08/04/02 第1回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会議事録 第1回「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」 議事録 1 日時  平成20年4月2日(水)10:00〜12:00 2 場所  厚生労働省(中央合同庁舎5号館)17階        専用第21会議室 3 議題   (1)労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方について   (2)検討スケジュールについて   (3)その他 4 資料    資料1 障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会開催要綱    資料2 審議会等会合の公開に関する指針    資料3 障害者権利条約をめぐる状況等    資料4−1 我が国における「合理的配慮」のあり方について(論点整理)    資料4−2 アメリカにおける「合理的配慮」について    資料4−3 フランスにおける「合理的配慮」について    資料4−4 ドイツにおける「合理的配慮」について    資料5 障害者の権利に関する条約(仮訳) ○事務局  ただ今から、第1回「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関 する研究会」を開催いたします。参集者の皆様方には、本日、御多忙のところご参集い ただき、ありがとうございます。座長が選出されるまでの間、事務局で司会を務めさせ ていただきますので、よろしくお願いいたします。  まず、研究会の開催に当たり、高齢・障害者雇用対策部長よりご挨拶申し上げます。 ○高齢・障害者雇用対策部長  高齢・障害者雇用対策部長の岡崎でございます。本日は、「労働・雇用分野における 障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」を開催させていただくことになりま した。先生方にはご参加いただくことをご了承いただきましてありがとうございました。  既にご承知のことと思いますが、この国連の障害者権利条約につきましては、一昨年 の12月に国連総会で採択され、我が国におきましても昨年9月に署名したわけでありま す。これにつきましては、当然批准ということが次の段階にあるわけでございますが、 批准のためには国内法制がきちんと整備されていることが必要であると認識しているわ けであります。そういう中で、労働・雇用分野につきましても、これまで我が国におき ましては、ご承知のように障害者雇用率制度を中心にした促進型のシステムはもってい たわけでございますが、権利条約に定めておりますような差別禁止型の部分につきまし ては、そういう仕組みにはなっていなかったということでもあります。また、国連権利 条約におきましては、障害者の方のいろんな状況に対しまして、合理的な配慮が必要だ というような規定もありまして、こういったものにつきまして、どういった形での配慮 が必要なのかということにつきましても、ある程度中身が詰まっていかないと、全体と しての整備が進んでいかないのではないかと思っております。  昨年来、障害者雇用促進法の検討につきまして、審議会の中でも議論はしていたわけ でございますが、この権利条約につきましては、新しいいろんな考え方もありますので、 もう少し中身を詰めてから対応することが必要だろうということになりました。ただ、 できるだけ早急に検討すべきだと、こういうようなまとめにしたところでございます。  そういう状況でございますので、労使、障害者団体の皆様方にご参加いただきまして、 この条約を我が国の状況の中で、どういう形で対応していくのが適切かどうか、少し議 論を進めていきたいと、こういうことでございます。非常に重要な条約であるというふ うに認識しておりますので、是非、先生方の活発なご議論の中で、我が国におきまして 障害者の方々の雇用が進み、また、差別がなくなるような状況をつくり出していきたい と思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○事務局 それでは、本日は第1回目ということですので、各参集者の方々と事務局のメンバー をご紹介させていただきます。まず、名簿の順に従って参集者の方々のご紹介をいたし ます。  まず、資料1の2枚目に名簿をご用意しておりますが、この名簿の順に従って参集者 の方々のご紹介をさせていただきます。 (参集者の紹介)  続きまして、事務局のメンバーを紹介いたします。 (事務局紹介)  このほか、関係部局からオブザーバーとして参加しておりますが、本日は、労働基準 局監督課、安全衛生部計画課、職業能力開発局能力開発課及び障害保健福祉部障害福祉 課が出席しております。  次に、本研究会の開催要綱について説明させていただきます。  資料1をご覧いただければと思います。資料1の開催要綱案でございますけれども、 実は、当初ご案内していたものの冒頭に「労働・雇用分野における」という文言を付け させていただいております。権利条約の中のどの範囲を検討するのかということが分か りにくいというご指摘がございましたので、そこを入念的に追加した形でお諮りしたい と思います。以下、要綱案について、読み上げさせていただきます。  1の趣旨でございますが、ご案内の通り、平成18年12月に国連総会において採択され た障害者権利条約については、我が国は昨年9月28日に署名したところであり、今後、 早期の条約締結に向けた検討を進める必要がある。労働・雇用分野に関しても、昨年12 月19日付けの労働政策審議会の意見書「今後の障害者雇用施策の充実強化について」に おいて提言されておりますように、同条約には、「職場における合理的配慮の提供」と いう、これまでに我が国にない概念が盛り込まれていること等を踏まえた上で、障害者 雇用促進法制においてどのような措置を講ずべきかについて、考え方の整理を早急に 開始する必要がある。このため、労使、障害者関係団体等の関係者から成る研究会を設 け、障害者権利条約の締結に向けた環境整備を図るため、職場における合理的配慮その 他の対応の在り方について検討を行うこととする。以上でございます。  2は、研究会の運営ですが、まず、(1)といたしまして、研究会は、厚生労働省職業安 定局高齢・障害者雇用対策部長が、学識経験者の参集を求め、開催する。  (2)としまして、研究会の座長は参集者の互選により選出する。  (3)としまして、研究会の庶務は、厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害 者雇用対策課において行うということでございます。  そして、開催時期は平成20年4月からということでございます。  5の検討事項としましては、障害者権利条約、雇用・労働分野への対応の在り方につ いてと、その他ということでございます。  次に、要綱に従いまして、座長の選任に入らせていただきます。座長の選任、選出に つきまして、どなたかご推薦がございましたら、お願いいたします。 ○輪島委員  労働政策審議会の委員でもありますし、障害者雇用分科会の分科会長でもございます ので、これまでの議論の経過等々を踏まえまして、今野先生にお願いをしてはどうかと いうふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。 「異議なし」 ○事務局  ただいま輪島委員より今野委員を座長にというご推薦がございましたが、皆様ご異議 がございませんようですので、本研究会の座長を今野委員にお願い申し上げたいと思い ます。それでは、今野先生、これからの議事進行について、よろしくお願いいたします。 座長席の方にご移動いただけますでしょうか。 ○座長  ただ今ご指名をいただきました今野でございます。議事進行を担当させていただきま すので、よろしくお願いをいたします。それでは、議事に入りたいと思います。  まず、議事公開について申し合わせをしておきたいと思いますので、事務局からまず 説明をお願いできますか。 ○事務局  資料2の3ページを御覧いただきたいと思います。会議の公開については、「厚生労 働省における審議会等会合の公開に関する指針」において、懇談会等行政運営上の会合 は、以下の4つの場合、(1)個人に関する情報を保護する必要がある、(2)特定の個人等に かかわる専門的事項を審議するため、公開すると外部からの圧力や干渉等の影響を受け ること等により、率直な意見の交換又は意志決定の中立性が不当に損なわれる、(3)公開 することにより、市場に影響を及ぼすなど、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間 に混乱を生じさせるおそれがある、(4)公開することにより、特定の者に不当な利益を与 え不利益を及ぼすおそれがある、といった場合を除き、公開することとし、特段の事情 により会議又は議事録を非公開とする場合にあっては、その理由を明示することとされ ています。これに従いまして、本研究会につきましても、議事及び議事録につきまして は、原則公開という扱いになりますが、会議の開催の都度、その議題を踏まえ、会議及 び議事録の公開についての取り扱いを判断することとしたいと考えております。  また、配布資料についても、原則として公開するものといたしますが、取扱いに注意 が必要な資料の場合は、その旨を表示し、非公開の扱いとするものとさせていただきた いと思います。  なお、本日の会議につきましては、公開の取扱いとしております。  議事録については、議事の最後に御議論いただき、差し支えがないということでした ら、各委員に内容の確認をとった上で公開とし、差し支えがあるようでしたら議事要旨 のみの公開ということにしたいと考えております。以上でございます。 ○座長  ありがとうございました。今ご説明がありました公開方法について、何かご意見ござ いますでしょうか。よろしゅうございますか。それでは、そのようにさせていただいて 議事録の公開については、今ありましたように、議事の最後にお諮りをするということ にさせていただきます。  それでは、早速ですが、本日の議題に入ります。議題の、労働・雇用分野における障 害者権利条約への対応の在り方について、事務局から説明を受けたいと思います。それ では、よろしくお願いいたします。 ○事務局  資料3あるいは資料4ということになります。まず資料3をご覧下さい。「障害者権 利条約をめぐる状況等」という簡単な概要資料でございます。  1の条約採択の経緯としましては、まず、2002年、ニューヨークの国連本部において、 障害者権利条約のアドホック委員会の第1回目が開催されまして、そこで議論、検討が 行われまして、2006年8月の第8回アドホック委員会で基本合意がされました。それを受 けまして、2006年(平成18年)12月に、国連総会において、この条約が採択されまして、 我が国は昨年9月28日に署名を行ったという状況でございます。今後、政府としては、 条約の締結、批准に向けて、国内法制の整備等を進めていくという必要がございます。  