08/05/08 平成20年度第3回介護労働者の確保・定着等に関する研究会議事録       平成20年度第3回 介護労働者の確保・定着等に関する研究会 日時 平成20年5月8日(木) 10:00〜 場所 厚生労働省共用第7会議室(5階) ○大橋座長 定刻になりましたので始めたいと思います。本日はどなたからもご欠席の 連絡を受けておりませんので、追っつけお見えになると思います。それでは第3回「介 護労働者の確保・定着等に関する研究会」を開催いたします。  本日は、前回に引き続きまして公開で業界関係者からのヒアリングを行います。本日 ヒアリングさせていただく方は、介護関係職種の求人・転職サイト「カイゴジョブ」や ケアマネジャー等の人材サイト「ケア人材バンク」などを運営されている株式会社エス・ エム・エスから代表取締役社長の諸藤周平さんに来ていただいております。また、介護福 祉士養成施設の全国団体である社団法人日本介護福祉士養成施設協会から副会長の田中 博一さんにお越しいただいております。  本日のヒアリングの進め方ですが、まず事前に送付させていただいているヒアリング 事項を中心に、それぞれ20分程度でご説明いただき、そのあと20分程度で質疑を行いた いと思います。各団体からのヒアリングが一通り終わりましたら、フリートーキングを 行いたいと思います。配付資料の確認について、事務局からお願いいたします。 ○佐藤介護対策室長補佐 本日の資料の確認をさせていただきます。お手元には座席表、 本日の議事次第、資料1として、本日のヒアリング対象団体出席者の名簿、資料2はヒア リング対象団体概要、資料3-1は、株式会社エス・エム・エスから質問項目に対する記 述の回答書、資料3-2は、社団法人日本介護福祉士養成施設協会に対する質問項目の資 料が付けてあります。ご確認方よろしくお願いいたします。 ○大橋座長 それでは、まず株式会社エス・エム・エスからのご説明をいただきたいと 思いますので、代表取締役社長の諸藤さんから20分程度でお願いします。 ○諸藤様 ただいまご紹介いただきましたエス・エム・エスの諸藤と申します。よろし くお願いいたします。お手元の資料に沿ってご説明させていただきます。  弊社は社名をエス・エム・エスと申しまして、シニア・マーケティング・システムの 略が社名になっております。何をやっている会社かと申しますと、企業理念として、高 齢社会に適した情報インフラを構築することで価値を創造し、社会に貢献し続けようと いうことで企業運営を行っている会社です。高齢社会に求められる情報インフラという と、ちょっと漠然としてしまいますが、弊社では、それを介護分野、医療分野、アクテ ィブシニアの3つに分けて、この3つの分野において情報のインフラを提供していこうと 考えている会社です。弊社でいう情報インフラとは、情報を収集して、整理・伝達する ことを定義しております。ですから、2つの観点があると考えており、1つが高齢社会に 求められているか、もう1つは情報のインフラという事業で価値を提供できているかで、 この2つが交わる部分を事業領域と考えております。  現状は介護・医療が主な事業となっており、具体的には、介護分野と医療分野で働い ている従事者と、採用を希望されている事業者を結び付ける。具体的には求人情報のサ イトであったり、人材紹介の事業をメインでしております。設立が2003年で、いま6期 目のできたばかりの企業です。  資料の2番目、「介護関係の求人・転職、人材紹介のサイトの運営状況」についてご 説明します。まず人材紹介です。ご存じの方も多いかと思いますが、当社は転職の場を 提供するのに人材紹介という事業と、求人サイトの2つの別の切り口でのサービスを提 供しています。  人材紹介に関しては、転職をしたい方と採用したい事業者をマッチングするのですが、 その際、転職をしたい方はインターネット上で登録をいただきます。そのあとに弊社で はコンサルタントと呼んでいますが、転職をしたい方のカウンセリングなどを行って、 転職先を複数紹介し、希望の所があれば、弊社のコンサルタントが面接に同行して、就 業が決まったときに成功報酬として人材紹介手数料をいただくという事業が人材紹介に なっています。  いま介護分野においては、全職種を扱っているわけではなく、ケアマネジャーに特化 した形で人材紹介を提供しています。医療に関しては、ドクター、薬剤師、看護師の人 材紹介サービスを提供しており、メインは看護師です。  もう1つ、転職のお手伝いとしてインターネットの求人広告をしています。こちらで は、弊社のコンサルタントを介さずに、転職をしたい方がインターネット上のサイトに お越しになり、ご希望の所を複数だったり単独で見つけて、ご自身で連絡をして、転職 の応募をするという場を提供しています。  現状で、介護関係で人材紹介をしているケアマネジャーに関してですが、年間で大体 延べ52万人にサイトに来ていただいております。実際に、その先の成約に至って、就業 が決まっているのは年間520名(月平均43名)となっています。  同じく人材紹介事業の看護師の紹介は、ナース人材バンクというサイトでも提供して います。こちらはサイトにお越しいただいている方が年間で58万人となっています。 紹介成約、実際に就業が決まっている方に関しては、年間で2,600名(月平均220名)と いう現状です。  続きましてインターネットの求人広告ですが、弊社は「カイゴジョブ」というサイト 名で運営しています。求人情報サイトのご説明です。介護分野において、人材紹介事業 はケアマネジャーのみですが、インターネットの求人は全職種を対象に介護分野で働か れる方の求人情報を提供しています。職種は全般にわたり、ケアマネジャー、介護福祉 士、ヘルパーだったり、訪問入浴のオペーレーターなど、介護にまつわるすべての方の 求人を募集しています。こちらに関しては、年間で140万人がサイトを利用しておりま す。こちらが介護関連の求人情報サイト「カイゴジョブ」です。  同じく医療分野において看護師を対象に「カンゴジョブ」という求人情報サイトも提 供しています。こちらはサイトの訪問者数が年間で45万人になっています。  弊社はいま6期目の会社ですが、もともとは完全に介護に特化をする形で事業運営を 行っておりまして、設立から3年までは介護のみで運営していた会社です。ですから、 看護師の求人情報サイトなどがカイゴジョブより若干人が少ない部分は、どちらかとい うとニーズというよりサービス提供の時期の違いとご認識いただければと思います。  「ハローワークや福祉人材センターと異なるサービスとして、どのような観点で事業 展開をされていますか」という部分をご説明いたします。現状、弊社では、介護分野で の働き手がいないという前提として、あくまで需給の部分ですが、転職をされる方が希 望されればどこにでも就業できて、事業者はある程度妥協してでも採用しなければいけ ないというのが全国的な状況と考えております。ですから、弊社のサービスとしても、 とにかく転 職をする方にとって良い場とは何かを中心に考えて事業運営を行っております。  求職者、転職をされる方の視点として、転職先となるどこの地域に住まわれているか が介護・医療特有と考えております。通常の産業の転職の場合ですと、例えば関東圏に お住まいの方は、関東地域の求人、もしくはそういう地域を意識せずに、どの企業に入 りたいかを考えて転職をされますが、介護・医療の方の場合、自宅から半径何キロ圏内 であるということが前提条件になります。  弊社はインターネットで求人情報を提供していますので、会社を調べるという最初の 行為として、地域を絞ることを先にやっていただくような作りになっています。ですか ら、地域から調べたり、もしくは路線から調べたりという動作が最初にくるような工夫 をしています。  現状として弊社が考えているのは、ハローワークや一般的な紙媒体、地域で配られて いるフリーペーパー、日曜日に折り込まれている「日曜日求人」などでは、選択肢が相 対的に少ないということです。たまたま折込広告で求人が出ているのを1つ知った、と いうように、複数の選択肢から選んで求人を調べるというよりは、ここに求人があるこ とをたまたま見つけて転職をするということが紙媒体ではあるのかなと認識しておりま す。弊社としては介護・医療に特化することで、サイトに来ていただいたときに、多く の選択肢からご自身が転職したい所を調べ込んでいただく場を作っています。  たまたま見つけた求人で転職することが、どちらかというと紙媒体で起こっていると いう状況になっているのではないか、実際の職場環境などを見ることや雰囲気を知るこ とが面接に行かないとわからないことになってしまい、実際には何件も面接するわけに いかないので、結果的によくわからないまま就業するということが起こっているのでは なかろうかと考え、逆に弊社としては、インターネット上でなるべく雰囲気、教育体制、 理念、他人に対する考え方を載せ、インターネットではスペースが全くかからないとい うことで、1週間に1回記事を更新して提供し、より多くのスペースを割いて、どこが自 分にとって合っているのかを調べていただくような場を提供しています。  事業者の視点としては、既存の一般的なもので、費用を払って募集活動をしておられ ます。紙の媒体、折込チラシやフリーペーパーなどで求人広告を、どちらかというと慢 性的に打ち続けられているのが現状かと思います。  これに対して2003年、2004年、2005年ぐらいには、ある程度広告を打てば人は何とか 集まりました。そこには若干の地域性があって、例えば名古屋地域とか、東京でいくと 世田谷などは打ってもなかなか難しいということで、事業者は世田谷地域であれば川崎 のほうに打ったらある程度来るのではないかといろいろ工夫されて、2003年〜2005年も しくは2006年の頭ぐらいまでは何とか取れていたという状況でした。これが今までなの かと考えております。いまは、現状は打たなければいけないので紙の広告を打つものの、 反応自体がないということで、費用対効果がないという状況かと考えております。結果、 大手も含めて、特に中小の介護事業者は採用の広告費自体が経営を圧迫する要素になっ てきていると弊社では認識しております。  それに対して、弊社自体の求人広告も、経営を圧迫するようでは結果的に長期的には 利用されないだろうということで、なるべく安価な広告を作って、いま使われている広 告費から下げる形で、なおかつ、多くの方に来ていただけるような場を作ろうと意識し ています。  弊社はインターネットを媒体としていますので、物流のコスト、営業マンのコストは かからないということで、相対的に安い金額で、いまは1事業所の求人広告を出すのに1 万円もかからないような金額で求人広告をして、なるべく経営を圧迫しないように、な おかつ、効果が上がるにはどうすればいいのかを工夫しながら運営しています。  