08/05/12 看護基礎教育のあり方に関する懇談会 第5回看護基礎教育のあり方に関する懇談会 日時 平成20年5月12日(月)13:30〜 場所 厚生労働省共用第7会議室(5階) 委員 井部俊子、尾形裕也、梶本章、田中滋、寺田盛紀、矢崎義雄(敬称略 五十音順) ○島田課長補佐 ただいまより第5回「看護基礎教育のあり方に関する懇談会」を開催い たします。委員の先生方、そして本日お話いただきます先生方におかれましては、ご多忙 中にもかかわらず、当懇談会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。では、 田中座長、よろしくお願いいたします。 ○田中座長 皆さんこんにちは。前回は学界代表をお招きし、シンポジウムのような雰囲 気で面白かったと感じました。本日は医師団体、病院団体からお二人にお越しいただきま した。それぞれご専門の観点から、将来求められる看護師像、看護師に求められる資質、 さらにそのための教育に関してのご提言を伺いたいと存じます。ではお二人の有識者の 方々について、事務局から紹介をお願いします。 ○小野対策官 それではご紹介させていただきます。初めに、私どもの不手際で、本日の 議事次第のほうで先生方の敬称が抜けてしまっております。お詫び申し上げます。  まず、お一人目は西澤寛俊先生でいらっしゃいます。西澤寛俊先生は全日本病院協会会 長でいらっしゃいます。社団法人全日本病院協会におかれましては、民間病院を主体とし た全国組織で、現在2,250の病院が加入しており、「国民に安心できる医療を医療人が誇り と達成感をもって提供できるような環境整備を行う」という基本的考えの実現に向けて活 動されておられます。西澤先生におかれましては、厚生労働省の「医業経営の非営利性等 に関する検討会」や「医道審議会医師分科会医師臨床研修部会」の委員を歴任され、現在、 「中央社会保険医療協議会」の委員をされておられます。  お二人目は羽生田俊日本医師会常任理事でいらっしゃいます。社団法人日本医師会は、 現在、約16万5,000人の医師会員を有する民間の学術専門団体であり、医療政策会議等の 各種会内委員会を設置し、基本的・総合的な施策の設定、長期的・基本的な研究目標の設 定について検討されておられます。羽生田先生におかれましては、厚生労働省の「医道審 議会保健師助産師看護師分科会」、「看護基礎教育の充実に関する検討会」などの委員を歴 任されておられます。 ○田中座長 それでは西澤先生から、大体20分を目処にお願いいたします。 ○西澤寛俊先生 ただいま紹介いただきました西澤でございます。本日はこのような場に 出席させていただきましたことを、まず御礼申し上げます。  いま紹介にありましたが、私たち全日本病院協会というのは、いま日本で病院が約9,000 弱だと思いますが、そのうちの2,250、すなわち25%ぐらいの病院が加入しております。 会員のほとんどが民間病院という特徴ある会で、民間病院であるから、日本のどちらかと いうと中小病院が多い団体だと思っていただければと思っています。  ここにありますとおり、国民のためになる医療提供体制のあり方の検討・提言、及び会 員病院の医療の質の向上、それから当然のことながら健全経営を図ることを主たる目的と しているということです。  本日の演題といいましょうか、今日の私に与えられた題は、「中長期的未来において期待 される看護の機能・役割。看護職員に求められる資質・能力について」。さらにはこのよう になるための教育システムの話だと思いますが、なかなか私自身が看護教育の現場にそう 詳しくないということ。それと民間病院がほとんどの会ですので、民間病院の経営者、あ るいは管理者がどのような看護あるいは看護師を現場として望んでいるか。そういうこと を中心に話をできればいいかと思っております。  ここに書いてありますとおり、中長期的未来ということは、大体10年、あるいは20年 先ということですが、20年先どうなるかというのは、なかなか予想がつかない。いまから 20年前に現在のことをどの程度予測できていたかというと、私などはほとんどできていな かったなと思います。もちろん予測できていれば、いまのような医師不足や看護師不足は あり得なかったのではないか。そういうことでは、おそらく国全体も予測できていなかっ たのではないかと思います。  逆に言うと、今後の20年先ということは、なかなかいまから予測するのは難しい。とす ると、どういうことで見ていけばいいかというと、やはり現在何が問題かということをき ちんと把握して、どう変わっていこうとステップ・バイ・ステップできちんとやっていく ことが大事ではないかと思っています。そういうことで、今回アンケートを取り、会員の 意見を中心にまとめてみました。いろいろな意見があり、なかなかまとまらないのですが、 そういうことを基にして話していきたいと思っています。  看護業務です。今後おそらく看護業務というのは、もっともっと拡大していくのではな いかというのが大方の意見です。私は逆に、拡大はしていくけれども、いま看護師の業務 であっても、将来はほかの職種がやってもいいということも起きるのではないか。看護師 でなくてはできない業務というように、限定していくという方向もあるのではないかと思 っています。そういうことでは一方的に拡大、拡大と思う必要もないのかもしれないと思 っています。  今日の話の順序で、いま全日本病院協会の紹介をしましたが、もう少し紹介をさせてい ただいて、それからアンケートの概要と提言まではいかないのですが、現時点の意見を述 べたいと思っています。全日本病院協会の宣伝です。私たちの協会で2年に1回『病院の あり方に関する報告書』を発表しておりまして、その中に私たちの考え方を述べておりま すが、全日本病院協会の医療提供の理念はこのように考えております。  医療というのは狭く言えば診療のことだが、広く言うと健康に関するお世話全体のこと だと、私たちは医療をこのように考えています。病院というのは、病気を患う人が入院す る施設ということは当たり前なのですが、科学的で適正な診療を受けることができる便宜 を与えることを主たる目的として、組織、運営されるものでなければならない。ここに組 織という言葉が書いてあります。何回も繰り返しになりますが、看護ということを考えた ときに、組織の中で行うことだということは、是非きちんと理解していただければと思っ ております。  いちばん下に書いてある「医療提供の理念」としては、医療の目的は心身の健康に関す る悩みや問題を軽減し、あるいは解消すること、さらに健康を維持しようとすることだ、 という理念の下で医療を提供していると思っています。  上に「患者の権利の尊重」と書いてあり、これは当たり前のことです。「最善の医療」と 書いてあり、患者の心身の苦痛を軽減・除去し、健康や機能を維持・回復・増進するため に、その時点で最も有効と思われる医療を可能な限り提供することと思っています。これ に向かって、これは医師だけではなく、看護師を含めてすべての病院の職種がここに向か っていくのだということです。  (2)に医療連携と書いてあります。そして、地域における医療提供の継続性ということが 書いてあります。もう1つ大事なのは「患者も医療従事者も安心でき、医療従事者が誇り をもって行う医療であること」と書いてあります。いま、医療崩壊ということで、この辺 りのことが十分にされていないのではないかと思います。このようなことを述べるのも、 常に職員にはこういう話をしております。看護師にも当然一緒にこういう理念の下でやっ ていただきたいということで、紹介させていただいています。  アンケートを行いましたが、いま今回の内容に関係する委員会がいくつかあるのですが、 医療従事者、制度の委員会等々の25人の委員に質問をぶつけました。それでここに書いて ある現在の看護教育の講義内容、臨床実習、教育全体についての意見を伺いました。大き く分けると、現在の看護教育について、今後どうあるべきかということを調べてみました。  現在の看護教育、講義内容についてです。相反する意見も交ざっています。いろいろな 方から出された、主な意見を書いています。「基礎教育が不十分である」という意見が多く ありました。そして「基礎教育を充実させ、医学教育との共通了解や整合性をもたせる」 という意見もかなり多くありました。  これに続いて「知識の習得と技術の提供が分断されているのではないか」ということで す。これに対しては前回もたしか看護基礎教育の充実に関する検討会でも出た話だと思い ますが、最初に知識ばかり教え込んでいっても、なかなか身に付かないということで、最 初に少し現場見学、あるいは臨床実習等を最初に少し入れることで変わるのではないかと ありましたが、私たちの会員からもそういう意見が出ておりました。  基礎教育不十分だという中では、医学的な基礎教育、例えば解剖、生理学などの知識に ついてもっとしていただきたいということ。医学、あるいは看護教育以外の基礎であるコ ミュニケーション等のことをもっとしていただきたい。基礎学力として数学、化学、統計 学等の知識ももっと持っていただきたいという意見がありました。  ここには書いていませんが、1つの意見として、看護師の基礎、臨床教育を医師が担当し ていると思います。養成校の教員ではないのですが、外部から来た医師が教えていると思 うのですが、その医師の教え方にも問題があるという意見も内部から出ていました。更に、、 看護学のことをよく医師が知らないので、知らないままに講師としてやっていることも問 題なので、医師が講師として行く場合には、きちんと考えて、あるいは事前に基礎知識を 持って行くべきだという意見も出たことを紹介しておきます。  「チーム医療を実践するための知識やノウハウが不足している」という意見がかなり多 くありました。これは私の病院でもそうですが、新卒の方が来ると、すぐに現場では使え ないというか、仕事をしてもらえない。オリエンテーションで1週間ぐらいかけて、いろ いろなことを教育しなければならない。そのときに教育しづらいというのは、組織論と言 いましょうか、そういうことは全く学んでいないのではないかと思うことがあります。  これは看護師だけではないのですが、共通の教育がなされていないがために、全くそれ ぞれが違う教育を受けてきた専門職が集まっているので、そこに先ほど言いました、組織 の理念やチーム医療が何かということを、いろいろな職種の方を集めてその病院で教育し ていると思うのです。そのことはもう少し基礎教育の中でもあっていいのではないかとい う意見がありました。組織論のほかにチーム医療を実践するために、いろいろな教育、例 えばコミュニケーションあるいはリーダーシップ論、あるいは能力と言いましょうか、そ ういうこともきちんと身に付けていただきたいということです。  