08/03/19 第31回社会保障審議会年金数理部会議事録 社会保障審議会 年金数理部会(第31回)議事録 日  時:平成20年3月19日(水)9:58〜11:04 場  所:はあといん乃木坂 出席委員:山崎部会長、都村部会長代理、牛丸委員、熊沢委員、栗林委員、近藤委員 議  事 1.財政状況に関し公的年金各制度から報告を求める事項について 2.財政状況の分析においてさらに検討が必要な事項について ○村山首席年金数理官  それでは、委員の皆様全員がおそろいになりましたので、ただいまより第31回「社 会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。 審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。 座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。 資料1は「財政状況に関し公的年金各制度から報告を求める事項について」でござい ます。 資料2は「財政状況の分析においてさらに検討が必要な事項について」でございます。  このほか、毎年事務局で作成しております参考資料といたしまして、平成18年度の 「公的年金制度一覧」をお配りしております。 配付資料は以上でございます。 次に本日の委員の出欠状況について御報告いたします。 本日は林委員、宮武委員が御都合により御欠席とのことでございます。 御出席いただきました委員の方が、3分の1を超えておりますので、会議は成立して おりますことを御報告申し上げます。 それでは、以後の進行につきましては、山崎部会長にお願いいたします。よろしくお 願いいたします。 ○山崎部会長  委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただきまして、ありがとうございます。この たび部会長代理をお願いしておりました都村委員につきましては、年金数理部会委員の 任期満了に伴う再任の手続がなされました。私といたしましては、引き続き都村委員に 部会長代理を是非お願いしたいと思っておりますが、都村委員、いかがでしょうか。 ○都村委員  どうぞよろしくお願いいたします。 ○山崎部会長  では、よろしくお願いいたします。 それでは、議事に入りたいと思います。 本日の議題は「1.財政状況に関し公的年金各制度から報告を求める事項について」。  「2.財政状況の分析においてさらに検討が必要な事項について」であります。 それでは、最初の議題「財政状況に関する公的年金各制度から報告を求める事項につ いて」の審議に入りたいと思います。 近く公的年金各制度の平成18年度の財政状況について報告を求めることになります が、それに先立ち報告していただく様式の変更事項につきまして、事務局から説明をし ていただき、審議することにいたします。 それでは、事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○村山首席年金数理官  それでは、資料1の「財政状況に関し公的年金各制度から報告を求める事項について」 御説明いたします。座って説明させていただきます。 年金数理部会では、各年度、公的年金各制度の財政状況について、制度所管省から報 告を求めております。平成18年度の財政状況についても、報告をお願いし、報告のため の資料を準備いただく必要がございます。その様式につきまして、以下の2点について 変更してはどうかということでございます。 まず、資料の1ページ、1点目で「年齢構成の影響を除いた賃金上昇率(実績)につ いて」でございます。 これまで賞与を除きました標準報酬月額ベースについての報告をお願いしてきました が、これに加えて賞与も含めた総報酬ベースについても、併せて報告をお願いするもの でございます。 御案内のとおり、平成15年度から総報酬制となっておりますので、伸び率としては、 平成16年度分以降が対象になります。本資料は2枚目以降がお願いしております様式の 様式例となっております。様式例と書いてございませんが、様式の例ということでござ います。 様式例のうち今回の変更点に該当するところを抜粋したものでございまして、各ペー ジの下の真ん中にありますページは、様式例におけるページでございます。 今回の第1点目に関係いたしますのは、3枚目の下に21ページと書いてございますが、 様式例の21ページから最後まででございまして、21ページをごらんいただきますと、 上段と下段がございまして、上段の「実績」の部分の右のところです。「賃金上昇率」 というところがございますが、ここに今回の追加報告分を薄青で示させていただいてお ります。 なお、この「年齢構成の影響を除いた」ということでございますが、これにつきまし ては、これまでも求めてきていたものでございます。 単純に、平成18年度の一人当たり標準報酬を平成17年度の一人当たり標準報酬で割 った賃金上昇率という計算にいたしますと、それぞれの年度の一人当たりの標準報酬と 言いますのは、その年度の被保険者の年齢構成によりますので、この場合、この賃金上 昇率には、賃金の上昇以外に年齢構成が高齢化する影響も含みます。