08/05/30 第4回議事録(ヒトに対する有害性が明らかでない化学物質に対する労働者ばく露の予防的対策に関する検討会) 第4回ヒトに対する有害性が明らかでない 化学物質に対する労働者ばく露の予防的対策に関する検討会 議 事 録           日時 平成20年5月30日(金)              10:00〜12:00            場所 中央合同庁舎第5号館18階専用第22会議室 ○化学物質対策課企画官 皆さん、おはようございます。ただいまから、「第4回ヒト に対する有害性が明らかでない化学物質に対する労働者ばく露の予防的対策に関す る検討会」を開催します。本日の検討会は公開で行いたいと考えていますので、よ ろしくお願いいたします。    まず、配付資料の確認をいたします。お手元の資料を見ながらご確認いただきた いと思います。まず、いちばん上が座席表です。小西委員がご欠席ですので、若干 座席の配置が変わっています。    次に「議事次第」があります。資料1が「ナノマテリアル取扱いに関する労働衛 生の現状と対策について−アンケート結果から−」という資料でございます。資料 1-2は資料1の続きです。資料1-3は委員の方のみの配付とさせていただいていま すので、よろしくお願いいたします。    資料2、「厚生労働省通達『ナノマテリアル製造・取扱い作業現場におけるばく 露防止のための当面の予防的対応』の周知状況と課題について」という資料です。 資料3ですが、「エアフィルタによるナノ粒子の除去について」です。資料4です が、「職場におけるナノ物質の取扱いと使用に関するガイダンス」です。    資料5、「安全なナノテクノロジーへのアプローチ:NIOSHとの情報交換」とい う資料です。資料6、「『ヒトに対する有害性が明らかでない化学物質に対する労 働者ばく露の予防的対策に関する検討会』における検討課題(案)」です。    参考資料1、「第3回合同会合の概要」を付けています。これは今日、一緒にお 配りしています参考資料1と差し替えていただけたらと思います。参考資料2です が、先般、2月に発出した通達ですけれども、「通達『ナノマテリアル製造・取扱 い作業現場における当面のばく露防止のための予防的対応について』」というもの を付けています。    最後に参考資料3、「ヒトに対する有害性が明らかでない化学物質に対する労働 者ばく露の予防的対策に関する検討会開催要綱」を付けています。資料については 以上です、お手元にございますでしょうか。    それでは、写真撮影の方は、ここで退席をお願いします。よろしくお願いします。 なお、本会合の開催案内にも掲載させていただいていますとおり、会議中の写真撮 影やビデオ撮影、および録音をすることは禁止させていただいています。ご協力の ほど、よろしくお願いいたします。    本日、まず甲田委員より、「ナノマテリアル取扱いに関する労働衛生の現状と対 策について−アンケート結果から−」と題して、労働安全衛生総合研究所で実施し ている調査状況をご発表いただきます。次に小川順委員より、「通達への対応につ いて」と題し、厚生労働省の本年2月の通達を受けての、ナノテクノロジービジネ ス推進協議会における対策の実施状況等についてご発表いただきます。次に、今後 の検討課題についてご検討いただきたいと考えています。それでは、以降の議事進 行について、座長によろしくお願いいたします。 ○福島座長 それでは、これから私が進行を務めさせていただきます。活発な審議をお 願いしたいと思います。まず議題1、ナノマテリアル取扱いに関する労働衛生の現 状と対策について、甲田委員にプレゼンテーションをお願いします。大体、15分 を目途にお願いいたします。 ○甲田委員 私からは、ここにありますように、ナノマテリアル取扱いに関する労働衛 生の現状と対策ということで、現在進行しています、うちの研究所でのグループ研 究、特に私どものグループの関係している労働衛生の現状、今まではトキシコロジ ー、毒性の話が中心に報告されてきました。私どもで現在取り扱っていますのは、 現場、労働衛生の実態、労働者へのばく露がどうなっているのかを調べようという ことで昨年から調査をしています。入口になりますけれども、その結果を報告させ ていただきたいと思います。    今日は特に、アンケート調査の結果を中心に報告したいと思います。アンケート と言っても新しい技術、特にナノですから非常にサイズが小さくてとらえにくい、 見えにくいので、アンケートがどこまでそういう実態を把握するのかというのは非 常に疑問に思われるところだと思います。私もこれをやって、とりかかりのところ で非常に考えておりました。    ただ、こういうアンケートの調査をやっているのは、日本では、私たちは今回紹 介します産総研と合同でやっていますが、世界的に見ますと、いくつかの国でこう いう調査がされています。今日の資料にも一応載っていますが、Baua、ドイツのガ イドライン、昨年の8月に出されている取扱いに関するガイドラインがあります。 実はBauaの連邦研究所のほうが、ドイツ工業界にまず最初にアンケート調査を行 っています。それをもとに、そういうガイドラインを組み立てています。労働現場、 ないしは企業から得られる取扱いの情報をもとに、どういうように取り扱っていっ たらいいのかという、ヒントを得る意味では非常に有効なのだろうと思っています。    もう1つ、EUの国になりますが、レポートが出ているものを見ると、スイスが 自国の企業に対して約200社ぐらいを対象にインタビュー調査をやっています。協 力したのは最終的に50社ぐらいなのですが、そういうところでレポート、論文と いう形で提出する。ただし、スイスの国情なのでしょうが、取り扱っている事業所 の多くというのは金属酸化物で、カーボン系が非常に少なく、そちらの情報が非常 に足りない。我々としては情報としては使えるのですが、今回カーボン系の事業所 にだいぶ協力していただいていますので、そういう意味では参考になるのかなと思 っています。    事業所に対するアンケート自身は2種類用意しています。産総研と相談した上で 全般的な安全性、「A票」と呼んでいますけれども、そういうものに関する調査、 もう1つは細かい生産工程の中で取扱いをどういうようにされているのかという   「B票」という形でお話を伺って、アンケートを回収するという形でやっています。    アンケートの実施に当たっては、本日もご出席されていますがNBCIと十分相談 し、会員を中心に配付していただく。ただし、まだ成長しかかっている産業ですの で、業界団体としても他の業界とは立っている地盤が若干違うのかなという感じも します。こういうアンケートをするときに、どの程度会員たちに協力していただけ るか。ここがいちばんキーポイントになるわけですが、ここで我々もNBCIもかな り苦労したという実情です。    何段階にも分けてお願いし、何段階にも分けて配付ということで、最終的には 80社の方に調査票を送って、39社から回収されたA票をもとにまず分析する。さ らに細かい製品、取り扱っているナノに関する細かいB票に関しても回収したので すが、その回収は28社でした。こちらのほうが35%ぐらいです。ただし、複数作 られているということで、46のナノマテリアルに関する情報が今回得られていま す。    一部、回収された企業の業種や企業の規模です。先ほど、Bauaでドイツの工業 界の協力のもとにということでお話しましたが、ここと今回の調査との決定的な違 いというのは、ドイツは工業界、化学工業界を対象としています。職種的に言うと、 化学工業界はこういうところが非常に多い。今回、NBCIですので、化学工業以外 にも例えばゴムを作ったり、非鉄金属、電気、ガス・電気・熱供給とか、かなり広 いところの事業所からアンケートが回収されています。それだけ、このことはナノ の物質自身が製品として、ケミカル以外でも非常に多くの事業所、ないしは業種の 中で活用されているのだろうという1つの証しになるのかもしれません。このよう な形の円グラフが現れています。    こちらが企業の規模です。企業の規模から言うと、薄いものが49人以下、これ が100人未満ということになります。比較的大きい企業から小さい企業まで入って いるということで、ナノの特徴なのかもしれませんが、大企業だけではなくてベン チャーなどもかなり参入している様子がよくわかります。    これは我々は労働安全衛生の諸機関ですので、衛生管理の面ではどういう人たち がいて、どういう人たちが対応していますかということをお伺いしたときの結果で す。産業医の選任状況ですが、これが専属産業医、これが非常勤の産業医、これが 「していない」と。法律で決められている人数による属性によって、ということと ほぼマッチしていますので、特に違和感はありません。    こちらのほうは衛生工学の知識を持った衛生管理者がどの程度いらっしゃいます かという点をお聞きしています。見ていただいてわかるとおり、3分の2ぐらいが 衛生工学の知識を持った管理者の方がいらっしゃる、「YES」という形で回答され ています。そういうバイアスがあるのかもしれませんが、ナノの特徴なのかもしれ ませんけれども、やはり相手が、多くが粉体であるということで、この粉体をどう コントロールしていくのか。そういう点では衛生工学のプロの役割というか、いろ いろな仕事をするのですが、そういう方が企業の中で配置されているという状況が よくわかるだろうと思います。    こちらは回答された方の特色です。薄いブルーのほうは製品開発・生産ラインの   方が回答されています。我々のほうでは労働安全衛生の専門部門の方ということで   考えていたのですが、回答された方が非常に少なかった。ただ、その分、逆に生産   ラインの細かい話がよく聞けたのではないかと思っています。    ナノとのかかわりで言うと、ここにありますように研究・開発されている所は   31社、製造が15社、製造品の加工が12社という割合になっています。多分、こ   の辺のところがこれから問題になってくると思います。ナノの取扱いと言っても、   基本的には研究ないしは開発している事業所なのか、そうではなくて生産ラインを   持っている大きな事業所なのか。そうではなくて、作られた物を買い取ってそれを   加工している事業者なのか。3種類ぐらいあって、それを分けて労働衛生管理を考   えていかないといけないのかなという感じがします。    取り扱っている種類、どのようなものを取り扱っているか複数回答をしていただ   いています。今回得られたのはカーボンナノチューブが16社、関与をしていると   いうように答えられています。次に多いのが金属、ないしは半金属の酸化物です。   この2つが回答された事業所の中で多く、この2つの情報というのはそれなりに慎   重に検討していく必要があろうと思います。    それ以外、多いところで言うとカーボンブラックが7社、金属の単体が7社、フ   ラーレンが6社ということで、こちらもそれに準じてそれなりの分析をしていきた   いと思っています。ほかは1社とか3社と非常に少ないので、そこから得られる情   報というのはどのぐらいのものを表しているのかはわかりません。    事業所の中でのナノの従事者の数、安全衛生活動の種類です。先ほど言ったよう   に、回答されている事業所は大きい企業もあったり、ベンチャーもあったりしてい   ます。その中の全員がやっているわけではなくて、一部のセクターがナノを取り扱   っているわけです。