検討委員会(第2回)議事録(案)         日 時:平成20年6月5日(木)16:00〜18:08         場 所:厚生労働省 共用第7会議室 ○寺野座長 どうもお待たせしました。それでは定刻になりましたので、ただいまから「薬害肝 炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会(第2回)」を開会したいと 思います。  委員の皆様には、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。本 日は、前回御欠席の椿委員も御出席でございます。森嶌委員はまだいらっしゃっていませんが、 後でいらっしゃいます。座長代理をお願いしております。  本日の議事でございますけれども、前回の会議におきまして、委員の中から薬害肝炎の被害者 の生の声を聞く機会を、是非この委員会でつくってほしいという発言がありました。総体的に全 体を見る前にそれを検討してほしいという意見がありました。  前回会議での最後の方の説明では、本日は論点整理をもとにした審議ということだったんです が、事務局とも相談しまして、論点整理の議論に先立ちまして、まず会議の冒頭で被害者からの ヒアリングを行いたいということで、原告弁護団からの推薦のあった3人の方に、お越しいただ きまして、お話をお聞きしたいと思います。  ヒアリングに御出席いただいた3人の方々、大変ありがとうございます。  それでは、まず資料の確認です。会議の開会に当たって資料確認ということで、お願いします。 ○医薬品副作用被害対策室長 それでは、お手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。  配布資料でございますけれども、議事次第、座席表、名簿のほか、資料1と資料2、あと参考 資料1というのがございます。  そのほかに、委員の皆様には、大平委員から意見書という1枚紙が出てございます。  前回の会議の資料をつづりました赤いファイルがございます。  前回の議事録の案を置かせていただいております。本日の会議でも、適宜御参照いただきつつ、 また御発言を御確認いただいた上で、修正がありましたら、来週11日までにファックス等で、議 事録については御連絡いただければと思います。  あと本日のヒアリングに当たりまして、用意いただいた資料のコピーも、テーブルの上に置か せていただいてございます。  不足しているもの等ありましたら、お申し付けください。また落丁等ありましたら、御指示い ただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○寺野座長 それでは、議事に入ります。まず、薬害肝炎被害者からのヒアリングということで お願いしたいと思います。  先ほど申しましたように、3人の方に御出席をいただいているのですが、順番にお1人、6〜 7分ずつということでお願いいたします。その後、御質問があるかと思いますので、一通り3人 の方の御発言があった後で、約5分程度しかとれないと思いますが、質疑の時間をとりた いと思います。よろしくお願いいたします。  それでは最初に薬害肝炎東京原告団の浅倉美津子さん、お願いできますでしょうか。よろしく お願いします。 ○浅倉参考人 よろしくお願いいたします。薬害肝炎東京原告番号18番、浅倉美津子です。  明日2008年6月6日で、私がフィブリノゲンを投与され、C型肝炎ウイルスに感染してから、 20年になります。そのとき出産した次男が明日20歳の誕生日になります。そんな記念すべき前日 に話をさせていただく機会をいただき、感謝申し上げます。  私は次男を出産した直後の記憶や体感を今も忘れることができません。次男の出産時の出血が 多かったため、輸血はHIVが怖いので、その代わりに何かを点滴しますと言われ、フィブリノ ゲン製剤が投与されました。氷水のような液体が私の体中の血管を瞬時に駆け回りました。途端 に歯の根の合わぬような震えがありました。熱がどんどん上がり、私は一体どうなっ てしまうんだろうと、不安でいっぱいになりました。  しばらくして次男と対面したとき、本来は感動のシーンとなるはずなのに、私は自分の体の異 変に対応するので精一杯で、次男の誕生を喜ぶ余力もありませんでした。次男は、まだ見えてな い目を見開いて、私に「大丈夫だよ、頑張ろう」と言っているようでした。  出産の翌日以降も体がだるく、微熱が続いたため、なかなか退院できませんでした。私はまだ 幼い長男と、産まれたばかりの次男が気になって気が気ではなく、産後2週間ほどしたころ、退 院後も通院することを約束して、やっと退院を認めてもらいました。  先生を説得して退院したものの、産後の体調はひどいものでした。家事どころか、夜中おなか をすかして泣き叫ぶ次男にミルクをつくってあげる体力もなくしていました。  私は結局退院して10日ほど過ぎたころ、急性肝炎を発症し、小学校1年生になったばかりの長 男と、年まれたばかりの次男を夫に任せ、約2か月の入院をせざるを得ませんでした。  当時、C型肝炎ウイルスになぜ感染したのか、原因はわかりませんでした。だから私は37歳で 高齢出産したこと、出血等で体力が落ちて感染してしまったのだろうと、私のお産の仕方が悪か ったために子どもたちや夫につらい思いをさせてしまったと、自分を責めていました。  私は感染して十数年して慢性肝炎に進行していると診断されました。病気を忘れようとしたこ ともありました。ですが、私は知人の肝炎患者さんから、肝炎が肝硬変や肝がんに進行する怖い 病気であることを知っていたので、毎月あるいは数か月ごとの検査日は、忘れずに欠かさず受診 しました。子どもたちはまだ小さかったけれど、お母さんは疲れたと言ってはよく横になってい るという印象だったようです。  私の夫は演劇家で、私は夫の演劇にのめり込む姿に共感し、ともに人生を歩んでいこうと決意 して結婚しました。夫の演劇活動では十分な収入とならないため、私が働いて家庭の収入を得て、 夫には好きなだけ演劇活動に励んでもらおうと思っていました。ともに白髪の生えるまで、それ が私の生きがいでした。  でも私は肝炎ウイルスに感染してしまいました。私は十分に働くことができなくなり、夫を支 えるどころか、生活のため夫に演劇をやめてほしいとまで言わざるを得ませんでした。その後、 夫とは事実上別居生活となりました。  5年前、私の肝炎ウイルスが再び暴れ出して入院したとき、夫は見舞いに来ませんでした。そ れから間もなく、私はちっぽけな愛情をあきらめる決意をしました。私たちは離婚しました。  C型肝炎ウイルスは私のささやかな幸せを奪いました。先ほどお話しした私の知人の肝炎患者 さんは、肝がんで亡くなってしまいました。彼女は女優で、亡くなる直前まで仕事に復帰したい と願っていたのに、その夢を奪いました。東京原告13番さんは、「私は生きたい」と訴えながら 亡くなってしまいました。  私は4月からインターフェロン治療を受けています。副作用は個人差があることを知り、余り 心配し過ぎても良くないと自分に言い聞かせ、何よりやっとこの治療に入れる喜びの方が大きく、 治療に臨みました。  4月10日に第1回目のインターフェロン投与があり、その後5〜6時間してから37度台の熱が 上がり出しました。23時くらいにはインフルエンザ様の症状、悪寒、節々の痛み、39度まで熱は 上がり続けました。朝になると熱は下がりますが、今日まで8週続けて、微熱は続き、丸一日平 熱で過ごせたことは一度もありません。20年間私の肝臓にすみ続けたウイルスを排除することは、 容易ではないのです。  私の場合、副作用の中で一番強いのは、だるさです。このだるさが体力、気力を奪い、ほとん ど寝たきり状態で暮らしています。食欲もありませんので、体重も1回目の投与から2か月で約 4キロ落ちました。  急性肝炎を発症したときの症状とよく似ているなと思っています。でもあのころは息子たちが 幼かった。だから早く病院から出て、元気になってあげなければいけないと思っていました。で も今は、自分を奮い立たせる気力もなく、何をする気にもなれず、だるい重たい体を持て余して います。  家事は一切長男に任せ、長男が仕事の帰りがけ、何が食べたいか、欲しいものがあるか、毎回 聞いてくるので、お願いしています。  私はこれまでずっとパートの仕事をしていました。理解のある職場で、私の薬害肝炎訴訟の活 動にも理解を示してくれていました。本当は、最初の入院治療の後は、仕事に復帰したかったの ですが、こんな状態がいつまで続くかわからず、しばらくは治療に専念するしかないので、仕事 をやめてしまいました。  私たち薬害被害者は、たった1本の血液製剤のせいで長い闘病を余儀なくされました。1977年 にアメリカのFDAが承認を取り消したとき、1987年に青森の三沢で集団感染が報道されたとき などは、承認を取り消すきっかけをなり得たはずです。それなのに、この2つの大きな事件後も、 この製剤はつくられ続け、承認され続けてきました。  そして1988年6月6日、私の血管にもこの悪意に満ちた製剤は投与されました。当時、私は勇 気がなく、医師に感染原因を聞くこともできませんでした。でも当時の資料を精査し、当時の関 係者に正直に事情を話していただくことが大切だと思います。  委員の皆様、厚労省の皆様、20年も経ってどうしてこの製剤が蔓延したのか。私の肝臓にすみ 続けることになったのか。真相を追及するのは大変な御努力が必要だと思います。でも、どうか それをやり遂げてください。そしてその結果を、今後薬害が再び起こらないための再発防止策に 生かしてください。薬害が再び繰り返されるようなことがあれば、私たちの被害が何ら教訓とし て生かされることがなく終わるのであれば、亡くなった原告さんたち、これからもまだまだ生き て闘病を続けなければならない私たち被害者は、全く報われません。  もし私が亡くなったとしても、私の息子たちには、きちんと報告できるようにしてください。 委員の皆様、厚労省の皆様、重ねてお願いいたします。 ○寺野座長 ありがとうございました。浅倉美津子さんのお話でした。   では次に、薬害肝炎大阪原告団、加地智子さん、お願いいたします。 ○加地参考人 私は、418人のリストの389番の被害者です。  2007年11月6日、病院から告知を受けて、初めてフィブリノゲン製剤を投与されたことを知り ました。16年以上にわたって、国からの連絡も製薬企業からの連絡もなく、放置され続けてきま した。二度と薬害を繰り返さないでほしい。私の被害と思いが少しでも真相究明と再発防止につ ながればと思い、本日お話しさせていただきます。  私がフィブリノゲン製剤を投与されたのは、1991年3月23日のことでした。当時、小学校1年 生の長女、春から幼稚園に入る長男の2児の母でした。3人目の子どもは、妊娠37週目でした。  その前日、破水を起こした私は、病院に行きましたが、死産となってしまいました。その後、 私の子宮からの出血がとまらなくなりました。後に知ることとなったのですが、このとき私に、 フィブリノゲン製剤3本が投与されました。  私は、3人目の子どもを亡くしたことで、精神的に耐えられないほどのショックを受けてい ました。目の前にいる子どもや夫が励ましましてくれることで、何とか自分を保っている状態 でした。4月6日には退院しました。  しばらくすると黄疸が出て、体がだるく、引きずられるように重くなりました。4月20日に 出産した病院で診てもらったところ、急性肝炎と診断され、即、入院を指示されました。原因 は輸血だと説明されました。医師からは、肝炎は慢性化すると、肝硬変や肝がんに進行すると も説明されました。  このときの入院でつらかったことがあります。出産で主治医を務めてくれたドクターが、私 を廊下の遠くから見つけると避けるようにしていたのです。  私は、子どもの死産の直前に、実の父を肝臓がんで亡くしていました。