08/06/03 労働政策審議会第19回議事録 第19回労働政策審議会 日時 平成20年6月3日(火)14:00〜 場所 厚生労働省専用第18・19・20会議室 出 席 者 【公益代表】伊藤(庄)委員、今野委員、岩村委員、大橋委員、勝委員、       菅野会長、平野委員 【労働者代表】加藤(裕)委員、河野委員、古賀委員、宮下委員、山口委員 【使用者代表】井手委員、大村委員、勝俣委員、加藤(丈)委員、齊藤委員、        鈴木委員 【事 務 局】上村厚生労働審議官、金子官房長、青木労働基準局長、        太田職業安定局、新島職業能力開発局長、大谷雇用均等・児童家庭局長、        小野政策統括官、杉浦政策評価審議官、生田労働政策担当参事官、        勝田国際課国際企画室長 ○菅野会長 ただいまから、「第19回労働政策審議会」を開催します。本日の議題 は、議事次第にありますように(1)「『新雇用戦略』について」、(2)「地方分権改 革について」、(3)「法案の国会審議状況等について」、(4)「G8労働大臣会合につ いて」、(5)「その他」となっています。早速、最初の議題の「『新雇用戦略』につ いて」、事務局からの説明をお願いします。 ○生田労働政策担当参事官 お手元の資料(1)に基づきましてご説明します。資 料1「『新雇用戦略』について」ですが、これにつきましては前回の当審議会におき まして、新しい雇用戦略としてどういう内容を盛り込んでいくかといったことにつ いてご議論いただきました結果を踏まえまして取りまとめました文書です。この内 容につきましては、そこに書いてあります4月23日の経済財政諮問会議におきまし て、舛添厚生労働大臣から発表したものでして、この内容につきましては最終的に 総理からこういった内容で今後対策を進めてほしいという取りまとめがありました ので、こういった内容を骨太の方針に盛り込んでいくという方向になるかと考えて います。  今日は、この新雇用戦略につきましてご議論いただきまして、今後の骨太の方針、 あるいは来年度の概算要求に向けました様々な対応におきまして参考にさせていた だくということで、忌憚のないご意見をいただきたいという趣旨です。  また、2頁をお開けください。これが新雇用戦略のまとめです。いちばん上の「基 本的方向」の最初の○に書いてありますように、今後3年間を集中重点期間として 対応するものという設定です。  下のほうに4つの対象者の区分がありまして、4つの対象者ごとに目標を設定し、 主要の対策を掲げるということで整理をしています。テーマとしては全員参加の社 会ということで、働く希望を持つ方につきましては、働いていただけるような環境 をつくっていくという考え方です。  まず若者についてですが、就職氷河期に正社員になれなかった方が30代半ばを迎 える中で、こういった若者対策は待ったなしではないかという問題意識です。  目標値として、若者の就業率、フリーターの数、ジョブ・カードの取得者数、強 いては地域若者サポートステーション、これはニート対策を行うものですが、こう いったものにつきまして目標値を設定しまして、大きく3つの対策の柱をそこに書 いています。1つは、いちばん上の◎の「フリーター等正規雇用化プラン」です。 これに関しましては、以前からフリーター常用雇用化プランということで取組みを やっていましたが、それを発展・拡充するという考え方です。  いままで就職氷河期で正社員になれなかった方を捉えます際に、1993年という就 職氷河期のスタート時点を意識する必要があるのではないかという問題意識があり ます。その時期に大学を卒業される方につきましては30代後半になられているとい うことでして、従来、フリーター対策はどうしても35歳未満という捉え方をしてい たのですが、30代後半の方につきましても対象に入れるということを想定していま す。  就職するまでのカバーがどうしても中心だったのですが、就職後定着をしていた だくための支援ということをきちんと盛り込んでいこうということです。これにつ きましてはフリーター常用雇用化プラン、年間35万人の常用化ということで目標を 設定していましたが、これから3年間フリーター等正規雇用化プランにつきまして、 35万人は少なくとも正社員として就職していただくという想定ですので、100万人 の正規雇用化を目標にしているということです。  その下の「ニート等の自立支援の充実」ですが、これにつきましてはニート等の 支援機関等のネットワークづくりを非常に力を入れてやっているわけです。そうい った中でニートの方がどこにいらっしゃるのかということをきちんと掘り起こす工 夫が必要ではないかということで、ニートのご両親の方に問題意識を持っていただ く教育、周知、そういったことを通じましてサポートステーションの職員が実際に 家庭に出向くといったことも可能になりますので、そういった形で実際にニートの 方がどこにいらっしゃるのかを把握していくということに力を入れていきたいと考 えています。  ジョブ・カード制度は今年4月からスタートをしていますが、これにつきまして は訓練期間中の経済的支援に取り組んでいきたいということでして、今年4月から 貸付制度をスタートしています。雇用保険受給中の方につきましては給付があるわ けですが、そうでない方につきまして雇用型の訓練につきましては賃金が出て、事 業主の方に対して援助するという形で支援ができるわけですが、雇用型でない訓練 で雇用保険受給者でない方につきまして、貸付制度を今年4月から月4万円という 形でスタートしています。これを拡充していくといったことを想定しています。  続きまして女性ですが、団塊ジュニア世代が30代後半を迎える中で、子育てをし ながら働くという環境をきちんとつくるのに待ったなしではないかということです。  目標値につきましては、その下に書いてありますような女性25〜44歳の就業率、 3歳未満児の保育サービス利用率としてポジティブ・アクション取組企業率といっ たことを想定しています。  対策ですが、新待機児童ゼロ作戦を本格展開していくということ。新たな次世代 育成支援の枠組を検討していく。これにつきましては、税制改正の動きも踏まえな がら対応していくということです。仕事と家庭の両立支援の仕組み。これは制度改 正も含めた検討を現在行っているところですが、そういった取組みです。再就職企 業継続就業支援の充実では、マザーズハローワークの枠組で、今年から98か所の支 援拠点を設置していますが、支援拠点の拡充、機能の拡充をしていきたいというこ とです。今年から保育所の申込みの取継ぎができるようになりましたが、さらに様々 な子育て支援とのネットワークづくりをしていくという考え方です。  高齢者につきましては、団塊の世代が60代に突入していますので、その能力、経 験を発揮できる機会を早急につくる必要があるということです。  目標値につきましては、その下に書いてありますような60〜64歳の就業率、65 歳以上定年企業等の割合といいますのは、65歳以上定年だけではなくて、希望すれ ば65歳以上まで働ける企業も含むということですが、そういった企業を増やすとい うこと。70歳まで働ける企業を少しでも増やしていく。シルバー人材センターの対 策の拡充を図るといったことです。  その中で対策につきましては、上の◎にありますような65歳まで働く場を確実に 確保する。これは高齢者雇用安定法を着実に施行していくということですが、70歳 まで働ける企業を少しでも増やすといったこと。「団塊世代フロンティアプロジェク ト」と書いていますのは、雇用という形だけではなくて、社会貢献活動、起業とい ったことについて相談できる窓口をきちんとつくって対応していくといったことを 想定しています。多様な就業形態は、シルバー人材センターの対応のことです。い ちばん右端ですが、障害者等ということで、去年の年末に福祉から雇用へ推進5か 年計画というのを確定していまして、これに従いまして着実に障害者の方などの雇 用を進めていくという考え方です。  目標値につきましては、ハローワークの障害者の就職件数、雇用障害者数、生活 保護受給者、母子家庭の母の方などの就職率といったことを目標値に掲げています。  この対応につきましてはチーム支援ということで、ハローワークだけではなくて 福祉関係行政機関、学校、病院といった様々な機関が一体となって個々人ごとの就 職実現のプランを作りまして、そのプランを実現していくという方法で就職を実現 していくという考え方です。こういった方法がいちばん効果があるのではないかと 考えています。障害者雇用促進法の改正につきましては後ほどご説明しますが、今 通常国会に法案が出ていまして、それに基づきまして必要な対応をするということ。 