08/02/22 平成20年2月22日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所    平成20年2月22日(金) 16:00〜 厚生労働省 専用第18〜20会議室 2.出席委員(14名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 川 西   徹、 澤 田 純 一、 鈴 木 洋 史、    土 屋 文 人、◎永 井 良 三、 中 澤 憲 一、 西 澤   理、    野 田 光 彦、 林   邦 彦、 松 井   陽、 村 勢 敏 郎、    村 田 美 穂、 本 橋 伸 高 (注) ◎部会長 ○部会長代理 他 参考人1名   欠席委員(5名)    五十嵐   隆、○首 藤 紘 一、 千 葉   勉、 成 冨 博 章、    長谷川 紘 司 3.行政機関出席者    黒 川 達 夫(大臣官房審議官)    中 垣 俊 郎(審査管理課長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、 村 上 貴 久(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、 丸 山   浩(独立行政法人医薬品医療機器総合機構センター次長)、    森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他 4.備考    本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻となりましたので、薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会を開催 させていただきたいと存じます。本日も、お忙しい中お集まりいただきましてありがと うございます。当部会委員数19名のうち、現在13名の委員の御出席をいただいており ますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。  本日は、五十嵐委員、首藤委員、千葉委員、長谷川委員から欠席という御連絡をいた だいております。林委員からは少し遅れるという御連絡をいただいております。成冨委 員からは御出席という連絡をいただいておりますが、何らかの事情で遅れているのだろ うと思います。いずれにしても定足数に達しておりますので、会議を始めさせていただ きます。  本日の議事の最後に「その他」として、「小児薬物療法検討会議」に関する説明をさ せていただきたいと存じますので、国立成育医療センター・治験管理室長の中村秀文先 生に参考人として御出席いただくこととしていることを御報告申し上げます。  また、本日の議題ですが、議題8として「ピロキシカム製剤等の急性期効能の削除に ついて」、さらに、議題9として「ジュリナ錠0.5mg添付文書(案)について」、これは 前回の部会において御審議いただいて、整備した上報告することと決議されたものです が、これについての御報告をさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願 いいたします。  それでは、部会長の永井先生、よろしくお願い申し上げます。 ○永井部会長 まず、事務局から配付資料の確認及び資料作成、利益相反等に関する申 出状況についての報告をお願いいたします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部 会委員の名簿を配付しております。議事次第に記載されている資料1〜15をあらかじめ お送りしています。このほかに、本日、資料16「ピロキシカム製剤等の急性期効能の削 除について」、資料17「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料18「専門 委員リスト」、資料19「ジュリナ錠0.5mg添付文書(案)について」を配付しております。  続きまして、平成13年1月23日の薬事分科会申合せ、及び昨年4月23日の薬事分科 会申合せに基づく、資料作成、利益相反等に関する申出については、次のとおりです。 議題1「ヒュミラ」につきましては、退室委員、議決には参加しない委員、共になし。 議題2「ルナベル」につきましては、退室委員、議決には参加しない委員、共になし。 議題3「イルベタン錠及びアバプロ錠」につきましては、退室委員はなし、議決には参 加しない委員は鈴木委員、永井委員、西澤委員、野田委員、村田委員、本橋委員。議題 4「アログリセム」につきましては、退室委員は松井委員、議決には参加しない委員は なし。議題5「ナグラザイム」につきましては、退室委員、議決には参加しない委員、 共になし。議題6「トレドミン」につきましては、退室委員はなし、議決には参加しな い委員は西澤委員。議題7「デュロテップMTパッチ」につきましては、退室委員はな し、議決には参加しない委員は本橋委員。  したがいまして、議題3につきましては、薬事分科会規程第5条第1項において、部 会長及びその職務を代理する者のないときは、当該部会員のうちから選任された者が、 仮に議長として会議を開くことができるとされておりますので、御選任をお願いしたい と思います。 ○永井部会長 この件につきまして、どなたか自選、他選はございますでしょうか。事 務局からはございますか。 ○事務局 事務局といたしましては、村勢委員にお願いしてはどうかと思いますが、い かがでしょうか。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。それでは、議題3につきましては村勢委員に議事 進行をお願いしたいと思います。ほかに事務局からございますか。 ○事務局 本日の審議事項の議題7「デュロテップMTパッチの毒薬又は劇薬の指定の 要否について」は、報告事項の議題1「デュロテップMTパッチの製造販売承認につい て」に関連するものですので、議題7の審議と併せて御報告させていただきたいと思い ます。よろしくお願いいたします。 ○永井部会長 本日は、審議事項が7議題、報告事項が8議題、その他事項が2議題で す。たくさんありますが、よろしくお願いいたします。  では、議題1につきまして、医薬品医療機器総合機構から概要を御説明いただきたい と思います。 ○機構 議題1、資料1、ヒュミラ皮下注40mgの製造販売承認の可否等について、機構 より説明いたします。  本剤の有効成分であるアダリムマブ(遺伝子組換え)は、IgG1サブクラスのヒト型 抗ヒトTNFαモノクローナル抗体であり、炎症反応、免疫反応において過剰に発現す るTNFαと結合し、TNFαと細胞表面のTNFα受容体との結合を阻害することに より、炎症性疾患に対し薬効を発現すると考えられております。本申請は「関節リウマ チ」に係る効能・効果に対するものであり、海外において本剤は、2007年12月現在、 関節リウマチについては、米国、EU等72か国で承認されております。なお、本剤の販 売名につきましては、リスクマネージメントの観点から「ヒュミラ皮下注40mgシリンジ 0.8mLに変更される予定となっております。  本申請の専門委員としては、資料18に記載されております12名の委員を指名いたし ました。  審査内容について簡単に説明させていただきます。  品質及び非臨床に関する資料につきましては、特段の問題は認められないものと判断 しております。  次に臨床に関する資料についてですが、本申請はブリッジングコンセプトに基づくも のであり、国内第II/III相用量反応試験は海外第III相用量反応試験に対するブリッジング 試験として実施されております。その結果、国内第II/III相試験において、日本人関節リ ウマチ患者に本剤20mg、40mg又は80mgを隔週で24週間皮下投与した際のACR基準 20%改善率は、いずれの用量においてもプラセボ群に比べ有意に優ることが示されてお ります。また、海外用量反応試験との比較については、両試験に共通する用量である本 剤20 mg及び40mg隔週投与群のACR基準20%改善率はいずれの試験においてもプラセボに 比べ有意に優り、プラセボを含めた3用量間の用量反応関係は国内外で類似しているこ と、さらに安全性プロファイル、薬物動態についても日本人と外国人で大きな相違は認 められないことが示されております。以上より、機構は、関節リウマチに対する本剤の 薬効評価において海外臨床試験成績の外挿は可能であり、国内外臨床試験成績に基づき、 関節疼痛等の症状に対する本剤の有効性は確認されているものと判断しております。一 方、本邦においては、関節破壊に対する本剤の抑制効果は検討されていないことから、 本剤のリスク・ベネフィットをより明確にできるよう、製造販売後臨床試験において当 該効果についても検討することが適切であると考えております。  用法・用量につきましては、臨床試験成績を踏まえ40mgの隔週投与を通常の用量とす ることが適切であると判断しておりますが、本剤については中和抗体が比較的高頻度に 発現し、特に日本人患者においては抗体陽性率が高いこと、抗体陽性例では血中濃度の 低下とともに薬効も減弱すること、その際には増量により効果の回復が期待できること が示されていることから、40mg隔週投与により十分な効果が得られない場合には、80mg 隔週投与まで増量できる旨の増量規定を設けることが妥当であると判断しております。  安全性については、国内臨床試験における重篤な感染症の発現率は11.8%であり、既 存のTNF阻害剤と同様に感染症の発現に十分な注意が必要と考えられること、また、 TNF阻害剤で留意すべき重要な有害事象とされている心不全、脱髄性疾患、自己免疫 疾患、間質性肺炎、悪性腫瘍等についても、海外市販後データ等も踏まえた検討の結果、 既存のTNF阻害剤と類似した発現傾向が示されていることなどから、本剤についても 既存のTNF阻害剤と同様の製造販売後の安全対策として、一定の症例が集積されるま では全例での使用成績調査、さらに長期投与時の安全性等を検討するための長期特定使 用成績調査を実施し、適正使用の徹底、副作用情報の把握と臨床現場に対する情報提供 の徹底等を図ることが適切であると判断しております。  