08/04/25 第3回障害児支援の見直しに関する検討会(議事録) 第3回障害児支援の見直しに関する検討会(議事録) 日時 平成20年4月25日(金)14:00〜16:00 場所 航空会館701・702会議室 ○障害福祉課長(障害保険福祉部) 定刻となりました。ただいまから、「第3回障害児 支援の見直しに関する検討会」を開催したいと思います。委員の皆様方におかれまして は、ご多忙の中をお集まりいただき、本当にありがとうございます。座長が急用で少し 遅れるとのことです。時間もありますので、私から本日の進め方についてご説明してい きたいと思います。  お手元に1枚紙の議事次第、「障害児支援の見直しに関する検討会(第3回)」という ペーパーがあろうかと思います。ご参照いただけますでしょうか。今回は前回に引き続 いて関係団体、あるいは行政の実施主体の方からお話をお聞かせいただくことになって います。お手元の資料にあるとおり、本日は合計7団体、財団法人日本知的障害者福祉 協会、社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会、社団法人日本重症児福祉協会、社会福祉 法人全国重症心身障害児(者)を守る会、全国肢体不自由児施設運営協議会、全国児童 相談所長会、特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク、以上7団体からの話 ということになっています。時間の関係もございます。大変恐縮ですが、前回同様、各 団体からの発表・意見説明は10分程度ということでお願いしたいと思います。  前回と同じですが、前半と後半の2つに分けたいと思っています。前半4団体からま ずお話をいただき、後半3団体ということでそれぞれ区切ったあと、質疑・応答の時間 を取ることとしたいと思っています。  お手元に資料1から資料7まで資料が出ています。各団体から説明の際、使う資料と いうことでお配りしていますのでご確認いただきたいと思います。また、先日、宮田委 員からちょっと話が出た、「障害児通園施設の機能統合に関する研究」という冊子の提供 がありました。お手元に配付しております。そのほか、検討スケジュール他、いくつか の資料を配付させていただいています。資料の関係は以上です。  早速、各団体からの発表に入りたいと思います。冒頭、日本知的障害者福祉協会様よ り発表をお願いしたいと思います。柴田委員、よろしくお願いいたします。 ○柴田委員 私からは概要だけ申し上げて、それぞれ入所施設、通園施設についての発 表を続けてすることにいたします。  お手元の資料を見ていただきたいと思います。「障害児の支援施策の位置づけ」ですが、 基本的には児童の養育と発達を支援する施策の中に位置づけて、自立支援法から切り離 して児童福祉法に一本化することがいちばん大きな課題であります。  援護の実施方法としては、入所は措置、通園およびその他は措置の行政義務と契約の 選択性とを合わせ持つような新しい仕組みを設ける必要があるだろう。なお、入所の措 置については自立支援計画の策定を義務づけるなど、養護施設と同様の仕組みをきちん と整える必要があるだろうと思います。援護の実施機関については都道府県、その他の 支援については検討が必要だろう。入所および通園は都道府県であろうと思います。  支援の費用ですが、入所および通園は月額制として、施設運営の基本部分は定額制と する。それから、通園施設の他の制度との並行利用を別途考慮する。文字が間違ってい まして、「平行」は「並」です。利用者負担は定率負担ではなく、応能負担とする。障害 の一元化については、通園施設は障害の一元化を進める、グレーゾーンにも対応する。 入所施設については、やはり条件整備が必要だろうと思います。支援機能については家 族支援、地域生活支援機能をもつ。  通園施設と児童デイサービスの再編が必要かと思います。通園は基幹的な機能を持つ とともに、現在、定員の30名を20名に下げてもう少し作りやすくする。新たに、5人 以上の併設型を設けてはどうかと考えます。この5人以上の併設型、およびデイサービ スその他についての実施機関についてはなお検討の必要があるだろう。ただ、児童デイ については単価が極端に低いということがありますので、抜本的な制度改革が必要であ ろうと思います。いちばん上の行、「法体系」と書いたつもりが「法定型」となっていま す。そこの文字を直していただきたいと思います。  続いて、入所および通園についてそれぞれご説明いたします。 ○加藤氏(日本知的障害者福祉協会) 財団法人日本知的障害者福祉協会の発達支援部 会が今回の見直しに該当する分野です。その中で、実は協会には通園と入所と両方ござ います。それぞれ、入所は100年以上の歴史があり、通園のほうも数十年の歴史があり ます。私たちにいま与えられている時間は僅かですので、どういうようにご紹介申し上 げたらよろしいか苦慮しました。  柴田委員から粗々の説明はしていただきましたので、ちょっと深く入ったところで話 をさせていただきたいと思います。この内容についてはお手元の資料1の中に粗々載っ てはいます。前の画面を見ていただけたらと思います。  地域の中で、育ちが気になる子供たちが健やかに、その地域の中で学びながら育って いく、成長していくことを支援するに際しては、私のいま考えているものはこういうも のです。地面がありまして、その上に木が生えている。これを私自身は「リンゴの木」、 リンゴでもみかんでも梨でも何でもいいのです。リンゴがカラフルでいいだろうという ことで、リンゴを選ばせていただきました。  このリンゴが地域で育っている子供たちと思っています。この子供たちはいろいろな 大きさ、いろいろな形状のリンゴがなっているわけです。これが等しく、リンゴらしく 育っていくためには、まずしっかり地面に根をはっている必要があるだろう。その地面 というのは児童福祉分野のことだろう。あくまでも発達が気になろうがなるまいが、そ の子供たちの1人ひとりは等しく、子供の施策の中で論じられなければいけない。そこ での権利が担保されなければいけないのではないか。そういう意味では、現行では児童 福祉法が中心になるでしょうし、具体的な施策としては少子化対策とか社会支援育成事 業等、いろいろな施策が矢継ぎ早に講じられているところではあります。それらの中に 気になる子供たち、障害のある子供たちがどこまで配慮されているのかということが懸 念されるところであります。  そうした大きな地面に立っている木としては、まず幹としては地域生活支援、地域の 中でそうした子供を抱えた家族がしっかり生きていくという意味では、地域そのものが いろいろ受容的な、ノーマライズされた地域社会に乗っていないといけない。あるいは、 サービスそのものが点であってはいけない。線であり、面となる必要があるだろう。そ のために、我々が持っているさまざまな資源、サービスや人材等について、しっかり供 給・提供できるようなあり様が求められているだろう。  その幹に葉っぱがたくさん茂るわけです。その葉っぱを一応家族支援と見立てました。 そういうお子さんを抱えた父親や母親が青天の霹靂の事実を受け止めかねきれている。 そうした中で、自分たちの人生設計をもう1度立て直す。あるいは、障害受容という視 点からもう1度人生構築を考えなければいけない。そこに私たちがいかにサポートでき るか、コミットできるかということが求められていると思います。そうした子供を抱え た場合の生きにくさ、育てにくさ、生活のしづらさということがあります。その辺につ いてのさまざまなサービスをきめ細やかに提供する。あるいは、そういうお子さんの場 合、いろいろな意味で社会的に孤立という状況があります。その辺についてのサポート も重要な役割だろうと思われます。  一般的には、こういう通園施設と言われますと子供への直接的支援、遅れた部分、成 長しきれていない部分、不足している部分、不完全な部分を支える。そういうような意 味での支援ということになるわけです。それは確かに第一義的なものではあるとしても、 この図にご紹介させていただいたように、そのバックには家族支援、さらには地域支援、 そうしたものがしっかり関連づけられた形で、地域の中に通園が機関として機能してい くことが必要ではないかと思います。当然、その前提としては、この地面のように子供 施策の中にそれらがしっかりと位置づいていることが大きな前提になるのではないかと 思います。  もう1つの図をご覧ください。これはそういうことを背景にして、地域の中でのサー ビスがどういう組立てであればいいかです。ここでお示しするのは、先ほど来申し上げ ています児童福祉法・子育て支援サービスがまずベースにあって、その上にこの黄色の 部分、先ほど申し上げた発達支援、家族支援、地域生活支援というようなものがどこに 生まれようとも、地域間格差、あるいは施設間格差というものが最小限になるような形 で全国津々浦々に配備、整備されることが大事なことではないかと思います。  それがまずベース、基本的なメニューとしてあった上にアセスメント、あるいはそう いうお子さんの場合ですと医療的なニーズもかなりあります。そういうニーズを地域か ら、あるいはその機関そのもので提供するというようなことがあって然るべきだろう。 さらに、お子さんによっては、オプションとしてのPT、OT、STといったようなレベルの サービスも必要とすることがあろうかと思います。  そういう意味で、1人ひとりの地域に生まれ育っているお子さんが縦軸というか、階 段上になっている縦のライン、線が抜けてしまっています。それをイメージしたものが あったらいいかなと思います。地域の中に、この黄色の部分までのところがどこにあっ ても最低限保証されている。その上に、お子さんによっていろいろなニーズがあるだろ う。それらをオプション的に重ねていって、最終的に例えば1人ひとりのお子さんのサ ービスが組み立てられる、あるいはそれに伴う単価がもし設定されるとすれば、それに 見合った単価が加算されていく。このような組立てであったらいいのかなと考えていま す。そのようなことを通園の立場としては申し上げたいと思います。 ○田中氏(日本知的障害者福祉協会) 知的障害児施設の種別の代表をしております田 中と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。  「児童施設分科会」というように私どもは言っております。いま、加藤の冒頭の説明 にありましたように、知的障害児施設は戦前の滝ノ川学園の石井先生をはじめとした渓 流の中で、歴史と伝統を積み上げながら現在に至っているというのが知的障害児施設の 歴史となろうかと思います。いずれにしても、戦後、糸川先生とか、いろいろな方が知 的障害児施設がどうあるべきか、実践の中から切り開いてきた施設のあり様として、こ れからの施設のあり方を考えていく上で考えなければいけない。そういう経過の中で、3 頁で7点ほど項目を挙げさせていただきました。今後の見直し・検討に際して、やはり 平成18年10月に児童福祉法の改正が施行され、契約制度が導入されてきたことにおけ るさまざまな問題をきちんと検証・評価せずに、先の施設のあり様や支援のあり様とい うことはなかなか見えてこないのではないかと考えているところです。  昭和23年、児童福祉法の施行に伴って、18施設ほどでスタートした私どもの知的障 害児施設が資料の14頁、私どもの施設の現状の経過について若干触れています。いずれ にしても、法2条で言う公的責任を含めて、効率生産を中心にして戦後の施設が増えて きたという背景があります。施設が減少してくるという現状の中では、やはり児童福祉 法における法定年齢の対応の問題、つまり私どもは法定年齢を過ぎた18歳以上の方を年 齢が過ぎたということで対策を考えてきました。そういった満18歳を超える方々が増え ることによって、私ども施設の中で起きてきたことは大人の施設のほうに転換をしてい くということで、施設が減ってきたという背景がございます。  子供についても、時代のニーズに合わせて施設の求められる機能も変化してくる。そ ういう中で、特に昭和54年の養護学校の義務設置、義務制を契機にして、それまで施設 が担っていた教育的役割から、まさに児童養護施設と同じように家庭を支援する機能と いうか、家庭養護機能を軸にした役割に変わってきている。そういう状況の中で、現在、 年間にして大体1,300人から1,500人程度の方が新たに私どもの施設の門を訪れるとい う状況が続いています。その辺については、細かく資料をご覧になっていただければと 思います。  平成18年、障害者自立支援法の施行に伴って児童福祉法が改正されたことにより、契 約制度が導入された。この利用者負担についてやはり大きな課題が書かれております。 私ども児童施設の場合には学校教育費から医療費、また日用品、食料品が定率の1割負 担というものは、やはり施設を利用する世帯の皆様方の負担が大変重くなってきている ことも現実であります。地域で暮らす費用と同じという考え方からすれば、特別児童扶 養手当の施設入所に伴い、支給が制限されることについて、何らかの対応が必要ではな いかということをこの法改正の流れの中で主張させていただきました。現実的には負担 軽減策をいろいろ講じていただいて、かなり負担が軽減されているということについて は感謝申し上げたいと思います。やはり、負担を求める考え方そのものが措置と契約で は明らかに違うということにおける、さまざまな混乱が現場の中では起きているという ことも事実であります。契約制度という制度を適用するに当たって、私ども、「児童施設 分科会」では平成18年11月、1月、それから平成19年の5月と、継続して決定状況に ついて調査をさせていただきました。そのことの1つの結果として、都道府県児童相談 所によって明らかに判断の違いが大きく見られること、これを私どもとしては重視した いと主張させてもらってきました。  いずれにしても、同一世帯の兄弟で障害のない子供は児童養護施設に行ったら措置で、 障害のある子供が知的障害児施設に入所したら契約という、こういった背景をどうやっ て説明ができるのか。私ども現場としては正当的な説明がつきません。ですから、措置 か契約かということの基本的な判断というのは、もう1回きちんと見直すべきだろうと 思います。全国の施設の中では、知的障害者更生施設に入所しているお母さんの世帯で、 お子さんが私ども知的障害児施設に入所された場合に、お母さんは更生施設に契約で入 所しているから契約能力があります。行き場のない、暮らす場のない子供が契約という ことの中で私ども施設に暮らす。こういった実態がどういうことであるのか。