第9回今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会
議事要旨

日時      :平成20年4月25日(金) 15:00〜17:00

場所      :経済産業省別館 1012号会議室(10階)

出席委員:佐藤座長、岩品委員、大津委員、久保委員、中窪委員、両角委員、脇坂委員(座長を除き五十音順)

議題:これまでの意見の整理及び個別課題についての検討

概要:

これまでの意見の整理について

(基本的な考え方について)

○ 基本的な考え方の部分は、2の前に、2,3,4のつながりが分かるような記述が必要なのではないか。育児休業だけでは不十分で、短時間勤務や男性の育児参加が必要なのだという論理の流れを示すなど、もう少し整理が必要。

○ 2の「仕事と育児の両立の見通しが立てられない」のは、育児休業からの復帰後に「残業続き」になってしまうことのみが原因ではない。育児というのは、事前に計画が立てられない部分も多く、そもそも育児休業からの復帰後も働き方を調整していけることが重要。

個別課題についての検討

1.短時間勤務等について

(1)短時間勤務制度及び所定外の免除の制度の取扱いについて

○ 「措置義務」とは、事業主が短時間勤務などの措置を実施する義務を負うもの。事業主が措置を行っていなかった場合には、労働者が不法行為等として損害賠償を請求することはできるが、措置自体を請求することはできない。一方、請求権の場合は、措置が行われていなくても、請求することによって短時間勤務等を利用することができる。

○ 形成権は一方的な意思表示のみで法的効果が生じるが、請求権は請求に対し応ずる義務を法的に課すかどうかによる。育児休業は形成権と言えるし、深夜業の免除については形成権に近いのではないか。

○ 所定外労働の免除は形成権でよいが、権利の内容を具体化できない短時間勤務については形成権になじまない。

○ 所定外労働の免除はもともとの労働時間に対する+αをなくすというものであることから、深夜業の免除と同じ取扱いでよい。一方、短時間勤務はもともとの労働契約の内容としての労働時間を減らすというものであり、両者は性格が異なるため、労使の合意など複雑な仕組みが必要になるのではないか。

○ スウェーデンでは勤務時間の短縮について、12.5%、25%、50%、75%の中から労働者が自由に選択して請求できるようになっている。イギリスでは柔軟労働申請権として、勤務時間の短縮の程度等に限定がなく、自由に申請できるが、事業主が一定の場合に拒否できるようになっている。拒否事由を広くとる場合には、権利を保障した意味が薄くなる。

○ 法律では1日2時間の短縮を可能とすることのみを規定して、具体的なことは労使協定に委ねるというやり方も考えられる。ただし、育児というのは、個人の事情が大きく介在するのに対して、労使協定のように多数決で一律に決めることになじむのかという問題がある。

(2)短時間勤務等を請求する場合の例外規定について

○ 短時間勤務等を請求権とした場合には、例外規定が必要だということについては異議はない。請求を拒める「合理的な理由」を広くしていけば、時間の自由を広く認めることも可能ではないか。

○ 「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、労働基準法第39条(年次有給休暇)に「事業の正常な運営を妨げる場合」という用例があり、これに関連する最高裁判決があるので、短時間勤務の例外規定に「事業の正常な運営を妨げる場合」を入れることとなれば、当該解釈の影響を受けることになるだろう。

○ 企業にとっては、「合理的な理由」よりも「事業の正常な運営を妨げる場合」という規定の方が厳しいものとなる。

(3)短時間勤務制度の対象となる労働者の範囲について

○ イギリスでは、短時間勤務の請求を事業主が拒否しているのは2〜3割程度にすぎない。実際には、請求の内容を使用者と話し合っているからであるが、こうした事例を見ていると、短時間勤務を請求権化しても機能するように思う。

○ イギリスの事例は、労働者が事業主に拒否されないような範囲内で請求しているということも考えられるのではないか。

○ イギリスでは、拒否する場合には使用者に説明責任があるので問題がないのではないか。

○ 1日当たりの労働時間の短縮しか議論されていないが、月何時間、あるいは週何時間といった制度を考えてもよい。

○ 週に3日間、8時間ずつ働くというケースもあるのではないか。

○ 時間給契約ならよいが、この3日間を休ませてくれ、と言われても管理が大変という問題もある。一方、5時間勤務で普段は15時半までの勤務でも、18時半まで働けるという場合は+αで働くということもある。

