08/02/08 社会保障審議会介護給付費分科会第47回議事録 社会保障審議会 第47回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所 : 平成20年2月8日(金) 午後2時30分から午後4時30分まで 全国都市センター(オリオン) 2 出席委員:天本、池田、石川、井部、大島、大森、沖藤、勝田、川合、神田(代理:長屋参 考人)、木下、木村、小島、高橋、田中(滋)、田中(雅)、池主、対馬、中田、村川の各委員 3 議題 <審議事項>  1.療養病床から転換した介護老人保健施設について(療養病床関係者及び自治体関係者から のヒアリング)  2.その他 (鈴木老人保健課長)  それでは、定刻になったので、第47回社会保障審議会介護給付費分科会を開催させていただく。  初めに、本日の委員の出欠の状況だが、齊藤委員、矢田委員、山本委員が欠席との連絡をいた だいている。また、高橋委員は少々遅れるということである。  なお、本日は、神田委員に代わり長屋参考人に出席いただいている。  よって、20名の委員に御出席いただき、本分科会として成立することを御報告させていただく。  それでは、以降の進行は大森分科会長にお願いする。 (大森分科会長)  それではまず、議事に入るが、資料の確認、説明をお願いする。 ○鈴木老人保健課長より各資料について確認。 (大森分科会長)  よろしいか。  今、紹介があり、お手元にあるように、今日は6名の方からヒアリングさせていただくことに なっている。6名の方、お忙しい中ありがとうございます。御礼申し上げる。  まず、この6人の方から、10分を限度にそれぞれの御意見を拝聴したいと思っている。その6 人の御意見の開陳が終わった後、質疑の時間を設けたいと思っているので、そういう形でよろし くお願いする。  それから、今日は会場の都合があり、皆様方に御案内申し上げているように、4時半には閉め ることになっているので、若干、5分ぐらいはいいかもしれないが、私の責任ではなくて会場の 責任なので、よろしくお願いする。  それでは、早速だが、武久意見陳述人からお願いする。 (武久意見陳述人)  私は、日本療養病床協会の副会長として、会員並びに利用者の皆様に、よりよい施設体系をつ くっていこうということで、日夜、皆様方にお願い申し上げている立場である。6つの大きな項 目に沿って、順次、お話をさせていただきたい。  私は、徳島県で病院及び施設をやっているが、徳島県は、阿波踊りで有名だが、もう一つ有名 なのは医師が多い、そして病院も施設も大変多いというところである。しかし、そういうところ でも過疎地があり、限界集落が非常に多い。そこにはやはり医師はいない。ここ5、6年の政策 によって、地方は崩壊して、役場も農協も学校も商店もなくなって、ついには医療機関がなくな ったら人は住めない、そういったところに施設はある。そういう施設は、もう5年すると、スタ ッフもいなくなって、利用者も半減するのではないかと言われている。将来は地方が消滅するの ではないかということである。地方と都市の格差が言われているが、如実に違う立場で、違う制 度が必要ではないかと思っている。  とにかく、病院から施設へ移行することによって医療費を減らし、また介護費用も減らすとい う趣旨のようだが、急性期病院の平均在院日数が半分になれば、慢性期病床の必要性は2倍にな るというのが理屈だと思う。このような状況下で慢性期病床を減らすことは、時代に逆行してい るのではないかと思っている。急性期病院は、より急性期に特化すべきであって、中途半端な一 般病床は減らすべきではないかと思っている。とにかく、療養病床を転換し施設にして医療費を 減らすということが命題ではないかと理解している。  一方、一般病床には、90日以上の入院での特定患者除外規定ということで、寝たきりとか意識 障害の方は、平均在院日数の算定に関係なく、実は慢性高齢者がたくさん一般病床にも入院して いることの改善も急務ではないかと思っている。  資料1−2をごらんいただきたいが、私もこの資料を見たときに、やはり介護療養型医療施設 というのは病院なのだなと思った。やはり老健とは全然やっていることが違うなと。医療療養病 床は、介護療養病床より重度の方を見ているわけだから、この資料の項目で見ると亡くなる方も 非常に多いし、いろいろな処置をしている方が老健に比べると10倍から数十倍多いということで、 これはやはり病院だからできていたんだなと。病院だからできていたこの機能を、丸々老健に移 して継続できるのだろうか。継続する上に、もっと重症を見てください、そしてターミナルを見 てくださいというのか。  このように、介護療養型医療施設を平成24年までに移すといっても、機能を老健にすべて移せ るわけではないのではと思う。移行する病床は約20万床とも言われる。現在、老健は約30万床と 聞いているので、ボリュームから考えても、同一のカテゴリーの中に入れるのは物理的にもとて も無理ではないかと思っている。  また、病院の経営者は、病院は老健とは違うんだというプライドを持っていると思う。私も、 病院も老健もやっているが、病院はより病院らしく、老健はより老健らしく運営しているつもり である。  