こういっ たことは戦後、児童福祉法が制定されてきた理念、また児童憲章等に見られる「子供を 社会が守っていく」という視点から見たときに、今回の法改正におけるさまざまな判断 の違いということはやはり大きな課題として、今後障害児を支援していく理念的な、ま た方法論的な意味で、是非見直しをしていただきたいと思っているところです。  私たちは、児童相談所と児童福祉施設というのは、児童の福祉を守っていく両輪だと 考えています。そして、それをつないでいく行政施策が車のシャフトであって、両輪と シャフトをしっかり支えて前へ進んでいくことが、私ども児童福祉の基本的な考え方で はないかと考えているところです。そういう意味で、今回、障害児の施設のみで契約制 度が導入されたことにおけるそれぞれの現場の混乱というのは、もう前へ進んでいくパ ワーが生まれてこないというぐらい、現場は混乱している。いわゆる、障害児福祉の現 場が混乱していることを是非、勘案していただければ幸いかと思います。  いま、私ども施設を利用する多くの子供たちは、やはり家庭、先ほど加藤さんから説 明があったように落ちたりんごが1つあったわけです。つまり、地域的な支援、発達的 な支援、教育的な支援、さまざまなものをやってもご家庭の中で子供を支えられなくな っていくという状況があるわけです。その子たちと家族をどうやって支えていくのかと いうことは、やはり社会の責任としてきちんとしたシステム、仕組みの中でやっていか なければいけないことだろうと思います。そういう意味では、私ども施設に入所してい るいろいろな理由について、調査の中のデータを少しお示ししてありますので、ご覧に なっていただければと思います。「社会的養護を要する子供たち」と日本の児童福祉が言 われているように、さまざまな課題を抱えている。そういった中から、障害を持つ子供 と家族が地域の中で安心して暮らしていける。そのための仕組みをどう作っていくのか ということが、私たち関係者が抱えている課題ではないかと思います。  戦後、糸賀先生が「この子らに世の光ではなくて、この子らを世の光に」とおっしゃ ってきました。いま、法改正後、現場で起きている実態の一部は、まさに「この子らに 陽が当たらない」、光が当たらない状態の中で状況が進んでいるということも、やはり総 合的な施策の中からもう1回、いちばん弱い子供たちをきちんと支えていける日本の障 害児福祉の仕組みへ進んでいっていただきたい、ということを最後に訴えて終わりにし たいと思います。どうも、ありがとうございました。 ○柏女座長 ありがとうございました。遅れまして申し訳ありませんでした。よろしい でしょうか。それでは、日本知的障害者福祉協会のご発表を終わります。続きまして、 全日本手をつなぐ育成会の方、よろしくお願いいたします。 ○副島委員 障害児支援の見直しに関して、特に子供を抱える親の立場からいろいろな 面を整理してみました。担当の理事である吉川から発表させてもらいます。 ○吉川氏(全日本手をつなぐ育成会) よろしくお願いします。全日本育成会では今回 の提言に向けて、各地の育成会から意見を募りました。今回はそれをまとめたものに、 さらに方向性を追加して提言させていただきたいと思っています。育成会全体からの提 言としては、既存サービスにおける人員配置等の細かい要望も出てきていたのですが、 今回については時間的制約もありますので、基本方針への提言のみ述べたいと思います。  資料をご覧ください。はじめに「障害の有無や障害種別にかかわらず、子供は家庭お よび地域の中で育っていく」、この前提を疑う方はいらっしゃらないと思います。特に近 年、家族の保育力や家族関係の調整能力が低下してきているわけです。その中で子供が 子供らしく、健全に成長できるような環境をどうやったら整えていくことができるか。 ここの観点に立って、もう1度既存のサービスを見直し、新たに不足しているものを創 設していく必要があるのではないかと考えられます。つまり、障害を通して子供を見る というところを一旦離れて、すべての子供にとって必要な生育環境が障害の存在によっ てどのように阻害されているのかという観点から、障害児の成長や発達支援を捉え直す。 それに基づいて、母子保険や子育て支援、家族支援、地域支援、教育支援というものを 再編・拡充していく必要があるということを申し上げたいと思います。  「ライフステージを通じて一貫した支援」ということも、この委員会の答申の中に出 ていたと思います。どうやったら、ライフステージを通して一貫した支援ができるかな のですが、考えますに乳幼児期から学齢児までの障害児支援というもの、いままで障害 児のための支援というのはそれなりに開発され、拡充されてきた経緯がありますが、障 害児を通して行う親・家族への支援から、家族への支援をきちんとやって、さらにそこ で子供の支援を行えることができるように転換していく必要があると考えられます。  先ほど、「子供が子供らしく健全に成長できる環境」と言いました。そのためには、ま ず家族の機能、家族の中で子供が育つということをどうやって支えていくかなしにはな り立たないと思います。そのために特に親なのですが、親としての働きを健全に行える ように支援する。「家族機能の支援」は、子供が子供らしく健全に育つための環境を用意 するための手段であると位置づける必要があります。  このように、子供が子供らしく育つ環境ができるということは、生活問題の発生予防 だと位置づける必要があります。子供の障害受容ができなくて、地域や親族からも孤立 して、虐待につながるという例は皆さんご存じのとおりです。それはなぜ起こるのかと いったときに、家族の機能が健全に働いていないからと位置づけることができるわけで す。特に早期介入、早期療育の必要など本当に皆さんがおっしゃっていることですが、 なぜ必要かといったら家族の孤立化を防ぐために行う。つまり、生活問題が深まってい くことを防ぐために行う必要があると位置づけていくことが大事なのではないかと思い ます。  特に学齢期から青年期にかけては、本人自身の中に自分が1人の大人として、社会に 参加していこうという意欲や、どういうようにしたら社会に参加できて自分らしいとい うものを生み出していけるかというイメージを作っていくことが大事になります。同時 に本人だけではなくて、親に同じようなイメージを作っていくことが大事になると考え ています。親にとって子供はいつまでも子供なので、「この子は私が守らなければ」とか 大人としてのこの子を認められない部分、そういうものが出てくることから考えると、 親への支援も併せて行っていくことが大事になるのではないかと思われます。具体的に 乳幼児期、学齢期、青年期にかけてどのようなことが支援のポイントになるのか。つま り、これを支援することで、家族の機能や本人の機能が健全化するというポイントをい くつか整理いたしました。  簡単に申し上げますと、乳幼児期には家庭が子供の安全基地になれる。そこを心の拠 り所として、身の回りの生活へのアクセスができていけるようになる支援をしていくこ とが大事になります。これはいままで「療育」という言葉の中で語られてきたことです が、特に家庭の中での療育機能といったとき、親が療育者の代わりになるということを 言われています。ただ、親にも自分自身の生活があって、家族とのバランスを取ること があって、仕事があってという中で、親に療育機能を全面移譲するということはやはり 難しかろうと思います。  ならば、そこでどういったことをほかが代替できるのか。親、家族を支援していかな いと、家族をつらくさせるばかりだと。余計、子供の健全な発達環境が阻害されていく わけです。そこも合わせて親自身の課題、家族の課題と子供の課題の両方にアクセスで きるサポート、それが大事になると考えられるわけです。  学齢期には豊かな生活体験による生活スキルを習得したり、いろいろなサービスを選 ぶ練習をしたりすることも大事になります。青年期には大人として、社会に巣立ってい くために障害の自己認識を深めたり、社会性を含めた就労に必要なスキルを習得してい く。それに合わせて、親自身も我が子が大人になっていくことを認めるための支援も必 要になってくるということです。  現行制度の問題点として、各地の育成会からあがってきた意見は3以降に述べていま す。乳幼児期において特に何が大事かというと、やはり早期発見、早期介入というとこ ろに集約されていたように思います。それは何のために必要なのかというと、先ほど2 の(1)、乳幼児期でこのようなニーズを満たすことが必要、そのニーズを満たすための 早期介入、早期療育ということで位置づけられると思います。細かいことがいろいろ書 いてありますが、あとでご覧になっていただけたらと思います。  学齢期においては先ほど、豊かな生活経験を通して自分の人生の幅を広げることがニ ーズであると言いました。その中でも特に長期休暇中、余暇の活動支援、ここの部分で 手薄なところがあって、どうしても一般の人々がしているような生活の幅の広がりが持 てない。それをどうしていくか。いまのところで言うと家族がそれを何とかしなければ いけない。その現状は家族にとっては負担が大きいことが言われています。  一方、ときどき指摘されている、サービスを過剰利用することで子供とのかかわりが 希薄なケースが出ている。これはやはり、子供を育てるための機能がうまく働いていな いと位置づけられるものですから、家族機能というものを重点にしてサービスを提供し ていける場所、機関、そういうものが必要になるということです。青年期については、 先ほども言いましたが生涯教育や余暇支援、親離れ・子離れといったものを支援してい くことが大事だということです。  最後に4番目になります。「支援制度や法整備への提言」、これも意見集約をした上で、 このような方向でということをお付けしました。方針の転換という意味では、いままで は障害児の療育のみ、家族支援は付加的な要素と捉えられてきた面があると思います。 家族関係、家族が果たすべき機能を良好に保つことで、子供の適切な発達環境を確保で きる。そのことによって一次障害を軽減し、二次障害の発生を予防することにつながる ということで、もう1度サービスの整備、見直しを行っていく必要があるだろうという ことです。それから、ライフステージごとの障害児の課題と家族の課題、両方を扱える 体制を作る。保険・医療・福祉教育などの既存サービスにおいてどの機能が、先ほどラ イフステージを通じて必要な支援のところで挙げたニーズを例えばということで挙げて あります。本人や家族の課題達成に関する機能をどのサービスが、どの場所が、どうい うように担えるのか、そしてそれをコーディネートできるのか。そういう仕組みをもう 1度考え直していく必要があるのではないか。支援体制と専門家の配備について言えば、 家族機能の健全化と家族の孤立防止を目的として、乳幼児健診のときの充実、特に地域 で療育にかかわる、昔あった地域性療育と支援事業のコーディネートや生活支援ワーカ ーのような働きをしてくれる専門職というものが必要ですし、家族ぐるみの支援体制の 確立をしていくことが大事だと思われます。  相談場所ということでは、ライフステージを通じた支援の提供を目的として、発達支 援や家族支援を行えるセンター的機能、あくまでもセンターを設置する必要はないと思 います。センター的機能を担えるものを各地の資源状況に合わせて配備する。例えば親 の会が担ってもいいですし、地域の教育者の集まりが担ってもかまいません。公民館で 行うこともあるし、地域の保健師が核になるということもあり得ると思います。そのよ うな多様なあり方を工夫することで、地域に応じた発達支援、家族支援というものが可 能になってくるのではないか。これが今回、「全日本手をつなぐ育成会」としての提言と いうことです。ご静聴、どうもありがとうございました。 ○柏女座長 ありがとうございました。引続き日本重症児福祉協会様、よろしくお願い いたします。 ○末光委員(日本重症児福祉協会) 日本重症児福祉協会としては、昨日、理事会を開 き、江草理事長、矢野会長、草野副会長以下全理事が出席し、この会に向けた要望を取 りまとめました。その内容と背景をご説明申し上げます。資料3に則って説明させてい ただきます。  まず、重症心身障害者に対する正しい理解を共有させていただきたいと思います。重 度の肢体不自由と重度の知的障害との重複した状態にある小児を「重症心身障害児」、成 人した人を含めて「重症心身障害児(者)」と呼んでいます。これは医学的診断名ではな く、児童福祉法上の定義であります。その細かな判定基準を国は示しておりませんが、 現在のところ、「大島の分類」で判定するのが一般的です。  その「大島の分類」を示しています。大きな枠の中の1、2、3、4が定義どおりの重症 心身障害児・者に該当し、日本ではおよそ3万8,000人いるものと推計されます。さら に、周辺の5、6、7、8、9で「たえず医学的管理下に置くべき者」、あるいは「障害の状 態が進行的と思われる者」、その他「合併症が多くある者」とに分かれます。そのうち、 結果として、重症心身障害児施設での受け入れを余儀なくされている方々もおり、その 人たちは「周辺児」と呼ばれています。  自称「重症児グループホーム」の代表者の方が次のようなことを親御さんを対象とし た講演会で紹介しておられました。「80歳のお父さんが娘を残して死ぬのが心配になり、 本人に『一緒にいこうか』と聞くと『お先にどうぞ』と答えた。重症児でもみてくれる ドクターがいるとグループホームでやれる」という内容であります。素晴らしい実践で はありますが、このようなやり取りのできる人は中学生レベル以上の知能を持っておら れるわけで、重症児では決してありません。元重症児だったかもしれませんが、いまで は「最重度肢体不自由」の人と言うべきですし、「重症児グループホーム」などと勝手な 使い方をしないでいただきたい。「最重度肢体不自由のグループホーム」と言うべきであ ります。  次に「超重症児」、「準超重症児」という用語について説明いたします。「超重症児」と は従来の重症児と比較して、呼吸管理を中心とした継続的な濃厚医療、濃厚ケアを必要 とし、モニタリングや細かな観察を要し、人出がかかる、病状が急変しやすいなどから、 診療報酬上、入院費の加算を設けていただいています。超重症児判定基準は(1)運動機能 は座位までで、(2)呼吸管理、食事機能、胃・食道逆流の有無、別項目として定期導尿、 人工肛門などの各々の項目のスコアの合計が25点以上で、それが6カ月以上続く場合を 「超重症児」、それに準じた10点以上24点以下を「準超重症児」と判定します。  実態については、国立を含む重症児施設に入所中の方々が「超重症児」1,426名、「準 超重症児」1,958名、併せて3,384名、全入所者の約18%に達しています。