続きまして「求職者に対する利便性の提供」を、具体的に(ア)(イ)(ウ)と書きました。 まず最初に、地域性を重視する。これは、ハローワークなども地域性は重視されている ので、一般的な求人媒体との違いになります。  通常のホワイトカラーの転職サイトにはリクルートなどがやっている大手の求人サイ トもあり、すべての大手の求人サイトで医療・福祉というカテゴリーはありますが、ほ とんど求人は載っていない状態になっています。これはサイトの作り上、地域性を考慮 できないですし、ほかの職種との兼ね合いで地域から入っていくことができないからで す。介護・医療・福祉というカテゴリーは立てるのですが、あるとすると医療系のMRの 求人だけがあって、介護福祉士の求人は非常に少ない状態になっています。これは地域 性を重視することが作りとしてできないからと考えており、弊社は地域性を重視するこ とを第一に考えております。ですから、実際の転職可能地域内で求人がたまたまあるの ではなく、特化することで多数の求人を用意をし、その中で選んでいただくことと、併 せて操作性を重視しています。  2つ目の特徴として、職場定性情報の重視です。これは後ろにも出てきますが、どち らかというと、賃金を重視されている部分もありますが、賃金にそんなに差がないとい うことで、結果としていちばん重視されることは、職場の雰囲気、経営者が考えている こと、直接上司とどのように仕事をやっていけるのか、その方が与えられる権限が何か といった雰囲気をすごく重視される傾向があります。どこまでいっても、最終的にはフ ェース・ツー・フェースで、合わないとできない部分かと思いますが、現状はたまたま 見つけた所に行って、何となく会ったら、ここがいいのかと思って、行かざるを得ない ということが少なからずあるのかと考えております。なるべくインターネット上で、で きるところまではお手伝いしようということで、定性的な情報を重視しております。で すから、弊社にプランナーという記事を作る者がいるのですが、毎月必ず打合せをして、 雰囲気や理念、どのような方を採りたいのか、どのような教育をしているのかを詳しく 聞いて、情報を提供するようにしています。  もう1つは、弊社では求人の鮮度と呼んでおります。医療もそうですが、介護では、 人員基準などの兼ね合いで欠員が出たときに補充するとか、足りないので採用する、あ るいは補充された場合には次の人は要らなくなるという職種、もしくは慢性的に足りな いので全部欲しいとか、いろいろありますが、どちらかというと求人が埋まれば求人が なくなります。ですから、鮮度を持った求人情報を提供しなければ、その求人はなくな りましたと出てくる、もしくはいま求人があるが、時間が間に合わなくてまだ求人をし ていないということが現象として起こっていると考えています。弊社では、実質1週間 に1回、いま求人があるのかないのかをリフレッシュする形で、なおかつ、月に1回は記 事の内容自体を打合せをして変えています。  2の「介護労働の現状」の1「求職情報サイトとして、現在の介護労働の状況をどのよ うに捉えていますか」を説明します。まず賃金水準に関して、絶対的、相対的に低いの が現状で、一般的に言われている職能給のように、キャリアパスをイメージして、給料 が高まる展望がなかなか描きにくい状況ではないかと認識しています。  結果として、特に顕著な例ですが、男性の従事者が介護職として働く場合、私どもも お手伝いをしてよく感じることですが、異業職からすごく意欲のある方が転職をされて、 この方は頑張れるのかなと思っても、ある程度までは頑張れるのですが、将来、家族が 持てないという1点で離職することが結構多くあります。典型的な例ですが、介護の仕 事が大好きなので続けたいということで意識も高いのですが、その結果、どういうこと をしているかというと、介護を続けたいので、介護で働きながら夜にアルバイトをして いる方も結構おられて、私どもはそこに対して特に何ができるわけではありませんが、 若干その辺はもどかしい部分があるのかと考えています。  その結果として起こっていたのではないかという現象ですが、景気が良くなる地域に 関しては、介護以外の職種に人材が流れていて、そこに対する求職者が枯渇するという 状況があるのかと考えております。  弊社は2003年からサービスを提供しておりますが、顕著な例として、名古屋のほうで は圧倒的に早く需給関係において、明らかに事業者が応募しても採れないという状況に なっており、地域の景況観と逆相関するような形が典型的に出ているのではないか。そ の後もそういう傾向が強くて、直近では期間労働者の募集などをしている地域などに関 しては、完全に介護から流れていくということが起こっていたのかと思います。ここは 相対的に賃金水準が低いということで、キャリアパスのイメージが描きにくく、特に異 業種からの参入の方に関しては、そのような動きが多かったのかと認識しております。  仕事の内容に関しては全く逆で、働いている方のほとんどが介護という仕事にはやり がいを強く感じており、私どもと同じような年だと思いますが、特に若い年齢の方で、 もともと人生を通して他人の役に立ちたいという傾向の方が多く、そういう方が来てい るからというのもあると思いますが、世の中の流れとしても、もともと母集団として多 いのかと考えています。  その典型的な仕事として介護を選んでいる方がすごく多くて、できれば一生続けたい という意識があり、仕事を通しても魅力的な仕事だと感じておられます。しかし、どう してもボランタリの要素が強くて、そこが支柱になっているということで、そこが崩れ てしまうと、典型的な例では、人間関係が壊れるときにほかの会社に行くケースもあれ ば、介護では食べていけないということで、異業種に行かれることも起こっているのか と認識しています。  これはどちらかというと部分的な話になるのかもしれませんが、職種分野ごとの縦割 りが若干あるのかと考えており、この業務はできないが、ある程度高齢者のことを思え ばやらなければいけないのではないかということのしがらみで、上司、部下で方針の対 立などが結構起こっているのではないかと思います。それがストレスになって、結果的 に離職率が上がることに跳ね返っているのかと考えています。具体的には、サービスに 規定されたこと以上はできないということと、介護と看護の垣根が強すぎるというのが 若干あるのかと考えています。  全体的な過不足感については、介護サービスのニーズは高齢者の増加に伴って高まる 一方で、従事者が非常に不足して、十分確保できていない。また、事業者はサービスの 拡大をしようにも人が採用できないことと、収益が悪化していることで、その結果、採 用・教育の予算が減少し、さらに従事者を確保できないという悪循環に陥ってしまって いるのではないかかと認識しています。  弊社では、私も含めて6カ月に1度、大規模事業者、中規模事業者、小規模事業者に、 そもそもの景況観であったり、人の採用に対してどのように考えておられるかをヒアリ ングしています。この3月に行ったときには、大手の事業者を含めて、採用に対しては 出口がないという部分がかなり色濃く出ていました。今までは何か方法を考えていると いう感じでしたが、ほとんどの事業者が、「どうしましょう、どちらかというと答えは ないのですか」という話がかなり多く出ていたと認識しています。  ただ、唯一あった答えは、新規の労働者を異業種から投入できないということで、新 卒を採用するしかないのかというところに、介護の民間の事業者が切り換えているのか と思います。そこのマーケットには、もともと社会福祉法人に就職する流れがあって、 うまくいくのかどうかわからないのですが、手探りの中でやっていかなければ駄目だと。 逆にいうと、それ以外の業種からはなかなか難しいという感覚があると考えています。 これは私どもがそう感じている部分ですが、介護の事業者に採用に関する若干のあきら め感が漂っているのかと感じています。  次は、2の「介護業界からの離職者の現状を、どのように捉えていますか」という部 分です。離職については従事者のモチベーションが前提として必要なのではないかと考 えています。基本的に介護に関しては、社会的な意義を高く持ち、誇りを持って就業さ れています。ただ、副業としてアルバイトをしながらでなければ介護の仕事を続けられ ないというのも裏腹にはあるのではないかと思います。若年層に関しても、景気全体が 低成長の中で、他人の役に立つ、やりがいのある仕事をしたいという傾向が強く、潜在 的な労働者はいるのではないかと認識しています。  離職の要因として、賃金水準が生活を維持するのに低いというのが現状ではないかと 考えています。もう1つは、肉体的・精神的負担が、ほかの産業と比べると、賃金に対 して相対的に高いのかという認識をしております。  また、人と接するやりがいを求めている一方で、管理職の役割を担う必要がある上に、 それによっても賃金が変わらない。特にサービス提供責任者などは、まさかあれをやり たいとは思わないなどという雰囲気が現場にはあるのかと考えております。これを続け ていってこうなれば、最終的にはそんなに多額の報酬でないにしろ、緩やかな階段であ ってもこうなっていけるのだとか、そこに定着することでどうなるとか、経験を積むこ とでこのようなキャリアパスがあるというのが描きにくくなっているのかと考えていま す。  2003年、2004年、2005年の間には独立という選択肢があったのかと弊社では考えてお ります。介護で働く方は、新しい産業が芽生えたという意識が強くて、その先に小さな 介護事業所であっても経営したいという方がすごく多くいて、転職の動機も、そういう 前向きな部分だったり、キャリアパスをどのようにしようかという動機が多くありまし た。しかし現状では、独立という選択肢も現実的ではなく、本質的なやりがい、具体的 には介護職が好きなので管理職にはなりたくない、介護に関しては自分がやりたいよう にやっていきたいが精神的・肉体的な負担はちょっと重い、というのが現状かと考えて います。 ○大橋座長 まだまだ報告していただけることはたくさんあると思いますが、時間の関 係もありますので、かいつまんでお願いします。 ○諸藤様 続きまして「募集・求職内容」の1「募集主からの求人依頼について、どの ような傾向になっていますか」です。こちらは弊社の話ですが、8割近くは経験者を対 象とし、経験者の要望は高いです。大手に関しては、経験者の獲得を諦めている傾向が あって、新卒の確保にシフトしていると思います。  2アクセス対象者、サイトに来ている方の傾向です。傾向としては、同業種からの離 職が全体の4割を占めています。