08/05/21 遠隔医療の推進方策に関する懇談会(第4回議事録) 遠隔医療の推進方策に関する懇談会第4回会合(議事要旨) 1.日 時 平成20年5月21日(水) 18:00〜20:03 2.開催場所:厚生労働省18階 専用第22会議室 3.出席者 (1)構成員(敬称略) 金子 郁容(座長)、石田 清信(秋草 直之代理)、内田 健夫、太田 隆正、大 山 永昭、川島 孝一郎、久島 昌弘、栗原 毅、仁坂 吉伸、本田 敏秋、本多 正幸、 松原 由美、村瀬 澄夫、吉田 晃敏、和田 ちひろ、國領 二郎(オブザーバー) (2)総務省 中田政策統括官、松井大臣官房審議官、鈴木総合政策課長、安藤地域通信振興課 長、青山地方情報化推進室長、市橋自治政策課長、宿谷地域企業経営企画室課長 補佐、中野調整課課長補佐 (3)厚生労働省 佐藤指導課長、新木研究開発振興課長、冨澤医療機器・情報室長、宇都宮大臣官 房総務課企画官 (4) 経済産業省吉崎大臣官房審議官、渡辺医療・福祉機器産業室長 4.配布資料 資料1「遠隔医療の推進方策に関する懇談会」第3回会合議事要旨 資料2 論点整理(これまでに発表された意見) 資料3 内田構成員発表資料 資料4 川島構成員発表資料 資料5 石田構成員代理発表資料 資料6 大山構成員発表資料 資料7 アンケート調査結果 資料8 モデル事業の実施について(案) 資料9 中間取りまとめについて(案) 資料10 懇談会開催要綱・構成員一覧 5.議事概要 (1)開会  ○金子座長より、第4回懇談会の概要について説明がされた。 (2)日本医師会の遠隔医療に対する基本的考え方 ○内田構成員より、日本医師会の遠隔医療に対する基本的考え方と取り組みについて 説明がされた。(資料3参照) ○要旨は下記の通り。 ・日本医師会では、ORCAプロジェクト等の医師会総合情報ネットワークを構築し、 日本医師会内の会議でTV会議システムを活用する等IT化に関して取り組んでい る。 ・遠隔医療に対する基本的な考え方は、診療の補完的な役割。医師不足等の地域に おける補助的な手段であるシステムには、汎用性と継続性がないと地域住民のニ ーズが出てこない。 ・遠隔医療の適用範囲は、離島・へき地等、対面診療が困難な場合、医師不足など 遠隔医療が不可欠な場合に限り、在宅の慢性期患者や保健指導あるいは、予防・ 健康維持への活用が大きく開かれる。 ・遠隔医療の課題には、リスクと責任の所在、プライバシー保護、費用対効果、医 療の質・安全対策の担保、モデル事業の検証といった点がある。 ・費用負担については、負担主体と適正な価格設定が課題である。高額なシステム 費用から考えると患者負担は難しく、医師不足地域においては補助金等が妥当と 考えている。 (3)在宅医療における遠隔医療の必要性 ○川島構成員より、在宅療養支援診療所である仙台往診クリニックでの取り組みと遠 隔医療の必要性について説明がされた。(資料4参照) ○要旨は下記の通り。 ・仙台往診クリニックでは、在宅療養において電気通信振興財団の研究費等により テレビ電話を活用したプロジェクトの実施経験がある。患者への説明がなされれ ば、媒体として電話やFAXで十分である。 ・遠隔医療を在宅医療の代替にすると、医師が往診や対面診療をせず、ニーズが増 加している在宅の看取りを医師が行わなくなることを危惧している。 ・現状において遠隔医療は、医対医は有効であるが、医対患者では不必要である。 産科のない地域や医師不足の離島等では検討の余地はある。また、今後の課題と しては、在宅医の養成のほか、通常の電話対応及び画像を用いた場合の対応に関 する遠隔医療のエビデンスが必要であると考えている。 (4)遠隔医療の普及に向けて ○ 石田構成員代理より、富士通株式会社の遠隔医療への取り組みについて説明がさ れた。(資料5参照) ○ 要旨は下記の通り。 ・地域間・地域内格差解消のひとつの手段として、遠隔医療は有効ではないか。 ・当社では予防、治療、フォロー(慢性疾患など)における活用事例がある。予防 の事例の成功要因は、保険者に特定健診が義務化されたため既にビジネスモデル が存在する点が、治療やフォロー事例の成功要因は人的ネットワークが形成され ている点が大きく、課題にはそれぞれシステムの費用の問題が挙がっている。 ・医療資源の有効活用には地域のニーズに合った地域医療連携が重要であり、持続 性確保に向けた仕組みづくりや全体最適を考慮したICT化の推進、都道府県の枠 を超えてつながる互換性のあるシステム構築が求められる。遠隔医療普及に向け て、体制面、ICTの両面からの環境整備が必要である。 (5)遠隔医療の課題と展望 ○大山構成員より、現在のICT技術状況を踏まえ患者に近い立場から遠隔医療の利 用についての説明がされた。(資料6参照) ○要旨は下記の通り。 ・現時点の遠隔医療を考えるにあたっての留意点として、明確なニーズ、後年度負 担、人材の確保(育児休業中の医師の活用)、安全性の確保、全体最適化を考慮し たシステム構築・運用コストの削減などがあげられる。 ・在宅医療への移行に伴い削減された費用を、地域の支援に充てるようなマクロ的 視点も重要である。 ・医療分野の情報化は、リアル段階を経て現在ネットワーク化からサイバー空間に 拡張する段階にある。また、医療の情報化(IT新改革戦略)においては、効果的 なコミュニケーションの実現として位置づけられている。 ・患者、家族、親族の視点から考えると、入院病棟のIT化ヘのニーズがある。また 様々な不安解消のためにも遠隔医療の必要性は明確である。ただ、財源不足を考 えると合理的かつ明確なニーズがあり、国民の満足につながることが不可欠であ る。 ・既に遠隔医療に関する要素技術は整っており、今後は社会における効果、価値の 実証が必要である。 (6)遠隔医療に関するアンケート調査の結果概要 ○株式会社NTTデータ経営研究所ライフサイエンス戦略チーム 米澤氏(資料7− 1、7−2参照)より、住民、自治体、診療所、病院に対したアンケート調査の結 果についての説明がされた。 ○要旨は下記の通り。 ・住民(対象:外来患者およびその家族)、自治体(対象:条件不利地、へき地)、 診療所(対象:条件不利地、へき地)、病院の4種類のアンケートを行った。 ・全体として、それぞれの遠隔医療技術に関しては、現在の実施状況に比べると利 用意向のある数が多くなっている。課題としては、費用面と医療従事者の不足が 挙がっている。 (7)厚生労働省による診療報酬についての説明 ○厚生労働省宇都宮大臣官房総務課企画官より、遠隔医療に対する診療報酬上の考え 方について説明がされた。(参考資料参照) ○要旨は下記の通り。 ・診療報酬は、あくまでも保険のシステムにおいてインシデントに対して支払う仕 組みであり、疾病・負傷の治療に対する支払であり、有効性、安全性等が科学的 に確立されているということが求められる。また、対面診療に対するものが原則 となっている。 ・医師対医師のケースでは、遠隔画像診断等で患者に対するサービスが向上してい る場合は、中央社会保険医療協議会(中医協)で議論し認められれば、診療報酬 の点数がつけられる。今年度に画像診断管理加算において上乗せ評価している。 ・医師対患者のケースは、予防・健康相談等は診療報酬の原則から給付の対象には ならない。また、テレビ電話等の設置・通信・維持費・通信ケーブルなどインフ ラ整備費などは、診療に必須ではなく転用できるものもあるため、医療保険とは 馴染まない。 ・遠隔医療は対面診療の補完的なものであり、対面診療に比べて医療サービスの質 が上がるというエビデンスが無いと診療報酬とするのは難しい。 ・過疎地域等への支援は、保険の原則から考えると、むしろ補助金のほうが適切で はないか。 (8)意見交換 ○各構成員の意見要旨は下記の通り。 ・生活習慣病に対する指導は、東京における実験では対面診療よりもテレビ電話の 方が効果は出ている。