肝臓がんで苦しむ父 の姿から、肝臓がんの恐ろしさを目の当たりにしたばかりでした。自分が肝炎にかかったとき のつらさは、言葉にもなりません。  私が病院を退院したのは、1か月以上経ってからのことでした。体はだるく、退院してから も、家事、育児も満足にできませんでした。その後、慢性肝炎と診断され、医師からは、この ままでは5年から2O年の命ですと言われたのです。小さな我が子を置いては死ねないと、す がるような思いでインターフェロン治療に踏み切りました。それは、1991年秋ころだったと 思います。  予想を超える副作用が私を襲ってきました。40度近い発熱が続いて、意識がもうろうとす る日々でした。子どものためにも元気な体に戻らなければならない。その一心で副作用に耐え ました。  しかし、ウイルスは体の中から消えてはくれませんでした。その後、私は、時には毎日のよ うに強ミノ注射を受けるために、病院へ通いました。それでも肝機能数値が悪くなって、入院 したこともありました。私がいなくても子たちが生きていけるように、それまでは何とか生き ていかなければいけない。そう思って治療を続けていたのです。  私は、肝炎になったことを恨みました。思うように動かない体で、育児も思うようにできま せんでした。私自身が生きていくのがやっとでした。幼い息子からは、「今度いつ病院に行く の」と言われたことがありました。私は「明日、注射に行くよ」と答えました。すると息子は、 「ううん、長く行くのはいつ」と開いてきました。入院で子どもにもつらく寂しい思いをさせ ていたと思いました。家族には本当に申し訳なく思いました。しかし、運命だから仕方がない と自分に言い聞かせてきました。こうして、治療の効果がないままに何年もの月日が、いたず らに過ぎていきました。  それから何年か経って、薬害肝炎のことが報道されるようになりました。報道を見て、私も 本当はフィブリノゲンを使われたのかもしれないと思いました。そこで、一度病院に確認して みましたが、病院からはカルテがないからわからないと説明されました。私自身、確証のある ことではなかったので、それ以上、カルテを探そうという気にはなりませんでした。  ところが2007年11月6日、病院からの連絡がありました。フィブリノゲンを使った418人 のリストに加地さんも入っている、そう告げられました。私は、やっぱりそうだったのかと思 うのが精いっぱいでした。それ以上は頭の中が真っ白になって、何も考えられませんでした。  娘に連絡して、418名のリストに入っていたことを伝えました。すると娘は、真っ先に「お 母さん、体はどうなん」と聞いてきました。そして話しているうちに、「長生きしてほしい」 と涙声で言われました。娘は、私が肝炎と向き合うことを避けているのを感じ取っていました。 小さいころから私に無理させまいと、受験勉強中でもできることは「母さん、無理しなくてい いよ」と言ってしてくれましたし、買い物した荷物も私には持たせなかったりといろいろ気を 使いながら、その一方で、肝炎のことは何も口にしませんでした。  しかし、このときようやく、娘がずっと私の体を心から心配していたことに気がつきました。 治療も受けてほしい。でもお母さんのことを思うと口に出せない。娘のつらい気持ちにようや く気づかされたのです。自分一人の命ではない、肝炎から逃げてはいけない、肝炎と向き合わ なければいけない。病院からの連絡をきっかけに、再び肝炎と向き合うことができるようにな りました。  私は連絡を受けて間もなく、病院で診察を受けました。連絡をしてくれた病院は、国や企業 を相手に提訴するかどうかを尋ねてくれました。しかし何よりも先に、自分が今どんな状態か を知りたいと思いました。そこで検査を受けることを優先させたのです。  肝炎から逃げ続けていた日々は、私につらい現実を突きつけました。検査結果が出るまでは、 実は私は肝炎が治っているかもしれないと、淡い期待を抱いていたのです。しかし実際には、 私の慢性肝炎はどんどん進行し、既に肝硬変の一歩手前まで来ていたのです。  418人のリストは、2002年には製薬企業から国に渡りました。もし2002年に告知してくれれ ば、そのときに娘や家族の気持ちに気づくことができただろうと思うと残念です。  そうすればきっと家族に正直に、治療ができていないことを打ち明けられただろうと思って います。そして、再び肝炎と向き合って、治療を始めることができたと思います。  医学の進歩について説明を受け、インターフェロンも再び挑戦し、今のように肝硬変の手前 までなることはなかったと思います。1日でも早く知らせてほしかった。私は悔しくてなりま せん。  国と製薬企業が早期に対応をとっていれば、被害は防げただけでなく、拡大もしなくて済ん だはずです。引き返せる時は幾つもあったはずなのに、そのまま使われ続けたのはなぜなのだ ろうと思います。また、これほど広い医療分野で、野放図に使われ続けたのもなぜなんだろう と思います。  更に薬害被害者が、ただ被害を受けたばかりでなく、放置され続けた点も、悲しくてなりま せん。被害者への告知も、やろうと思えばいつでもできたはずなのに、2002年に企業から418 人のリストを提出されたときですら、告知をしませんでした。隠しました。  国と企業がなぜ被害を防げなかったのか。なぜ被害者へ告知することなく放置したのか。な ぜ隠したのか。私には製薬企業と厚生労働省に、人の命を大切にしようという意識が皆無だっ たとしか思えません。  この薬害肝炎は、非常に長い期間にわたって被害者を出し続けました。長い間にいろいろな 人々がかかわって、なぜ防げなかったのでしょうか。それは、単なるシステムの問題なのでし ょうか。こうした疑問を是非、検証委員会の委員の方々には、明らかにしていただきたいので す。  私は現在、教育現場に身を置いています。命の大切さを子どもたちに伝えたい。そして命を 大切にする国を残してあげたい。安心して医療を受けられるようになりたい。そう心から願っ ています。  薬害再発防止は、私たち肝炎原告団、弁護団、そして支援者みんなの願いです。この検証委 員会の成果により、薬害が防止されなかった原因、患者が放置された原因を明らかにして、幾 度となく繰り返されている薬害が、今後は二度と起こらないシステム、そして一人一人の命が 大切にされる社会を是非つくっていただきたいと思います。 ○寺野座長 はい。加地さん、どうもありがとうございました。  では3人目ですね。薬害肝炎の九州原告団で、原告番号29番さんということでお呼びさせて いただきます。よろしくお願いします。 ○原告番号29番参考人  今日は、私の話を聞くための時間をとってくださって、ありがとうございます。  私は、1986年4月22日に生まれました。後でわかったことですが、生まれたその日に、クリ スマシンが投与されました。  C型肝炎に感染していることを、私より先に知ったのは両親です。小学校4年生のときです。 病院から呼びかけがありました。これに応じて検査を受けたら、肝炎に感染していることがわ かったそうです。  ただ、両親は、まだ小学生だった私に、肝炎だとは告知できませんでした。お医者さんと相 談して、もう少し成長するまで黙っておくことにしました。私は、何も知らされないまま、小 学校に通いました。  2002年の春、中学校を卒業しました。卒業後は、ファーストフード店で仕事を始めました。 仕事は、経験や技術に合わせて、仕事内容や時給が変わるシステムになっていました。早く一 人前になって、お客様担当になりたいと思いました。しかし体がだるくて、体調が良くないこ とがしばしばでした。人目にわかるほどでした。職場の人たちから、きつそうやね、病院に行 きなさいなどとよく言われました。  私には、どうして何度も体調が悪くなるのかわかりませんでした。結局いつも、人より少し 体が弱いのかなとか、風邪で微熱が出やすいんだろうと考えて、家で寝ていることしかできま せんでした。  18歳になった年に、母が、おまえは実は病気なんだよと言いました。初めて、自分がC型肝 炎という病気であることを知りました。母は、無理をしてはいけないとか、お酒を飲んではい けないと、一生懸命話をしてくれました。  当時の私には、私は肝臓が悪いらしいというくらいしか、理解ができませんでした。 後から、家にあった、『家庭の医学』という本を読みました。そして、C型肝炎が肝硬変、肝 臓がんといった重い病気に進む病気だということを知りました。その日から、私はテレビや新 聞でC型肝炎という言葉を見かけたときは、注意をして見るようになりました。ただ、どの特 集を見ても、苦しい治療をしても、治ったり治らなかったりするといったことしか言ってくれ ませんでした。  その後は、アルバイトもせず、家で母の手伝いをしていることがほとんどでした。家にいる と、私は何をしているんだろうといった気持ちの焦りも出てきます。けれど私には、ほかにど うすることもできませんでした。  2006年6月、インターフェロン治療を始めました。初めは、病院に入院をしました。39度近 くの熱が出ました。寒気もして、体も痛くて、私は、何でこんなことをしないといけないんだ ろうと泣きたくなりました。そのときの私はまだ20歳になったばかりでした。20歳って、本当 はもっとやりたいことがいっぱいあって、元気なときなんじゃないかなと思いました。でも、 病気を治したい一心で、インターフェロン治療を続けました。退院後も、週に1回の注射を打 ち続けました。  しばらくすると、毎日頭痛がして、体がだるくて、夕方からは余り動けなくなりました。白 血球も減って、薬を減らしても、なかなか回復しませんでした。医師からは、これ以上白血球 が減ったら、インターフェロンを中止しないといけないと言われた時期もありました。  インターフェロンを続けるには、毎月4万円から5万円のお金がかかりました。両親に申し 訳なくて、仕方がありませんでした。  1年経ったころ、お医者さんから、ウイルスが減るのに時間がかかったから、このままだと、 またウイルスが出てくる心配がある。だから、もう半年インターフェロンをしないといけない と言われました。インターフェロンが終わることだけを目標にして、つらい治療に耐えてきた ので、ショックで治療をする気力もなくなりそうでした。両親も、不安や半年分も余分にかか る治療費のことで、大変だっただろうと思います。  1年半経って、ようやくインターフェロンが終わりました。一応、ウイルスは消えたようで す。ただ、本当に消えたかのかどうかがわからないので、その後も病院に通って、血液検査を 続けています。  10代の後半から今まで、いつも不安な気持ちで過ごしてきました。仕事ができるのか、好き な人に肝炎だと告白できるのか、結婚できるのか、子どもを持てるのか、不安なことばかりで した。本当なら、もっと将来の夢とか、明るい未来とか、そういうものがあっていいんじゃな いかなと思うこともありました。でも、C型肝炎が治らない限り、未来を考えることさえでき ませんでした。  幸い、両親のおかげでインターフェロン治療を受けることができました。そして今は、ウイ ルスが検出限界値を切りました。ただ、少しでも無理をすると、またウイルスが出てくるので はないかという不安は消えません。きっとこの先もずっと、こういう気持ちを抱えて生きてい くのだろうと思います。  今日、皆さんに聞いていただきたいのは、クリスマシンのような薬がなければ、私たちは、 こんな思いをしなくてもよかったということです。私が投与を受けたのは、加熱製剤が承認さ れた後の時期に当たります。ミドリ十字は、ウイルス対策の不十分な非加熱製剤をちゃんと回 収しなかったそうです。たくさんの人たちが、それぞれ一人一人苦しみや悲しみを抱えている のだと思います。私も私の家族も、本当に苦しんできました。  どうしてこんなことになったのか、きちんと調査をしてほしいです。そして、これから肝炎 の不安を抱えて生きていく私たちに、調査の結果をすべて教えてほしいと思っています。