ここでは病院のあり方の報告書参照ということで、宣伝です。私たちは組織を「同じ目 的(理念)を達成するために、複数の人々が協働する場」だと考えています。組織の責任 者は理念を制定して、地域、患者、職員にそれを明示して、理念に基づいて基本方針を打 ち出す義務があります。職員は組織の理念や基本方針を理解し、それを達成するよう努め、 行動する義務がある。すなわち、この職員の中には医師、看護師、あるいはOT、PT、ほ かの職種、事務職全部が入るのですが、病院の中で一本化でまとまるまでは時間がかかり ますし、うまくいかない。  10年以上前にオーストラリア視察に行ったときに、向こうの方に、向こうでも同じで、 医師と看護師と事務職員は会議をやってもなかなか合わない。それぞれ3つの違う人種が 集まっているみたいだと言われましたが、日本においても同じようなことはあるのではな いか。それでいながらチーム医療だ、チーム医療だと言っている。その辺りをもう少し真 剣に考えていくべきではないかと思っています。  ですから、看護職の方も看護部としての主張はあるのでしょうけれども、やはり組織全 体との理念、ほかの職種とのチームワークをきちんと考えて、ともに行動していただきた い。そうしなければ国民に対して良質な医療は絶対提供できないのではないかということ です。そのためには、行動基準があって、こういうものがしっかりと明文化されていく必 要があると思っています。また、組織である以上、組織管理が必要だということを、職員 一人ひとりが十分理解していく必要があるということで書いておきました。  続きまして看護教育についての臨床実習です。これについてはいろいろな問題点が指摘 されています。1つは教員に対しての問題点で、座学を担当する教員と実習を担当する教員 が異なる場合が多いということで、そのためには学校側と臨床現場側の双方が、準備と綿 密な連携を行う必要があるのではないかということ。実習前のシュミレーションと臨床実 習が十分に系統立てられていないなど、そのような意見がかなり出されていました。  それ以外に、書いていませんが、看護教員になるためにはある程度の臨床経験がたしか 義務付けられているはずですが、しかしながら、どうも現場からの意見では、看護教員の 臨床経験に対して、もう少し何とかしていただきたいという声がかなりありました。同様 に、臨床経験の少ない看護教員には本当の看護教育は無理だというような強い意見もあり ました。  臨床の実技・実習という時間が少なすぎる。もっと増やすことが必要ではないかという ことです。医療現場からは即戦力となるような看護師が求められているのだという声があ りました。これは前回の看護基礎教育の充実に関する検討会の資料ですが、ご覧のように 昭和24年は抜きにしても、かなり教育時間が減っていて、どこが減っているのかと見ます と、この色のところがどんどん減ってきているのではないか。これは臨地実習で、教育時 間が減っている中で、特に減っているのが実習だということで、やはり実習時間は足りな いのではないかということです。  今回、少し増やしましたが、増やしたと言ってもたかだか百何十時間でしょうか。この 辺はどう言っていいのか、3年課程においても、もっと増やせるのではないか。ここまでは 無理にしても、この辺りまでは増やせるのではないかという意見がありました。ゆとり教 育等々でどうも時間が短くなりすぎているのではないか。  例えば昭和40年ごろといまとで時代も違うとは思いますが、医学教育でどうかというこ とで調べたのですが、なかなか医学教育というのは単位で時間ではないので、バラバラで 分からないのですが、いろいろ最近の学生や教員の方に聞いてみました。医学教育は昭和 42年ごろといまとではそんなに時間は変わっていないはずだと、なんで看護のほうはこん なに減っているのだという感じがありましたので、もっと3年間で時間を増やせるのでは ないかという意見が多く出ておりました。  これは先ほども言いましたが、教員の臨床経験が不足していて、教員が臨床経験を積む ような制度、教員になるまでは臨床経験はあるのかもしれませんが、なってからももっと 経験を積むような制度が必要ではないかということです。医師の場合は座学担当教員と臨 床担当教員というのは一緒なのです。それでかなり座学と臨床実習とが整合性をもって関 係づけてできるのですが、看護教育の場合は違うということで、医学教育のようにできな いのかという意見がありました。もちろんこれはいろいろな制度の問題はありますが、あ まり看護教育を知らない現場の管理者の意見だと思って下さい。  これからはかなり基本的なところですが、看護あるいは看護師とはどうあるべきか、世 の中から何を望まれているのかを考えるべきである。裏を返せば最近の看護師はこういう ことを考えているのかどうか疑問だという声です。社会のニーズを把握し、それらに対応 できるような教育が必要だ。生命の尊さを学ぶ機会が必要であると出ておりました。これ は本当は看護教育ではなくて、もっとそれ以前の教育だと思います。これは医師の教育も 全く同じだと思っています。これは医療従事者すべてに言えることだと思っています。  「なぜ」という疑問を持たないまま教育を受けているのではないか。座学による看護知 識の習得や現場での実習以外に、一般教養や対人関係に関する科目、論理的な思考の充実 が求められている、という意見もありました。これも決して看護基礎教育だけではなくて、 もっとそれ以前の基礎教育を含めて考える必要があるのではないかと思っています。  いままでは現在の教育に対してのアンケート結果ですが、続いて今後の看護教育につい ての意見です。細かく各論でこうするという意見は難しいので、大きく臨床研修と期間の 延長ということで聞いてみました。  卒後臨床研修は必要だろうという意見が、どちらかというと多く出ていました。キャリ アを描くことの重要性。それぞれの段階における教育の位置づけの明確化が必要。学生で は実習内容などに限界。これはどういうことかというと、免許を有しない段階で教育でき る範囲というのは非常に限定されているのではないかということです。そうだとすれば、 免許取得後の制度の整備の議論は必要ではないか。そのほうが看護実践能力の向上のため には効果的ではないかという意見です。もちろんこの辺になりますと、保助看法の改正等々 にも絡むのではないかと思うのですが、当然今後の看護教育には視野に入れておくべきだ と思います。  年数ですが、4年課程に移行をする、しないという議論の前に、いろいろ考えることがあ るのではないかということです。現在の教育での問題点を追究して、改善点をまず検討す ることが必要ではないかということです。現在の看護師養成は高等学校、専門学校、大学 というのがありますが、それぞれの問題点を洗い出して、そのどこを改善すればよいか。 その検討をまず先にやるべきではないかと思っています。最初から4年制ありきみたいな 議論は、議論としては逆ではないかという意見が出ていました。「誰が何を教えるか」が重 要だという意見もありました。それから4年制への早急な移行ということは、看護師不足 などの社会的な混乱も起きるとの指摘がありました。  4年制になる前に、3年課程の教育期間においてももっと教育時間を増やして、教育内容 を充実させることの検討、それによって結果どうなったかということを分析して、それか ら4年制の議論があっていいのではないか。まだこのような議論をするのは時期尚早とい う意見が、現場からは強く出ておりました。  教育のあり方です。チーム医療の重要性ということで、医学教育と乖離した看護教育は あり得ないということです。片方では看護学科と医学科ということですが、やはり両方が きちんと整合性を持つべきではないか。場合によっては重要領域については医療職種合同 の教育コースというものがあってもいいのではないか。いまは縦割で医師の教育と看護師 の教育は全く違う。もっと言えばOT、PTも違う。介護福祉士も全然違うところでやって いる。全然違うシステムの中で教育を受けた人たちが集まって、さあ、チーム医療をしま しょうと言っても、そんなのは無理に決まっているという意見が、かなり多くありました。 すべての医療従事者の教育を、全体の整合性をもって行っていくことが大事ではないか。 こうなると、これは厚生労働省だけではなく文部科学省も絡んでの話ですし、厚生労働省 の中でも、それぞれの局でしっかりと検討していただくことが必要だと思っています。  医療の高度化は急速な進歩で、これからも増々速くなっていくことは間違いない。それ に対応する基礎学力として、数学、化学、統計学、あるいは英語力など語学の基礎学力が、 どうも最近落ちているのではないかという意見が現場からありました。高校までの教育の 中で数学などの教育は変わっているので、医学生でも最近問題になっているということも 聞いています。この辺りは国全体の教育のあり方も考える必要があるということです。臨 床現場での連携の重要性はしっかりと教育していただきたい。時代のニーズに合った、応 じた柔軟な教育内容が必要だということです。「看護とはなにか」について、もっと根本的 に考えることが必要ではないかという意見がありました。  これは少し余計なことですが、教育体制を考えるときに、こういうことが必要ではない かということで、現在の現状を見た場合、4年制の大学の多くは医学部を併設している。看 護を専門とする修士・博士号取得者が不足している。看護系学部の一般教養科目の教育が 不十分ではないか。これらが現状の問題点としてあるのではないかということです。教育 課程を考えるときには、質の保証ということをきちんと考えるべきだし、看護職員の質の 保証ということも考える。  高等教育は何を目指してするのか。期間を長くすることが目的ではないだろう。目指す ものがあるからこそ、長い期間が必要だと。では、その目指すものは何かということをし っかり議論するべきだ。そのような高等教育を受けた場合には、認定看護師とか専門看護 師、すなわち技量に優れた看護師が必要なのか。医療管理に優れた看護師、すなわち病院 などの管理職等々を目指すような看護師が必要なのか。あるいは研究者として教育を受け る必要があるのか。その辺りの目的を明確にして議論をすべきではないかと思います。言 い方を変えると、すべての看護教育を4年制一本化という乱暴な議論はすべきではないの ではないかと思っています。  最後に看護師に求められることということで、いままでの繰り返しになりますが、コミ ュニケーション能力が大事だ。チーム医療をするためにはチームの一員としての役割分担 もきちんとしていただきたい。基礎学力。患者にいままでは画一的ないろいろなサービス 提供をしてきたけれども、これからは個別サービスになると思いますが、そういう個別の 要求に対応できることがとても大事ではないか。こういう能力がいまは欠けているのでは ないか、今後期待されるのではないかということです。