08/05/29 第3回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会 議事録 第3回 今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会(議事録) 1.日 時:平成20年5月29日(木) 14:00〜16:30 2.場 所:厚生労働省9階 省議室 3.出席構成員:  樋口座長、伊澤構成員、上ノ山構成員、大塚構成員、尾上構成員、小川構成員、門屋 構成員、坂元構成員、佐藤構成員、品川構成員、末安構成員、田尾構成員、谷畑構成員、 寺谷構成員、長尾構成員、長野構成員、広田構成員、町野構成員、三上構成員、安田構 成員、山根構成員、良田構成員、岩成参考人   厚生労働省:  中村社会・援護局長、中村障害保健福祉部長、川尻障害保健福祉部企画課長、蒲原障 害福祉課長、福島精神・障害保健課長、北障害保健対策指導官、井内認知症・虐待対策 推進室長、塚本課長補佐、大重課長補佐、名越課長補佐、野崎課長補佐、江副課長補佐、 矢田貝課長補佐、他 4.議 事  (1) 精神保健医療体制について  (2) 精神疾患に関する理解の深化について  (3) その他 5.議事内容 ○樋口座長 ただいまより第3回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会を 始めさせていただきます。  構成員の皆様におかれましては、大変御多忙のところ、また、今日はお天気も悪くて 足元のお悪いところ、御参集いただきまして誠にありがとうございます。  まず、本日の資料及び構成員の出欠状況について、事務局よりお願いいたします。 ○名越課長補佐 本日の資料でございますが、上ノ山構成員及び長尾構成員より資料の 提出がございまして、それぞれ資料5及び資料6として配付をさせていただいておりま す。これにつきまして、後ほど御説明をいただくこととなっております。  第2回検討会の議事録につきましては、事務局において現在、最終的な確認作業を行 っておりまして、後日送付をさせていただくこととしておりますので、よろしくお願い いたします。  本日の出欠状況でございますが、佐藤構成員がやや遅れておられるところですが、間 もなく見えられると思います。中島構成員におかれましては、本日御欠席の連絡をいた だいておりまして、事前に座長に御報告をさせていただいておりますが、全国自治体病 院協議会の岩成常務理事に参考人として本日も御出席をいただいております。出席状況 につきましては以上でございます。 ○樋口座長 岩成参考人の御出席につきましては、構成員の皆様の御了解のほどお願い したいと思います。前回も御出席いただいております。  では、早速議事に入りたいと思いますが、本日は、「精神保健医療体系について」及 び「精神疾患に関する理解の深化について」というテーマで資料をつくっていただいて おりますので、事務局の方から資料に沿って説明をしていただいて、その後、御議論を いただくことにしたいと思います。  まず、お手元の資料1「精神保健医療体系の現状」という資料と、それから資料2「精 神保健医療体系の再構築に関する論点(案)」について、事務局より説明をお願いした いと思います。 ○野崎課長補佐 精神障害保健課の野崎と申します。私の方から、資料1及び資料2の 方の説明をさせていただきます。また、説明の中で、冒頭に資料4についても若干触れ させていただきたいと思いますので、その3点を御用意いただければと思います。資料 を御覧いただいてわかるように、かなり大部になっております。また、過去、検討会で 既にお示ししている資料と重複している部分もございますので、説明の方は極力簡略に させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  まず、資料4の4ページを御覧いただければと思うのですが、今回は、精神医療体系 の再編とビジョンにおいて柱が掲げられている部分を中心として今回の議事とさせてい ただいております。4ページから7ページまでで、「当面の重点施策群」というところ を見ていただきますと、ビジョンでは、1つは、精神病床に係る基準病床数の算定式等 の見直し、また、イとして精神病床の機能分化の促進、ウとして地域医療体制の整備、 6ページになりますが、エとして入院形態ごとの入院期間短縮と適切な処遇の確保、オ として患者への情報提供と精神医療の透明性の向上というふうに柱を掲げております。  ざっとその対応状況を見ていただきますとおわかりいただけると思うのですが、イの 精神病床の機能分化の促進、あるいは、ウの地域医療体制の整備というところにつきま しては、個別の項目ごとに見ると、事業の見直しや事業の創設ということによって対応 している部分もあることはあるのですが、全体としては、まだ厚生労働科学研究で研究 中であるとか、今後引き続き検討していくという形となっておりまして、まだ全体とし て具体像を示すに至っていないという状況でございますので、第1回の検討会でもお話 し申し上げたとおり、今後精神医療の部分も1つの重点的な柱として検討してまいりた い、そのように考えているところでございます。  それでは、資料1と並行して資料2を適宜参照いただきながら、本論に入らせていた だきたいと思います。  まず、資料1の2ページを御覧いただければと思いますが、大きく「精神保健医療体 制の現状」とさせていただいておりますが、これを我々としては5つの要素に分けてそ れぞれ現状を説明し、それに対応する論点というのを提示させていただきたい、そのよ うに考えております。大きく5つと申しますのは、相談体制、入院医療、通院・在宅医 療、あるいは精神医療の体制の話、あるいは体制の中の連携とほかの分野との連携とい うもの。あるいは、5つ目として精神医療の質の向上に関わる事項についてということ で、5つの柱を立てさせていただいております。  資料の3ページを御覧いただければと思いますが、こちらが「精神障害者を支える保 健医療体制」ということで、これは前回、第2回の資料にお示ししたものを、中身をも う少し書き込んで充実させたものとなっております。右上、相談体制として行政機関等 があり、あるいは通院・在宅医療、入院医療という柱があるということがおかわりいた だけると思います。  それでは、まず相談体制から御説明させていただきます。資料の4ページ以降を御覧 ください。まず5ページですが、こちらが精神保健福祉法における相談指導がどうなっ ているか、その枠組みを示したものでございます。上の方でございますが、都道府県、 保健所設置市につきましては、精神保健及び精神障害者の福祉に関し、本人や家族から の相談に応じさせ、指導させる義務というものがございます。また、下でございますが、 保健所設置市以外の市町村につきましては、福祉の部分については本人・家族等からの 相談に応じ、指導する義務がある。しかしながら、精神保健の分野については、本人・ 家族等からの相談に応じて指導することについて、まだまだ努力義務にとどまっている という状況にございます。  6ページを御覧いただきますと、こちらが障害者自立支援法における相談支援事業の 概要でございますが、自立支援法においては、市町村が相談機能のメインであり、それ を都道府県が支援するという形の構造になっておりまして、精神保健と精神障害者福祉 の分野で若干の違いが見られるという状況になっております。  7ページは参照条文となっておりますので省略させていただきます。  8ページでございますが、こちらの資料は、一般の方がこのグラフの下に掲げている ような疾患の症状に遭遇した際に、どういった相談機関、あるいは医療機関に相談・受 療を求めるか、そういったニーズを示しているものでございます。資料が白黒で若干見 にくいのですが、ここの大きな黒い四角の部分が保健所等公的機関に対するニーズとな っておりまして、全体としてさまざまな疾病がございますが、それほど高くはなってい ない。一方で、一番上にあります薄い四角が総合病院精神科となっておりまして、また、 それと重なっている、見えにくいのですが、薄いバツ印が精神科クリニックとなってお りますので、こちらの両者につきましては、概ねいずれの疾患においても相談・受療場 所としての好みというか、そこをニーズとしている方が多いということです。若干、真 ん中の介護福祉施設が高くなっているのが認知症で、ここだけちょっと特異な動きを見 せておりますが、全体としては先ほど申し上げた傾向にあるというふうに考えておりま す。  9ページ以降が実際に行政機関に寄せられた相談の内容を示したものでございます。 9ページ、10ページは、平成17年度と平成14年度について、保健所・市町村が実施し た相談の件数でございます。被指導延人員となっているのは、件数と考えていただけれ ばいいと思いますが、その内容でございます。まず、9ページを御覧いただきますと、 大体山の形を見ていただきますと、保健所でも市町村でも相談内容の傾向が変わるとい う状況にはなっていない。ただ、平成14年度と比較していただきますと、平成14年度 では、まず総相談件数が保健所の方が多かったにもかかわらず、平成17年度ではこれが 逆転しているという傾向が示されている。その傾向が特に顕著なのが社会復帰の項目で ございまして、平成14年時点では、保健所の方が20万を超える社会復帰に関する相談 が寄せられていましたけれども、これが平成17年度では 16万程度にとどまっていると いうことになっておりまして、少し傾向が変わってきているのかなと、そのように考え ております。  その中身がどうなっているのか、それを更に詳しく見たのが11ページでございます。 こちらは保健所が受ける困難事例の内訳となってございまして、左上、保健所が市町村 から受ける相談の内容を見てみますと、困難事例の解決を市町村から相談されていると 答えた保健所が約 100%となっております。また、下でございますが、保健所が医療機 関等から受ける相談の内容としても、退院後の対応に続きまして、困難事例の解決が約 84%に上っているということで、保健所が困難事例の対応という中で果たしている役割 があるのではないか。困難事例の内訳は右側に示しておりますが、近隣での他害・迷惑 行為等が挙がっているということでございます。  12ページ、13ページが、もう1つの行政機関である精神保健福祉センターにおける 相談の状況を示したものでございます。この2つのグラフ、18年度と14年度を比べた ものでございますが、傾向として顕著なのは、まず平成14年度と比べると、相談の延人 員が平成18年度で15万程度減っているということがまず見てとれる。また、その多く は社会復帰の相談内容が約14万弱減っておりますので、ここの部分について精神保健福 祉センターの受ける相談の件数が減っているという状況にございます。  事務局として用意させていただいたデータは以上でございますが、資料2の1ページ を御覧いただきますと、以上のデータを踏まえまして、我々事務局として、こういった 論点があるのではないかということで整理させていただいたのがこの論点(案)という ところでございます。  まず、大きな柱として、精神疾患への早期対応と精神障害者の地域生活への移行の推 進の観点から、今後の精神保健分野における相談体制のあり方についてどのように考え るか。また、個別の項目といたしまして、まずは一番最初にプリファレンスという絵で お示ししましたように、行政機関と医療機関のそれぞれの相談体制における機能と、そ の役割についてどう考えるか。2つ目といたしまして、行政機関内(精神保健福祉センタ ー、保健所、市町村)の間での相談機能の分担のあり方についてどのように考えるか。3 つ目といたしまして、障害者自立支援法においては、障害者福祉の相談の義務というの が市町村に下りていることをお示ししましたが、そういった精神障害者福祉に係る相談 体制と精神保健に係る相談体制というものの関係についてどのように考えるか。以上、 各論として、3つの論点を提示させていただいております。  以上が相談体制の説明になります。  続きまして、資料1にお戻りいただきまして、15ページを御覧いただければと思いま す。特に入院医療の部分は過去の資料と重なる部分が多いのでかなり簡略化して説明さ せていただきたいと思います。15ページが動態の資料でございまして、以前お示しした ものでございます。  16ページも、精神病床の入院患者の傷病別の内訳というもので、以前お示ししたもの でございます。  17ページ、こちらは初めてとなりますが、精神病床に入院する患者さんの年齢分布と いうことで、65歳以上の患者の割合が年々増えてきているということを示す資料となっ ております。  18ページは、主傷病が精神疾患のものの総数に対する入院期間別の患者数の年次推移 ということで、これも以前お示ししておりますが、短期、特に1年未満から1〜5年ま での患者が増える一方で、10年以上の患者が少しずつ減ってきている、そういう状況を 示す資料でございます。  19ページは、精神病床に入院する患者を入院期間と疾患別に分けてみた表となってお ります。こちらで特筆すべき事項としては、まずは一番上の行でございますが、左側が 全疾患に占める割合となっておりますので、統合失調症の患者は精神病床に入院される 患者の6割以上を依然占めているということでございます。また、統合失調症の下の方 を見ていただきますと、10年以上のところで85%となっておりますが、これは精神病床 に入院される10年以上の入院患者の85%が統合失調症の患者となっているということ です。また、そのすぐ右、35.9%という数字は、統合失調症の患者の中で10年以上の患 者が36%程度となっているということでございます。ほかの疾患と比べますと、うつ気 分障害では、やはり短期の方が多く、1年未満の方が62%となっております。また、認 知症につきましても、1年未満が42%、1年以上5年未満が41%と、統合失調症と比べ ると比較的短期の方が多いという状況になっております。  20ページでございますが、こちらは入院形態別の入院患者数の推移を見たものでござ います。一番上、措置入院は平成元年から比べますと大幅に減少してきているという傾 向にございます。一方で、医療保護入院は、平成元年と比べると減ってはおりますが、 近年の平成9年以降、少し右肩上がりで推移してきているという状況にございます。  続きまして、21ページは、以前この検討会でもお求めがありました患者の退院先がど うなっているかをまとめた資料でございます。下の割合というところを見ていただけれ ばと思いますが、退院患者に占める入院期間別の割合を見ると、総数で1年未満の方が 87%、1〜5年が8%と、やはり長期の方の退院患者の割合は少ないということになっ ております。その転院先の内訳を見ていただきますと、20年以上の部分でございますが、 転院が62%で、亡くなられている方が20%となっておりまして、10〜20年でも、ある いは5〜10年のあたりぐらいまで転院・死亡の割合が比較的高くなっているという状況 になってございます。  22ページでございますが、こちらは以前お示しした資料なので省略いたします。  23ページ、24ページは、我が国と諸外国の間で病床数と平均在院日数の比較をした 資料となっております。諸外国と病床の定義が異なりますので、そこは踏まえる必要が ございますが、いずれにしても、我が国における病床数、平均在院日数というのは諸外 国と比べると高い傾向にあるというふうに言えると思います。  