08/05/26 平成20年5月26日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所   平成20年5月26日(月) 16:00〜 厚生労働省 専用第22会議室 2.出席委員(11名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 五十嵐   隆、 川 西   徹、 澤 田 純 一、    清 水 秀 行、○首 藤 紘 一、◎永 井 良 三、 中 澤 憲 一、    野 田 光 彦、 村 勢 敏 郎、 本 橋 伸 高 (注) ◎部会長 ○部会長代理 他 参考人2名   欠席委員(8名)    鈴 木 洋 史、 千 葉   勉、 成 冨 博 章、 西 澤   理、    長谷川 紘 司、 林   邦 彦、 松 井   陽、 村 田 美 穂 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、   中 垣 俊 郎(審査管理課長)、   豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、   川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、 丸 山   浩(独立行政法人医薬品医療機器総合機構センター次長)、   森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 ただ今から「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていた だきます。当部会委員19名のうち、11名の御出席をいただいておりますので、定足数に 達しておりますことを御報告申し上げます。本日は鈴木委員、千葉委員、成富委員、西澤 委員、長谷川委員、林委員、松井委員、村田委員より欠席の御連絡をいただいております。 また、委員の交代がありましたので御紹介申し上げます。土屋文人委員が退任され、後任 に日本薬剤師会常務理事の清水秀行委員に御就任いただきました。  なお、本日の審議事項の議題4「ディフェリンゲル」ですが、元東京厚生年金病院・皮 膚科部長の南光弘子先生に参考人として御出席いただくこととしております。さらに、本 日の議事の最後「その他」として、「小児薬物療法検討会議」に関する説明をさせていた だきますので、国立成育医療センター・治験管理室長の中村秀文先生にも参考人として御 出席いただくこととしております。以降の議事進行は永井部会長にお願いいたします。 ○永井部会長 審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認、申請資料作成、利益 相反等に関する申合せについて報告をお願いいたします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、当部会委員名簿を配付 しております。議事次第に記載されております資料No.11〜資料No.13をあらかじめお送り しております。このほかに資料No.14「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資 料No.15「専門委員リスト」、資料No.16「競合品目・競合企業リスト」を配付しております。  続きまして、申請資料作成への関与や、利益相反等に関する、「審議参加に関する遵守 事項」について御報告いたします。本日の部会より、本年3月24日に開催されました薬 事分科会における新しい申合せ事項が適用されることとなっております。各委員の先生方 には、既に資料を送付させていただいておりますが、主な変更点といたしましては、以前 までの暫定ルールの運用に加え、新たに競合企業についても申出の対象としたところで す。本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては資料No.16として配付 しております。各品目の競合品目選定理由について御説明いたします。  資料No.16の1ページで、審議事項議題1のイリボー錠です。選定した理由は、下の段 の枠の中に記載があります。本剤の効能・効果であります過敏性腸症候群を効能・効果及 び過敏大腸症等の類似効能・効果を含め、9品目が競合品目の候補として挙げられており ます。そのうち売上高上位の品目であって、自社製品あるいは重複している企業の品目を 除いたものとして、この競合品目1〜3までに掲げている品目を選択したとのことです。  2ページで、審議事項議題2のナゾネックスです。本剤は、アレルギー性鼻炎を効能・ 効果とする合成副腎皮質ステロイドです。そして、この局所ステロイド薬としての競合品 目の候補としてフルナーゼ、リノコートパウダースプレー、及び日本新薬より申請中の NS-126の3品目が挙げられることから、この品目を競合品目に挙げたものです。  3ページで、審議事項議題3のグラセプターカプセルです。本申請品目の効能・効果及 び薬理作用から見た競合品目の候補として、プログラフ、ネオーラル、サンディミュンの 3品目が挙げられることでありますが、そのうちプログラフは自社品である、またネオー ラルとサンディミュンは同一企業の品目であることから、ネオーラルを競合品目として挙 げております。また、この申請品目と薬理作用は異なりますけれども、効能・効果から見 た競合品目の候補といたしまして、ブレディニン、セルセプト、イムランなど6品目が挙 げられておりますけれども、それらのうち売上高の多い2品目を選択しております。  4ページで、審議事項議題4のディフェリンゲルです。競合品目1のダラシンTゲル1 %については、本剤の効能・効果と類似の効能・効果を有し、剤型が同一なものとして最 も競合するものとして挙げられたものです。そして競合品目2と競合品目3については、 本剤の効能・効果と類似の効能・効果を有し、また、剤型が類似している品目として売上 高上位の2品目、2社として挙げたものであるとのことです。  5ページで、審議事項議題5のアイノフローです。本剤については、NOによる血管拡 張作用を有する医薬品です。血管拡張薬については、幾つかホスホジエステラーゼIII阻害 薬等がありますが、いずれも新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全という、本剤と同 じ効能・効果を持つものはなく、代替療法はないということから競合する品目はないとい うことです。  6ページで、審議事項議題6のガニレスト皮下注です。本剤は、調節卵巣刺激下におけ る早発排卵の防止を効能・効果とする、ゴナドトロピン放出ホルモンのアンタゴニストで す。現在、調節卵巣刺激下における早発排卵の防止の効能・効果として、承認等されてい る薬剤はセトロタイド注射用のみであることから、本剤のみを競合品目として選択したと のことです。  7ページで、審議事項議題7のビオプテン顆粒です。本剤は、テトラヒドロビオプテリ ン反応性高フェニルアラニン血症を適応とするものですが、今回の申請のものと同様の適 応として承認された医薬品はなく、また類似の効能を有する医薬品もないということか ら、本剤については競合品目はないという報告です。  8ページで、審議事項議題8のアクトネル及びベネットです。追加効能は骨ページェッ ト病であります。本薬はビスフォスフォネート骨格を有し、主たる作用機序は破骨細胞の 機能抑制による骨吸収の抑制作用です。この作用、効能・効果等から見た競合品目として、 ダイドロネル錠、エルシトニン注等が挙げられておりますが、その中から売上高上位3品 目でありますダイドロネル錠、エルシトニン注、ラスカルトン注を競合品目として挙げた ということです。  9ページで、審議事項議題9のノバスタン等です。本剤は、ヘパリン起因性血小板減少 症に対する適応を有するものですが、これと同様の適応を有する薬剤は本邦において承認 はありません。したがって、海外において使用が推奨されているダナパロイドナトリウム (販売名オルガラン注)、及び本邦においてこのヘパリン起因性血小板減少症に対する使用 経験が報告されているフサンを競合品目として記載したとのことです。  10ページで、審議事項議題10のタクロリムス水和物です。本申請の効能・効果は重症 筋無力症です。重症筋無力症に対する薬物療法として、抗コリンエステラーゼ剤、ステロ イド剤、免疫抑制剤が効能・効果を有し、様々な組合せで用いられていることから、この 各カテゴリーから主要な薬剤を競合品目として挙げたということです。免疫抑制剤につい ては効能・効果を有しているものが、本申請品目及びネオーラルのみであることからネオ ーラルを、抗コリンエステラーゼについては、重症筋無力症の効能・効果を有する主な抗 コリンエステラーゼ剤としてメスチノン及びマイテラーゼがありますが、そのうち売上高 の大きいメスチノンを、ステロイド剤については当該効能・効果に対する売上高等のデー タはないものの、重症筋無力症に使用されているステロイド剤としては、本邦ではプレド ニゾロンを用いることが多いことから、売上高が最も高いプレドニンを競合品として挙げ たということです。  11ページで、審議事項議題11のインフリキシマブ(遺伝子組換え)です。強直性脊椎炎 の治療においては、NSAIDs、合成副腎皮質ホルモン、サラゾスルファピリジン及びメトト レキサートが用いられておりますけれども、実際にこの効能・効果を有している薬剤が NSAIDsの一部及び合成副腎皮質ホルモンであるため、それらについて検討し、また本剤 と作用機序が同じである生物製剤を含め3品目選んだということで、NSAIDsについては アスピリンを、合成副腎皮質ホルモンとしてはプレドニン、それから本剤(レミケード) と同様にTNFαに結合する生物学的製剤であるヒュミラ及びエンブレルのうち、今後こ の本適応症について共同開発することがプレスリリースされておりますヒュミラを競合 品として挙げたということです。  以上でございます。 ○永井部会長 利益相反に関する件はいかがですか。 ○事務局 利益相反の申出状況について御報告いたします。各委員からの申出状況につい ては次のとおりです。議題1のイリボーについて退室委員はいません。議決には参加しな い委員は五十嵐委員、永井委員、本橋委員です。議題2のナゾネックスについて退室委員 はいません。議決には参加しない委員は五十嵐委員、本橋委員です。議題3のグラセプタ ーについて退室委員は永井委員です。議決には参加しない委員は五十嵐委員、本橋委員で す。議題4のディフェリンゲルについて退室委員はいません。議決には参加しない委員は 本橋委員です。議題5のアイノフローについて退室委員、議決には参加しない委員ともに いません。議題6のガニレストについて退室委員はいません。議決には参加しない委員は 永井委員です。議題7のビオプテンについて退室委員、議決には参加しない委員はいませ ん。議題8のアクトネル等について退室委員はいません。議決には参加しない委員は永井 委員、野田委員です。議題9のノバスタン等について退室委員は永井委員です。議決には 参加しない委員はいません。議題10のタクロリムスのオーファン指定について退室委員 は永井委員です。議決には参加しない委員は五十嵐委員、本橋委員です。議題11のイン フリキシマブのオーファン指定について退室委員はいません。議決には参加しない委員は 永井委員、野田委員です。  したがって、議題1、議題3、議題6、議題8、議題9、議題10、議題11については、 座長を首藤部会長代理にお願いいたします。なお、議事進行の順番を変更し、議題3を議 題9の後に御審議いただきたいと考えております。  以上でございます。 ○永井部会長 本日は審議事項11議題、報告事項1議題、その他1議題となっておりま す。議題1は、首藤部会長代理に進行をお願いいたします。 ○首藤部会長代理 議題No.1について、総合機構から概要を説明してください。 ○機構 議題1、資料No.1、医薬品イリボー錠2.5μg及び同5μgの生物由来製品又は 特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は 劇薬の指定の要否について機構より御説明申し上げます。  本品目については4月の部会に御審議いただき、添付文書の記載について御指摘いただ きました。御指摘いただいた点について踏まえた添付文書の改訂案を基に再度御審議いた だくこととなっていたと思います。添付文書の改訂箇所について説明させていただきま す。  「添付文書の効能・効果に関連する使用上の注意で、『女性における本剤の有効性及び 安全性は確立していない』との記載をしていたことについて、女性には使用しないよう、 より強い表現とするべき」との御指摘があった点については、「現時点で得られている臨 床試験成績では、女性における本剤の有効性は認められず副作用発現率が高いことから、 本剤を女性に対して使用しないこと」と変更させていただきました。  