08/05/21 第3回有期契約労働者の雇用管理の改善に関する研究会議事録 「第3回 有期契約労働者の雇用管理の改善に関する研究会」議事録 日  時 平成20年5月21日(水) 14:00〜 場  所 厚生労働省14階職業安定局第1会議室 出 席 者  ・参集者(50音順)    梅崎委員、奥田委員、佐藤委員、諏訪委員(座長)、原委員、藤川委員     ・オブザーバー    明治安田生命相互会社 古賀人事部次長、労働基準局監督課 黒澤監察官、職業    能力開発局総務課 平嶋補佐、雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課 佐々    木補佐  ・事務局    太田職業安定局長、荒井審議官(職業安定、援護担当)、三上職業安定局雇用開    発課長、本間職業安定局雇用開発課長補佐、佐藤職業安定局雇用開発課長補佐 議  題  1 有期契約労働者に関する課題について  2 その他 配布資料  資料1 平成18年パートタイム労働者総合実態調査について  資料2 有期契約労働者に関する現状及び課題の整理について   議  事 ○諏訪座長  ただいまから「第3回有期契約労働者の雇用管理の改善に関する研究会」を開催させ ていただきます。まず、議題ですが、1つ目が「有期契約労働に関する課題について」 です。第1回の現状に関する資料、第2回のヒアリング内容等を踏まえまして、有期契約 労働に関する課題について整理を行いまして、次回に検討するガイドラインのあり方に つなげていきたいと考えております。  早速、議事に入らせていただきます。最初に事務局から現状に関する資料の追加と、 1回目、2回目の研究会の内容に関して、課題等を整理していただきましたのでご説明を お願いいたします。 ○本間雇用開発課長補佐  事務局から説明させていただきます。はじめにお手元に資料1がございます。こちら は1回目の研究会の際に、現状の分析ということで、参考資料としてお出しした資料と、 あと2回目のヒアリング等で出ました資料等を踏まえて、平成18年のパートタイム労働 者の総合実態調査を厚生労働省の統計情報部でやっていまして、そのデータから若干、 補足的に抜粋したものです。こちらのほうの定義はいままでの資料と異なっています。 こちらで「正社員」というのは、フルタイム勤務で、期間の定めのない労働契約の労働 者ということです。ただ、所定労働時間が週35時間未満の労働者を含むという形になっ ています。  あと、「パート」については、正社員以外の労働者でパート、アルバイトなどの名称 にかかわらず、週の所定労働時間が正社員よりも短い労働者。そして、「契約社員等」 としていますが、この調査資料では「その他」という形で定義されていまして、これは 正社員やパート以外の労働者ということです。ただ、週の所定労働時間が正社員と同じ か長い労働者という定義で区分されています。これを踏まえて資料を見ていただきたい と思います。  この資料は事業所の調査と労働者個人の調査と2種類になっていまして、1番目が「パ ート等労働者の人件費のうち割安だと思う内容別事業所割合」という調査です。これを 見ていただくと、契約社員等は賞与、賃金、退職金、あとパートのほうは賃金、賞与、 退職金の順に割安だと思う形になっています。特に、パートは法定福利費を挙げる事業 所割合が契約社員と比べて、非常に高くなっているというのが見て取れるかと思います。  続きまして2頁目です。2番目ですが、「パート等労働者の採用時の賃金決定の際に考 慮した内容別事業所の割合」です。こちらのほうは契約社員等、パートともに「同じ地 域・職種のパートの賃金相場」が最も多くなっていて、特にパートではそれが7割を超 えているという状況です。そのあと次いで、「仕事の困難度」であるとか「経験年数」 となっています。ただし、契約社員等では「同じ職種の正社員の賃金」と答えている所 も、約25%あるという状況になっています。  3番、「パート等労働者の職務がほとんど同じ正社員との賃金格差がある場合の低い 理由別事業所の割合」の調査です。こちらは契約社員等とパートともに、「勤務時間の 自由度が違う」というのが最も多くなっていて、特にパートでは7割を超えています。 次いで「正社員には企業への貢献が期待できる」、「残業の時間、回数が違う」という 順になっています。  3頁、4番の「手当等及び各種制度の実施状況別事業所の割合」です。これは1回目の 資料の際にも若干これと似たようなものがありましたが、補足的に今回お出ししていま す。契約社員とパートは正社員と比較して、役職手当、家族手当、住宅手当、職能資格 制度、役職への登用などで、大きな開きがあるのが見てとれるかと思います。  最後になりますが、5番目だけが労働者個人への調査の資料になっています。これは 「今の会社や仕事に対する不満・不安の内容別労働者の割合」です。見ていただくと、 契約社員等とパートともに「賃金が安い」が最も多くなっています。また、契約社員等 では「正社員になれない」、「雇用が不安定」というのも多くなっています。以上が平 成18年のパートタイムの労働者総合実態調査を、補足的に今回出させていただきました。 これと、第1回目、第2回目のヒアリングを踏まえて、現状を整理させていただきまして、 それから課題を抽出したのがお手元の資料2です。  資料2は4枚綴りになっていまして、項目別に分類しております。この文章の中で括弧 書きで資料とか、いろいろ名前が出ていたりしますが、4枚目に(注)という形でその 略称の中味になっていますので、後ほどご確認いただきたいと思います。前回は非公開 でやっていて、ヒアリングのA社、B社、C社がありますが、こちらは一応、名前は伏せ させていただいています。それぞれA社は金融系企業、B社は製造業、C社は流通系企業 ということになっていますのでご承知いただきたいと思います。  1頁目は「契約期間・更新」ということでまとめています。最初に「現状」の点線の 上の1つ目の括りになりますが、こちらは期間とか更新の実態、あと企業側の意識とい うことでいくつかまとめています。1回当たりの契約期間が1年以内とする事業所が約8 割というのがありました。あと、契約期間は2カ月、初回は1カ月、最長2年11カ月まで というのもありました。あと、契約更新回数が6回以上の割合が高く、勤続年数も半数 以上が3年超。あと、フルタイムパートでは、平均的な契約更新回数が7回以上、平均 勤続5年以上。最後のポツになりますが、勤続が短すぎると生産性が落ちるため、企業 側としてもなるべく長く勤続してほしいと考えていながら、有期契約としているという のがありました。  こちらの「現状」から踏まえて、「課題」として出てくるのが右側になりますが、使 用する目的に照らし必要以上に短い契約期間を設定し、その契約を反復継続しないよう にすることが有意義ではないかと言えるのかなと思われます。  2つ目の括りになります。1つ目のポツですが、契約更新を希望する人の割合は5割以上 と高い。2つ目、今後継続して勤めたい期間も5年超の割合が高い。3つ目、契約社員で雇 止めの経験がある人が2割を超えている。4つ目、今の会社や仕事に対する不満・不安の 内容別労働者の割合では、契約社員等で「雇用が不安定」が多い。次になりますが、仕 事に意欲的に取り組む上で重要なことに関する調査において、現在の会社で働き続ける ことを希望する人は「希望する仕事・労働条件での雇用契約の更新」「勤務先で希望す るだけ勤め続けられること」を挙げる人が非常に多い。その次、仕事に意欲的に取り組 む上で重要なことに関する調査において、現在の会社で正社員になることを希望する人 は「能力を高める機会があること」を挙げる人が多い。最後のポツになりますが、勤続 が短すぎると生産性が落ちるため、企業側としてなるべく長く勤続してほしいと考えて いながら、有期契約としている。これは先ほどの再掲になります。  こちらの現状は、主に労働者の意識等をまとめてみたのですが、これに対応して課題 として右側にあるように、2つ考えられるかなと思いました。1つは、雇用の安定や生産 性の向上の観点から、できるだけ契約期間の長期化を促すことや、正社員登用の機会を 設けることが有意義ではないか。2つ目、キャリアパスが明示されることが有意義では ないかということです。  3つ目、最後の括りになります。1つ目が、有期契約とする理由の労働者への説明がさ れていない場合が見られる。2つ目、期間満了時に更新可否を判断し判断基準を説明し ている場合や、特別な事情がなければ自動更新することを説明している場合が多いが、 契約更新に関する説明を特にしていない場合も見られる。最後になりますが、解雇実績 はないが、退職者のうち期間満了退職は約8割というのがありました。こちらに対応しま して、課題としては、更新の有無や更新する場合又はしない場合の判断基準を契約締結 時に明示しなければならないこととする雇止め告示の規定の遵守を徹底することが有意 義ではないか。これが1つ目になります。  2頁は「労働条件・処遇」についてまとめています。1つ目の括りになりますが、現状 としては有期契約労働者を雇用する主な理由において、契約社員では約4割、フルタイ ムパートでは約54%が人件費の節約としている。これは企業側の意識とか実態をまとめ たところです。2つ目、有期契約労働者を雇用する主な理由は人件費の削減としています。 3つ目、退職金、昇進・昇格制度がない割合が高い。4つ目、手当等及び各種制度の実施 状況別事業所の割合では、正社員と比較して、役職手当、家族手当、住宅手当、職能資 格制度、役職への登用などで大きな開き。次になりますが、パートや契約社員等労働者 の人件費のうち割安だと思う内容別事業所割合では、賞与、賃金、退職金を挙げる割合 が高い。最後のポツになりますが、有期契約とする必然性はないが、無期契約とすると 正社員と処遇の差をつけにくくなるために有期契約にしているというのがありました。 こちらに対応した課題ですが、就業の実態にそぐわず不当に低い待遇となっている場合 があるのではないか。そのような場合の待遇の改善を促すことが有意義ではないかとい うのが考えられました。  2番目の括りになります。1つ目が、今の会社や仕事に対する不満・不安の内容別労働 者の割合では、賃金が安いが最も多い。2つ目が、契約社員では業務の専門性や責任な どの点で、正社員と同じと労働者が認識している割合が高く、賃金の点で納得できない とする割合が高い。3つ目、パートや契約社員等労働者の採用時の賃金決定の際に考慮 した内容別事業所の割合では、同じ地域・職種のパートの賃金相場が最も多い。4つ目 は、契約社員では、7割以上の人が主な収入源であるにもかかわらず、賃金総額が20万 円未満の層が5割以上。短時間パートと比較し、有期の所得で生計を支える割合が高い というのがありました。  こちらに対応した課題としては3つ書いています。1つ目が、処遇については、就業の 実態に応じて、均衡を考慮すべきではないか。2つ目に、労働者が納得して就職できる よう、募集・採用時に十分な情報明示がなされるようにすることが有意義ではないか。 3つ目、待遇の決定に当たっては、考慮した事項について労働者本人への説明がなされ、 労働者の理解を深めるようにすることが有意義ではないか。  次に3つ目の括りになりますが、ここは1つで、仕事に意欲的に取り組む上で重要なこ とに関する調査において、「仕事内容や働きぶりに応じた処遇」「仕事上の希望・不満 を会社等に伝える機会」を挙げる人の割合が高いというのがありました。これに対応し て課題としては、処遇について労使で話し合う機会や窓口などの整備を促進することが 有意義ではないかというのが考えられました。  最後の括りになりますが、フルタイムパートで評価制度がないとする事業所割合が高 いという状況がありました。これに対応する課題ですが、職務の実績や職業能力の評価 及びその結果の処遇の向上への活用を促進することが有意義ではないかというのが考え られました。  