なお、NICU (新生児集中治療室)等に1年以上、長期入院しておられる人が約300名、在宅は約1,300 名と推計されます。  次に、医療福祉上の課題について申し上げます。入所部門については、重症児施設が 児童福祉法上の生活施設であり、かつ医療法上の病院であるわけですが、公法人立の重 症児施設、国立、国立病院機構を合計すると193カ所、約1万9,000ベッドが用意され ています。そのいずれも、96から97%の入所率を占めています。  そこでの課題はまず(1)、医師・看護師等の確保の困難さが挙げられます。(2)、定義ど おりの重症心身障害者が右の表のように、30年前と比べますと大幅に増加し73%を占め ています。さらに、先ほど申し上げましたように「超重症児」、「準超重症児」がその中 でも顕著に増えているわけであります。  3番目として、常時ほぼ満床状態にあり、「短期入所」への対応に苦慮しています。在 宅指向の中でのニーズに対応し切れておりません。特に東京都等では深刻であります。  (4)として入所待機者が少なくありません。先週、私どもはアンケート調査をいたしま した。その結果、公法人立重症児施設のうち82施設のみに限っても、925名の待機者が おられます。東京都、横浜市、大阪市等の大都市圏では待機者があまりにも多く、児童 相談所での把握のみで、施設での欠員ができたときに初めてその施設に連絡といった所 がかなりあります。そのことを勘案しますと、約3,000〜 5,000名の入所待機者が現在 おられるものと推計されます。中でも「超重症児」、「準超重症児」、それも病院での入所 待機者が増え続けています。  なお、この「超重症児」、「準超重症児」の措置入所の年次推移を4頁目の上の表に示 しています。約7、8年前から全体では2倍増になっていますが、特に重い「超重症児」 は3倍に増えている。その理由として、一般病院の在院日数の縛りの影響が大きいわけ です。各施設での努力も限界に来ています。受け入れ条件の厳しさの一端を申し上げま すと、NICU(新生児集中治療室)での診療報酬は、1人1日約8万円であるのに対し、 私ども重症児施設で同じ人を受け入れても1人1日約2万5,000円程度にしかなりませ ん。3分の1程度の費用で頑張っているわけですが、それも限界に来ていると言わざる を得ません。  今回の診療報酬改定で増額いただいた、6歳未満の「超重症児」と「準超重症児」の 診療加算の恩恵に浴するのは全体の5%しかおられない。そのことは2段目の表のとお りであります。残りの95%に適切に対応するためには加算の年齢撤廃をお願いしたいと 考えています。  次に、在宅の重症児は約2万5,000人と推計されます。そのうち約5分の1、20%程 度、5,000名程度が重症児通園利用をご利用です。その他は養護学校等に通っておられ るか、全くの在宅で、家族のみの世話を受けています。その重症児通園のうち、「超重症 児」、「準超重症児」はここでも1,300名に達していることは5頁の上の図のとおりであ ります。  この方々にとって、重症児通園はかけがえのない役割を果たしています。そのような ことから(1)重症児通園事業の維持・改善をお願いしたい。特に、医療機能を持つところ での超重症児加算の新設を願いたい。また、(2)の障害者自立支援法に移行しなければな らない場合には、在宅ということのみで生活介護に位置づけるのではなく、「療養介護型 の重症児通園」として設定いただくことを希望します。なお、短期入所についても、「超 重症児」、「準超重症児」の方が増えており、中でも重症児通園が在籍者の半数を占めて いることを真ん中の表で示しています。ここでも、そのような方を安心して受け入れら れる条件整備をお願いしたい。  最後に児童福祉法上の課題としては、重症児の生命が守られ、寿命の延長をもたらす ことができたのは、何よりも「児・者一貫」で、きめ細やかな医療、看護、リハビリ、 そして生活支援を生涯にわたって提供できる体制にしていただいているおかげです。そ の点、国立成育医療センターの対象とする医療の中に、小林登先生のご指摘のように、 「成人に達した小児難病患者等に対する医療」も、とあります。同じように、重症心身 障害児も成育医療の視点から是非、「児・者一貫」での支援が続けられることを強く願い ます。  なお、「障害者自立支援法」下で、療養介護施設へ移行した重症児施設は193カ所中、 国立病院機構と公法人立の各1カ所ずつに留まっています。40年間で築き上げた療育、 特に生涯にわたる発達支援への欠除への不安の声が強くあげられていることをお伝えし ておきます。  以上、背景説明をさせていただきました。最後に要望として4点挙げさせていただい ています。1.入所を必要としない、あるいは重症心身障害の状態を脱した、いわゆる 「元重症児」の適正処遇の推進のために、(1)関連施設への円滑な移行策を取っていただ きたい。特に、児童相談所や福祉事務所は、入所させっ放しではない対応をしっかりし ていただきたい。(2)最重度肢体不自由児グループホームの整備をしていただき、重症児 グループホームを詐称することのないように願いたい。  2.として、成育医療の観点から一貫した医療体制の維持を児童福祉法のもとでお願い したい。3.地域医療の立場から「超重症児」、「準超重症児」の積極的受け入れの可能な 条件整備をいただきたい。そのためには、「超重症児入院診療加算」の大幅増と「7対1 看護」の条件緩和をお願いしたい。4.在宅重症児と家族のトータルケアの充実のために、 重症児通園事業の存続を願いたい。その際、「超重症児」、「準超重症児」のための医療を 確保した通園、ショートステイの整備を特にお願いしたい。以上です。 ○柏女座長 ありがとうございました。前半の最後となりますけれども、全国重症心身 障害児(者)を守る会様からご報告をお願いいたします。 ○北浦委員(全国重症心身障害児(者)を守る会) 本日は意見発表の機会を与えてい ただき、大変ありがたく思っています。私どもの重症心身障害児施策というのは、常に 専門の先生方と車の両輪のようにして運動しています。いま、末光先生から細かいご説 明がありました。一応、資料をお出ししていますけれども、委員の先生方に43条の4 で「重症心身障害児とは一体どういう子なのか、どういう人たちのことを言うのか」と いうことがあるのではないかと思いますので、お時間をいただいて、私の思っているこ とをご説明させていただきます。  この資料のいちばん上にありますように、児童福祉法が昭和42年に初めて、重症心身 障害児施設というものが法制化されました。これは43条の4で「重症心身障害児の定義」 ですが、第63条の3で「18歳以上になっても施設から出なくてもいいし、施設に入る こともできる」。この児童福祉法の法律というのは、私どもにとっては非常に大事な制度 だと思います。その理由というのは、重症児というのは乳幼児のときに脳の疾患があっ て、そのためにマヒ、緊張、癲癇、それらの症状・発作があります。この症状というの は、小児神経の先生方でないとなかなか理解されない。きめ細かい観察と薬のコントロ ールが必要です。  例えば18歳を超えても、基本的なところでは変わりがないわけです。ですから、者と なっても小児・神経の先生方の手を離れることはできないのであります。  実は、私の次男は昭和21年に生まれました。大変元気な子だったのですが、7カ月の ときに種痘を接取しました。その種痘のために脳炎を起こして、その脳炎が原因で右半 身がマヒ、けいれんもあり、言葉も困難な重症児になってしまいました。 そのときの悩みはとても言葉では言い現せません。島田療育園を創設なさった小林提樹 先生と出会うことができました。その先生の細やかな診療のおかげでけいれんが軽くな りました。そうしますと、本当に感情が豊かになって音楽を楽しむ、おもちゃで遊ぶと いうようなことができるようになりました。  主人が難病にかかり、24歳のときにやむを得ず施設にお願いしたわけです。そうした ら、環境の変化で3カ月食事を拒否、拒食で食べないのです。もう駄目かなと思いまし たが、それを越えましたら素晴らしい成長をしました。医療によって生命が守られて、 福祉の関係者の細かい観察で、おもちゃで遊ぶ左手の指の動きを見て、この指だったら もし絵筆を持たせたらどうなるだろう。絵筆を持たせて、うつ伏せになって画用紙を置 きましたら、それに対して筆を動かしていく。手首を引っくり返したりするのですが、 赤、青、黄色を力強く描きました。それを見たときに本当にびっくりしました。その絵 の題に「生きる」と付けたぐらいです。  それから、ときどき絵を描いて、絵を描くというよりはなぐり描きと言ったらいいの でしょうか、それを楽しむようになりました。現在、還暦を迎えましたけれども、絵を 描くということで自分の心を表現することができるせいか、本当に良い笑顔をしていま す。にっこり笑っているものですから、職員の方々も朝来ると「おはよう」と言って、 「元気もらったよ。今日一日頑張るよ、ありがとう」という声をかけられると、余計良 い顔して頑張っています。ただ、やはりけいれんがあって、時々ひどいけいれんがあり ます。その上、夜は呼吸がちょっと困難でエアウェイを入れています。ですから、医療 とは絶対かけ放すことができない状況なのです。それでも、48歳を過ぎてこういう1つ の絵を描くようになり、豊かな生活ができるようになったということは全く児・者一貫 の制度のおかげと、私は心から感謝をしております。  しかし、このたび自立支援法が制定されて児・者一貫を改めて、重症心身障害児の児 と者を分けて、者は療養介護として難病と一緒になる。そういうことをお聞きして、一 体、こういう考え方というのはどこから出てくるのか。どういう理由なのかと思って、 いま私は大変悩んでいます。これは私の意見だけではなくて、専門家の先生方がみんな ご一緒で、うちの会の会報である『両親の集い』、これに各専門家の先生方にもご意見を 述べていただいています。ときおり、ある方など、「者を児と認めるのはかわいそうでは ないか」とか、机上の論理というか、おかしいということをおっしゃる方もあります。 それは本当の重症心身障害児の実態をご存じないからではないかと思います。  専門の先生方のお話によりますと、欧米では「成人小児科」というものがありますし、 私どもの会は国立小児病院の横に「重症心身障害児療育相談センター」を設立していま す。  そこで小児病院にはよくお世話になりましたけれども、小児病院でも幼児のときにカ ルテを作っておけば、者になっても入院できるということなのです。今度、大蔵病院に 移って「成育医療センター」になりましたけれども、その検討会の資料を見て母性小児 疾患に対する高度な医療だけでなく、周産期、小児、成人期と、一貫した最先端の医療 を行うために「国立成育医療センター」とするとなっているわけです。そうすると、国 立でも児・者一貫を貫いてくださっているのかなと、私どもは非常に力強く思っている ところです。  一昨年の暮れ、「都立東部療育センター」が設立されました。その開所式のとき、石原 都知事は「社会のいちばん重い障害児の生命を守りたい、という日本人独特の感性を大 切にして、この施設を立派なものにしたい」という式辞を述べられました。皆さん、重 症児・者は何もわからないのではないかとお思いですが、非常にデリケートで、うちの 次男などは職員の動き、ベッドの移動、最近の職員の不足、そういう空気を読みまして 胃かいようになってしまうのです。それほどデリケートに感じるのですが、また一方、 何かの可能性を持っています。その可能性を見い出して、それを伸ばしていく。私は福 祉や教育、ある意味では「生きる」ための原点ではないかと思っています。そういった ことを文科省も深く共感くださっています。  発達ということなのですが、発達するということは、こちらの持っているものを押し つけても決して発達しないのです。こちらのほうが同じ目線に立って、同じ立場に立っ て心と心が響き合ったときに初めて、何か可能性を見い出すことができる。  その見い出したときの喜びは本当に言葉では言えないぐらいです。やはり生きるとい うのはこういうことなのかなとか、いろいろなことを問いかけられます。また、最近は 高校生や中学生がよく見学に見えるのですが、例えば高校生などは、「こんなに障害が重 いのに、にっこり笑っている」、登校拒否のお子さんたちは大人から言葉で言われるより も、無言の笑顔で感じることがあるらしくて、「頑張るよ」などという声を聞くのです。 そういうことで、遊びに来ては「勇気もらった」と言って帰っていく方もありますが、 重症心身障害児というのは、昭和36年に初めて私が運動したときに、「社会の役に立た ない者に国のお金は使えません」と言われたことが、いまだに私の脳裡から離れないの ですが、決して無駄に生きている人たちではないということ。  現在、命を粗末にする世相の中で、命を大事にしてくれと、無言でメッセージを送っ ている。これは大きな重症児の使命ではないかと思っております。法律をお作りになっ た方々のいろいろなお立場もあると思いますが、児・者一貫の制度だけは、何とぞ継続 してくださいますようにお願い申し上げます。私は運動をして45年になるのです。もし これが療養介護になって、もう1つ申し上げておくと、うちの主人が難病でしたから、 神経内科の先生とよくお話するのですが、「神経内科では絶対、重症児の脳はわからない。 だから、北浦さんは児・者一貫を頑張んなさいよ」とおっしゃっていますが、もし彼が 命を失うようなことがあったら、私は45年間何をやったんだということで、最近ちょっ と心を痛めているところです。どうかよろしくお願いします。 ○柏女座長 ただいま4つの団体に発表をしていただきましたが、これから30分弱、ご 意見・ご質問など、自由に意見をいただければと思います。 ○中島委員 都合があって途中で失礼するものですから、ちょっと言わせていただきま す。ヒアリングさせていただいて、非常に勉強になりました。先ほど来、措置と自立支 援というか、支援費の話が出ていて、私はおっしゃっていることは非常によくわかるの ですが、措置というのは考え方としては、私みたいに経済学をやっている立場からいく と、これは社会が責任を持つということですよね。社会が責任を持つ、あるいは契約と いうと、契約者が最終的にどういうサービスを受けさせたいか決断する。つまり、社会 が決断すべきなのか、それとも当事者が決断すべきなのかと整理できるかと思うのです。 そのときに、どれだけ当事者ないし当事者の親が、そこで決断できるだけの知識なり能 力を持っているかは、とても重要になってくるわけで、その辺りの吟味が必要なのかと 思います。  