また、臨床試験の項で、男性と女性の有効性及び安全性を表にして具体的に表示し、ま た男女それぞれについてプラセボ群の成績と比較できるように変更させていただきまし た。  また、「腹部手術の既往歴がある患者では特に注意ということを特記すべき」という御 指摘をいただいた件については、添付文書の重要な基本的注意の5項に、「腹部手術歴の ある患者は、本剤の投与による便秘、硬便等の発現に伴うイレウス等の発現に注意するこ と。」と追記させていただきました。  以上、御指摘を踏まえて添付文書の改訂を行っております。御審議のほどをよろしくお 願い申し上げます。 ○首藤部会長代理 前回から持ち越した議題です。添付文書の新旧対照表が後ろに付いて いて、基本的な添付文書を直したということ、書きぶり、その他を追加したということだ と思います。委員の先生方から御意見をいただきたいと思います。 ○村勢委員 前回からの継続ということで、私から修正案に関して添付文書に関しての変 更の感想と、それから二点ほど質問をさせていただきます。  まず、添付文書の処理についてですが、最後の新旧対照表の要約を見ますと、効能・効 果に関する使用上の注意という点と、その後の使用上の注意の5番は、今お読みいただい た二点についてはよく修正されていると思います。この点は良いのですが、その後に続く 別紙の新旧対照表について改正された記述の中で、ちょっと理解に困難な点がありますの で質問させていただきます。  安全性と有効性について、それぞれ一点ずつ質問させていただきます。まず安全性につ いてです。新旧対照表の別紙の1ページの、有害事象・副作用の頻度についての統計に関 してです。男性の比較に関して、真ん中辺りの「参考」の後の4行目で、「また、臨床検 査値異常を含む副作用発現症例は215例中41例であり、主なものは云々」という記述が あります。  頻度に関しては41ページの審査内容のところで、表30の右側の投与群の男性では、215 例中、121例が全体での有害事象になっています。今回の集計では41例ということです ので、ほぼ3分の1に減っています。前回、最初の審査項目の表現でよく使われておりま す便秘・固形便及び腹部膨満といった有害事象だけを拾ってみますと、41ページでは215 例中の27例に書いてあります。これは、プラセボ群の227例中の7例に比べて確かに有 意に多いのではないでしょうか、というのが前回私が質問した点です。この27例につい ては、先ほどの41例に比べると低い。でも、ここの全部の有害事象を見ますと121例で すので、これの3分の1になっているということです。  今回の修正案では、有害事象について男性ではほぼ差がないとここでは結論付けている わけです。さて、どのようなものを有害事象、副作用として集計したのか、それで41例 になったのか、どうもこの辺がよく分からないのです。中には、白血球増加とか、GOT、 γ-GTBが上がったという有害事象も含まれているのだと思います。その41例が、121 例の3分の1であり、27例よりも多い。実際どれを選択してこういう結果になったのか、 というのがよく分からないので説明していただきたいと思います。  二点目は、女性の有効性に関しての表現の問題です。新旧対照表を見ますと、先ほどの 添付文書でもそうですし、ここでもそうなのですが、「女性における本剤の有効性は認め られず」と改正されております。これは、私が前回指摘した点と同じです。42ページの 真ん中より少し下の第3フレーズの一番最後で、「試験成績全体としても女性における本 薬のプラセボに対する有効性が認められると考えている。」という表現がなされています。 この記述というのは、添付文書でも変えられた、女性では有効性が認められないという事 実とは相反するように読み取れるのですがどうなのでしょうか。首尾一貫した論理構成に なっていないのか、あるいは私の頭が混乱しているのかどうかよく分かりませんが、その ような印象を持ちましたので説明をしていただきたいと思います。  以上、男性の有害事象と、女性での安全性の二点について質問させていただきます。 ○審査管理課長 後者の点については私から御説明させていただきます。ご指摘の42ペ ージの記述というのは、正確には41ページの下から2行からありまして、「申請者は、 以下のように回答した」のところです。先生が今おっしゃった点については、申請者の主 張がここに繰り広げられているわけです。  43ページの上から3行目までが申請者の主張が繰り広げられて、ここから先に「機構 は以下のように考える」ということで、女性については問題があるという形に整理がされ ているということです。  ここの書き方として、例えば(1)を付けるとか、分かりやすくすることは今後考えなけ ればいけないかもしれませんが、あくまで申請者の主張であったということです。 ○村勢委員 分かりました。このように、申請者の方が結論を翻した根拠はどこかに記さ れてしかるべきものではないかと思うのです。こちらで、申請者は有意差がある、有効で あると言ってみて、今度はそこに何ら解釈というか、根拠があるのかどうか、実際にない のだということで今度の修正がなされているのですが、その飛躍を埋める何かというのは ないのですか。 ○審査管理課長 43ページの上から4行目の「機構は以下のように考える」というとこ ろで、その下の2行目くらいに「性差が存在する可能性があるということは理解する」と いうこと、その2、3行後には「女性に対する本薬の至適用量は明確になっていないと考 える」ということ、さらには薬物動態の問題についても触れておりますから、機構として はそういう点を指摘して、女性についての問題点というのは、やはりここで指摘が終わっ ていると思います。  すなわち筋道としては、前回、添付文書でもう少し明らかにはっきり書きなさい、とい う御指摘をいただいたわけですが、そこに至る筋道というのはこの審査報告書の中ででき ていると私としては考えております。 ○村勢委員 分かりました。そこは、私の理解が浅かったのだと思います。この審査の過 程というか、報告書に関しては以前と変わっていないのでしょうか。以前は、男性と女性 の性差の比較がたくさんあったという気がしていて、その辺のことを私は質問したので す。これでは、余り性差のことは触れていないので、中身が大分変わったのかなと思った のですが、以前とは変わっていませんか。 ○審査管理課長 委員が受け取られた印象があるのかもしれません。この審査報告書自体 は変えておりません。審査報告書の中で、女性については問題だ、ということも指摘して きております。そういう意味で申し上げますと、最後の仕上げ、すなわち添付文書をどの ように書くかについて前回御指摘を受けたのだろうと考えています。  最初に受けた御質問、すなわち有害事象と副作用の点については機構から御説明申し上 げます。 ○機構 ただ今の件について少し補足させていただきます。審査報告書の52ページの効 能・効果の項のところに、専門協議を踏まえた上で、女性に対する使用について議論させ ていただきました。その結果、女性に対しては有効性・安全性は確立していないと専門委 員の先生方に御同意いただいています。その点を申請者に伝達いたしましたところ、適切 に対応するという形で結論としては記載させていただきました。  質問の一点目に関してですが、添付文書に書いてある副作用の数と、報告書に書いてあ る数が違うのではないかという御指摘に関してです。有害事象に関しては、因果関係のあ る、なしをすべて含めたものに関して、有害事象として扱って、報告書に記載しておりま す。添付文書においては副作用ということで、因果関係が完全に否定されたものを除いた ものを副作用としておりますので、このような数の違いが生じている形になっています。 ○村勢委員 具体的に何と何が入っているのかよく分からないのですけれども、便秘と固 形便と腹部膨満感の三つの項目を有害事象として足すと27になります。プラス何が入っ ているのですか。 ○機構 添付文書の副作用発現率は、臨床試験で起こりましたすべての副作用と同じであ り、審査報告書の21ページに、第III相試験の結果が記載してあります。上から7、8行 目辺りから「安全性について」という形で始まっています。こちらでは、有害事象が先ほ ど先生がおっしゃられたプラセボに関しては141例、副作用になると36例ということで す。便秘と硬便と腹部膨満を同時に発現している患者も認められますので、各事象を足し 合わせたの数字が合わないという事態が生じています。 ○村勢委員 分かりました。その辺を書いておいていただかないと、読んでもさっぱり分 からないのです。両方の真ん中になったのは何かほかに加わったのかと思いました。作為 的とまでは思いませんけれども、その辺の注釈を付けて、きちんとこれとこれとこれを取 ったらこうだった、というふうに書いておいていただかないと理解に苦しむのだと思いま す。 ○審査管理課長 これは、委員御指摘のとおりだと思います。添付文書の案と、審査報告 の間について、委員に御指摘いただいた点については私も理解できません。今後は、添付 文書のバックグラウンドがきれいに審査報告の中に反映するように注意をすることが一 つと、このイリボーについては、何らかの形で追加をするという形で対応させていただき たいと思います。 ○村勢委員 ありがとうございます。その追加をすることがとても必要だと思います。何 か急にステップアップしていて、それがよく分からなかった理由です。その辺を丁寧にし ていただけると、自然と頭に入ってくるのだろうと思います。 ○首藤部会長代理 大事な質問が二つありました。一つは企業側の意見であったというこ と、企業側はそのように考えていたということなのでしょう。もう一つは、有害事象と副 作用とは違うということが、パッと読んだときにはなかなか分からない状況があるという ことで、今後はその辺を工夫してほしいと思います。 ○中澤委員 非常に細かいことで、指摘するのは申し訳ないような気もしますが、9ペー ジの下から6行目に「LOPのFreezing時間延長作用は、LOPに中枢移行性が認めら れないため、血圧低下作用による行動抑制が原因であると、申請者は考察している。」と あります。これは、対象になっている医薬品ではなく、陽性対象として用いられた薬なの で大して問題はないのかもしれないのですが、この薬が血圧低下作用をするというのは一 般的な事柄なのでしょうか。私が、教科書で調べた限りは載っていませんでした。 ○機構 今の御指摘は、ロペラミドについてということでしょうか、それとも今回のラモ セトロンについてということでしょうか。 ○中澤委員 ロペラミドです。 ○機構 ロペラミドの「血圧低下作用による行動抑制が原因である」という申請者の考察 については、原因についてさらに追求しておりません。 ○中澤委員 それでしたら、文献等を引用していただきたいところです。 ○審査管理課長 申請者に、そのバックグラウンドデータがあるのかどうか確認したいと 思います。 ○機構 申請者に確認をいたします。 ○首藤部会長代理 一番大事なところは、効能・効果に関する使用上の注意というところ は、実際のデータを反映させた記述になっています。それから、有効性、副作用について の記述も少し分かりにくいところはありますけれども、記載は前より充実したと思いま す。 ○清水委員 機構の方で情報があったら教えていただきたいのですが、本剤の包装につい てはPTPはウィークリーシートのみで、×4、×10、×50という形態で、あとは、ば らの形態になっています。10錠シートについては作らない理由なり、何か情報がありま したら教えてください。 ○機構 用意いたしますので、少々お待ちください。PTPのシートで10錠単位の包装 と、500錠単位のボトルで作成する予定になっています。 ○清水委員 今回の添付文書案の中には、10錠シートのことの記載はないのですが、10 錠シートについても検討があるということになりますか。 ○機構 申し訳ありません、14錠のシートでした。 ○審査管理課長 情報が分かりませんので、追って委員にお知らせいたします。 ○首藤部会長代理 本件について御意見が尽きたということであれば議決に入ります。本 議案に関しては五十嵐委員、永井委員、本橋委員においては、分科会申合せに基づき、議 決への参加は御遠慮いただきます。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。 ○首藤部会長代理 異議がないようですので、本件イリボー錠2.5μgについて、本部会 としては承認「可」といたします。 ○永井部会長 議題2の概要の説明を機構からお願いいたします。 ○機構 議題2、資料No.2、ナゾネックス点鼻薬50μg56噴霧用ほかの製造販売承認の可 否等について、機構より説明いたします。  本剤の有効成分であるモメタゾンフランカルボン酸エステル水和物は、米国シェリング ・プラウ社により創製された合成副腎皮質ステロイドであり、今般、点鼻用の定量噴霧式 懸濁液剤として開発され、「アレルギー性鼻炎」の効能・効果で申請がなされたものです。 海外においては、本剤は2008年4月現在、「アレルギー性鼻炎」に係る効能・効果で米 国、EU等109か国で承認されております。  なお、本薬は新規の有効成分に該当しますが、本薬の無水物であるモメタゾンフランカ ルボン酸エステルについては、軟膏等の外用剤が、湿疹、皮膚炎等に係る効能・効果で本 邦において既に承認されております。  本申請の専門委員としては、資料No.15に記載されております7名の委員を指名いたし ました。  審査内容について簡単に説明させていただきます。品質及び非臨床に関する資料につい ては、特段の問題は認められないものと判断しております。次に臨床に関する資料につい てですが、本剤の開発は、当初、申請製剤とは防腐剤及び噴霧容器が異なる旧製剤を用い て行われ、第I相〜第III相まで14試験が実施されましたが、一貫した成績が得られず、 新製剤への切替えを機に、用量反応試験、検証試験及び長期投与試験が改めて実施されて おります。  旧試験で一貫した成績が得られなかった原因として、有効性の主要評価項目として主観 的な指標である全般改善度が用いられていたこと、各試験ともプラセボ群が置かれていな かったことなど、試験の質や精度等に問題があったものと考察されており、追加試験は有 効性主要評価項目として、くしゃみ発作、鼻汁、鼻閉及び鼻内掻痒感に関する4鼻症状ス コアを採用する、プラセボ群を設定する、各施設に治験コーディネーターを設定する等の 改善が図られた上で、実施されております。  その結果、通年性アレルギー性鼻炎患者を対象に、本剤100μg/日〜400μg/日の用量 範囲で実施されたプラセボ対照二重盲検比較試験において、本剤群はいずれの用量におい てもプラセボ群に比べ、4鼻症状スコア等を有意に改善すること、本剤の有効性は、 200μg/日以上で頭打ちとなること、1日1回投与時と、1日2回投与時の有効性は同等 であることが示され、用法・用量として200μgの1日1回投与が選択されております。  また、プロピオン酸フルチカゾンを比較対照とした第III相試験では、本剤200μg1日 1回投与のフルチカゾン1回100μg1日2回投与に対する非劣性が検証されております。  以上より、機構は本剤のアレルギー性鼻炎に対する有効性は確認されているものと判断 しております。  安全性については、旧製剤によるものも含め、申請時までに実施された国内臨床試験に おける副作用発現率は7.24%、臨床検査異常変動は7.8%、主な事象は刺激感、そう痒感 等の鼻症状、咽喉頭症状等であり、特段の問題は認められておりませんが、海外では市販 後においてまれではあるものの副腎皮質機能への影響を認めた症例が報告されているこ とから、製造販売後調査において、全身作用を含む長期投与時等の安全性について、さら に検討するよう指示しております。  以上の審査を踏まえ、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御 審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であること から再審査期間は8年とすることが適当と判断しております。  また、本剤は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は劇薬に 該当し、製剤は劇薬、毒薬いずれにも該当しないものと判断しております。薬事分科会に は報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 御質問、御意見をお願いいたします。1日1回噴霧というのは、これが初 めてですか。 ○機構 はい、そうです。類薬は1日4回、1日2回というものがありますが、1日1回 というものは、現時点ではありません。 ○永井部会長 1日1回でよいというメカニズムはどういうことなのでしょうか。 ○機構 アレルギー性鼻炎のモデル動物を用いた試験では、類薬と比べて、効力が若干上 回るという結果は得られておりますけれども、臨床成績では有効性に大きな違いはなく、 海外では1日1回投与で承認されている類薬もありますので、特に類薬に比べて非常に効 力が強い、作用時間が長い、ということで1日1回という結果になっているものではない と考えております。 ○永井部会長 類薬に比べて、副作用が多いわけでもないのですね。外国の例で結構です。 ○機構 臨床成績では副作用の傾向は類薬と大きな違いは認められていません。ベクロメ タゾン等に関しては、若干全身移行性が高いのに対し、本薬に関しては、フルチカゾン等 と同様に全身移行性が低いということが、薬物動態試験の結果から確認されておりますの で、そういった点でも、類薬と比べた時に副作用が多いというものではないと考えられま す。 ○永井部会長 ほかに御意見がないようでしたら議決に入ります。五十嵐委員、本橋委員 におかれましては、薬事分科会申合せに基づき、議決への参加を御遠慮いただきます。議 題2について、承認を「可」としてもよろしいでしょうか。 ○永井部会長 御異議がないようですので、承認「可」ということで、薬事分科会報告と させていただきます。議題3は飛ばさせていただき、後で審議させていただくことにいた します。議題4の概要について機構から説明をお願いいたします。 ○機構 議題4、資料No.4、医薬品ディフェリンゲル0.1%の生物由来製品又は特定生物 由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指 定の要否について機構より御説明申し上げます。  尋常性ざ瘡は、面皰、紅色丘疹、膿疱、結節の形成が認められる、毛包脂腺系における 慢性炎症疾患で、主に青年期に認められる極めてありふれた皮膚疾患です。いわゆるニキ ビと言われるものです。  現在、本邦の尋常性ざ瘡の治療では、洗顔等の日常生活指導に加え、軽症では面皰圧出、 また角質溶解作用及び脱脂作用のあるイオウカンフルローション、抗炎症作用のある外用 抗生物質製剤並びに外用抗菌剤の塗布が行われております。中等症以上では抗生物質の経 口剤が投与されております。一方、欧米においては、外用レチノイドが尋常性ざ瘡の第一 選択薬と報告がなされております。  アダパレン(以下本薬という)は、レチノイド受容体に作用する化合物であり、欧米で外 用レチノイドとして使用されていたトレチノインに対し、安定性等を改善することを目的 としてガルデルマ株式会社より開発がなされております。  本剤の0.1%製剤は、フランスにおいて1994年に、米国では1996年に承認されており ます。2008年3月現在において、尋常性ざ瘡を適応として世界82か国で承認・販売され ております。また、本薬0.3%製剤が、米国、カナダ、アルゼンチンで承認・販売がなさ れております。  本品目の専門協議では、本日御出席いただいた南光先生をはじめ、本日の配付資料No. 15に示しますような専門委員が指名されております。  審査の概要の説明に移ります。品質に関して提出された資料の内容は適当であると判断 いたしました。また、非臨床試験成績において、生殖発生毒性試験では、ラット及びウサ ギへの経口投与時にレチノイド様の催奇形性が認められております。  臨床試験成績としては、国内臨床試験、計6試験が評価資料として提出されております。 まず、有効性に関してですが、顔面に尋常性ざ瘡を有する患者を対象に、プラセボ及び本 薬0.1%を適量12週間塗布した第III相検証試験において、主要評価項目である最終観察 日における開始時からの総皮疹数減少率、これはプラセボ群36.9%、本薬群63.2%であ り、両群に有意な差が認められておりますことから、本剤の有効性は認められると判断さ せていただきました。  安全性に関してですが、提出された臨床試験成績からは、特に本薬投与開始初期に皮膚 の乾燥等の皮膚局所の有害事象が発現する頻度が高いものの、臨床的には忍容可能であっ たと考えられると判断いたしました。  一方、毒性試験において、先ほども申しましたが、高用量の経口投与時に催奇形性が認 められていることから、本薬が体内にある一定量以上吸収された場合には、催奇形性を示 す可能性があると考えられます。  しかし、国内臨床試験では、本薬0.1%塗布時の、本薬血漿中濃度は検出限界0.15ng/ mL以下でして、また非臨床においてはウサギに催奇形性が認められたときの血中濃度と 比較すると約165倍の開きがあるということ。また、国内臨床試験、海外臨床試験及び海 外の製造販売後の情報において、本薬の使用による催奇形性を示唆する情報が、現時点で は得られていないことから、本薬を外用剤として顔面のみに適正に使用した場合には、催 奇形性のリスクは非常に低いと考えられます。  ただし、本薬が催奇形性を示す可能性を完全には否定できないということから、催奇形 性のリスクと、適正使用に関する十分な注意喚起が必要であり、妊婦、妊娠している可能 性のある女性、現在妊娠を希望している女性には使用しないよう、医療関係者及び患者に 対して注意喚起する等、適正使用のための対策が不可欠と考えております。そのため、製 造販売時には、添付文書並びに医療関係者、患者向けの説明文書を通じ、適正使用情報の 周知徹底を図ることを予定しております。  以上、機構での審査の結果、本薬の尋常性ざ瘡への有効性は認められ、安全性は忍容可 能であると考えられることから、効能・効果を尋常性ざ瘡とすることが適当と判断し、医 薬品第一部会で審議されることが妥当と判断いたしました。  なお、本薬は生物由来製品又は特定生物由来製品に該当せず、原薬及び製剤は劇薬に該 当し、また、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年間とすることが適 当であると判断しております。薬事分科会では審議を予定しております。御審議をよろし くお願い申し上げます。 ○永井部会長 南光先生から、参考意見等をお願いいたします。 ○南光参考人 今までニキビの治療薬として、同系統の類似薬は全くありませんでした。 今おっしゃられたようなことで治療をしてきたのですけれども、もう10年以上前から外 国ではレチノイドが出てきました。今回は、レチノイドとは少し違った構造で、レチノイ ドの構造と同様の作用を生ずる非常に有効な外用薬が出たということで、私たちは日本の ニキビの治療に画期的な変化をもたらすのではないかと考えております。顔面に限った外 用薬ということで、催奇形性に十分注意した資材を準備していただいて、医療用と医師向 けと、患者向けに、分かりやすい言葉でパンフレットなども作っていただいて、そして十 分な注意をしながら処方することが妥当な線ではないかということで結論付けました。 ○永井部会長 御意見、御質問をお願いいたします。 ○南光参考人 もう一つ補足させていただきます。今ケミカルピーリングという言葉がよ く治療で使われています。これは、全く保険がききません。ケミカルピーリングの第一選 択適応疾患がニキビなのです。日本皮膚科学会でも、ケミカルピーリングを無視するわけ にはいかないので、承認・認可された方法ではないのですが、ピーリングは美容というこ とで自費で行われています。  自費で美容ということですから限界があるということで、一般向けの医師が処方できる 薬剤としてこれがもし承認・認可されれば、逆にピーリングは廃れるのではないかと考え られます。社会的な影響がかなりあると思いますので追加させていただきました。 ○永井部会長 作用機序としては、皮膚の細胞の分化を促すということですか。 ○南光参考人 ニキビというのは、毛穴に作られる面皰・コメドというものです。毛穴が 狭く、小さくて、毛包脂腺の方が発達しているので、皮脂が中に詰まってしまい、出口が 狭いのです。脂腺性毛包でできるコメドなのです。角化異常というのが言われていますの で、角化を抑制する作用があります。  それから、ニキビをずっと放っておくと炎症を起こしてくる。感染でも起こすし、自壊 でも起こしてくるのですが、そういう炎症に対しても抑制効果があるということが確認さ れております。 ○永井部会長 使用するステージとしては、早期であっても、あるいは少し感染が始まっ た後でも問題ないということですか。 ○南光参考人 そういうことで、今回の臨床試験も両方を合わせて、総皮疹数という形で 臨床試験のデザインも組まれております。そういう意味では問題はないかと思います。 ○永井部会長 一番懸念されるのは催奇形性ですが、特に生殖年齢の方々が使うと思うの です。実際にこれまでの報告でも、妊娠した方もいるようなのです。その点への注意はど うなのでしょうか。 ○南光参考人 機構からの説明にもあったように、海外では発売されてから10何年経っ ています。その濃度は0.1%で、今回の申請は0.1%なのですが、0.3%のものもその後外 国では出ています。その中で妊娠事例があります。それをレトロスペクティブに追求して みると、この薬剤との関連を思わせるような、動物実験と同じような催奇形性は認められ なかったのです。もう何万人も使っておりますので、その催奇形性とこの薬剤との因果関 係はほとんど問題にならないです。  ただし、臀部の皮下脂肪に検出されたということがあります。長期使用例で蓄積という ことがあるので、そういう意味でも催奇形性のことを考えると、今後発売後の調査が必要 ではないかと考えております。 ○永井部会長 これについては、説明用の資料を機構で用意すると伺いましたがいかがで すか。 ○機構 今、申請者に指示しています。添付文書は先生方も御覧いただいていると思いま す。あとは患者向けの資材についても、やはり対象が12歳くらいから発症するものです から、分かりやすい文章で作らせようと思っております。  また、医師向けには、動物のデータとか、非常に細かいデータを記載した資料を作成し ようと思っている次第です。 ○永井部会長 いかがでしょうか。 ○清水委員 薬剤師会の清水です。実務的なことで申し訳ありません。添付文書の記載の 中で一点教えていただきたいのですが、用法・用量のところです。一般に用法というのは、 1日何回いつ使うかというのを書くのが用法かと思うのですが、「就寝前に使用するこ と」というのが用法そのものではなく、用法に関連する注意事項の中に記載がある点につ いて、用法そのものではなく、注意事項の方に記載した理由等がありましたら、教えてい ただけますか。 ○機構 試験に関しては、1日1回就寝前にという形で試験は実施されていたので、就寝 前にということを、用法・用量ではなくて、情報提供という形で記載させていただきまし た。ライフスタイルが各患者で異なると思いますので、使用上の注意の形の記載になって います。 ○永井部会長 そのほかにいかがでしょうか。御意見がありませんでしたら議決に入りま す。本橋委員におかれましては、薬事分科会申合せに基づきまして、議決への参加を御遠 慮いただきます。この議題につきまして、ほかによろしければ承認可としてよろしいでし ょうか。 ○永井部会長 承認「可」として報告とさせていただきます。  承認ということですが、なお、本剤は新有効成分でして、既存の類薬がありませんので、 薬事分科会に上程をいたしまして審議とさせていただきます。ありがとうございます。  議題5に入ります。機構から内容の説明をお願いします。 ○機構 議題5、資料No.5、医薬品アイノフロー吸入用800ppmについて、医薬品医療機 器総合機構より説明いたします。本剤の有効成分である一酸化窒素は血管拡張作用を有す ることから、□□年に□□□□□社により医薬品としての開発が開始され、その後、本申 請者であるアイノ セラピューティックス エルエルシー社により引き継がれました。  本薬は1999年に米国で、在胎期間34週以上の新生児における肺高血圧を伴う低酸素性 呼吸不全を適応として承認され、2007年12月現在、米国及び欧州を含む34か国におい て承認されております。  本邦では、20□年□月に外国製造医薬品製造承認申請が行われましたが、申請資料の整 備を必要としたため、20□年□月に申請が取り下げられています。その後、新生児の肺高 血圧を伴う低酸素性呼吸不全患者を対象とした国内臨床試験が実施され、その結果を踏ま え、2006年11月に「新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全の改善」の効能で再申請 がなされました。なお、本剤は2002年10月に「肺高血圧症における低酸素性呼吸不全の 改善(新生児患者に限る)」を予定効能・効果として、希少疾病用医薬品に指定されており ます。  本品目の審査に関して、専門委員として、資料No.15に記載されている委員が指名され ました。  本品目の審査の概略について、説明いたします。品質及び非臨床については、審査の過 程において、申請者から適切な対応がなされ、特に問題ないと判断しました。  臨床成績についてです。有効性については、追加実施された国内第III相臨床試験におい て、新生児の肺高血圧症を伴う低酸素性呼吸不全患者11例に、本薬20ppmが投与され、 主要評価項目とした、本薬吸入開始直前から吸入開始後30分及び24時間の酸素化指数の 推移は、吸入開始前で35.5cmH2O/mmHgであったのに対して、開始30分後では、14.2cmH2 O/mmHg、開始後24時間では8.2cmH2O/mmHgと、酸素化指数の改善が認められました。  また、海外で実施された臨床試験においても、体外式膜型人工肺(ECMO)の適用率が プラセボ群に比べて本薬20ppm群で有意に低値を示しており、本薬20ppmの有効性は示さ れたと判断しています。  安全性につきましては、国内第III相臨床試験において、11例中9例、81.8%で、89件 の有害事象が認められましたが、そのすべてが重篤な原疾患によるものと判断され、本薬 との因果関係は否定されています。また、海外臨床試験においても対照群と比較して特に 問題となる有害事象は認められておりません。また、本薬の性質上、メトヘモグロビン血 症が特に懸念されましたが、専用の一酸化窒素ガス管理システム、(アイノベント)を用い て適切なモニタリング及び注意喚起の下で使用されれば、大きな問題はないと考え、添付 文書の「用法・用量に関連する使用上の注意」に専用の一酸化窒素ガス管理システムを用 いる旨を記載しております。  本薬の作用機序は、経口硝酸剤と同様、一酸化窒素による血管拡張作用であり、特段の 新規性はないものの、NOガスを吸入することにより、標的部位である肺血管に直接供給 することで効果的に薬剤を供給し、全身性の副作用を生じにくいという意味で既存の経口 硝酸剤に比べて新規性が認められていると判断しました。  なお、今般の申請は国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一 定数の症例に係るデータが集積されるまでは、本剤が投与された全症例を対象に使用成績 調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性 及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じることを 承認条件とする必要があると判断しました。  以上のような検討を行った結果、全症例の使用成績調査を承認条件として付した上で、 本薬を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくこ とが適当であると判断しました。  本薬は原体、製剤ともに劇薬に該当し、生物由来製品又は特定生物由来製品に該当しな いと判断し、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年とすることが適当で あると判断しております。薬事分科会では審議を予定しています。  なお、本日は製剤見本ではなく、アイノフローのボンベと専用機器アイノベントの写真 を各委員のお手元に配付させていただきました。御審議のほどよろしくお願いいたしま す。 ○永井部会長 御質問をお願いいたします。 ○中澤委員 非臨床の方ですが、14ページ2)の中枢神経系に対する作用で、資料は提出 されていないとありますが、これは2.4の8ページにある「中枢神経系に対する作用」と いうのは対応していないのでしょうか。 ○審査管理課長 御指摘の8ページにある記述は、毒性試験の投与量設定の試験、あるい は臨床試験からの考察が書かれておりまして、逆に申し上げますと、中枢神経に関する作 用を調べるための特別な検査を行わなかった理由がここに書いてあると考えていますが、 いかがでしょうか。 ○中澤委員 中枢には作用のないものとして最初から使ったということですね。  同様に中枢に関することなのですが、15ページの(2)分布、1)ラットにおける吸入投 与後の組織分布のところで、全身曝露した後に、各臓器の分布量を調べていますが、この 中には中枢は入っておりませんね。 ○審査管理課長 中澤先生が御指摘の引用されている文献自体を、今一度精査してみませ んと、先生の御指摘にはなかなか答えられないのだと思います。後日になって恐縮ですが、 この文献を精査した上で、またお答えをさせていただきたいと思いますが、中枢について は、少なくとも臨床試験のデータ、あるいは毒性試験のデータから見て、臨床上問題とな るような作用はないのではないかという御結論をいただいているものだと考えておりま す。 ○中澤委員 ただ、一部中枢に到達するのかについては興味がありますので、できればそ のことは知っておきたいと思います。 ○審査管理課長 お答えさせていただきたいと思います。 ○機構 今お話のあったように、論文等の原典をまた当たって、先生に後日御報告差し上 げたいと思いますが、お話がありましたように本薬は非常に半減期が短いというか、肺に 吸入して、肺の中で作用した後、速やかにヘモグロビンと結合して、さらに酸化されてメ トヘモグロビンに変化されていく作用機序を示しておりまして、肺血管血圧は低下させま すが、全身性の血管血圧は低下させないなど、全身性の作用を示さないことや、作用は局 所的であるという評価を受けていることからして、中枢等の遠隔地に大きく分布するもの とは考えられておりません。  いずれにしましても、原典、特にこの申請におきましてはいろいろな参考文献を利用し て説明されておりますので、原典についてはもう一度確認して、どのような実験体系であ ったかを含めて、中澤委員に御報告差し上げたいと思います。 ○永井部会長 この禁忌にある「右-左シャントの患者に使うと危険がある」というのは、 肺循環が非常に多くなり過ぎてしまうということなのですか、体循環量が減ってしまうと いう理解でよろしいのですか。 ○機構 右-左シャントのある患者に関しては有効性が認められていないことから、ここ に関して用いても意味がないため、このように書かれています。 ○永井部会長 致命的になるというのは、かなり危険だということですか。 ○機構 はい。 ○永井部会長 いかがでしょうか。よろしいでしょうか、御意見がありませんでしたら議 決に入ります。本議題について承認可でよろしいでしょうか。 ○永井部会長 本議題についてほかによろしければ承認「可」として報告とさせていただ きます。本剤は新有効成分ですので、既存の類薬がありません。薬事分科会に上程し、審 議することとさせていただきます。  議題6に入りますが、これは首藤部会長代理に進行をお願いいたします。 ○首藤部会長代理 議題6です。総合機構から説明をしてください。 ○機構 議題6、資料No.6、医薬品ガニレスト皮下注0.25mgシリンジにつきまして、医 薬品医療機器総合機構より説明いたします。本剤は、ガニレリクス酢酸塩を有効成分とす るゴナドトロピン放出ホルモン(以下、GnRH)アンタゴニストの注射剤であり、生殖補 助医療のための調節卵巣刺激下における早発排卵の防止薬として、1999年に米国、 2000年にEUにおいて承認され、2008年5月現在、74か国で承認されております。  国内の同種同効薬として、GnRHアンタゴニストである酢酸セトロレリクスが2006 年4月に承認されています。今般、日本オルガノン株式会社により、「調節卵巣刺激下に おける早発排卵の防止」を予定効能・効果とする医薬品として、製造販売承認申請がなさ れたものです。  本品目の審査に関して、専門委員として、資料No.15に記載されている委員が指名され ました。国内では、20□年より第I相試験が実施され、20□年より第II相試験がブリッジ ング試験として実施されています。海外臨床試験成績を利用した臨床データパッケージに より承認申請がなされました。  本品目の審査の概要について説明いたします。品質及び非臨床については、審査の過程 において、申請者から適切な対応がなされ、特に問題はないと判断いたしました。  臨床試験成績について説明いたします。有効性については、国内第II相試験の主要評価 項目である早期LH上昇抑制及び胎児心拍陽性妊娠率に関して、本剤0.25mgはLH上昇 が認められた症例は86例中1例で、1.2%で、本剤投与のうち妊娠に至った症例は84例 中20例で、23.8%であり、海外臨床試験と同様の有効性が認められております。