業界としても、復職に対する敷居は相対的に通常の産 業よりも低いと考えています。当社の入職のルートは、インターネット上から転職の希 望登録をして、人材紹介に関しては、そのあとコンサルタントがカウンセリング、紹介、 面接の同行をして、双方の合意があった場合に入職するという流れになります。インタ ーネットに関しては、インターネットで自身が見つけて、インターネットもしくは電話 で応募するという流れになっています。  資格の有無ですが、弊社は併せて資格情報の提供を行っています。その関係もあるか と思いますが、無資格者を積極的に採用しているのは全体の25%にすぎず、必然的に有 資格者の応募が弊社の中では多いという傾向があります。  経験者と未経験者についてです。新卒に関しては社会福祉法人への希望と実際の就業 が多く、一般介護従事者に関しては新卒未経験での応募は少ないと考えています。常勤、 非常勤に関しては、通常は6対4が、弊社は3対1となっています。  性別は全体では2対8で、男性、女性の比率ですが、弊社は管理職を希望される方が多 く、4対6で若干男性が多くなっています。年齢層はインターネットでやっているという 面もあるかと思いますが、30代の方が多く、20〜30歳代の方が全体の60%を占めており、 以下、40代、50代、60代と均等に入っている形です。  3アクセスの対象者ですが、ポイントとしては自身が持っている資格で行うことので きる業務が求人検索時の前提となっています。ですから、資格と地域で選んで転職をし ていると思っています。  4充足する求人の内容として、賃金以外の情報を提供しています。キャリアステップ のための内部研修、教育制度を強く謳っているところに応募が多いという傾向があると 思います。併せて福利厚生、経営の母体などを結構重視するのかと考えています。  人間関係がこじれて転職するケースが結果的にはかなり多くあって、既存のしがらみ がない新規事業を開設すると、そこに関してはすぐ応募が集まります。これはどちらか というと、しがらみがない所でもう一回1からやり直したいという傾向が顕著にあるの かと考えています。募集主から応募者への求人の充足に向けた相談などは月に1回して おり、どちらかというと賃金の訴及はやめて、どのような理念でやっていき、その会社 独自のものは何なのか、そこに対して集中的に訴及していこう、そうでないと、就業し ても、結果的にまた離職するのではないかというアドバイスをしています。  6インターネットの情報提供に関してですが、共通する部分としては、皆さん介護現 場の理解があると考えて、より細かな地域、もしくは職場の定性情報を提供しています。 若年層に関しては、今後、新卒の採用が両者ともに活況になってくるのではないかとい うことで、重点的に取組みをしています。  5「厚生労働省への要望」で、「期待することはありますか」という部分ですが、弊 社では3つあるのかと考えています。1つは従事者が介護の職業人として認知され、歩む ことができる仕組みづくりがあれば、潜在的には役割度を高く認識され、若い方もやり がいを持ってやれるので、良くなっていくのではないか。具体的には資格を細分化して、 細分化した資格に連動した報酬の制定を現実的にはやっていくべきことなのかと考えて います。その延長に独立開業だったり、モデルケースとして、あのようになりたいとい う像が描ければ、さらにいいのではないかと考えています。そうするためには、ある程 度の採算性が介護事業者に求められているのではないかと考えています。  もう1つは、地域内での医療・介護機関の有機的な連携を期待します。具体的には、 離職をされる際に、連携がよくない、会社の方針が合わないというのは、どうしても連 携の部分があるのかと思います。ある程度緩やかに、現実の高齢者のために連携できる 部分のハードルを若干下げていくことも方法の1つかと考えています。結果として、介 護業界の存在感、立場の向上、介護職の職業人としての社会的認知、賃金の引上げが不 可欠であると考えています。 ○大橋座長 お忙しい中、どうもありがとうございました。それでは質疑応答に入りた いと思います。どうぞご質問ください。 ○河委員 全体のイメージが私なりによく理解できて、非常にありがたかったと思いま す。前回のヒアリングのときにお話したことですが、この世界の問題として、ややほか の分野と違うのは、施設型と在宅型、社会福祉法人型と企業型で業態が分かれている部 分があると思います。その中で諸藤さんたちがやっているのは、どこに層が多いのか。 つまり、非常にクリアに分けたらA型、B型みたいなものがあるのだろうと思います。求 人にしろ求職にしろA型の人たちが多い、あるいはB型の人たちが多いという部分を教え ていただきたいと思います。 ○諸藤様 若干の地域性があって斑模様かもわからないのですが、全体として感じてい るのが、例えば典型的な例では、合同就職フェアをやっており、大きな場所を借り切っ て介護事業者に参加していただきます。結果として、参加の意欲が高い所は民間の在宅 の事業者が多いのですが、転職を希望している方は社会福祉法人の求人があるのかとい うのを、かなり強く感じておられ、弊社としてはどちらに偏ることもできない両方のイ ンフラですので、なるべく社会福祉法人にも出ていただこうと考えています。そこにミ スマッチがあるのかと思います。  具体的には民間と社会福祉法人とで切ったときには、社会福祉法人に就職をしたいと いう希望が圧倒的に多くて、在宅と施設ということでいきますと、最近は特に顕著なの ですが、施設に行きたいのかなと。在宅に関しては、直近は特にそうで、募集はしてい るのですが、限りなく働きたくない場所と相対的にはなっているのかと考えています。 ですからカテゴリーでいきますと、社会福祉法人に応募が集中しており、在宅と施設に 関しては、施設のほうが通勤可能距離も広く取れることもあって、マスに訴えかけてや っていけるということで、そこの差はほとんどなかったのですが、ここ半年から1年の 間にかなり強く差が出てきているかと思います。  枝葉になってしまうのですが、例えば在宅もあれば、こういう施設もあるという見せ 方をすることで、いろいろなキャリアステップの絵を描いている会社は、応募はそんな にないのですが、説明したあと実際にお会いすると、採用率が高いという傾向があるの かなと認識しています。 ○河委員 施設にしろ在宅にしろ、夜の勤務状況をどう考えていくのかというのが、私 なりの問題関心の1つなのです。そこについては応募状況の話に限らずに、どうお考え ですか。 ○諸藤様 ちょっとずれた話になってしまうかもしれませんが、今はどちからというと、 特に若年層の方は生活をするための賃金を軸に考えられていて、夜勤の手当が付くので あればという感覚がかなり強いのかと認識しています。年齢層別にニーズが違うのかも わからないのですが、全体的には夜勤をやって賃金が上がるのであればそれをやりたい という傾向が強いのかと思います。私どもは人材紹介をしていますが、看護師は逆に日 勤の勤務先を希望される方が多いのです。介護の場合は逆で、夜勤があって賃金が増え るならという感覚が強いと思います。 ○佐藤委員 いまの河委員と関係するのですが、「カイゴジョブ」のところで、ケアマ ネ、介護士、ヘルパーなどと書いてありますが、訪問のヘルパーに限定したときに、そ ういう求人がまずあるのか。求職側も、いわゆるヘルパーとして、特に登録型で働くよ うな人たちもこれを利用しているのかという辺りです。ヘルパーと言っても、成績で上 がっていくような常勤の人たちの求人で、求職者もそういう人なのか。  つまり、これはインターネットを利用するわけですから、登録型ヘルパーで、自宅で インターネットにアクセスする環境にある人が相当増えているのかということにもかか わるのですが、その辺を教えていただきたいと思います。 ○堀田委員 先ほどのお話を聞いていると、求人側は民間で、かつ在宅が多いが、求職 側は社会福祉法人や施設希望者が多いということです。カイゴジョブの中、あるいは就 職フェアをやっても、なにかミスマッチがあるのではないかという感じがするのです。 カイゴジョブの利用者も20〜30代がメインというと、例えば、事業者側が民間在宅で登 録ヘルパーが欲しいと言っても、希望者がいないのではないか。その辺のミスマッチに ついても、あわせてお答えいただけないでしょうか。 ○諸藤様 最初のご質問ですが、弊社では、登録のヘルパーで区切ったときに、ヘルパ ーの求人に占める登録の部分が、来ていただいている方の35%程度で、実際の就労者数 に比べると低いと考えております。特に事業者を回ったときには、登録のヘルパー、具 体的には主婦層とか、そういうところがボリュームゾーンなので、カイゴジョブはそこ が弱いと言われています。  先ほどのご質問の、インターネットを利用するかどうかは、もともとインターネット なので難しいというのがあったのですが、いまは携帯で開発をしています。そこのプロ モーションをすると、介護職の方は携帯を皆さん使っておられるので解決できるのかと 思います。今までは、パソコンを全く問題なく使える方は、ただ見るというよりは会員 登録をするとか、場合によっては物を買うのにそんなに抵抗がない方が使う場になって いたのかと思います。それが後半のご質問に近いです。  場としては今まで完全な状態になっていたかというご質問に関してはおっしゃるとお りで、若干のミスマッチがあって、そこをどのように調整していくのかが私どもの役割 と考えています。ちょっとずれた話ですが、例えば中小の介護事業者や社会福祉法人は、 主体的に私どもの場に来るものが求人という区切りだけではないので、中小の介護事業 者に関しては請求システムを変えて、いまは大体3万円払っていだいている部分を1万円 以下にして、ASPという端末を介してやっていくことで、併せてインターネットの求人 も営業を介さずにご自身で、3,000円ぐらいで打てるような場を作っていこうというこ とで、今後は是正していきたいと考えています。 ○堀田委員 7頁で、アクセス対象者が主に注目する内容を書いてくださっていますが、 全体として賃金はあまり変わらないので、定性的な情報を重視しているという話があっ たと思います。介護労働市場全体を見た場合に、求人側が出したい情報と求職側が求め ている情報が、急成長するカイゴジョブを運営している立場からみて、うまくつりあっ ていると思っていますか。あるいは、サイトの強みともいえるかもしれないのですが、 このサイトでは、求職側が欲しい情報がちゃんと出ているといえるのかについて伺いた いと思います。 ○諸藤様 ちょっと語弊のある言い方になってしまうかもしれませんが、比較として医 療分野を見ると、すごくわかりやすいのかと考えています。