08/04/04 第2回議事録 第2回ヒトに対する有害性が明らかでない化学物質に対する労働者ばく露の予防的対策に 関する検討会及び第2回ナノマテリアルの安全対策に関する検討会(第2回合同会合) 議 事 録 日時 平成20年4月4日(金) 15:00〜17:00 場所 中央合同庁舎第5号館5階共用第7会議室 ○化学物質対策課企画官 定刻になりましたので、ただいまから第2回「ヒトに対する有害性が   明らかでない化学物質に対する労働者ばく露の予防的対策に関する検討会及び第2回ナノマ   テリアルの安全対策に関する検討会(第2回合同会合)」を開催いたします。    本日の検討会は公開で行いたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。また、   本日の議題に関係する専門家として、物質・材料研究機構の宮澤様、東レ経営研究所の成田   様、労働安全衛生総合研究所の鷹屋様にご出席いただいております。    配付資料の確認をさせていただきます。1枚目は座席表、2枚目は議事次第です。資料1   は「ナノマテリアルの範囲等について」、資料2は「ナノ物質の性質について」、資料3は   「平成19年度ナノマテリアルの用途・生産量調査結果報告」、資料4は「NBCI紹介とナノ   マテリアルの開発状況について」、資料5は「ナノ原料と化粧品」、資料6は「ナノマテリ   アル取扱い職場の労働衛生−測定・管理方法の現状と課題−」です。    参考資料1は「第1回合同会合の概要」、参考資料2は「ヒトに対する有害性が明らかで   ない化学物質に対する労働者ばく露の予防的対策に関する検討会開催要綱」、参考資料3は   「ナノマテリアルの安全対策に関する検討会開催要綱」、参考資料4は「合同会合委員名   簿」です。    以降の議事進行につきましては、福島座長にお願いいたします。 ○福島座長 1番目の議題の「ナノマテリアルの範囲について」を事務局から説明をお願いいた   します。 ○事務局(医薬食品局) 資料1に基づき、ナノマテリアルの範囲等について説明させて     いただきます。最初は「国際標準化機構(ISO)における取り組み」です。これについては、   後ほどNBCIの小川委員からも紹介していただける予定になっております。ISOにおいては、   ナノテクノロジー分野の国際標準化活動を進めるために技術委員会(ISO-TC229)が設置さ   れています。    その経緯としては、2005年5月に発足し、その後2005年11月に第1回総会が開催され、   その後現在までに第5回総会までが開催されている状況です。    目的は、ナノテクノロジーの持続的かつ責任ある開発を支援し、国際貿易を容易にし、消   費者あるいは環境保護等の改善を支援し、製造・使用・廃棄における優れた実践規範を促進   する基準を作成することが謳われています。    活動の枠組みとしては、4つのWGが設置されております。1つ目のWGは、コミュニケー   ションを容易にし、そして共通の理解を促進する目的のために、「用語と命名法」に関し、   用語の定義などが検討されていると聞いております。2つ目のWGにおいては、ナノマテリ   アルの「計測とキャラクタリゼーション」、試験方法の基準の作成などが検討されていると   聞いております。3つ目のWGにおいては、科学的根拠をベースとした基準づくりというも   のを、「健康、安全及び環境」という論点で検討がされていると聞いております。4つ目の   WGについては、つい先日設立されたと聞いておりますが、「材料規格」というWGになって   おります。    2番目の項目は、「ナノマテリアルに関係する報告書等におけるナノマテリアルの範囲」   を整理しております。こちらは、第1回検討会において、こういう報告書において述べられ   ているナノマテリアルの範囲を少し整理したほうが、本検討会の議論をしていく上でも役に   立つのではないかという指摘がありましたので、改めて整理したという位置づけのものです。    簡単に中身を紹介させていただきます。最初は、英国王立協会などが公表した報告書の中   に記載されているものです。ナノマテリアルとして、少なくとも一次元の大きさが100nmよ   りも小さく製造された材料という記載のされ方をしております。最後のところで、ナノメー   トルサイズの粒子から構成されるナノ結晶材料もナノマテリアルと言われております。    その下の欄は、DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICESなどが発表した報告書の中の   記載です。ここにおきましても、ナノ粒子は1〜100nmの直径を有する粒子であるとしてお   ります。また、ナノ複合材料として、母材中に埋め込まれたりしているものも範囲として含   めている状況です。    次頁の上の欄に記載されているのは、オーストラリアの政府機関であるDepartment of   Health and Ageingが調査事業をするときに用いたナノマテリアルの範囲になっています。   少なくとも一次元の大きさが100nmよりも小さく製造された材料という言及のされ方をして   います。あくまでも、これは情報を募集する目的のために広義の定義を使用したという断り   書きも示してあります。    次は、U.S. Environmental Protection Agencyが発表した文章の中での記載です。ここ   では、ナノテクノロジーとしてどの次元かが約1〜100nmの尺度を用いる原子・分子・高分   子レベルの研究及び技術開発:微小サイズに基づく新奇な性質・機能を有する構造・装置・   システムの創製と使用、あるいは原子スケールで物質を制御、あるいは操作する能力という   記載ぶりがされております。これは、国家ナノテクノロジーイニシアティブで用いられる、   ナノテクノロジーの定義に部分的に基づいたものであると記載されているところです。    次の頁は、アメリカのFood and Drug Administration(食品医薬品庁)が発出した報告    書の中での記載ぶりです。この報告書においては、ナノスケール材料、あるいはナノテクノ   ロジーに関して厳密な定義は採用しなかったと記載されています。その理由としては、定義   を作った場合、場面場面、状況状況に応じて、その定義が狭すぎる、あるいは広すぎること   になるかもしれないということを挙げております。    次の頁は、ECの科学委員会(Scientific Committee on Consumer Products)という科学   委員会が発出した報告書の中での記載です。ナノ粒子として、少なくとも1つの次元でナノ   領域の大きさにある粒子である。また、ナノマテリアルとして一次元以上の外形寸法、ある   いは内部構造がナノ領域にあるものということが記載されております。    最後の頁は、ドイツ連邦労働安全衛生研究所が発出したガイダンス・ドキュメントの中で   の記載です。こちらでは、ISOが作ったドラフトを参照しながら、ナノマテリアルは一次元、   二次元または三次元がナノスケールのナノ物質またはナノ構造物質であるという記載ぶりが   されています。ナノ構造物質は、ナノスケールの内部構造を有し、凝集体・塊がこれに当た   るという記載がされているところです。    以上が「ナノマテリアルの範囲等について」ということです。今後この検討会でいろいろ   なナノマテリアルについて検討していく中で、必ずしも定義づけというものを明確にしてい   きたいということは、いまのところ想定していないわけですが、一方で何でもかんでも対象   にするというのもいいアプローチではないだろうと考えています。第1回検討会においては、   委員の先生方からも、ある程度ターゲットを絞っていったほうがいいのではないかという発   言もいただいているところです。今後検討会を進めていただいていく中で、どのような考え   方で、例えばターゲットを絞っていく、優先順位を付けていくことができるのか、というこ   とも念頭に置いていただきながら、検討を進めていっていただければと考えております。    本検討会は、2つの検討会合同の検討会ですので、最終的にその優先順位付けの考え方と   いうものは、必ずしも一致するとは限りませんけれども、必ずしも本日そういう結論づけを   出すということでもありませんので、今後先生方からいろいろな意見をいただきながら、少   しずつその部分は明確化していければいいのではないかと考えております。 ○福島座長 ただいまの説明に対し、ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。資料   1の内容が終わった後、山本さんから定義づけの問題、それからターゲットをどのようにす   るかについての事務局側の考え方もいただきました。この検討会は2つの検討会からなって   いて、あとは分科会と分かれていきますので、必ずしもここで統一した結果とはならない可   能性は十分あると思います。しかし、あくまで合同会ですので、全員の先生方の一致が見ら   れれば、その一致を基に分科会のほうで、それを頭に意識しながら検討していくことになる   と思います。    (特に発言なし) ○福島座長 いま、事務局から方向性について説明していただきましたが、そのような形で進め   ていきたいと思います。2番目の議題である「ナノマテリアルの開発状況について」事務局   から説明をお願いいたします。 ○化学物質対策課企画官 この議題におきましては、4名の方から順番にプレゼンテーションを   行っていただくこととしております。まず、物質・材料研究機構の宮澤様からは、ナノマテ   リアルの物性などに関すること。東レ経営研究所の成田様からは、用途や生産量に関するこ   と。ナノテクノロジービジネス推進協議会の小川順委員からは、いくつかの物質についての   最新の開発状況等について。日本化粧品工業連合会の高野委員からは、化粧品への応用につ   いてご紹介いただきます。 ○福島座長 最初に、物質・材料研究機構の宮澤先生からプレゼンテーションをお願いいたしま   す。 ○宮澤参考人 物質・材料研究機構のナノ物質ラボのフラーレン工学グループの宮澤です。まさ     に、我々の所はナノ物質を扱っているラボラトリーです。しかも、フラーレン工学というこ   とで、フラーレンそのものを前面に押し出したグループです。この安全性に関しては、私た   ち自身も大変高い関心を持っております。ナノ物質で結晶のサイズが小さくなるとどんなこ   とが起きるか、という全般をお話したいと思います。確かに大変難しいところでして、私も   かなり勉強した結果をお話したいと思います。    1つは、小さくすると電子の状態が変化し、通常の大きなバルク材では考えられないよう   な異常な現象が発生します。化学的な性質としては、表面積が増大して活性になる、という   のはよく言われていることであります。力学的な性質に関しては強くなる、それから硬くな   るという性質があります。電気的な性質について、通常、物質というのは電圧をかけると電   流が連続的に流れますけれども、ナノサイズになってくると、電流が飛び飛びに流れるとい   う特徴的な流れ方をします。    磁気的性質として、通常我々が使っている磁石は、小さな磁区という集まりなのですが、   それがナノサイズになってくると、ナノマテリアルそのものが一つひとつの磁区に相当する   物質に変わり、それが非常に高い保持力を持つことが知られております。これが、優れた磁   気メモリーの開発につながっていることになります。    光学的性質として、通常我々は金属光沢として観察されるような物質も、小さくすると着   色するという現象が起きてきます。それもサイズによって変わってくる、色の出方もサイズ   によって変わるということが起きます。    特に、ナノ安全性に関しては、化学的な性質と密接に結び付いているところを理解する必   要があります。この図は非常に単純なことを考え、密度1g/cm3という物質は氷ぐらいしか   ないかもしれませんが、こういうことを仮定した場合の球状粒子の半径が1mmから1nmまで   の間で小さくなってきますと、比表面積、これは単位質量、単位重量当たりの表面積がある   程度ナノサイズに近づくとどんどん大きくなり、1nmぐらいの小さな粒子になると3,000平方メートル   /gぐらいの非常に高い表面積の物質になるという特徴があります。ですから、ナノサイズ   にすると、とにかく表面積が増大するということで、化学的な活性が上がることはよく知ら   れております。    有名な単層カーボンナノチューブについて、ある論文によると計算値が1,300平方メートル/g。多層   カーボンナノチューブはその論文の実測値では、25〜180平方メートル/gぐらいであり、単層カーボン   ナノチューブがいかに高い表面積を持っているかも理解できます。    電子のエネルギーが結晶のサイズによって変化します。通常、塊の半導体の性質、電子状   態を理解するときに、原子が集まって、次に分子の軌道ができて、それがさらに集まって固   体の全体の軌道ができるということを理解します。通常は、金属でも半導体でもバンド構造   で説明できるのですが、電子が存在できるエネルギーの帯というのがあり、それがバルク結   晶ではそのバンド構造が連続なのです。ナノ結晶になると、そのバンド構造がばらけてきて、   それで飛び飛びのエネルギー状態を持つ状況がより鮮明になってくるということです。    ナノ粒子の着色例というのがあるのですが、粒子径に応じて色が変化する。例えば、   4.5nmの半導体は赤いのですが、3.5nmのものは緑、2.5nmの粒子径の半導体は青というふ   うに、その結晶サイズによって着色が変わる、吸収が変わる。もう1つは、発光が変わるこ   とが知られております。とにかく、バルク固体からナノサイズになると、電子の状態も変化   して、通常我々が観察するのとは違った現象が起きます。    カーボンナノチューブは、細くすると強くなる例です。単層カーボンナノチューブはグラ   ファイトの単層を円筒状に丸めたものですけれども、強度が鋼ワイヤーの5〜20倍程度の強   度と言われています。弾性率というのは、バネ性に相当するものですが、これが鋼ワイヤー   の約20倍と言われています。多層カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブが何   層も積層した構造になっているものですが、その多層カーボンナノチューブの直径は大体5   〜200nmと言われています。これは、単層カーボンナノチューブに比べると、もうちょっと   低いということになっていますが、それでも通常の鋼ワイヤーに比べると桁違いに強いもの   であることがわかります。一般に、材料は細くすると欠陥が少なくなるので強くなる性質を   持っています。    もう1つは、構造を微細にすると硬くなります。これもナノ構造にすると強度が上がる例   です。例えば、鉄は小さな結晶粒の集合体であります。数マイクロメートルから10μmとい   う小さな結晶粒の集合体でありますが、その鉄の硬さを調べるやり方として、ビッカース試   験というのがあります。そのビッカース試験で定める硬さの高いものは、ビッカース硬さが   10GPaというのがあります。それは、ジルコニアセラミックスと同じ程度です。ジルコニア   セラミックスは、家庭でいうと庖丁です。ジルコニアセラミックス製の庖丁というのがある   のですがその硬さです。    それに対して、横軸は結晶粒径ですが、大きなほうからナノサイズの結晶粒径に、10μm   から10nmぐらいの結晶粒径にいくと、どんどん硬くなっていくことがわかりますが、これ   もきめを細かくすると硬くなるという性質を持っています。    もう1つ重要な、カーボンナノチューブについては非常に関心が高いです。カーボンナノ   チューブは基礎合成法で作られるのが一般的であり、この場合は金属ナノ粒子を核として、   それで炭化水素を熱分解によってその金属ナノ粒子から成長させるというやり方があります。   金属ナノ粒子の大きさに伴い、カーボンナノチューブの大きさも変わってくると言われてい   ます。主として、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンが使われていると文献では紹介され   ています。 ○福島座長 ナノ物質の性質ということで説明を受けましたが、ご質問がありましたらお願いい   たします。 ○小川(康)委員 多層カーボンナノチューブの場合は、内部が中心方向へ結晶化されてはいな   いので層がそれぞれ分離していますね。 ○宮澤参考人 はい。 ○小川(康)委員 この場合の表面積の硬化というのは最外層だけで、その内層はあまり考えな   くていいのですか。 ○宮澤参考人 これは、内層も含めて計算されていると思います。 ○小川(康)委員 そうすると奥の層は、硬化度は少ないですね。 ○宮澤参考人 閉じている場合もあります。ここは蒲生先生にお願いしたいと思っているのです   が、私自身はカーボンナノチューブは専門ではありません。閉じている場合が一般的なので   すが、両端が開いている場合もあります。開いている場合は、当然中も考えると思います。   閉じている場合は外層だけということになると思います。 ○小川(康)委員 この表面積に幅があるというのは、そういうさまざまな場合を考慮してとい   うことですか。 ○宮澤参考人 幅があるのは、多層カーボンナノチューブの外径が、5nmから大体200nmぐらい   まであります。したがって、その比表面積を決めるサイズが変わってくるわけです。したが   って、カーボンナノチューブの表面積に差が出てくるということです。 ○小川(康)委員 最後の結晶のジルコニアセラミックスなのですが、これは粒径が小さくなっ     ても似たように角張った区域構造のものなのですか。 ○宮澤参考人 結晶粒径が小さくなってくると、結晶と結晶の境界面の結晶粒界の体積が増えて   きます。ナノメートルサイズになってくると、その結晶粒界の体積が大体半分ぐらいのオー   ダーでどんどん増えてきます。10nmぐらいまでは硬くなっていくのですが、それからもっ   と小さくなると逆に軟らかくなるというデータがあります。しかし、普通常識的に考えると   10nmぐらいのところまでどんどん高くなります。    結晶粒界と呼ばれている界面の割合が非常に大きくなるということで、ナノサイズになる   とそういう新しい効果が出てきます。ですから、結晶粒界というものが、物性を決めるため   の大きなパラメーターになってくることになります。 ○大前委員 2つ質問します。フラーレンもしくはカーボンナノチューブの場合に、1つは触媒   等を使うので純度が悪いと言われていますが、現実的にはどうなのか。もう1つは、そうい   う物質の場合の表面に、さまざまな修飾をしたフラーレンなりあるいはカーボンナノチュー   ブが実際に使われているかどうかをお願いいたします。 ○宮澤参考人 フラーレンの場合は、基本的に溶媒抽出という方法でフラーレンを生成していき    ます。基本的に不純物としては溶媒だけです。例えば、トルエンとかヘキサンという溶媒だ   けが残留します。その溶媒は100℃以上に加熱するとほとんど飛んでなくなってしまいます。   だから、フラーレンの場合は非常にピュアーなものが得られます。    カーボンナノチューブの場合は、製法としては先ほどの触媒を使ったやり方と、もう1つ   はアーク放電法といって、炭素棒を突き合わせて放電させて作るやり方があります。アーク   放電法の場合は触媒を使わないので、純度の高いカーボンナノチューブが得られます。金属   触媒を使った場合は、文献値によると、鉄を使った場合には大体2,400ppmぐらいのものが   残るということを読んだことがあります。あるいは3,000ppmとか、大体0.2〜0.3%ぐらい   の残留金属があると言われています。 ○大前委員 表面に加工したようなものができているかどうか、という点はいかがですか。 ○宮澤参考人 表面に加工したものができます。フラーレンもカーボンナノチューブも表面が、   SP2という炭素原子の持っている軌道で覆われています。その軌道は二重結合があるので、   それを開いてほかの分子と結合させることができるわけです。フラーレンもカーボンナノチ   ューブもそういうことができます。    実際に、カーボンナノチューブの場合には表面にデンドリマーとか、そういうのを付けた   ものも見たことがあります。フラーレンの場合も同様に、いろいろな置換基、よくあるもの   で小さいのは水酸基を付けたものがあります。水溶性にするために、水酸基を付けたものが   あります。あとは、フェロセンというものです。鉄を含んだ分子ですが、そういうものを付   けたものがあります。いろいろなものがありますが、フラーレンについては非常に多様に置   換基を付けた分子がいまできています。 ○大前委員 毒性を考える場合に、何も付いていないフラーレンと、置換基が付いたフラーレン   とは全然分けて考えるべきであるということですか。 ○宮澤参考人 そうです。私も長い間使っているのですが、フラーレンの粒子そのものは非常に   不活性だと思います。置換基がくっ付いたフラーレンの物質を決めているのが置換基なのだ   と思います。その置換基が何かということで、もし毒性があるとすると、それを考える必要   があるということになります。 ○菅野委員 3つ質問があります。1つは、実際に側鎖を付けていないフラーレンは活性が低い   とおっしゃったのですが、慢性的な影響はどこまでわかっているのでしょうか。急性毒性は   たぶんないと思うのですが。 ○宮澤参考人 慢性について私は把握していません。やはり有名な論文というのは、魚のオバド   ルスターさんたちの論文で、フラーレンは脳に行ったという論文があります。それが、長い   間にどうなるか、というのは考えなければいけないところになってくると思います。本来は、   水の中に溶けないものですから、その溶けないものがある量溜まったときに、どこかで固体   として析出することがあるかもしれないので、そういうときにどのような影響が起こるかと   いうことは調べておく必要があると思います。 ○菅野委員 2つ目はそれとも関係するのですが、二重結合を開いて側鎖を付けるという反応で、   戻る方向の反応はどのぐらい起こりやすくて、生体内のいろいろな異物除去機構のアタック   を受けたときに、戻りやすい場合があるのかというところはいかがですか。 ○宮澤参考人 私も、それは非常に興味深いところです。私自身は把握していないのですが、た   だ考えられるのは、生体内の酵素があります。酵素によってどのように分解するか。化学反   応的にはいろいろなものが安定して作れるのですが、生体内に入って、酵素みたいなもので   分解されて、それがまた新たな、例えば生体分子と反応して新たなものができるか、という   ところを調べていく必要があるかと感じております。 ○菅野委員 最後は、側鎖を付けていない段階のフラーレンとかカーボンナノチューブの液体へ   の溶け具合の話です。フラーレンは粉で、それ以上細かくするのは非常に難しくて、という   お話でしたが、オリーブオイルに800ppmぐらい溶けたということから始まって、いまは生   体の細胞の脂質二重膜にもうまくやると溶け込ませられるという話が出てきます。そういう   ことで、フラーレンなどはひょっとするとある条件下では、いままでは溶けないと聞かされ   ていたけれども、生体成分には単体で溶けるかもしれないという印象を持っています。その   辺は宮澤先生の立場からどうなのでしょうか。    また、実は、宮澤先生の所でお作りになったフラーレンウィスカー(ひげ結晶:   whisker)をいただいて、10μmの長さで、直径が0.5μmのきれいなものをいただきました。     これは、たぶん水に分散しないのではないかと思ったのですが、やってみたらきれいに分散   したのです。あれはなぜなのですか。フラーレンというのは普通固まるというのだけれども、   ウイスカーにしてしまうと全然固まらないです。 ○宮澤参考人 フラーレンについては、薬学系の先生に聞いた話ですと、一般的に脂溶性であ    ると言っています。ですから脂に溶ける。確かにある程度は溶けます。    もう1つ、生体内には錯体を作る成分がいろいろあるかと思います。その錯体でくるまれ   たフラーレンは、たぶん血液の中に溶け込んでいく可能性はあるのではないかと思います。    私たちのフラーレンウィスカーは、最近分析したものでは表面が2nmぐらいの酸化層で覆   われていることがわかっています。そのために親水性が出ている可能性があると考えていま   す。 ○菅野委員 マルチウォールカーボンナノチューブの粉も、場合によっては水にある程度分散し   ますが、あちらもそのように表面が同じようになっているのでしょうか。 ○宮澤参考人 マルチウォールについて私はよく知らないです。単層カーボンナノチューブにつ   いては、聞いた話によると、細くすると水に溶けやすくなるということを聞いたことがあり   ます。ただ、ここはまだちょっとうろ覚えなので、はっきりした感じではないです。ただ、   溶けやすくなるという感じはあります。    蒲生先生にお聞きしたいのですが、カーボンナノチューブの水溶性についてはいかがでし   ょうか。 ○蒲生委員 産総研の蒲生です。産総研の中には、カーボンナノチューブの専門家はいっぱいい   るのですが、私自身はあまり材料に詳しくないのでお答えするのは難しいので、逆にちょっ   と質問させていただきます。バルク材にはなかった性質がナノ化していくといろいろ出てく   るというのは、よく言われている話です。そういうナノ化した材料がある程度凝集したり、   固まったときに、ナノ化した材料の性質が大きくなるのか、それともバルク材のようなもの   になっていくのかというのはいかがでしょうか。 ○宮澤参考人 これは、非常に難しいのではないかと思います。私自身も、日ごろ感じているこ    とであります。バルク材とナノ材との違いを考えるには、たぶんナノ化したものが凝集して   マイクロメートルサイズのバルク材になる。その場合にどこが違うのかというと、まずは表   面構造だと思います。バルク材の表面構造と、ナノ化したものが集まったときの表面構造と   違う。もう1つは電子的な状態も、ナノ化したものの電子状態と、バルク材の電子状態はそ   れぞれ違っています。ですから、その電子的な状態も異なっていると思います。    ナノ化したものの凝集体の化学反応性がどういうことかというのはよく調べられていると   は思うのですが、私は把握していないという状況です。調べる必要はあると思います。 ○福島座長 宮澤先生どうもありがとうございました。次の議題に入ります。次は、東レ経営研   究所の成田先生にプレゼンテーションをお願いいたします。 ○成田参考人 東レ経営研究所の成田と申します。ナノマテリアルの用途・生産量調査について   ご報告させていただきます。本日の報告について簡潔に説明させていただきます。「ナノマ   テリアルの定義及び調査目的、調査方法について」お話いたします。    次に「調査の全体像」、用途別ナノマテリアル別の展開状況。主要ナノマテリアルの使用   量と粒子径。対象物質全体使用量に占める各ナノマテリアルの割合についてお話いたします。    3番目は「個別ナノマテリアルについて」です。これは、当方でいくつか基準を設けまし   た。まずは、汎用的で使用量の多いものとしてカーボンブラック、シリカ、酸化チタンにつ   いてご説明いたします。次に用途範囲の広いもの、ここでは酸化亜塩が挙げられています。   粒子径が小さいものとして、単層カーボンナノチューブ、複層カーボンナノチューブ、フラ   ーレン、カーボンナノファイバーについてご説明いたします。最後に、今後用途が拡大する   と考えられているものとしてデンドリマー。トータルで9つの物質について本日はご説明さ   せていただきます。    この度、弊社が行いました、ナノマテリアル調査の目的、そして調査方法についてお話さ   せていただきます。調査の目的についてですが、現在、消費者向け製品の利用が非常に拡大   されつつあるということで、ナノマテリアルが注目を浴びています。この度は、特にヒトの   健康への安全性を確保する観点から、今後の規制のあり方の検討を行うために必要となる、   基礎的資料を収集することを目的としてこの度の調査を行いました。    この度の調査対象としたナノマテリアルの範囲です。一次粒径、一次元が100nm以下の長   さの材料について調査いたしました。    この度の調査の範囲・対象についていくつか製品領域が挙げられておりますが、医薬品・   食品、食品パッケージ、化粧品、繊維、家庭用品・雑貨・スポーツ、家電・電気電子製品、   塗料・インク、その他としてここでは紙となっておりますが、この8つの領域について調査   いたしました。    この度の調査の対象となった物質について、生産量及び健康・安全に対する観点から、と   りわけその動向のチェックが必要と考えられるナノマテリアル合計21種類について調査い   たしました。    この度の調査の方法は、基本的にはヒアリング調査と関連文献及びホームページ情報の収   集分析を行いました。ヒアリング調査先としては、ナノマテリアルメーカー、関連団体、実   際の ナノマテリアルのユーザーといった企業あるいは団体にヒアリングをさせていただき   ました。    ここでは、それぞれのヒアリング対象別の項目の例を挙げています。ナノマテリアルの物   性や使用形態、ナノマテリアル利用のメリット、国内での年間使用量、主要用途と構成比、   今後の用途・数量拡大の見通し、安全性に対する取組み、といった項目でヒアリングをさせ   ていただきました。    