○ 朝から15時半までと、昼から18時半までとを中心に5つの短時間勤務のパターンを用意している企業の事例では、短時間勤務の請求を拒否したことはない。昼からのパターンは実際には使いにくいらしく、ほとんどの人が朝から15時半までというパターンを選択している。企業側が両立の観点から利用しやすいパターンを提示して、労働者にリーズナブルに選ばせる方が運用しやすいのではないか。一方、中小企業では、一人ひとりについて面接をして柔軟に決めるやり方もあるのではないか。

○ イギリスのように、「顧客需要への対応能力の悪影響」といったものまで「合理的な理由」として事業主が拒否できることとなれば、結局労働者が取得するのは難しくなるのではないか。企業側に説明責任を課すとしても、企業と労働者には情報の非対称性があり、実効性の確保にはつながらないのではないか。

○ 今やっている仕事で短時間勤務ができるか。今やっている仕事では無理だけど、別の部署ならできるといったことがある。とはいえ、法律上は今やっている仕事で短時間勤務ということをミニマムで規定するのではないか。

(4)両立支援制度の対象となる子の年齢について

○ 小学校就学まではもちろんだが、学童保育の現状を考えると、小学校低学年まで広げるべき。

○ 小学校に入る頃が一番手のかかる時期ではないか。春闘では、大手の企業は小学校3年生末までというのが大きな流れ。

○ 子どもが2歳までは短時間勤務が必要で、3〜5歳のときは所定外労働の免除が必要だが、短時間勤務までは不要という人もいる。また、小学校1年生のときは改めて短時間勤務というパターンがあってもよい。

○ 短時間勤務については、女性だけが短時間勤務を続けることにより、女性のキャリアを制限している面もある。

○ 短時間勤務の人が、残業をする場合なども考える必要があるのではないか。

○ ある時期までは短時間勤務、その後ある時期までは所定外労働の免除というような組合せで議論していく必要があるのではないか。

2.父親も母親も育児にかかわることができる働き方の実現

(1)産後8週間の父親の育児休業取得促進について

○ 別立ての休暇を設ける方が実効性が高いかもしれない。企業の事例としては、育児休業の場合は1年間に渡る休暇なので、代替要員を配置し、本人を人事部付に人事異動させ、職歴に残している。しかし、出産後8週間の別立ての出産休暇であれば人事異動させることもなく職歴に残ることもない。労働者本人が職歴に残ることを気にするので、別立て休暇のほうが取りやすいのではないか。

○ 8週間という短期であれば育児休業だとしても人事異動させなくなり、職歴のような問題はなくなるのではないか。また、別立ての休暇は、すでに育児休業があるのに新たに設ける理由が説明しづらいのではないか。

○ 別立ての出産休暇には、周知のメリット、わかりやすいというメリットがある。現行の育児休業の枠組みの中で対応する場合でも、産後8週間は「父親休暇」などとして名前だけ変えるなど分かりやすくすることはできる。

○ 別立ての休暇を設ける場合と現行の枠組みの中で対応する場合との違いは相対的なものにすぎない。別立ての休暇でも無給だとすればとりにくい。別立ての休暇は所得補償がつかない可能性があり、現行の育児休業の枠組みで対応する方が現実的。

(2)父母ともに育児休業を取得した場合におけるメリットについて

○ 男性の産後8週間の育児休業取得促進との関係では、その後の再度取得を認めるというのが前提。

○ 専業主婦で夫がとれば延びるような制度とするのか。

○ 図があると分かりやすい。両方が育児休業を取得した場合、男性か女性の一方が取得した場合といったものをビジュアルに示してほしい。

3.労働者の子育て・介護の状況に応じた両立支援制度のあり方

○ 1年6か月への延長要件として認められている「保育サービス」には、家庭的保育事業を含むのか。

○ 再度取得の要件を考えるに当たって、これまで使っていた保育サービスを受けられなくなったというケースは少ないだろうが、復帰して短時間勤務できた場合でも、子どもが心配、親自身の心身に不安があるので再度取得したいというケースは多いのではないか。他方、保育園に預けた後に保育サービスに不満がある場合まで保護する必要はない。

○ 保育所に預ける前にサービス内容を調べるのは難しい。希望しているところに入れるわけでもないし、我慢している人は多いと思う。

○ 待機児童の問題で、兄弟で同じところに預けられないというケースがあり、復帰したが、なかなかうまくいかないということもある。

○ 本人の精神的な負担が重いときまでを延長の理由とすることを検討すべき。


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