3頁です。こちらは「正社員登用」についてまとめています。1つ目の括りについては、 登用制度の実態とか、労働者の意識というところでまとめています。1つ目のポツが、 有期契約で就業している理由は、契約社員・フルタイムパートで、正社員になりたいが 職場がないとする割合が高い。2つ目が、就業形態によりばらつきがあるが、正社員へ の転換制度がないところが多い。3つ目、正社員と非正社員の処遇の均衡を考慮してい る所や、非正社員の能力開発に積極的な所ほど、正社員登用の仕組みが普及。フルタイ ム勤務の人では、5割ぐらいの人が正社員登用の機会があることが重要と考えている。 最後になりますが、今の会社や仕事に対する不満・不安の内容別労働者の割合では、契 約社員等で「正社員になれない」が多いという現状があります。これに対する課題とし ては、特にフルタイム勤務の有期契約労働者がいる事業所においては、正社員への登用 について検討することが有意義ではないかというのが考えられるかと思われます。  2つ目の括りになりますが、正社員登用制度の導入を促す要因は、個々の会社の状況 により異なる。2つ目のポツが、企業規模、業種、工場、店舗など事業所の種類によっ て、登用制度の有無の差がある。3つ目が、非正社員の責任が重い仕事に従事するほど、 正社員登用が普及。ただし、一通りの仕事に1年以上要するような(難しい)仕事では、 逆に制度導入の割合が低いというのがありました。これに対する課題ですが、職種や企 業規模、個々の企業の状況等により登用制度導入に関わる事情が異なる中で、いかに正 社員登用の促進を図るかというのが考えられました。  3つ目の括りになります。1つ目が、正社員になると職場の異動があるために、正社員 への転換を希望しない労働者が、事業主の予想以上に多かったとの事例がありました。 2つ目が、責任を持ったり、教えたりすることに自信がない等の理由から、正社員登用 を望まない労働者のモチベーションの維持を課題としている企業の事例がありました。 3つ目、契約更新を繰り返すのであれば、正社員にしてほしいという希望を持つ人は、 男性で4割、女性で23%。次に、仕事に意欲的に取り組む上で重要なことに関する調査 においては、正社員を希望するタイプでは「正社員登用機会があること」が9割以上と 高いが、非正社員でいいという人にとっては14.4%と非常に少ない。最後になりますが、 正社員転換を希望する人と、契約社員のままで待遇を上げてほしい人の2パターンに分 かれている。  これに対する課題としては、性別、年齢等により今後の就業形態に関する希望に違い がある中で、多様な働き方へのニーズに対応しつつ、労働者の能力を有効に活用するた めの方策が有意義ではないかというのが考えられました。  4頁になります。最初のところが「能力開発」ということでまとめています。1つ目が、 契約社員の能力開発意欲は正社員並みだが、自己啓発を支援している事業所割合は、正 社員の半分ぐらいにとどまる。2つ目が、OFF-JTを実施している事業所割合は、非正規 社員では正社員の約半分に過ぎず、業種によってもばらつきが大きい。また、比較的大 企業ほど実施割合は高くなっている。3つ目、自己啓発の支援内容においても、正社員 と比べて受講料などの金銭的援助や、就業時間の配慮などの点で低くなっているとい うのがありました。これに対する課題としては、OJT、OFF-JT、自己啓発に関する支援 を促進することが有意義ではないかということが考えられます。  最後に「その他」ということで、3つほど挙げています。最初の括りになりますが、 産業ごとに有期契約労働者の割合に大きなばらつきがある。卸売・小売、飲食・宿泊、 教育・学習支援、サービス業などに比較的多い。2つ目が、就業形態、性別により、職 種が大きく異なっているというのがありました。これに対する課題としては、有期契約 労働者の雇用管理改善を図るに当たっては、一定のパターン別の雇用管理事例の普及を 図ることが有意義ではないか。  2つ目の括りになります。ここは1つでして、職業生活に対する満足度に関する調査に おいて、契約更新時の面談があるほうがない場合より、仕事の内容・やりがいや職業生 活全体について満足度が高い、特に男性において顕著というのがありました。課題とし ては、個人面談等を取り入れることにより、労働者の能力を引き出すことができるので はないか。  最後になりますが、契約社員で社会保険の適用がない場合も見られるということで、 課題としては、社会保険への加入が必要な場合でも加入させていない場合があり、適用 の促進を図ることが有意義ではないかというのが考えられました。  以上が事務局で1回目、2回目、そして今回の追加資料を踏まえて、現状を並べてみま して、それに対する課題を一応想定されるものを並べています。ただ、当然抜けている ところがあるかと思いますので、委員の各先生のほうで現状、あと課題のほうでも、そ の辺を是非埋めていただきたいと思っています。今回の課題を踏まえて4回目、5回目に つなげていきたいと考えています。当然、課題からガイドライン、そして報告書等にも 盛り込む内容をつなげていくような形で考えていますので、その辺を踏まえてご議論を いただければ有難いなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○諏訪座長  ただいまの資料1、資料2、それから説明をめぐりまして、これから議論をしていきた いと思いますが、最初に説明内容に関しまして質問等がありましたらお願いしたいと思 います。そのあとで皆様からご意見を伺って議論をしたいと思いますが、いかがでしょ うか。特にご質問等、不明な点などはございませんか。よろしいですか。それでは議論 をさせていただこうと思います。  先ほど事務局からもご説明がありましたとおり、現状に関してはこれまでの研究会で 出てきた意見を少し整理をして、こういう問題点、課題、状況があるということを左側 の欄に書いた上で、資料2の右側の欄で、課題、どのようなことをすべきかということが 挙がっています。この課題はまだすかすかでして、いろいろとほかにも考えられること があろうかと思いますし、それから課題相互間での調整等をこれから議論をしていこう と思います。まずは最初に課題に関して、より充実をさせたご指摘をいただこうと思い ますので、ここからというふうにはいたしませんから、あちこち飛んでくださって結構 ですからお願いします。 ○佐藤委員  個別の課題ではないのですが、どう議論をするかで、課題を見て有期契約労働者の雇 用なり処遇について、望ましい方向にもっていくようなガイドラインみたいのを作るの だと思うのですが、それをどういうふうに作っていくかということで、1つは例えば雇 用の安定性ということからすると、現状よりも良くなることが望ましいと思うのですが、 そのときに有期契約労働者がみんな同じように、有期だから不安定だと単純に言えない ところがある。それと現状でも有期契約の中にも雇用の安定性に相当幅がある。ですか ら、それぞれに応じて改善が進むようにすることが、すごく大事だと思っている。  具体的にどういうことかというと、まず有期契約労働者でも業務が本当にスポットで 有期契約、これも安定しろとは普通はたぶんそこはですね。例えばお歳暮の時期だけ雇 うことについて、これ短すぎるからけしからんという議論をするのではない。ですから、 一応それは有期で雇用することの合理性があるということでいいと思うのです。問題は 有期契約で更新されているところだと思うのですが、その中でも今回のヒアリングでも アンケートを大きく2種類やって、1つは3年までとか、更新は2回までとかとなっていま すよね。実際上、企業の必要性はもう少し長かったり、本人も働きたいというところが あると。ですから、例えばこれについて言えば、これがもう少し長くというようなこと だろうと思うのです。  他方でそうではなくて、有期契約だけれども、事実上、更新の上限がなくて、ずうっ と繰り返されている人たちがいる。これはある面では結構安定しているわけですよね。 有期契約ということで、外から見ると不安定のように見えていても、かなり安定してい る人たち、これは結構数が多いわけです。何か施策をやったときに、例えばこの後者の 現状ではある面では相当安定している人たちが、先ほどみたいに上限が3年だとか5年だ とか、契約は2回みたいになってしまったら、これは何もならないわけですよね。です から、その辺を少し考えながらやらないといけないのではないかということです。  そういう意味では施策を考えるときに、できるだけ長くすればいいというと、きちん と契約を明確になどというと、後者がもしかすると前者のほうに移動する可能性もある わけですね。明確にするということ、まあ、3回までとか2回まで、3年まで。これだと 全体としては、雇用の安定度を下げてしまうことにもなるので、ちょっと極端な例です が、その辺どう考えるかということです。企業が例えば実際上はもう少し必要性がある けれども、なぜ契約は2回までとか3年までとしているのかという理由を、少し明確にし ないと対策が出てこないのだろう。  また、他方で、ずうっとかなり更新をしているにもかかわらず、なぜ有期契約でやっ ているのかというところが、なぜなのかというところはある程度明確に把握できないと、 対策は出せない。だから、現状があるのだけれども、なぜというのがないのかなという 気がしている。ですから例えば有期契約でずうっと繰り返しているというのを、なぜと 仮に考えると、有期契約は業務限定なわけです。この仕事でと雇用をしているわけです。 そうすると、やはり1年とは限らないかもわからない。2年3年経つと仕事が変わるわけで すよ。そうすると、当然、契約をし直さなければいけない。来年度は別の仕事をやって いただく、その次は別の仕事をやっていただく必要性が出てきたりする。そういう意味 では、また同じ仕事よりも能力が高まるわけですから、労働条件を見直すことも必要だ と思います。そういう意味では、毎年、毎年、契約更新するのは、業務で雇用をしてい る以上、仕事の見直しなり、仕事が変われば処遇の見直しが例えば必要だからなのかも しれない。  あるいは何で継続するのか、結果として仕事は続いているのだけれども、確かに部分 的には変動がある。そうすると、業務が続けば更新をするけれども、少し落ち込んだと きは更新しないことが必要な仕事である。特に業務を限定していますから、普通の社員 の場合は変動があったらほかの仕事に動かせばいいわけですよ。でも、業務を限定して 雇用しているわけですから、初めから3回ですと言ったときに下がったらどうするのか ということがあるのです。ですから、1つは業務を限定して雇用するということからす ると、それを踏まえた上でどうするかということを考えなければいけないのではないか ということですね。そこをどう議論していくかというのが1つだと思います。  もう1つは、雇用の安定性とかキャリアアップとか、処遇の安定という課題の対応と 言ったときに、今回はフルタイム有期ですが、パート労働法なりパート労働指針の枠組 みと、今回ここで言ったときに、パートは短時間の人だから、そういう意味ではパート 労働法はカバーしないところである。ただし、そこについてパート労働法の法律なり指 針で書いていないことまでやるのは、逆にいうと、それはたぶんフルタイム固有な面と いうことになると思うのです。共通の部分については、パート労働法なりパート労働法 上の指針を上回るものをやるときのロジックをどう考えるか。  これはつまりガイドラインだから、逆に共通部分に上回るものを設定するとすれば、 どういうロジックでいくのか。アイディアとして例示しておいて、これは情報提供だけ ですよというやり方はあると思うのですが、例えば正社員登用ですね。正社員登用につ いて、パート労働法だと、正社員登用制度と言っているわけではなくて、通常労働者に 転換の機会を提供してくださいというふうにたしか書かれていて、助成金は別だという 話ですが。