介護の事業者は採算性がき ついので、とにかく採用に関してはうまくいくようにちゃんと伝えたい、具体的には大 幅に増えるようにしたいというのがあります。例えば嘘の情報を言って採用すると、そ の結果、離職をされても困るので、訴えかけるポイントが賃金ではない以上、何か独自 のものを会社としても打ち出さなければいけなくて、それは理念とか、人間関係という ようにかなり真剣に考えられています。  比較すると語弊があるかもしれませんが、医療業界はどちらかというと、まだそのよ うな認識がなくて、とにかく人を連れてきてほしいという傾向が、介護よりもあります。 それでいくと介護分野は、求人を出す側に関して、正しく情報を伝えていかないとそも そもやっていけないという健全な形でしか、採用しても定着はしてくれない。ただ、な かなか答えが見出せない。採用に関しては重要な要素なので、ちゃんとやりたい。どこ まで行っても採用の部分を担当している方はかなり経営に近い方ですので、最重要項目 で、なおかつ、歪みはあまりないのかと考えています。 ○堀田委員 ここでは、事業所が出している情報をみれば、十分に自分が働きがいを持 ってやっていけるかどうかを選べるようになっているということですか。 ○諸藤様 典型的な例は男性、女性の比率だと思っています。真剣にここで生活をして いきたいとか、キャリア形成をしていきたいという人は、弊社は4対6で、40%が男性で すが、真剣にやっていきたいという若い方が来ているので、かなり真剣度が高いのかと 思います。介護事業者からは「いい方は紹介してくれるのだが、ボリュームゾーンであ る登録ヘルパーが来ないからね」とよく言われます。そういう意味ではそこの部分のミ スマッチがあるのかと考えています。 ○堀田委員 登録ヘルパーとしてやっていこうという人と、常勤希望が強い傾向がある 男性とは選ぶ基準が違うことが問題という認識ですか。 ○諸藤様 どちらかというと、登録ヘルパーはインターネットの習熟度が相対的には低 くて、携帯のサイトなどを工夫することで解決していきたいと考えています。 ○北浦委員 まず簡単なことからですが、2頁のカイゴジョブの場合に成約人数という のがあって、※が打ってあり、「15%で推算」と書いてありますが、これは紹介サービ スはこの部分はないので、何かの数字でやったということですか。 ○諸藤様 こちらは、定期的に求人事業者とヒアリングをしており、何名応募して、弊 社経由では何名採用しているのかを一緒に同期をとるような形で事業者と打合せをして おります。事業者にとっては、何名採用できるのにいくら費用を払ったかがいちばん重 視するポイントで、そこを一緒に毎月改善していくようにしていますので、そこの平均 値と理解していただければと思います。 ○北浦委員 フォローしているだけですね。充足状況を確認しているということで、看 護の場合も同じで、充足状況は15%ぐらいだということですね。 ○諸藤様 はい、そうです。 ○北浦委員 そこがいちばん広い対象職種になっていますが、先ほどの求職の状況の中 では、比較的同業種の離職者が多いと書かれていましたね。そうすると、全体の4割ぐら いということですが、15%の方も、大体同業種の離職の方が戻っているというケースで すか、そこまではフォローされてないのてすか。 ○諸藤様 新規の部分からの流入は、直近はあまりないのかと考えています。 ○北浦委員 そうすると、求職者の中で他業種のところで、資格を持っていれば別です が、そうでないと登録はされても充足には至りません。そうすると、ここの中でマッチ ングしているのは、同じ業種の離職者で、ある程度資格を持っている方で、条件が合え ばという感じですか。 ○諸藤様 介護労働マーケット自体、全体がそういう傾向にあって、唯一の解として、 新卒のほうに事業者は向かい始めているところかと認識しております。そこと同じよう な形に、この場もなっていると考えています。 ○北浦委員 もう一点ですが、定性情報というのをだいぶ強調されていて、非常に大事 な点だと思います。それは記事でと言われましたが、つまり、申告ではなくて、取材を して客観的に書くということですか。 ○諸藤様 2つの要素を織り交ぜていて、編集が関与する部分と、基本的に比較検索性 というのも重視しており、定性であっても、同じような項目の質問に対して事業者から 回答いただく項目と、弊社として打ち合わせをして編集者をもってやるものと分けてい ます。 ○北浦委員 ライターの力によって書き方が変わってしまうということもあるわけです。 ですから、カテゴライズして、かなり客観性を持たせた形で書いているということです ね。 ○諸藤様 はい、そうです。 ○佐藤委員 カイゴジョブなどでも、求人を出してもらう顧客が、そういう意味ではよ く出してくる会社がいいと思うのです。ただ、他方でよく求人を出してくれる所は2つ あって、伸びているから人が足りないことと、離職率が高いから人が足りないというこ とで、ほかにもあると思いますが、極端に2つあった場合、就職してもすぐ辞めていく から求人が出てくるという所もあるかと思います。  もう1つは、そういう所については、多少このように変えたら定着するということを やるのか、それは我々の仕事ではないということなのか、その辺を教えていただきたい と思います。 ○諸藤様 そういう会社の特徴ですが、私ども採用のお手伝いをしていますので、その 法人の離職率はダイレクトに感じる部分があって、すごく差があるという感覚はありま す。そこと求人を出すことに対するウェイト付けに差はないのではないかと考えていま す。  具体的には、私どもから見ても、転職をする方から見ても、就職する方から見ても、 相対的には絶対いい事業所に思える所で、具体的にはやれる範囲でかなり教育を頑張っ ていて、常に改善しているような事業者であっても、常にかなりの求人をしている傾向 があると考えています。特に在宅介護・民間と区切ったときには、そのように認識をし ています。そういう会社が、採用はある程度抑えながらでも回していけるサイクルに入 っているかというと、こういう会社は今のところはないと弊社では認識しています。客 観的にいろいろな会社を比較すると、本当にいい会社だと思っても、そこはうまくいっ ていないと認識しています。  弊社は情報のインフラを提供しており、基本的には場を提供するのが役割と考えてい ます。ただ、弊社が場を提供した結果、事業者に提供しているサービスは採用ではある のですが、最終的には人事コンサルのような、教育や定着するような手立てをどのよう にすればいいのか、例えば入社時に、本当に厳しい業界だけど一緒に頑張っていこうと お互いに話し合うとか、上司だけではなく、さらにその上司とか、複数の人が噛むこと で、1対1の人間関係が崩れたときに、パッと辞めることはなくなったほうがいいという ように、深い所まで入ったほうが本質的にはいいと考えていますが、弊社は今の時点で はそれができていません。できてない理由は、弊社が小さいからということもあるので すが、過去に介護の大手にも何回も働きかけて、「そういう団体を作って、大手の会社 からでも変えていったほうがいいのではないですか、私どもが音頭をとらせていただく ので」と投げてはいるのですが、どちらかというと、まだそこまではやりようがないの と、私どもに任せたくないということだったのかもしれませんが、設立当初から何回か、 そういうクオリティでやっていますというのが現実的なのかなということで、今のとこ ろは実っていません。  あとは、「実験的にでもいいのでやらせていただきたい、無償でもいいので、そうい うモデルを一緒に作らせていただきたい」と投げかけたのですが、情報が漏れるという 話が複数から出てきて、それだけ深刻な部分があって、相対的にいい事業者に投げかけ たつもりですが、難しかったのです。ただこれは、あなたのような所には任せないとい う話かもわからないので、割り引いて聞いていただければと思います。 ○堀田委員 6頁に、「相対的に派遣紹介の人気が高い状況です」というのがありますが、 これは派遣を次々に繰り返すというイメージですか。キャリアのイメージはどういう感 じですか。 ○諸藤様 ここは派遣紹介と書いたのですが、直近はどちらかというと派遣が強いのか と考えています。私どもは派遣事業は行っていないのですが、とりあえずの時給という のが相対的に高くて、ある程度しがらみもなく働けるのかというので安易に流れてしま っているのかと思います。 ○堀田委員 性別はどうですか。いずれ常勤で働く希望があるのでしょうか。 ○諸藤様 どちらかというと女性のほうが多いのかと考えています。 ○堀田委員 このサイトを利用して派遣で働いて、またこのサイトに戻ってきているか どうかはわからないのですね。 ○諸藤様 弊社が派遣会社の求人を載せている形になりますので、あくまであとは雇用 主である派遣会社の動向になりますが、そこまでは取れていない状態です。 ○堀田委員 いずれ常勤で探したいと思っているかどうかもわからないですね。 ○諸藤様 わかりません。これは推測になってしまいますが、私どもが派遣をやめた理 由がそこにもあります。  いま瞬間的に需給がずれている状態なので、派遣を介護事業者が受け入れざるを得な いというので受け入れていますが、どう考えても採算が合わない雇用形態ですので、そ れをずっと続けていくこと自体、事業としてどうなのかというので、弊社としては派遣 はやっていません。相対的に時給が良くて、人間関係がそんなに問題にならないので、 派遣のほうがいいという方が結構いらっしゃって、派遣をやっている人はやり続けてい るのではないかと思っています。 ○大橋座長 1点だけお聞きしますが、施設と在宅でミスマッチがあるということです が、原因は賃金などの労働条件なのか、仕事の内容なのか、どちらにウェイトがあるの でしょうか。 ○諸藤様 両方あるのではないかと思います。賃金水準が低いので、仮に在宅は相対的 に高い給与の所と施設が横に並んでいたときに、それであれば在宅に行く人も増えるの かと感じる部分があります。  それだけとは言えない部分としては、施設のほうが、入りたての人や、周りにも人が いますし、毎回個人の家へ行って、かなり過酷な労働をやって、その上でクレームなど も起こって納得できないということだったら、上司との関係もあるし、両方なのかなと いう感覚です。 ○大橋座長 仕事の内容が賃金に見合っていないということですね。 ○諸藤様 第三者的な目で見ると、何となくそのような感覚です。 ○大橋座長 時間もきているようですので、ひとまずこれで終わりにして、あとはフリ ートーキングでお願いします。  それでは続きまして、社団法人日本介護福祉士養成施設協会副会長の田中さんからお 願いいたします。 ○田中様 日本介護福祉士養成施設協会を代表して、この委員会で意見を述べさせてい ただきます。紹介いだきました副会長の田中でございます。