2として、条約の概要でございますけれども、条約の本体は資料5としてご用意して ございますが、概要としましては、障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括 的・総合的な国際条約ということでして、障害者の方の自立、非差別、社会への参加等 を一般原則として規定するほか、アクセシビリティーでありますとか、家族、教育、労 働等様々な分野におきまして、障害者の権利を保護・促進する規定を設けております。 その中で、今回ご検討いただく労働及び雇用分野ということでございます。これは、条 約の27条でございまして、この資料3の3ページに簡単な抜粋を付けております。この 27条の1項の中で、aからkまで約11項目の事項があり、これについて、特にaからk までのことのための適当な措置(立法によるものを含む)をとることによって、労働に ついての障害者、これは中途障害者の方も含めてですが、その権利が実現されることを 保障し、促進するということが規定されております。  1ページに戻っていただきまして、まさに11項目あるわけですが、その中でいくつか 抜粋しますと、労働・雇用分野については、公的機関や民間部門での雇用促進といった 事項の他に、3つほど抜粋させていただきますが、(1)として、あらゆる形態の雇用に係 るすべての事項に関する差別の禁止で、そのすべての事項の例示として、募集、採用及 び雇用の条件、雇用の継続、昇進、並びに安全・健康的な作業条件を含むと、こういっ た事項について、すべての事項に関する差別の禁止ということが(a)で謳われており ます。 それから、(2)としまして、公正・良好な労働条件、あるいは安全・健康的な作業条件、 及び苦情に対する救済についての権利保護ということが謳われております。 そして、(3)ですが、職場において合理的配慮が提供されることの確保ということが書か れております。こういったことのための適当な措置をとることで、障害者の権利の実現 を保護・促進することというふうに、条約上されているところでございます。  先ほど申し上げた通り、我が国は昨年署名しておりますので、すみやかに国内法制の 整備、この可否あるいは是非について整備した上で、対応可能な事項については、速や かに法的整備を諮っていく必要があるという状況でございます。これは、昨年障害者雇 用促進法制の見直しに向けて労働政策審議会でご議論いただいた際の労働政策審議会意 見書の抜粋でございます。権利条約の締結に向けた検討ということでご議論いただきま したが、下線部を見ていただきますと、この条約に書かれている事項につきまして、障 害者雇用促進法制においてどのような措置を講ずべきかについては、特に、(2)の職場に おける合理的配慮の提供というこれまで我が国にはない概念が盛り込まれており、十分 な議論が必要であることから、労使、障害者団体等を含めて、考え方の整理を早急に開 始し、必要な環境整備などを図っていくことが適当である。このようなご提言をいただ いているところでございます。  資料3は以上でございますが、続きまして、資料4の方もご説明をさせていただきた いと思います。資料4−1から4−4までございますが、基本的には資料4−1をご説 明させていただきたいと思います。  この条約につきまして、省内で以前から勉強会はいろいろ行ってきたところでござい ますが、その課程で、実は本日ご出席いただいております松井先生あるいは岩村先生を はじめとして研究者の方々のご意見あるいはご議論をいただきながら、あるいは資料4 −2から4−4にありますように、既に条約についてある程度の国内法制の整備が行わ れているような各国の制度について、いろいろ調べていただいて、勉強して、それらを 踏まえて、我が国において国内法制の整備を諮るとした時に、どのような課題といいま すか、論点があるのかということを整理させていただいたものでございます。  今回の研究会におきまして、実は論点はこれに限らず、例えばヒアリングなど今後さ せていただいたなかで、他にも出てくるかも知れませんが、1つの叩き台ということで ご参考にしていただければということで、資料として提出させていただきました。これ は12ページほどあって少し長いのですが、簡単にご紹介させていただければと思います。 我が国における「合理的配慮」のあり方について(論点整理)ということでございます。  まず、1として、「はじめに」でございます。全段は条約の内容等、これまでご説明 した内容と同様でございまして、3段落目でございますが、この論点整理の趣旨としま しては、この下線部にありますように、既に国内法制に取り込んでいる各国の状況を参 考にして、どのような措置を我が国でも講ずることが考えられるのか。その際、我が国 の国内法制に組み込むことについて、どのような課題があるのかを整理するということ で整理したものでございます。  続きまして、2としまして、障害を理由とする差別の禁止と「合理的配慮」との関係 ということでございます。実は、この論点整理は、元々特に合理的配慮を中心に論点を 整理しようということで作成をしたところなんですが、その際には、どうしても差別禁 止との関係をしっかり考えなければいけないということで、この項目を立てさせていた だいています。  権利条約の中で合理的配慮あるいは障害を理由とする差別の定義が記載されておるわ けですが、この「障害を理由とする差別」」につきましては、「障害を理由とするあら ゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他の あらゆる分野において、他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、 又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するもの」という定義があるわ けですが、2ページ目でございますが、合理的配慮の否定、合理的配慮をしないという こともこれに含まれるというふうに定義をされております。このため、障害を理由とす る差別の禁止と合理的配慮との関係をどのように理解し、国内法において位置付けるか 問題になるということでございます。  以下、アメリカ、フランス、ドイツの例を簡単に紹介しておりますが、やはりそれぞ れ法体系といいますか、制度も微妙に違いがあるわけでございます。  まずアメリカでは、「障害をもつアメリカ人法」(「ADA法」)というものがございま すが、そこで差別禁止というものを規定しておるわけでございます。その差別の禁止の 適用対象というのは、「障害」をもち、かつ、当該職務に対して「適格性」を有する人 とされております。こういう人に対して差別を禁止するという法制となっておりますが、 この「適格性」を有する人といいますのは、職務の“本質的機能”、コアな部分といい ますか、その本質的機能の遂行を、“合理的配慮が提供されたならば”、あるいはされ なくてもできる人とされておるところでございます。逆に言えば、その合理的配慮が提 供されても職務の本質的機能を遂行できないという人、適格性を有さない人ということ になると、差別禁止の対象にならない。そういう法令になっているということでござい ます。また、使用者が、合理的配慮の提供が過度の負担となることを証明することなく、 その適格性を有する障害者に対して合理的配慮を行わないということも差別になるとさ れております。すなわち、「合理的配慮」概念は、差別禁止の一基準であると同時に、 使用者に対する、義務としての側面を有しておるということでございます。  フランスにおいては、「適切な措置」というふうに訳されておりますが、この適切な 措置の拒否は差別になるというふうにされておりまして、使用者としては、過度の負担 が生じる場合を除いて、適切な措置を講ずることというふうにされております。ドイツ でも同様でございます。「合理的配慮」に相当するものとして、雇用主に対しまして、 企業施設、機械、装置、あるいは労働環境等を含めた作業場の設置・整備など、一定の 事項を請求する権利を有するということでございますが、これも、雇用主にとって過大 であり、極端な出費を強いることになる等の場合には、その請求権はないものとされて おります。  以上から、「合理的配慮」について、その位置付けについてでございますが、論点が 出てくるのかなということでございまして、(1)の論点といたしましては、合理的配慮を 行うことを、一般的な使用者の義務、あるいはドイツのような労働者の請求権とするの か否か、又は、それにおそらくプラスして、差別禁止の判断要素としても位置付けるか、 こういう論点が1つあるかと思っております。  それから、同じことの裏返しではあるんですが、実際に紛争が起きた場合、その救済 を図る場合について、合理的配慮の提供がされない、合理的配慮の拒否そのものを差別 として違法として、何らかの救済あるいはペナルティーを与えるというような形にする のか。又は、合理的配慮が提供されないことによって何らかの差別が生じている場合に、 それを違法として救済を図っていくというふうにするのか。こういった点が検討課題と して考えられるということでございます。  本日は簡単にご紹介ということですので、2については以上といたしまして、3ペー ジ目の3の、「障害を理由とする差別」ということでございます。  (1)障害を理由とする差別の禁止ということでございますが、以下、アメリカやフラン スやドイツの経緯を簡単にご紹介しておりますが、その上で、2つ目の丸でございます が、我が国におきましては、この差別禁止につきましては、憲法ももちろんあるわけで すが、憲法14条のほかに障害者基本法におきまして、「障害者に対して、障害を理由と して、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」という規定が ございます。ただ、一方で、障害者基本法の中には、担保措置、ペナルティーのような もの、あるいは明確な救済手続きのようなものというのは明記されておりません。従い まして、労働・雇用分野において障害を理由とした差別があった場合に、その差別禁止 について具体的に担保しているのかというと、十分にそうであるとは言い難いという状 況であります。  このため、条約の趣旨を踏まえて、我が国におきましても、担保措置、あるいは禁止 の場合に、その具体的な基準を含めた法的整備ということをしっかり図っていくという ことについて、検討する必要があるということでございます。  以下、3ページから4ページにかけまして、1から4にいくつか細かい論点を紹介し ております。論点だけ簡単にご説明させていただきますと、(1)としましては、「障害を 理由とする」といった場合に、障害の有無を理由とした差別だけなのか、それとも、障 害の種類でありますとか、程度、こういったことを理由とする差別の両方入るのか。こ ういう論点が1つございます。下線部にあります通り、この点につきましては、少なく ても、アメリカ、フランス、ドイツを見る限りでは、障害の有無だけではなくて、障害 の種類、程度を理由とした差別全般について禁止するということになっておるようでご ざいますので、我が国においても、後者の考え方になるのかなというふうには考えられ ます。  続きまして、4ページ目でございますが、(2)の「間接差別」ということがございまし て、権利条約の中では、定義の中で、障害者が他の者と平等に人権・基本的自由を享有・ 行使することを妨げる効果を有するものと、広く捉えておりますし、また、アメリカ、 フランス、ドイツを見ましても、間接差別も禁止しているという状況でございます。