08/02/29 第2回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会議事録 第2回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 1 日時 平成20年2月29日(金)10:00〜 2 場所 厚生労働省職業安定局第1会議室 3 出席者     委員 阿部委員、有田委員、鎌田委員、山川委員   事務局 太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、       鈴木需給調整事業課長、田中派遣・請負労働企画官、       松原需給調整事業課長補佐、松浦需給調整事業課長補佐、       竹野需給調整事業課長補佐、飯郷需給調整事業課需給調整係長 4 議題  (1)派遣労働の雇用政策における位置付けについて       (2)その他 ○鎌田座長   定刻になりましたので、ただいまから第2回今後の労働者派遣制度の在り方に関する 研究会を開催します。橋本委員からは今日は欠席されるというご連絡がありました。阿 部委員は、間もなくおいでになるかと思います。  本日は公開で、派遣労働の雇用政策における位置付けについてご議論いただきますが、 まず第1回の研究会で指摘のあった事項等について、事務局で資料を用意していますの で、説明をお願いします。   ○竹野補佐   おはようございます。まず、資料の全体を確認します。資料1−1は労働者派遣制度 の現状等に関する資料(追加)という横置きの紙、資料1−2は日雇派遣について主に 指摘されている事項、資料1−3はいわゆる専ら派遣について、資料1−4は労働者派 遣と在籍型出向との差異、資料1−5は労働者派遣に関する最近の裁判例、資料2は派 遣労働の雇用政策における位置付けについて(論点)、資料3は座長提出資料、参考1 は研究会で議論していただく論点、参考2は研究会のスケジュールをお付けしています。  それから資料とは別ですが、委員の皆様方のお手元に、緊急違法派遣一掃プランの実 施についてということで、厚生労働省が昨日発表した資料を用意しました。これは前回 の研究会でもご紹介しましたが、労働力需給制度部会での報告において、日雇派遣等に ついて省令・指針の整備を図るとされたことを受けまして、本年1月28日に労働政策審 議会から答申を受けて策定を進めていた関係の省令・指針が昨日公布されたということ です。厚生労働省としては、省令・指針の公布を期に違法派遣の一掃をするための取組 を強化するということで、緊急違法派遣一掃プランを実施することにしたということで、 参考までに資料として置いています。資料はよろしいでしょうか。  資料1−1から資料1−5までは、前回の研究会において資料について追加の指摘が ありましたところを補足するものです。資料1−1の1頁です。前回の研究会で、派遣 労働者の収入が経年的に見て変化をしているかという指摘がありまして、これに関連を しまして、1、2頁は派遣料金の推移、3、4頁は派遣労働者の賃金の推移という形で お付けしています。1頁は、一般労働者派遣事業の派遣料金の推移です。グラフの真ん 中が全体、グラフの上の四角いプロットのところがソフトウエア開発、下の三角のプロ ットが事務用機器操作ということで、これら2つは26業務の中で代表的なものをお示し しています。真ん中の全体で見ますと、緩やかに低下をしている傾向が見て取れると思 います。  2頁は、特定労働者派遣事業の派遣料金の推移です。それぞれのグラフについては、 1頁と同じようなものです。これで見ると、ソフトウエア開発については若干の上昇傾 向が見られるということだろうと思います。3頁は、一般労働者派遣事業の派遣労働者 の賃金の推移です。これは平成16年度からデータを取っていますので、そこから付けて います。資料の解説は、1頁と同様です。全体的に緩やかに低下をしていることがあろ うかと思います。4頁は、特定労働者派遣事業の派遣労働者の賃金の推移ですが、これ も大体同様の傾向ということが見て取れると思います。  5頁は、派遣労働者として登録される直前の状況等です。これは、前回の研究会で、 派遣制度が需給調整機能という観点からどういう役割を果たしているかというご指摘が ありまして、これに関連するものとして付けています。1つ目は派遣労働者として登録 される直前の状況ということで、登録型の派遣労働者になる前にどういったプロフィー ルであったかということで付けていますが、正社員が43.4%で最も多い。次いでパート 労働者、契約社員という順になっています。これらの方々が、どういう理由で離職をさ れたかというのを2の表に付けています。自己都合、会社都合がありますが、自己都合 が78.1%で、自己都合で離職をされた方が多くなっています。  6頁は、派遣で働いた通算期間別派遣労働者の構成比等です。これは、派遣でどれぐ らい長くやっていらっしゃるか。複数の派遣先に行っていらっしゃる方については、そ れを通算して計算したものということで調査をしていますが、1番目の図で派遣で働い た通算期間は1年未満とする割合が14.0%、14.6%で、足しあげますと28になりまして、 ここのカテゴリーがいちばん多い。長くなるにつれて、若干減少してくる傾向にありま す。2番目は、これまで働いてきた派遣先の数別の派遣労働者の構成比ですが、これも 1カ所とする割合が最も多くなっています。  7頁は、主な指導内容です。前回、法違反についてどのような類型が多いかとのご指 摘をいただきました。平成18年の文書指導件数で、その実績をお示ししています。派遣 元の事業主については、派遣契約の内容等が45.5%で最も多いです。続いて就業条件の 明示、派遣元管理台帳といった違反の指摘が多くなっています。派遣先については、こ れも同様に派遣契約の内容等が最も多くて62.7%、次いで派遣先管理台帳、期間制限抵 触日の通知といったような違反条項で指摘をしているものが多くなっています。8頁は、 同じく指導内容で、今度は請負事業主、発注者のものです。請負事業主については、こ れも同様に派遣契約の内容等にかかる指摘が最も多くて34.5%、次いで派遣と請負の区 分基準が多くなっています。発注者は、派遣と請負の区分基準が最も多くて70.9%、派 遣契約の内容等が40.6%になっています。  続いて9頁は、都道府県労働局における違法事案にかかる情報入手の経路の例です。 派遣の指導監督については、都道府県労働局において計画的に取り組んでいますが、そ れ以外にも種々情報入手の経路がありまして、例として挙げています。上から申します と派遣労働者、派遣元事業主及び派遣先からの苦情相談、派遣労働者からの申告、労働 基準部、労働基準監督署等の関係機関からの情報提供の3つが大きな件数を占めていま して、さらに報道機関の報道や労働者、事業主以外からの情報提供、指導監督の際に把 握をしたものといったところがあります。件数は、上から順に概数としては多くなって います。  10頁は、海外の労働者派遣の制度についてです。これは第1回の研究会でも資料とし て付けたものについて、前回ご指摘をいただいた点を踏まえて一部項目を追加したり整 理をしています。10頁の図で言いますと、いちばん下の監督・ペナルティーの欄を、各 国にこのような制度が設けられているということで付けています。  11頁は、海外の労働者派遣の実態についてです。ここで追加をしているのは、いちば ん上の派遣労働者数の欄で、それぞれの国における割合をお示ししています。ドイツの 数字は、派遣労働者数、男女比について最近のデータがありましたので、これで更新を しています。  資料の12頁は、海外の有期労働契約法制、解雇法制、パートタイム労働法制で、これ も関連資料に当たりまして把握をしているところを付けています。各国の規制において は、このような規制が設けられています。以上が資料1−1の説明です。  資料1−2に移ります。日雇派遣について主に指摘されている事項で、前回、日雇派 遣についてもう少し実態がわからないかというご指摘がありまして、調査結果は第1回 の資料に付けていますが、それ以外に部会での議論に用いたものとしてこれを付けてい ます。表は4つに分けていまして、いちばん左側は日雇派遣について主に指摘されてい る事項ということで、他法令の規定で労働基準法等に関してどういう規定があるか、派 遣法の規定がどうなっているか、派遣法上の論点としてはどういったものがあるかとい うことで整理をしています。指摘されている事項を簡単に紹介しますが、まずは雇用が 不安定であるという指摘が非常にありました。具体的には雇用契約期間が短い、仕事が あるかどうかが前日まで分からない、当日キャンセルがあるといったことです。賃金等 については、労働者の賃金水準が低い、給与からの不透明な天引きがある、移動時間、 待機時間中の賃金不払い、物品購入の強制、遅刻等のペナルティーによる賃金カットと いった問題点が指摘されています。安全衛生等については、安全衛生措置が適切に講じ られない、派遣元事業主による雇入時教育が未実施、労災が起きやすいといったことが 指摘をされています。それから社会保険等に適正に加入されていない、労働条件の明示 が適正になされない、書面等による明示がなされない、教育訓練の機会が確保されてい ないといったような指摘があります。こういった指摘を踏まえまして、労働力需給制度 部会でご議論いただきまして、また先ほどご紹介しました審議会の答申を受けまして、 日雇派遣指針ということで整備をしました。指針の内容は雇用契約、派遣契約のできる 限りの長期化、就業条件の明示の徹底、派遣料金などの情報公開、安全衛生教育の徹底 といったことが盛り込まれていまして、これによって対応を図っていきたいと考えてい ます。以上が資料1−2です。  資料1−3は、いわゆる専ら派遣についてです。前回、座長から、論点として付け加 えてはどうかというご指摘をいただきまして、制度的な説明をするものです。