どう ぞ、よろしくお願いいたします。 ○寺野座長 どうもありがとうございました。3人の方からお話を伺ったんですが、短時間で すけれども、御質問がありましたらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。  特に御質問はないでしょうか。  それでは、予定の時間も参りましたので、本当に3人の方、どうもありがとうございました。 非常に参考になりました。  では傍聴席の方にお移りいただきますが、よろしくお願いいたします。  この後、前回の議論を踏まえまして、事務局で整理した論点整理に従いまして、委員の間で 議論を行っていただくことになりますけれども、ただいまのヒアリング、3人の方のお話を十 分念頭に置きまして、再発防止のために何をしなければいけないかということを、しっかり議 論していただきたいと思っています。  それでは論点についての議論に入りますが、まず事務局から資料説明をさせていただいた後 に、順番に議論をしてまいりたいと思いますので、まず事務局の方から資料説明をよろしくお 願いいたします。 ○安全対策課長 安全対策課長の松田でございます。資料1と資料2に基づきまして、御説明 申し上げます。  まず資料1でございますが、前回御指摘事項等ということで、前回の委員会と、その後に委 員の先生方から御要望のありました事項を資料にまとめさせていただいたものでございます。  まず1ページ目でございます。「副作用等情報の分析・評価及び安全対策措置の実施プロセ ス」ということで、前回お出しした資料をもうちょっと具体的に書いてほしいというお話でご ざいましたので、まとめたものでございます。  医薬品機構と厚生労働省の関係等について書いたものでございます。医薬品機構につきまし ては、今は大体20人ぐらい専任の人間がおります。厚生労働省は15人と書いてありますが、 これはすべて専任というわけではございませんで、研究費とか国の各種事業等々もかかわって いる人間を、一応書かせていただきました。  企業から厚生労働省には、ここにもあります通り、昨年で約13万件ほど、副作用情報等の報 告がございます。それを機構のデータベースで管理することになっております。それについて 分析評価をやっているところでございます。  その分析評価の細かい中身については、次の2ページ目に書いてございますけれども、大体 1日当たりの報告件数ということで、年間報告件数から割り出した数でございます。  このうち、国内の副作用等の症例のうち、死亡・未知重篤などの、平均しますと大体40件ぐ らいについては、毎日調査票を個別に精査しているところでございます。  その他の副作用症例、例えば既知の重篤な症例については、医薬品名、副作用名、副作用の 集積状況等を一覧表の形で整理いたしまして、それに基づいていろいろ週単位で確認をして、 必要に応じて個票まで精査するということでございます。  実際の症例票の例ということで、3枚目から、企業からの副作用・感染症報告の症例票の例 を挙げさせていただきました。一部黒塗りにさせていただいておりますけれども、大体こうい う形で薬の投与の情報とか、次のページに行きますと、患者さんの副作用等の経過、6ページ には、担当医師の意見、報告企業の意見、累積報告件数とかそういった情報などもございます。  7ページには、患者さんの臨床検査値でございます。  8ページは医療機関から直接、厚労省にいただく場合の様式でございます。  2ページ目に戻っていただきまして、そういった症例票につきましては、症例を精査する際 のポイントということで枠の中に書いてありますけれども、症状の発現と薬剤投与との時間的 関係とか、薬剤の薬理作用など、こういった点を念頭に置きながら評価しているところでござ います。  あと、海外の措置情報、研究報告についても、すべて個別に精査しているところでございま す。  1ページ目に戻っていただきますが、機構の方では分析・評価をして、整理・措置案の検討 ということでございます。具体的には2ページ目にまた行っていただきますと、「*2 整 理・措置案の検討について」ということで、副作用の集積状況や副作用等の因果関係の評価結 果、海外における対応等を総合的に考慮した上で、添付文書の改訂指示等の措置案を検討する ということでございます。  1ページですがこういった検討に当たりましては、専門委員とは随時相談させていただいて おります。厚生労働省とも週に1回の連絡会もございますし、随時いろいろ協議して、措置案 にお互いのギャップがないように、常時連携をとっているところです。  措置案については、専門協議を毎月1回開催して、それで措置案をまとめるということでご ざいます。  厚生労働省の方に調査結果報告ということで、措置案が提示されますと、私どもの方で薬食 審の先生にも意見を聞き、最終的に措置案を決定するということでございます。  そしてそれを企業の方に指示し、また医薬品機構のホームページにも掲載するというような 流れでございます。  2ページ目に措置案の実績ということで、添付文書の改訂指示は19年度で130件等、それ以外 の実績なども少し紹介させていただいているものです。  続きまして資料の10ページ目が、副作用等症例報告件数の日米欧の比較でございます。ここ に日本と米国、欧州の報告件数が書いてございます。ここで注意していただきたいのは、日本 の場合は、一症例は一件という形ですべて集計しておりますが、欧米におきましては、一症例 にそれに対する追加報告があった場合は、それぞれをまた一例としてカウントするという形で、 集計の仕方が日米欧で異なっております。また報告の対象も差がございますので、単純に比較 することは困難でございますが、いずれにしてもこういった膨大な件数が報告されているとい うことでございます。  それを担当する職員の数、あとは承認関係の件数なども合わせてまとめさせていただいたも のでございます。  続いて11枚目からでございますけれども、日米欧の、特に市販後安全対策の組織についての 資料ということで、まとめさせていただきました。  11ページ目が「我が国の市販後安全対策の組織」ということで、厚生労働省の安全対策課で 安全対策の企画立案・措置を実施しております。また医薬品医療機器総合機構で、安全情報の 分析評価とかいろんな業務をやっているところでございます。 ○寺野座長 では、ここでちょっと中断いたします。  本日も公務御多忙の中で、舛添厚生労働大臣に御出席いただいておりますので、一言ごあい さつをお願いいたします。 ○厚生労働大臣 どうも皆さん、遅くなりまして申し訳ございませんでした。国会の委員会に 出席していたものですから。  今日は残念ながらお聞きすることはできませんでしたが、被害者の方々のヒアリングをいた だいたというふうに聞いております。またこれは後ほど議事録できちんと読ませていただきた いと思います。  そういう生の声をお聞きして、それをきちんとこの医薬品行政に反映させるということが非 常に重要でございますので、そういう点で、議事録を見させていただいた上で、更に検討をし たいというふうに思います。  それから何度も申し上げますけれども、国民と情報を共有するということが非常に必要なの で、情報の開示、広報、これをきちんとやっていきたいということと、もう一つはやはり本当 に組織を含めて変えないといけないところについては、変えていきたいということをこの前も 申し上げました。どういう形がいいか、FDAのようなものがいいのか、アメリカのFDAに ついても問題点もあるということも言われています。  やはり現場の感覚がないといけませんから、私も含めてですけれども、霞が関にじっと座っ ているだけではわかりません。ですからこの前、技官の問題を言ったのは、そういう観点から やはり現場を見てほしいということを言いました。  非常にこの薬事行政というのは、片一方では知識もあり、現場も見ておかないといけない。 そういう意味では薬をつくる人と安全性をきちんと担保する人との間の協働関係が必要な面 がございます。しかしながら一定の距離感というのも必要なんです。そのバランスをどうとる かというのが必要なので、それは人事の側面でも、組織の側面でも考えないといけない。そう いうことも含めてトータルな改革の像が描けなければ、何度も同じ薬害を繰り返すということ になりかねないと思います。  私はそういう問題意識を持ち続けて、この検討会に今後とも参加させていただきたいという ように思います。活発な御議論をいただきまして、そういう大きな改革の基礎をつくりたいと いうように思っていますので、引き続き皆さん方の御協力をお願いします。  今日は本当にありがとうございます。 ○寺野座長 どうもありがとうございました。  では大臣は次の公務のために、これで御退室ということになります。ありがとうございます。 ○厚生労働大臣 申し訳ありません。後ほど議事録を見させていただきます。 ○安全対策課長 それでは続いて12枚目でございますが、12枚目が米国FDAの組織図でござ います。米国FDAの中に医薬品を評価するCDERと、血液製剤等の生物製品を担当するC BER、あとは医療機器等を担当するCDRHという、3つの組織が医薬品と医療機器を担当 している部署でございます。  そして特にCDERについて詳しく組織図をまとめたのが、13枚目でございます。CDER の中にはいろんな部門がございますが、特に医薬品の市販後安全対策と密接に関係する部分と いたしましては、ここに色をつけてありますが、監視・疫学部と新薬審査部がございます。そ れ以外にも右上の方にある、安全政策担当とか、下にありますテロ・危機管理部なども市販後 の安全対策に、密接に関係してございますけれども、この黄色と緑でさせていただいたところ の部署をもう少し詳しくさせていただいたのが14ページ目でございます。  監視・疫学部の業務ということで、ここに示したような課があって、安全対策に必要ないろ いろな情報に基づいて評価し、その結果を踏まえ、新薬審査部の方では実際の添付文書の改訂 につなげるというような形でやられているようです。  続いて15枚目がEMEA、欧州医薬品庁の組織図です。ただ前回もお話を申し上げました 通り、個別の品目の安全対策の分析評価を、このEMEAがやっているのではなくて、事務局 機能ということで、英国やフランス等の主要国が、個別の品目の分析評価を行って、その評価 を踏まえた安全対策というものをこのEMEAで決めるというふうな形になっております。  16枚目が、その市販後評価部の実際の組織でどんなことをやっているかということをまとめ た資料です。  続きまして17枚目でございます。17枚目は米国のリスクコミュニケーション諮問委員会につ いてまとめたものでございます。ここにあります通り、FDA改革法に基づきまして、昨年6 月に設置され、いろいろな背景の15人の専門家で構成されているということです。  役割といたしましては、法律に書いている文章をそのままここに書かせていただきましたけ れども、「FDAの規制の対象としている製品のリスクを効果的に伝達する手段について、F DA長官に助言すること」となっています。  設立に至った背景でございますけれども、昨年3月に発表されております、米国アカデミー の医学研究所、IOMの、FDAに対する薬事規制改革への25の提言というもののなかで、米 国におきましては一般の患者さんや国民向けの情報提供というのが弱いのではないかとの問題 意識があってこうしたリスクコミュニケーション諮問委員会というのをつくって強化しようと いうことになっているようです。  続きまして18枚目に、第一次再評価ということで、再評価の関係の資料をつけさせていただ きました。第一次再評価といいますのは、上の方にありますように、昭和46年から行政指導と して始めたものでございます。