措置の場合、社会が面倒を見るということで、先ほどリンゴの木のたとえがあったの ですが、リンゴの木もそのまま放っておいてもリンゴは実らないわけで、つまり農家が それをメンテしているからリンゴは育つわけで、どこにでもリンゴの木を植えれば勝手 に育つわけではないわけです。社会が面倒を見るというのは漠然としていて、野生のリ ンゴの木のようになってしまう可能性もないわけではなくて、そのような反省は、やは り措置時代にはあったのだろうと思います。そういう意味で、制度を仮に変更するにし ても、維持するにしても、どこまで社会が責任を持ち、どこからが当事者が責任を持つ か。また、先ほど育成会の方がご発表されて、私はなるほどなと非常に納得したのです が、やはり親自身の支援がないと、客観的なものの見方もできないわけで、その辺りも 含めた上での制度設計が必要かなと思いました。 ○柏女座長 貴重なご意見をありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。 ○宮田委員 知的障害の福祉協会の方と育成会の方にお尋ねします。まず、知的障害の 福祉協会にです。2部門から報告を受けたのですが、通園・通所の部門では契約という ところをお示しになって、入所の部門は措置を残すという意味合いだったかどうか、1 つ確認をさせてください。それから、育成会のご発表ですが、前回、我々の所から発表 した内容も非常にオーバーラップしており共感するのですが、家族を支援するために、 地域のセンター的な機能を持たねばならない。これもそうなのですが、これを担保する 制度、そしてそのセンター的機能を地域から集めてコーディネートするセンター、その 辺りをどうお考えなのかということをお聞きしたいと思います。 ○柴田委員 知的障害者福祉協会です。まず、入所については、先ほどリンゴの木が社 会・地域の中で育っていると。リンゴが結局リンゴの木になっていられなくて、ポトン と下に落ちた状態で行うのが入所施設で、これは親御さん自身がもう既に支援できない 状況ということですので、社会が全面的に責任を持つ、子供の発達する権利を社会が義 務として、ここを支える必要がある。そういうことから、これは措置にすべきであろう と思います。通園の場合は、親御さんの判断がありますので、親御さんが判断する、選 択ができるよさと、もう一方では子供のことですので、社会はそれを支える義務がある ということから、その社会的義務と親の選択が、何とか上手に両立できるような方法は ないか。ただの契約ではなくて、例えば保育園なども1つの選択肢でしょうし、そのよ うな新しい枠組みを考える必要があるのではないかと考えているわけです。補足があり ましたらどうぞ。 ○加藤氏 この問題は、うちの協会の発達支援部会、つまり児童部門の部会にとって本 当に悩ましい問題で、何度も何度も協会の中で関係者が話合いをしてきて、今日に臨ん でいるのです。最終的には、児童入所と児童通園は、いろいろな意味で役割も違うので はないか、子供の置かれている状況も違うのではないかと。そういう意味では、福祉協 会としては、児童を一元的に措置に戻すという言い方はやめて、いま委員長が言いまし たようなやんわりとした表現になったという経緯があります。  ただ、今日、私は通園代表として4分間いただいたわけですが、通園としては宮田委 員も一緒にずっと長い間、この通園問題について私たちは意見交換をしながらきた経緯 があります。その中で、一貫して私たちが訴えてきたことは、昭和23年来の措置制度の 制度的な疲労ということです。実態に合わない、家族や社会の状況に合わない中で、デ リケートなタイムリーな支援サービスがなかなかできない、というもどかしさを私たち はずっと長い間抱えて、今日に至っております。そういう中で、そこを何とか打破した いという思いの中で、通園の場合には利用者の方たちが多様なニーズ、ノーマライゼー ションという大きな流れの中で、我が子の育ちをまさにオーダーメードで組み立ててい きたいと。当事者にとっても、そういう人生を組み立てていきたいという時代にあって みれば、多様なニーズを主体的に選択できるチャンスというか、環境というのは、そう いう方たちにとっては何はさておいてもよしというような、1つの大きな基本ではない かと思ったりするのです。  そういう意味でも、幼児期の子供たちにとってみれば、多様な選択肢を自在に組み立 てて、子供の多様な育ち様を確保していくことを可能にする、そういう制度。また、一 方では、お金が出ないと口も出ないと。口が出ないのはいいのですが、お金も出なくな ってしまうことが大変大きな悩ましい問題でもあります。ですから、いいとこ取りをし たような制度を是非検討してもらえないのかというのが、通園サイドのたっての願いで はあります。 ○柴田委員 措置について、ちょっと補足をさせていただきたいと思います。現在、一 般の児童の場合は養護施設で、この措置は都道府県の児童審議会で審議されて、自立支 援計画をきちんと作るという条件の下で措置が行われているわけですが、残念ながら現 在の知的障害児施設においては、そこの自立支援計画の策定も義務付けられていないわ けなのです。そこへもってきて、ここへ自立支援法で契約もありということになって、 これはやはり結局、親御さん自身に契約する能力がないという状況があるわけです。現 在そこまで行ってしまって、我々も後手に回ったわけですが、現在の状況は、資料にあ りますように全国都道府県で非常に大きなばらつきがあって、措置が7割、8割に達し ている県もある一方で、契約が7割、8割に達している、ほとんどが契約ばかりという ところも多くて、基本的には厚生労働省の考え方の中に、原則は契約であるというのが 背後にあったと思われますね。そういう点で、もう一度、特に入所施設における自立支 援法との絡みでは、一旦、措置に戻した上で、基本的に一般の子供と同じ子供の権利条 約を前提とした体系に組み直す必要があるだろうと思います。田中さん、補足がありま したらお願いします。 ○田中氏 実際私ども知的障害児の施設の現場で、家庭で子供が一緒に暮らすのが当た り前で、そこから外れて何らかの理由で施設養護をしなければならないという仕事の性 格は何なのかといったときに、27条での措置は、やはり国が16条2章で定めている国 の責任に応じた、民間施設だろうが、公務員的な性格であって、国家賠償に該当すると いう判例が平成19年1月に最高裁で出ているわけですね。そういう意味で、私どもの仕 事、私どもの施設を利用される背景は、そういった国の責任の中で、安心して家庭で行 き詰まって施設養護で暮らさなければいけない人たちを養護していくのが基本ではない かと思っているわけです。そういう中で、契約というのはあくまで民々の契約であって、 それが本当に子供の意思を反映した民々の契約になり得るのだろうかといったときに、 平成12年、児童養護施設等が措置にかかわるいろいろな事務の中で、児童権利条約から 子供の意見表明権、また定期審査権であるなどといったものの中で、措置の事務が大き く変わってきて、自立支援計画を基にして措置をするといった状況が、私ども障害児施 設には対象外とされているわけです。そういう意味で、措置にしても、子供の利益にか なった施設措置が本当に必要かどうかということを含めた検討が必要ではないかと考え ているところです。 ○吉川氏 簡単に申し上げさせていただきます。どの場所が発達センター的機能をコー ディネートしていくかということですが、旗振りは行政が、運営は民間がよいのではな いかと考えております。育成会の各地域から上がってきた意見としては、養育センター が設置されていない市町村もあって、地域間格差が大きいと。それを解消するために、 市町村に養育センターの設置を義務付けてほしいという意見も上がってきていたのです が、昨今の市町村の財政事情等を鑑みて、センターを作るというハードの面で、それを 整備するのは難しかろうと。であるならば、センター的機能を各既存の地域資源の中に 根付かせていく。そういう方策のほうが良いのではないかと、意見集約の過程でそうい う話になったのです。そうなると、地域の保育園でやっている療育相談であれば、特に 障害という名をつけることに対する親の拒否感を軽減できることにもつながるのではな いか。なので、まずこういう機能を果たせる場所がほしいということを行政に名乗って いただいて、そこに「この指とまれ」方式で、NPOでも保育園でも、私がやりますと。 それがたまたま障害児施設であることもあると思いますが、そのような形で整備ができ ていくことが望ましいのではないかと思っております。 ○君塚委員 先ほどの措置の話なのですが、肢体不自由施設、少なくとも東京では、以 前の措置費、あるいは支援費の場合に、入所したあとでも申請したときに、すべて追認 でした。これはこういう措置ですという形でなくて、そういう考え方であるために、全 部こちらの出したとおりに認められていると。ただ、1年以上の長期の方たちは、逆に 児童相談所から依頼されて引き受ける。そういう方たちは当然、児相が率先して措置を している。その辺で、肢体不自由施設の中に1,000以上の通園があるのですが、通園に ついては少し長期にわたるわけで、親御さんの判断もありますので、すぐそういう形で 入所は断っていたと思います。そういう意味では、柔軟な通過型短期の入所については、 前の追認のほうが、あるいはサービス上限のないほうが運用しやすいということはあり ます。 ○坂本委員 障害児の入所施設への措置から、措置と契約の2本立てになったときに、 私自身も児童相談所におりまして、大変判断に迷う中で自治体なりの基準を示して、移 行に移ったわけなのですが、いまのいただいた資料を見ても、自治体間での格差が著し いと出ているわけなのです。どこかの時点で、それぞれの自治体がどういう基準で、こ の措置と契約の判断をしているのかは調査されているのでしょうか。あるいは、それは 障害保健福祉部のほうでも把握されているのでしょうか。団体と両方にお伺いしたいの ですが。 ○障害福祉課長 現在の措置と契約の状況について、一定の数字を持っております。こ れは先ほどちょっと話が出ましたが、各県で話が出ましたとおり、措置の割合について は、ばらつきがあるというのがいまの状況です。一方で、これは少しデータが古いこと もあって、こういう会議の中での議論もあるということも頭に置きながら、いまちょう ど平行して、各自治体にどういう状況になっているのか、改めて調査をしているという 段階です。全体の論点についても、また次回なりに全体を整理することがあると思いま すが、その中のどこかに、やはりいま出た問題も議論すべき論点としてきちんと位置づ けた上で、そのときにきちんとまた新しいものもできる限り出していきたいと思ってお ります。 ○柏女座長 この検討会のほうに、調査結果についてもお出しいただけるということで すが、団体の関係では知的障害関係はあるということでしたが、そのほかには肢体不自 由などはありますでしょうか。 ○柴田委員 いまの厚生労働省が措置と契約をどう切り分けるのかということについて、 行政にどういう文書を出されたのか。過去の出された文書をすべて、次回出していただ けないでしょうか。我々事業者が知らない行政に出されている文書もあるようで、それ がもし本当だとすれば、これは契約にするしかないだろう、大半が契約になってしまう のではないかと思えるような文書が県に示されているのではないかと思われるのです。 この措置と契約は非常に大きな問題で、いま新聞等でも取り上げられていますが、実際 に東京でもあったことですが、お父さんがもうほとんど対応ができない。親が対応でき ないものを、契約が実際できない状態であっても、児童相談所が契約にしてしまってい るということで、契約書も取り交わさないままに子供だけが施設に置かれているという 現状が既に生じております。それは東京だけではなくて、かなり各地のあり様なのです。 これは児童施設、障害児施設における措置と契約の問題というのは根本的な問題で、徹 底的に実態をきちんと把握したいと思いますし、厚生労働省のほうも資料を提供してい ただけたらと思います。 ○障害福祉課長 我々は意図がどういうところかわからないところもあって、あとでま た詳しく聞きたいと思いますが、この検討会は大事な検討会です。これからの障害児、 あるいはその親御さんに対するサービスをどうするかというのは大事なものですので、 これまで我々が示しているものについては、きちっと示したいと思います。ただ、これ はおそらく論点の順番などがあると思いますので、そういう論点を設定したときに、き ちっと丁寧に説明したいし、またそういう個別のこともあるでしょうけれども、これは どういう考え方で契約と措置があるのか、あるいは今日はそこは申しませんが、児童福 祉法における養護施設に対するのは確かに措置なので、そこといまの障害施設の措置契 約の関係はどういう関係になっているのかということについても、基本的な考え方も、 併せてそこでお示しした上で、先生方にいろいろご議論いただきたいと思っています。 ○柏女座長 措置か契約かという問題については、しっかりとこの検討会の中でも1、2 度、集中的に議論もしていかなければならないのではないかと思っております。そのと きには、都道府県自体でも措置か契約かについてのガイドラインを、独自に設けている 所もあるように聞いておりますので、そうしたものについても資料として収集できるの であれば、特徴的なものを提示していただければありがたいと思います。 ○田中委員 質問というよりは、皆さんのお話を聞かせていただいて、これ以降の問題 提起として、これから意見交換をしていく上でのお話を少しさせていただければと思い ます。前回も提案をさせていただきましたが、振り子の振りが契約になったので、措置 に戻せばいいということだけの議論ですと、措置で漏らしていた問題も多々あって、単 純な問題としてそれで済むことではないと思いました。特に今日お話いただいた事柄と しては、措置として対応すべき内容には、危機介入的な要素と、高度な専門性というこ とで医療の部分がお話されたと思いますので、その位置づけは措置の対応として揺るぎ ないものだと思います。その過程、プロセスとして、危機介入段階に至るまでの対応が どうあるべきかということについて、育成会から提案があった、地域の中でのセンター 的な機能、ここで問題を処理していくという過程の中で、サービス提供のあり方が措置 であるべきなのか、先ほど中島委員からもお話がありましたが、契約の良さとしてのサ ービス提供のことも含めて提案したほうがいいのではないかと思いました。  