一応、正社員の登用制度でもいいですし、社員を募集するときに情報提供を してくださいとか、公募のときに情報提供と言っています。そのときに例えば正社員登 用制度を作りなさいと取り出していった場合、これは何かフルタイム有期だからという ロジックがないとなかなか難しい。その辺の整理は最後でもいいのかもわからないので すが、整理は必要なのかなと思っています。これが大きな点の2つ目です。  資料2の2頁目の現状の最初の四角の中の、A社の「有期契約とする必然性はないが、 無期契約とすると正社員と処遇の差をつけにくくなるため」。私のA社のヒアリングの 理解では、この「処遇の差」の意味で、これだけだと水準みたいな感じがするのだけれ ども、A社の説明は水準というよりかは、例えば処遇の制度の仕組みだったと思うので す。例えば社員は職能給の制度だけれど、有期の人は仕事給的な。そして、上が3段ま でで、ここまでみたいな給与制度だとする。これを社員の中で作るのが労使関係上等で、 ちょっと認められないというのがあって、これはたぶん、処遇の仕組みを違うものにす るということだったのではないか、確認をしていただきたい。これだと低くするイメー ジです。 ○古賀人事部次長(明治安田生命) 私もそこは赤線を引いています。先生のいま言われたとおりです。 ○佐藤委員  あと、1頁目の最初の四角の最後のC社のところも、生産性が落ちる、だけど有期契約 というのは、これでもいいのかもわからないのですが、基本的には仕事があれば雇う、 雇い続ける人については長くいた人のほうが生産性が高いということですね。だから、 なければ辞めてもらうのはやむを得ないと思っているという趣旨だということでいいと 思うのです。  2頁目のいちばん上の人件費節約なのですが、これはこのとおりでいいのですが、読 み方で、フルタイムパートだと人件費節約ですと答えている、この答えている企業の中 身は、これだけ見ると同じ仕事を正社員より安く使って下げていたと読む人もいるので すが、私はそれはないとは言いませんが、多くの場合は普通はフルタイム有期とかパー トを雇うことは、有期契約ですから教育訓練の期間もそんなに取れないわけですから、 普通どうするかというと、業務の見直しをするわけですよ。だから人的資源投資の期間 を短くできるような仕事にして置き換える。だから結果として人件費が下がるのです。 そのことを理解しておかないと。結果としてそうなったときに数字で比較したら低いの です。正社員の人、パートよりも低くなるのだけれども、それは社員が前にやっていた 仕事をそのままやっていて低くなっているかというと、それも含まれているのはわかり ますが、そういうケースばかりではない。  もちろん問題なのが、そういう見直しをしないで機械的に人件費を下げるために、正 社員をパートや有期に置き換えているのでいろいろ問題が起こる。そういう企業はたく さんあると思います。ですから、人件費節約の中身はかなり広いと考えていただいたほ うがいいかなと、これは読み方だと思います。 ○諏訪座長  いちばん最後のご指摘は特にお答えをいただく必要もないと思いますが、1点目、2点 目の中で、いろいろなタイプの人たちがいるから、それをベタッとみんな一律の対応を すると、かえって不都合になりますと。そうすると、そういう対応区分を書いて課題に 対する対応策を考えなければいけないというご指摘です。もう1点は、非常に重要だろう と思いましたが、理由ですよね、現状と課題というのが、ただちに飛ぶのではなくて、 なぜそういう現状になっているかという理由を考えて、それらを加味しつつ、ではどう するかというような議論をすべきではないかというご指摘があったと思います。これは どちらも非常に重要だろうと思いますが、関連してどなたか何かご意見ございますか。  では、この点は皆様、言われてみればもっともなご指摘だったろうということなので、 少し書き方だとか、議論の仕方をもう一度、次は工夫をしていただくことにしまして、 まず、いろいろなタイプの現状があって、そのタイプごとに、なぜそういうふうになっ ているかという理由があり、両方を踏まえて、では、どうしたらいいか。どうしたらい いかということを考えるときには、佐藤委員が言われたとおりで、かえって現実に今よ り悪い状態にならないようにするという配慮も必要だろうということだと思います。そ こは制度化をするときの悩ましさですね。 ○佐藤委員  資料2の1枚目の課題に書いてある、右側のほうで、事実上基準法を変えたときに、あ れは大臣告示でしたか、有期契約で更新しないとしたときには、更新しない理由を明示 しろというのがあるわけです。でも、これはほとんど使われていないわけです。だから、 ここで使うようにしろと言っても使われていない理由。私も使ったほうがいいのではな いかと思っているのですが、事実上、あれを使っている企業はなくて、多くの企業は更 新しませんと言っておいて、更新するほうを使っているのです。  更新しないと言って、しない理由を明示するというほうが実態に合うはずなのに、な ぜ使っていないのかというところが結構大事で、そこはここの法律の形だと思うのです が、告示に則してやったときに、更新しない理由に当てはまるときに更新しませんと言 ったときにどうなるかということに、企業は不安が相当あるのだろうと思うのです。た ぶんその辺がわからないと、ということなのですね。あと、パート法の関係をどうする か。 ○諏訪座長  それは非常に重要であるけれども、有期契約といったときには、パートも入ってくる わけだから。 ○佐藤委員 入っている。 ○諏訪座長 したがって、ここではフルタイムの有期だけを扱うわけではないわけでしょう。 ○佐藤委員 そうです。 ○諏訪座長 だから、フルタイムだったらこうですという論理はなかなか使いづらい。 ○佐藤委員 いちばん最初の議論だと、これはフルタイム有期なのですね。 ○本間雇用開発課長補佐  フルタイム有期がいちばんメインではあるのですが、ガイドライン自体は、最初にパ ートも含めて対象に考えています。 ○諏訪座長 パートには適用しませんというのを作るわけではないから。 ○佐藤委員 そうすると、パートタイム労働法なり、指針を下回るものでは逆にまずいですね。 ○本間雇用開発課長補佐 そうです。それを上回るというイメージではあるのです。 ○佐藤委員 上回るというふうに考える。 ○本間雇用開発課長補佐 はい。 ○太田職業安定局長  ですから、具体的なガイドラインを作るときに、またご相談をしたいと思いますが、 ある程度オーバーラップしてもいいのかなと。 ○佐藤委員 私もオーバーラップはいいと思うのですよ。     ○太田職業安定局長 幅広にとっておいて。 ○佐藤委員 上回るというと両方ね。 ○太田職業安定局長 下回っては悪いかもしれません。 ○佐藤委員  その両方が入っているのですね。わかりました。上回るものを作ると。そうすると、 雇用管理上、まあ、やってくださいというようなことですね。そうすると、上回るもの まで挙げる理由を少し言わなければいけない。でも、現状のパート労働法ではそこはフ ルにはカバーされていないですね。 ○本間雇用開発課長補佐 そうですね。 ○佐藤委員  1つは横に広げるという考え方があります。全く同じにやってくれと。けれども上に も上げるというのが何かないと。 ○諏訪座長 ここではやはり有期契約というところがポイントになるわけ。 ○佐藤委員 たぶんね。 ○諏訪座長  そうすると、有期契約というと、普通は雇用の不安定さに対する安定性というだけの はずなのだけれども、実はここで議論をしようとするのは、それをまた更に上回る大き な問題をやりますから、結局は雇用管理の改善という問題がもう1つのポイントになる。 つまり、有期契約は一定の特殊な性格をもっているものとして運用されるけれども、そ れにまつわる雇用管理全体のあり方について、いろいろ考えましょうと、こういうガイ ドラインになるのだろうと思うのです。 ○佐藤委員 その辺は合意していておいたほうが議論がしやすいかなと思います。 ○諏訪座長 ご指摘は大変有意義だろうと思います。ありがとうございます。 ○奥田委員  いまの有期に限定してということで言いますと、いちばん最初の課題のところに挙が っている、使用する目的云々という課題のところは、これはまさに契約法の17条の2項 だと思うのです。例えばいまお話に上がりました雇止め告示の遵守を徹底するというの は、徹底していくのが望ましいというのはわかるのですが、課題のいちばん最初のとこ ろは、ここで課題に挙げなくても契約法17条2項で、当然カバーされる内容だと思いま すので、当然適用されているものが課題に挙がるというのが趣旨がはっきりわからなか ったというのがあります。  もし、それを課題として考えていくとしますと、実は労働契約法の17条2項は、非常 に趣旨のわかりにくい法規定だという評価もいろいろありまして、契約法とそれを念頭 に置くかどうかは別として、その辺りをもう少し具体的な課題として出していったほう が、法律の解釈ではなくてガイドラインとしては望ましいのではないかと思っているの ですが。 ○本間雇用開発課長補佐  今回のガイドラインを作るに当たって、1回目でイメージの骨子を示させていただい たのですが、基本的には現行の法制度、そういったものを踏まえて、ある程度それを整 理したいというのがあったところもあります。基本的には現状を整理した段階で、現在 の法制度で措置されているものもいろいろあることはあったのですが、現状から挙げら れるものを、課題として挙げようという形で整理した経緯があります。  ですから課題として挙げていますが、先ほど奥田委員から言われたように、契約法で そういう項目としては、一応もう既に挙げられているというのはあるのですが、そうい うものもあることは踏まえて、課題としては挙げていきたいという趣旨で挙げています。 ○奥田委員 確認的なものも含めてというふうな。 ○本間雇用開発課長補佐  はい、そうです。ですから基本的にはそういったものも踏まえて、ガイドラインの中 には現行法制度のものも、一応有期契約という1つの視点から全部を整理をしたいとい うことがあったものですから、そういった形で課題を挙げています。 ○藤川委員  いまの奥田委員のお話は、当然に確認するだけではなくて、さらに一歩踏み込んで、 何か具体的な例を出しながら、この委員会として独自の雇用管理改善施策をアピールす るかどうか、そういうことも含まれている質問なのですか。 ○奥田委員  そういう意味になると思うのです。例えばこういう課題が挙がっていても、もちろん 労働法の研究者の中でもいろいろ意見があると思いますが、私はこの規定が非常にわか りにくい規定だと思っていますので、この契約法だと言ってしまうと、ここで何か法解 釈をするようになってしまうので、それは委員会の枠を超えるのかなとは思うのです。 そういうふうに仮に理解せずに、もう少しガイドライン的にここの部分をよりわかりや すいものというか、ガイドラインとして出していくことは可能かなと思っています。で すから、最終的にはいま藤川委員が言われたような意味になるのかなと思います。 ○藤川委員  そうすると「必要以上に短いとは」ということについて、具体例を出すという方向で、 我々は議論をしていくのでしょうか。 ○諏訪座長  そういうことももちろん踏まえて、定義だけではなくて、さらにどうしたらいいかと いうこともです。 ○藤川委員  そうですね。それともう1つは、あとで質問をしようと思ったのですが、危惧だった ら無視してください。17条は、あくまでもやらなければいけないことというのは、つま り、必要以上に短い期間を定めることにより、反復更新することのないようにというこ となのですね。この課題は「必要以上に短い契約期間を設定」というのは手段ではなく て、「設定し、その契約を反復継続しないようにする」という言い方にしていて、17条 2項の文言とあえて変えていることに何か意味はございますか。 ○本間雇用開発課長補佐 特にございません。 ○藤川委員 ないですか、了解です。