25ページでございますが、こちらが病床機能分化の関連で、精神科入院医療に係る主 な診療報酬の経緯をお示しした資料でございます。上の特定入院料の部分でございます が、精神療養病棟、急性期、救急と3つ真ん中に掲げておりますが、こちらが主に病期 に応じた機能分化に対応するもの。あるいは、特定入院料の上、認知症の部分と、一番 下の救急・合併症入院料というあたりは、疾患というか、症状ごとの機能分化に対応す るものと考えております。  一方で、入院基本料等の加算におきましては、児童・思春期の入院医療管理加算であ るとか、認知症加算であるとか、あるいは平成20年度から合併症加算を設けるなど、一 定の対応を図っているところでございますが、診療報酬上はやはりまだ病期の機能分化 が中心となっているということでございます。  26ページは、病棟区分ごとの算定病床数の推移をお示ししたものでございます。  27ページは、平成18年時点の病床機能分化の全体像をお示ししたものとなってござ います。  28ページでございますが、こちらは病床別の医療提供体制となっておりますが、これ は医療法の基準における人員配置、あるいは設備構造の基準をお示ししたものでござい ます。この中で特に人員配置のところを見ていただきますと、精神病床につきましては、 (1)と書いてございますが、大学附属病院並びに内科・外科等の診療科を有する 100床以 上の病院につきましては、医師、看護師、薬剤師の配置が一般病床と同じ水準となって いる。一方で、それ以外の病院につきましては、医師、看護職員、薬剤師の配置は療養 病床と同じ配置になっているという状況にございます。  以上が入院医療に関するデータとなります。  続きまして、資料2の2ページに移っていただければと思いますが、こうしたデータ を踏まえまして、我々として入院医療に関する論点をお示ししたのが2ページになりま す。論点といたしましては、大きなものとして2つ掲げておりますが、1つは、改革ビ ジョンに掲げられた方向性や地域移行の推進という施策の方向性を踏まえ、今後の精神 病床の機能分化のあり方についてどのように考えるかといたしまして、まずは病期(急 性期、回復期、療養期)に応じた入院機能のあり方と機能分化の推進について。2つ目 といたしまして、疾患に応じた入院機能のあり方と機能分化の推進について。3つ目と いたしまして、病床機能分化の推進のための方策についてというものを掲げさせていた だいております。  もう1つ、大きな論点といたしまして、2つ目の二重丸でございますが、病期・疾患 に応じた入院機能のあり方や、通院・在宅医療、あるいは介護・福祉等のほかのサービ スの機能をなどを踏まえつつ、現在、精神病床が果たしている機能をどのように評価し、 人員構造等の基準、あるいは機能ごとの必要量、病床の機能強化のための方策など、今 後の精神病床のあり方についてどのように考えるかということを論点として掲げさせて いただいております。  以上が入院医療の説明となります。  続きまして、通院・在宅医療に移らせていただきます。資料1の30ページを御覧い ただければと思います。こちらは精神科の通院・在宅医療に係る主な診療報酬の経緯と なっておりまして、近年の動きといたしましては、平成18年診療報酬改定において精神 科ショート・ケアというものを新設している。あと細かい内容につきましては、平成20 年の診療報酬改定で訪問看護を少し内容を充実するとか行っておりますが、大きな区分 としてはこのようになっているということでございます。  31ページは、第2回でお示しした資料なので省略させていただきます。  また、32ページは、精神科デイ・ケアの利用状況を年次推移で見たものでございます が、下の利用実人員というところで見ていただきますと、精神科デイ・ケアについては 順調に伸びてきておりまして、ほかを見ましても、精神科ナイト・ケアを除けば増加傾 向にある、そういう状況にございます。延べ利用者数についても同様の傾向を示してお ります。  33ページは、精神科デイ・ケア等の中身でございますが、これは以前お示しした資料 なので省略させていただきます。  34ページ以降が精神科訪問看護に係る資料でございます。34ページ、35ページ、36 ページ、いずれも第2回の参考資料として示させていただいたものも含めまして、すべ て提示させていただいておりますが、いずれも訪問看護の実施によって効果が見られる という資料になってございます。  37ページは、精神科訪問看護を精神通院医療のレセプトの件数ベースで見たものでご ざいますが、平成10年度以降、レセプト件数については順調に右肩上がりで伸びてきて いるという状況にあります。  38ページは、こちらも精神科訪問看護に関するデータでございます。これは以前お示 しした資料でございますが、訪問看護ステーションにおける実施状況はまだ伸びていな い、というデータとなってございます。  資料2の3ページを見ていただきますと、以上を踏まえました通院・在宅医療に関す る主な論点をお示ししてございます。大きなものとしては、「精神保健医療福祉の改革 ビジョン」の方向性を踏まえ、今後の通院・在宅医療のあり方についてどのように考え るかといたしまして、まず1つは、精神科デイ・ケア等の患者の症状やニーズに応じた 機能強化・分化について、2つ目として精神科訪問看護の更なる普及など在宅医療の充 実について、3つ目といたしまして、病状や支援の内容等、利用者の実態を踏まえた福 祉サービスとの役割分担のあり方について、以上の3つを論点としてお示ししておりま す。  資料1の39ページにお戻りいただければと思います。ここからが精神科医療に関す る医療体制と、あるいは、ほかのサービスも含めた連携のあり方に関するデータ等の既 存の資料となります。  40ページを御覧いただければと思いますが、こちらは精神科救急事業の変遷をお示し したもので、平成7年度に精神科救急システム整備事業として、初期・2次の部分につ いて整備を行った。また、17年度については、3次に当たる部分について新たに事業の 追加を行っているということでございますが、平成20年度の予算において、この2つの 事業を組み替えまして、1次、2次、3次という階層ではなくて、すべての地域におい て24時間365日の精神科救急医療体制がとられるようにという趣旨で事業の見直しを行 っております。また、身体合併症対応につきましても、その内容の充実を図っていると いうことでございます。  41ページがその利用状況をお示しした資料でございますが、こちらは既にお示しして おりますので省略いたします。  42ページでございますが、精神科救急医療システムの全国状況をお示ししたもので、 受診件数と入院件数を都道府県別に示したものとなってございます。受診件数が多くて 入院率が低い地域、あるいは受診件数は少ないけれども入院率が高い地域と、地域によ ってその傾向がさまざまであるという状況でございます。  43ページでございますが、先ほど申し上げましたように、平成20年度の予算におき ましては、精神科救急医療体制整備事業として事業の見直しを行っております。主な見 直しの視点は、先ほど申しましたとおり、すべての地域において、いわゆる24時間365 日の体制をとるということと、身体合併症対応を含めた情報センターの機能強化、ある いは身体合併症対応施設の創設というもの、あるいは診療所に勤務する指定医の方にも 診療協力体制に加わっていただく。そういう趣旨の見直しを行ったものでございます。  44ページは、精神科救急医療体制、平成20年度以降の事業のイメージとなっており ます。こちらでお示ししておりますのは、地域・各ブロックにおいて、それぞれ構成し ている医療機関が異なりますけれども、いずれにしても、常時対応型を中心とするのか、 あるいは輪番病院のみで対応するのか、 その形態は実情に応じて違いますが、いずれに しても、精神科救急医療体制を24時間365日とっていただくということとなっておりま す。  以上が救急の説明となります。  45ページ以降が認知症に関するものとなります。45ページは、以前御指摘もござい ましたが、認知症の患者さんの所在をお示ししたものでございます。大きく見ますと、 左側の介護分野での推計でございますが、 169万人いらっしゃって、そのうち居宅にい らっしゃる方が49%、介護施設が32%で、入院医療施設等を足した入所を計算して51% となっている。右下を御覧いただきますと、そのうち入院されている方は約8万人いら っしゃって、そのうち約5万人が精神病床に入院されているという状況にございます。  46ページでございますが、こちらは認知症の医療というものがどのようなものか、時 間経過との関係でお示ししたものでございます。我々といたしましては、認知症に関わ る主な精神医療としては、やはり最初の鑑別診断と急性期の精神・行動障害、いわゆる 周辺症状と、あと身体的な疾患を伴う合併症対応の急性期対応、主にこの3つに分けら れるのではないか、そのように考えております。  47ページは、認知症入院患者数の年次推移をお示ししたもので、平成8年以降、割合 としても実数としても伸びてきているという状況にございます。  48ページでございますが、47ページが精神病床のデータであったのに対して、こち らは認知症疾患を主傷病とする方の入院先が、どういう状況になっているかを示したも のでございまして、 一番左の黒い部分が精神病床に入っていらっしゃる方で、その実数 としては伸びてきている。そういった方を合わせると、療養病床や一般病床を合わせて、 入院患者数は平成17年時点で約8万人いらっしゃり、その約6割が精神病床に入院され ている、そういう状況にあるということでございます。  49ページは、そうした医療だけではなくて、介護サービスも含めた、あるいは入院医 療だけではなくて、外来も含めた医療と介護の連携体制をお示しした1枚の絵となって おります。このサービスの全体像がより機能するように具体化していく必要があると考 えております。  50ページでございますが、先ほどお話しいたしました精神科医療の鑑別診断と急性期 対応という、そこの機能の中核を担う機能として、平成20年度予算から認知症疾患医療 センター運営事業というものを創設したところでございますが、その概要図を示したも のでございます。  以上が認知症に関する状況の説明となります。  51ページは、1枚でございますが、身体合併症の状況がどうなっているのか、それを お示しした資料でございまして、総合病院の精神病床を見ていただきますと、その2割 以上が中等症以上の身体合併症を有した患者さんとなっている。また、救急病棟、急性 期治療病棟でも10%弱の中等症以上の合併症患者さんがいらっしゃる、そういう状況に なっております。  52ページは、診療所数の推移でございます。既にお示しした資料でございます。  53ページは、通院・外来患者の推移を見たものでございます。診療所の数の増加に伴 いまして、実際の通院・外来患者さんの診療所における数が伸びてきているという状況 でございます。  54ページは、実際の病院診療所における通院患者さんを疾患別にどういう内訳になっ ているのかというものを見たものでございます。大きな着目すべき点としては、統合失 調症の患者さんの約7割が病院で外来通院をされているということ。あるいは、その下 でございますが、気分障害や神経症性障害等の患者さんにつきましては、一般診療所で 6割以上の患者さんが外来通院にかかっている、そういう状況になっているということ でございます。  55ページは、精神科医の所在ということで、これも以前お示しした資料でございます ので省略をさせていただきます。  56ページ以降が、医療計画との関係を示した資料でございます。56ページ、57ペー ジでお示ししておりますのは、大きく言いますと、後ほど説明いたしますが、医療計画 制度の見直しというものを行った中で、4疾病5事業というものについて医療連携体制 を構築するとされているわけでございますが、精神科医療につきましては、あくまで都 道府県ごとに必要であれば連携体制を組む、そういう事業に位置づけられているという こと。  あともう1つは、57ページに示されておりますが、4疾病5事業のうち、救急医療事 業に関しては、一般救急と精神科救急医療の連携を図るようにという旨の記載がされて いるという状況でございます。  58ページは、以前御説明いたしました基準病床算定式の見直しについてでございます。  59ページからが医療計画制度全体の見直しとなりますけれども、具体的には、61ペ ージを御覧いただきますと、こちらが平成18年の医療制度改革における医療計画制度の 見直しにおいて、医療連携体制を構築するとされた4疾病5事業でございます。御覧い ただくとわかりますように、こちらに精神医療というものは疾病の方に入っていない。 救急の一部としては位置付けられている、そういう状況でございます。  62ページは医療連携体制のイメージ図となりますので省略をさせていただきたいと 思います。  以上が医療体制連携についての主な説明となりますが、資料2の4ページには、それ を踏まえた論点を提示させていただいております。1つは、最初の二重丸でございます が、相談体制、入院医療、通院・在宅医療のあり方に関する検討や、医療計画制度の見 直しを踏まえ、今後の精神医療体制のあり方についてどのように考えるかということで、 各論といたしまして、精神科救急医療体制の充実について、2つ目として、精神医療に おける病院と診療所の機能とその分担、連携のあり方について、3つ目として、精神医 療体制の制度的な位置づけについて、最後に精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者に対す る医療提供のあり方について。緊急時の対応も含め、精神症状が持続的に不安定な患者 に地域生活の選択肢を確保できるようなサービスのあり方についてということでござい ます。もう1つの二重丸でございますが、ほかのサービスや関係機関との連携が必要と 考えられる分野、例えば認知症であるとか、依存症、あるいは児童・思春期などについ ては、病期・疾患に応じた入院機能のあり方と機能分化に関する検討も踏まえ、その体 制のあり方についてどのように考えるかということを論点として掲げさせていただいて おります。  以上が医療体制連携についての説明となります。  最後でございますが、その他精神医療の質の向上に関わる事項についてということで、 資料1の64ページを御覧いただければと思いますが、こちらは抗精神病薬処方の調査に おいて欧米と日本の比較を行ったものでございますが、簡単に申しますと、諸外国と比 べまして、日本は単剤を処方するというケースが少なくなっているというデータでござ います。  65ページは以前お示しした資料でございますが、医療関係従事者数に関する年次推移 のデータでございます。准看護師以外については伸びてきている状況にあるということ でございます。  66ページは、精神科医療従事者数について国際比較を行ったものでございます。精神 科医師、精神科看護師につきましては、人口当たりの数というのは諸外国と比べて必ず しも極端に少ないという状況にはありませんが、病床数との比較で、1人当たりの病床 数は非常に多くなってきているという状況にございます。  以上が資料の説明となりますが、最後、資料2の5ページを御覧いただければと思い ますが、こちらが精神医療の質の向上に関する主な論点といたしまして、以下の事項を はじめとして、精神医療の質の向上のための今後の取り組みについてどのように考える かということで、2つの例示として、薬物療法について、あるいは精神医療に関わる人 材の確保についてということで挙げさせていただいております。  