特に、このあと私たちの団体からも提案したいと思いますが、育成会から出された学 齢期のお子さんの移動支援が個別給付の枠組みとしては介護給付しかなく、訓練等給付 はなく、いきなり地域生活支援事業で、それも市町村次第ということで、ここにおいて の地域格差はゼロかというところから始まって、あるかないかというような幅で、非常 に広いものがあります。訓練等給付と位置づくものが出されているものは、知的障害の 場合で言えば行動援護という仕組みの次に来る位置づけだと思いますので、非常に関心 を持って聞かせていただきました。行動援護そのものが動いていないことも考えると、 センター的な機能で個別支援計画の下に個別給付、介護給付なのか、訓練等給付なのか、 地域生活支援事業なのか、そういった見極めも程度区分だけではない要素でしていくよ うな流れが児童には必要になってくるのではないかと思っていますので、今日お話を聞 いて、そんな問題提起をさせていただければと思いました。 ○柏女座長 前半のところではとても貴重な議論のまとめをいただいたようで、示唆的 でした。また、後半のところでは具体的な提案をいただいて、ありがとうございます。 それでは、松矢委員お願いします。 ○松矢委員 重症心身関係で、少しお聞きしたいと思います。末光委員と北浦委員から お話をいただいて、児・者一貫の必要性は十分理解しました。しかし、子供から大人に なっていくということはあるわけで、糸賀先生が言われた縦軸・横軸の発達で横軸の充 実が縦軸をしていくという意味で、やはり障害が重い方でも大人になっていくという意 味で、いろいろ見学させていただくと、18歳まではとにかく訪問教育が行きわたってい て、人の対応は、要するに療育と学校教育が入所の重症心身では当たっているのですが、 満18歳を過ぎて学校教育がなくなると、そのあとの青年期から大人への人的不足といい ますか、日中活動等の不足は深刻だということを聞いております。その辺のところが、 施設の側と親御さんの側ですね。子供から大人になっていくというところで、児・者一 貫体制でもいいのですが、その中でもいま何が課題なのかということを、併せてもう少 しお聞きしたいと思うのですが、いかがでしょうか。 ○末光委員 重症心身障害児の医療・福祉に取り組む立場から、児・者一貫については、 まず1つには知的障害の方もそうですが、それ以上に重症心身障害児の発達は18歳・20 歳で終わるわけではない。いわゆる晩熟である、成熟の時期がかなり遅くまで続くとい う、晩熟・遅発性であるということについて、是非ご理解を深めていただきたいと思っ ております。18歳・20歳を境に、ばっさりと子供であとは大人ですというような、生活 年齢だけで捉えないようにしていただきたい。その中には、先ほど北浦会長ご自身のご 次男のご紹介にもありましたが、そのような例も少なくないわけです。そういう意味で、 成長発達について、機械的に分けないようにしていただきたいのが1点です。  2点目に、専門的な支援について、たまたま重症心身障害については、出生後、間も ない時期からずっと見てきた小児科、あるいは小児神経のドクター等を中心に、ずっと 継続的に見させていただいたわけです。もちろん、そのあと、先ほど出た神経内科の先 生が見てくだされば、それで結構なのです。我々は抱え込むつもりはありません。だけ ど、それがないのに「知らんよ」というわけにいかないというわけです。  3点目は、特に在宅の場合にはいろいろな選択肢がありますが、入所、それも長期の 入所・入院については、やはり専門的な立場で、続けてご支援をさせていただかなけれ ばいけないのではないかと。18歳まで、あるいは20歳までの重症心身障害児の施設と、 大人だけの施設という形が本当にいいのかどうか、私どもは疑問に思っております。た だ、繰り返しになりますが、私どもは抱え込むつもりはありません。それぞれ然るべき 所がやってくだされば結構です。それがないのに放り出すわけにはいかないということ の主張です。 ○北浦委員 一般的に考えたら、18歳以上を大人と扱いたい。これは親の気持としては、 本当は扱いたいのですが、まず大事なのは命を守らなければならないわけですね。です から、在宅の方が、例えば肺炎を起こす。肺炎を起こして、一般病院に入るわけですね。 そうすると、者ですから、内科とかいろいろかかって、肺炎は治るわけですよ。ですけ れども、痙攣のほうがひどくなってしまって、逆に命を落としそうになる。そういう意 味で、やはり小児神経の先生の手を煩わせることになります。  だから、私は内閣府の委員会のときにも申し上げたのです。ほかの皆さん方は、「とに かく施設は要らないのだ。これからは地域に移行するのだから、皆さん、グループホー ムでいいんだ。そんな施設なんか作るな」と、すごい勢いでおっしゃったのです。それ を聞いていて、うらやましいなと思いましたが、うちの子がもし医療がないところでグ ループホームに行って、すごいお金がかかってしまいますし、そういうときにやはりい ちばん怖いのは命ですね。そういう意味で、考え方としては確かに大人になっても子供 扱いするということ。実は創立40周年のときに、天皇陛下にお出でいただいたのです。 その前に、ご説明に来いということで、うかがったのです。いろいろ説明しまして、30 分説明したのですが、それが終わった途端に、「重症児は児・者一貫でいいのか」とおっ しゃったのです。私も、ここまで勉強していらっしゃるのかなと思って、びっくりしま した。そのときにも、まず第一は命なのだと。「そういう意味で、小児神経の先生の手を 外れることはできないのです」ということを説明しましたが、一般的に児と者が一本と いうのはおかしいというのが普通の方々のお考えではないかと思います。それが私たち は命第一に考えたときに、児・者一本化ということを思っております。 ○宮崎委員 私は簡潔に。知的障害福祉協会委託の分科会から、ご発表いただいたので すが、私自身、教育の場におりまして、児童通園施設での機能・役割が非常に大きかっ たなと。養護学校等に送り出していただく中で、大きな役割を果たしていただいている と思っています。6頁と7頁に具体的な内容が書いてあるのですが、乳幼児期の障害像 の未分化の時期にどんな対応をしていくかというのは、非常に重要だろうと思っており ます。そういった機能があって、退園後の進路先というのは非常に多面にわたっている。 つまり、子供たちの発達に大きな役割を果たしていらっしゃるということがわかるわけ ですが、同時に重複・合併障害の状況の中で、困難な状況も抱えていらっしゃると思い ます。  そこで、私は具体的にお金の問題ではなくて、先ほどお話がありましたさまざまな支 援サービスと、同時にかなりきめ細かな専門家スタッフによる支援が必要だと思ってい るのです。職種などについて、このことに関して、これからどんな形で具体的に通園施 設として職員の養成というか、そういった辺りをお考えか、お伺いしたいと思います。 私どもにとっても、緊張しながら、退園した子供たちの教育に当たるということで、学 校側サイドも努力している。  もう1つ、児童施設も家庭の問題、先ほど育成会からも出ましたように、いま家族支 援が非常に重要になっていると思っており、この辺りはこの施設の役割は極めて大きい のだろうと思っています。私も児童施設に併設する養護学校に勤務をしていたこともあ り、その辺りは常日ごろ見てまいりました。この辺りの役割等について、ちょっとお話 をしていただければありがたいと思います。 ○柏女座長 後半の議論の時間も確保したいので、加藤先生、田中先生、申し訳ありま せんが、手短にお願いしたいと思います。 ○加藤氏 いま地域の中で、子供の育ちが非常に多様なニーズをもって存在しているこ とは紛れもないことだと思います。そういう中で、地域にあって、明らかに全国のどこ でもというわけにはいかないまでも、多くのこういう機関が子育て支援の資源になって いることは紛れもないことかと思います。かといって、それぞれの資源がすべてそうし た専門スタッフを抱え込んでというのは、これまたこういう時代でやってみれば不可能 なことかと思いますし、そういう方たちを全施設、あるいは全機関に配置するのも不可 能なことかと思います。そういう意味では、先ほど来、あるいは前回からも議論されて いますように、施設として、箱物としてということだけではなくて、エリアの中での機 能として、そういう資源が1カ所だけにではなくて、面としてのエリアを担当するとい う仕組みが構築されれば、それでよろしいかと思います。  また、そういう子供の発達臨床にかかわるリハビリ関係のスタッフの養成も、私の知 る範囲では、最近かなり加速的に行われているような気がします。そういう意味では、 面としてそういう方たちを確保していくことは、そんなに難しいことではないだろうと 感じております。 ○田中氏 知的障害施設での在宅支援は、地域によって施設はかなり違いますが、入所 型施設が持ち得る唯一のメリットは、ショートステイという事業が大きく役割を持つと 思います。そういう意味で、ショートステイであるとか、児童デイであるとか、平成18 年以降ですと、日中一時支援事業という、学齢期の支えをしています。私どもはやはり 学齢期を主に担う療育支援として、相当、地域支援についての力を入れてきているとい う状況はありますが、私どもからすれば、ショートステイにしろ、デイサービスにしろ、 日中一時支援、さまざまな支援をやりながらも、やはり目の前で家庭が崩壊していくと いう言い方は失礼ですが、一人親になったり、いろいろな形で施設入所に切り替わって くるという実態を、私どもは目の当たりにして仕事をしているという状況があります。 そういう意味で、在宅にかかわるさまざまなニーズを大事にしながら、もちろんそこに フィットした仕事をしていきたいと思っています。措置・契約にかかわらず、この辺は 利用される方々のニーズにきちっと応じたサービスを提供していく。私どもが相談事業 をやってきても、やはりサービスとニーズは必ずしもマッチングしていかないというこ とがあると思うのです。そういう意味で、ニーズに応じたサービスを、いかにうまく地 域の状況の中に整えていくかというと、やはり特別支援学校と一体・連携して、その地 域を支えていくサービス構造を作っていかなければいけないと考えております。 ○市川委員 知的障害者福祉協会からの22頁ですが、いま加齢児が減ったと言っても 40%という状況であると思われます。そこで、知的障害児施設と言いながら、40%は知 的障害者施設になっているという格好だと思いますね。私も以前、知的障害児施設のス タッフをやっていたことがあるのですが、これは現場にとってはかなりいろいろ問題を 抱えることになるのです。これについてご意見が全然出ていないのですが、何か挙げて いただければと思います。 ○田中氏 延長規定は、重心とまた性格が違うというのは、私ども知的障害児施設は者 の福祉法に基づいて、まさにいまの自立支援法上から見たら、大人の施設、入所施設は もう要らない。要らないではなくて、新たに作らなくてもいいというぐらい、その状況 がなっているという中の、いわゆる子供の施設に同じ知的障害の方が残ることについて の課題は非常に大きいと思います。そういう意味で、私どもはいま施設に入所してくる 子供の年齢が非常に低年齢化してくる状況の中で、施設の状況を見るとお兄さんばかり いて、うちのこんなに小さい就学前の子供を預けるには忍びないといった施設環境の中 にあるということ。そういったところを含めて、知的障害の施策については、大人のほ うはもう本当に一定の整備がされてきているということの中でリンクしたときに、私ど も知的障害児施設における大人の人たちは、やはり大人としての権利が行使できる、そ のシステムをきちんと作っていただいて、子供のための施設として機能していけるよう な再編成が必要でないかと思っております。 ○市川委員 いまおっしゃったのは、要するに児・者転換をしていけばよろしいという ことではないですよね。 ○田中氏 私どもの協会全体の流れとすれば、全転換をしてきたということで、施設が 減ってきたわけですね。そのことによって、全県で1施設とか2施設とか、非常に広域 化してきたという現状が出てきています。そうすると、学齢期にかかわる療育支援が一 極集中的に、それで地域的な対応ができないという結果をもたらしてきたということで、 平成11年に児・者併設型という新しい施設類型を入れていただいて、10名規模から大 人の施設と子供の施設、1つの施設の中で条件を整えて切り分けるという形を導入して いただいたのです。そういう中で、地域に必要な5名、10名という受け皿をきちんと残 した地域に密着した施設の立地ということも、検討していかなければいけないのではな いかと思っております。 ○柏女座長 前半の4団体の先生方、長時間にわたりましてご報告、それからご質問に お答えいただきまして、ありがとうございました。  引き続きまして、後半の発表に入ります。最初に、全国肢体不自由児施設運営協議会 様、よろしくお願いいたします。 ○君塚委員(全国肢体不自由児連絡協議会) 早速ですが、資料5は意見・要望、参考 資料として療養型福祉施設の比較、地域移行への課題、受け皿など、施設の歴史、現在 の施設の概要があります。最後に、私どもが作った障害児の包括的な評価法の本の目次 をコピーして入れてあります。パワーポイントで進めますが、データが細かくてわかり にくいかもしれません。  肢体不自由児施設は、現在、全国に62あって、各都道府県に1、2ある入所、あるい は外来・通園などの総合的な療育医療の三次福祉医療圏の拠点であると考えています。 例えばその中では養護学校の校医、あるいは離島・山間などでの巡回相談、あるいは通 園をやっております。その通園へは職員が出張して、技術支援を行っています。先ほど 来の医療の専門性ということで、療養型においては三次レベルにおいてのセンターが不 可欠であると考えています。  前回、全肢通連の宮田会長の意見がありましたが、ほぼ賛同する立場なのですが、私 たちの所では入所機能がある。その中には、NICUを出た上、すぐに家には帰れない、家 にいて療育できないという小さなお子さんの母子入園。大体2カ月ぐらい親子で入所し て、お母さん指導、あるいはいろいろな形でのリハビリを受けながら、お母さん方が家 庭で育てるような形に準備する形。あるいは、手足の変形に対する手術。虐待・家庭崩 壊に対する社会的入園という形で、入所のうち大体、全体の2割ぐらいを社会的が占め ています。社会的入所では通過型ではないのですが、主に通過型であり、年間4,000〜 5,000名、4,500名ぐらいの方が入所しております。短期入所を含めておりませんが、入 園を通じたり、外来、あるいは通園を通じて、すべてが重度レベルの在宅支援を行って いると書いています。そういう意味で、現在の機能を低下させることなく、充実・発展 させてほしいと願っています。  