以上の審査を踏まえ、本剤については製造販売後に全投与症例を対象とした使用成績 調査及び長期特定使用成績調査を実施すること、並びに関節破壊の抑制効果を検討する ための臨床試験を実施することを承認条件とし、本申請を承認して差し支えないとの結 論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効 成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、また、原体及び製剤は劇薬に該当し、 生物由来製品に該当するものと判断しております。薬事分科会には報告を予定しており ます。  よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長 ただ今の御説明に御質問、御意見はございますか。 ○澤田委員 御説明にありましたように、中和抗体の出現率が欧米人の2倍くらいとい う話ですが、例えばロットが違うとか、人種差なのかとか、ある程度原因は分かってい るのでしょうか。 ○機構 はっきりとした原因は分かっておりませんで、まだ推論の範囲内でございます が、本薬のIgGのアロタイプが日本人の主要のアロタイプと類似している、それに対 して、外国人の主要のアロタイプはまた違うタイプであるということで、日本人の方が、 患者さん自身の持っているIgGのタイプが本薬と類似しているということで、抗体の 制御ネットワークに本薬が取り込まれやすく、それで中和抗体が発現しやすいのではな いか、といった考察がなされております。 ○澤田委員 これは最初からヒト型ですね。例えばキメラの場合でもかなり出るのです が、日本人だけ高いというのが気になります。今のお話ですと、製造している細胞が違 うことが原因である可能性があるということですか。 ○機構 品質の問題ということではなくて、患者さん自身が持っている抗体自体の人種 差に関連するものであるということです。 ○澤田委員 今のところ、抗体のレパートリーに人種差があるという解釈なのですか。 ○機構 そのように考えられております。 ○永井部会長 従来の治療薬を使って効果不十分な場合ということですが、どのくらい の期間使えばいいのかとか、その辺のガイドラインはあるのでしょうか。 ○機構 特に一定のものは決められていないかと思いますが、通常2か月程度使用して 効果がない場合には、切替え等を検討するということになるかと思います。 ○川西委員 これはTNFα抗体ですが、ファージディスプレイ法によって開発された という点が新しいところで、もう一つの特徴としては、血中濃度が長いということで、 皮下注射を患者さん自身がやってもいいということだったと思います。TNFα阻害タ ンパク質製剤としては従来から点滴静注のものとかTNFα受容体型がありますが、こ の製品については患者さんが管理しつつ御自身で打つということを含めて、安定性等々 の議論はいかがだったでしょうか。私も資料を見ていますので、こんなところかなとは 思うのですが、その辺の議論は十分なさいましたか。 ○機構 添付文書等に記載されております保存条件等を守っていただく範囲において は、安定性は担保されていると考えております。 ○土屋委員 添付文書の「用法・用量に関連する使用上の注意」を見ると、「治療開始 後、医師により適用が妥当と判断された患者については、自己投与も可能である」と。 直後はあれかもしれませんが、これが自己投与になるということは、特に期間の縛りが あるわけではないということなのでしょうか。 ○機構 一定期間は医師による投与を行って、症状の安定、それから安全性の面でも問 題がないということが確認されてから自己投与に移行することが今考えられておりま す。 ○土屋委員 院外処方せんのことも含めてのことなのですが、出された側にしてみたら、 いつ出てくるか分からないわけですので、それはそういうことだと。要するに、出てく るときに特にいろいろなことがあるわけではなく、最初からそういう準備に入っている ということでよろしいのですか。 ○機構 患者さんの希望があり、なおかつ、十分なトレーニングを行った後で、適正に 自己投与ができるということが確認されれば、自己投与に移行できることになっており ます。 ○永井部会長 もしほかになければ、議決に入りたいと思います。本議題について、承 認可としてよろしいでしょうか。異議がないものと認めますので、承認可として薬事分 科会に報告とさせていただきます。  では議題2について、同じく医薬品医療機器総合機構から御説明をお願いいたします。 ○機構 資料2、医薬品ルナベル配合錠について、医薬品医療機器総合機構より御説明 いたします。  本剤は、合成黄体ホルモンであるノルエチステロン1.0mgと合成卵胞ホルモンである エチニルエストラジオール0.035mgを含有する経口剤であり、子宮内膜症に伴う月経困 難症の治療薬です。本剤は既承認の低用量経口避妊薬であるオーソM-21錠と同一成分 ・分量の薬剤であり、国内において2003年より開発が開始され、第III相比較試験、第III 相長期投与試験等の国内臨床試験成績に基づき、子宮内膜症に伴う月経困難症を効能・ 効果とする製造販売承認申請がなされました。  国内では月経困難症又は子宮内膜症の治療薬としてゴナドトロピン放出ホルモンアゴ ニスト、ダナゾール等、また対症療法として非ステロイド性抗炎症薬が使用されていま すが、アゴニストやダナゾールには副作用の影響から投与期間に制限があり、消炎鎮痛 剤では効果不十分又は副作用により投与継続が困難な患者も存在するのが現状です。  2008年1月現在、本剤は、海外での承認申請、承認取得及び販売は行われておりませ んが、低用量経口避妊薬につきましては、英国で子宮内膜症及び月経困難症の適応を、 ドイツでは月経困難症の適応を有し、米国及びカナダでは期待されるヘルス・ベネフィ ットとして子宮内膜症及び月経困難症に対する効果が添付文書に記載されております。  本品目の審査に関しまして、専門委員として配付資料に記載されております委員が指 名されました。  次に、機構における審査の概略を説明させていただきます。  品質、薬理、薬物動態及び毒性については、審査の過程において申請者から適切な対 応がなされ、特に問題はないと判断いたしました。  臨床試験成績について説明させていただきます。第III相比較試験では、子宮内膜症に 伴う月経困難症患者を対象に、プラセボを対照として本剤を1日1回1錠経口投与し、 21日間経口投与した後両群共にプラセボ錠を7日間投与し、これを1周期として、投与 期間は4周期とされました。主要評価項目とした月経困難症スコア合計のベースライン から最終観察周期までの変化量について検討したところ、プラセボ投与群に対する本剤 投与群の優越性が認められたことから、子宮内膜症に伴う月経困難症に対する本剤の有 効性は示されたと判断いたしました。  本剤の安全性については、本剤の投与により高頻度で見られる不正子宮出血等の発現 時には、他の疾患との鑑別、貧血の管理、妊娠検査等を適切に行う必要があり、特に、 子宮筋腫を有する患者に対しては定期的に内診や画像診断等の検査を行うなど慎重に投 与すべきであるものの、提出された臨床試験においては、投与期間の制限を必要とする ような安全性上の懸念は認められていないと判断いたしました。また、製造販売後の調 査として、52週間を超える長期投与時及び若年患者での有効性及び安全性の情報収集等 が必要であると判断いたしました。  以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬 品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。なお、原体 及び製剤は毒薬又は劇薬のいずれにも該当せず、製剤は生物由来製品及び特定生物由来 製品に該当しないと判断し、再審査期間は4年とすることが適当であると判断しており ます。薬事分科会へは報告を予定しております。  御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 これは、オーソM-21という低用量経口避妊薬が既にあって、それと全 く同じ成分で作られている。ただ、適応症が違い、今回は月経困難症、それが違うメー カーから申請が出てきたというところがポイントですが、いかがでしょうか。 ○中澤委員 新しい効能で申請したので効力裏付け試験が行われるのは当然として分か るのですが、安全性薬理試験を行っています。これは以前の経口避妊薬のときの資料は 存在しなかったのでしょうか。 ○機構 薬理試験につきましては、以前のときも存在したと思うのですが、今回は目的 とする薬理効果が若干異なるということもありましたので、改めて資料を添付していた だくということで審査を行いました。 ○中澤委員 新たに行った試験結果を提出していただいたということですね。 ○機構 すべてが新しいというわけではなくて、昔のものをそのまま流用したものもご ざいます。 ○永井部会長 既に使われている薬ではありますので、余り問題はないかと思います。 もし御意見がございませんでしたら、議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょう か。本剤を承認して差し支えございませんでしょうか。問題なしということで、この件 につきましては薬事分科会に報告ということにさせていただきます。どうもありがとう ございました。  議題3にまいりますが、これは村勢委員に進行をお願いしたいと思います。 ○村勢委員 それでは議題3に入ります。ARBの薬剤に関する申請ですが、機構から 概要の説明をお願いいたします。 ○機構 議題3、資料3-1及び3-2、医薬品イルベタン錠50mg、同100mg、並びに、ア バプロ錠50mg、同100mgにつきまして、医薬品医療機器総合機構より説明させていただ きます。  本薬の有効成分であるイルベサルタンは、フランスSanofi社(現sanofi-aventis社) で見いだされた、アンジオテンシンIIタイプ1受容体の選択的な拮抗薬(以下、ARB) です。本薬は、高血圧症治療薬として、1997年8月に欧州各国で「高血圧症」の効能で 承認されたのを始め、2008年1月現在、米国及び欧州各国を含む109か国で承認されて おります。  