以上で資料1及び資料2の説明を終わらせていただきますが、いずれにしましても、 資料2で掲げさせていただいた論点につきましては、我々事務局として現時点で考えて いるものでございますので、本日の検討会や、今後積極的に論点の追加等の御意見をい ただければと考えております。  以上でございます。長い時間になりましたが、ありがとうございました。 ○樋口座長 ありがとうございました。大変膨大な資料でございまして,説明を駆け足 になっておりますので、十分フォローしていただけたかどうかについて、後ほどまた質 問あるいは御議論をいただきたいと思います。  ここで、今日、追加で資料が上ノ山構成員と長尾構成員からそれぞれ御提出いただい ております。関連のある資料と見受けましたので、ここで資料番号としては資料5と資 料6ということで飛んでおりますけれども、ここで説明をしていただければというふう に思います。  まず最初に、上ノ山構成員、よろしくお願いいたします。 ○上ノ山構成員 上ノ山です。よろしくお願いします。  これまで外来の精神科医療に関することについては、余り公的な場で発言する機会を 与えらてきませんでしたので、今日このような形で発言させていただいて大変ありがた く思っています。  どうしても自立支援法の成立の過程では、病床の削減からすぐ福祉サービスを中心と した地域生活支援の充実というところに飛んでしまって、外来の精神科医療の充実、外 来機能の強化という点に関しては、議論が不足であったのではないかというふうに思っ ています。そういう意味で、今日は、私は日本精神神経科診療所協会の代表ではありま せんが、診療所協会の活動ないしは診療所の仕事を皆さんに理解していただきたいとい うことで御説明させていただきます。  今日、多くの精神科診療所がまちの中のアクセスのよいところに立地して、気軽に精 神科医療に接しやすい状況ができているということですが、資料の表1、2を見ていた だきますと、こんなふうに精神科診療所が増えておりまして、2008年の5月現在では 1, 479名が日本精神神経科診療所協会の会員でございます。先ほど厚労省のお示しいただ いた資料の中に、外来の精神科医の数が 9,000というふうな資料が出ていましたが、あ れはどこから出てきたかというのはちょっと疑問のところで、私たちの実感からします と、日精診会員が1,500あるとしますと、組織率が3分の1として、4,500ないし5,00 0ぐらいが一応きちんとした精神科の診療所ではないかというふうに思っています。こ の 1,479名は、診療所の数ではありません。日精診に加盟している医師の数ですので、 診療所に医師が2名いる場合もございますので、この数から50ぐらい引いていただくと 日精診の診療所の数になるというふうに御理解ください。  それから、開設年度を見ていただくと、これは平成17年度の資料ですが、アンケー ト調査の資料ですので、回答率が50%の資料ですけれども、1997年あたりにちょっと山 がきていますけれども、精神保健福祉法の改正等が関連しているのかもしれません。い ずれにしても、ときどきこういう山がありますが、順調に伸びているということです。2 005年に関しては、年度途中の集計ですので、こういう低い数字になっています。  そのために、精神疾患の早期発見、早期治療の機会が増えている。また、通院中断を 防ぎ、病状の急激な変化に対応しやすくなって、再発や慢性化を防いでいると考えられ ます。病状の急性増悪期や再発時の一時期に短期的に入院治療を行ったとしても、危機 介入、生活調整をして、再び地域で生活を支えていく形が今後ますます顕著になると思 われます。病状の急性期を乗り切れば、あとは少々の精神症状が残っていても、地域生 活を続けながら、さまざまなリハビリテーションを行うことが可能になってきています。 したがって、精神科診療所は一次予防から三次予防まで幅広い領域をカバーすることに なります。  表6、7を見ていただきますと、精神科診療所の活動をあらわしていますが、精神科 診療所で診ている患者さんの疾患分類で言いますと、F2統合失調症圏が22%ぐらい、 F3気分障害圏が37%、そしてF4神経症圏が25%、これらがほとんどになります。あ と、その他の割合は、各診療所の個性によって細かいところが分かれます。例えば老人 を中心にやっているところでしたらF0が増えますし、アルコールなどを中心にやって いる診療所ですとF1が増えますし、子ども中心にやっている診療所だとF8、9が増 えるというふうなことになります。全体的なバランスとしては概ねこういう形になると いうことです。  その中で、デイ・ケアをやっている診療所のデイ・ケアメンバーの診断構成を見ます と、先ほどの厚労省の資料によりますと、統合失調症が76%ぐらいでありましたが、診 療所でのデイ・ケアでは統合失調症圏は56%で、その他、うつ病圏など他の疾患の割合 が多くなっているというふうに読めます。  それから、表7ですが、診療以外の活動はこのような形でさまざまに関わっています。 社会復帰施設に関することもそうですけれども、学校等さまざまな形で地域に出て行っ ているということですね。これまでは、リハビリテーションということで、二次予防、 三次予防ということが中心に語られがちでした。しかしやはり精神科医療を語る場合に は、一次予防も含めて語っていくべきであって、我々の活動は、このような病気になら ないようにする予防活動まで含めて、あるいは早期発見、早期対応まで含めて広がって います。 そういうことを含めて検討していただけたらというふうに思っています。その 際には、チーム医療やさまざまなアウトリーチ活動など、精神科診療所がそれぞれの個 性に応じて創意工夫を展開しています。  表3に戻っていただきますと、デイ・ケアの数が示されています。全国的にデイ・ケ アをこのような形で行っているわけですけれども、必ずしも多いわけではありません。 主に都市圏中心にあるということですね。そして、例えばその県で15ヶ所以上デイ・ケ アのある県といいますと、埼玉県、東京、神奈川、大阪、この4つぐらいしかありませ ん。  あと、デイ・ケアの実施割合ですが、例えば平成17年、日精診会員基礎調査では、 デイ・ケア実施診療所は22.6%でした。表4を見ていただきますと、会員数の伸びに応 じてデイ・ケアの数も増えていますが、全般的に見ますと19%前後です。先ほど言いま したように、日精診の会員数は施設数ではありません。日精診の会員の基礎調査から言 いますと22.6%という数字が出ていますが、ちょうどこの中間をとったあたりで、20% ぐらいが精神科診療所でのデイ・ケアの実施割合というふうに考えていただいたらと思 います。デイ・ケアは、とりわけ個別性と集団性を利用したリハビリテーション活動で あると考えています。  それから、もう1つ同じ基礎調査で、PSWの配置診療所の割合は26.5%となってい ます。表5を見てください。会員診療所のCo−Workerの数が出ています。私が特に注目 したいのは精神保健福祉士の数です。171診療所に精神保健福祉士の常勤者がいるとい うこと。このアンケート調査では、26.5%の診療所に精神保健福祉士がいるということ です。それら診療所では、精神保健福祉士の数は353人で、 置かれている診療所には平 均2.06人の精神保健福祉士がいるということです。その他パートの人もいますけれども、 この数が多いか少ないかということですが、私は今後、病診連携、あるいは地域での関 係機関との連携等を考えていく場合には、精神保健福祉士の活動をもっと強化していく ような体制が望まれるというふうに思います。したがって、まだ26%程度しかないとい うことです。それから、同じ基礎調査で訪問看護を行っている診療所の割合は16.2%と なっています。  我々はどうしても1対1の医師・患者関係が中心になりがちですけれども、それを超 えたチームでの取組の重要性が増してきています。更に、医療機関という場の制約を超 えたアウトリーチの取組の充実が求められています。患者・家族の生活の背景などを視 野に入れて、時には、その生活や活動の場に赴き、チームで医療・福祉サービスの提供 を行っていくことになります。時には関係機関と連携を図り、ケース会議やサービス調 整会議にも関わっていくことも必要になります。  そこで、一昨年の7月ですが、ちょうど自立支援法の本格施行のちょっと前のときに、 診療所としても社会復帰施設などにどのような形で関わっているかということでアンケ ート調査を行い、41%の回答を得ましたので、その資料を見てください。表8ですけれ ども、黒い部分が「いいえ」でもちろん多いんですけれども、社会復帰施設に何らかの 形で関わっていると答えた人が38%いるということです。  それから、表9は各種の社会復帰施設などへの関わり方ですが、医療法人とか社会福 祉法人とか、その他の形などでいろいろ関わっているわけですけれども、やはり作業所 とか、グループホームなどが多いということです。  それから、表10はこれは思い切って聞いてみたのですけれども、診療所として相談 支援事業所としての指定を受けてもよいかということを問いました。これは、自立支援 法の本格施行の前に、相談支援事業所自体がどういうことをするのかもわからないよう な状況ですので、答えとしては、そんなものは知らないよというふうな答えが多いのか なと思いましたけれども、受けてもいいというふうな答えが99名もいて驚きました。そ ういうことで、何らかの形で相談支援事業に参加するなど、コミュニティ・ケアの充実 に関わっていきたいと考えている会員がかなり存在しているということが示されてます。  障害者自立支援法では、ケアマネジメントを制度化し、市町村を中心としたサービス 提供体制を構築していくことになっています。しかし、サービスを手配するだけの介護 保険型のケアマネジメントでは不十分です。当事者のニーズに寄り添いながら病状の変 化にきめ細かく対応し、障害の受容に至る長いプロセスをともに歩みながら、社会参加 や自己実現を目指すようなケアマネジメントが望まれます。しかし、残念ながら、市町 村や委託相談支援事業者には未だ人材が育っていないのが現状です。この際、市町村を 盛り立て、市町村や関係機関と当事者をつなぐ役割が必要と考えます。これは、医療機 関にとっても求められている役割というふうに思っています。  自立支援法の相談支援事業は、地域生活支援事業の市町村の必須事業とサービス利用 計画作成の2階建てとなっています。交付金事業は、市町村のやる気によってずいぶん 差が出ることになります。また、サービス利用計画作成の対象は極めて限られており、 その対価は低く、インセンティブはないに等しい状況です。そのため、サービス利用計 画作成数は全国的に低調となっています。また、相談支援体制を支える中核として、市 町村地域自立支援協議会の設置が想定されていますが、実際は、法律に書き込まれてい ないこともあって、平成19年4月現在、4割程度の市町村しか設置されていません。  その上、ケアマネジメントを行おうとしても、サービスの絶対量が足りない状況では、 ケア計画を立てようがないというのも実際のところです。また、医療機関の方から、福 祉サービスにつないでいくような努力をしないと、福祉圏にたどり着かないのが現状で す。そのような医療機関の工夫には対価はないですけれども、総合的な地域ケアを進め ていくためには、そのような努力は欠かせません。医療機関の提供するサービスへの期 待も大きいです。表11を見てください。これは、滋賀県で行った平成18年7月1日の 調査です。私はたまたま滋賀県ですのでそこの資料を持ってきたのですが、全国的に障 害福祉計画作成に当たって、このような調査が行われていると思います。受入条件が整 えば退院可能な入院患者数を聞いたところ、ベッド数が 2,000ちょっとの滋賀県ですけ れども、 604名もいた。その中で、どのようなサービスが必要ですかというところで、 特に日中活動のところを見ていただきますと、デイ・ケアに関しては40.2%、訪問看護 に関しては31.1%ということで、医療系サービスへのニーズが非常に高いということが わかると思います。  そうしますと、医療機関においても、自らの提供するサービスが地域社会全体の総合 的なサービスの中でどのように位置づけられているのかを意識しながら、個別の支援計 画を作成していく必要があります。そこに医療ケースワーク・ソーシャルワークの役割 があると思います。医療の中で自己完結的ではなくて、地域のさまざまな資源に開かれ た医療を目指すべきではないかというふうに考えます。障害者自立支援法を契機に、医 療機関の中においても、医療ケースワーク・ソーシャルワークが充実し、ケアマネジメ ントの手法が定着していくことを期待したいと思います。  以上を踏まえて、全国に展開した精神科診療所を地域生活支援の重要な拠点として活 用することをぜひ御検討ください。そして、そこで行われるケアマネジメントに対して、 何らかの評価がなされることを期待したいと思います。  また、それぞれの領域をつないでいく活動が重要です。それに対する積極的な評価が 必要です。具体的には、PSWなどCo−Workerの活動に対価が必要です。訪問看護は、 家庭への訪問のみ認められていますが、学校、職場など、活動の場への訪問支援や、職 安やさまざまな相談機関への同行支援などの評価が必要です。また、関係機関との連携 を強めていくためには、自立支援協議会や、その都度の関係者会議などに出席が必要と なりますが、その評価も必要です。また、地域移行を進めるに当たっては、今回の診療 報酬の改定においては、病院側の地域移行促進の努力に対しては若干の評価が行われる ことになりましたけれども、診療所側からも、受け皿として退院前に地域の支援体制に 取り組んだ場合の評価が求められると思います。つまり、診療所側からも退院後の支援 について退院前に関係者会議に参加することは十分ありますし、これまでもやってきま した。それから更に、診療所が作成する個別支援計画が何らかの形で評価されることを 望みたいと思います。  以上です。長くなって失礼しました。 ○樋口座長 ありがとうございました。それでは、大分時間が押しておりますが、次に長 尾構成員から提出していただいております資料について御説明をお願いしたいと思いま す。 ○長尾構成員 長尾でございます。資料6を御覧いただきたいと思います。  1ページ目は表題ですので。精神病床が非常に多いということで、いろいろな御指摘 を受けておりますけれども、歴史的な流れから少し御説明したいというふうに思います。  そもそも昭和25年に精神衛生法というものが制定されまして、そこの第1条に「精 神障害者等の医療及び保護を行い」という文言があります。このことによって精神障害 者の病院医療を行うということがこれに規定されたことが多いと思いますが、その次、 3ページ目、昭和62年に精神衛生法から精神保健法に変更された。そのときに、「医療 及び保護を行い、その社会復帰を促進し」ということと、その次の「福祉の増進」とい う言葉がここに盛り込まれたわけです。ただ、残念なことに、本来の福祉を増進するこ とがなかなか進まなかったということと、社会復帰ということを、精神保健法に変わっ たときに、「人権擁護」と「社会復帰」という二本柱が出ましたけれども、社会復帰施 設というのは、都道府県等がつくることができるという努力規定であって、義務規定で はなかったわけです。