そこで問題は、移行先を老健にするなどと言うからおかしくなってしまったと思っている。移 行する施設としては、「介護療養施設」という新しい施設名とするべきだと思っている。このよ うに、多大なる医療機能を行える施設とするには、老健とは別の施設の方がいいと思っている。 日本療養病床協会のアンケート調査でも、圧倒的に「介護療養施設」という名前が支持されてい る。療養病床から移行させたいのならば、移行したくなるようにするのが筋ではないかと思って いる。また、老健に移行しようとしても、法律的に建築基準に合わないということで移行できな い可能性がある。別の体系の施設を考えるべきだと思っている。  新しい介護療養施設に求められる機能としてはいろいろある。まず最初に、病院からそのまま 施設に変わるのに広さだけを老健の8平方メートルに合わせるのは、私は、かねてから大変おかしいと思っ ている。病院には、レントゲン室、酸素配管、吸引、薬局、消毒室など、設備は十分あるわけで ある。老健にはないこれらの医療設備をどう評価するのか。広さだけなのか。もし将来、従来型 老健が介護療養施設になりたければ、医療設備を設けなければならないことになってしまうわけ である。  ターミナルを見るといっても、今どき、レントゲンも撮らないで聴診器1本で「肺炎です」、 酸素吸入もしないで「御臨終です」と言って、家族が納得してくれるのか。新しい施設は、老健 と違って今までの医療をそのまま提供できる介護施設であるべきである。我々は、あくまでも医 療機関でないといけないと言っているわけではない。今行っている医療機能をそのまま行える介 護施設であれば別にいいわけである。  それから、職員配置だが、看護職員6対1、介護職員4対1はどうしても必要だと思う。今も 介護療養型医療施設は、看護職員6対1、介護職員4対1が90%を占めている。経過型の老健が 平成23年度まであるが、これは、看護職員が8対1となっている。実際、8対1ではなかなか看 護職員の当直が組めない。そういうわけかどうかは知らないが、今、経過型に移行している施設 は非常に少ない。  また、リハビリテーションの機能をどう評価するか。現在、老健の1.5倍のPT・OTがいる。 これは別のリハ点数が必要だと思っている。医師は1プラスアルファと言われているが、これは、 あくまでも併設の病院からの補完が前提である。医師と看護職員が十分いないターミナルは不可 能である。在宅を増やせ、増やせと言っても、50年前とは時代が違う。介護や医療の費用をどん どん減らしていくと他人事のように議論をなさっているが、ここにいる皆様も、ごく一部の若い 方を除いてもうすぐ当事者である。当事者意識を十分お持ちだろうと思っている。自分のことで ある。ターミナルも、がんの末期ならいざ知らず、肺炎はターミナルではなくて治る病気なので ある。  過疎地には、実際、開業医もいない。では、単独型の施設はどうするのか。これは是非、別の 仕組みを考えていただきたい。  また、有床診療所のない療養病床はどうするのか。グループホームは、医療を伴わないことで いろいろな問題が起こっているが、有床診療所は地方にも結構たくさんあって、医師が1人いて、 18床以下の地域のベッドを有効利用する方が得策ではないかと私は思っている。是非皆様にも御 一考をお願いしたい。  いずれにしても、平成24年までに介護療養施設に移行した施設の継続調査をして、今後も利用 者にとってよりよい施設にしなければいけないと思う。関係各位の御協力を切にお願いする。 (大森分科会長)  それでは、続いて、安藤意見陳述人からお願いする。 (安藤意見陳述人)  私は、日本療養病床協会の立場からお話をさせていただきたい。  私は、主に3点、「大都市部の悩み」「マンパワーの問題」「転換老健で必要なこと」という ことでお話をさせていただきたい。  では、1つ目だが、「大都市の悩み」、地域格差だが、このレジュメの中で2分割になってい るが、2分割の右下のページの方でお話をさせていただく。  2ページ目だが、特養、老健、介護療養型ということで、これらの収支比を全国と比べてみた。 平成17年だが、特養が3.99、全国が11.2、これも毎年減ってきている。老健施設、全国12.3、東 京4.69、介護療養型医療施設、全国3.4、東京1.63ということで、平成18年度はマイナス1.86と赤 字になっている。我々も、人件費が上がっていくのはしようがないが、経費を切り詰めてもこん な状況である。  5ページ目だが、ここに書いてあるが、介護療養型、老健、特養、52%、62%、64%と、これ だけ収益率が違う。これは、東京で転換老健にしたり、あるいは有料老人ホームにした場合の経 常利益だが、これは8平方メートルで計算したが、マイナス55%、有料老人ホームの場合は、水回りのこと とかを考えると全く採算に合わないような状況である。  次は、西澤会長がいらっしゃるが、全日本病院協会の資料だが、これは病院である。7ページ 目である。東京は61%が赤字、しかし、オールジャパンで考えると27%程度ということで、東京 は61%の赤字だが、昨年の前の年が47%だから、これがまた激増しているという状況である。  