本邦では、□□年□月に「高血圧症」の効能で承認申請されましたが、当時の審査に おいて、「申請資料では上限用量(200mg)の妥当性が十分示されていない」との結論に至 り、□□年□月に申請が取り下げられました。その後、本薬200mgと類薬であるロサル タンカリウム(以下、ロサルタン)の上限用量である100mgとの非劣性を検証する国内第 III相試験が追加実施され、2006年12月に再度承認申請がなされたものです。  本品目の審査に関しまして、専門委員として、資料18に記載されております委員が指 名されました。  本品目の審査の概略について、説明させていただきます。  品質及び非臨床については、審査の過程において申請者から適切な対応がなされ、特 に問題はないと判断いたしました。  臨床試験成績について説明させていただきます。  追加実施された国内第III相試験は、ロサルタンを対照薬とした二重盲検並行群間比較 試験として、日本人高血圧症患者(392例)を対象に実施された結果、主要評価項目であ るトラフ時坐位拡張期血圧の下降度の平均値は、本薬群9.37mmHg、ロサルタン群 9.22mmHgであり、本薬200mgのロサルタン100mgに対する非劣性が検証されました。安 全性について、副作用は、本薬群9.1%、ロサルタン群11.6%、臨床検査値異常変動の 発現率は、本薬群15.7%、ロサルタン群12.6%であり、有効性及び安全性に特段問題は ないと判断いたしました。  本薬については、本邦六番目のARBであり、新規性はないものの、国内第III相試験 成績からは、本薬200mgが類薬であるロサルタンに比して、有効性及び安全性が特段劣 るものではなく、初回申請時に問題になった上限用量としての有用性も示されたと考え られたことから、本薬は高血圧治療における新たな選択肢になり得るものと判断いたし ました。  なお、製造販売後臨床試験として、長期投与試験、食事の影響試験及び高齢者を含む 薬物動態試験を実施し、その結果を速やかに添付文書に反映することにしております。 また、製造販売後調査として、再審査期間中に、3,000症例を対象に重大な副作用の発 現状況、肝機能障害、腎機能障害、糖尿病などを有する患者の副作用発現状況や、高カ リウム血症、CK上昇及び横紋筋融解症等の副作用情報を収集する予定です。  以上のような検討を行った結果、本薬を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬 品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。  本薬は原体、製剤共に毒薬、劇薬に該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品に 該当しないと判断し、再審査期間は8年とすることが適当であると判断しております。 薬事分科会では報告を予定しております。  御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○村勢委員 委員の先生方から御質問あるいは御意見をお願いしたいと思います。 ○永井部会長 薬理的には、IC50で見るとロサルタンの方が余り効かないのですね。 ロサルタンが12.2nmol/Lでイルベサルタンが0.8nmol/L。ですが、臨床的にはイルベサ ルタンの方が100mgから200mgと逆転しています。そうなるのは一体どういうメカニズ ムなのか。 ○機構 薬物動態試験の結果からは吸収の飽和が認められておりまして、高用量になる と吸収が頭打ちになってしまうということ、またバイオアベイラビリティーの問題で薬 効が非臨床試験と乖離した結果になっているのではないかと推察しております。 ○中澤委員 不勉強のせいか、知らない単語があるのです。拮抗作用ということで 「insurmountable」という単語があるのです。これを辞書で引くと「非可逆」と出てい るのですが、これは「irreversible」と何か違いがあるのでしょうか。 ○機構 いろいろ調べたのですが、その様式についての適切な日本語訳がございません で、率直に言って、どのように訳すべきなのかよく分かりません。申し訳ございません。 様式の対比的なものとして、資料に書いてあるものを忠実に再現した形で記載させてい ただいたのが実際です。 ○澤田委員 今回、余り詳しいPK等の生データが出ていないので分からなかったので すが、バイオアベイラビリティーはそれほど悪くないように書いてあるのですけれども、 ロサルタンはもっと良いのでしょうか。  また、多分、代謝はCYP2C9とUGTでいくのですが、本文を読むと、余りコントリビ ューションがないと理解できるのです。そうすると、原薬はかなり濃度が高いはずなの です。先ほどのin vivoでの効き目から考えると、理由がよく理解できないのですが、 分かっている範囲でお話しいただけませんか。 ○機構 分かりかねる部分がありますので、確認した後に答えさせていただきます。 ○澤田委員 PKのパラメータを調べて、Cmaxなどを見れば分かると思うのです。排 泄が非常に速いのかもしれませんし。 ○審査管理課長 先ほど中澤委員から御指摘のあったことは、審査報告書の11ページ、 4)作用機序の(2)「ウサギ摘出大動脈におけるAII、ノルエピネフリン及び塩化カリウム 収縮に対する作用」、この5行目に「insurmountable」という表現が出てきて、これを 御指摘いただいたのだろうと思います。これについては、「最大反応も抑制される、資 料作成者によるとinsurmountableと呼ぶ拮抗作用様式を示したが」という形で実際上訂 正した上で御了解いただくということにさせていただきたいと思います。よろしくお願 いいたします。 ○中澤委員 今のお話は、最大反応も抑制されるのがinsurmountableな抑制であるとい う御説明ですか。 ○審査管理課長 insurmountableというのがどういう状態かが分からないということ でしたので、分からないままこの報告書に書いておくのは余り適切ではないのだろうと 解釈し、「資料作成者によると」という表現を加えて、その説明をしたらどうかと考え ております。 ○中澤委員 その直後に「本薬がAT1受容体に結合した後の解離が遅く」と書いてあ りますので、このことをinsurmountableと表現しているのかなと私は考えたのですが。 ○審査管理課長 恐らく先生の御解釈なのだろうと思います。ただ、insurmountableと いう用語自体が余り使われない用語である、先生も聞いたことがないとおっしゃってお られるわけです。我々も、このinsurmountableという用語がどういう意味かと後で聞か れると困ってしまいますから、それは、資料作成者がinsurmountableと呼んでいるので す、ということでそこを明確化した形にして、この用語を使った意義についてここで注 釈をしておくという提案です。 ○中澤委員 分かりました。 ○村勢委員 できましたら、その内容を翻訳して、こういう状態であるということを加 えていただけると、より的確な記録になるのではないかと思います。その辺も加えてお 願いいたします。ほかにはよろしいでしょうか。  それでは議決に入りたいと思います。なお、鈴木委員、永井委員、西澤委員、野田委 員、村田委員、本橋委員におかれましては、薬事分科会の申合せに基づきまして、議決 への参加は御遠慮いただくことにいたします。本題につきまして承認を可としてもよろ しいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせ ていただきます。 ○永井部会長 それでは議題4に入らせていただきます。松井委員には、この議題の審 議の間、別室で御待機いただくことにいたします。 ── 松井委員退室 ── ○永井部会長 機構から概要の説明をお願いいたします。 ○機構 それでは議題4、医薬品アログリセムカプセル25mgの製造販売承認の可否等に ついて、総合機構より御説明申し上げます。  高インスリン血性低血糖症は、主に新生児や乳幼児に発症し、インスリンが過剰に産 生されることで低血糖を引き起こす疾患です。発症から治療開始までの時間が予後を左 右するとされ、早期に適切な治療が行われなければ死に至る、又は永続的な知能障害や 運動障害を残す重篤な疾患であります。国内の患者発生数は年間約30名と推定されてお ります。  本剤の有効成分であるジアゾキシドは、国内の治療ガイドラインや海外の代表的な教 科書では、第一選択薬に位置付けられており、その作用機序は、膵島細胞の細胞膜AT P感受性、K+チャネルの活性化による、インスリンの分泌抑制とされております。  海外では、1972年にドイツ、フランス、南アフリカで承認されて以来、2007年12月 現在、9か国で本剤が承認されております。なお、国内には既承認薬は存在いたしませ ん。  国内での開発の経緯につきましては、1968年に小児科医から米国シェリング社(現シ ェリング・プラウ社)の関連会社であるエッセクス日本株式会社(現シェリング・プラウ 株式会社)に本剤の提供依頼がなされたことを受け、個人輸入による本剤の無償提供が開 始されました。1974年には、日本小児科学会等から当時の厚生大臣あてに要望書が出さ れたことから、当時のエッセクス日本株式会社は、1978年に本剤の承認申請を行いまし たが、非臨床の追加データを求められたことを主な理由として、承認申請が取り下げら れました。  一方、1998年から始まった厚生科学研究において、日本小児内分泌学会薬事委員会は、 本剤を承認すべき最優先の薬剤と位置付けました。また、2005年に開催された、第4回 未承認薬使用問題検討会議において、「本剤のエビデンスは国際的に確立されており、 国内の使用実績も学会によってまとめられていることなどから、新たな臨床的懸念がな い限り、非臨床試験を追加すべき状況ではなく、国内の治験が早期に開始されるよう検 討すべきである」、と結論付けられました。  これを受けて申請者は、□□年□月に国内第II相試験を開始し、現有の資料をまとめ、 2007年3月に製造販売承認申請を行いました。2007年5月には、本申請は、優先審査の 対象とされております。  