ですから、そういう1つの大きなことがあると思います。  それから、4ページ目に、長期在院がいろいろ問題になっておりますけれども、それ がなぜ起こったかということです。先ほどのように、精神衛生法が制定はされましたけ れども、残念なことに、身体障害や知的障害の福祉法が制定されたのと違って、精神障 害者福祉法というものは制定されなかったということがございます。それから、先ほど 述べましたように、社会復帰施設の設置というものは努力規定であって、義務規定では なかったということによって、これはそういう強制力を持つものでなかったということ です。  それから、これはせんだっての回でも家族会の方が言われたように、やはり家族の方 の疲弊と受入れの限界ということが非常に大きくあります。これは後で示しますけれど も、やはり家族の中でも、退院させたくない、現実的に困難であるという数が60%を超 えておりますし、家族が受け入れない人をどう受け入れるかということの退院後の受け 皿の絶対的な不足ということはこれまでも指摘されているとおりでございますし、建築、 さまざまな社会復帰施設も、やはり総論賛成、各論反対というようなことから、地域住 民の反対運動が結構多い。これは、今後の啓発にも非常に大事なことですが、そういっ た場合に、なかなか行政が不関与であった。それから、建築補助金の不足や設置者から の持ち出しがなければこういったものはつくれなかったということがあります。  5ページ目に、精神障害者の社会復帰施設がどのぐらいあるかということを示したも のですが、これは定員数です。これは平成17年度のもので、精神保健福祉法における社 会復帰施設というものの数字がわかるのは恐らくこの年度が最後で、自立支援法になっ てカウントができなくなっているということがありますので、これを見ていただいたら わかるように、全体の定員数は約1万 7,000ぐらいしかございません。  それから、6ページ目。これは先ほどお示ししたものの全家連の、これはちょっと古 いデータだと思いますが、1968年だったと思いますが、全家連の調査の家族の受入れに ついての考えを示したものです。  それから、7ページ目は、平成18年に千葉県で調べられた長期入院者の患者さんと 家族の、退院したいか、したくないか、また、させたいか、させたくないかというよう なもので、家族の方の受け入れがなかなか難しい状況を示しております。  それから、8ページ目に「無視されたクーラク勧告」というのを出しておりますけれ ども、クラーク勧告というのは、1968年に日本政府から依頼をして、WHOからイギリ スのクーラク博士が来日して、日本の精神医療についての勧告を行ったということで、 その当時、このままでいけば慢性入院患者の長期化と老齢化をはっきり現状のものを予 測しているわけですし、そのためにいろいろな手を打ちなさいということを勧告をして いるわけですけれども、これはこの時点ではほとんど無視されたということを言わざる を得ません。  それから、9ページ目に、日本は精神病床が多いということで、実際の米欧の比較と いうことで、日精協からもサンフランシスコ等に視察に行きまして、その分を出してみ ました。  10ページ目には、精神病床と居住施設の国際比較というものを示しておりますけれど も、日本は病床でほとんどを占めている。先ほどの厚労省の方の精神保健医療体系の現 状というものの23ページを見ていただければ、病床数で諸外国との比較というのが出て おります。これはOECDのデータですが、例えばアメリカで言えば、万対5程度の病 床になっておるかと思いますけれども、このOECDのデータは、いわゆる急性期の病 床しか出ておりません。ですから、SNFと書いているのはスキルド・ナーシング・フ ァシリティ、いわゆるスキルド・ナーシング・ホームといったものは含まれておりませ んし、いわゆる司法病床、アメリカ等では約万対2程度あるものも含まれておりません。 そういったことがありますから、そういったものを入れると万対13ぐらいになるという ことが言えると思いますし、OECDのデータだけで見られるといかがなものかと。  次は、実際のサンフランシスコの状況の実数を示したものです。  それから、次に、12ページに人員配置と1日当たりの費用比較もついでに出させてい ただきましたが、高岡病院というのはうちの病院ですが、サンフランシスコの州立の総 合病院、MHRFというのはサンフランシスコ市がつくったメンタルヘルス・リハビリ テーション・ファシリティというサブアキュートのいわゆるニュー施設です。それから、 クレストウッドというのはいわゆるスキルド・ナーシング・ホームです。ざっと比較し ていただいても、最後の費用比較、これはサンフランシスコ市が契約している値段です から、いわゆるHMOという保険の分とはまた違いますが、それでもはるかに高い。そ れから、スキルド・ナーシング・ファシリティというのは、実はこれは閉鎖の施設です。 精神科医は1名とありますが、これは嘱託でいいというような施設で、しかも閉鎖施設 です。だから、そういうものがカウントからは消えていってしまっている。日本の病床 は、当時の3対1看護ですから、費用がこんなに違うということがわかっていただけれ ばいいかと思います。  13ページに、その差ですが、アメリカとの比較ですが、沈静をすればスッと出してし まうということがありますし、日本の病床というものは、今までの社会復帰施設等がな かったことから、急性期、回復期、慢性期、認知症の病床であるとか、司法病床、また はケア付き居住施設などの複合的な機能を持たざるを得なかったということが言えると 思います。  また、アメリカの方での認知症などは精神病床とは、いわゆるスキルド・ナーシング・ ファシリティも老人の施設として、これはロックされた施設としてあるわけですが、そ ういったものはいわゆる精神病床とは違うということです。  それから、14ページですが、これは先ほどのOECDのデータの病床数の比較と対比 して見ていただければと思いますが、これはOECDのデータです。ですから、これは 精神障害者や薬物依存者の死亡率の年次経過をとったものですが、病床を減らしてきた 各国の死亡率がぐんぐん上がっているのに対して、病院にいるせいかどうかはあります が、一番下の日本は死亡率が非常に低い。こういうデータもあるということもお知りい ただきたい。  それから、17ページを見ていただければと思いますが、これは日精協のマスタープラ ンです。日精協で平成14年にマスタープラン調査というものを行いました。全病院での 調査で、精神症状、能力障害の2軸評価というものをやりました。それの精神症状評価、 能力障害評価はその次の18ページ、19ページに出ております。これでどういう状況に あるかということを調査をしましたし、この2軸評価というものは、後のニーズ調査に も用いられ、また、現在、障害テイトウ区分の医師の意見書にもこれは入れられている ところでございますけれども、こういう評価を行いました。  15ページに戻っていただければと思いますがた、そのときのマスタープランの調査で も、やはり統合失調症の人の長期在院と高齢化が進んでいるということがおわかりだろ うと思います。  それから、ちょっと飛ばしていただいて20ページにいっていただければと思います が、我々は、先ほどの2軸評価によって、ここに示しておりませんが、まだ自立支援法 ができていない当時ですが、精神症状1、2、また能力障害1、2の人たちは、恐らく 現存の社会福祉施設でも、あれば移行可能と。それから、2もしくは3の人たちについ ては、やはり24時間ケアできるような新たなそういった施設類型があればそちらへ移れ るのではないかというようなことも提案をしておりますし、そういうことによって入院 医療の機能分化、これはスタッフの変更もよって可能であろうと。そういう地域でのい ろいろなサポートのシステムも行っていこうということを提示したものであります。  それから、いろいろ飛びますが、16ページにいっていただければと思います。これは、 マスタープランでは2軸評価だけで行ったわけですけれども、それだけでは少し足りな いということで、昨年でしたか、すべての病院じゃないですけど、一部のプレリミナル なデータとして、身体合併症であるとか、ADLの分も調査をいたしまして、相当の入 院を要する合併症の人たちも、ADLの低下が非常に多くなっているということは示さ れております。  それから、21ページにお進みください。これは、前回のときもたしか長野委員から認 知症の問題も少し触れられておりましたけれども、やはり認知症の高齢者はこれから急 激な増加をすると予測されておりますし、21ページには自立との問題、それから、22 ページには精神症状・行動障害のために入院を要する人たちの将来予測というものが出 ております。  23ページに、認知症、いわゆる器質性精神障害も含んでの問題ですが、今、出口がな い、受け皿がない、統合失調症とやはり同じ問題が今起こってきていると言わざるを得 ません。以前は、在宅で、大家族性でそれぞれずっと看てこられた、そういう家族介護 というものは限界にきているということですし、核家族や共稼ぎ、老老介護という問題 が現在も起こっておりますし、いわゆる在宅、在宅という言葉が言われていますが、そ ういった在宅医療、介護支援体制がフイで、そういった家族で受けられる限界を超えて きている。更には、療養病床の削減と入所施設が不足してきていることから、BPSD が経過しても、次の受け皿がなかなか見つからないでとどまってしまうことがある。こ れは、精神の部分だけでなくて、社会全体としてこれはどう考えるべきかということは、 厚労省全体としても考えていただきたいというふうに思います。  それから、次のページですが、各事業の年間収支予想ということで、これは自立支援 法ができたときにちょっと計算を出したものですが、上の「GH」はグループホーム、 「CH」はケアホームの略ですが、これはほとんど 100%の利用があってもマイナスで ある。赤字で推移するということが1つは示されておりますし、25ページには、いわゆ る地域移行への経済的問題点ということで、いわゆる生活費として手元に残る金額はど れぐらいかということを比較したものです。年金2級の人で、地域生活でいくと医療費、 保険料、それから食費等、これはそこにある障害者支援施設の入所者などのかかる費用 として5万 8,000円と出ているのを用いたものですが、そうすると、生活費として残 るのは、たかだか3,500円しか残らないというような結果になります。  それから、障害者支援施設の入所者には、手元に2万 5,000円が残るような補てんが されているわけですけれども、グループホームとか、また地域で出る場合には、そうい った補てんは全くありませんから、そういう所得保証の問題がこれからも非常に大切に なる。  それから、最後に、地域移行支援を進めるためには、先ほどいろいろなデータを言っ ていましたけれども、家族が対応できにくい人たちを社会がどう対応するかというコン センサスをきちんと持っていることが必要ですし、そのための社会啓発というのはもち ろん必要不可欠です。看護学生とか臨床研修医などは参りますけれども、やはり当初は 精神障害者に対しても非常な不安感で、恐いという感じを持っていることは否めません が、そういう実習とか研修を通じて、やはり間違っていたということはそれぞれの声を 聞くところですし、実質の一般の人たちへのいろいろな啓発も、教育を含めて、これか ら非常に考えなければいけない問題というふうに思います。そうは言っても、やはり精 神障害者の場合、いろいろな社会的問題行動が出ることもないわけではありませんし、 そういった場合に、それを早く防ぐ迅速な危機介入というのがなければいけないと思い ます。それから、先ほど言いました、いろいろなコスト面も含めて、利用者、サービス 提供者ともに成り立つ制度整備が急務であるというふうに思います。  以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。それでは、最初の資料の1、2の説明と、ただ いまの資料5、6の御説明も含めまして、これから御質疑をお願いしたいと思います。 本来であれば、今日、事務局の方で全体のアウトラインを5つのポイントに分けて、そ れぞれに対する課題等も整理していただいているのですが、これを一つ一つそれに沿っ て御質疑いただくほどの時間は残念ながらないので、すべて今日の資料の1、2、4、 5、6を通して、どのようなところからでも結構でございますので、御意見、御質問を いただければと思います。どうぞ。 ○小川構成員 お二方のプレゼン、私もそのとおりだというふうに思って、非常に興味 深く聞かせていただきました。ありがとうございました。  私の方は、過去の資料で今朝ほどホームページから見つけてきたものを持ってきまし て、ちょっと読ませていただきますが、平成12年の公衆衛生審議会の附帯意見というも のが実はありまして、第4次医療法改正時の精神病床の設備・構造等に関する基準を検 討していた公衆衛生審議会が意見を出しておりまして、その中では4点ありまして、1 つ目が大学附属病院及び内科、いわゆる旧総合病院ですけれども、その医師の員数に関 して、入院患者48人に1人を標準とすることとされているが、この員数については、精 神病床の機能分化等のあり方とともに検討を行うこと。旧総合病院以外の精神病床の医 師の員数に関して、48人に1人という、これを精神病床の機能分化等のあり方とともに 検討を行うこと。そして、旧総合病院以外の精神病床の看護婦及び准看護婦の員数に関 して、当分の間、入院患者5人に1人以上とすることができるとされているが、この「当 分の間」については、人員配置の経過措置の5年間における人員の確保の状況等を踏ま えて検討すること。そして3つ目が、精神科医療の充実のためには、多くの医師が精神 医療分野に対する理解を深めることが重要であることから、臨床研修において、精神医 療分野に十分配慮するよう希望する。4点目が、精神病床の機能分野や長期入院患者の 療養のあり方を含め、21世紀の精神医療はどうあるべきかについて早急に検討を開始す ること。この4点が平成12年に精神病床の設備構造等に関する基準をある種、公衆衛生 審議会として了承するという、その中で附帯意見として付けられたものでございます。  この臨床研修以外の3点、いわゆる精神科特例というふうに言われている人員配置の 問題、あるいは「当分の間」ということで、精神科の看護職の配置も6対1ではなくて、 いわゆる特例ではなく、本則では4対1にするとか、そういうことが決められているに もかかわらず、なお「当分の間」という、ある種期限のない経過措置が設けられたり、 あるいは21世紀の精神医療のあるべき姿について検討を行うと。平成12年から、かれ これ8年近くたつわけですけれども、この間の議論というのは、もう10年、20年、30 年行われてきた議論ですよね。それが、なぜ今なお、前進した部分もありますけれども、 多くの部分が積み残されてきたというか、解決しないままにいたということですね。こ れは、やはりビジョンができて、前期・後期分けて、後期のビジョンを考えるというこ とですけれども、なぜこういった問題が今なお残されているのか。 そこをやはりきちん と議論をしなければ、幾らいいビジョンをつくっても、しょせん絵にかいた餅になって しまわないか。私はそこを危惧いたします。  