第2章 ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果

1.初動体制並びに家族への脳死判定等の説明および承諾

平成18年6月6日22:30頃、本人(50代の女性)が飲食店で飲酒中に意識消失したため、家族が救急車を要請。救急隊到着時、意識レベルJCS100、瞳孔両側3mmであった。23:00、当該施設に搬送時には、意識レベルJCS200で瞳孔両側1mmであった。23:37、頭部CT撮影で、脳幹出血と診断された。

6月7日、両側瞳孔が散大し、自発呼吸は消失し、深昏睡状態となった。主治医が家族に対し病状の説明を行い、家族の同意の下、保存的療法を行う方針となった。

6月13日、家族から意思表示カードが提示された。

6月14日、病院がネットワーク東日本支部に問い合わせの連絡を行った。都道府県コーディネーター1名が家族に会い、脳死下臓器提供、および心臓が停止した死後の臓器提供に関する一般的な情報提供を行った。

6月15日、家族が脳死下臓器提供を希望されたため、臨床的脳死診断を実施したが、毛様体脊髄反射がみられたため、診断を中止した。

6月25日、毛様体脊髄反射の消失が確認された。

6月26日19:07に、臨床的に脳死と診断された。20:07に、家族がコーディネーターの話を聞くことを希望されたため、病院はネットワーク東日本支部に連絡した。20:40に、ネットワークのコーディネーター2名と都道府県コーディネーター1名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価(ドナーになることができるかどうかの観点からコーディネーターが行うドナーの入院後の検査結果等に基づく評価)等を行った。

6月27日7:04に、都道府県コーディネーター1名とネットワークのコーディネーター1名が家族(患者の夫、長女夫妻、次女)に約20分間面談を行い、脳死判定および臓器提供の手順と内容、家族に求められる手続等につき文書を用いて説明し、家族構成等を確認した。

家族は、以前より臓器提供について話し合っており、また、日本で移植を受けることができず、海外に行く小さな子どもの姿を見て、本人が臓器提供を望んでいたことを知っており、本人の意思を叶えてやりたいと、臓器提供を承諾された。  

同日7:28、患者の夫が家族を代表して脳死判定承諾書、および臓器摘出承諾書に署名捺印された。コーディネーターは承諾が家族の総意であることを確認し、両文書を受理した。

【評価】

○ コーディネーターは、家族への臓器提供に関する説明依頼を病院から受けた後、院内体制等の確認や一次評価等を適切に行ったと判断できる。

○ 家族への説明等については比較的短時間であるが、家族が以前より臓器提供について話し合っており、また、予め家族に対し一般的な情報提供を行う機会もあったことから、短時間で終えることができたものと考えられる。コーディネーターは、脳死判定及び臓器提供の手順と内容、家族に求められる手続等を記載した文書を手渡してその内容を十分に説明したと判断できる。

2.ドナーの医学的検査およびレシピエントの選択等

6月27日8:57に、心臓、肺、肝臓及び小腸のレシピエント候補者の選定を開始した。膵臓及び腎臓についてはHLAの検査後、同日14:41にレシピエント候補者の選定を開始した。

法的脳死判定が終了した後、同日22:04に心臓、肺、肝臓、膵臓及び腎臓、のレシピエント候補者の意思確認を開始した。

心臓については、第1候補者、第2候補者の移植実施施設側が心臓の移植を受諾し、第1候補者に心臓の移植が実施された。

肺については、第1候補者から第4候補者まで意思確認を行ったが、ドナーの医学的理由により、すべての移植実施施設側が両肺又は片肺の移植を辞退したため、ドナーの医学的理由により移植の適応なしと判断し、両肺の移植が見送られることとなった。

肝臓については、第1候補者は、連絡時既に死去していた。第2候補者の移植実施施設側が肝臓の移植を受諾したが、最終的に、ドナーの医学的理由により移植の適応なしと判断し、肝臓の移植が見送られることとなった。

膵臓については、第1候補者は、候補者の容態から判断して、移植実施施設側が膵臓・腎臓の同時移植を辞退した。第2候補者の移植実施施設側が膵臓・腎臓の同時移植を受諾し、移植が実施された。

右腎臓については、第1候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を受諾し、移植が実施された。

小腸については、適合患者不在のため、移植が見送られた。

また、感染症検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認された。

【評価】

○ ドナーの提供臓器や全身状態の医学的検査等及びレシピエントの選択手続は適正に行われたと評価できる。

3.脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等

6月27日20:47に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明した。その後、コーディネーターは、情報公開の内容等について説明し、家族の同意を得た。

また、コーディネーターから家族に対して、両肺と肝臓については医学的理由にて、小腸については適合患者不在のため移植が見送られることとなった旨を報告した。

【評価】

○ 法的脳死判定終了後の家族への説明等は妥当であったと評価できる。

4.臓器の搬送

6月27日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料2のとおり搬送が行われた。

【評価】

○ 臓器の搬送は適正に行われたと評価できる。

5.臓器摘出後の家族への支援

臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告し、病院関係者等とともにご遺体をお見送りした。

7月1日(臓器提供の2日後)、コーディネーター2名が通夜に参列した。コーディネーターが家族へ、レシピエント全員の経過が順調であることを報告したところ、家族は、本人も大変喜んでいると思うと話された。

7月31日、コーディネーターが家族へ電話し、レシピエントの経過報告を行った。

8月15日、コーディネーター2名がご自宅を訪問し、厚生労働大臣からの感謝状を持参した。お盆で親戚が大勢集まっておられ、レシピエントの経過が良いことをみな喜んでおられた。

10月2日、コーディネーターが家族へ電話し、心臓、膵腎同時、腎臓移植を受けられたレシピエントがそれぞれ退院されたことを報告した。

10月5日、コーディネーターが家族へ、心臓移植を受けられたレシピエントとその家族からのサンクスレターを、お花とともに送付した。

12月22日、コーディネーターが家族へ手紙を送り、レシピエントの移植後の経過を報告した。

12月26日、コーディネーターが家族へ電話し、レシピエントの移植後の経過を報告した。家族は、レシピエントが無事にお正月を迎えられることを喜ばれた。

コーディネーターは、上記の連絡、報告以外に、その後もレシピエントの近況報告をするなど、適宜報告や対応を行っている。

【評価】

○ コーディネーターによるご遺体のお見送り、家族への報告やサンクスレターの送付等は適切に行われたと認められる。


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