このこ とより、調節卵巣刺激下における早発排卵防止に対する本剤の有効性は示されたと考えま した。  また、安全性については、国内第II相試験において特段問題となる有害事象は認められ ておらず、適切な注意喚起の下で使用されれば、大きな問題はないと考えました。  これらの成績により、本剤の有効性及び安全性は確認されたと考えられ、日本人不妊患 者に対する一定の有効性は期待でき、安全性の特段の問題も少ないことから、本剤は体外 受精プロトコールにおける早発排卵の防止薬として臨床現場に供する意義があり、本邦の 不妊治療における新たな薬物療法の選択肢となり得るものと判断いたしました。  なお、製造販売後調査として、未知の副作用、使用実態下における副作用発現状況、並 びに安全性及び有効性に影響を与えると考えられる要因を調査することを目的とした使 用成績調査、目標症例数1,000例を計画しており、さらに特定使用成績調査として、妊娠 例200例及び出生児100例に対する追跡調査が予定されています。  以上のような検討を行った結果、本剤を「調節卵巣刺激下における早期排卵の防止」の 効能・効果で承認して差し支えないとの結論に達し、本医薬品第一部会において御審議い ただくことが適当であると判断いたしました。  本剤は生物由来製品又は特定生物由来製品に該当せず、再審査期間は8年とすることが 適当であると判断しております。原体及び製剤ともに劇薬に該当すると判断しておりま す。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いします。 ○首藤部会長代理 ガニレスト皮下注に関して、御意見あるいは御質問はございますか。 よろしいですか。ないようでしたら議決に入ります。永井委員におかれては、申合せに基 づいて議決への参加を御遠慮いただくことになっています。本議題について承認を可とし てよろしいでしょうか。 ○首藤部会長代理 ほかによろしければ承認「可」として報告とさせていただきます。 ○永井部会長 次は議題7です。まず機構から概要の説明をお願いします。 ○機構 議題7、医薬品ビオプテン顆粒2.5%の製造販売承認事項一部変更承認の可否等 について、総合機構より御説明申し上げます。  本剤は、有効成分を塩酸サプロプテリンとし、「異型高フェニルアラニン血症における 血清フェニルアラニン値の低下」を効能・効果として、既に承認されている薬剤であり、 今回は新効能及び新用量の追加のための申請です。  本申請の対象疾患である「テトラヒドロビオプテリン反応性高フェニルアラニン血症」 (以下、本疾患)は、日本人研究者により存在が確認され、テトラヒドロビオプテリン欠乏 症である異型高フェニルアラニン血症とは考え難いものの、テトラヒドロビオプテリンの 投与に反応し、血中フェニルアラニン値の正常化が期待されている疾患です。  本疾患は、患児の体内にフェニルアラニンが蓄積し、生後早期に治療を開始しなければ 中枢神経障害を来す疾患であり、現時点ではフェニルアラニンの摂取を制限する食事療法 が唯一の治療法です。しかしながら、食事療法は味が悪いため、乳幼児が食事療法を嫌が り、普通食を摂ることで血中にフェニルアラニン値のコントロールが不十分となり、精神 発達障害を来す可能性があります。  本剤は長期にわたる継続投与が可能であり、精神発達障害の進行を抑制するのみでな く、食事療法の緩和、又は普通食の下での治療が可能になることが期待されている薬剤で す。本疾患の患者数については、年間5人程度と推定されています。  以上のような背景から、本邦では、特殊ミルク共同安全開発事業として、2000年に「治 療基準設定・専門委員会」が設置され、その後、この専門委員会により、日本人の患児 12名を対象に臨床研究が実施され、本疾患の診断基準が策定されるとともに、本剤の有 効性が明らかにされました。  一方、遺伝学的に、高フェニルアラニン血症の発症頻度の高い欧米におきましては、前 述した日本人研究者の報告や専門委員会の臨床研究報告を契機に研究が一気に進行し、20 □年に臨床試験が開始されました。2006年にはFDAから優先審査品目に指定され、 2007年5月にFDAに承認申請がなされ、12月に承認されております。  欧州では、2005年にEMEAから希少疾病用医薬品に指定され、米国と同じ臨床試験 成績を用いて、20□年□月に承認申請がなされています。  国内開発の経緯につきましては、関連学会から本剤の効能追加の要望書が提出されたこ となどから、申請者は国内の臨床研究報告のみを提示して「適応外使用に係る医療用医薬 品の取扱いについて」の通知に基づき、2007年3月に製造販売承認事項・一部変更承認 申請を行いましたが、その時点では本剤は海外では承認されておらず、当該通知の要件を 満たしていなかったこと、本剤の有効性及び安全性を評価するための臨床試験成績が提示 されていなかったことから、海外臨床試験成績がその後、追加提出されました。2007年 9月には、本剤は希少疾病用医薬品に指定されております。本品目の専門協議では、資料 No.15に示す方々を、専門委員として指名させていただいています。  次に臨床試験成績について説明いたします。本剤の有効性については、89例を対象と した海外のプラセボ対照第III相試験において、主要評価項目である「投与後6週目の血中 フェニルアラニン値の平均変化量」が、プラセボ群と比べて本剤群で有意に低下し、また、 経時推移を見ても、プラセボ群ではほとんど改善が見られなかったのに対し、本剤群では 投与後1週目〜6週目にわたって効果が持続したことから、示されたと判断しておりま す。  また、日本人のデータとしては、臨床研究として実施された長期投与試験に参加した9 例のうち、保護者の希望により中止となった1例を除く8例で、治療目標のフェニルアラ ニン値に維持されたことが示されています。  安全性につきましては、前述した海外第III相試験における副作用発現率は、本剤群19.5 %、プラセボ群23.4%、と同程度であり、また、重篤な副作用は認められず、安全上の 問題による投与中止例や死亡例も認められなかったことから、大きな問題はないものと判 断しております。しかしながら、日本人でのデータが極めて限られていることから、本剤 の有効性及び安全性の評価には限界があるものと考えます。  さらに、本剤は長期にわたって使用される薬剤であることなどから、本剤の投与全症例 を対象に、製造販売後調査を実施し、長期投与時の安全性及び有効性にかかわる情報を収 集する必要があると考えます。  以上のとおり、総合機構での審査の結果、投与全症例を対象とした使用成績調査の実施 を条件に、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されるこ とが適当と判断しました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年 が適当であると判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほどよ ろしくお願い申し上げます。 ○永井部会長 御意見、御質問をお願いいたします。ビオプテリン反応性であるかどうか は簡単に判断できるのですか。 ○機構 診断の基準が定まっていまして、まず、1回投与によって既承認の異型高フェニ ルアラニン血症か否かを鑑別します。その1回の投与によって、既承認の効能が否定され て、反応性が期待できた場合には、次に4回投与の試験を行います。そこで確定される場 合もありますし、確定しなくても反応する可能性がある場合には、その後4日もしくは1 週間程度の連日投与がなされる場合もあります。日本では、そこまでやって対象疾患であ ると診断されます。 ○永井部会長 国内に患者はどのくらいおられるのですか。 ○機構 発生数ですと年間5人くらいです。既承認の患者数は3年で2例です。 ○五十嵐委員 マススクリーニングにて知能障害を予防できる非常に有効な疾患の一つ が、フェニルケトン尿症という病気です。この病気の一部がBH4欠損に由来するものも ありますが、その頻度は非常に少なく、フェニルアラニン水酸化酵素の機能障害がほとん どを占めます。この患者さんたちに補酵素であるBH4を投与すると、フェニルアラニン 水酸化酵素の酵素活性が回復するのです。年間20〜30人のフェニルケトン尿症の患者さ んが発され、そのうちの5人くらいがこの薬剤を投与することによって非常に大きな恩恵 を受けることになります。まれな疾患で、しかも余り使われることのない薬なのですが、 オーファンドラッグとしてFDAが2007年12月に承認して、日本でも2008年に承認さ れるとすると、日本としては非常に早いのではないかと思います。いろいろな薬の承認が 遅れているのですが、小児科の立場としては大変有り難いということで追加させていただ きます。 ○永井部会長 アメリカより早く承認されてもおかしくなかった薬ですね。 ○本橋委員 国内の試験の結果で、痙攣の頻度が結構高いように思うのですが、海外と比 べていかがなものなのでしょうか。 ○機構 この痙攣は今回の対象疾患で見られたものではありません。 ○本橋委員 もともと持っている頻度が増えたということですか。 ○機構 いいえ、既承認の異型高フェニルアラニン血症における発現例です。こちらも確 認したのですが、今回の対象疾患ではないということです。 ○永井部会長 いかがでしょうか、もし御質問、御意見がございませんでしたら、議決に 入ります。本議題につきましてほかによろしければ承認可としてよろしいでしょうか。 ○永井部会長 承認「可」として薬事分科会に報告とさせていただきます。  続いて議題8〜議題11までを、首藤部会長代理に進行をお願いします。 ○首藤部会長代理 次はアクトネル錠です。機構から説明をお願いします。 ○機構 議題8、医薬品アクトネル錠17.5mg及びベネット錠17.5mgの製造販売承認事項 一部変更承認の可否等について、総合機構より御説明申し上げます。  本剤は有効成分をリセドロン酸ナトリウム水和物として、骨粗鬆症を効能・効果として 既に承認されているビスフォスフォネート系薬剤であり、今回は新効能及び新用量の追加 のための申請となります。  本申請の対象疾患である骨ページェット病は、過剰の骨新生によって層状骨がモザイク 模様を呈し、高度の血管新生と線維化を来す疾患ですが、本疾患の原因は完全には解明さ れておりません。「骨Paget病の診断と治療ガイドライン」には、主な臨床症状として、 骨や関節などの疼痛、骨変形、難聴、視力障害などの神経症状が挙げられており、血中ア ルカリフォスファターゼ(以下、「ALP」)や尿中デオキシピリジノリンなどが著明に上 昇することが知られています。  欧米では、骨ぺージェット病は骨粗鬆症に次いで罹患頻度の高い骨代謝疾患とされてい ますが、本邦では、その有病率は人口10万人当たり0.28人、患者数は200〜300人と推 定されています。  2004年8月に、日本骨粗鬆症学会から厚生労働省医薬食品局長宛に、「外国で広く使 用され骨Paget病への有効性・安全性が確認されているビスフォスフォネート系薬剤の承 認に向けた要望書」が提出されており、2006年6月には、本剤は希少疾病用医薬品に指 定されたことなどから、申請者は骨ページェット病を対象とした本剤の開発を行い、2007 年7月に製造販売承認事項・一部変更承認申請を行いました。本品目の専門協議では、資 料No.15に示す方々を、専門委員として指名させていただいています。  次に、臨床試験成績について説明いたします。本剤の有効性については、骨ページェッ ト病患者120例を対象とした、海外第III相試験において、主要評価項目である「Excess 血清ALP値が最大で75%以上の低下を示した被験者の割合」は、本剤群で85.0%であ り、対照薬のエチドロン酸二ナトリウム群の20.0%と比べて有意に高かったこと、骨ペ ージェット病患者12例を対象とした、非盲検非対照の国内第III相試験において、Excess 血清ALP値の変化率は、投与開始前と比べて、全評価時点で有意な低下が見られたこと などから、示されたと考えております。  安全性については、海外第III相試験において、対照薬と同様の安全性プロファイルが示 されたこと、国内第III相試験において、症例数は少ないものの、海外臨床試験と類似した 安全性プロファイルが示されたことなどから、大きな問題はないと判断しております。し かしながら、日本人での検討症例は限られており、本剤の有効性及び安全性の評価には限 界があるものと考えることから、本剤が投与される全症例を対象に、製造販売後調査を実 施し、長期投与時を含めた安全性及び有効性にかかわる情報を収集する必要があると考え ます。  