どうぞよろしくお願いいた します。  20分という限定時間ですので、なるべく要領よくしたいと思います。特に私どもは、 教育訓練という視点と、新規学卒者を送り出すという2点を中心に考えを述べさせてい ただきたいと思います。最初にお断りいたしますが、データが間に合わず申し訳ありま せんでした。過去4回卒業生の悉皆調査をしています。大体1万2,000人から回答があり、 それをベースに話をさせていただきます。いずれまた担当の部署にお送りしたいと思い ますので、よろしくお願いします。  私どもの協会は昭和63年に24校、定員が1,232名で介護福祉士の養成が始まりました。 平成20年度は434校、定員が2万5,577名で、約2万6,000名になっています。 20年間で非常に定員が増えました。  学校の募集状況です。発足当時から定員の充足率は、比較的順調に安定していました が、平成9年から定員の充足率の低下が見られるようになりました。ただ、介護保険が 導入された平成12年には、90パーセント近くまで上がりましたが、ずっと下がってきま した。平成17年度の実数で見ますと、定員の充足率は70%弱です。おそらく平成20年度 は60%を切るのではないかと我々は事務局と見通しを立てていますが、大変厳しい状況 です。  なぜ学生の募集が奮わないのかというと、ご承知のように少子化やいろいろな要因が あり、私たちは6つか7つの要因を考えていますが、介護という領域だけで考えてみます と、2点あるかと思っています。  まず1点目は、数字には出ないのですが、介護が非常に厳しい現場であるということ が、高等学校の進路指導で広く行き渡っているということです。生徒は行きたいが、「 やめておけ、あそこはきつい。もっとほかにいっぱい仕事があるではないか」と言われ、 私たちは為す術がありません。いろいろ説明、努力をするのですが、ここを何とかしな ければいけません。とにかく介護というものについての社会的な認識をもう少し考えて いかなければいけないと思っています。  2点目は、資格を取得するルートが3つぐらいあるということです。高等学校を出て専 修学校、短期大学、4年制大学というルートと、3年の実務経験ルート、そして福祉系高 等学校のルートと、1つの資格に3つがあるということが、学校を選ぶという点で受験生 というか、志願者にいろいろ迷いを与えていると我々は見ています。  そのような分析をしているわけですが、そういう学生を育てて送り出す職場について、 学校はどのように認識しているかです。特に近年、慢性的な人手不足があります。これ は、非常に人手不足が厳しい職場環境になっているということなのです。これも数字は ありませんけれども、パートでも何でもいい、とにかく人が要るということで、やはり 熟練のない、もしくはスキルのない人が入ってくるということで、ますます現場が混乱 している。人だけ補充すればいいということではないと思うのですが、その辺がかなり 厳しい状況になって加わっていると見ております。  私たちは、20年間若い人たちを育ててきました。これは大変やりがいのある仕事だ、 そして、誇りのある仕事だ、と4回の調査全部で言っています。できれば定年まで勤め たいという人が80%おります。ところが、我々の調査とか、あるいは単発の学校の卒業 生の調査をやりますと、勤続年数3年未満が60%です。介護労働安定センターのデータ も、勤続年数が3.4年ということですから、そう差はないと思います。使い捨て3年とい うことかもしれません。  ただ、一方で7年以上も結構いて、14、15%から20%というのも結構います。この違 いは何だ、ということが1つのキーになるかと思います。これは、後ほど雇用改善につ いてどのような要望があるか、というところで触れたいと思いますが、そういう二極が あります。しかし、いくつかの条件があれば7年以上、あるいは10年という勤続になって います。  それから、先ほどのヒアリングでもおっしゃっていましたけれども、給料が安いとい うことですが、こと初任給については安くないです。特別養護老人ホームですと、夜勤 を4回入れて初任給は19万円です。老健だったら20万円と言います。そうすると、他産 業と比べてもそう遜色はないです。基本給はボーナスに関連しますけれども、格段に初 任給が悪いからそこに行かないということではない。したがって、ほとんどの学生はほ かの産業に行かずに、介護の現場に就職します。我々は、そのように介護の現場を見て います。  いま、大学は学生募集で大変ですけれども、我々介護の分野では何が必要かというこ となのです。各学校は、コスト削減も含めて本当に努力しています。我々養成校だけで はできないものを立てていただかないと、この学生の回帰はないだろうと話し合ってい ます。4点ほどありまして、介護というのは非常に輝く部分があるのですよ、引かれる 部分があるのですよ。若いはつらつとした卒業生が現場に入って希望を持って働く、と いうのは介護の光だと思うのです。ここを、日本の国は社会的にもっと高めていただけ ないかと切に思っております。  具体的にどういうことかというと、これは援護局長にも申し入れているのですけれど も、介護福祉士の施設配置基準を定めてほしいということです。保育所などで乳幼児に は1対3というように保育士の割合があります。特養にも人数の配当はあるのですが、介 護福祉士にはないのです。したがって、専門職として認めてもらえるのならば、是非と も介護・老人・障害者施設に介護福祉士の施設最低基準に設置基準を定めてほしいとい うのが、認識されるためのきっかけになるのではないかと思っています。これが2つ目 です。  3つ目は資格給を我々は考えています。実態調査をすると5,000〜2万円という所があ りますけれども、大体が5,000円です。これは、2年間に200万円ほどお金を使って、5,0 00円はないでしょうと思うのです。この辺は介護報酬等でいろいろご努力いただいてい るそうですけれども、これは施設管理者の問題かもしれません。我々は、これだけスキ ルを高めた卒業生に対しては、資格給ということでもう少し評価をしてほしいと思って おります。  いま申しましたように2年間で200万円というお金を払うわけです。これは、ほかの学 校へ行っても一緒です。特に、実習が2年間で10週間あるのですが、これは全部学生の負 担なのです。1日に、学生は実習費をいくら払うかというと、安い所で1,000円、高い所 だと5,000円です。これが、全部学生の負担なのです。国家施策としてやるのに、他人の 家庭の懐を当てにしているのはなかなか寂しいと思うのです。ここのところだけでも、 なんとか学生の負担を軽減してもらえないかということです。  もう1点は、いまは貸与制度がありまして、奨学金は7年なのです。その1カ所に7年い たら免除になると言いますけれども、金額も大幅に上げてほしいと思うのですが、免除 期間を短縮してほしい、というのを教育機関としては是非要望したいと思います。そう いうことが学生募集につながって、インセンティブになると思っております。  送り出した学生が、どうすれば定着するかという点については、事業者や専門家の先 生がおっしゃっておりますので重複は避けます。それを割愛していくつか申し上げます。 介護の労働者・従事者に対する出産・育児支援をやってほしい。介護労働というのは、 大体がミドルエイジの女性ということなのですが、私たちは学生の約75〜80%が若い女 性です。勤めて数年すると伴侶ができて、結婚して、子供を産みたいというので辞めて いきます。  ところが、たとえば資生堂などではいっぱい育児支援をやっていますが、介護の現場 はほとんど事業所の努力でやっているということですので、是非とも出産・育児支援を やっていただきたい。これでどのぐらい伸びるかはわかりませんが、必要であることは 確信しております。  2点目は労働条件ですが、夜勤対策です。これは、私の持論で20年来言っているので すが、宿直と勘違いしているのではないか。働いているのですよ。おむつの換え、トイ レの介助、徘徊、しかも亡くなる場合があります。それを2、3人で何十人も見るという のは不可能です。ですから、夜勤対策についても十分なご配慮をいただきたいと思いま す。  言いにくいのですけれども、そういうこともひっくるめてですが7、8年前に、労働 基準監督署が一斉監督したら、40〜50%ぐらいの事業所が労働基準法違反であったとい うことですから、是非ともそういうことのないように職場にご指導いただきたいと思っ ております。  以上は労働条件関係でしたが、仕事の中身の関連でいくと、20年間介護ということで 養成し、我々は日本の介護福祉学をリードしてきたという自負があります。介護保険で も、それから今度の資格改正は身体介護に重点を置いたものになってきているのではな いかと思うのです。  実は、介護福祉士たちがやりがいがある、誇りを持っているというのは生活支援の部 分なのです。お年寄りとコミュニケーションを持ちたい、家族の援助をしたいというこ とはあるのですけれども、そこのところが介護保険でも狭まってきています。この辺の ところに福祉のやりがいについて、もう一度考え直す必要があるのではないかと思いま す。  もう一点はキャリアパスの件です。介護福祉士は、ケアマネジャーという部分でキャ リアパスができつつあります。ケアマネジャーの約40%か45%は介護福祉士の資格がベ ースです。あとは医師、看護師、保健師、薬剤師といろいろありますが、これは自然発 生的なものだと思っています。このキャリアパスの部分について、是非とも支援をして いただきたいと思います。このようなことをやっていただければ、私たちが送り出して いる若い介護労働力の定着に効果があるのではないかと言っております。  就職の状況を申し上げます。私の学校のデータですが、平成15年の求人数を100にする と、平成19年は180です。求人数が約2倍近く増えています。これに対して、入ってくる 学生が少なくなってくるから、ますます施設は求人に苦労しています。私たちは、施設 を選ぶのに大変苦労しています。これは、ほとんどの学校がそういう苦労をしています。  もう1つの傾向として、厚労省は在宅を推進し、そして小規模・多機能だとかいろい ろな所を作り、福祉のコンビニのようなことをやって、使いやすいサービスということ を念頭に置かれましたけれども、卒業する学生は、安定を求めて小さい所には行かない のです。やはり大きい所、医療法人が老健施設を持っている、老人ホームを持っている 所へ行くと、安定していて給料も高いということです。私は学生に、「行け。そこへ行 ったら仕事を覚えられる」と言うのですけれども、20歳の人にはなかなかそこまで見通 す力はないです。だから大きな所へ行く、という1つの傾向があるかと思います。