医薬品の審査につきましては、昭和42年に基本方針ということ で、承認審査の客観性をできるだけ確保するための対策が講じられたところでございますが、 それ以前に承認されたものについて、薬効再評価ということで見直そうということで行われた のが、第一次再評価でございます。  この第一次再評価については既に終了しているところでございまして、42年以前に承認され た医薬品、原則すべてを対象としておりまして、右に書いてありますような結果が出ていると ころでございます。  ただし、すべてというふうにお話をしましたけれども、例外ということで下に書きましたが、 麻薬・覚せい剤、ワクチン、生薬類、あと血液製剤の一部については、ここに書いてあります 通り、効果が明らかであるなどの理由等によって、第一次再評価から対象外としたところでご ざいます。それ以外のものについては、すべてこういう結果で終了しているというところでご ざいます。  19ページ目でございますが、医薬品機構の、特に技術系職員の専門の種別の内訳でございま す。  続きまして20枚目からは、これまでの医薬品の副作用被害等に係る訴訟の事例で、特に和解 に至ったものを年表にさせていただいて、そしてその次のページ以降に、それぞれの事案後の 対応ということでまとめたものです。  昭和49年のサリドマイド訴訟の和解の成立から、今年の肝炎の訴訟の和解成立までを年表と して、まず20ページでまとめたところでございます。  21ページ目からは、個別の事案とそれに基づく対応ということで、特に事案の概要の詳細に つきましては、時間の関係もございますので、省かせていただきますけれども、このサリドマ イドの訴訟を踏まえての対応ということでは、先ほども申し上げましたけれども、昭和42年に、 慣行的に行われていた承認審査の方針を明確化した基本方針というものを、通知したのと、行 政指導によって副作用報告制度を開始したということでございます。  22枚目は、キノホルム剤によるスモン訴訟の事案についてでございます。  23枚目でございますが、対応ということで、昭和55年に薬事法を改正して、薬事法の目的に 品質、有効性、安全性の確保ということを明示したということと、新薬について、再審査制度 を導入し、また行政指導で行われていた再評価制度と企業の副作用報告制度を法律に基づくも のにしたということでございます。あと医薬品の副作用被害救済制度も、このときに創設した ということでございます。  24枚目には血液凝固因子製剤によるHIV訴訟の事案、ヒト乾燥硬膜の関係のクロイツフェ ルト・ヤコブ病の事案につきまして、書かせていただいたところです。  25ページ目に、対応ということで、1つは平成8年の薬事法改正で、市販後の関係では、医 薬品による感染症等の報告についても義務化したということ、海外での措置情報についても報 告を義務化したということでございます。  また平成14年に薬事法、血液法を改正をしまして、その次のページにあります、これは前回 もつけさせていただきましたけれども、血液製剤等について安全対策を強化したということと、 独立行政法人の医薬品機構をつくりまして、審査業務・安全対策業務の一部をそちらでやる体 制としたこと、生物由来製剤の感染症被害の救済制度を開始したというところをまとめさせて いただきました。  資料2で、論点について簡単に御説明を申し上げたいと思います。この論点は、前回示させ ていただいた論点の項目に現状や問題点をつけ加えさせていただいたのと、あとは前回先生方 からいただいたコメント、厚生労働省側の考えというのを少しまとめて書かせていただいたも のでございます。  1番目の「早期実施が必要な対策について」は、前回と同じでございます。  「(1)情報の収集及び評価」の「(1)副作用等報告の分析評価の充実・強化が必要ではない か」ということとで、1つ目の・に、副作用報告が安全対策に非常に重要なものだということ と、19年度の報告件数、これらの報告の分析評価の充実・強化が必要ではないかということ。  また、副作用の発生頻度の変化等を把握するためには、現行のやり方に限界があるので、例 えばレセプトデータなどの医療情報のデータベースを活用した分析評価手法の導入も必要では ないかということ。  2枚目でございますけれども、現在行われているような評価に加えて、例えば副作用発現リ スクの高い患者群の検知など多角的な分析評価をしっかりやっていくためには、薬効群ごとに、 医学、薬学、生物統計学等の専門職から成るチーム制というのを導入したらどうかというよう なこと。  こういった検討のためにも、膨大な資料をしっかり活用できるように、情報処理を専門とす る人材を確保して、データセンターというようなものも必要ではないかということを書かさて いただきました。  2番目といたしまして、海外規制当局との連携強化ということで、海外規制当局と連携強化 をするため、リアルタイムでの情報収集や意見交換が可能になる体制ということで、一例とし てFDAやEMEAに駐在職員を配置するなどというようなことも書かせていただいたところ でございます。  (3)には、薬剤疫学的手法の導入など市販後安全対策に新たな手法の活用が必要ではないかと いうことで、副作用の分析評価や安全対策の検討に当たりましては、今までの副作用等の報告 に基づく安全対策に加えまして、薬剤疫学やファーマコゲノミクス等の手法が有効ではないか ということで、市販後安全対策に導入を検討すべきではないかということを書かせていただい ております。  3枚目に「特に、薬剤疫学を利用した安全対策を推進するためには、レセプトデータ等を活 用した大規模なデータベースというのが必要でございますし、それが国だけではなくて、いろ んな方がしっかり使えるような体制、方策というのも検討すべきではないかということを書か せていただいたところでございます。  (4)には、副作用等の報告の活性化ということで、迅速な対応のためには企業報告に加えて、 やはり医療機関から直接報告をいただくというのが非常に大事でございますので、医療機関か らいただく件数を増やすためにも、現在の報告様式を少し簡素化するなど、報告しやすくなる ような方策というのを検討する必要があるのではないかということ。  あとはやはり患者さんからの副作用に関する情報も、生かせるような仕組みというのを検討 すべきではないかということを、ここに書かせていただいているところでございます。  「(2)安全対策措置の実施」では講じた安全対策のフォローアップの充実・強化について、 講じた安全対策をちゃんとフォローアップしていくことが重要で、また提供した情報が医療現 場でどの程度理解され、活用されたかについてもちゃんとフォローする必要があるのではない かということで、4ページ目でございますけれども、1つ目の・で、講じた安全対策が企業に おいて確実に実施されているかをフォローアップすることが必要ではないかということ。  2つ目、医療現場における活用状況等についても、フォローアップすることが必要ではない かと。  そしてこういった情報に基づいて、安全対策の効果を検証して、そしてまた更なる安全対策 に結び付けることが大事ではないかというようなことを書かせていただいたところでございま す。  「(3)情報の伝達」ということで、安全対策に係るいろんな情報を医療関係者や患者さん の方々に情報提供していくことが非常に大事なわけですけれども、それが結果的に医療行為に 反映されていく。患者さんも薬を正しく使用することに資することが重要でございますので、 いろいろな効果的な伝達手段、医療機関内での活用方法なども検討して、情報発信というのを もう少し強化するような具体策を講じるべきではないかということでございます。  特に、患者さん向けの情報発信として、今、一部の医薬品につくられております「患者向け 医薬品ガイド」というものを新薬すべてについて作成するようにしたらどうかというようなこ とも、書かせていただいております。  「(4)市販後における医薬品の継続的な評価」ということで(1)として、承認審査段階から の一貫した新薬の市販後安全対策の充実が必要ではないかということを、書かせていただきま した。  次のページにありますように、前回もいろいろ御紹介しましたが、最近欧米ではREMSと か、リスクマネジメントプランと呼ばれる、医薬品のリスクを最小化するための制度がいろい ろと導入されているところでございます。そして、承認時のデータとか市販後に得られた安全 性情報に基づいて、医薬品のリスク評価を行って、リスクを最小化するための計画を定めて、 それに基づいて企業が安全対策を実施していって、また一定期間ごとにそれをレビューして、 継続的に管理していこうというものでございます。  我が国でも、承認条件等でいろいろな調査や、管理対策を義務付け、また、製造販売後調査 等基本計画書を提出させているところではございますけれども、例えば、承認の段階でも、欧 米での新たな取組について、ひとつ検討したらいいのではないかと考えているところでござい ます。  (2)としまして、継続的なリスクベネフィット評価ということで、まとめさせていただきまし た。市販後にリスクベネフィットを評価する制度として、現在は再審査制度と再評価制度があ ります。特に、再評価制度につきましては、継続的なリスクベネフィット評価を行うためにも、 例えば10年ごとに再評価に指定するなどして、継続的に評価が行えるような仕組みを導入し たらどうかということでございます。  6ページ目でございますが、今回は、基本的には医薬品についての安全対策についていろい ろ御議論をいただいているところではございますけれども、特に情報の収集・評価、措置の実 施等の基本的な安全対策については、医療機器の不具合の問題も全く同じでございますので、 同様に考えていきたいということでございます。  2番目として、「上記を実現するための組織・体制のあり方はどうあるべきか」の「(1) 体制の充実」ということで、現在の市販後安全対策の体制について、医薬品機構と本省の人員 等について書かせていただいております。それが最近の副作用報告等の増加や安全対策に新た な手法等を導入したと考えた場合に、本当に十分なのかということを論点として挙げておりま す。  また、仮に体制を強化するということであっても、やはり豊富な知識や経験を持った方を確 保することが重要だということで、医療現場との人事交流や、企業出身者の活用等についても 検討が必要ではないかということで、書かせていただいております。  本省と医薬品機構との関係ということで、今は、本省と医薬品機構の2カ所でやっている体 制を、どういうふうに今後考えていくべきだということ。こういった医薬品行政を所掌する組 織の位置づけということで、例えば医療とか厚生労働省が今、担っているいろんな行政の関係 と、どういう関係、位置づけであるべきか、というところについても、論点として考えている ところでございます。  参考資料といたしまして、特に組織体制のあり方については、「薬事政策のあり方に対する 検討方向」ということで、今年の4月10日に自民党の薬事政策のあり方検討会でまとめられた 報告書を、今日つけさせていただきました。特に、3ページ目以降に、薬事政策を所掌する組 織のあり方とか体制のあり方について、いろいろな検討がなされておりますので、参考までに つけさせていただいたところでございます。  以上です。 ○寺野座長 ありがとうございました。御苦労さまでした。  以上、前回の委員の方々から、御指摘いただき、御質問いただいたことに関する資料とか、 それに対する回答でしょうか。そういうことを述べていただいて、その御議論に基づいて、こ の早期実施が必要な対策のための論点を挙げていただきました。  最後に、参考資料、これを述べていただいたわけです。  それであと約1時間、ちょっと延びてもいいという話ですので、1時間ぐらい御議論いただ きたいと思います。ただいまの御説明と、先ほどの3人の被害者の方のお話です。