我々の言葉で言うと、その辺がナノマテリアルのバックボーン、   労働者ということになるわけです。どのぐらいの数がいるのか聞いてみると、1名   から9名、1桁の事業所が14です。50名以下と言われているのが17ですから、全   体で言うと50名以下の労働者が従事しているということで、それほど多くないと   いうのがこれを見てわかると思います。    まず、全般的に、どのような種類の安全衛生をしていますかとお伺いしたところ、   濃いブルーがいちばん多かった。この内容は何かというと一般的な安全衛生、一般   的なものです。ナノ特有のものではないというご回答でした。ナノ独自の安全衛生   が3社ということなので、ほとんどの事業所がナノというよりは一般的な安全衛生   の中で取り扱っているというお話でした。    具体的な安全衛生活動に関して聞いています。このあとのB票では、さらに細か   い生産工程とのクロスを見ています。今日はそこまで時間がないのでお話できない   のですが、これを参考にしていただければと思います。    実施状況をパーセントで表しています。見ていただいてわかるように、先ほど多   かったカーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、カーボンブラック、金属酸化   物、金属単体、この5つだけを見ています。その実施状況を見ていただくと、いち   ばん高いのが局所排気装置を導入していると言われているところが、フラーレンは   50%なのですが、フラーレンを除くとやはりそれぞれ80%から90%ぐらいの事業   者が「YES」と回答しています。    その次、このグラフの中で見ていただくとわかるのはMSDS、有害性の情報を事   業所の中では活用していますというところがかなり多かった。そのほかには作業マ   ニュアルを作っていますと。後で議論になるのでしょうが、クローズドシステムを   入れているところはここに挙げたようにかなり少ないという結果になっています。    もう1つ、こちらは続きです。続きを見ていただくと、ここにやはりもう1つ高   い山があります。これは何かというと保護具です。保護具を着用している、または   支給している会社ということです。これもフラーレンに関して言うと50%ぐらい   ですから低いのですが、その他の物質に関して言うとやはり85%以上、多くの事   業所が保護具を支給しています。保護具の内容はあとで出てきますので省略します。    それ以外で言うと、例えば衛生教育や健康管理、トレーニングをしているという   のは、物質ごとに3分の1から半分ぐらいという状況になっています。    ナノを取り扱っていていろいろな意味で不安があるか調査したところ、「不安は   ない」と言われている所で言うと、いちばん特徴的なのはブルーのところ、フラー   レンです。フラーレンが3分の2、66.5%です。6社ですので4社ということです   が、ほかに比べますと圧倒的に差があるという感じがします。    ナノ物質全般というより、企業の反応としては、物質によってかなり温度差があ   るということが結果から多分わかるのだろうと思います。逆にカーボンナノチュー   ブ、金属系で「ない」と言っているのは2割以下ですので、少しこことこことの違   いは今後考慮する必要があります。その裏返しですが、作業者への健康影響がある   のではないかということについて。あくまでも、回答は「不安に思っていますか、   いませんか」ということなので、「ある」という申告ではありませんが、不安に関   して言うと、カーボンナノチューブ、金属に関して言うと、40%から55%ぐらい   のところで「YES」という形で答えられています。    反面、安全への不安というのはそれほど多くありませんが、先ほど言ったように   健康影響がひょっとしたらあるのではないか。その健康影響に関連するような意味   合いで言うと、安全衛生の情報、いろいろな情報が非常に得にくいというところが   事業所からすると非常に不安の裏返しになっていると見ています。    さらに、もう少し続けると、先ほど情報に対する不安がありました。インターネ   ットなど、いろいろなところで情報を取るのですが、実際の事業所の中ではそのよ   うなものが得にくいというところが不安の原因になっているのかなというのがこれ   を見てわかります。そのほか、生産工程の設備が良いのか悪いのか、環境の測定が   良いのか悪いのか。先ほど出ましたが、多くの企業でやっている保護具の適否が良   いのか悪いのか。環境への排出が一部あるかもしれない、そういうものが良いのか   悪いのか。そのような不安に関しても、物質ごとに若干バラつきはありますけれど   も、20%から30%、3分の1ぐらいの事業所が「YES」という回答をしています。    その次、「自由意見」、どのようなことをしたらいいですかということで聞いて   います。我々は3段階に分けてお話を伺いました。まず、「国は何をしたらいいで   すか」という形で意見を聞いています。国が行うことということでいろいろな事業   所から出てくる意見というのは、例えばここにありますように、危険を隠さず、速   やかに情報を公開する、実施されているいろいろな成果をいろいろなメディアを通   じてなるべく情報公開してくださいということです。これは取扱いに関する危険性、   有害性、逆にこういうようにすれば安全ですというものが挙がっています。    そのほか、この中でいろいろありますが、特徴的なことがこの中で2つ出てきて   います。先ほど言った情報公開、もう1つは取扱いに関してのいろいろな基準、ガ   イドラインみたいなものを早めに公表していただきたい、わかっているところから   公表してください。そうなのだろうと思いますが、ナノに関しては物質ごとにいろ   いろ情報にバラつきがあります。そういう情報に関しての黒ないしは灰色、グレー、   白、いろいろあるのでしょうが、確定するまで隠さないということでなく、なるべ   く早い段階から情報公開して、我々が吟味できたり審査できたり、そういうものを   活用して現場での衛生管理に活用できるようにしてくださいという回答が非常に多   かったのが、今回の自由意見での特徴だと思います。    もう1段で言うと、今度はここにありますように開発・製造している事業者、要   するにメーカーサイドに対してどういうことをしたらいいですか、どういうことを   望みますかという設問をしています。ここにありますように、やはりここでも一言   で言うと情報公開ということに多分尽きるのかもしれません。ただ、自社で製造し   ているナノマテリアルの人体への有害性に関しては、やはりその会社がある程度評   価すべきでないか。そういうものをした場合には、安全性に関する情報を収集して   分析して、「責任の明示」と書いてあるのですが、基本的にはそういうものをメー   カーがつかんだ場合にはMSDSとしてきちんと公開しましょう、というようなこと   が望まれているというのがメーカーに対するいろいろな要望というか、意見なのだ   ろうという形で考えています。    今度はユーザーサイドです。メーカーで作られているナノマテリアルを取り扱う   とか、そういうものをもとに製品を作っていくという会社に関しては、ここに書い   てあるものを見ると例えばナノマテリアルをきちんと利用しなさい、またはそのよ   うにしているかどうかを製品を作っている中で明示しなさいということです。それ   から、メーカーサイドがきちんと出している有害性の情報、または取扱いの情報を   ある程度きちんと理解して、生産の中に活かしていってください。これはただ、パ   ッと出しているだけなので、ユーザーに対してはメーカー側が要求しているのか、   メーカーに対してはユーザーが要求しているのか、この辺がちょっと難しいところ   なのです。いずれもそれぞれ3社のやるべきことというのは、意見の中である程度   出ているのではないかと考えています。詳しくはあとで目を通していただければと   思います。    今までお話したのは、基本的にはA票と言われるもの、安全衛生に関する全般的       な質問でした。ここからは先ほど言ったB票と呼んでいる、個別の物質ごとの状態   の報告をさせていただきます。ここにありますようにB票というところです。B票   に関して、先ほどカーボンナノチューブが16社ということだったのですが、B票   ではその中で主なナノマテリアルということでピックアップしています。16社と   いっても、取り扱っているのがそれほど主要な製品ではないというところが落ちて   いますので、nは12まで下がっています。逆に、金属酸化物のほうは16、先ほど   より多くなっています。これは複数の金属酸化物を取り扱っているところが1社あ   り、こういう形で多くなっています。    あとは、先ほど言ったようにnが2とか3、4ということなので、どのぐらいの   形で表に出すかは疑問があります。今回、ここでは2つ、カーボンナノチューブと   金属酸化物のデータをご紹介します。それぞれ金属酸化物、ないしはカーボンナノ   チューブに関して製造から、または清掃まで、それぞれの生産のプロセスごとにど   ういう形でばく露するのか、ないしはどういう形で対策がされているのかを細かく   聞いています。そういう意味では事業所の方、回答された方、かなり時間がかかっ   たと思います。大変な仕事だったと思います。その分、貴重なデータが取れたと我   々は考えています。    これは作る段階で産総研とやり取りをして、いろいろなアイデアをいただいて、   その結果できたアンケートですが、最初にお示ししているのはそういう作業がある   かないか。もちろん、ないところもあります。あった場合、そういう作業に労働者   がいた場合、労働者がばく露しないということをもう1回、会社の方に見ていただ   いて、絶対にばく露しないというのであればNO、ひょっとしたらばく露するかも   しれないというのであればYESという形で選ぶ。かなり意地悪というか、厳しい質   問です。ですから、ここに出ているパーセントというのは絶対ばく露しているとい   うことではなくて、ばく露している可能性があるかもしれない、ばく露していない   という証拠はないですねという意味合いですので、そういう数字だと思っていただ   きたいのです。    そういう意味で見ていただきますと、製造部門で「ある」が9/9と書いてあり   ますけれども、カーボンナノチューブが9社、金属酸化物が9社ということです。   12社あっても、製造がないところもあるので減ります。nが9という意味合いで見   るとカーボンナノチューブが33%ですから、9分の3社のところがひょっとしたら   ばく露があるのかもしれないという形で答えられています。    そういう意味合いで見ていただきますと、製造で金属酸化物とカーボンナノチュ   ーブに差が出てきます。荷受け、こういう作業がある場合のものもこの2つは差が   出てくる。比較的似た傾向を取るのはそれ以降、秤量したり混練をしたり、装置に   ナノマテリアルを注入していたり、さらに回収、移し替え、清掃する。特徴的なの   はこちら側からこちら側ですと、カーボンナノチューブと金属酸化物を見ますと、   金属酸化物のほうが高い値になっています。これはカーボンナノチューブ、金属酸   化物、それぞれの製品の特性なのかもしれません。一部には、カーボンナノチュー   ブは単価が高いから非常に慎重に扱っているのではないか。