平成18年６月６日、本人（40代の女性）が頭痛を認め、近くの病院で受診したが、ＣＴ撮影で異常を認めず帰宅した。

６月７日朝、出勤時に激しい頭痛と嘔吐があり、近くの病院へ救急車で搬送された。ＣＴ撮影で、くも膜下出血と診断され、10：43、当該施設に搬送された。意識レベルはJCS100で、脳血管造影で右内頸動脈後交通動脈瘤破裂、および左中大脳動脈瘤が認められ、開頭クリッピング術が施行された。

６月14日、自発呼吸が消失し、主治医が家族に対し病状の説明を行ったところ、14:00に、家族から意思表示カードが提示された。

６月15日11:00に、臨床的に脳死と診断された。14：30に、家族がコーディネーターの話を聞くことを希望されたため、病院はネットワーク東日本支部に連絡した。17：00、ネットワークのコーディネーター２名と都道府県コーディネーター１名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価（ドナーになることができるかどうかの観点からコーディネーターが行うドナーの入院後の検査結果等に基づく評価）等を行った。17：55、ネットワークのコーディネーター１名と都道府県コーディネーター１名が家族（患者の夫、母、長男、二男、三男）に約１時間面談を行い、脳死判定および臓器提供の手順と内容、家族に求められる手続等について文書を用いて説明し、家族構成等を確認した。

家族は、本人と一緒に意思表示カードを記入しており、本人の意思を尊重したいとの意向であった。他の家族も、本人の一部がどこかで生き続けるならば提供したい、本人の好きなようにさせてあげたいと話され、臓器提供を承諾された。

同日18：27、患者の夫が家族を代表して脳死判定承諾書、および臓器摘出承諾書に署名捺印された。コーディネーターは承諾が家族の総意であることを確認し、両文書を受理した。

６月15日21：35に、心臓、肺、肝臓及び小腸のレシピエント候補者の選定を開始した。膵臓及び腎臓については、ＨＬＡの検査後、翌16日の２：31にレシピエント候補者の選定を開始した。

法的脳死判定が終了した後、同日７：25に心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓及び小腸のレシピエント候補者の意思確認を開始した。

心臓については、第１候補者、第２候補者、第３候補者の移植実施施設側が心臓の移植を受諾し、第1候補者に心臓の移植が実施された。

肺については、第１候補者、第２候補者の移植実施施設側が両肺の移植を受諾したが、最終的に、ドナーの医学的理由により移植の適応なしと判断し、両肺の移植が見送られることとなった。

肝臓については、第１候補者は、既に生体肝移植を実施しており、移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。第２候補者は、候補者の容態およびドナーの医学的理由により、移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。第３候補者は、ドナーの医学的理由により、移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。最終的に、ドナーの医学的理由により移植の適応なしと判断し、肝臓の移植が見送られることとなった。

膵臓については、第１候補者は、本人に移植の意思がなく移植実施施設側が膵臓・腎臓の同時移植を辞退。第２候補者は、候補者の容態から判断して、移植実施施設側が膵臓・腎臓の同時移植を辞退。第３候補者、第４候補者の移植実施施設側が膵臓・腎臓の同時移植を受諾し、第３候補者に膵臓・腎臓の同時移植が実施された。

右腎臓については、第１候補者、第２候補者、第３候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を受諾し、第１候補者に腎臓の移植が実施された。

小腸については、第１候補者の移植実施施設側が小腸の移植を受諾したが、最終的に、ドナーの医学的理由により移植の適応なしと判断し、小腸の移植が見送られることとなった。

また、感染症検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認された。

６月16日７：02に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明した。その後、コーディネーターは、情報公開の内容等について説明し、家族の同意を得た。

また、コーディネーターから家族に対して、両肺、肝臓および小腸については、医学的理由で移植が見送られることとなった旨を報告した。

臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告し、病院関係者等とともにご遺体をお見送りした。

６月17日（臓器提供の翌日）、コーディネーターが家族へ電話し、レシピエントの移植手術がすべて終了したことを報告した。家族は、ありがたいの一言ですと手術の成功を喜ばれた。

７月19日、コーディネーターがご自宅を訪問し、厚生労働大臣からの感謝状を手渡した。

８月25日、コーディネーターが家族へ電話し、心臓移植を受けられたレシピエントが退院したことを報告した。家族は、良かったと話された。

９月29日、コーディネーターが家族へ、心臓移植を受けられたレシピエントからのサンクスレターを持参した。家族は、子どもたちもレシピエントの経過を聞いて喜んでいると話された。

10月23日、コーディネーターが家族へ、膵腎同時移植を受けられたレシピエントからのサンクスレターを送付した。

12月20日、コーディネーターが家族へ手紙を送り、レシピエントの移植6ヵ月後の経過を報告した。

コーディネーターは、上記の連絡、報告以外に、その後もレシピエントの近況報告をするなど、適宜報告や対応を行っている。