8ページ目だが、東京の医療法人の62.5%が赤字、公的病院にいくと72.7%であり、本当に東 京の病院がぱたぱたとつぶれたり、診療所に転換したり、あるいはM&Aされているような状況 である。東京都港区は20万人の都市だが、ここは、民間病院はもう1つか2つぐらいしかないと いう状況である。これも東京都の救急の委員会でも出ているが、やはり武久先生がおっしゃった ように、救急患者のたらい回しが起こる原因としては、東京では、回復リハとか、その後の医療 療養が少ない、慢性期が少ないということで起きている。これは全国にも当てはまると思ってい る。  9ページ目、これは、東京都が国に上げた地域差の件である。東京の場合は全国よりも人件費 が20%高い、物件費が10%高い、土地の値段も5.5倍から8.8倍ということで、将来、東京都では 介護施設も全く成り立っていかなくなるのではないかということを都が訴えている。そういうこ とで、少なくとも16%ぐらいの地域差がフェアなのではないかということである。  10ページ目がその理由である。  11ページ目は、有効求人倍率だが、これも全国1.04、東京1.38ということで東京は高い。更に は、下の段だが、他の職業に比べて、やはり医療や介護関係は求人倍率が非常に高い。そういう ことで、職員確保のためにやむを得ず人件費を上げなければならず、ますます経営難ということ になっている。  12ページ目も、赤いところをごらんになっていただければと思うが、東京と全国の比較である。  13ページ目、他産業においても、マクドナルドなどのファストフードとか、すかいらーく、あ るいはローソン、クリーニング屋も、地域差をどんどん取り入れなければやっていけないという ことである。  14ページ目だが、アメリカでは、これもハード面、土地の値段とか、あるいは人件費、それか ら治療に付随する潜在的な危険度、そういう3つの要素に物価スライドを掛け合わせている。そ うすると、最高で、ニューヨークと他の地域では32%ぐらいの違いがあるということだが、日本 の医療保険の場合はたかが0.5%であり、全くおかしな状況になっている。下に書いてあるが、生 活保護の地域差でも22.5%の差がある。これは東京だけの問題ではなくて、やはり大都市部の問 題だと思っている。勿論、僻地の方にもお悩みはあると思うが、そういう地域の経済状態に合わ せたものが必要だと思っている。  15ページ目だが、今、国は療養病床の削減ということだが、全国で療養病床が38万床あるが、 東京においては、人口割でその10%、3万8,000床あってもいいところが2万ちょっとしかない。 更には、東京から他県に5,000人以上流れているという状況があり、逆に東京は療養病床を増やさ なければいけないという状況である。  16ページ目だが、転換に当たって配慮すべきことだが、転換老健で大事なことは、1つは維持 期のリハビリテーション、それからショートステイ、在宅の支援、認知症のケア、それから24時 間365日急変時の初期医療並びにターミナルケアだと思う。そのほか、薬剤の管理あるいは投薬、 注射、検査、画像診断も必要になってくると思う。  17ページ目、問題の医師の数だが、やはり現在の老健施設よりも比較的医療必要度が高いとい うことだから、日勤帯で50床〜60床に1名の医師の配置は、単独あるいは併設でも必要だと思っ ている。患者の病態にもよるが、100床単位以上でも1名〜2名程度の医師が必要だと思う。3番 目、大変なのは単独だが、単独型の転換老健においては、やはり365日24時間の急変時にもスムー ズに医師が診られるような体制が必要だと思う。更に、同一施設内にクリニックを開設する場合 は、診療所の管理者が転換老健の医師も兼務できるようにする方が効率的だと思っている。  次に、マンパワーだが、18ページ目だが、アメリカに行ってきて、アメリカの看護職員の数を 調べてきた。日本の療養病床とほぼ等しいというスキルド・ナーシング・ファシリティーズにお いても、やはり2倍である。アメリカの最低のマンパワーのところのナーシングホームと療養病 床が同じぐらいであり、やはり日本のマンパワーは世界の非常識ではないかと思っている。  20ページ目だが、これが介護療養型の医療施設の人員配置だが、こういうふうに書いているが、 実際問題、日勤帯ヘルパーは、利用者の方十数人に対して1人、1人で十数人も見なければいけ ないということである。看護職員に至ってはもっと見なければいけないということである。今ま で、介護療養型医療施設も実は3対1で見ていたが、それが引き下がって今4対1である。これ はヘルパーの人数だが、やはり利用者のことを考えてどうしてもまだ3.1や3.5を置かなければい けないというところが半分ぐらいある。そのような状況であることを加味すると、看護師6対1、 ヘルパー4対1は必要だと思っている。  21ページ目だが、看護職員の業務としては、全身状態をきちんとラウンドして見る、経管栄養、 与薬・点滴などをやる。気管切開を含め、ネブライザーの管理なども必要である。  ヘルパーとしては、やはり夜勤帯2、3回のおむつ交換が必要であるし、入浴も最低週3回。 本当は毎日入浴していただきたいと思っているが、そういう状態である。あとは、おむつ交換の 必要な方はADLも悪いために、2時間置きに体位変換をしている。