この辺 はもうちょっと工夫が要るのではないかと思います。  潜在的な有資格者の掘り起こしについて、学校はどう考えているかということです。 普通、学校には就職対策部、就職部、学生部というのがあり、そこが大体就職指導をし ます。もう1つは、都道府県にあります福祉人材センターが開催する就職説明会がありま す。この2つが大まかなところです。  この2つは新規学卒ですので、既卒者はこれになかなか乗れないのです。年に数件卒 業生がやってきて「先生、何か仕事ないか」というようなのは限られた数です。学校が そういうことをやっていいかどうかということはありますけれども、福祉人材センター は中途採用のところを頑張る必要があるのではないかと思います。  人材センター、学校、ハローワークの辺りが情報の共有といいますか、仕事の共有と いいますか、そういうものが何か要るのではないか。具体的にはわかりませんけれども、 バラバラにやるよりは、そういうことができるのではないか。私たちは同窓会組織を持 っています。リカレントセミナーもやっています。機関誌もありますので、そこに出せ ば「自分の卒業した学校だったら行ってみてもいいな」というようなこともあります。 そのように、お互いの特徴を活かした情報の共有というか、協力し合いというものがあ るのではないかと思っております。  キャリア管理と訓練の内容についても非常に関心のあるところです。基礎的な訓練と いうのはもちろん学校でやるのですけれども、特に卒業生がいちばん困っているのは、 コミュニケーション能力だと言うのです。人間関係というのは、職員同士というのもも ちろんあるのですが、対利用者に対して、利用者の家族に対して、問題解決をしていく ことについてコミュニケーションといいますか、お互いの意思の疎通といいますか、自 分の言っていることが正しく伝わるといったことについて非常に要望が強いということ です。これは講義でできるものではなくて、いろいろな工夫が要ると思いますけれども、 そういうことが切実に現場から聞こえてきます。  2つ目は、マネジメントとかコーディネート力といったものを、介護福祉士は現場で 必要とされています。学校の2年間ではなかなかそこまではできません。その次につな がるものとして、この辺のマネジメント力、あるいはコーディネート力というものを育 てていくような現場であってほしいと思います。それができると、先が見えると思うの です。介護の仕事の効率性を考えても、これは非常に有効な教育ではないかと私たちは 思っております。これは基礎的な部分です。  専門教育です。今回の改正で1,650時間から1,800時間になりました。介護課程を視点 に置いた画期的な新たな段階に入るわけです。これは意見が分かれていて、非常に新し い段階に入ったというものと、一方で介護福祉士というのはあまり専門的なものでなく て、もっと一般的なものではないか、だから、ある程度の技能と知識を付けてたくさん つくる、ということのほうがいいのではないかという意見もかなり根強いです。そのよ うな見方もあります。  もちろんそれも必要でしょう。我々の定員は2万5,000〜2万6,000で、この4、5年で介 護の人材が50万人いるということですから、とても私たちには全部はできません。私た ちができる部分は何かというと、ここのところなのです。それはキャリアパスとの関係 でやりがいのことで、定着率の関係です。できたら、専門介護福祉士を新たに創設し、 そういう現場の人たちのやる気といいますか、将来の展望を見据えてほしいと思います。  これもいろいろな分野があります。障害別にいろいろな専門介護福祉士をつくる。例 えば認知症であるとか、障害者であるとか、こういう見方もあります。あるいは、そう いうケースをスーパーバイズするような専門介護福祉士、マネージメントするといった いろいろな考え方があると思うのです。一般的な介護福祉士という考え方がもし定着す るのならば、もっと専門的なものが要るのではないですか。そのことが、介護福祉士を 2年間勉強した若い人たちが仕事を続けていくインセンティブになるのではないかと我 々は思っております。  専門教育としては、先ほど申し上げましたケアマネです。ケアマネはもうルートがで きておりますから、これをもっと太くしていくような、広くしていくような、このこと をやることによって職場は良くなると思うのです。介護福祉士が現場で勉強するといっ たら、これは意欲が湧いてきます。職場も必然と良くなってきます。資格を取ったから その仕事をするというのではないのです。そのことによって、介護がよく見えてくると 思いますので、是非ともこの専門教育もなんとか目処を立てていただきたいと思います。 私からは以上です。 ○大橋座長 どうもありがとうございました。質疑応答に入ります。 ○河委員 大所高所からのお話をありがとうございました。うちの大学も介養協の傘下 会員ですので、発言に注意しなければいけないというのは十分承知しております。  いまのご説明の中で、聞いている方々が考えるときの前提として、介養協というのは、 介護福祉士を養成している学校ですが、教育市場の場においては、特に入学という教育 市場の場においては、専門学校が非常に多いものですから、それの影響が非常に大きく 出る。それは、介護市場に入る学生がどうのこうのという議論なのか。私の所が大学だ から言うわけではないのですが、専門学校という市場がそもそも動いている中で、介護 市場の問題を同じに論じてしまっては、聞いている方が誤解すると思うのです。別に大 学が偉いとか偉くないとか言っているのではなくて、なんでかわからないけれども、大 学進学率が上がっている中で、高校生たちもそういう指向が高くなっているわけです。  せっかく介養協に来ていただいているならば、介養協の傘下の学校は、ほかの分野を いろいろ抱えている専門学校が多いと思うのです。もし、これからお調べいただいて、 あるいは私どもに教えていただけるとしたら、ほかの市場と、専門学校の市場と、介護 の市場が特段違うところが何かあるのか。これは介養協でなければわからない、教えて いただけないことですから、それは是非調べていただいて教えていただきたい。これは、 田中副会長にお願いしたいと思います。  もう1つは諸江常務にお聞きしたいのですが、長く教育とか人の育成をやってこられ た方ですのであえてお聞きしたいし、いまの話でいうと看護の市場との比較があると思 うのです。看護の世界の15年前と、いま田中副会長がおっしゃったことはほとんど重な っています。特に養成コースがいっぱいある、だからそれによって困っている。それか ら、養成校の世界の入学者が減ってきている。その子どもたちが行く所は引く手あまた だけれども、なかなかうまくいっていない。これは、15年前の看護で言っていることと 全く同じです。  そうだとするならば、先ほどの養成校市場の問題と、もう1つは比較して我々が考え るべきは、看護の世界の動向が15年前はどうだったのか。この辺は諸江常務がよくご存 じだと思います。看護の市場を見てこられた方として、介護の市場との違いみたいなも のを諸江常務から教えていただきたいと思います。以上2点よろしくお願いいたします。 ○諸江様 バックデータを必ずしも持っていないのできちんとした説明はできないので すが、一般論として15年前なのか、あるいはもうちょっと前なのか、看護不足、看護危 機という時代があり、医療危機の医者の問題もあるといった危機を経験しているわけで す。いま河先生がおっしゃったように、介護も同様な位置づけにあるのではないか。  肝心の答えは後にして、最初に申し上げるのは、いま専門学校はどちらかというと短 大、短大は大学にと。毎年どちらかというと大学のほうが増えていく傾向があるといっ た高学歴化があります。介養協の中でも、先ほど副会長が話をしましたように、いろい ろな社会ニーズの課題に答えるためには、従前の専門学校2年制で果たしていいのかとい う問いがあったわけです。そういう問いに答えるために、協会の中でも1,650時間から 1,800時間にしました。かつては1,550時間ということもあって増やしてきたけれども、 さらにもっと増やして3年制にしていかなければいけないという議論があります。 専門介護福祉士などの問題も含めて言えば、より高学歴化する流れが1つあります。  そういう中で、先ほど民間の方が、供給とニーズのミスマッチという問題を含めて、 ミスマッチだけではなくて絶対量の不足というのが、15年前の看護市場と、今の介護市 場ということをリンクして考えていると思うのです。先ほど副会長も話をしましたけれ ども、専門性が曖昧になっている。看護は、看護の長い歴史の中でその地位を獲得して きたわけですが、看護養成校が複雑だったのは昔の准看護婦、今の准看護師という制度、 それから正看という制度と基本的には2つの制度問題です。  いま、私どもの介護の関係は福祉系高等学校からも受験できます。そして、基本は2 年以上の養成校です。2年以上の養成校というのは、2年間の養成校と短大の2年相当、 大学の2年相当というコースから入ってくるという制度。さらに実務経験ルートといっ て、3年以上の実務経験があれば、国家試験を受けることによって介護福祉士になれる といった多様な資格ルートがあるほか、無資格者の参入という問題があり、看護とは少 し違うのではないかと思います。  従来の介護というのは、基本的には家庭の主婦がやってもいいのだという考え方もあ りました。しかし、これは介護職の関係者の努力により、だんだん専門性が認められて きて、例えば今日では痴呆性の介護をどうするか、あるいは終末期の看取りの介護をど うするか。かつて終末期を病院で迎えていたのが、福祉施設の中に入っている。その福 祉施設の中で、最も活躍するような介護の分野も出てきています。  そういう状況の中で、実は位置づけがはっきりしていない。位置づけがはっきりして いないから、一方では大学の4年間の教育の中で、2年間相当介護をやる人、それで専門 学校で2年間だけやる、高校でもやる。そういうことが介護市場というもの、即ち供給 サイドに狭い道を作っているのではないか。直接河さんの質問には答えられないのです が、そのような感じがしております。バックデータできちんと説明しない限り感覚的な 答えにならざるを得ないことをお許しいただきたいと思います。 ○佐藤委員 2つ質問があります。1つは、女性が7、8割なので、特に卒業した後、結婚 ・出産ということで出産・育児支援が大事だと。具体的な中身ですけれども、法律上は 育児・介護休業法ができていて、勤務先の事業所に育児休業の規定がなくても、子ども が生まれれば1歳まで育児休業が取れるわけです。所得保障もいまは5割で、かつ社会保 険料免除がありますから、実質6割の所得保障がある。