逆に、酸化物のほうは   大量にあるので、その分、取扱いがひょっとしたらカーボンナノチューブと違うの   ではないか。そういうことかもしれません。    いずれにしても、ちょっと気になるのは秤量、装置への注入、回収、移し替え、   清掃という段階では、金属酸化物ですと8割を超える事業所が「ひょっとしたらば   く露があるのではないか」という形で答えられています。カーボンナノチューブに   関して言うとそこまで行かず、ちょっとデコボコがあります。ただ、50%から70   %ぐらいのところがひょっとしたらあるのかもしれないという不安を持っています。    混練は全く別ものだと考えてください、ほかの材料と混ぜ合わせるということで   す。これも実は別の装置が必要なのだろうと思います。カーボンナノチューブ3社、   金属酸化物5社、100%の方が「あるかもしれない」、これはこれでちょっと特別   に現場に行って調べる必要がある作業かもしれません。いずれにしても、こういう   形で両者で差が出てくることになります。    資料1-2をご覧ください。細かくは説明しませんが各生産プロセスごと、先ほど   言いましたように製造、荷受け、秤量、混練、清掃まで含めて、その工程に応じて   それぞれの対策を見ています。黒字がカーボンナノチューブです、赤字が金属酸化   物です。無人化とか全体換気などを導入されているか・いないのかを個別に表した   表です。本当はグラフにしたかったのですが、もうちょっと検討したいということ   で、今回数字をそのまま持ってきました。例えば、これを見ていただくと、カーボ   ンナノチューブの製造を持っている事業所というのは先ほど言ったように9あった   のですが、その中で先ほど言ったように無人化、自動化というシステムを導入して   いるのは22.2%、2社です。こちらの金属酸化物では9社、11.1%、1社がそうい   う形でやっています。    そういう形で見ると無人化、自動化というような、通達の中でも1つ提案として   出てきているものなのですが、カーボンナノチューブ、金属酸化物は22%、0%、   0%ということで、最後の工程に行ってもかなり低い。唯一、製造の工程で入れて   いるのが数社ある。    換気装置です。先ほど、局所排気装置がかなり事業所では入っていると言いまし   た。それを細かく見ていくと、こちらで言うと製造の工程で局排を採っている事業   所がカーボンナノチューブでは3分の2、逆に金属酸化物では33.3%となっていま   す。局排の導入状況を見ると、下にずっと見ていただければ60、22、100、60とい   うことで、やはり物質によって差がありそうだということがこれで言えると思いま   す。    もう1つ、あとで細かく言いますけれども、どのような保護具が入っているのか。   マスク、手袋、メガネ、防護衣となっています。防じんマスクはカーボンナノチュ   ーブの製造部門で66.7%、手袋66.7%、メガネ55.6%ということで、カーボンナ   ノチューブの製造現場ではほぼ3分の2ぐらいが四点セットをやっているのですが、   金属酸化物ではかなりバラつきがあります。ちょっと、気になるのは例えば荷受け   とか、こちらの秤量というのはあるのですが、防護手袋等に関して言うとがくっと   下がってきたりするのが気にかかります。いずれにしても、保護具に関しては物質、   製造工程によって差があるというのがこれで見て取れました。    まとめたいと思います。これも先ほど言ったとおり、今回、約40社ぐらいの事   業所で得られたものです。これが日本のものを表しているかというとそんなことは   ないのですが、1つのきっかけ、とっかかりにはなる。このデータを大事にしたい   と思っています。大企業からベンチャー企業までさまざま入っています。特徴的な   もので言うと、衛生工学の知識を持っている方が事業所の中に配備されていた。こ   れが今後、いろいろな意味で、防止対策の上で非常にキーマンになってくると思っ   ています。    多かったもので見ると、カーボンナノチューブ、金属酸化物の2つがあります。   この2つは細かいデータまでかなり吟味して、分析する価値があると言ったら変で   すが、したほうがいいのだろうと思います。そのほか、カーボンブラックとか金属   単体、フラーレンなども、もちろんあります。    これは従業員の数、ばく露人数です。大企業でもばく露している人数はそれほど   多くなかった、ということが見て取れると思います。やっている事業所は8割ぐら   いが一般的な安全衛生ということで、ナノに特化した安全衛生というのはなかなか   していません。細かい、表2のほうで、ナノに沿った環境測定をしていると言われ   ている事業所もあるのですが、実際、どこまでそれがやられているのかという話に   なってくると、今回のデータでは出てきていないのが残念なところだと思います。    労働衛生管理の中で全体を見ると、いちばん多くやられているのは局排の設置と   保護具の支給でした。これが物質にもよりますが50%から100%にわたります。そ   の次がMSDSの活用です。これは既存のものだと思いますが50%から85%です。そ   して、その次に来るのが作業マニュアルの作成、環境測定、全体換気、これが20   %から70%ぐらいです。次のランクに来るのが労働衛生教育、安全衛生のトレー   ニング、健康管理という部分です。最後にクローズドシステム、環境のモニタリン   グはちょっと低い値でした。    不安に関しては、1つ言っておかなければいけないのは、物質により差があると   いうことです。ここのところを整備するなり、今後、当面、どういう形で対応して   いくのかを検討することが重要になると思います。そして、不安ということで見る   と、先ほどフラーレンを除くということでしたが、40%から55%が完全に安全だ   とは言えない。作業者の不安をどこかで払拭しなければいけない。    その原因としては、有害性の情報が入手困難で不足しているのです。だから、結   果的に外部の専門家に相談したいと思っていらっしゃるところがかなり多いのでは   ないか。    企業から寄せられたアンケート結果、先ほど言いましたように国が行うこととし   ては危険有害性に関する情報の公開、ナノマテリアル取扱いの基準ないしは指針の   策定を急いでもらいたい。メーカーに対しては、有害性に関する情報を提供する、   もし事故だとか健康障害が起こった場合にはそういう情報を提供することが、メー   カーに対して、やるべき姿なのではないかという意見が多かったということです。   ユーザーサイドではMSDS等、安全衛生の情報とか指針を遵守してくれという意見   が多かった。    個別の物質では、事例の多かったカーボンナノチューブ、金属酸化物の2つにな   るのですが、ここに書いたように金属酸化物のほうが労働者にひょっとしたらばく   露する可能性があるという指摘が多かった、というように今回のデータから見て取   れます。製造、秤量、装置への注入、回収、移し替え、清掃、各工程で7割を超え   ているということが特徴なのだろうと思います。先ほど言ったように、混練という   のは非常に特殊なので、特別なものとして取り扱って調べる必要がある。保護具で   すけれども、これはちょっと温度差があります。細かいデータはあとで見比べてい   ただいたらいいのですが、保護手袋の実施状況がいちばん高い。次がメガネ、次が   マスク、保護衣となっています。    若干気になるのは、マスクがこれより低かったということです。手袋は製品を直   接手で触ってはいけないとか、製造のいろいろな不具合がありますので普及してい   るのだろうと思います。労働者保護の観点から、マスク、保護衣をどこまでやるの   か、どこまで求めていくのかということが非常に問題になるのかなと思います。    いまやったのはアンケート調査なのですが、我々の研究としてはこの調査をもと   に、事業所に対してもう1つ設問を設けています。「アンケート、ご協力ありがと   うございました。お話を伺わせていただいて、インタビューさせていただいていい   ですか」という設問を入れています。39社のうち、15社が「YES」と言っています。   そういうところは個別交渉して、インタビューだけではなくて環境測定とか、エク   スポージャー(exposure)の程度というのも精度ではなくて、程度的に評価しよう   としています。    現在、2社に入っています。残り数社にいま交渉しています。そこで出てくるデ   ータが実際、労働者のばく露のありようにつながってくるのだろうと思っています。   先ほど言った「ばく露があるかもしれない」というのは、入った会社で見ていると、   事業所の方が全くないと言われているところは多分ない可能性が高い。ひょっとし   たらというところは、やはり我々が行って確認する必要があるだろうと思っていま   す。ただし、これが作業環境測定などのルーティーンの仕事というか、評価、安全   衛生法の要求するものにつながるかどうかというのはまた別問題であります。その   辺は順次検討して、データが出次第、またこの検討会か何かで報告させていただけ   ればと思っています。    申し訳ありません、だいぶ時間が延長してしまいました。以上です。 ○福島座長 ありがとうございました。いまの甲田委員の発表についてご質問を受けた   いと思います。 ○唐沢委員 貴重な発表、ありがとうございました。資料1-2のご説明で触れていただ   いてはいるのですが、一般環境測定とナノ環境測定という分類でお調べになってい   るようです。この一般環境測定というのは、労働安全衛生法が予定しているような   方法の測定という意味でしょうか。    ナノ環境測定はサンプリングとか、計測の方法や評価の方法、いろいろ難しい問   題がまだあると思います。現実に企業でやっておられるナノ環境測定である程度、   技術的に見て評価できるとか、妥当性のあるものだというような事例みたいなもの   はこのアンケートの中でつかんでいらっしゃるのでしょうか。これはあとの課題3   の(3)と関連するものですから、もしおわかりでしたらお願いします。 ○甲田委員 一般環境測定というのは、例えばそこにお出ししているデータもカーボン   ナノチューブと金属酸化物ですが、これはカーボンナノチューブで言うと、粉じん   を持ってきて秤量をする。要するに重さを測るという形、最終的には何mg/m3と   いう形での分析なのだろうと思います。金属に関しては、金属の分析という形をと   られているのだろうと思います。これはいずれも従来の作業環境測定の中でやられ   てきた手法なので、そういう形で多分応用されているのだろうと思います。    ナノの特別なという形でされているのは、全部は確認していないのですが、一部   の事業所でお話をしたりとか聞いてみると、やはりかなり苦労されている。サンプ   リングをして、それを顕微鏡で見たり、場合によっては電子顕微鏡で見たりなど、   いろいろな研究機関と共同されてそういうことを繰り返されて、試行錯誤でやられ   ているところです。    ただ、それが、あとで議論になるのでしょうが、実際問題の事業所の中での健康   管理として非常に有効で、安価な作業測定としてそれが使えるのかどうかは別問題   である。我々の関心は、一般的な環境測定と電子顕微鏡などを使った手間暇かけた   もの、そういうものとの組合せの中でもう少し現実的に、空気中(作業環境中)の   環境の評価として出来るものがあるのかないのかということを検討する。