もう一点皆様にご了解いただきたい点があるのですが、基本的にナノマテリアルは最先端   技術に属しておりますので、この度ヒアリングいたしましたメーカー及び団体があるのです   が、非常に機密性の高い領域や、明確な情報整理がなされていない領域を多く含んでいたり   します。さらに、今後のそれぞれの物質の数量の見通し等についても意見が異なる場合がか   なりありました。したがって、この度の調査報告書に記載いたしました、生産数量やナノマ   テリアルの物性情報等については、この度のヒアリング調査結果、そしてさまざまな周辺情   報から弊社が総合的に判断して作成したものです。特記した場合を除き、特定の団体や企業   の見解を示したものではないことをご了解ください。    この度の調査結果の全体像について、特に「用途別ナノマテリアル別展開状況」をマクロ   的に作ってみました。左側には、この度の調査の対象となった、21種類のナノマテリアル   物質。右側には調査対象になった領域、医薬品、化粧品と挙げられています。この中の黄色   の部分は、用途としてさまざまに利用されると思われている領域です。○と△の印がありま   す。○は、現在使用されている用途で、△は今後将来的に使用されると見込まれる用途とい   う形で、それを足した形でポイント化してあります。    これを見ますと、家電・電子製品がいちばん多くて25ポイント、次に塗料・インク、化   粧品がそれぞれ14ポイント、次が医薬品で9ポイントの4つがとりわけ多い領域になって   います。    「主要ナノマテリアルの使用量と粒子径」、これは9種類だけなのですが、本日ご説明い   たします個別のマテリアルについて、縦に使用量、横に粒子径という形で、使われている量   をプロットいたしました。これを見ますと、カーボンブラックがとりわけ多くて83万トン、   シリカが1万3,500トン、酸化チタンが1,250トン、酸化亜鉛が480トンという順序になっ   ています。    対象物質全体使用量、これは21種類の物質なのですが、これに占める各ナノマテリアル   の割合についてです。先ほどのカーボンブラックの使用量を見ていただきましてもわかりま   すように、カーボンブラックが全体の97.8%を占めています。カーボンブラックを除くと   どうなるのかということで、シリカが非常に多く71.7%、その後が酸化チタン6.6%、ニッ   ケル6.4%と続いています。    「個別ナノマテリアルについて」ご説明いたします。まずカーボンブラックについてです。   平均粒子径は、大体16〜50nmです。2006年度の国内使用量としては大体83万トンです。   形態としては、ゴムや樹脂に混練、あるいはインクには分散して利用されるということです。   ナノ化利用のメリットとして、導電性と着色性が注目されています。    現在の用途構成はどうなっているかを円グラフで示しました。タイヤがほぼ全部と言って   しまってもいいぐらいで95%、顔料が4%、導電性用途が1%となっています。将来の市場   として、用量としては横這い、もしくは微減するのではないかという見通しが立てられてい   ます。将来的な用途としては燃料電池・化粧品・高品質タイヤなどが挙げられています。    次はシリカについてです。粒子径は、乾式シリカで7〜22nmです。もう1つ湿式シリカと   いうものがあるのですが、湿式シリカの場合は粒径が超微粒のものでも数μmということで、   この度のナノの定義には該当しませんので外してあります。2006年度の乾式シリカの国内   使用量としては1万3,500トンです。使用形態としては、ゴムや樹脂に混練する形です。    ナノ化する利用のメリットとしては、強度の向上、絶縁性、耐水性などが挙げられます。   現在の用途の構成として、シリコーンゴム向けが57%、次がFRP繊維プラスチック向けが   11%、塗料が10%、その他が22%とちょっと多いのですが、内訳としてはトナー、インク、   繊維、紙、医薬、化粧品、農薬などが挙げられます。    将来的な市場としては、年率数パーセント程度の伸びはあるだろうということです。将来   的な用途として、シリカは非常に用途が広いですので、現在の既存用途がより成熟化してい   く形であろうと思います。    次は酸化チタンについてです。粒子径は大体15〜100nm、大体ルチル型結晶の形です。   2006年度の国内使用量は約1,250トンです。使用形態としては、塗料へ分散する形、ある   いは樹脂へ混練する形になります。    ナノ利用のメリットとしては、紫外線カット、電荷調整剤、静電気のコントロール、光触   媒などが挙げられます。現在の用途構成としては化粧品が最も多くて60%ぐらいを占める   であろうと。トナーが33%、自動車塗料5%と続きます。    将来の市場としては、年率数パーセントの伸びでしょう。将来の用途としては化粧品領域   の拡大、トナーのディスプレー用の反射防止フィルムなどが出てくるのではないかというこ   とです。    次は酸化亜塩についてです。粒子径は大体20〜40nmです。2006年度の国内使用料は約   480トンと見積もられています。使用形態としては、化粧品基材への混練という形です。ナ   ノ利用のメリットとしては、酸化チタンと同じように、これは紫外線の種類は違いますけれ   ども紫外線カット、透明性の向上ということです。現在の用途の構成として、化粧品が約8   割であろうと。その他は20%あるのですが、繊維、医薬品、塗料などが挙げられます。    将来の市場としては、年率数パーセント程度の伸びでしょう。化粧品以外の将来用途とし   ては、透明導電膜の利用が挙げられます。これは、特に酸化インジウムスズの代替というこ   となのですが、この酸化インジウムスズはレアメタルで非常に高価ですので、その代替材料   として酸化亜塩が考えられています。    次は、単層カーボンナノチューブについてです。粒子径としては、直径が0.8〜1.4nm、   長さが100nm〜1μmになります。2006年度の国内使用量としては輸入されてきたものらし   いのですけれども大体100kgと考えられています。使用形態としては、樹脂やセラミックス   に混練していく形になります。    ナノ化利用のメリットとしては、軽量化、あるいは導電性の付与の2点が特に挙げられま   す。用途の構成については、現時点では単層カーボンナノチューブは研究開発中ということ   で、具体的な用途は挙げられておりません。ですから、将来市場についてもはっきりしてい   ないということで伸び悩みです。ただ、今後の用途としては、高速動作トランジスタ、燃料   電池、水素ガス吸蔵などが考えられてはおります。    次は、複層カーボンナノチューブについてです。粒子径は、直径が40〜90nm、長さが数   十ミクロンです。2006年度の国内使用量としては、大体約60トン程度ではないかと見積も   られております。使用形態としては樹脂への混練。ナノ化利用のメリットといたしましては、   導電性の付与、高強度、電磁シールド機能の付与です。    現在の用途構成です。これは、半導体トレイが90%、その他10%となっています。半導   体トレイというのは、半導体工場で、半導体とかシリコンウエハー専用の搬送用・移動用の   容器のことです。特に、静電気防止機能を要求されます。将来の市場としては、2010年に   150トン程度になるのではないかという見込みもあります。将来的な用途としては導電ペー   スト、蓄電デバイス、燃料電池、医療などが挙げられます。    次は、フラーレンに関してです。粒子径は二次粒子で20〜40μmです。一次粒子ですと   1nmを切っています。二次粒子で販売されているケースがほとんどです。2006年度国内使用   量は約2トン程度であります。使用形態としては、樹脂への混練。ナノ化利用のメリットと   しては、反発性能の向上、軽量化、強度向上などが挙げられます。    フラーレンの現在の用途構成なのですが、スポーツ領域が100%です。いわゆるラケット   やゴルフクラブといったものに利用されているということです。    将来の市場についてですが、現在用途では、使用量は特に変化しないでしょうということ   です。将来的な用途としては、燃料電池、太陽電池、バイオ医薬、化粧品などが挙げられて   います。    次は、カーボンナノファイバーについてです。粒子径は、直径が150nm、長さは大体10〜   20μm程度です。2006年度の国内使用量としては、大体60〜70トンです。使用形態として   は、樹脂への混練。ナノ化利用のメリットとしては、導電性付与、あるいは熱伝導率の向上   などが挙げられます。現在の用途別の構成ですが、リチウム電池用途が50%、その他が50   %で樹脂への添加などが挙げられております。将来市場については、2010年には200トン   ぐらいにはなるでしょうということです。将来的な用途としては、スポーツ領域、あるいは   風力発電用のブレード、燃料電池などが考えられております。    最後にデンドリマーです。用途でサイズが違います。紙用途ですと20〜30nm、化粧品用   途ですと大体2〜3nmです。2006年度の国内使用量としては、紙用途であれば約50トン、   化粧品用途であれば数トン程度ではないかと見られております。その使用形態としては、紙   へのコーティング剤、化粧品ですとリキッドファンデーションになります。    ナノ化利用のメリットとして、紙の場合は特にレオロジーコントロール、これは非常に範   疇が広いです。化粧品は撥水性、撥油性が挙げられます。用途構成ですが、現在のところは   紙用途が95%です。将来的な市場としては、紙用途が今後数年間は横這い程度でしょう。   化粧品用途は、世界販売を展開していくので少しずつは伸びていくのかという気がします。   将来的な用途としては、現在の紙用途の拡大、医療領域、燃料電池などが考えられておりま   す。 ○福島座長 ありがとうございました。ご質問がありましたらお願いいたします。 ○宮澤参考人 カーボンナノファイバーのリチウム電池への用途があるということなのですが、   この構造はどのようになっているのですか。グラファイト層が積層しているのか、いわゆる   非晶質カーボンと呼ばれているグラフェンのリボンがグチャグチャになったものなのか。 ○成田参考人 現時点で、構造について正確にお答えするのは難しいですので、もう一度当方で   確認して回答させていただきます。 ○小川(康)委員 2の「調査結果の全体像」の表の見方なのですが、○の現状の用途というの   は、何トン以上とか基準をもって○を付けているのでしょうか。この中のシングルウォール   カーボンナノチューブでは、○と△になっているのですが、後ろの説明ではまだ研究段階で、   用途としてはまだ決まっていないという説明でした。 ○成田参考人 そうなのですけれども、一応可能性のあるものすべてを含める形で、用途別ナノ   マテリアル別展開状況では作成してあります。 ○小川(康)委員 特に何トン以上とか基準は設けないで○を付けているのですか。 ○成田参考人 そうです。この用途別等については、特に数量に関しては基準は設けていません。 ○小川(康)委員 もう1つですが、カーボンブラックでタイヤに使っているということなので   すが、これは着色性と導電性の用途以外ということでどういう用途のために使うのですか。 ○成田参考人 タイヤ用途ですと、着色用途が特に強いです。主に導電性、着色性ということで    す。細かい点につきましては、当方で確認してから回答させていただきます。 ○菅野委員 酸化チタンなのですが、ルチル型とアナターゼ型のどちらが触媒作用は強かったで   すか。 ○成田参考人 ルチル型のほうが強いと思います。 ○菅野委員 アナターゼ型に限ると、ほとんど化粧品になるという形ですか。 ○成田参考人 そうです。 ○菅野委員 アナターゼ型を別に挙げなかった理由は何だったのですか。 ○成田参考人 ルチル型結晶ということでヒアリングのときにお伺いしたものですから、その点   が疑問に思われるのであれば、それももう一度当方で確認いたします。 ○菅野委員 量的にはアナターゼ型のほうが多いのですよね。 ○成田参考人 量的にはルチル型です。 ○福島座長 1つ確認したいのですが、カーボンブラックは、タイヤに95%使われているという   ことですが、これはいつごろからですか。 ○成田参考人 もう何十年も前からと考えてよろしいと思います。 ○福島座長 20年とか30年とか。 ○成田参考人 はい、かなり長期間前からとお考えになってくださって結構です。 ○福島座長 次は、小川先生にお願いいたします。 ○小川(順)委員 ナノテクノロジービジネス推進協議会の小川でございます。どうか、よろし   くお願いいたします。ナノテクノロジーという新しい技術の切り口で業界団体が出来ており   ますので、ここではその業界団体の動きと最新の開発動向を、スライドも使いながら、簡単   なご紹介をさせていただきます。    ナノテクノロジービジネス推進協議会(NBCI)は、2003年10月に設立しております。目   的は、日本のナノテクビジネスを一層加速させ、世界を牽引できるナノテクビジネスを構築   することです。    活動としては2つ大きな項目があります。1つはナノテクノロジーのシーズやニーズをマ   ッチングさせる活動、もう1つは公的機関等との関連の活動です。右のグラフは昨年の段階   の各ナノテクに興味のある企業の参加状況で、会員は292です。    このスライドはNBCIの組織体制を示しておりますが、特に経済産業省、文科省、内閣府   ほか関連省庁と連携をとりながら運営をしております。右に4つ大きな枠がございますが、   ビジネス委員会、テクノロジー委員会、社会受容・標準化委員会、ネットワーキング委員会   ということで活動を進めております。    このうち社会受容・標準化委員会の活動について、次にご紹介を申し上げます。まず   2005年8月から2006年9月にかけて「ナノカーボンの社会影響と標準化を考える会」とい   うことで主体的に会合を持ってまいりました。それ以降「社会受容・標準化委員会」として   活動を拡大しております。    標準化活動の1つとしましては、「ナノカーボン標準化委員会」を設置し、国内審議委員   会と連携しながら、ISOのTC229なり、IECのTC113、あるいはJISということで、ナノカ   ーボン材料のJISの規格案などの作成を推進しております。    社会受容の活動に関しましてはもう1点。アメリカのNGO団体であるICONとアジアのワ   ークショップを共催し、日本の社会受容性を欧米にアピールする。それからベストプラクテ   ィスということで、ナノ材料のハンドリングということで一定のガイドラインが出来ており   ますので、それをナノテクの関連メーカーに紹介することを2007年7月から10月まで実施   しております。    それから、労働安全衛生総合研究所、産総研等と連携しながら、労働安全管理に関する調   査について、一度NBCIでその要請を受け、メーカーにその要請を伝えて協力をお願いする   という活動をしております。また、先般の厚労省の通知に対しては、「ナノマテリアル作業   現場における予防的対応」ということで、NBCIとして説明会を開催させていただきました。    厚労省の通達に関する状況ですけれども、NBCIとして3月7日に説明会を開催いたしま   した。関心も非常に高い中で130人、90社の参加がございました。ここで一般的に説明が   ありましたのは、ナノマテリアルの安全性の考え方として、リスクが有害性とばく露の積で   考えられる。有害性そのものについてはまだ不明な点が多い中で、予防的な対策として今回   の通知がなされたという理解をしているということで説明を進めております。    そのほか、作業現場の予防的対応としては、基本的には企業の自主的な対応にお任せして   いるところがありますが、先ほど申しましたようなガイドラインについての周知を徹底する、   あるいは、実際にナノマテリアルを製造している現場としてクローズドシステムを採ってい   るメーカーの設備を紹介するということで進めました。    次に「代表的ナノマテリアルの開発状況」ということで説明いたしますが、NBCI自体が   任意の団体で、業界としてきちんと調査結果を出すことはできませんので、その点はご容赦   いただきたいと思います。取り上げたナノマテリアルは従来の業界に入らない材料、あるい   は今後用途が注目されているものです。    フラーレンの用途と将来用途については、東レ様の説明にございました。その他開発段階   として、診断薬以降コーティング材まで、こういったものが将来的に可能性があるのではな   いかと言われております。    2点目は、単層カーボンナノチューブです。これについては東レ様の説明に加えて、LSI   の配線から機械的強度向上を目的とした用途等が追加されるものと考えております。    3点目として、多層カーボンナノチューブ、それからカーボンナノファイバーで、これに   ついては、それぞれ簡単な説明があったとおりです。特にカーボンナノファイバーは実際に   電池に応用されているもので紹介いたしますと、例えば左側の図。これは加速試験ですが、   リチウムイオン電池で充放電を繰り返します。カーボンナノファイバーを入れることにより、   容量70%という所を見ますと、従来入れなかったものに比べて寿命が約倍に延びており、   これが現実的に機能の向上に貢献しているという例です。右側の図ですが、リチウムイオン   電池の特性として、電流を多く一遍に取り出そうとしますと容量が下がるという問題がござ   いますが、カーボンナノファイバーを添加することによって容量低下を防ぎます。大きな電   流の用途は、自動車用あるいは風力発電用の電池等で、将来的に環境なりにナノテクノロジ   ーとして貢献できる、そのことの1つの例です。    「ナノテクノロジー標準化に関する国際活動」ということでご紹介いたします。先ほど申   しましたように、ISOにはTC229番、IECには113番が設立されておりまして、それぞれナ   ノテクノロジーに対して用語から材料規格までを決めていこうという動きがあり、これに対   して、標準化国内審議委員会としてNBCIの中から協力をさせていただいているわけです。   特にISOのTC229に関しては、まずナノテクノロジーの安全性をきちんと評価できるという   ことの標準づくり、それから、そもそも産業化を促進するということの2点から標準化活動   に参画しております。    2005年に発足いたしまして、ワーキンググループ(WG)の1〜4まで、それぞれ用語・命   名法、計量・計測、環境・安全、材料規格ということで活動が行われています。特にWG2に   つきましては「コンビナー」を日本はとっているということで、積極的に計測なり分析方法   の規格化に向けて日本から意見を発信していますし、NBCIとして委員を派遣しております。    最後に、OECDの関係で1つ説明いたします。OECDも、ISOのTC229番と密接な連携をと   って進めています。それから、昨年、有害性評価物質として14物質が選定されております。   この中で、ステアリンググループの3として安全性試験に、ここにあるような材料を産業界   側から協力して、サンプルを提供していこうということで意思を表明しているという状況で   す。以上、簡単ですが説明を終わらせていただきます。 ○福島座長 ありがとうございました。それでは、質問をお願いいたします。   私から1点小川委員にお聞きします。「代表的ナノマテリアルの開発状況(0)」というス   ライドで取り上げたナノマテリアルは、従来の業界に入らないものだというのですが、これ   はどういうものですか。あえて固有名詞は出せるのですか。 ○小川(順)委員 ここで例として申し上げたとおりで、カーボンナノチューブなどは従来どこ   の業界にも属さない材料で、そういうものを横断的に取り上げたと理解していただければと   思います。 ○土屋委員 ちょっと素人的なことで教えていただきたいのですが。電池などで使う場合には、   ある程度固定された状態で、消耗ということはあまりないかと思うのですが、化粧品やタイ   ヤの場合、これが使われた後粒子になって飛散すると考えてよろしいのですか。 ○小川(順)委員 その使用環境下でのばく露の状況というのは、当然考えうるものだと思いま   す。ただ、現実的な調査がどこまで進んでいるのか、我々は承知しておりません。 ○長谷川委員 12頁の「目的」の最初のところで、ナノテクノロジーの安全性をというような   記載になっているのですが、これはナノマテリアル、あるいはナノプロダクトの安全性と理   解してよろしいのですか。それとも、技術的なもの等もっと広い部分も含んでいるという理   解でよろしいのですか。 ○小川(順)委員 マテリアルも含めて、大きくテクノロジーという枠であるとご理解いただけ   ればと思います。 ○福島座長 これは私の理解のためにお聞きしたいのですが、NBCIとアメリカやドイツ等、各   国とのインターナショナルな連携というのは、どのようになっているのですか。 ○小川(順)委員 連携の具体例は難しいのですが、例えばアメリカのASTMが日本のナノマテ   リアル、特にカーボン系の材料メーカーと論議がしたいというときには、一旦窓口として   NBCIに要請が来て、それをメーカーに流すというところで、それこそ先ほどの「従来の業   界団体にないようなナノマテリアル」という切り口で、日本側の産業界の窓口という意味合   いで海外に対応するということでよろしいと思います。 ○竹村委員 先ほどのご紹介で、ICON(International Council On Nanotechnology)は、アメリ   カのライス大学が中心になった、産学官とNGOが一緒になったコンソーシアムのようなもの   なのですが、そこにNBCIの参加機関がメンバーとして入っております。そういったところ   で、公式、非公式は別として情報の交換等はやっております。 ○福島座長 よろしいでしょうか。小川委員、ありがとうございました。次に高野委員にお願い   したいと思います。 ○高野委員(日本化粧品工業連合会) ご紹介いただきました日本化粧品工業連合会の高野と申   します。よろしくお願いいたします。    お手元に資料5ということで配付させていただいておりますが、コンパクトに説明するた   めに、こちらのスライドで説明させていただきます。タイトルは「ナノ原料と化粧品」です   が、このお話で化粧品業界におけるナノ原料使用の概観をご理解いただければありがたいと   思います。    今日お話しするベースは、平成16年度にNEDOの研究費を頂戴しまして、化粧品業者に対   するアンケート調査と化粧品原料業者に対するヒアリングを基に集計しまして、その中から   関連部分を抜粋して作成したものです。    まず、化粧品に使用されているナノ原料について、アンケートを741社に配付し、478社   から回答がございました。そのうち120社の方がナノ原料を使用しているとお答えになって   おります。120社のうち、酸化チタンをお使いの方が115社、酸化亜鉛が72社ということ   で、予想どおり、この2つの物質が化粧品業界では汎用されているということが分かりまし   た。    ナノ原料をどのような化粧品に使用しているかですが、酸化チタンと酸化亜鉛が多いとい   うことから、日焼け止め製品やファンデーションに多く使われていることも分かりました。    使われている酸化チタンの形状としては、紡錘状、球状あるいは樹枝状となっております。   粒径については、あくまでも一次粒子の平均粒径ということで10〜70nmぐらいのものが汎   用されております。表面処理剤として、水酸化アルミニウムやシリコーン、それからここで   はシリカが使われております。それ以外にも種々のコーティング剤が使われております。    一方酸化亜鉛ですが、形状は球状です。一次粒子の平均粒径は10〜50nmのものが多く使   われております。それから、表面処理剤として、ステアリン酸アルミニウム、シリカ、シリ   コーンが使われております。    ここからは先ほどご紹介した調査の後で補完する意味で、あるいは足りない部分を調査と   いうことで私のほうで調べて、「追記」ということで書かせていただきました。    まず酸化チタンですが、先ほど出てまいりました原料業者2社にヒアリングをしておりま   すが、2社とも、化粧品用途としてはルチル型を使用しているという答えでした。化粧品の   場合は製剤上の理由から、表面処理された酸化チタンを使用しております。表面処理しない   と着色等の問題が出てきますので、すべからく表面処理されたものを使っております。    酸化チタン自体は使われてからもう長いのですが、一次粒子がナノの酸化チタンは、少な   くとも1990年ごろから化粧品に使用されているものと考えております。個々の配合量はノ   ウハウですので分かりませんが、市販の本を見ますと、日焼け止化粧品には3〜5%(実際   にはもう少し多く配合されているものと思われる)、ファンデーションには5〜20%の処方   例が紹介されております。    酸化亜鉛ですが、こちらも一般的には表面処理されたものが使われております。酸化亜鉛   も、使用された歴史は古いのですが、一次粒子がナノなものは、少なくとも1995年ごろか   ら化粧品に使用されているものと考えております。こちらの使用例も、市販の本によります   と、ファンデーションで7%という処方例が紹介されております。    酸化チタンと酸化亜鉛は意図的に粒子を小さくしていったわけですが、ここでご紹介する   シリカは、化粧品原料として使われた当初、1971年ごろからナノ粒子のものが使われてい   たようです。またシリカは、酸化チタンや酸化亜鉛と異なり製剤上の問題がありませんので、   一般にシリカ自体は表面処理されていないものが流通しております。一部表面処理されてい   るものがあるようですが、これはより機能性を上げるために表面処理をしたものが出回って   いると伺っております。    シリカはファンデーション、クリーム、乳液、歯磨など種々の化粧品に配合されておりま   す。シリカの配合例としまして、ファンデーションに2%、歯磨に20%。これも市販の本か   ら引用したものです。    最後に、化粧品原料の微細化の有用性ということでお話いたします。酸化チタンあるいは   酸化亜鉛のような無機の顔料は、粒子の大きさが細かいほど配合した化粧品の機能が高まり   ます。透明感の高まり、要するに白っぽくならないということです。それから脂溶性の向上、   伸びがよいということです。それから、紫外線防御の向上が見込まれます。実際、微細化す   ることができたことにより、紫外線防御効果が高く、かつ、肌に使用した際の透明性の高い   製品の開発に結びつけることができたということです。簡単ですが、私からの説明は以上で   す。 ○福島座長 ありがとうございました。ご質問がありましたら、どうぞ。 ○菅野委員 酸化亜鉛と酸化チタンですがコーティングというのは、まんじゅうのあんこと皮だ   とすると、あんこが所どころ見えているようなコーティングなのか、どこから見ても中身が   見えないようなコーティングなのか、そこら辺は分かっておられますか。 ○高野委員 私自身は把握しておりません。わからないです。ただ、それが不完全ですと、油分   が酸敗してしまうとか着色してしまうとかという弊害が出てくると思いますので、逆に、そ   ういうものは不良品の原料のようなことになるのかなということは想像いたします。 ○菅野委員 私はあくまで生物学的に、生体の細胞がそれを取り込んだときに、穴がある所から   アタックするのかどうかという面でお聞きしているので、性能が保たれるためには8割でい   いのか、100%覆っていなければ駄目なのかというところが知りたかったのです。 ○小川(順)委員 表面処理することによって、凝集性が抑制されるということなのですか。 ○高野委員 そういうこともあると思います。 ○小川(順)委員 シリカは以前から使われていたということなのですが、シリカを使った理由   というのは、透明性及び脂溶性の向上、紫外線防御という機能も少しあったわけですか。 ○高野委員 用途が酸化チタンと酸化亜鉛と似ているところもあるのですが、ちょっと違い増粘   剤的な使用がむしろ主力だったように理解しております。 ○小川(順)委員 逆に言えば、そういうことから粒径の大きいものがその後使われるようにな   ったということですか。 ○高野委員 そこは増粘的な意味合いと、それこそ酸化チタンや酸化亜鉛のような、顔料的な使   い方で、少し大きめのマイクロオーダーとかサブミクロンとか、その辺のものは、顔料のこ   とを意識しておつくりになっているようです。 ○庄野委員 日化協の庄野です。先ほど、シリカ等で表面処理をされたというお話がございまし   た。あれはきっと乳酸アルミとか、そういうものでやられたのかと思うのですが、その辺は   どういう処理剤を使われたのでしょうか。 ○高野委員 お手元の資料5の2頁目の3(2)が酸化チタンの表面処理剤です。先ほどのスラ   イドでは2、3しかご紹介できなかったのですが、実際にはかなりいろいろな種類がござい   ます。しかし酸化亜鉛のほうはスライドと同じものを書いております。 ○蒲生委員 2つ質問があるのです。1つは、表面処理剤というのは、比較的生体内で外れる可   能性のあるものなのか、それとも、きちんと結合していて、基本的にはそう簡単には外れな   いものなのかということです。    もう1つは「一次粒径が」というような記述が非常に多いと思うのですが、実際に化粧品   の中で粒子がどんなサイズかということは、把握されているものでしょうか。 ○高野委員 最初のご質問ですが、コーティングの外れ具合、そこはよく分かっておりません。   私は把握できておりません。    