08/04/25 遠隔医療の推進方策に関する懇談会(第3回議事録) 遠隔医療の推進方策に関する懇談会第3回会合(議事要旨) 1.日 時 平成20年4月25日(金) 13:00〜15:05 2.開催場所:総務省地下2階 講堂 3.出席者 (1)構成員(敬称略) 金子 郁容(座長)、石田 清信(秋草 直之代理)、太田 隆正、大山 永昭、梶井 英治、川島 孝一郎、久島 昌弘、栗原 毅、高本 和彦(仁坂 吉伸代理)、本田 敏 秋、本多 正幸、松原 由美、村瀬 澄夫、吉田 晃敏、和才 博美、和田 ちひろ (2)総務省 鈴木総務審議官、中田政策統括官、松井官房審議官、安藤地域通信振興課長、濱 田地域企業経営企画室長、中野調整課課長補佐 (3)厚生労働省 佐藤指導課長、新木研究開発振興課長、冨澤医療機器・情報室長、宇都宮官房総 務課企画官 (4) 経済産業省 吉崎官房審議官、渡辺医療・福祉機器産業室長 4.配布資料 資料1「遠隔医療の推進方策に関する懇談会」第2回会合議事要旨 資料2 第1回・第2回会合における主な検討内容 資料3 遠隔医療の類型と取組例(追加調査) 資料4 吉田構成員発表資料 資料5 栗原構成員発表資料 資料6 和才構成員発表資料 資料7 久島構成員発表資料 資料8 和田構成員発表資料 資料9 懇談会開催要綱・構成員一覧 5.議事概要 (1)開会  ○金子座長より、第2回懇談会の概要と議論の枠組みについて説明された。  ○要旨は下記の通り。 ・ 今後の議論の前提として、(1)深刻な医師不足や遠隔医療を必要とする地方を主軸 にする、(2)慢性期医療、健康管理を中心にする、(3)先端技術ではなく既にある技 術を活用した社会イノベーション、に重点を置いて検討を行うこととする。 (2)遠隔医療の類型と取組例(追加調査) ○株式会社NTTデータ経営研究所ライフサイエンス戦略チーム本多氏より、遠隔医 療で想定される類型の説明、類型に基づいた遠隔医療実施例の概要説明がされた (資料3参照)。 ○要旨は下記の通り。 ・遠隔医療の類型として、前回の類型を修正し、(1)D to D:医療関係者間(医対医)、 (2)D to P:医療関係者と患者間(医対患)、(3)D to N:医療関係者と患者の間を看 護師やケアマネージャー等医師以外の従事者(コメディカル)が仲介、(4)P to P: コミュニティ形成型(地域住民(患者・医師)が主体で実施)を挙げている。 ・上記類型に基づき、遠隔医療実施例(国内外)を(1)導入・運営コスト面と、(2)実 施効果を中心に追加調査を実施。全体的に国内事例では、導入時に実証実験を利 用しているものが多くなっている。 ・また、現在の技術で遠隔医療を実施した場合の費用を調べたところ、従来の取組 時点よりも係る費用は安くなっている印象を持っている。 (3)医師不足を解消する旭川医大の遠隔医療 −地域医療からアジア貢献までその 15年の成果と未来展望− ○吉田構成員より、旭川医大の遠隔医療への取り組み状況と普及への課題について説 明がされた。(資料4参照) ○要旨は下記の通り。 ・旭川医大では、文部科学省からの8.5億円の支援をもとに遠隔医療センターを設 立し、現在国内42医療機関、国外4医療機関を結び、様々な診療科で遠隔画像診 断と遠隔病理診断、在宅健康管理支援に取り組んでいる。 ・実例として、重度の糖尿病患者が発症した白内障の治療について、稚内市立病院 と旭川医大で連携した内容を報告した。具体的には、(1)稚内市立病院での患者の 診断に遠隔画像診断システムを活用し旭川医大で同時診断、(2)旭川医大における 手術中の模様を稚内市立病院にいる医師・看護師・患者の家族に映像中継、(3)通 常より早期に旭川医大を退院した患者が、旭川医大の看護師とテレビ電話を活用 し在宅健康管理を受ける、というものである。現在は、携帯電話による遠隔医療 の研究・実験も開始している。また立体ハイビジョン映像技術を活用し、アジア における遠隔医療教育を行っている。 ・現在北海道においてブロードバンド対応ができている医療機関は175(道内医療 機関の41.3%)しか無く、それ以外は衛星送受信にて対応している。 ・遠隔医療は、実験・実証を経て、現在は実用の段階に入っていると認識している。 医師不足の解消と医療技術の向上に貢献するものとして、更なる普及推進に寄与 していきたい。また、遠隔医療は直接医療に比べて、利尻島における試算で眼科 の場合約13億円の費用削減につながる研究もあり、この意義は大きいと考えて いる。 (4)テレビ電話を利用した予防医療の試み−地域遠隔医療の可能性を探る− ○栗原構成員より、東京女子医大の在宅健康管理への取り組みについて説明がされた。 (資料5参照) ○要旨は下記の通り。 ・都内在住者の有志40人に対して3ヶ月間、テレビ電話を活用した生活習慣病の予 防、慢性疾患のフォロー、術後相談を行った。自己採血検査データを元に月1回 30分くらいの時間をかけ相談を行ったが、結果として35人のデータに改善傾向 が見られた。また、血糖値の高い患者が在宅健康相談によって、現在でも食事療 法等で薬に頼ることなく暮らしている。 ・ 外来のみでは患者とのコミュニケーションが不足しがちで、成果を上げることに 難しさを感じていたが、テレビ電話によって医師・患者が互いに落ち着いた環境 で相談やコミュニケーションを十分にとることが可能となり、細かいフォローが 可能となる。 ・ 在宅健康管理は、特に慢性疾患の患者への有効な手段となるものと期待している。 また、女性医師やパート医師など勤務時間等に制限がある医師を遠隔医療により 有効活用することで、医師不足解消に寄与できると考える。 (5)遠隔医療とICT ○和才構成員より、NTTグループの遠隔医療への取り組みについて説明がされた。 (資料6参照) ○要旨は下記の通り。 ・現在取り組んでいる遠隔医療技術の事例として、遠隔病理診断支援、在宅医療、 遠隔コミュニティ等がある。 ・遠隔医療普及への通信事業者としての課題は、専門性・高度な品質の確保、利用 者利便の向上等、利用目的に応じてどの程度の品質に対する要求水準があるか未 整理である点にある。現状では全て個別対応のシステムとなっており、高コスト の一因になっている。したがって、医療業界とICT業界が協力して、遠隔医療 に対する様々な実証実験により、定性・定量的なデータを蓄積しシステム要求条 件の標準化を検討することが必要と考える。 (6)沖縄における遠隔医療支援の知見 ○久島構成員より、沖縄における遠隔離島医療支援の取り組み等について説明がされ た。(資料7参照) ○要旨は下記の通り。  ・沖縄県立中部病院を拠点に、離島の医療機関に対してテレパソロジー、テレラジ オロシー(システムはあるが休止中)、ビデオカンファレンス(昼食時に毎週5 回)を行っている。これらシステム上の課題は、通信インフラ整備が十分でなく、 通信速度や送受信できるデータに限界がある点である。 ・遠隔医療システムはあくまで互いのコミュニケーション、人間関係構築ができて いることを前提とした補助機能である。沖縄中部病院では、臨床研修修了生が離 島医療に赴く仕組みがあるため、互いの状況を把握しコミュニケーションをとり やすい土台ができている。 ・遠隔医療の普及には、高機能システムである必要はなく、むしろ通信インフラの 強化が重要である。また運用のためには、へき地医療に対する強い使命感に基づ く無報酬・業務外のボランティアに頼るのではなく、医師同士のコミュニケーシ ョンを活性化する組織として制度化し、また報酬化することが必要である。 (7)患者・家族が求める遠隔医療 ○和田構成員より、患者・家族が参加することによる遠隔医療普及への貢献について 説明がされた。(資料8参照) ○要旨は下記の通り。  ・ 医師不足や地域格差などの条件不利な環境におかれた中でも、患者・家族にでき ることは、(1)受診抑制のために、受診前にまず相談(例:♯8000)をして、本当 に受診が必要かどうかの判断を他者へ求めること、(2)より質の高い診察のために、 オンライン上のカルテ入力サービス等を活用し自身の症状を記録しておくこと、 また、自身の症状に関してイーラーニング等を活用し知識を深め、医師の説明の 際に理解もしくは質問ができるよう事前準備を行うこと、(3)医療者への負担軽減 に向けて、患者会などのコミュニティを形成・活用し実体験と知識の共有を行う ことで、治療後の精神的なフォローを行うこと、などが考えられる。また、闘病 経験者を相談員に起用する事例があり、相談員の信頼性を担保するために認定資 格を設ける動きも出てきている。 ・医療の受け手である患者が同時に医療の担い手になりうる可能性についてICTを 用いて検討し、地域医療格差の是正につなげられることを、遠隔医療に期待して いる。 (8)意見交換  (インセンティブについて) ・遠隔医療は、医師の使命感によりボランティアで実施されているのが現状だが、 業務として制度化、報酬化することは重要であり、それが使命感のそれほど高く ない医師を動かすきっかけになりうる。また人と人との信頼関係の向上に、ICT が寄与するのではないかと期待している。 ・遠隔医療を普及推進する上で、何か制度を作ればよいという問題ではない。人と して、医師としての信頼性・使命感に裏打ちされてこそ、遠隔医療が普及するも のと考えている。そもそも患者からの電話対応もしない医師に対して、遠隔医療 としてのツールであるテレビ電話を配布し報酬化したところで、医師が真剣に患 者に対応するかは疑問である。 ・遠隔医療普及には、最低でもADSL程度の通信インフラは必要である。また、医 師の疲弊感を減らすような遠隔医療に対する制度設計が必要である。旭川医大で 遠隔医療に携わる医師には相応のインセンティブを与えている。 ・現在、遠隔医療が様々なレベルで同時並行的に進んでいる。成功事例を整理し、 地域のニーズに応じてどこから取り組むべきかの議論が重要である。 (実務的な課題) ・在宅健康管理を行うには、医師・コメディカル側の時間調整、コミュニケーショ ン力が必須になる。場合によってはコールセンターに頼ることも必要となるかも しれない。 (費用の考え方) ・国レベルで開発していくことと、自治体レベルで費用をかけずに独自の努力で取 り組むことについて、それぞれ議論が必要ではないか。 ・実証実験により立ち上げた後、その後継続・成功している事例から、維持コスト 面も含めどうすれば普及推進できるか検討することが必要である。 ・遠隔医療拠点病院、診療所等目に見える制度化を先に行い、その要件やインセン ティブ、運営内容を明確化することが必要である。 (9)今後のスケジュールについて ・次回会合は、平成20年5月21日(水)18:00から厚生労働省にて開催す る。