そこがい   ちばん問題だと思います。アンケートでもよく出ているとは思いますが。 ○庄野委員 1点お伺いします。いわゆるMSDSを活用されている、対策を打っておら   れるとおっしゃっていました。MSDS自身は情報ですよね。情報自身を読んでいた   からといって、それが対策につながるかというと必ずしもそうは思いません。これ   はニュアンスとしてどういう意味と捉えたらいいですか。原体メーカー、あるいは   バルク屋というのはこういうものを下に出していくのですが、いわゆる原体バルク   にかかわる情報というのはMSDSに入れるのです。実際、それを作っているところ   の製造現場では役に立つのだけれども、それがダウンストリームユーザーにどんど   ん行ったときに、どういうようにそれが活用されていくかというのは我々も非常に   興味があります。是非、ご意見を伺いたいと思います。 ○甲田委員 MSDSとして、そういう意味で言うといちばん活動の度合がかなり高かっ   たのが金属系だったと思います。1つ、金属に関する特性というのは、いまここで   議論しているのはサイズの大きいもの、小さいものという話なのですが、もともと   の毒性というのはかなりあったりいたします。例えば、今後も多分議論に出るでし   ょうが、酸化チタンとかいうようなものの毒性もあるわけです。そのように、もと   もと持っている毒性の中で、例えば毒性がかなりある、ないしはそうでもないとい   うものによって、事業所の中では使い分けている可能性があるというように思いま   す。その程度の活用なのかもしれません。 ○福島座長 ほかにいかがでしょうか。 ○大前委員 このアンケートの中で、健康管理の情報、健康診断の情報というのはあっ   たのですか。 ○甲田委員 健康管理の情報は、「健康管理をしていますか」ということで言うと、物   質により違いますが20%から30%ぐらい「YES」という形で答えられています。実   際、いくつかのメーカーで話を聞いていますと、例えばカーボンブラックの場合は   じん肺の検診をされていたのではないか。先ほど出た金属酸化物などでは、やはり   特化物的な健康管理、健康診断というものをされているところが「YES」と答えら   れているようです。ナノではなくて、従来の物質に対するということだろうと思い   ます。 ○田中委員 防じんマスクについて、使用の有無ということで聞かれているということ   ですが、防じんマスクの種類等について、これから次のステップに入っていく上で   は使い捨て式、取り替え式、あるいは捕集効率に関してどうなのか。最近、電動フ   ァン式呼吸用保護具が評価されているが、その辺の使用の有無、あるいはエアライ   ンマスクというものは取り入れていないのか。そのあたりの情報はどうでしょうか。 ○甲田委員 今回のアンケートではそこまで詳しくは聞いておりません。ここの中でい   くつか出てきたもので言うと、例えば物質によって粉じんとの関係が、我々が想定   しているものもあるのですが、事業所側のほうでも粉じんが多いというところもあ   る。今度は、そういうところにターゲットを絞って、先ほど先生が言ったようなマ   スクの種類だとかTPO、どういう時にどういうように使っているのか。細かい調査   というか、アンケート、分析が必要なのだろうと思っています。 ○福島座長 いかがでしょうか。甲田委員、私から1つお聞きしたいのですが、最後の   ほうに出てきたB票よりというスライド、金属酸化物とカーボンナノチューブの間   でばく露の可能性に差があるということでした。これは先ほども言われましたが、   差の要因がどこにあるのか。金属酸化物の方というのは、これまでの毒性がある程   度わかっている。そういうことを労働者が知識として持って、どのような毒性があ   るかということを知っている。そういうことから、ばく露していてもある程度安全   性、もっと言えば安心というものを個々で担保していると考えるか。そのほかにど   ういうような要因がこの差をもたらしているか、ちょっとお聞きしたいのですが。 ○甲田委員 ここの差というのは非常に難しいところなのだろうと思います。ここで2   つ取り上げているのはカーボンナノチューブと金属酸化物なのですが、両物質のヒ   ストリーというか、要するに金属酸化物は昔から職場の中にあって使われてきて、   生産量のほうもかなり多かった。それに関して、最近、事業者側は設備にいろいろ   な形でお金をかけてくるし、単価も高いし。ばく露するということは、生産工程か   らロスが出てくるということになります。そういうような生産にすると、経営的に   もそのような形で無駄にはできないということになるのかもしれません。その辺の   違いが大きいのかもしれないと考えています。ただ、これは2、3、我々が事業所   に入って見た印象なので、もうちょっとその辺は調べていきたいと思っています。 ○福島座長 よろしいでしょうか。それでは、甲田委員の発表と質疑を終わりたいと思   います。ありがとうございました。次に議題2、「通達への対応について」、これ   に関して小川順委員よりプレゼンテーションをお願いします。 ○小川(順)委員 ナノテク推進協議会の小川です。ナノテクビジネス推進協議会から、   この表題についてご説明申し上げたいと思います。今回、甲田委員のアンケートと   も若干重複がありますけれども、この協議会に参加している企業からヒアリングな   どをして、その調査結果などを含めてご説明申し上げたいと思います。今日、説明   させていただく内容ですが、NBCI会員企業におけるこれまでの取組み、厚生労働   省の通達を周知するための説明会、それから製造現場におけるばく露防止の現状、   厚生労働省通達に関して製造現場の現状を踏まえた改善案についてお話申し上げま   す。    まず、NBCI会員企業におけるこれまでの取組みという内容です。既に通達が発   信される前に、平成19年の7月と10月に経済産業省が委託調査されてまとめられ   たナノマテリアルの取扱いに関するガイドラインをNBCI主催で会員企業に説明を   しています。    平成18年度の「ナノテクノロジーの研究・製造現場における適切な管理手法に   関する調査研究」という報告書があります。これは既に、第1回合同会議の参考資   料4として配付させていただいています。その内容を会員企業に説明、あるいは実   施をお願いしてきているということでございます。実際のフォローアップというこ   とまではきちんとデータとしては集約していませんけれども、本ガイドラインを基   に自主的な対応をそれまでにも進めているということです。    これは1度ご説明させていただいたかと思うのですが、厚生労働省からの通達を   関係企業に周知するため、ナノテクビジネス推進協議会として説明会を開催してい   ます。当日は130名、80社からの参加がありました。大きな関心を会員企業が持   っているということが言えるかと思います。    そのときの内容ですが、事務局からの開催趣旨の説明のあと、実際に厚生労働省   の担当官の方から通達の趣旨、背景ということで、改めてその内容の説明をいただ   いています。また、いま発表がありました甲田委員からも、ばく露防止のための予   防的対応ということでご説明いただき、現状の研究開発、ナノ粒子の特性評価手法   ということで蒲生委員にもお願いしています。    また、ナノマテリアル取扱い例の紹介ということで代表的なメーカーから、例え   ば先進的な例としてクローズドシステム、全体換気をこういうように行っているな   どの具体例をご紹介いただいています。    現在、会員企業における実施状況ということで、改めて会員企業にヒアリングを   行って集約しています。甲田委員からご説明があったところと重複しますけれども、   ナノマテリアルを取り扱う会員企業は既に、粉じん対策という観点では法令等を遵   守して行っているということです。それから通達以前から自主的に、通達の内容も   含めて、ある程度強弱はありますが、労働者に対するばく露防止を実施していると   いうことであります。今回の通達を受けて、特に製造部門を中心にばく露の予防対   策を強化してきている。あるいはそれを検討しているということでございます。こ   れはのちほどご説明いたしますが、研究部門などで非常に少量を取り扱っている部   門については、まだ検討を継続しているというところも裏返して見えるかと考えて   います。    次に、会員企業からのそれぞれの意見ということで若干説明したいと思います。   まず、ばく露防止のための予防的対策についてですが、製造装置の密閉構造をでき   れば採ること。それがない場合は、局所排気装置を設置することというようなご説   明でした。これに対して、ナノの粉体を取り扱う場合とナノの材料が液体、あるい   は固体に混ざっているもの、それぞればく露という観点では違うという観点に立て   るのですが、その取扱いに関してのガイドラインが同一であるということでやや戸   惑っているという意見がございます。    量に関する基準がないということで、非常に少量のナノ材料を扱う場合、例えば     分析だけを行うといった場合にどのように対応したらいいのか。こういうことで悩   んでいるという話もございます。    次に高性能フィルタに関してです。具体的にどういう使用をすればいいのか、な   かなか導入効果が判断できていない。それから、非常にレベルの高いフィルタを用   いると、材料の目詰まりが起きて運転そのものに負荷がかかって、対応が難しいと   いう意見もあります。保護具・作業着については防じんマスクについて、ナノマテ   リアルそれぞれについてどういう効果があるのかがもう少し情報としてほしいとい   う意見もございました。    続いて、実施上の課題をお話申し上げます。内容としては先ほどのものなのです   が、ばく露状況、あるいはそれを取り扱う状況、これらにかかわらず一律の予防的   対応が今回の通達で求められているということが1つの課題として挙げられるだろ   うというようにまとめられました。例えば、作業現場における労働者の実際のばく   露の時間とばく露量があまり考慮されていない。非常に大量にナノマテリアルを扱   う製造現場と少量である研究現場、この辺の差が考慮されていないと感じています。   また、ナノマテリアルの形態についても粉体の場合、液体の場合、薄膜あるいは固   体の中にナノマテリアルが入って固定された場合、こういったナノ材料についての   取扱いはどのようにしていったらいいかを課題として考えています。    研究部門では、テーマ変更による対象材料が短期間で変化する可能性があり、あ   る特別な物質に特化した恒久的な設備の設置が困難な場合があるという意見があり   ました。例えばある研究をするとき、その対象物として、いまはナノに該当するよ   うな材料を検討している。ただ、その材料を永続的に研究するわけではなくて、ま   た違った材料も検討することがある。いまの研究対象に沿って、恒久的に大きな設   備を導入することに困難な場合があるという、研究部門からのコメントとご理解い   ただきたいと思います。    最後に、要望ということでまとめました。まず、ばく露の発生の可能性に応じて、   例えば材料あるいは取扱いの形態での何らかのランク分けとそれに応じた運用が必   要ではないだろうか、その構築をお願いしたいと思っております。