08/04/30 第4回救急医療の今後のあり方に関する検討会議事録      第4回救急医療の今後のあり方に関する検討会          日時 平成20年4月30日(水)          14:00〜          場所 経済産業省別館1014号室 ○田邉専門官 定刻になりましたので、ただいまから「第4回救急医療の今後のあり方 に関する検討会」を開催いたします。メンバーの皆様におかれましては、ご多忙中のと ころご出席いただきまして、誠にありがとうございます。  会議を始めるにあたり、事務局から資料の確認をさせていただきます。お手元に「救 命救急センターの新しい充実段階評価(案)」について、もう1つ消防庁調査、「救急 搬送における医療機関の受入状況等実態調査の結果について」の2点。左側にナンバー が振ってあります資料1から4の4点。それに加えまして参考人のお名前が書いてある 資料、○○先生提出資料という形で用意してある資料5点。合わせて11点を議事次第と は別にご用意しておりますので、ご確認ください。資料の欠落等がございましたら、事 務局にお申し出いただければと思います。  本日は参考人として、大阪医療センターの定光先生、東京都日野市の日野田中病院の 遠藤様、大阪府の加納総合病院から加納先生、福井医科大学から寺澤先生、都立墨東病 院からは濱邊先生にお越しいただいております。濱邊先生は、遅れるという連絡をいた だいております。皆様どうかよろしくお願いします。  なお、これまでご参加いただいておりました茨城県保健福祉部次長の泉委員におかれ ましては、泉委員の異動に伴い、後任の染谷茨城県保健福祉部次長に代わってご参加い ただくことになりましたので、よろしくお願いします。  まずはじめに、本日は、厚生労働省医政局審議官から一言ご挨拶を申し上げます。 ○審議官 医政局の審議官の木倉と申します。どうぞよろしくお願いします。外口医政 局長が今日は出席をさせていただきたいと思っておりましたが、急遽本部のほうに呼ば れまして、出席できなくて誠に申し訳ございません。代わりまして、一言ご挨拶申し上 げます。  ご案内のとおり救急医療の問題につきましては、大変国民の皆様の関心も大きくなっ ておりまして、福田総理もこの充実につきまして、重要な政策課題の1つということを 位置づけまして、対策の充実に取り組んでいるところです。  また国会の議論におきましても、多々検討の場が設けられておりまして、例えば自民 党のほうでも社会保障制度調査会の中で「救急医療と搬送に関するプロジェクトチー ム」、あるいはER議連と言われておりますが、「日本のあるべき緊急医療体制を考え る議員の会」さらには「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」等々、救急 医療についての幅広い、活発なご議論をいただいております。  本検討会につきましては、もともとは救命救急センターの新しい評価の仕方というこ ととともに、今後の救命救急センター、あるいは高度救命救急センターの整備のあり方 について、焦点を絞ってのご議論をいただきたいということで発足をさせていただきま した。このような状況の中で、前回すでにお願いを申し上げたことですが、救命救急セ ンターに限定せず、もう少し幅広いご議論をいただければということで、お願い申し上 げた次第です。  新年度に入ってということで、医政局長や私どももできる限り出席させていただきま して、議論に参画をさせていただきたいと思っております。どうぞ今後ともより活発な ご議論を賜りますようにお願いしまして、挨拶とさせていただきます。どうぞよろしく お願いします。 ○田邉専門官 引き続きまして、事務局と総務省消防庁より1点ずつご報告をさせてい ただきます。まず事務局からですが、おかげさまで前回第3回までの本検討会でご議論 をいただきました「救命救急センターの新しい充実度評価案」について、皆様の議論を 踏まえて修正を加えた後、島崎座長にご了解をいただいた上、横紙の資料ですが、こう いった形で3月31日付で都道府県宛に周知をしましたので、まずこれをご報告します。  引き続きまして、3月11日に取りまとめられた「救急搬送の受入実態調査」について、 総務省消防庁よりご報告させていただきます。 ○総務省消防庁(溝口) 総務省消防庁救急企画室の溝口です。本日はお時間をいただ きまして、ありがとうございます。4月より前任の荒木に代わりまして、救急専門官を 拝命しております。座って説明させていただきます。  お手元の資料をご覧ください。資料としては消防庁調査という形で、「救急搬送にお ける医療機関の受入状況等実態調査の結果について」という少し部厚くなった資料をお 手元にご準備ください。本調査は、平成19年中に行われました救急搬送について、調査 対象事案として上げている重症以上傷病者搬送事案、産科・周産期傷病者搬送事案、小 児傷病者搬送事案、救命救急センター等搬送事案の4点を、対象事案として行った調査 です。  3頁は、平成19年における我々の搬送人員が大体490万人です。今回の調査対象とし て上がってきたものが、3頁のポイントのIになっています。全部の重複を除きますと 95万人ということですので、大体2割程度のものを把握していると認識しています。今 回は報告という形で時間が限られているので、3点報告をさせていただきたいと思いま す。1点目は全体の概要、2点目は受入困難事例が回数ごとということになると、都市ご とに差があったということ。3点目は二次医療機関、そして三次の医療機関が、少し差 の傾向が見られたという3点についてご報告します。  1点目、全体のおおよその概要として、7頁にある表2と8頁の表3をご覧ください。 実はこういう限定をした調査においても、大体1回から2、3回のうちに決まっている数 が非常に多いという状況があります。8頁の表3も同様ですが、30分未満に決まってい るものが9割以上を占める形になっています。ただ、そうではないこぼれている事案が ある。そこについて数としてカウントしていけば非常に大きな数になるということが、 社会的にも非常に重要視されている部分だと認識しているところです。  2つ目のポイントですが、14頁をご覧ください。14頁は「医療機関に受入の照会を行 った回数ごとの件数」になります。いわゆる新聞報道等では「たらい回し」といった言 葉が使われて、頻回に照会を行っても決まらないという事案です。実は医療資源のある、 選択肢のある都道府県のほうが、そういう照会を行う回数、これをマスコミの言葉でい うとたらい回しになるのだと思いますが、そういう事案というのは、むしろ都市部のほ うでこそ問題が出てきた。先生にお聞きしますと、それは田舎に行けば1つしかないと いう話になれば、選定困難も何もないという話は言葉としては伺っていたところもあっ たわけですが、非常にきれいに医療資源がある所こそ、こういう受入困難というか照会 が多い。困難と呼ぶよりも、この調査そのものの形で言うならば、照会を行った回数が 多い傾向が見られたものと思います。  3点目は、いちばん後ろの45頁です。こちらは7団体に限ってはさらに詳細なデータ が上がってきたということで、我々で集計させていただきまして、補足的、追加的にこ れは付けまして、改めてご報告させていただいた内容部分になります。全国ベースでは ないものの、45頁のいちばん下に7団体合計ということで、二次以下、三次、合計とな っています。ちょっと見づらくて申し訳ありませんが、上のほうの「照会するも受入に 至らなかった理由とその件数」ということで出ていますが、二次以下の3つ目、「処置 困難」という所が39%で上がっていると。  三次のほうをご覧いただきますと、いちばん多いのが「ベッド満床」で37.8。そして 2番目が「手術中・患者対応中」というのが上がっている。即ちこれだけをもってすべ てを言えるということではありませんが、三次医療機関というのは、診たいが診れない、 逼迫している状況でベッド満床、あるいは対応中でどうしようもないという状況があり、 二次医療機関では、どちらかというと処置困難が受入に至らなかった理由ということに なるのかなという傾向が、漠とではありますが、捉えることができたのではないかなと いうことです。以上です。 ○田邉専門官 ありがとうございました。続いて、本検討会の当面のスケジュールにつ いて、事務局指導課長の佐藤よりご説明します。 ○指導課長(佐藤) 医政局指導課長の佐藤です。改めましてご説明いたします。当面 のスケジュールですが、来年度予算の議論が省内で動き始めるということもありまして、 短期的には6月の上旬、あるいは6月下旬ぐらいを目標に、一定の中間報告的なものを 出すことができればと思っているところです。もちろん冒頭に木倉審議官からもお話が ありましたように、救急医療というものが、ある意味で政策的課題になって重要視され ているということですから、その時点においてすべてが解決して、ご報告の形で取りま とめていただけるかどうかというのはまた別の問題ですが、事務局だけの考えで申しま すと、6月中旬あるいは下旬の段階でまとまらないものがあれば、それはそれとして、 この会議で引き続きご議論をいただければいいのかなとは思っています。繰返しになり ますが、来年度予算なり何なりということを考えますと、いずれにしても6月中に、何 らかの形で中間的な報告をお願いできるかなと思っています。  その内容ですが、これも木倉審議官のお話にありましたように、当初は救命救急セン ター、あるいは高度救命救急センターと言われる三次医療機関の適正配置とでも申しま しょうか、その話と、そうした医療機関の評価の話、この2つができればこの検討会の ミッションというか使命は終わりかなと思っていたのですが、昨今の事情等々を勘案し ますと、多少とも二次救急、場合によっては初期救急の話にまで少し踏み込んでご議論 をいただいておかないと、ちょっと十分ではないのかもしれません。  また救命救急センターや二次救急に関連する話として、前回や前々回も話がありまし たが、専門病院の話もありましたし、例えば小児だけに限定した小児救急というものが あり得るのかどうなのかというような話がありましたので、こうした話も含めて考えま すと、少し議論の内容は広がっていくという感じだろうと思います。現時点で私どもか らお伝えすることは以上です。どうかよろしくお願いします。 ○田邉専門官 引き続きまして、前回の議事概要について簡単に説明します。資料1を ご覧ください。これは前回の3月7日に行われた、第3回「救急医療の今後のあり方に 関する検討会」の議事録を簡単にまとめたものです。内容としては、事務局より救急医 療の確保についての新たな施策ということで、平成20年4月から新たに行われる施策に ついて、まずご報告をいたしました。  引き続きまして、救命救急センターの充実度評価の見直しについてということで、委 員の皆様から主にこの3点についてご意見をいただきましたので、このご意見を踏まえ て座長とご相談した上で、先ほどご紹介したとおり3月31日に新しい充実度評価(案) を各都道府県に通知させていただきました。  3つ目として、今後の救命救急センターの整備についてということで、ご議論をいた だきました。その中では、今後の整備についてということで、ここに上げた3点等のご 発言をいただいたところです。また初期・二次・三次の医療体制についてということで、 こういったご発言をいただきました。  そのほかに、第二次救急医療機関についてということで、ここに書いてあるようなこ とのご議論をいただきました。また専門病院について、こういった3点を上げさせてい ただきましたが、このような議論をしていただきました。  また、改めまして前回の議事録を委員の皆様に配付させていただきますので、ご確認 の上、5月中旬ごろまでに訂正等ご意見があれば、事務局にお伝えいただきますようお 願いします。それでは、島崎座長お願いします。 ○座長(島崎) では、ただいまから議事に入りたいと思います。先ほど木倉審議官、 あるいは佐藤指導課長からもお話がありましたように、救命救急センターに焦点を当て て、この検討会は始まったわけですが、二次救急医療機関の問題、あるいは現場の医師 がかなり疲弊している問題、その他いろいろ出ましたので、今日はもう少し幅広く救急 医療全般の議論をしたいと思います。ただ、すべてということになると非常に幅が広く なりますので、事務局にこれまでの検討会の中で、いくつか委員の先生方が上げてくだ さった課題の中で、特に国民の方も一般の方も不安に思っている救急車の受入医療機関 がなかなか決まらないというところがあります。この問題を少しでも良くするために、 取り上げるべき課題について整理してほしいということを申し上げまして、事務局から その点を少し説明をお願いできますでしょうか。よろしくお願いします。 ○田邉専門官 資料2を使って説明します。これは「検討会における議題について(メ モ)」といったものです。これは現行の救急医療体制について、これまで検討会の中で 委員の皆様からご指摘いただいたものを中心に、真ん中の点線で囲まれた中に課題問題 点を列挙した上で、これまでにそれらの課題に関連して議論をいただいたもの、あるい は今後議論をしていただきたいものを座長にお諮りした上で、左右の角が取れた四角に 示させていただきました。  これは、現行の救急医療体制の中で、三次救急医療機関については先ほどご紹介しま したとおり、新しい評価方法についての議論は終えることができまして、救命救急セン ターの整備については、3回にわたりこれまで議論をしていただいたところでございま す。  ただ、出口の問題が三次救急医療機関のところに書いてあります。おそらく二次救急 医療機関にもある問題と思いますが、地域の最後の砦と言われる救命救急センターが患 者を受け入れることができない。その理由の1つに、先ほどの総務省消防庁からの報告 でもご指摘がありましたとおり、ベッドの満床の問題があると。ベッドの満床の原因は 何かというと、救命救急センターに搬送された患者が急性期を乗り越えたものの、なか なか一般病棟や別の病院に移動することができないために、救急医療機関が新たな救急 患者を受け入れることができなくなる、いわゆる出口の問題が1つあるということです。 この実態の把握とその解決のためにどうすればいいのか、そういったことを議論してい ただければと思っています。  また二次救急医療機関についても、これは前回救命救急センターの整備のあり方の中 で少し議論が出ましたが、改めてそのあり方について議論をいただきたい。また、既存 の初期・二次・三次といった階層的な整備を行っているという現状がありますが、ER 型という救急医療機関、あるいは救急医療体制について取り上げておくべきではないか ということで、この3つを座長にお諮りした上で上げさせていただいたところです。 ○座長(島崎) たらい回しと言うのですか、先ほど総務省からありました照会しても 受け入れてもらえなかった、というところのほうをどう解決するかという視点からとい うことでしょうが、このような形でやっていくということです。今日はこれを順に有識 者の方からヒアリングをした上で、皆様とご議論を重ねたいと思います。まず資料2の 右の真ん中のブルーの「出口の問題」について、皆様方はよくお分かりだと思いますが、 事務局からその概要をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○田邉専門官 資料3を使って「いわゆる『出口の問題』について」ということで、ご 説明します。資料3は、救命救急センターに搬送される患者さんの流れを示したもので す。救命救急センターに救急車で搬送された患者さんは、救命救急センターにあるICU、 SCUといった集中治療室のベッドで治療を受けますが、一部の方はすぐ良くなられて(6) の自宅退院、あるいは在宅医療に行かれる。中には救命できずに(5)のように流れる方、 あるいはすぐには自宅に帰れないということで、同じ病院の一般病床に転床される方、 これは(2)です。あるいは(3)のように、救命救急センターのある病院とは違う地域の別の 病院に移られた上で、引き続いて集中治療室を出てからの加療を行うといった、それぞ れいろいろなルートがあるわけです。  救命救急センターが救急車で搬送される患者さんを新たに受け入れるには、救命救急 センターに空いているベッドがないといけないと。大体いま全国の救命救急センターを 平均すると30床ほど病床があるわけですが、新たに受け入れるには、その30床のうち の1つなり2つなりベッドが空いていないと受け入れることはできないと。そのために は、つまり救命救急センターに入院している方が常時(2)や(3)、(5)や(6)に流れないと、新 たに救命救急センターが患者さんを受け入れることはできないと。その(1)から(2)、ある いは(1)から(3)の流れが滞っている、なかなか進まないというご指摘をいただいていると ころです。 ○座長 ということで、今日はお二人の方々に来ていただいております。お一人目は、 資料3の(1)になります国立病院機構大阪医療センターの救命センター長である定光先生 のほうから、ベッドが満床になるのはなぜか、受け入れた患者さんがなぜ救命救急セン ターの中で滞ってしまうのか、というようなお話をお聞きしたいと思います。  もうお一人は、直接そういう形で自宅に退院できない患者さんを救命救急センターか ら受け入れている立場から、受入がなかなか難しい状況をお聞きするために、日野市に あります医療法人社団康明会の事務局長の遠藤様にお越しいただきました。順にお話を 伺いたいと思います。あと質疑応答の時間も取りたいと思いますので、できるだけ簡潔 に定光先生、遠藤様にお話いただければと思います。大体8分以内ぐらいで、よろしく お願いします。では、定光先生からよろしくお願いします。 ○定光参考人 大阪医療センターの定光と申します。今日は発表の機会を与えていただ きましてありがとうございます。私に言われた内容は救命センターの出口の問題ですが、 その前に三次救急医療施設としての救命センターの不応需の件数増加と、その出口の問 題がどうかかわるかということについて、お話を最終的にはしたいと思います。