日 本においても、間接差別も含めて禁止するかどうかという論点が1つあるということを ご紹介させていただきます。  (3)でございますが、「差別と職務能力との関係」ということでございます。これは(2) とはまた少し違いまして、間接差別には該当しないけれども、その障害があるが故に、知 識面、技術面、あるいは身体面、あるいはコミュニケーション面等、こういった面で一 部の能力に差があるというような場合に、そういった能力に基づいて職務能力を評価し た結果として、例えば、勤務条件、賃金、こういったものに差があるという場合に、こ れも差別に当たるのではないかという考え方もあると思いますけれども、これも論点に なると考えております。  各国の例をさっと調べたところでは、アメリカにおいては、職務能力、あるいは職務 経験、資格の有無等によって、賃金、昇進等に差があるという場合には、差別に当たら ないという考え方のようでございます。また、フランスにおきましても、労働医によっ て、障害認定のような形で確認された場合に、客観的かつ必要なものである限り差別に 当たらないということでございます。我が国におきましても、実は、各国ほど、どうい う職務能力をもっていればどういう賃金であるという関連性といいますか、勤務条件や 賃金等との関連性が明確ではない面は確かにあるわけでございますが、職務能力という のがこれらの重要な判断要素であることは間違いないわけでございます。もちろん、今 後、合理的配慮が適切になされた上でということになると思いますが、なお職務能力に 基づく評価をして、その結果として差が生ずるということまでも否定することは適当で はないのではないかとは考えられます。  (4)としまして、「あらゆる形態」の雇用ということですが、これは、権利条約の中で 先ほどご紹介しましたあらゆる形態の雇用に関する差別の禁止ということが規定されて おるところでございます。雇用の中には、一面的ではない部分がありますから、例えば、 福祉的観点から、サービスの提供でありますとか、内容が定められる授産施設のような ものは、雇用という中には含まれないと考えられます。一方で、福祉の領域の中でも、 雇用契約を締結した上でサービス提供がなされる就労継続支援(A型)のようなものに ついては、雇用ではあるわけですが、そのままストレートに全く同じように適用してよ いのか、どのような形で適用できるのかということは、検討する必要がございます。例 えば、雇用契約の中でも、派遣労働につきましては、雇用しているのは派遣元事業主な わけですが、派遣先事業主についても何らかの適用関係ということも整理する必要があ るのかも知れません。こういった検討も必要ではないかという論点がございます。  続きまして、4ページの下から3行目以下の(2)でございます。(2) は、差別が禁止さ れる「障害者」の範囲ということでございますが、これも各国少しずつ差があるようで ございます。アメリカにおきましては、先ほど申し上げましたように、「障害」を持ち、 かつ、当該職務に対する「適格性」を有する者というのが、差別禁止の対象ということ でございます。逆に、障害の種類でありますとか、対象について、特に限定というのは していないという状況でございます。フランスにつきましては、細かく規定がございま すけれども、「障害及び健康状態」を理由とする差別ということで、その対象でござい ますが、フランスにおける雇用率、雇用割当制度の対象者と概ね重なっているという状 況でございます。従って、逆に言えば、すべての障害者という形ではないという規定を 採っているというところでございます。ドイツでもほど考え方は同様のようでございま して、差別禁止の対象となる障害者の範囲は、重度障害者という表現を使っております が、ドイツにおける雇用割り当て制度の対象者とほぼ同様に捉えられているようでござ います。  以上のように、差別禁止の対象となる障害者の範囲については、各国においてそれぞ れ異なっておりまして、フランスやドイツのように雇用率制度、雇用割り当て制度と連 動させている国もあれば、アメリカのように、少なくとも範囲といいますか、定義とし ては広範にある程度設定しているところもあるということでございます。我が国におい ても、その差別禁止の対象となる障害者の範囲というものを、どのように設定するのか ということは論点になるのかなということでございます。  (3)でございます。「事業主の範囲」ということで、これはちょっとアメリカだけがフ ランスやドイツとは異なっておりまして、アメリカでは差別が禁止される事業主の範囲 については、週20時間以上働く15人以上の従業員を雇用している者という形で規定して いるところでございます。一方で、フランスやドイツについては、すべての使用者を対 象としているようでございますので、差別を禁止する事業主の範囲についても、併せて 検討する必要があるということでございます。  続きまして、(4)の「差別が禁止される事項」でございますが、権利条約におきまして は、先ほどの27条1項の(a)に書いてありました通り、雇用に係るすべての事項に関する 差別を禁止ということでございますが、その中で例示がされておりまして、「募集、採 用及び雇用の条件」「雇用の継続」「昇進」「安全・健康的な作業条件」ということが 含まれるということが明記されております。  6ページにちょっと移っていただきまして、各国の状況、アメリカ、フランス、ドイ ツの状況を踏まえますと、差別禁止の事項として、以下の事項について特に検討を行う 必要があると考えられます。そして、(1)から(5)まで列挙しておりますが、(1)として募集 (応募)手続、採用、それから(2)として賃金その他の労働条件、(3)として昇進あるいは 配置、(4)として職業訓練(教育)、(5)として解雇、あるいは雇い止め、契約更新、こう いった事項について検討を行う必要があろうかと思われます。また、各国において取り 扱いが異なる部分、異なる取り扱いが見られる事項については、これはやはり国ごとの 制度でありますとか、慣習等によって異なり得るものでありますので、特にそういった ものについては慎重な検討が必要ではないかと考えられます。  ちょっとお詫びでございますが、下線部の中の括弧書きについては、誤表記といいま すか、上記(1)から(5)の内、斜線部、斜字で記載した事項と書いてあるんですけれども、 斜字の部分はございませんので、これは誤表記でございます。  (1)から(5)を記載させていただきましたが、特にその中でも、以下の点につきましては、 我が国の制度あるいは慣習等に照らしますと、様々な問題が生じるかなり大きな論点に なるのではないかと考えられます。  1点目としては、募集及び採用ということでございます。アメリカにおきましては、 募集手続きのみならず、採用そのものも差別禁止事項である。従って、差別をした上で 採用あるいは採用拒否ということにつきましては、法令違反ということで、その採用拒 否に関して、損害賠償請求の対象となるということでございます。フランスにおいては、 まず、労働法典の中の差別禁止規定を見ますと、「募集手続」からの排除というものは 差別であるということで禁止しておりますけれども、他方、採用の拒否ということに関 しましては、労働法典の中では差別禁止事項としては挙げていません。ただ、一方で、 刑法点においては、採用拒否ということに関して罰則が科されるということとなってい るようでございます。ドイツについては、実は詳細はまだ分からない部分が多々ありま すが、職業活動の機会を得るための条件(採用条件も含む)についての差別禁止、不利 益待遇の禁止ということが規定されております。違反した場合には、損害賠償請求の対 象となるということとされておるようでございます。  我が国に関して見ますと、採用に関しましては、事業主に比較的広範な裁量があると 考えられておりまして、例えば、現行の他の法制度で見ますと、性別による差別禁止( 男女雇用機会均等法)あるいは年齢による差別の禁止(雇用対策法)にこういった規定が あるわけですが、基本的には、募集採用の機会についての差別を禁止しておるというこ とになっております。また、この採用につきましては、具体的に、採用拒否ということ で、紛争が生じた場合に、そもそもその差別があったかどうかという判定もまた難しい 問題ではあるわけですが、差別があったとしても、採用に関しては、他の応募者もいる ということの中での判断になりますので、採用拒否自体が差別であった場合に、他の応 募者との関係もある中で当該障害者を採用すべきというふうに行政なり司法機関が直ち に判断できるかというと、非常に難しい面もあるという採用ならではの事情というのが あろうかと考えております。  続きまして、7ページでございます。(2)の、「賃金、安全衛生その他労働条件という ことでございます。特に賃金が大きな問題になるかと思いますが、各国を見ますと、ア メリカ、フランス、ドイツの何れも賃金についても障害を理由とした差別の禁止という ふうに、禁止事項になっておるところでございます。一方で、我が国では、賃金の決め 方について、職務内容と賃金の決め方について、各国と比べて明確ではない面が多々あ ろうかと思います。年齢でありますとか、家族構成でありますとか、様々な要素から賃 金が決められておるところでございますので、実際に賃金に差があるといった場合に、 それが障害を理由とした差別であるのか否かというのをどのように判断するのかという のは、大きな問題、課題であろうかと思います。つまりは、次の段落にありますように、 どのように差別禁止を担保するのか、どのように判断していくのかということにつきま しては、更に検討する必要があろうかと考えております。  賃金以外の労働条件についても、例えば、現行の男女雇用機会均等法の中でも退職勧 奨であるとか、解雇については、差別禁止が規定されており、労働条件のうちどのよう な範囲について、あるいはどういうような形で差別を禁止するのかということについて も検討事項であろうと考えております。  以上、長くなりましたが、差別禁止に関する論点でございます。  続きまして、4として、「合理的配慮の義務」ということでございます。  (1)といたしまして、その合理的配慮の具体的内容でございますが、これは既に申し上 げた通り、アメリカ、フランス、ドイツ、何れも法令上の規定の仕方に相違はあります が、実質的には事業主に対して合理的配慮を行うことを義務付けているところでござい まして、我が国においても、何らかの形で、事業主が障害者に対して「合理的配慮」を 行うようにしていくということが考えられるわけでございますが、その内容というのが、 必ずしも明らかでない部分があると考えております。  各国の例を見ますと、アメリカにおきましては、ADA法上合理的配慮という規定はあ るんですけれども、定義というのは必ずしも明確な定義とはなっておりませんで、例示 がされているという規定のされ方をしております。(1)としては、施設を容易に利用・使 用できるようにすること、あるいは、(2)として、職務の再編成、パートタイム化、勤務 スケジュールの変更、等々と、こういうことが合理的配慮の例であるという形で規定を しているようでございます。一方で、フランスでは、労働法典の中で「適切な措置」と いうことで、(1)労働環境の整備、あるいは(2)労働条件への配慮ということが規定されて います。