あと、認知症の方のケアも しなければいけないし、食事介助も必要である。そういうことを考えると、やはり6対1、4対 1は必要である。更に、現在、いろいろな施設では、6対1、4対1だけでは足りず、プラス早 出、遅出という方たちも自腹でやっている。  22ページ目、リハビリテーションだが、これは、入院ケースの重度化や重症化が起こっている。 入院患者の7割以上が脳血管障害ということだから継続的なリハが必要である。本来であれば週 3回から4回の個別リハが必要だが、実際、どこの療養病床も人が足りないのでリハが少ないよ うに見えるが、実際はもっとやりたいということであり、60床に対して2人から2.7人ぐらいのセ ラピストが必要だと思う。  23ページ目、薬剤管理も、多くの疾患を抱えた合併症の方が多いので、きちんとチーム医療で やっていかなければいけないと思う。  最後になったが、24ページ目、耐火構造の問題だが、特養、老健は、病院よりももともと厳し い設定なので、病院から転換した場合に、それが施行されてしまうと実際問題なかなか転換でき ないということがあるので、そこら辺を考慮していただきたいということと、あともう一つ、最 後だが、平成24年の介護療養型医療施設の全廃までに、転換老健の運営などの状況の調査と見直 しをお願いしたいと思っている。  あと、1つ矛盾があるが、現状の経過型老健は看護師が8対1なので、6対1になった場合、 今後のことも、その整合性もまた考えていただければと思っている。 (大森分科会長)  それでは、吉岡意見陳述人お願いする。 (吉岡意見陳述人)  「現場の現実および介護療養型医療施設存続運動から介護給付費部会のみなさまにお伝えした いこと」、吉岡である。資料3−1を中心にお話しさせていただく。  まず、「医師の配置について」。受け皿施設に医師が24時間いなければどういうことが起こる か。ちなみに、厚生労働省は医師が常勤1人程度でいいということを言っているが、そうだとす ると、土曜日、日曜日、祝日、夜間に医師がいない状態になる。そうすると、現場ではどういう ことが起こるかをお話する。  病状的に不安定な利用者は受け入れを拒否されるというか、責任を持って施設側も受け入れら れなくなる。施設が利用者について受け入れる範囲がかなり限定されるものになるはずである。 受け皿施設は、本当は虚弱なお年寄りの施設だが、具合が悪くなる可能性がある人が入れない、 そういう中途半端な役立たずの施設になる。  また、経営だけ考えて施設の現実を無視して利用者を受け入れる、私は「生き地獄」と少々セ ンセーショナルな言い方をしていますが、そういう施設も必ず出てくる。  病状が急に変わると、一般病院、医療保険の療養病床へ追い出される。これは今でも老人保健 施設などでよく起こっていることである。医療区分2や3になると追い出される。病状が重いと き、死にかかっているときに病院送りになる、それでいいのだろうか。  施設側の都合による処置が簡単に行われる。例えば嚥下障害、これは高齢者にとても多い障害 だが、誤嚥したら治療が面倒、食事のケアするのが大変、そう施設は考えるようになる。だから、 胃ろうなどチューブ類が増える。希望したわけでもないのに、胃からだけの栄養補給をされ生き 長らえる、こういう人がどんどん増えるわけである。  まともな終末期ケアができなくなる。当院126床の例では、昨年1年間の死亡者は37名あった。 死亡時刻が夜勤設定である午後5時から翌朝の9時までのケースが23例、休日に当たるケースが 2例。死亡の67.5%は医師不在の時間という計算になる。この利用者の看取りを外部の訪問医師 に任せたり、死亡前の終末状況に差しかかってきたときに、医療区分が2だから3だからと病院 に転送したりする気には私は絶対になれない。自分もできるだけ穏やかに死んでいきたいし、患 者もそう。このあたりのことはきちんとこの分科会で検討されたのだろうか。もしまだなら、こ れからでも是非してほしい。  「介護職の配置について」。これは覚えておいてほしいのだが、介護療養型医療施設の現場は、 現在、介護職を利用者4対1の基準で配置しているところが89%、東京都内では95%以上。厚生 労働省はよく、介護療養型医療施設の介護職員の基準を6対1と説明するが、はっきりと言うが、 それはごまかしである。更に、現場は介護職員を3.2対1程度まで増員配置している。それでも忙 しい。  現在の介護療養型医療施設の入所者の平均要介護度は4.3である。介護保険3施設の中で一番重 い施設である。医療区分と要介護度は一致しない。現在、介護療養型医療施設に医療区分1の人 が57.9%入院していても、要介護度5の人が52.5%いる。したがって、受け皿施設が仮に医療区 分1と2の3割ということになっても要介護度は現在とほとんど変わらない。それなのに介護職 員が削減されるとどうなるか。  まず、重介護の利用者の受け入れの拒否の問題。重介護者が敬遠される。利用者の病状悪化が 起こる。ケアが不足すると利用者は確実に悪くなる。  ケアが不足したことが原因で医療区分2と3になる人も増え、亡くなる人も増えるだろう。  現場はモラルとモラールを失う。きちんとした介護職員は疲れて辞めていく。