2つ目のご質問ですけれども、製剤中の粒子の状態というものがうまく測れていない。そ   ういうデータが、私の知っている限りではないのです。ですから、凝集しているだろうとか、   そういうことは想像するのですが、確実なデータを見たことがありません。ですから、原料   段階では一次粒子であるということだけは言えるということです。 ○板倉委員 だいぶ前から使われているということなのですが、その場合に、そもそも安全性と   いうのがどの程度まで調べられた状況で使われるようになっているのかというのが1点あり   ます。もう1つは、例えば皮膚に塗った後の体内動態、そういったものについて調べられた   情報というものはあるのでしょうか。 ○高野委員 まず酸化亜鉛のほうなのですが、昭和42年に化粧品原料基準というものに規格が   載りまして、基本的には、その規格のまま推移してきました。ですから、微粒子になりまし   ても、その規格自体には適合していたということで、そのまま推移してきました。    酸化チタンのほうも昭和42年から化粧品原料基準に載っているのですが、これは微細化   した場合に規格に合わなくなったところがあり、酸化チタンとは別に、微粒子酸化チタンと   いう規格を厚生労働省で設定されております。ただ、両者は水分ぐらいの違いで、基本的な   ところの規格は同じだと理解しております。    体内動態のデータについては、たぶんいろいろあるのだと思いますが、私自身が不勉強で、   十分理解しておりません。すみません。 ○福島座長 いまの確認ですが、微粒子酸化チタンの特別安全性を調べたことはないわけですか。   それとも、やはり調べているのですか。 ○高野委員 これは厚生労働省が許認可されまして、たぶん規格の違いというところには着目さ   れたと思うのですが、その段階で安全性が異なるだろう、というところまではいってないだ   ろうと想像します。これは約20年近く前の状況ですから、やむを得ない面があると思いま   すが、そこまで行けなかったということに尽きます。 ○福島座長 ほかによろしければ、次に進みます。次は、本日の3番目の議題「ナノマテリアル   の計測技術の開発について」事務局から説明していただきます。 ○化学物質対策課企画官 ナノマテリアルを取り巻く周辺技術ということで、独立行政法人労働   安全衛生総合研究所の鷹屋先生より、現在のナノマテリアルの測定技術についてご紹介いた   だきます。特に、「ヒトに対する有害性が明らかでない化学物質に対する労働者ばく露の予   防的対策に関する検討会」におきましては、今後ヒトへのばく露について議論していくこと   となりますが、その前に、ばく露状況を把握するための測定技術の現状についてご紹介いた   だくものです。 ○福島座長 鷹屋先生、よろしくお願いいたします。 ○鷹屋参考人 独立行政法人労働安全衛生総合研究所の鷹屋でございます。ナノマテリアルの測   定技術で、こちらに「労働衛生」というキーワードが入っておりますが、つまり水や生体内   での測定技術ではなくて、空気に限った話を本日はさせていただきます。    空気中のナノ粒子の実体を知る手法はどういう形かといいますと、上のほうに「エアロゾ   ル測定」とあります。エアロゾル測定は、空気中の粒子を測る方法ですが、測る方法といた   しましては、粒子の数を測る、あるいは粒径分布を測る。粒径分布といいますのは、粒子の   大きさ別の数を測ることです。これは主にクリーンルームの性能維持等に対して完成度が非   常に高い技術で、リアルタイム測定が現在すでに可能です。ただし、ナノ材料以外の粒子も   同じように数えてしまうという問題があります。    上がいわば量を測るとしますと、質を測る方法として、実際に粒子を取ってきて電子顕微   鏡で見るという方法があります。電子顕微鏡で見ますと、凝集や形状、成分等さまざまな情   報を非常によく知ることができ、これも非常に高度に発達した技術です。ただし、電子顕微   鏡観察は、いつも行うことはできません。といいますのは個々の観測に非常に時間やコスト   がかかります。また、全体像の把握や時間変化を追うのが電子顕微鏡観察だけでは困難です。   それで、各国とも、空気中のナノ粒子の実体を知る方法として、エアロゾル測定という量の   測定、それから電子顕微鏡という質の測定に加えて、その両者を結びつける情報として、さ   まざまな粒子の化学分析を行おうということで研究がなされているのが現状です。    個別のことについて、若干詳しくお話をさせていただきます。1つは気中粒子を数える、   エアロゾル測定です。ナノ粒子ではなくて、じん肺など普通の粉じんといったスケール、例   えばミクロンオーダーの粒子の場合はどのようにエアロゾル測定をやるかと言いますと、質   量濃度測定と相対濃度計という二本立てでやります。質量濃度測定というのは、本当に空気   中の粒子を集めてきて重さを測るというものです。それと、実際には相対濃度計、主に光の   散乱。光を当てて埃がありますと粒子に光が散乱されるということで光を測るのです。質量   濃度測定というのはいつもできませんので、相対濃度計と質量濃度測定を並行してやること   になります。    ところが、ナノスケールになりますと、両方の方法をそのまま適用することができません。   一番大きな問題は、ナノスケールになりますと粒子1個1個の重さが非常に小さくなります   ので、そもそも質量濃度測定で濃度管理をするのが非常に困難です。そこで、相対濃度計と   原理的には似たような形なのですが、粒子数の測定が事実上唯一の方法になってまいります。   ただし、ナノスケールですと、普通の手法ではできません。普通の粒子カウンターも、ちょ   っと表現がややこしいのですが、これは見られる範囲の下限になります。0.1〜0.3μm。こ   れは機種によって違うのですが、ナノメーター表記で言いますと100〜300nmより小さな粒   子は見えません。簡単に言いますと、これは光で見ているので、光の波長よりもずっと小さ   い粒子は見えなくなります。    ナノスケールの粒子を測るためにはCNC(凝縮核カウンタ)という装置を使います。この   詳しい原理は時間がないので言いませんが、人工的に粒子の大きさを見かけ上大きくして測   る装置です。これですと、下限は機種によって違うのですが、ポータブルの電池駆動の機種   でも10〜15nm、大きいほうは1〜3μmぐらいまでの粒子の数を数えることができます。非   常に小さな装置もあります。ただしナノ粒子という定義で、逆に100nmより下とかいうこと   になりますと、上のほうが1μmぐらいまで見えてしまいますので、別途分級装置が必要に   なります。    ちょっと違ったやり方として、粒子というのはどうしても電荷を持っていますので、粒子   全体の静電気を測るという方法も各国の研究者から提案されています。これが非常にいいの   は、先ほど来いろいろ出ていますが、結局、ナノ粒子になると表面積が上がるので活性が上   がる、生体影響もそうではないかという考え方がありますが、静電気量を測りますと、実は   粒子の表面積に直結した値が得られるという利点がありますので、静電気量を測ろうという   考え方もあります。    次に、粒子というのは数だけではなくて、どうしても粒子の大きさの分布を測る必要があ   ります。それはなぜかと言うと、粒子径の違いによる生体影響の違いというのが1つ大きな   話としてあります。それから、粒子の大きさ別に測ることによって、この粒子は一体どこか   ら来ているのだろうかということに関して推定する情報源にもなるということで、粒度分布   を測る必要がどうしてもあります。    ただし、先ほどCNCのところでお話しましたが、ナノ粒子の見える粒子の装置というのは、   見かけ上粒子の大きさを大きくして測っていますので、その時点で粒子の元々の大きさの情   報が失われてしまいます。それで、ナノ粒子の粒子を測る装置の前に、分級装置といって、   粒子の大きさを分ける装置を付けて測る必要がどうしても出てきます。    現実にはどういった装置か。粒子を大きさ別に分けるには、よく掃除機のコマーシャルに   出てくるサイクロンと同じような原理、それからインパクターがあります。これらは主に機   械的な力を使った装置ですが、ナノ粒子ではDMAという装置がほとんど支配的です。これは   静電気の力を使って粒子を持ってくるので、電圧をコントロールすることによって、任意の   大きさの粒子だけを引っ張ってきて機械に入れるという装置です。DMAとCNCを組み合わせ   てSMPSと言われて粒子を大きさ別に測る装置が、ナノ粒子を測る標準的な方法として世界   的に採用されているのが現状です。    では、どれくらいの装置か。単純に粒子の数だけを測ろうと思いますと、ここに映ってい   るのは単三電池ですが、それで機械の大きさを想像していただきたいのです。これくらいの、   手に持てる装置で簡単に測って歩くことができます。一方、粒子の大きさ、粒度分布まで測   ろうとしますと若干大きな装置が必要でして、60cmとスケールを入れてありますが、これ   くらいの大きさの装置が必要となります。    では、エアロゾル測定だけですべて片が付くかというと、片が付かないのです。なぜかと   いうと2つあります。何か判じ物のようですが、1つは、ナノスケール粒子のすべてがナノ   材料由来ではないということです。特にディーゼル排ガスなどの粒子がありますと、実際に   測っているナノスケール粒子のほとんどが、扱っているナノ材料由来ではなくて、近くを走   っているトラックからの排気ガスであるということもありうるわけです。    逆の問題として、今回も何回か話題に出ている凝集粒子。ナノではなくて、もう少し大き   くミクロンオーダーまで凝集していても、当然労働者の体に入ってきますから、そういった   ものをどうするかという課題も残っていまして、単純なエアロゾル測定だけでは済まないと   いうことになります。    