それより何か特別なものが、事 業主なり国として必要ということなのか、あるいはそういう制度はあるが使えないので、 使えるようにするということなのかということ。  もう1つは、卒業してから6割が転職している。この率が高いのでどうにかということ でした。この転職した6割の方がどこに行くかなのです。転職して同じ仕事に就く、つ まり行った先の事業所が合わないので、ほかの仕事に移るのか。これは適職探しですか ら、一概に悪いとは言えないわけですが、その状況がわかるかどうかです。  これに関連して6割が高いかなのですけれども、高卒+2年ですから短大相当でいうと、 短大の女性の卒業後3年の転職率はほぼ同じです。これは別の話ですけれども、ほかと 比較すれば決して高くない。ですから、あまり高い高いと言わないほうがいいのではな いかということです。6割の人たちがどこに行っているのかということが、もしわかれ ば教えてください。 ○諸江様 育児休業・育児支援の問題は副会長から話をしていただきました。いまの質 問についてはデータがありますのでお答えします。私どもは、毎年進路調査をやってい ます。卒業生がどこへ行っているか。それは毎年やっていて、ほぼ50%以上、平成19年 度では57%が社会福祉関係へ行っています。そういう調査をやって、それぞれどういう 施設に行っているかという調査を毎年やっています。  そのほかに、必ずしも毎年ではなくて5、6年に1回、4、5年に1回ということで悉皆的 な調査をやっているのが介護福祉士養成施設卒業生の就労実態調査です。第1回が平成2 年で、それから平成5年、平成9年、平成16年とやっています。平成9年3月の卒業生の調 査と、平成16年3月の調査の間に介護保険が入っていますから、なかなか面白く評価で きます。  いまの質問に直接答えますと、転職したらどういう所に行きたいですかという調査で す。1万2,000人ぐらいの卒業生の調査で、「介護の仕事に就きたい」が53.3%ですが、 必ずしもこれが転職したかということではないのです。転職したいと思うかという問い に対し、転職したいと思うと。その場合はどういう職場に就きたいかといった場合に、 6,365人が「ほかの介護の職場に行きたい」と。それは、対象の53.3%になります。も う1つは、介護以外の福祉あるいは医療ということもありますが、なんといっても介護 の中で回りたいというのが多いと思います。 ○佐藤委員 3年後に6割が転職している、というデータは何のデータなのですか。 ○諸江様 3年後に6割が転職している、というのは厚生労働省のデータではなかった かと思います。 ○佐藤委員 それは、介護だけがわかるのですか。 ○田中様 私は、6割とは言っていません。 ○諸江様 学校、個別は別です。 ○佐藤委員 すみません、それは勤続のほうですね。 ○田中様 最初のご質問で、育児支援のことについては皆わかっているのですが実際に は使えないのです。小規模というよりも零細の所ですから、辞めざるを得ないというの が現実です。 ○北浦委員 2つありまして、1つは賃金の関係で初任給はそんなに安くないという話で した。確かに資格を取っているわけですし、資格を取った方ですと、賃金体系の中で格 付もそんなに低くない所にするのだろうと思います。問題は、そこからの昇給ラインで、 そこのところでだいぶ低いという実感を持っているのだろうと思うのです。これは、先 ほどのヒアリングでも出ていましたが、準公務員的な給与体系を持っている所のほうに 流れるということで、そこの昇給ラインについては低いということの不満が定着に響い ているという見方ですか。 ○田中様 そうです。30歳以降なかなか伸びないということです。最近、男子の学生が 増えてきていて、20〜25%と約4分の1が学生の中に増えてきています。それを見るとな かなかしんどくて、将来不安だと。一旦勤めるのですけれども、その辺に来ると男子の 賃金の伸びが大変なので、転職せざるを得ないということなのです。そこのところは、 是非とも何らかの対策が欲しいと思います。 ○大橋座長 いまの点に関して、ケアマネジャーを太くしてほしいとおっしゃいました。 ケアマネジャーになれば、まず転職はしないと見ていいのですか。 ○田中様 別のケアマネという仕事がありますので、そういう良いポストにあれば、同 じ分野に行くと思うのです。職種が変わる、直接介護というかそういう所へ行くという ことなのです。 ○大橋座長 ここまで来れば、キャリアパスとしては成功ということになりますか。 ○田中様 いまの望める現実的な問題としてはです。 ○大橋座長 給料面で、家族は一応養えるのですか。 ○田中様 4人家族だったらかつかつではないですか。女性で共稼ぎで、言ったらミド ルエイジの人が経験を積んで資格を取るというのが大多数です。 ○駒村委員 充足率の話が最初にありまして、9割、7割、6割と、それで非常に危機感 があるのではないかというお話でした。河さんから、ほかの専門学校との比較という話 もありました。これは、地域別の充足率もみんな下がっているのか、かなり斑模様で下 がっているのか、その辺で何か要因分析みたいなものをされたことはありますか。 ○田中様 いま手元に持ってきておりませんけれども、協会の調査では、基本的に毎年 毎年充足率が悪化しているのは、全国的な傾向としては共通です。先ほど話が出ました ように、特定な時期にトヨタ自動車が非常に景気の良い時代に、名古屋では充足率が極 端に悪くなるという傾向はありましたが、基本的には全国的な流れという理解をしてい ただいてもいいのではないでしょうか。  都市部の学校でも、定員50に対して1桁という学校はそう珍しくないのです。数字を 見るとわかりますが、一方で学校はどんどん増えています。学生の志望が減っているの に、学校の定員はどんどん増えていっているということなのです。閉鎖する学校もあり ますけれども、それ以上に定員が増えていくということもあります。だから、一概に充 足率が低いというのは介護だけではなくて、そういうことも要因なのです。そういうこ とはカットして、2点だけ申し上げたのはそういうことなのです。 ○諸江様 付け加えさせていただきますが、賃金に対する意識については、平成16年3月 の卒業者の賃金・手当等の満足度調査で、満足が8.5%、まあまあ満足が35.3%、合わせ て43.8%です。介護保険ができる前の平成9年3月の卒業者では、満足が10.6%、まあま あ満足が53.9%、合わせて65%がまあまあ満足していた時代があったのですが、だんだ ん悪くなってきているという状況です。 ○堀田委員 途中で同窓会組織を持っているという話が出てきました。同窓会組織とし て、縦横のつながりの中でやりがいを伝える、不満を吐き出す、さらにノウハウを共有 するといったことをやっていける可能性があるのか、あるいはやっている所があるのか、 教えていただけますか。 ○田中様 すべての学校ではないと思いますが、最近は大学も学校も卒業生サービスを しなければいけないということでリカレントセミナーなどをやっています。単に集まっ て飲み食いするのではなくて、セミナーを開いたりしているのですが、まだまだそれは 初歩段階です。もっとこういうスキームができれば、卒業生の会報に、資格を持ってい るが、現在は離れている人が、もし職場に出たいという場合にはこういうセミナーがあ りますというのを載せれば、かなりの反響があると思います。 ○堀田委員 辞めてしまっている人ではなくて、いま働いている人が、ノウハウを共有 するとか、あるいはガス抜きをするという意味で、機能し得ているのですか。 ○田中様 都道府県単位で福祉人材センターがありまして、そこが研修関係を一手に引 き受けていますので、学校としては直接やっていることはないです。 ○堀田委員 学校としては、現職の人たちのノウハウの共有の場はないということです か。 ○田中様 ないです。 ○堀田委員 それは、今後もあまり考えていないのですか。 ○田中様 紺屋の白袴でやりたいと思います。 ○堀田委員 そういう機能を発揮できる場はなかなかないと思うので、同じ学校の卒業 生となれば横のつながりも、縦のつながりもすごく強いところなので、うまく活用でき ればいいのにと感じたのです。 ○田中様 なかなか言いにくいことなのですけれども、いまは人手不足なのです。うち の学校だけ集まるのならいいのですけれども、いろいろな学校が集まって共有しますと、 人の引き抜きが起こります。そこで話が進んでいるのではないか、ということで随分言 われます。なかなか生々しいところがありまして、一概にやればいいということではな いのです。 ○大橋座長 予定の時間も過ぎておりますので、引き続きフリートーキングという形で 議論を続けさせていただきます。養成施設協会から1人、エス・エム・エスから1人メイ ンテーブルにお移りください。 ○北村委員 これは養成施設協会にお聞きしたほうがいいと思うのですが、教育の内容 で介護福祉士のあり方というのは、ここの議論というか別の所の議論なのだと思います。 先ほどの専門性を高めていくという議論で専門介護福祉士、看護師みたいなスペシャリ スト的な世界というのがあるのですが、実態的に施設の中での介護福祉士の大きな役割 は、中核的職員として、いわゆるマネジメントというか、あるいはコーディネーターと いうか、そういう役割を担っていく存在への期待感は非常に大きいです。  そのときに、先ほどおっしゃっていたようにマネジメント能力の部分、あるいはその 前提としてのコミュニケーション能力、これは利用者もありますけれども職員間の問題 もある。そこまでの教育はなかなか担えないということで、それは全部施設のほうでや っていただかないといけないというようなお話だったと思いますし、そういうのが現状 だと思います。施設側からいくと、果たしてそれをやっていられるか、という逆の声も 出ていますので、この辺はどう考えたらいいのか。  それで、介護福祉士会のほうの再訓練とか再研修がありますが、ああいうベースの中 で連携を取ってやっていく道があるのかと思うのですが、その辺はどのような状況にな っているのか、あるいはお考えを聞かせてください。 ○田中様 再教育ということについては、ほとんどの学校が単発的に実施していて、な かなか組織的にやれていないのが現状です。我々は近畿ブロックにいて、施設に要望し ているのですが、それを進めていくような使用者団体と、施設団体と、我々のような学 校と、そういうプログラムを作れないかということをいま模索中です。  1つは、3年の実務ルートがあります。この実務ルートを3年して、今度は通信教育を受 けて、介護福祉士にチャレンジできるという制度ができ、平成25年から試験が始まりま す。これをきっかけに、我々は教育集団ですから施設側にそういうものを提供して、一 方で現場の人の教育をつなげないのか、ということをいま協会で考えています。