「第2回 有期契約労働者の雇用管理の改善に関する研究会」議事要旨

日  時 平成20年4月8日(火) 16:00〜

場  所 厚生労働省17階専用第20会議室

出 席 者

・参集者(50音順)
梅崎委員、奥田委員、佐藤委員、諏訪委員(座長)、原委員、藤川委員

・オブザーバー
黒澤労働基準局監督課監察官、玉田職業能力開発局総務課企画法令係長、佐々木雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課長補佐

・事務局
太田職業安定局長、荒井審議官(職業安定、援護担当)、三上職業安定局雇用開発課長、本間職業安定局雇用開発課長補佐、佐藤職業安定局雇用開発課長補佐

・ヒアリング(ヒアリング順)

[1]研究者
原委員、東京大学社会科学研究所 堀田助教、法政大学経営学部 佐野准教授

[2]使用者  3社

[3]労働組合 2組合

議  題

1 ヒアリング

[1]研究者からのヒアリング

[2]使用者からのヒアリング

[3]労働組合からのヒアリング

2 その他

主な発言

1 研究者からのヒアリング

(1)原委員

○ (「非正社員の活用と人材育成に関する研究会」の中間報告から、)非正社員の能力開発を促す要因について研究の一環として行った、企業に対するヒアリング調査の概要について説明する。

・非正社員として働く人材が、職業能力を向上させ、より良いキャリア形成を実現するための選択肢として、次の4つが考えられる。

[1]現在の企業で非正社員として働くなかで、より高度な仕事経験と教育訓練の機会を得る、

[2]現在の企業で正社員に転換し、より高度な仕事経験と訓練の機会を得る、

[3]他社に正社員として転職し、より高度な仕事経験と教育訓練の機会を得る、

[4]他社に非正社員として転職し、より高度な仕事経験と訓練の機会を得る。

・ヒアリング調査は、非正社員から正社員への登用の制度や慣行を企業が導入する理由について着目。非正社員の活用に積極的な企業9社を対象に調査を行った。

・調査を行った各社の事例

[1] B社(大手フードサービス業)

・同社の正社員と非正社員、それぞれのキャリアの到達点は異なっており、正社員は店長に到達してもらうことが目標となっており、その結果、正社員は店長が担当する仕事も徐々に経験していくなど、日々の担当する仕事の内容にも違いある。

・同社では2006年から大規模な正社員登用を実施するようになり、年2回必ず登用を実施。

・正社員転換制度を導入した理由は、非正社員にキャリアを発展させる機会を与えることが、同社の存続・発展に不可欠であるという判断をしたからである。

[2] G社(製造・小売業)

・同社における従業員構成についてみると、ほとんどが非正社員。B社と比較すると、正社員と非正社員で仕事の割り振りやキャリアの到達点について、ほとんど違いはみられないが、研修機会に違いがある。

・同社では、2007年4月から正社員転換制度を導入し、リージョナル社員(転居を伴わない社員)という雇用区分を創設。正社員登用試験にパスし非正社員から正社員になった人がリージョナル社員になる。

・正社員転換制度を導入した理由は、優秀な人材の流出を防ぎ、人材を確保すること、またスタッフの安心・モチベーションを高めることにあり、制度導入の効果はあったと認識。しかし、リージョナル社員になることを躊躇する者が予想したよりも多かった。また、責任を持つこと、教えることに自信がないため、正社員登用や昇給を望まない者もおり、そのような人でもモチベーションを持って仕事をし、店舗で活躍できるようにするためには、何が必要かを常に課題として考えている。

[3] H社(小売業)

・H社は、正社員転換制度を導入していない。同社の従業員のほとんどは非正社員。正社員と非正社員の日々の作業は同じであるが、正社員は職場全体のバランスを見られるような働き方ができるようになることが求められている一方で、非正社員は限定した仕事を担当している。

・正社員転換制度を導入しない理由は、1店舗当たりの取り扱い商品数が増加するなど他社との競争が激しくなっている中で、現在の正社員に対する資源投資を集中的に行い、正社員の能力を強化することがベストであるという経営判断があったからである。なお、同社は今後も非正社員を正社員へ登用し、活用していく予定はない。

・今回の調査で、正社員登用制度を導入した理由は、正社員の採用が難しいとする企業、今いる優秀な非正社員の活用・流出防止を意図する企業といった、人材確保を目的として導入している企業が多いことがわかった。なお、制度を導入しても、非正社員側の理由で制度が機能しない場合もあり、正社員登用制度の導入の有無、導入した理由、導入しない理由を類型化することは難しく、人事システムや正社員の活用の仕方といった個々の事情で規定される部分が大きい。

(2)堀田助教

○ 「非正規雇用者の雇用管理についての研究」の一環として、有期契約社員の活用と契約更新の実態を把握するために行ったアンケートのうち、特に契約更新についての実態を紹介。

・有期契約社員を活用する理由について、事業所側からみると人件費の削減、正社員を増やさずに要員を確保するといった理由が多い。なお、産業別にみると情報通信産業の場合は、それ以外に正社員とは異なる処遇をしたい、運輸産業の場合は時間帯や週、月の業務量の変動に対応するといった理由もみられる。一方、働く側からみると、性別でかなり違いが見られる。男性・女性ともに、1番目は労働日・労働時間が希望に合っていたからとなっているが、男性の2番目は正社員の就職口がなかったからを挙げており、女性の2番目は希望する仕事内容だったからを挙げている。元々正社員として働くことを希望する人が、男性の場合は過半数、女性は4分の1足らずといったことが、こうした背景にあると思われる。