例えば、大阪府の大和川病院事件の教訓を踏まえて、国でも退院促進事業の取組をき っかけとする、いわゆる精神医療オンブズマン制度ですが、そこへ大阪府は財政再建プ ログラムで廃止をするということが言われていて、現地の人たちは非常に困っているわ けですけれども、こういう問題も含めて、財源の問題をきちんと考えないと、幾らいい 退院促進事業とか、あるいは精神科の救急医療体制の整備とか言っても、これはなかな か難しい問題があるというのがまず1つ指摘をしたいと思います。  そしてあと、人員の問題もあるかと思います。いわゆる精神科だけが、ある種、我々 専門家が言う議論だと、精神障害の特性を踏まえてということで、何か精神障害だけは ちょっと別格だよと、そういう議論をしてきたのではないか。やはり私は、一般科と同 じような基準をベースにしながら、その上で特性というものを考えていくべきではない かというふうに思っていまして、一般病床で言えば、医師の配置は16対1とか、看護師 も旧表記で言うと3対1が医療法施行規則ではある種標準になっています。しかし、精 神科においては、総合病院以外では医師は48対1、看護の方は4対1、薬剤師もそうで すね。そういうある種精神が別格だという位置づけも問題ではないかというふうに思い ます。  また、医療法施行規則の第10条の第3号では、精神病患者または感染症患者をそれ ぞれ精神病室、または感染症病室でない病室に入院させないことという、そういうある 種、精神科の患者さんや感染症の方は精神病床あるいは感染症病床でしか入院できない かのような誤解を与える規定がまだ残されているわけですね。これは、歴史的な経過か ら言えば、シチャクカンチというものが起きないようなことでそういう規定が設けられ たとか、あるいは感染症の方は、感染症の予防医療法の中で、こういう感染症に対する 対応がされているわけですので、そういう医療法施行規則とか、そういうところで何か 特別視されている。そこは後からの議論になるかと思うのですけれども、差別や偏見と いうものにつながっていくことも何かあるのではないかというふうに思います。ですか ら、そういう意味で、何か精神科だけ特別扱いをするのではなくて、まず一般病床と同 じことでベースは考えて、その上で精神障害の特性とか、そこはやはり考えていく必要 性があるかというふうに思います。そのような意味では、薬剤師の配置とか、先ほども PSWの配置の話も出されましたけれども、そういったことも充実をさせていく、ある いは心理の資格制度もまだなかなか難しい状況にありますけれども、そういう問題も含 めて、箱ものより人材に焦点を当てた対策を考えていく必要性があるのかなと思ってい ます。  もちろん、精神病床の機能分化も、やはりそこは進めていく必要性があるかと思いま すけれども、基本はやはり人こそ大事だと思います。その人の問題で言いますと、精神 医療の大阪で取り組まれたオンブズマン制度の問題とか、そこのある種なくならないよ うな、むしろ全国に広がっていくような取組が必要だと思っておりますし、そのオンブ ズマン制度がなぜあれだけ取組が進んだのかというと、やはりユーザーの力が大きかっ たと思います。やはり専門家だけの議論になるとどうしても限界があるのではないか。 もっとユーザーが元気になるような、そしてユーザーが自ら活動する、そういう場をも っと広げていくことが必要なのかなと思っています。  私などもそうですけれども、悩み事だとか、何か困ったことがあると、まず専門家に は相談しませんよね。まず相談するのは、やはり友人だと思うんです。家族に対しても、 自分が困っているんだというのはなかなか言えませんよね。精神の方だと、専門家に相 談したり、家族に相談すると、じゃ、ちょっと入院しようかみたいな話になってしまい ますから。我々もそうだけれども、そういう日々のいろいろな悩み事なども含めて、ユ ーザーも恐らく友人に相談をする。そういう意味では、やはり仲間づくりをきちんと取 り組むことができるような、そういうことも考えないといけない。それもある種の人材 だと思うんです。チーム医療とか言われますけれども、チームの中心にユーザーがいる。 そういう何か取組が進められたらというふうに思っています。以上でございます。 ○樋口座長 ありがとうございました。ほかに。 ○田尾構成員 お二方の御発表と小川構成員の話、非常に共感できるところがあります。 その続きの話に入る前に、今日、私、1つお話ししておきたいと思いましたのは、精神 保健医療のあり方を考える上で、予防ということは非常に重要なことだというふうに思 っています。「メタボリックシンドローム」という言葉は、最近の厚労省のケア事業の 中で非常にヒットした用語だというふうに思っています。成人病についての予防の意識 がこのように一般化するということは、同じようなことが精神保健についても予防の意 識を一般市民に持ってもらうということは大変大切なことではないかというふうに思っ ています。  最近注目されていることで、アーリーインターベーションとか、アーリーサイコシス タービスというような方法がありますが、これは未治療の期間が短いほど、その予後が 良好だという実績に基づいて、早期の相談とか支援とか治療が大きな効果をもたらすと いうものです。イギリスとか、オーストラリアで実践がなされているのですけれども、 そういう国では、早期相談支援・治療に取り組んでいく、相談者も増えて、入院が減少 します。それから、医療費が減少します。自殺者も減少するという報告がされています。 これは先ほど御説明がなかったんですけれども、理解の深化の方の資料にもありました けれども、後に精神科の疾患をもつ方たちの中に、10代で75%が精神科的に何らかの症 状とか診断に該当するというデータが出ています。このアーリーインターベーションと いうのは、早期治療というばかりでなく、明らかな精神病の発症を抑えるということを 可能にします。発症予防ができれば、人生への病気の悪影響を減らすこともできますし、 その人たちが将来患者さんになる方たちを未然に防いで、どれほどその人たちの人生が 豊かにできるかということは想像にかたくないことですね。日本でも早急にそういった 取組を積極的に考えていただけないかなというふうに思っています。医療圏にアーリー インターベーションのチームを置いて、地域の保健所とか学校、それから保健センター、 クリニックなどと連携して、前駆症状を呈した人とか、初回の精神病様のエピソードを 持った人たちの相談支援・治療を重点的に行っていくという、そういうシステムを構築 してもらえないかなと。そういう構想を立ち上げてもらえないかなというふうに思いま す。  再度申し上げますけれども、この方法は入院率を下げ、医療コストを下げます。自殺 者も下がります。今、バラバラにその対策に追われているという現状が一挙に解消して いく。全くなくなるとは言いませんけれども、そういう可能性がある方法だというふう に思っています。今、精神病院の長期入院7万人の問題に終始していますけれども、こ れは重症化とか、慢性化した患者さんへの事後のアプローチなんです。今後の施策とし ては、こういう人たちをつくらない、そういう構造を日本の精神保健医療の中につくっ ていってほしい。そういう作業をしていっていただきたい。ぜひこれは御検討いただき たいというふうに思っています。  これは大きな話ですけれども、今、お三方の話にありましたけれども、特に長尾構成 員の話にありましたけれども、日本の精神科の患者さんの数から見ると、日本の医療に 使われている医療費は非常に安く抑えられているという現状があります。これは資料に もありますけれども、病床当たりの医師の数も少ないですし、精神保健福祉士などの業 務も医療費に算定されていない。精神科の重要なマンパワーが保健点数上、制限されて いるという状態にあります。これが全体的に医療費を安く抑えることの原因になってい ると思いますけれども、今後の方向としては、精神科に関わる医療費を、本来だったら 私はもっと上げてもらいたいというふうに思います。少なくとも、今よりはトータルで 下げない。そういうことを共通認識としておくことが大切だと思います。  前回、岩成さんがおっしゃっていましたけれども、精神科病院では、患者さんが減る ことで経営に悪影響が出るのではないかという考えが強くある。社会的入院の地域移行 で病院がつぶれるのではないかという不安が根底にあると思うんです。入院患者さんが 減っても、病床が削減されても、マンパワーを充実させて、密度の濃い医療を行うこと で医療費は下がらないという前提があれば、病院の考えも変わってくるのではないかと いうふうに思われます。ただでさえ低い医療費をこれ以上下げずに、外来治療への転嫁 なども含めてですけれども、もっと充実した医療内容になっていくというような措置を 講じていただきたい。  それから、これも長尾構成員の資料にありましたけれども、現在は精神病床の中で日 常の治療が行われていますね。これが果たして本来妥当なことなのかどうか。今日は老 健局の方も来ていらっしゃるというふうに聞いていますけれども、つまり、本来もう少 しあるべき姿というのがあるのではないか。精神病床が全体では減らずに、どんどん認 知症の病床に転嫁していくということが起こってきているように思います。これは、病 院の病床削減への抵抗があるために、 一般精神病床がどんどん認知症の病床に変わって いく。これは、本来あるべき姿ではないというふうに思います。認知症の中で、本当に 精神科の病床を必要とする人たちをきちんと選択して、空きベッドを安易に認知症病棟 に転嫁していくという流れは食い止めていただきたいというふうに思っています。  それから、最後ですけれども、日本の精神科病床は地域間格差が非常にあります。先 日の資料でも社会的入院の数で、厚労省の7万何がしに対して地方から上がってきた数 字がずいぶん低いという現象がありましたけれども、数字の押し問答をしても仕方ない ですが、病床率の極めて高い地域には特別な対策を何か考えるような、促すような働き かけがあってもいいのではないかというふうに考えます。この狭い日本の中で、 どこに 生まれたかで、病院で人生を過ごすか、地域で生きられるかというような、人生が大き く変わるようなことがあってはならないことだというふうに考えています。  長くなりましたが、以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。 ○山根構成員 3人の構成員の方からの御意見とほぼ重なりますが、共通していますの は、従来のいろいろな施設の機能の限界がきているということです。例えばデイ・ケア は、まだ社会資源がほとんどなかったころに、いかに再燃・再発を予防するかというこ とで設置されましたけれども、現在、そこにいるスタッフ、例えば小規模であれば医師 を含めてスタッフが3名で30名、大規模であれば、医師を含めて4名のフタッフで50 名の患者さんを診るということになります。これは当時、居場所を提供することが求め られていた時代はよかったのですが、上ノ山構成員が言われたように、地域に対して社 会資源とつなぐということになりますと、医師のほとんどはデイ・ケアのプログラムに 関わっておられませんので、1人のケースワーカーが外に出たら、3名で50名診ている ときに2名で50名診なければいけないということになります。これで果たして本当にデ イ・ケアとして機能するのかどうかという問題が生じます。 小規模でしたら、残された 1名で30名を診るという状況ですね。社会事情が変わり、いろいろな機能を変えなけれ ばいけない時期なのに、従来の基準がそのままになっていることの問題です。精神保健 センターも、初期には医療が充実していなかった県から始まったというふうに聞いてお りますけれども、現在、利用者とか相談の件数が変わっていますように、今、精神保健 センターの機能は大きく変えなければいけない時期だと思います。  例えば、田尾構成員が言われたような早期の対策を、そうした施設を利用してともか く都道府県1つでもいいから始めるというようなことをする。新しいものをすぐつくる というのは大変ですが、既存の今の病院を含めて、施設の役割の転換は可能です。これ は、認知症の件もそうです。既存の機能のまま中身だけ置きかえているものだから、マ ンパワーも生かせない、構造も生かせないということが起きています。わずか5年の間 にきちんとしようとすると、新しい施設、新しいシステムも大事ですけれども、まず既 存の施設をきちんと整備をし、そこのマンパワーをいかにうまく再配分するかという、 改革ビジョンの最初にうたわれていたことを、もっと具体的に検討すべき時期ではない かと思っています。 ○安田構成員 田尾さんと同じことを言おうと思っていたのですけれども、1つは予防 のことですが、私も、たぶん田尾さんと同じ文献を見たと思うのですが、イギリスとか、 オーストラリアの方で早期相談や治療がかなり効果を上げていると。それで、ぜひ早期 治療だけじゃなくて、予防というところまで突っ込んだ、しかも医療や福祉だけじゃな くて、きっと学校ですとか、あるいは職場、そういった福祉医療以外のところもひっく るめた、政府全体で国民運動になるような、そういう予防の取組をやれないかというふ うに思っています。  それともう1つ、認知症の関係ですけれども、先日、介護付き有料老人ホームの取材 をしたときに、やはりすごく行動障害が重くなると、もう介護付き有料老人ホームでは 看れなくなって、大体どこに行くのかなと調べてみると、多くが精神科病院に行くとい う事例がたくさん見られました。それで、1つは、どのぐらいの行動障害になったら病 院がいいのか、あるいは、福祉施設の方でケアした方がいいのか。そこの境目が私もわ かりませんが、1つは、特養や有料老人ホーム、老健も含むのか、グループホームもそ うですけど、そういった高齢者の福祉の施設、居宅系のサービス、そういうところの実 力、ケア技術の向というのも一方で考えなければいけないんじゃないかというふうに思 っています。  以上です。 ○広田構成員 お話を伺いまして、まず精神科救急のお話ですけど、資料1の43ページ、 いわゆる診療所にする勤務する精神保健指定医の救急医療機関での診療協力体制の構築 というふうに出ているわけです。私は神奈川県に住んでいまして、精神科救急の担い手 が警察だということを10年ぐらい前に知りまして、なぜ病気を警察が担っているんだと。 救急隊はどうなっているんだろうと思って、救急課にお尋ねしたら、実は救急隊も行き 先がなくて困っているんですよということで、誰もが安心して利用できる24時間精神科 救急医療を推進する会をつくったんです。それで、記者会見を打ち、 神奈川県議会、横 浜市議会、川崎市議会に自費でつくった冊子を出して、それで結果的に、多くの全国の 仲間は任意入院だけでいきたいという考え方ですが、私は、救急隊の現場のこと、そし て警察の現場のこと、それから自分が受ける相談などを総合すると、本人の人権を守る ために任意入院だけでは無理だろうということを考えます。  そういう中で、精神科救急の精神保健指定医者の確保が実に困難だということで、い わゆる救急の整備が遅れていましたが、神奈川県では14年度から、先に警察通報に基づ く24時間の救急が始まり、去年の10月から365日24時間、いわゆる普通のソフト救急 がシステムとして始まりました。しかし、ベッドは足りない。それで、原因は何かとい いますと、1つは、精神保健指定医の不足なんです。これを、今日、上ノ山構成員がお いでになっていますが、ぜひ診療所とかクリニックが協力などという手温いことを言っ ているのではなくて、厚生労働省自らが年間何十時間以上は精神保健指定医は病院の精 神科救急システムに参画するというふうに打ち出さない限り、抜本的な解決はできない というふうに思っています。 