非常に雑駁な話でございましたが、 以上が私の意見でございます。ありがとうございました。 ○田中座長 ありがとうございました。風邪をお引きの中で恐れ入ります。では、引き続 きまして羽生田先生、よろしくお願いいたします。 ○羽生田俊先生 日本医師会の羽生田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたし ます。日本医師会では、医療関係職種対策委員会という会内の委員会がございまして、こ れは20年以上前から2年ごとに会長からの諮問事項について検討する委員会です。昨年度、 今年の3月、今回は「看護職員の不足・偏在とその対策について」という会長からの諮問 について、2年間の検討を行ったわけです。教育についてはカリキュラム等の改正があると きには、教育についての議論が行われますが、看護教育自体はどうあるべきかというコア の部分の議論は今後の検討課題です。  いま現在、地域の医師会には准看護師学校、進学コースの2年課程の看護師養成所、3年 課程の看護師養成所を、実際に経営しているところがあります。看護職員の需給に向けた 検討、あるいは養成についての検討ということで、現在の看護師不足にどう対応するか。 あるいは看護師偏在にどう対応するかということをメインに検討してきたところです。  看護職員養成の現状としては、看護師の養成所がスライドのグラフですが、平成19年に は全国で707校ということで、大学、短大、養成所、医師会立等があり、これは平成13年 に比べますと、約44校増えています。この中で特に目に止まりますのは、下から3つ目の 赤い線です。大学が平成13年に91校だったものが、平成19年には158校ということで、 60校以上の増加で、非常に目につくということです。その代わりに養成所、短大、特に短 大がかなり数を減らしてきているということと、医師会立は当然同じように数を減らして きているのが現状です。  その中で入学者の数の推移を見たときに、平成13年は約3万4,000人でしたが、平成19 年には3万8,000人ということで、約4,000人以上増えてきているということで、数につ いては徐々に増えているというのが現状です。この中でも同じように赤い線の大学の入学 者は、平成13年は約6,900人ということでしたが、平成19年には約1万3,300人という ことで、こちらもかなりの数を増やしてきているのが現状です。  そして、2年課程いわゆる進学コースですが、これは全国で平成13年には401校であっ たものが、平成19年には259校ということで、こちらも減ってきている。医師会立が大き く減少してきているわけですが、これは後で出てきますが、准看護師の養成所がレギュラ ーの看護師養成所に変わるということで、必然的に進学コースの必要性がなくなってくる ということで、准看護師の養成所を閉じて、数年後には進学コースも閉鎖するという現象 が起きているということです。  2年課程においても数が減ってきたとはいえ、19年にもまだ約1万3,000人の数の学生 がいたということで、こちらも13年に比べれば約4千人減ってきているわけですが、まだ まだ大きな数を残しています。  医師会立でも特に准看護師養成所が多く存在するわけですが、こちらも上の青い線が医 師会立ですが、平成13年には270校ありましたものが平成19年には218校まで減ってき ているというものです。  また、学校・養成所等、専門学校等ですが、こちらも准看護師の養成はかなりの数を減 じてきているのが現状で、このスライドにもございますように、19年には約1万2,400人 にまで減少してきたということで、平成13年に比べると、半分に近い数になっているのが 現状です。  特に医師会立は准看護師養成所が多いわけでして、その中で現在どのような入学者が准 看護師の養成所に入ってきているかという表です。これは全体で見た数で、特にいちばん 左の大学卒、2番目のエンジ色の部分が短大卒で、こちらの2つを合わせますと、平成9 年には6.7%であったものが、平成19年には14.4%で、高度な教育を受けた方々が、この 准看護師の養成所に入ってきているということを表しています。これは医師会だけを取り 出した場合ですが、全体の中で医師会立の数が多いということで、傾向的には全く同じで す。  その代わり、真ん中の黄色のいちばん広い部分ですが、高等学校新卒者が減ってきてい るというのが現状です。また、いちばん右側は中卒者ですが、中学を卒業してすぐに入学 するということではなくて、高校中退の場合の最終学歴は中卒になりますが、こちらも増 えてきています。これは文科省の問題になるかもしれませんが、こういったことが現状で す。  医師会では看護師養成所を古くから運営してきて、かなりの数を占めていたわけですが、 看護師養成進学コースの2年課程と3年課程の看護師を足して、平成13年は約2万1,300 人であったものが、平成19年には約1万7,500人ということで、その数を減じてきている ということです。  学校を運営するということと教育を論じる場合には、どちらも大変重要なことなのです が、1つだけ違うのは、学校を運営するという場合にはいわゆる経営ということが絡むとい うことで、かなりの補助金の削減があったために、学校の運営も非常に厳しくなってきて います。例えば通常の3年課程のレギュラーコースには養成所、県立、私立等々あります が、いわゆる公立の学校が入学金ゼロ、授業料ゼロというような形で看護師養成を行って いるケースがありますが、医師会立となりますと、そういったことは当然無理ですし、国、 あるいは県からの補助金プラス授業料プラス医師会本体からの会計を注ぎ込んでの運営と いうことが現状です。  来年、再来年からカリキュラム増ということになりますが、カリキュラムを少し増やす、 あるいは専任を1人増やすというだけでも、経営という面から見ますと、非常に厳しいの が現状ですので、カリキュラムの増に直接反対するわけではないですが、経営上非常に厳 しいのだということはご理解いただきたいということです。  そして、少子・高齢化社会という中での看護職員像ということですが、その前提として 一昨年の7対1という看護基準ができたがために、いままでの求人の動きがかなり変わっ たということがあります。一流の大学病院が全国の養成所に求人を出したということで、 かなり東京から離れた地域の医師会立看護師養成所まで、何々大学というところから求人 票が送られてきて、代表者の誰かが来て、是非紹介してくださいということまで行われた ことで、いままでとかなり違った形で求人が行われたということです。  これはすべてがそれに伴って移動が起きたわけではありませんが、かなり7対1看護の 部分に優遇というものもあった関係で、移動し、病院における看護職員の偏在を招いたこ とは事実です。それに対応すべくどうしたらよいかということをいろいろ考えたわけです。 やはり医学部の医師不足等と同様に、地元にいかに残っていただくかが非常に重要な課題 ですので、地元の方は優先して入れる、あるいは授業料を安くするとか、そういった手立 てをしている所もありますし、准看護師から継続的に看護師養成に力を注いでいるという 地域もあります。  そういった中で不足・偏在の解消をしていきたいということですが、当然これには教育 も絡む話で、看護職員の安定的養成と供給という中で、18年度、19年度に看護基礎教育の あり方検討会が行われているわけです。その中でも、いわゆる卒業したけれども、現場で ついていけないということで辞めてしまうのではないかというご意見がかなりありました。  西澤先生のお話にもありましたが、学生の実習というのは医療職すべて、医学部も含め て、医師の医学生も含めて、免許がない者への実習ができる範囲が非常に限られている中 で、半分冗談としてお聞きいただきたいのですが、みんな2年コースにすれば准看の資格 を持って実習に臨めるということもありうるということまでも考えなければ、実習がなか なかできないのではないかということもあると思います。  また、その検討会でも申し上げましたが、医療職種の実習が法的に保護され、もっと本 当の意味での医療・看護についての実習ができるようにしなければ、卒業したと同時に実 際に現場で働ける医師も看護師も出てこないということは言えるだろうと思います。また、 国民の方々に、将来医療に従事する実習生たちを育てるのだ、という意識を持っていただ く、その広報すら全然していないのが現状なので、そういったことも必要ではないかと申 し上げてまいりました。  西澤先生のお話にもありましたが、私も現場で看護師、あるいは准看護師の養成所を担 当していたときに、入ってくる学生たちの特に成績半分以下の生徒と話をしたときに、何 をいちばん感じるかというと、高校時代に先生にかわいがられていないということを非常 に感じます。やはり、かわいがられて教育を受けた生徒が社会に出てからの患者と接する 中で、いわゆる社会的な、患者への要望にも応えられる人格形成ができてくるのではない かということで、医学部あるいは看護学校に、あるいは看護大学に入ってからその辺を教 育したのでは、もう遅いと私はずっと見てきました。  養成力の強化ということで、現場の教えておられる専任教員等々の資質の問題もあり、 西澤先生もその点をご指摘されていましたが、看護のあり方の検討会で私が申し上げたの は、学生の実習あるいはカリキュラム等を云々する前に専任教員の資質をアップすべきで あるということを、何度も申し上げてまいりました。というのは、大学ではだいぶ違うの でしょうけれども、いわゆる生徒をどのように教育していいかという教育論が全く入って いないのです。教育論が全く入っていない中での専任教員です。生徒の指導という点から も非常にこの点が欠けている中での教育が行われているので、その点も看護教育の中で大 きな部分を占めているだろうということです。  これも西澤先生がおっしゃっていましたが、臨床現場と座学との乖離という点です。こ れも検討会の中で申し上げてきましたが、医師の場合には医学部の教授、助教授、講師、 すべて患者を診ながら生徒の教育にも当たっている。ところが、看護の場合に患者を看な がら教育に当たっている、もちろん婦長等が授業に出てくることはありますが、実際に教 育学部の教授、助教授、講師、養成所についても専任教員というものが、実際に患者に対 しての看護という場面が全くない。  ですから、この辺はシステム上、どうにかそういう形ができるようなシステムを作って、 実際に教育している者が患者を、実習で行ってみるのと、自分が担当して看護するのとで はやはり違うのです。ですから、いまの医学部と同じように、看護大学あるいは養成所に おいても、患者に接して患者を担当して看護を行う時間を、何とか専任教員あるいはスタ ッフに時間を取っていただくようなシステムを、是非検討していただきたいと思っており ます。  