同様な指導は過疎地においても展開可能でニーズもあると 思われる。 ・遠隔医療の範囲は、医師不足等遠隔医療が不可欠な場合である。現在、遠隔画像 診断、遠隔病理診断は医師不足解消に役立っており、超音波、内視鏡の画像診断 にも診療報酬が適用されればさらに遠隔医療が進むのではないか。 ・医療におけるリスク回避や医師の安心確保に遠隔画像診断等が求められている。 また住民の専門医療へのニーズも高まっており、エコー、超音波画像診断等の医 師対医師の効果はある。 ・簡単で精度の高い機器開発に国レベルで取り組んで欲しい。また遠隔医療ネット ワークによる地域住民の不安軽減による費用対効果も考慮すべきである。 ・往診は、地方では往復に時間がかかり診療所が空いてしまう上、夜間対応も体力 的に苦痛であり、現実は理想どおりにはいかない。 ・終末期の在宅医療における遠隔医療システムの利用は非常に難しいのではないか。 ・在宅医療にはテレビ画像システムは時期尚早である。患者がいつでも医療従事者 と話し合える体制作りが先決である。 ・医師対医師の遠隔医療について、支援側の大病院に対する費用配分を考慮すると、 高度医療部分については診療報酬総額を上げたほうがよいのではないか。またイ ンセンティブとしての補助金も考える余地がある。医師対患者の遠隔医療は、往 復時間がかかり訪問が困難な地方で使えるのではないか。 ・慢性期患者への遠隔医療はある程度意味があるが、急性期の往診はニーズが高い もののリスクが高く困難であり、遠隔医療に適さない。むしろ救急医療体制の整 備が必要である。 ・容態が悪いときは、対面による往診が当然である。むしろ遠隔医療は患者のフォ ローアップ時の相談に利用しており、患者ニーズとして大切であると感じている。 その有効性が認められれば診療報酬をつけられるのではないか。 ・遠隔医療の診療報酬に関する評価は、電話再診と同様に、遠隔医療が提供するサ ービスの質が対面診療を上回るというよりも同等であることを目指すべきではな いか。 ・遠隔医療の支援策を検討する上で、議論の範囲を離島・へき地、医師不足に限る べきではないか。ニーズが明確であり、公的な支援が無駄にならないが、予防の 費用対効果は実証されていないためである。 ・遠隔医療が機能する上で重要なのは明確なニーズであり、国、地域、コミュニテ ィごとで異なるニーズを的確に把握する必要がある。 ・遠隔医療によって、医師不足状況下における有能な女性医師の活用方策も検討し ていただきたい。 ○金子座長より、第4回懇談会の質疑応答に対してのまとめがなされた。 ○要旨は下記の通り。 ・本懇談会では、医師不足等条件不利地域を対象にし、慢性期、健康管理を想定す るとともに、社会的なイノベーションを前提に議論を進めてきた。今後、ニーズ や有効性が認められるものについて、持続可能で汎用的な社会システムを目指す ことが必要である。コスト負担、インセンティブ、制度、通信インフラ面を検討 したうえで、どこでも使えるようなものにすべきである。なお、安全性、責任の 所在は、遠隔医療の範囲に限って検討を加えていきたい。 (9)モデル事業の実施について ○総務省安藤課長より、平成20年度地域ICT利活用モデル構築事業の説明がなされ た(資料8参照)。 ○要旨は下記の通り。 ・ 全国におけるICTの利活用モデルにおいて、本懇談会の中間とりまとめに沿って、 平成20年度モデル事業を実施する。 ・ 事業の委託先は地方公共団体である。モデル事業の成果としてICT利活用のノウ ハウを蓄積することを目的としている。 (10)中間とりまとめについて ○総務省安藤課長より、中間とりまとめ策定の進め方、スケジュールについて説明が なされた(資料9参照)。 (11)今後のスケジュールについて ・次回会合は、平成20年6月に予定している。 以上 照会先 医政局研究開発振興課  渡邉 03(5253)1111(内線 2543)