これは、 必ずやらなければいけないということで、いま検討中です。 ○駒村委員 養成施設協会のほうの意見にあったと思いますし、両方共通してあったか と思うのですが、まず感想です。やりがい、誇りがあるのだということなのですが、だ からといって、これに対して制度がフリーライドしてしまうのはまずいだろうという感 想を持ちました。  ここから先は議論として養成施設協会のほうにお聞きします。前回のヒアリングのと きに老健のほうから、介護のアウトカムについての客観化、エビデンスベースドの話が あったかと思います。本日これと絡む話があったのは、介護福祉士の施設配置基準を少 し考えなければいけないのだと。これは、報酬で面倒を見るという方法もあるかもしれ ません。  それはそうなのだろうと思うのですが、一方でこれを正当化する根拠も必要なのだろ うと思います。これは、介護の業務がどうなっているのか、また専門性の話に絡むわけ です。これがどのように、介護のサービスを受けている方の構成というか、主観的な満 足度がいいのか、客観的なアウトカムみたいなものがあるのかどうなのか、というとこ ろは難しいところだと思うのです。その辺を明らかにしていただくと、わりと正当化し やすいのですが、いまのところ、そこのところはブラックボックスのような状態のまま だと、専門性の根拠も少し揺らいでしまうのか。  この辺は、前回老健の方から、エビデンスベースドの動きもあるのだというお話もあ ったので、事務局に資料を集めてもらってその辺を少し見せていただきたいのと、いま の点について養成施設協会のほうはどのように考えるかを教えてもらいたいと思います。 ○田中様 専門性の検証と言われると、結論としてはできませんということです。ただ、 確実にこの20年間の介護教育、あるいは介護福祉学ということについて、協会は一定の 役割をトップランナーとして果たしてきたということは認識しております。  いま先生がおっしゃったように、配置基準を決めるならば専門性は何だということな のですけれども、これは宿題としていただいておきます。そこまで厳密におっしゃらな くても、保母もあるのだから、保育士もあるのだから、介護福祉士も2年間やって20年 の蓄積があるのだから、そういうことも考えていいのではないか。方向性だけは是非ご 賛同いただければと思います。 ○諸江様 2点お話させていただきます。北浦先生のご質問の中でコミュニケーション 能力の話が出ました。今回の社会福祉士及び介護福祉士法の制度改正の中で新しいカリ キュラムを作っています。従来の学科別の仕組みから大括りにして、1つは人間と社会、 それから介護、そして心と身体の仕組みという大括りにして、その教え方について基本 方針は示されていますが、各養成校に任されます。それはなぜかというと、今度は国家 試験があるのだからやってくださいということになります。評価は国家試験でやります。 いままで国家試験がなかったから、学科でこれをやれ、これを何時間やれと決まってい たわけです。  私どもは、1年間かけて6回の全体会議、16回の個別勉強会、4回の編集会議をほとん ど土日にやりました。新しい3分野に対応する教育のあり方。どうしてかというと、学 校がシラバスを作る前提として、どのような目的、どのようなところに留意点があって、 どのような教育方法をすれば効果的に新しいカリキュラムに対応できるかという目的で、 明日の総会で配るようになっています。  その中で、いまのお話のコミュニケーション、いままで介護福祉士に対する批判、例 えばコミュニケーションだけではなくて物を書く能力に欠けているのではないかという 批判。看護師のように記録をしっかり付ける能力は明らかに劣るわけですので、そうい うところが欠けているとか、あるいはコミュニケーション能力が欠けているとか、そう いう批判を踏まえて新しいカリキュラムを厚生労働省のほうで作ったわけです。それを 踏まえて、コミュニケーションは60時間だったと思いますけれども、特別にそういうも のを教育するといったことで対応に努力しているのが1つです。  もう1つは配置基準に絡んで専門性の問題です。私どもでは、これまでも専門介護福 祉士認定制度の研究会みたいなものをやっております。厚生労働省のほうでも、専門介 護福祉士制度のあり方みたいな作業部会、あるいは委員会を作られておりますが、座長 から、いまの介護福祉士の現状は20年前の医者や看護婦の世界と同じではないか、とい った議論も出てくることもあってなかなか難しいのです。  いずれにしろ、そういう専門性を、専門介護福祉士認定制度を検討する、あるいは厚 生労働省の研究会に合わせて、私どももそういうパイロットスタディをやるなり、ある いは検討会で研究することによって、専門性のより明確な形が出てくるのではないかと いうのを我々は期待しております。 ○堀田委員 養成施設協会の話の最初のほうに、勤続3年未満が6割だけれども、ある条 件が整えば7年、10年という方がいるということでした。長く勤めている方の特徴を把 握していらっしゃいますか。 ○田中様 これは、ちゃんと調査をした事柄ではなくて、私が聞いた事柄からの判断で すが、個人的な能力の問題も大きいと思います。大体数個の人間像があると思いますが それを抜きにして、子どもを産んで育児休業を取り、その後職場復帰したときに、育児 があると夜勤はなかなかできないです。そうすると、大きい所はデイサービスに移って いく、夜勤のない所へ移っていく、そういう所は比較的長く勤められます。 ○堀田委員 同じ法人の中で、違うサービスにうつるということですね。 ○田中様 そうです。あるいは、そういう所を見つけていく。できるだけ1つの法人の 中で、夜勤のない所への配置転換とか、そういうことができる所は比較的長く勤めてい るケースが多く見受けられます。 ○堀田委員 養成施設協会のほうで、初任給は比較的高いがなかなか上がっていかない ということ、エス・エム・エスのほうでも、キャリアパスをイメージして給料が高まる 展望がないという課題のご指摘がありました。わからなかったのが、カイゴジョブのほ うで全体として賃金は低いので定性的なところで職場を選んでいますというお話があり、 しかし賃金が上がっていかないことが壁になっているということでした。やはり賃金が 問題なのか、定性的なところが問題なのか、感触でいいのですけれども、賃金が上がっ ていかないことが決定的に問題になっているのか、それとも定性的な情報が出せない、 あるいは出せるような雇用管理等の取り組みを行っていないというところが問題なのか、 どうお考えでしょうか。 ○田中様 これは個別性があると思うのです。先ほど言いましたように、若い新卒の学 生が卒業して勤める。結婚した場合には、共稼ぎで行くわけです。そのときに、育児・ 出産支援体制、あるいは配置転換ということがあれば、多少の伸びがなくても続けられ る要素になります。ところが男子の場合は、決定的に生活できないということですので、 そこで考える。その辺は、バッサリとどっちだと言われるとなかなか答えにくいのです が、それを補充するような、単に賃金だけでないような、いろいろな支えがあれば定着 すると思います。 ○大橋座長 いまの問題についてエス・エム・エスのほうにもお聞きします。この分野 で働く方が、在宅よりもむしろ福祉のほうで働きたいということを希望するということ は、既にこれは構造化されていて、在宅で働いている方も、福祉のほうに需要があれば、 そちらのほうへ移っていくという構造ができているわけです。そうすると、在宅のほう がかなり転職率は高いのですか。 ○諸藤様 私ども、いま現状の求人をしていただいている顧客のベースは、大手の民間 介護事業者が比率としては高くて、そこでいくと離職率は25〜30%ぐらいで、実態はも う少し高いのではないかという感覚があります。  賃金の話で、私のほうは丸めた話になっていたかと思うのですが、当初から安いとい うのは民間の在宅で、年功給もなくて、当初からキャリアパスが描けないという部分が あります。社会福祉法人に関しては、若干の年功給とか、準公務員的な賃金体系が残っ ている。ここにも歴然たる格差があって、ある程度ちゃんとした教育機関から、ちゃん と就職をして、社会福祉法人に入っていくというパターンと、無資格であったり、ホー ムヘルパー2 級とか、専門学校を出て就職先がないから行く民間、というのにそもそも落差があるの かと考えております。  結果として、その民間の部分はかなり離職率が高いのが現状で、会社によっては半分 以上とか、90%ぐらいが1年間で回転しているような会社もあるのかと考えております。 ○大橋座長 社会福祉法人の中でも一種の構造化があって、皆さんデイサービスとか夜 勤のない所へ移っていくというものがあるから、内部の離転職も結構複雑な状況になっ ていますね。 ○田中様 はい。 ○佐藤委員 賃金が低いと、特に男性が結婚してという話がありましたが、前回もそう いうヒアリングがありました。そのときに低いというのは、結婚してというよりは、妻 が専業主婦になると食べていけないということなのか、夫婦が働いても食べていけない ぐらい低いということなのか。どうも伺っていると、妻が専業主婦だととても食べてい けないというイメージで前回は言われていたのですが、その辺はいかがですか。共働き でも食べていけないぐらいの賃金で、結婚もできないということなのか、その辺を教え てください。 ○田中様 基本的に共働きでしょう。共働きでも、男がやっていくには大変しんどいと いうことだろうと思います。いまの世の中は、男が全部養うというのはありません。 ○大橋座長 ケアマネジャーでも、年収400〜500万円ぐらいという話を聞いたことがあ りますが、大体そんなものですか。これでは、単独では家族を養えないですね。 ○田中様 そうですね。 ○諸藤様 民間ですと、ケアマネジャーでも350万円ぐらいです。 ○大橋座長 キャリアパスとしてはそう太くないですね。 ○田中様 はい。 ○大橋座長 本日は、貴重なご意見をどうもありがとうございました。この研究会の今 後の日程について事務局から説明をお願いいたします。 ○佐藤介護労働対策室長補佐 次回の研究会は5月20日(火)10時から、厚生労働省14 階の職業安定局第1会議室で開催することとしております。本日に引き続き、関係団体 等からのヒアリングを予定しておりますので、本日同様ご参集いただきますよう、よ ろしくお願い申し上げます。 ○大橋座長 それでは、これをもちまして第3回研究会を終了させていただきます。ど うもお忙しいところをありがとうございました。               連絡先                職業安定局 雇用政策課 介護労働対策室係                Tel:03−5253−1111(内線5785)                Fax:03−3502−2278