ただ、現在私たちの所で課題になっているのはドクター、あるいは看護スタッフの不 足で、後継者不足というのがあります。それから、新しい事業を展開するとなると収支 が見合わない。訪問検診、訪問看護、訪問リハビリテーションをやりたいのですが、キ ャパシティプラス収支の面で行えない。あるいは、医療ニーズの高い重症心身障害児の 短期入所をしているわけですが、こちら側のスタッフのパワーから、東京都、ほかの施 設もみんなそうなのですが、重心児の短期入所をかなりお断りせざるを得ないという状 況があります。また、2割ほどが18歳以上の入所なのですが、それは福祉のお金が付き ませんで、2割の者の入所は、多くは痛みを取るとか、手術をして機能を向上させると いうことで、厚生医療だけの対応になっており、持出しになっていると考えております。  下の欄で、児・者一本化の中で、児と者の違いの中では、発達・変化するということ で、成長臨界期。臨界期というところでは、下に「オオカミ少年」と書いてありますが、 オオカミに育てられた子供は、3歳であっても人間社会に戻ってきてもずっとしゃべれ ないということは、もうわかっております。昔から三つ子の魂百までということで、次 回の本検討会のテーマが「早期発見、早期療育」ですが、そういう形で本当に必要なと きに必要な療育を行わないと、力が発揮できないことがあると思います。  それから、虐待が前回も話題になりましたが、肢体不自由施設にも児童相談所を経由 して、乳児経由などで受け入れていますが、障害の受容というものが入っていないわけ です。そういう意味で、幼少なほど、本人・家庭も未熟であり脆弱であるということは 明らかです。先ほど重症児福祉協会のほうから、重症心身障害児という形で話があり、 まず超重症児という話がありましたが、この定義は6カ月以上ということです。子供の 場合、6カ月待っていられないと。その前に死亡してしまうか、肺炎など危険な状態を 脱して家に帰っているということで、6カ月が1つのネックになっております。  2番目に、各障害の専門性の確保および各障害の横断的な統合の両立という形で考え ております。特に下の所では、重度に対応する個別ニーズの個々の綿密な対応という中 では、医療・療育モデルと生活モデルの融合という形は、さらに進めていかなければな らないと思います。  3番目に、社会資源との役割、位置づけ、連携ですが、これも宮田会長のお話の中で、 階層的な明確化ということが必要だと考えています。そして、入っている子供たちの属 人化ということも必要だと考えています。  次の頁ですが、難病での成育医療プラス発達保障、介護ではなくて発育療育支援とい う形での発達保障が必要です。属人化においては、大島分類プラス医療的ケア療育支援 を、総合的に評価すべきだと考えております。障害の登録については、私たちの施設は 20数年前に心身障害児総合医療療育センターという名前にしております。肢体不自由児 施設からスタートして、42年に重症心身障害施設を作りました。先ほどの北浦会長のお 子さんも還暦を迎えましたが、ずっと私たちのセンターの中で療育を受けていらっしゃ います。  そういう中で、専門性の面からは、肢体不自由児の第三次の専門機関もあるし、その ほかの知的障害・精神障害については、地域に根ざして第一次、第二次の機関という形 で考えていきたいと思います。現に私たちの外来は新患1,000名のうち、300名ほどが 自閉症の疾患です。入所では、重たい寝たきりの子の中に行動障害のお子さんを一緒に 入所させられないと。その重たい人たちは、精神なり知的の専門センターに入所させる べきではないかと考えています。  それから、施設と在宅へという流れは賛成なのですが、実際に受け皿の問題とか、家 庭が準備できていない。車の両輪であって、私たちに入所がないと、在宅をやっていけ ない。在宅で数カ月間の緊急時、あるいは手術、あるいはいろいろな指導のためのリハ ビリテーションのための数カ月の入所という形で、トータルに在宅支援をしているとこ ろです。  次の欄ですが、少子化に対して、安心して次の子を育てられるように障害児の施策を 充実させてほしい。セーフティネットの役割も位置づけていただきたい。福祉産業とし て整備するという意見がありますので、この点からも障害児施策を展開してほしい。  4番目に、基本的には我が国の障害児施策は世界に誇れると考えていますが、これか らも改善すべきだと思いますが、福祉国家としての尊厳を維持するべく子供権利条約な どを考慮していただきたい。それから、発達保障のために程度区分が出てきていますが、 年齢によってとても難しいと。さらに、区分と支援料とがマッチせずに乖離していると いうことがあります。養護学校、特殊支援学級、あるいは保育園などでの連携支援とい う形で、私たちは交流をしております。私自身、都立の養護学校の4カ所の学校の校医 をしておりますし、医療的ケアについては、肢体不自由施設、重心施設の先生方が中身 を詰めてきたと考えています。  次の3の上ですが、入所の4分の3が脳原性疾患であり、乳少児の半数がIQ35に重複 しております。50%は各項目で全介助であり、癲癇、視力障害、聴覚障害合併が多い。 在宅支援、外来で見ているお子さんの中で、当センターでは酸素を使っているお子さん が27名、経管栄養が200名以上、気管切開30名、在宅レスピレータ22名、医療多数で、 これはやはり宮田先生の所と同じように、在宅の高度な専門的な医療を担っていくと思 います。  非常勤の先生方を揃えていますが、その先生方は本当に専門分野、高度な方たちで、 教授・助教授の方たちも数多くいます。下のほうに、私たちが先ほどの入所児の100名 ほどの包括的評価で、ADLの面で重症度別に5段階に分けて、20歳ぐらいまでの成長曲 線です。2〜4までの中等度が最も多い、5がだんだん増えているということがあります。  さらに、次の頁の4の上ですが、横軸が月齢で、縦軸が育成の援助時間、1分間タイ ムスタディからのデータです。ここで6歳の72カ月辺りが育成時間が圧倒的に多いと思 います。下のほうでは、左側が重症、右側が軽症なのですが、中央の中等度が最も育成 時間が多くなっているということがあります。図の4ですが、現在、市町村による障害 児の程度区分があります。白い棒グラフでは、6歳未満が区分3で、6歳以上とかなりギ ャップがあります。これは先ほど来の話のように、6歳を過ぎても成長・発達していく ということで、そのために6歳以下はまだその能力を確保していないということです。  それから、法制との関係で、現在3歳未満で、基本的に手帳が交付されていない。障 害児が入所すると特別児童扶養手当がストップされてしまう。さらに8頁では、先ほど 発言しましたが、以前はすべて事後承諾だったのですが、契約が間に合わない場合、緊 急時は医療的な問題を中心にしながら、こういったところでは柔軟性なところをお願い したいと思います。  下の段では、重症児福祉協会から案内がありましたが、東京都の重症心身障害児施設 新規入所について、東京都には1,239の認可が重症児ベッドでなされていますが、平成 19年度に新規入所した数は12名、待機児童数は611名です。7頁の肢体不自由児施設の 概要では、入所小規模で通過型である。母子入園が228床ありますし、短期入所は年間 4,500人。重心施設・障害者施設の併設、養護学校の臨時併隣設、ホスピタル・アンド・ ウィズ・スクールという形で付けています。  外来では延べ月11万人。通園・短期入所という形でやっておりますし、地域の連携で は研修会、講演会あるいは見学・実習なども受けております。  9頁の下の「入所児数と疾病の推移」ですが、脳性麻痺、脳原性が68.5%と変化して おります。下の欄外に年間総退所児数がありますが、これは年度が少し古いので数が違 いますが、1984年には4,298名入院していましたが、3月1日には6,180名いましたが、 年間入退院数が4,200人、それに対して3月1日に2,600人ですが、利用者数は5,900 となっています。  あと母子入園や虐待の話がありますが、12頁の上を見て終わりたいと思います。当セ ンターで3つのデータのうち、1つだけが社会的入所になっています。10年間こういう 形での社会的入所の理由が変化しておりますが、ネグレクトあるいは虐待が増えていま す。親の精神疾患は今回は送って、一人親家庭、親の身体の病気、リハビリ目的という のはなくなっています。平均5歳で入院して、現在7.6年入園しています。時間が過ぎ てしまいましたが、あとで見ていただければと思います。 ○柏女座長 それでは、続きまして全国児童相談所長会からの報告をお願いします。 ○豊岡事務局長(全国児童相談所長会) 東京都の児童相談センターが、全国の事務局 を担っておりますので、私からお話をさせていただきたいと思います。  冒頭申し上げますが、児童相談所長会というのは、各児童相談所の行政の横の連絡会 ということで、この所長会で何かを決めて動くということではございませんので、まず その点だけご理解いただければと思います。  児童相談所の現状を簡単に書きました。平成18年度は、全国で大体3万7,000件を超 える虐待の受理件数が報告されております。児童相談所の虐待対応では、児童相談所は 家庭訪問や関係機関からの情報収集によって、虐待の程度やリスクを判断しております が、この際のアセスメントが非常に重要で、さらに専門的機能を高めていくことが必要 だろうと認識しています。  平成20年4月1日から、児童虐待の防止に関する法律が改正されています。児童相談 所の権限が強化され、保護者指導のプログラムへの取組みの強化が盛り込まれておりま す。いずれにしても児童相談所は虐待相談、非行相談、養護相談などに対応して、子ど もの権利を守り、子どもの健全な成長・発達を図るために、専門機能を発揮しています。  全国の児童相談所の相談の中で、相談の種類・種別を見ますと、障害相談の占める割 合は、平成18年度では51%が障害相談で過半数を占めている状況です。平成18年度38 万件の中では、19万強という数字でした。中心は知的障害で、通常は療育手帳の判定業 務が中心になっていることが多いのですが、平成18年度は障害者自立支援法の影響があ ったのではないかと思っており、かなりの件数が受理されていると推測しています。  昨今、注意欠陥多動性障害、アスペルガーなどの発達障害相談も増えてきているので はないかと思っております。児童相談所は、障害児童の一時保護についても可能な限り 一時保護で対応したいと思っておりますが、障害程度が重い場合、集団生活が難しい場 合など障害児施設への一時保護委託等で対応しているという状況もあります。  そもそも障害者の自立支援法は、同一法体系の中に身体障害、知的障害、精神障害の 3障害を一元化して就労支援等を含めて、抜本的に強化をし、障害程度区分の導入、費 用をみんなで負担し合う仕組みとして、市町村の役割を前面に出している内容です。障 害者・児が地域で自立した生活を送るためには、地域、市町村のサービス基盤の整備、 財政基盤の確立が重要であると思っております。まだ現実的には市町村の基盤、財源に は大きな差があることは認識しております。  平成18年の障害者自立支援法の施行に当たり、児童相談所も受給証の発行のための事 務作業にかかわってまいりました。障害児施設入所児童の個々の措置を継続するのか、 あるいは契約とするのかという判断が求められております。  措置の考え方ということで3つの考え方が示されました。これに対し、幅広く措置を 捉えている自治体もあります。先ほど話題にも出ましたように、措置、契約の割合に開 きがあることは私どもも聞いております。この違いによって、さまざまな混乱を招いて いる側面もあろうかと思います。特に保護者の転居による場合とか、その辺が重なって しまいますと、自治体間での考え方の違い、判断の違いでサービスに差が生じることも 出てきてしまうのかと思っております。ただ、それはあくまでも当該自治体のご判断だ ろうと思っております。  全国児童相談所長会として、そうした実態についての調査をした資料はありませんの で、その辺の詳細は承知しておりませんが、事務手続については、各児童相談所と同様 の手続が求められていると思っています。  事務的に申し上げれば、利用契約であっても、児童相談所の意見を求めることになっ ておりますので、児童相談所での事務手続が必要になる、あるいはそのために児童相談 所業務に影響を及ぼしていることもあろうかと思います。更新のための事務手続、受給 者証の有効期限は1年ですので、毎年の更新の事務作業がのしかかっているとも言える と思っています。  通園施設の場合には、100%近い方が利用契約で利用されていると理解しておりますが、 そうした通園の施設においても、同様の事務作業が今は必要になっております。ただ、 これまでの措置制度から契約制度に変わったことによって、私どもは利用者の選択の幅 が広がったと思っております。行政処分という形ではなくて、福祉サービスの利用とい う視点あるいは障害児の発達支援という形での対応ということが言えると思っておりま す。  次に障害児のライフステージを通した支援の方策ですが、障害児にとっての早期発見、 早期対応は非常に重要だと思っております。就学前では保育や通園施設等の利用によっ て、障害の軽減、発達支援の視点からの専門的な療育を受けられるような体制が必要だ と思っております。そうした意味で、日中活動の場としての児童デイサービスなどの育 児支援のための事業も非常に重要であろうと思っております。  乳幼児健診等での障害の発見あるいは専門の医療機関での発見ということもありまし ょうが、学齢期になって児童相談所への相談によって初めて発見される場合もあります。 そういう場合には、後々影響が大きくなってくると思います。特に注意欠陥多動性障害 や学習障害等の発達障害の領域については、親の理解、地域の理解も含めて、まだまだ 理解が進んでいるとは言い難い状況にあるのではないかと思っています。  特に障害受容という課題が大きくあると思っていますし、その受容ができるかどうか で、その後のライフステージに大きな影響を及ぼすだろうと思っています。障害が見過 ごされたり、認識あるいは受容ができないため、比較的高学年になるまで専門的な対応 がなされずに来てしまう場合もあります。また育てにくさが虐待につながったりしてい ることもあろうかと思っています。非行相談、育成相談等の背景に障害という問題が潜 んでいることがあるだろうと思っていますが、乳幼児期、学童期を通した支援体制は非 常に重要だと思っております。  