具体的には、取   扱量やナノマテリアルの形態によるランク分けでございます。    厚生労働省への今後の要望として、公的機関によってナノマテリアルの有害性あ   るいはばく露の両面からのリスク評価を早期に確立をお願いしたい。関係府省とし   ての、国としての連携をとって、あるいは一方で国際的な観点を含めての統一的な   対応が必要ではないか。製造・取扱作業現場におけるナノマテリアルの環境測定に   ついての研究もどんどん進めていただきたいと考えております。以上でございます。 ○福島座長 それでは、審議をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。小川先生、   労働衛生の立場からは少し変わると思うのですが、先生の発表と先ほどの甲田先生   の発表では、製造現場での、製造装置を介しての労働者に対してのばく露というこ   とでいろいろ検討されているのですが、それが一般環境に出るときの防御について   は現在はどのような対応がとられているのですか。例えば、労働現場でのものの排   出、一般環境の大気への排出について、それぞれの製造現場でどのような対策がと   られているのですか。 ○小川(順)委員 会員企業それぞれに強弱はあるのだろうと思いますが、もちろん労   働環境についてある程度の対応をしている企業はかなり応用的に、ナノマテリアル   が大気に出る、水の中に出る、あるいは最終的に何らかの産業廃棄物として出る、   というところを含めての一貫した対応を考えているメーカーも具体的にはあると聞   いております。メーカーごとに少し強弱があるので、統一的なお答えは少し難しい   と思います。 ○甲田委員 何回もNBCIに伺って、いろいろな方といろいろなお話をさせていただく   のですが、今回のアンケートでも思ったのですが、たぶん、NBCIは、事業所で生   産ラインの方などが主としてこういう業界団体に入っていると思うのですが、安全   衛生のプロといいますか、我々のアンケートなどでは衛生工学の知識を持っている   方がかなりいらっしゃるのです。そういう方というのは、職場の安全衛生というか、   生産ラインの中でどのぐらい活用されているのですか。これも、たぶん、事業所に   よってかなり濃淡があるのだろうと思いますが、衛生管理を考えていく上では、例   えば業界団体の方にいろいろなお話をする際に、そういう従前の安全衛生のプロの   方の知識というものがどの程度役立つのかという、その辺に対してどのようにお考   えでしょうか。 ○小川(順)委員 これも1つの企業の例だと思いますが、労働安全衛生の専門家は、   今までの粉じん対策などの観点からは非常に注視して見ているのだろうと思います。   ただ、今回のナノということの切り口でもう一歩踏み込んで理解をしているかとい   うことになると、これはまだまだ検討の余地があるのだろうと思っています。 ○甲田委員 OECDの会議などでも、アメリカの化学メーカーの方が来られたりしてい   ろいろなディスカッションをしたときに、日米の1つの違いなのかもしれませんが、   アメリカの化学工業などで言うと、もちろんハイジニストといわれる労働衛生工学   のプロがいるのですが、それ以外で言うとトキシコロジストとか、場合によっては   エピデミオロジストとか、毒性学や健康影響という形でのプロなどを雇っている事   業所もあるのですが、そうなってくると、日本でそういうところまで持っている所   は非常に少ないというか、逆に言うとないのかもしれないのです。そういうところ   で、先ほど私にあった質問とも関係するのですが、MSDSの毒性の知識をどうやっ   て活かすのか。私の印象では、事業所のほうでは毒か毒でないかで対応を決めて、   毒でなければいいやというか、毒であれば何とかしなければいけない。それは衛生   工学の管理だけということなのですが、そのような、細かいと言うと語弊があるの   かもしれませんが、人体影響や毒性学的な情報をもう少し事業所の中で咀嚼できる   ような可能性はあるのでしょうか。 ○小川(順)委員 印象のお話になりますが、例えばOECD会議を含めて、諸外国は、     ご指摘のようにトキシコロジストあるいは労働安全衛生工学の専門家の方がナノの     基準づくりの会議に出ているのに比べて、日本は確かにそういう意味ではメーカー   のそういう専門の立場からの参加がやや希薄であるという印象はご指摘のとおりだ   と思います。    それから、MSDSについても、これはメーカーがそれぞれの立場でつくっている   ので、その内容についても濃度が濃いものや低いものはあるのだろうと思います。   ただ、ナノマテリアルについて非常に関心を持っている企業の場合については、そ   の材料について得られた毒性に加えて、ばく露するという仮定でどのような保護具   を使っていただければいちばんいいのかということも含めて、MSDSの中に記載し   ている例も実際にあろうかと思うのです。これは、先にもご指摘があったように、   いかにサプライチェーンの中で材料メーカーからお客様、お客様からそれを使われ   る方にどのようにMSDSの内容が伝わっていけるのかと。そこも1つの課題だろう   と思っています。 ○福島座長 そうすると、予防原則に基づくと、今回、このNBCI主催の厚労省通達に   関する説明会で参加が80社ということですが、この会員は何社あるのですか。要   するに、何パーセントがこの説明会に出席されたかということです。 ○小川(順)委員 60%ぐらいでしょうか。というのは、実は、ナノテクビジネス推進   協議会そのもののポジションを若干加味するのですが、あくまでも任意団体であり   まして業界団体ではありません。もう1つ、参加のきっかけとして、お話している   のが、ナノテクノロジーに興味のあるメーカーにご参加いただけないかということ   が発端です。例えば、テクノロジーで本当に20年先、30年先の実用化に向けての   研究の第一歩を踏み出そうかというメーカーもその中にはおられます。したがって、   現実問題として通知を受けとめるというメーカーはその中ではかなり数が減るとい   うことで、そういう意味では、全体の数を分母にするよりはかなり高い比率で参加   いただいたのだろうと思っています。 ○福島座長 そうすると、これは任意団体で、確かに、ナノマテリアルに対する有害事   象というのはまだはっきりしていない、しかし予防原則ということで協議会を開い   ていただいたわけです。そこで、リスクコミュニケーションということの予防に対   する重要性というのはあると思うのですが、協議会の立場から言うと参加が60%   ということですが、とはいっても40%は予防についての説明会に出ていないとい   うことから、それに対する任意団体としての何らかの対策、要するに40%も出て   いないのだったらこの説明会をもう一回開くとか、そういうようなお考えはあるの   ですか。 ○小川(順) 説明会そのものということも検討して計画したいと思いますが、今日こ   ういう検討会に私はこういう形で出ているので、その論議の内容等はNBCIの会員   企業には必ず報告するような形で、今こういう動きがあるということは伝えていっ   ているつもりでございます。 ○福島座長 ありがとうございます。 ○蒲生委員 質問というよりコメントなのですが、NBCIからの、今回の通達の実施上   の課題あるいは要望が、例えば安全な材料については緩くすべきだといった有害性   の観点に着目したものではなくて、ばく露の量とか材料の性状とか、そういうこと   で実態に合ったものにして欲しいという要望が主だというのは非常に面白いなと思   いました。そういう意味で言うと、NBCIとしては先ほど甲田さんから紹介があっ   たような調査にご協力いただいているということが1つの現れかなと思うのですが、   実際、どういう状況で使われて、どのぐらいの量かというものがもっと対策にフィ   ードバックされていくということが当面大事なのだろうなというふうに思いました。 ○福島座長 小川先生、いまの蒲生先生のコメントについて追加はありますか。 ○小川(順)委員 ご指摘のとおりだと思うのですが、毒性なり安全性についてはまだ     研究が必要だろうという会員企業の認識があります。予防的対策を考える上ではあ     くまでも安全性なり毒性とばく露の掛け算としてのリスク、あるいはそのマネジメ     ントがあるわけで、その上でばく露のほうをもう少し噛み砕いた形で、企業が対応    しやすいようなイメージづくりをしていただきたいという点が背景にあるのだろう    と思います。 ○福島座長 ほかにはよろしいでしょうか。 ○NBCI事務局 先ほど、60%の会員しか集まらなかったということですが、我々の会   員の中でナノマテリアルを全然扱っていない企業もたくさんあります。ナノテクノ   ロジーに関する企業ということなので、ナノマテリアルを扱っている方にはだいぶ   参加していただけているというふうに理解しております。 ○福島座長 ありがとうございました。それでは次は議題3「検討課題について」とい   うことでご議論していただくことになります。事務局から説明をお願いできますか。 ○化学物質対策課企画官 まず、資料についてご説明いたします。検討課題についてご   説明する前に、資料の関係を説明させていただいて、その検討課題のご検討に資す   るのではないかと思っておりますので、よろしくお願いいたします。資料3ですが、   本日ご欠席の明星委員から「エアフィルタによるナノ粒子の除去について」という   資料が提出されています。資料3をご覧ください。「エアフィルタによるナノ粒子   の除去について」ですが、1番の「はじめに」で、気中に浮遊するナノ粒子の除去   が、従来のミクロン粒子に対するエアフィルタで可能かを現状わかる範囲で示すと   いうことです。2番目ですが、「ナノ粒子曝露のリスク低減措置の検討と実施」と   いうことで、労働安全衛生法に導入された化学物質等による危険性または有害性等   の調査に関する指針を基に考えると、リスク低減措置としては以下のような対策が   考えられるということで、1番として「設計や計画段階での措置」、2番目として   「工学的対策」、3番目として「管理的対策」、4番として「個人用保護具の使   用」ということで、個人用保護具については前の1)から3)の措置を講じた上で   の使用となります。    3番に行きますが、「ナノ粒子の捕集除去」です。3行目の後ろですが、ここで   は主に紙や不織布のような構造の繊維層フィルタについて考察するということです。   エアフィルタの特徴として以下の点が挙げられるということで、利点としては高効   率で比較的圧力損失が低いこと、欠点としては再利用が困難で使い捨てとなるとい   うことが挙げられております。    4番にまいりまして、「エアフィルタのろ過捕集性能」です。その1行目の後ろ   のほうですが、エアフィルタの捕集効率に関する因子としては、フィルタの構造、   粒子の特徴、流入速度があるということです。次の頁のいちばん上の行ですが、粒   子の捕集効果としては、慣性効果、さえぎり効果、拡散効果(ブラウン拡散)があ   る。少し飛んで写真のある下の行ですが、慣性、さえぎり、拡散効果に加えて、静   電気を付加した繊維により粒子を捕集するフィルタが広く使用されているというこ   とです。    