ドイツにおきましては、社会法典の中で規定があるわけでございますが、以下 の(1)から(5)まであって、能力を発揮できるような仕事でありますとか、企業内外での職 業教育といったこと、あるいは、(4)にありますような施設、装置、あるいは労働環境、 職務編成、等々の整備ということが規定されておるところでございますが、実際に合理 的配慮の具体的な中身は何なのかという部分にまでいきますと、各国とも、法令上は必 ずしも明確でないということでございます。  我が国での検討の参考にするために、各国の中で最も事例の蓄積が進んでおるアメリ カを見ながら、アメリカの例を参考にしながらイメージを試みたいということで、以下、 アメリカの例をご紹介しております。  アメリカにおいては、行政機関であるEEOC(雇用機会均等委員会)というところで、 かなりガイドラインを整備しておりますので、比較的イメージがわきやすいということ でございます。アメリカではどのようなものが合理的配慮として掲げられておるかとい うことでございますが、ここでは7つほど例を出しております。1点目は、施設・情報 へのアクセシビリティ等ということでございます。例えば、スロープを設置するとか、 点字標識あるいはトイレや吸水器へのアクセスを確保するといったようなこと、あるい は、例えば、視覚障害者の方に対して、パソコンの装置を整備するとか、拡大印刷を整 備する。あるいは、点字や音声によるメッセージの送付。こういったことが合理的配慮 の内容であるというふうにされております。  2つ目は、職務の再編成ということでございますが、アメリカならでの概念なんです が、「本質的職務」を遂行できるように、職務の内容を変更する。あるいは、本質的職 務でない部分、その周辺的職務というのを他の従業員に分配するなどして、取り除いて あげる。こういったことが配慮であるとされております。  3番目としては、勤務地の変更ということで、代表的なものとしては、テレワークと いったことも合理的配慮に含まれ得るということでございます。限界はあるようですが、 テレワークをしていただくということも配慮に含まれ得るということでございます。  4番目が、労働時間の変更・休暇の付与ということでございます。  5番目の例といたしまして、空席の職位への配置転換、つまり、障害があるが故に現 在の職位ではなかなか難しい。あるいは配慮が難しい。こういうような場合に、他の職 位に配置転換をするということも配慮であるというふうにされております。  6番目としては、企業内外での教育訓練あるいは試験ということで、訓練の教材であ りますとか、試験について、手話通訳者あるいは点字、拡大文字といったものを、こう いう形でいろいろ工夫をする。訓練方法や試験方法について調整・変更するということ が配慮に当たるとされております。  最後、7番目でございますが、援助者・介助者の配置ということで、資格をもつ朗読 者あるいは通訳といったような援助者あるいは介助者を提供するということも合理的配 慮として求められておるということでございます。どの程度提供するか。配置するかと いうことについては、後述の過度の負担というものとの関係で決まってくるということ でございます。  これら配慮事項はたくさんあるわけでございますが、我が国に仮に導入するとした場 合に、我が国の制度、慣習等にかんがみて、今後検討を深めていく必要があると考えら れるものとして、以下のような事項が挙げられるとして、いくつか列挙しております。 職務の再編成ということが、アメリカでは合理的配慮とされておるわけですけれども、 アメリカのように本質的職務とその他の周辺的な職務ということが、我が国では必ずし も切り分けが明確でないということがございますので、全く同じように法的整備をする というのは難しい面もあるという部分でございます。  あるいは、次の勤務時間の変更につきましても、在宅勤務でありますとか、テレワー クあるいは短時間労働と、いろんな勤務時間の変更の方法というのはあるわけですが、 ある程度集団的にみんな事業所に集まって業務遂行していくということが、我が国にお いては、ある程度一般的であります。従来のルールと異なる形になりますので、それを どこまで求めるかという論点がございます。  あるいは、配置転換につきましても、従来の人事配置との関係をどのようにするのか という論点はあろうかと思います。  援助者・介助者の配置ということも、アメリカでは配慮内容とされておりますけれど も、実際に日本において、この朗読者あるいは手話通訳者、あるいは介助者、ジョブコ ーチ、こういった人たちの配置まで求められるのかという問題でございます。これが配 慮に含まれるとするならば、逆に従来、募集する際に、例えば介助者なしで当該業務を 遂行できることという条件を設定しているという場合はあろうかと思いますが、こうい ったものは、そもそも合理的配慮が欠けているということにもなります。そうしますと、 (1)、(2)のような論点というのが出てくるのかなということが考えられます。1つは、介 助者の配置について、アメリカのように基本的に合理的配慮に含まれるというふうに整 理しつつ、ただ、過度の負担となる場合には置かなくてもよい。こういった整理にする のか。あるいは、(2)のように、その当該職務の本質的な職務の遂行をしていく上では、 少なくても援助者・介助者なしで遂行できるということが必須であるならば、そもそも 援助者・介助者を置くということは合理的配慮には入らないという、(1)、(2)の両方の考 え方があるのかなということでございます。  それから、1つ飛ばしまして、企業内苦情処理という項目を記載させていただきまし た。先ほど紹介しませんでしたが、アメリカにおきましては、企業内で苦情処理の窓口 でありますとか、機関を設けることまでは、合理的配慮の内容とはされてはおりません。 しかし、一方で、EEOCの中では、実際に差別があった場合、差別の判断に当たっては、 その企業内に苦情処理手続きが設けられているのかどうかということを重視しておると いうことがあります。その結果として、実務上は非常に重要なものと理解されていると いうことだそうでございます。  我が国におきましても、結局どのような配慮が合理的であるのかというのは、当然個 々のケース毎に様々であるわけでして、こういう企業内における苦情処理手続きという のも方策としては、1つ考えられるのではないかということでございます。  続きまして、(2)過度の負担ということでございますが、アメリカにおきましても、過 度の負担について規定があるわけですが、長いので全部は申し上げませんが、次の1か ら4のような要素に照らして、著しい困難または支出を必要とする行為、これが過度の 負担というふうにされております。その配慮の性質でありますとか、コスト、あるいは その事業体の事業規模、こういったものに照らして著しい困難であるかどうかというの が判断されるということでございます。  フランスにつきましては、この辺りの規定は必ずしも明確ではない部分もあるんです けれども、過度の負担の判断要素としまして、1つ、企業に対する様々な助成措置、助 成金、奨励金という、このような助成措置というのが考慮されるということとされてお ります。こういった助成措置を考慮してもなお適切な措置をするための費用というのは 企業の負担能力を超えている場合には、これは過度の負担が生じているというふうに考 えられるということでございます。ドイツにおきましては、雇用主にとって過大であり、 極端な出費を強いることになる場合には、過度の負担ということでございます。  なお、この過度の負担といいますと、配慮に係る金銭的負担というのが当然あるわけ です。それのみならず、アメリカの例でありました通り、勤務時間の変更でありますと か、職務内容の変更といった雇用管理上の負担ということも含まれる。そういう概念で あるということでございます。  過度の負担につきましては、アメリカでは判断要素の1つとして、企業規模というの を挙げておりましたけれども、我が国におきましても、この合理的配慮、過度の負担と いうことを考えた時には、大企業と中小企業では対応能力に差がある場合もありますの で、その企業規模といったものをどのように捉えるかという論点もあろうかと思います。  配慮の中のどこからが過度の負担かというのは、当然個々の事例によって異なってく るわけです。なかなか詳細な基準を設けるというのは困難ですし、実際フランスやドイ ツではまだそこまでの基準というのが、必ずしも出来上がっていない状況でございます けれども、アメリカのようになるべくガイドラインという形ではありますが、判断基準 というのを明確にしていく事例を蓄積していくということが大切なのではないかと考え られます。  最後に、11ページの下から4行目以降に、権利保護の在り方ということで簡単に紹介 させていただきます。これは、実際に差別があった、あるいは合理的配慮がなされなか ったということで紛争が生じた場合、どのように救済をしていくかということでの考え 方の整理でございます。  いくつかルートはありますが、1つ目のものとして、(1)として、私法上の効果あるい は救済ということでございます。アメリカにおいては、障害を理由とした差別というこ とに関しては、損害賠償、採用、復職、バックペイ等の請求が可能ということでござい ます。あるいは、フランスにつきましても、この差別的取り扱いは無効というふうに整 理されておりまして、解雇無効の訴えでありますとか、損害賠償ということが可能とな っております。ドイツにおいても、損害賠償が可能ということでございます。  一方で、2つ目として、(2)公法上の効果・救済等ということで、ある意味では私法上 の救済よりも簡易・迅速なものという意味では重要とも考えられるわけですが、この公 法上の救済ということでございます。アメリカでは、先ほど来出てきておりますEEOC( 雇用機会均等委員会)というところに申し立てができるということになっておりまして、 このEEOCが事業主に対して一定の調査をして、事業主に対する調整や説得ということを するという手続きがございます。ただ、これによって解決しない場合には、結局はEEOC が自ら原告となって事業主に対して提訴をするか、あるいは被害者自らが提訴をするか ということになるわけでございます。フランスにおきましても、行政機関であります高 等差別禁止平等機関という機関がございまして、申し立てがあれば調停あるいは和解金 の支払いの提案・勧告ということをする手続きが別途あるということでございます。ド イツでも、行政機関としての雇用斡旋事務所というところで仲裁手続きというものが、 手続きとしてはあるようでございます。  我が国に照らして見ますと、具体的な差別事案ということになりますと、個々の事業 主や障害者の状況に応じて、慎重に検討しながら差別の有無を判断する必要があるわけ です。何らかの差別があった場合に、どのような措置を講ずべきかということは、ある 程度、事業主あるいは障害者双方の立場を踏まえて判断することが望ましいというふう に考えられますので、このような公法上の公的な機関による救済を具体的にどのような 機関が、このような手続きを担うべきかについては、さらに検討する必要があるという ふうに考えられます。  最後、(3としてガイドラインの策定とございますが、これは実際に紛争が生じる前に どのような事項が差別であり、配慮でありということを、なるべく可能な限り明確にす ることが望ましいということで、こういったガイドラインの策定ということが望ましい ということを、最後に記載しております。  