生活保護世帯・母子世帯につきましても、チーム支援の手法でマン・ツー・マンで 個々人のプランを作り、就職を実現していくという考え方で対応したいということ です。  こういった対象者別の縦串の手法と併せまして横串の切り口での対応を盛り込ん でいまして、これは4頁をご覧いただきたいと思います。1つの横串が左の上のほ うでして、安心・納得した働き方を選択できる環境整備ということです。(1)はす でに若者対策でご説明していますが、(2)にありますような正社員以外の方々の待 遇の改善ということで、最初の2つの◎が派遣についてです。労働者派遣につきま しては、「緊急違法派遣一掃プラン」を着実に実施するということ、派遣労働者の制 度の根幹にかかわる問題につきましては現在研究会で議論していただいていまして、 その結果を踏まえて審議会でご議論いただくという考え方です。有期契約労働者の 待遇の改善、改正パートタイム労働法に基づく正社員との均衡待遇の確保などの対 策といった問題に取り組んでいくという考え方です。(3)の「適正な雇用関係の構 築」では、労働契約法の周知・徹底、改正最賃法の適切な施行、周知・徹底といっ たことをしていくということです。  もう1つの横串が右の上でして、仕事と生活の調和の実現ということです。(1) につきましてはご説明していますが、(2)で「健康で豊かな生活のための時間の確 保」ということです。労働時間等の見直しに向けた取組みの推進につきましては、「仕 事と生活の調和憲章」、「行動指針」が昨年末に策定されていまして、それを受けて 労働時間等設定改善法に基づくガイドラインといったものも改正していますので、 こういったものを周知・啓発していくということ。地域ごとの取組みは今年からス タートしていますが、業種で横並びの取組みといったことについても工夫をしてい ただくということを考えています。メンタルヘルスの問題につきましては、メンタ ル不調者の発生防止というだけではなくて、一旦休業した方の職場復帰をどうする かということについて、具体的なノウハウを提供していくという工夫をしていきた いということです。3.ですが、長期の教育訓練休暇、キャリア形成といったことに つきましても、支援をしていきたいということです。(3)の「多様な働き方、生き 方」では、短時間正社員制度の普及につきましては、力を入れていく考えですし、 在宅勤務ガイドラインの見直しなどによりまして、労働関係法令の適用関係をきち んと明確化して、安心して在宅勤務を導入できる、あるいは在宅勤務で働くことが できる環境をつくっていきたいということです。  もう1つの横串は左の下ですが、地域雇用対策の充実、人材面からの中小企業支 援、介護人材の確保・定着といった問題に取り組んでいくということです。  最後に4つ目の横串ですが、右下です。働く人を大切にする社会を実現するため の基盤整備ということです。情報提供機能を強化すべきではないかということです。 労働関係法令につきまして厚生労働省のホームページでもどういうことが書いてあ るのかと一つ目でわかる作りになってないということもありますので、そういった ことをきちんと整備していくということ、ワンストップ相談窓口を都道府県ごとに つくるといった問題、指導・監督の徹底や働くことに関する教育の充実、最後に生 活者の視点に立った政策立案をするということで、三者構成審議会を重視していき たい、という内容を盛り込んでご説明したところです。 ○菅野会長 ただいまの説明につきまして、ご意見、ご質問等ありましたらお願い します。 ○宮下委員 女性の就業希望の実現という所で意見を述べたいと思っています。女 性の半数以上が非正規労働者であることから、どのような働き方であっても公正な 処遇が確保される均等待遇の原則を確立することが不可欠だと考えています。  加えてですが、働く女性の立場でお伝えしたいと思いますが、妊娠や出産を通し ても仕事を継続できるような環境整備、また女性が仕事を続けるためには夫の協力 も必要不可欠だと思っていますので、男性の育児休業の取得を進めるような積極的 な措置をしていただきたいと考えています。さらに、子どもを産み、育てながら働 き続けるためには、保育所とか学童保育の拡充というところも是非とも進めていた だきたいと考えています。しかし、その際には量の拡充を急ぐあまりに保育の質を 低下させることがないように十分留意をしていただいて、是非、私たち女性が安心 して子どもを預けられる環境を整えていただきたいと考えています。  また、4頁の横串と言われていた所ですが、安心・納得して自らの働き方を選択 できる環境整備というところに、パートタイム労働に対する社会保険の適用拡大が 触れられているのですが、社会保険と労働保険はすべての雇用労働者をカバーする ものとなるようにさらに適用範囲の拡大を図っていただきたいと考えています。 ○勝俣委員 私からは高齢者雇用の推進について一言申し上げたいと思います。先 ほど説明がありました新雇用戦略において、意欲ある人、みんなが働ける全員参加 の社会の実現をめざして、いくつになっても働ける社会の実現として、団塊の世代 が60代を迎える中、その能力、経験を発揮できる枠組を早急につくる必要があると されています。  日本経団連は経労委の報告などにおきましても、意欲と能力がある者の就労を促 進し、全員参加型社会を実現することの重要性について訴えてきたところです。し かしながら、現在、各企業は高年齢者雇用安定法に基づき、2013年までを目途とし た65歳までの雇用の確保に努力しているのが現状であり、多くの企業で職場の実態 を踏まえつつ、企業と高齢者双方のニーズに即して雇用延長の整備・充実に取り組 んでいる、まさにそのさ中にあると言えます。  政府におかれましては定年制のあり方や60歳以降の継続雇用、再雇用のルールに 関してご検討をされる際、企業のこのような実態を十分に斟酌いただき、企業が現 在進めている高齢者雇用促進の取組みに混乱を来すことのないよう慎重な検討をお 願いしたいと思います。 ○齋藤委員 商工会議所から出席させていただいています。新雇用戦略について、 総論の所ですが、内容に関して意見とお願いを申し上げます。働く意欲を有するす べての人の就業を実現するため、資料の施策を実施することは必要だと思います。 そこで、目標の実現のためには、企業の規模を問わずすべての事業者の協力が不可 欠です。国が施策を実行するにあたっては、中小企業や小規模企業の経営に過度の 負担をかけないような視点での取組みをお願いしたいと思います。同時にこうした 施策に前向きに取り組もうとしている中小企業を後押しするような助成や支援が必 要であり、厚生労働省だけでなく、必要に応じて他省庁や民間企業等とも連携をお 願いしたいと思います。  なお、中小企業は総務や人事の専任担当者を置くことができないこともあり、国 の助成金を使おうと思っても、手続が煩雑であったり、制度の数が多く複雑なので 使うのをためらうという意見も聞いています。中小企業の利用を増やすために、手 続の簡素化、簡略化、可能なものは制度の統廃合や整理を今後も引き続き行うよう にお願いをします。  もう1つ、ジョブ・カード制度についての意見です。日本商工会議所ではジョブ・ カード制度の普及・推進する中央ジョブ・カードセンターを本年4月1日付で当所 内に設置し、併せて全国47都道府県に1か所ずつ地域ジョブ・カード・センターを、 また全国86の地域ジョブ・カード・サポートセンターを設置しました。私ども商工 会議所としましては、ジョブ・カード制度を国民の各層に広く浸透させて、制度の 普及・定着を図ることが喫緊、かつ重要な課題と考えています。そのために中央お よび地域のジョブ・カード・センターでは、企業、業界団体等に対して積極的に周 知・啓発活動を行っているところです。  しかしながら、4月にスタートしたばかりの新規事業ということもありまして、 ジョブ・カード制度についての認知がまだまだ低いのが現状です。ジョブ・カード 制度について昨年6月の骨太の方針2007において、政府の優先的課題と位置づけら れていますので、求人企業、求職者に制度の内容を利用するメリットなどについて 正しく理解してもらうよう、厚生労働省が中心となって関係省庁、都道府県などが 一丸となって国を挙げて全国的なPR活動を強力に推進していただきたいと考えて います。  参考までに東京商工会議所が取りましたアンケートによりますと、ジョブ・カー ドをよく知っているという方はまだ1.5%で、名前を聞いたことはある、全く知らな いのを合わせますと77%ぐらい、まだほとんど知られてないという現状です。  この制度の成否は、我が国企業数の99.7%を占める中小企業が本制度を利用して、 必要な人材を確保・育成できるかどうかにかかっていますので、より利用しやすい 制度にすることが是非とも必要です。