それが救急の1点目です。  2点目は、諸外国も行っていますが、日本の精神科救急はソフト救急、いわゆる普通 の救急で、本人が入院を希望しているにもかかわらず、個室のような保護室という体制 なんです。さっきいみじくも小川構成員が、ほかの医療と同じにすることが精神障害者 の正しい理解だというお話をされていましたが、ほかの救急と同じように、私がお腹が 痛くなって救急車で行った先の戸塚記念病院で大部屋でしたから、時間帯によっては、 いわゆる大部屋の救急でいいんじゃないかという、ソフト救急の患者のニーズを持って いて、救急車と一緒に私が乗って行くこともありますが、そういうことが1点です。  それから、1の20ページ、入院形態のところで、任意入院と医療保護入院と措置入 院とありますね。さっき長尾先生は、いわゆる退院できないのは家族の負担が大変だか らというお話をされていたけれども、いつか日精協自らが、それもそうだけど、やはり 病院経営上、退院させなかったんだよ、と言ってほしいと。それは、患者を退院させる 前に次の入院患者をキープしてから退院させてくださいよということを経営者から言わ れたという医者やSPWの話をたくさん聞いていますから、日精協自らがそういうこと をきちんと、国の施策のツケではあるけれども、自己反省していただく日がくるのかこ ないのか、期待したいと思っています。そういうのははっきりした方がいいんですよ。 あなたが言ったらクビが飛んでしまうけど。  それで、まさに医療保護入院の保護者が家族だから出れないという実態がありますよ ね。そうすると、さっき私がお話ししたように、多くの仲間は任意入院だけでいきたい と言っているけれども、しかし、私は現実を見たときに、ほかの制度も必要でしょうと。 そのときに、今日は湖南市長さんがお見えになっているけれども、やはり市町村長が因 果関係のない保護者になっていただきたい。家族は因果関係があり過ぎる。私も20年間 のカルテの開示を先日しました。そうしましたら、うちの母親は愚痴っぽい人なんです けど、母親が愚痴っぽいということがカルテに書いてありました。それから、私の了解 もなしに作業所の職員が主治医のところに私の話を聞きに行っていたとか、そういうカ ルテの開示が出ました。そういう意味も含めると、やはり2つ目には、医療保護者を市 町村長に変えていただくぐらいの精神保健福祉法の抜本的改革が必要だということにな ると思います。  それから、一般と救急医療の連携というのが平成19年7月20日に通達として出てい るわけです。これは救急救命士の話です。いわゆる精神疾患を抱えた人をほかの科に連 れて行くと、その後、その科が診て、あとはあなたたちがどうにかしてということで、 救急隊が現場でとても困っていると。だから、ぜひ救急救命士として他科と精神科との 連携を厚生労働省で言ってほしいという現場の声です。それが1点です。  それから、さっき田尾さんも、安田さんもおっしゃった予防の話ですけれども、私は、 現在の精神疾患を治せない精神医療に予防まで委ねるのかなと。まずはそれが1点です。  たまたま昨日、ある新聞社の人に障害者部会が終わって居酒屋に連れて行ってもらっ たんですけど、そこのママさんが、私が精神科の患者だと名乗ったら、私もうつ病にな ったことがあるのということで、回復した話をここですると長くなりますからはしょり ますが、例えば、私がフィットネスクラブに行くようになってから、膝が痛いといって 整形に行ったら、レンドゲンを撮って、あなたは何とか症になっているので、左だけじ ゃなくて、右も痛くなるよというふうに言われて、正座もだめ、あぐらもだめと言われ たんですけど、たまたまピップエレキバンで痛みが取れて、それでフィットネスクラブ の水中スクワットというのをやり始めました。今、1,000回やっているんですけど、そ うしたら正座もできるし、あぐらも組めるし、医療費の抑制にもなっている。そういう ことだから、いわゆる精神疾患の予防も何も、精神医療にそんなに委ねるのではなくて、 カラオケに1人で行って大声で歌うとか、例えば「誰々のばかやろう」と叫んでもいい わけですし、そういういろいろな面のストレスが発散するということと、例えばうつ病 などでもそうですが、眠れないところから始まるとすれば、国民的に一大転嫁をしよう となれば、私、「パトロール実施中」というのを下げて歩いていて、夜回り相談員をや っているんですけど、そのときにみんなに言うのは、安心・安全・安眠よと。これも10 歳の子どもから80代の大人まで、安心・安全・安眠よと、これだけ言って歩くだけで、 ただで啓発して歩いているわけですよ。そういう意味で、予防というのは大々的に言う 必要があるけれども、何もかもが精神医療とか精神保健に持っていくのではなくて、い ろいろなところでストレスを発散する。ここに来ている厚生労働省の方々も大変だと思 います。これだけの膨大な資料を出して、説明して、何を叩かれるかわからないという ことも考えながら、ストレスをいっぱい抱えている。そういう人が帰りにちょっとサウ ナに寄って行くとか、そういういろいろな形のストレスの抜き方を国民的な形でやって いかなければいけないというふうに私は思います。  それからもう1つ、前回、伊澤構成員が、こういう検討会をいわゆる都道府県でもつ くった方がいいとおっしゃったんですけど、私、たまたま神奈川の精神保健福祉審議会 の委員なんです。そうしますと、年に1回、3月28日に開かれたんですよ。そうすると、 まるで年度消化をするように、その年度の3日前に1回やっているわけです。ですから、 実際に必要なものはつくる。機能するものは。だから、何でもかんでもつくればいいと いうのじゃなくて、例えば自立支援法によって3障害になったということで、神奈川県 障害者社会参加推進センター、社会参加推進協議会というものができたんですけど、こ れも行ってみると本当に必要な会なのかなというようなことがありますから、何でもか んでもつくればいいんじゃないというふうに私は思っています。 お金があるこの国なら ばいいけれども、世界で5番目に平和な国なんだけど、日本のマスコミは自国に自虐的 で、何か叩き過ぎるきらいがあると思うんですけど、でも、現実には、この国は 846兆 円の赤字で、私が前回、委員で出たときの資料は833兆円の赤字だったのに、今は846 兆円で、子どもたちに会うと、「ちょっとあんたたち、デモかけなよ。あんたたち、ツ ケが大変よ」と、そういうふうに笑い話で出るぐらいのこの国ですから、みんなでメン タルヘルスに気をつけて、安心・安全・安眠でよく寝て、そして、さっきの小川構成員 の話じゃないけど、ここに抜けています。精神医療の体系の3ページ目です。図があり ますが、精神障害者が真ん中にいて、これは医療も福祉も保健も全部同じですけど、ピ アサポートというのがないんです。「ピア」というのは「仲間」ですから、仲間同士の 支え合いということで、これがとても大事なところにあります。  ちょっと話が長くなりますが、平成18年3月1日、8月1日、厚生労働省社会・援 護局障害保健福祉部長から都道府県知事、指定都市市長、中核市市長にあてた「地域生 活支援事業の実施について」というふうなものがあります。それを受けて、私、たまた ま神奈川で当事者活動をやっていて、ピアカウンセリング事業というのを知っています が、ピアサポートという項目をこの中に入れていただきたいんです。  それと、都道府県は、いわゆる団体などというふうに書いてあるのですが、それが市 町村に下りてくると、何とか法人などと書いてありますから、それも団体などというふ うな形で当事者団体、当事者組織、当事者グループ、いろいろな言い方がありますが、 身近で使いやすいような形で当事者が生き生きと暮せるようなところに制度が使えると いいと思います。  ちょっと長くなりましたが、ありがとうございました。 ○樋口座長 どうもありがとうございました。  今日は一応4時半までの予定になっていて、既に1番目の議題でここまできています。 もう1つ、(2)の「精神疾患に関する理解の深化について」というのがありまして、そう いうことを考えると、時間配分としてはどうですか。 今日、(2)ができなくてもいいかど うか。今の第1課題は大変重要だし、まだ御意見がたくさんあるようでございますので、 もし(2)を次回回しにすることが許されれば、引き続き今の御意見をいただこうと思いま すか、よろしいですか。 ○福島精神・障害保健課長 それで結構でございます。 ○樋口座長 わかりました。では、たっぷり時間がございますので、どうぞ。 ○長野構成員 今、地域精神科医療の現場でいろいろなことを押し進めながら行き詰ま って、どうしても気になる点を2点、3点述べさせていただきます。  小川構成員の言われた、過去にも問題として取り上げられたり、改革ビジョンの中で もかなり具体的に書かれたことが、現場で押し進めようとしたときに、どうしても進め られないということが幾つか出てきていると思うのです。施策にはなっているけれども、 実際の現場では回らない事や、施策になっておらずそのままにされているというような 問題がたくさんある中で、どうしても気になっている点挙げてみたいと思います。  まず1点は、認知症のこと。これは最近の事ですが、認知症の話題がさっきから出て いるので、長尾先生もおっしゃられていましたけれども、「認知症の方ができるだけ病 院に入院しなくてよくする、かつ入院された方ができるだけ地域に帰っていだたく」と いう中で、老健局の認知症サポート医の事業が私はとてもいい事業だなと思っています。 一番初めの名古屋の研修も参加をさせていただいて、20何番目という認定証もいただい ているのです。当時、研修内容はもう少し見直すべきだと思いましたが、施策の理念は とてもいいと思います。ただ、その後、実は施策の中でほとんど(サポート医に対する) 沙汰がないような状況があるんじゃないかと考えています。認知症サポーターの方たち とも一緒に活動しながら地域でやらせていただいていく中で、一番感じているのは、認 知症サポート医という医療の事業でありながら、福祉の中に位置づけられていて、 これ は個人的には好きなんですけれども、実際は福祉の中でボランティアチックに、やりた い医師、必要と感じる医師がやればとても効果的という状況を脱していないんじゃない かと思います。やはり認知症サポート医ということで、地域の中できちんと医療として 位置づけをしていくのであれば、これは診療報酬も含めて、医療の中にきちんとした位 置づけをしながら広めていくということが必要かなというふうに個人的には感じます。 地域でとても動きにくいというか、サポート医としてやりにくいという現実があります。  また、かかりつけ医の認知症対応向上研修に関しても、実際に地域でポツポツ行われ てきているのは、薬品会社さんがマネジメントをしてというようなケースが多いような 気がしまして、そうすると、なかなか一般化していかないと感じています。やはり、医 療の中できちんと取り組んでいかないと絵に描いた餅になるのではないかと思います。 これが1点。  もう1つ、機能分化に関して。機能分化の促進ということが言われて久しいのですけ れども、現場で機能分化を進めようとして行き詰まっている点を含めて話させていただ きます。資料の中で、3ヶ月以内の入院の方が使われている精神病床が約5万床とでて います。1ヶ月以内が2.何万床、3ヶ月以内が2.何万床というような、資料1の15ペ ージでしょうか、2.5万床、2.8万床、5.3万床というような数字が出てきているのです けれども、それが、その後の病棟の整備の推移という26ページのところで、今、急性期 病棟が9,500ぐらいの整備にとどまっている。3ヶ月以内の方が5万床ぐらい精神科病 床を使っている計算の中で、 9,500床ぐらいの整備にとどまっている。4万床にあたる 急性期の患者さんは急性期医療のサービスを十分に受けられていないと言えると思いま す。これからの医療の質の向上には、機能分化、特に急性期病棟はやはり必要だと思う のですが、機能分化が進まない要因があるんじゃないかと思います。この分析が要るん じゃないかと思います。  私が現場でやっていて行き詰まっている問題というのは、1つは、小さな病院になっ たときに病棟単位の機能分化ができない。10床ぐらいの急性期病棟が欲しいけれども、 50床まとまらないと、40床まとまらないとつくれないという問題があります。それは小 さな病院の問題だけではなく、大きな350床ぐらいの病院を2ヶ所、私の勤める法人は 持つのですが、片方は急性奇病等をつくれたのですが、片方はつくれない状況です。 行き詰まっているのは、例えば8病棟あったときに、1病棟を急性期にしたときに、そ の基準を生み出すために、患者さんの入院の入口を全部その病棟にしなければいけない という問題があって、統合失調症の興奮状態の方も、鬱の方も同じ病棟で受け入れなけ ればならないのです。確かに病院全体では急性奇病等がエンジンになって、かなり退院 促進が進むという点ではいいのですが、実際は入退院のない病棟が出てきてしまう。そ の入退院のない病棟の医療の質がどうなのかという検討が要ると思うんです。 急性期の ところは回転をしているけれども、早く帰っていかれるけれども、ほかの病棟は…とい う問題は必ず出てきているような気がしていて、急性期の機能分化のみで本当に退院促 進ができるかというと疑問です。確かに急性期病棟は長期の入院患者さんを新たにでき るだけつくり出さないという点ではいいと思うんですけど、そういう問題が現場で私た ちの病院では起きている。全国の病院の事はわからないですが、私たちの現場では起き てきている。その状況を打破するのに、例えば病棟の10床分は急性期で、とにかくどの 病棟にあっても、初めては手厚く医療を提供でき、早期退院される。新しく入院されて きた患者さんが退院されていくのを見て、私も退院したいと言う長期入院の方も出てく ることも多々ありますし、そういう機能分化のやり方もできるという選択肢があるとす るならば、逆に10床単位で、医療観察法で5床とかの小規格病棟ができ始めてきたとい うこともお伺いしていますので、小規格病棟的にとにかく急性期の患者さんは手厚くや れるんだというところが、各病棟に部分ユニットであったり、小規格のようにできるよ うな仕組みあるといいと思います。改革ビジョンに「平成18年までに病床、病室単位 の機能分化を実現する」と書かれながら、なかなか検討されていない。モデルもできて きていないんだと思うのですが、どの地域の患者さんにとっても、規模にかかわらずど の病院にとっても必要なことじゃないかというふうに思ったりしています。  あと1点、精神科医療の分野で人材の確保が本当にとても難しくはなってきているの ですけれども、改革ビジョンの中で人材の再教育・再配置ということが書かれて、これ はとても大事なことだなと考えています。病棟でずっと勤務されていた方が多いと思う のですが、患者さんが地域移行されるにしたがって、病棟スタッフも地域に出て支える 役割になっていく。この再教育・再配置というのはとても大切なことだと思って実践を しています。その中で、一点行き詰まっているのが、先ほどの資料1の65ページに准看 の方が3万7,000人、看護師の方が4万2,000人という、かなりの准看の方が実は精神 医療の中にいらっしゃるということです。この准看の方々の活用方法を地域に向けて考 えたときに、准看の方の病院からの訪問看護が認められていないんです。