言い方は悪いが、 平気でケアをサボれる介護職員が幅をきかす。ちょうど25年近く前の老人病院がそんな状況だっ た。  事故が多発する。身体拘束等、虐待が増える。統計上も明らかだが、介護療養型医療施設は認 知症の重い方が多い。そこで介護職員を削減したらどうなるか、身体拘束である。それしかない。 私はNPO全国抑制廃止研究会の理事長もしているが、断言する、介護保険の身体拘束禁止は形 ばかりのものとなって、もうだれも守らないものになり下がる。実際、今でも介護職員のなり手 が少なくなってきた特別養護老人ホームでは、「身体拘束廃止どころじゃないな」という声が上 がっている。虐待も確実に増える。連合の平成17年の調査では、3割の介護職員が「利用者に憎 しみを感じる」という結果が出ていたが、それが5割、7割ということになるだろう。この面で も施設のあり方として大きな問題をはらんでいる。  さて、「介護療養型医療施設の専門性」、これを私は主張している。  療養病床は一緒だろう、医療保険が療養病床を残せばいいだろう、そう思っていらっしゃる方 も多いと思う。しかし、現実はそうではない。専門性のところを後で是非お読みいただきたいと 思う。医療がケアを支え、ケアが医療を支えることで、医療区分1の利用者が医療区分1の状態 のままでいることができる、ターミナル期をより苦痛の少ないものにできる。医療とともに生活 を支えるケアの視点を持ち、チームでケアをしっかりして、その治療的効果を最大限生かす。簡 単に言うと、私たちの専門性はそういうところにある。  少し順序が逆になるが、個室ユニットケアについて御説明させていただく。個室ユニットケア とは、何も特別なものではない。簡単に言うと、病室を10.65ないし13.2平米の個室として、10人 程度の少人数の単位を基本に医療とケアを提供するものである。私たち団塊の世代からは、何と なく自分の部屋を持つのが当たり前になってきた。医療ケアをサービスと受けとめる私たちの世 代としては当然のことだと思う。いつまでも大部屋でたくさんの人たちと24時間ずっと一緒とい うことにはちょっと耐えられない。特に死んでいくときはそうだと思う。この個室、少人数単位 のユニットでは、スタッフとなじみの関係ができコミュニケーションも取れるから、利用者の気 持ちに添うケアがやりやすくなる。その分、人手を要するのだが、この方法は、今後の高齢者医 療施設、受け皿施設の標準となるのだと思う。より専門性が発揮できる環境の施設だから、育成 すべきだと思う。  さて、最後に、「現実的な解決策の提案」をさせていただく。  今度の介護療養型医療施設全廃とは、もともと社会的入院の是正がその根本にあると思う。医 療施設が必要な人まで入院させない、介護施設でいいと言っているわけではない。厚生労働省は、 介護療養型医療施設を全廃して、受け皿施設にしてばっさり片づけようとする。しかし、それで は本当に介護療養型医療施設が必要な人の行き先がなくなる。それを避けるためには、私は、要 介護認定を活用すべきだと思う。医療施設が必要かどうか、一人一人判断していくのが一番いい。 今、介護療養型医療施設を利用している方の医療、介護ニーズと言っていいと思うが、それを洗 い出し、それをもとに作成したスケールで調査する。そして、介護保険中に医療施設に該当する 利用者かどうか、現在ある地域の委員会が個々の利用者ごとに判定する。利用者の介護療養型医 療施設の必要性の判断、そこを公明正大、合理的なものにするのである。それなら、利用者も、 厚生労働省も、私たちも納得できるだろう。それで社会的入院をなくすことは、公平で人間的な 方法だと思う。  最後に、もう一度はっきりと言うが、今のやり方ではなく、別の方法を考えなければだめであ る。今のやり方で療養病床をぶっ壊しても、社会的入院・入所の問題は解決しない。人手だけを 少なくした質の悪い医療施設、介護施設をつくって一体どうするのか。そんなものでは利用者は 絶対によくならない。現実の医療費が増え、利用者は不幸になり、本当に社会的に無駄な入院・ 入所をどんどんつくるだけである。これは決して感情論ではなく、現場にいる私には当たり前の ように予測できることである。皆さんにも是非わかっていただきたい。 (大森分科会長)  それでは、西澤意見陳述人、お願いする。 (西澤意見陳述人)  まず、私たちの協会の紹介をさせていただこうと思うが、今、全国で8,883病院があるが、私た ちの会員病院は2,249病院、加入率25.3%となっている。会員の約99%が民間病院である。民間病 院の全国組織としては最大の組織である。また、療養病床を持つ会員数は1,300〜1,350と推計し ており、恐らく療養病床を一番多く抱えている団体は全日本病院協会だと思っている。そういう 立場で今日は発言させていただく。  今、多くの参考人から現場の声があったが、ほとんど私も共鳴できる。今回の介護療養病床の 廃止については意見があるが、今日は、療養病床の転換ということなので、そこに絞って意見を 申し上げたい。  これまで、療養病床は、高齢者の医療・介護提供において非常に大きな役割を果たしてきた。 