・有期契約労働者として採用する際、事業所が労働者に対して行った説明と労働者の理解をみると、3割を超える事業所が事業所側に特別な事情がなければ自動的に更新するという説明を労働者に行ったと回答。また、4割近くの労働者が事業所から特別な事情がなければ自動的に更新すると説明されたと回答。なお、採用時点において、35.1%の事業所が契約期間に限らず勤め続けられる限り働いてほしいと回答。また、男性の有期契約労働者の約34%、女性の有期契約労働者の約46%が、勤め続けられる限り働き続けたいと回答し、さらに現時点においても、多くが勤め続けられる限り働きたいと回答。また、3分の1以上の事業所が有期契約社員に、また、実際の雇用契約期間にかかわらず、勤め続けられる限り働いてほしいと回答。

・雇用契約の更新の頻度は、約8割の事業所が1回目の契約更新時は希望者のうちほぼ全員が実際に契約を更新すると回答。また2回目の契約更新時についても、その割合は7割を超えている。採用後、最初の雇用契約期間の間において、セレクションは余り行われていない。全体的には、約3割が4〜5回と回答し、契約更新の回数が一番多くなっている。また10回以上も24.1%となっており、かなり繰り返し更新が行われている。特にフルタイムの正社員がいない事業所については、過半数が勤続5年以上、そのうち約2割が10年以上と回答しており、実際に契約更新が繰り返されているという実態がある。

・期間の定めのない正社員に移行しない事業所側の理由は、正社員と非正社員とでは仕事内容や勤務時間の違いを挙げている事業所が多くなっており、約6割の事業所が正社員と同じ仕事に従事している非正社員の割合は20%未満と回答。また、労働時間についても正社員より非正社員の方が短いという回答が多くなっている。

・今の会社において正社員登用を希望するか否かについて、約3割の事業所が本人が希望しないと回答しているが、実際に労働者の意識をみると、男性の場合は正社員登用を希望する者としない者が拮抗しているが、女性の場合は希望しない人が7割を超えている。なお、今の会社で3年後に正社員になっていたいという人は、男性でも約4分の1となっており、今の勤務先で正社員になりたいという希望を持たない人も少なくない。一方、約4割の男性が契約更新を繰り返すのであれば正社員に切り換えてほしいという希望を持っていることは注目に値する。

・有期契約を自動更新する事業所とそれ以外の事業所における雇用管理のあり方の違いについてみると、正社員の欠員を一時的に補う、1年の中での業務量の変動への対応という項目において、自動更新する事業所とそれ以外の事業所で差が大きく、自動更新しない事業所では、業務の量や正社員の量という面を有期契約社員を活用する理由として挙げている。なお、それ以外の雇用管理のあり方については、自動更新する事業所とそれ以外の事業所に違いはあまり見られなかった。

・正社員登用のチャンスは、勤続・正社員希望タイプに対しては有効に機能するが、それ以外の人たちにとってはあってもなくても意欲には関係がない。

(3)佐野准教授

○ 堀田助教と同じ調査結果を用いて説明

・160人以上の事業所を調査したところ、約7割の事業所が正社員登用の仕組みや制度や慣行があると回答。特に正社員登用の仕組みが普及しているのは、比較的規模が小さな事業所、サービス業、あるいは物流センターとなっている。また、正社員の採用力が高いと考えている事業所で、正社員登用制度を実施していると回答している所が多くなっており、正社員にとって魅力的な企業で正社員登用の仕組みをうまく活用しているのではないかと考えられる。
 また、非正社員の従事する仕事の難易度が高い場合、逆に非正社員が管理的業務や専門的業務に従事していない場合に、正社員登用の仕組みが普及している。また、正社員と非正社員の処遇の均衡を考慮している事業所や非正社員の能力開発に積極的な事業所において、正社員登用の仕組みが普及している。

・約8割の事業所が実際に過去3年において正社員登用を実施。制度や慣行を持っている事業所の多くが、正社員登用を近年実施。また、事業所規模が小さいほど、正社員あるいは非正社員の占める登用者の割合は高い傾向。

・正社員がうまく育っている事業所では、非正社員の中で実際に正社員に求める働き方を実行できるかどうか、ということが正社員登用の際の実質的な登用基準となっている。なお、登用後の初任格付については、多くの事業所が登用時の能力レベルや年齢、非正社員の時の成績や仕事ぶりなどを加味。

・正社員登用制度を運営する上での課題として、登用基準に達する非正社員が少ない、登用要因枠を広げることができない等といった事項を指摘する事業所が多い。そのような課題がある中で、その制度運用上の取組みの内容をみると、登用後の労働条件を事前に説明する、登用の基準を明確にする、登用されなかった人に再度機会を与えるといったノウハウを持っている企業が少なくない状況にある。

・非正社員に対する調査では、約4割の者が現在の勤務先に正社員登用の仕組みがあると回答。また、全体で約5割の者が、自分は希望すれば正社員に登用されるのではないかと回答。一方、働いている人すべてが正社員登用を望んでいるわけではないと回答。
 また、約3割の者が正社員登用の機会があることが、自分が意欲的に仕事に取り組む上で大事だと回答。フルタイム勤務の人では5割ぐらいの人が重要と回答し、現在の勤務先で正社員になりたいという者の約8割が正社員登用の機会があることが大事だと回答。

2 引き続き、使用者及び労働組合からヒアリングを行った。

3 その他

最後に、

(1)短時間労働者均衡待遇推進等助成金と中小企業雇用安定化奨励金の相違

(2)有期契約労働者数の再試算

について説明があった。

照会先
厚生労働省職業安定局雇用開発課雇用管理係
TEL03(5253)1111(内線5805)


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