そのためにはこの制度のもとで有期実習型の 職業訓練を実施する企業に支援するキャリア形成促進助成金制度について、助成率 の引上げのほか、企業にとって過大な負担とならないように事務手続の簡素化を図 っていただくなど、柔軟な対応をお願いしたいと思っています。よろしくお願いし ます。 ○井出委員 私からは女性の就業の関係で2点申し上げたいと思います。1つは新 待機児童ゼロ作戦のことです。ご承知のように特に大都市部におきましては、非常 に待機児童の問題が解決していない状況にありまして、保育所に入れないために復 職できないといった社員が私どもの企業にもいるわけです。  先ほどご意見もありましたが、質を低下させることなくということは前提条件だ と思いますが、安全の確保にも配慮しつつ、面積基準などの規制緩和、多様な事業 者の参入ということで施設の整備を図る必要があると考えています。その際利用す る人の立場で地域の主体性を尊重し、実情に応じた柔軟な対応をお願いしたい、と いうのが1点目のお願いです。  2点目は、ポジティブアクションのことです。ここの目標で2010年度までに40% 超という数値目標が出ていまして、現在が20.7%なので、約倍にということだと思 うのです。働く女性の実情などを拝見しますと、何年か前は29.5%ぐらい取組みの 企業があったのに、最近この熱がいささか冷めているのではないかというご懸念で はないかと思います。  おそらくポジティブアクションがいったい何を意味するか、企業の担当者がどの ように理解し回答しているかということもあるかと思うのですが、いろいろ定義を 拝見しますと、女性の能力が発揮できるようにする取組みと、いちばん短く言うと そういうことかもしれませんが、従来の過去の雇用慣行、性別役割分担意識などが 原因で事実上生じている格差の解消をめざすと、もう少し長くなるとそういう定義 になるのだと思うのですが、何となく一般的な理解は、女性のために特別な研修を するとか、そういうことを考えている方が多いのではないかと。  そうすると、非常に自然体で男女を育成する仕組みができている企業は、むしろ ポジティブアクションをやっていない、特に必要がないと回答する場合もあるので はないかということで、この数字をあまり一喜一憂というか、どのように理解して 回答しているかということも分析をしなくてはいけないと思います。また、「ポジテ ィブアクションについて応援します」というホームページを厚生労働省さんが出さ れていると思いますが、そういう中でよく周知をしていくことが必要だと思います。  企業の中で働く女性に対しては、「ポジティブアクション」という言葉もあれば、 「ワークライフバランス」という言葉もあれば、「ダイバシティマネジメント」とい う言葉もあれば、非常に片仮名の言葉はたくさんあります。ただ、たぶんめざすと ころは、私も今年の働く女性の実情の最後のほうを読んで、なるほどそうかと思っ たと思ったのですが、単に女性が男性と同じように働くことをめざすのではなくて、 男性も含めた働き方の改革をめざしていくのだと、それがポジティブアクションだ という書き方をされていたのですが、なかなかそう理解されている方はあまりいな いのではないかと。ポジティブアクションという言葉をどのように浸透させていく かということと、それを理解した上で企業が取り組んでいるのかどうかを、もう少 し分析した上で数値の評価はすべきではないかと思っています。 ○加藤(裕)委員 先ほど齋藤委員からジョブ・カードの件で意見、要望がありま したので、関連して私からも申し上げたいと思います。今回の新雇用戦略の中で、 特に若者、年長フリーターといってターゲットをかなり絞りながら100万人という 数値目標まで掲げていただいたことについては、これは私たちも大変心強く思うと ころです。ただ一方で、いま商工会議所としてのお考えも披露されましたが、私ど も中小企業の皆さんと話をすると、なかなか人が取れない。特に新卒などは、本当 にある地域においてはほとんど絶望的であるという声を聞いたりします。中小企業 で働ける、働いてみたいということでは、これらの若者でいま職になかなか正規の 職に就いてない方々も対象に十分なるわけです。そういう意味ではジョブ・カード も含めてマッチング機能といいますか、職を求める人と働きたい人のマッチング、 職種や本人の希望も含めてですが地域的な偏りも非常に大きいと思います。そうい った点で行政の役割は非常に大きいと思いますので、その点に是非格段の力を入れ ていただきたいと思います。  私たちも非正規労働の問題には労働組合としても積極的に取り組んでいるわけで すが、いまは言ってみれば非正規・正規という2つに分ける概念で非正規が増えて きたと、そういうことを一般的には言われるわけですが、これらの方々がすべて期 限の定めなき正規雇用といいますか、そういう雇用に就くのが理想ではありますが、 それはなかなか困難でもあると思います。  私ども金属労協はIMFメタルの世界組織に加盟していますが、その中ではこうい う働き方について「プレイ・キャリアス・ワーク」、ご案内だと思いますが「不安定 雇用」という呼び方をして捉えようとしている。正規でも不安定な方は実はたくさ んいらっしゃるわけです。それをなくすためには、一方で技術・技能、そしてキャ リア形成という個人の力を高めるということと、同時に労働条件、この2つが重要 なポイントではないかと思うのです。そういう意味でジョブ・カードの果たす役割 は非常に大きいのかと思います。知名度が低いことはいろいろな所で言われますし、 いま数字でも紹介していただきました。確かにそうだと思います。  私は以前もこの場で申し上げたことはあるのですが、是非これは文部科学省等と も連携をしていただいて、そもそも非正規雇用の皆さんだけを対象にすることでは なくて、学校を卒業するときからこういうものの存在を当然のことながら皆さんは 知っているという状態にしておく必要もあると思うのです。ですから、そういう機 会を是非つくっていただいて、ともかく知名度を上げていただく、これは1つです。 それから、現実にこれでキャリア形成をしておくとしても、その間に収入が減る、 生活が不安定になるということはありますので、その間の生活費・住居費・交通費 といったものを見ていただくという仕組みも必要ではないかと。先ほど企業への助 成金の話がありましたが、同時に個人向けの仕組みも是非つくっていただきたいと 思います。そういったことで是非ジョブ・カードを実効性のあるものにして、フォ ローアップも是非よろしくお願いしたいと思います。 ○山口委員 2点ほど意見と要望を申し上げたいと思いますが、まず高齢者の就業 について、シルバー人材センターを拡大するということについてです。シルバー人 材センターの業務は、雇用関係がないため労災の適用にはならないという状況であ ります。このため、各センターでは労災に代わる補償として団体傷害保険であると か、そういったようなものに加入していたりということもあります。中にはセンタ ーに登録した会員の就労が事実上雇用と認められて、労災が認定された事例もあり ます。今後、高齢者の方たちの就業を拡大するという意味で、シルバー人材センタ ーの拡大ということを考えているのであれば、この労災の問題をきちんと対応しな ければいけないのではないかと思います。同時に業務を発注する事業主に対しても、 高齢者の方が働くという前提で、安全衛生に対する配慮を求めるようなことも必要 ではないかと思います。  もう1点は障害者の就業ですが、障害を持ちながら働く人たち、それから障害者 の方たちを雇用しようという企業、双方において例えばどのような職務なら、仕事 ならやってもらうことができるのだろうかとか、あるいは職場の人たちとどのよう な接点が必要なのかというときに、非常に重要な役割を果たすと思われるのがジョ ブコーチであると思います。障害者の雇用を拡大する上でも、こういうサポーター であるジョブコーチというものが非常に重要であると思いますので、これをどのく らいの人数まで、あるいはいつまでというような期間の目標も設定して増員すると いうことを、ぜひお取組をいただきたいと思います。以上2点です。 ○河野委員 私は3点ほどお願いといいますか要望したいと思います。  1つは、4ページの左下のところにある中小企業の支援の問題についてです。先ほ ど齋藤委員のほうからも中小企業の実状といいますか、要望等を話されておりまし たけれども、まず現状は、いま大変な原料高という問題もありまして、本当に中小 企業は厳しい状況に置かれております。そういう意味では、まず行政としては人材 育成の問題、中長期的な対策等はもちろん必要ですけども、当面する原料高、原油 高も含めて取引の正常化という問題については、やはりしっかりした行政側の指導 というのをやっていただきたい、そのように思います。