本品目の専門協議では、資料18に示す方々を、専門委員として指名させていただいて おります。  次に、国内臨床試験成績について説明させていただきます。  本剤の有効性につきましては、23例を対象とした国内第II相試験において、有効性の 評価項目である空腹時血糖値、インスリン値及びHbA1Cの平均値が、いずれも12週 間の投与期間中、正常範囲内に維持されたことから、示されたと判断しております。  安全性につきましては、国内第II相試験において副作用が2例に3件認められました が、いずれも軽度であり、また、死亡例や有害事象による投与中止例も認められなかっ たことから、大きな問題はないものと判断しております。しかしながら、日本人での検 討症例は極めて限られており、本剤の有効性及び安全性の評価には限界があるものと考 えます。  本剤は長期にわたって使用される薬剤であることなどから、本剤の投与全症例を対象 に製造販売後調査を実施し、長期投与時の安全性及び有効性に係る情報を収集する必要 があると考えます。なお、患者数が少なく、用量設定試験を実施することが困難である 現状を踏まえると、国内の治療ガイドライン等を参考に設定された、申請時の用法・用 量に特段の問題はない、と現時点で判断しておりますが、これまでの個人輸入による使 用経験や、国内第II相試験成績から判断すると、設定された用法・用量の適切性を十分 評価できたとは必ずしも言えないことから、製造販売後調査の中で用法・用量について もさらに検討する必要があると考えております。  以上のとおり、医薬品医療機器総合機構での審査の結果、投与全症例を対象とした長 期使用成績調査の実施を条件に、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品 第一部会で審議されることが妥当と判断いたしました。  本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年が適当であると判断 しております。なお、原体及び製剤は劇薬に該当し、また、生物由来製品及び特定生物 由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。  薬事分科会では審議を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げま す。 ○永井部会長 それでは御討論をお願いいたします。 ○土屋委員 薬剤にけちを付けるつもりはございませんが、剤型が気になって、しょう がないのです。これは常に脱カプセルすることを要求するのだと思うのです。なおかつ 注意に「乳幼児においては、正確な用量を投与するよう特に注意すること」とあると、 そもそもこれは処方せんでどう書くのか。何mgと原薬量を書くのかもしれませんが、そ うすると、調剤をやるときにどうなるのか、また、薬価はどうなるのかということも含 めて、現場においてやり方が難しいと思うのです。海外でもカプセルだと思いますが、 海外で粉は余り飲まないということからすると、どういう投与をされていたのか。こう いう段階で他の剤型を推薦することはしないのですか。 ○機構 米国では懸濁液が発売されております。我々としても、低年齢の患者さんです から、脱カプセルあるいはカプセル粉砕ということを考えると、懸濁液の方が望ましい のではないかという話をしました。しかし、米国ではジアゾキシドの販売権を他社に譲 渡していまして、申請者も懸濁液の導入を検討してはみたのですが、□□□の関係から、 それは難しいということで、まずは本剤の安定供給を優先して考えたということです。 実際、国内の臨床試験開始前に、既に無償提供という形である程度の期間、患者さんに この薬が提供されていましたが、多くの方が脱カプセルあるいは粉砕という形で現場で 使われていて、現場の薬剤師が対応すれば正確な用量の投与も可能であろうというのが 申請者の考えであります。 ○土屋委員 例えば計算で13kgの人のことを考えて、104mg使うなどということになる と、4カプセルと書いたら足りない。処方せん上何mgと書かざるを得なくなったときに、 薬価はどうなるのか。散剤であればそうなりますが、そういうときに薬価はカプセル単 位で、5カプセルのうち4.01カプセル分を使うみたいな話でいいのか。でも、7日分で すと、トータルでいくと少ない量で済んでしまうのです。いろいろな意味で、剤型が懸 濁液であれば解決する話が、カプセルであるがゆえに、いろいろなことが出てくる。や れと言われれば、我々はきちんと正確なことをやるというのを旨としています。散剤が 正確になるかどうかは別としまして。しかし、その辺がちょっと残念というか、ちょっ と厳しい。出し方としても、いろいろな意味で難しいところがあると思います。 ○審査管理課長 先生の御指摘はごもっともだろうと思います。これが患者数が非常に 限られているような薬でなければ、幾ら調剤をしっかりやっていただいても、それだけ 過誤のおそれ、リスクが高まるということもあるわけですから、業者としても、あるい は我々としても、よりリスクの少ない製剤を供給するように努力をすべきなのだろうと 思います。  ただ、この薬自体について申し上げますと、今の患者さんが200〜250人、新規で毎年 20人程度ということが書かれております。そういうことを考えますと、今、無償提供と いう形で提供されているのを正規のルートに変える、少なくとも多くの国々と同じレベ ルに早く引き上げるという選択肢をとらざるを得ないのかなと。先生の御意見は今後の 承認申請あるいは医薬品の開発段階で胸に置いておくべき話なのかなと考えておりま す。 ○川西委員 これと、次のものもそうですが、私は未承認薬検討委員会に関係していま して、この辺は患者の親御さんが使用を非常に望んでいる。それから、特にジアゾキシ ドに関しては、ものはとうの昔からあって、米国の薬理の教科書ですと標準薬的な扱い になっている。一方、恐らく、製薬会社の立場になると非常に安いもので、利潤には結 び付きにくい。そのようなことがあるものの、とにかく供給体制を作ること、これが第 一だろうと私も思っています。現場の薬剤師さんは非常に困られる部分はあるかと思い ますが、患者さんの数が限られているということで、その辺はカバーして、何とか使え るようにするということがまず第一だと私は思います。 ○土屋委員 私はプロでございますので、そこはやりますが、できればこういうときに、 そういう使い勝手も含めて推薦されるとよかったなと思うのです。しかし、現実はこの 薬が必要だということは分かっておりますので、そこは今後のときにいろいろお考えい ただければということです。 ○野田委員 効能・効果のところに「本剤の適用に当たっては、日本小児内分泌学会の 診断と治療ガイドライン等を参考に、高インスリン血性低血糖症との診断が確定してい る患者」とありまして、一方、用法として成人用量も記載されていますが、これは小児 だけではなく、成人の例えばランゲルハンス島腫瘍(インスリノーマ)のことも想定して おられる記載と理解してよろしいでしょうか。 ○機構 診断基準では、高インスリンと低血糖が認められるということで、診断基準と して、インスリン、遊離脂肪酸、βヒドロキシ酪酸、その中でそれぞれ値が示されてい まして、その三つのいずれかが認められたら診断できる。あとはグルコースの静注量が 6〜8mg/kg/分を満たした場合には強く疑うという形です。こういう条件が満たされれ ば高インスリン血性低血糖症ということになりますので、該当する原疾患としてはいろ いろ想定されると思います。 ○永井部会長 「臨床概要」の2.7.3の4ページ、図2.7.3-1で血糖と平均インスリン の関係を見ておりますが、血糖の軸の単位がよく分からないのです。0、5、10、1、 2、2、3とあり、これは間違いのような気がしますが、いかがですか。 ○機構 これは日本小児科学会雑誌に2003年に公表された論文から持ってきています が、我々が見ている資料、元のものは違いますね。御指摘の部分の作成ミスだと思いま す。5、10、15、20、25、30から始まって50までX軸がいくのが正しいです。 ○永井部会長 単位が違っているのですね。 ○機構 単純なミスだと思います。 ○永井部会長 そのほかに何か意見はございますか。もしございませんでしたら議決に 入りたいと思います。本議題について、承認可としてよろしいでしょうか。御異議がご ざいませんでしたら承認可といたします。本剤は新有効成分であり、既存の類薬はござ いませんので、薬事分科会に上程して審議ということにさせていただきます。どうもあ りがとうございました。 ── 松井委員入室 ── ○永井部会長 議題5にまいります。機構から概要の説明をお願いします。 ○機構 それでは議題5、医薬品ナグラザイム点滴静注液5mgの製造販売承認の可否等 について、御説明申し上げます。  ムコ多糖症VI型は、常染色体・劣性遺伝病の一つであり、グリコサミノグリカンの硫 酸多糖成分を分解する、ライソゾーム加水分解酵素の一つが欠損又は活性低下すること により、ムコ多糖の一つであるデルマタン硫酸がライソゾームに蓄積し、複数の臓器や 組織に進行性の障害が発現する疾患です。  病態が急速に進行する急速進行型では、骨格変形、上気道閉塞、再発性の呼吸器感染 や関節異常が見られ、やがて車いすや寝たきりの生活となり、感染症や手術の合併症、 心肺不全により10代で死亡することが多いとされております。一方、病態が緩徐に進行 する緩徐進行型では、40代まで生存することがあるものの、急速進行型と同様に、末期 に著しい機能喪失を来すとされております。  国内での発生頻度は、4万人〜5万人に1人と推定されており、2007年10月15日現 在、6名の患者の存在が確認されております。  治療方法には、対症療法として角膜移植や弁置換術などがあり、また、根治的療法と して骨髄移植と酵素補充療法があります。しかしながら、対症療法では疾患の進行を抑 制することはできず、一方、骨髄移植の効果は不十分であることが多く、生着不全やG VHDなどの重篤な副作用が発現する可能性もあり、さらに、ドナーの確保などの問題 を含めると、骨髄移植の適応は限定されます。