以下、資料4−2、4−3、4−4ということで、これは省内で検討をしていく中で、 アメリカについては日本学術振興会の長谷川さんから、フランスについては、東京大学 大学院の永野さん、ドイツに関しましては、障害者職業総合センターの指田さんに調べ ていただいて、まとめていただいたものでございます。本日はご説明はいたしませんが、 ご参考にしていただければと考えております。大変説明が長くなってしまいましたけれ ども、説明の方は以上でございます。 ○座長  ありがとうございました。論点整理案について説明をしていただきました。今日は第 1回目ですので、今の説明を参考にしたり、あるいは踏まえたりして、今後どういう項 目を検討していくかとか、今後どうやって検討していこうかということについても意見 交換できればというふうに思っております。ただ、今せっかく資料の説明がされたので、 それについてのご質問がありましたら、最初にそれをお受けしてから、さきほど言った 点に入っていきたいと思います。かなり長い時間説明していただきましたので、疑問点 等々あると思います。ご質問あるいはそれに関連したことでも出していただければと思 います。どうぞ。 ○松井委員  法政大学の松井です。ある程度事情を知っている者が先に言った方が話しやすいと思 いますので、発言させていただきます。いくつかあるとは思いますけれども、例えば、 先ほどご説明のあったあらゆる形態の雇用というのは、一体どの範囲までなのか。就労 ではなく、訓練を中心とした授産施設などは入らないというのは分かりますけれども、 一体、具体的にはどの範囲を考えていらっしゃるのか。それから、この対象となる障害 というのは一体何なのかということ。これも、なかなか各国とも難しいとは思いますが、 例えば、日本の障害者雇用促進法で規定されている障害者というのは、かなり職業的な 重度というような印象があります。そういう意味では、雇用率制度の対象は、そういう 職業的な重度の方を企業に雇用していただく。そして、当然それはコストがかかるので、 企業間でそのコストをシェアするという考え方があります。合理的配慮の対象となる障 害者というのは、アメリカの例で見るように、少なくとも能力は対等でやれるというこ とが前提となっていますので、雇用率でいっているところの対象の障害者と、この合理 的配慮の対象となる障害者というのは、同じになるのかどうか。そこは、権利条約でも、 いわゆるアファーマディブアクションというか、特別措置をとることについては、差別 ではないと言っていますので、そういう必要性は認めているわけですが、どうもそこは 必ずしもクリアではないという印象があります。  それから、この雇用率制度はあくまでグループというか、それを対象に考えているわ けですけれども、合理的配慮はあくまで個別対応というか、そういうことになると思い ます。ですから、例えば、先ほど過度の負担という話がありましたが、その人に対して どういう措置が適当なのかという判断は、誰がするのか。もちろん、これは事業主だと は思いますけれども、ただし、客観的にそこが問題になった場合に、どういうふうにそ こを調整できるのか。そういうことも、これから議論になるわけでしょうけれども、な かなか本当にクリアカットな形で解答を出していくというのは、容易ではないと思いま す。とりあえず、そういう話をさせていただきます。 ○座長  松井委員のお話しは、今後検討すべき項目について挙げていただいたということだと 思いますが、もし事務局の方から、それについて何かあればどうぞ。 ○障害者雇用対策課長  3点共検討項目として、これからご審議いただきながら、どういう形で進めていくの かということを決めていかなければならない問題だと思っております。事務局の立場で 一言ずつ申し上げますと、この条約自体が、やはり雇用・労働ということで、雇用を中 心として枠組みができております。従来の日本の法制からすると、やはり雇用契約を前 提とした部分について考えていくことが適当ではないかと思います。論点整理のペーパ ーの中でもありました通り、基本的に従来通り企業を中心としたところに当てはめてい くのだろうと思っております。  福祉的な就労の部分につきまして、就労継続支援のA型のように雇用契約がある部分 があります。雇用契約を前提とした部分については、ある意味、雇用契約を前提として 条約の適用についても考えていくべきだろうと思います。それ以外の形態で、雇用にな らないようなむしろ福祉的サービスに近い部分について考えた場合に、そういったこと について、この条約を当てはめていくのかどうかというものは、現行の日本の法制度で すると、かなり消極的に考えざるを得ないのではないかという思いがあります。  2点目の対象となる障害者の範囲について、諸外国の状況が縷々ございます。日本の 法制度も障害者の概念はある意味、2つの段階になっております。1つは、雇用率制度 が適用になっている部分です。この部分については、かなりリジットな感じをしており ます。もっと広い範囲では、障害者で雇用率の対象にはならないけれども、職業リハビ リテーションの対象となる障害者というものがあるということです。このように二段階 の制度が現行であるということです。もっと広い範囲での障害者の方というもいるのか も知れませんけれども、基本的には、援助の対象として考えた場合について、様々なご 支援をする障害者のリハビリテーションの対象となる障害者と、さらに積極的な措置を 講ずる対象という形の、二段階になる中で、その2つのどちらかを選ぶのか、あるいは もう1つ別の階のものを立てていくのか。この辺りについても、この研究会の中でご議 論いただければと考えております。  3点目が、非常に難しいご指摘だったと思っております。客観的にどのような個別的 な配慮が必要かということですが、これは、かなり個別的な議論にならざるを得ないと いうことです。そうすると、どういう形でそれぞれの障害者の方と企業の思いを調整し ていくのかということだろうと思っております。そういう中で、紛争とまで言えるかど うかということはありますけれども、企業内でのそういうような調整の課程、あるいは 最終的にその調整がうまくいかなかった時の外部的な機関での調整ということ。これを どういう枠組みで考えていくのか。これは、今回の条約を考える上で大きなテーマだろ うと思っておりますので、そういう意味で、積極的にご議論いただければと考えており ます。 ○高齢・障害者雇用対策部長  若干だけ補足させていただきます。この条約全体は雇用だけではないんですが、この 研究会では、要するに27条のところをご検討いただきたいという趣旨で課長が今言いま した。例えば、条約を見ていただければ、28条では、相当な生活水準及び社会的な保障 という別な項目がありますけれども、これは政府全体で条約を検討する際には当然議論 になるだろうと思いますが、私どもは雇用・労働の分野についてお願いしているという ことでご理解いただきたいと思います。 ○座長  他にございますでしょうか。笹川委員、どうぞ。 ○笹川委員  まず、この研究会に全日本聾唖連盟の代表が入っていません。その理由が私どもには 理解ができないんですが、当事者が入っていないこと自体、差別ではないかと思います。 何か特殊な事情でもあるんでしょうか。聴覚障害、言語障害の方々の職場定着率は非常 に低いといわれています。それなりの原因があるはずですが、そういう方がここにいな いということは、彼らの意見が反映されないということになるのではないかと思います。 この点、事務局の方では、どのようにお考えでしょうか。  それから、雇用ということは当然ですけれども、それ以外の就労もいろいろあるわけ です。厚労省である以上は、雇用以外の就労についても何らかの形で協議する必要があ ると思うのですが、その点をどうお考えなのか。この2点をお尋ねします。 ○座長  では、お願いします。 ○高齢・障害者雇用対策部長  1点目につきましては、私どもの従来の審議会等に出ていただいている団体を中心に お話しを申し上げたわけでございますが、今、ご指摘もありましたので、少しその辺は 当事者団体ともお話しをしながら、この場にご参加いただくのか。あるいは、ヒアリン グという形でご意見を聴くのか。その辺は少し調整していきたいと思っております。  それから、2点目につきましては、先ほどの話にちょっと遡りますけれども、厚生労 働省全体は雇用だけではなしに、障害者の福祉の問題も当然所管しております。そうい う中で、厚生労働省あるいは政府全体という中では、ご指摘の部分も当然検討しなけれ ばいけないと考えております。幅広い条約でございますので、全てをどこかの場でとい うことにはなかなかいかないということでございますので、私どもとしては、この場に つきましては、条約でいえば27条の部分を中心にご議論をいただきたいということで ス。先ほど申し上げましたように、そこの部分がこの条約全体の中で、重要でないとか、 関係ないという認識は持っているわけではないということでございまして、その点ご理 解いただきたいと思っています。 ○岩村委員  今の点に関連してなんですが、27条をやるということ自体は、会の趣旨としてその通 りだと思います。ただ、27条を見ていきますと、fというところで、雇用労働に限ら ない自営活動その他起業について、自己の事業の開始を促進するということが入ってい るので、今の部長のお話しの趣旨は当然それも含んで検討するんだという理解でよろし いでしょうか。 ○高齢・障害者雇用対策部長  27条の中でもf項をどの場で検討するかというのは、実はこういう部分というのは、 なかなか役所の所管がない部分でありますので、なかなか難しい面もあります。ただ、 27条の内ですので、この場でもご意見をいただきながら、最終的にどういう形で、ど こで、ここの部分を責任もっていくかというのは、政府全体でも検討しなければいけな いと思いますが、先ほどのお話しも含めて、この場で議論を制約するつもりはありませ んので、ご意見をいただきながら、また政府全体でも適切な調整が行われるように努力 していきたいと考えております。 ○座長  笹川委員が言われた雇用以外の就労というのは、今、岩村委員が言われたような内容 を想定されているということでよろしいですか。輪島委員、どうぞ。 ○輪島委員  f項はいわゆる福祉的就労ということを直接的に指すということではないと思うので、 その点の整理はしていただいて、起業とか自営とかということですから、今、笹川委員 がおっしゃった趣旨がf項で読めるということではないと思うのですが、それはいかが ですか。 ○高齢・障害者雇用対策部長  おっしゃるように、f項はむしろ障害をもった方が自ら事業を行うというようなこと を想定している部分で、所管的には、役所の中ではどちらかというと、経済産業省が所 管しているような部分を指しているのかなというふうに認識はしております。それから、 笹川さんがおっしゃった部分は、むしろ28条の方の中で、相当な生活水準というような 部分をどう検討していくかというような中で議論されるような部分ではないかと思って おります。一応、そのように思っておりますが、ちょっとまだ、これは政府部内でも全 体として十分な議論が始まっているわけではなくて、むしろこの場が皮切りみたいなと ころでありますので、そういったご意見もいただきながら、条約全体がどういう形で、 どの省庁、どの部局が責任をもっていくか。