以上のとおり、総合機構での審査の結果、投与全症例を対象とした使用成績調査の実施 を条件に、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されるこ とが適当と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は 10年が適当であると判断しています。薬事分科会では報告を予定しております。御審議 のほどよろしくお願いいたします。 ○首藤部会長代理 効能追加ということです。御質問、御意見をお願いします。 ○川西委員 既に骨粗鬆症の薬として出されたときの話だったかもしれませんが、注意書 で「服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避 けること」となっていますが、これはどういう理由からなのでしょうか。 ○機構 ビスフォスフォネート系薬剤では、一番コンプライアンスに影響する副作用とし て消化管障害が知られております。飲んですぐに横になってはならないという指示は、臨 床現場では使い勝手の悪い一面ではありますが、安全性に問題が生じますので、必要な注 意とされています。 ○首藤部会長代理 これは食後に服用するのですか、どこにも書いていないかと思ったの ですが。 ○機構 用法・用量に起床時と規定されています。 ○清水委員 薬剤師会の清水です。報告書の26ページの(6)の医療安全対策の項目です。 この効能・効果の追加については、この問題はとても大きな問題かと思っています。特に、 今、薬歴等を付けて調剤をしていて、履歴のある患者についてはチェックは可能かと思う のですが、最初に受ける患者のときに、今までウィークリーとされていたものがデイリー 投与されている患者の病名が、処方箋に書かれているわけではないので、薬剤師側で分か るわけではないのです。そういった意味で、本当に(6)の包装形態の対策だけで安全性が 担保されるのかについて、もう少し御意見をいただければと思います。 ○審査管理課長 週1回投与が出たときに、週1回間違いなく飲んでもらう、逆に申し上 げますとデイリーで飲まれないようにということで工夫をした包装形態にしたところで す。  一方におきまして、今回出てきますのは、日本では対象疾患の少ない患者を対象とした ものです。したがって、これ以外にもいろいろな資材みたいなものも提供するのだろうと は思いますが、今回、錠剤の包装の中でも、骨粗鬆症用の包装であるとか、ページェット 病の包装であるとかを明らかにしているところで、医療機関あるいは薬局において、十分 な注意をしていただくのは当然ですが、それでもまだこういう改善があるということでし たら、そのときにまた教えていただければと思います。現段階においては精一杯のことを やっているのではないかと考えています。 ○清水委員 これは個人的な考え方なのですが、今回たまたま後回しになってしまいまし たが、資料3で、グラセプターが商標名を変更して製剤申請をしている事例があります。 今回のものも、患者自身は少ない疾患であるということと、この17.5mgで二つの適応症 ということなのですが、この薬剤について言えば、2.5mgの製剤も既にあって、2.5mgが デイリー、17.5mgはウィークリーという、非常に強い現場の認識の中で、患者数の少な い疾患であっても、それを今度はデイリーに用いるのだというのは、なかなか現場として は辛いものがあるかなと感じています。  これは私は不勉強なところがあって、適切でないかもしれませんが、全く別の名称で承 認を受けることは難しい問題なのでしょうか。 ○審査管理課長 委員が引用されたグラセプターですが、これは徐放製剤で、従来のもの と物自体が異なるものです。今回は全く同じものです。全く同じものに二つの名称を付け た場合、いわゆる在庫の問題が発生してくるわけです。その辺りも含めて、どういう形が いいのかは今後考えなければなりません。確かに今二つ用意していますが、極論すれば、 これは混同されないようにしているわけで、物自体は同じものですから、医療機関におい て使っていこうと思えば、それは一つの中でやっていけるわけです。  今申し上げているのは、便利なようにそのような分け方をしているわけですが、物自体 は全く同じですから、それをデイリーで使おうが、週1回で使おうが、それは医療関係者 の専門的な判断の中でやっていくという問題でして、どちらがいいかはいろいろな議論が あるのだろうと思っています。 ○清水委員 今の点についてはお言葉ですが、これはウィークリーで購入したものはウィ ークリーを間違いないようにという注意を、作成時点で注意を払って作ったシートであっ て、例えばこれを14錠調剤して渡しても、患者はそれをデイリーで14錠飲むとは考えな い包装だと思うのです。したがって、在庫うんぬんの問題では片付かない問題もあるのか なと感じています。  ただ、御説明されていることも理解はできるので、できるだけ現場が、診療する側、処 方する側、調剤する側、患者にとっても、適切にいくような御指導をいただきたいと感じ ています。本当にこれで十分かなという気はしている次第です。 ○審査管理課長 医療安全の問題というのは、頭の中で考えたとおりに動くわけでもあり ませんし、現場での動きを見ながら必要な手を打っていくことが当然必要になってくるの だろうと考えています。そういう意味で申し上げますと、委員の御指摘のとおり、今後と も我々は、そこは十分に留意をしながらやっていこうと思っております。ありがとうござ いました。 ○首藤部会長代理 他にいかがですか、御意見がないようですので議決に入ります。永井 委員、野田委員におかれましては、議決への参加を御遠慮いただくことにいたします。本 議題について承認可としてよろしいでしょうか。 ○首藤部会長代理 ほかによろしければ承認「可」として報告とさせていただきます。永 井委員が退席です。 ── 永井委員退室 ── ○首藤部会長代理 次は資料9ですが、機構から説明をお願いします。 ○機構 議題9、資料No.9、医薬品ノバスタンHI注10mg/2mL並びにスロンノンHI注 10mg/2mLの製造販売承認事項一部変更承認の可否、再審査期間の指定につきまして、機 構より説明させていただきます。  本剤は、直接的抗トロンビン作用を有するアルガトロバン水和物を有効成分とする注射 剤であり、国内において、1990年1月に「慢性動脈閉塞症(バージャー病・閉塞性動脈硬 化症)における四肢潰瘍、安静時疼痛並びに冷感の改善」を効能・効果として承認され、 その後、1996年4月に効能が一部追加されております。  今般、ヘパリン起因性血小板減少症(以下、HIT)又は血栓塞栓症を併発したヘパリン 起因性血小板減少症(以下、HITTS)患者を対象とした国内臨床試験成績を基に、ヘパ リン起因性血小板減少症における血栓症の予防及び治療を効能・効果とする希少疾病用医 薬品として製造販売承認事項一部変更承認申請が行われたものです。  なお、今回の申請効能については、米国、カナダ、欧州8か国において、既に承認され ています。また、本剤は、2004年3月22日に「HITにおける血栓症の予防及び治療、 経皮的冠インターベンション施行時(HIT発症リスクのある患者に対して施行する場合 を含む。)の血液の凝固防止、血液体外循環(血液透析)時の灌流血液の凝固防止」を予 定される効能・効果として、希少疾病用医薬品に指定されています。本品目の審査に関し ましては、専門委員として資料No.15に記載されている委員が指名されています。  本品目の審査の概略について説明いたします。品質及び非臨床については、当該効能追 加に係る新たな資料は提出されておりません。  臨床試験成績について、説明いたします。国内臨床試験は医師主導の臨床試験として、 HIT及びHITTS患者8例を対象に非盲検非対照デザインで実施されました。有効性 については、主要評価項目である「すべての原因による死亡、四肢切断及び新規血栓塞栓 症の発生」の内訳のうち、「死亡」及び「四肢切断」の発生は認められず、「新規血栓塞 栓症」の発生は1例のみでした。副次的評価項目である治験薬投与期間中の「血小板数の 回復」が6例中5例、「抗凝固療法の達成」が8例中7例に認められました。一方、安全 性については、1例に大出血として頭蓋内出血が認められたものの、それ以外に大きな問 題は認められませんでした。  機構は、本剤が希少疾病用医薬品に指定されており、本剤の有効性については、国内臨 床試験の症例数が8例と極めて限られているものの、国内臨床試験成績が海外臨床試験成 績と矛盾するものではなく、また、ガイドライン、教科書及び総説等において、HITに 対する第一選択薬の一つとして推奨されていることも踏まえ、本邦においても本剤の有効 性が期待できるものと判断いたしました。  また、安全性については、出血や肝機能障害等のリスクに十分に注意する必要があるも のの、適正な使用状況下であれば、臨床上大きな問題が起こる可能性は低いと判断いたし ました。  なお、今回の申請は、国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施 することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性 に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じることを承認条件と する必要があると判断いたしました。  以上のような検討を行った結果、全症例の使用成績調査を承認条件として付した上で、 本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくこ とが適当であると判断いたしました。  本剤は、希少疾病用医薬品に指定されており、再審査期間は10年とすることが適当で あると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろし くお願いいたします。 ○首藤部会長代理 ただ今の品目について、御意見、御質問をお願いします。申請時の効 能が、「ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)における血栓症の予防及び治療」というこ とですが、審査結果は「血栓症の発症抑制」となっていますが、どういう制限になってい るのかよく分かりませんが、説明をいただけますか。 ○機構 申請時は「予防及び治療」となっていましたが、本剤に対しては、積極的な血栓 に対する治療が、臨床試験の結果示されたわけではありません。それから、発症の抑制と いうことで、基本的には連続的に治療を行うということで、もちろん血栓ができているも のは溶かすことも含めた上での発症の抑制が、効能・効果としては適当であろうと判断し た次第です。 ○首藤部会長代理 本件の議決に入りますが、本件は皆さんが議決に参加いたします。承 認可としてよろしいでしょうか。 ○首藤部会長代理 特に異議がなければ承認「可」として報告とさせていただきます。  続いて議題3で回ってきたものですが、グラセプターカプセル0.5mg錠です。説明をお 願いします。 ○機構 議題3、資料3、医薬品グラセプターカプセル0.5mg、同1mg、同5mgの生物由 来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並び に毒薬又は劇薬の指定の要否について、機構より御説明申し上げます。  免疫抑制剤であるタクロリムス水和物は国内でプログラフとして「各種移植における拒 絶反応の抑制、並びに骨髄移植における移植片対宿主病等の抑制」等の適応を取得してお ります。  各種臓器移植患者では、拒絶反応による移植臓器の廃絶を防ぐため、生涯にわたり免疫 抑制剤の投与が不可欠であり、臓器移植患者にとってノンコンプライアンスは拒絶反応の 発現や死亡等のリスクとなる可能性が示唆されていることから、移植の長期的な成否を考 える上での不可避の問題となっています。  1日当たりの服用回数がコンプライアンスと相関しているとの報告も認められるため、 今般、アステラス製薬は、臓器移植患者において1日2回の用法であるプログラフカプセ ルに対し、1日1回投与の新規経口カプセル製剤(以下、本剤)を開発いたしました。本剤 は欧州で2007年に承認されていまして、カナダ、アルゼンチン及びウルグアイでも承認 されています。本品目の専門協議では本日の配付資料No.15に示すような専門委員が指名 されています。  審査の概要です。品質に関して提出された資料の内容は適当であると判断しました。非 臨床に関しては、資料は提出されていません。臨床試験成績としては、海外臨床試験を中 心に、臨床薬理試験計10試験、並びに各種移植患者を対象とした移植試験計11試験が評 価資料として提出されています。  