中小企業が発展していくた めには、何と言っても経営基盤の安定、発展ということが非常に重要になってきま す。そこで、今回示されております人材面からの支援というのがあるわけですけれ ども、実体は先ほど加藤委員のほうからお話がありましたように、中小企業では現 状、人が採用できない、あるいは人がこないというような状況になっております。 中小企業の政策というのは、例えばPL法の問題や高度技能化法の法律の問題や、 あるいはまた一級技能士の活用の問題や、あるいはまた地域の対策とか、いろんな 対策が打たれているのですけどもなかなか好循環になっていってないのが実態で、 比較的うまくいっているところをみますと、やはり経営者もただ待っているだけで はなくて、経営者自ら中小企業の活性化の問題に取組んでいるというところもあり ます。中小企業庁、経産省、あるいは厚生労働省が行っている中小企業政策、ある いは自治体が行っている政策、あるいは関係諸団体が行っている政策、あるいは公 益法人やNPOが行っている政策をできるだけ束ねて、全体のベクトルが合うような ことを国にやっていただきたい。そうすることによって中小企業の単体ではなくて 中小企業全体の活性化につながる施策をお願いしたい。例えば人材を採用し技能、 技術の伝承をするためには、当然地域における大学等の設置が必要になります。地 元に教育機関を設置し、地元に就職してもらって、中小企業であっても大企業とあ まり変わらない労働条件が確保できるという、好循環をつくらなければならないで しょう。この(2)のところについては、そういう観点での整理、取組の強化をお願 いしたいと思っております。  それと(3)の介護人材のところですけれども、介護人材の確保・定着というのは 非常に重要な課題になっております。有資格者、あるいはまた経験者に働いてもら いたいという意味でのマッチング機能の強化が掲げられているのだと思いますが、 これもそう言っているだけでは本当に確保・定着になるのかなという思いがありま す。現在の介護職場の実体は何といっても低賃金、雇用が非常に不安定、こういう 状況になっておりまして、現状、ハローワークや福祉人材センター、あるいは広告、 チラシなどで求人を行っても応募は来ないというような状況になっております。介 護労働の現場では男性労働者の寿退社というのが多くなっており、若い男性がこの 職場では非常に不足しているという状況になっております。また、いまの制度では ケアマネージャーには大変事務量が要求されておりますので、この事務量の増大に 伴う長時間労働という現状があります。雇用管理改善に対する補助金というような 手法だけで、このような状況の改善が図れるというのはなかなか難しいのではない かということで、先ほど言いましたように介護労働の現場がどのような状況にある のかということを、しっかり分析した上で改善する対策を打っていただきたいとい うのが3点目のところです。  それと今回の安心・納得して自らの働き方を選択できる環境の整備という中で、 ぜひ対応をお願いしたいと思っておりますのは、独立自営業者や多重就労者の問題 です。雇用・就労形態の多様化の中で、このような働き方をする人たちが労働関係 法や労働・社会保険制度の適用から漏れるというが指摘されています。したがって、 これらの働く人に対する法律・制度の適用に向けて、の確保を図るための実態を把 握した上で問題点を整理し、必要な措置について検討を進めていただきたいという ことをお願いしたいと思います。以上です。 ○古賀委員 全体を通じて一言ご要望を申し上げておきたいと思います。厚生労働 省が中心、主体となってこの新雇用戦略をまとめられたことについては、その中身 の方向性については評価をさせていただきたいと思います。ただ、いくつかいま労 働側のほうからも出しましたように、まだまだ深掘りして議論をしなければならな い項目も多く含まれているわけで、ぜひこの場あるいは関連する分科会、部会等々 での深掘りをお願いをしたいということが1点です。  加えて2点目は、やはり世界に冠たる雇用社会といわれる日本において、雇用あ るいは労働の問題は非常に重要な社会全体の基盤であろうというように思っており ます。そういう意味からすれば、予算的にきちっと措置をする、そのことが非常に 重要ですし、今日具体的に出ていることも、一方ではやはり予算の裏付がないとな かなか進行しない項目もたくさんあるわけで、そういう意味から財政、財源も厳し い折ですけれども日本社会全体に関わる課題として、国の施策の中での位置付けを 高めていただくように厚労省としてもご尽力をいただきたい。そのことを申し上げ ておきたいと思います。以上でございます。 ○菅野会長 よろしいでしょうか。事務局からよろしいですよね。何かありますか。 よろしいですよね。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長 雇用均等・児童家庭局長でございます。宮下委員 からの質問は、妊娠、出産あるいは働きやすい就業規模の視点のところで、子育て しながら安心して働き続けられる環境の整備ということですが、全くご指摘のとお りだと思っております。現在、今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会という のを開催して、仕事と家庭の両立の支援策について検討を進めておりまして、そろ そろ取りまとめも近づいているところです。そういった場でも、育児休業から復帰 した後、余裕を持ってまた職場に戻れる、そういった制度について、また父親の育 児に対する参加といいますか、そういうことについてそれができることが、また全 体の育児休業を取得しやすい環境となるということで、そういった切口などを含め て取りまとめておりますが、そういった方向で、できる限り今後の検討に備えてい きたいと思います。  それから、保育の関係でいくつか宮下委員と、それから井出委員からもいただき ました。新待機児童ゼロ作戦ですけれども、これも総理からの直接の指示で、とに かくここ足元3年間で急速に待機児童を充足させるのみならず、現在は待機児童に 数えられていない、いわゆる潜在的なニーズまでくみ取った量の拡充を図るという ことで、財源の確保を含めて検討を進めているわけでありますが、これは単に量の 拡大だけではなくて、合わせて質の拡充についても取組むということで、これ保育 士の資質の確保とかそういうことも含めて努めていきたいと思います。その中で、 単に量の拡大に努めること以外に安心・安全ということから、利用しやすさ、規制 緩和ということと、しかし一方で、あまり一方的に利用しやすさに突き進みますと 今度は安心・安全は損なわれるということで、バランスを取っていかなければいけ ないと考えておりますが、まず受給がまだ相当バランスしていない、いえば需要の ほうが非常に大きい中で、バランスといってもなかなか難しい面があり、何とか財 政を投入してその受給のバランスを図るということを急務だと考えております。地 域の実情につきましても、後で出る地方分権の関係でもご指摘をいただいていると ころでありますから、地域の自主的判断についてどれくらい現状よりも取組むこと ができるのか、できることからやりたいと思っておりますが、財政的に単に質を低 下させるということだけで結論が出るとか、非常に子供の福祉あるいはお母さん方 の安心という意味から危惧される面もありますので、質の低下を起こさないような 恰好での地方の実状を反映する、こういうことについても注意して進めたいと考え ております。  それからポジティブ・アクションの関係ですけれども、これはご指摘いただいた とおりで、統計上は熱が冷めてるような数字も出たりして、私どもも今後の取組み についていろいろ検討しているところですけれども、一方で取組みが成熟してきた ことが、むしろ押さえた回答につながっていっているような面もあるのではないか ということもあります。ですから最後におっしゃったように、男性も含めて働き方 の見直しという切口が非常に重要でありまして、こういうことを総合的に捉えなが ら表面的な理解に、とらわれてないように、もちろん数字の取組も含めて対応もし ていきたいと考えております。 ○太田職業安定局長 職業安定局長でございます。私は大きく5点ぐらいいただい たと思いますけれども、最初は勝俣委員からあった高齢者雇用の話で、65歳までの 雇用の確保措置に取組んでるので、企業の実体も十分斟酌して検討いただきたいと いう話で、おかげさまで高齢法2006年に施行して、1年後の状況をみると大体中小 企業も含めて93%の企業が雇用確保措置を取っていただいた。それから就業率をみ ますと、施行前2004年と2007年を比べると、男性では大体就業率が60歳前半層 は5.4ポイント上がっている。