そのような議論も併せて調整されるように していかなければいけないのではないかと考えております。 ○座長  そうすると、この場では、当面は少し広めに議論していきますよということですね。 ○高齢・障害者雇用対策部長  議論を制約するつもりはございません。 ○座長  どうぞ。 ○今井委員  これまで既に先行して議論がされ、まとめの形で今ご説明いただいたので、その先行 的な議論の中で、次の2つのことがどう議論されたか、されなかったかをお聞きしたい と思います。  1点は、日本の現実なんです。外国でどうとか、国連がどう決めたかということは、 一旦ちょっと横に置いておいて、合理的配慮について、それが不十分なために日本の現 実で、どういう問題が起きているのか。日本の現実が何を合理的配慮として要求してい るのか。その辺をどのように議論をされたかというのが1点です。  もう1点は、それでは、法整備がされていなかったから、雇用率だけだったから、日 本で、個々の企業において、合理的配慮が一切されていなかったかというと、そういう ことはないんだろうと思います。そこで、先行的に合理的配慮を会社の親父さんが好意 でやったかも知れない、何か知らないけれども、そういったことの先行事例というのを どのように取り扱われたのか。まだこれからの話なのか。ちょっと、その辺をお聞きし たいと思います。 ○高齢・障害者雇用対策部長  今の点につきましては、この論点整理として出させていただきましたのは、我が国の 実態を議論して論点をまとめたという性格のものでは実はございません。むしろ、国連 条約という国際的な場で議論がなされ、条約が採択されたわけでありますので、諸外国 の状況を見ながら、どういう論点があり得るかということを整理させていただいたもの であります。むしろ、これはそういう意味で、外国のことに詳しい学識経験者の方を中 心にまとめていただいております。むしろ、これから、こういう諸外国の状況を踏まえ ながら、では、我が国の状況はどうだから、どうするべきだというようなご議論をして いただくために、労使代表、障害者団体の皆さん方に集まっていただきました。こうい う状況だということをご理解いただきたいと思っておりますのが1つ目でございます。  それから、2つ目の話でありますが、合理的配慮という概念かどうかは別として、雇 用率制度のなかで、企業におきましても、いろいろな形で障害をもっている方々の職場 を広げてきているというのは事実であります。そういう中で、この条約の合理的配慮を 意識したかどうかは別として、様々な配慮がなされているということは事実であるとい うふうに認識しております。 ○座長  どうぞ。 ○輪島委員  まず、今、この2008年4月に、どういうポジションに立っているのかというのが、今 一つよく分からないので、そのことをまずお聞きしたいと思います。単純に想定するの は、男女雇用機会均等法をイメージします。調べると、均等法については、1979年に女 子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、いわゆる女子差別撤廃条約が国連 で採択をされて、11条に、雇用の分野における女子に対する差別の撤廃ということが規 定をされている。それについては、母性保護は差別としてみなしてはならないというこ とと、それから、女子一般に対する保護は、女子に対する差別で、これが引きずって、 現行法の均等法、つまり、へんめん性を採って、現行の法制度になっているというとこ ろまで来ているというふうに理解をしています。  ということと、まず1つ目は、要は、均等法が辿った歴史的な経過を見ると、こうい うような流れの中の入り口に今立っているのかどうかというのが、将来的に、これぐら いの時間がかかるのかどうか分かりませんけれども、いわゆる障害者雇用機会均等法と いうようなところを目指しているのかどうかというところが、よく分からないという点 です。  もう1点は、これはテクニカルな話で、1980年に署名をしています。当時、中曽根総 理の発言で、85年までに批准するようにということで指示があったというようなことが ありますが、今回は、何時いつまでに批准をするというような、いわゆるターゲットが あるのかどうかということを、まずお伺いをしたい。  そのことで言うと、先ほど申しました女子一般に対する保護は、女子に対する差別、 つまり今の現行の均等法はこれまでの男性から女性に対する差別というところではなく て、女性から男性に対する差別も禁止をするという、完全な性差別禁止という体系にな っているのは、ここの根拠があると思うのです。女子一般に対する保護は、女子に対す る差別だということになると、その障害をもっているということに対する保護も、障害 者に対する差別というふうになるのかどうかというようなことが、条約に入っているの かどうかというようなことも、後ほど、次回以降で結構ですから、教えていただきたい。  それから、先ほどの4−1の資料を見ると、結局は均等法の募集・採用、配置、昇進、 教育・訓練と、それから、今回の現行法で入った間接差別、そういったものも全て均等 法の中に入っているような感じがしますので、今の現行の均等法と今度の4−1で照ら した中で、何が違うのか。条約上、合理的配慮はもしかしたら違うのかも知れませんが、 何が同じで、何が違うのかというのが、分かるようになるのかどうか。それが参考にな るのか、ならないのか、ちょっとよく分かりませんが、どういう建て付けになっている のかというのは、それを理解することによって、要はターゲットがはっきりできるのか どうかです。そういうことを目指して議論をしているのかどうかというのが、有益なの かどうかということをお聞きしたい。  それから、資料の4−1について、ちょっとお伺いしたいと思いますが、2ページ目 の下から3つ目のドイツです。これは8ページ目もそうですが、ドイツの合理的配慮の ところで、重度障害と書いてありますけれども、ドイツの規定では、重度障害について こういう整理があって、いわゆる重度以外のものはこういう規定にはなっていないのか どうかというところを確認したい。8ページ目も、一番上のポツで、合理的配慮として、 重度障害者というように、重度というように書いてありますけれども、それがそうなの かどうかということを教えていただきたい。  それから、3ページ目の3の(1)の2つ目の丸の、我が国においても担保措置や具体的 な基準というところで、この担保措置というものは何を意味するのかがよく分からない なと思います。  それから、4ページ目ですが、間接差別ですけれども、均等法上では例示として、体 力要件ですとか、全国転勤要件というように、例示として3つ入れたというふうに理解 をしておりますけれども、その時に、体力要件だと、身長だとか体力ということがよく 言われて、よく分かりませんでしたけれども、170センチ以上ということになると、結 果として女性を排除している。だから間接差別だという例示があって、分かり難かった んですけれども、分かる例示だったんですけれども、この障害のところにおける間接差 別について、今言った例示みたいなもので、どういうものが間接差別なのかというもの が、代表的な間接差別の例示があるのかどうか。あるのであれば、ちょっと教えていた だきたい。  それから、4ページ目の(4)、あらゆる雇用形態のところの最後のところですけれども、 あまり本筋の議論だとは思いませんけれども、派遣先事業主への適用関係ということが 書いてありますが、今のこの中身でいうと、募集・採用、配置、昇進、教育・訓練、定 年退職、解雇・雇い止めということになると、基本的には派遣元での雇用主としての責 任ということが一義的には問われているわけで、派遣先まで書いて、検討が必要で、検 討が必要ないとまでは言いませんけれども、先の先で、大分遠い感じがするのですが、 それはいかがか。  それから、11ページの5番の上の、「なお」書きの合理的配慮の段落の、我が国の納 付金制度に基づく助成金というところですが、ここの助成金という制度は、今のところ、 民間企業から集めているものを財源として、経済的負担の調整という形にしているので、 政府全体のところの現行の納付金制度の在り方ということになると、政府も含めた議論 をする必要があるのではないかと思いますが、その点はどういうことなのかということ です。  それから、この資料は論点整理ということなのでしょうけれども、いわゆる今の現行 制度、つまり割り当て制度とこの差別禁止の体系がどういう関係になるのかということ は、今日の提示されている資料の中に入っていませんので、次回以降、それについて教 えていただきたい。  それから、あと、紛争処理のスキームですけれども、個別のそういう処理も含めて、 様々な紛争処理のスキームというのは、ここ最近充実されて、出来てきています。その、 新たに紛争解決の手続きもしくはスキームというものをつくる必要があるのかどうか。 そういう点についても、企業内の相談窓口とか、そういう話とは別の紛争手続きについ ては、今、現状どうなっているのか。どういう課題があればどういうところに行って、 どういう解決の手段があるのかという点についても、次回以降整理をして、資料で教え ていただければと思います。以上です。 ○座長  たくさんあって、そのなかでご質問と今後の論点にして欲しいというのと両方混ざっ ていますので、論点にして欲しいという点については、少しそちらで整理をしていただ いて、質問のところを中心にお答えいただけますか。 ○高齢・障害者雇用対策部長  いっぱいおっしゃられたので、全部答え切れるかどうか分かりませんが、またあれば ご指摘いただきたいと思います。まず、全体のスケジュールにつきましては、今、輪島 委員がおっしゃったような意味での政府としての批准期限みたいなものは、現在のとこ ろ、政府部内では定められていないと思いますし、我々にもきていないということでご ざいます。早期に条件整備をしてという、抽象的な意味でのそういう考え方が示されて いるということだろうと思っております。ただ、障害者の問題は非常に重要であります ので、そういう長々と時間をかけるということではないのではないかと思っております。 そういう意味におきましても、私どもとしても、この場を設けさせていただいていると いうことでございますので、よろしくお願いしたいと思います。  確かに女子差別禁止条約、それから、男女雇用機会均等法の流れというのは、それな りに参考になるというか、1つの例であるということは確かだろうと思いますが、何と いっても、障害者の方の場合には、いろんな形での障害をもっておられる。ですから、 そこの部分を考えた上でのシステムでなければ、実質的に障害者の方々が働けるような 形にはなっていかない。従って、合理的配慮という要件も入っているわけでございます ので、男女差別の問題と全く同じようなことだけでいいのかどうかということについて は、ご議論いただかなければいけないだろうと考えております。従いまして、性差別の 場合は、男性からの差別だけではなくて、女性からの差別もあるということがあり得る ということにもなるわけですが、障害をもっている方との関係において、健常者からの 差別ということは、差別していると思ってしているかどうかは別として、いろんな意味 での合理的配慮を含めれば、そういう状態にあるということはありますが、障害者の側 からの差別という考え方があり得るかということについては、どうかなとは思います。 