そのため、従来か ら当年度と前年度の被保険者の年齢構成をそろえて計算したものを「年齢構成の影響を 除いた賃金上昇率」ということで標準報酬月額ベースで報告していただいておりまして、 今回は総報酬ベースにつきましても、これまでと同じように年齢構成の影響を除いた数 値で報告していただこうというものでございます。 これが1点目でございます。 続きまして、1ページ目に戻って、2点目は「積立金の運用状況における資産構成に ついて」でございます。 これについても様式例をごらんいただきます。2枚目「16ページ」と書いてある様式 例でございます。 「積立金の運用状況について」の「資産構成」ということで、これは現在報告をお願 いしている様式でございますが、内容は、ごらんいただきますように、年金給付の原資 であります積立金がどのような形で確保されているかを示しているものでございます。 従来からの様式でございますが、変更点を説明するため、まずこの様式の見方を含め て内容を御説明させていただきます。 この様式の左端の「区分」をごらんいただきますと、名前が少し右から始まっている 項目がありまして、更に名前の1文字目が少し右になっているところもあります。名前 の1文字目が同じ位置から始まるのが同じレベルのもので、それより文字が下がって右 から始まっているのは、その項目の内訳ということでございます。 少し具体的に御説明いたしますと、「資産構成」は、まず一番左から名前の始まって いる1行目の「流動資産」、4行目の「固定資産」、一番下の行の「流動負債等」とい うことで、この3つに大きくくくられる区分のものから構成されています。 3行目の 「固定資産」については、その後に内訳がありまして、すぐ下の行の預託金、それから すぐ下の今回赤枠で囲わせてもらっていますが、「有価証券等」、それから、下から3 行目の「不動産」、下から2行目の「貸付金」ということで、固定資産は4つの内訳に 分けられています。 赤枠で囲みました「有価証券等」について、その内訳につきましては、すぐ下の行の 「金銭信託」「有価証券」、下から4行目の同じ位置から名前の始まる「生命保険等」 の3つに分けられています。 赤枠で囲みました「有価証券等」から2行下の「有価証券」というのは、この「有価 証券等」の内訳ですが、この「有価証券」につきましては、その内訳はすぐ下の行の「国 内債券」「外国債券」から「有価証券信託」まで6つあり、これが「有価証券」の内訳 になっております。  赤枠の「有価証券等」の内訳ですぐ下にある「金銭信託」につきましては、「有価証 券」と同レベルでございますが、「金銭信託」の場合には、国内債券や株式などが内訳 としてある可能性がありますが、現在の様式例ではそこまでの報告とはなっておりませ ん。 また、同じレベルにあります「生命保険等」につきましても、「金銭信託」と同様な 事情にあるということでございます。 そこで、今回の変更点ですが、従来に引き続き、年金積立金の資産構成、確保状況の 報告をお願いすることに変わりはないところでございますが、赤枠で囲みました「有価 証券等」に含まれる資産につきましては、新たに「国内債券」「外国債券」「国内株式」 「外国株式」ということで、「有価証券等」全体を区分し直し、集計し直した状況を一 番下の欄にあります、「特記事項」の欄に記載していただくというものでございます。 赤字で書いてあります部分が今回の変更でございまして、黒字で書いております「時 価評価の方法を記載してください」というのは現在既に報告をしていただいている内容 でございます。 資料1につきまして、以上でございます。 ○山崎部会長  ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対する御質問や御意見があり ましたら、お願いいたします。 熊沢委員、どうぞ。 ○熊沢委員  年齢構成の影響を除いた賃金上昇率というのは、そういうもので見ていく必要がある と思いますが、平成18年度分から報告をしていただくという案になっていますが、平成 17年度分まではこれを報告していないというのは、何か理由があったということでしょ うか。 ○村山首席年金数理官  この様式例にははいっておりませんが、様式例全体の中には別途標準報酬月額の総額 と賞与の総額という、総額に関する報告はございます。一方、この様式の3枚目の21 ページにありますように、平成15年度に総報酬制になり、伸び率としましても、16、1 7、18年度と通常比較に用いられる3年度分そろったということで、この欄において、 平成18年度からきちんと報告いただくことをお願いしたいということでございます。 ○山崎部会長  よろしいですか。牛丸委員、どうぞ。 ○牛丸委員  2番目の「有価証券等」の区分ですが、従来ですと、もう一つ下の「有価証券」の中 の株の数だけが示されていたのを、今回は、とにかく「有価証券等」全体を下の区分別 に分けるということになり、その結果、従来「金銭信託」に入っていたであろう株式な ども含んだ数になる。