まず施 設としては、お手元の資料に準じてスライドで流していきたいと思います。 ☆スライド 私どもは30床の救命救急センターで、年間1,083例の重症患者を受け入れ ている救急医療機関です。併設型で、病院全体は698床の総合病院であります。救命セ ンターに入る傷病者として代表的な疾患が外傷、それから重症の血管障害、あるいは心 肺停止例、心疾患、さらに最近特徴的なのが、急性中毒の増加になります。 ☆スライド こういう背景を持っている我々の施設で、ここ数年間患者を受入できない、 いわゆる不応需の経緯、経過を月ごとに2005年からそこに追ってみました。すでに2005 年からちょっとこれはいけないなと思って、データを取っていたのです。その変化を見 てみますと、2006年12月から急にポンと上がりまして、いまや月50件以上の不応需が 常時発生していることになります。2007年は、したがって600を超えるような患者数を 収容できないということをお伝えしなければいけない。これはすべてホットライン、あ るいは地域の医療機関から要請のあった救急患者の依頼に対して、申し訳ないとお断り していたものです。2007、2008年に至っても、まだ50件以上というのがいまも続いて いる状況です。いろいろな要因がありますが、これにかかわる出口の問題を最終的には お話したいと思います。 ☆スライド 不応需の理由は先ほどもご説明がありましたように、処置中で手が離せな い、収容病床がない。それはちょっと三次救急の適応ではないのではないかという患者 数も増加しています。これは特に、いろいろ受入手がない、医療機関がないというとき に、三次ではないとは思いますが、引き受けてもらえませんかということも含めて、本 来は三次で診なくてもいいだろうと思われるような患者数、患者さんということになり ます。 ☆スライド 結局、不応需の要因の中に要請数と収容能力の不均衡が生じている。言っ てみれば、日常的に災害モードであるということ、収容能力がそれに見合って増えてい るわけではない。要請件数の増加に病院の対応能力の相対的な低下が生じている。それ には人的、物的資源の不足ということが当然あると思います。もう1つ、今日の話題で ある出口の問題、転院あるいは転棟の停滞ということがありますので、ここを主体にお 話をしたいと思っています。 ☆スライド 傷病者の搬送の流れというのは、これは救急医療システムの中で最終的に 重症救急患者は救命救急センターに来ることになるのですが、事故現場、あるいは在宅 から直接的に来る傷病者もおられますし、二次医療機関から紹介で来る場合もあります が、最近では初期医療機関、診療所などからも二次医療機関を経由できずに直接依頼と いう件もあります。最終的には救命センターがいろいろな理由で収容依頼を受けること になりますが、それをすべてカバーしきれないという状況です。 ☆スライド 逆に受けた患者さんたちをどう流していくかということになりますが、1 つの救命センターだけではとても収容しきれないときに、重症患者を単純に断るという わけにはいかない状態があります。大阪には5つの救命救急センターがありますが、お 互いにキャッチボールをするような状況を作っています。救命センターで診た傷病者の 人たちを次にどこに転院させるかということになりますと、急性期医療機関と介護療養 型医療機関というのがあります。直接的に救命センターから特殊な処置、あるいは引き 続き急性期の治療をやっていただくために急性期医療機関に移すことはあり得るし、実 際にやっています。  実際にちょっと経過を見なければいけない、後方病床で我々が経過を見ると言って一 定期間置いた傷病者たちは、もう急性期医療機関に収容することは極めて困難です。逆 にこういう方は、介護施設や療養型に行っていただく形になりますが、受入側のほうに、 むしろどういう患者を受けるかという選択権があって、我々には選択権はありません。 したがって、選ばれてしまうというような事態がいまはあります。すべてがそのように 流れはしない。したがって、どちらにも行けない傷病者を自宅に帰せるまで引きずるこ ともあり得る、亡くなるまで診るということが、どうしても生じてくるわけです。 ☆スライド そういう依頼件数増加に対して求められる対策としては、病院での対応と 同時に、定員を含めた病院間の連携という形で対応せざるを得ないということで、そこ に項目的に上げさせていただきました。 ☆スライド その1つとして、救命センター自体の努力はどうするかということになり ます。例えば30床の病床で看護師が45名のときに、ICUは8床ですので夜勤は4名い ます。それ以外のHCU22床は、夜勤2名の6人夜勤でこれをカバーするのが45人とい う体制ですので、HCU22床が重症患者を収容するキャパシティとして使えないという事 態があります。しかしいまやICUをどうしても空けなくてはいけないので、重症患者を HCU側にシフトさせていきます。したがってHCU側でも呼吸管理、全身管理をしてい る重症患者が4とか8とか非常に増えていくことになります。そこでリスクを生じなが らHCUでナースが頑張ってくれていますが、そういうこととICUの8床が、常に夜に なると埋まってしまうという事態が救命センターに生じているのが現状なのです。これ が受入を困難にさせている大きな要素です。 ☆スライド 逆に、長期入院患者数というのがどのくらい救命センターで生じているの かを見てみました。1,086例の年間の患者数に比して、1カ月以上救命センターの中で入 院している患者は、22名ありました。22名というのは非常に少ないように感じますが、 これを延べの病床という意味で言えば、平均在院日数が8.8日ですから、それが1,000 名いますので、それだけの延べ病床に対して22名が15%を占めるといった形になり、 非常に大きな病床を占めることになります。  6カ月以上というのが救命センターにいるのかと思われるかもしれませんが、この方 は重症膵炎の多臓器不全、おまけにVREが発生したりとか、多剤耐性緑膿菌があってど こにも出せないと、そこで診るしかない。しかも隔離を要する感染症を合併している。 こういう人は、救命センターから出られません。幸い助けることはできていますが、こ ういう方が救命センターのベッドを一部占めるということ自体があります。 ☆スライド 救命救急センターの長期入院のキーワードをまとめますと、非常に重症で ある、あるいは意識障害が遷延する、精神障害をお持ちだ、隔離を要する感染症、こう いったものが組み合わさる傷病者が、救命センターで診ざるを得ない。転院はもちろん のことながら、転棟そのものも困難になるという要因です。 ☆スライド 一方救急部の担当、私どもは年間1,086例中695例の最終的に救急部とし て主治医として担当して診た患者がいるわけですが、そのうちの200例が亡くなります ので、結果的に475例を自分たちは主治医として、最後まで診るという格好になります。 その多くは病棟の後方病床に移した上で我々が診るという格好になりますが、結果的に そういう475例のうち127例、26.7%は、1カ月以上病院に入院せざるを得ないという 事態になります。6カ月以上は先ほどの2例も含めて、5例ということでした。これが 2007年度のデータになります。 ☆スライド 転院困難の要因は、まとめると3つになります。これは患者さんの入院と なった原因、あるいは病態、自殺企図による墜落や交通事故、飛び込みとかの外傷。そ れから脊椎損傷などの非常に管理を長期間要すような傷病。人工呼吸器、あるいは気管 切開をしたというだけで、なかなか介護施設にお送りすることは難しい時代もありまし たが、いまはある一定の比率で、こういう患者さんを引き取っていただくことがちょっ と楽になったかと思いきや、逆に医療依存度の低い寝たきりの方を、介護施設に送るこ とが困難になってくる現状があります。このような患者の病態にかかわること。  それから、社会的背景で、受入医療機関側にいろいろな対応の変化をさせないといけ ない理由、これはあとから遠藤先生がお話になると思いますが、選択権は我々にありま せん。それから、独居というだけで非常に受入が困難である。生活困窮者、身寄りがな いとかホームレス、外国人というのは、非常に転院が困難な局面になる例が多くなりま す。  もう1つ、患者さんや家族の希望と転院決定の乖離。これは例えば若い方ですと、治 る、回復まで医療機関で継続した医療を希望するとか、転院先で急性期病院と同じケア とか急変時の対応といった治療をどうしても期待してしまう。こういったことがありま すので、転院のときに転院先の療養所を設定して、そこに患者さんに外来受診していた だくのですが、まとまらないことが時間を引き延ばす結果となっています。 ☆スライド 1つの例ですが、精神疾患を持つリハビリを要す外傷患者を受け入れる病 院というのが、大阪府で538の病院数がある中で極めて少ないパーセントです。これに 大阪府下の三次の救急医療機関から同じような患者さんの依頼を集中させますので、こ れは待つのは時間がかかるし、なかなか受入が難しいだろうということが容易にわかる と思います。 ☆スライド もう1つ、生活困窮者という問題は、非常に社会的には重要的な問題で大 変だろうと思うのですが、端的に私どものところに出てくるのは、未払い患者の推移と いうことになります。2005年から見てみますと、これは患者数でプロットしていますが、 昨年は90件を超えるといった形になりました。これはあくまでも救急部ですから、先ほ どのデータで示した中での400例ちょっとの中の90例ですから、相当な頻度になるとお 考えいただいたらと思います。これは100%最終的に未収であったというのではなくて、 退院時に回収できない人も含まれていますが、こういう方は、転院のときに未収のまま 移すというわけにはいきません。やはり何らかの決着をつけて、それに対するケア、あ るいは対応策を付けた上で転院、あるいは退院させる必要がありますので、必然的にど うしても時間がかかってしまうということの要因になろうかと思います。 ☆スライド 最後にまとめましたが、患者さんの転出を阻む要因は、救命救急センター の不応需に影響しています。救命救急センターの長期入院患者の増加というのは、直接 入院制限につながっていると思います。一方で、後方病床での長期入院患者の増加とい うのは、間接的に救命センターの稼働に影響することになります。救急患者の長期入院 には、受け入れる医療機関の対応や困窮者増加などの社会的要因、あるいは患者さんや 家族の考え方の変容など、多くの要因が絡んでいると思います。以上です。 ○座長 定光先生、ありがとうございました。5分ほど、いまのお話に質問等の時間を 作っておりますので、何なりとご質問等ありましたらどうぞ。 ○豊田委員 先生の二次医療圏の北隣の循環器病センターに勤めています。先生がおっ しゃった転院困難の要因というのは、まさにそのとおりで私どもの病院も全く同じ問題 をかかえております。どれがいちばんパーセンテージが多いかというのは難しいと思い ますが、特に、先生が最後におっしゃった患者家族の希望との乖離で、「急性期病院に 入院したままが良い、療養型に出たくない」という方が、正直に言って非常に多くござ います。  そういう方は主治医や、あるいは私ような病棟の主任クラスで説得に当たるわけです が、私たちはどうしても相対的な問題でベッドを空けなければというお話になってしま いますし、家族にしてみれば絶対的な要因と言うか、「でも私の親はまだ完全に良くな っていない」という、これはかみ合わない論理です。  それを解決するために一人ひとりの医師が努力するのはもう無理だと思います。社会 の意見の形成、つまり「いまや病院によって分担する業務が異なり、急性期の治療が終 われば急性期病院から次の病院に行っていただかなくてはいけない」ということを、社 会的な合意を形成していただけるような対策が必要だろうと思います。  実際は非常に情緒的に難しいことだろうとは思うのですが、少なくとも現場の主治医 レベルでこれを解決するのは到底困難だと思います。また、病院レベルで入院時にある 程度転院に関する説明をしても、もう病院レベルでも対応できないところにきているだ ろうといつも思っております。 ○座長 患者教育ですよね。 ○豊田委員 教育というとおこがましいんですけども、とにかく現状をわかっていただ くというか。 ○座長 昔は患者家族にそういう話をしますと、ご家族はそれなりに納得してくださっ ていたのですが、最近はほとんどそうはいかないですね。 ○松下委員 いまのこの問題には2つ問題があるのかもしれなくて、先生にお伺いしま す。本来であれば、ほかの病院に移っても問題がないのを、なかなか理解が得られない ために移ってくださらないという問題と、重症の患者数なり救急の患者数が増えていて、 本当に出せないと言いますか、本来であれば面倒を見なければいけない患者の絶対数が 増えているために、安心して転院できるまで治療が続けられない、絶対数が足りないと いう、その2つの問題があるような気がしますが、その比率はどうなのでしょうか。 ○定光参考人 正確な比率というのはここで具体的に申し上げられませんが、同じぐら いはあると、同等にはあると思います。正確にこっちがいくらで、こっちがどうだとは なかなか言えませんが、どちらも重要な問題なので、困っているのは事実です。 ○座長 両方とも増えているのですか。 ○定光参考人 はい。 ○松下委員 だとすれば、絶対的に面倒を見なければいけない人が増えているなら、ベ ッド数なり医師の数なりを増やさないかぎりは、それは絶対に解決しない問題で。面倒 を見なければいけないのに出さなくてはいけないという状況は、全く別の問題として判 断しなければいけないように思います。 ○座長 それ、また先生、教えてください。 ○定光参考人 割合とかを具体的な数値として調査して、ご報告できるように。 ○座長 松下先生がおっしゃったように、よそへ出せないという、一応急性期は過ぎた けど、MRSAがあるとか、気切その他があってなかなか出せないとか、そういうのは結 構あるのはあります。もう1つは出口の問題もあると。ほかにいかがでしょうか。 ○野々木委員 救命救急の中では後に総合病院という形でのバックがあるということ で、非常にベストの状況で運営されていると思いますが、救急室にこれだけ長期の重症 者がいるとかなり問題で、私たちも同じような問題をもっています。要するに一般病床 に転床したときには看護力の問題で、夜勤2人、3人、そこに例えば呼吸器をもった重 症者を管理できないという意味で、なかなか救急部を出すことができないのですね。だ から、もしもう少し看護力が増えれば、おそらくもう少し一般病床の中での重症者とい う形で、救急部を空けられるのではないかと思いますが、定光先生、その点はいかがで しょうか。 ○定光参考人 今年、その病床を再編していただき、7対1の看護で夜勤の救急部と眼 科が込みになりますが、病床1単位を後方病床にさせていただいて、そこに夜勤看護師 さんを増やすという格好です。それと意識障害とか、脳卒中のあとの病床を別の病床と いうか、同じフロアーの東西に分けて、そちらにSCUも含めて分けていくという形で、 7対1の看護でうまくそれをこれから確保していきたいと思っています。そこの在院日 数が長くなるということが、また病院の経営上はメリッとか、デメリットかという問題 はあると思います。  とは言え、先ほど示したように、救命センターの中に、特にHCU側に看護の増員と いうことをやらないと、30床を有効利用できないというような問題点もいまあると思い ます。医師の不足はもちろんです。 ○座長 はい、石井先生どうぞ。 ○石井委員 1点ご質問させていただいて、そのあとまたコメントします。最後にコメ ントされましたが、同一病院で病床だけが変われば、在院日数のしばりからすれば一段 と病院の運営は厳しくなりますよね。評価のほうは下がってくると、だけど人員配置は やらなければいけない。これは、いっぱいどんどん増えていくということは、いまの医 療保険の政策誘導の中では、その病院そのものの存立が厳しくなりますよね。どうでし ょうか。 ○定光参考人 ですからそれは、病床稼働と、どういう患者をどのくらい受け入れるか ということの最も効率的なポイントというのを、ある意味では設定して、それに営業努 力をしていくというか、そこを目標にすると。例えば病院全体では何床がベストなんだ とか、そういうことは推定できるとは思うんです。だからそういう形でしか我々のやる 手はないと思います。それが実現可能なのかどうかはよく分かりませんが。 ○石井委員 政策誘導が間違っていれば、自助努力ですまない部分が出てくるわけです よ。そこをおっしゃっていただければよろしいのではないかなと思うのです。 ○定光参考人 いくら努力しても駄目だったと言えばいいのですか。 ○石井委員 そうです。そこが大事だと思うのです。そういう声が現場からこないと政 策そのものが変わりませんから。なぜ、これができないんだというしばりばかり増えま すから。  別の話をします。外国人、ホームレスの話が社会背景の中に出てきましたが、これは 結局、別の言い方をすれば社会保障の網目がほころびてきて、それが救急医療にバイア スがかかっているというように理解してよろしいですか。 ○定光参考人 そのように思います。最後に縮図みたいな形で、救命センターにその問 題点がどんどん集中してきているということを、理解していただいたほうがいいのでは ないかと思います。 ○石井委員 EUの医療保険の話を見ますと、国外で病気になった方もそれを保障する、 その逆もという双方向の、いま保険証の融通も利かせ始めているんです。ところが、こ れだけ人間が移動しているのに、日本人は外に出た瞬間にその保険証を使ってないわけ です。逆に、外国から来た方が社会保障のコストを払わないまま、こういう救急医療の 中に入ってきて、それが問題化していると。ここのところは大きな問題じゃないかと、 今日のお話を聞いても、もう一度痛感したものでちょっとコメントをしました。 ○座長 はい、山本先生から。時間があと2、3分ですので手短かにお願いします。 ○山本委員 いまスライドの10、11辺りを見ていますが、長期入院を要した22名は、 非常に重い数字だろうと思います。