それなら無視してください。 ○諏訪座長  初めてこういう形での整理をされましたので、疑念あるいは思いつくようなことすべ てご指摘いただきたいと思います。 ○梅崎委員  1頁のところで、更新の有無や、更新をする場合、またしない場合の判断基準が書か れていて、いま現状の企業を調査していった場合に、どういう判断基準を持っている企 業が多いのかということが、すごく大切になってくるのではないか。判断基準は、端的 に言って、非常に作りにくいわけであって、先ほど佐藤委員が言われたように、作れな いものを「作れ作れ」と言うと、要するに「更新はなしよ」というふうに、全員なし、 全員ありしかなくなってしまって、結局は全員なしになる可能性が高いわけだと思いま す。その判断基準は、一体どういうものをイメージすればいいのかというのは、ちょっ と想像がつかないのですが、具体例を知っていたら教えてほしいというのと、調査の必 要性があるのかなと思うのですが、いかがでしょうか。 ○本間雇用開発課長補佐  1回目の研究会のときにお出しした資料の中で、その辺の更新に関する資料があった かと思うのです。これは複数回答の資料になりますが、その中で、雇止めの理由のとこ ろで、例えば業務量の減少であるとか勤務態度の不良であるとか、能力不足とか、その 他、経営状況の悪化であるとかいうような企業側、事業所側の回答ですが、そういった ものがありました。ですから、そういったものを逆にいえば判断基準として、いくつか 想定されるのかなとは思われます。 ○佐藤委員  いまの点で、雇入れ通知書みたいなものに書くわけですが、実際上、何を書いている かという調査はあるのですか。いまのは雇入れする側の理由を聞いただけですよね。そ うではなくて、契約更新しないことがあるときに、一応書かなければいけなくなってい ますよね。 ○本間雇用開発課長補佐 はい。 ○佐藤委員  実際上、全体としてそういう契約をしているのは少ないのだけれども、している所は 具体的にどういうものを挙げているのか。逆にいえばそれがもう少し、こういうもので いいのだということがわかれば、もしかしたら増えるのかもわからない。なるほどこう いうものを挙げればいいのだというふうに。それが情報がないだけでやっていないのか、 そういう調査ってないのですか。 ○本間雇用開発課長補佐 私が知るかぎりでは、見たことがないのです。 ○佐藤委員 指針には例示があるのですか。 ○本間雇用開発課長補佐 パートのですか。 ○佐藤委員  基準法改正したときの大臣告示か何か知らないけど、指針を出したときには、こんな ものという例示は挙げているのですか。 ○黒澤労働基準局監督課監察官  指針では、更新の判断基準を示すということにされていますが、その中身として、こ れでなければいけないというような限定はございません。指針の中では例示はございま せん。 ○佐藤委員  ないわけですね。企業が考えなければいけないのですか。それは結構ハードルが高い ですね。 ○梅崎委員  例えば業務が減ったというのは非常にわかりやすくて、説明しやすいと思いますが、 能力不足であったということを言葉で「能力不足です」と言うのはいいのですが、個別 になってくると非常に揉めると思うのですね。それが企業側の論理でいくと、揉めたく ないので、延長というのを一律でやめるほうが取引コストが少ないという、本当は延長 をしたいのだけど、全員延長という選択肢になだれ込んでいってしまうのではないかと いうのが怖さになっていて、進まないのではないか。更新が進んでいない理由はそうな のではないかなと思います。 ○佐藤委員  ですから、更新しないとしておいて、更新をするほうを選んでいるということでしょ う。 ○梅崎委員  そうですね。そのほうが更新ルールとして納得が得やすいというか、トラブルが発生 しない。 ○佐藤委員 やはり、いくつか例示がないとやはり企業としては。あるのですか。 ○黒澤労働基準局監督課監察官  若干補足です。指針の中では例示はないのですが、解釈の通達やパンフレットなどで、 我々は現場で周知していますが、そういう中では次のような例を参考にしてくださいと いうことで、先ほど事務局からありました統計データのご紹介と同じなのですが、例と して、例えば契約期間満了時の業務量により判断する、労働者の勤務成績・態度により 判断する、労働者の能力により判断する、会社の経営状況により判断する、従事してい る業務の進捗状況により判断する、などとなっています。「など」ですから、これでな ければいけないという厳しい縛りをしているものではございませんので、これを参考に その程度のものとして、あとは各事業場の実態でやっていただくということかと思いま す。先ほどの統計データと大体同じかと思います。 ○佐藤委員  そうしておくと、そうした場合には、企業が落込んだときに、5人減らさなければな らない、なぜ私がその中に入ったかというところは、会社としては対応しなければいけ なくなるわけですよね。この選択で、全部減らすのはいいけれども半分にするといった 場合、今度は会社としてはどう選んだかということを説明しなければいけないというと ころが、1つハードルとして考えているのかもしれない。なぜそれを選ばないかなとい うのを、少し調べなければいけないかもしれない。 ○梅崎委員  セカンドベストの選択をしているのだと思います。本当はその中の5名を選びたいの だけれども、そこで揉めたくないから、しようがないから全部辞めてもらって、新たに 5名雇う。本当は違うのだけれど、そうしないと交渉が、落し所がみつからないのでは ないかなと思います。実態として契約社員の人をどのぐらい査定しているかというか、 評価をする率というのは挙がっていますか。個人のレベルでは仕事内容は働きぶりに応 じた処遇を希望している人が多いのですね。それは逆からいうと、働きぶりに合わせて 差をつけられていないわけだと思うのです。そういう制度もあまり入っていない。  誰が評価しているかわからない状態で、いきなり更新5名、なんとなく現場ではわか っていると思うのですが、その5名を選ぶ際に、責任権限がはっきりしない。誰が評価 したから勤務態度が良かったのだよというのを、例えば3年だったら1年目で評価結果、 2年目で評価結果、そして3年目で、あなたは2年評価を受けてきたのだから、いよいよ 3年目の更新期になって、ここで積み重ねた結果、「更新します」「更新しません」と いう話になると思うのです。何もやっていないでいきなり3年目の更新のときに、「実 は評価するのです」というのはなくて、やはり1年か半期ごとに評価を積み上げていっ たからできることなのではないかと思うのです。 ○本間雇用開発課長補佐  これも1回目の参考資料の中の9頁に出ているものですが、評価制度ということで調査 したものがあります。基本的には正社員と同じ基準の制度がある所、あと別の基準の制 度がある所ということで聴いています。契約社員では、何らかの制度があると答えてい る所が58%ほど、約6割弱ぐらいあります。ただ、フルパートになるとかなり低くなっ ていまして、それが45%弱、さらに短時間パートになると40%ちょっというぐらいに、 やはり就業形態によって評価制度の有り無しも若干差ができているということが出てい ます。特に別の基準制度を設けているというのが契約社員では4割ちょっとありまして、 ある意味、正社員とやはり分けた評価制度という形で作られている所が多いのかなと思 われます。 ○古賀人事部次長  当社の例が参考になるかどうかはわかりませんが、先生のご質問に関しましては、当 社は短時間の有期しかおりませんが、一応、評価制度はA、B、Cで持っていて、Cが2年 続くと解雇するという内規は持っているのです。ただ、本人に開示しないとか、全国で きちんとその成績が開示されているかというと自信がなくて、したがって更新、雇止め かと考えたら、雇止めを例えば2年で急にやるということは労働者にとって非常に厳し いだろう。はっきり言って会社が負ける可能性が高いということで、やっていないとい うことはありますね。したがって勤務態度が悪いという形でしかいままでは雇止めはや っていませんでした。 ○梅崎委員 明確な形で勤務態度が悪い人だけを。 ○古賀人事部次長 明確な形で、1週間以上来ないとかですね。 ○佐藤委員  非常に大事で、資料2で挙げている提案をやるとすると、例えば業務が減ったら、業 務量変動とか書きますよね。だけれども、たぶんその次のことも言ってあげなければい けないわけです。だから雇止めをする人をどう選ぶかですね。これがたぶん企業にとっ て何も情報がなくて、ただやれと言われるのはちょっと無責任です。そうすると、業務 が半分になりましたと、するとフルタイム有期が10人いたらたぶん5人にしなければい けない。これを減らすのは言っていたのだからいいですと、どう選ぶかについて必要に なってきますよね。  そうすると梅崎委員が言われたみたいに、たぶんその仕組みをやるためには他方で人 事評価の仕組みを入れておかなければまずい。その人事評価を順序か何かでやります、 それが合理的ですみたいなことを言っておかないと、たぶん企業としてはやれないです ね。業務が全部なくなってしまえばわかりやすいのだけれども、そうではないから。予 算などで予算が半分になってしまったと、全部なくなってしまえばいいけれども、そう すると選ばなければいけない。そうすると選ぶのにある程度社会的に認められて、本人 も納得するであろうものを提示しておかなければいけないのかな。ただ、いまの契約法 だとそこまで言っていないわけですね。 ○諏訪座長  お2人の言いたいことはよくわかるのですが、つまり、いろいろな対応策を考えてい ないから、ある意味では合理的な判断なのだけれども、微妙な判断がなかなかできない から形式判断で処理をするのも、全体のコストを下げる、トラブルを避けるためでは、 現場にそれなりの合理性がある。それをそうではなくして、もっと微妙な判断をしろと いうのならば、合理的な微妙な判断基準の手掛かりを出さないと、ガイドラインとして は不親切だろう。端的に言えば、ただ、うまくやれと言っても、どうやったらうまくい くというのがわからないという人に、わからせないといけないのではないかというご指 摘ですよね。それが1つは古賀さんが言われていたような対応をすることだけれども、 さらにもっと言えば、もう1つ言われたように、全国でちゃんとやられているかどうか よくわからないというわけだから、現場の対応する責任者に、然るべく、そういう評価 ができる評価者訓練がなされていないといけない。 ○古賀人事部次長  一応、責任者だよということで置いてはいるのですが、そして冊子も配ってはいるの です。果たしてそれが確実に有期なりの方にフィードバックされているかというと、は っきり言って駄目だろうというのがいまの結論です。 ○諏訪座長  それも全部コストになるわけですから、そういうコスト全体を考えて会社は判断をす るわけですね。 ○古賀人事部次長 そうです。 ○諏訪座長  いままでのように需給関係が緩い状況であるならば、もう一律処理のほうがいいやと いうことになるかもしれない。それで新たに採ろうと思えば採れる。でも、だんだんこ れからのように逼迫してくるとそうは採れなくなってくる。そういう状況の中で、どう 現実に行動していくかですね。 ○佐藤委員  ですから、いまみたいのをぎりぎりやっていくと、もしかすると、例えば、雇用契約 を更新しないと言って、更新する人を選ぶのが問題だなんていう議論になってくると、 みんな辞めさせますという話になりかねない。極端な場合に、新たに雇うというふうに 振れると、いちばんよくない事態になってしまうので、さっきみたいに3年で終わりと か2年で終わりを徹底的にやるみたいな選択になるのも、また問題なのです。 ○諏訪座長  だけど、そのシミュレーションをもう1つ先に進んでみると、だんだん人手不足状況 になってくるとか人材不足になっていくと、そんなことを言っていられないし、ある程 度長くいてくれないと生産性も高まらないし技能も高まりませんから、そういう人たち を他方で社内にとどめたい。