いわゆる 専ら派遣とは、専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われる 労働者派遣事業をいうということで、判断基準が下にありますが、定款等の事業目的が 専ら派遣となっている。派遣先の確保のための努力が客観的に認められない、他の事業 所からの労働者派遣の依頼を正当な理由なく、すべて拒否しているといった場合は、専 ら派遣として規制されることになります。具体的にどのような規制があるかということ で、次の頁に図を付けています。いわゆる専ら派遣に関する法令上の規定は3点ありま す。1点目は許可基準として、一般労働者派遣事業の許可の申請が専ら派遣を目的とし て行われるものでないと認めるときでなければ、許可をしてはならないとされています。 2点目は許可の条件として、専ら派遣として行うものではないことをその許可の際の条 件として付しています。これに違反すれば、許可の取消しがあります。3点目は勧告の 規定です。専ら派遣を行っていて必要があると認めるときは、労働者派遣事業の目的、 内容の変更を勧告できるとされています。以上3点の規定です。この趣旨は、労働者派 遣事業は労働力需給調整システムの1つとして認められたものであるということで、要 するに需給調整の機能を持たない形態は不適当であるということで規制されています。 以上が資料1−3です。  資料1−4は、労働者派遣と在籍型出向との差異です。前回の指摘で、労働者供給と の関係で出向の定義があればということで、ご指摘をいただいたので付けています。在 籍型出向についてはペーパーの真ん中の右側の図ですが、出向元と労働者、出向先と労 働者それぞれに雇用関係がある形態で、これは労働者供給に該当するもので、業として 行われる場合は職業安定法第44条により禁止されるものです。一方で、いちばん下の○ の在籍型出向のうち4つの類型については、社会通念上、業として行われていると判断 し得るものが少ないというものですが、1点目は労働者を離職させるのではなく、関係 会社において雇用機会を確保する場合、2点目は経営指導・技術指導の場合、3点目は 職業能力開発の一環として行う場合、4点目は企業グループ内の人事交流の一環として 行う場合は一般的には業には当たらないのではないかということで整理をしています。  資料1−5は、労働者派遣に関する最近の裁判例です。民事裁判の事例も整理してい ただきたいという指摘がありまして、現段階で情報収集できているものについて整理を していますので、今後は改訂なり追加なりを適宜やっていきたいと思っています。2頁 以降にその概要と判決の要旨を付けています。詳細の説明は省略しますが、大体どのよ うなものがあるかということで、派遣先・受入先、派遣元との雇用関係に関する裁判例 ということで、マイスタッフ(一橋出版)事件や伊予銀行・いよぎんスタッフサービス 事件があります。登録型の派遣労働者が有期契約で更新をされて、その後に雇止めをさ れたような事案で、派遣先、派遣元それぞれでの雇用関係の成立の有無といったような 点が論点になっていますが、これは否定をされているといった事案です。また、雇用契 約申込義務に関する裁判例ということで、松下プラズマディスプレイ(パスコ)事件を 挙げています。これは、雇用関係に関する裁判例にも属する論点がありますが、労働者 派遣法の雇用契約申込義務についての解釈が示されているものですので、そういった観 点から紹介しています。資料の8頁の下線部です。労働者派遣法上の雇用契約の申込み の義務について、申込みの義務を課してはいるが、直ちに雇用契約の申込みがあったの と同じ効果までを生じさせるものとは考えられない。履行しない場合に、労働者派遣法 に定める指導、助言、是正、勧告、公表などの措置が加えられることはあっても、直接 雇用契約の申込みが実際にない以上、直接の雇用契約が締結されると解することはでき ないといったようなことが判示されているということです。説明は以上です。   ○鎌田座長   ありがとうございました。ただいまの説明について、何かご質問等がありましたら自 由にご発言をお願いします。   ○有田委員   資料1−1の5頁は、登録型派遣労働者についてのみということで、登録される直前 の状況等についての資料をお出しいただいていますが、これは登録型一般ということで あって、紹介予定派遣はこれに含められているのでしょうか。   ○竹野補佐   特に区分をされているものではないです。    ○有田委員   ということは、その部分も含んでいる資料であるという理解でよろしいですか。   ○竹野補佐   登録型派遣労働者ということで登録をされている方ですので、実際にそこで紹介予定 派遣をされている方がいらっしゃる可能性はあります。   ○鎌田座長   いまの表の読み方ですが、正社員、パート労働者、契約社員、学生、主婦、自営業者、 ニートとなっていますが、重複している可能性はないですか。つまり、どういうふうに アンケートを取っているかにもよると思いますが、例えば主婦の方がパート労働者だと 思えばそうなるし、でも主婦ならば主婦になる。それは、アンケートを受けた方が判断 しているので、数字の上で別にそこで重複ということはないわけですね。    ○田中企画官   選択肢を並べまして○を付けていただくことになっていますので、ご本人が○を付け られたほうとなります。複数で回答してくださいということにはなっていません。   ○有田委員   もう1つわかればですが、いまのところの下の離職理由について、自己都合というも のはこれ以上は聞いていないということですか。   ○竹野補佐   アンケート調査で選択肢はこのようになっていますので、これ以上項目は具体的にわ からない状況です。   ○鎌田座長    何でも結構です。    ○松浦補佐   先ほどの紹介予定派遣がどのぐらい混じっているかという話ですが、平成17年に調査 した中で、登録型を含む派遣の中で紹介予定派遣をされたことがある人は3%です。残 りはすべてないということですから、おおむねない方だとお考えいただければいいと思 います。登録型派遣労働者の場合は、4%の方が紹介予定派遣の経験があると答えてい ますから、そこの部分は少し重なっている可能性があります。   ○鎌田座長   専ら派遣の定義の説明で確認をします。定義は資料にあるとおりだと思いますが、特 定の者に提供するという意味の特定の者というのは、1社の場合もあるし複数の場合で も専ら派遣に該当するということでよろしいですか。   ○竹野補佐   業務要領上、複数であっても特定されている場合には、専ら派遣に該当すると明示し ていますので、1社だけではなくて複数の場合もあり得る解釈になっています。   ○山川委員   10頁の外国の状況に関して、イギリスで今回追加された監督・ペナルティーのところ で、場合によって雇用審判所が事業禁止命令が出せるということで、有田先生がお詳し いところかと思いますが、事業禁止命令を出せるのは何らかの法に違反したからではな かろうかと思いますが、前提としてイギリスの場合は許可届出等が不要ということが原 則であることからしますと、禁止命令が出せる根拠の法違反というのは、労働者派遣法 のようなものに違反したということではなくて、別個の労働条件規制に違反した場合と いう理解でよろしいですか。   ○有田委員   少し前に書いたことがあります。イギリスにはアクトという法律以外に、日本で言う と施行規則のようなものに当たると思いますが、レギュレーションがありまして、その レギュレーションには行為基準としてさまざまな逸脱行動防止のためのルールが設定さ れています。それに違反した場合には、ペナルティーの対象になるという定め方になっ ていますので、ドイツやフランス、日本の派遣法等で直接に法律上かかっている規制の 項目には上がってきていないようなレギュレーション上のルールがいろいろありまして、 それに違反した場合には監督機関が捜査をして証拠を得て、大臣の名をもって雇用審判 所に申立をして命令を出してもらうということです。   ○山川委員   そうしますと、アクトではなくてもレギュレーションということで、たしか労働時間 もいまレギュレーションでしたっけ。   ○有田委員   労働時間のレギュレーションのようにEU法を国内法化にするときにもレギュレーシ ョンという形態を取るのですが、それは日本の法律と同じで、ここで言うレギュレーシ ョンはどちらかというと日本の行政命令規則に近いようなものですが、たしかこれも議 会による承認を得ないといけないというような日本とは違うところがあるので、かなり 法律に近いもの、一体のものです。ただ、一応委任立法ですから法律の本体で委任を受 けた範囲で作成するというものだと思います。   ○山川委員   わかりました。ありがとうございました。法律の本体というのは、どこに本体がある のですか。   ○有田委員   上の1973年のものです。    ○山川委員   まだ残っているわけですね。    ○有田委員   エンプロイメントエージェンシーアクトという。    ○山川委員   ありがとうございました。    ○鎌田座長   そのほかに何かありませんか。なければ、今日の本題に移ります。この資料等は前回 の資料も含めまして、その折にいろいろご不明な点があればご質問していただいて結構 だと思います。ただいまご説明いただいた資料については、第1回研究会の説明資料と 併せて今後各論について議論する際に適宜参照するかと思いますので、何かお気付きの 点がありましたらその都度ご発言いただきたいと思います。  続いて、本日の議題に入ります。本日は、派遣労働の雇用政策における位置付けにつ いてをご議論いただきます。本日は、労働者派遣制度の趣旨、在り方といった基本的な 考え方の部分を中心にご議論いただきたいと考えています。なお、議論の過程で必要が あれば、各個別の制度についても言及していただいて結構ですが、各個別の制度につい ては次回以降の研究会でも別途時間を取りたいと考えていますので、本日は基本的な考 え方の部分を中心にお願いします。  