また、もう1つ、いちばん下にありますように「看護職希望者への門戸拡大」というこ とで、これは先ほど申し上げました准看護師の場合に多いわけですが、社会人入学という ものです。こちらはいま申し上げましたように、大学、短大出の方々が非常に増えてきて いること。社会に出ていろいろなことを経験してきた、その上で看護というものに興味を 持ち、私も病める人の看護をしたい。あるいは身近なところ、ご家庭におじいちゃん、お ばあちゃんがいるなどということで、こういったことを学びたいという意欲のある方が入 ってきて、学校の中でも成績も優秀です。そして若い子を引っ張っていってくれるという ことで、社会人の入学の方々が増えてくることは、学校としても非常に良いことと思って います。  また看護教育の中で准看の話をすると申し訳ないのですが、いまのカリキュラム上、非 常に社会人が入学して学びやすいようにカリキュラムができているという点で、いま准看 護師学校ではこの社会人入学に力を入れています。新卒者がどんどん減っている中なので、 余計にそういうことに努力をしているということです。  また、准看護師が卒業した後には、看護師の2年コースという、いわゆる進学コースと いうものがあり、看護師の免許を取り、看護師への道が開けているわけです。私が准看護 師学校を担当しているときにも、進学コースまで出て、きちんと看護師になりたいという 意欲のある人を入学させたいということで、高等学校にもお願いし、入学の中の面接でも そういった意欲があるかどうかを中心に面接した記憶があります。そういったステップア ップする道は、これは准看護師から看護師への道ですが、看護師の中でもあってもよいの かなと考えています。現状では医師会がずっと唱えていますのは、看護師・准看護師・看 護補助者という三層構造で、それぞれの分担によってチーム医療を作っていくということ を唱えています。  最後ですが、いわゆる全人的な資質ということで、先ほど申し上げましたように、これ は医学部に入ってから、あるいは看護大学に入ってからこういった基礎的な教育を行って も、もう遅いといえます。これは今日三浦先生がいらっしゃいますが、いわゆる文科省と して学校教育を考えていただかないと。医療職種だけではなくて、人に接する場合にどう いうように相手のことを考えていくかという、特に医療職の場合には全く人が相手の職業 ですので、そういったことでのきちんとしたコミュニケーションがとれないことは、致命 的なわけです。これはそういった専門の学部に入ってから教えたのでは遅いということで す。ということはその前から必ずやそういったものをやっていただきたいということです。 中には医学部の附属高等学校を作っていくというような、すでにそういった動きもあるよ うですので、若いときからコミュニケーション能力や人としての教育をしていくべきであ ろうということです。  看護職員としての知識、スキルは西澤先生もおっしゃっていたように、4年制ありきで検 討することではなくて、この間の検討会でも期間を延長することでなく、現在の中でどの ようなことができるかということを議論してきたわけです。いまの3年課程の中でも非常 に優秀な看護師はいっぱいいます。ということは3年が短いとは言い切れないわけですの で、いかにそれだけ優秀な方々が生まれてきているか、そういった者にほかの生徒たちも どうやったらそうなるのかというところをもう少し考え、活かしていかなければいけない。  今回の改正の中で私は非常にいいなと思っているのは統合評価です。これは全人的に患 者を診るという上で、整形外科の病棟にあっても高血圧の患者は多くいるわけですから、 そういったところを全人的に、この人は整形外科から骨折で入っただけではないのだとい うところまで診られる看護師を養成するという意味では、統合カリキュラムの意義は非常 に大きいと。ただ、誰が教えるのかという疑問を持っていますが、そのように評価してい ます。  また、到達目標等、いま、きちんとしたものがあって、今度また新しく到達目標ができ ましたが、本当に到達目標までどの程度いっているかという評価をしたことがない。です から、これをきちんと評価したときには、いまよりもずっとスキルアップした看護師が誕 生してくるだろうということです。  ただ、実習と乖離していることは、実習でできる範囲のものも限られているということ です。医師だってあれだけ実習時間があっても、卒業して使いものにすぐにはならない。 実際に看護師あるいは医師という資格を取った上で、患者と直接接していろいろなことを 学んでいくことがあるわけで、その上で自分自身の考え方や努力によってスキルアップし ていくわけですから、臨床実習、卒後臨床研修はやっていくべきであろうと考えています が、医師の卒業臨床研修のような悪い面が絶対に出ないような形での検討が必要であろう と思っています。  また、卒業後の研修、いま医師の場合には卒後研修を大学でもやっていますし、各医会、 学会でもやっていますが、医師会での研修も非常に多い。全部出ると月に100回ぐらい各 医師会に研修会が重なっています。100回はオーバーにしても、1日1回以上の研修が行わ れているわけですが、看護師の場合にはまだ少ない。また、看護師個々にそういった実習 があるという広報が全くできていないということで、卒後のスキルアップのための研修 等々も、きちんとした制度まで作らなくてもいいですが、時間をきちんと作り、すべての 看護師にそういった研修会がありますよという通知が届くという体制を、是非検討してい ただければと思います。  また、そういった講習に関しても、医師会としても十分バックアップをしていきたいと 考えております。以上、まとまりませんが、終わらせていただきます。ありがとうござい ました。 ○田中座長 ありがとうございました。では委員の方々から、お二人の発表に対してご意 見、ご質問を伺うことにいたします。どなたからでも結構です。 ○井部委員 西澤先生、羽生田先生、医師の立場から看護に関する大変見識のあるご発言 をいただきまして、ありがとうございました。お二人に共通している点ですが、まず臨床 実習の充実について非常に重要だということ。もう1つは西澤先生の資料にある一般教養 や対人関係に関する科目、論理的な思考の充実が求められるということになります。こう なりますと、現在でも過密なカリキュラムが組まれているわけですが、より一層過密にな るという感じがいたします。基本的に3年という教育期間を延ばしたほうが、もっと本来 的な意味での充実ができるのではないかと考えますが、その点については、再度繰り返し になるかもしれませんが、技術的な側面と知識的な側面の充実ということについて、どの ようにこのカリキュラム上に収めていったらよいのか、少しご意見をいただきたいと思い ます。 ○西澤寛俊先生 私はまだ3年間の中でもっと時間をかけられるのではないかと思ってい ます。いまはまだゆとりがあり過ぎるのではないかと思っています。もう1つは先ほど言 った教員の問題だとか、実習をするときには、場合によっては実習先に丸投げしたりして、 非常に効率・効果が悪い。そこをもう少しいまの時間内で、もっと中身を濃くできると思 います。そういう面では現場からもその辺の不満が出ていますので、その辺りをすること がまず第一だと思います。それで、3年間でどこまでできるか、本当にマキシムどこまでで きるかということは、やはりもう1回検討する必要があるのではないか。  もちろんその先に延長という議論は必ずくると思うのですが、いまのままですと、例え ば前回もたかだか百何十時間、「もう少し時間を延ばそう」という案だったと思うのですが、 現場の学校側からそんなに延ばしたら無理だという意見が逆にありました。3年間の中で時 間を延長するだけでも、現場では教員が足りないという問題が起きている。そこに期間延 長という話は、とてもではないけれども現在の現場では受け入れられないのではないかと いう気もしています。 ○羽生田俊先生 いまのカリキュラムの中でもそういった教科を入れるというのは、かな り厳しいだろうと私も思います。ですけれども、先ほど申し上げましたように、学校に入 ってからでは遅いです。すでにもう入学の時点で身についていなければいけないことが、 かなり身についていないと評価しておりますので、そういった点は大学で教えることでは ないはずだと考えています。ですから、高等学校までのときに、もう少しきちんとしたカ リキュラム、そういった物の教え方、あるいはそういったものを教える必要があることを 考えています。  もう1つは実習のときも含めて、専任教員あるいは講師、助教授、大学でしたら教授の 方々まで、大学の場合にはそういった面が少ないのでしょうけれども、養成所の場合には 実習の中での生徒とのお付き合いの中で、いま言った人とのコミュニケーション、いわゆ る患者の看護だけでなく、コミュニケーションという面も非常に含まれているはずなので すが、専任教員がそこのレベルになっていないということもかなり多いだろうということ で、全体的にアップしていかなければいけないのかなと思っています。 ○田中座長 委員は意見を言うことも自由です。質問だけでなく、ご自分の意見を言って いただいても結構です。 ○井部委員 羽生田先生もおっしゃっているかどうかわかりませんが、医療においては医 師と看護師は車の両輪であるということを、よく例えに出されるのですけれども、この2 つの輪が両輪であるためには、どちらかの車の輪がいびつであってはならないと思います。 両輪であることを保つためには、少なくとも医師と看護師の教育背景は同じでなければな らないと思います。今の看護教育はさまざまな教育のルートがあり、看護師と医師が、本 当の意味で実力を伴った両輪となっていないのではないかと考えているところです。  その点から言うと、医師の教育が大学の医学部6年プラス臨床研修2年ということで、 基本的に8年の教育を受けて世に出るわけですが、看護師の教育は、ご指摘のとおりさま ざまなであります。こちら側の車輪が本当の意味で両輪になるためには、この検討会は20 年後を見据えてということになっていますから、20年後に本当の意味での両輪になるには、 どのような教育制度を作ったらいいのかについて、その展望を少しお聞かせ願えればと思 います。 ○羽生田俊先生 車は四輪ですから、前の車の右と左というか後ろと前の車というか、車 だったら前輪駆動車もあれば後輪駆動車もあるわけですから、どっちが主というのは難し いですけれども、私はそういった看護師がいてもいいと思いますが、すべてがそうなる必 要があるかということはずっと考えています。というのは我々の現場、特に多くある診療 所で大学を出たその様なバリバリの看護師がいても、持てる技術や知識を使う場面がほと んどないかと思われます。