さらに就労、自立する際にも、周囲の無理解や適切な援助がなされないため、就労に 結び付かず、自立・社会参加できないこともありますので、青年期においては就労支援 の拡充が重要だろうと思っています。  さまざまな課題を抱える家族への支援ですが、児童福祉法25条による養護児童対策地 域協議会の設置が進められ、児童相談所は積極的にこの協議会に取り組んでおり、地域 における関係機関同士の情報交換と共有ができるようになっております。被虐待児童に 関する情報が最も多いとは思いますが、要保護児童という広い概念で言えば、障害児の 乳幼児期から、こうしたネットワークによる支援体制へつなげることも可能ではないか とも感じております。  この協議会は組織、個人での参加もできます。専門機関から地域のNPO法人、民生、 児童委員まで含めた幅広い関係機関が参加しております。こうしたことを活用しながら、 児童相談所は、当該の障害児童のみならず、家族構成員全体を視野に入れたケースワー クの転換に努めているところです。  障害のある被虐待児童で、児童相談所が強制介入をして分離をする場合もあります。 こうした事例は利用契約に馴染まないだろうと思っております。ただ、そうした場合で も確実に入所が担保される必要があるだろうと感じております。定員がいっぱいですと 入れないことが生じてしまいますので、そうした場面での配慮も必要かと思っておりま す。こうした場合、児童相談所は28条の申立や職権による一時保護なども行っています が、家庭裁判所の承認を得て施設入所させる場合には施設名を秘匿していることもあり ます。  特に障害者の自立支援法ですが、こうした場合でも市町村が提供するサービス、都道 府県が提供するサービスという部分で、現在、障害者の自立支援法は2層構造になって いるような実感を持っています。利用者の利便性について、さらに考慮していく必要が あるのではないかと感じています。  最後に障害児・者のサービスの一元化に対してです。18歳以上は利用者の申請に基づ いて市町村が支給決定を行う契約制度となっているわけですので、統一的なアセスメン トや障害程度区分を市町村審査会等が設置されているものと理解していますが、医療的 な配慮が必要な児童あるいは施設が自立支援法へ移行したあとの状況を、十分踏まえた 今後の検討と対応が必要ではないかと思っています。  先ほども話題に出ましたが、児童施設における過年齢児の課題があるだろうと理解し ています。ライフステージを通した一貫した支援という視点から見れば、私は障害児・ 者のサービスの一元化が望ましいと感じておりますが、権限委譲の場合には、その裏づ けとなる財源・措置が必要だろうと感じています。基本的に各都道府県へのすべての調 査は、現段階では考えてもおりませんし、なかなかできない状況です。私は東京都とい う立場ですので、個人的な意見はできるだけ控えた発言とさせていただいたつもりです。 ○柏女座長 それでは、このあと10分間ご報告をいただきますと、ほとんど質疑の時間 がなくなってしまいますので10〜15分延長させていただきます。それでは、全国地域 生活支援ネットワークからよろしくお願いいたします。 ○福岡氏(特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク) 私は入所施設にいた 人間ですが、平成2年から療育等支援事業のコーディネーターを20年近くやってきた立 場から、地域の障害のある子どもや親と付き合う中で、引っ掛かった言葉やピンときた 実践などを踏まえながら、乳幼児時期からの療育支援のあり方や仕組みづくりで提案さ せていただきたいと思います。  私どものネットワークは、ある意味ではちょっと困ったら「お母さん、子どもさんを お預かりしますよ」とか「付き添いしますよ」ということのサービスが面白いと思って、 それを面白がって取組み始めた団体で、当時はレスパイトケアサービスなどと言ってい ました。私は入所施設にいた人間として、このレスパイトケアサービスに劇的に驚きを 覚えました。たかだかレスパイトですけれども。  それは何かというと、今までは例えば障害のある子どものお母さんが、おじいちゃん が入院した、あるいは葬式になってしまったときにどうするかというと、たいがいは自 閉症の子どもを2泊3日のショートステイで預けてしまい、葬式が終わったら、ようや く連れに行くという風景で、それが当たり前だと思っていたわけです。そのときにちょ っと困ったらお預かりしますよ、付き添いますよというサービス、いわゆる田中代表な どが始めたレスパイトケアを真似しながらやっていく中で、親たちは、それならショー トで預けるのではなくて、こんなに大事にしてくれた我が子、我が孫のおじいちゃんの 亡くっている現場において、ちょっとでもいいからおじいちゃんがお棺に入るところを、 菊の花を手向けるところを、焼場に行って、これからおじいちゃんがいなくなってしま うのだというところを見させたい。できたらお斎の場にも着かせたいというシーンをし てくれますかということについて「ああ、いいですよ」ということを喜びとしながら、 喜々としてやってきた団体です。  その中で我々も親も、こうやって支援というものは使うものだということに気づき始 めた方たちなのです。我々もサービスとか、支援というのは固定電話とは違って、携帯 電話のように本人に添って支援するものだ、そういう道具だということに気づいたとい うことです。本人を真ん中にして支援があり、そこを真ん中にチームができていくとい うことの面白みに気づいたのです。親たちはそういうことに気づきますと、これまでの あてがわれるサービスではなく、我が子の生活と、我が家族にとって必要な支援が何か を真剣に考え始め、そして支援の喜びを感じていきます。その中だけで放っておくと意 外にこういう方々というのは尖った母親とか、いろいろ市役所に文句を言いに来る母親 とか、場合によってはモンスターお母さんというのです。言っていることは全うですが、 地域の実状、いわゆるサービスの場所と方法の固定に慣れた人たちがすると唐突なので す。その声を母親たちのモンスターではなく、ちゃんと地域の声として活かしていくた めには、どうしても相談支援体制が必要なのです。こういうレスパイトケア的なサービ スに相談支援体制がリンクしてくると、かなりいい地域ができてくるという自覚です。  私どもで頻繁に行われている支援会議やケア会議の例として、普通学校に通っている 発達障害の子どもですが、夏と秋の衣替えがまことに苦手で、ようやく冬のトレーナー からTシャツに着替えさせたが、そのころには冬になり始めている。ようやくトレーナ ーに着替えさせたころには蝉が鳴き始めている。こういうときにどうするかというと、 それぞれの環境にバラバラにあると本人はグチャグチャになってしまうのです。こうい うときに母親が尖るのではなく、ちょっと困ったら集まるという仕組みをどれだけ作れ るかが勝負で、私どもの地域は支援会議や個別支援会議が結構多いのです。例えば、学 校の特別支援教育の先生と、あるいは放課後サービスを受けている行動援護の事業所や 移動支援事業などの事業所、あるいは父母などの関係者が集まってくるわけです。  どうするかというと、例えば、秋の衣替えの時期になると、皆さんが一堂に集まって くる。これまでお母さんの子どもにかかわる様子を見てくると、子どもが着替えがいち ばんスムーズにいくのは、朝起きたときに、辺りの風景が一変しているときだと。なぜ かというと、朝起きたら、辺り一面が白くなっているときだ。このときだけは意外にT シャツからトレーナーに着替えがしやすい。「今日、集まってもらったのはほかでもあり ません。どうも今週の後半にXデーが来そうだ、ようございますか」となるわけです。 「これから皆さんに何々ちゃんが去年ずっと雪の中でソリ遊びをしているときに、着て いたトレーナーの写真の絵カードと遊んでいたビデオテープを皆さんにお配りしますの で、これから少し予告的に見させてください。朝起きるときには枕元にトレーナーと雪 の風景とのマッチングの予告をしておいてください、ようございますか」とやるわけで す。そういう流れの中で、例えば木曜日の朝起きたときに、辺りの風景が一変している ときには、皆さんは同じ目線で支援していますから一発で行けるわけです。こういう仕 組みをどれだけ作れるかがとても大事で、このようなAちゃんならAちゃんにとって支 援が用意され、そこに資源としての人間がチームアプローチでくっ付くという地域が自 然にできていったころには、乳幼児期から保育園を越えて学校、卒業後の支援体制に向 けて、自然に地域に本人を真ん中にしたチームアプローチ支援ができてくるのです。誰 かの独占物とか、誰かが考えるとか、母親が1人で走り回るのではなく、AちゃんならA ちゃんを真ん中にみんなで集まって支援を考えていこうという仕組みを作るということ です。そのときにはどうしても相談支援体制がしっかり保証されなければいけないので すが、そのようなことで、これは今後の検討にとって非常に有効だと思う意味で資料を 用意してきました。  その資料は私どもの地域で実践している取組みの1例ですが、時間がないので資料の 概略だけをお話します。そういったチームワーク・アプローチ体制を支えるためにはど うしても相談支援を専門に行えるようなコーディネート集団が必要です。ここにどれだ けお金をちゃんと用意し、地域に相談支援体制を構築できるかが大事で、長野県の場合 ですと、ここに障害児のコーディネーターと療育のコーディネーター、あとは3障害の コーディネーターと学校卒業後の就労の支援ワーカーや生活支援ワーカーが用意されま す。こういった方たちが乳幼児期からバトンタッチのようにチームワーク・アプローチ を作り続ける核になるわけです。そういった核の取組みの中で、その地域のそういった 取組みをセンターだけのものにしないで地域のものにするためには、どうしても自立支 援協議会が絵に描いた餅ではない形として作る必要があります。その中で地域の関係者 が定期的に集まりながら、この地域の療育体制はどうなのかとか、さまざまな形で話し 合うという自立支援法で謳っている自立支援協議会の存在が非常に必要になってきます。  そんな中で、例えば私どもの地域で、いま非常に効果を上げているのが、よくあるよ うに1歳半健診や3歳児健診で気になる子どもがあった場合、そこにいろいろな医療機 関がかかわったり、保健師がかかわったり、療育教室をやるのは、どこにでもある風景 です。こういった子どもが保育園に上がったときにどうなるかと言ったら、私どもの地 域では保育園には年5回必ず市の保健師、臨床発達心理士、保育士、教育委員会の教育 相談の先生の4人が必ず入ります。私どもの相談センターからは臨床発達心理士と療育 のコーディネーターともう一人の職員の7人体制で、保育園を朝9時から夕方の4時ま で定期的に回るわけです。その中で保育園にいる発達障害系の子どもや気になる子ども、 障害のある子どもたちのカンファレンスを頻繁にしていくわけです。もちろんそこには 保育士たちにも、このような対応がいいだろうという助言をし続けていくわけです。  そういうカンファレンスの中で、母親たちが気づいていないとか、ようやくこれから 年中を終えて年長になる者はどうしたものとか、ここで急に進度判定や就学指導の判定 だなどと一気に行くのではなく、ここはじっくり母親に気づいていただきながら、チー ムワークで行こうという合意をしながら、丁寧にバームクーヘンを焼き上げるようにや っていくわけです。そういうプロセスの中で、それでは学校はこういったところが適切 なのだろうかということのやり取りを何度もしているわけです。こういう取組みの中で 親も自信を持ち、安心感を持ち、自分の子どもを地域の現場で支えさせていただこうと いう気持になっていく。周りの関係者もそういった形のチームを作っていこうという動 きになっていくという取組みをしていくことが、とても大事だということで、4頁、5 頁はそのような部分を資料としたものです。  6頁はそのときにとても大事なポイントとして乳幼児期から幼稚園を越えて学校に行 くときの糊代の部分をどのように丁寧に作るか。口頭でやり取りするぐらいだったらペ ーパーを用意したほうがいいです。ペーパーでやり取りぐらいだったら、一緒に顔を合 わせたほうがいいです。一緒に顔を合わせるぐらいだったら、同じ支援をしていたグル ープが学校の現場へ入っていき、支援を連携させたほうがはるかにいいわけです。糊代 をどう作るかという意味でもその骨格になるのは相談支援体制の連携です。  そんな中で、7頁、8頁辺りはライフステージにおいてチームアプローチの組織が変わ っていくということです。1例として、9頁から12頁までちょっと細かく書いてありま すが、これは何かというと、未満児のころからこの子どもは発達に心配があるというと きには、就学を迎えるまでに延べ91回のチームアプローチをしていくわけです。そうい うプロセスを用意することが障害のある子どもたちが一貫した支援体制の中で、母親だ けが困るのではないという仕組みを作っていくということで、自立支援法の中では相談 支援体制を本当に考えているのか。絵に描いた餅ではないチームアプローチを作るだけ の実態を作ろうとしているのか。その先に本当に高度な専門性を必要としている方、あ るいは危機介入をしている方たちをどうするかという議論を考えるべきだろうと思って いるわけです。  私どもネットワークとしては、そういった考え方をベースに、今回は別資料ですが、 ヒアリングの資料を用意してきました。考え方のベースとしては、可能な限り障害のあ る子どもたちは通常の場で支援を受けるべきだ。何かにあてがわれた支援を受けるので はなく、通常の場において、さまざまな関係機関が同じ目線でチームワーク・アプロー チをしながらプロセスを経ていく取組みを用意していく、いわゆる1頁の理念の部分と 2頁の具体的な提案も含めて提案しています。  そのときに核となるのは何かというと、コーディネート機能、相談支援体制をしっか り作ることだと述べています。時間が限られていますので、概略しかお話できませんが、 まずそういった地域におけるチームアプローチ支援をしっかり作り上げていく先に、児 童の支援の仕組みがどのようであるべきかを考えていただけたらと思って用意してきま した。  またネットワークでは、そのほかにも対象範囲を拡大したグループホーム、ケアホー ムの利用のあり方、あるいは行動援護という、いわゆるレスパイトケアから始まった場 所とサービスを限定しない個別支援サービス。レスパイトケアがホームヘルプサービス に発展し、移動介護に発展し、行動援護や重度訪問介護に発展し、あるいは今の移動支 援事業という形の変遷を経てきたという流れの中で、行動援護の持っている専門性や手 法は、乳幼児期にもかなり効果的だということも含めて、それは先ほど田中代表も提案 していた中身です。