まず、有効性に関してですが、プログラフカプセル、本剤及びネオーラルを1年間投与 した海外第III相新規腎移植試験において、主要評価項目である「1年無効率」は、プログ ラフ群が15.1%、本剤群14%及びネオーラル群が17%であり、プログラフ群と本剤群は ともにネオーラルに対して、非劣性でありました。また、プログラフカプセルと本剤の有 効性に大きな差異は認められないと判断いたしております。プログラフ群と比べて本剤群 では、投与初期に血中トラフ濃度は低く推移する傾向がありましたが、有効性及び安全性 に与える影響は特に認められなかったことから、プログラフと同様に血中トラフ濃度の維 持管理及び臨床症状の確認を十分に行いながら、投与量を調節する必要があると考えまし た。  一方、各種移植患者を対象としたプログラフから本剤への切換え試験成績より、プログ ラフカプセルと同一の1日用量で本剤への切換えは可能であると考えるものの、プログラ フカプセル投与時と比較して血中トラフ濃度が低下する傾向が認められたため、特に切換 え後定常状態に達するまでは血中トラフ濃度の測定を実施して、適宜用量調整を行う必要 があると考えました。  以上、提出された臨床試験成績からプログラフと本剤の有効性に大きな差異は認められ なかったため、血中トラフ濃度の測定を実施しながら用量調整を行う限り、本剤でもプロ グラフカプセルと同様の有効性が期待できると判断いたしました。  一方、安全性に関してですが、提出された国内外の臨床試験成績から、プログラフカプ セルと比較し、本剤において特段注意すべき事項は認められなかったことから、血中トラ フ濃度の測定を実施しながら用量調整を行う限り、安全性においてもプログラフと同程度 であり、大きな差異は認められないものと判断いたしました。  以上、機構での審査の結果、血中トラフ濃度の測定を実施しながら用量調整を行う限り、 プログラフと本剤の有効性及び安全性に大きな差異は認められないものと判断し、効能・ 効果を「腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植における拒絶反応の抑制、並びに、骨 髄移植における拒絶反応及び移植片対宿主病の抑制」とすることが適当と判断し、医薬品 第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。  なお、本剤は生物由来製品又は特定生物由来製品に該当せず、製剤は劇薬に該当し、ま た、新剤型医薬品であることから、再審査期間は4年であることが適当であると判断して います。薬事分科会では報告を予定しております。ご審議をどうぞよろしくお願い申し上 げます。 ○首藤部会長代理 タクロリムス水和物は、1日1回の製剤でございます。いかがですか。 ○清水委員 二点教えていただきたいのですが、一点は持続性製剤になりますと、一つの 製剤の量が通常、規格が大きくなります。例えば、当然のことですが、ニフェジピンのア ダラートですと、通常のカプセルは5mg、10mgのカプセルで、Lになると10mg錠、 20mg錠になり、CRになると40mg錠になるというようになります。今回の場合は、規格 自体は1日2回のものと同じ規格での申請になっているかと思いますが、その辺のところ がよく理解できなかったのが一点です。  二つ目として、この製剤としての徐放のメカニズムです。一般的に徐放カプセルはスパ ンスール型と拡散型の二つの形があるかと思うのですが、どちらの形を取っているのか、 教えていただければと思います。 ○機構 規格に関しては、タクロリムスに関しては、個々の患者において用量を調整して いくという形になっておりますので、プログラフと同じ用量でも調節が可能かと思いま す。徐放性の形としては、□□□□□□□□□□の製剤になります。 ○川西委員 ちょっと本質と違うことかもしれませんが、細かいことですが、米国で2005 年12月に申請されているとなっていて、もう既に2年以上経っているのですが、この辺 の事情というのは、何かあるのでしょうか。 ○機構 米国の状況については、現在、腎移植と肝と心臓でなされておりましたが、心臓 に関しては、新規患者の移植のデータがないということから、not approvableという形 で出ております。肝臓と腎臓に関しましては、現在approvableというコメントがFDA の方から出ておりまして、今そのデータについて、アステラスとFDAの方で議論をして いるというような段階になっております。 ○首藤部会長代理 よろしいですか。ほかにございますか。よろしければ、議決に入りた いと思います。本議題は五十嵐委員、本橋委員におかれましては、薬事分科会申合せに基 づきまして、議決への参加をご遠慮していただきます。本議題につきまして、承認を「可」 としてよろしいですか。何かありますか。 ○審査管理課長 いや、議事録のために申し上げておきますと、この議題の間、引き続き 永井委員は別室で待機されておりますので、その点よろしくお願いしたいと思います。 ○首藤部会長代理 分かりました。いかがでしょう。承認可でよろしいですか。 ○首藤部会長代理 本件は承認「可」として薬事分科会へ報告とさせていただきます。  次は資料No.10、タクロリムス水和物を希少疾病用医薬品として指定することについての 可否でございます。これも永井委員におかれましては、本議題の審議の間、別室でご待機 いただくことになっています。事務局から概要説明をお願いします。 ○事務局 それでは、タクロリムス水和物を希少疾病用医薬品として指定することの可否 に関して、資料10に基づいて、説明いたします。資料10を1枚めくってください。事前 評価資料がありますので、そこをご覧ください。品目の名称はタクロリムス水和物、予定 される効能・効果は重症筋無力症ですが、現在のタクロリムス水和物製剤の効能・効果の 範囲である全身型重症筋無力症(胸腺摘出後の治療において、ステロイド剤の投与が効果 不十分、又は副作用により困難な場合)は除かれております。申請者はアステラス製薬株 式会社でございます。  まず対象患者数についてですが、2006年に行われた免疫性神経疾患調査研究班の疫学 調査では、有病率は10万人当たり11.8人であり、重症筋無力症の患者数は約15,100人、 特定疾患医療受給者証の交付を受けた件数は、2006年で14,851件、受給率は約80%と推 定すると、推定患者数は19,000人弱となります。以上により、我が国の重症筋無力症患 者数は5万人に満たないと考えられますので、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすもの と判断されます。  次に医療上の必要性についてですが、重症筋無力症の治療としては、胸腺摘除術や薬物 療法が行われています。胸腺摘除術は全身型重症筋無力症の標準治療とされておりました が、現在では胸腺摘出による明確なエビデンスがないことから、緩解や改善の可能性を高 める1つのオプションとされております。薬物療法としては抗コリンエステラーゼ剤、ス テロイド剤、免疫抑制剤等がありますが、抗コリンエステラーゼ剤は対症療法であり、長 期投与による副作用を考慮し、必要最少量を使用することとされており、免疫抑制剤は胸 腺摘出後でステロイド剤が効果不十分等の全身型重症筋無力症の適応に限られています。  胸腺を摘出しない患者等であっても、ステロイドの長期連用による副作用の防止・軽減 のためには、本剤の必要性が高く、本剤の有効性・安全性が検証されれば、重症筋無力症 の治療に貴重な選択肢を与えるものと考えられています。  三つ目に本剤の開発の可能性についてですが、現在国内では第III相の臨床試験が実施さ れており、本剤の開発の可能性はあると考えられます。  以上のことから、本剤については希少疾病用医薬品としての要件を満たすと判断してお ります。ご審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○首藤部会長代理 いかがでしょうか。予定される効能・効果に書いてありますように、 実際に使われているわけですが、制限がついているという状況です。よろしければ、議決 をしたいと思います。本件は五十嵐委員、本橋委員におかれましては薬事分科会申合せに より、議決に参加を御遠慮いただくことにいたしております。本議題について、希少疾病 用医薬品としての指定を「可」としてよろしいですか。 ○首藤部会長代理 それではご異議がないようですので指定を可として、薬事分科会に報 告とさせていただきます。 ── 永井委員入室 ── ○首藤部会長代理 永井委員がお見えになりました。次は議題11、インフリキシマブ(遺 伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの可否についてです。事務局からご 説明ください。 ○事務局 インフリキシマブ(遺伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの 可否に関して、資料11に基づいて説明をいたします。資料11の一番上にあるタグを御覧 ください。事前評価資料が取りまとめられておりますので御説明いたします。品目の名称 はインフリキシマブ(遺伝子組換え)、対象疾病が強直性脊椎炎、申請者が田辺三菱製薬 株式会社でございます。  まず、対象患者数についてですが、2005年に厚生労働省の患者調査では、約2,000人 となっています。また、2001年度の東京都特殊疾病対策協議会報告書によると、東京都 の認定患者数は235人で、この人数に基づくと、全国の総患者数は約2,450人と推計され ます。以上の調査結果を勘案すると、本邦の強直性脊椎炎患者数は数千人程度と推察され、 5万人に満たないことから、指定要件を満たすと判断しております。  次に医療上の必要性についてですが、現在は強直性脊椎炎の根治療法はなく、薬物療法 として非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やプレドニゾロン等のステロイドが当該疾患に 対して効能・効果を有していますが、NSAIDs不応例等に対して有効な薬物治療は確立さ れておりません。本剤は欧米の臨床試験において、NSAIDsでは効果が不十分な患者の症 状などを有意に改善することが示されております。したがいまして、本剤は強直性脊椎炎 の治療に貴重な選択肢を与えるものと考えられます。  三つ目に本剤の開発の可能性についてですが、本剤は2003年に欧州、2004年に米国に おいて強直性脊椎炎に係る効能・効果で承認されており、現在国内でも臨床試験が実施さ れております。よって本邦においても、本剤の開発の可能性はあると考えられます。 以 上のことから、本剤については、希少疾病用医薬品としての要件を満たすと判断しており ます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○首藤部会長代理 いかがでしょうか。免疫系の病気というのは、最近増えているような 気がするのですが、これはどうなんですか。全然分からないですか。 ○事務局 この病気は原因自体は未解明ですが、TNFαが病態生理に関与するのではな いかということで考えられているようで、実際こういった患者さんの血中TNFαの濃度 が上昇しているとか、そういったことがあって、この製剤を使うことで、同様に効果を期 待できるのではないかということで、開発が進められているということです。 ○首藤部会長代理 いかがでしょうか。特にご意見がなければ、議決に移りたいと思いま す。本件は永井委員、野田委員におかれましては、薬事分科会申合せに基づきまして、議 決への参加をご遠慮いただくことになっています。本剤を希少疾病用医薬品としてよろし いですか。 ○首藤部会長代理 御異議がないようでございますので指定を「可」といたしまして、薬 事分科会に報告とさせていただきます。永井委員に代わります。 ○永井部会長 では報告事項にまいります。説明をお願いいたします。 ○機構 議題1の「医療用医薬品の再審査結果」について、御報告いたします。資料12-1 〜資料12-5となっており、これらはいずれも医薬品再審査確認等結果通知書になってお ります。  資料No.12-1は、一般的名称はオメプラゾール、販売名はオメプラール錠10ほか。資料 No.12-2は、一般的名称はエポエチン ベータ(遺伝子組換え)、販売名はエポジン注アン プル1500ほか。資料No.12-3は、一般的名称はニトロプルシドナトリウム、販売名はニト プロ持続静注液6mgほか。資料No.12-4は、一般的名称は塩酸タリペキソール、販売名は ドミン錠0.4。資料No.12-5は、一般的名称はランソプラゾール、販売名はタケプロンカプ セル15ほか、となっております。