ですから、そういった現場に対応できるレベルの知識や技術と いうものは当然必要です。ただ、全体としたときに、最低限どこまで必要かというのが基 礎教育のあり方であって、基礎という面からすれば高度な医療技術をするのは基礎教育で はない。基礎教育はどこまでかということで、その上にどういった技術を習得していくか、 教育をするか。  私自身反対しているのは、大学に統合カリキュラムで助産師と保健師を入れたことです。 あれによって助産師のレベルが下がっているし、助産師として勤務する人も少ない。従来 は看護師を取った後に、大学院であったり、あるいは進学コース的なものであったりしま したけれども、看護師を取った上に助産師になりたいという人が助産師の学校に行ったわ けですから、助産師のレベルも非常に高かった。いまはそういった統合カリキュラムで4 年で足りないというのだったら、まずはそこを出してみればどうですか。そこからやるべ きです。私はそう思っています。 ○西澤寛俊先生 20年後は私も別に4年制というのを否定はしていません。ただ、そこへ いくまでの過程というのをもっと考えていく必要があるのではないか。いますぐ4年制に せよと、4年ありきで議論が始まってしまうのがおかしいということです。先ほど言いまし たけれども、私の資料の後ろから2枚目くらいになると思いますが、検討するときに今回 は看護職ですから、看護職に要求される知識・技術・行動特性をまず明らかにする。この ときに看護師というのを、いまは1つの看護師だけで見ていいのか、いろいろあると思い ます。学校教育も高校、専門学校、大学とありますが、出た人が全部同じ資格でいいのか という議論も、これから出てくるのではないか。看護職の中にもいろいろあるのではない かと思っています。  ですから、看護職に何が必要とされているかということで、すべての看護職に必要なも のがすべて同一と考えるか、その中でさらにいくつかに分けるかという議論も、これから 必要だと思っています。それぞれに必要な教育内容というものを明らかにして、それぞれ の教育機関、必要なものの達成度、その評価というものを明らかにしていくことではない かと思っています。同時に考えなければならないのは、「必要な教育資源を明らかにする」 と書きましたが、この資源というのは人的資源、財政的資源もあると思います。そういう ことも明らかにしなければなりません。  その前のスライドで、現在の問題点として教員の数、質の問題もありますので、本当に 期間延長をやっていくためには、まずそういうところの整備も必要だと思います。そうい うことを含めて、例えばこれからやっていっても、これから整備するだけでも10年は最低 でもかかるのではないか。20年あればできると思いますから、ステップ・バイ・ステップ で、いまから議論するのはいいのではないかと思っています。 ○寺田委員 お二方にお伺いしたいと思いますが、その前に若干、これは質問というより 意見と言ったほうがいいでしょうか。まず特に西澤先生の最後のほうをちょっと飛ばされ ましたが、いちばん最後の頁のまとめの「職業教育を検討するに当たっての基本的な事項 について」のところです。これは非常に大事な話だと思っていて、看護教育の実はいちば んスタートの話ではないかと思います。西澤先生の話ではなくて、全体を見ていろいろ聞 いている範囲では、こういう基本的に重要な職種に要求される知識・技術・行動特性につ いていろいろご意見はあるのですが、どこで果たして研究されているのか。特に大学人と いうか、職業教育やキャリア教育を専門にしている人間としては、非常に心配だなという 印象を持ちます。  看護の世界で、看護カリキュラム資質研究というのを、もっぱら専門にやっている所が あるのでしょうか。どういった所でやるのでしょうか。検討会議というのはあるようです が、そういった組織というのを厚生労働省が立ち上げるのかどうか別にして、考えないと いけないのかなという気がしています。大学の文部関係では、教育研究所や大学のそれぞ れが全国至る所でそういう研究をやっていますから、学校教育の中身についてどうするか ということです。間違っていれば訂正いただきたいのですが、系統的にそういった研究を する所というのが要るのかなという印象を持ちました。  質問ですが、西澤先生。先ほどの井部委員の話と若干関係しますが、一方で専門的なス キル、知識を強化し資質形成を高めるということと、他方で一般教養や組織論と言われま した。さらには専門の枠を超えたものとして今度の新しいカリキュラムの特徴のようです が、医療職種合同コースの設置です。これは相反する要素で、高等学校、大学の職業教育、 専門教育のあり方を考える場合も同じ問題があります。先生は先ほど、いまの3年制なら3 年制の中でも時間数を増やして全体を均等にというか、それぞれの要素を強めるという方 向もあるのではないかというご意見でしたが、最終的にはどの面をいちばん強調すべきだ とお考えなのでしょうか。看護基礎教育の問題を考える場合に、一般教養なのか専門なの か。専門の座学なのか実習なのか。この非常に基本的な要素のところというのが核になる と思いますので、その点をお伺いしたいと思います。  続いて羽生田先生にお願いしたいと思います。先生がおっしゃったように、看護教育を 始める前の高等学校教育までの基礎教育といいますか、そこでいろいろな力を付けておい て、その上で専門的な教育を強化すべきだというご意見のようですが、私も何となくそれ は同感できるのです。その場合、もう少し具体的にお願いしたいのですが、患者に対する 基本的な姿勢、態度といった割と倫理的、道徳的な問題というか、一方でコミュニケーシ ョン能力ということもおっしゃいました。例えばコミュニケーション能力ということで、 具体的にはどんなことをご想定なのでしょうか。基本的な常識や挨拶、よく民間企業で言 う「報連相」といったレベルのお話なのか、あるいはもっと専門的なことをお考えなのか。  ちなみに、こういった話を文科行政だけでできるかどうかというのは、多分に私は疑問 があります。家庭あるいは社会全体の人間に対する態度といいますか、育て方の問題があ るのだろうという気がしています。私は今回の中教審のある小さな部会で、今度の学習指 導要領の改訂の議論に関わった関係で申し上げると、高等学校はまだ最終案が出ていませ んけれども、今度の改訂で強調されたことの1つは、言葉の教育あるいはコミュニケーシ ョン能力の強化ということを大変強調しています。さらにキャリア教育という形で、この コミュニケーション能力育成の取組みを進めていくという言い方をしています。そういっ たことを、高等学校教育までに考えていく上で参考にさせていただきたいと思いますので、 是非、もう少し各論のところをお願いできればありがたいと思います。 ○田中座長 ありがとうございました。質問が3つあります。最初の看護教育のあり方の 研究について、厚労省ないし文科省でそういう常設の組織が何かあるのか、に対しては事 務局からお答えいただいて、あと1つはそれぞれの先生方からお願いします。 ○野村看護課長 看護教育に関しては系統的というか、看護教育学会というものが2つあ ります。そこの中で研究については、かなり活発にやられている状況があるかと思います。 それに加えて厚生労働科学研究で、毎年ではないのですが、そういった研究もやっていた だいているところです。  前回のカリキュラムの改正を行ったのは、厚生労働省と文部科学省の共同ですけれども、 検討会を行って、そこで専門の先生方にたくさん集まっていただいて内容を詰めて、カリ キュラムの改正の方針を出したというやり方でやっています。そういったことを出す背景 には、そういう教育学会でのいろいろな研究等々が積み上がった中で出されてきている内 容かと思っています。 ○寺田委員 教育センターとか、そういう組織はないのですか。 ○野村看護課長 組織としては看護研修研究センターという、看護教員を養成していると ころはありますが、いま教員養成に力を入れていて、研究をやる素地はあるのですが、そ ちらのほうの力は現在、あまり入れていないという状況です。 ○寺田委員 わかりました。 ○田中座長 難しい質問だったですね。いろいろな教育、それぞれ重要だと言われたけれ ど、特にどれが重要だと思われるかという、これも厳しい質問です。 ○西澤寛俊先生 非常に厳しい質問ですが、その前の野村課長が答えた件ですけれども、 これをなぜ飛ばしたかというと、私が今回求められたものでないだろうということです。 ただ、資料としては非常に大事なので入れておいたということです。やはりこういうこと を考えていただきたいし、いま課長が説明しましたけれども、ここら辺はどこかしっかり した組織と言うと語弊がありますが、検討する場が必要ではないかという考えを持ってい ます。  3つのどれが大事かということですが、正直言ってどれも大事だとしか言いようがないの です。一般教養に関しては、もしかしたら看護教育ではなく、もっと基礎的なところでや っていなければならないのではないかと思っています。あとは専門的なものと医療職種合 同とか、今のカリキュラムにプラスして、どこに時間があるのだと言われるのですが、実 はいまのカリキュラムは前回も検討しましたが、もっと時間を効率的にできるのではない か、もっとどこかで時間を作れるのではないかと思っています。  その際議論したときも、例えば在宅と老人看護などは、かなり似たようなことを別なと ころでやっている面があったのです。そこを共通化することで少し時間を縮めたというこ とがありましたから、カリキュラム全体を見直すともっと時間が作れるのではないか。そ れと当然、全部をやろうということよりも優先順位を付ける中で考えていく。そのような カリキュラム変更の中で、まだまだ改善の余地が十分あるのではないかと考えています。 ○田中座長 羽生田先生、よろしくお願いします。 ○羽生田俊先生 看護教育の中で重要なのは、看護教育と臨地実習であると思っています。 大学なりの専門コースに進む前の段階でと私はずいぶん言いましたが、実は高等学校でも 遅いと私自身は思っているのです。小学校あるいは小学校へ上がる前ということで、私は 学校のほうに、教育ですべてを何とかしてというふうに思っていません。地域というもの が教育、PTAなりとの連携という中で、地域の人たちがみんなでその地域の小学生などを 一緒にサポートするなり、一緒に勉強していくという、そこが非常に必要かなと思います。  特にいま核家族化していますので、お年寄りとの会話といったことが全くない状況で育 ってきてしまう。そうすると看護という部門に入っても、お年寄りとどういうふうに接し て付き合っていいかというところが、基本的には本当にわかっていないのではないかとい う気がします。