それからその担当の救急部のほうでも26%と非常に 大きい。この原因をもう少し掘り下げるともっといろいろなものが出てくるのだろう、 というために質問させていただきます。その中で家族の問題、患者自身の問題、あるい は病院のほう、患者の重症度の問題等とあると思いますが、ここに書いてある重症、そ の意識障害とか精神障害がありますが、具体的にはこの22名に限ったときにどういうこ とが原因でこんなに長くなったのか。そして、これはどこを改善すれば、もう少しよく なるんだよというのがあるのか、ないのか、その辺はいかがでしょうか。 ○定光参考人 実はその患者たちがどういう状態でどうだったのかというのは、手元に 持っています。一言で言うと重症ということで済む人と、それから特殊な病気。後方病 床はフロアーとしては何階か上ですから、精神疾患をもっている方はちょっと危なくて。 私どものところは精神病床は持っていませんので、自分たちで抱え込まなければいけな い。外傷も含めて、その精神疾患と重症であるということが、救命センターに入って長 期いなければいけない主なキーワードだと思います。  これは将来解決できるかということになれば、そういう重症者を診て、看護単位があ る程度つくような別の病床、例えば院内のICUを利用できるかとか、そういうことも含 めてあるのですが、なかなか解決は難しい要素がある。どうしても救命センターは一定 の比率で、こういう患者を抱えざるを得ないということはあろうかと思います。 ○山本委員 我々のところも重症というアイディアで、例えば人工呼吸器があればいけ るんだよ、感染症のためのアイソレイションされた病棟があればいけるんだよというの は、いま先生のお話から出てきたと思いますけれど、その辺をもう少し詳しくお話をい ただけるともっと将来展望が出てくるのではないかと思います。ありがとうございます。 ○座長 前川先生どうぞ。これで定光先生への質問は終わります。 ○前川委員 山口大学医学部長の前川です。先ほど豊田先生がおっしゃった部分にも関 連しますが、患者の権利意識、これが非常に強くなってきています。例えば私のところ に入られた心不全の患者で、最終的には心臓移植でアメリカまで行ったケースですが。 かなり安定している状態で、一般病床のほうに、そこのナースのトレイニングまで全部 やった形で移ってほしいと言っても移ってくれない。救命センターのICUで1年何カ月 おられたわけですが、そういうことがどんどん厳しくなってきております。  一方で、それを無理矢理押出しをして、そこでもし何かあった場合に、これはまた医 療訴訟というところに繋がってきまして、私たちは現場にいて板挟みにあっているとい う状況です。たぶんいまから医療訴訟関係も陪審員制度が入ってきますと、かなり法科 大学院もできており、医療の現場はどんどん厳しくなる一方で、そういう裁判制度が入 ってくると、刑事訴追をされるいまの医療安全のところをよほど慎重に物事を運ばない と、最終的に三次救急だけでなく、救急医療のところが疲弊してしまって成り立たなく なってしまうと、最終的に困るのは国民だと思います。  いろいろなものが非常に大きなところになるかもしれませんが、患者サイドの権利意 識というのもよくよく考えていただかないと、医療が疲弊しきって対応ができなくなる。 その辺のことをよく考えておく必要があると思っています。いまのケースだけでなく、 非常にたくさんの患者サイドが権利意識を言われますので。 ○定光参考人 現場ではそういうストレスを日々感じながらやっているのは、事実だと 思います。 ○座長 それは皆さま異口同音におっしゃいます。定光先生、延べの病床数として出口 から出ていけない患者、あるいは出ていかない患者が15%とおっしゃいましたが、それ がうまく出れば、いま月に不応需が50件以上とおっしゃっていましたが、どれぐらい解 消しますか。 ○定光参考人 ちなみにこれ、大阪府下で重症患者がだいたい1日救命センター5で40 件だから、何人ぐらい取ればいいかと概算としてわかるのですが、ある時期に集中する という意味で、不応需がなかなか難しい時間帯やその状況が一概に言えないのです。ど れだけうまくやればその中のそのパーセント分だけは本当にベッドの確保ができる、と いうふうに考えますので、システム的にやらないと。簡単にどこかをやればうまくいく、 というものでは決してないと思います。 ○座長 はい、ありがとうございました。時間がもしあとであれば、ディスカッション したいと思います。続きまして出口から受け入れていただける病院ということで遠藤様 からお話を伺いたいと思います。 ○遠藤参考人 皆さんこんにちは。遠藤です。私は先ほど先生がおっしゃられたとおり ですが、いわゆるこの議題の出口の問題、療養病床の問題について、私の現場からお話 を申し上げます。私は事務方ですので、その点ご了承ください、お願いします。 ☆スライド まず我が国には37万床の医療療養と介護療養型の病床がいま存在します。 この多くが二次、三次の救急医療から患者の受入を積極的にしていますが、当院でも60 %が救急医療機関からの患者の入院をお受けしているというのが現状です。  その患者の多くが24時間体制で医学管理が必要だということと、それから継続したリ ハビリテーションが必要と。急性期の救急までの治療まではいきませんが、その後の社 会復帰をすることがなかなか難しいという患者。例えばその経管栄養の患者だとか、認 知症で家族介護ができない。単身やさまざまな社会的なリスクがあって、スムーズに社 会復帰ができないという方です。その患者ご自身、いわゆる身内の声としては病気が進 行するのかしないのか、治るか治らないかといったような不安に加えて、社会復帰に向 けた気持ちの問題とその整理、それから環境の整備がなかなか難しいといったような形 で、時間がほしいという患者がほとんどです。 ☆スライド うちの病院の統計で、48床の医療療養病床の、二次・三次救急からの入院 の要請の月平均です。黄色い枠の中で18年の6月以前と18年7月以後、これはなぜ分 節したかというと、いわゆる18年4月に診療報酬改定で医療区分制度が始まりました。 これによって分節化をしています。その実施が7月からで、分節となります。  これは二次・三次救急医療機関からの入院要請があった実績です。28件のうち18年6 月以前については、月に28件あったと。実際の入院が約10人ですね。区分開始後、毎 月々22件、それ以降入院が減り、14%減したということです。これは救急の先生方、悪 戦苦闘する中、迅速に受け入れてほしいというニーズになかなか応えきれないことと、 区分制度で疾患と障害と別に診療報酬が点数化されたということによって、大きな変容 がこの療養病床全体に起こったということです。 ☆スライド 実際に入院の要請があっても、受入を断らざるを得なかった理由です。過 半数が満床ということです。これについてはのちほど報告しますが、いずれにしても先 ほど先生がおっしゃったとおり、迅速に今日、明日、少なくとも来週月曜日には入院さ せてほしいといった救急の先生方からのニーズに応えられなかったということで、キャ ンセルを含めてです。  そして、うちの方針であります地元優先、地域密着型ということ。それから人工透析 だとか、それから呼吸器を付ける。さまざまな合併症があって専門医がいないといった ような実態。単身高齢者等、身寄りがなくて後見人も不在であり、その双方で救急の先 生方との時間的な軸としてなかなか折り合いがつかないということ。  もう1点は、救急の先生から受け取った患者の医療費のコストがあまりにも高すぎて、 後ほど説明する区分の報酬になかなか見合わない。報酬のことはあまり申し上げたくな いのですが、このことによって、平成18年7月以降に療養病床の再編問題も含めて、大 きく変わったということになります。 ☆スライド この区分制度とは何かと言うと、逼迫する老人医療費も含めて、医療費削 減の目的のために「社会的入院の解消」という大義名分の下に、療養病床の再編という ことがいま議論されています。少なくとも医療の25万床を15万床にしましょう、いわ ゆる13万床ある介護療養型の部分については、平成24年3月をもって廃止しましょう という法律が通っています。これらのことによって医療区分の問題は絡み合って、救急 の先生方からの入院がなかなか受け入れづらくなったという実態も、ご理解いただきた いと思います。 ☆スライド これが具体的な医療区分ですが、典型的な例を申し上げます。私は医師で はないので申しませんが、脳出血の後遺症で、なおかつ重度の後遺症、麻痺があって、 失語症もあって、認知症もあって、それから経管栄養もあって、体動がなかなか難しい と、体交もあって。そういった患者がこの表の点数の、ピンクの部分の885点の部分に 当たります。Aレベルがいちばん重いということになります。つまり、8,850円の報酬と なって、これに付け加えられるのが、実際にはリハビリテーションのいわゆる出来高部 分だけということになって、財政面でなかなか受け入れられないといった療養病床が多 い、という事実をご理解いただきたいと思います。  医師も24時間、看護も24時間ですので、この重要な医療療養の部分については、こ の医療区分1の問題がいまの医療難民、介護難民といったような問題に発展していると いうことを申し上げたいと思います。本当は救急からお受けしたいのですが、この辺の 点数の部分について、きちんとしたご理解を私のほうではしていただきたいと思います。 ☆スライド このような中にあってうちの法人としては、在宅の訪問看護、24時間の訪 問診療、いわゆるケアマネジメント、通所ケアのサービス等を重度の方に限って手厚い 在宅復帰、支援対策をやっているのですが、実際に二次、三次から救急の患者をお受け して、在宅復帰した患者については28%に限られます。これはいわゆる老人ホーム、老 健も含みます。これは、たまたま東京の日野の地域というところもありますが、在宅体 制の整備ができない部分については、地方部などではなかなか難しいのではないかとい うところと、帰れない患者の大半が介護療養型の医療施設にいるということも含めて、 この実態をご理解賜りたいと思います。それでは、救急から受けた患者の次の療養の場 所はというところです。 ☆スライド 私ども、いわゆる療養病床群では、救急の病院の先生方からの要請に常に 応えていきたいというような気持でおります。これまでも、これからも、急性期や回復 期のリハビリテーション病床はもちろんありますが、療養病床でしか受けられない患者 もたくさんいるということと、療養病床の機能、この量と質が継続できなければ救急医 療の機能不全もさらに悪化するだろうと考えています。問題点を(1)、(2)、(3)と羅列しま したが、一応現状は、区分と報酬では受入がますます難しくなるだろうということ。療 養病床の再編問題も含めて、せっかくある療養病床37万床が少なくなっていくというの が1つ。それから、転院先の介護療養型の病床がなくなれば、在院日数が延びて、さら に満床で、さらに受入が難しくなるという問題点を私のほうでは申し上げたいと思いま す。 ☆スライド もう少しお話を申し上げたいのですが、あえて1点だけ、救急の先生方が 疲弊、精神の荒廃まで起こしながらも24時間体制を受け入れているという実態を踏まえ ながら、療養病床としての提案をさせていただきます。  この機能不全を防ぐために、療養病床でできる受入を促進するためには、二次・三次 の救急病院の先生方からの要請については、入院期間から療養病床で少なくとも6カ月 間を医療区分2として算定させていただきたいと、そして必要な24時間の医学管理。そ れが投薬、リハビリの実施、先ほど先生からもありましたが、在宅の環境調整、施設の 社会復帰支援といったような多様なニーズに応えられると考えております。  いままであったものが、せっかく救急の医療機関から療養病床が受けた、生命のバト ンタッチをきちんとしていくことが、真のセーフティネットになるだろうと思っていま す。一助ではありますが、療養病床の問題と存在価値を37万床も含めて、再考する必要 があると考えます。以上で私の報告を終わりにいたします。どうもありがとうございま す。 ○座長 ありがとうございました。いまの遠藤様の発表について、ご質問等を含めて何 かございますか。 ○石井委員 日本医師会として最後に提案しなければいけないようなことまで提案して いただいて、ありがとうございます。ただ、この提案が解決だとおっしゃるのは、いま 見ただけでも問題があると思うのです。それは何かと言いますと、医療区分1が問題で あるということは、すでに指摘してアピールをしているのですが、いま、なかなか動い ていない。それから、介護病床の問題も療養病床全体の問題も同じなのです。ただ、救 急から来たものだけを2にしましょうと言いますと、救急の現場への集中が一層起きな いかなという危惧を持ちます。やはりこれは制度そのもの、政策誘導そのものが間違っ ているわけですから、そこを正常に戻していただくということが基本なのではないかと 思いました。  ついでにコメントします。その社会保障2,200億円を毎年切り下げるいう大命題の中 でこういうことが今進んでいるわけですから。回り回って、結局、救急の現場そのもの が立ち行かなくなっている、療養病床も立ち行かなくなっている、この辺の現実が今日 見えたということが、非常にいいのではないかと思います。 ○遠藤参考人 先生のご指摘のとおりで、私も本音はそこにあります。今回、急場でそ の医療区分の問題を申し上げて、いわゆる救急現場の先生方に少しでも受容になるよう にという提案をしましたが、本来を申し上げれば、療養病床の再編問題、介護療養型の 廃止の問題については、社会保障全般の問題としてきちんと整理されなければいけない し、私も会員ですが、日本医師会と一緒にやっていきたいと思っています。いま、多く の療養病床がそう思って、そのことについて真剣に考えているということをご理解賜り たいと思います。 ○座長 ほかはいかがでしょうか。要するに医療システム全般の問題で、玉突き型の問 題がこのまま救急医療に反映されているというような感じですね。どこか1カ所を触っ ただけでというわけには、やはりいろいろ問題があろうかと思います。 ○坂本委員 いま現在でも非常に厳しい状況なのですが、この数値を見ますと、これか ら平成24年までにこのままどんどん減っていくと、その行く末が非常に恐ろしいのです が。これは、いまのところは決定事項でこういう方向だということなのでしょうか。私、 ここの行政のところはわかっていないのですが。 ○石井委員 私が答えるのですか。では、答えますか。私の知っている限りでは、地域 医療計画の中でもう1回再積上げをやって、地域で必要なものは残したいという方向で いま厚労省も考えていらっしゃると理解していますが、それがその次にどうなるかと、 また締めつければ同じことですから。その辺はちゃんとしていかなければいけないと思 っています。答えになったでしょうか。 ○遠藤参考人 少なくとも介護療養型の医療施設の11万、12万床についての平成24年 3月廃止は、先回の医療制度改革でもう通っているのです。それに対して我々について は、この受け皿については、転換老健という話もありました。先回、報酬が20%以上減 ということですので、先生方からの受入は極めて難しい転換になろうかと思います。そ の辺も含めて、今後、この数カ月で取りまとめていかなければいけない問題ですし、転 換老健では、少なくとも東京都で転換する所は1つも手を挙げていないという実態を、 昨日東京都医師会の先生から承っています。よって、これがストップされたことによっ て救急医療については、先生がおっしゃったとおり、本当に玉突きで、ますます満杯状 態ということになるかと思います。 ○座長 東京と大阪のそれぞれ出口の問題をお聞きしたのですが、前川先生、地方とし てはどうなのでしょうか、ほぼ同じような感じなのでしょうか。 ○前川委員 基本は変わらないとは思います。解決方法があるかと言うと、なかなかな いとは思うのですが、厚労省が進められている在宅医療の部分でも、いま救命センター から出て行ったような患者に関しては、在宅での人工呼吸をやるとか、場合によっては 透析とか。では、そこまでできる医者がいるのか、という話にたぶんなると思います。 先ほども実際にはそういう医者がいない、ということを言われていましたが。  たまたまなのですが、私のところにいた准教授で、いま、実は広島で在宅の医療をや っている者がいます。最初、患者が60人ぐらいいけばと言っていたのですが、実はもう 120人ぐらい、噂が噂を呼んで。救命センターで准教授をやっていましたから、言って みたら何でもできるわけです。1人でやって、それで体がもたないというか、その状況 まできていまして、「何とかフォローしてくれ」と言われているのです。そこまででき る医師がいる場合には、患者は結構満足されるというか。夜中も何もあったものではな いわけですが、とにかく昼間に可能性のある所をずっと回って対応しておくと、夜中に はあまり呼ばれなくて済む、そんな状況なのです。  でも、これは特殊な例だと思いますので、そんな状況が作れるとはなかなか思えませ ん。でも、たぶん厚労省からは褒めていただけるというか。医療費もそんなにかかりま せんし、患者サイドは満足されるし、亡くなるケースでも自宅で亡くなることができる というか、そういう意味では感謝されています。これは、もしそういうことができ得る としても、救命センターにいる救急の先生方がいい年になって、救命センターはきつい からという形になった状況でしかあり得ないとは思います。ですから、これは理想的な 形かもしれませんが、全国的にそれができるとは思えません。そんな実例はあります。 ○座長 先生、それは在宅医療だけをされているのですか。 ○前川委員 そうです。例えば脳神経外科のあとでとか、脳卒中のあとで植物状態のよ うな患者でも、一応人工呼吸とかそういうことも在宅でできます。ですから、そういう 意味ではいいとは思うのです。でも、誰にでもできるというわけではない。内科の先生 でそういうことを開業されている方がおられるとは聞いていますが、現実にはレベルが 全然違うと思います。