そのときは、一方で補完関係にあるのが正社員登用ですか。 ○佐藤委員  登用して、欲しい人だけは3年のうちに登用してしまうというやり方はあるのかもし れない。ほかの人は3年で終わりというのは1つの選択かもしれないです。 ○諏訪座長  そういうふうに考えると、どういうカップリングをした解決策の提示をしておくこと が現実的かということになります。 ○梅崎委員  私のイメージだと、たぶん現場で残ってほしい人は現場の人には明確にわかっている と思います。つまり仕事を一緒にやっているわけですから、この人に抜けられると困る というのは誰と誰というのはわかっていると思う。ただ、政策というのは当然、人事の ほうから入ってきますから、しっかりと証明しなければいけない。挙証責任みたいなの がある。そっちで何となくわかっているんだよというのは現場の暗黙知としてあったと しても、実際、訴えられたらどうしようとか、人事ではそこの情報が入って来ないとな ると、せっかくある知識、最適解を求める知識というのは、全く埋もれた資産になって しまうわけです。グッドプラクティスとして探すのであれば、現場の知識というのがあ る程度人事まで上がっていることが、もしかしたらないかもしれないですけど、あれば ちょっと知りたいなということです。  基本的に能力の評価ですから、絶対的に証明することは不可能です。しかし、ある程 度辞める人が納得していくプロセスというものが、そこにちゃんと設計されているかど うかということになれば、いま諏訪座長が言われたように最先端のところはかなり逼迫 しているわけですから、良い人が採れないと思えば頭を使って、現場の知識を使ってい る所があるのではないか。具体例は挙がりませんけれども。 ○諏訪座長  それでは、今がちょうどいい例だと思います。こういう区分をして、かつ、なぜそん なことをしているのかということの裏と表のさまざまな事情を踏まえた上で、何かした ほうがいいですよとこちらは言うわけですから、なぜいいのか、どうやったらいいのか ということも、ガイドラインですからできる限り目配りしていくべきではないかという、 議論の仕方の1つのサンプルの議論が展開されたと思います。ここだけにこだわるわけに いきませんので、ほかも含めて今のような議論の仕方は多くの方も、いかがですか。議 論としては間違った議論の仕方ではないということで、一応、アンタントを皆で得てお いた上で、では実際にどうするのかということで更にご指摘いただこうと思います。お 願いします。 ○藤川委員  3頁の2つ目の課題ですが、今回の研究会のヒアリングや資料の解説を通じて個人的に は、率直に言うと正社員登用の促進を具体的に図るのは難しいなということです。最初 に座長がまとめられたように、本当にいろいろな例がありすぎて多様で状況も違う。 そうなると、第1回の研究会で示された記憶があるのですが、もう始まっているのです ね。助成金のところで、実際に正社員の登用例がないと支給されないのでしたね。 ○本間雇用開発課長補佐 そうです。 ○藤川委員  それでは、ちょっと狭いのかなという気がしました。不正確なことを言うので間違っ ていたら指摘してほしいのですが、雇均法のポジティブ・アクションプログラムのよう な形で、労使の中で徹底的に正社員登用のあり方について話をさせて、望ましいものに ついて検討するという方向や姿勢自体を評価してもいいのかなと。これは最後で議論す ることかなと思っていたのですが、今日、思い付いたので言わせていただくと、この2 つ目の課題の具体的な中で私の言いたいのをまとめると、正社員登用をしたという実績 をトリガーにするだけでなく、それに向けて労使が努力したということについても、政 策として助成の対象にしてもいいのかなと思いました。  というのは、これは個人的な意見なので反論があったり、ご指摘があったら言ってい ただきたいのですが、正社員登用への道筋を義務づけるというのが、ある意味、ひとつ 強い方向性だと思いますけど、私の意見だとそれは非常に無理で、正社員登用をしにく い、もしくは絶対しないという姿勢を崩すという、一穴を開けるという方策のもとでの 具体策づくりが重要かなと思いましたので、このような話題提供をしました。 ○本間雇用開発課長補佐  それは正社員登用に係るアクションを何らかの形で起こせば、それに対する助成であ り奨励金を出すという形ですよね。 ○藤川委員  そうです。情報提供や行政への協力とかです。ただ、それはいい加減な計画では駄目 ですから、かなり具体的にということで、私も昨日、一昨日と作っていたのですが、文 科省へのGPとか、いま大学は補助金を取ろうと必死ですけど、ああいう形みたいに何年 度計画とか、あまり複雑にすぎると中小企業の方が嫌がって負担になるので、普及の効 果は下がりますけど、そこら辺はうまくバランスを取りながら、ある程度のスペックの 基で様式を作り、手続を作り、助成するというあり方がいいのかなということです。 ○本間雇用開発課長補佐  確かに趣旨は非常に面白いと思われるのですが、助成金を作る側に立った場合、どう しても不正受給の問題があって、客観的に何か証明できるとか何らかの形として残って いないと、どうしても不正受給が横行してしまう。残念ながら現実に、今、そういう状 況にあり、そういったところから言うと、なかなか労使だけで話し合ったとかだけだと、 どうしても書面上作って、ボンボン出てきてしまうことも起こりかねないことが危惧さ れます。  そういう意味で今年4月から施行されたものも、実態として就業規則の変更があった り、実際に正社員へ転換して、例えば1カ月分の給料を払ったという客観的、外形的な ものが何かあって、初めてちゃんと正社員に登用したことが証明されると考えています。 その辺は不正受給とのバランスなのでしょうけれども、どうしても必要になるところが あります。 ○藤川委員  私もこれを申し上げるときに意識をしていたのは、東京都の労働相談の民間委員をや っているのですが、不正受給の問題というのは実は結構深刻なのです。しかし、どうや っても出るというのは非常に悲しい話ですけど、それが現状であると思っているので、 こういうことを言うと程度の問題と言われるかもしれませんが、いまの場合でも出ると 思っています。  2つ目として、これは不正受給をできるだけなくす方向という方策を考えたらいいの ではないかと思っています。それは不正受給のときのサンクションの強化と簡単に言っ てしまうのですが、難しいのは何となくわかります。ただ、言わせていただくとサンク ションの強化と、要するに不正受給の問題というのは、地域でも産業でも企業でも労使 関係は信頼というのが結構重要で、あの会社は信頼できるねとか、あの組合は大丈夫だ ねというところが私は重要だと思っているのです。その信頼関係が重要だから、あそこ は大丈夫かなと心配しながらオフレコでよく話すのです。  何が言いたいかというと、そういうことをちゃんとクレジットできるような仕組みも 考えていいのではないか。極端なことを言うと弁護士がそういうのにちゃんと御墨付を 与えるとか、ハローワークで指導官の方が、それについてはちゃんとクレジットを与え られるような仕組みを作る。私の言いたいのは、不正受給対策というところで、それは やるべきというのが筋ではないかと思っています。 ○太田職業安定局長  不正受給も1つの要素ですけれども、政策的な判断としては、委員がおっしゃったよ うな助成金の仕組み方というのは当然あると思います。ですから実際に真摯な努力をし ているということが1つ、あるいはもう1つ進んで制度を作ったというのも、それは外形 的にわかります。もう1つ今回のは、制度を作った中で、実際に登用するところまで求 めているというので、かなり政策的な評価として高いハードルを課している。それは助 成金を効果的に活用するということで、かなり高いハードルを課しているわけです。  ただ、政策的な判断としては、制度を作っただけでもいいのではないかというのもあ りますけれども、当初作ったときの判断は、実際に正社員登用例が出てきている、1人 でも正社員登用の例を増やそうということで、実際に登用したことを要件としていると いうことですので、実績等を見ながら、場合によっては制度だけでいいのかということ も含めて、そこは幅広にどういう政策がいいかということは検討してみたいと思います。 ○藤川委員  これまでそのように政策的な判断を、つまり1つの決断をされた理由は、いまのご発 言で理解できましたが、今回の研究会を通じて、実はハードルが高いのではないかなと。 特に流通の方の話だと、正社員とは何かということを根本的に考えない事態まで出てき ていて、実は非正規の方でも正社員として位置づけてもいいような方もいらっしゃるの で、そういうことを考えると難しいのかなと思い、このような発言をしたわけです。私 の発言は出発点としての政策的判断を一部変えろというふうに、ある意味迫るような意 見でしたが、一応、意見として言わせていただきます。 ○太田職業安定局長  制度として、これで絶対動かさないというものでありませんので、助成金というのは 実績を見ながら、出ていなければどういう問題があるか。実際に登用例はなかなか難し い。むしろ制度を作ることに意味があるのだという判断をすれば、それは制度の見直し というのもありますので、まだ始めたばかりですから実績等も見つつ、いまのご意見も 踏まえて、さらに制度の見直し等も含めて検討すべきことは検討したいと思います。 ○佐藤委員  正社員登用制度というのは、どういう意味があるかということと、逆に言えば非常に 大規模な助成金を作るということですが、やや反対するような意見を言うと、例えば今 回の、有期であっても雇用が安定し、きちっとルールが明らかで継続雇用され、その中 で能力が開発できて、それに見合った処遇ができれば、たぶん正社員転換は要らないの です。つまり社員との処遇が均等されている。雇用も合理的にキャリアとしての安定性 があるとすれば、正社員転換制度というのは本当に要るのだろうか。社員の中にもいく つか雇用区分があるようになった状態の1つとして、有期契約があるような状態になっ てしまえば、正社員転換というのは何なのだろうかということになるかもしれない。で すから、そういう意味で正社員とは何かということにも関わるのですが、どういうとき に転換が必要なのかというのは、ちょっと考える必要があると思います。  他方、有期の人でずっと長くいるから、社員より勤続年数が長い人は転換してもいい というのはそう単純ではなくて、たぶん活用の仕方が違うわけです。働く人は働き方も 違うわけなので、転換するということは、する仕事や期待される働き方が変わるという ことです。いまの仕事を長くやっているから正社員になれるという話ではないので、企 業はそこを見ているわけです。だから転換した後、その先続くキャリアに乗れるような 能力や意欲があるかを見ているわけで、本人も、それに乗りたいという人がいて、やれ る転換制度なら私は反対はしないのです。それが、その人にとってあまり望むものでな くて、今のままでずっとやっていけばいいというのであれば、それはそれでいいわけで す。ですから、何となく転換制度というのは、転換することが望ましいのだという感じ でできていると、私はあまりよくないかなという気もして、行き来できることが非常に 大事だと思います。  もう1つは、有期としての雇用の安定性なりキャリアの継続、能力開発、処遇の向上 というのはすごく大事だと思います。何となく転換制度に助成してお金を付けるという のは、これでみんな正社員にしてしまえばいいという感じがもしあるとすると、どうか なという気がしないでもない。ただ、いまは過渡期ですから、確かに転換することで労 働条件が向上することは間違いないと思いますけれども。 ○藤川委員  私も同意見で、1回目か2回目に正社員登用に関する話題がメインでありながら場違い なことを言って、有期雇用契約の雇用管理改善という目的実現のためならば、有期雇用 自体について雇用管理が維持されたままで、雇用管理の改善をすべき方法も考えていい のではないかと発言したのは、その理由なのです。