次の段絡ですが、理論的に、粒子とエアフィルタの条件と粒子捕集の効果の関係   は、全ての場合においてフィルタの繊維の太さが細い場合にろ過捕集効率は増加す   る。しかしながら、慣性効果では粒径と流速が大きいほうがよく、拡散効果は粒径   と流速が小さいほうがよい。したがって、粒子は粒径が小さくなるほどエアフィル   タを漏れてくるわけではないということです。    3頁にまいりまして、いちばん上の所ですが、測定結果を図に示すということで、   ろ過材は旧検定合格の防じんマスク用ろ過材を流量30L/minで試験した場合の結   果であるということです。次の段落ですが、図の左はガラス繊維からなるろ過材、   右は静電気力に依存するフィルタの粒径別の通過率です。ガラス繊維のろ過材では   粒子が最も通過しやすい(捕集が難しい)粒径は約220nmであったということです。   下の行のいちばん最後の所ですが、最も通過しやすい粒子の粒径はフィルタによっ   て異なり、右の静電力によるフィルタでは50nmと、ナノサイズに最も高い通過率   を持つことがわかったということで、いまご覧いただいている頁のいちばん上にあ   るグラフの説明に書かれていたわけですが、グラフの所にも書いてありますように、   機械的な捕集のみのフィルタで最も通過しやすい粒径は220nm、静電気沈着に依存   するフィルタで最も通過しやすい粒径が50nmということです。    続きまして、同じ頁の下のほうですが、4.2の所で、エアフィルタによるナノ粒   子のろ過捕集について、粒径1から10nmまでということです。粒子のフィルタ繊   維への捕集効率は、その衝突効率と付着効率の積で表される。10nm以上では付着   効率はほぼ100%とみなすことができるので、衝突した粒子は捕集される。一方、   常温ではガス分子は熱運動のエネルギーが付着のエネルギーより大きいため、付着   効率はほぼ0%となる。1から10nmの粒径のナノ粒子はガス分子と微小粒径の境界   にあり、熱反発もあるのではないかといわれている。この場合、付着効率が低く粒   子は繊維に衝突しても捕集されないこととなるということです。その次の段落です   が、実際にKimらが計測した結果では、粒径2nm以下から熱反発が生じている。   2nm以上では拡散効果で通過率は低下し、2nm付近で最小値を取り、2nm以下では  上昇しているということです。    5番の「防じんマスクの現状」です。下のほうになりますが、表から塩化ナトリ   ウム試験用粒子の粒径はナノサイズであるが、個数基準で幾何平均径が0.1μm   (100nm)で、幾何標準偏差が1.8である場合、質量基準では幾何平均径は0.25μ   mとなる。また、捕集効率測定用装置が光散乱式の粉じん計であり、光散乱方式の   限界からナノ粒子を計測していない。したがって、最も通過しやすい粒径を300nm   として評価するこれまでの考え方を踏襲したものと言えるということです。    6番ですが、「ナノ粒子からの作業者の呼吸保護」です。2段落目になりますが、   呼吸保護の目的は呼吸用保護具内部の空気(または呼吸用ガス)に含まれる有害物   質が管理濃度や許容濃度などの規制値を上回らないことである。ここでは濃度倍率   と防護係数が因子として挙げられる。濃度倍率と防護係数の関係は以下のようであ   る。防護係数が濃度倍率より大きい場合、呼吸保護は良好。防護係数が濃度倍率よ   り小さい場合、呼吸保護は危険ということです。濃度倍率というのは、呼吸用保護   具を使用する環境を記述する因子であり、環境中に存在する有害物質の最悪の場合   における濃度の、管理濃度や許容濃度など、ばく露限界に対する比率ということで   す。    5頁にまいりまして、「防護係数」です。呼吸用保護具の防護性能を表わす因子   であり、環境中に存在する有害物質の保護具への漏れ率(密着の良否による面体等   と顔の隙間からの漏れと、ろ過式保護具の場合はろ過材からの漏れの和である全漏   れ率)の逆数であるということです。その5頁の真ん中辺りですが、一般には   99.9%の捕集効率のろ過材付きの半面マスクの防護係数は1,000と考えるかもしれ   ないが、実際には防護係数は10とみなされている。つまり、ろ過材以外の漏れが   あると考えられているということです。    「まとめ」の所ですが、1)で、エアフィルタはナノ粒子をろ過捕集できるか。   ナノ粒子は拡散効果で捕集されるが、静電気による捕集の効果は弱い。熱反発は   2nm以下の粒子では起きるようであるが未知の点が多く、現在は研究段階であると   いうことです。2)で、現在の防じんマスクの試験法はナノ粒子の捕集能力を担保   しているかということです。現在の試験方法はサブミクロン粒子を対象としており、   ナノ粒子については直接測定していない。静電気による捕集に依存しないフィルタ   ならば現状でも十分と思われるが、数10nmのナノ粒子の捕集効率の測定はそれほ   ど困難ではなく、試験方法に導入することを検討してもよいのではないか。3)で、   防じんマスクの呼吸保護は十分かということです。高効率のろ過材の付いた防じん   マスクを与えれば作業者のばく露防止の問題が解決するわけではない、ということ   で、専門的なことは事務局ではわからないのですが、エアフィルタでの除去は可能   ではあるけれども、マスクについては漏れ等が考えられるということではないかと   思います。    続きまして、資料4ですが、「職場におけるナノ物質の取扱いと使用に関するガ   イダンス」について説明いたします。この資料はドイツの連邦労働安全衛生研究所   及びドイツ化学工業協会が作成したものでありまして、労働安全衛生総合研究所の   ホームページに掲載されております。それでは、資料をご覧ください。3頁ですが、   真ん中の「背景」の所ですが、2006年の春に連邦労働安全衛生研究所及びドイツ   化学工業協会は、ドイツ化学工業協会の会員会社とともにナノ物質の取扱いと使用   に関する労働安全衛生について共同調査を行った。この調査の目的は、ナノ物質に   関連する作業について化学工業界で最近行われている労働安全衛生の方法の概要に   ついて調べることであった。また、もう一つの目的は、その調査の結果に基づいて   化学工業業界におけるナノ物質の取扱いと使用に関する勧告と作業手引きを含む   「職場におけるナノ物質の取扱いと使用に関するガイダンス」を作成することであ   る。    次の頁にまいりまして、2段落目の2行目になりますが、ナノ物質とはナノ-物   体あるいはナノ構造体と理解されている。ナノ-物体とは、1つ、2つまたは3つの   次元がナノスケール(およそ1-100nm)の物質であり、典型的な例はナノプレート、   ナノロッド及びナノ粒子であるということです。1つ段落を飛びまして、真ん中の   辺りの段落になりますが、この定義では凝集塊及び凝集体はナノ粒子ではなく、ナ   ノ粒子が互いに結合しているナノ構造体といわれるものである。大きなエネルギー   の供給なしでは凝集塊及び凝集体からナノ粒子を遊離させることはほとんど不可能   であるということが書いてあります。    5頁ですが、いちばん上の行の途中からですが、製造過程での労働者のばく露は   主に充填、サンプリング、清掃、及び保守作業のような、工程のつなぎ部分や通常   の手順が中断したときに起こりうるものであり、そのときは安全工学上の極めて高   度な注意喚起が必要になる。液体を扱う作業(沈殿反応、液相での分散)では、通   常はエアロゾルの発生を回避できるので、吸入によるばく露は通常考慮しないとい   うようなことが書いてあります。    同じ頁の下の所になりますが、「情報収集」です。情報収集には次のことが含ま   れるということで、使用する製品に関する情報、作業に関する情報、危険有害性物   質についての代替法に関する情報、すでに採用している保護対策の有効性に関する   情報や、適用可能と考えられる場合には予防産業医学的な観点から実施される活動   に関する情報も収集すべき。情報に欠落がある場合、保護対策の作成に関してその   欠落している情報について適切に対処しなければならないということです。    それから、真ん中の辺りにまいりまして、「ハザードアセスメント」ということ   ですが、収集した情報に基づいてハザードアセスメントを実施するということです。   その下になりますが、「保護対策の決定」ということで、技術的、組織的及び個人   についての保護対策の決定にあたってはハザードアセスメントに基づいて次の点を   検討しなければならない。1番として「代替法」、2番として「技術的な対策」、   囲い込み装置とかガスとか蒸気、粉じんの捕集、削減及び除去ということです。3   番として「組織的対策」、4番として「個人保護対策」ということです。    その次に、「実施された対策の有効性の見直し」ということで、その他のすべて     の物質と同じように、ナノ物質についても採用した対策の有効性について定期的に   見直しをしなければならないということです。真ん中辺りですが、ある対策を導入   した後、労働者の受けたばく露を測定しなければならないということも書いてあり   ます。次の段落ですが、「文書化」ということです。3行目ですが、採用された保   護対策、使用した物質、作業状況及び利用可能な測定データを文書化することは、   その後のアセスメントのために特に重要であるということです。    次の段落ですが、「ナノ物質の取扱いと使用における労働者の保護に関する勧   告」ということで、1行目の終わりの所からですが、肺胞性・吸入性粉じん分画に   対しては、一般的な粉じんに対する基準値または物質毎に決められている基準値等、   現行の基準値を遵守しなければならないということです。下から3行目ぐらいから   ですが、その凝集塊及び凝集体を含むということで、一般的な粉じんに対する基準   値は超微細粉じんの評価には適用されない。したがって、ナノ粒子または一定のナ   ノ物質について特別な基準値が定められるまでは、ばく露を最小限にするよう努力   しなければならないということが書いてあります。    8頁の2段落目ですが、「代替法」ということで、液体または固体の媒体で粉末   ナノ物質を固定する。次の行ですが、粉末物質の代わりに分散品、ペースト又は複   合物を用いるということもあります。2番ですが、「技術的防護対策」として、可   能ならば囲い式装置で作業を行う。1行飛びますが、その発生源、例えば充填及び   排出工程で発生する粉じんやエアロゾルを直接に取り除く。除去設備の定期的な保   守及び性能検査を確実に実行するということが書いてあります。    次に、3番目の「組織的な保護対策」ですが、遊離ナノ粒子の物理的特性、特殊   な対策の必要性及び粉じんの長期的な影響の可能性について目標を定めて関与する   労働者を教育する。作業指示書に必要な情報を含める。ばく露の可能性がある労働   者の数を可能な限り少なくする。さらに、指定された作業区域に許可のない者の立   入りを認めない。きれいな作業衣を着用する。作業衣は雇用主の責任で洗濯する。   作業衣と個人の衣服を別々に保管する、ということが書いてあります。    次の段落ですが、「個人保護対策」ということで、技術的保護対策が不十分な場   合や実行できない場合は、呼吸保護具のような個人保護対策が一つの適切な方法で   ある。