ですので、患者サイド、家族の方たちの満足度も全然違うと思い ます。 ○座長 ある種、出口の病院のさらにもう1つ先という感じで、やはりそういうものも 必要かもしれないですね。 ○前川委員 そうですね。ですので、もし患者サイドが希望して、ある程度の回復が考 えられる場合は、二次病院的なところにもう一度返すことも確約した上での対応だと思 います。 ○座長 ありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。もしあとで時間があり ましたら、またご意見を伺いたいと思います。  それでは議事2「二次救急医療機関について」、お話を伺いたいと思います。大阪府 の特定・特別医療法人協和会加納総合病院院長の加納先生にお越しいただいております。 加納先生のところは、聞きますと、年間4,000台以上の救急車を二次病院として受け入 れておられるということです。先生、よろしくお願いいたします。 ○加納参考人 それでは説明させていただきます。私ども、場所は大阪の北のど真ん中、 東京でたとえるなら、銀座が中央でしたら、ほぼ新橋辺りでやっている病院です。そこ に書いてありますように、300床の病院です。一般が151床です。ただ、現在、看護師 不足により1病棟を7月まで閉鎖しておりますので、127床が実動です。回復期リハを 96床、先ほどから出ている完全療養型を53床持っていまして、うち、医療が29、介護 が24という施設です。救急医学会からは認定施設番号150番、かなり以前より認定施設 として頑張らせていただいております。いま社会医療法人を目指しております。 ☆スライド これは皆さんがご存じのいまの問題で、本当に現場がもう疲弊していると いう状況かなということを、ちょっと説明させていただきたいと思います。 ☆スライド 大阪市内の救急搬送の件数です。大阪市内は、手前の平成16年、17年、 18年と、3年間で大体15万6,000件、いまは16万件ぐらいの救急搬送がされています。 このうち、国立病院が0.9%、公立病院が3.5%、公的病院、済生会とか日赤ですが、こ れが8.8%、黄色いところです。ブルーのゾーンが86.8%、これが私的病院です。上の 小さい赤いところは、大阪の場合、個人の診療所がありまして、救急を受けております。 わずかですが、そういう診療所があります。ということはメインは、民間病院が二次救 急、三次救急の一部を請け負っているというのが、都会型の今の救急の問題の1つの根 本的な原因ではないかということを思っております。 ☆スライド これは、大阪府医師会が発表しました平成19年3月末の近々の辞退の状況 です。本当に続々と病院の、これは科別の辞退が多いのですが、そういった形で辞退が 続いているという状況です。あまり小さくて資料としてちょっと見にくいのは申し訳あ りません。 ☆スライド 大阪府下の救急病院の推移です。平成12年度からの推移が出ています。304 という救急病院がいま270をもう切っているのではないかと思っております。ちなみに、 大阪市内もほぼ1割の減という状況です。ほとんどが二次救急病院の減ということです。 ☆スライド これは当院における数字です。昨年の4月から11月まで、新病棟を建てる ための工事を行いました。当院も大阪万博の前年からの建物でしたので老化が激しく、 いま建替えが終わった直後です。終わったのが12月です。それ以降の数は、やはり回復 している状況かと思います。  これを見ていただいて、えっと思われるかもしれませんが、受入数の状況です。受入 のところの数と受入不能、先ほどの言葉で言いますと、不応需という数字の関係かなと いう形だと思います。我々の二次救急に関しては、救急隊から電話連絡があります。「こ ういう患者さんですが、受入ができますか、できませんか」。それができます・できま せんというのが、受入できたと不能というものの数字です。これは見ていただいてびっ くりするかと思うのですが、受け入れられた数字のほうが少ないというのが現況です。 例えば近々の平成20年3月ですと、救急依頼が1,042件ありましたが、受け入れたのは、 ほぼ4割近くの424件です。あと、618件はお断りせざるを得なかった、というのがこ の数字です。 ☆スライド お断りした理由は、先ほどから出ていますように、やはりベッドが満床で ある、適切なベッドがない、処置中であった、専門外というものが圧倒的に多いという のが理由になっています。 ☆スライド これは救急隊の受入状況です。これは今年の1月の状況です。○・×で受 け入れた・受け入れていないということを表現しております。実はその赤丸で表示して あるところが大阪市外です。あとは大阪市内の救急隊の所管ごとの数字を書いておりま す。赤丸、特に右のほうに出ています羽曳野と阪南、東大阪と言いますと大阪の南、羽 曳野、阪南というのは非常に南のほうです。八尾もそうです。こういった所の救急の依 頼が大阪市内の二次救急に来ているということです。  また、左下の豊中、豊中北も、大阪北のほうの救急です。いま救急体制が、民間病院 が受入ができなくなっているということもあり、公的病院のほうもやはり医師の不足と いう形で内科を閉鎖したりということもありまして、二次救急がパニックになっている ということを聞いております。そういう状況下では、大阪市内に流れ込んできつつある ということも出てきています。 ☆スライド 時間帯別でいきますと、我々の病院でも日勤帯はもちろんドクターの数も 豊富ですし、対応ができやすいのですが、深夜帯になると不能率が高くなるというのは、 これは現実です。 ☆スライド 我々の救急に関する費用、特に夜間、当直に関する費用をまとめてみまし た。一応こういう数字になりました。これは月別です。1カ月に1,324万7,548円が昨年 の6月から今年の3月までの月平均です。 ☆スライド これを12カ月で掛けますと、人件費だけで年間約1億6,000万円費用が要 るということです。これは夜間、当直体制のみです。2人半のドクターです。うちの場 合は、内科、外科の1人ずつの当直以外に、脳卒中センターとしてドクターを待機させ るということもしておりますので、そういった費用を込みにするとこういう額になって いるということです。 ☆スライド 先ほどから出ています救急搬送患者の未収を一遍調べてみようということ で、近々のものを調べてみました。今これ、数字が出ています。金額というのがその支 払っていただかなければいけない金額です。預り金というのは、一時的に1万円とか、 そういった単位でお預りする金額です。差引きした分が病院としては損金になってしま うわけです。この件数を見ていただいたらお分かりになるかと思うのですが、我々は、 月に大体400件前後の救急を受けております。そのうちの44件・30件ということで、 ほぼ1割近くの患者が未収であるという状況です。 ☆スライド いままでのことを含めて、一応まとめさせていただきました。我々の病院 もそうなのですが、今いちばん困っているのは、ドクターもそうなのですが、看護師が 足りないということです。我々の病院はいま10対1です。7対1ぐらいにしないことに は、救急の患者を受け入れるには、医療的には非常に厳しい状況下です。大阪でも、大 都会のど真ん中でも、看護師が全く集まりません。これがいちばん大きな問題ですし、 そういった意味で我々は、また、そこに書いてありますように、第1病棟24床はまだ閉 鎖状態、7対1の入院基本料も取れていない、集中治療室加算も取れていないというこ とです。これを増やそうと思いますと、いまの看護師の1.4倍からの数が必要で、我々 は、まだ60人単位で不足であるという状況です。  もう1つは、二次救急医療に十分な点数が付かないということも、現状ではあるので はないかと思っております。この委員会も、やはりスタートが救命救急に関する委員会 ということで、救急と言えば、先生方の救命センターのお話が中心になり、今回のよう に二次救急という話が、我々の診療報酬を含めた話がなかなかしてもらえないというの がいままでの現状でした。今回のような機会をきっかけに、是非とも診療報酬に何らか の反映をしていただければと思っております。  地方自治体も財政破綻。これは皆さんご存じでしょう。大阪府が橋下さんに代わりま して、また、さらに一層厳しい状態で、救急等にも金を一切やらないどころか、減らす ぞという話を今どんどんなさっている状況です。非常に厳しい状況下です。やはりこれ が東京都とか関東近辺の都道府県とは状況が少し違うところかなと思います。これは、 我々を含めた地方の問題という形で出てくるのではないかと思います。  医師不足は、これは何とかしなければ、いましなければたぶん日本の救急は遅かれ早 かれ駄目になってしまうというのは、先生方、ご存じのとおりの状況だと思います。何 とかしていかなければいけないということだと思います。  先ほどから出ています定額のDPCです。DPCでいきますと、本当にある病日の期間 内に退院させなければいけないということです。当院も4月よりDPCに入りました。入 りましたら、いきなり退院させなければいけないということにノルマ化されまして、こ こには高齢者救急も書いてありますが、脳疾患の患者とかそういった形では、我々のよ うに院内で回復期リハ、療養型を持っていても、そこから外へ出す方法がなくなってき ているという。出口がまだまだいろいろな意味で、我々の病院でさえ困っているという 状況ですし、なかなかうまく診療報酬上では長引く患者に対してのDPCが、まだまだ対 応が不十分であるということを現状で感じております。 ☆スライド 未収金は、先ほど申しましたように、非常に増えています。外国人や、急 性アルコール中毒の方も多いのですが、本当に一般の方も平気で未収にしていくような 状況になっています。学校における給食費の不払いの割合が1%ということですが、10 %というのは、それよりも非常に大きな数字になってきているということです。これが またマスコミに出ますと、また病院の救急は踏み倒してもいいのではないかと錯覚する 人も出てくるかと思いますし、非常に微妙な問題ではないかと思っております。  また、モンスターペーシェントとも言われる暴力・暴言です。我々、3年前ですが、 警察沙汰で1回、本当に救急室を壊滅的につぶされたことがあります。警察を呼んでも なかなか処置してくれないというような、これもまた非常に難しい問題ではないかと思 っております。  それとまたトラブル。先ほどからいっぱい出ています、問題の患者が本当にいっぱい 出てきているなという感じがします、医療事故もそうです。  最後になっていますが、マスコミの病院バッシングも非常に多いのではないかという 感じがしております。先日、大阪でたらい回しが出たときも、最後に受けたのは実は民 間病院だったのですが、そこの民間病院の最後の支払いはたぶん、先ほどの話ではない ですが、未収になったという話で、その患者は支払いをせずに帰ってしまったとか。そ ういった報道をマスコミは流さずに、たらい回しをした、病院が悪いという話しか出て こないというのが悲しい状況かなと思っております。 ☆スライド 最後になりましたが、一応救急対策ということでそちらにまとめておりま す。簡単なのは、救急搬送加算などという形でしていただくのがいいのではないかと思 っております。あとは、都会での救急を担っている病院にはやはり固定資産税、これは 実は大きな金額です。都会で土地とかそういった建物を病院でやろうと思いますと、民 間病院の支払いは、うちの法人ですと1億円を超える金額になってきます。そういった 固定資産税を払っている民間病院もやはり何とかしてほしい、つらいなという感じで、 よろしくお願いしたいと思います。  あとは高齢者の問題です。大阪府は2015年でしたか、高齢者が60万人ぐらいに増え るという形です。これからの問題のもう1つは、高齢者の救急搬送ではないかと思って おります。いま高専賃といったアパートとかそういったものが出来ましたが、何かあっ たら最後は救急車を呼んでというのが現実ですので、こういう形は何とかしていかなけ ればいけないかなと思っております。下にたくさん書かせていただいております。  マスコミの皆さんには、何とか言葉を変えていただくということを是非ともしていた だいて、たらい回しとかそういった変な、私は差別用語と言っているのですが、病院を 差別化するような用語を使わないでいただきたい、ということをお願いしたいと思って おります。以上です。すみません。 ○座長 ありがとうございました。いまの加納先生のお話にご質問等がございましたら どうぞ。 ○豊田委員 脳卒中のための当直医を1人置くようにしたとおっしゃいましたが、それ はSCU加算を取るようになったということなのでしょうか。 ○加納参考人 いいえ、残念ながら。SCU加算には看護師の数が要りますので、我々は、 残念ながら取れていません。我々はいまtPAを熱心にやっています。tPAの症例を1年 間で30症例ぐらい集めております。そういった意味で頑張ってやっているのです。その tPAも、今回、加算が付いたのですが、我々の病院では正式な薬剤師の完璧な当直体制 が出来ていませんので、そのtPA加算も、今回、大きな点数が付きましたが、我々には 取れないという点数でした。そういった意味では、ちょっとつらい状況かなと思ってお ります。 ○豊田委員 質問させていただいたのは、やはりSCU加算がなかなか実情に合わないと いうか、取りづらい状態だと思っていますので、先生のところのように、年間4,000件 入院があってというような形だったらペイできるのかなと思ったのですが。 ○加納参考人 いいえ、入院ではなくて搬送が。 ○豊田委員 搬送ですね。それと、もう1つお伺いしたいのです。断わった理由として 「処置中」というのが3分の1以上を占めているのですが、この処置というのは手術中 なども含んでいるのですか。 ○加納参考人 手術中も含みますが、あとは、我々の病院は、内科・外科医が1人ずつ で当直しているという体制ですので、これは物理的な問題で、これはお断わりせざるを 得ないということです。いわゆる症例が重なるわけですね。どうしても搬送連絡が重な って、2症例ぐらいをこなしていただける、3症例をこなせる先生もいらっしゃるのです が、やはり今時のことですからそういったことよりは、重なるとやはりお断わりせざる を得ないというのが現状で、こういう数字になってきているのではないかと考えており ます。 ○座長 先生、いまの処置中で診られないというのは、どうすればいいのでしょうか。 ○加納参考人 これはやはり、最初に数字を1つ出させていただきましたように、大阪 市内で二次・三次救急病院が1割減っていて、救急搬送数が1.5倍になっているわけで すから、これはもう物理的な問題に達しているのではないかと、都会においては。そう いった形でもっともっと受入を態勢できる病院数を増やすか、また、複数医できるよう な診療報酬改定等も含めてですが、裏付けしていただきたいかなと。いま、この最低限 の単位でさえ年間1億6,000万円の人件費が要るということですから、なかなか難しい 状況であると思っております。 ○座長 1割ずつ減っていっていますよね、撤退しているというか。これはやはり、も ともとあまり二次救急をやっておられない救急告示病院等が撤退しているのか、あるい は、もともと先生のところのように非常にアクティビティの高い救急医療機関が撤退し ているのかでかなり差があると思うのです、同じ救急病院の撤退と言っても実情は。そ の辺はどうなのでしょうか。 ○加納参考人 いま、両方とも、先生がおっしゃるように、ある状況にきているのでは ないかと。二次・三次救急でも特に公的病院のほうは、まさしく診療する先生方の不足 という形で出てきています。我々の病院でも1億6,000万円の投資をしていて、本当に これで賄っているのかどうかというのは、非常に首をひねる状況にいまなってきていま す。  我々が診療報酬でもう1つお願いしたいと思っていたのは、時間外緊急院内検査加算 とか時間外緊急院内画像診断加算とか、1,000円単位ですが、いろいろ細かく付いてい る点数もあるのです。それは、例えば点滴をしないことには社保の支払基金が削ってし まうとか、そういう何か本当にみみっちい話ですが、そういったことも平気にやられて います。これは我々、やってられないぞ、というのも出てきているのではないかという 気がするのです。よっぱらいを相手に点滴なしでやって、本当に1万円にも足りないこ とで、我々のスタッフが全員、2時間も3時間も右往左往させられることも多々あるこ とです。これは、現場では、そういった形での疲弊ではないかと思っております。 ○座長 それは、一つひとつは小さくてもボディブローになりますから。私がいまお聞 きしたのは、例えば、施策的に今やっているアクティビティの高い救急医療機関の数を 増やすというよりもむしろアクティビティの高い救急医療機関に何らかのものを保証な り、あるいは何らかの制度を導入したほうがいいのか、二次救急医療機関を単純に増や したほうがいいのか。増やしても、もともとアクティビティの低い病院がどんどん増え て、結果的に全く同じ図式になれば、全然無駄ですよね。その点、どうお考えですか。 ○加納参考人 それは先生のおっしゃるとおりで、やはりいちばんいいのは、施設的な ハード面の問題もありますので、あとはスタッフの数を増やせばいいわけで、先ほど言 いましたように、内科当直を2人にすれば2台診られる可能性もあるわけです。それで 効率化するほうが私はやはり、いろいろなハード面のバックを考えますと、いま頑張っ ている病院がさらに頑張れるような体制づくりのほうが、私は先生がおっしゃっていた だいた中ではいいのではないかと思っております。 ○座長 ほかはいかがでしょうか。 ○山本委員 素晴らしいデータ、ありがとうございました。先生の中で大阪府という概 念と大阪市という概念が入り乱れるので、データを比較させていただきたいのですが、 なかなか。例えば救急搬送患者というのは大阪府では、大阪市が16万件ぐらいだという のはわかりましたが。そして、救急病院が270というのは、これは大阪府ですよね。そ の辺のところ。  