おそらく、優遇し過ぎた場合にそうなるというようなことをお考えなのかなという気も いたしますけれども、それはおそらく合理的配慮と過度の負担という辺の中で、どうい うふうに議論していくかということになっていくのかなと考えております。現実の問題 として、逆からの差別ということを今の時点で考えるような状況かなということにつき ましては、正直、どうかなという感じはしているところでございます。  それから、担保措置等につきましては、これは差別を禁止して、職場を広げていくと いうことを考えた場合には、当然、中身としてはどういうものが差別に当たるかという 考えを整理するというのが1つでありますが、それとともに、どういう担保措置をとっ ていくかということは、当然表裏一体のものとして考えていかなければなりません。基 準だけつくっても、実行されないのであれば意味がない。従って、どういう基準にする かということと、どういう担保措置にしていくかということは、これはどっちから検討 に入ってもいいんですが、最終的には総合的にご論議いただく必要があるだろうと思っ ています。  そういう中で、現行は司法裁判所は当然あるわけでございますが、労働紛争について いえば、労働審判制度もできているという一方の流れはあると思います。それから、労 使間の個別的な紛争については、個別紛争処理制度というのがあるということで、これ は分野を限らずということでありますから、何時でも使えるということになるわけです。 ただ、例えば、男女差別の関係でいけば、調停制度というのが別途定められていて、そ こで調停というシステムがあるというようなことになるわけであります。障害者の場合、 それと同じにするかどうかというのは、これからのご議論でありますが、制度だけ定め て、あとは裁判に任せるということで本当にいいかどうかということについては、救済 の迅速性でありますとか、あるいは、合理的配慮ということを考えた場合、裁判という 形が本当に馴染むかどうかということを含めて考えていく必要はあるのかなと、今のと ころは思っています。ただ、どういうものがあり得るかということを、そこまで厚生労 働省としてまだ考えているというわけではないということであります。何れにしても、 今、現行の労働関係でどういう救済制度があるかというようなことについては、次回以 降、資料でご提出していきたいと思っております。  それから、過度の負担との関係で、納付金制度そのものをどうするかという考え方は、 これは場合によっては、かなり大きな議論の対象にはなり得るというふうには認識して おります。例えば、フランスの場合、フランスの制度は後日またちゃんと説明をした上 でまたご意見をいただくということになろうと思いますが、雇用率もかなり高く設定し ておりますし、そういう中で、納付金の額も最低賃金の2,000時間分というような額に なっていて、かなり高めになっています。ただ、その高めの中で、日本でいうような調 整金というよりは、むしろいろんな合理的配慮に対する支援措置もそこからお金を出し ているという仕組みになっているわけでありますので、そこは、そういう納付金制度を 含めて、その合理的配慮、過度の負担というところを整理するのか、そうではなくて、 基本的には企業が本来やるべきだとしながら、よりコストがかかる分についてのみ助成 するのか。そこは全体を組み込む仕組みと、そうではなくて、一定の範囲内で整理しな がら、助成的によりコストがかかる部分だけやるか。そこは、制度の仕組み方は両方あ るとは思いますけれども、そこも過度の負担というものをどういうふうに整理していく かという中で議論が進んでいくのであろうと思います。それから、その際に、公的部門 をどうするかというのは、おっしゃる通り、1つの論点にはなると思っておりますが、 フランス型にするとすれば、現行とは相当違った形になりますので、すぐに対応できる かどうかというのは、なかなか現実的には検討が必要だろうと考えております。  それから、ドイツの例で、重度障害者というのは、これは日本でいう雇用率算定対象 となる障害者と同じかどうかというのは、なかなか調べ切れていないのですが、どうも それなりに仕事をする上で障害があるために、能力が制約されているということで、50 パーセントとか、いろんな基準があるらしいのですが、それと日本の雇用率制度の対象 としている障害者とパラレルかどうかよく分かりませんが、どうも、やや似ている。し かし、最初、障害者雇用対策課長の方からありましたように、雇用率制度で決めている 障害者と職業リハビリテーションの対象等でより広く採っている部分とかがあるという ことは申し上げた通りでございます。ドイツの場合は、どうも差別禁止を含めてそこを 対象としているということでありますので、ちょっと我が国の雇用率制度と職リハの対 象とは違う考え方を採っているということだろうと思います。  そこを含めて、日本の場合、雇用率制度ではそうなっていますけれども、職リハでは 広めに採っている中で、差別禁止の場合はどうするのかというのは、議論の対象になっ てくるのだろうと考えています。  最後に、雇用率制度と差別禁止をどう整理するかということがありまして、これは、 これまでは我が国はご承知のように、差別禁止型ではなくて、雇用率を元にしたいわゆ る割り当て制度の中で障害者雇用を進めてきたわけでありますが、国連条約でも差別禁 止の議論がある中では、これは当然国際的な状況の中で採っていかなければいけないと いう認識はしています。まだ、そういう中で、27条のh項の中で、積極的差別是正措置 や奨励措置等を含めて民間部門における障害者の雇用の促進をすることということにな っているわけでありますし、ドイツ、フランスの例を見ても、雇用率制度そのものを廃 止するという議論にはなっていないということでありますので、そこは、これも議論を 制約するつもりはありませんけれども、やはり雇用率制度で進めていく中で、差別もな くしていくというような整理ができないのかなと、今のところは考えているということ でございます。 ○座長  花井委員。どうぞ。 ○花井委員  質問があります。先ほど女子差別撤廃条約の話が出ましたが、条約を批准するには、 雇用における男女差別を禁止する法律がない国籍法、それから教育とか、大きく3点あ って、それぞれ法改正を行ってきた経過があったかとも思います。今回の権利条約にお いて、様々な分野に課題は広がっていると思うのですが、政府全体として何が問題で、 どういう検討がされているのか。雇用はここでやるということですが、それ以外にもた くさん検討しなければいけない分野があると思うのですが、政府全体としての検討の枠 組みはどうなっているのか。タイムスケジュールは先ほどのお答えですと、まだ決まっ ていないと伺いましたが、全体像というのがありましたら教えていただきたいと思いま す。 ○高齢・障害者雇用対策部長  政府全体でこの条約そのものにつきましては、総理の施政方針演説等の中でも、批准 に向けて進めていくということでありますので、方針そのものは決まっておりますが、 おそらく条約の批准ということになれば、外務省ということになります。それから、障 害者問題は幅広いので、障害者施策推進本部のある内閣府が、それなりに全体の調整を するんだろうというふうには認識しておりますが、現在のところ、政府全体でこの条約 の批准のためのあれをつくっているということにはなっていないと思います。ちょっと 補足があれば、お願いします。 ○企画課長  企画課長でございますが、たまたま前職が内閣府の方でこの関係に少し関わっていま したので、補足させていただきます。条約が締結される検討段階からそうですが、一応 政府一体となって取り組むということで、条約ですから外務省が取りまとめになりまし て、全省庁が関わる形で検討等を行っていました。それで、どういう場でということに つきましては、我が国の場合、障害者基本法がありまして、その中で、障害者施策を総 合的に進めていくために、総理がその本部長になっていますが、障害者対策の本部を設 置することになっております。その中に、関係省庁の課長クラス等を構成員としますテ ーマ別の作業グループみたいなものがございますが、その中の1つに、この権利条約の、 当初は検討でしたが、今は締結に向けての検討を行うチームがございまして、そこで定 期的に議論をしております。障害者団体等関係団体との意見交換の場を設けるようなこ とも含めて議論をしている、そういう状況でございます。  ただ、全体的に、それでは具体的なスケジュールはどうなのかということについて、 先ほど輪島委員からもご質問がございましたが、これについては、やはり全省庁にわた るため、検事条約というのは非常に包括的な事項にわたっておりまして、検討項目も多 いものですから、できるだけ早期の締結を目指すという方向性は先ほど部長の方からも ご説明させていただきましたけれども、国会等でもそういう方針が出ておりますが、具 体的なスケジュールをお答えするところまでは至っていません。それで、そのチームの 場を中心に、各省庁がそのテーマについて、一番関わりの深い省庁がまたその省庁の中 で検討するというような形で作業が進められている。そういう状況でございます。 ○花井委員  例えば、教育とか、もしかしたら民法とか、広い分野にわたる改正が必要かと思いま すが、各省庁はまだ全然着手していないというふうに内閣府では押さえているのでしょ うか。 ○企画課長  私自身は正直言いまして、対策の段階ぐらいまで携わっていましたので、その後の検 討状況について、今、つまびらかには把握しておりませんが、各省庁それぞれの進度で、 その検討の場に関わっているというのが今の状況だと思います。非常に範囲が広いもの ですから、どこまで検討が進んでいるかというのは、必ずしも私自身は今把握しており ませんので、それはむしろ外務省なり内閣府の方でそういうふうなお尋ねをしていただ ければと思います。私どももまた、照会の場をつくるということは可能かと思います。 ○座長  何れにしても、我々は全体の中のどの辺のポジションにいて、どんな進度の状況にあ るのかというのは知っておいた方がいいでしょうから、それはまた調べてご報告いただ くということにしていただきたいと思います。それでは、大久保委員、どうぞ。 ○大久保委員  育成会の大久保です。みなさんのご発言と関連してくるんですけれども、国としての 取り組みというか、その辺の全体の整合性というか、その辺がちょっとよく分からない 部分というのがあります。  それで、まず、先ほどから出ている1つの大きなテーマとして、差別の禁止と、そし て合理的配慮ということ、そして、その対象者が誰であるか。どういう障害者の方か、 障害者の範囲というか、あるいは内容。その辺のところは、様々な分野というふうに権 利条約には書いて有るわけです。そうすると、そこに整合性を持たせなければいけない。 そうすると、それはどこで議論するのか。あるいは、このまま、それぞれでいろいろな 議論はあるんでしょうけれども、そうすると、その法律によって、その対象者が変わっ ていったりするというのは、やはり権利条約に反することになる。ということになると、 それを横断的に押さえるような、例えば差別禁止法みたいなものを視野に入れているの かどうか。それによって、各分野での動き方も変わってくるでしょうけれども、平衡し てやってもいいんでしょうけれども、その辺はいかがなんでしょうか。 ○高齢・障害者雇用対策部長  おっしゃるように、政府全体でこの条約を批准していく中では、最終的にはそれなり に整合性のとれた形での対応というのが必要になってくると思っています。ただ、一方 で、障害者といった場合の定義を全部同じにする必要があるかどうかということになり ますと、やはり、雇用の分野、教育の分野、社会生活の分野、みんな同じ定義にするの が適当かどうか。可能かどうか。というようなことも場合によってはあるかも知れない。 ただ、それは全部を統一するというよりは、この条約の精神の中にある、要するに、障 害をもっていても、職場でも、教育でも、社会生活でも、差別されずに活動できるよう にするということを、どうやって全体として総合的にきちんと担保していくかという考 え方で、そういう意味での調整みたいなものは、おっしゃるように、それは必要だろう と思っています。ただ、まだ政府全体でも、非常に広範な条約でもあって、そこをきち んとどういう形で詰めていくかというシステムというか、プロセスというか、それがま だできているわけではないと思っています。  ただ、やはり雇用とか、教育とか、非常にいろいろな要素が含まれている部分につい ては、やや先行してでも、その分野の議論を深めていかないと、なかなか全体のスピー ドに追い着けない可能性もあるので、是非、そういう意味で、全体との調整その他はま た、他の動きを見ながら考えていきたいと思いますが、ここの雇用の分野というのは非 常に課題が多いと思っていますので、やや先行的かも知れませんが、議論を進めていた だければ非常に有り難いと考えております。 ○座長  どうぞ。 ○森委員  日身連の森でございますが、この権利条約そのものにまず解釈の問題がありまして、 今、先ほど企画課長からお話しがありました通り、日本においては各省庁がみんな集ま って、身体障害者の場合は、日本障害フォーラムというのがありまして、全国の障害者 団体が大体集まっております。そこにもう1つ、議員連盟というのがありまして、その 三者が中心になりまして、今この法律全体を見直しているといいますか、解釈等の問題 も含めて見ています。それで、私の知っている限りでは、はっきり言いまして、労働が トップであります。他のところはまだ進んでおりません。その時に、私の記憶では、確 か2月の10幾日でしたか、そういう打ち合わせをやって、その後はちょっと止まってい ます。それで、その話し合いをする場合においては、各省庁から全部出てきています。 おっしゃる通り教育も関係してきますし、福祉も関係してくるし、労働ももちろん出て くる。そして、条約の関係でございますので、今のところ、外務省が中心になってやっ ています。内閣府もちゃんと結んでくると思うのですけれども、我々では、各省庁とも 話し合う形を持とうという動きはあります。そういう面では、労働の今日の会合が正式 にも含めて、トップではないかなと私は思っておりますし、大分高く評価されてもいい のかなという気がしています。 ○座長  笹川委員、どうぞ。 ○笹川委員  先ほどの自営活動ですが、条約のfの部分ですけれども、部長さんの答えですと、そ れはむしろ経済産業省の分野ではないかというお話しがございました。これでいいんで すかね。私ども視覚障害者の多くが従事している鍼灸マッサージは、これは厚生労働省 の分野です。それを経済産業省の方が中心だというようなことでいいんですか。それか ら、重度障害者で自営業をやっている人はたくさんいます。それも全部経済産業省でい いんですか。その点、お尋ねします。 ○高齢・障害者雇用対策部長  先ほどの私の言い方がちょっと良くなかったのかも知れませんが、通常こういう雇用 ・労働とかを含めた、要するに生産活動みたいな部分の条約におきまして、自営活動の 機会、起業能力、協同組合の発展及び自己の事業の開始というのは、これは要するに、 中小企業庁がやっております、いわゆる創業支援のような部分を指して、この条約の部 分が通常想定して書かれているという趣旨でございます。  ただ、今、笹川委員のおっしゃったように、障害をもっている方々の特に鍼灸マッサ ージ等々、その事業の所管の役所はまた別途あるのは事実でございますので、厚生労働 省がそういった部分を考えないというつもりで言ったわけではありません。f項そのも のについては、幅広い分野におきましての、要するに障害をもっていても起業できるよ うに、創業できるようにいろんな支援をしていくという項目ですので、それは何という か、横のシステムそのものは一般的には経済産業省の所管だろうと考えているというこ とであります。ただ、福祉の分野等の中で、そういう支援をするということが必要かど うかということにつきましては、これは通常の場合の役所間の分担とは別に、障害とい うことに着目した中で、どういう対応が必要かということについては、これはまた役所 間の議論もあるでしょうし、この場でそもそも何が必要かというご議論もしていただく 中で検討していかなければいけない問題ではないかと考えています。 ○座長  よろしいですか。最終的にどうなるか分かりませんけれども、そこは少し広めに議論 しましょうということにはしていきたいと思います。他にございますでしょうか。では、 輪島さん、どうぞ。 ○輪島委員  まず、先ほど部長のおっしゃったところの納付金の関係ですけれども、違和感がある のは、納付金でお金を集めて、報奨金と調整金で経済的負担の調整をするというところ まではいいと思うのですけれども、納付金を財源に、助成金を出している。そこの部分 の助成金が納付金会計として適切なのかどうかということになると、違和感を感じるな ということを申し上げたいということです。  それから、フランスの制度ですが、4ページの(3)の、「また」の、労働医によって確 認された労働不適正に基づく取り扱いの際に、今のいわゆる障害の範囲についてももち ろん議論があるんでしょうけれども、いわゆる雇用の部分についての障害というものを どういうふうに見ているのかというと、それは、いわゆる手帳制度、いわゆる福祉の制 度をそのまま雇用の部分に持ってきて、重度の判定であるとか何とかということを見て いますけれども、もう少し合理的配慮等々のことを入れていくのであれば、いわゆる労 働医というのはどういうやり方なのかよく分かりませんが、いわゆる労働の分野のとこ ろで障害の判定というか、職務遂行能力の判定を一人ひとりすることによって、それに よって何が合理的配慮が求められるのか。というようなことを、一人ひとりむしろ出し ていく必要があって、ですから、いわゆる今の福祉の判定ではなくて、むしろ労働のと ころで、きちんと職務遂行能力との関係から、いわゆる合理的配慮が何なのかというこ とを見つけるために、そういうものをむしろ新しく創っていく。特に高齢・障害者雇用 支援機構のところの職業センターというようなところでは、むしろそこの判定というも のを、むしろ厳密にといか、これからきちんとやるという制度の方へ、この条約を批准 をして、合理的配慮というものが何なのかということの基準を明確にするというのであ れば、そういう方がむしろあるべき方向性なのではないかと思います。以上です。 ○座長  今おっしゃられたことは、今後の論点になり得ると思いますが、今の点で何かあれば お願いします。 ○高齢・障害者雇用対策部長  まさに今後ご議論いただくべきことだろうと思いますが、納付金の中にどこまで制度 を組み込むかというのがありまして、今は輪島さんが言われたように、基本的には納付 金、調整金、報奨金を基本にしながら、財源的に余裕がある部分については、そこで助 成もやっている。こういう仕組みで、助成の部分については、余裕があればという制度 なんです。フランスの場合には、余裕があればではなくて、合理的配慮にかかる費用も 含めて納付金の制度の中に仕組んであるという、全く別の意味でのというか、相当広い 意味での納付金制度です。ですから、それは議論としては、排除するつもりはありませ んが、相当大幅な納付金制度の変更になるという認識をしているということであります。  それから、障害をもっている方々が相当数おられる中で、全ての方を個別に判定する というやり方にするのか、やはり、それぞれの方によっては、手帳制度で表れない職場 でのいろいろな困難性というようなものを個別に判断する制度にするのか。いろいろな 考え方は、そこにもあるかと思いますし、まさにおっしゃいますように、合理的配慮が 法律上何らかの形で義務つけるという方向にになっていった場合、そこを含めた制度の 在り方というのも当然あり得るとは思っていますので、そこはまた今後ご議論いただき たいと考えております。 ○座長  どうぞ。 ○今井委員  輪島委員の方からお話しがございましたけれども、その点に関して、今後、何を重視 するかというところの議論の中で、元々ある条約の前文のeの認識を私自身は重要だと 思っております。それは何故かというと、実は、第三者機関がAさんをどうのこうのと 判定をする前に、実際の企業はAさん、Bさんを既に判定しているんですね。そして、 排除した、あるいは活用しないということの現実が起きているわけです。ですから、障 害というのは、本人がもっている特性が原因の1つではあるけれども、一方で、それを 排除してしまう、機会を与えないという雇用側や社会側にも原因があるという認識の下 で議論することが重要だと考えております。 ○座長  それでは、今のことはご意見として伺っておくということでよろしいですか。まだご 意見もあろうかと思いますが、時間も参りましたので、今日はこの辺で終了させていた だきたいと思います。本日の議事につきましては、議事録を公開しても差し支えないと いうふうに考えていますが、よろしゅうございますか。(「異議なし。」)ありがとう ございました。では、そういう方向でさせていただきます。  それでは、次回以降の日程について、事務局からお願いをいたします。 ○事務局  事務局でございます。次回以降でございますが、当面毎月1回程度のペースで開催す ることとしたいと考えておりまして、日程につきましては、また近日にご連絡させてい ただきたいと思っております。つきましては、お手元に日程調整票をお配りしておるか と思いますが、そこに日程のご都合をご記入いただいて、お帰りの際に残して置いてい ただくか、あるいは今すぐには難しいということもあるでしょうから、できれば明後日 ぐらいまでにファックスで、メールでも結構ですが、お返事いただければ有り難いなと 考えております。  次回につきましては、早くて連休明けの5月に開催したいと考えておりますけれども、 日程でありますとか、どういう議題にするかということについては、また改めてご連絡 をさせていただければと思っております。以上でございます。 ○座長  これで終了したいと思うのですが、この綺麗な色の地図があるんですけれども、全部 英語で書いてあるんですけれども、これはどういうものか説明していただけますか。 ○事務局  どのぐらいこの条約について批准あるいは署名なりをされたかの地図ではありますが、 確か、批准は、ちょっと古い情報かも知れませんが、今現在17カ国批准されておる。 そういう状況でございます。ちょっとこの地図は分かり難かったかも知れません。失礼 いたしました。 ○座長  それでは、今日はお忙しいところありがとうございました。これで研究会を終了した いと思います。ありがとうございました。 (照会先)   厚生労働省 職業安定局 高齢・障害者雇用対策部    障害者雇用対策課 雇用促進係    電話 03-5253-1111(内線5855)