まず、本日の議題について予め事務局と相談して論点を整理していますので、事務局 から説明をお願いします。   ○竹野補佐   資料2、派遣労働の雇用政策における位置付けについてということで、本日ご議論い ただく論点という形でお示しをしています。まず箱で囲った前提という部分は、労働者 派遣事業制度の趣旨、位置付けについて記載しています。前回の研究会でも説明しまし たが、現在の労働者派遣事業制度は、職業安定法に基づき労働者供給事業を禁止する中 で、制定当時、労働力需給の迅速かつ的確な結合を図り、労働者の保護と雇用の安定を 図るためには労働者派遣事業を労働力需給調整システムの一つとして制度化し、必要な ルールを定める必要がある。制度化に当たっては、我が国における雇用慣行との調和に 留意し、常用雇用の代替を促すこととならないよう配慮する必要があるといったように されたことを踏まえまして、業務の専門性、雇用管理の特殊性等を考慮して、その対象 業務を限定として制度化されたというものです。これが平成11年の改正時において、常 用雇用の代替のおそれが少ないと考えられる臨時的・一時的な労働力の需給調整に関す る対策として位置付けられたことが、労働者派遣制度の現在の位置付けであろうかと思 います。こうした位置付けについてどのように見直していくべきかということで、論点 として4点、切り口を付けています。  1点目は、派遣労働はその実績、派遣労働者、派遣元事業主、派遣先の数がそれぞれ 増加していることなどを踏まえ、雇用政策の中でどのように評価しうるか。また、この 評価を踏まえ、労働者派遣制度の位置付けを見直すべきかということです。具体的には 登録型派遣がどうだったかとか、適用対象業務のネガティブリスト化がどうだったかと いったようなことが論点としてあるのではないかと考えています。  2点目は、労働者派遣制度における事業規制と労働者保護の在り方について、これま でどのように考えられてきたか、また、今後どのように考えるべきかです。労働者派遣 法については、事業規制という点と、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進を図る ことを目的として掲げていまして、この両面がありますが、バランスがどうなっている かという点です。これについては座長からも資料をいただいていますので、後ほど説明 があると思います。  3点目は、今後の雇用政策の基本的な方向性として、長期雇用を基本とすることの重 要性等が示されているが、これを踏まえ、労働者派遣制度の位置付けを見直すべきかと いうことです。その際に考慮すべき点として付けていますが、常用雇用代替防止の趣旨 や臨時的・一時的な労働力需給調整に関する対策としての位置付けについてどう考える か。有期契約労働者、パート労働者等との関係についてはどうか。3つ目、4つ目は、 例えば常用雇用型の派遣労働者等について派遣労働者として安定して長期に働く場合、 長期雇用として評価して良いか。それから、派遣労働者として安定した長期雇用を実現 しようとした場合、常用雇用の代替をどのように考えるかということで、3つ目、4つ 目は派遣労働という働き方の中で、長期雇用というものが実現しうるかどうかが論点と してあるだろうということです。  4点目は、派遣労働者側の視点からです。派遣労働者の働き方にはアルバイト的な働 き方、その能力を生かした専門職としての働き方、正規雇用に至るまでのつなぎ等、多 様な働き方がある。今後の雇用政策の基本的な考え方として、働く希望を持つすべての 人が自ら希望する働き方により、安心・納得して働けることの重要性が示されているが、 (1)から(3)までを踏まえ、これらの多様な働き方をどのように位置付けるべきか ということです。以上が本日の論点です。   ○鎌田座長   ありがとうございます。現在の労働者派遣制度の位置付けと、その見直しの検討に当 たっての論点、切り口について説明がありました。このうち、論点2の事業規制と労働 者保護の在り方については、私のほうで整理したものを資料3として付けていますので、 資料3を用いまして若干説明をしたいと思います。  資料3の表紙を捲りますと、2つの図が1枚ずつ書かれていると思いますが、これを 用いて少し説明します。便宜上、1枚目に「労働市場法制の在り方(鎌田メモ)」と書 いていますが、これは図1と呼ばせていただきます。2枚目の「非典型雇用に対する法 制度の在り方」を図2と分けておきたいと思います。  論点の2は、労働者派遣制度における事業規制と労働者保護の在り方に関係していま す。労働者派遣制度の在り方を巡りましては、労働者派遣事業などの雇用サービス事業 の規制の問題、いわゆる事業規制の問題ですが、これは労働市場法制が取り扱う分野で もありますが、事業規制の問題と非典型雇用又は非典型就業における労働者の保護の問 題という2つの側面から考える必要があると考えていまして、ここにまたこの問題の難 しさがあるわけです。そこで私は、事業規制と労働者保護の関係を図示したもの、これ が先ほどの図1に当たりますが、それと、非典型雇用と労働者保護の関係を図示したも のの図2を用意して、これを用いてこの説明をしたいと思います。  図1は労働者派遣事業、民間の職業紹介事業を含めて雇用サービス事業と言ってもい いと思いますが、これを労働市場法制においてどう位置付けるかをここでは考えていま す。私は図1にありますように、雇用サービス事業の事業規制の在り方を横軸として、 左に事業規制強→事業規制弱という横軸を置き、縦軸に労働者保護と雇用の安定の在り 方を置いてみたらどうか。そして、今後の労働者派遣制度の基本的な方向としては、太 字の矢印で書いているような左下から右上に向かって移行するというのが望ましいので はないかと考えています。そこで少し詳しく説明します。横軸は事業規制の在り方を示 していますが、左のほうが事業規制が厳しい。極端な事業規制でいけば禁止をするとい うことです。右に行くにつれて規制が緩やかになっていて、これも極端な場合には事前 では全く規制がない状態を意味することになります。  労働者派遣事業について申しますと、禁止から自由化へと流れが進んできています。 その背景には、職業紹介事業の国家独占から、官民の共同による労働市場の管理へとい う世界的な流れがあるわけです。ご存知のように、日本を含め世界の労働市場法制は、 つい最近まで労働者派遣事業などの民間雇用サービス事業を原則禁止し、労働力の需給 調整は国家が独占的に管理すべきだという考えが主流としてありました。しかし、これ が失業の抑制やミスマッチの防止など、企業の多様な需要にうまく対応していないので はないかということで、むしろ民間雇用サービス事業の役割を認め、労働市場の機能を 高めることで雇用機会を拡大させる方向に進むべきではないかという考えに展開してき ました。これを象徴する出来事が、1990年代の後半に行われましたILO、国際労働機 関における96号条約の廃棄と181号条約の採択という現象だったわけです。  現在、労働市場において国がどの程度の役割を果たすべきか、なお議論の余地があり ますが、民間雇用サービス事業の活動をできるだけ認め、そしてその問題行動に対し、 事後的に規制する方向が基本的な流れとしてあるのではないかと考えています。しかし ながら、労働者と企業との間に交渉力の格差があることは間違いのないことでありまし て、労働市場の機能を高めるためにもセーフティネットが不可欠であると思います。し たがいまして、民間雇用サービス事業者の活動の自由化は、労働者保護の強化を必然的 に伴うと考えています。これは、もしかしたら奇異あるいは不思議にお感じの方がおら れるかもしれません。というのは、民間雇用サービス事業者の活動を禁止して、国が独 占的に需給調整を行うことが労働者保護であるという考え方もありうるわけです。しか し、法制度の観点から申しますと、禁止をされれば保護する規定というのは特に定める 必要がないことになります。例えば、労働者供給事業を全面的に禁止しますと、供給労 働者は法的には存在しないことになりますので、供給労働者の保護のための特別の規定 は定める必要はないことになるからです。こう考えますと、事業規制を緩めながらも、 派遣労働者の保護と雇用の安定を充実させる方向が望ましいと言えるのではないでしょ うか。  次に、図2について説明を申し上げます。図2は、非典型雇用又は非典型就業として の労働者派遣、派遣労働の在り方についての関係を示しています。ここでの主要な流れ は、就業形態の多様化にあると考えています。これは横軸に示しているとおりですが、 就業形態の多様化あるいは雇用形態の多様化の背景、理由はさまざまであると思います が、1つは個人のライフスタイルの多様化、ほかには企業における人事管理の多様化が あると思われます。これを法制度の観点から見た場合には、横軸においては就業形態の 多様化を抑制する法制、すなわちできるだけ正社員だけを容認するような法制度と、就 業形態の多様化を広く認める法制度が考えられうることになりまして、私の図2では横 軸の左の就業形態の多様化を強く抑制するところから、右のほうに就業形態の多様化へ の抑制を弱める流れを書いています。  この非典型雇用に関する法制を考える場合に問題となるのは、長期間フルタイムで正 社員として働く働き方に対して、非典型的な働き方をどの程度認めるかということです。 これは、1980年代にヨーロッパを中心にかなり議論された問題ですが、労働者のライフ スタイルや企業の人事管理の多様化の中で、今後も就業形態の多様化は一層進んでいく と思われます。非典型的な働き方はある程度認めた上で、長期雇用システムとのバラン スをどう取るかが問題となります。この点、諸外国ではそれぞれの基本的な労働法制と の整合性を図りながら、この問題をそれぞれ工夫しているところですが、我が国では常 用雇用代替防止という原則がまさにこれを体現したものと言えます。  