なお、国内においては、ムコ多糖症VI型 に対して、酵素補充療法に使用できる既承認薬は存在いたしません。  本剤は、有効成分として遺伝子組換え技術を用いて生産されるガルスルファーゼを含 有した、酵素補充療法に用いるための注射剤であり、病態の進行抑制が期待されており ます。海外では、2005年5月に米国でムコ多糖症VI型治療薬として承認されて以来、2007 年8月現在、EU、オーストラリア、クロアチアでも承認されております。  国内においては、患者数が極めて少ないこと、生命を脅かす疾患であり、本剤の可及 的速やかな保険適用が望まれていること、第6回未承認薬使用問題検討会議において、 「海外臨床試験成績による承認申請を認め、審査期間中に国内治験データの中間報告を 求める、又は製造販売後調査などで国内情報を収集するなどの柔軟な対応をすべきであ る」とする検討結果が示されたこと、2007年6月に希少疾病用医薬品に指定されたこと などから、申請者は欧米での承認申請資料を中心に国内での承認申請資料を作成し、2007 年8月に本剤の製造販売承認申請を行いました。  本品目の専門協議では、資料18に示す方々を、専門委員として指名させていただいて おります。  次に、臨床試験成績について説明いたします。  本剤の有効性については、39例を対象とした、海外のプラセボ対照二重盲検比較試験 において、12分間歩行テストでの歩行距離の改善や、ムコ多糖であるグリコサミノグリ カンの尿中濃度の低下が見られたことなどから、示されたと考えております。  安全性については、提出された資料の範囲では、大きな問題はないと判断しておりま す。しかしながら、日本人の成績については、3例の臨床研究データが提示されている のみであることから、その評価には限界があるものと考えます。特に、抗体産生が本剤 の有効性及び安全性に与える影響について、現時点で不明確であること、投与関連反応 が海外の多くの症例で認められていることなどから、製造販売後に投与全症例を対象に 安全性及び有効性に関する調査を行い、本剤の適正使用に係る措置を講ずる必要がある と考えます。  以上のとおり、医薬品医療機器総合機構での審査の結果、投与全症例を対象とした長 期使用成績調査の実施を条件に、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品 第一部会で審議されることが妥当と判断いたしました。  本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年が適当であると判断して おります。なお、本剤は生物由来製品に該当し、原体及び製剤は劇薬に該当すると判断 しております。  薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げま す。 ○永井部会長 それでは御質問、御意見をお願いします。これ自体が酵素なわけですの で、場合によっては組織を障害するということはないのでしょうか。 ○機構 これまでの海外の情報も含めて、そのようなことは報告されていないと思いま す。 ○澤田委員 これは米国で2005年に販売されて、どのくらい長期間使用経験があるのか ということと、日本人の場合、これをずっと処置し続けることになる気がするのですが、 それは市販後にずっと調査するという話になるのですか。 ○機構 まず、長期の投与経験につきましては、米国で承認されたのが2005年であるこ とを考えますと、それほど高年齢の方まで投与された経験は今のところないと考えられ ます。  それから、この薬による治療がなされた場合には、かなり長期間使われる。もう一方 で、この薬が万能であるというわけではなく、骨髄移植も治療法の一つとしてあります。 少数例ですが、骨髄移植をしてから本剤を使うと。あるいは併用というのもあるようで すが、そこはデータが公表されていないということで、分からない部分ももちろんあり ます。海外も含めても、さほど豊富なデータがあるわけではありません。答えになって ますでしょうか。 ○澤田委員 状況は分かりました。多分、これからの状況を考えて判断されることにな るのかと思います。 ○永井部会長 そのほかにいかがですか。よろしいですか。もし御意見がなければ議決 に入りたいと思います。この議題について、承認可としてよろしいですか。御異議がな いようですので、承認可ということで薬事分科会への報告とさせていただきます。あり がとうございました。  議題6にまいります。機構から概要の御説明をお願いします。 ○機構 議題6、資料6、医薬品トレドミン、同錠15及び同錠25の再審査における製 造販売承認事項の変更について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  本剤の有効成分は塩酸ミルナシプランで、薬効分類としては、SNRI(セロトニン・ ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)に分類されます。本邦においては、平成11年9月 22日に承認されております。なお、承認に当たり、承認条件として「本薬の用量-反応 関係の確認及び本薬の臨床的特徴の検証を目的とした市販後臨床試験を行うこと。また、 高齢者を対象とした特別調査も実施し、これらの成績を再審査資料として提出するこ と。」が付与されております。  申請者は、市販後調査として、調査症例数3,000例を目標とした使用成績調査、及び 100例を目標とした長期使用に関する特別調査に加え、承認条件に基づき、市販後臨床 試験として症例数900例を目標とした塩酸イミプラミン群、本薬初期用量25及び50mg/ 日群の3群による二重盲検並行群間比較試験、並びに調査症例数300例を目標とした高 齢者に関する特別調査を実施し、平成17年12月19日に再審査申請がなされました。  市販後臨床試験は、初期用量50mg/日の適切性を初期用量25mg/日を対照に確認する こと、並びに本剤の臨床的特徴に関して、塩酸イミプラミンを対照に本剤の有効性、効 果発現が速いこと及び抗コリン性副作用の発現が少ないことの確認が目的とされまし た。その結果、初期用量に関して、主要評価項目である1週時うつ症状改善度「軽度改 善」以上の改善率は、25mg/日群で60.4%、50mg/日群で51.2%、塩酸イミプラミン群 で61.9%で、承認用量である初期用量50mg/日群の25mg/日群に対する優越性は検証さ れませんでした。また、臨床的特徴に関して、安全性に関する主要評価項目である抗コ リン性副作用発現症例率は25mg/日群で44.1%、50mg/日群で39.5%、塩酸イミプラミ ン群で56.6%で、本剤群で有意に低かったものの、有効性に関する主要評価項目である 最終うつ症状改善度「中等度改善」以上の改善率は、25mg/日群で61.2%、50mg/日群 で55.8%、塩酸イミプラミン群で67.7%で、承認用量である初期用量50mg/日群の塩酸 イミプラミン群に対する非劣性は検証されず、塩酸イミプラミン群で有意に高い結果で した。一方、悪心、嘔吐及び胃腸障害に関して、投与開始1週以内の副作用発現件数は 25mg/日群で38件、50mg/日群で69件、塩酸イミプラミン群で21件で、かつ1週目来 院時までの早期中止例における発現症例率は、25mg/日群で25.9%、50mg/日群で52.6 %、塩酸イミプラミン群で 19.2%で、承認用量である初期用量50mg/日群で有意に高い結果でした。  これらの結果を踏まえ、機構は、成人に対する本剤の初期用量は25mg/日と設定する こと、また、高齢者に対しては、特別調査等において特段の問題点は認められていない ものの、成人における市販後臨床試験の結果を踏まえて初期用量を成人と同一にするこ とが適切であり、これに係る本剤の用法・用量を変更することが適切と判断しました。 また、本剤の有効性に関して塩酸イミプラミンに対する非劣性が検証されなかったこと については、本剤は本邦で初めて承認されたセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み 阻害剤であり、承認当時は選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を含めた類薬 が存在せず、市販後臨床試験での対照薬は三環系抗うつ薬とせざるを得なかったこと、 承認時までの試験成績として四環系抗うつ薬である塩酸ミアンセリンを対照とした試験 では同等と判断されていたことを踏まえると、本剤は三環系抗うつ薬とは異なる位置付 けの薬剤であると考えることが適切と判断し、添付文書の「効能・効果に関連する使用 上の注意」の項で「本剤の有効性は四環系抗うつ薬と同等と判断されているものの、三 環系抗うつ薬との非劣性は検証されていないため、投与に際してはリスクとベネフィッ トを勘案すること」との注意喚起を行うことが適切と判断しました。  以上より、本剤の再審査結果は「カテゴリー2」、すなわち、製造販売承認事項の一 部を変更すれば薬事法第14条第2項第3号イ〜ハのいずれにも該当しない、と判定しま した。なお、初期用量の変更に伴い、機構は申請者に12.5mg製剤の剤型追加に係る承認 申請を早急に行うよう求めており、平成20年3月末までには、12.5mg製剤に関する承 認申請がなされる予定です。  以上です。薬事分科会には報告を予定しております。よろしく御審議のほどお願いい たします。 ○永井部会長 それでは御質問、御討議をお願いいたします。 ○土屋委員 1日25mgを初期用量とするというのはいいのですが、今はまだ12.5mg製 剤がないし、割線があるわけでもないので、「1日2〜3回に分けて食後に経口投与す る」とありますが、そのときの投与方法はどうするのですか。 ○機構 ベストな方法としては、今現在継続的に使用されている患者さんについては、 既に通常用量まで到達していると思われますので、そのまま投与を継続していただき、 最初にこの薬剤を投与する患者さんに関しては、12.5mgの製剤が出るまでの間は、処方 を極力控えていただくのが一番望ましい姿だと思います。  