まず技術的なことを一つお伺いしますが、金銭信託で持っている 場合に、例えば、一括みたいなものだとすると、株式がきれいに分けられるのかどうか。 恐らく分けられるからこういう分類法が行われると思うのですが。 もう一つは、分けられたとして、実際、下の「有価証券」の株式というのは、株で持 っていますから、例えばそれを別なものに変えようと思うと、簡単に別の資産に変更す ることが可能かと思いますが、金銭信託の場合にはそういうことが難しいのではないの でしょうか。要するに、同じ株ということで分類されても、金銭信託の中に入っている 株と「有価証券」の株というのは、位置づけが違うということはないかということを2 番目にお伺いしたいのです。いかがですか。 ○村山首席年金数理官  私の承知している限りでお答え申し上げますが、金銭信託の中には、指定金銭信託と いうことで、信託をお願いする際に、ここにございます国内債券などという区分での運 用をお願いするという形の運用があるということですので、この内訳については、お願 いする側の方で承知しており、統計上のこういう形で集計することは可能と理解してお ります。 もう一つ、今おっしゃった現金化の問題等につきましては、確認してみないと確かな ことは申し上げられませんが、恐らく信託関係の契約の中でいろいろなやり方があるの ではないかと思っております。 ○山崎部会長 よろしいでしょうか。この辺詳しい委員の方いらっしゃいますか。いかがですか。近 藤委員いかがですか。 ○近藤委員 よくわかりません。 ○山崎部会長 そのほかございますでしょうか。 細かいことですが、様式の21ページ、注の番号が打ってありますが、対応するものが ないのがあったり、注5が最初に出てきたりするんですが、いかがでしょうか。 ○村山首席年金数理官 趣旨を確認してもし必要があれば整理させていただきます。 ○山崎部会長  では、よろしくお願いします。 それでは、特にないようでしたら、次の議題「財政状況の分析においてさらに検討が 必要な事項について」の議事に移ります。 それでは、事務局から説明をお願いいたします。 ○村山首席年金数理官 それでは、資料2の「財政状況の分析においてさらに検討が必要な事項について」御 説明いたします。 ここで取り上げております「さらに検討が必要な事項」と申しますのは、離婚時の年 金分割及び第3号被保険者期間に係る年金分割に関連して検討すべき事項ということで ございます。 離婚時の年金分割につきましては、平成19年4月から施行されておりまして、注にご ざいますように、平成19年度以降の各制度の財政状況についての報告に関係いたします ので、今から検討すべき事項と理解して取り上げているということでございます。 検討すべき事項を御説明する都合上、制度の仕組みから御説明させていただきます。 この資料2の7ページ、後ろから2枚目でございます。 平成19年4月から施行されております離婚時の年金分割でございます。離婚時の年金 分割は、被用者年金、つまり厚生年金、共済年金、それぞれにあるものでございますが、 厚生年金の場合について説明しております。 離婚の当事者であります夫と妻の婚姻期間中であって、厚生年金の被保険者期間であ った標準報酬を、離婚時に限って夫婦の間で分割することを認めて、夫と妻、それぞれ の厚生年金の基礎となる標準報酬を改定するというものでございます。 離婚の対象は平成19年4月以降の離婚が対象ということでございますが、分割の対象 とする期間には、その平成19年4月より前の期間も含まれるということでございます。 「イメージ図」にありますように、夫の標準報酬の方が妻より多くて、色がかかって おりますように、妻が夫から分割された分を受け取るということといたします。 このとき、夫婦の婚姻期間中、婚姻から離婚という名前がありますが、この期間の分 について、夫と妻の分を合計したうち、妻が自分の分に更に夫からもらった分も加えた 報酬、これが夫と妻の合計のうちのどのくらいの割合になっているかというのをこの文 章の中では分割割合と言っておりますが、これは夫と妻の合計の5割までということで ございます。 この分割割合を夫婦の協議で合意した上で、厚生年金の分割の請求を行 うというものでございます。 この文章にありますが、合意がまとまらない場合には一方の求めによりまして、裁判 所が分割割合を定めるということもできるということでございます。 「イメージ図」にありますように、夫は妻に標準報酬を渡しておりますので、その分 だけ少なくなった標準報酬に改定されますので、この標準報酬を基に算定されました老 齢厚生年金を受け取るということになります。 一方、夫から分割対象分を受け取った妻につきましては、妻の分は夫からもらった標 準報酬も含めた標準報酬に改定されまして、この標準報酬を基に算定された老齢厚生年 金を御自分の受給開始年齢から受給いたします。夫と妻の年齢差がある場合もございま すが、御自分の受給開始年齢から受給するということでございます。 この年金は夫が死亡しても影響されないで、終身年金ですので、御自分が亡くなるま で支給されるということになります。 