それに基づ きまして、御質問や御意見をいただきたいということです。  論点は非常にたくさんありまして、まとめていくのは大変なんですけれども、できましたら、 質問がありましたら、それに関連した質問をしていただいて、できるだけまとまった形で、事 務局あるいはほかの委員の方から御返答をいただくという形にしたいと思います。できるだけ たくさんの方に御意見をいただきたいと思います。御質問並びに回答を簡潔にお願いしたいと 思います。1時間と限っておりますし、また最後に申し上げますけれども、次回にひとつのま とめをしたいということでございますので、できるだけ生産的といいますか、ポジティブな御 意見をいただいて、そういうことを念頭に置いて、御回答いただければありがたいと思ってい ます。  それでは、どなたからでもよろしいのですが、大平委員の方から意見書をいただいておりま すが、大平委員、よろしくお願いします。 ○大平委員 大変発言が下手なので、今日は意見書としてまとめさせていただきました。  7月を目途に検討会中間報告をまとめるということで、急いでいるのは理解できるところで あります。しかし2回目検討会事前資料とされている、今回説明されました「早期実施が必要 な対策のための論点(案)」を見ますと、1回目で出されている意見を組み入れた整理となっ ているとは、私自身理解できていないところがあります。  また、早期実施の必要な対策のための理念も、こういった中間報告をまとめる際にも、この 中間報告をまとめるというところの理念みたいなものが、ある程度、共通理解して、それをも とに、いろいろな組織的な構成ですとかそういうものも考えていただきたいなと思いまして、 3点挙げさせていただきました。  これまで薬害を焦点としたときに、医薬品と薬剤を中心に更なる安全性とその副作用等の情 報管理に議論が進められてきました。この視点から薬害を検討していても、新たな悲劇を本当 に防げるのかどうかというところが、私の疑問点です。  サリドマイド、スモン、そして私の問題であるHIV、そして肝炎と薬害再発はとめること ができません。そして多大な犠牲を強いてきました。当然薬剤そのものに害毒性、ウイルス等 の混入などは、その製造にかかわる過程で問題があることでありますが、この副作用や薬害再 発防止には、既存の組織や制度にとらわれず、新たな観点を導入した理念をもとに、早期実施 の一歩を踏み出すべきと考えております。  医薬品による健康被害、これは、薬発信ではなく、人発信の情報重視をしていただきたいと いうことです。薬という無機物を媒介にして薬害が生じているところから、この無機物に血を 通わせ生かして、人の命と健康に寄与させるのは、結局人間であります。薬から人を見るので はなく、 人を通して薬を見ることに転換してほしいということが、一番望んでいるところで す。  患者、研究者、製薬会社、医療者、行政等々から薬を見る構図が大切になります。薬事の所 掌からではなく、厚生全体の所掌で、人そして命に密着した安全管理を考える。人を通して見 ると、第1回目で考慮するところとした、医療に密着した医政局、それからまた健康局等々も 当然視野に入り、医薬食品局所掌を超えたところで検討し、具体化を目指すべきだというふう に考えられます。  以上の方向性を持って論点案には書かれていない、薬害の記述も入っておりませんでしたし、 人重視の大きな視野の枠組みで、人の命を守る厚生行政につながるものを是非検討していただ きたいというふうに考えております。 ○寺野座長 ありがとうございました。基本的なアプローチの仕方というところで、非常にい いサジェスチョンをいただいたと思います。この全体の流れといいますか。基本的な考え方と いうようなことに関して、どなたか御意見、御質問ございませんでしょうか。 ○堀内委員 堀内です。いろいろの提案がございますけれども、やはり医薬品の安全について は、限られた数の治験のデータをもとに承認をされた後、それが多様な患者に、医療現場で使 われて、その場で安全性とそれから有効性が判断をされるということが、極めて重要なわけだ と思っています。  したがって、それをやる場合の、特に安全性、今、分子標的薬みたいなものがたくさん出て きておりますけれども、生体の調節機構の根幹にかかわるようなところに作用する薬。そうい うものが出てきているわけですから、ある面では大変有効に働く。しかしながら未知の副作用 が起こる可能性もある。多様な患者に使った場合に何が起こるかというのを、迅速に集積する ということが極めて重要だと思っております。  そういう面で見ますと、やはり安全対策の体制が、極めて日本の場合には不十分であろうと いうように思います。先ほどの報告の中でも、たかだか35名で安全対策をやっているというこ とがございますけれども、先ほど米国等との比較が出ておりましたが、資料2の10ページのと ころにございますが、日本の場合は安全対策というのは分かれておりますけれども、米国、欧 州については、審査と安全対策と両方のトータルとして表現をされている。これは大変わかり にくいわけなんですが、その中で実際上安全対策にどのくらいの人が配置されているかという のがわかりましたら、教えていただきたいというように思います。  日本の場合は、極めて少ないというのは一目瞭然で、これを改善しなかったら、やはり安全 対策というのは進まないというように思っています。特に、今、新薬の承認審査をやりますと 条件がつけられることが多々ございます。市販後調査を全症例やることとか、いろいろなこと がありますけれども、そのデータがどのように実際の、例えば、添付文書等に反映するかとい うことが余り明確ではないです。いつまで経っても、承認審査の段階の副作用データが使われ ているというケースもないわけではありません。  米国の例を見ますと、これは新薬の審査部が、添付文書等の安全対策措置の実施をするとい うのが14ページに書いてあります。日本の場合は、承認審査までは、審査管理課、審査をや る部分が添付文書については責任を持つ。発売されると、安全対策課の部門が責任を持つとい うようになっています。ですからこれが一貫性がないというのも、大きな問題ではないかとい うように思います。  そういう面で、今、特に体制の問題が大変重要だと思いますけれども、米国、欧州と比較し てみないと、日本がどうなっているかというのはわかりにくいので、もしデータがありました ら教えていただきたい。 ○寺野座長 堀先生、関連した質問ですか。 ○堀委員 1点目は、大平先生からも、あと被害者の方々からの中にもあったと思うのですが、 多分実際にどういう人に使われたかというのが、ちゃんと記録に残るというか。後で何かあっ たときにそこをフォローできるための仕組みというのが、まず必要なんじゃないかなと思って います。  その中で資料に関する質問というか、次にもし資料があれば教えていただきたいのが、資料 1の14ページのところで、米国のところには疫学課というところがあって、患者データベース を利用した、そういった疫学的分析なども行われているということなんですが、日本の場合に は、副作用報告は勿論データベース化されていますけれども、アメリカのような広い国でこう いった患者データベースというのは、具体的にどういうようなところに設置されて、どういう 運用をされているのかというようなところが、もうちょっと具体があれば、必ずしもアメリカ と同じことができるかわからないけれども、具体に基づいた議論ができるのではないかなとい うふうに思います。  あとFDAもちょうど今、変わろうとしているところだと思うので、今年再生法ができてど ういうふうに変わろうとしているのか、そこもちょうどこの検討会と一致するところですので、 教えていただければというふうに思っています。  それからこの疫学課のところで、市販後試験調査の評価というのがあるんですが、先ほど堀 内先生もおっしゃっていたように、その公開というのはどういうふうにやっておられるのかと いうのも、実例等を出して教えていただけるといいかなというふうに思います。  先生、人材の点については、このままお話してもいいでしょうか。 ○寺野座長 どうぞ。簡潔にお願いします。 ○堀委員 実は私は臨床の現場からPMDAの審査員に行きまして、今年臨床現場に戻ってき た人間なので、本当に臨床の現場と、あとはこういった審査の現場と、両方やっていた実務の 人間です。  なので、余り格好いいことは言えなくて、ちょっと泥くさいことしか言えないんですけれど も、人材のところで、数が少ないということはずっと言われ続けてきているんです。ただ、こ のまま数、数と言い続けても、恐らくそんなに増えないと思うんです。  今後、そういった審査とか安全対策をいろいろと変えていくときに、今までにないという意 味では、やはりもっと民間から人をどんどん入れると。特にそれが個人の質ということも大事 なんですけれども、背景のバックグラウンドが、この資料にある通り、薬学の方々というのが ほとんど7割弱を占めていて、薬なので、薬学の専門というのは、極めて重要なことは勿論な んですが、やはりそこは臨床の現場だったり、あるいは統計だったり、疫学の現場だったり、 そういったことを実際にやっている人というのをもっと混ぜてこないと、画期的なアイディア というのはなかなか難しいかなというふうに、私としては感じています。  そのときに何が問題になっているのかということは、これとずれるかもしれませんが、是非 検討していただきたい。私としては、例えば入るときにかかっている規制、それから出るとき にかかっている規制があるんです。PMDAで勤務すると一定の期間は、製薬会社の開発とか、 恒常的なポストにつけないということもあって、そういったところがネックになっている可能 性もあるし、透明性を確保した上で、そういった変えられるものというのが何かないかという のをリストアップしていければなというふうに思っています。  あとPMDAを経験した人がもっと外部に出ていって、いろいろ交流をしないと、今PMD Aというのは、実はあそこが唯一、薬事のことを現実にいろいろやっている現場であるので、 そこの経験というのは、前、小野先生が言われたみたいに外部にもっと出していくと。そうす ると外部と機構との間の会話もできてきますので、そういった交流を地道に続けていけるよう な、どういうふうにやったらそういうふうにいけるかというのを、是非、検討委員会の先生方 にも考えていただきたいなというふうに思っております。  すいません、長くなりました。 ○寺野座長 PMDAというのは、皆さん御存じですね。医薬品機構ということなんですが、 今の質問以外にこれに関連した形で御質問ございますか。  では大熊委員、お願いします。  事務局の方、混乱してしまわないように、整理して回答してくださいね。 ○大熊委員 大平委員がおっしゃったことに非常に共感をいたします。ここには医政局とか健 康局の方も、待機しておられるでしょうかという小さな質問が一つ。  それから人の面からというのも非常に重要な論点ではないかと思います。先ほど対策のため の論点というのをお示しいただいて、この間話したことを随分入れていただいて大変うれしい んですけれども、こうしますというのではなくて、今このような問題があるということを正直 に書いた上で、だからこうすべきというふうに書かないと、リアリティがないのではないか。  具体的に言いますと資料集の1で、まずデータがちゃんと上がってきているのか。3ページ とか4ページに黒塗りのがありまして、これは多分の役所がお出しになることですので、割と 模範的な伝票ではないかと思うのです。私がいろいろなこういうことに関連したお医者さんな んかと話していますと、とにかくデータが足りなくて、これのデータじゃ何も言えないよとい うものがたくさんあるという話を聞いておりますので、もしわかりましたら、完全に役に立つ ものは、こういう伝票の中にどのくらいあるのかということもお教えいただきたいし、そうい うことを書き込むべきであるというふうに思います。