そうは言いましても、本剤の初期用量が高いことで一番懸念されることは悪心、嘔吐、 胃腸障害に関連する事項ですので、それによって初期のドロップアウトが多くなること が最終的には有効性にも影響してくるものと考えておりますが、既にあるSSRIから の切替えなどの場合、初期のセロトニン性胃腸障害に十分留意した上で、慎重に投与す る方法をとるか、若しくは、25mgの製剤のほかに、高齢者の製剤として15mgの製剤が ありますので、15mgの製剤等を代用していただくか、それは、先生方の患者さんとのや り取りの御判断の中で慎重に対応していただく、という対応をせざるを得ないのではな いかと考えております。 ○西澤委員 改訂添付文書案の2ページに、「排尿困難のある患者」という記載があり ますが、これは、使用に当たっては排尿困難のあることを問診するようにというような ことを付けるのですか。  実際に抗コリン作用があるので、前立腺肥大症の方とか、確かに高率に尿閉等が出る おそれがありますが、「使用上の注意」の「慎重投与」のところに「排尿困難のある患 者」と記載した場合、インタビューのところで患者さんに排尿困難がありますかと聞き なさいという指導にはなるのですか。 ○機構 この品目に関しては、再審査にかかわる一部承認事項の変更ということで、既 に「慎重投与」の項については、既存の添付文書で対応されている事項ですので、同じ ように臨床の現場では対応していただいているものと考えますが、「慎重投与」の項に 記載されている事象、疾患に関しては、当然のことながら問診等で、患者さんへの投与 が適切かどうかということは判断していただくべきだと考えております。 ○本橋委員 先ほどの御説明ですと、12.5mg錠を造るというお話でしたが、現実には15 mg錠から始めている場合も結構あるのではないかと思います。あえて12.5mg錠を造る必 要はあるのですか。  それから、先ほどの排尿困難の問題ですが、この薬の場合は恐らく抗コリン作用とい うよりはα1を刺激してしまう作用がありますので、α1遮断作用が余りない薬ですか ら、そういうことも排尿困難に影響しているのではないかと思います。抗コリン作用で 排尿困難、口渇、便秘、その他を一緒に扱ってしまうのは少し問題ではないかと思いま す。 ○機構 12.5mg錠の製剤に関しては、15mg錠でのエビデンスが現時点ではないというこ とで、承認時までの過程におきましても、後期第II相試験では初期用量に関して、治験 薬として12.5mgの製剤と25mgの製剤を使って、初期用量1日25mgと50mgを比べて検 討されております。今回の市販後臨床試験についても、その結果に基づく承認条件を踏 まえて15mgの製剤は特に使っていませんので、1日量30mgというもののエビデンスは ないものと考えております。したがいまして、現状の科学的なエビデンスに基づきます と、12.5mgの製剤を造っていただかざるを得ないと考えます。  抗コリン性副作用の発現に関しては、市販後臨床試験においても抗コリン性副作用の 四つの事象の中で個別の有意差についても確認しております。改訂添付文書案の中にも 具体的な臨床成績の結果を記載しております。改訂添付文書案の9ページ、抗コリン性 副作用として、口渇、便秘、排尿困難、尿閉、調節障害(眼障害)、散瞳についての発現 率を提示しております。これを見ていただくと分かりますように、排尿困難については イミプラミン群と比べて特に有意差は得られておりませんし、使用成績調査の中でも、 承認時と比べて若干高い傾向も認められていますので、本剤に関しては、確かに抗コリ ン性副作用とまとめて検討されていますが、この中でも排尿困難等に関しては、やはり 本剤でも注意が必要な副作用であると考えております。 ○永井部会長 よろしいですか。よろしければ議決に入りたいと思います。西澤委員に おかれましては、薬事分科会申合せに基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこ とにいたします。本議題につきまして、製造販売承認事項の変更を可としてよろしいで すか。もし御異議がなければ、製造販売承認事項の変更可ということで、薬事分科会に 報告させていただきます。どうもありがとうございました。  それでは議題7に入ります。これは、先ほど事務局から御説明がありましたが、報告 事項1に伴うものですので、議題7及び報告事項議題1につきまして、機構から概要の 御説明をお願いします。 ○機構 審議事項議題7と報告事項議題1について、御説明させていただきます。  順番が逆になりますが、まずは報告事項の議題1「医薬品デュロテップMTパッチ2.1 mg他の製造販売承認について」、説明させていただきます。資料7、8の二つの番号が 振られている資料を御覧ください。本剤は、オピオイドμ受容体作動性を有する、「中 等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」に用いる経皮吸収型製剤であり、現在 は、同効能でリザーバーシステムの経皮吸収型製剤であるデュロテップパッチ2.5mg他 が承認されております。今般、ヤンセンファーマ株式会社から、マトリックスシステム の経皮吸収型製剤について、「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」を効 能・効果とする製造販売承認の申請がなされたものです。医薬品医療機器総合機構にお ける審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。  続きまして、本薬の承認に伴い、審議事項議題7、同じく「医薬品デュロテップMT パッチ2.1mg他に係る毒薬又は劇薬の指定の要否について」、御説明いたします。有効 成分フェンタニルについては、原薬は既に「毒薬」に指定されており、既承認製剤であ るデュロテップパッチ2.5mg他は「劇薬」に指定されているところです。今般のマトリ ックスシステムの経皮吸収型製剤の製造販売承認に伴い、本薬の毒薬又は劇薬の指定に ついては、既承認製剤と同様に、製剤を「劇薬」とすることが適当と考えるものです。 これら製剤の毒薬又は劇薬の指定の要否について、御審議のほどよろしくお願いいたし ます。以上です。 ○永井部会長 製造承認に伴って、毒薬又は劇薬の指定が可であるかどうかということ です。何か御質問はありますか。 ○土屋委員 これが認められたときには、従来のものは切り替えていくという格好をと るのか、それともずっと併売の形ですか。 ○機構 切替えとして認識しております。 ○永井部会長 よろしいですか。もし御質問等がなければ、議決に入ります。本橋委員 におかれましては、薬事分科会申合せに基づきまして、議決への参加を御遠慮いただく ことにいたします。本議題につきまして、毒薬又は劇薬の指定を可としてよろしいです か。御異議がないようですので、これは毒薬又は劇薬の指定可ということで、薬事分科 会報告とさせていただきます。また、報告事項議題1の「デュロテップMTパッチ2.1 mg等の製造販売承認」につきましては、御確認いただいたということにいたします。  続いて、報告事項の議題2以降について、御説明をお願いします。 ○機構 議題2「医薬品ブレビブロック注100mgの製造販売承認事項一部変更承認につ いて」報告いたします。資料9を御覧ください。本剤は、現在、「手術時の上室性頻脈 性不整脈に対する緊急処置」の効能・効果について、「急速静脈内投与」の用法で承認 されているものです。平成14年の本剤承認時に、承認条件として、「本剤は海外におい て術中の上室性頻脈に対して、急速静脈内投与後の持続投与が承認されていることを踏 まえて、本邦においても速やかに持続投与の用法・用量に係る検討を行うこと。」が付 されました。これを受けて今般、丸石製薬株式会社から、「急速静脈内投与後の持続投 与」の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。 医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を手術時の上室性頻脈性不整脈に対 して用いる際の、急速静脈内投与後の持続投与の用法・用量を承認して差し支えないと 判断いたしました。また、既承認時に付された承認条件の内容についても同時に確認さ れたものと判断いたしました。  議題3「医薬品ビカネイト輸液の製造販売承認について」御報告いたします。資料10 を御覧ください。本剤は、重炭酸リンゲル液であり、今般、株式会社大塚製薬工場から、 「循環血液量及び組織間液の減少時における細胞外液の補給・補正、代謝性アシドーシ スの補正」の効能・効果にて製造販売承認の申請がなされたものです。医薬品医療機器 総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。  議題4「医薬品シムレクト小児用静注用10mgの製造販売承認について」御報告いたし ます。資料11を御覧ください。本剤は、バシリキシマブ(遺伝子組換え)を有効成分とす る免疫抑制剤です。現在、同じ有効成分の免疫抑制剤として、「シムレクト注射用20 mg」が、「腎移植後の急性拒絶反応の抑制」の効能・効果で承認されており、「シムレ クト注射用20mg」の承認時に、承認条件として「国内での小児の用法・用量を検討する ため、市販後臨床試験を含む市販後調査を実施すること。」が付されました。これを受 けて、今般、ノバルティスファーマ株式会社から、小児の用法・用量を設定した別の小 児用製剤の製造販売承認の申請がなされたものです。なお、本剤は、この効能について、 平成 11年8月25日に希少疾病用医薬品に指定されています。医薬品医療機器総合機構にお ける審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。また、これにより 「シムレクト注射用20mg」の承認時に付された当該承認条件の内容についても、同時に 確認されたものと判断いたしました。 ○機構 議題5、医薬品の承認条件に係る報告書の審査結果について御報告します。資 料12を御覧ください。1ページ、パピロックミニ点眼液0.1%は、平成17年10月に「春 季カタル(抗アレルギー剤が効果不十分な場合)」を効能・効果として承認されており、 承認条件として「治験症例が極めて限られていることから、市販後、一定数の症例に係 るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、 本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置 を講じること。」