妻は夫から標準報酬を受け取ったということによりまして、老齢厚生年金の報酬比例 部分、この年金額は増えますが、夫婦それぞれの基礎年金というのは、この分割には関 係がございませんので、分割前後でも変わりません。夫の老齢基礎年金が分割されると いうことはないということでございます。 また、後ほど議論になりますが、妻がこの婚姻期間中、厚生年金の被保険者になった ことはない場合でも、夫から分割により標準報酬を受け取るということでございますの で、新たに年金額の基礎となる厚生年金の被保険者期間を持つということになります。 このようにもともと被保険者でなかった期間に対して被保険者期間になるものを、こ の図の中にありますが、「離婚時みなし被保険者期間」と言います。この離婚時みなし 被保険者期間というのは、厚生年金、すなわち報酬比例部分の年金額の算定の期間とし て、計算には用いますが、妻の年金受給資格期間等には含めないという整理でございま す。 極端な場合ということで、仮想的な例でございますが、仮に妻が若いころに離婚した といたしまして、夫から標準報酬を受け取った妻が離婚後何らかの事情で保険料の未納 期間が非常に多くなり、みなし被保険者期間を含まない御自分の公的年金の加入期間だ けでは、期間が足らなくて、残念ながら老齢基礎年金がもらえないと、そういう場合が あったとします。老齢基礎年金が発生して老齢厚生年金がもらえるわけでございます。 老齢基礎年金の受給資格が老齢厚生年金の支給資格になりますので、この場合、老齢基 礎年金がもらえませんので、老齢厚生年金の受給資格が発生しません。夫から標準報酬 の分割は受けたものの、それを基とした老齢厚生年金ももらえない。御自分の公的年金 加入期間だけで老齢基礎年金がもらえないと、老齢厚生年金ももらえないことになると いうことでございます。 関連しますので、次の8ページ、平成20年の4月から施行されます「第3号被保険者 期間についての厚生年金の分割」について御説明いたします。 第3号被保険者期間についての厚生年金の分割、これも同じく被用者年金共通ですが、 厚生年金で説明いたします。この分割は国民年金の第3号被保険者である被扶養配偶者 がおります厚生年金の被保険者、これは国民年金では第2号と言っているものですが、 この厚生年金被保険者を、名前だけですが、「特定被保険者」という名前を付けており まして、この特定被保険者の負担した保険料は夫婦で共同して負担したものだという基 本的な認識に立つと、法律上書かれているものでございます。 平成20年4月以降の被扶養配偶者の第3号被保険者期間については、共同負担とした 基本的認識が実際に形になって出てくるのは、イメージ図にありますように、離婚や婚 姻の取消しをした場合などでございまして、このときには、特定被保険者の標準報酬を 2分の1に分割します。そして特定被保険者の年金額の算定の基礎となる、この20年4 月以降の標準報酬は2分の1に改定されます。受け取った被扶養配偶者は、標準報酬の 2分の1を受け取りますが、そのことで新たにみなし被保険者期間が発生します。配偶 者は第3号でございますので、厚生年金には入っておりませんから、新たに厚生年金の 被保険者期間を持つことになります。 この場合のみなし被保険者期間は、先ほど7ページで御説明させてもらったものと少 し違いますので、名前が違いまして、イメージ図の中にありますが、「被扶養配偶者み なし被保険者期間」といいます。同じみなし被保険者期間ですが、名前が少し異なって おります。 この被扶養配偶者が仮に妻ということにいたしまして、この第3号被保険者期間の分 割がずっと続いていきますと、将来は妻について、婚姻期間すべてが20年4月以降にな るようなときが来るわけですが、そのときに婚姻期間がすべて20年4月以降の第3号被 保険者ということでございますと、婚姻期間全部について夫の標準報酬の2分の1を受 け取って年金になるということになります。しかし、例えばこの4月からの施行ですが、 来年離婚したという場合には、20年4月から離婚期間までの分は2分の1ということで すが、婚姻期間には20年4月より前の第3号被保険者期間も、それから第1号の期間、 あるいは御自身の厚生年金の期間もあるわけでございます。 恐らく7ページで御説明した離婚時の厚生年金の分割の請求を行うこともあると思い ます。その場合は20年4月以降の第3号被保険者期間について、夫の標準報酬の2分の 1が妻の標準報酬となるということがまず最初に行われて、つまり離婚時に夫の2分の 1の分が妻に渡った状態が最初の状態になって、その状態を前提として7ページの離婚 時の年金分割という制度が適用になるという関係になっております。 以上の仕組みの理解の下で、2枚目をごらんいただきたいと思います。(別紙)と書 いてある1ページでございます。 今説明させていただきました年金分割を、検討事項として取り上げている理由は、こ の1ページの真ん中辺りにございますが、(1)として、それまで当該制度の被保険者でな かった方が、年金分割を受けることで新たに受給権者になるということです。 それから、2番目といたしまして、(2)として年金分割される側の年金額が減少すると いうことと、年金分割を受ける側の年金額が増加するということで、いずれの年金額に も変化が起こるということです。