基になるデータがずさんなものだった ら、幾ら人を増やしてもしょうがないということだと思います。  2番目に、それを見る人の眼力で、先ほどおっしゃった通りで、人数だけ増えてもしょうが ないわけです。現在の機構のところに、経験年数でいうとどのくらいの方、修士は持っていら っしゃる方は多いと思いますが。博士号を持っている方とか、お医者さんの免状を持っている 人がどれぐらいいるか。ただ、数がいてもしょうがないのではないかなというふうに思います  それからどういう手法とかクライテリアで、それを判定しているのかという、論理の図がき っとあると思いますので、どういう理屈で、こういうものは危険というふうにみなしているか という、そういうことも明らかにしていただきたいと思います。  それからちゃんと伝わらないといけませんというふうに書いておありですけれども、伝わる ためには、読んだお医者さんなり患者さんが、どういうわけでこの薬はやばいのかという理由 が書いてあって、だからどうしなければいけないということがあれば、人は行動に移すんです けれども、ホームページなんかで見てみますと、何でこの薬が悪いんだというエビデンスがき ちんと書いていなかったり、どうも説得力に欠けているような感じがいたします。  あと、国際的な交流というので、人を外国に駐在させなさいということが書いてあるんです けれども、駐在も大事ですけれども、既にヨーロッパとかアメリカには、さっきもおっしゃっ たように、いろんなデータベースがあって、相互作用とかそれから因果関係だとか、いろんな ことがデータベース化されて、結構いいソフトのようなものがあるように聞いています。そう いうのを入れると、人10人分ぐらいはあっという間に満たせるのではないかなどというふうに 思いましたので、ちょっと全体の流れということで、何が問題点だからこうするのだというの を正直に書かれた方が説得力があるように。 ○寺野座長 ありがとうございます。  では、小野委員。できるだけ簡潔に。答える方もたまっちゃって大変なので。 ○小野委員 今の点に続いての。私は性格が悪いので、だんだん意地悪な質問になっていくん ですけれども、人の話です。人の話が大事だというのは、今まで各委員が言っておられた通り です。  能力も大事なんですけれども、能力を持った意地悪なだめなおじさんがいたら、どんどん悪 い方向に行きますね。そこは能力というよりは、その人の持っているインセンティブだとか、 どういう気持ちで働くか、ここが一番大事だと私は思っています。いろんな副作用の懸念を持 っている心配性な人が働いてくれればいいです。それをもみ消すのが好きな人だとか、できる だけ事なかれ主義の人が、能力を持ってたくさん入ってきたら、それは逆の方向に行くわけで すね。  それからもう一つ、その人個人の性格とかそういう問題ではなく、そういう環境に置かれた ら、人はそうなるんですね。そういうインセンティブが与えられたら、もみ消すのがいいとい う環境に置かれたら、どんな人だって、ここにおられるすべての人みんなそうなっちゃうわけ です。そうならないような具体的なインセンティブとか、働く人の気持ちの持たせ方です。そ ういうものを議論していただきたい。どう考えているのか。今の案の中には、少なくとも全く ないというのが1点。  それからもう1点は、人は間違えるということ。みんな口では言うんですけれども、本当に 間違えたら、怒り始めるんです。大体やり過ぎで間違えるか、やりなさ過ぎで間違えるか。簡 単に言うとそうなんです。患者さんを守り過ぎで間違えるか。守らなさ過ぎて間違えるかなん です。  これは正しい一つの答えがあるというよりは、どちらかの間違いを犯していると思って、ど ちらの間違いをとった方がいいのかなというようなことを考えて、すいません、間違えていま すけれど、こうしますけどいいですか、というような現実のアプローチをこれまでしてこなか ったところに、私は正解があると思って、正解のことしか言おうとしないから、これは後ほど、 研究者の方から違う意見があるかもしれませんけれども、いろんな問題が生じているのではな いかと思います。  FDAなんかは、こういう懸念を持っているというんですね。間違えているかもしれないけ れども、今ちょっとこの薬は危ないというようなことを平気で言います。もしかしたら企業に とっては大迷惑かもしれませんけれども、そうやってはっきり言ってくれること、先ほどどな たか委員がおっしゃった、ここが何か私は気になっているんですよというようなことを自信を 持って。 これは自信がないと言えないんですけれども、はっきり言っているわけです。  そういうメッセージの発し方みたいなものもセットで、仕組みだけの話ではなくて、入れ物 だけの話ではなくて、していかないと、この議論は全然深まらないと思うという、その2点で す。 ○寺野座長 わかりました。今のなかなか難しい質問というか、難しい御意見なんですけれど も、最初の大平委員のおっしゃる、「人」に関連した質問です。水口委員。 ○水口委員 申し上げたいことはいろいろあるんですが、とりあえず質問に限って。他は、ま た後で発言の機会をいただくこととしまして。  先ほど大熊先生からお話があったことと問題意識が非常に共通しているんですが、議論の前 提として現状がわかる資料を出していただきたいということを、前回お願いして、今回資料を いただいているわけですけれども、もう少しそこを踏み込んでいただきたい。こういうふうに 「ちゃんとやっています」型ではなくて、「ここがつまっています」、「やりたいけれども、 人数が足りないのでここができません」というところを、もうちょっと率直に言っていただき たいと思います。  そういう意味では、私は基本的には、個別のいろいろな副作用情報の評価そのものにも、い ろいろな問題があると思うんです。上がってきた副作用報告などを検討するについて、疑問が 生じたら報告を上げた医師にフィードバックするというようなこと、問い合わせをするという ことをなさっていると思うんですが、現実の機構のホームページを拝見しますと、実際はほと んどが企業報告なわけです。そういう企業から上がってきた報告に疑問があったときに、出し た医師に問い合わせをするというようなことまできちんとできているのかどうか。そういった 体制がきちんとあるかということを伺いたいのが1点。  それから、今、人員の問題が論点になっておりますので、もう1点ここで伺いますが、機構 の人数を増やすという話は大分出ているようですが、これは連携作業ということで考えると、 厚生労働省の安全対策課の人数もめちゃくちゃ少ないと思うんです。  特に、この表では15人と書いてあるのですが、実際これに注釈がついていて、ほかのことも いろいろやっておりますという話です。そうしますと実際問題として厚生労働省の安全対策課 の中で、副作用情報の分析評価、それから対策ということを中心的に担当されている方として は一体どのぐらいの人員を配置していらっしゃるのか。この点をお伺いしたいと思います。  連携作業ということになっているわけですから、片方が増えても、もう片方、受け止めて指 示を出す方が、受け止めるだけの容量を持っていなければ意味がなくなると思いますので、そ の点をお伺いしたいと思います。 ○寺野座長 ありがとうございました。ここの関連の御質問は、最後に福田委員からの御質問 を受けて、お答えください。 ○福田委員 まず現状の報告というのがすごく大事だと思うんですけれども、この委員会自体、 薬害肝炎事件の検証検討委員会ですので、フィブリノゲンのときはどうなったのかというのも 出していただきたいというふうに思います。こういうことをやっている、安全対策をやってい るというのは、重々わかるんですけれども、フィブリノゲンがなぜこんなに野放しにされてき たのかというのを知りたいというふうに思います。  フィブリン糊としても多く使われていましたし、そもそも先天性の血友病患者に限るべきだ ったものが後天性にも幅広く使われ、これは厚労省は認可していないと思うんですけれど、フ ィブリン糊としてもたくさん使われた。しかも企業はフィブリノゲンを使うと、研究費を医療 機関に渡していたという話も聞いていたことがあるので、その辺は実際どういうふうになって いたのかというのも知りたいです。  そういった企業を監視・監督するのは、厚労省以内にどこがあるのかというふうに思うので、 そこら辺をきっちり、今までどういう問題点があったかというのを、それはわかると思うので、 出していただきたいなというふうに思います。  人材の件ですけれども、「企業出身者の活用等」と書いてありますけれども、私たち薬害に 遭った者として、やはり企業と国とが一つになってこの事件が起きたというふうに思っている ので、第2回の検証委員会で、こういった、企業から人材をというのは、余り心情的にちょっ と納得がいかない気持ちがあります。  あと、薬害肝炎訴訟のことを、これは深い意味がないと、またおっしゃるんでしょうけれど も、いまだにフィブリノゲン製剤訴訟と呼んでいるのは、なぜかなというふうに思うので、そ の辺を教えていただきたいと思います。(事務局注:資料1の20頁についての指摘であり、 ご指摘を踏まえ、資料を修正しました。) ○寺野座長 ありがとうございます。それではこの辺りで、質問がたくさんに分かれています ので、今日全部答えられるかどうかわかりません。後でまた、録音を分析して質問も解析して 次回で答える場合もあると思いますが、可能な限り、事務局の方からお願いします。 ○安全対策課長 1つは、まず欧米等の安全対策の組織の中に、何人ぐらいいるんだという話 ですが、先ほど申し上げた通り、例えばアメリカであれば、審査部門で市販後の使用上の注意 の改訂を担当していますので、明確に何人ということは本当に申し上げられませんけれども、 ちなみに、14ページにある、FDAのCDERの監視疫学部というところは、私どもが承知し ている限りでは、今135人ぐらいいるそうです。ただ、今回、210人ぐらいまで増員しようとい う計画と聞いています。  あとは新薬の審査部が、800人ぐらいいるというふうに聞いています。  それ以外、先ほども申しました通り、市販後の関係では、メドウォッチなどの副作用の情報 を担当しているところとか、あとはテロ対策の部門みたいなところもあるみたいですので、も っと数としてはあると思いますけれども、具体的な形でわけるのは、そんなところでございま す。  患者データベースについてどんなのが使われているんだということでございますけれども、 私どもが承知している限りでは、例えばアメリカでは民間の医療保険の関係のデータベースや、 メディケアなどの公的医療システムのデータベースなどが使われているのではないかと承知し ています。いずれにしてもFDAの改革法において、もっと強化しなければならないというこ とで、2012年までに1億人ぐらいのデータベースをつくるんだということで、アメリカの方も 取り組んでいるということで、承知をしています。  副作用報告に関して、データが少なくて役立たないものがたくさんあるのであれば、そうい うのを幾ら評価しても難しいのではないかというふうなお話もありましたが、私どもの方も、 データが不明な部分については、基本的には追加調査ということで、例えば企業の方からは第 2報、第3報という形で報告いただいている場合もございます。  なお、日本の場合は諸外国に比べまして、そういう個別症例を評価するための基本的なデー タというのが、非常に詳しく報告されています。欧米の報告様式を見ますと、非常に単純な様 式が使われております。日本の場合は、一般的に因果関係の評価をするためのデータは詳しい 内容で報告されているという状況と承知しております。  あとはオランダの方で、解析するようなソフトがあって、そういうのを利用すればという話 もございました。