病院の中にい るんじゃなくて、退院された方を病棟のスタッフが地域でも支えてくださいという仕組 みをつくろうとしたときに、准看の方が単独で訪問看護に行けないという状況、ステー ションからは認められているのですが、病院の中から再配置ということを考えていけば、 准看の方の活用はしっかり考えても悪くないのかなということを現場で感じています。  以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。 ○大塚構成員 今日はデータがたくさんありまして、頭の整理に今苦労しているところ ですが、1回目にお願いいたしました退院先の内訳データをお示しいただきましてあり がとうございました。やはり思ったとおり、転院者の多さと、長期の方は死亡が多いと いう、改めてショッキングな内容を確認できました。できれば転院の内訳がもう少し知 りたいというふうに思います。実は今日も出てきた合併症問題との兼ね合いで転院内容 の内訳についてもう少し追跡できるとありがたいというふうに思っています。  たくさんの課題があってわからなくなると、私は必ず原点に戻りたいと思っています。 小川構成員もおっしゃったように、私が考える原点としては、やはり誰でも、どこでも、 身近なところで、一番しんどいときに、医療が必要なときにかかれる医療のあり方とい うのが、精神科だけではなく必要だと思っています。今実際に一般科医療体制の中でも、 かかりつけ医体制など、いろいろなことがうたわれていて、一方で医療崩壊と言われ、 なかなか難しいところはあるかと思うのですが、特に精神科医療につきましては、ユー ザーの皆さんの元気を奪いかねないような遠方まで通って行かなければならないとか、 地元のふだんの生活圏域と入院先が大分離れたところになってしまうという地域偏在の 問題は、大変に大きな課題であるというふうに認識しています。  いつもOECDのデータが出されていまして、我が国はこれをいつになったら遅れの 確認資料として使わなくなるようになれるのだろうかと思いますが、国内の地域格差の 問題にももう少し目を向けたいと思っていまして、あえてお出しになっていないという ことはないと思うのですが、地域間の精神科医療の状況について、できればデータをお 示しいただきたいと思っています。先ほど広田委員から都道府県の審査機関をつくって も形骸化しては意味がないというお話がありましたが、地域ごとに、そこの医療機関の 特性をきちんと見据え、そこの場所の地理的物理的問題であるのか、地域の文化風土の 問題であるのか、医療従事者の質とか量の問題であるのか、地域資源の不足等々の問題 であるのかというように、地域診断というか、地域ごとの精神医療をよくしていく、も しくは地域移行を進めていく、地域生活支援を進めるための医療のあり方を考える、そ ういう診断(アセスメント)のためのデータをそろえていただいて、地域ごとにしっか り検討するということをしないと、 大きな話で終わってしまうのではなかろうかという ふうに思っています。  それは同時に、次回の普及啓発の問題とも関連すると思います。やはりハンセン病回 復者の方とか、自死遺族の方が最近お顔をお出しになれるようになった。やはり精神科 の病気も普通の病気ですということを普及啓発しましょうという目標がうたわれている わけですから、隠さなくていいような、安心して受け入れられるようなことを進めてい くことと、この医療にかかれる体制というのは非常に密接に関連していると思っていま す。  もう1つは、相談支援のことですが、官民の関係ですとか、行政内の相談機関の役割 分担が論点で上がっていましたが、私自身、大変痛い思いをしていまして、8年前にな りますが、東京の新聞各社で報道された事件ですが、20病院たらい回しになってしまい、 母親を殺害してしまったという方の事件がありました。2日間にわたって相談の電話を ずっとかけていて、重複したところもあるので実際には20病院ということはないのです が、それでも十数病院に相談をして、認知症のお母さんの入院先が確保できずに、息子 さんがお母様を殺害してしまったという事件です。  多分、私自身が2日目の最後か最後から2番目ぐらいに相談を受けた人間なんです。 もう時間も夕方で、病院も満床で受けられなかったというシステムの問題はあるのです が、お顔が見えない中、御相談されている本人が大変疲弊をして混乱していて、御本人 の発する情報ももう事実ではなくなりかけていた中で、私どもも電話だけではなかなか 事情がつかめない中で、どうしても耳にこびりついて離れない「断るということは死ね ということですね」という大変強烈な言葉があり、それでもどうにもしようがなくて、 保健所と福祉事務所にすぐフォローアップを頼んだのですが、相談の対象に上がってい ない、今継続相談対象者でもないし、お名前も引っかかっていませんということで、ど こも追跡ができないという形になりました。私は、その大変痛い思いをした結果、すぐ その後の裁判の結果とか、警察の調査とか、いろいろ追いかけまして、病院の受診の相 談体制をフォローしました。その結果わかったのは、やはり民間病院にはそれぞれのシ ステムがあるということです。 例えば、うちの病院は新規患者さんの相談は何曜日だけ ですとか、午前中だけですとか、午後3時までですとか、それから、中には、そういう 相談の窓口トリアージュが受付事務、医事課レベルで終わってしまって、相談人材まで たどり着いていないとか、それから電話ではなくて、もしかしたら時間外でも出向いて 来られて対面してしまえば多分追い返せないから、きちんとそれなりに対応ができたか もしれないとか、そこにいろいろな課題が見えました。  でも、恐らくそれは民間病院の各システムの限界であろうというふうにも思いました。 そのときに、追跡調査ができない、追跡フォローができない民間の相談支援の限界を考 えると、もう少し行政のところで何らかのことができないだろうかというふうに思った のが1点です。  その中で、最近、自立支援法になって、保健所の機能として、障害者の福祉のことは 市町村でやってねとか、市町村はやはり医療がわからないから保健所でやってね」とか というお話が出てきているなど、なかなか連携がうまくいっていません。それから、保 健所や精神保健福祉センターに精神保健の専従の相談ができる人材が全都道府県まちま ちです。精神保健福祉センターですら、半数のセンターに精神保健福祉士などが配置さ れていないところもあるというふうに聞いています。先ほど市町村や保健所の相談件数 のデータは出ておりましたが、これも全国一括のものでしたが、都道府県ごと、それか ら配置されている相談の人材の実態がどうであるか。そのことによって、件数とか中身 がどうであるのかということをきちんと検証できるデータをお示しいただきたいという のが1点です。  もう1つは、今の病院は自分のお客さんにならないと相談が手厚くできません。少な くとも、私がいたときはそうでした。先ほどの事例も実は御家族だったわけです。 です から、御家族の支援も含めた、必ずしも自分の病院のお客さんにならないかもしれない 医療受診相談に診療報酬等々の何か手だてができないものだろうかということは1つ考 えます。   もう1つは、予防を期待するのは難しいのではないかという声もありましたが、普 及啓発があって、予防があって、介入があって、退院支援、地域移行支援があって、そ の後も地域生活支援があるというふうに循環していると思うんです。そうすると、どこ でその方のケアが始まるかは、その人の事例によって違ってくると思います。最初に出 会う機関がどこであるか。そのいずれもが、医療も福祉も視野に入れた相談の力量があ るような体制。そして、最終的には、患者さんが自分の使いたい医療機関を選べるため の、余り一機関の利害だけでというようなことではない、中立公平な医療も含む相談体 制というのがどこかに確立できないだろうかということは思います。  それから、当該団体の私が言うのは大変口はばったいのですが、上ノ山先生からも各 委員からもPSWの配置のお話が出ました。そういう言い方をするのも変ですが、診療 報酬が余りついていないにもかかわらず、こうやって少しずつ伸びを示しているという ことは、やはり調整とか、コーディネートといったところの需要が多いのであろうとい うふうに思います。前回、広田委員に厳しい御指摘をいただきまして、質の担保はいろ いろ考えなければいけないとは思いますが、ぜひそういう福祉や相談支援人材の配置の ことも医療の中にきちんと組み込んでいただければというふうに考える次第です。  以上です。 ○末安構成員 今日は医療のことを考えることがテーマですので、1点、提案致します。 今日、資料をいただいた中でも、保健所のところでは、10ページとか、11ページに「困 難事例」と書いてあります。次回に回された資料の中に、病床の機能分化のイメージと いうところがあるのですけれども、そこは「重度」という表記がありまして、今日出し ていただいたデータですと、17ページのところの、ますます高齢者が増えていく。そし て、21ページのところで、先ほど来から話があります、長期化する人は死亡退院の傾向 がかなり強く見てとれるということを考えますと、精神障害の方は本当に「重症」にな ると退院できないのか、あるいは、どうしても繰り返しの入院になってしまうというこ とは避けられないことなのかという、その評価をこういう場所で検討するべきではない かと思います。17ページのところですけれども、高齢化していくことはいわば人口動態 的に自然なことだと片づけてしまうのか。あるいは、現時点では、疾病構造的にこれは やむを得ないことだと判断してしまわざるを得ないのかということを1つのテーマにし ていきたいと思っております。  それは、先ほどもどなたかからお話がありましたけれども、精神科の中で行われてい る医療がどれぐらいきめ細かく、疾病を特定し、治療方針を立てて、適切な看護とその 後のソーシャルワーク、あるいは作業療法というようなことが、1つ1つを丁寧にどれ ぐらい行われているのかというような調査は行われていない。つまり患者さんの病状に 関しては、いろいろな資料が次々出てくるのですけれども、どういう治療が行われてい るかということに対しての評価は、どこで、いつ、何を行っているのだろうかというこ とが不明で疑問として残るわけです。  といいますのも、政府の委員会で、平成15年の「精神病床等に関する検討会」で「今 後の施策体系のあり方」というまとめをしているのですけれども、その中に「社会復帰 リハの強化と重度精神障害者の病状に応じた医療環境の確保」というまとめをしておら れます。その中で、入院患者さんのうち、医療ニーズが減るにもかかわらず、そのまま 在院長期化の可能性の高い人に対しては、医療サポートに限らず、地域生活を送るため の総合的なサポートを提供することで、在院長期化を防いで通院を促進させることが可 能になると1番目に書いてあります。2番目に、退院に向けたサポートが必要な患者さ んについては、その患者像を明確にしつつ、1年を目途に地域ケアに円滑に移行できる ことを目指し、病院外の地域資源、ここが今日ずっとお話が出ていることの中にピッタ リくるのですけれども、医療的支援、福祉的支援、当事者同士の支え合いが必要である と書いてあるんです。今日ここにオンブズマンの話から患者さん同士が支え合っていく ということの重要性の話が出ていましたけれども、それを活用した社会復帰リハが専門 的・集中的に行われるような体制の構築を図るべきであるとなっています。  そして、今日は検討されないようですが、機能分化のイメージという、ここにも「重 度療養群」というのが出てきます。そのほかのところにも出てくるわけですけれども、 あるいは回復期リハと書いてあるのですけれども、 それは精神科においてはどこを指し ているのか。回復期リハビリテーションとみんなでよく言うんですけど、それはどうい う患者さんのことを言っていらして、その人たちに対する目標、つまり「重度化」しな いための、具体的な入院当初の集中的な治療で退院できる方については、多少は再発と かあるかもしれませんけれども、短期間で回復されている方はおられる。その意味では、 成果がある。しかし、成果に結びついていない部分について、政策的にはどのように進 めていくべきかということをここではっきり持ちたい。今日の資料1の15ページに動態 の年次推移というのがあるのですけれども、これを見ます、左側の1ヶ月、それから3 ヶ月、1年未満の患者さんたちは、年々退院者が増えています。ところが、1年以上に なっていくと、下の矢印を見ればわかりますけど、年々減っているんです。また逆に、 死亡退院ないしは転院が増えている。これを放置していていいのか。今の時点で総括す るとして、5年間やってきたことを踏まえて、新しい5年間をどうやっていくかという ときに、これだけはっきりしたデータがある。これは何が問題になっているのか。重度 の患者さんはやはり長期化するんだ。 そこはやむを得ないということで社会的に判断し てしまうのか。あるいは政策的に判断してしまうのか。そうじゃない、何かできること があるはずだと考えるか、です。例えば、退院促進支援事業の報告とか、この後、たぶ んこの検討会で出てくると思うのですけれども、30年、40年入院していた方で、単身で 家族もいないというような方が、いろいろな支えで、病院の支えもありますし、地域の 支えもありますし、自立支援員さんも、医療従事者で医師でやっていらっしゃる方もあ れば、民生委員さんを昔やっていらして、今は70を越えたような自立支援員さんが実際 に支えていらっしゃる。自分の年と同じぐらいの患者さんの退院を支えていらっしゃる という現実もあって、そういうことからは、本当に我々はこういう患者さんを「重度」 とか、「治療抵抗性が強い」とか、そういう括り方でそのままにしておいていいのだろ うかということを、今日だけのテーマにはならないと思いますけれども考えていかなく てはならない。それは基本的にはまず治療をどうするかということがありますので、先 ほどから出ていますように、小規格の治療ユニットを認めるとか、介護保険などで試み られて非常に成果が上がっているような仕組み、同じ方法じゃなくて、仕組みを精神科 医療の中にも導入する。先ほど准看護師さんの医療人材の適正配置の問題とか、あるい は集中的な配置の問題がありましたけど、医療の能力そのものに対しても考えなければ いけない。もしくは、以前にも私一度言いましたけど、地域での救急医療の充実も大事 ですけれども、精神科といっても、 みんなそれぞれが同じ力を持っているとは言い切れ ないので、うちの病院の専門は何、この地域においてこの病院はどういうことを担って もらおうということを、国が決めるというよりは、たぶん都道府県が主導して考えてい くというようなことも、小さいユニットだけがたくさんできればいいということじゃな くて、そこに何を期待するのかということを今後テーマの1つにぜひしていきたいとい うふうに私は思っております。 ○佐藤構成員 先ほど小川構成員の方から、平成12年の公衆衛生審議会の精神科病院に おける医師の人員配置の課題が全然解決されていないということが挙げられましたけれ ども、その中で、大学病院、旧規定の総合病院は一応16対1でいいということになった のですけれども、このバックアップといいましょうか、手当てが実際にはなされていな いんですね。総合病院の中で経営会議に出てみるとわかるのですけれども、患者1人当 たりから得られる入院収入は、精神科ですと一般科の3分の1なんです。