この2つのことによりまして、受給権者数の統計、あ るいは平均年金額の統計と、実際に報告もいただいているものでございますが、その受 給権者に関する統計値に影響があるということが今回取り上げている理由でございます。 どのようなことなのか、少し詳しく見たのが次の2ページでございます。 具体的にどのような分割パターンがあるかというのを見たものでございます。  上段は離婚分割のパターン、下段は3号分割のパターンでございます。上の方の離婚 分割の主なパターンをまずごらんいただきます。ここは仮定として夫から妻へ年金分割 される場合ということで見ております。 図のパターンAの夫のところを見ていただきますと、夫の四角の中のうち婚姻から離 婚と書いてある横軸方は時間の経過です。縦の高さは標準報酬の高さということでごら んいただきたいと思います。 まずパターンAですが、左が離婚前、右が離婚後です。左は離婚前の状態ですが、婚 姻期間中は夫ともに被保険者、ここでは厚生年金と思っていただければと思います。共 に厚生年金の被保険者であった場合でございます。 この場合、夫と妻を足してみますと夫の方が高いので、夫の標準報酬のうちの赤と緑 の部分が、右を見ていただきますと、妻に分割されます。 その結果ですが、夫婦ともに被保険者ですので、もともと妻は年齢が来れば受給権者 になりますので、その離婚分割によりまして標準報酬は増えますが、受給権者というこ とでは同じですので、受給権者数は変わらないということです。 それから、夫と妻の括弧書きに、夫の名前の後に第1号改定者、妻の後に第2号改定 者という名前が付いておりますが、これは法律上の用語で、第1号改定者が標準報酬を 渡す側、第2号改定者が分割を受け取る側ということでございます。 似たような名前で国民年金の第1号、第2号というのがありますが、それとは何の関 係もなく、この離婚分割の中で使われている言葉でございます。 パターンBは、妻は被保険者であった期間を持ちますが、被保険者でない期間もある という状況でございます。この場合も夫の標準報酬のうちの赤と緑の部分が妻に分割さ れるということでございますが、実は夫の標準報酬で妻に分割する分のうちの赤い部分 にあたる妻の期間は、厚生年金の被保険者でなかった期間ということでございます。緑 の部分は妻も被保険者であった期間ということでございます。夫の分割後の姿はパター ンAと同じでございますが、妻は新たに赤の部分に離婚時みなし被保険者期間というこ とで、厚生年金の被保険者期間が発生する。年金額の基になる期間が発生するというこ とで、年金額の基となる妻の被保険者期間は離婚前は短かったのですが、離婚分割後は 長くなるということになっております。 夫の分割される標準報酬につきまして、赤と緑に色分けしてあるのは、パターンBを 見ていただくためでございます。 赤、緑の区分は直接関係ないですが、パターンA、Cにおきましても、比較のために 同じように分割される部分を赤と緑に分けて見ていただくという形にしてございます。 パターンCは、妻は被保険者であった期間を持たない場合でございます。妻はこの婚 姻期間中に厚生年金に入ったことがないということですが、夫の標準報酬の分割を受け た結果、妻は婚姻期間中はすべて被保険者期間、ただし、みなし被被保険者期間ですが、 もちます。離婚前の状態ですと、妻は老齢厚生年金の受給権者になることはないですが、 少なくともこの婚姻期間に関してはないですが、分割を受けますと、老齢厚生年金の受 給権者になります。 その下、3号分割ですが、パターンB、パターンCについても、上の離婚分割と同じ でございまして、赤い部分の第3号被保険者期間が名前は少し違いますが、「被扶養配 偶者みなし被保険者期間」ということになります。 パターンBでは、先ほどの上のパターンBと同じように、年金額の基となる被保険者 期間が長くなり、パターンCでは新たに受給権者として発生することになります。 以上の状況を文章に整理したのがすぐ前のページの下段でございまして、「受給権者 数、平均年金額への影響」ということで書いております。特に夫が厚生年金や共済年金 の被保険者期間が長い老齢退職年金の受給権者であった場合は、計算の基礎となる標準 報酬を分割して減りますので、年金額は低くなる傾向があるということでございます。 3ページは、先ほどから「みなし被保険者期間」ということで、離婚時の年金分割に より新たに発生する「離婚時みなし被保険者期間」と、3号分割により分割を受ける側 に新たに発生する被保険者期間であります「被扶養配偶者みなし被保険者期間」を整理 したものでございます。 このみなし被保険者期間に共通する扱いとして下にございますように、まず1番目は、 厚生年金、共済年金の報酬比例部分の年金額が算定の基礎となりますが、基礎年金額に は影響しない。 2番目に、年金の受給資格期間、あるいは加給年金を支給するかしないかというとき の判定の被保険者期間にも用いないということになっているということでございます。 