ですから、そういった中では、小学校のときから社会科実習なり社会科見 学ということで、そういった施設に行くとか、いろいろな場面を見せて、皆でそれについ て議論するとか、そういった地域とのつながりというものを十分していくことが、教育の いちばん大事なところかなと思います。学校でできる、あるいは家庭だけでできるとは私 も思っていません。 ○梶本委員 今日はご苦労様でした。この検討会というのは20年後ぐらいの医療や社会が どうなっているかということを見据えた上で、その中で看護師にどういう能力が求められ るのか、そのためにはどういう教育をしていかなければいけないかという問題を検討して います。西澤先生がおっしゃるように、将来のことはなかなか読めないのですが、ただ、 はっきりしていることは高齢化がものすごく進むということ、それから医療技術が非常に 高度化して、医師も分業化した上でのチーム医療がどんどん行われていくだろうというこ とです。あるいは高齢化が進めば病院、診療所だけでなく、在宅医療がどんどん進んでい くだろうということも予測されます。  その中で、看護師はどういう能力が求められているかというと、今までのヒアリングの 中で、いろいろな現場の方々にお聞きしたのですが、一言で言えば、看護師に期待すると ころが非常に多いということです。例えば在宅医療を担うのは看護師だと言っても間違い ない、と現場の医師は発言していますし、病院の医師も、看護師の力がないと医療は力が 発揮できないとおっしゃっていました。そういう話をずっと聞いてきて、さらに看護師の 皆さんからも、簡単に言えば業務拡大を目指したいということも聞いてきました。  これは当面の話ですが、医師不足など、いまの足元の問題を考えると看護師の業務拡大 ということが考えなければいけませんが、先ほど西澤先生がある部分は捨てて、ある部分 は拡大していけばいいのではないかということを言われましたが、私もそうだろうなと思 いました。看護師に求められる仕事は長期的には業務拡大はしているのだと思いますが、 その中で看護師にどういう仕事を期待するのかということです。  例えば介護の世界では、介護士が高齢者のお世話をするケースが増えています。片方で 介護士がいて、片方で医師がいるという中で、これからの長期的な医療の展望の中で看護 師が求められる仕事は何なのか。それは病院と開業医とでは全然違うとは思いますが、西 澤先生と羽生田先生、それぞれどう思うのか教えていただきたいというのが1点です。  それから、お二人から具体的に看護師に求めるものをお聞きしていたら、数学や統計学 など、私もあまり勉強したことのないことまで求められる一方、コミュニケーション能力 も欠かせない、ということですね。そして解剖学など、医学の基礎教育もちゃんと学んで おいてほしいということでした。私はお二人に賛同するのですが、実習です。やはり実習 と座学と組み合わせないと、本当に立体的には理解できないので、実習をもっと増やすべ きだと思います。  ところが昔の教育の内容を見ていたら、実習がどんどん減っている。あれが本当の実習 だったか仕事をしていたのか、私はよく知りませんけれども、実習がどんどん減っている というのはあまりよくないことだなと思います。  そうしたことを考え合わせると、看護師教育に求められるものが非常に多いなという感 じがします。そうすると本当に3年の間にやっていけるのだろうか。文科省全体の「ゆと り教育」の影響も受けるし、羽生田先生がおっしゃるように、小中学校の教育があまりう まくいっているようには見えない。それが看護教育に反映しているのではないかというこ とでした。そういうことで本当にこの3年の中で、これからの医療が求める高い要求を満 たすことができるのだろうか、いまひとつよくわからない。  ある意味で現在、足元で実験をやっているわけ、准看の養成があり、あるいは大卒がい て、それから3年の養成コースがあるのですね。それで羽生田先生は、三者が一体となっ てうまく協力してやっていけばいいのだということでしたが、お医者さんは、そういうい ろいろな養成プロセスの人と一緒に仕事をしてみて、どんなふうに差を感じるのか。やは り大卒のほうが頼りになるのか、あるいは大卒のほうが駄目なのか。その辺、西澤先生と 羽生田先生にお答え願えればと思います。3つです。 ○西澤寛俊先生 まず20年後ですが、高齢化とか在宅中心ということ、それから医学の進 歩というのは今はもう始まっています。現在、かなり検討されていますので、その延長線 上であればいいなと。特に20年後の話ではないと思っています。ひとつ言いたいのは、例 えば在宅あたりでは看護師が中心というか、自分で考えてしなければならない。いまは何 となく療養上の世話と診療の補助みたいで、言い方は悪いのですが、いまの保助看法を見 ると、あまり頭で考えないでいいような感じなのです。これから逆に求められるのは、看 護師が自分で考えることだと思います。大事なのは、コーディネーターとしての役割だと 思います。特に在宅では、その患者にどのようなサービスがいいか。これはいまの訪問看 護師にもまさしく期待されているのですが、このような能力というのはこれから絶対必要 だと思います。  それからリーダーとしての役割も、これから望まれる。いまでも病棟管理、入院の管理 ですけれども、ある意味で看護師が中心になってやっている。そのためには、申し訳ない ですが若干能力というか、いまの教育では足りない。そういう能力は20年後には期待され るだろうと思います。  しかしながら、看護師すべてがその能力が必要かどうかという議論は、したほうがいい のではと思っています。准看というシステムがいいかどうかは抜きにして、例えば介護福 祉士などもできていて、よく見ると同じ仕事を福祉施設では介護士がやっていて、病院で は看護師がやっているということもあります。そのあたりを整理して、場合によっては介 護福祉士でいいのであれば、看護師はその仕事は捨てると言ったら語弊がありますけど、 それは任せてもいいのではないか。もっと重要なことをやればいいということで、役割は どんどん変わってくる。だから、ただ拡大して増えるだけでなくて、片方ではそういうふ うに減っていくものもあるのではないかと思います。  逆に医師も抱えすぎだと思っています。これから医療技術がどんどん進歩していくと、 医師の業務自体もこれから医師でなくてはならないものに限るべきです。いまは医師がや っているものでも、将来は看護師がすることもあり得ると思います。そういうことで医療 職すべての中でもう少し整理が、20年後はされているのではないかと考えています。  その中で広く看護職はどうあるべきか。看護職イコール看護師ではないと思っています。 その中でコーディネーターやリーダーとして求められるものとなると、いまの教育では足 りないと思います。そういう方にはもっと教育が必要です。それと研究者としての看護師 がいたほうがいいと思います。そうするともっとふさわしい教育もあると思います。そう いうことでいろいろ多様化が必要なので、その検討は是非すべきだと思います。 ○羽生田俊先生 20年後って非常に難しい先の話なのですが、基本的にはそう大きな変わ りはないだろうと思います。ただ、看護師に求められる業務範囲という話がいろいろ出て くるのですが、いま現在の法律上の中でもかなりできることをしていないのが現状です。 いわゆる指示には直接指示と間接指示とありますから、間接指示というものが医療機関の 中できちっと徹底している場合には、その中で看護師のできる範囲というのは非常にある はずなのですが、その辺もきちっとまだ整理されていないし、やれるはずなのにしていな い。  あるいは看護師のほうがしたくない。数年前に静脈注射をしていいという話がありまし たが、看護師のほうから、したくないから増やさないでくれというのも、意見としてかな りあったのです。ですから現在の業務の中でも、そこまで増やしてほしくないという声も 当然あるし、もっと増やしてくれという声の両方があるということは事実だと思います。  いわゆる基礎教育という中でどうこう言う場合には、業務範囲を拡大するために、こう いうところを教育しなければいけないという議論に、初めからいくべきではない。基礎教 育としていま西澤先生もおっしゃったように、どこまで必要で、それが全体の看護師であ って、その上にどういった看護師が新たに加わっていくのか、スキルアップしていくのか ということ。それが資格であるか教育だけの問題なのか、それはわかりませんけれども、 そういったものがあって、医師の場合には資格ではなくても、そこを専門とした勉強をし て、学会としては専門医制度というのがあります。  いま、看護師の中でも専任看護師や認定看護師ということで、その辺を勉強して、そう いった専門の看護職を作っているわけですから、そういったものが将来的に業務の点でど うかという議論は、当然入ってくるだろうと思いますけれども、基礎教育という全体の看 護師を作るという意味では、私はそこまでの話にはいかないのではないかと思います。そ の中でも当然いくつか出てくることはあるかもしれませんが、要するに段階がいくつかあ ってもいいのではないかという考えをしています。  その点、いまの3年でできるかという教育期間の問題は、先ほど私がお話させていただ いた中で言いましたように、いま現在の到達度というものがきちっとできているはずなの に、それがほとんど到達しないで卒業している。その辺がどのくらい到達したのかという 研究もされていないし評価もしていない。ですから、きちっとした到達度をカリキュラム の中で作っていることでは、看護教育がいちばん進んでいると思っているのです。ただ、 それを実際に到達したかどうかという評価がほとんどされていないのが現状ですから、あ れがもう少し評価されて、この教育にもう少し力を入れていこうとか、その辺の評価によ った教育内容等が充実していけば、いまの3年の中でも十分教育としては充実できる。  ただ、その後の実際の臨床との接点、あるいは臨床の場に出たときの問題は、先ほど言 ったように実習ができる、できない、の問題もありますし、教える側が、座学の場合には 看護という業務を過去にはしたけれども、現在はしていない人たちが教えているところに 問題があります。そういったところの接点はもう少しうまくできていくのではないか。学 生だけでそこまで、すぐ使い物になるというのは医学部でも無理ですし、看護学部でも当 然無理ですから、卒後の研修をどういう形で制度づけていくかが問題になってくるだろう と考えています。 ○梶本委員 3つ質問したのですが、現状で准看コースから来た人、養成コース3年で来た 人、大学卒で来た人がそれぞれいて、皆さんが一緒に仕事をしていて、チームメイトとし てどんな感じですか。4年やった人は実習も含めて頼りになるとか、そういうような感じは どうですか。 ○西澤寛俊先生 なかなか難しい質問ですが、いま現場で見ていて、民間病院で中小病院 の所には新卒の大学卒というのはめったに来ませんから、よくわかりませんが、来てもあ まり違和感はないですね。