就業形態の多様化を認めていくとしても、非典型就業に従事している労働者の保護と 雇用の安定が置き去りにされてならないことは言うまでもありません。縦軸には、非典 型労働者の保護と雇用の安定を置いています。これまでの労働法制は、伝統的に正社員 を想定して組み立てられてきました。そこで今後は、非典型労働者あるいは派遣労働者 の特質に見合った保護と雇用の安定を工夫する必要があると考えます。そうしますと、 派遣労働の在り方においても労働者保護を強め、雇用の安定を図りながらその労働者の 希望を生かすような広い選択肢を用意する方向が望ましいのではないかと思います。以 上、これはあくまでも私の議論のたたき台ということで提示したものですので、委員の 皆様におかれましては自由にご議論をいただきたいと思います。  以上の提案を受けまして、各項目ごとに議論を進めていきたいと思います。まずは論 点の(1)について、ご発言をどうぞお願いします。   ○有田委員   (2)以下のところにもつながることになってしまうかもしれませんが、ILO181号条 約が採択された際も有料職業紹介事業と派遣事業を同時にルール設定する形が取られた わけですし、日本もそれを批准するに際して職安法と派遣法を同時に原則、自由化をす るという法改正を行ったわけですが、そうすると有料職業紹介事業のほうも自由化され ていますので、有料職業紹介事業で対応できるという在り方も選択肢としてはありうる。 しかし、それでも派遣でなければいけないというのはどうしてなのかというか、どこに 求めるのか。例えば、それを能力開発に、単に紹介するだけではなくて、派遣の場合だ とそこは派遣元がそういうものを提供することがありうるというか、むしろあるべきで はないかということで、そこに派遣の意義を見い出すという理解をするのか。職業紹介 事業と派遣事業との関わりをどう考えるのか、まず派遣の評価、労働力需給の仕組みと しての派遣の特有の意味というか、存在をどう考えるのかは、少し議論したほうがいい かなと思います。そうすると、後にもどうしてもかかってきてしまうのですが、雇用の 在り方として直接雇用と間接雇用の安定性でいくと、直接雇用と間接雇用の違いは非常 に大きいと思いますが、職業紹介というのは直接雇用をサポートするわけで、派遣の場 合はそれは間接雇用という形態に当然なるわけですが、そういう違いも含めて位置付け をどのように考えたらいいのかが1つの論点として議論すべき点かなと思っています。  例えば、日雇派遣というのは限りなく有料職業紹介に近いので、そういう点を考える といまのようなところはかなり具体的な議論になるのかなと思いますが、全体として見 たときにいまのような問題はどう考えればいいかということについては、皆さんのご意 見を伺えればと思います。以上です。   ○鎌田座長   有料職業紹介と労働者派遣事業、その機能の違い、役割の違いをどう捉えるか。法制 上の違いも含めて、どう違うのかということの質問。実態としてどう違うのか、法制上 の区分としてどう違うのかの2つの問題があると思いますが、事務局で何かデータはあ りますか。有料職業紹介の利用と派遣の利用ということで、どう違うのか。なんとなく イメージはあると思いますが。   ○田中企画官   資料の中で言及してあります労働力需給制度についてのアンケート調査は、職業紹介 の事業所の関係の調査も取っていますので、何らかの使用目的で、どれだけ違いが出て くるかはあります。探してみたいと思います。   ○阿部委員   いまのに関連して、派遣先になるのでしょうか。一般の企業の使い分けの仕方、つま り正社員、パート・アルバイト、派遣、請負の種類に分けられるとしたら、それの使い 分けをやるわけですよね。そこを考えていかないと、いまの話というのは整理がつけら れないのではないかと思います。いまは直接雇用と間接雇用の話だけだったのですが、 直接雇用の中でもなぜパート・アルバイトとそうではない人、いわゆる正社員がいるの かとか、そこを分けていかないと、なぜ派遣制度が必要なのかが見えないような気がし ます。例えばパート・アルバイトと派遣労働者では、どこにどんな違いがあるのか。結 構あるのだろうなと思います。たぶん、企業は何らかの経済合理性を基に行動している と考えれば、そういうものがあるだろうと思います。ただ、私にはその回答がないです。 もし、いままでのそういう調査があれば、お出しいただければと思います。   ○鎌田座長   厚労省がおやりになったアンケート調査で、まず企業が派遣を利用する理由というア ンケート調査がありますよね。私ははっきり記憶していないのですが、そこでパート・ アルバイトではなく派遣を利用する理由について、さらに突っ込んだアンケート結果が 出ていませんでしたかね。   ○田中企画官   調査票の中では、パート・アルバイトではなくて、なぜ派遣を使うのですかというよ うな形でアンケートを取っていました。   ○鎌田座長   それは、いま阿部先生がおっしゃった質問にいくらかデータとして示せると思います。   ○田中企画官   調査票としては、常用労働者でなく派遣労働者を受け入れる理由、パートアルバイト、 臨時という形ではなくて、なぜ派遣なのですかという形で取っていますので、そういう データであれば。   ○鎌田座長   もしあれば、データをご紹介していただけますか。 ○田中企画官   常用労働者でなく、派遣労働者を受け入れる理由については複数回答で伺っています。 これについては、「欠員補充と必要な人員を迅速に確保できるため」がいちばん多く49. 8%、その次は「コストが割安なため」が32.2%、その次は「一時的、季節的な業務量の 増大に対処するため」が27.8%になっています。  パート・アルバイト、臨時ではなくて、派遣労働者を受け入れる理由としていちばん 大きなものは「欠員補充と必要な人員を迅速に確保できるため」が47.2%、「特別な知 識・技術を必要とするため」が35.4%、「雇用管理の負担が軽減されるため」が29.0% が大きなものになっています。   ○阿部委員   そうしますと、派遣を使う合理的な理由というのがあるような気がします。1つは迅 速に需給調整ができるところがそれぞれ挙がったと思いますが、もう一方で正社員と派 遣、つまり直接雇用か間接雇用かという話の中では、一時的、季節的な変動に応じた需 給を調整できるところに派遣のメリットがあるということですし、もう一方はアルバイ トか派遣かといったときには特別な知識があったと思いますが、そこで労働者の質が違 っているのだといったところが出てくると思います。そういうことを考えると、紹介と 派遣という話が出たときに、紹介は結局直接雇用になるわけで、直接雇用だけでは企業 としては対応できない部分が出てくるといったところで、派遣の意義というのが出てく るのではないかと整理できるのではないかと思います。   ○鎌田座長   この点について何か。    ○山川委員   関連することですが、質問というかコメントに近いです。先ほど座長の提示された方 向は非常に明解で、おそらくこういう方向になると思います。そのことと、資料2の前 提と書いてあることの関係をある意味ではこれから検討していくことになるのかなとい う感じがします。つまり、1985年当時や1999年当時の話を先ほどのベクトルの方向性を 踏まえて考えていくみたいなことかと思いますが、この前提のところ一つひとつをもう 一度洗い直していく作業が、たぶん論点の(1)で、いま阿部先生のおっしゃられた、 労働力需給の迅速かつ的確な結合というものを現代に合わせてさらに具体的に考えてい くことになると思いますし、例えば雇用慣行との調和というのも、当時の雇用慣行とい まの雇用慣行と違いがあるかもしれませんが、逆にここはある意味で積極的に打って出 ることも考えられる。たしか、雇用政策の長期的方向性に関する提言の中で、長期雇用 というのはいまでも基本的に価値があるという提言を出していましたので、1985年段階 では既存の事実として存在するものを守るという意識でしたが、もっと積極的な意味付 けから考えていくこともあるのではないかという気がします。  もう1つは、常用雇用というものがしばしば出てきますが、有田先生のおっしゃられ たところと関連して、次の論点以降にも出てきますが、常用雇用とはいったい何かとい うことをもう1回再確認してもいいのではないでしょうか。代替を防止されるほうの常 用雇用はおそらく正社員としての期間の定めのない契約としての常用雇用ですが、もう 1つの労働者を保護するとか雇用の安定を図るときの常用雇用は現状では必ずしもそう はなっていないわけで、そのことをどう考えるか。常用雇用といっても、実は概念的に はいろいろあるような気がしますので、現状のニーズに合わせていくとどう考え直して いくかになるかと思います。  もう1つは、1つ目は需給システム、2つ目は雇用慣行とか常用雇用、3つ目は基礎 にあるのがそもそも労働者供給は原則禁止であるところから出発しているものですから、 前回も議論がありましたように、現在でも労働者供給の禁止ということの存在理由があ るとは思いますけれども、弊害がない部分について規制を解除していくという方向だっ たので、もう一度その弊害があるかないかを検討していくことについてはどうか。場合 によっては弊害が強まっているところもあるかもしれません。もともと禁止されている ものを解除した、という趣旨を洗い直すことも必要ではないかという感じがしています。   ○鎌田座長   いま山川委員から、後の論点にも関連するような論点の提示がされました。後の論点 のところでも議論をしたいと思うのですが、阿部委員から、職業紹介を含めて他の非典 型就業との実態としての違いといいますか、機能の違いという話があるのではないかと いうお話がありました。有田委員は、特に日雇いの関連もあるのでしょうけれども、法 制度において、紹介と派遣をどう切り分けるのか、ということをもう少し検討してみた らどうかという問題提起がありました。  