実は何を言いたいのかというと、東京は年間60万件ぐらい救急搬送があるのですが、 それを二次では大体270〜280、三次は21あるわけです。大阪のデータだと、三次は5 で、二次が270というのを16万件でやるわけではないという。だから、府になったらこ れはどのぐらいになっているのでしょうか。そこをまず教えていただきたいと思います。 ○加納参考人 すみません、いま手元に府の資料を、パソコンの中に入っているのです が、いま数字が出てこなくて申し訳ありません。逆に三次救急と称している場合、大阪 の場合、独自の医師会の認めている三次救急という体制がありまして、それを入れて10 病院が三次救急。一応一般救急のほうは、二次救急はいま90病院でやっています。市と 府はなかなか数字が出てこないのは、庶務局単位で我々は市のほうの数字は非常に拾い やすいのですが、府のほうは、なかなか府全体の数字が拾いにくい状況が出ていますの で、また、調べてお答えしたいと思います。 ○山本委員 先生も、何か40%ぐらいで60%ぐらいをお断りになっているというのは、 搬送要請が20回あっても320件、20回以上がというのがなかなか理解はできるなと思 って、この原因はどこにあるのかというのと。もう1つは、ウォークインでの救急患者 というのは大阪ではどのようになっているのでしょうか。この2つをご質問させていた だきたいと思います。そのウォークインでの救急患者の問題点も、やはり指摘しておか ないといけないのではないかと思います。それから、受入不可というところの数字の問 題も、何か東京とは違うなという気がしております。 ○加納参考人 ウォークインの、病院へ直接という形でしょうか。私、理解が、すみま せん。 ○__ 救急患者。 ○加納参考人 救急患者ですが、我々の資料では、これ以外に、月々、これの半分ぐら いの数字かと思います、ウォークインで来られる方。半分を少し切るぐらいだったかと 思うのですが、その方をまた逆に入れて診さていただいております。 ○野々木委員 二次救急の抱える問題点を非常にクリアにしていただいて、ありがとう ございました。実はこの二次救急というのは、いまもお話があったように、民間病院の 皆様方が努力されているのですが、やはり当直医と称して1人か2人で対応しているわ けで、処置中というのも十分あり得ることなのです。そうすると、これを解決するため には、複数のドクターを診療報酬できちんとカバーしていただいて、しかも当直医でな く、やはり交代制の夜勤体制に是非ともする必要があります。それにはやはりこの検討 会は非常に大きな役割を果たすのではないかと思いますので、それは是非検討していた だきたい課題だと思います。 ○加納参考人 一言だけよろしいですか。 ○座長 はい。 ○加納参考人 いまちょっと困っているのは、やはりドクターの当直に対する意識がだ いぶ変わってきています。常勤の方、非常勤の方、いろいろな形で。いま非常勤の方の 金額はもちろん上がってきていますし、常勤の方は常勤の方で、私は当直したくないと いう契約にしてくれとか、そういうことをおっしゃるドクターもいま出てきていまして、 お金ではないよということを平気でおっしゃいます。お金ではなくて義務だよというこ とも言いたいのですが、いま、なかなか伝わらない世代の方が、徐々にというか、かな りの勢いで増えてきているのではないかと現場で思っております。 ○藤村委員 日本小児科学会から出ております藤村と申します。私も、大阪の府立母子 医療センターにおります。ちょっとお伺いしたいのは子どものことなのです。二次救急 を月に400例以上扱っておられるということですが、子どもはどのように取り扱われて いるのでしょうか。 ○加納参考人 我々、小児科のほうは外来を毎日やっておりますが、救急に関しては、 残念ながら当院は入れられない状況ですので、ドクターの関係で今は能力的にないとい うことで、小児のほうは、原則的に小児専門の病気に関してはお断りしています。ただ、 骨折とか、症例によっては対応させていただいているのが現状です。 ○藤村委員 先生は、大阪市内の状況をよく把握されていると思うのです。そうします と、一般に子どもの二次救急と言うと、通常の二次救急の体制よりは小児のほうの二次 救急のほうにバトンタッチしていると理解してよろしいですね。 ○加納参考人 そうですね。先生ご存じのように、大阪ですと、特殊な形ですが、一部、 民間病院で中野先生のところとか、そういった形で頑張られている小児専門の病院もあ りますので、我々は、そういった形では助けていただいているかなとは思っております。 小児の場合は、あらゆる形で先生方にお願いして助けていただいているのが現状だと思 っております。 ○藤村委員 座長のほうにもちょっとお願いしたいのは、一般二次救急としてこの話を されているときに、子どもが忘れられている可能性があるのです。この議論をどのよう に子どもで整理していくかというのも、是非まとめの際にはご検討いただきたいと思い ます。 ○座長 小児・産科のそういう、二次等を含めて、SCUもそういう形の中の一部に入る かもしれませんが、わかりました。ほか、いかがでしょうか。 ○石井委員 9番の資料を見ますと、かなり遠方の搬送も増えていると。要するに、1 割程度減って集約化が進みました。その結果、地域医療内で完結する形ではなくなって きている、そんな読み方をしてよろしいですか。 ○加納参考人 いや、大阪も、いまよく言われているのは、南のほうの救急が破綻して きている、大阪市内よりもまたひどいのではないかという状況になってきているという ことと、部分的には北でも、先ほど言いました豊中とか、そういった所がいま内科救急 を受け入れる病院が壊滅的な状況になっているとか、そういったことがいま現れて、市 内に搬送依頼があるのではないかと考えているのですが。 ○座長 これは、その地域の輪番制がもう用をなしていないということですか。 ○加納参考人 そういう意味で破綻がきつつあるのではないかと思います。 ○座長 この地域は、先生のところとかあちらこちらに行って、輪番ではなくて、この 地域での常時救急、先生のところのような病院はどうなっているのですか、ないのでし ょうか。 ○加納参考人 いや、二次医療圏ごとに救急センターも含めて整備されており、それは それで輪番制をやっているわけです。先ほどから出ている問題で1つ大きいのは、都会 型と地方型の。大阪府下でも、やはり市内の問題と少し外れの大阪府下の問題とは問題 の問題点が違ってきているところが少しあるのではないかと。それは体制がやはり、も ともと民間病院が少ない所とかそういったこともありまして、そこはもうギブアップし てという状況です。さらに、公的病院の医師の引揚げ等も含めて、地方の二次救急体制 がやはり崩れてきているなということは、大阪府下でも状況が変わってきているなとい う感じはしております。 ○座長 輪番制を組んでいても、実際には、そこで当直する医師は専門医が多いですよ ね。そうすると、整形の専門医で輪番制で当直していても、お腹の患者とか頭の患者が 来たら断る、そういう患者が先生のところに流れる、というような図式も実際にあるの ですか。 ○加納参考人 あると思います。 ○石井委員 もう1点は、医療保険で何とか手当て、という言葉が目につくのであえて 言うのですが。今回の改定は、要するに、こういう現場に給付してくださいということ で、それ以外のところであれば、もう我慢しますという改定だったわけです。先生がも しそれで足りないとお考えになり、医療保険で再度手当てしようと言ったら、ほかの医 療部門が、総額が決まっている中でどこを削るのかという議論になってしまうわけです。 ですからこういう救急体制というのは、もともと政策として別途、補助行政とかいろい ろなことでやっていたわけですよね。だから、先ほど先生もおっしゃった税とか、いろ いろなほかの方法も考えてはどうかなと思うのですが、その点に関してはどうですか。 ○加納参考人 先ほど提案させていただいた固定資産税は、1つの都会の病院での大き な負担ですので、これはこれで。公的病院は、もちろんもともとただなのですが、民間 病院は、それぞれ、かなりの金額を払っているということです。それを免除していただ くのも地域の医療を守っている立場から当然ではないかという感じがするのですが、現 実的には、いま大きな負担を請け負っているのも事実です。そういった意味での行政か らの援助という形もあっていいのではないかと私は思っております。  ただ、先ほどから申していますように、我々も、混合診療とかいろいろな形で、余計 めに救急からも取れたらとかそういう形もあるのですが、東京ではたぶんいけるのかも しれませんが、大阪ではなかなか。また未収が増える状況かと考えております。私は、 地方では保険外のところからの徴集がなかなか難しいかなと思っているのですが。 ○石井委員 今度の改定案は十分でしたか。 ○加納参考人 今度の改定案は、二次救急には一切点数はなかったと私は理解しており ます。二次救急の点数という意味では、救命センターの点数は確かに、7日間のうち3 日とかややこしい形ですが、あれをトータルすると、やはり1週間では増えています。 我々の点数は、1点たりとも上がっていません。二次救急に関する、二次救急に付いて いる点数というのは何かありましたか。 ○石井委員 あとで結構です。 ○加納参考人 救急医療管理加算、入院1日につき600点の、6,000円を1週間だけも らえるものです。それは今回一切上がっていません。 ○座長 救命センターだけを改善しても、もちろん問題が非常にあるのですが。先生が おっしゃったようなところも含めて、今後、二次救急医療機関もこういう改定の中に入 れようというようなことも含めて行政は考えておられて、先生方をお呼びになったのだ と私は理解しております。時間がだいぶ過ぎましたので、次に移りたいと思います。  議題にありますように「ER型救急医療機関について」です。アメリカのテレビでは、 全部、断らずに診ているよというようなことで、日本もそういう形にしてはどうかとい うような質問を私のほうにも受けることがあります。そういうこともひっくるめて、ER 型についての検討はこれから何度か必要ではないかということで、お二人の先生に来て いただいております。  お一人目が福井大学医学部付属病院救急部長の寺澤先生です。寺澤先生は、皆様ご存 じのように、早くからER方式として救急部を運営してきておられます。その現状をお 伺いしたいと思います。もうお一人は、都立墨東病院の救命センター長の濱邊先生に来 ていただいております。濱邊先生も皆様ご存じのように、東京ER構想で知事のトップ ダウンということでERを始めて、今日に至っています。寺澤先生、濱邊先生の順に、 ER型の救急医療機関についてのお話を伺いたいと思っております。大体8分以内ぐら いで手短かにお願いしたいと思います。まず寺澤先生から、よろしく。 ○寺澤参考人 発言の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。資料に出 ていますいくつかのスライドは時間の関係でスキップいたしますので、質疑応答のとき に見ていただければと思います。 ☆スライド 私が沖縄県立中部病院で4年目の研修医のときに、トロント大学から救急 の教授が2週間ぐらい教育に来られました。当時の沖縄県立中部病院が1日100人ぐら いの一次救急から三次救急をすべて受け入れるERというものをやっていました。そこ で、実を言うと、今でいう初期研修医と一部の後期研修医だけで1日100人の、軽症か ら重症まですべての患者を診ていました。そこでそのトロント大学の救急の教授は、「こ んなひどいことはない。こんなもの、アメリカ、カナダだったら救急外来に常駐して教 える、あるいは間違いをしないように監督する医者が」、エマージェンシーフィジシャ ンと呼ばれるドクターたちですが、「3、4人はいるよ。こんなの、いつまでやるつもり だ。患者さんはかわいそうすぎる」と言われて、「お前、ERのドクターをやれ」と言 われて、道を踏み外しました。 ☆スライド 言葉で言っても理解していただけないだろうと思いますが、一応書いてみ ました。軽症から重症まで、「コンタクトレンズがずれたという患者から交通事故で呼 吸が止まりかけた人まで」という言い方でおわかりいただけるでしょうか。それと、全 科の患者と言うと、どういう言い方がいいでしょうか。1歳半の発熱の患者から老健施 設で誤嚥したらしい89歳の女性まですべて、救急室に救急車、自家用車、タクシー、ワ ゴン車で登場する人たちをすべて受け入れるというのが救急室、我々はERと呼んでお ります。そのERに救急外来だけで働くという非常に変わったドクターが詰めていると 思ってください。いわゆるドクターグリーンとかドクターカーターみたいな人がシフト で働いているのだと思ってください。  私は、それを30年近くやってきました。ですから、目が痛いという人が来ますと、10 人のうち9人は、私が診て返してしまいます。熱が出たという子どもが来ますと、私が 診て、10人のうち9人は返してしまいます。こんな調子です。選んだ1人の患者を、そ れぞれ該当科の専門の先生で病棟で待機してくださっている先生にバトンタッチする、 そういうやり方をしています。ですから我々は「手術室、あるいはICUに足を踏み入れ ない」「入院患者を持ってはいけない」と厳しく言われました。入院患者を診ながら救 急者を引き受けるというやり方は、それは無理だという考え方で、いわゆる救急の入院 治療をする医師団と救急外来で初期対応をする医師団を分業するという考え方です。ア メリカ、カナダは、30年前にこの分業をスタートしたということです。 ☆スライド 先ほどご説明がありました二次救急病院で各科の先生方が奮戦しているい まの時代は、いわゆる当直、あるいは週末は日直という状態で内科系の先生お一人、外 科系の先生お一人、少しマンパワーがある病院では小児科の先生がお一人で、大体2人 から3人の当直という、日勤帯に自分の科の仕事をこなして、夜になって疲弊した状態 で救急の患者を診るという、なかなかすごい過酷なことを日本のドクターたちはやって きました。これでうまくいくはずがないと、私は個人的にはずっと思っておりました。 ☆スライド アメリカ、カナダは何をしたかと言いますと、救急外来で初期対応をする ドクターをエマージェンシーフィジシャンと呼びながら、このドクターたちを最初に診 る医者と決めたということです。結局、各科の先生が当直で頑張られると疲弊しますし、 自分の専門外は、当然、疲れてくると断りたくなる。自分の科の処置が必要な患者が入 ると、当然、次の救急車は断らざるを得ない。つまり、そういうことになるのを防ぐた めに、いわゆる窓口で絶対に断らないという人を置いてしまうという作戦に出たという ことです。これをいま日本では、ER型の救急医という呼び方をしております。  これは、救急医学界で押し進めてきた救命型の、三次救急の初期対応から入院治療ま でをされる先生方と少し違った働き方だということをわかっていただくために、こうい う言葉を使いました。日本救急学会のホームページにER検討特別委員会という島崎先 生が理事長のときに作っていただいた、そこにサイトがありますので、そこをクリック していただくと、ER型救急医に関して詳細が実はありますので、ご覧いただければと 思います。 ☆スライド 利点をまずお話します。我々は、救急車、自家用車、タクシー、ワゴン車 で来る人を断らないということに命を賭けていると言うと、信じてもらえるでしょうか。 少なくとも私は、26日の日曜日、日勤で働きました。もちろん自家用車で来られる方、 救急車で来られる方、一時、救急室の診察室はいっぱいになりましたが、それでも断り ません。廊下でも診ます。そんな感じだと思ってください。要するに、野戦病院みたい なものです。日々、大きな災害が起きたときにいっぱいになったときにも救急外来で、 廊下でも、とにかく空いている所で診る。それが我々のやり方です。  それを専門にやりますので、各科の救急室に飛び込んでくる軽症から重症までを勉強 することになりますので、一緒に働く医者同士である程度、子どもでこういうふうに来 たときはこういうところまでやって、ここから先は小児科の先生、そういった形で少し 標準化ができるかなと思います。  医事紛争が防げると私は個人的には思っております。私は30年ぐらいERで働いてい ますが、私自身は、紛争あるいは裁判はゼロです。私の関連のドクターで福井県立病院 と福井大学の救急で働いている、ERでずっと働いているドクターも、紛争、裁判はゼ ロです。  各科の専門の先生が最初に救急外来で自分の専門外を診るということがありませんの で、我々が入院が必要、手術が必要と言ったときだけ各科の専門の先生が出てきますの で、各科の先生たちにしてみると専門医らしく働ける。自分の専門外でひや汗をかくこ とは防げるといったことが言えると思います。初期研修の必修科のあと、ER型の救急 医を配備したいという施設が増えているように私は感じています。これは初期研修の先 生方にとって最も重要な研修が、将来どこかの病院の当直医で働くときに、自分の専門 外の救急の初期対応をできる医者になるための初期研修の必修科だと理解しています。  それを救急外来で研修させるのには、熱が出たという子どもさんをたくさん診て、髄 膜炎や肺炎の子がちょっと違う。お腹をウイルス性の胃腸炎で壊したという子どもを診 て、虫垂炎の子どもや腸重積の子どもはここが違う。胸が痛いと言って来る心筋硬塞は 簡単ですが、胃が痛いとやってくる100人のうち3人のうちの心筋梗塞を見破れる。あ るいは腰が痛いので、整形外科の先生に腰に注射してほしいとやってくる大動脈解離を 見つけ出す。この辺りのことができる医者を育てて、二次救急病院の当直医に立てない 限り、私は救急車の受入拒否も、医事紛争も防げないのではないかと思います。ですか ら初期研修の必修科で、最も根幹をなす大事なERでの初期研修の研修を教えられるド クターとして、ER型の救急医は貢献できるのではないかと思います。 ☆スライド これが先ほどお話いたしましたER検討特別委員会、日本救急医学会の中 につくられた委員会で、昨年秋から調査を行いました。