ただ、議論を経て思ったのは、メニ ューを1つ増やすことは絶対重要だなと今回実感しましたので、いまの佐藤委員の言わ れている意味合いが、どこまでネガティブなのか距離感は計れていない。 ○佐藤委員  私は駄目だなんて言う気は全然ない。ただ、その時にみんな正社員にするのがベスト だというのは、ちょっと困るなというだけの話です。 ○諏訪座長  いまの議論で浮かんできた問題は、一方で有期契約問題があって、それのひとつの理 想像としての解決策は正社員転換だという図式が、果たして妥当かという議論です。正 社員というのは実はいくつかの要素から成り立つ存在だから、有期契約の全く反対側が 正社員と言えるかどうかが、ちょっと難しいところがある。  段階的に考えると、有期契約は何が問題かと言えば、期間の点だけで考えると雇用が 不安定になって見通しが付かないことが問題です。そうすると契約更新がなされるとし たら更新に関する条件がはっきりとされ、その先ちゃんと働いていれば、普通にいけば 更新し続けますよという方向へいく。あるいは1回の契約期間をできるだけ長くするこ とも見通しを高めて安定度を高める。こういう対処のし方がある。  さらに言うならば、期間の定めのない契約社員はいるかという議論になりますが、理 論上はあり得ると考えると、それは社員の中における区分の問題にすぎなくなる。契約 社員的な仕事をやりつつ、しかし、期間の定めはないというやり方です。さらにその先 にあるのが正社員型という順番があるわけです。それに沿った対応策というのを考えな いと、AでなかったらZにすぐ飛んでしまい、しかも一律これしか解決策はないという議 論をするのは、いかがなものかなということで、感じとしてはそういう議論なのだと思 います。 ○佐藤委員  フルタイム有期を考えると業務限定ですよね。普通は正社員転換をやる場合だと、転 換した後もある程度業務限定の職種がある。そういう区分を作っている所は割合に転換 しやすいのです。ですから昔的には業務限定型の正社員で、給与も3段階ぐらいで職務 給で上がらないという仕組みがある。こういう所は割合転換しやすい。本人にとっても この仕事でということです。その仕事をやっている限りであれば、そんなに給与は上が りませんと、それでよければ転換してもいいですよということです。  ですから、転換制度がうまくいくのは、諏訪座長が言われたように社員のほうもある 程度つながりがあればいいのです。それがなくて正社員になったときはいろいろな仕事 をやってください、今はいいですけど、なくなったら他の仕事をとなるわけです。そう なってしまうと転換するときには、そういうことをやれるかどうか見ることになり、残 業も転勤もという話になってしまうわけです。ですから転換制度がある程度円滑にいく には、特に大きな会社で言うと、社員区分がある程度多元化しないと実は円滑にいかな い。 ○諏訪座長  同じことはこの中にも出ていたと思いますが、事業場が変わるというので嫌だという 人がいる。ではその人たちはより安定する身分になることが嫌かというと、そんなこと は全然ないけれども、それと見合わないぐらいに負担が大きくなることが、自分のライ フプランや、その他との関係で困るということなのだろうと思います。そうすると、こ こら辺のこういうグラデュエーションを作ることを法が強制するというのは、すごく難 しいけれど、ガイドラインとして、こんなものが考えられるのではないかとか、お勧め ですよというのを、状況が許す会社は積極的にとっていけばいいわけですから、対応策 はあり得るのではないか。そこは「あれか、これか」という二分法ではなかなか現実的 でないというのは、先ほどからずっと出ている議論ですから、ある程度多様なメニュー の代表例を示していくという関係の議論なのだと思います。 ○奥田委員  諏訪座長がおっしゃった点は非常に重要だと思います。正社員と言うとすごくハード ルが高い感じがするのです。だからいろいろなものが入ってくる正社員にはなりたくな いけれどというのがあるので、この間のヒアリングや議論の中でも、いま佐藤委員が話 された正社員の中でもいろいろなレベルがあって、必ずしも仕事が増えて、すべて一緒 になるわけではないけれども、ある程度身分は安定するという段階もあるだろうという のは、考えていく方向性としては重要だろうと思っています。  というのは、有期契約で仮に何年も更新してきて、この先も更新するだろうと思う人 であっても、私の感覚からすると決して安定はしていないと思います。いつ切られるか わからないというのは当然あると思います。そういう場合で正社員になるかというとき に、正社員に一定のランクがあって、仕事はさほど変わらないけれども有期ではなくな る正社員のあり方も、当然あると思います。おっしゃるように法律で強制するというの は、現行法の中では難しいわけですから、ガイドラインとしてそういう方向性を考えて いくというのは非常に重要だろうと思います。 ○藤川委員  今回のガイドライン作りで重要なのは4頁の2つ目の課題です。雇用管理事例をできる だけ集めて分類し、諏訪座長のおっしゃったような形での正社員の要素とか、当該企業 の人事労務管理のスペックや産業、あと地方と都会の違いも結構重要ではないかと思い ます。そういう要素を含めた上で分類した管理事例を示し、普及を図ることが重要では ないかと個人的に思います。  引き続き4頁についてもう1つ発言すると、課題の1つ目です。「OJT、OFF-JT、自己啓 発に関する支援を促進することが有意義ではないか」ということについて、可能であれ ばさらに一歩、これについて具体的なガイドラインを示していただきたい。例えばこれ も自分の狭い経験で恐縮ですが、社会人大学院をやっていて、修士で1学年50名集め、い まその責任者をしています。もう4年目ですが、契約社員、派遣社員の方が意外と来る のです。特に知財という新しい分野では、そういう派遣社員、契約社員の方は次のステ ップとして、こうすれば自分のキャリアがアップするのではないか、ということで来て いる方が多いのです。狭い経験から演繹したので一般化できるかどうかはさておき、こ の自己啓発に関する単なる支援だけでなく、着実に自分のキャリアをアップできるため に、先ほど奥田委員もおっしゃったように、正社員としてのハードルというのはいろい ろな意味で高くて、そのハードルの高さのうちで労働者のスキルというのも結構重要な のです。あと形式的なところで言うと学歴とか資格もそうです。  これにとって有用な資格も、弁護士など専門業資格でなく多様な資格の取得とか、自 己啓発に関しては、新しい産業に移行する労働力がうまく流れることも、正社員化に当 たっては重要だと思いますが、その場合には別の企業に行ってしまうことになると思う ので、本件の正社員登用とは離れたことになるかもしれませんが、この課題で、新しい 産業や必要分野、そこで求めるスキルというのを明示していただければいいのではない かということを感じました。 ○諏訪座長  いまの問題は言葉を変えて言うならば、その会社で正社員になるために必ずしも来て いるわけではないですよね。 ○藤川委員  そうですね。ただ、そこでも正社員に登用されたいと希望されている方はいらっしゃ います。 ○諏訪座長  いらっしゃるでしょうけれども、中でも場合によっては正社員化だし、よそに転職し つつ今度は正社員になる。あるいは同じ契約社員でもより所得の高い、キャリアが伸び る可能性のある所へ行きたいということ。そうすると、ここでは企業における雇用管理 だけを念頭に置くと、実はマッチングとか、こういう有期契約社員の労働市場の整備が あまりここに挙がってこない。それを外部でどう調整しつつ、内部労働市場的な企業と の間でどうつなげていくかという部分に関わる、何か企業もこういうことをやってくだ さいということをどう出すかです。  例えば厚生労働省が、いま進めているジョブカードみたいなものと結び付けつつ、会 社内でもそれが活用されるし、外の会社へ行くときも活用されるというものに結び付く ようなものとか、これはどこへ入れたらいいですか。能力開発でしょうか。マッチング の問題だろうと思うのですがね。つまり有期契約みたいなものが安定するのは、実は個 々の企業の内部だけで安定させるのは非常に難しく、良好な労働市場があって、そこで 動けるということで生涯を通じて安定しなければいけないのですが、外に良好な労働市 場がないままに、個々の企業の中だけで費消されてしまい、非常に悲惨な結果になって しまうこともあると思います。どこへ書いて、企業に一体何をさせたらいいかという問 題なのです。 ○藤川委員  私の発言は企業だけでなく、有期契約労働者にも何かさせなければいけないところが あると思います。そのための課題ですから、私が先ほど申し上げたところは能開に入れ ていいと思います。諏訪座長が言われたのはもっと広いマクロ的な、より根本的なとこ ろですよね。そうすると「その他」になるのかなという気はいたします。 ○梅崎委員  先ほど企業を調査したらいいのではないかということでしたが、逆にいまお話を伺っ ていて思ったのは、個人に聞いてみたらどうかと思いました。キャリア形成のどういう ところが特に正社員に変わるところにつながるか、変わりたいと思ったときにどういう パターンがあり、変わってみたらどういう不安があるか聞いてみる。例えば同じ会社で 契約社員を10年やっていて、そこで限定的な仕事をしていたけれど、ある日正社員に移 る。会社のほうが「移っていいよ」と言ったときに、同期で入った同じ年齢の正社員で ずっと経験を積んできたところにポンと入るわけです。下に入るのか上に入るのか、横 に入るのかということがあったときに、結構、大なわとびに入っていくような感じで入 りにくいというのが1つあると思います。それなら同じ会社の中で契約社員から正社員 でなくて、別の会社に移って正社員になればいいという場合は、例えば大学院に通った りして、専門的な知識を売り物にして正社員として働くというのがあると思います。  ただ、それは少数派です。契約社員で働いているうちに会社の知識がだいぶでき、そ の会社内の専門性が身に付いたときに、もうちょっと仕事を広げていもいい。キャリア を広げてもいい。それに耐えられるのではないかと思って、広げた途端に激流に入って しまうのは困るわけで、そこにうまく溶け込むために企業がどういう支援をしているか、 個人はどういうふうに乗り超えたかがわからないと、門を開いても契約社員の働き方と 正社員の働き方がだいぶ違うし、正社員は大企業であればキャリアパスを作っています から、10年ぐらいして途中から入っていくのは非常に難しいのではないかという実感で す。 ○佐藤委員  普通、転換制度というのは長くいるのではなくて、実際は早目に転換させてしまうの です。長くいる人は本人も希望しないし、会社としても社員は無理だと思っているので す。だから割合に早目で、雇った初めの段階に転換させているのです。  つまり正社員として本人も希望して、やれると思えば、わざわざその必要がないわけ です。教育訓練投資からすれば有期をずっとやってもらうとあとで社員になるとそれほ ど役に立たなくなる仕事になってしまいますから、実際上は転換制度を活用している所 は、転換する人は早く転換させてしまう。そういう所がうまくいく。 ○諏訪座長  それが現状だろうと思いますが、他方で梅崎委員の言われた例で言えば、ずっとやっ てきて、ある部分でかなり専門的な力量、知識、経験を高めていった人が、その延長線 上で、しかし契約社員としての不安定な立場から、もう一歩前へ行くというところの転 換です。それが、まさに社員というもののあり方のダイバーシティをどうするかという 問題と結び付くから、これがまたややこしくて非常に難しいのです。  前もお話したかもしれませんが、私の教え子で10年ぐらい契約社員をして、30歳過ぎ て正社員にならないかと肩を叩かれた人から話を聞きました。