これらの品目につきまして、市販後の使用成績調査、 市販後臨床試験、特別調査の成績等に基づいて、再審査申請が行われ、審査の結果、薬事 法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、す なわち効能・効果、用法・用量の承認事項について、変更の必要はないカテゴリー1と判 定したものです。以上です。 ○永井部会長 ありがとうございます。何か御質問はございますか。よろしいでしょうか。 よろしければ、御報告いただいた事項につきましては御確認いただいたことにいたしま す。  「その他」でございますが、「小児薬物療法検討会議」の関係で、御説明をいただくこ とになっております。よろしくお願いいたします。 ○事務局 資料13に基づきまして、御説明いたします。本議題は小児薬物療法検討会議 で検討された品目についての事前評価のお願いでございます。こちらは本年2月22日の 本部会でも同様の事前評価をメトトレキサートについて御検討をいただいておりますが、 事前評価の概略について御説明いたします。  まず、資料の1ページの裏を御覧ください。小児の薬物療法に関しましては、治験実施 の困難などの理由から、データの集積が少なく、医療現場の先生方の使用経験に負うこと が非常に多い分野であることが言えようかと思います。このような小児医療における問題 点を解決するために、平成18年3月に小児薬物療法検討会を立ち上げております。この 会議につきましては、隣の3ページですが、御覧の17名の小児領域における医学・薬学 的な学識経験を有する先生方にお集まりいただき、国立成育医療センターの名誉総長の秦 先生の座長の下、既に日本で承認を受けている医薬品を対象として、諸外国において効能 ・効果、用法・用量が認められている療法に関して、小児薬物療法の有効性、安全性に関 する文献等のエビデンスを収集、評価し、さらには国内における小児への医薬品の処方実 態などを把握しまして、これらの用法・用量、効能・効果について、エビデンスに基づい た情報提供を通じて、適切な小児薬物療法が行われるよう環境整備を進めることでござい ます。  次のページになりますが、この会議の中には、個別の医薬品のエビデンスのレベルや報 告書の記載ぶりを統一的な観点で検討することを目的としたワーキンググループを設け、 コアメンバーとして、御覧の4名の先生にご参画いただいております。さらには、報告書 作成に携わっていただいた小児科学会の先生方にも、ご参加をいただきながら、議論を進 めているところでございます。このワーキンググループの座長は、本日参考人としてお越 しいただいております国立成育医療センターの中村先生にお願いしております。  次のページを御覧ください。小児科学会のご意見などを踏まえまして、まず8つの医薬 品の療法に関しまして、検討を進めているところでございます。この中の4番目のメトト レキサートに関しましては、本年の2月の本部会にて事前評価をいただいております。今 回は7番目のA型ボツリヌス毒素(ボトックス)につきまして、平成20年2月8日に開催 されました第5回小児薬物療法検討会議において作成されたレポートに基づき議論が行 われ、小児脳性麻痺の下肢痙縮に伴う尖足に関する承認事項、用法・用量、効能・効果な ど、一部変更の方向性が必要であるといったようなことを御結論いただいているところで ございます。  資料の最初にお戻りください。このような小児薬物療法検討会議における検討を踏まえ まして、本日、薬事・食品衛生審議会におきまして、このようなレポートの内容、あるい は一部変更の方向性に関しまして、事前評価をお願いしたいと考えております。この評価 を踏まえまして、もしよろしければ、私どもの方から当該医薬品の製造販売業者に対しま して、一部変更承認の申請を行うように要請し、申請された後には機構におきまして、迅 速審査を経て、また、薬事・食品衛生審議会におけるご審議をいただき、一部変更の承認 というような方向に進みたいと考えております。  本日は資料としてボトックスの報告書を提出しております。こちらは小児神経学会の根 津先生におまとめいただき、小児薬物療法検討会議の議論を経ているものでございます が、この内容につきまして、ワーキンググループ座長の中村先生から御紹介いただければ と思っております。よろしくお願いします。 ○永井部会長 ありがとうございます。それでは参考人としておいでいただいております 中村先生から、A型ボツリヌス毒素の報告書につきまして御説明をお願いいたします。 ○中村参考人 根津先生におまとめいただきました報告書について、簡単に御紹介いたし ます。資料No.13を3枚めくっていただきますと、一番上に「A型ボツリヌス毒素」と書 いてございます。下にページ1と振ってありますが、ここから先が検討会議の報告書でご ざいます。早速始めます。次の2ページにございますが、本医薬品の予定効能・効果は、 小児脳性麻痺患者の下肢痙縮に伴う尖足ということで、2歳以上という制限が括弧付きで ついております。対象の疾患は脳性麻痺に伴う下肢痙縮でして、尖足があるということで、 歩行が困難になって自立歩行ができない、そういう場合には車椅子、歩行器や杖が必要と なりますし、また、歩行ができても容易に転倒するため、しばしば装具を必要とします。  この疾患は理学療法や経口筋弛緩薬による改善が余り芳しくなく、進行していきますの で、しばしば5歳以降にアキレス腱延長術等の整形外科的手術を必要といたします。この ような重篤な病態につきまして下肢痙縮を改善し歩行機能を改善するということで、本効 能について、英、独、仏などで承認されております。2ページの予定用法・用量のところ ですが、罹患している腓腹筋の内側頭及び外側頭のそれぞれ2か所に筋肉内注射する。初 回推奨投与量は4単位/Kg体重とし、両麻痺では両肢に分割投与する。1回の総投与量は 200単位を超えないこと。それから、再投与は前回の効果が消失した場合に可能であるが、 投与間隔は3か月ごとより頻回であってはならないというふうにしております。これは 英、独、仏の添付文書の記載内容と見比べていただきますとわかりますが、海外の少ない 初回推奨投与量と、より広い投与間隔を採用して、安全に留意している。根津先生をはじ めとする現場の先生も、それで日本では大丈夫だろうということで、そういう投与量にし ております。  使用上の注意事項ですが、施注する医師は、脳性麻痺の病態や下肢筋の詳細な解剖に関 して、十分な知識を持たなければならない。それから初回投与による効果が不十分な場合、 用量及び投与部位(海外での使用経験から、ヒラメ筋・後脛骨筋・大腿屈筋群・大腿内転 筋群等が推奨される)を再検討した上で、2回目以降の治療を行うことといたしました。 これにつきましては、海外の臨床試験でもそのようなデータがありますし、海外の添付文 書においても、そういう記載があるものもありますので、こういう形で注意事項として入 れることを検討会では考えております。  有効性ですが、海外での承認の際のピボタルな臨床試験としましては、12〜14ページ にありますKomanらの無作為化二重盲検比較試験、及び14〜16ページにある多施設オー プンラベルの試験の2つが論文として公表されておりまして、これらの試験結果を中心に 評価いたしました。無作為化二重盲検比較試験では、2歳〜16歳の脳性麻痺児56名に本 剤、58名にプラセボを投与し、2〜12週後について評価しております。観察的歩行評価、 Physician Rating Scale(PRS) というもの、及び足関節の随意的可動域の変化につい て、有意な改善を認めています。また、長期試験でも有効性が報告されております。  1995年以降、本剤は60か国以上で2歳以上の下肢痙縮に伴う尖足に対して承認されて おり、また27〜28ページにありますように欧州主要国での最近10年間の治療実績につい てのコンセンサスの報告がありますが、そこでも有用性に対するコンセンサスが示されて おります。さらに、今回この報告書作成のために追加して行われた下肢痙縮治療に関する 国内使用実態調査の結果は、34〜40ページとかなり長いものがまとめられておりますが、 その中でも有効性はかなり高いというようなことが示唆されております。  続きまして、安全性についてですが、施注部位周辺への浸潤、あるいは薬理効果の過剰 な発現による副作用というものが一番気になるところかと考えます。国内における製造販 売後調査によりますと、眼瞼痙攣や片側顔面痙攣など、既に承認されている適応に対する 治療については、眼障害、兎眼等、痙性斜頚の治療では嚥下障害や垂れ首などが報告され ていますが、これらの症状は一過性であったとされています。また、製造販売後調査の重 篤な有害事象のうち、調査担当医が本剤との因果関係を否定していないものは17例にお ける25件で、霧視、視力低下、肺炎、誤嚥、細菌感染等とされております。  ちょっと前後しますが、4〜5ページに米国の添付文書の記載のところに参考情報とい うものがございますが、2008年2月8日、米国FDAは、ボトックスの投与時の呼吸障 害や死亡に関する報告について、米国では適応外である小児脳性麻痺の下肢痙縮への投与 例も含まれていること、また、現在、製薬企業により提出された臨床データに基づき、投 与した筋肉以外の遠隔筋に対する影響も含め、本剤の安全性についてレビューしている旨 を公表しております。これにつきましては日本ではグラクソ・スミスクライン社が販売し ていますが、米国の製薬企業でありますアラガン社は、死亡を含む小児の重篤な症例の大 部分は患児の原疾患に由来すると考えられること、また、小児脳性麻痺の下肢痙縮時に使 用した際の用量としては、欧州で承認されている通常の使用量と比較して、高用量が投与 されていることなどから、本剤の投与が直接死亡リスクの増大に関係していないという見 解を示しておりまして、関連データについてFDAに提出しているとのことであります。  また、このことにつきましては、少し後ろの方で、43ページに書いております。安全 性の総合評価のところの後半ですが、欧州では2007年6月にドクターレターが発出され て、注意喚起がされておりますし、日本の添付文書においても、既に同様の注意喚起がな されています。また、報告書の中に小児神経学会でのガイドライン(案)というものがあ りますが、そこでも十分注意して使うというような旨の記載がございまして、今後十分な 注意喚起がされるものと考えております。  本剤は添付文書に記載されている承認条件として、既に本剤についての講習を受け、本 剤の安全性及び有効性を十分に理解し、本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある 医師によってのみ用いられるよう必要な措置を講じることとされておりまして、事実上こ ういった講習を受けた医師でないと、投与できないということになっております。したが いまして、小児脳性麻痺の下肢痙縮治療に対して、十分な知識・経験のある医師が適正な 用法・用量を遵守し、注意深く投与を行うのであれば、安全性は確保されると判断いたし ました。以上でございます。 ○永井部会長 ありがとうございました。何か、御質問はございますか。いかがでしょう か。 ○清水委員 今、御説明があった、その最後の医師の講習の中でされていることとは思う のですが、ご承知のように本剤は毒薬でございまして、残薬が出たときの処理というのが 非常に慎重に行わなければならないものでございますので、そこら辺の注意についても、 もう一度喚起していただければと考えております。 ○事務局 ありがとうございました。今、御指摘いただきました点を企業の方に間違いな く伝えておきたいと思います。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。ほかにございませんか。  もし、ございませんでしたら、ただ今お話いただきましたA型ボツリヌス毒素の報告書 の内容は御確認いただいたということにいたします。  今後、厚生労働省から関係企業に承認申請の働きかけが行われるということでございま す。その際には、本日の御意見を併せてお伝えいただきたいと思います。 ○事務局 ありがとうございました。今後、厚生労働省の方から関係企業に対して、報告 書の内容に基づいた承認申請の要請を行います。承認申請があれば、総合機構での審査の 後、いずれ当部会にて御報告いたしますので、その際にはまたよろしくお願いしたいと思 います。ありがとうございました。 ○永井部会長 本日の議題は以上でございますが、事務局から連絡事項はございますか。 ○事務局 次回の部会ですが、既にご案内のように7月25日(金)午後4時からとさせ ていただく予定でございますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。 ○永井部会長 それでは本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 河野(内線2746)