そこで、電子顕微鏡観察なども併用することになりますが、先ほど全体像のところでお話   したように、電子顕微鏡観察に関しては測定数を増やすことが困難であるということで、化   学分析をどうしても併用する必要がございます。化学分析に関しましてはカーボン系以外、   例えば金属系の材料ですとICP-MSといった高感度金属分析法が使えます。これはある程度   実用化した技術といえます。    1つ飛ばしまして、フラーレンに関しましては、有機溶媒に溶けるということもあり、液   クロで定量分析が可能です。だから、フラーレンに関してはある程度、確立したと言ってい   いのかどうかは微妙なところですが、測定方法があります。問題は、たぶんカーボンナノチ   ューブであろうということで、いくつかの研究機関が提案しているのがEC/OC分析。炭素に   熱をかけて燃やして、どれくらいの温度で燃えるかということで、同じ炭素でも、ナノチュ   ーブとフラーレン、いわゆる不定形の炭素では違う温度で燃えるということを利用して測る   という手法が提案されていますが、これはまだ研究段階にあると言えます。    現状の測定法はこういう状況にあり、測定法はまだ不完全です。不完全なので、完全な測   定法を完成しなくてはいけないのですが、その現状で、こういった問題があるかと思います。   1つは、ハザードが不明です。つまり、分析法を開発するためにどの濃度まで測らなくては   いけないかというゴールが、有害性そのものの評価が定まっていないので定まらない、とい   うことが非常に大きな問題です。あとは、挙動が不明である。つまり、ナノにしたこと特有   の問題がまだ分からない点が多いということがあります。それから、どうしても装置が高い   とか重いとかということがあり、測定の数を増やすことがまだまだ困難であるという問題も   あります。こういったことを解決するために、本来ですと、世の中一般でどんなことが取り   組まれているかを紹介しなくてはいけないのだと思いますが、今回は私どもの研究所の話だ   けに限らせていただきます。    どういったことで測定法を確立するかなのですが、実は、入り口のところがまだ分かって   いないということで、まず入り口のところからやっています。例えば、化学分析をするとき   に、どんな所で使われているか分からないと、どんな妨害物質があるかも分かりません。と   いうことで、使用現場の実態把握をする。これは本日いらっしゃる蒲生先生のAISTとも共   同でやっていますが、アンケート調査を行う。アンケート調査の結果、現場に入っていいと   いう事業所がありましたら現場に入らせていただいて、実験室実験の結果と現場測定のデー   タを突き合わせ、いろいろな化学分析を評価しようという段階にあるというのが現状です。    各国のガイドラインも我々の研究所のホームページで紹介させていただいております。 ○福島座長 ありがとうございました。非常に専門的なことになりますが、どうぞ、質問してく   ださい。 ○庄野委員 いまご紹介があった中で、粒子測定のところでDMAが最も広く用いられているとい   うことですが、これはいわゆる静電気力を応用した方法ですね。ちょっと素人的な質問で恐   縮なのですが、一般の化学分析、定量分析の領域ですと、いわゆる標準物質というものを設   定してそれとの比較をする。いわゆるリファレンスとの比較をやっていくのですが、例えば   粒径に関してのスタンダードサンプルみたいなものはあるのでしょうか。あるいは、そうい   うものとの比較相対は、やられるのでしょうか。 ○鷹屋参考人 大きさだけに限りますと、ポリスチレンラテックスで、重合して粒径測定をやっ   て、粒径の非常に揃った粒子が手に入ります。それを標準にして、まず純水で分散させたエ   アロゾルを発生し、そのDMAの較正を行います。もともとの標準物質の大きさは電顕で測っ   ているのですが、実はポリスチレンラテックスはプラスチックですので、電顕で測った大き   さそのものが、測っている間にビームで少しやせたりすることがあり、そのレベルの精度ま   でいくと、実はDMAでDMAを較正したほうが精度が高いという話も出ております。だから、   いわゆる絶対一次標準というものがあるのかというようなご質問でしたら無いのですが、実   用範囲において較正する標準は存在するという段階です。 ○蒲生委員 いまのお話を補足させていただきます。私自身はあまり詳しくないのですが、産総   研の中には標準をやっているグループがありまして、粒径についても、日本における標準と   いうものを定義して材料を提供可能な状況にあります。一桁ナノメートルのスケールまでと   いうのはちょっと難しいような記憶があるのですが、詳細はともかく、産総研にはそういう   アクティビティーがあるということだけ情報としてお知らせします。 ○宮澤参考人 私も、形状に関しては非常に重要なことだと思うのですが、ファイバー状のもの   を自動的に計測するやり方が今どの程度進歩しているのでしょうか。 ○鷹屋参考人 ナノスケールだと、自動はないと思います。いわゆるミクロオーダーですと、例   えばアスベストなどの管理もそうなのですが、粒子を採りまして粒子を電場の中に入れると   粒子がクルクル動きますので、光散乱のパルスの大きさがフラフラ動きます。それを見かけ   上計算して、短手方向はどれくらいで、長手方向はどれくらいで、いわゆる丸い粒子ではな   くて繊維状の粒子があるというようなことを測る装置があります。それはアスベストなどの   現場管理には使えるのですが、光が直接散乱する大きさであることが必要になるので、ナノ   スケールで、これはナノチューブだ、これは丸いカーボンだと言えるようなことは、私の知   る限り、自動的な装置ではないので、やはり電子顕微鏡で見る必要があると思います。 ○板倉委員 先ほど、バックグラウンドで非常に大きく変動するというようなお話をお聞きしま   したが、実際にバックグラウンドでどのぐらいの揺れがあるかというようなデータをお取り   になっていらっしゃいますか。 ○鷹屋参考人 私どもも、直接揺れは取ってないのですが、例えばクリーンルームとか、実際に   扱っている職場で得られているピーク値よりも。例えば、この部屋で今100nmとか80nmぐ   らいの粒子数を測ると、普通の部屋ですと、普通の作業でパッと出てくるものの100倍くら   いもともとありますので、揺らぎがかなり一定であっても、作業に伴って出てくる測定値を   意味あるところまで追い込むためには、揺らぎが非常に小さくても難しいのです。つまり、   もともとのバックグラウンドのレベルのほうが、何かをやって出てくる粒子数よりも100倍   とか1,000倍、場合によってはもっと大きい場合もあるということです。すみません、答え   になっているかどうか分かりませんけれど。 ○福島座長 本日は、ナノマテリアルの範囲、それから開発状況、計測技術の開発という3つに   ついて紹介していただき、そして質疑を行いました。少し時間がありますので、前の議題で   もいいですから、もう少しここをお聞きしたいということが何かございましたら、どうぞ。 ○菅野委員 酸化チタンに関して酵素活性が強いのは東レの成田様がルチル型が主だとおっしゃ   ったのですが、ルチル型というのは酵素活性、光触媒活性の低いほうですね。アナターゼ型   のほうが強いほうです。だから化粧品工業界のほうはルチル型しか出てこないのだと思うの   ですが、要望させていただけるとすれば、紫外線等による触媒性能を謳った金属酸化物の情   報が取れないかということです。アナターゼ型チタンと、亜鉛もそうです。あとは今朝の朝   日新聞に出ていたニオブもそうだと思うのですが、是非お願いできないかということなので   す。というのは、そちらのほうが毒性が強いだろうということは研究者のほぼ一致した意見   なものですから、そちらのほうの今後の用途の拡大も含めて、調査項目をお知らせいただけ   ると非常にありがたいのです。可能でしたらという要望なのですが。 ○成田参考人 わかりました。検討いたします。 ○福島座長 是非、検討して答えをいただけると、この検討会としても非常にありがたいので、   よろしくお願いいたします。 ○事務局(医薬食品局) 東レ様への委託は昨年度で終わってしまいましたので、もし、すでに   調査の過程で東レ様が調べていらっしゃるということであれば教えていただきたいと思うの   ですが、追加的な調査は契約上、今からは難しいかと思います。念のために申し上げておき   ます。ただ、非常に重要な指摘だと思っております。 ○福島座長 それはフランクリーに聞けないのですか。契約などむずかしいこととは別にして可   能な範囲で教えていただきたいと思います。 ○事務局(医薬食品局) もし、そのような情報をどこかお持ちの方がいらっしゃいましたら、    是非いただきたいと思います。 ○福島座長 そのところをよく考えて対応していただきたいと思います。ほかによろしければ、   その他の議題につきまして、事務局から何かありましたら、どうぞ。 ○化学物質対策課企画官 本日の議事の関係はこれですべて終了でございます。会議の議事録に   つきましては、委員の皆様方にご確認いただいた上で、後日公表させていただきますので、   よろしくお願いいたします。また、次回の開催日ですが、5月2日(金)15〜17時を予定し   ております。場所については追ってご連絡を差し上げたいと思いますので、よろしくお願い   いたします。事務局からは以上です。 ○福島座長 本日の検討会をこれで終了いたします。お忙しいところ、どうもありがとうござい   ました。 照会先 厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課 電話03-5253-1111(内線5510) 厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室 電話03-5253-1111(内線2423)