非常に困って相談してき たのですが、まさにおっしゃるとおりで、正社員としてのキャリア形成を全然していな いから、ある日突然、全然知らないことをいっぱいやらなければいけなくなるし、何と 言っても部下を持ってプロジェクトを運営しなければいけないというので、死ぬかとい うぐらい苦労したのです。だから本当に一時期はずいぶん悩んでいました。ですから本 当に難しいのです。  キャリア形成のパターンを変えていくときに、途中で前のほうをすっ飛ばして先へ行 くというのは、ちょうど足し算や掛け算を習わないで割り算や引き算をやれと言われる ようなものですから、これは大変な苦労をする。これがないようにするためには、でき るだけ早い段階で転換というのが1つだし、もう1つは、ある意味で足し算や引き算がわ からなくてもいいではないかという使い方です。本人がそれをカバーできた場合は、も ちろんカバーしてあげることは大事だと思いますが、こういうような二面的な対応を考 えないと、なかなか現実的でないと思います。 ○佐藤委員  あと処遇上の問題ですが、もう1つのやり方は、転換する前に社員の仕事をやらせる というやり方なのです。それは一時期で見ると、処遇上ひどいことをやっていると見え ないこともない。重ねてしまうところはうまくいくのです。だから半年ぐらい社員の仕 事をさせる。だけど処遇が上がるわけではないですが、そういう経験を積ませておいて から変えるほうが実はうまくいっている。一時期だけ見ると、これは処遇上問題ではな いかとなってしまうけれど、そのほうが転換はやりやすい。 ○藤川委員 それは、しかし、能力開発の問題ではないでしょう。 ○佐藤委員 違います。 ○藤川委員  ですよね。私は能力開発で議論していたものですから、能力開発の問題ではなくて企 業の処遇の問題だなと思いますが、どこで議論してもいいと言えばいいですけれど。さ らにいまの話だと、正社員登用したら登用したことで絶対マッチングするかというと、 そうでもないということですよね。紹介予定派遣みたいな形で登用したときに、ある意 味、「試用期間を付けるの」みたいなことで労働者は怒るかもしれないですが、ある意 味、助走期間みたいなことも必要だということは、その労働者のより適切な将来的処遇 を考え、より望ましいあり方から考えると、現時点でやっている転換制度、登用制度と いうのは、白から黒に即切り換わるわけです。そういうあり方だけでないよということ も示したほうがいいかもしれません。 ○佐藤委員  要するに雇用管理ですから、転換する前に、転換候補者みたいな人に社員と仕事を重 ねてやらせるとか、非常にうまくいっている所はそういうことをやっているわけです。 そういう、転換がスムーズにいくためのやり方みたいなのは例示したほうがいいかもし れない。あと転換すると働き方が見えないところがありますから、それを受け入れて転 換するのかどうか。あるいはきちっと説明しなければいけないとか、そういう運用上の ノウハウみたいなものは、いろいろ挙げたほうがいいかなと思います。 ○諏訪座長  それは、いわば転換向けトライアル就業みたいな考え方ですね。ほかにどうぞ。今日 はまだまとめる段階ではありませんから、いろいろ思い付くことを思い付く限りご発言 いただければと思います。 ○佐藤委員  2頁の処遇のところで先ほどのパートの話ですが、パート労働法を言っていることが ありますね。一定の仕事と人材活用の仕組みは社員と同じに処遇しないと禁止ですよと。 あとはキャリアが中期で一緒なら賃金制度を揃えなさいということとバランス。あとは 雇うとき労働条件明示とかいろいろありますが、ここだとそれ以上に言うことがあるの かどうか。その話になってくるとどうなのだろうか。処遇のところです。ここに書いて あることは均衡考慮とか採用時明示しろです。説明責任が入ったのをフルもやってくだ さいよということがあるかもわかりません。ここは基本的には全部横に並べるという感 じですか。 ○本間雇用開発課長補佐 そうですね。 ○佐藤委員 フルに横へ伸ばすという。 ○本間雇用開発課長補佐 イメージです。 ○佐藤委員 追加的なものはない。 ○本間雇用開発課長補佐  追加的なものというのは、現状ではなかなかないなという感じはしていたのですが、 あとは例えば施策的に今回、正社員登用制度についての施策を国として作っていますけ れども、それを少し幅を広くしてメニュー化する中で、処遇の向上みたいなものを向上 させるものであるとか、そういったものも考える余地はあるのかなとは考えています。 ○佐藤委員  今日、いただいたデータでは、例えば3頁でパートの手当や家族手当の違いがありま すよね。 ○本間雇用開発課長補佐 はい。 ○佐藤委員  こういうものをどうするか。手当のところはあまり議論しなくて難しいところが残っ ているところがあるのですが、そういうのをやるかどうか。本来であれば仕事リンクな のだから社員に手当があるからやれというか、社員のほうをなくせという話です。住宅 手当とか、そういうのは社員にあるのがおかしいので、社員にあるから有期の人にも付 けろというより、本来であれば向こうをなくせというのが論理とすれば一貫するのかな と思いますが、どういうふうに議論するかです。 ○諏訪座長  そういう非常に危ない、他方で多くの人が冗談じゃないと言うものは、なかなか現実 に政策として出しづらいですから、メニューの考え方として示すのは構いませんけれど も、なかなかそうしないとできないというのは、ガイドラインといえども、言ったとこ ろでいかがなものかとなってしまう。別に否定するわけではありません。 ○佐藤委員 つまり、どこまで議論するのかと思っただけです。 ○諏訪座長  ですから、問題はパート法、その他で既にあるものを、もちろんメニューとしてここ へ載せていけないわけではない。重複掲載は厭わないとしても、ではそれで終わるのだ ったら何でこの研究会なのかとなるので、もう一度有期ということと結び付いて何があ るかという、ここなのだろうと思います。 ○佐藤委員  ついでに、これで言うと両立支援のほうで育児休業や介護休業をどうするか。広く言 えばワークライフ・バランスで有期労働者の人たちです。議論とすれば有期契約労働者 でも、一定の条件を満たせば育児休業を取れるわけです。当然、産前産後休業も取れる というのがあるわけです。だけどその辺がうまく浸透していない部分がある。教育訓練 をやるけど、それはやらないというと、バランスからいくと教育訓練よりそっちのほう が大事かもしれない。昔の広い意味での労働条件を考えたときに、もしかしたら優先順 位から言うと、基本的な労働条件でずっときたとき、もしかしたら能力開発より、ワー クライフ・バランス的なほうが大事な時代かもしれない。そうなると、わかりませんけ ど、能力開発があってそれがないのというのは、あり得るかもしれない。 ○本間雇用開発課長補佐  現状の資料として、育休関係で特に何もないものですから、現状として整理できなか ったということもあり載せてはいないのですが、いま、JILPTさんのほうで有期契約労 働者と育児休暇ですか、そういう調査をされているという話を聞いていますので、その 辺も踏まえて盛り込めたらと考えています。 ○原委員  先ほど諏訪座長からお話がありましたが、有期契約社員の雇用の安定性を考えるとき に、労働市場全体で考えていかなければいけないという話があったかと思います。第1 回の研究会でも話に出ましたが、情報をできるだけ提供するということを、どこかに盛 り込んでもいいのかなと思いました。有期契約の人たちが、会社を移りながらキャリア アップしていくということがあるのであれば、どの企業で、どれだけ能力開発の機会を 提供しているか、福利厚生制度があるか、そういった情報を積極的に出していく仕組み があればいいかなと思いました。  あと、ガイドラインとは関係ないかもしれませんが、能力開発のところでOJT、OFF-JT、 企業内訓練と自己啓発が並列的になっているわけです。実際、労働者個人で見てみると、 OJT、OFF-JTの機会がある人は積極的に自己啓発も行っている。どういうふうに因果関係 があるかよくわからないのですが、企業内でそうした訓練機会が与えられていて、そう した機会のある人のほうが、会社を離れたときでも自己の能力開発を積極的にやってい る傾向があります。たぶんそういうふうに機会を与えられている人や自分でやっている 人と、機会が与えられなくて自分でもやっていない人と、二極化が進んでいるのかなと いうところもあるので、その辺を考えていけるようなことが盛り込めたらいいかなと思 いました。 ○諏訪座長  ありがとうございます。ほかに落ちているところと言いますか、これまでそれほど議 論してこなかったので、ここには入っていないものとしてワークライフ・バランスがそ うですし、いまの原委員のご指摘がそうだろうと思います。同じようにいろいろお気づ きの点をご指摘いただきたいと思います。 ○梅崎委員  図で言うと、この5番のところが個人向け調査ということで、もちろん賃金が安いと いうことに対して不満を持っているのですが、私が知りたいのはフルタイムの契約社員 等が先ほどの佐藤委員のお話ですと、移行期には実質正社員の仕事をやらせることもあ る。移行期でなくても何となく周りの雰囲気で正社員の仕事をやってしまっている。プ レッシヤーで、やらなければもたないなという人も何人かいると思いますが、どのぐら いの割合でいるのか。つまり契約社員なんだけど正社員的な仕事まで、実質上やってし まっている人に関しては、それこそ正社員登用が重要だと思いますし、賃金なり何らか の形で処遇の改善をしなければいけないと思います。  ただ、このデータだけを見ると、賃金に対して不満があるのですが、パートと契約社 員を比較してみると、所定外労働時間が多いとか有給休暇が取りにくいとか、パートと しては仕事がきついとか時間が取りにくいみたいなことに関して、パートと比べても、 契約社員の人はそれほど強い不安を持っていないところがあります。このデータだけを 見ると、それほど正社員的な仕事までやらされていないと見えるのですが、それはどう 解釈したらいいのか。  私の感覚だと、パートの人のほうがもっと時間管理が徹底していて、正社員的な仕事 までやっていなくて、契約社員の人がよりやっているので、所定外労働時間が多いとか 有給休暇が取りにくいというのは、契約社員の人のほうが高く数値が出るかなと思った のです。 ○諏訪座長  複数回答だけど、いくつまでという、それによって後ろのほうにいっているかもしれ ない。3つまでとか何とか。 ○本間雇用開発課長補佐 これは複数回答で個数を絞ってはいないですね。 ○諏訪座長 では梅崎委員のおっしゃるとおりの疑問が出ますね。 ○佐藤委員 労働時間が希望に合わないでしたか。 ○梅崎委員  私が言っているのは、取りにくいとか言っているのは実際は時間ごとで仕事をしてい るわけですけど、「ちょっとここは休めないから働いてよ」というプレッシャーがかか るわけで、それを引き受けているのは基本的には正社員の人なわけです。たぶん機能的 柔軟性に対して対応しなければいけない正社員です。実質、あまりにも正社員の人が少 なくなってくると、その場に契約社員の人が柔軟性で対応せざるを得ないみたいな職場 の空気が生まれてしまって、仕事としては非常に負担が多くなっているのかなというふ うに思います。 ○佐藤委員 フルタイム有期のほうは、もっと高く出てきていいのではないかと。 ○梅崎委員  出てきていいのではないか。もちろん正社員になれないとか昇進機会に恵まれないと いうことに関しては、当然、不満を持っているわけですけど、何となく周りの雰囲気で 仕事を余分にやらされてしまっているなという不満は、パートと比較してそれほど高く 出ないというのは、なぜかということです。 ○佐藤委員  これが難しいのは、契約社員等というのはかなり幅が広くて、自動車の期間工みたい だと定年後の嘱託も入っているのです。