病院の場合は准看護師が少なくなってきていますし、現場で細 かいところを見ていませんが、違和感なくやっていると思います。  ただ、特に訪問看護というのは、うちあたりでも全部看護師ですが、きちっと自分で判 断することに関しては看護師がやっています。入院の場合は結構チームの中で、お互いに 補ってうまくやってくれているのだろうと思っています。 ○羽生田俊先生 准看護師、看護師、大学卒の看護師というのが、それぞれどうのという のは私も非常に難しいと思っていますが、個々の看護師、准看護師ということでのお話に なると非常にばらつきがあるということです。例えばいまの介護の場面といった中で、看 護師とのコミュニケーションが非常によくとれて、患者自身も安心する場面もかなりあり ます。これはある意味、社会的経験が多いというのがあるのかもしれない。ずっと学生を 続けて大学を卒業した人よりは、言葉は悪いですが、遊んでいた人のほうが社会的な教育 がなされている面もあって、そういったコミュニケーションの面では准看護師のほうが優 れている場合が多い。  ただ、先ほどもちょっと言いましたが、2年コースで准看護師を持っていて看護師の免許 を取った人は即戦力です。これは間違いなく即戦力です。 ○矢崎委員 私は医師ですし、病院にいますので2人の先生方のご意見と全く同一で、ご 質問というのはほとんどないのですが、ひとつ梶本委員が言われたように、日本の医療提 供体制というのはこの10年から20年でものすごく変わるのではないか。いまの病院、診 療所のあり方も変わってきますし、医療職の業務内容も今のようにすべて医師が抱え込ん でいてやっているところでは、やっていけなくなるだろうということで、業務分担が明確 になるのではないか。  そのときにネックは、医療に対する国民の皆さんの理解というか感覚が少しずれている のです。そこをよく認識していただかないといけない。すなわち医師はすべて責任を持っ てやっている存在で、看護師はどちらかというと医師の手助け、あるいは典型的な言葉で いいか悪いかわかりませんが、白衣の天使という病院の中で癒しの存在みたいな感じです。 それは大事な部分ですけれど、本来の業務から言うと、もう少しはっきりさせたほうがい いのではないか。  これからの看護教育のあり方を議論するときに、国民の皆さんあるいは受療側というか、 患者の意識を変えていただかないといけない。そのいちばん大きなネックは、臨床実習の ときにもう少し行政が踏み込んで、もう少しやれる範囲を広げると同時に、国民の皆さん にも、看護師というのは患者が最も信頼を置く立場の医療人であるという教育をしていた だいて、やっていかないといけない。  ですから3年教育を4年教育にした場合に、単に3年、4年ではなくて、いまの3年で は看護師の免許は取れないそうですが、いま医学教育ではステップ1と言いますか、そう いう自主的な試験をして、この人は臨床実習に耐え得るというライセンスを学部が与えて、 患者に保証するというシステムがあるのです。もし4年制に移行する場合には、是非、そ ういう仕組みを同時に作っていただかないと、単に3年を4年ということでは意味がない のではないか。  羽生田先生が言われたように、あるいは西澤先生が言われたように、すべての看護師を このレベルに統一というのは難しくて、本当に基礎看護教育をしっかりやる部分と、高度 専門をやる部分というのは分けて考えていかないといけない。私もちょっと疑問なのは、 先ほど羽生田先生がご指摘の、すべて助産師の資格とかを全部入れるのではなく、それは2 段階方式みたいなものでしっかり教育するのが筋ではないかと思っています。  もう1つは、例えば大学院になると修士論文を出すということで、ある程度物事を科学 的に思考するとか判断力を養う。論理的な思考を育成するというのは重要なのですが、実 地教育を充実する視点が大学教育、大学院教育において必要なので、先ほどご指摘があっ たように、患者を見ている方が教育の主体を担うような看護教育も、これから考えていか なければならないと思います。  最後に、いま高等教育で大学の全入学の時代になっているときに、准看護教育のあり方 というのは、もう一度考えていただかないといけない。というのは、社会的ニーズはある と思うのです。その場合には先ほど羽生田先生が、准看に社会人が入って免許を取るコー スもと言われたように、大学の医学部も社会人入学で6年制を4年制の教育にするという 方向がありますので、できれば准看護師という中途半端なものではなく、入学は例えば社 会人で社会的経験を積んだ人が看護ケアをする。いまのように誰でも入れます、中卒でも 入れますというのは、中卒でいいか悪いかは別問題として、世の中から看護師へのリスペ クトと言いますか、看護師が医療の中心的役割を成しているという理解をうるには、働く 現場はたくさんあって全部看護師という1つの言葉で括る必要はない。けれども国民の皆 さんの看護師のイメージとして、明治時代からの看護師に対するイメージを抜本的に変え てやっていかないといけないのではないか。私はそう思ったのですが、両先生に賛同して いただければと思います。 ○西澤寛俊先生 全く矢崎委員がおっしゃるとおりだと私も思っています。本当に国民の 方の感覚というか意識は是非変えていただきたい。地位の向上というのは単に学歴を上げ ればいいというものではない。国民の方がどのように見ているかだと思いますから、本当 に大事だと思っています。全く先生と同じです。 ○羽生田俊先生 准看護師のあり方は、これから検討しなければいけないだろうなと私ど もは思っています。ただ、業務の話からすると、いまは看護師と准看護師の業務は99%同 じなのです。指示があればできるということになっていますので、その辺は業務範囲の問 題、業務場所の問題ということも検討して、ある程度きちっとした違いも示していかなけ ればいけないのかなと思います。  ただ、いま現在あるいは今後、この高齢化社会を乗り超えていくまでは、准看護師の必 要性というものは非常に感じていますので、いますぐやめてしまうということは我々現場 としては困るということで、あり方というものは当然検討していくべきであろうと思って います。先生がおっしゃった教育者のほうに、看護という業務をする時間を作る制度を創 設していただきたい。そういうことを非常に感じています。  例えば看護学校の中でも症例報告といったものがあるのですが、いわゆる教員の先生が きちっと作り方なり、どういうふうに話を進めていくか指導ができないのです。大学はま ずそういうことはないだろうと思いますが、症例報告なり研究論文を生徒同士で喋るのに、 きちっとした形が出来上がっていないのです。そういった論文の書き方等々も、どこかで 教えていかなければいけないと思います。そういった教育者のほうもまだまだ一斉にレベ ルアップをしていかないと、看護教育自体が上がっていかないのかなと思っています。イ メージアップは私も必要だと思いますので、是非、協力させていただきたいと思います。 ○井部委員 ただいまの矢崎委員の発言に全く賛同するのですが、羽生田先生の最初のご 発言の中で、診療所に大卒の看護師が来ても、知識や技術を使う道が殆どないのではない かという件に関しては、私は大変異論があります。これからの地域医療を支えるのは診療 所が非常に大きな役割を占めると思います。高齢化、少子化の中で身近にある診療所がど のように機能するか。現在の診療所ではない新しい形の診療所においては、高度な知識や 技術を習得した者たちが地域医療の中核となるために、診療所における活躍というのは非 常に期待すべきものではないかと私は思っています。この点について、矢崎委員風に言う と賛同していただけるでしょうか。 ○羽生田俊先生 大学を出てその知識を使うという場面が、現在ではほとんどないという のは事実です。ただ、いま西澤先生も矢崎先生も言われましたが、これから先は在宅なり 何なりでも、看護師が実際に見た場面で、いろいろなことを考えて進めていかなければな らないということは当然増えてきます。ただ、違うのは、診療所の場合には看護師と医師 との距離が非常に近くて、年中一緒にいて、在宅に行くにも一緒に行ってという場面で、 非常に近くで常に見て、必然的に勉強しているということがあります。  大学出の知識をすぐに利用するという場面ではないという意味で、大学出の人が要りま せんということではないです。現在はそういうことで、医師のすぐそばにいて、実際に業 務をずっと見て、一緒に仕事をしていることから、こういう時はどうするという反応なり 対応が早く身に付いているところはあるということで、いますぐ大学出の知識が必要だと いう場面はあまりないという意味ですから、誤解されないように。 ○矢崎委員 その点だけは羽生田先生と意見が違うのです。というのは、これからは高齢 化社会において、診療所と病院の役割が変わってくるのではないか。いまの医師会の先生 方の診療所体制では、高齢化社会で全部カバーできなくなってしまうのではないか。です から、そのときに地域の高齢の住民の方の状況を全部把握して適切な対応をしていくには、 相当看護師の力を得ないと、1人で診療所をやっている先生がすべてケアするというのは超 人的な働きが要求されてしまうのです。一人診療所でなく数人の診療所ということがなか なか無理であれば、そういう看護師をスタッフに入れて、診療所に通っている患者以外の 患者もケアするシステムにするには、能力のある看護師がいないとなかなか難しい。そう いう点は是非、医師会の先生方も、そういう視点から考えていただければ大変ありがたい。 ○羽生田俊先生 言われていることはよくわかります。現場で診療所の医師は、この人を 中心にという、こういう言い方をしては申し訳ないけど、能力のある人を中心に在宅など を回すということです。これは資格の問題でなく、そういうのは必然的にやっていますの で、その中に大学出の知識があって、それを活用する場面というのはこれから先は当然出 てくるだろうと思いますが、現状では、いま言ったように、医師と看護師が非常に近い場 面で常に見ていることから、そこで十分であるというふうな言い方をさせていただきまし た。これが変わってきた場合には、当然そういった知識も必要になってくるだろうとは思 っています。 ○西澤寛俊先生 いまのに関連して私たち全日本病院協会の「病院のあり方に関する報告 書」では、今後の地域での連携や地域医療のあり方について、これから継続的なケアが必 要だということを書いています。そのときにはきちっとしたケアコーディネートできる、 ケアコーディネーター的な機能を称する職種が必要だと書いています。そのケアコーディ ネーターの役割として、「入院時から長期療養が予測される患者のケア計画に積極的に参加 し、患者家族の要望も汲み取り、転院、転床、在宅療養、介護などに関わる諸問題を調整 するもので、現状のMSWやケアマネージャーに比べ、疾病発生直後から関わりを持ち、 より広く深く関与する職種である」と書いています。