紹介と派遣の違いで、日雇いの場合はある意味で非常に似てきているというご指摘が あったかと思います。有田委員から、現行において有料職業紹介と派遣の違いというも のについてご意見があればお願いいたします。   ○有田委員   固まったものというわけではないのですけれども、阿部委員からのご指摘を受けてい ま考えたところでは、迅速な欠員補充というのは、有料職業紹介でもひょっとするとあ り得るだろう。そうすると、残るのは、一定のスキルを持った人を供給する仕組みとし ての派遣の意義に尽きるのではないか。そうすると、紹介との一番の違いは、最終的に そこに求められる、という理解が成り立つ可能性があるのではないか。  日雇派遣のような形態というのは、そういうものとは関係のない形態のものなので、 それは別途の扱いにする、むしろ紹介のほうでいいのではないか、という議論も1つは あり得るのかということです。雇用管理の面というのは、まさにコスト面の問題で、こ れは後で出てくる保護との関係で、ここの部分は大きく変動し得るでしょうから、ここ も要素としてはあまり関係のないところかと思います。規制というルール設定のところ で考えればということです。  派遣の事業規制というか、事業の在り方の問題として、そういうスキルを確保するよ うなことを派遣会社はちゃんとやっているのか。それがないようなものは、派遣として はどうなのかという議論に展開していく可能性があるのではないか。だから、紹介と派 遣の違いを突き詰めて考えると、専らそこのところに行き着くのかと思います。  あとは、直接雇用と間接雇用の違いと、安定性ということもあるのでしょうけれども、 これも山川委員が言われた常用の概念の捉え方ということもありますので、そことの関 係で安定性の理解も違ってくることもあり得るのかということをいま考えています。   ○鎌田座長   現行法において、紹介と派遣の違いというのは、定義の上でどう違うのかということ を事務局から紹介してください。   ○田中企画官   職業紹介については、職業安定法で規定されております。第4条の定義のところで、 「職業紹介とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関 係の成立をあっせんすることをいう」となっています。  一方、派遣については派遣法の中で、労働者派遣という形で定義しております。「自 己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ他人の指揮命令を受けて、当該他人 のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し、当該労働者は当該他人に雇用 させることを約するものを含まない」ということです。  違いということになりますと、職業紹介は、それぞれ職業紹介の事業者と雇用関係が ない両者、求人者、求職者との間の雇用関係の成立をあっせんするもの。派遣は、その 事業者が自分と雇用関係のある労働者を、他人の指揮命令の下に働かせるということで すので、そこの事業者と、出てくる求人者、求職者なり他人との間に雇用関係があるか どうかというところが違っていることになると思います。   ○鎌田座長   いま、派遣と紹介の違いという議論のところで、経済的であれ、実質的にあまり違い がない部分もあるのではないかというお話がありました。法制度上は、いま言ったよう な、まさに雇用関係の成立をあっせんすると。派遣は、雇用関係自体は派遣元との間に あるということです。  経済的、実質的に同一のものとして見るかということと、法制度上これはこれでかな り形式論というか形態論で分けています。こういうものをどう統一的に考えるか、とい う問題もありそうだという感じがしています。   ○阿部委員   経済的にも違うと思います。それはなぜかというと、有田委員はおっしゃらなかった のですが、一時的なアンバランスを派遣労働者で埋めてもらえる、といったところが派 遣か正社員かで違ってきます。  派遣法の理解でいくと、自己の雇用する労働者を派遣するわけです。なぜ派遣するか というと、あるところで一時的にポッカリあいた穴を埋めてもらいたいから派遣してく ださいと。これは一時的なので、期限の定めのない雇用をしては企業にとって問題が発 生するわけです。一方、こちらでそういう穴が出てきたときに、そこを迅速に埋めると いうのが派遣の意味合いだと思います。  実際にそうなっているかどうかは別の話であって、本来理想とするのはそういうこと なのだろうと思うのです。つまり、一時的な空席を穴埋めしてくれる。しかも、派遣元 ではそういう人材を抱えている、というのが理想の姿なのではないでしょうか。派遣法 で考えていることと、経済合理性とは結構一致しているところがあると思うのです。た だ、現実にそうなっているかどうかは別の話だと思うのです。   ○山川委員   同じようなことで、法制的には座長のおっしゃられるように雇用関係というか、雇用 契約がどちらにあるかということで、紹介の場合は紹介先にあるし、派遣の場合は派遣 元にあるということで違います。同じようになってくるというのは、日雇派遣のような 場合は日々雇用ということで、派遣元との間に雇用関係があったとしても、非常に超短 期である。仮に紹介にしておいた場合でも、日々雇用で直接雇うということであれば、 やはり超短期で常用というものではない。そういう意味で実質的に同じになってしまう ということかと思います。  つまり、日雇派遣を直接雇用にした場合でも、ある意味では超短期雇用ということ自 体から生ずる問題は同じく発生する可能性がある。一般に、職業紹介と派遣の事業活動 としての違いは一件一件のコストの違いではないかと思います。普通、職業紹介という と、1人の被紹介者にわりと手をかけて紹介しますが、派遣の場合は大量に派遣できる ので、一件当たりのコストは安いだろう。ビジネス的にはそういう棲み分けだと思うの です。日々雇用の場合には、その点でも変わらないといいますか、紹介のコスト自体が すごく安くなってくるというようなことはあるのかという気はします。   ○有田委員   紹介も登録でいっぱい抱えて、次々あっせんしていくという形をとれば、コスト面で の違いはなくなってくると思うのです。正社員を紹介するというのは、いまは派遣があ るので紹介はどちらかというとそちらに棲み分けて、そちらで収益を上げるという形に なっています。有期の一時的な穴を埋める有期契約で紹介することができないわけでは ないのです。  いまは、派遣のほうがそちらは得意でやっている関係上、おそらくこっちは事業とし て採算が合わないからやらないということになっているのでしょうから、これは派遣が あるからということにもなるのではないか。機能面で見たら、かなり接近している。も ともとヨーロッパでは職業紹介が先にあって、そこから派生して出てきている。日本の 場合は供給事業との関係があるので、おそらく違った出方をしてきたのではないか。  先ほど山川委員からお話がありましたように、日本では労働者供給事業の禁止という のは非常に大きい意味を持っています。イギリスで、なぜあんなルール設定になってし まっているのか。派遣の場合に自営の請負で派遣に行くなどというようなことが法制上 許されているのは、労働者供給事業の禁止規定のようなものをルールとして持っていな いので、必ず派遣元との間で雇用契約を結んで、それで派遣先で働かせるという規制の 形になりにくい。そういう違いがあると思うのです。  紹介と派遣の成り立ちの違いというのが、日本とヨーロッパではかなり違う出方をし ているということ。だから、派遣が違う出方でビジネスとしてある程度先行していって いたということもあり、紹介との棲み分けみたいなものが事実上できた。だから、根本 的な見直しということを考えると、その辺まで遡って考えることもあり得るのかという ことでそういうお話をしました。   ○鎌田座長   いまのところを私なりに整理いたしますと、派遣とそのほかの非典型就業、あるいは 特に有料職業紹介との区分という論点については、法制上の違いはいま言いましたよう にかなりはっきり違っているわけです。派遣と紹介というものを、日雇いとかそういう ことを考えないでフラットに見た場合に、阿部委員がおっしゃったように、実質的、機 能的な違いということは認められるのではないか。  しかし、山川委員がおっしゃったように、日雇いなどの超短期雇用という特殊な形態 を見た場合、紹介と派遣というものが、実質的に果たす機能は非常に似通った面がある ことが問題となる。これについて、改めて法制的な視点から検討する場合に、日本と諸 外国の比較をいま有田委員がおっしゃいましたが、諸外国では、紹介との区分で派遣を 定義していくというか、派遣法は形成されていった。日本では、労働者供給事業という ものから切り出したというところに大きな違いがある。この点が、今後この問題を考え る上でしっかり考えてみよう、ということになるかと思います。  常用雇用の問題もありますが、山川委員からご指摘いただいた論点に少しシフトしな がら(2)、常用雇用は(3)、(4)は派遣のいろいろなタイプということです。一 つひとつ分けなくてもいいと思います。山川委員は、常用雇用の代替防止という場合の 常用雇用の意味をもう1つ考えてみたらどうかということでした。山川委員から、その 視点といいますか、常用雇用を議論する意味をもう一度説明していただけますか。   ○山川委員   別に結論があるわけではなくて、問題関心だけです。1つは、常用雇用の代替防止と いう場合の常用雇用の意味というのは、期間の定めのない、いわゆる正社員のことなの です。労働者保護を図るというところでの常用雇用という場合は同じでいいかというよ うなところです。   ○鎌田座長   皆さんもよくご存じだと思いますが、常用雇用代替防止という場合の意味というのは、 従来は派遣先の常用職場を、派遣労働者が侵食してはならないというか、派遣職場にし てはならないというニュアンスでした。  