一体ER型の救急体制は、いま どれくらい日本で行われているのだろうという調査です。いわゆる、まだ投稿される準 備の途中で、数字が少し変わる可能性があるので、その点をお含み置きいただきたいの ですが、私が少し驚きましたのは、ER型救急体制を24時間やっているという施設が99 施設、日本でも100施設ぐらいが、どうもこの体制をやり始めているということです。  そして2番目の後期研修医という、ER型の救急を目指しているドクターを含めると、 日本で約500人ぐらいER型の救急医がいて、ER型の救急をやっている病院では、その ようなドクターが1人から3人ぐらい働いている施設がいちばん多いことがわかりまし た。  もっと驚きましたのは、ER型救急の養成コースがすでにあるというところが82施設 で、養成コースを準備しているところが50施設近くあるということです。現在ER型の 救急を目指している研修中のドクターが約150人ぐらいいるということです。しかし、 いま北米でER型の救急医は3万人います。ざっと日本の人口に換算すると、500人と いうのは喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか私は判断しかねます。 ☆スライド いいことばかり言いましたが、ここが大事なところです。ER型の救急は 実は私個人は30年やってきましたが、これから日本でER型の救急体制を進めるべきな のか、それがいまの苦悩している救急医療体制の改善につながるのか、個人的には自信 がありません。どちらかというと、悲観的な意見を持っています。  というのは、救命救急科、つまり従来の三次救急の先生方や総合内科というドクター たちがいないと、実を言うと我々が引き受けた後の入院の主治医が決まるのにやたらと 時間がかかり、診療の質の維持が非常に困難になります。これからこれはもっとひどく なると思います。それは高齢者が在宅でという指針が出ましたので、先ほど前川先生が おっしゃったようなことまでできる総合医が、育っていないいまの時点で始めますと、 在宅で看取りをと言いながら、最終的にご家族が看取りの段階に入って、心の準備がで きていない場合に救急車を呼び、我々のところに登場する、実はそういう患者が始まっ ています。我々の救急室でそういう患者が急増しています。  そのときに、内科の先生方が、それを「はい、私が主治医」と言ってくださらないの です。我々は○○内科という先生を呼んだときに、「これはうちじゃない」と言われる ので、内科の各科の先生方を「うちじゃ内科」と呼ぶようになりました。  入院治療や手術を行う各科の専門の先生たちが疲れていきます。私が働いた病院3つ は、各科の先生方はどんどん疲れていきました。つまり私が全部患者を引き受けるわけ です。引き受けて、入院や手術が必要だと、すべて各科の先生にバトンタッチしていく わけです。だから、各科の先生に言わせると、私らが働くのは、疫病神が来たようなも のです。つまり、お前たちが俺たちの仕事を増やしている。そのために各科の先生方は ERドクターをバッシングするようになり、各科の先生方とER救急医の医師団との関係 が非常に悪化して、私自身も1度人間が壊れました。  私のところに、いまER型の救急をやりたいといって来る子たちはかなり増えていま すが、私は最初に「お前ら人生を投げるのか」と彼らに言うようにしています。「投げ る覚悟はあります」と言った子だけが、私のところに留まっているということです。つ まり、各科の先生方や病院の管理職の人たちや、一般の患者にこの働き方を理解してい ただけるまでは、ものすごい苛酷な試練を経なければなりません。ざっと20年かかると 思います。ですから、いまの日本のこの状態で、ER型の救急の体制を押し進めて、20 年後というのはとても待てないと思いますので、私はその意味で悲観的です。  ただ、いくつかの私が応援してきた病院で、かなり成功しつつある施設があることも 申し添えておきます。残念ながら、それを始めますと、いわゆる中等症、重症に我々が 時間を奪われますので、軽い患者が救急室に来たときには、かなり待ち時間が増えます。 中国地方のある県庁所在地での市民病院は、待ち時間が4時間を超えたというので、苦 情が出ているそうです。アメリカでは、ERの待ち時間はざっと8時間ということです。 ☆スライド 私なりに課題を出していきますと、果たして、そういったドクターをコス トをかけてERに配備していくとすると、それがコストベネフィットバランスはつり合 うのかという、科学的な証明が必要だと思います。ER型の救急医を養成していくとき のコースの質の保証は、一体どこで誰がするのか。そして、ER型の救急という言葉を 聞いても理解していただけない、我々の働き方を理解してくださらない患者たちは、我 々の名札を見て、「どうして小児科医が診ないのだ」「どうして眼科医が診ないのだ」 と詰め寄って来られるシーンは、実を言うとかなり多く、一般の方にも理解していただ かない限り、この体制を進めるのはかなり難しいというのが、これまでの個人的な自分 の経験からの印象です。  ただし、約30年近くやってきました福井市民は、ER型の救急医と研修医が小児を診 ても、決して小児科の医者を出せとは言いません。ちなみに福井県立病院では、小児科 医は自宅に待機しています。小児科医が最初からERで診ることはありません。眼科医、 歯科医然り、耳鼻咽喉科も然りです。以上です。 ○座長 寺澤先生のただいまの報告にご質問をどうぞ。 ○坂本委員 2つあるのですが、1つは救急車の受入拒否が発生しない、もちろん専門で ないからお断りということはなくなると思うのですが、先ほどベッドがいっぱいだから 断るというものに関して、もちろんそれはER医者の問題ではないから、入院が決まっ てから待つのはER医の問題ではないのだというふうに言って、受けてしまってもいい のかもしれませんが、いまここでは、非常に大きな問題は、特に入院病床のキャパシテ ィの問題が議論されているので、この問題をERが解決できるかどうかという問題が1 つです。 ○寺澤参考人 それが理由で、私はいまからER型は無理ではないかと思っています。 20年前にこういう会で呼ばれましたら、「ER型の救急を押し進めてください」と強く 言ったと思います。というのは、福井県立病院と、福井大学病院でER型をやっていて 感じることは、ベッドがいっぱいになりかけたときに、病院の管理職やベッドコントロ ールする看護師さんたちが、かなり強力に動くというバックアップがあってこそ初めて できるのです。そして、ベッドがいっぱいにならないように、最初にご発表になられた、 そういう患者を引き受けてくれる二次・三次の病院から引き受けてくれる病院のバック アップがあって、初めてできる体制なのです。ですから、福井県はそれが回るような形 で、たくさんの理解者が20何年かかって発生したので、私は何とかなっているのだと思 います。  いまの日本の状態を見ますと、いまから始めるのは、坂本先生ご指摘のように、一気 にERドクターは患者を引き受ける、でもその患者は入院できない。その患者を入院さ せるために、どこかにいま落ち着いた患者を転院させたい、でも転院の病院は取れない。 この状態なので、いまから日本でER型の救急は、私は悲観的だと申し上げています。 ○坂本委員 マンパワーの件なのですが、沖縄中部で3、4人必要とおっしゃられたので すが、これは常時勤務が、3、4人いないといけないということなのか、あるいは3、4 人の医者がいれば交代して約年間3万何千人のニーズに対して医者が面倒見られるか。 もう1つは救急医学界の調査でも1〜3人と。果たしてこの1〜3人というのが、病院の 中のERの専属の人数であれば、それで一定の質を保つERを維持できるのかという点 についてお願いします。 ○寺澤参考人 とても大事な点だと思います。3、4人と言いますのは、そこの救急外来 に所属するERドクターが3、4人で、その人たちで何とか日勤と準夜帯だけでも、ある いは3交代で24時間カバーするという意味です。いま福井県立病院には4人のERドク ターと、2人の後期研修医が働いています。福井大学は、いま12人のERドクタープラ ス総合診療のドクターが加わって、約20人近くのドクターで、2交代でERを回してい ます。  私の大体の大雑把なことを言いますと、20〜30万人を対象としたところの二次救急病 院クラスで、3、4人のERドクターを置いて、各科の後期研修医、特に総合医志向の後 期研修医を巻き込んだ形で、その先生たちをパートタイムのERドクター的に使い、そ して初期研修医がいるという状態をつくりますと、おそらく3、4人のERドクターがい たら、結構いい線ではないかと思います。 ○豊田委員 疾病救急で、特に緊急を要する脳と心臓の循環器疾患に関して、先生の図 式だと、それもER型救急医が最初に診て、それから振分けとなっているのですが、そ のスタイルでやられているのですか。 ○寺澤参考人 もちろんです。先生はきっとご存じだと思いますが、例えば片麻痺と構 語障害で、脳梗塞だ、tPAの適応だといって紹介されてきた患者は、我々が診ますと、 ときどき大動脈解離です。つまり、私たちが最初に診て、脳梗塞だ、tPAの適応だと言 われても、大動脈解離だと見破って、神経内科か脳外科にいくはずといって紹介されて きた患者を、心臓血管外科にバトンタッチするという仕事をしているとご理解ください。 ○豊田委員 そういうのは非常に大事だと思うのですが、とにかく時間の急を要すると いう面もあるわけで。だから先生方のスタイルだと、先生方が診られて、初期のCTと かを出して、その間に専門医を呼ぶというスタイルと考えてよろしいのでしょうか。 ○寺澤参考人 おっしゃるとおりです。 ○豊田委員 それでtPAなどもうまく使われていると考えてよろしいのでしょうか。 ○寺澤参考人 ですから、もし最初から循環器内科のドクターがERにいてくれたほう がいいという患者だとか、救命救急科が一緒にあって、その先生たちは多発外傷のとき は最初から一緒に呼んでくれと言われたら、これはアメリカではそのようになっていま すが、連絡が入った時点で、該当科のドクターと一緒にERで対応する。そして、該当 科のドクターがその患者を連れて心カテしたとか、CCUだとか、手術に入ると、我々は また次の患者を診はじめる。次の患者はコンタクトが外れた患者か、あるいは熱が出て いるという子どもか、どちらかわからないけれども、このようなことをしているという ことです。 ○豊田委員 脳卒中に関しては、プレホスピタルでですね、むしろ救急救命士の段階で ある程度診断をつけていただいて、なるべく速やかに専門科にという流れもあると思う のです。先生の大学は、私も懇意にしている医師が脳卒中を診ていますが、それでもな おそういうスタイルを踏んだほうが、能率よくいくであろうというふうにお考えですか。 ○寺澤参考人 そうですね、そういうことを我々ERドクターは、常に救命士が患者を 運んできたときに、ほとんど親戚同然のお付き合いになってしまっているので、救命士 との月に1回の勉強会で、「今後こういう患者はTPAの適応になるので、最初から一気 にバイパスして、こういういくつかの病院に運びなさい。でも、ときどきこういう患者 で大動脈解離がいるから、実を言うとこういうことは気をつけないとね」という、そん な教育をしながら最前線に立って、スペシャリストに「遅いではないか」と言われない ように努力をしているということです。 ○座長 全体的に見ると、そのほうが機能的だというのは、私も思います。最初から救 命士なり、救急隊員がトリアージして、これはTPAの適応ですといったままをSCUな りが引き受けるよりも、むしろ、そういう形で一旦やれたほうが、患者全体から見ると 機能的ではないかと思っているのです。 ○山本委員 これから濱邊先生で違うアイディアが出てくるのだろうと思いますので、 このER型の救急医のモチベーションの維持、これからの問題ですが、あるいはそうい う先生方をどういうふうにしたら、これからもう少し明るい、そこができるのか、その モチベーション維持にはどうしたらいいのかというのを、ちょっとお話をいただきたい と思います。 ○座長 重要なところですね。 ○山本委員 そして、このER型というのは都市で違う。ポピュレーション・ベースド の、例えば大都会の東京や大阪、だけれども福井ならこれはいけるのだ、あるいはもう 少し違う所だったらいけるよという、何かその辺のところ、これからのサジェスチョン があったら教えてください。 ○寺澤参考人 とても大事な点だと思います。やはりERドクターがいたら、その病院 の診療報酬が少し上がるという、病院への大きな貢献がない限り、なかなか病院全体か ら評価されず、なかなか各科の専門の先生たちが、我々と接触するときはその先生の得 意な領域でしか呼んでいませんので、その先生方からは必ず見下される存在です。です が、初期研修医だとか、医学生とか、一緒に働く看護師は、実はそういう医者がいなか った時代といまと比較することができた人たちは、かなり高く評価してくれています。  おそらく、腸間膜動脈の閉塞だとか、大動脈解離だとか、かなり難しい初期診断を要 求される患者の診断能力がある程度高く、かつその人たちの予後がいいというデータが 出せたり、あるいは小児科の先生ではない我々が診た患者たちが、決して「小児科の先 生たちだったら、こういけたのに。ER型の救急だったからこうだ」という、そういう ばっ点が付くようなことが少ないということが、資料にお示ししましたようなデータで 出ていきますと、少しずつ教育の点、あるいは診療の質の点、あるいは日本のERでの エビデンスを発信できる臨床研究、この辺りがいくつか揃いますと、私は自分自身が30 年やれたように、モチベーションの維持は可能だと思います。  東京、大阪という都会でERをやるのが、私はいまからはかなり困難だと個人的に思 っています。これは先ほどの理由と同じです。トップダウンでやるシステムではありま せん。自然発生的に、いつの間にかERドクターがぽつりと出現して、そして2人にな り、3人になり、実は私が2人めのERドクターをゲットするのに、11年1人でやりま した。つまり、福井市民は福井市内が特別なシステムになっていることをほとんど知り ません。そういうシステムであるべきだと思います。  最後のところに「ERがうまくいくための条件」というスライドを資料としてお出し しました。いくつかの条件が揃ったときだけ、どうもいまの日本ではうまくいくような 気がします。私は濱邊先生ところは個人的にはお気の毒なことを強引にさせられて、あ あいう結果になる、濱邊先生が苦悩するのは目に見えていた話で、なんて恐ろしいこと をしたのだろうと、個人的にはそんなことを感じました。 ○座長 先生は各科の支援、各科とのすり合わせで、それこそ「うちじゃ内科」という ような医者が出てくるのは非常に問題があると思うのですが、その病院のペイできると いうか、MGHなどは65%がERをとおって入ってきているのですから、そういう位置 づけというか、ER専門医の社会的な位置づけも含めて、今後変えていく必要があると 思います。  病院全体で、売上げがどうなっているということを含めて、出されているのでしょう が、それでもそういう問題は起こるのでしょうか。 ○寺澤参考人 各科の先生方は、病院の売上げにはあまり興味がないのです。自分たち の科の売上げには興味があるようです。福井県立病院で私が働き始めてから、救急車が 増えて、救急室からの入院患者も増えて、病院は明らかに収益は上がり、ベッドの稼働 率は上がり、かなり経済的にも貢献できるというのは実感としてありました。  ですから、そういう形で、病院の管理職の人は評価してくれるのですが、各科の先生 方や患者は、実は評価してくださらないのです。そこが、山本先生の言われたモチベー ションの維持のために、何か我々がきちんとした応援をしないと、この手の医者は増や せないというのが実感です。 ○座長 トップダウンで各診療科にそういうのを理解させるというのは、非常に重要で すよね。うちなんかも10年かかりましたが、ほとんどいまトップダウンでERをやって いますが、それでようやくできる。うちではないよという患者がたまに出ることもある のですが、基本的にはER、三次の救命センターとは別ですが、横にあるのですが、そ この先生が、この診療科で診てくださいといった患者は、48時間は、たとえその診療科 が最終的に間違っていても、その科で診るというようなシステムにしています。文句を 言わないという形を取っています。  ですから、トップの管理職に、その辺のことを含めて、先生のところだけの問題では ないのですが、そういうのを理解させるというのは、非常に重要でしょうね。それがな いと、病院の中でのポジショニングというのでしょうか、ERの位置づけがないと、そ れはバーンドアウトしてしまうと思います。 ○松下委員 先生のところで各科がやっているエレクティブサージェリーと、ERから 入った手術の比率はどのくらいになっているのですか。 ○寺澤参考人 そこまできちんと見たデータはありません。 ○松下委員 また、収入がどうなっているかとか。ですから、結局は後ろが受入ができ るかどうかというのは、後ろに控えている各科の医者が、どれだけER経由の患者に興 味があって、コールドサージェリーには興味がないか。そことの兼ね合いもすごく大事 なので、もし各科の医師が、かなり救急の治療に興味があるメンバーを集められれば不 満はないはずなのです。エレクティブサージェリーで落ち着いて、予定どおりしかやる 気のない医師を後ろに置いておくからそういうことになるので。救急医療に興味がある 医師ばかり集まった病院をつくれば、極めてうまくいくように思うのです。 ○寺澤参考人 いやいや、もともとコールドサージェリーの病院にERをつくっている から、そういう格好になってしまっているのです。 ○松下委員 だから、ERというのを既存の病院に追加して作ってもうまくいかない。 うまくいかそうと思ったら、新たにそういうものをセットアップして、ここでは救急手 術しかしない、エレクティブの好きな医者は来るなとやって病院を構成すれば、うまく いくのではないでしょうか、いかがでしょうか。 ○寺澤参考人 私もそういうところなら働きたいです。 ○前川委員 2点ございます。ERで卒後臨床研修を救急という意味でやっておられて、 非常にいい形だとは思うのですが、その人たちが何年か経ったあとに、先ほど例えば二 次病院の輪番制の部分などをフォローできるレベルになったらいいとは思うのですが、 それができるかどうか。そこが最近の若い先生方の基本的な物の考え方の中に、ERは 必要だということはわかって、実際に研修は受けるのですが、特に外科系とか、小児科、 産科、しんどい部分にはいきたがらない。眼科、精神科、皮膚科、そういうところに非 常に多くの人たちがいっているという背景を考えますと、いまからどうなるかというと ころが、非常に大きな要素になってくると思いますので、是非あとのフォローをしてい ただきたいというのが1つです。  それから、大学病院の特殊性もあると思いますが、先ほどの先生のお話ですが、もう 国立大学系は人は減らせ、予算は減らせ、それで稼ぎなさいという話になってきていま して、もう目一杯やっている上に、赤字部分は何とかトントンにしなさいということで やられていますので、たぶん上手に持っていけば、そこの救急の手術件数を増やすこと はできるのですが、そうでなければ、これ以上働かせるなと。  正直なところ、労働条件は非常に悪いです。大学病院だから裁量労働制でやっていま すので、何とか皆さん我慢していますが、マスコミの方たちもおられますが、医員とい う人たちは、日雇い労務医員です。月の収入は30数万円で、40万円はいかないと思う のです。そういう状況で働いて、何とかその病院をもたせているという背景があります ので、なかなか頭で考えることと現実は非常に難しいというか、そういう背景がいまの 現状ではございます。 ○座長 それは救命センターで働いている医師のということですか。 ○前川委員 いえ、病院全体です。もちろん救急は努力はして勧誘はするのですが、特 に地方大学での外科系の先生方が非常に減っています。たぶん10年先は、正直なところ 外科系の医学・医療の教育のところまで問題が起こってくる可能性がございます。 ○座長 卒後臨床研修を含めて、最後に篠崎先生にお話を伺おうかと思っています。 ○藤村委員 簡単な質問なのですが、子どもが来たときは、待合いのコーナーを別にす るとか、診察室は別にするとか、そういうことは配慮されているのでしょうか。 ○寺澤参考人 いわゆるそのシフトのシニアのナースが、トリアージナースを兼ねてい まして、麻疹、三日麻疹、おたふく風邪、水疱瘡の辺りの疾患の疑いが強い場合は別の 所で待たせて、別の所で診察をしますが、普通の子どもさんがおいでになっただけだと、 ごく普通に待たせて、ごく普通の、さっきはおばあちゃんを診た診察室にそのまま子ど もが入るという感じです。 ○座長 これで終わります。濱邊先生、お願いします。 ○濱邊参考人 ERの大御所の寺澤先生のあとを受けてERのお話をするのは僭越です が、いま寺澤先生にご紹介いただいたように、トップダウンでERをやれと申し付かっ た現場の医者からの報告だと思っていただければよろしいかと思います。スライドを使 って説明いたします。 ☆スライド まず、ER型救急の定義をしておきたいと思います。これは先ほどの繰返 しになるかと思いますが、対象は来院するすべての救急患者ということになり、重症度 は関係なく、軽症から重症まで、来院方法もウォークインから救急車で来る者まで、す べて診ることになります。役割に関しては、入院加療あるいは手術にはもちろん関与し ないで、初期診療、初期治療およびアドバンスト・トリアージということになり、これ も先ほど寺澤先生のおっしゃったとおりのことと理解しています。 ☆スライド いま申し上げた、私の上司である石原慎太郎都知事が、1999年にトップダ ウンで、ERをつくれと下ろしてきました。うちは墨東病院という下町にある都立病院 ですが、そのほかに広尾病院と、府中病院、それまで救急救命センターをもっていた3 つの都立病院に対して、突然トップダウンできました。  そのとき病院経営本部、かつての衛生局ですが、「ER」という言葉がわからなくて、 知事に「それは一体何でしょうか」と聞いたそうです。そしたら「お前たちはNHKの ドラマを見たことがないのか」とのたまったそうです。すなわち寺澤先生のおっしゃっ たように、都知事は、NHKのドラマに出てきたような北米型ERをお考えになったよう です。  それを受けて衛生局のスタッフは貸しビデオ屋に走って、ERを1巻から全部見て、 ついにはグリーン先生がどうしたこうした、カーター先生がどうしたこうしたという話 を我々にするようになりました。そういうような事態で、ERというのは我々にとって も寝耳に水だったわけです。  というのは、ここで検討されているように、初期、二次、三次というピラミッド型、 階層型の救急医療体制がすでに20年近く、あるいはそれ以上にわたって構築されていた のです。いま申し上げたように、墨東病院でもすでに三次救急を担うところとして、救 命救急センターが設置されておりましたし、初期・二次救急に関しても、かなりの数の 方を引き受けておりました。もちろん、その初期・二次救急は、いわゆるER型ではな くて、各科の当直医が診るという、おそらくいま多くの二次救急病院がやっているよう なシステムです。ただし、内科1人、外科1人というわけではなくて、あとでご紹介し ますが、うちの場合はほとんど全科の当直医がおりますので、そういう各科の当直医が 各科ごとに対応している状態でした。 ☆スライド そういうことで、開設当初どのようにしたかというと、とにかく三次救急 はこれまで通り救命救急センターの専従医師が行うこととし、一方で、ERというから には、初期・二次救急は体制を変えないといけないということで、スライドのように変 えました。つまり、いわゆる初療の部分はER診療医、具体的にはシニアもしくはジュ ニアのレジデントが担うものとし、その後の専門治療あるいは入院治療が必要になれば、 各科の病棟の当直医を呼び出すというような体制をとったわけです。 ☆スライド しかし、この体制で始めた後、大混乱をきたして、どうしようもなくなっ てしまった。何が問題になったかというと、まず、先ほど寺澤先生がおっしゃったよう なことが諸に出てきました。ひと言で言うと、ERを診療している医師と、病棟当直医 との連携が全くうまくいかないということなのです。(3)に書いてありすまが、そもそ も、その日の当直医というのは、病棟管理のために泊まっているのであって、救急患者 を診るために泊まっているのではないという意識が大前提にあります。それを石原慎太 郎もしくは院長のトップダウンで、何とか救急診療に協力しろということで、なだめす かしてやってきたのですが、うまくはいかない。  また、ひとつの科に割り振れる患者ならいいのですが、例えば、意識がクリアでも頭 蓋骨の骨折があって、その他に鎖骨1本でも折れていたりすると、脳外科はとらないし、 整形外科もとらないという事態になり、この患者は一体何科が診るのだということが、 日常的に繰り返されていたわけです。 ☆スライド そういう状態が数カ月続いて、これではしょうがないだろうということで、 ついに救命救急センターが関与することにしました。どのようにしたかというと、救命 救急センターから、ER診療のコーディネーターを派遣することにしたのです。そのER コーディネーターの指揮統括下に、いまいった初療もしくは専門治療を行わせる体制を とりました。  ERコーディネーターは具体的に何をするかというと、先ほど寺澤先生のところでは、 トリアージナースという専門のナースというお話がありましたが、都立病院にはそうい うナースが育っておりませんので、まずは、コーディネーターがウォークイン患者の重 症度・緊急度をトリアージします。あるいは他院からの転院依頼の電話を直接受けます。 あるいは現場の救急隊からの収容要請の電話も「ERホットライン」と称して、そのド クターに取らせます。そして、最終的にはER診療、つまり、いま申し上げたシニア、 ジュニアのレジデントの行っている診療の責任も、そのコーディネーターにとらせると いう、かなりの責任をコーディネーターに与えました。そしてもう1つ大事なことは、 コーディネーターは救命救急センターのスタッフがなるとしたことです。その結果、現 在に至ってるいのですが、データは後で申し上げます。 ☆スライド いま申し上げたような体制で、現在までやっています。これが東京ER・ 墨東の入口になります。 ☆スライド 待ち合い室にこのような待ち時間表示を出しています。注意してほしいの は、「病気、けが、子ども」と書いてあることです。ERでは、例えば整形外科である とか、外科、脳外科であるという振分けは一切しません。その患者が怪我なのか、疾病 つまり病気なのか、子どもなのか、それだけで分けます。おそらく沖縄の中部病院など ですと、そういうことに関係なく、上から積まれたカルテを1冊ずつ取って順番で診て いくということなのでしょうけれども、さすがに当院では数が多いものですから、ある 程度系統分けをして、効率化を図りたいということで、当初からこの3系列を作りまし た。  ただし、何回も申し上げているとおり、科による分け方ではありません。だから、先 ほど寺澤先生がおっしゃったような、例えば胸が痛いといったら、病気の患者になりま す。そしてそれが、心筋梗塞の痛みなのか、お腹からくる腹痛なのか、それをERの診 療ではっきりさせます。もちろんボールが当たって胸が痛いのなら怪我になります。い ずれにしても大事なことは、既存の科の縦割りの収容ではなくて、このような、怪我か、 病気か、子どもかという分け方で受けているということなのです。  余計な話をしますと、最近たらい回しであるとか、受入先がなかなか決まらない1つ の理由に、これは私自身の個人的な考え方ですが、こうした科にこだわりすぎている部 分がある気がします。うちの地域でよくあるのが、例えば小さなお子さんが自転車に乗 っていて転んでしまって頭も打って、足も挫いたとします。そういうことで救急車が要 請され、患者を観察した救急隊がERのコーディネーターに電話を掛けてきます。この ような患者がいるので整形外科と脳外科で診察をお願いしますというのです。  例えば私がコーディネーターをやっていると、意地悪をして、うちは整形外科も脳外 科もありませんといって電話を切ります。  つまり、そんな夜中に整形外科と脳外科、さらには小児科も揃っている病院なんて、 都内のどこを探してもないのです。にもかかわらず、現場の救急隊はそういう要請の仕 方をしてきます。中には、形成外科をお願いしますと言ってくる場合もあります。夜中 の1時、2時に、形成外科のある病院は、おそらく日本全国どこを探してもありません。 つまり、プレホスピタルとしては、そういうような教育がまだなされている、というこ とが1つあります。  ER型の特徴は、先ほど申し上げたように来院するすべての救急患者をすべて受け入 れるということですが、別の言い方をしますと、先ほどどなたかがおっしゃっていまし たが、プレホスピタルのトリアージが必要のない体制を作る。つまり、救急隊がそこに さえ運べばあとは何とかしてくれるという体制、それがER型の体制の特徴だと思って いただければいいと思います。いずれにしても、スライドにあるような3系統で診察を 進めています。 ☆スライド これは実際のデータです。平成13年にオープンしたのですが、開設前の平 成12年1年間で、トータル3万3,000ほどの患者を救急部門で診ていたのですが、開設 した翌年の平成14年になりますと、5万人を超える膨大な数になりました。 ☆スライド ただし、増えたのは、もちろん救急車自体も2,000台ほど増えているので すが、圧倒的にウォークインの患者さんです。 ☆スライド ちなみに、この検討会は救命救急センターの検討会だとお聞きしたもので すから、当院の救命救急センターについて触れておきます。うちの救命救急センターが どういう陣容かというと、専従スタッフ、これは各科から全く独立している救命救急セ ンターだけのスタッフですが、常勤が16名おります。それぞれサブスペシャリティーが あって、救急科の専門医が5名、外科が2名、整形外科4名、内科4名、脳外科1名、 計16名でやっております。それプラス、シニア、ジュニアのレジデントが、常時8ない し15、16名はいる状態です。  ベッド数としては、いわゆるICU、HCUのセンター病床が24床です。それとは別に、 救命救急センター独自で使える後方病床を46床もらっています。センター病床も後方病 床も、この16名ですべてカバーいたします。実際の実績ですが、平成18年の入院患者 を見ますと1,908名、おそらく今年は2,000名を超えると思います。重症度は細かいこ とは書いていませんが、CPAも600名ぐらい含まれております。おそらく日本一CPA の取り扱い数が多いセンターだと思うのですが、そういうような患者群を診ています。 ☆スライド これが平成18年度にどのような患者を収容したかです。昭和60年にオー プンした頃は、外傷と疾病が半々ぐらいでした。平均年齢もおそらく40代だったかと思 うのですが、昨今の高齢化で、圧倒的に疾病が増えてきています。平均年齢も60〜70 ぐらいにアップしているのではないでしょうか。 ☆スライド いま申し上げたような規模の救命救急センターがバックについて、その中 から毎日必ずコーディネーターを出します。これはある日の当院の当直表ですが、いち ばん上にERコーディネーターがきます。当直表のトップに名前を据えるというのは、 病院としての意思の表明で、コーディネーターがその日の夜の指揮官であるということ を示しています。それは救急診療だけではなくて、全科の指揮官だということです。  当直表の一番上にコーディネーターが1人いて、これは救命救急センターのスタッフ ですが、さらにいちばん下に、6名救命救急センターの当直医の名前が書いてあります。 3人が常勤、3人がレジデントです。緑で書いたER外傷系、小児系、疾病系というのは、 先ほどの「けが、子ども、疾病」に対応するもので、それぞれシニア、ジュニアのレジ デントでカバーをするという体制です。それとは別に、黒で書いた内科(1)、内科(2)、内 科(3)から麻酔科まで、これはいわゆる各科の病棟当直医、管理当直医です。したがって、 夜中のある時刻を見ると、墨東病院にはこれだけの医者がいるという状態になります。 そういう状態でERを運営しています。  先ほど申し上げたように、救命救急センターの医師がERコーディネーターをやると いうことで、おそらく寺澤先生が心配されたような危惧、問題点を多少はカバーできて いるのではないかと考えております。例えば、「うちじゃ内科」というものが、当院に もあります。内科系の当直医が循環器専門のドクターの場合、吐下血の患者さんがで診 られない。そのときは、わかった救命救急センターで取るからと。あるいは先ほど申し 上げた、頭蓋骨と鎖骨の骨折の患者は、本来重症度からいえば救命救急センターでなく てもいいのですが、中ぶらりんになるぐらいだったら、救命救急センターで診るからガ シャガシャ言うなといって取ります。  いずれにしても、センターがバッファーという形で、あるいは受け皿という形で、各 科の管理当直医の便宜を図り、それで、墨東病院としては、とにかく患者に不利益が被 らないようにということを考えています。  先ほど寺澤先生が、危惧されているとおっしゃっているとおり、窮余の策で救命救急 センターがバックアップするという体制を、うちの病院の場合は取らざるを得なかった。 逆に言うと、救命救急センターがバックアップすることで、多少なりともうまく回って いるのかなという気がしております。 ☆スライド これがうちの医療圏の地図です。東京の方はすぐにおわかりになるかと思 うのですが、左端にある白い丸が東京駅です。黒い丸が墨東病院の所在地です。赤が墨 田区、緑が江東区、黄色が江戸川区、水色が葛飾区になります。  赤のラインで縁どりをした赤の墨田区、緑の江東区、黄色の江戸川区が「区東部医療 圏」という、1つの医療圏を形成しています。うちがそこの基幹病院になっていますが、 東京駅から大体4kmの所にうちの病院があります。そうすると、区東部医療圏というの は、大体半径4kmないし5kmの円に収まります。そこの人口を全部足すと、おそらく 120〜130万人、葛飾区を入れると160万人を超えます。寺澤先生の福井県は、全県で90 万人だったと思うのですが、うちの医療圏は福井県2つ分近くの人口を抱えることにな ります。しかも、地域的には半径5kmの円の中に入るという、超過密地帯になります。  黒丸がうちの墨東病院です。白地に赤い十字が点々とありますが、いわゆる二次救急 病院です。随分数がたくさんあるように思うのですが、どなたかがおっしゃったように、 夜間を見ると、おそらく多くの病院は当直医は1人しかおりません。あるいは、救急を 頑張っていらっしゃる病院でも、せいぜい内科医1人、外科医1人ぐらいの体制を取れ るぐらいです。  いま申し上げた区東部医療圏の中で、夜間、平気でどんな患者の全身麻酔もかけられ るのは、まずうちしかありません。特殊な領域に限っては、あと1、2、例えば脳外科領 域だったら引き受けるとか、大動脈解離だったら引き受けるといった、ごく特殊な病院 が1、2軒あるだけで、全身麻酔をかけられる、つまり、すべての外傷とか内因性疾患に 対して麻酔をかけられる準備ができているのは、その医療圏で夜間に関して言えば、う ちだけです。つまり、そういう医療圏です。  そうすると、何が言いたいかというと、初期、二次、三次という階層型というのは、 実は絵に描いた餅であって、夜間は正直言うとうちしかない、二次以上はうちしかない 医療圏だということになります。 ☆スライド まとめに入ります。実はER型救急というのは、寺澤先生がおっしゃった ように、院内の体制のことをいっています。いわゆるホスピタルベースの話だろうと思 います。ところが、初期、二次、三次という階層の話は、病院間もしくはある地域、特 に医療圏の中の体制の話であって、例えばER型救急を取れば、それで何かが解決する ということではなくて、全く別の次元の話をしています。  