女性でも2.6ポイントということで、大変労使にご努 力いただきましてかなりの成果が上がっているのではないかと思っております。そ ういう中で、まだ少数ながら確保措置のない企業が残っている、あるいは希望者全 員でないところ、処遇等々の問題はありますので、まず私どもは高齢法で定められ た65歳の確保措置というのを着実にやっていきたいと考えております。またその上 で、中長期的にはやはり高齢者が社会全体を支えることができるように、幾つにな っても働ける社会の実現というのを、その上で目指していきたいと考えているとこ ろです。  それから2点目は齋藤委員あるいは加藤委員、河野委員からも中小企業の問題を いろいろいただきました。私どもも中小企業はなかなか人材確保は難しい、あるい は経営が苦しいという状況がありますので、様々な事業、助成金など、中小企業を 重点において対策を講じておりますし、今後ともやっていきたいと思っております。 その中で助成金が使いにくいという声もよく聞きますので、要望を踏まえて、でき る限りの簡素化等も考えていきたいと思っております。  それから、これから人材面からの中小企業支援、マッチング機能も含めて拡充し ていきたいと思っておりますけれども、そのときには各省あるいは団体、いろんな 施策がありますので、総合的な点を視野におきながら施策の充実、強化を図ってい きたいと考えているところです。  3点目は障害者施策で山口委員からご質問いただきまして、特にジョブコーチが 大変重要であるということで、養成の目標とか人数という話でしたけれども、昨年 末の重点施策実施5か年計画で、平成23年度までにジョブコーチを5,000人を養成 することを目標としているところです。いま平成20年3月末で1,000人をちょっと 切るぐらいの状況ですけども、ご指摘ございましたように、やはり仕事の中でのコ ミュニケーションなり円滑化を図るうえでは、職場適応を支援するジョブコーチの 役割は大変重要だと思っておりますので、引き続きジョブコーチの養成を初め障害 者施策の充実に努めていきたいと思っております。  それから、介護人材の話をいただきましたけども、介護の人材確保、労働条件の 問題、非常に深刻な問題があるというのは、本当にご指摘のとおりだと思っており ます。今国会でも介護保険法の改正の中でも大きなテーマとなって、特に議員立法 で介護従事者等の処遇改善に関する法律案が成立しまして、来年4月1日までには 検討を掲げて、必要な措置を講ずるものとされているところです。一番の問題は介 護保障の改定の問題があると思いますけども、これは現在労研局において経営者の 実態調査も行った上で、それを踏まえて改定に向けた作業が行われているところで す。全体としてはそういう状況ですけども、私ども雇用労働施策の観点からも、介 護人材の確保・定着を図ることが重要ではないかという観点に基づきまして、大橋 先生を座長に研究会を4月から立上げて、業界団体なり、あるいは組合の関係者か らもヒアリングを行って現状の把握、分析を行った上で、介護労働者の安定的な確 保とか、雇用管理のあり方について検討を行っているところです。そういうものを 踏まえてマッチング機能の強化とか、雇用管理の改善のための政策を総合的に実施 するということを検討して、来年度に向けてしっかりと取組んでいきたいと考えて いるところです。  シルバー人材センターの労災適用、安全・衛生の問題のご質問をいただきました。 全部を労災適用というのは、雇用関係のある部分についてはそうですけれども、一 般的なところはなかなか難しいと思いますけども、全体として、やはりこれからシ ルバー人材センターで就業する人がどんどん増えていくという中で、安全・衛生と いうのは大変重要な点ですので、しっかりとした配慮、対策をやっていきたいと思 っております。とりあえず以上です。 ○新島能力開発局長 能力開発局長です。ジョブ・カードにつきまして何点かご質 問がございました。周知につきましては確か前回の会議でもご指摘を受けたところ ですけれども、これにつきましては商工会議所にジョブ・カードセンター、中央、 地域、引き受けていただいておりますが、このジョブ・カードセンターが事務局を 努める運営本部に関係労使、団体、教育界等々参集するということになっておりま す。こういった場を通じて普及をしていきたいと思っております。現在の状況を申 し上げますと、4月からスタートしたといいながら、幾つかパターンがございます けど、デュアルシステムによるこのプログラム参加者、現在段階で3,000名ほどで す。それから、実践型人材養成システムが約1,000名ということで、今回新たに設 けられました有期実習型訓練につきましては、先行プロジェクトで30数名という段 階で、この分がこれから本格的に動き出すということです。関係者にいろんな意味 でいろんな媒体を使いながら、広報に努めてまいりたいと思っております。  それから、この訓練期間中の生活のほうについてのご質問がございました。これ につきましては、現在技能者育成資金という制度がございます。これを今回一部拡 充をした、このジョブ・カードに合わせて拡充をいたしておりますが、ご指摘の趣 旨を踏まえて訓練を受ける方がより安心して受講できるような、そんな工夫をして まいりたいと思っております。  それから、中小企業の人材育成の関係でご質問がございました。これにつきまし ては、現在キャリア形成支援の助成金という制度がございます。この中では、特に そういった人材面での訓練をする場合に中小企業の負担を軽減するという意味で、 中小企業につきましては助成率を上げるということで取組んでおり、こういった部 分を今後とも活用しながら育成に努めてまいりたいと思っております。  それからもう1つ、特に団塊の世代が引退する中で、やはり技能の継承がなされ ない恐れがあるということで、そういったことを踏まえて特に高度技能を持ってる 方々のデータを集めてデータベース化をして、こういった方々を現実の企業の現場 に派遣するというようなこともやっていきたいと思っています。こういったことを 通して、中小企業の活性化を図っていきたいと思っています。 ○青木労働基準局長 安定局長からもちょっと話がありましたけども、シルバー人 材センターについての労災の関係ですが、労災保険法は、もちろん雇用関係、労働 者性があるというものについて基本的に補償をするというものですから、シルバー 人材センターは請負とか委任でやられていることが一般的であり、その場合には対 象にはならないわけですが、労働保護法規、概ね雇用の実態に着目して適用してい くということですので、個別具体的にみて、労働者性があるのだということであれ ば、もちろん労災を適用して補償していくということになっております。ご指摘の ようなものが、具体的にはどういうものかわかりませんけれども、そのような事例 もあったということだろうと思いますがお話にあったような解決されていない労災 という問題ではないだろうというように思っています。  それから独立自営業者、バイク便だとかあるいは多重就労者について、労働社会 保険制度の適用が漏れるというお話でありましたけれども、これはいまシルバーで 申し上げましたように、基本的にはそういう労働実態、働いてる実体に着目して適 用して保護を与えていくということでありますから、漏れがあってはもちろんいけ ないわけでありますので、我々としては実際に施行、執行していく過程においては そういうことがないように、きっちりとやっていきたいと思っております。  しかし、バイク便とお話がありましたけど、これはこの前、新しいパターンのい ろんな仕事が出てきて、そういったものについてそういうものを体系化して整理を する。そして漏れのないようにしていくということで通達を出したわけですので、 そのときどきに応じていろんな問題が生じたり、あるいはきっちりある程度枠組み を示すほうがいいなというものについては、我々も調査したり分析をして、できる だけそういうことをやっていきたいと思っています。  いずれにしても独立自営業者とか多重就労者については、先般、労働契約法が成 立をしましたけれども、それを立案する過程で研究会を先生方にお願いをして開い ていただきましたけども、そのときでも検討対象にされて議論はされました。労働 契約法の際には法案の中には盛り込まれていませんけれども、問題意識は持ってお りまして、そういうことで、とりあえず労働契約法の施行なり、現行法での対応を きちんとしていくということでやっていきたいとは思っておりますが、問題意識と しては持っているということを申し上げたいと思います。 ○小野政策統括官 古賀委員の全体に渡るお話ということ、国の政策の中での労働 政策の位置付けというお話があるかと思いますけれども、今回雇用戦略を策定した というのも、この経済戦略の中で非常に大きな位置付けをされているということで 認識は全く同じです。