今後、療養病床の転換を進めていく際には、各地域における高齢者の受け皿、それから在宅医 療・介護に必要な人材の確保等、高齢者が安心して療養できる環境の整備が必須であり、地方に おいて療養病床が今まで担ってきた役割を継続的に確保していくことが必要だと思っている。そ のために幾つかの意見を申し述べる。  書いてあるとおり、今まで療養病床のやったことは非常に大きな役割であり、これからもその 役割は必要で、介護療養がなくなっていったとしても、役割としては残していかなければならな い、ということである。  まず1番目として、今、療養病床からいろいろな転換方法が示されているが、一番多いのは、 やはり「老人保健施設への転換」と考えている。  その際の配慮だが、介護療養型医療施設は、49床以下の小規模が約7割、これは厚生労働省の 調査から明らかになっている。これらの小規模な介護療養型医療施設が老健に転換するとすれば、 人員配置においてかなりきついのではないかと推測される。すなわち、今この分科会で議論され ているのは、夜間において看護職員を各病棟に配置ということだが、小規模で夜間配置となると、 かなり基準以上に多く配置しなければならない実態があると思う。そのような場合、どうしても 夜間配置が必要だと思った場合には、小規模の施設に関しては、やはり給付上の評価が必要かと 考えている。また逆に、なかなか夜間配置が難しい場合には、オンコール体制と、入所者のサー ビスの質の低下につながらないような方法も考えられると思う。ここら辺のことを含めて総合的 に議論していただければと考えている。  2番目として、「一般病床からの転換」だが、先ほど、武久意見陳述人からも意見があったが、 療養病床だけではなく、一般病床からも、今後介護施設への転換が考えられるのではないかと思 っている。特に、特殊疾患療養病棟あるいは障害者施設等入院基本料算定病棟などは、かなり介 護施設への転換が考えられる。そのような際に、現在は療養病床からの転換ということでいろい ろ議論されているが、一般病床からの転換の場合にも、療養病床からの転換と同様なスムーズな 移行ができるような配慮をお願いしたい。  3点目、「医療法人など営利を目的としない法人による特別養護老人ホームの設置」である。  たしか昨年7月だったと思うが、「療養病床の円滑な転換に向けた支援措置」において、医療 法人など営利を目的としない法人による特別養護老人ホーム設置を認めることにより、療養病床 の転換先の選択肢を拡大する予定とされていた。しかし、突然、11月22日の厚生労働省保険局計 画課事務連絡により、平成20年度の通常国会での法案提出は見送ると変更された。どのような事 情があったかわからないが、実は、約83%が医療法人である私たちの会員からは、転換先として 特別養護老人ホームをかなり真剣に考えていた。その話が突如なくなったが、改めてこれを認め てほしいという意見が会員から多数ある。早急に法案改正を行い、医療法人による特別養護老人 ホームの設置を認めていただきたい。これが、利用者に対するサービスの選択肢として非常に重 要だと考えている。  最後に、今回の転換とは若干ずれるが、「介護施設の今後のあり方」ということで述べさせて いただく。  介護施設は、住家に近い地域内でのサービス提供が可能となるようにインフラの再整備をして、 要介護度や認知症の重い要介護者への対応や在宅介護を支えるリハビリテーション、ショートス テイ、ミドルステイに対応する施設にすべきだと考えている。  介護保険制度が創設されたときに想定された各施設の機能分担については、高齢化の進展によ る要介護者や入所の重度介護者の増加により、明確に維持し続けることが不可能となってきてい ると考えている。そういう意味では、施設ごとにある機能を完全に分担することは、現状の要介 護者の実態から見てむしろ非効率的であり、介護保険施設の需給調査をもとに、地域特性を踏ま えた個別対応というものが現実的だと考えている。そういうことで、将来的には介護保険施設を 一元化し、その機能の見直しを図り、改めて在宅復帰施設の機能、在宅支援、あるいは終の棲家 としての対応など、各施設が地域連携の中で選択可能な役割分担を決めることが必要だと考えて いる。  また、そのときには、現在のような施設単位の機能分担は難しくなると考えている。特に、施 設数の限られた地方においては、種々の要介護者を入所させることが必要となってくる。その場 合、施設単位ではなくて、病棟、病室単位のケアミックスを認めるべきと考えている。わかりや すく言うと、1つの施設でありながら、その中に現在の療養病床、老健、それから特養の役割が 病棟、病室単位で認められてもいいのではないかという考えである。そのためには、現在の要介 護認定をより精緻化したケースミックス分類による見直しが必要と考えている。これは、吉岡意 見陳述人がおっしゃったこととかなり通じているのではないかと思っている。 (大森分科会長)  前回、山本委員から保険者の意見もきちんと聞くべきではないかという強い御意見が出て、本 日お2人に御出席願っている。それでは、最初に、森意見陳述人からお願いする。 (森意見陳述人)  それでは、せっかく与えていただいた機会に、私ども保険者の立場と、サービスを利用する者 の立場から意見を述べさせていただく。  