現に、いま例を出したように、墨東病院では、初期、二次、三次という階層構造の中 の救命救急センターがバックアップすることで、二次の部分のER型救急を支えるとい うことが可能となっています。これは、つまり、純粋な北米型ERではなくて、「東京 ER」というメイド・イン・ジャパンの体制なのだろうと思います。 ☆スライド 先ほど申し上げたように、夜間に関しては階層構造が崩れています。とす ると、実は都知事から最初にERをやれと言われたときに、何を思ったかというと、区 東部医療圏の救急車が全部うちに来るのだと思ったのです。そこでトリアージをかけて、 周りの二次病院に下り搬送というか、そっちで大丈夫だからそっちへ行ってよ、という ようなことをやる必要があるのではないかと考えました。  当時のデータを見ると、区東部医療圏だけで年間5万件の救急車が出動しています。 そのうち墨東病院が収容していたのは、5,000件です。ということは、うちは10%しか 救急車を取っていなかったのです。残る90%は周りの二次病院が引き受けてくれていま した。  それで、東京ER構想にあたって都知事が「金と人をやるからほしいだけ言え」とい うので、申し上げました。当時墨東病院は730床ありまして、医者の定数は150名でし た。その10倍を言わなければ駄目なので、医者が1,500人ほしい、ベッドは7,300床ほ しいと言いました。そしたら都知事は、「よくわかった、付けてやる」といって、付け てくれました。どのように付けたかというと、ベッドは730床そのままでしたが、医者 は150人が156人になりました。ということで現在に至っています。  これは半ば冗談ですが、要は、ERの考え方を病院ベースではなくて、エリアベース で捉えなくてはいけないということです。つまり、区東部医療圏のER部門として、例 えば墨東病院全体がERのような格好になって、地域の病院にトリアージをかけていく。 そうすると、おそらく救急隊もとても楽なのです。墨東病院にさえ行けば、あとは中で トリアージをかけてくれる。さっき言ったみたいに「整形と脳外科をお願いします」と 言って、あちこち病院を叩かなくても済むだろうという、半ば夢物語みたいなことです が、私自身はそういうようなことを考えています。 ☆スライド まとめです。いま申し上げたように、都立墨東病院の初期・二次救急は、 寺澤先生が先ほどお話くださったような北米型ERのシステム、それからは少しずれて いるところもあるのですが、いわば日本型のERシステムを採用している。ただし、そ のシステムを有効に運用するためには、既存の救命救急センターの存在が不可欠である ということです。そうすることによって、寺澤先生が心配していらっしゃる危惧を少し でも払拭できるようにしたいということを考えています。  最後にこれはスライドに書かなかったのですが、夢物語として、医療圏の中のER構 想、医療圏の中におけるERシステムが取れないかなと。これはあくまでも夢物語なの でスライドには作りませんでした。以上です。 ○座長 濱邊先生のいまのお話に、ご質問等がありましたらどうぞ。ここに書かれてい なかった医療圏というか、先生の地域全般に、二次医療圏にいくつかのそういうER型 の二次病院というか、そういうものをつくって、そこから各医療機関に、先生のところ の付属の救命センターも含めて、逆にトリアージした患者を送るという、それはアイデ ィアとしては面白いと思うのですが。 ○濱邊参考人 実際どうすればいいかと考えたときに、石原慎太郎都知事が言ったNHK ドラマのシカゴのERの場合、先ほど寺澤先生がおっしゃったように、大体人口30万〜 40万人ぐらいを対象としていると思われますが、そうだとすると、この医療圏の中に、 うちと同じクラスの病院があと5つ、6つなければいけないことになってしまいます。 ○座長 それはERトリアージ型病院としてですか。 ○濱邊参考人 内容的には、墨東病院クラス、いわゆる700床クラスの病院があと5つ、 6つないと、150〜160万人の患者をカバーできないのではないかと思います。  ただし、あくまでも救急患者ということに限って言えば、そうは要らないかと思うの です。ただ、救急というものを考えたときに、先ほど寺澤先生が「救急だけを診ている ような病院があれば行きたい」とおっしゃっていましたが、実際にどうでしょうか、救 急だけで病院が成立するのでしょうか。総合病院の基盤があって、はじめて救急という のができるのではないかと私は思っています。そうだとすると、やはりこの医療圏の中 に墨東病院クラスの病院が、最低でもあと2つ3つないと、できないような気はします。 ○座長 先生のアイディアをある程度モディファイしたり、いろいろなことをすると、 何か新しい、面白いシステムが出来上がりそうな気はしますが、全般的にいかがでしょ うか。 ○松下委員 お二人にお聞きしたいのですが、そうなっているにもかかわらず、先生の ところに来ない、他の病院に行く人がいるわけですよね、ERに来ずに他の病院に。 ○濱邊参考人 患者さんですか、救急車ですか。 ○松下委員 夜は全員来ているのですか。 ○濱邊参考人 私のほうから言うと、うちの場合、救急車を断ることはあります。寺澤 先生は全部取るとおっしゃったけれども、うちはそんなもの取っていたらパンクするの です。パンクするし、その地図を見てもわかるとおりに、もっと近い二次病院があるの です。 ○松下委員 それはわかりました。 ○濱邊参考人 だから、そっちへ行ってくださいと。 ○松下委員 無条件に取っているのに、何で来ないのだろう、他へ行くのだろうと思っ たので。先生のところは無条件に取っていると、全部来ていますか。 ○寺澤参考人 いえ、日赤さんとか、済生会さんとか、福井総合病院さんとか、そちら にかかっている患者とか、そちらの近くの軽い交通事故の患者とか、そういったものは 救急隊員たちは、福井総合病院、福井済生会病院、福井赤十字病院に運んでいます。  つまり、先ほどの濱邊先生の続きになりますが、すでに救命センターがある施設は、 救命救急センターの三次救急以外の患者に関して、ER初期診療部隊を濱邊先生のとこ ろがやったようにやればいいのではないかと私は思うのです。それとは別に、救命救急 センターがない、救命に熱心な二次から2.5次ぐらいまでの患者を引き受けている病院 で、ER型の救急を少し増やせば、私は少しいい目があるのではないかとどこかで思っ ているのです。  つまり、救命センターではない病院のER型と、救命センターが付設されたところで ER初期診療部隊を追加するのと、2つの策戦が考えられるように思うのですが、いかが でしょうか。 ○松下委員 そう思います。それが充実すれば、基本的にはそこで全部救急は診られる ようになるということですよね。 ○座長 いまの救命センターに付属して、例えば濱邊先生がおっしゃるような、そこの 救命センターとは別に、そこでトリアージをして、各二次医療機関等を含めて、患者を ディストリビューションするというようなシステムはありかなと。ちょっと両方のご意 見を聞いていて、どうなのでしょうね。 ○濱邊参考人 そうしたことは、すでにうちではやっていると思っています。実は、ER にオーバーナイトのベッドを10床ほど持っています。そうすると、例えば、ある病院の かかりつけの患者さんが救急車を要請し、救急隊が、そこの病院に当たったら、今晩は 診られないといって断わった場合、うちに来てしまいますが、だけれども、一晩こっち で預かるから、夜が明けたら取ってねと言うと、大体取ってくれることが多いのです。 ○座長 そうそう、昼間が、いまの救急医療体制で、たらい回し等を含めてほとんど問 題ないのです。要するに、時間外を含めた救急がうまくいっていない。  私もそれをちょっと思っていまして、オーバーナイトで、何とかその患者を受け入れ れば、昼間に患者を動かすと結構スムーズにいくのではないか。夜の10何時間なりをき っちりと診られるようなシステムは、非常に重要だなという気はします。 ○前川委員 予防医学というか、昼間にきちんと患者が病院に来れば済むことが、かな りあると思うのです。厚労省の科学研究費で、私は委員にさせていただいて、北海道の 陸別町で、へき地の救急医療がどうなっているか。そこにおられた先生が、普段から患 者と密接に話をしながらやっていくと、慢性疾患であっても急性増悪をするわけですの で、その先生が行かれて救急搬送が3分の1になったのです。いままでは北見と帯広と 網走に運んでいたのですが。  これは、病院側が一生懸命考えることが1つあるのです。先ほどの小児救急なども同 じなのですが、夕方から夜に来られる、休みに来られる。お母さんたちが昼間に働かれ ているからという背景もあるのだと思うのです。そういう場合に、少し予防医学的な要 素を入れておくと、交通事故とか、そういうもの以外は、かなり防げる可能性もあるの ではないかと思うのです。 ○石井委員 今日のER型のそれぞれの立場があって、非常に参考になったのですが、 私の知っているのは人口100万人の仙台で、休日・夜間診療所が拡大したバージョンで、 街に2つつくって、かなり役に立っているという実例があります。  また別に、イスラエルのテルアビブで見せてもらいました。そのモデルは10人ぐらい のドクターを抱えた複合クリニックで、そこでできるだけのことをやり、病院に送らな いで、小手術までやると報奨金まで出るという話を聞きました。これが町の地域医療に 役立っているという事です。 ○濱邊参考人 いまのお話で、先ほど地図で示した、墨田、江東、江戸川区の3区の中 に、それぞれ各区に2つずつほど、夜間診療所を各医師会の先生方でつくってくださっ ています。特に小児科を中心につくってくださっています。うちに来るERのウォーク インの3分の1ぐらいが子どもの患者です。そういう診療所に子どもが行ってくれれば、 うちのERはとても楽なのです。ところが、実際に来られた住所を見ると、結構遠い所 から集まってきているのです。よく小児科のドクターと話をするのは、そういうのは近 場の診療所に行ってくれればいいのだけれども、ということなのです。  そこで1つ思っているのは、昨今、救急で来たら1万円取れとかありますが、そうい うのではなくて、エリアを超えて来るのであれば、少し取りますよと。その代わり、お 金を取られるのが嫌だったら、地元に診療所がありますので、まずそちらへ行ってくだ さいという形の誘導をすれば、お母さんたちも納得するというか、うまく分散してくれ るのではないかという気がしているのですが、いかがでしょうか。 ○座長 それはウォークインのかなりの子どもを含めた患者を、その地域では診られな いから来るのではないのですか。あるいは診ないという既成事実みたいなものがあって。 ○濱邊参考人 先ほどスライドで示したような案内板に「4時間待ち」とか出しても、 患者さんたちは4時間待つのです。何であれを出しているかというと、4時間待つのだ ったら別の医療機関に行ってくれるだろうと期待して出すのですが、患者さんたちは行 かないのです。それは、墨東病院だと手術もできる、検査もできる、ところが休日・夜 間診療所だと診察しかしてくれない。それは先ほど前川先生のおっしゃつた患者サイド の我がままのなせるわざというか、わざわざ夜中にこんな遠い所まで来なくていいのに という我々の思いが、どうも患者さんたちに伝わらないのです。 ○山本委員 もう1つは一度みんなが「先生のところで診てくれるよ」といったら、周 りの先生方は診ないで酒でも飲んでいたほうがいいのですから。 ○濱邊参考人 先生のおっしゃるとおりで、実はせっかくつくった休日・夜間診療所が あまり人気がないのだったら閉めようかという話が出てきはじめているので、心配して いるのです。ですから、無理矢理にでも、江東区の人は江東区の夜間診療所へ行ってく ださい、墨田区の人は墨田区の夜間診療所へ行ってくださいと。にもかかわらず墨東病 院に来たいのだったら、少しお金を取りますよ、ということで誘導しないと。 ○座長 各二次医療圏なりある地域の中に、そういうオーバーナイト型のERの、差し 当たってはある一定時期だけ、短期間だけは何とかしますというものがいくつかできる と、そこにはそれなりのマンパワーが必要だという気はするのですが、そういう格好で、 例えば単純骨折も含めて、子どもも含めて、そういう形の二次、三次に付属していても いいのですが、そういうものをいくつか設けると、それに診療報酬等を加えると、何か いけそうな気はしますよね。それは1つの案として、私は個人的に興味があります。 ○濱邊参考人 病院の医者というのは自分の病院でしか働けないのですが、そういう診 療に医師会の先生方に協力していただけると、とても大きな力になると思っています。 おそらくそこでローテーションをすれば、例えば医師会の先生方は3カ月に1回ぐらい の当直でよくなり、結構楽というか、持続可能だろうと思うのです。 ○座長 それが先ほどあった「輪番制が崩壊している」という話で、輪番制で当直して いる先生はほとんどが専門医なのです。そういう先生が、そういう場所に、整形外科医 も、脳外科医も、お腹の先生も、循環器外科の先生も、ある程度詰めるような格好にす れば、輪番制の病院1つで、うちは診られませんと言ってあちこち行くよりも、そこへ 行けば、その先生が自分のテリトリーをきっちり診られるというようなシステムは、非 常にいいような気はするのです。それもオプションとして、今後考えてみる必要は十分 にあると思います。 ○藤村委員 小児救急の話が出ていますが、日本小児科学会では、小児の一次救急、急 病は、当然地域の小児科医みんなの力でやろうということで、いま言われたような、地 区における急病診療所は開業の先生と、勤務医のうちでも救急をやっていないような小 児科の勤務医が出て、それを維持していこうという方針です。急病、二次疾患は小児科 の中できちんと完結させようという方針は出しています。  問題は、いま地域における一次の救急の開設時間が、極めて限られていることです。 これは厚労省の統計にもあると思うのですが、午前0時を過ぎて、午前6時ぐらいまで、 日本広しと言えども、ずっとやっている一次急病診療所というのは、本当に数えるほど なのです。ですから、数は夜が更けていくにつれて減らしていくにしても、三次医療圏、 あるいは二次医療圏で、必ずどこかがやっているという体制を作らなければいけないと いうのが、小児科学会としての考え方です。 ○座長 そういうものの受け皿としても、十分に先ほどの話はいけるかなと思います。 予定をすでに30分過ぎていますので、この辺で終わりたいと思いますが、最後に、最初 に少し話が出た輪番制の中で、非常に高い専門性をもった先生が一般当直を含めてやっ ていて、それが診られない。当たり前と言えば当たり前なのですが、そういうことをな くそうと、ある程度専門性の下に幅の広い臨床能力を身につけようということで始まっ た卒後臨床研修システムが、もう5年になります。そういうシステムを作られた本人の 篠崎先生に来ていただいていますので、その辺の卒後臨床研修システムを、例えば救急 ベースにシフトさせると、いろいろな意味で救急患者を診る先生方も少しは増えたり、 あるいはERをそれなりに消化できるような医師がそれなりにできるかなという気もす るのですが、その辺はいかがでしょうか。 ○篠崎委員 そうですね、新医師臨床研修については、プライマリーケアを研修すると いうのが大きな理念で、そういう意味からすると、救急医療というのはプライマリーケ アの最も基本的なところでありますから、5年やってみて、かなり初期の目的は達成さ れた部分が多いと思います。  例えば端的に言うと、気管挿管については、その前の研修のときは「できる」「自信 がある」と言っていた研修医は、特別の専門に行った人以外は、そういう自信がなかっ たのですが、新しい臨床研修医になってからは到達目標に入っていますので、大いに改 善されたという報告もあります。もちろん気管挿管というのは、救急医療の1つの手技 でありますが、そういう理念も含めて、この臨床研修の果たした役割は結構あるのでは ないかと思っています。  5年経ちまして、この間見直しが行われまして、救命救急センターが管理型の研修施 設あるいは協力型の研修施設になっているところも増えてきていますので、そういうと ころでは期間、内容を含めて、さらに充実したものにしていくことが期待されていると 思っています。 ○座長 これから新しい臨床研修システムで、より救急患者が受け入れやすいような、 搬送システムというのはそれなりに重要なのですが、基本は受け入れる医療機関がきっ ちり救急患者を受け入れて、管理できるということがいちばん大切で、看護師等のマン パワーもありますが、その主役は何といっても救急患者を診る医者になります。そうい うことを含めて、卒後臨床研修あるいは一部卒前にもかかわってくるかと思うのですが、 その辺を是非ともこれからもよろしくお願いします。  30分過ぎましたのでこれで終わりたいと思うのですが、今日いろいろ議論していただ いた内容を含めて、今後事務局でもいろいろまとめていただきたいと思います。次回は 5月か6月を目処に行いたいということですが、その辺のスケジュールを含めて事務局 からお願いします。 ○田邉専門官 委員の皆様、参考人の皆様、本日はお忙しいところ長時間ありがとうご ざいました。次回の検討会は5月下旬から6月上旬を目処に、追って日程調整をさせて いただいた後に、皆様にご連絡を差し上げます。議題については、座長とご相談させて いただいてと思っています。  1つ資料の訂正があります。資料4ですが、今日は時間の関係上ご説明しませんでし たが、次回ご紹介させていただきます。訂正はいちばん最後の行で、「平成18年度より 一般財源化された」と書いてありますが、「平成17年度より」の間違いですので、よろ しくお願いいたします。 ○座長 これで今回の検討会を終了します。今日は二次にかかわるいろいろな問題を含 めて、関係者の皆様方にわざわざ来ていただきまして、ご意見を伺いました。本当にあ りがとうございました。今回の報告あるいは議論を基に、新しい方向性を検討していき たいと思いますので、是非ともまたご協力をお願いいたします。これで終了いたします。 照会先:厚生労働省医政局指導課 代表 03-5253-1111(内線2551)