これは、ちょ うど人員配置が48対1といいましょうか、3分の1というところと大体合致しているの ですけれども、これが総合病院、大学病院は16対1になったんですけれども、相変わら ず1人当たりの診療収入は3分の1のままなんですね。今回、救急合併症に援助という ことで若干診療報酬改定で頭出ししていただきましてありがとうございました。そうい うことはありますけれども、まだ全体としては不十分だと思います。  それで、医療崩壊ということが小児科、産婦人科を中心に言われておりますけれども、 このデータだけ見ると、精神科の領域には医療崩壊は起こっていないように見えますけ れども、総合病院の精神科では、総合病院自体が医療崩壊の危機に瀕している病院はた くさんありますから、総合病院の精神科では、山陰とか、北東北とか、北海道を中心に して、総合病院の精神科病棟は閉鎖される、あるいは病床規模を削減されるということ が大変起こっているんです。そういう意味で、そういう手当てがされなかったことがそ ういうことに結びついているのではないかと思うんです。  ところが、そういうことで、ある富山県の総合病院精神科で100床あったんです。そ れが、医師も足りないし、診療報酬の手当てもないのでもたないということで50床に減 らしたんです。一部単科精神病院の方に転院をお願いしたということもありますけれど も、そこの病院では、ACTというのは御存じだと思いますが、それを利用して一部の 患者さんを地域で支えるというふうにしたんです。そうしますと、 100床を50床に減 らした患者さんの大部分というか、かなりの部分を地域で支えることが可能になったと いうことです。ですから、病床削減をすることによって、地域のメニューといいましょ うか、地域を支える手段というのが逆に豊富になるというようなことがあるんです。で すから、病床削減をしないで地域医療を充実させるということは財源的にも困難ですよ ね。先ほどオーストラリアの例が出ていましたけれども、私も去年ちょっと見学に行っ てきたのですけれども、オーストラリアと日本では、患者さん1人当たりの医療費とい うのはほとんど同じだと言われていますね。ところが、配分が違って、オーストラリア では入院と外来がほぼイコールです。フィフティ・フィフティで、地域医療に係る医療 費の方が若干高いんです。ところが、日本では、入院医療に75%ぐらいですね。地域医 療の方に25%ぐらいしかいかない。この配分を変えていく。財務省との交渉でパイを広 げるということは難しいとしたら、そこの配分を変えて病床数を削減することによって しか恐らく地域医療を充実させるということは難しいんじゃないかと思うんです。  もう1つ、ちょっとお聞きしたいのですけれども、資料1の58ページの医療計画に おける基準病床算定式、これが前回の精神病床等における検討会から出されて、病床を 減らしていく1つの重要な切り札というふうにされたのですけれども、小川構成員じゃ ないですけど、この計算式を使ったデータが毎年出てきて、オーバーしているところは 厳しくやっていくということがないと、この算定式を出した意味がないといいましょう か、これによって病床削減を進めるということは難しいと思うのですけれども、このあ たりのデータはどうなっているのかということです。いずれ次回、医療の部分を検討す るときにお願いしたいと思うんです。  それからもう1つは、43ページ、精神科救急医療体制の整備です。これはかなり画期 的な厚労省の案だと思いますけれども、千葉県でも二次医療圏が9つあるんです。恐ら く7月か8月ぐらいから新しい精神科救急医療体制が開始される予定ですけれども、う まくいくかどうかわかりませんが、二次医療圏ごとに救急基幹病院を設定するんです。 その基幹病院は、24時間365日、原則として入院が必要な、非自発的入院が必要な患者 さんに対応するということですね。それらの病院が精神科救急入院料、あるいは精神科 救急・合併症入院料を算定しているか、算定の計画がある病院というふうになっており ますね。その中で、総合病院が9のうち、国府台病院とか、旭中央病院のような大規模 な病院も含まれますけれども、5つを占めるということです。こうしますと、厚労省の 案でも、二次医療圏に1つぐらい身体合併症対応病院があるとかなり機能するというの がどこかに書いてあったと思うのですけれども、隣接するでしたか、そのようなことが、 これから7月か8月ぐらいから始まりますから、次回の1月ごろやるときに、どのぐら い機能しているかということを少しお示ししたいと思いますけれども、そのような体制 が組まれていけば、救急の問題というのはかなり解決するんじゃないか。 それは、東京 都のように翌日すぐ搬送してしまうのではなくて、比較的早期に支援病院とか救急基幹 病院じゃない病院に協力してもらって、その医療圏ごとにその患者さんを、余りほかに 回さないで、救急基幹病院を中心としてバックアップしていくというシステムをとろう としています。ですから、43ページにあるような案を千葉県で現に実行しようとしてお りますので、来年の1月ぐらいに、これがどのようになっているかということをデータ でお示しできると思いますので、それは他府県の参考になるのではないかと思います。  それから、もう1つ更に言わせていただくと、早期の治療とか予防というのはやはり 難しいと思いますね。オーストラリアのオリジンというところに行きましたけれども、 やはりインタベーションすなわち早期介入ですよね。初期症状、初期の兆候を示したも のに対して、素早く介入して対応していくということが今の日本の体制でもかなりでき るんじゃないかと思うんです。そういうことをやる1つの基幹的な組織として、精神保 健福祉センターと誰か言ったと思いますけれども、これだけデイ・ケアが普及した時代 において、精神保健福祉センターでデイ・ケアをやっているところがありますが、それ はほとんど意味がないと言うか、公費を投入してやる意味はなくて、むしろそうしたア ーリーインターベーション、早期介入のシステムづくりを精神保健福祉センターあたり に任せるというか、やらせれば、そういうシステムというのは普及していくんじゃない かと思います。  以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。それでは、最後。 ○谷畑構成員 先ほども広田構成員がおっしゃられましたように、行政の代表のようで すので、最後に一言お話をさせていただきたいと思います。先ほどのお話の中で幾つか あったと思うのですが、1つは、今も佐藤構成員からありました救急の問題です。滋賀 県においては、私、市ですので県の代弁をする必要はないのですが、第1回目に申しま したように、この会には都道府県の代表がおりませんので代弁させていただきます。  精神救急体制は、先ほどもお話がありましように、都道府県でまちまちでありまして、 滋賀県においては24時間 365日という体制をとっております。各保健所の職員が、24 時間体制で当番を組んでおりまして、 電話があれば出張っていくという形になっており ます。ただ、それでは職員の負担が非常に大きいということで、昨年度、一昨年度で研 究をして、今年度は、上ノ山先生もそうだと思うのですが、診療所の御協力も得ながら 輪番制を組んでいくという中で、来年度からは医療センターを一元化という形にして、 そこを中心に救急体制を組み直していくということを現在進めている最中だというふう に伺っております。  それから、救急の場合には、やはり民間病院から見ますと、空床の確保が非常に大変 だということだそうであります。滋賀県は3つの圏域に分けてやっておりますが、県か らも1床当たりのお金と事務費等は出ておりますが、病院側にとりましては、空床の確 保プラスマンパワーの確保ということが非常に大変だということだそうでございます。 先ほど広田構成員のお話がありましたように、他科との連携ということになりますと、 合併症等で一般病院に移すというのがまず大変だということとともに、一般病院で受け 入れた後の内科と精神科との押し合いということも問題としてあるようであります。  もう1点は、病診連携という面で申しますと、診療所にかかっておられる方が救急で 来られると、診療所は9時〜5時ということで情報がつながってこないという側面で課 題があろうかと思っております。そういった点については、診療所も含めた中での救急 体制を組んでいくということで一定解決がされるのではないかと思うわけであります。  それからもう1点、大塚構成員が各地域ごとの特性ということをおっしゃっておられ ました。特に都道府県において特色があるということでありまして、滋賀県は全国で一 番病床数が少ないというところであります。 特に入院をしないようにしていこうという ことで、地域で取り組んでいるところが大きいと思うのですが、それを先だって、ある テレビ局が全国比較をしたときに、滋賀県の状況がワーストワンだということを報じま して、それに対して県内の精神保健福祉医療関係者がみんなこぞって怒っているという ことでございます。国民の理解を求めるという形においても、病床数が少ないのがワー ストだというような形になると、やはりちょっと違うのではないかということで、これ はぜひとも言ってきてほしいということがございましたので、一言申しておきます。  それと、今申しましたように、マンパワーというのがこの中で何遍も出てきたキーポ イントではないかと思うわけであります。当然、病院の現場においてもそうですし、福 祉の現場においてもそうですが、マンパワーが確保できなければ、幾らシステムをつく っても動かないというところが大きいと思っております。先ほど広田構成員が市町村長 に保護者になってほしいということをおっしゃられました。一昨日でしたか、地方分権 の委員会が第1次勧告を出されまして、都道府県から市町村に山のように権限を委譲す るということが言われておりまして、現場は手いっぱいなわけでありまして、それをす るためには、権限だけではなくて、財源と人が必要だということになるわけです。特に 自立支援法以降、この分野については都道府県から市町村に移管された部分が非常に多 いわけでありますが、それについては現場でまだ十分に対応ができ切れていないところ もあるわけでありまして、そこのところをどういうふうにならしていくのかということ は、制度としては入ったけれども、実態としてついて行けているかというところをきち んと押さえておく必要があろうかと思うわけでございます。  それから、先ほど大塚構成員がいろいろなところとの連携という問題を指摘されまし た。都道府県と市町村との間の連携というのも、これもまた非常に問題があります。 それから、市町村の中での連携ができない。例えばDVで相談がきても、 それが手帳を 持っていたら、これは福祉の方だろうというような形で振られる。ところが、それが非 常に重度だと、これは保健だ、医療だという形で、中でのたらい回しがされてしまう。 外の機関だけではなくてということもあろうかと思います。そういった場合に、やはり 中で統御する人というのが恐らく必要になってくるのではないかと思います。また、都 道府県においても、保健所間でもまちまちという意見もありますので、そういったとこ ろで、やはりシステムとしてならすのであれば、マニュアル化をきちんとしておかない と、それぞれ対応した人によって違うということであるといけない。患者さんなりはま ちまちではあるのですけれども、対応する側は、きちんとそれに対して対応できるよう な形というのが必要じゃないかと思うわけです。  距離の問題がございましたが、やはりこういった場合には遠くの病院に相談に行かれ るということが非常に多いというふうに伺っております。  ただ、単なる物理的な距離だけではなくて、やはり用語の距離、それからシステムの 距離というものもあろうかと思うわけありまして、実は次回と次々回、議会がございま して欠席をさせていただきますので国民理解のところだけ少し触れさせていただきます と、やはり用語がわかりにくいということは、この関係であろうかと思います。昨日、 我が市においても障がい者計画の策定委員会の第1回目をやりまして、その際に市長が 挨拶をしろというので、福祉関係の用語がわかりにくいので、一般の人にわかるような 形で計画をまとめてくれということを申しましたら、説明をしていた事務局が途中で説 明放棄をしてしまったようであります。次回までにきちんと説明できる内容で説明をし 直すということでありまして、事ほどさように、一般の方が入るとわかりにくいという のがこの世界だと思います。  ですから、用語だけではなくて、システムとしてのわかりやすさ、そして、その中で もバリアフリーをきちんとしていかないと、制度ができたらバリアができてしまったと いうことでは少し問題があるのではないかと思うわけであります。前回、キムタク主演 で月9のドラマをということを申しましたら、その議事録を見たうちの幹部が、「ツキ・ キュー(月9)」というのは何だということを申しておりましたので、言葉の問題とい うのは非常にバリアというものが大きいんだろうと思うわけです。  それから、最後に1点、小川構成員が大阪府の財政構造改革プログラムのことをおっ しゃられました。滋賀県においては、1年早く、嘉田知事が片っ端から予算を削るとい うことをされまして、特に福祉分野においても非常に大なたを振るわれたということで ありまして、現場で預かるという身にとりましては、どうしても財源と人というものは 外せないということを最後に国の方にお願いを申し上げて御意見とさせていただきます。 ○樋口座長 ありがとうございました。まだまだ御意見をいただきたいところでござい ますが、予定の時間を超過してしまいました。次回、今日取り上げるべき課題の(2)「精 神疾患に関する理解の深化について」というところを次回に回させていただきますので、 その折に、この課題についてもまだ御意見を今日ちょうだいできなかった方にはぜひ御 発言をいただきたいというふうに時間を取りたいと思いますので、よろしくお願いした いと思います。  それでは、司会の不手際でかなり時間を超過してしまいました。事務局の方から御連 絡をお願いしたいと思います。 ○名越課長補佐 ただいま座長からもお話がありましたとおり、次回の検討会につきま しては、当事者からのヒアリング及び地域移行等に関する取組事例の紹介をテーマとし て行うことと予定しておりましたけれども、スケジュールの見直しが必要となったとい うことで、事務局の方で再度整理をさせていただきたいというふうに思います。  日程につきましては、そのまま6月19日、木曜日の14時からを予定しております。 お手元に次回の出席確認についての用紙を準備しておりますので、そちらに御記入の上、 御提出をお願いしたいと思います。調整の上で、また正式な御案内、プログラムは後日 お送りさせていただきますので、よろしくお願いいたします。  なお、第5回の会議ですけれども、6月25日、水曜時の13時30分からを予定して おりますので御配慮お願いいたします。  事務局からは以上であります。 ○樋口座長 大変お忙しい中を、本日は長時間にわたりましてありがとうございました。  それでは、これをもちまして第3回の検討を閉会といたします。どうもお疲れさまで した。   (了) 【照会先】  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部  精神・障害保健課企画法令係  電話:03-5253-1111(内線3055、2297)