ところが、常用型の派遣労働者を想定した場合に、常用雇用代替防止、あるいは長期 雇用を促進する観点からいった場合に、その意味合いをどう捉えたらいいのかという、 ちょっと輻輳した問題がありそうなのですが、これについてご意見がありますか。   ○有田委員   いま座長がおっしゃられたのは、労働市場全体においての常用の代替ということで、 当初の派遣先での代替ということから広がってきているという認識で議論をする必要が あるのかということをおっしゃっているのですか。   ○鎌田座長   従来の常用雇用代替防止というのは、わりと簡単に私の意識では、派遣先の常用職場 を派遣職場に変えてはならないということだったと思います。常用雇用されている、例 えば期間の定めのない派遣労働者は、そこの部分では長期雇用になっているとすれば、 そういう人たちが派遣先の職場に入れ替わるというのが、労働者保護という観点から考 えた場合に、それもまた駄目だというふうになるのか。ちょっとあけすけな言い方なの ですけれども、そういうことなのです。   ○有田委員   提起された図のモデルで。    ○鎌田座長   私は、この点は非常に大変な問題だと思っています。私の図は、もっと一般的なこと を言っています。要は、事業規制とか就業形態の多様化を抑制する、なるべく多様化し ないようにするという考え方、あるいは就業形態、民間雇用サービスの事業活動を広く 認めることということと、労働者保護を図ることが両立し得るし、そういう方向で考え るというのが今後の在り方としていいのではないか。  ただし、就業形態の多様化を抑制するかどうかというのは、各国が長期雇用システム をどういう原則にしているか、ということと非常に密接に関係しているわけです。それ は、ストレートにこの図からどういう方針をとれということは出てこないです。例えば、 ドイツとかフランスでは、明確に解雇規制の中で、期間の定めのない雇用が原則とされ ています。そうすると、有期だとか派遣もそうですが、それは例外的にしか認めないと いう考え方です。そういう制度で出来上がっています。  日本において、有期については例外的に認めているということでもないのです。この 辺の認識はちょっと違うかもしれませんけれども、つまり期間の定めのある雇用という のは、別に利用できる場合を限定しているわけでもないし、更新も限定しているわけで もないのです。そうすると、ドイツとかフランスとはちょっと違っていて、そして各国 の基本的な労働法制の土台の上に立って、派遣と長期雇用のバランスをどう取るかとい う問題で、日本は先ほど言いましたように、派遣先の常用職場を、いかなる形であって も派遣労働者で代替することは認めないという方針を立てたのです。それは、それで1 つの方針だったと思うのです。  それが、労働者保護という観点から見ていくと、依然としてそれはそういう方針を立 てるのか、もう少し違う見方ができるのかということではないかと思うのです。この辺 のところは、なかなかスパッと割り切れる問題ではないので、いろいろご議論いただけ ればと思います。   ○阿部委員   皆さんにお聞きしたいのですが、労働者保護と言ったときに、どういう保護をするか ということで相当違う意味合いを持つのではないか。例えば、日本のこれまでの保護と いうのは、特に常用雇用の場合には、企業に保護しなさいということで、当事者間で保 護の取決めをしていた。あるいは、当事者間で何かやってくださいということで補助金 を出すとか、そういうことをやってきているわけです。  一方そうではない所もあって、例えば金銭的に解決するような場合もあるし、あるい は社会で保護する場合もあるし、いろいろあると思うのです。日本の場合はこれまで、 当事者間でどちらかというと保護をやり合っていたという気がするのです。  ただ多様化した場合に、当事者間の保護で足りるのかという議論はあるのではないか。 座長がお書きになった図はたぶんそうだろうと思いますが、そのときの保護というのは 誰が主体的にやるのか、というのはまた別の問題としてあるのではないか。それについ て、皆さんから意見を聞かせていただければと思います。  私は、これだけ就業が多様化してきたときに、当事者間だけでできることはなかなか 難しくなっているのではないか。社会全体でセーフティネットを張っていくことが必要 ではないか。社会保障をもっと手厚くしていき、その代わり自由化していく部分は自由 化してもいいと思うのです。それは、座長の絵と全く同じです。  それとは別の議論なのですが、常用雇用とは何かというのは重要だと思うのです。法 制だとか、実際にいま期限の定めのない雇用に入っている人ということとは別にして、 経済的になぜ常用雇用だとか、期限の定めのない雇用が必要なのか、という議論はこれ までいろいろあった。そこで言われていることは、企業内教育訓練の重要性と、それに よる定着率を高めるために、期限の定めのない雇用があるべきだと。  ところが、グローバル化や技術革新が進展した結果、必ずしも教育訓練が必要のない 仕事も相対的に見て出てきた。ある種労働市場から、日雇派遣などは典型的だと思いま すけれども、荷造りだとか、荷物を運ぶとか、ある程度誰でもできるような仕事もこの 社会の中には出てきています。そういうのは、常用雇用でなくてもいいわけです。だけ ど、それを常用雇用で現実にはやっている場面もあるでしょう。そこをどのように見る かで違ってくるのだろうという気がします。  常用雇用とは何かといったときに、既に常用雇用だという定義づけをされている労働 者のことを考えるのか、そうではなくて実はその中にもいろいろな人たちがいるのだと。 そうすると、絶対に代替できない労働者と、他と代替可能な労働者とが出てきているは ずなのですが、それをどのように見ていくかということもあるのではないか、というの が私の感想です。   ○鎌田座長   常用雇用代替という場合の常用雇用というものをどう捉えるかという問題を考えて、 従来どのように考えられていたかというのはある程度共通認識としてある。それを見直 す必要があるかないかということが話題になるとすれば労働者保護ということになる。 そうした場合に、常用雇用というのがなぜ企業サイドからいっても必要となってくるの か、その常用雇用の必要性ということも少しきめ細かく見ていく必要があるのではない かということが1つです。  もう1つ阿部委員がおっしゃったのは、保護という場合の保護する主体、言ってみれ ば保護にコストがかかるとすれば、そのコストの負担者というのは、従来常用雇用とい うのは企業が負担するという発想で出来上がっていたのだけれども、今後その保護コス トを誰がどう負担するのかということも少し考えたほうがいいのではないかということ だったと思います。  私の図を示しながら、企業以外の人、あるいは国も含めてコスト負担者として理解す る場合にはそれはそれでいいということでした。私のイメージはそこまで行っていなく て、後の議論ともつながるかもしれませんが、派遣の使用者というのは派遣元なのです。 労働者の雇用の安定を主張される方というのは、いろいろな保護の主体を考えていて、 基本的に派遣先が労働力を受け取っているのだから、派遣先がコストを負うべきだとい う考え方があるわけです。そういう意味ではまさに派遣先が、あるいは受入れ企業が負 うべきだということ。  しかし、派遣の雇用主は派遣元ですから、派遣元が保護を負担するというのが法制上 の要請として出てくるわけです。私の図でイメージした労働者保護で、誰が第一にその コストの負担をするのかというのは派遣元を考えていました。さまざまなコストが出て くるということであれば、それは雇用主である派遣元が負担をしなければならない。  しかし、派遣元というのは、派遣先との取引があって初めて成り立つのだからという ことで言えば、派遣先との取引関係というものが、必然的にその保護の基盤として何ら かの形で入って来ざるを得ない。かつ、日雇いとか、非常に超短期的な雇用といった場 合に、派遣元とか派遣先という負担とともに、それから国がどのようにシェアしていく のかといった視点も必要になってくるのではないかと考えているわけです。   ○有田委員   保護というときに、例えば賃金などの労働条件面の問題と、雇用そのものの確保とい う面と違った意味を持つのだろうと思います。ただ、雇用の確保があって、はじめて賃 金を稼得できるわけですから、つながっていると言えばつながっています。前者のほう で、ヨーロッパのいまの法制というのは座長が示された図のように、労働者保護の均等 待遇原則を法定化することにより保護を強めて、その代わりにドイツなどでは業務の規 制自体は非常に緩めるという方向で、まさにこの方向へ進んでいます。ヨーロッパの国 々というのは、大体がいまのところそういう方向に向かっているのではないかという指 摘が見られます。  阿部委員がおっしゃった、セーフティネットを張るということも、セーフティネット を張るときに財源が要りますので、それを誰が支えるのか。いま、まさに問題になって いる日雇派遣で、労働条件面での保護が弱い中で、雇用の安定性にも欠ける中で、保険 料の拠出ができるのかとか、課税できるぐらいの所得にならないということになった場 合、そういう人口が仮に増えていってしまったら、セーフティネットそのものも揺らぎ かねないという社会の状況も出てくる。  原則というのは、契約の当事者間の使用者側が、それを派遣元だけで考えるのか、派 遣先も併せて考えるのかということはあるでしょうけれども、そこを第一に出発点で考 えていかないと難しいのではないかと考えました。経済学の議論で、合成の誤謬という 話を大学で昔習いましたけれども、そういう点で考えたときに、こういう派遣のような 形で、とりわけ不安定な派遣の部分が増えた場合にはどのようなシミュレーションで描 けるのか、ということを教えていただければ今後の議論の方向性を考えていく上で役立 つかと思いました。   ○鎌田座長   いまのは、阿部委員に対する質問ということになりますか。    ○有田委員   最後のところはそうなります。    ○鎌田座長   もう少しわかりやすく質問していただけますか。    ○有田委員   労働者保護をどの次元で考えるのかという問題提起をされたので、法律をやっている 人間からすると、当然何らかの法的な関係にある当事者間で考える。それを、外で法律 のルールで枠をはめてということはあるにせよ、基本的にはそこのレベルで考えるので すが、先ほど言われた社会保障のようなものをもう少し考えてセーフティネットで、社 会全体で支えるような形での保護、例えば、失業して収入を得られないときの問題とい うことを考えれば、そういうことは当然必要になるでしょうけれども、その制度を維持 していく上でも、雇用がある程度安定的に継続されて、そこから賃金収入を得て、拠出 を行える層がたくさんいなければ、制度自体がもたないということにならないだろうか、 ということをわかりやすく説明していただければ非常にありがたいということです。   ○阿部委員   それは難しいと思うのです。現状、日雇派遣の場合には全くセーフティネットはない、 というのが現状だろうと認識しています。もちろん何らかの仕組みを作ればあるかもし れませんが、先ほど言ったように保険料を払えるかという問題があって、現状ではセー フティネットはないと思うのです。  生活保護というのはかなりハードルが高いですからたぶんない。それで出てくるのが、 マスコミを騒がせるような、マンガ喫茶で寝泊りするような人が増えてくるという話に なっているのが日本国内です。雇用保険の話とは別に、もっと下のレベルもやっていく ような形で高めていき、社会保障の部分でも雇用政策の中で考えていくべきではないか ということを言ったのです。  その財源をどうするかとかいろいろあると思うのですが、それではいまのままでいい のかというと、それもそうではないだろうと思います。派遣労働者と派遣元の間の当事 者間で保護のコストを持つというのも、現実的にはいまの段階でどうなのだろうかと思 うのです。そこの部分を、当事者だけではなくて、合成の誤謬はあるにしても、社会全 体でそのコストを負担できるような形にはできないのかと思ったということです。あま りうまく言えないのですが、そういうことです。   ○有田委員   座長がおわかりであれば教えていただきたいのですけれども、いまヨーロッパでは均 等待遇が設定されています。EUとしては理事会指令を採択するところまではいかない けれども、ドイツのように先行してそういうものを定めた国が出てきているときの基本 的な考え方というのは、常用代替をさせないということとは違う理念があるのでしょう か。それは、派遣として働いても、派遣労働が安定した雇用となるためには、それは同 じ仕事をしている人と均等待遇で条件が保障されなければ駄目だ、という考え方だと理 解するのでいいのでしょうか。   ○鎌田座長   本日は橋本委員が欠席なので専門家がいないということで私がお答えいたします。有 田委員がおっしゃったように、ドイツは一部日本と似たような法制度を持っています。 派遣期間の限定、それからここは日本と少し違っているのですけれども、当初は常用雇 用型のみを認めるということで、登録型はなかったということで出発しています。  それが、いろいろな紆余曲折を経て、2000年に入ってから従来の派遣に対する規制を 大きくなくしました。そのなくしたときに、均等待遇原則を導入したのですが、これは ヨーロッパ全体の流れの中で、ドイツが受け入れていったということだと思います。 これをどう評価するかというのはなかなか難しいところなのですが、例えば、常用雇用 型を原則として登録型がだいぶ増えています。とはいえ、常用型の派遣はドイツでは依 然として多い中で、派遣元の正社員が、派遣先に送られた場合、均等待遇原則をどう評 価するかということなのです。  つまり、派遣元で正社員となっている人が、派遣先に行って、派遣先類似・同種の労 働者と同じ賃金、あるいは労働条件を確保しましょうと言ったときにはドイツでは戸惑 いがあったのではないかと思うのです。だから、登録型を前提にしているフランスとか イギリス、アメリカものような国とドイツのようにそもそも出発点として常用型派遣を おいている国では、派遣先との均等待遇と言われたときには少し戸惑いがあったのでは ないか。  それが、どういう形でいま労使の中で調整をしているのかということは興味があるの ですが、私が調べたところでは派遣元と派遣労働者の労働組合との間で労働協約を締結 する、ということが一気に進みました。その労働協約を締結すると、均等待遇原則は適 用除外なのです。そういうことで、いろいろ工夫をしていると聞いています。  期間限定をなくしたりした場合にどういう問題が出てくるか、というのは組合のほう でも言っているのですが、臨時的、一時的な需要に対して派遣労働者を送ることはいい でしょう。そうではないような派遣労働者の使い方、いわゆるリストラとしての利用と いいますか、もっとわかりやすく言うと、低賃金でいつでも調整できる労働力として利 用する、ということがドイツにおいても広がっているのではないか。こういうことが、 非常に危惧されるのではないか。  政府はそのように法改正をしたのですが、派遣先の従業員をリストラして、派遣労働 者で低賃金労働力を受け入れるという使い方については問題がある、というふうに政府 報告は言っていますので、そのような働き方はかなり危惧しているようです。いまのド イツの状況はそのようになっています。それで、ドイツの法改正の効果というのか意義 というのはまだ見定められない状況になっています。   ○有田委員   ドイツでは、登録型ではなく常用型が原則だったのを、事業規制を緩める代わりに均 等待遇原則が入っていったという理解も成り立ち得るということですか。   ○鎌田座長   そのような見方もできますが、戸惑いがあったというのか、特に派遣元の正社員の場 合は。   ○有田委員   確かに常用型で働いている人も既にあるわけですから、例えば派遣先が変わって、通 常の自分の賃金よりもいい賃金の派遣先の労働者と同じ仕事をするとなると、その都度 プラスを付けなければいけないのかという話になってくるのでしょうか。   ○鎌田座長   いまの段階で細かな議論にまではなかなか入りづらいのですけれども、ドイツの場合 何がいちばん最初に戸惑いがあったのか。私はドイツの連邦労働省の担当者と話をした ときに、均等待遇原則はどうですかと聞いたら、正直言って困っている。だけど、政府 としては導入したからやるしかないのだ。どういうことが困るのですかと聞いたら、い ろいろ言うのですけれども、まず比較対象者をどうするかという問題。いればなんとか なるのですけれども、いない場合にどうするか。  それでも、ドイツの場合はポストで入れますからまだいいのです。ドイツの場合、空 いた人のポストに別の方を送るというのはわかりやすいけれども、日本はそういう仕組 みになっていないので、誰と比較するのかというのが大きな問題です。  もう1つは、労働条件の均等待遇と言うのだけれども、どこまでを労働条件として考 えて、均等待遇を図るのかということが大きな問題で、これはすべてだと言われていま す。例えば、こんな問題を具体的に連邦労働省の人が言っていました。メルセデスベン ツの会社に派遣労働者を受け入れることになったのだそうです。そのときに問題になっ たのは、メルセデスベンツの社員は、メルセデスベンツを安く買えるというメリットが あったのだそうですが、そのメリットも派遣労働者に保障しなければいけないのかとい うことが問題になったそうです。それはどうするのですかと聞いたら、それは認めるし かないでしょうということでした。  メルセデスベンツがどのぐらい安くなったのかわかりませんけれども、これはどうな のですかねということなのです。ドイツで具体的な解釈としてどうなっているのかはわ かりませんけれども、そのときの担当者はどうなるのですかねということで、まだ具体 的に実施する前だったので、どこまでの範囲を均等待遇というのかというのは非常に悩 ましいのだということを言っていました。  いま言ったように、同種の労働者というのをどう見るか。例えば、教育訓練は一緒に やりましょうとか、安全衛生については派遣労働者でも派遣先の労働者と一緒に保障し ましょうという話を超えて、いま言ったように細部に至るまで派遣先の従業員が持って いる権利は全部保障しましょうということになるのか。  ドイツはそこで悩んでいたのですけれども、それを日本に入れてくるともっと大変な のかという感じがしています。いま有田委員が言われた、均等待遇を導入すると規制が なくなるというのは、日本でもそのような発想になるかと言われると、なかなか同じ土 俵では議論できないのではないかというのが私が聞いたときの感想でした。ドイツでも かなり戸惑いがあったようです。  フランスでは、空いた所にポンと登録で入れるということらしいので、まだ整理しや すいらしいのですけれども、ドイツは派遣元の正社員の人たちも結構いますので、そう いう意味でも戸惑いがあったということです。   ○山川委員   いまのことに関連するのですけれども、均等待遇との関係で、先ほどの阿部委員のお 話にもかかわるのですが、社会保障と、もう1つ外部市場がきちんと整備されていて、 賃金水準が一定で、かつ摩擦的失業がないというか、仕事探しのコストがかからなくて、 スキルもあるという人でしたら、派遣労働者でもかなり安定して生活できる。アメリカ だと、派遣弁護士とか、派遣校長先生とかいろいろあるようです。そういうスキルのあ る人でしたら、ある程度労働市場が整備されればなんとか安定できるかもしれませんし、 そうでない方は難しいということもあるかもしれないので、外部市場を考えていくと、 本人のスキルとか類型みたいなもの、あるいは本人の希望・ニーズによっても違ってく るのではないかという感じがします。  