今後骨太の方針にも反映されると思いますけれども、予算の 確保については、しっかりやっていきたいと思っております。 ○菅野会長 よろしいでしょうか。次の議題に移らせていただきます。次の地方分 権改革について、事務局からの説明をお願いします。 ○生田労働政策担当参事官 お手元の資料2-1、2-2、2-3を用いましてご説明をい たします。まず2-1ですけれども、地方分権改革推進委員会の第一次勧告が5月28 日に出ております。内容は第1章の国の地方との役割分担の基本的な考え方や、2 章の重点行政分野の抜本的見直し、3章の基礎的自治体への権限委譲と自由度の拡 大といった内容で、本来地方支分局の問題、労働局の問題につきましては取り上げ られないというような内容でしたけれども、2ページの別紙の一番下の7.にござい ますように、労働というような部分が設けられまして、最終的に資料2-2という、 この白い縦長の紙のような勧告が取りまとめられたところです。この点線で囲まれ ているところは課題認識で、狭義の勧告ではございませんで、下の○のところが勧 告ということです。課題意識の中にハローワークにつきまして、国は基盤として必 要な求人情報に関する全国ネットワークを整備し、これを活用して実際に見合う職 業紹介事業を都道府県に委譲することが必要と考える。これに関連する国の出先機 関の見直しと併せてさらに検討を進め、二次勧告において結論を得るというような 指摘があり、二次勧告については7月から8月にかけて中間報告、11月、12月にか けて二次勧告本体が出るということですので、ハローワークについて今後本格的な 議論になるということです。  その下の○ですが、雇用・能力開発機構に関連して、離職者訓練事業の民間への 委託訓練に関して、現在の実施状況を踏まえて、機構と都道府県の役割分担の考え 方を明確にした上で、都道府県への委譲について検討し、平成20年中に結論を得る ということで、これについてもこれで決着がついているわけではなく、平成20年中 に結論を得るという整理になっております。こういう問題について資料2-3にある ような考え方を私どもは持っております。ポイントだけ申すと、無料職業紹介事業 については、何といっても全国ネットワークの職業紹介の枠組みというのは非常に 大事ではないかという考え方を持っており、併せて職業紹介雇用保険雇用対策を一 体的に実施するという枠組みも重要ではないかと思っております。こうした方法に ついては、先進諸国では共通に取られている方法でして、条約を批准している国は もちろん当然ですが、それ以外の国もこういった方法を取っております。  下から2つ目の○、都道府県に仮に委譲すれば、88号条約違反の可能性が高いの ではないかと考えております。ただ、地方公供団体と国が一体となって対策を進め ていくことは非常に重要だということで、そういった面からの工夫はしていきたい ということです。  離職者訓練については、国の責務としてセーフティネット機能を果たしていると いうのは、ハローワークと同じような位置づけだと思っておりますが、2番目の○ にあるように、何といっても各県ごとに実施状況に大きなギャップがあるというこ とで、国がきちんと全国的な目配りをしながら対応していく必要があるのではない か。あるいは国あるいは県の就職率には相当な違いがありますので、そういう点も 踏まえた対応が必要ではないかと考えております。いちばん下の○にあるように、 いま現在、雇用・能力開発機構のあり方検討会でさまざまな議論が行われておりま すので、それを踏まえた対応が重要になってくるのではないかと考えています。以 上です。 ○菅野会長 それではこれについてのご意見、ご質問等をお願いしたいと思います。 ○古賀委員 いま地方分権改革のご報告があり、それに対する厚労省の考え方も示 されたわけですが、私どもは基本的に厚労省の考え方を支持したいと思います。取 りわけ無料職業紹介事業の都道府県への委譲については、まさにハローワークとい うのは就職が困難な方に対する雇用の最後のセーフティネットであり、これは勤労 権を保障する国の責務だと思っています。したがって引き続き国が全国ネットワー クにより、実施すべきだと思います。ILO第88号条約についての解釈が書いてあり ますが、私どもはこうした場合には、ILO第88号条約に違反するのではないかとい う認識です。実際、先ほどもありましたように、主要先進国、どんなに地方分権が 進んでいても、職業紹介については国がきちんと実施しているという実態があるわ けですし、雇用・就職というのは都道府県域を当然のことながら越えていく。ある いは雇用情勢の急激な悪化とか、あるいは大型倒産などが続くと、それに対する機 動的な対応も必要不可欠であると思います。都道府県に委譲すればそれらのことが 各県でバラバラの対応になる可能性がある。離職者の再就職が進まず、失業率が急 激に悪化する恐れすらあると考えております。こうした観点から、この地方分権改 革推進委員会の主張には、我々としては明確に反対であるという意見を申し上げて おきたいと思います。  加えて職業訓練です。厚労省の考え方にもあるように、現在の年長フリーターと ワーキングプアをはじめ、働く人々の格差の解消が重要な課題となっているという ことは、先ほどの新雇用戦略でも訴えられたところです。こうした労働者に対する 訓練は、これまた国の責務として行っていくべきと思っています。またお聞きする と、行政減量効率化有識者会議においても、機構そのものの民営化のような話も出 ているわけですが、国として横断的に職業訓練を行う必要があります。民間は現在、 事務系、サービス系などの委託は行っておりますけれども、物づくり系の訓練はや はり国が行う、これが雇用のセーフティネットであると思っています。職業訓練に ついても、今後とも国がきちっと責任をもって取り組み、訓練を必要とする人に十 分な機会を与える、このことが非常に重要だということを重ねて申し上げておきた いと思います。以上です。 ○大村委員 ただいまの意見とほぼ同じような形になると思いますが、無料職業紹 介事業についてです。ハローワークの業務のうち、無料職業紹介を都道府県へ委譲 すべきとのことですが、これまで雇用保険については、職業紹介で受給者の職業意 識を確認しながら、適切な失業給付を行うようにしてきたと思います。しかし職業 紹介と雇用保険を分離すれば、受給者の就職意思の有無に対するチェックが甘くな り、失業給付の濫給が生じるなどの弊害を生じ、結果として保険料負担が増大する ことが危惧されるが、このような恐れはないのだろうか。労使の雇用保険料が上が ることに対しては、改革には賛成できない。また企業は都道府県域を越えて、優秀 な人材を確保しようと努力している。特に中小企業の場合は、人材確保は大きな経 営課題となっている。現在はこうした問題について求人を受給したハローワークが、 他県のハローワークと連絡調整しながら対応しているが、都道府県に委譲した場合、 こうした都道府県域を越えた対応が効率的に実施できるかどうかについても疑問が ある。  最後に、雇用のセーフティネットについては、国の関与が必要と考えるが、いま まで状態がいいとは思っていない。例えば、東京でも東京都の仕事センター事業の ような、地方公共団体の 地域の実情を踏まえた、積極的な取組みが行われている が、このような取組みが一層の実効性を上げていくためにも、国のハローワークが 地方公共団体との日常的な連携を強化していく必要があると考えます。厚生労働省 としても、地方自治体と連携、意思の疎通に一層意を払って、今後の取組みを進め ていただきたいと思います。以上です。 ○鈴木委員 大体いま皆さんおっしゃった意見と重なる所もあるのですが、特にハ ローワークについては雇用のセーフティネットとしての機能を重視するという、厚 生労働省の国が責任をもって引続き実施する、この考え方に私どもも強く賛同する ところです。私どももこれまで提言とか、経労委報告の中でもこの点は強く主張し てきたところです。もちろんハローワークの業務内容については、雇用状況の変化 に応じて、適宜、適切にそのサービス内容を見直していく。機能の強化や効率化を 着実に進めていくということが、その前提となるわけではあります。企業としては、 都道府県という区域に限定されることなく、優秀な人材を広く求めていく。こうい う立場を考えると、職業紹介事業についても、県を跨いでの連携によって、対応し ていくことは絶対必要なことになります。そのためにも現状のハローワークの連絡 調整の機能をさらに強化しながら、対応を図っていただきたいと思います。  職業訓練については、雇用・能力開発機構が行う訓練業務の必要性について評価 を行った上で、法人自体の存廃を含めて、1年を目途に検討を行うということです ので、この検討会においての専門的な観点からの議論、その結果を十分見極めた上 で方向を打ち出すべきだろうと思います。