時間がありませんので、そのようなことをかいつまんでお話しまし た。 ○柏女座長 現在3団体の方からご報告をいただきました。それでは10分ちょっととい う限られた時間ですが、ご意見、ご質問等がございましたらお願いいたします。 ○末光委員 最後のご発表で、資料の3頁の部会構成メンバーを見ますと、部会メンバ ー、構成機関外にグループホーム、ケアホームあるいは授産施設、作業所等というのが あります。それを見て思うのは、地域生活あるいは自立支援は、言葉が適当かどうかわ かりませんが、隙間産業的な活動をしておられるのか、あるいは既存の従来からあるグ ループホーム、ケアホームあるいは授産施設、作業所等とはどのような関係になるのか よくわからないのです。グループホーム、ケアホームあるいは授産施設、作業所等だけ でなぜ更生施設は入っていないのかということです。 ○福岡氏 私どもの地域で行っている自立支援協議会の中での検討する部会として、い ま用意されているのは療育支援と就労支援、日中活動、在宅支援ですが、在宅支援部会 には居宅に事業所やグループホーム、ケアホームの事業所関係が入っています。日中活 動支援部会は、日中活動系、あるいは地活センター等が入っていて、就労支援部会は・ センターとか、ハローワークとか、企業関係の所です。療育部会は、いま言った療育と いうことです。 ○末光委員 この相談支援事業等々は、すべての既存のサービスがありますが、そうい うものすべてを包括する主たる事業としてやっておられるのか、従来の事業がやれない 隙間を埋める形でやっているのかを教えていただきたいと思います。 ○福岡氏 ここの協議会の話ですか。 ○末光委員 先生方がやっておられる取組みそのものです。 ○福岡氏 取組みそのものでいちばん大事にしているのは、相談支援のちょっと困った らすぐ関係者に集まってもらうという個別支援関与を行うという地域づくりです。その ときに各機関にさまざまな日中活動の事業所、ケアホーム、医療機関がありますが、そ ういった所の中で、どうしても支えられない隙間を埋めるサービスは別途持っています。 例えば、福祉有償のサービス、移動支援の事業、行動援護などのサービスは持っていま す。逆にそういったサービスがなければ、どうしても箱から箱で終ってしまって支援を つなぐことができないものですから、それは一部持っています。そういった関係機関が 集まりながら、自立支援協議会をベースに地域の課題をその都度集まって話し合うとい う仕組みづくりを作ろうとしてやっているところです。 ○宮田委員 前半の部分からも出ている医療専門性という部分ですが、障害のある子ど もを発達支援していくときに、医療専門性が必要であることは全く異論はないのですが、 先ほどから頼りにしていただいている小児神経科医の立場として、少し愚痴を言わせて いただけば、障害のある子どもも大人になれば大人の病気になるという部分をしっかり 押さえておかなければならないだろう。我々の所でも自閉症で、非常に知的障害も重く て、病院にもかかったことがない。でも、このごろ何か痩せてきたということで、押さ え付けて採血したら、血糖値が800もあったというケースがあります。  生命を守るという立場からすれば、小児神経というよりは、地域の医療機関がしっか り小さい時から診ていけるシステムをベースにしなければならないだろうということと、 小児科医が減少している、絶滅危惧種だと言われている時代の中で、その中でも小児神 経科医は少なくて、そして小児神経学会のほとんどの医師は、障害というところにはか かわり合っていない。障害というところにかかわっている小児神経科医も、多くは発達 障害の子どもたちに手を付け、広げているという状況の中で、コウノトリか東京山椒魚 みたいな小児神経科医をベースに制度を設計していくというところが考えられないので は、もう少し広い立場で医療を捉えていただきたいと思います。 ○柏女座長 とても大切なご意見、ご指摘をいただいたのではないかと思います。 ○山岡委員 全国児童相談所長会のほうで発達障害を触れていただきましたので、ここ でいうADHDとか、アスペルガー症候群ですが、早期発見、早期支援が大切だということ は我々も同じように認識しております。この障害は一次的な障害の段階で、児童相談所 にお見えになることがあまりなくて、結果として二次的障害、早期に発見されなくて、 適切な対応も不足をして、二次的障害を起こし、結果としてその背景に虐待があるケー スもありますが、非行、引籠もり、学校に行かないなどいろいろな問題が起きて、そこ が主訴で児童相談所へ行かれて、そのときは本人、保護者が障害について認知していな い。発達障害相談で行かれているケースはわりと少なくて、逆に何かのきっかけで行っ たときに、発達障害が背景であることがわかるのが多いのではないかという質問です。  それから、そういうことなので、育成会の方も言われていましたが、むしろ二次的障 害のほうが非常に怖く、また社会的にも影響が大きいというとで、ここの部分について は早期発見、早期対応に力を入れていただきたいと思います。  児童相談所に行っているケースは、障害に気づかないで行って、いろいろなケースで 行った中で、そういうことが発見されるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○豊岡事務局長 ご指摘のとおりです。またこうした発達障害に気づかないというので しょうか、相談に来られてということもありますし、特に虐待通告ということでよく連 絡が入ってきますので、私たちは半分強制的にかかわりを持つ中で、子どもの心理診断 と心理判定してみたら、発達障害があるという結果になることが多いと思いますので、 虐待を契機にするかかわりとか、不登校とか、学校の中での不適応もあります。 ○柏女座長 ほかにございますか。 ○末光委員 先ほど宮田先生がおっしゃられたことに対して1つだけ。宮田先生が小児 神経のすべてを代表するようなご意見なのか、個人のご意見なのかについてです。私は 先生が小児なりを中心にやりたい、大人になったらどこかで診てくれるだろうというお 考えはよく分かりますが、我々は重症身心障害児をずっと診てきた小児科医、小児神経 科医、その他の医師もそのあと任せる所がないからやらざるを得ない、続けてやろうと いう思いを強く持っております。その辺りを逆に言いますと、18歳か20歳でやめろと 言われるのだったら、この仕事そのものを辞めようという医師もいるということだけを コメントとして申し上げておきたいと思います。 ○宮田委員 任せる所がないのは、一般医療のほうが拒否しているのか否かというとこ ろがあると思います。我々の所でも非常に多動な子どもや重症身心障害の人たちが、な かなか診てくれる医療機関がないということで、非常に困っている部分はあります。た だ、我々の所では小さい時からできるだけ地域の医療機関にということで医師会等とも 協議して、こういうケースは診てあげられるという所をピックアップして、小さい時か ら地域の医療機関に最低日常の診療に関しては診ていくようなシステムを作ろうとして います。  そういう我々の取組みの中で、我々の施設の専門性を否定するわけではなく、地域で もっと気楽に風邪を引いた、予防注射でというところから診てもらえる医療機関を作っ ていくことが、その前に大事なのではないか。例えば、私の所に目の病気の人が来ても 「これは診られません」というレベルと同じようなところで重症身心障害の方が、もし くは自閉症の方が診られているのであれば、そうではなくて、非常にかかわりにくい人 だったとしても病気は一緒なのだというところから入っていかないと、制度ということ を考えるときに難しいのではないかと思います。 ○柏女座長 この議論は医療専門性の議論のところで是非深めていかなければならない と思います。 ○末光委員 誰でもかかる風邪を引いたり、目の病気、肺炎などというのは、どこでも いいので、私が申し上げているのは本来ベースにある疾患の基礎障害に対する部分につ いてはということです。その辺を先生はごちゃ混ぜにされているので、それが気掛かり ということだけを申し上げておきます。 ○柏女座長 医療専門性の議論も必要だと思っておりますので、是非そこで議論をさせ てください。今日はお客様をお招きしておりますので、お客様のことを優先させていた だきたいと思います。 ○市川委員 質問というより意見かもしれませんが、いま児童相談所のほうからお話が ありました。私どもは児童相談所と一緒に連携してやらなければいけないのですが、児 童相談所の福祉士はどんな資格を持っていらっしゃる方がいるのかというのは、もしデ ータがあれば教えていただきたいと思います。  こんなことを言ってはいけないのかもしれませんが、3分の1ぐらいの方は素晴らし く、優秀な方ですが、3分の1ぐらいは大丈夫かなと思う方もいらっしゃるというのが 正直なところです。せめて大学で福祉の勉強をしてきた方ぐらいになっていただけると 有難いといつも思っています。考えてみると、医療や教育というのは、いろいろなこと を言っても、国家資格があって、国家資格さえあればいいということではないのですが、 ボトムアップにはなるだろうと思います。そういう点でいうと、福祉士というのはコー ディネーター役に努めているのだろうと思いますので、措置だの契約だのと言う前に、 その辺りをきちんとしておいていただかないと、結局連携がうまくいかなければ駄目で はないかという気がします。これは私の意見ですが、是非、その辺りもお考えいただけ ればいいなと思っています。 ○柏女座長 これについては、厚生労働省に資料があると思います。児童家庭局が持っ ておりますので、それを出していただければと思います。よろしくお願いします。 ○柴田委員 豊岡さんに伺います。1頁の下から4行目に措置の問題で、幅広く措置を とられた自治体もあるということですが、実際に自立支援法に移行して、児童入所施設 の措置か契約かという問題の中で、私どもの協会で取っているデータでは、本当に極端 な県による開きがあります。これについて児童相談所の側から見て、どうしてそういう 開きが出ているのか。今後とも私どもは児童相談所の機能に期待をするところが大きい のですが、児童相談所として、それは担っていけないような状態なのかどうなのかの2 点を伺いたいと思います。 ○豊岡事務局長 それは例えば「虐待等」と書いてありますから、虐待等について、ど のように判断をするかということだと思います。虐待が確かにあったが、いま地域で家 族再統合のためのプログラムに取り組んで、在宅が可能と判断しているのか、それとも この子はしばらく親子分離を図って措置で行くべきかという、個々の状況は全部違うと 思います。そこをどのように判断するかが自治体で違っています。したがって、過去に 虐待があれば、すべて措置とするのかどうかを含めて、それぞれの都道府県での考え方 が違っているためにこんなに差が出ているのかと思っています。  虐待のケースであればあるほど、全国を点々とする場合があります。そうした場合に、 例えば子どもが一緒に動いているかどうかも全部状況は違うと思います。そうしたとき に地域で差が出てきてしまうと、あまり好ましくないのかと個人的には思います。そこ の実態を含めて、私の立場で、いま知り得る状態にないということですので、その辺は ご勘弁願えればと思います。 ○柴田委員 児童相談所の役割機能としてはどうでしょうね。 ○豊岡事務局長 児童相談所は子どもの相談ということで言えば、現在も障害相談にか かわっていますが、やはり虐待への比重が非常に大きくなっています。児童福祉法の中 では虐待を含めて、虐待、非行とより専門的な機能を発揮しろということになっていま すので、虐待、非行を含めて、その辺に児童相談の機能が特化しつつあるのかなという 印象は持っています。  障害について先ほども申し上げましたが、療育手帳の判定ということであれば、うち は今やっていますが、そこの業務をどのように見ていくかだと思います。個人的な意見 は控えさせていただきます。 ○柏女座長 最後に1つだけ私から豊岡事務局長に伺いたいと思います。いまの関連で すが、全国児童相談所長会は定期的に権限委譲についての調査をしていらっしゃいます が、直近の調査だと、障害関係については、市区町村に委譲すべきだという意見が56%、 条件次第で委譲すべきが24%で、合わせて8割の児童相談所長が権限を区市町村に委譲 すべきだと回答していらっしゃいます。総合調査は行われていないようですが、それに ついては観測で結構ですので、現在はそういう状況がどうなっているのか、豊岡事務局 長のお考えを簡潔におつしゃっていただけますか。 ○豊岡事務局長 いま言われたデータは、平成13年のものでしたので、あえて申し上げ なかったのですが、現実的に施設種別によって委譲可能だと判断をしている自治体が結 構多いのです。したがって、いま80%近い委譲可能だと言っている部分についてはおっ しゃるとおりです。障害者の施設については50%近くまで委譲可能だという地域の結果 が出ています。これが自立支援法を見据えたものではないだけに、今日は出しませんで したし、あえて触れませんでした。 ○柴田委員 それと合わせて入所と通所は。 ○豊岡事務局長 通所は80%以上で、高いものは90%です。知的の入所で50%を超え ていますので、それはあります。 ○柏女座長 まだまだご意見があるのではないかと思います。最後に時間のない中で職 権を濫用させていただきまして申し訳ございませんでした。それでは、今後の日程等に ついて、事務局からご説明をお願いいたします。 ○障害福祉課長 今後のスケジュールについては1枚紙の資料が配られています。第4 回は5月12日の10時からを予定しております。第1回目のときに論点についてご議論 いただきましたが、論点について再整理したものをご議論いただきながら、併せて障害 の早期発見、早期対応あるいは就学前の支援についてご議論いただければと思っていま す。その後の日程については、ここに書いてありますとおりセットいたしました。よろ しくお願いいたします。なお、お手元に第2回の検討会の議事録を配付しております。 何かございましたら事務局にご連絡ください。 ○柏女座長 ありがとうございました。次回は最初のときに出された論点整理について、 新たに加えていただいたものを全体を議論し、かつ、ライフステージごとに議論してい くということですので、是非よろしくご協力をお願いしたいと思います。どうもありが とうございました。 【照会先】 〔障害児支援の見直しに関する検討会事務局〕   厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課   TEL 03-5253-1111(内線3092)