多分これは私どもが承知しているのは、オランダや米国なんかでも、データ マイニングということで副作用のデータベースから、因果関係のありそうな医薬品と副作用の 組み合わせを、シグナルという形で検出する、コンピューターを利用した方法が、検討されつ つ、実際使用されています。  実は医薬品機構の方でも、日本の実情に合わせた形で、プログラムの開発もやっております。 今年度中にも利用できるよう、今、検討しているところでございます。  資料1の1ページのところで、安全対策課の職員が15人と書いてあるけれども、本当にどの ぐらいでやっているんだというお話でございましたが、ここに書いてある、通常の副作用の分 析・評価とか、安全対策の実施プロセスというところで、機構の方に対応している人間は、こ こにも書いてありますけれども、連絡会議も通常3人くらいで担当しています。  大きな案件に対しては、当然、ほかの業務をやっている人間を追加してという形で対応はし ているところです。  あとは、本当に副作用症例等で、医師への再調査をやっていないのかという話がありました けれども、これも通常企業を通じて、副作用を評価する上で足りない部分があれば、再調査を やっているところでございます。  今お答えできるのは、そのくらいでございます。 ○寺野座長 最後の福田委員からの御質問に関しては、今から秋になって、検証という段階に 入っていくと思うんですが。これは堀内研究班での仕事を基に検証していくと思うんです。堀 内先生、何かコメント、ございますか。 ○堀内委員 先ほどの御意見は検証すべきことの中に入っている予定ですので、ただ、今すぐ にというわけにはいかない。これからやるところです。 ○寺野座長 それでお話、御質問、いろいろあるのですが、中心はやはり組織制度に関するも ので、最初、大平委員から言われた人の問題ということですね。人材の問題。それは数も必要 だけれども質も当然のことながら考えなければいけないというふうなことで、実際に資料2の 6ページの方でも、論点の1つとして体制の充実とか、本省とPMDA、機構との関係、そし て更に自民党の検討方向の中の最後の方に「薬事行政を所掌する組織のあり方」というところ が問題になっていて、人数の問題、具体的な人数も出ていますけれども、そういうようなとこ ろがございますね。そこら辺の考え方というのを皆さん、お知りになりたいのかなという感じ なんですけれども、その辺はいずれにしても、次回にまとめるときに入ってきますね。この辺 に関して、組織に関して、どういうふうに改革をしていくか。 ○総務課長 総務課長です。私からコメントいたしますと、どういう新しい安全対策を講じる のかという話がまずありますので、そういったことを見ながらということに、最終的な規模と いうのはなってくるのだろうと思います。  これは全くの参考ですが、自民党の資料によれば、安全対策部門で300人ぐらい要るのでは ないかと言われています。 ○寺野座長 そういうことで、まだまだこれに関しての質問はあるわけですけれども、またも うちょっと時間がございますので、ほかのことでも結構ですけれども。  また質問に関しては次回、よく録音を分析して、今日の御質問に対する対応をしていただき たいと思います。  どうぞ、間宮委員。 ○間宮委員 安全対策で、一体何をやるのかというのがやはり大事なわけです。いろいろ案が 出てきてはいるんですけれども、余り具体的なものではないかなというイメージがあります。 データベースとかデータの解析とか、そういうものも大事なんでしょうけれど、やはり私は現 場が大事なんじゃないかなと思います。  フィブリノゲンの使われ方というものも非常に問題だったわけでありまして、医薬品の使わ れ方というものについて、ここでも承認条件というものも出ていました。それで、管理の仕方 とかリスクの最小化というのが、資料2の5ページに書かれています。こういったものを企業 だけに求めるのではなくて、安全対策の中で、やはり承認条件に合ったことをやっているかど うかというものを監視指導していくというのも大事。のもというか、それが大事だと思うんで す。  例えば、アメリカなんかでは、催奇形性のあるサリドマイド、それからイソトレチノインな どのような、これはにきびの治療薬ですけれども、そういった催奇形性のある薬については、 STEPSですとか、ほかの安全管理システムというのを適用して、被害が起きないようにや っているわけです。そういったものというのは抗がん剤ですとか、ほかの副作用が非常に強い ことがわかっているものについて、どんどん承認条件というのをつけていって、それぞれに管 理システムというのをつくっていく必要があるのではないかというふうに思います。  先ほども言いましたけれども、その管理システムがちゃんと動いているかどうかというのも 監視するというのが大事だと思います。そのためには、要は実態の把握です。使用実態の把握 ということですから、そのためにはやはり人も手間も必要だというふうに思いますので、そう いうような具体的な新しい対策というのを出していっていただきたいというふうに思います。  それから先ほどの件にちょっと戻っちゃうんですけれども、人材の確保というところで、企 業出身者をどんどん活用したらどうかというような話がありましたけれども、これは私は薬害 被害者として非常に危惧するところであります。  やはり企業と国がくっつくと、お近づきになると、ろくなことが起きないというふうに思い ますので、これは是非避けていただきたいと思います。  勿論、優秀な人材を確保するというのは大事だと思いますので、その辺りは透明性の確保と いう意味でできるのかもしれませんけれども、どんどん活用するというふうな発想はやめてい ただきたいというふうに思います。以上です。 ○堀内委員 今の問題、いいですか。 ○寺野座長 はい、どうぞ、堀内委員。 ○堀内委員 今の問題については、私は必ずしも賛成ではないんですけれども、やはりどうや って専門性の高い人を登用するかということが重要であって、それからもう一つはチェック機 構をきちんとすればいいというように思います。ですから最初から会社から採用するといった 場合に、会社と厚労省が密接になるとか、そういう問題ではないと思います。会社にいた人が、 専門性を生かすためにそちらに移るということですので、そこのところは会社にいる人がみん な会社の考えと同じだというのは、少し違うんじゃないかというように思います。  今これだけ人が足りないところで、例えば、統計の専門家とかいろいろ専門家をどうやって 揃えるかという場合に、チェック機構は必要だと思いますけれども、やはり最初から、感情的 にはわかりますけれども、でもやはりそれはだからやっちゃいけないということではなくて、 少し前向きに考えたいというように思います。 ○寺野座長 被害者としての感情からすると、間宮委員の御指摘も理解できるのですが、全体 的に見ると、必ずしも企業から入る、あるいは堀委員が先ほどちょっと指摘されましたけれど も、入るとき、出るときというのがあると思うんです。その機構なり厚労省に入るときに、企 業から入る。あるいは専門家が入る。それで今度はやめた後、どういうふうな動きが求められ るのか。今、大分制限、規制があるようですけれども、そこら辺に、来る人のインセンティブ というか、そういう人材を確保するための体制というのが非常に重要なんじゃないかと思うん です。そこら辺の規制をどこまで考えていくか。そこら辺も重要な論点かと思います。  泉委員、どうぞ。 ○泉委員 堀内委員の今の話を聞きまして思いますことは、私は被害者だから反対するわけで はなくて、チェック機能をきちんと先にした上で、どのくらいの、どういうところから人を連 れてくるんだということを決めるべきで、人数が足りないから、どうしても持ってこなければ いけないとしたら、やはり企業にいらっしゃる人が一番専門に近いところにいらっしゃるわけ ですから、当然大学とかそういうところから来るよりも、企業から連れてくる方が多いかもし れないということもあります。  それがいけないと言っているのではなくて、しかしながらチェック機能、つまり今、大平委 員が言われたように、組織は何のためにつくるんですか。人の命を守るためにつくる組織でな ければいけない。薬から考えるのではなくて、人の命を考えた上での薬であるべきであるとい うふうに考えたときのチェック機能があれば、おのずと、どういう方がどういうふうに集めら れるかというのは、規制は当然として出ると思います。  その上でこの組織が、これからの再発防止をするための団体になるべきであって、その団体 は今どういう形の団体になるかというのは、議論がまだこれからあると思うんですけれども、 被害者だからそういうふうに言っているだけではなくて、チェックが大切な上で、人を増やす ということを、厚労省の方には是非考えてもらわないといけないというふうに思います。 ○堀内委員 全く同じ考えだと思います。今、泉委員の言われたこと。  それと人の問題について言えば、私も医療機関にこれまでおりましたけれども、患者を中心 に考える。それはもうかなり共通の認識になっていますから、その前提で、皆さん議論をして いるのではないかと思っています。 ○寺野座長 全体としてですが、さっき総務課長が言われたように、ちょっと制度、人という ことが先行してしまった。その前に何をやるべきかということが、今のチェック機構も含めて、 何をやるべきかということを前提として制度を考えていかなければいけない。しかし、ニワト リが先か、卵が先かの関係もあるので、両方お話をされて結構なんですけれども、その辺を念 頭において、御議論をいただければありがたいです。  どうぞ。 ○高橋委員 私としては一応、やはり医療機関なり患者さん側に対する情報伝達というものが 大事ではないかというふうに思っています  例えば医療機関に対して情報提供をするとなると、企業が伝達するものもありますし、プッ シュ型のメールという形で、総合機構の方から添付文書の改訂情報等が伝えられるわけですけ れども、今の登録されている数としては1万件ちょっとの数だろうというふうに思います。  例えばDSUで配る場合には、調剤薬局を含めて23万軒の医療機関に資料を配っているとい うことがあります。そういうことで、1けた以上違う数の登録数だということがあります。 やはりそういう点を是非もっと登録を増やすような努力というものをしていかなければいけな いのではないかというふうに思います。  それから、患者さんに対する情報提供についても、ここに患者向けの医薬品ガイドというも のをつくっているということもあるんですけれども、この数を広げるということもひとつ大事 だと思いますけれども、それ以上にこのことを知らない方が多いんじゃないかなというふうに 思います。  やはりこういう形で医薬品ガイドがあるんだということを、是非広く知らせる必要があるの ではないかというふうに思っています。是非そういうことを国なりがやっていかなければいけ ないのではないかというふうに思っています。以上です。 ○寺野座長 椿委員、どうぞ。 ○椿委員 先ほどからございます、どういう人材が必要かということに関して発言をさせてい ただこうかと思います。  まず最初に今日ありましたように、この制度を立ち上げるにおいて、消費者のベネフィット とリスクというものを最適化するというために、一定のプロシージャーを設計して一定の力量 を持った人材を配置するということは、その通りかと思うんですが、その立場というものはあ くまでそういうものだと思います。  一方でこの世界においては、先ほど最適化と申しましたけれども、消費者の立場に立つ最適 化と生産者の立場に立つ最適化の間には、乖離が出てくるわけです。そこにおいて、問題発見 から意思決定を行うという状況においては、やはり消費者の立場に立っていただくという方で なければ、バイアスが入る可能性があることは否定できません。  