なお財源を負担する事業主団体の立場か ら申し上げれば、この職業訓練は労働者の能力を向上させることによって、企業が 求める人材ニーズとのギャップを埋めるという大切な役割があるわけです。したが ってニーズに叶った訓練を効率的かつ効果的に実施していただく。これも大事な視 点であるということを申し上げておきたいと思います。以上です。 ○菅野会長 ほかによろしいでしょうか。それでは事務局からどうぞ。 ○太田職業安定局長 職業安定局長です。ハローワークの件、特に無料職業紹介事 業の都道府県への委譲ということでご意見をいただきました。先ほど事務局からご 説明したとおり、私どもとしては全国ネットワークのハローワークの無料職業紹介 業務については、国が責任をもって引続き実施することが必要ということで、これ までもこうした考え方について委員会にヒアリング、あるいは公開討議の場でも強 く主張してきました。今後第2次勧告に向けての検討、議論が本格化していくわけ ですが、本日の皆様方のご意見も引続き十分踏まえた上で、私どもの考え方をしっ かりと説明していきたいと思っております。特にこの問題については、いまいろい ろなご意見をいただいたとおり、ハローワークの利用者である労使双方の意見を十 分尊重する必要があると考えており、地方分権の委員会にもその旨をずっと主張し ておりますが、引続きご支援をいただきたいと思っております。当然ながらハロー ワークの業務改善、就職率目標等を掲げる中で、PGCAサイクルの中で、サービス の改善・向上にさらに務めていきたいと思っております。  地方自治体との連携もいままで以上に強化していきたいと思っております。先ほ どお話がありましたように、東京の仕事センターも東京都がワンストップサービス センターで開設しておりますが、若者の部分と高齢者の部分はハローワークを併設 して、共同でやっておりますので、そういう一体的な推進、都道府県と国、あるい は場合によっては市町村、そういう事業は十分進めていきたいと思っておりますが、 基本的なハローワークの全国ネットワークは、国が基本的に維持していきたいとい う方向で私どももしっかりと主張していきたいと思っておりますので、今後ともよ ろしくお願い申し上げます。 ○新島能力開発局長 職業能力開発局です。雇用・能力開発機構のあり方の検討を いま行っているわけですが、これに関連して今回分権委員会で民間委託の委託訓練 の都道府県への委譲が議論されたわけです。これについてはやはり機構が行ってい る離職者訓練は、国の責務としての雇用のセーフティネットであると。さらにはワ ーキングプア対策等の格差是正の重要な役割も担っていると基本的には考えており ます。現在、この問題については機構のあり方検討会において、古賀委員あるいは 今野委員をはじめ都道府県の専門家の方にも参画をいただき議論をしております。 いずれにしても年内取りまとめということですので、いまヒアリング等も行ってお りますが、そういった議論を積み重ねながらこの必要性について十分議論していた だき、総務会について結論を得るというように進めてまいりたいと思っています。 ○菅野会長 よろしいでしょうか。それでは次の議題、法案の審議状況等について、 G8労働大臣会合について、その他まとめて事務局からの説明をお願いします。 ○生田労働政策担当参事官 資料3-1でまず、法案の審議状況についてご報告いた します。まず1の労働基準法等については、このような国会情勢の下で、まだ通常 国会で審議がなされておりません。2の駐留軍法、漁臨法は成立させていただきま した。ありがとうございました。3の障害者雇用促進法は、5月29日に衆議院の本 会議で審議がされ、6月4日には衆議院の委員会で審議予定ですが、この後につい ては後期高齢者の法案の対応が見えないこともあり、審議の動きはよくわからない というのが現状です。  続いて資料5です。「人生85年ビジョン懇談会」の報告です。これは2頁目に取 りまとめが書いてあり、舛添大臣の発意のもとに始めた研究会ですが、人生85年時 代に向けてリ・デザインという名前で取りまとめをしております。上の枠にあるよ うに、この60年余りで平均寿命が30年延びたということで、人生85年時代が到 来している中で、これまでの20歳前後までは学校に通い、定年までひたすら働き、 その後は年金生活で余生を過ごすといった年齢で輪切りにする人生設計については、 時機に合わなくなっているということもあり、国民一人ひとりが健康で充実した暮 らしが送れるよう、人生設計をデザインし直して、これをリ・デザインと言います が、仕事・学び・遊び等について生涯現役の社会づくりを進め、自分らしい華のあ る生き方を実現するために提言をするということで、そこに書いてある4項目につ いての提言がされました。以上です。 ○勝田国際課国際企画室長 引続きG8の労働大臣会合についてご説明します。資 料4の最初にあるように、5月11日から13日まで新潟で開催されました。11日は 各国G8の大臣と労使の代表の方々との対話セッションが行われ、12、13日と大臣 による議論が行われました。参加したのはG8、8カ国の代表のほか、EU、ILO、 OECD、これに加えて今回はアウトリーチ招待国としてインドネシアとタイの労働 大臣がご参加になって議論が行われました。議題は「溌溂とした持続可能な社会の 実現に向けたベストバランスを求めて」という大きな題を付けております。それぞ れ3つの副議題に分かれており、1つ目は長寿化、先ほどの85年ビジョンとも関係 しますが、長寿化の問題を中心にして、一人ひとりの労働者の問題。2つ目は、グ ローバル化に伴う格差拡大の中で、いわば取り残された労働者や地域の問題。3つ 目は、グローバル社会の課題と持続可能性ということで、特に環境問題と労働とい った問題をG8の労働大臣会合としては初めて取り上げました。  結果は、別添2ということで議長総括のポイントというのが付いております。次 頁の概要で説明いたします。まず、現状認識としては、1つはグローバル化の中で 所得格差の拡大やグローバル化の恩恵に恵まれない地域への対応が必要になってく る。雇用労働大臣として3.にあるように、グローバル社会のニーズに対応したスキ ルの高い労働力を確保するために、柔軟性と安定性を兼ね備えた包括的インクルー シブな労働市場を実現していかなくてはいけない。そのために個人が柔軟性と選択 肢の下で仕事・生活の調和を図ることが必要ですという基本認識の下に副議題の1 の長寿化の観点では、ワークライフバランスの問題、労働者の安全衛生や退職後の 生活の安定、生涯のキャリア形成の問題といった問題についても、対応することに ついての認識は共通です。  副議題2、取り残された人々、地域の問題で、職業紹介、失業給付、積極的労働 市場政策といったものを十分に統合して行う。あるいは全国的な労働市場の需給調 整機能を維持していくことが必要だ。2.は地方主導の雇用創出をするために、公共 の職業紹介が、職業訓練の適切な支援を行っていくこと。次頁、すべての人の能力 を確保していくことの重要性については意見の一致を見ました。さらに3のグロー バル社会の課題について、環境問題に起因する雇用社会問題の対応とともに、経済 的な発展、社会的な発展、環境保護という3要素のサスケナビリティを維持しなが ら、グローバル化社会の難題に取り組んでいくことが必要だと。この中で、ILOの グリーン・ジョブというイニシアティブやディーセント・ワークといったことを推 進することを確認するとともに、新潟宣言として、政・労・使の協力のもとに成長 雇用、生産性、環境問題に取り組むこと、さらに加えて職場レベルでの労使の協力 によって、こういった問題について寄与していくことが重要であるというようなこ とを確認しました。これらにつきましては、北海道・洞爺湖サミットのほうに要請 するとともに、次回のG8労働大臣会合開催に当たり、イタリアから本新潟会合の フォローアップを行いたいという提案がなされたという状況です。以上です。 ○太田職業安定局長 引続き私から、特に資料は用意しておりませんが、雇用保険 の国庫負担の廃止等について、財政審等において議論が進められている等との報道 がされておりますが、これに関してご説明します。まず、雇用保険の国庫負担の基 本的な考え方は、私どもとしては失業が政府の経済政策、雇用対策と極めて関連が 深く、政府もその責任の一端を担うべきである。こういう考え方によるものと考え ております。