ただいまの4人の意見陳述人の御意見は、サービス提供側のお考えであった。まず最初に、高 齢者の社会的入院という社会問題の解決は30年来の課題であって、介護保険制度創設以前から、 また創設時にも、解決に向けていろいろと議論をされ努力されてきたことは、御承知のとおりで ある。今後、高齢化が更に進展する中で、社会保障制度の透明性、効率性がますます求められる 今日、介護保険制度を持続可能なものとする観点からも、療養病床の再編成の考え方というのは、 医療と介護の役割分担を明確にするものであり、より質の高いサービスを効率的・効果的に提供 することにつながることから、画期的な施策であり、積極的に推進していただきたい、また推進 するべきだと考えるわけである。  次に、保険者である私ども市町村は、現在、平成18年度から平成20年度の第3期の介護保険事 業計画に基づいて事業を実施している。いよいよ平成20年度からは、次なる平成21年度から23年 度までの第4期介護保険事業計画の策定に入っていく。現在、分科会等で議論されている療養病 床の転換に際し、計画の判断材料としての介護報酬や基準が提示されない限り、サービス提供量 がどれだけか見込めない。そのため、第4期介護保険事業計画の策定に多大な支障を来すという ことが考えられるので、早期にお示しいただきたい。  というのは、実は、私ども、この介護保険事業計画をつくり、そして、それ以後、地域住民の 皆様方に、介護保険料を含めて私どものこの第4期の計画をあからさまにしていかなければなら ない。いわゆる説明責任がある。そういう点で、是非とも早期に提示していただきたいと考えて いる。  また、私ども市町村は、保険者として、御承知の方も多いと思うが、介護保険特別会計という ものを持っている。この介護保険特別会計は、保険料と税によって運営されている。その立場か ら、私どもは保険財政の安定が大変重要なことだと考えている。当然、そこには介護サービスの 提供量と保険料とは密接に関係していることを重視し、施設系サービスと在宅系サービスの給付 の割合をできるだけ均衡にすることが、私どもの大きな努めではないかと考えている。  ちなみに、私ども高浜市の一つの例を申し上げると、平成16年度、17年度、18年度の実績数値 だが、平成16年度の在宅系サービスが56%、施設系サービス44%、平成17年度、57%、43%、平 成18年度、59%、41%ということで、ある面では、このような介護保険運営をすることによって 保険財政が安定することは、俗に言うと受益と負担の公平性を担保するものだと考えている。  ある面では、この介護保険特別会計というのは、保険者、また私ども自治体の通知表だという 考え方を持っている。そのために、私ども自治体としては、高齢者の一般施策と介護保険で利用 できるサービスを車の両輪と考え実施している。このことは、社会保険として第1号被保険者の 高齢者の皆様方に、私どものまちの保険料水準を御理解、御納得していただいた上で納めていた だく、そしてそれで成立している制度であるという、根幹を是非御理解いただきたいと思う。  それゆえに、御負担していただく立場の方々の考えをも十分留意する必要があると考える。そ のために、今回のこの療養病床の転換・再編に際し、国においては、平成18年度ごろから転換に 際しての支援的な措置をいろいろと執り行っていると聞いている。そして、平成20年度の当初予 算の中にもそれが盛り込まれていると伺っている。各般の転換支援措置を実施していただくこと が、私どもにとっては大きな望みである。そのことが、ひいては高齢者に対して、その方の状況 に即した適切なサービスが引き続き提供されることにつながるという考えができると思う。  しかし、もう一方で、私ども保険者としては、保険財政安定のために、健全のために、保険料 への影響を少しでも最小限にとどめていただきたいということは要望させていただきたい。  最後に、私ども市町村として今後取り組むべき大きな課題は、ますます増加する認知症の方々 の施策ではないかと思う。この第4期やそれ以降の介護保険事業計画の策定、あるいは地域ケア 体制を構築していく上にも大変大きな影響があると思う。今回御議論されている療養病床を転換 した老人保健施設、これがどのような方向に行くかについては、大変な関心を持っている。地域 としては、取り分け認知症の方々に対して、いかに地域でケアをしていくか、時には見守り、あ るいはインフォーマルや在宅系を含めたサービス、そしてグループホームや特別養護老人ホーム を含めて、いろいろなサービスを駆使して住み慣れた地域で生活していただくこと、これが、あ る面では私どもの大きな責務ではないかと思う。  そういう中で、今回の療養病床の転換については、私は、一つの新しいサービスの選択肢とと らえ、是非ともその観点からも、いろいろと皆様方の御議論の中で転換促進のために知恵を出し ていただくことが、私ども現場を預かる保険者あるいは自治体の首長としての皆様方に対する大 きな期待と申し上げ、私の意見陳述とさせていただく。 (大森分科会長)  それでは、藤谷意見陳述人、よろしくお願いする。 (藤谷意見陳述人)  福岡県の介護保険広域連合の藤谷である。森意見陳述人と同じように、保険者の立場としてお 話しさせていただきたい。  