4ページは、今回の年金分割により受給権者に関する統計値に影響を与えるというこ とで、特に第1の点と言いますのは、年金分割を行った場合に、老齢・退年相当の定義、 あるいは判定の基準に影響を与えるということでございます。 老齢・退年相当と言いますのは、報告でもいただいておりますし、年金統計で用いら れているもので、年金総額全体から見ますと、各制度とも約7割を占めています。その 定義は厚生年金なら厚生年金だけの被保険者期間、共済年金ならその共済年金の被保険 者期間だけで老齢基礎年金の資格期間を満たしている年金ということであり、新法と書 いてあるのは、昭和60年改正後の基礎年金導入時以降の法律を新法と言っておりますが、 その新法の老齢厚生年金、退職共済年金を言います。 それから、旧法というのは60年改正前の法律ですが、その旧法の老齢年金と退職年金 を言うということでございます。 60年改正前につきましては、この老齢・退年相当という年金は、老齢年金、退職年金 といい、通算老齢年金、通算退職年金とは名前が違っており、また法律上の根拠も異な っておりましたので、統計上の定義としては迷うことはなかったということでございま すが、新法ではいずれも老齢厚生年金、あるいは退職共済年金ということで法律上の根 拠も1本になっているということで、従来からの統計の連続性も考慮し、ここにござい ますような形で老齢・退年相当という名前の下で統計をとってきているということでご ざいます。要点は、その制度の被保険者期間だけで判定するということでございます。 以上のことから、年金分割を行った場合の新法の老齢厚生年金、それから退職共済年 金の老齢・退年相当の判定に、いわゆるみなし被保険者期間を被保険者期間に算入する かどうかということが論点になります。そのことによりまして、老齢・退年相当の定義 が変わるということでございます。 4ページの下に「論点」ということで書かれておりますが、1つの考え方は、老齢・ 退年相当と言うのは、その制度の期間だけで老齢基礎年金の受給資格期間を満たしてい る年金と考えまして、受給資格期間の判定という観点から、みなし保険者期間は老齢・ 退年相当と判定する被保険者期間には含めないという考え方です。 5ページですが、一方で受給する年金額の基礎となる期間の長さで判定する考え方が あります、実際に年金額の基礎となっておりますので、そういう観点を重視しまして、 報酬比例部分の年金額の算定に使えるということで、同様に老齢・退年相当の判定の際 には、みなし被保険者期間を被保険者期間に含めて判定するという考え方もあります。 いずれにしましても、年金額等については、老齢・退年相当と一旦仕分けられました ら、老齢・退年相当の年金額を算出する場合には、判定された受給権者、標準報酬の分 割を受けた受給権者について、実際に受給する年金額全体を対象とし、また、平均加入 期間を算出する場合も、みなし被保険者期間ということで、年金額の算定基礎にはなっ ておりますので、それも含めた平均加入期間として計算してはどうかという考え方があ るということでございます。 この判定のところを少し具体的に見ていただくために、2ページに戻っていただきた いと思います。 2ページの離婚分割の主なパターンのうちのBをごらんいただきたいと思います。 このパターンBの妻が今回の判定の考え方のいい例を示しているのではないかという ことで御説明させていただきます。 パターンBの妻は、離婚分割前は例えば実際に自分の被保険者期間が10年しかなかっ たとします。離婚分割後に夫の期間は、例えば長くて、みなし被保険者期間を含めると、 この赤い部分を含めると、例えば30年になるといたします。 判定に関して2つ考え方がありますが、1つの考え方であります年金の受給資格期間 の判定という観点から見ますと、妻は離婚分割前の自分の加入期間で判定する。この場 合10年という前提ですので、この妻は離婚分割により右のような状態で年金を受給いた しますが、統計の上では老齢・退年相当ではないということで含めないという考え方に なります。 一方、受給する年金額の基礎となる期間の長さで判定するというもう一つの観点から 見ますと、妻は離婚分割後は、先ほど申しましたみなし被保険者期間を含めると年金額 の基礎となる被保険者期間は30年になるということで、十分基礎年金をもらえる期間で ございますので、これは老齢・退年相当に振り分けられるということになります。これ が端的な2つの考え方を示した例ということになろうかと思います。 以上、更に検討が必要な事項ということで説明いたしました。 1ページ目に戻っていただきますと、事務局としての今後の対応案でございますが、 内容が今回申し上げましたようなことで、統計に関わって、かつ実際に統計を取る技術 的な面等ございますので、この事項につきましては、技術作業委員会において技術的、 専門的観点から、引き続き検討していただき、19年度以降の財政状況についての報告を お願いすることに結び付けていってはどうかと考えているということでございます。 私からの説明は以上でございます。 ○山崎部会長  随分丁寧な説明ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、御質問、御 意見等ございますか。 ○都村委員  詳しい御説明本当にありがとうございました。2つの点についてお尋ねしたいと思い ます。 第1点は、みなし被保険者期間の扱いはリスクによって異なっているように思うので す。今御説明があったのは老齢・退年相当だけですが、例えば死亡の場合には、通常は 厚生年金とか共済年金の被保険者になったことのない人が死亡しても遺族厚生年金とか 遺族共済年金というのは支給されることはないわけです。ですが、みなし被保険者期間 を有する妻が死亡した場合、その遺族に対して遺族厚生年金とか遺族共済年金が支給さ れることになっているのではないかと思うのです。 それから、障害の場合には、みなし被保険者期間を持っている妻がその期間中に障害 を負った場合、障害厚生年金とか障害共済年金を支給されないことになっていると思う のです。このようにリスクによって取り扱いが違うという考え方の背景はどうなってい るのかというのを第1点としてお尋ねしたいと思います。 ○村山首席年金数理官  事実関係だけ私が承知していることを申しますと、前半の遺族のところはおっしゃっ ているとおりで、障害もたしかそのようなことだったと思います。 ○塚本年金課長  まず遺族年金についてでございますが、先ほど村山首席年金数理官から説明がありま したように、この期間というのはあくまでも本来の被保険者期間になっているというこ とではございません。いわゆる短期要件の遺族年金については、これを被保険者期間中 の死亡ということではないので、支給対象にはならない。ただし、いわゆる長期要件の 遺族年金と呼ばれる、すなわち老齢厚生年金の受給権を有する方が亡くなられた場合に ついては、その老齢厚生年金の4分の3が遺族厚生年金として出るという仕組みになっ てございまして、その額計算においては反映されるということでございます。 障害年金についても被保険者期間ではないということで、その間に障害が発生しても 障害厚生年金につながるということではないという頭の整理だと思っております。 ○都村委員  もう一つですが、平均年金額算出への影響ですが、通常、在職老齢年金は分割後の年 金と給与の合算額で決まります。その在職老齢年金受給中に年金分割が行われた場合に、 先ほど御説明があった第1号改定者、例えば夫ですね、夫は従前の年金額が減少するた めに、支給停止額が少なくなる可能性があると思います。他方、第2号改定者、例えば 妻は従前よりも年金額が増えるために、年金が支給停止、または減額される可能性があ ります。したがって、在職老齢年金について、離婚分割がなかった場合と比べ平均年金 額に影響してくるのではないでしょうか。 もう一点は、例えば夫婦の年齢差が非常に大きくて、受給開始年齢の差が大きい場合、 例えば第1号改定者例えば夫は、第2号改定者妻の年金支給が始まるまで長い間、例え ば60歳の夫と50歳の妻という場合、そして妻は婚姻期間中すべて3号被保険者の場合 には、妻が65歳になるまでの15年間、分割された2分の1の年金は受給できません。 したがって、離婚するということは分割を受けたものが老齢に達するまで、夫に支給さ れる年金額は、もともとの受給額よりも減少するということを意味します。長い間掛け てきた保険料に対応した第1号改定者の年金受給額は、15年の間、分割前の額と比べて かなり減少することになります。 そういうことが起こるようになっていると見てよいのでしょうか。保険料と年金額の 対応という社会保険の観点から見て、年金が減額されてしまうということについてどの ようにとらえればよいのでしょうか。 ○村山首席年金数理官  恐縮ですが、後半の方は夫が年齢が10歳上ということで、夫の方が先に年金をもら えるということです。 ○都村委員  60歳から受給できますね。 ○村山首席年金数理官  その間は、要は自分自身の受給開始年齢に到達していないので、年金は実際65歳ま では出ませんね。65歳になったら分割されたものを用いてもらえるということです。 ○都村委員  妻は65歳から受給できますが、夫の方は15年の間、本来の受給額の半分しか受給で きないですね。年齢差が大きいカップルも結構いらっしゃると思います。専業主婦であ って3号被保険者であったという人の場合は、第2号改定者は65歳から分割した年金と 国民年金を受給します。そうすると、50歳と60歳のカップルが離婚した場合には、夫 は15年間、2分の1に減った自分の標準報酬に相当する年金を続けなければならないと いうことが起こるわけですね。 ○塚本年金課長  まずお尋ねの前段ですが、在職老齢のところに影響を与えるというのはそのとおりだ と思っております。 ただ、標準賞与の分が1年遅れでかかってくるという要素がございますが、離婚して 働かなければいけなくなって、それが1年遅れでかかってくるためにというところはな いように特例は置いているということではございますが、基本的には影響はあるという ことだと思っております。 それから、後段でございますが、基本的にはおっしゃるとおりだと思います。ただ、 夫は2分の1なら2分の1ということで合意すれば、3号分割であれば強制分割ですが 2分の1という年金で、言わば自分の支給開始年齢から死亡時までずっとその額で受給 される。 