これがいまの職種では、やはり看護 職だろうと私たちは思っています。そういうことで看護職は将来、こういった高齢化ある いは在宅という中で、主体的にやっていただきたい。そうすると医師は医師でなければで きないことに特化していける。そのように考えています。 ○田中座長 たまには座長を離れて実務的な意見を言わせていただきます。基礎教育の中 の臨床実習の話です。先ほど羽生田先生が、資格を取らないとできない実習があると言わ れたのは誠にそのとおりで、医師はまさに資格を取ってから臨床研修をしているわけです。 臨床実習と言ってもいろいろありえて、かつて昭和20何年の実習は、たぶん単なる手伝い で、安い労働力だった実態のを実習と呼んでいた姿がこんな長いグラフになって残ってい るので、決して本当の意味の実習を縮めてきたわけではないと思います。普通の企業の世 界でも、学生が在学途中でインターンしても、会社へ入ってすぐ使えるとは思っていませ ん。良い企業では入社後大体3カ月とか6カ月は研修をさせます。大学で習うこととは違 って、最先端の商品知識や経営システム、IT、コンプライアンスのことなどは会社へ入っ てからでないと学べないのです。  看護のほうも、その意味では臨地見学はすごく重要だと思いますし、最初に職場に入っ てきて邪魔にならないとか、言われたことができるとか、そのレベルまでの臨床実習は絶 体大切だと思いますが、先ほど来出ているようなチーム医療の一員として自分で判断がで きるところまで、まさか基礎教育で身に付くわけではない。臨床実習を経て、極端なこと を言えば邪魔にならない、もう少し言えば、言われたことはできる程度が期待されるので はないかと思います。学校を出てもすぐには役に立たないと言われても、それは立たない のが当たり前なのであって、実習にも段階があるのではないかと思います。そんな解釈は いかがでしょうか。 ○西澤寛俊先生 全く田中座長のおっしゃるとおりだと思っています。決して学校を出て すぐできるとは考えていません。それと実習はどうしても看護実習ということで看護現場 だけ見るのです。チーム医療をやるときに他の職種が何をやっているか全く知らないで来 ます。そういうことは実習の中で、病院でどの職種が何をやっているかを見るぐらいはあ っていいのではないかと思います。 ○羽生田俊先生 いま言われたように段階もそうですし、学生の立場では出来ないことが 多すぎるのです。学生で唯一、出てすぐ使い物になるのは歯科です。歯科は2年間ほとん ど実際に歯の治療をしているわけで、歯科の場合には卒業してすぐ、それこそ歯科診療所 ができるぐらいになって出てくるのです。その辺の法律がどうなっているか私も細かいと ころまで知らないですが、看護師なり医師にしても、医療職種が実際にできる範囲という のは法律的に保護して広げていかないと、自立はある程度以上はいかないだろうと思って います。また卒業してからの実習は、ではどういう事をすべきかと、いうところも、きち っと整理した上で制度化していくことが必要だと思っています。 ○矢崎委員 間違っているかもしれませんが、いま看護実習というのは相当制限されてい るのではないかと思います。自分で判断力を持って何かするのではなくて、例えばボディ タッチである程度のことまでできるというのも、制限されているのではないかと思います。 もう1つ実習は、いま西澤先生が言われたようにケーススタディというか、1人の患者を持 って医師と看護師とディスカッションする。そういうようなケーススタディの実習が極め て少なくて、おざなりの実習に今はなっているのではないかという感覚で、これは井部委 員に怒られるかもしれません。いまはそうではありませんよということかもしれませんが、 一般的にはそういう実地のものがもう少しあればと思います。これは規制とかではなくて 看護教育のほうです。ですから、座長の言われるよりも一歩進んだ臨地実習というのを、 今後どんどん進めていく必要があるのではないかと思います。 ○井部委員 特に違法性の阻却という点においては、注射をするとか浣腸をするとか、侵 襲性の高い技術を実際の患者に適用するには、かなり限界があるわけです。一度も本当の 人間に注射したことがないとか、浣腸をしたことがないという卒業生も、珍しくはないと 臨床では言っています。その点は国民の皆さんの協力を得ることも必要ですが、本当の人 間に近いような看護教育技術、あるいは看護教育方法というのでしょうか、そうしたもの の開発も必要だなと思います。 ○梶本委員 いまの話とは違うのですが、基礎教育の中身の充実という話になると、当然、 今後の看護教育の教育年数についても触れざるを得ないので、お二人から最後にもうちょ っと聞いておきたいと思います。  この問題でどうも西澤先生と羽生田先生と温度差があるような感じがするのです。書か れたものを見ただけでも、西澤先生は、まずは3年課程の教育内容を充実させ、それから4 年課程の移行に関する議論、検討を行うと、ちょっと前を向いている。他方、羽生田先生 は、4年制大学にこだわる必要はないと、現状を踏まえて看護職員を確保すればいいと、三 層構造機能を活用したらいいと、つまり、今の形がいいのでないかという感じがうかがえ ます。それぞれ病院と開業医の方々の意見も踏まえてのことだと思いますが、その辺、お 互いにどういうふうに評価し合っているのかというのが1つです。  それからもう1つ、羽生田先生が、昨今の傾向、トレンドを最初に教えてくれましたね。 3年の養成所から4年制の大学が増えているし、学校の数も増えているということでした。 この現状は、要するに看護師になろうという人がどういうコースを選択しているのかとい う志望者のニーズを示しているのだと思います。お二人の4年制への移行に対する温度差 はありますが、このトレンドはこれでいいのか。この辺でやめておいたほうがいいと、そ うでないと三層構造が維持できないとおっしゃるのか、その辺を教えてください。 ○田中座長 最後の質問ですね。 ○西澤寛俊先生 これは、たぶん医療界あるいは私たちの会員の間でもさまざまな意見が あるので、なかなかまとめては言いづらいのですが、私個人としては将来的に20年先とか を見たときに、4年制を全く否定するものではありません。ただ、直近にするのであれば、 その前に3年制の改善で教育の充実がまだできるのではないかということと、やるからに はさっき言った目標などをしっかり立てて、その中での合意のもとでやっていくべきでは ないかという2点です。若干温度差はあるのではないかと思っています。 ○梶本委員 そうすると現実の4年制、3年制、准看というものの今の割合をどう見るのか ということになりますが。 ○西澤寛俊先生 私は全部、1回まとめて議論したほうがいいと思います。いまの三層と言 いますか、そういう感じがあるのかもしれませんが、逆にいま介護福祉士という今までな かった職種もできましたし、これからは新しいまた別な職種ができないとも限りません。 ですから、そういうことを含めた中で看護職としてどうあるべきかということをきちっと 見て、その看護職という中に段階なのか機能別なのかということもありますが、そこも含 めた議論を今後やっていく。いまがどうだからに敢えてこだわる必要はないのではないか と思います。 ○羽生田俊先生 私も4年制を否定しているわけではありません。ただ、現状からすると、 4年制を出た方のほうが就業する率は低い、これは事実です。養成所なりあるいは3年制な り、いちばん高いのは2年進学コースです。やはり大学を出るということがひとつのステ イタスであって、就業はしないという方もいる。これは医学部でも言えることですけれど も、そういった方が増えています。  私は先ほどから申し上げたように、いま医師会とすれば准看護師も養成していますし、 現場の中で片腕として働いていただいている。特に診療所が非常に多いという中で、いま 現在、どこまで続くかわかりませんが、残しておいていただかないと医療の現場はますま す混乱してしまう。  ただ、先ほど申し上げましたが、将来的に看護職が1つでなくて、いろいろレベルがあ ってもいいというふうには考えていますが、いますぐそこまで持っていくのは非常に難し い。とりあえず看護の基礎というあり方としては、全国統一のいまのレベルで、まだまだ 十分されていない部分がいっぱいあるという、そこだけは西澤先生と同じ意見で、いまの 中でももっと充実できるのではないかというところは、是非進めていただきたいと思って います。 ○井部委員 最後に1点確認なのですが、国家試験の合格率に関して、教育背景別の合格 率を正確に教えていただくとありがたいです。 ○野村看護課長 第97回の看護師国家試験、今年の3月26日に発表があった分ですが、3 年課程の平均的な合格率は96.2%、2年課程の全体の平均的な合格率は90.9%、高校専攻 科5年一貫の課程は93.2%という数字です。これは全部新卒です。 ○井部委員 大学はどうですか。 ○野村看護課長 3年課程の中に大学は含めていますが、3年課程の中の大学だけで見ます と97.5%です。3年課程、2年課程、高校の全部を含めた全体の平均は94.6%の合格率で す。これは全部新卒についてです。既卒が入ると全体の合格率は下がります。 ○井部委員 私も大卒が高かったという印象があるので、確認させていただきました。 ○田中座長 時間になりました。本日はお二人の先生方にお忙しい中をお越しいただきま して、ありがとうございました。本懇談会のために貴重なご意見を頂戴したことを、委員 を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。次回の第6回につ いては有識者の方々から、これは最後になると思いますが、ヒアリングをもう一度行うこ ととなっています。次回の日程について説明をお願いします。 ○島田課長補佐 次回、第6回の日程は5月26日の月曜日、13時から、場所は厚生労働 省5階の共用第7会議室での開催となります。また、いま座長からもお話がございました が、このような有識者の方々からのヒアリングにつきましては、次回で終了したいと考え ています。6月2日に開催を予定している第7回での懇談会におきましては、委員の先生方 からそれぞれ10分ほどご発言をいただきたいと考えています。よろしくお願いします。本 日はお忙しい中、ご参加いただきまして誠にありがとうございました。 ○田中座長 第7回は我々がテストされるようですが、これで第5回「看護基礎教育のあ り方に関する懇談会」を閉会します。お忙しいところご出席いただきまして、ありがとう ございました。  照会先 厚生労働省医政局看護課 福井 小紀子 (内線2599) 福井 純子 (内線2595) ダイヤルイン 03-3591-2206