あと専門職的、リーダー的な、いわゆる高度専 門職みたいな人たちと現場のフルタイム、あと定年後の嘱託も全部込みで「その他」に なっているので、パート以上にある面では仕事もバリエーションがあり、年齢層も幅が 広い。だから若い人たちのいわゆるフリーター的な人たちもいれば、ちょっといろいろ なものが混ざってしまっているということはあるかもしれない。 ○諏訪座長  そこはもう少し、我々が本当に対応する人だけにうまく絞った再集計ができればいい のですが、そんなのはとても無理ですね。 ○佐藤委員 原委員でしたか、前のは若年層とかフルタイムで分けていなかったでしたか。 ○原委員  平成13年のパート調査では、かなり細かく分けてやったのですが、意識の面では平成 13年度でも18年度でも、そんなに変わらないかなという気はしています。 ○諏訪座長 では前のものでいいから、ちょっと参考に、既に人がやってくれているものです。 ○原委員  13年パート調査かは、フルタイム型とパートタイムで若年層のほうを中心に見たもの があるのですが。 ○藤川委員  いつも思っている疑問なので、ここで聞きたいのですが、こういう調査を見たときに 「不満」「不安」というふうに、規範的な聞き方をするでしょう。いつも思うのですが、 いまの会社や仕事に対する、「客観的に状況について答えなさい」としたほうがいいの ではないか。つまり変な解釈をすると、取りにくいことが不満かどうかというと、正社 員も取りにくいし、しようがないし、休暇なんてと思う人も入ってしまうと、私の仮説 が正しいと、梅崎委員がおっしゃったような、つまりもっと高く出るという。 ○佐藤委員 次のような状況がありますか、と聞いたほうがよいと。 ○藤川委員 はい。いろいろな調査を見て、そういうふうに私は思っているのです。 ○佐藤委員  これはないけど、就業形態多様化調査で、正社員と並べると、正社員だって賃金が低 いと言っているし、もしかしたらもっと多かったかもしれないけど、これだけ見るとす ごい不満だということで、社員もたしか同じか、社員のほうが高いようなデータも結構 あるのです。「雇用が不安定」というのは社員も当然出てくるしね。 ○諏訪座長  そこは難しいですね。先ほど例を挙げた卒業生の場合は、正社員になって給与がガク ンと落ちたというのも、契約社員として相当高いレベルだったのが、正社員になればそ のいちばん下に近いところにランクされる。真ん中より下です。その結果、ドスンと落 ちたということの不満です。でも長い目で見たらというので、そこは我慢したという、 よくある話がありますから、これもそんなに簡単ではないのです。 ○荒井審議官  何となく思うのは、パートの場合には時間に対していろいろ制約があるので、時間に 対してはかなり厳しい認識なのに対し、フルタイムの方の場合ですと労働時間に関して はある程度自由になって、長く働かされても、ひょっとしたらケースによったら喜ぶケ ースもあると思います。そういうのはあるのかなという感じはします。 ○諏訪座長  そうですね。解釈はいろいろあり得ると思いますので、少し前のデータ等々と比べな がら、さらに皆さんの議論を深めていきたいと思います。だんだん時間がなくなってき ましたが、あと少しだけ何かほかにお気づきの点がありましたら、とりわけ資料2をめ ぐってご意見をいただきたいと思います。 ○藤川委員  佐藤委員が最初に言われた、なぜやらないといけないのかというところと絡むのです が、先ほど私が言ったのは雇用管理改善事例をたくさん載せるという形で、そういう意 味での情報提供というのが重要だと言いました。もう1つ車の両輪として抽象的理念と いうか、何で有期なのか。重複掲載はあるとしても何でここにターゲットを絞ってやる のかについて、理念的なステートメントがあってもいいかなと思います。それこそ諏訪 座長がかねてからおっしゃっているキャリア権のような考え方も背景にしなながら、有 期契約労働者の方をきちんと社会も企業も、そして有期契約労働者自身も自分の労働力 の重要性について考えて、適切な処遇をしないといけないことについてステートメント があってもいいかなと思いました。 ○諏訪座長 ほかに、いかがでしょうか。 ○奥田委員  今後の資料ということでお聞きしたいのですが、この雇用管理改善事例というものを、 できるだけ広く幾つかのパターンでとっていって、例えば先ほどの正社員登用のあり方 にしてもいろいろなパターンがあるでしょうし、そういうものをできるだけいろいろな パターンで見ていくというのは必要だと思います。ただ、その基になる資料とかその可 能性としては、どの程度のものがあるのか知っておきたいのです。 ○本間雇用開発課長補佐  その辺の資料につきましては、意外とまだそんなに数はないかなと思います。逆にこ の研究会の後、好事例集みたいなものをうちのほうで作ろうということで考えていたぐ らいなものですから、あまり幅広な企業の事例の調査結果というのはないのかなと思わ れます。JILPTさんさんのほうで、いくつかそういう調査などをされていて、そういっ たものはお持ちかなと思いますから、そういったものは参考にさせていただこうかなと 思いますが、ただ、かなり細かく分類できるようなものにはたぶんならないだろうなと いう感じが現状ではあります。 ○奥田委員  我々がある程度想定されるようなものも出していくような形でないと、そういう分類 というのはなかなかやりにくいと思います。 ○藤川委員  ということは実際にない場合には、奥田委員がおっしゃったのは、こっちで想定して 作ってというところでしょうね。こういうのが望ましいというもの。 ○奥田委員 そういう作業もすることになるのかなと思います。 ○藤川委員 それは賛成です。 ○諏訪座長  パートの議論はかなり進んでいましたから、これは20年以上にわたる蓄積がある。 派遣も同じようにそれなりにある。ところが、この契約社員のところになるとかなりポ コッと落ちていて、確かにいろいろ信頼できる調査もデータも他の領域ほどにはない。 これは事実なのだろうと思います。しかし、この点では佐藤委員はたくさんお持ちなの ではないかと思いますが、いかがですか。 ○佐藤委員 そのときには何かわかる範囲で提供します。 ○諏訪座長 心強いご意見をいただきましたので、原委員のところと佐藤委員のところを中心に。 ○佐藤委員  最後に出たときに、企業からすると、いちばん最初にお話したかもしれませんが、職 場に短時間の人もいればフルの人もいるわけです。本来、法律が変わったからパートだ けやるという会社もあるかもしれませんが、普通は有期はセットでやるわけです。今回 も有期のほうを出しても、それと関わってフルタイムの人だけやってくださいでなくて、 つまり基本的には、横並びでやるようなことを考えてもらうことが大事だというメッセ ージを、最初に書いたほうがいいと思います。それぞれ別々にやるということは普通は、 パート労働法の労働条件の説明責任みたいなのがありますけど、あれでもパートから求 められたら答えて、フルタイムの人には答えないなんて、職場でそんなことをやったら おかしなことになります。普通は同じようにやるわけですので、そういうことも少し考 えたほうがいいと思います。 ○諏訪座長  いろいろと課題をたくさんいただきましたので、これらをもう一度整理して次回に議 論したいと思います。最後に、我々学者が机上の空論ばかりしていて、けしからんと古 賀さんはお思いのところもあろうかと思いますから。 ○古賀人事部次長  確認したかったことが確認できましたので、これは定年後の再雇用とかの有期とは全 く切り離した、所得中核層の雇用改善ということでよろしいわけですね。それともう1 つが、パートタイム労働法というので非常に内部で悩んだのが、職務内容同一とは何か ということです。この間、奥田委員にも言いましたけど、例えば私の会社は初任給より も契約社員のほうが高いのです。なぜかと言うと、職務で見るとまだそうだろうという ことです。1年ぐらいは職務は同じなのです。同一は同一なのですが、その後の処遇等 で違っていく。この有期のときも数の割合が違うというのもありますけど、先ほど藤川 委員からありましたとおり、正社員の少ない業種もあるのかということでびっくりした わけですが、数の割合だけではなく質です。契約社員であっても派遣等で十分対応でき るような方もいますし、同一職務と言っても事務というのもありますので、割合だけで なくて職務の質もうまく捉えられるような形にしてもらわないと、企業としては、雇用 改善に向けての努力等がはっきりできないかなと感じました。もちろん企業側も、今後、 労働力が逼迫していきますので、有期契約の方の正社員化なりは考えていくのが多数の 方向だと思いますが、それでもできない方もいるということを考えていただければと思 います。 ○佐藤委員  いまので2つあって、いま処遇のところは基本的にパート労働法で横並びということ であれば、同じ職務というのは同じです。ただし、いま、詳しい同じ職務とは何かとい うのを出していますので、それを見ていただいてやることになると思います。もう1つ は、定年後、私は基本的に入るのだという理解でした。ただ、量というより政策的課題 があるかということと、対象外だという議論ではなくて、有期契約はそこが別だという ことにはならないと思います。だけど政策上、どこに緊急度があるとか頑張って改善し てくださいというところは若い人たちで、例えばキャリアの初期段階で、有期で繰り返 している人たちの処遇改善というのはターゲットかもしれません。だけど私は定年後も 入るという理解だったのですが、それは事務局。 ○本間雇用開発課長補佐 それは、そのとおりです。 ○諏訪座長  緊急性とか必要性の程度ということでは、古賀次長のおっしゃったとおりで、20代、 30代ぐらいの契約社員というのが、かなり重要な政策ターゲットにはなりますが、先ほ どパートだって排除されるわけではないと、有期契約という観点で一括りにしますから、 一応、60歳を過ぎた再雇用型とか嘱託などの方もターゲットの中には入ってくる。 ○古賀人事部次長 わかりました。誤解していました。 ○諏訪座長  主たるものではないということではないかと私も思っています。ほかに何かございま すか。あと5分ほどになりました。特にございませんようでしたら次回に向けてですが、 事務局から今後の予定等をご説明ください。 ○本間雇用開発課長補佐  次回の日程ですが、次回は6月18日の水曜日、14時から2時間程度ということで予定し ています。場所はこの第1会議室でということです。議題ですが、今回、課題のほうが いろいろ出ました。また宿題も出ましたので、その辺を踏まえながら、どこまで盛り込 めるかというのもあるのですが、一応、報告書の骨子みたいなものがどういうイメージ になるのか。その辺をお示ししたいのと、あとガイドラインも1回目でイメージという 形で骨子は示していますが、今日の課題と議論等を踏まえて、あと中身的なものを少し 膨らませたものを、ガイドラインの案までいくかというのはありますが、そういった肉 付けしたものを併せてお示ししたいと考えています。その2つについてご議論いただい て、予定としては5回目が最終回となりますので、それに向けてさまざまな角度からま たご議論いただければと考えていますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○諏訪座長  ということですので、次回が天王山みたいな非常に重要な山場になろうかと思います ので、ひと月弱の間、事務局には鋭意頑張っていただいて、たたき台のご用意をお願い したいと思います。諸先生方には是非、いろいろとお忙しいと思いますが、何かござい ましたらご意見を寄せていただくなりご相談に乗っていただければと思っています。よ ろしくお願いいたします。ほかに特にご意見あるいは連絡事項等ございませんか。あり ませんようでしたら定刻が近づきましたので、以上をもちまして第3回の研究会を終了 させていただきます。ありがとうございました。 照会先 厚生労働省職業安定局雇用開発課雇用管理係   TEL03(5253)1111(内線5805)