片や年齢差が大きい場合でございますが、奥さんの方、2号改定者の方については、 そこからまた10年遅れてもらい始めますが、もし2号改定者が女性であれば平均寿命が 長いですから、10年遅れてもらい始めても例えば、15年なり遅れて受給が終わるという 構造になるということでございます。 ○山崎部会長  よろしいでしょうか。ほかにございますでしょうか。 ○近藤委員  資料を作っていただきたいのですが、7ページ「離婚時の厚生年金の分割の効果」の ところで、3つ目の○に「原則として」とあります。原則でない場合の具体例をこれか らの議論の参考にしたいと思いますので是非お願いします。 ○塚本年金課長  それはまた整理させていただきたいと思いますが、例えば年金が300月みなしがかか って出ているようなケースで、期間が追加されると逆に年金額が下がってしまうような ケースがあったりして、そういう場合にはまた特例を置いて額計算に逆に入れないよう な特例も置いていたりしていますので、一度そこは整理してお示ししたいと思います。 ○山崎部会長  牛丸委員、どうぞ。 ○牛丸委員  確認させていただきたいのですが、今後の対応ということで、技術作業委員会で更に 検討する、先ほどの2つの考え方があります。それぞれどちらの考え方を取るかによっ て違ってきます。そのどちらの考え方がいいか。こういうことをこの委員会にお任せす るということでしょうか。 同時に、どちらの考え方を取ったとしましても、結局最終的に数字を出していくとき に、3号分割、離婚、どのくらいの割合で出てくるか。そこである比率というか、確率 というか、それを入れていかなければいけないと思うのですが、そういうことについて も併せて作業委員会で検討していただくということでしょうか。 ○村山首席年金数理官  先ほどおっしゃった2つの考え方のいずれかにつきましては、統計の実態、その他、 考慮しなければいけない要因を踏まえて技術作業委員会で検討していただくというのは そのとおりでございます。 最終的にこの委員会の検討結果につきましては、数理部会に何らかの形で報告するこ とになっております。 統計にどのくらい出てくるかという検討も必要と思いますが、離婚分割が19年の4月 から施行されておりますので、参考のために一部統計がございますので申し上げますと、 離婚が毎月2万件程度くらい発生しているということでございますが、4月以降からで すと、社会保険庁が統計を公表していて、実際に社会保険庁に離婚分割の請求があるの が800〜900件程度、仮に1,000件くらいとすると、2万件程度の離婚に対して、1,000 件程度の請求があるというのが現在の状況でございます。 ○山崎部会長  ほかにございますでしょうか。 ○熊沢委員  今の説明ですと、毎月2万件の離婚があって、離婚分割の請求が1,000件くらいとの こと。大体5%ですね。そうすると、離婚している人の95%は離婚分割はしていないと いう理解でいいんですか。 ○村山首席年金数理官  時効が2年ということでございますので、これからどうなるかわかりませんが、今申 し上げました離婚そのものの統計は従来から詳しい統計がございますが、社会保険庁の 統計については、まだ出始めたばかりでございます。また詳しいところが明らかになっ てきて、今おっしゃったような事情、どういう状況なのかわかる部分がございましたら、 この委員会の検討の中で活用していただければと思います。現在のところ、社会保険庁 の統計の詳細は承知しておりません。 ○山崎部会長  ほかにございますでしょうか。 それでは、この件につきましては、技術作業委員会の方で御検討をお願いいたします。  以上で予定しておりました議事はすべて終了いたしましたが、事務局の方から何かご ざいますでしょうか。 ○村山首席年金数理官  次回の年金数理部会の開催につきましては、また日程等調整して御連絡させていただ きます。よろしくお願いいたします。 ○山崎部会長  最近の状況につきまして、年金課長の方から何か皆さんに報告することがあればお話 しください。 例えば一元化法案が去年通常国会に出ているんですが、その後の状況等につきまして、 お願いいたします。 ○塚本年金課長  御承知のように、昨年の4月に被用者年金制度の一元化法案というものを閣議決定し、 昨年の通常国会に提出をさせていただいております。その後、国会の方では当法案につ いては審議入りもまだという状況でございまして、昨年の通常国会から臨時国会に継続。 更に昨年の臨時国会から今年の通常国会に継続ということになってございます。 私どもとしては、できるだけ早期の審議、成立を目指したいと思っておりますが、総 理あるいは大臣からも、国会においてその旨の御発言もいただいているというような状 況でございます。 ○山崎部会長  そのほかございますでしょうか。 それでは、本日はこれまでにさせていただきたいと思います。どうもありがとうござ いました。 −了− (照会先)  厚生労働省年金局総務課首席年金数理官室  (代)03-5253-1111(内線3382) 1