とされております。今回は、この承認条件に関して参天製薬株式会社 よりデータが提出され、機構での審査が終わりましたので、御報告させていただきます。  2ページ、II.の(1)ですが、提出されたデータでは、本剤が販売された平成18年1 月23日〜平成19年6月27日の間に1,382例が収集され、このうち6か月間の観察期間 が終了した症例は1,013例でした。  3ページ、(3)ですが、安全性につきましては、安全性解析対象症例1,242例におけ る副作用発現率は8.2%であり、承認時の臨床試験と比較して高くなる傾向は認められ ませんでした。4ページ以降に具体的な副作用が書かれております。承認時までに認め られなかった副作用は65件認められており、重点調査項目である眼感染症13件が含ま れます。このうち、「角膜びらん・角膜潰瘍等」については、平成18年10月の添付文 書の改訂により、副作用として追記されており、「ヘルペス性角膜炎、麦粒腫、細菌性 結膜炎、細菌性角膜潰瘍、眼瞼炎」については、本剤との関連性が否定できないことか ら、本年3月に予定されている添付文書の改訂において、副作用として追記することと しております。  8ページ、有効性の記載がありますが、6か月間の観察期間が終了し、有効性解析対 象症例となった880例について確認されています。有効性の評価は、承認時の国内試験 と同様に、自覚症状及び他覚所見をスコア化していますが、投与後1か月目、2か月目、 3か月目、6か月目、最終観察時の各スコアは投与開始時と比べていずれも有意に減少 し、改善が見られております。  9ページ以降、使用成績調査では、ステロイド剤との併用、7歳未満の小児への投与、 8週間を超える長期投与の際の安全性及び有効性について確認しておりますが、安全性 及び有効性について異なる傾向は認められませんでした。さらに、今回提出された調査 期間以降の副作用発現状況も異なる傾向は認められませんでした。  企業としては、全例調査終了後も予定症例数1,000例を対象に観察期間1年間の特定 使用成績調査を実施し、引き続き本剤の投与状況、安全性及び有効性について更なる情 報収集を行うこととしております。以上のことから、提出資料の審査の結果、本剤の安 全性及び有効性について現時点で特に大きな問題はないと判断し、承認条件の内容につ いて確認できたものとしております。報告は以上です。 ○永井部会長 これまでの御報告で何か御質問、御意見はありますか。よろしいですか。 よろしければ、御確認をいただいたということにいたします。 ○機構 続きまして、議題6「医療用医薬品の再審査結果について」、六つありますが、 まとめて報告いたします。資料13-1〜13-6を御覧ください。資料13-1は、一般的名称 「イオキシラン」、販売名「イマジニール300他」、資料13-2は、一般的名称「シルニ ジピン」、販売名「アテレック錠5、シナロング錠5他」、資料13-3は、一般的名称「ア ラニジピン」、販売名「サプレスタ顆粒2%他」、資料13-4は、一般的名称「リスペリ ドン」、販売名「リスパダール錠1mg他」、資料13-5は、一般的名称「ダントロレンナ トリウム」、販売名「ダントリウムカプセル25mg他」、資料13-6は、一般的名称「ニ コチン」、販売名「ニコチネルTTS10他」の医薬品再評価確認等の結果通知書になり ます。  これらの品目につきましては、市販後の使用成績調査、市販後臨床試験、特別調査の 成績等に基づいて再審査申請が行われて、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲 げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法 ・用量等の既承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。 ○事務局 議題7、優先審査品目指定の審査結果について説明いたします。資料14を御 覧ください。優先審査については、薬事法に規定があり、その指定に当たりましては、 資料の2ページにその概要を示しておりますが、1.の(2)の(1)適応疾病の重篤性、(2) 医療上の有用性を総合的に評価して判断することとしております。  1ページにお戻りください。今回指定の報告をする品目は、ベプリコール錠50mg、同 100mgです。本剤は、既に「他の抗不整脈薬が使用できないか、又は無効の場合の頻脈 性不整脈(心室性)」及び「狭心症」の適応により承認されておりますが、今般、「他の 抗不整脈薬が使用できないか、又は無効の場合の心房細動(7日以上持続)」の効能・効 果で承認申請が出されたものです。  適応疾病の重篤性について説明いたします。申請された効能・効果である心房細動は 動悸、虚血、うっ血性心不全や血栓塞栓症の誘因となり、脳梗塞の発症頻度を心房細動 のない患者より2〜7倍高くすること及び脳梗塞による死亡例のうち17%が心房細動 によること等により、本剤の適応疾病は致死的な疾患とまでは言えないものの、生命に 重大な影響がある疾患に該当すると判断いたしました。  医療上の有用性について説明いたします。国内の不整脈薬物治療に関するガイドライ ンにおいて、心房細動の除細動法として、持続時間が比較的長い心房細動に対しては、 電気的除細動が第1選択とされ、第2選択としてカリウムチャネル遮断薬である本剤又 はアミオダロンの投与が推奨されておりますが、アミオダロンの適応は「肥大型心筋症 に伴う心房細動」に限定されております。  また、本剤の有効性に関しては、国内臨床試験成績等より、持続性心房細動の洞調律 化及び再発抑制効果が示されるとともに、ナトリウムチャネル遮断薬無効の心房細動患 者に対しても有効である可能性が示唆されております。  一方、本剤による重大な副作用として、QT延長の発現が懸念され、慎重なモニタリ ングと投与量の調節が不可欠となりますが、QT延長を除く忍容性については、アミオ ダロンに比べ優る可能性があることも勘案すれば、投与対象を厳格に選択した上での慎 重な観察下における本剤の安全性は臨床的に忍容できる範囲と考えております。以上よ り、本剤について優先審査品目に指定することにいたしました。 ○機構 議題8、ピロキシカム製剤等の急性期効能の削除につきまして御報告いたしま す。資料16を御覧ください。1.品目の概要ですが、(1)に現在のピロキシカムの販売 会社及び効能・効果、用法・用量について記載しております。もう一つ、(2)にアンピ ロキシカムという同じ種類のものも記載しております。  具体的には2枚目、2.EMEAの勧告(2007年6月25日)に出ております。これにお きましては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のリスク・ベネフィットの評価を行った 結果として、ピロキシカムについて、急性疾患の疼痛及び炎症に対する治療への使用を 制限するなどの勧告が出されております。具体的には、ポツで示している六点です。  その根拠として、ピロキシカムの血中濃度の半減期が50時間と長いので、急性期に使 うには立ち上がりが遅いという点、メタアナリシスを評価した結果、ほかのNSAID製剤 と比べて消化管障害の発現リスクが高くなる等々の理由、また、より安全な治療法(治療 剤)はほかにもあるということから、勧告が出ております。  3.我が国での状況として、一番下に参考で書いてありますが、我が国では副作用報告 自体は少なくなっておりますので、ほかのNSAIDsと比較することは困難です。しかしな がら、欧米の先進諸外国と比べたときに、急性期効能を有するのが日本だけであること、 また、EMEAの措置にかんがみまして、企業から内服及び坐剤につきまして、「外傷 後、手術後及び抜歯後の消炎、鎮痛」の効能を削除するための自主的な一変が現在出て きております。なお、使用上の注意に、上記の勧告内容を追加することとしております ので、御報告いたします。以上です。 ○永井部会長 ジュリナ錠の添付文書(案)についても御報告をお願いいたします。 ○機構 議題9、前回の医薬品第一部会において、村勢委員と林委員より御意見を頂戴 し、整備した上で次回の部会に報告することとされました、医薬品ジュリナ錠0.5mgの 添付文書の整備について御報告いたします。変更内容を資料19として配付しておりま す。ジュリナ錠0.5mgの添付文書の整備については、医薬品医療機器総合機構より、ま た、同種同効薬に共通の使用上の注意の改訂に関する今後の検討方針については、審査 管理課より御説明いたします。  ジュリナ錠0.5mgの添付文書の記載は、御指摘を踏まえて2004年以降の単独投与時の 2報を主要論文として追加するとともに、「痴呆症」から「認知症」への用語の整備な どを行いました。なお、「使用上の注意」については、2003年11月26日付け、事務連 絡、「医薬品の使用上の注意の改訂について」に合わせ、既承認の同種同効薬と共通の 記載となっております。 ○事務局 前回の部会で御指摘のありました最近の報告等を踏まえた対応については、 今後、最新の情報を基に、ホルモン製剤全体として見直しを行い、必要に応じ、使用上 の注意の改訂を行いたいと考えております。 ○永井部会長 村勢委員、ジュリナ錠の件はいかがですか。 ○村勢委員 了承いたしました。 ○永井部会長 その他の件につきましてはいかがですか。もし御異議がないようでした ら、報告は了解したということで進めさせていただきます。  次に、「その他」の項目で、「小児薬物療法検討会議」のことで御説明があるそうな のでお願いします。 ○事務局 議題の件に関して、資料15-1に基づいて御説明いたします。本議題は、小児 薬物療法検討会議で検討された品目についての事前評価のお願いです。事前評価につい ては、昨年2月23日の本部会でも、同様の事前評価をアセトアミノフェンについていた だいておりますが、概略について御説明いたします。  資料15-1、1ページ目の裏を御覧ください。