物質の特性を考慮すれば、保護手袋、隙間のない安全ゴーグル及び保護衣が   必要になることもあるということです。    次に、9頁のいちばん上ですが、粒子サイズが2-200nmの粒子については、粒子   サイズが小さくなるほどフィルタのろ過効率は高くなるということが書いてありま   す。真ん中の辺りになりますが、保護手袋の選択においては手袋の材質が適切であ   ることを確認しなければならないということです。1行飛びまして、重要な基準は   浸透時間である、手の保護に加えてその他の部分の皮膚も保護具で保護する必要が   あるということです。    次の段落の2行目ですが、それは、例えば酸化されやすいナノ物質の取扱いに対   する特別な爆発防止対策や、反応性または触媒性ナノ物質の取扱いに対する特殊な   保護対策であるということも書いてあります。    10頁にまいりまして、「測定法」の所ですが、凝縮粒子計数器はナノメーター   の範囲の個数濃度の測定に最も広範に使用されている方法であるということです。   そのいちばん下の行ですが、しばしば、CPCは、走査型モビリティ粒径分析器のよ   うな粒子サイズ計測器と組み合わせて使用されるということです。資料4につきま   しては以上で説明を終わらせていただきます。    続きまして、資料5ですが、「安全なナノテクノロジーへのアプローチ:NIOSH   との情報交換」について説明いたします。この資料はNIOSHがまとめたナノテクノ   ロジーに関する説明です。これは経済産業省委託調査「平成18年度超微細技術開   発産業発掘戦略調査(ナノテクノロジーの研究・製造現場における適切な管理手法   に関する調査研究)」からの典拠です。それでは、資料5をご覧ください。1頁で   すが、「目次」と書いてありまして、「はじめに」という所と「潜在的な健康への   懸念」「潜在的な安全性に対する有害性」「工業ナノ材料を扱った作業に関するガ   イドライン」「暴露評価と特性測定」「暴露管理手順」「研究」というふうに広範   な内容になっておりますので、本日は44頁の「暴露管理手順」の所を中心にご説   明いたします。    44頁をご覧ください。44頁の真ん中に太文字で書いてありますが、大部分のプ   ロセスと作業に対して、ナノ粒子の空中ばく露の管理は、一般的なエアロゾルに対   するばく露を低下するのに用いる様々な工学的対策技術と類似の手法を用いること   により達成できると思われる。ばく露の危険性を最小にするために適切な措置がと   られることを確実とするために、危機管理プログラムが実行されなければならない。   そのようなプログラムの内容は工学的対策を評価し定着させるガイドラインの確立、   労働者に対しナノ材料の正しい取扱いのための教育とトレーニングを行うこと、個   人の保護器材の選定と使用手順の改良を含まなければならないということです。    44頁のいちばん下の段落になりますが、一般に、空中でのナノ粒子の運動と挙   動の知見に基づくと、発生源の囲い込み(すなわち発生源を労働者から隔離する)   と、局所排気システムのような管理技術は空中のナノ粒子を捕集するのに効果的で   あるということが書いてあります。45頁の真ん中ですが、最近の知見によれば、   高効率粒子捕集フィルタ(HEPA)を備えたうまく設計された排気システムはナノ粒   子を効果的に除去する。フィルターは捕らえられる確率が最も低い粒子(典型例と   して直径300nm程度)を使ってテストされる。より小さな粒子の捕集効率はこの粒   径での捕集効率を上回るということが書いてあります。2、3行飛びまして、フィ   ルタが不適切に装着されたならば、ナノ粒子はフィルタをバイパスし、予測したよ   りはるかに低いフィルタ効率になってしまう可能性があるということも書いてあり   ます。    46頁ですが、作業管理の所で3つ黒丸が書いてあります。いちばん上の黒丸で   すが、作業区域は、各シフト終了時、HEPAフィルタ付の掃除機か水拭き法で清掃   しなければならないということです。2番目の黒丸ですが、仕事場での食物または   飲料の保管と摂取は、ナノ材料が取り扱われる所を避けなければならない。3つ目   の黒丸ですが、シャワーを浴びて服を替えるための設備を設置し、衣類と皮膚の上   のナノ粒子が移動することに起因する他の地域の不注意な汚染を防がなければなら   ないということが書いてあります。    次に、47頁のいちばん上ですが、現在では皮膚のナノ粒子へのばく露防止のた   めの、衣類または服装を選定するための利用可能なガイドラインはないということ   です。4行ほど飛びまして、いずれにせよ、ナノ粒子が皮膚を透過するかもしれな   いけれども、侵入が病気につながることを示唆する研究はほとんどなかったという   ことが書いてあります。49頁のいちばん上ですが、工学的並びに運営による管理   によって、空中汚染物質への労働者のばく露を規制値または内部の管理目標以下に   十分に保てないとき、マスクの使用はしばしば必要になるということです。    2行飛びまして、現在の科学的な知見によると、ナノ粒子は同一化学組成のより   大きな粒子より、生物学的により活性と思われ、吸入されるとより大きな健康リス   クをもたらすかもしれないことが示されている。管理の効果またはマスクの必要を   決定する際に、現在のばく露限界またはガイドラインと、そのばく露限界またはガ   イドラインが開発された粒子と比較したナノ粒子の表面積の増加の両方を考慮して、   慎重でなければならないということです。次の段落の4行目の終わりの所からです   が、ばく露を制御するための処置を開始した後で、なお、ナノ粒子への労働者の気   中ばく露が懸念されるままならば、マスクの使用は労働者ばく露をさらに減らすこ   とができるということです。10行ほど下の所になりますが、マスクが仕事場で使   われることが必要であるとき、職業安全衛生管理局の呼吸保護標準は以下の要素を   含むマスクプログラムの確立を義務づける。マスクを着用しての作業能力の評価、   定期的なトレーニング、定期的な環境モニタリング、マスクのフィッティングテス   ト、マスクのメンテナンス、点検、清除と保管ということが記述されています。    50頁にまいりまして、真ん中より若干下の所になりますが、単層繊維ろ過理論   によると、0.3μmより大きな粒子は、衝突、さえぎりと、重力沈降によって最も   能率的に集められ、粒子が0.3μm未満は拡散か静電引力によって最も能率的に集   められる。およそ0.3μmの粒子の通過は、これらの粒子が最も通過しやすい範囲   にあると考えられるので、最悪のケースを代表するということです。その下の段落   ですが、単層繊維ろ過理論によると、最も通過しやすい粒径以下では粒径の減少に   伴いろ過効率は増加する。この傾向は、粒子が極端に小さくなり、蒸気分子のよう   に振る舞うようになるまで続くということです。    飛びまして56頁の4行目ですが、こぼれた粉と液体をきれいにする標準的なア   プローチはHEPAフィルタ付の掃除機の使用、粉を濡らしてふき取る方法、粉を拭   くために湿る布を使う方法、吸引力のある材料/液体の使用を含む。石鹸または掃   除油を用いる湿式のクリーニング法は好ましい、掃除布はきちんと廃棄されなけれ   ばならないと書いてあります。2行ほど飛びまして、乾式掃除機や圧縮空気の使用   のような激しい掃除方法は避けるか、あるいは掃除によって舞い上がる粒子が   HEPAフィルタによって捕捉されることが保証される予防措置を講じたときのみに   限定すべきであるということが書いてあります。    次の段落のいちばん最後になりますが、複写機やプリンタートナーの清掃に用い   る掃除機には、帯電防止機能付が推奨されるということです。その次の行ですが、   ナノ材料の飛散物や汚染表面をきれいにする手順を開発するとき、クリーンアップ   の間、ばく露の可能性があることを考慮しなければならない。吸入ばく露と皮膚表   面ばく露は、最も大きな危険をもたらすと考えられる。したがって、個人の保護器   材の適当なレベルを考慮する必要があるということです。    60頁からですが、「重大な研究課目」ということで、今後の研究課題という項   目を挙げております。1番目が毒性、2番目が疫学及び調査、3番目がリスク評価、   4番目が測定方法、5番目がばく露及び用量、6番目が管理、7番目が安全性、8番   目が情報伝達及び教育、9番目が勧告及びガイダンス、最後が適用ということであ   りまして、またご覧いただけたらと思います。資料5につきましては以上でござい   ます。このほかに、ナノマテリアルの取扱いのガイダンス的な資料といたしまして   は、英文ですけれども、労働安全衛生総合研究所のホームページにおきまして英国   規格協会のものが紹介されていますので、またご参照いただけたらと思います。    続きまして、資料6「『ヒトに対する有害性が明らかでない化学物質に対する労   働者ばく露の予防的対策に関する検討会』における検討課題(案)」につきまして   説明いたします。これは次回よりご検討いただく課題についての事務局案ですので、   説明させていただいた後、追加すべき事項、変更すべき事項、あるいは削除したほ   うがいい事項につきましてご検討いただきたいと思っております。    それでは、資料6ですが、1が「対策の対象」ということです。(1)としてナ   ノマテリアルを挙げています。通達を発出した後にいろいろ問合せ等がありまして、   例えばナノマテリアルにつきましては天然の物質を細かくしてナノサイズにしたも   のは含まれるのかどうかとか、あるいは凝集して100nmより大きくなっている物質   は含まれるのか、ナノ構造体で100nmを超える場合は含まれるか、ナノ構造体とは   そもそも何のことかという話。それから、粒度分布で100nm以下のものも含まれる   けれども、どの程度だと通達の該当になってくるのか。無機物、有機物、両方とも   該当するのであるかとか、液体を混ぜたものは含まれるのかとか、そのような質問   がありました。(2)は労働者ということで、管理・監督者も含まれるのかという   ことです。    いまご説明しているのは、通達で見ていただくと、参考資料2の1頁目の一番下     の所が「対象とするナノマテリアル」ということでありまして、現在、ご覧いただ   いている定義で書いていますので、先ほどご説明したような質問が出てきていると   いうことです。    参考資料2を1枚めくっていただいて「対象とする労働者」ということで、物の   製造または取扱い(修理、点検等を含む。また、研究目的で製造等をする場合も含   む)に従事する労働者(監督者を含む)を対象とすることと定義しておりまして、   この労働者というのはこういう範囲でよろしいかということが検討課題になろうか   と思います。    2番目として「検討すべき対策事項」ですが、(1)で作業環境管理、(2)で作   業管理、(3)で健康管理、(4)で労働衛生教育ということで、労働衛生管理の3   管理を基に分類しております。(1)の作業環境管理ですが、アとして、密閉構造   とすべき箇所及び要件ということで、現在の通達におきましては製造装置は原則と   して密閉構造ということにしております。あと、密閉の確認の方法が議論になるの   ではないかと思っています。