ただし、一方で、それでは今回そういう方におけるプロフェッショナルが不足しているとい うことをどのように解決するかということになれば、その意思決定のいろいろな場面、今回、 まさに課長さんからこういうシステムでやりたいということがありましたけれども、そのマイ ルストーン、マイルストーンにおいて、専門家は何を判断するか、どのような意思決定をしな ければいけないかというような場面の設定というものが、定常的な場合にも、それからかなり 急激に、急なアクションを必要としなければならない場合にも、生じると考えられるわけです。  そのようなときに、先ほど言ったような立場というものを考えたときにどういうデシジョン をするのが本来正しい方法なのであるか。プロフェッショナルはどういうことをするのかとい うようなことに関する、シナリオごとに何ができるのがプロフェッショナルなのかということ を明示していただくということが、今後必要なのではないかと思います。  そういうことができることによって、現時点では、ある意味で必要な人材をメーカーさんか ら確保しなければならないということも認めますけれども、むしろどういう方を中期的に育て るかということに関しても、明瞭になるのではないかと思います  当然、ファインディングとそれから意思決定の後に、実際に行ったデシジョンを現場にきち んと伝えていく。先ほどからあったようなことは問題かと思うんですけれども、これをやって くださいということではなくて、実際に医療の現場なりメーカーをどういうふうに動かしてい るかということに関して、そこの仕組みということに関しては、先ほどからあったような、こ こにもチェック機能が必要であることは言うまでもないことかと存じます。  今日、1980年代、90年代にこの種のことが起きてしまったということが、患者さんから訴え があったわけですけれども、今回設計される、そして実現される仕組みの中で、1980年代に肝 炎にかかった。それが情報としては非常に捕捉がおくれた。今回制度設計された方法論では、 今までの過去の事象はやはりきちんとクリアできるんだということに関しても、是非目に見え る形で検証いただければと考えます。  どうもありがとうございました。 ○寺野座長 ありがとうございます。水口委員、どうぞ。 ○水口委員 時間も押し迫っていると思うのですが。 ○寺野座長 できるだけ簡潔にお願いします。 ○水口委員 進行についてまず確認させていただきたいのですが、次回は、先ほど座長がまと めになるとおっしゃっていたのですが、私としましては、今日、初めて見る資料がありました。 事前資料の中に入っていなくて、今日、入っているものもありました。それから論点について も多岐にわたっており、今日、この委員会に臨むについて、更にちょっと調べたいと思っても 時間がなくてできなかったこともたくさんございます。  そういう意味では、7月7日の予備日程もとっていただいていると思うのですが、やはりこ の委員会として是非審理を尽くしていただきたい。次回どうしてもまとめるということにせず、 概算要求との関係で、7月にはどうしてもまとめなければいけないというのはあるかもしれま せんが、そこのところは十分時間をとっていただきたいというのが私の要望です。これが1点 です。  それからちょっとイメージがわかないんですが、ここでは中間報告書というような題のもの をつくるんでしょうか。次回とか次々回に。そうであれば、なおさら時間はちゃんととってい ただきたいということもあります。個々の論点の突き出し方についても、これが基盤になって まとめの報告書になるのであれば、いろいろなこだわりがある委員もおいでになると思うので、 その辺のところを十分御配慮いただければ、ありがたいと思います。それが1点目です。  それからもう一つは、人材の問題になりますが。おそらく、今の体制ではやるべきことが十 分安全対策ができないだろうということは、委員の中でも一致した認識になれるんだろうと思 いますが、有為な人材をどういうルートで確保したらいいのかということについては、既に今 日の段階でもいろいろ意見が出ているところなので、どういう報告書のまとめ方になるかはわ かりませんが、私としてはその辺の議論が十分煮詰まっていない段階で、人材の供給元につい て安易にこことこことここというような書き方を、中途半端にするのではなくて、人材をどう いうところから確保するかということについて、「これから十分に検討する」という含みをき ちんと残していただきたい。多分そこを詰めるだけの時間はないのではないかという認識を持 っておりますので、御配慮いただければありがたいと思っています。  それから最終的にもう一つ、組織ということがあるので、一点申し上げておきますと、やは り堀内先生がおっしゃっていました審査のときの問題意識を安全対策にきちんと引き継いでい くシステムをどうつくるかということが大切だと思います。そういう意味では、第3者的な機 能を持った、中につくるのか、外につくるのか、または全然別の省庁の管轄になるのかという のはあるかと思いますが、ビジランスをするという組織を何か考える必要があるのではないか。 それは、承認から安全対策まで一貫してそれをやるという、そういうものを是非御検討いただ きたい。以上3点です。 ○寺野座長 この進行というのは、非常に難しいことなのでありまして、私も座長として大変 苦慮しているところであるのは確かなんです。いろんな問題が提起されているんですけれども、 やはり何といいましても再発防止ということが最重要課題です。これはサリドマイドからスモ ンから、何回も何回もやりながらやはり再発しているじゃないかということを言われまして、 この委員会で本当に決定的に再発が防止できるのかということについては、それはもう絶対の 自信があるわけでは勿論ないんだろうと思うんです。しかし可能な限り、肝炎ということの検 証をしながら、その問題点を把握して、組織、そして人材、そういうものを十分に検討し、恐 らく予算の確保も重要でしょうから、そういう形で進んでいくんだろうと思っています。  後で説明があると思うんですけれども、僕の考え方としては7月の概算要求も必要ですが、 一応中間取りまとめ的なものはまず必要であるということです。それでその概算要求にどうい うものが必要なのかということを解析していただいて、それは7月中に出さなければいけない だろうということです。  問題点をたくさん指摘されたわけですけれども、実際は今年度いっぱいで提言をするという のが本委員会の流れであります。その前に秋になると、肝炎の検証、これは堀内先生の研究班 の方の作業をもとにやっていただくわけですけれども、それをやりながら、その問題点を抽出 して、そして年度末までに本質的なことをやります。従って、あと何回あるかというのはよく わからないんですが、その必要性によって皆さんに頑張っていただくしかないだろうと、私は 流れとして思っているんです。事務局の方の考えをお示しください。 ○医薬品副作用被害対策室長 今、基本的な流れとしては、今座長からお話しいただいたよう な形で進めていただければと思います。 ○寺野座長 僕に任すということですか。 ○医薬品副作用被害対策室長 大きな流れはそういったことで、お願いできればと思っており ます。 ○寺野座長 そんなふうな流れだと私は把握してやっているんですけれど、そういうことで御 協力いただきたい。確かにちょっと回数が少ないわけで、今回の場合も、前の議論に基づいて、 それに対する回答といいますか、対処という形で出されてきたわけです。もうちょっと、次回、 これだけの議論をまとめていただいて、皆さんの議論の中間取りまとめ的なものが、やはり必 要だと思うんです。それを出していただいて、今後、秋以降どういう議論をし、どういう対策 が必要かを、また皆さんに考えていただくというふうな進み方になると思います。  予算に関しての概算要求にどれとどれが必要なのかというのは、正直申し上げて、僕もどう もよくわからないんです  これはもう事務局の方で、きちんと解析していただいて、やはり予算を取っていただかない と何も進みませんので、まずそれをやって、それをやりながら、秋以降の本格的な議論に入っ ていくということです。今はどちらかというと、準備体制というふうに私は理解して進めてい ます。  ですから皆さんにいろんな意見を言っていただいて、疑問を出していただいて、それは率直 に出していただいてそれを整理して、今度は少しシステマチックな議論を秋以降、していけば いいのではないかというふうに思っています。  進行に関して、何かおかしいじゃないかとか、御意見はございますか。  大体そんなところで、本当はもっと議論したいのですが、時間が来てしまいました。今日は 3人の被害者の方からお話、非常に胸に迫るお話をお聞きしました。皆さんの御質問、御議論 はそれを前提として、積極的な御意見をいただいたと思っています。ですからこれをもう一度、 録音もしてありますので、全部解析させていただいて、そしてそれに基づいて次回、大体こん な感じの取りまとめ的なものですよということは出していただく。必要ならば、それで議論が 足りないということであればもう一度、予備日をつくってありますので、それは開いていただ くということにしたいと思います。 ○水口委員 そうすると、次回案が出るということなんでしょうか。 ○寺野座長 そうですね。それは出していただくということ。 ○水口委員 早目にいただきたい。 ○寺野座長 一応事務局の方で作成したものを私の方で、確認させていただきまして、そして 会議の前に、どれくらい前かはわかりませんが、皆さんにお送りいたします。次回の会議がス ムースに行くようにということにしたいということです。  事務局もなかなか大変なのでございますけれども、頑張ってくれると思うので、それをまと めて。それから内容については前もってお配りするはずです。  それで、それの御批判をいただいて、30日の時間では足りないということであれば、もう1 回予備日がありますので、そこでもう少し議論をしていただくというふうなことであって、そ れ以上はちょっと7月までは無理かなと思うんです。夏休みをつぶしてまで、なかなかできな いと思いますので。  これで今日のお話まだ十分に、御質問、御意見を出せなかった方もいらっしゃると思います し、傍聴の方もよろしいんですけれども、ファックスでもメールでもどんどん御意見をいただ いて、それでそれも参考にさせていただきます。また整理の参考にさせていただきますのでよ ろしくお願いしたいと思っています。  事務局も、なかなか大変ですけど、よろしくお願いしたいと思います。  次の6月30日の第3回の委員会について、事務局の方からアナウンスをお願いします。 ○医薬品副作用被害対策室長 第3回でございますけれども、6月30日16時からということで、 第1回を行いました9階の省議室を予定してございます。  今お話に出ておりましたけれども、一応7月にもう1回、予備日は予定しておりますので、 また日程の方、よろしくお願いいたします。お忙しいと思いますけれども、御出席賜りますよ う、お願いいたします。  今座長から追加のコメントとかもしあればという話でございました。我々の作業も頑張って やりたいと思いますけれども、もしよろしければ来週前半11日ぐらいまでにいただければ、作 業としてはありがたいです。よろしくお願いいたします。 ○寺野座長 では週末、少し頑張っていただいて、お願いしたいと思います。進行というか、 全体の流れとしてもこういうふうなものがいいのではないかという御意見がありましたら、是 非いただきたいと思います。  今日は、3人の方のお話を伺って、そして皆さん、本当に積極的な御意見をありがとうござ いました。長時間にわたって、本当にお疲れさまでした。  では今日の第2回の委員会をこれで終了いたします。どうもありがとうございました。 (了)     連絡先: 厚生労働省医薬食品局総務課 医薬品副作用被害対策室 TEL 03-5253-1111