小児の疾病を治療する医薬品に関しては、 治験の実施の困難などの理由により、データの集積が少ないということを含め、小児に おける標準的な用法・用量、あるいは使用上の注意における小児の欄におきまして、小 児の使用経験が乏しいという記載が多く見られます。  このような小児医療における問題点を解決するために、平成18年3月、小児薬物療法 検討会議を立ち上げております。この会議の目的としては、既に日本で承認を受けてい る医薬品を対象として、諸外国において効能・効果、用法・用量が認められている療法 に関して、小児薬物療法の有効性、安全性に関する文献等のエビデンスを収集、評価し、 さらには国内における小児への医薬品の処方実態などを把握して、これらの用法・用量、 効能・効果についてエビデンスに基づいた情報提供を通じて適切な小児薬物療法が行わ れるよう環境整備を進めることです。この情報提供については、承認事項の一部変更、 あるいは使用上の注意の改訂といったことを含め行うこととしております。  この会議の中には、2ページ目の裏ですが、個別の医薬品のエビデンスのレベルや報 告書の記載ぶりを統一的な観点で検討することを目的に、ワーキンググループを設けて おります。このワーキンググループのメンバーとしては、4名の先生方に御参画をいた だいておりまして、さらには、報告書の作成に携わっていただいた小児科学会の先生に も御参加いただきながら議論を進めているところです。このワーキンググループの座長 は、本日参考人としてお越しいただいている国立成育医療センターの中村先生にお願い しております。  次のページを御覧ください。この検討会議では、小児科学会の御意見なども踏まえて、 まず八つの医薬品の療法に関して検討を進めているところです。この中で、六番のアセ トアミノフェンに関しては、昨年2月の本部会で事前評価をいただき、その後の審議も いただきまして承認されております。また、今回は、四番のメトトレキサートについて、 2月8日に開催された第5回小児薬物療法検討会議において、作成されたレポートに基 づき議論が行われ、若年性特発性関節炎に関する承認事項、用法・用量、効能・効果な どの一部変更の方向性が必要であるといったような結論をいただいたところです。  資料15-1の最初にお戻りください。このような小児薬物療法検討会議における検討を 踏まえて、本日、薬事・食品衛生審議会におきまして、このようなレポートの内容、ま た一部変更の方向性に関して事前の評価をお願いしたいと考えております。この評価を 踏まえて、よろしければ、私どもの方から当該医薬品の製造販売業者に対して一部変更 承認の申請を行うように要請し、申請された後には機構におきまして迅速に審査を行い、 薬事・食品衛生審議会における御審議をいただきまして、一部変更の承認という方向に 進みたいと考えております。  本日は、資料15-2としてメトトレキサートの報告書を提出しております。こちらは日 本小児リウマチ学会の森先生におまとめいただき、小児薬物療法検討会議の議論を経て いるものです。この内容について、ワーキンググループ座長の中村先生から御紹介いた だければと考えております。 ○永井部会長 それでは参考人としておいでいただきました中村先生にお願いいたしま す。 ○中村参考人 ワーキンググループ座長の中村です。メトトレキサートの小児薬物療法 検討会議における検討結果について御説明いたします。  資料15-2を御覧ください。本医薬品の予定効能・効果は、関節症状を伴う若年性特発 性関節炎です。若年性特発性関節炎は、かつては若年性関節リウマチと呼ばれておりま したが、小児期に発症する全身性の慢性炎症性疾患であり、持続する炎症による関節の 腫脹及び疼痛を主要な症状とし、時間の経過とともに組織破壊と線維化が蓄積する疾患 であり、適切な治療が施されなければ関節の破壊に伴う変形、拘縮、さらに進行した関 節では骨性強直となり、重症な機能障害を残す疾患です。米・英・独・仏で本適応で承 認されております。  2ページの2.ですが、対象医薬品はリウマトレックスカプセル2mg及びその同効品す べてです。予定用法・用量は、「通常、1週間当たりメトトレキサートとして4〜10mg /平方メートルを経口投与する。なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて 適宜増減する」としております。投与方法は、「1週間当たりの投与量を1回又は2〜 3回に分割して経口投与する。分割して投与する場合、初回投与日から翌日にかけて12 時間間隔で投与する。1回又は2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場 合は残りの5日間は休薬する。これを毎週繰り返す」というものです。また、用法・用 量に関連する使用上の注意として、「本剤の投与に当たっては、特に副作用の発現に注 意し、患者の忍容性及び治療上の効果を基に、個々の患者の状況に応じて、投与量を適 切に設定すること」、「本剤については、成人の方が小児に比べ忍容性が低いとの報告 があるので、若年性特発性関節炎の10歳台半ば以上の年齢の患者等の投与量については 特に注意すること」という記載が適当であろうと結論いたしました。  4ページ〜8ページの(2)無作為化比較試験、薬物動態試験等の公表論文としての報 告状況に記載したように、多施設二重盲検無作為化比較試験の結果が、1992年のNew England Journal of Medicine等に公表されており、有効性が明らかにされております。 体内動態試験結果も多く報告されております。  コクランレビューでは、有効性はあることを認めているものの、いまだ問題点が残る と含みを持たせた表現となっておりますが、先ほどの比較試験の結果で有効性が示され ており、また、国内外の教科書の記載を見ますと、本疾患の標準治療薬として確立した 医薬品であることは明らかです。ガイドラインとしては、日本小児リウマチ学会より 2007年に、この報告書の作成と並行して、「若年性特発性関節炎 初期診療の手引き」 が公表され、さらに、この検討会議の結果を踏まえて、改訂版の作成が進められると伺 っています。  12ページですが、本報告書作成に当たり、新たに68例の使用実態調査が行われまし た。この結果、多くの症例で4mg/平方メートル/週〜10mg/平方メートル/週が投与されていましたが、現行の 添付文書に載っている本邦成人の最大規定量、この適応は慢性関節リウマチですが、そ ちらの8mg/週を超えた量を使用している症例も68例中26例(38.2%)に認められまし た。投与期間は最短3か月、最長20年7か月で、有害事象は10例(14.7%)と報告され ましたが、 NSAIDの関係が強く疑われる十二指腸潰瘍1例以外はすべて非重篤で、いずれも速やか に軽快しておりました。週当たりの投与回数は、1回が18例、2回が50例、3回以上 に分割して投与されている症例はありませんでした。この3回というのは、現行の成人 で承認されている慢性関節リウマチにおける用法・用量では、12時間間隔で3回経口投 与と書いてありますが、その3回、あるいはそれ以上に分割しているものは国内での使 用実態ではないということです。  13ページですが、報告書にまとめた内容から総合的に判断して、有効性について、我 が国で承認に足るエビデンスは十分にあり、安全性についても、国内外で安全性プロフ ィールに特記すべき違いは明らかではなく、本邦小児に対して承認を行う上で問題はな いと判断しました。  用量設定については、国内の使用実態を踏まえ、4mg/平方メートル/週〜10mg/平方メートル/週と幅をもっ て示すとともに、適宜増減を設定することが望ましいと判断し、用法については、海外 においては週1回投与が一般的ですが、国内では週2回の分割投与が行われている実態 があること、国内の成人の慢性関節リウマチに対する用法は3回分割投与であることな どから、週1回又は2〜3回の分割投与と設定することが適当であると判断しました。 最後の方に書いてありますが、本剤を製造販売している企業は、成人の用法・用量を再 検討するとしており、現在の成人の用法・用量と今回の小児の提案は必ずしも整合しな いわけですが、今後とも小児を含めた新たなデータ等に基づき用法・用量を適時適切に 見直すこととし、現段階においては、小児の検討会としては、上記の提案が最も適当で あると考えました。以上です。 ○永井部会長 ただ今の御報告に何か御質問はありますか。 ○土屋委員 この場合、リウマトレックスの関係のものは、当然、薬効上の話としては そうなるのかもしれませんが、メトトレキサート2.5mgの錠剤などに対しては、相変わ らず適応がないという形になるのですか。 ○事務局 2.5mgの錠剤に関しては、今、抗がん剤として承認されているものですので、 そちらの方に関節リウマチに関する効能を付けるということは検討していない状況で す。 ○土屋委員 リウマトレックス関連では、医療事故が非常に多く、特に持参薬、先日は これを脱カプセルした持参薬でも事故が起きているので、そういった意味でいろいろな ことを考えていくことが必要ではないかと思います。カプセルだけではなくて、リウマ トレックスの後発品で錠剤もありますが、本音を言えば、そういう枠が本当は超えられ てもいいのではないかという気がしないでもないです。 ○永井部会長 ほかにありませんか。もしよろしければ、ただ今の報告書の内容は御確 認いただいたということにいたします。今後、厚生労働省から関係企業に承認申請の働 き掛けが行われるということです。その際には、今日の御意見を添付していただくこと になると思います。事務局から何かありますか。 ○事務局 ありがとうございました。今後、厚生労働省から関係企業に対して、承認申 請の要請を行うことになりますが、承認申請があれば、総合機構で審査の後、また当部 会に御報告させていただきますので、よろしくお願いします。  次回の部会は、既に御案内のように、4月25日(金)午後4時から開催させていただく 予定ですので、よろしくお願いいたします。 ○永井部会長 それでは、これで終了させていただきます。どうもありがとうございま した。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 下川(内線2746)