イとして「局所排気装置の設置すべき場所及び要件」   ということで、現在ではその他の作業工程で密閉化が難しい場合に局排を設置する   ということになっていますが、その局所排気装置の例えば風速等の性能はどういっ   たものが適切であるか。あるいは、先ほども出てきましたが、液体に溶け込んでい   る場合はどういった対策、局排が必要なのか。そういったことが議論になるのでは   ないかと思います。ウとして「排気における除じん装置の方法」ということで、現   在の通達では局排の屋外への排気口には高性能フィルタを設けることになっており   ますが、どのようなフィルタが適切であるか、あるいはフィルタ以外に例えばスク   ラバーのような方法でもよいのではないか。そういった検討項目もあろうかと思い   ます。エとして「非定常作業時(設備の補修等)の対応」ですが、通達では2頁の   3の(2)のその他の作業で非定常作業も含まれますが、非定常作業の場合にどう   いった設備が必要であるか。それから、その非定常作業における注意事項はないか   というようなことがあろうかと思います。   (2)として「作業管理」ですが、作業規程の内容をまず挙げています。通達で   は3番の(3)のアの所で作業規程を作成することになっていますが、どのような   内容が必要かということが求められるのではないかと思います。イとして「床等の   清掃方法」ですが、これも通達のほうで書いております。ウとして「ナノマテリア   ル作業場所と外部との汚染防止等」ですが、これも通達のほうで書いております。   エとして「呼吸用保護具を使用すべき場合」ですが、通達では直接取り扱う場合に   は適切な保護具を着用することとしております。オとして「呼吸用保護具の要件」   ということです。要件につきましては、通達の3頁の(4)のアで、ナノマテリア   ルの吸入を防止する適切な呼吸用保護具を必要な数量備え、有効かつ清潔に保持す   ること。呼吸用保護具は防じんマスクの規格に基づく国家検定に合格したもので、   粒子捕集効率が99.9%以上のもの、またはそれと同等以上のものを使用すること   が望ましいということで示しております。カですが、「保護手袋の要件」です。保   護手袋の使用につきましては、いまご覧いただいた通達の次のイの所で、保護手袋   はナノマテリアルの皮膚への付着を防止する適切な材質のものを使用することとい   うことで書いております。キですが、「ゴーグル型保護メガネの要件及び使用すべ   き場合」です。ゴーグル型保護メガネにつきましては、通達では次のウの所ですが、   ゴーグル型保護メガネについて記述されております。次のクですが、「作業衣の要   件及び脱着時等の管理方法」ということで、通達でも直接取り扱う場合に保護衣等   を着用することになっていますが、どのようなものが望ましいかということです。   (3)で「健康管理」ですが、健康管理につきましては健康診断が主なものにな   るわけですが、通達には健康管理については特に記述しておりません。健康診断も   なかなか難しいかと思いますが、何か注意すべき事項はないかといったことをご議   論いただけたらと思います。(4)が「労働衛生教育」ということで、教育訓練の   内容です。通達では教育訓練を行うことという記述がありますが、より具体的など   ういった内容の訓練を行ったらよいかということが必要かと思います。    3番ですが、「更なる研究・検討課題」ということで、現在まだ知見が得られて   いないことにつきまして、今後の検討課題としてどういったことが必要かというこ   とです。(1)として「情報の収集及び提供」ですが、現在は、通達に書いてあり   ますように、労働安全衛生総合研究所のホームページで入手された情報は発信して   いただいている状況です。(2)として「有害性の調査」ということで、有害性の   不明な点が多いわけですので、今後どのような物質についてどのような試験が必要   かということになってこようかと思います。(3)として「測定手法」ですが、事   業場で手軽に測定できる測定手法の開発が必要ではないかと思います。(4)とし   て「発散、ばく露防止のための工学的対策」ですが、密閉設備や局所排気装置につ   きまして具体的にどのような要件で作製するとその効果的なものができるのかとい   うことについての研究もさらに必要かと思っております。(5)として「労働安全   衛生法上の取扱」ということで、現在の法令はナノマテリアルを念頭にして策定さ   れておりませんので、既存の物質とは性状等が異なるところでありまして、法令に   ついて検討するところはないかということです。(6)として「関係府省、機関等   の連携」ということで、現在は、内閣府で取りまとめられておられます科学技術連   携施策群の1つとして連携を図っているところですが、今後ともいろいろな面で連   携が必要になってこようかと思います。以上、検討課題の案につきましてご説明い   たしました。 ○福島座長 そうしますと、資料3の明星先生、資料4のBauaのガイダンス、資料5   のNIOSHのレポートについてはお聞きしたということにしていきたいと思います。  それでは、資料6の検討課題についてご意見をいただけたらと思います。 ○大前委員 3番の更なる研究・検討課題の中に疫学調査を入れていただきたい。今、   実際に作業をされている方に何が起きているかということを基本的に押さえる必要   があると思いますので、これは是非入れていただきたいと思います。 ○福島座長 ほかに要望はありますか。 ○唐沢委員 資料6の2の検討すべき対策事項の(1)の作業環境管理というのがあり   まして、これは3のほうの更なる研究・検討課題の(3)の測定手法がまだ確立し   ていないから入れていないのだろうと思いますが、通常の場合は(1)の作業環境   管理にばく露評価が不可欠の手順としてあるわけです。まだ測定技術が確立してい   ないから、2の(1)の所に確定的に書き入れるのは難しいのかもしれないのです   が、実際のばく露状況をきちっと測ってフィードバックするというお考えを常に各   事業所の方々の念頭に置いていただく必要はあるのではないかという気がしていま   すので、3の(3)の測定手法の現状とか近い将来の開発状況なども十分考えない   といけないと思いますが、2の(1)の作業環境管理の中にばく露の計測・評価と   いうものをどういう形で入れるか、ちょっと検討課題にしていただければと思うの   です。 ○福島座長 はい、ありがとうございます。 ○蒲生委員 個々の項目というわけではないのですが、ここで検討した内容が最終的に   どういう形で出て行くのかということを確認させてください。あと、すでに以前の   会でご説明があったかと思うのですが、どのぐらいのタイムスケジュールでこれが   完了する予定でいるかも、もう一度確認させてください。というのも、かなり広範   にわたる課題だと思うのである程度の優先順位を付けるとか、そういうことが必要   かなと思いましたので、よろしくお願いします。 ○化学物質対策課企画官 最初のご質問ですが、本検討会の検討結果につきましては報   告書という形で取りまとめていきたいと思っております。具体的にはホームページ   での公表になろうかと思います。その検討結果を受けまして、必要である箇所につ   きまして、現在出しております通達の見直しということになってこようかと思いま   す。それから、タイムスケジュールですが、これはまだ具体的な検討に入っており   ませんのでどのぐらい時間がかかってくるかわからない状況ではありますが、なる   べく早めに、例えば秋ぐらいには検討結果として取りまとめたいと思っていますが、   それは予定ということでご理解いただけたらと思います。 ○福島座長 我々次第ですね。頑張ります。蒲生先生、よろしいですか。予定としては   秋をという事務局からのコメントです。ほかにありますか。 ○田中委員 労働衛生保護具のナノ粒子に対する性能評価がまだ十分に把握できていな   いということが言えるかと思いますので、保護具の性能評価について3の更なる研   究・検討課題という所に挙げていただければと思います。 ○福島座長 はい。 ○唐沢委員 いまの関連ですが、先ほどの明星先生の資料3の7のまとめの所の最後に   3)で防じんマスクの呼吸保護は十分かという問題提起をされていますね。それは、   ドイツの資料の9頁目の所ですが、9/15と書いてある頁の第1パラグラフのいち   ばん最後の行にあるBGIAというのはドイツの研究機関で、私も10年ほど前に訪問   したことがある所なのですが、要するにこれはある意味ではナノ粒子について非常   に楽観的に書いてありまして、フィルターのろ過効果は高くなると。それから、ご   説明いただいたNIOSHのペーパーでも一部分にはそういう記述があるのですが、   NIOSHのペーパーの50頁の最後の所には、1桁のオーダーになると熱反発があって   吸収効果が落ちるという記載があります。したがって、今後、我が方で対策を検討   する場合の呼吸用保護具の性能限界とか、そういったものについてはきちっと念頭   に置いて、使っていただく方にもわかるようにきめ細かく書くことが必要ではない   かと思っております。 ○甲田委員 いまの田中先生や唐沢先生の話とも関連すると思うのですが、保護具とい   った場合に呼吸用保護具がかなり関心の的になると思うのですが、もう1つは   HEPAフィルタですね。こちらのほうも事業所の中で話をしたときに、性能といい   ますか、その辺のところの検討がまだまだ遅れていると。ですから、その辺のとこ   ろも、この検討課題という意味では1つ挙がってくるのではないかと思っています。 ○福島座長 ありがとうございました。いまいくつかいただきましたが、それらを事務   局で整理をして検討課題に入れていただきたいと思いますし、先生方が持ち帰って   もう一度検討していただいて、こういうことも検討したらどうかということがあり   ましたら、向こう1週間以内に事務局のほうにメールでも何でも結構ですので提案   していただけるでしょうか。そして、それをまとめて最終的に今後の検討課題にし   たいと思います。そういうことでよろしいですか。 ○化学物質対策課企画官 はい、いいと思います。 ○唐沢委員 そういうことならば、ファイルで送っていただけますか。 ○化学物質対策課企画官 いまいただいたご意見を反映させたものの検討課題を委員の   先生方にメールでお送りいたします。 ○福島座長 わかりました。いずれにしても、次回のことがありますので、1週間以内   ということで切りたいと思います。よろしくお願いいたします。そうしますと、そ   の他の議題につきまして事務局から何かございますか。 ○化学物質対策課企画官 本日の会議の議事録は委員にご確認いただいた上で後日公開   させていただきますので、よろしくお願いいたします。それから、次回の開催日で   すが、7月9日水曜日、17時から19時に予定しております。会議室は調整中でご   ざいます。事務局からは以上でございます。どうもありがとうございました。 ○福島座長 それでは、本日の検討会を終了いたしました。お忙しいところをありがと   うございました。               照会先                厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課                       電話03-5253-1111(内線5510・5514)