こういう雇用保険の国庫負担のあり方については、行政改革推進法や 骨太2006などを受けまして、昨年の雇用保険法改正の際に、この審議会、あるいは 雇用保険部会でも精力的にご議論いただきましたが、いま申し上げたような国庫負 担の基本的な考え方を維持することを前提に、やむを得ない措置として暫定的に本 来の負担額、これは原則給付の4分の1ですが、その4分の1の55%、13.75%す るということで、おまとめいただいたものです。当然ながらこのことは、国会で議 論になったわけで、当時の柳澤厚生労働大臣の答弁、あるいは国会の附帯決議でも 国庫負担は雇用政策に対する政府の責任を示したものである旨、明確にされており ます。  また一方で、雇用保険の国庫負担の廃止等の議論の背景には、近年の雇用保険の 財政状況が好転して、積立金の残高が増大しているということもあるようですが、 言うまでもなくこの積立金は労使にご負担いただいた保険料について、雇用情勢が 悪化した際の給付の財源として積み立てるもので、積立金の水準は保険料との関係 において議論すべき問題で、国庫負担のあり方とは本来無関係の問題であると考え ております。  こうしたことを踏まえると、雇用保険の国庫負担の廃止については、これは皆様 方にも到底ご理解いただけるようなものではないと考えております。我々としては 国庫負担の枠組みの堅持について、関係方面にしっかりと主張し、理解が得られる ように全力を尽して参りたいと考えております。なお、この問題は雇用保険の話だ けではなく、社会保障費のあり方、あるいは国の財政状況全般の問題の中で、政府 与党も含めて、さまざまな議論がなされているものです。したがって私どもとして は、先ほど述べたような考え方に基づいて、引続き国庫負担の必要性について十分 訴え、理解を求めていきたいと考えております。いずれにしてもこれからいろいろ な動きがあると考えられるので、労使の皆様方とは、逐次ご相談させていただきた いと思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。以上です。 ○菅野会長 以上のご説明について、ご質問等がありましたらお願いします。 ○古賀委員 最後にご報告がありました雇用保険の国庫負担について、少し意見を 申し上げておきたいと思います。国庫負担を廃止する旨の議論というのは、極めて 重大な問題があると思っています。先ほど太田局長からもありましたように、雇用 政策、雇用対策に関する国の責任を示すという意味で、この雇用保険の国庫負担と いうのがあるわけで、この原則そのものを廃止するということは、我々としてはあ り得ないことだと思っています。先ほど来ありましたように、積立金が貯まり過ぎ ているというような主張をされる方もいらっしゃいますが、雇用情勢が悪化すれば、 たちまち雇用保険財政が悪化してしまうことは過去の経過を見れば明らかなわけで、 そういう意味では我々としても国庫負担廃止というのは、極めて重大であり得ない。 またその背景に全体の財政事情があることはわかるわけですが、社会保障費を毎年 2,200億円抑制する、この辻褄合わせのようなことになっているのではないかとも憶 測するわけです。これらの抑制策も限界にきているということで、この抑制策等々 についても、撤廃すべきであるということも、敢えて付け加えておきたいと思いま す。以上です。 ○鈴木委員 使用者側としても全く同感であり、失業に対するやはり最低限のセー フティネットを維持していくということで、この雇用保険制度に対する国庫負担に よる国の関与は絶対に必要だということです。雇用保険の財政状況が好転したこと を理由に、安易に国庫負担の廃止を議論すべきは以ての外だと、このように思う次 第であります。 ○加藤(裕)委員 全然違う視点なのですが、資料5の「人生85年ビジョン懇談会」 報告の6頁にスポーツを通じたリハビリとか、あるいは教育ないしは健康づくりと いうようなことが書いてあります。実はいま文科省でも、スポーツを通じた青少年 の育成、あるいはスポーツ振興法というのは昭和36年にできて、全く見直されたこ とのない古い法律ということで、スポーツ立国を目指したいろいろな議論が進んで いるのです。実はそこで語られることは、どうしてもスポーツは文化であるとか、 あるいは日本をスポーツ立国するために、金メダルを何個取れるようにしようとか、 割合い高い目標というか、非常にレベルの高い話になっていくわけで、そこで私が 主張しているのは、国民全体がスポーツに親しんで、スポーツというよりも運働で すね、そういうことでもっと国民全体がスポーツにいそしんでもらう。そのとき特 に厚労省にお願いしたいのは、そのことと疾病等が予防されるとか、あるいは医療 費が下がっていくというようなことを示しながら、おそらく1、2年の間にスポーツ 立国目指した基本法の制定のようなことになってきますので、角度としては是非厚 労省側からもっと裾野を広げた、一般の方々の運動や健康づくりまで含めた視点を 加えていってもらいたいということが1つです。  それから、国民大会のようなイベントについて、年齢を超えた輝きを発揮する場 として、これは非常に我が意を得たりと思っているのですが、実は連合は国民体育 大会の廃止を訴えております。これはどこで取り上げてもらえるのかという厳しい 面があるのですが、いまの国民体育大会が持っているさまざまな矛盾、無駄の部分 を見直しながら、国としてこの問題をテーマにしていっていただけないだろうかと 思います。もちろん文科省や体協さんにも私たちは主張していますが、いまの国体 は、いかにも中途半端なものになっておりますので、強調しておきたいと思います。 ありがとうございました。よろしくお願いします。 ○岩村委員 2点だけ。少し前に戻った話で申し訳ないのですが、発言させていた だきます。1点は地方分権改革の先ほどのハローワークと職業訓練の件です。私自 身は先ほど労使の皆様がおっしゃった意見に賛成です。特にハローワークについて 言うと、やはり国が行うさまざまな雇用政策、例えば障害者の政策であるとか、そ の他いろいろな政策のいわばハローワークというのは基盤であり、ある意味で手足 であるので、その部分を切り離してしまって、果たしていろいろな雇用政策という のが本当にできるのかという点について、かなり強い疑問を持っております。そう いう意味ではやはりハローワークというものは国が責任を持っていくべきだろうと 思います。職業訓練についても、基礎的な部分、何が基礎的かという問題はあると 思いますが、やはりそこは国がやるべきではないかと思っています。それに併せて 地方独自で特性のあるものをやるということは、よいことだろうと思います。ただ1 つ、これは是非事務局にお願いなのですが、この種の議論というのは、どうしても いまの論調だと各省庁の既得権益の用語ではないかというように取られてしまう。 そうなってしまうとなかなか苦しいということもあるので、それに対抗するのはや はり実証的なデータなのだろうと思います。すでにご努力はされていることとは 重々承知しておりますが、是非、具体的なデータに基づいて議論を展開するように お願いしたいと思います。  第2点は、雇用保険の国庫負担です。これもたまたま私は雇用保険部会に呼ばれ て、前に意見を述べたことがあって、それについてはホームページ等に載っている ので、参照していただければと思います。特に状況が変わったわけでもないのに、 また同じ議論が蒸し返される。新しい角度からの見解でもないのに、というのは非 常に、そういう意味では非常に不思議であり、ここについてはすでに議論したとき と同じことでもありますが、是非事務局でも精力的にご議論いただき、対抗すると いうと変ですが、積極的に活動していただければと思います。 ○菅野会長 よろしいですか。時間がまいりましたので、本日はこの辺りで閉会と させていただきたいと思います。本日は新雇用戦略についてまずご議論いただきま したが、政府として骨太の方針を取りまとめる時期も近づいております。そうした 作業をやそれに続く概算要求の作業を進めるに当たっては、本日委員の皆様から示 されたご意見等を十分に踏まえて取り組んでいただきたいと思います。また地方分 権改革についても、ご議論いただきましたが、今後の地方分権改革を巡る政府部内 での議論に当たっては、本日示されたご意見を十分に踏まえ、適切に対応していた だきたいと思います。  次回は、骨太の方針を受けた概算要求の方向性等について議論していただきたい と思っております。本日の会議に関する議事録につきましては、審議会運営規定第6 条により、会長のほかに2人の委員に署名をいただくことになっておりますので、 労働者代表委員の山口委員、使用者代表者委員の齋藤委員に署名委員になっていた だきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは本日はどうもお忙 しいところありがとうございました。 照会先 政策統括官付労働政策担当参事官室 総務係 内線7717