先ほどの直接雇用か、安定雇用か、あるいは両方というようなことについても、例え ば定年後の高齢者が派遣で就労していたとしますと、その人は一定期間経つと直接雇用 が必要で、かつ正社員として直接雇用しなさいと言うと、定年で辞めた方をもう一回正 社員にするということになって、なにかしっくりこないような感じがします。派遣で働 く人たちの類型とかスキルとか、ニーズによっても以上の点は違うのかという感じがし ます。   ○鎌田座長   いまのご指摘は、例えば(4)の論点にもかかわってきますけれども、派遣労働者の 働き方にはアルバイト的な働き方、専門職としての働き方、例えば26業務の派遣などは そういうイメージがあると思うのです。正規雇用に至るまでのつなぎ、これは紹介予定 派遣というのでしょうか。  そのほかに、いまおっしゃったように派遣労働者の属性ということで、いろいろなも のが考えられるのではないか。そういうことを少しきめ細かく見ていったほうが、派遣 というものの働き方、あるいは派遣労働者の保護ということを考えた場合にいいのでは ないかということだと思うのです。  従来は確かに登録型、今は日雇いが非常に注目されていますが、派遣の働き方で特定 の働き方が非常に注目されて、そのイメージで派遣全体がイメージされてしまうという ことではなくて、その辺を少しきめ細かく見ていったらどうだろうかということです。 その点についてはどうでしょうか。   ○有田委員   派遣といっても非常に多様な類型のものがあるということです。山川委員が言われた ように、高齢者の場合には確かにそういう問題があります。有期の場合だと、その期間 設定についての規制というのは、そういう一定類型で分けるというやり方をされている ので、そういう手法は当然考えられるでしょう。  もう1つは、先ほど山川委員がおっしゃった、外部市場の整備というときに、いま厚 生労働省でもスキルの社会的な規格化というか、職業能力の規格化をやられています。 ミスマッチ予防という意味では非常に有効なことだろうと思うのですが、そういうもの の整備が前提として必要ではないかということをおっしゃったと思うのです。私も、確 かにその辺はそうだろうと思います。  もう1つは先ほど座長が言われた点ですが、常用ということで(3)の考慮すべき点 のポツの下の2つの問題は、ドイツの議論とも絡んで代替を考えるときに非常に重要な 点かと思います。これも、現状では雇用期間が派遣元との間で1年以上であればいいと いうことですよね。  それでいくと、常用型といっても一様ではなくて、有期のタイプの人と、本来的な意 味での常用型の人が、いまの制度上も存在しているということもある。それから、安定 性ということでは、雇用の継続的な安定性と、もう1つは一定の労働条件面で、均等待 遇とは違うけれども、別の形で労働条件面での何らかの確保を考えないと、保護という 言葉かどうかはわかりませんが、いずれにしても雇用の継続確保プラス一定水準以上の、 ILOがよく言っているディーセントワークとしてそういうものが確保されている。派 遣労働もディーセントワークでないといけない。我が国のいまの水準におけるディーセ ントワークを保障するというときに、確かに常用型で考えると、ドイツの例をお話いた だいたのですけれども、均等待遇原則だけではどうも難しそうだということです。  そういうものを考えた上で、本当の意味での保護と安定性が確保されたものを考える と、それはそれで先ほど見たようなスキルの確保、本人にとってのキャリア形成の意味 も出てくるでしょうし、その役割を期待してもいいのではないかということは言えるか と思います。派遣もいろいろなタイプがあると思うので、それぞれのタイプのいまの現 状をもう少し押えていきたいと思いました。   ○鎌田座長   皆さんにいろいろご議論いただいているのですが、私どものほうで提示いたしました 論点についてはいろいろな形で触れてきていると思います。ただ、それをどのように集 約していいのかというのが、私自身もちゃんと整理できていないところがあります。た だ、冒頭に労働者派遣事業の機能をどのように見たらいいのか、というところで議論も あって、そして派遣と比較して紹介、パート、契約社員などとの意義の違いをどう見て いったらいいのか、ということが話題になりました。  その中で、とりわけ超短期雇用であるような日雇派遣というものを、紹介との関係で どう見たらいいのかということが話題になりました。  事業規制と労働者保護の在り方について私のメモをご紹介いたしましたが、こういう メモで示した考え方というのは、世界的な流れ、ILOの96号条約から181号条約への 流れというものと、非常に沿ったような考え方ではないかというご指摘がありました。 そして、こういう考え方も1つの考え方としてあり得るのではないかという評価もあっ たのではないかと思いました。  それから、労働者供給事業との関連で、先ほどの紹介との違いのところですが、諸外 国では職業紹介とで区分として労働者派遣というものを法制的に整理していった国も多 いのだが、日本では労働者供給事業の禁止というところが出発点になって、そこから労 働者派遣法の枠組みができている。そういうところを今後は検討してみたらどうだろう かというお話がありました。  常用雇用については、常用雇用代替防止といった場合に、その意味をどう捉えたらい いのか。従来の派遣先の常用職場を派遣労働者が侵食しないというか、派遣が侵食しな いという点は、従来の理解としてはいいのだけれども、今後労働者の保護が図られる下 で、この原則をどう捉えたらいいのか。それは別に変える必要もないのだという考え方 もありますし、労働者保護ということが図られるのであれば、少し違う見方もできるの ではないかというご意見もあったと思います。  保護と言うけれども、労働者保護の中身をどのように捉えるのだというご議論もあっ たように思います。その際に、従来は正規雇用で、企業が保護のコストを負担するとい うことであったが、今後はもう少し広く社会の制度、保険制度も含めて広く考えてみた らどうだということ。基本となるのは、派遣労働者が職業能力開発をして、スキルアッ プしてということなわけですが、同時に彼らが置かれているさまざまな困難な状況に対 して、誰がどのような形でコストを負担していくのかということ。  その際に、誰がどのようにというのは、私の理解だと3つの主体があります。1つは 派遣元、それから派遣先も考えてもいいのではないか。それから国もその中に入れて考 えたほうがいいのではないか。要するにセーフティネットをどう張るかという問題だと 思います。派遣労働者の保護、あるいは労働者派遣制度規制を考える場合でも、当初は 26業務というわりとシンプルな制度で始まったのが、1999年のネガティブリスト化の後、 さまざまな形で派遣というものが使われて、そしてさまざまな派遣労働者が存在してい るのではないか。働き方という点で言えば、アルバイト的な働き方、臨時的・一時的な 労働需要に対する働き方ということになるかと思います。あるいはその能力を活かした 専門職的な働き方、正規雇用に至るまでのつなぎの働き方。そして、雇用の安定が図ら れているという意味では、派遣元での常用労働者として働く働き方ということで、さま ざまなタイプがあるのではないか。  そういうことにも目配りをしながら、法制の在り方を検討してみたらどうだろうか、 というご提言というかお話だったのではないかと思います。委員の皆様方の中には、こ の論点が入っていないぞとか、このような視点も入れてほしいというご意見があればい まおっしゃっていただきたいと思います。いま、私は皆さんの細かなご議論はメモして おりませんので、少し整理をさせていただいて、次回にでも、こういうことがご議論さ れていて、ある程度共通の理解になったものもあるし、そうではないものもあるし、今 後の議論の課題として新たに提示されたものもあるし、というものを私と事務局で整理 させていただきましてそれでご議論いただく。  要は、各個別の議論のところにそれは波及していきますので、個別の議論のときに、 いま言ったような委員の皆様方のさまざまなお考えが、個別の議論をするときのバック グラウンドとして当然あるわけですから、個別のところで議論してもらえばいいという ことになるのか、いろいろだと思いますので、そういうのを少し整理させていただくと いうことでよろしいでしょうか。   (異議なし) ○鎌田座長   ありがとうございました。それでは、そのように進めたいと思います。次回以降のこ とについてお話いたしますと、各論の具体的な議論も進めていきたいと思いますが、そ れに先立って今後の議論の参考とするために、この研究会に関係者をお呼びしてヒアリ ングを行ってはどうかと思っております。ついては、ヒアリングの人選や、ヒアリング 項目等について、私と事務局で案を作成し、事前に委員の皆様方にご意見を伺った上で、 次回以降の研究会でヒアリングを行えるよう調整したいと考えますが、そのようにさせ ていただいてよろしいでしょうか。   (異議なし) ○鎌田座長   それでは、そのように進めたいと思います。ほかにご発言がないようでしたら、今後 の日程等について事務局から説明をお願いいたします。   ○田中企画官   次回の研究会の日程につきましては、座長からヒアリングのお話がありましたので、 調整をいたしまして、委員の皆様方には決定し次第改めてご連絡をさせていただきます のでよろしくお願いいたします。   ○鎌田座長   そのようにさせていただきます。これをもちまして第2回の研究会を終了させていた だきます。本日はお忙しいところをどうもありがとうございました。 照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課需給調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5745)