私どもの広域連合は、平成12年、介護保険制度がスタートしたときに、72市町村でスタートし、 平成の大合併で現在は5市30町4村、39市町村の構成で介護保険事業をやっている。保険者とし て、各市町村と協力し、平成15年からはケアプランのチェックを実施し、それから今度の制度改 正等により認定の適正化、事業所の指導強化等により不適切な給付を削減することで、給付費の 適正化に日々取り組んでいる。これは、言うまでもなく、適正化に取り組むことで、第1号被保 険者の保険料、それから各市町村の公費負担を抑制することにある。急速な後期高齢化が進む中、 第1期の保険料の被保険者の負担割合は17%だったのが、第3期では、平成18年度から20年度ま でだが、19%と11.8%上昇している。先ほど森意見陳述人が言われたように、来年度は、平成21 年度からの第4期の事業計画を策定することになるが、このように給付の適正化に取り組んでも、 保険料が上昇することが容易に推測される。  介護保険の保険料の上昇を抑制することが、介護保険制度を将来にわたり持続可能な制度とし て安定させると理解している。このような厳しい状況の中で、療養病床の再編に当たっては、介 護費用の増大を招くことがないようにお願いしたいと考えている。  今回の療養病床の再編について、3点ほど意見を述べさせていただく。  まず1点目は、「療養病床から転換した老健施設に関する介護報酬や基準については速やかに 示していただきたい」ということである。  これは、先ほど、森意見陳述人も言われたように、平成20年度は第4期の介護保険事業計画を 策定することになるが、療養病床の転換に際しての判断材料である介護報酬や基準が提示されな い限り、療養病床の転換意向が定まらずサービスの提供量が見込めないため、計画の策定自体が 困難になることから、速やかに示していただきたいと思っている。  2点目は、「保険者にとって保険財政は非常に厳しく、療養病床から転換した老健施設の介護 報酬の水準は合理的な水準にとどめていただきたい」ということである。  高齢化の進展に伴い、介護保険財政は今後ますます厳しさを増していくと思う。医療と介護の 役割分担を明確化し、介護保険財政への影響を最小限にとどめる観点から、療養病床から転換し た老健施設の介護報酬は合理的な水準にとどめていただきたいと思っている。仮に介護療養病床 と実質的に変わらない報酬水準とした場合には、効率化につながらず、単に医療から介護への負 担のつけ替えになることから、不適切だと我々は考える。  3点目は、「療養病床の地域偏在に十分に配慮していただきたい」ということである。  療養病床には地域偏在があり、地方では療養病床数が十分に確保されていない地域もあるので はないか。医療と介護の役割分担を明確化する医療病床の再編成そのものは推進すべきと考えて いるが、地域の実情を踏まえることなく全国一律に療養病床の再編を進めると、地域によっては、 これまで介護療養病床が担ってきた、一般病床からの退院者の受け皿としての機能を果たす施設 が皆無になってしまうことも懸念される。国においては、療養病床から転換した老健施設の機能 を議論するに当たっては、現在の療養病床の地域偏在の実態を踏まえた上で、これまでの療養病 床が担ってきた一般病床からの受け皿としての機能についても留意していただきたいと思う。  以上、3点について意見を言わせていただいたが、療養病床再編に当たっては、医療体制の視 点からだけではなく、費用負担の視点、利用者の視点にも立ち、保険料の負担増をできるだけ抑 えることに加え、現在の入所者が待機者に回らないような措置、すなわち利用者の不安を招かな いような具体的な方策と将来像を示していただきたいと思う。 (大森分科会長)  大変短い時間で恐縮だった。いただいている資料があるので、できるだけつぶさに拝見したい と思っている。ほぼお時間を守ってくださったので、残っている時間は、委員と今日御出席の皆 様方との間で対話をさせていただければと思っているので、取りあえず委員の方々からもし御質 問等があれば、相手を特定したければ特定していただいた上で出していただければと思う。どな たからでも、どうぞ。 (勝田委員)  まず初めに、森意見陳述人にお尋ねしたい。  認知症のことに触れていただいたが、15年後には今の倍になるだろうと言われる認知症の方々 をどうやって担っていくのか、多分ここにいらっしゃる方のほとんどがそのときに該当するであ ろうと思われる。その中で私たちは、認知症があっても安心して暮らせるまちづくり、地域づく りをということで先ごろ提言も発表したところである。そういう中で、きちんと考えていてくだ さることをとてもありがたいと思っている。  ただ、懸念されることは、倍になるにもかかわらず、吉岡意見陳述人とか安藤意見陳述人、そ れぞれ医師の方が言ってくださった、逆に生き地獄になるのではないかということである。転換 したところで、本当に安心して看取られるのだろうか。認知症があっても尊厳がある生き方を、 そして看取りまでと言っている割には、ますます今、現場からの御発言で不安が大きくなった。 というのも、私たちは、今入っている療養病床の中で、3年後には出ていかなければならないで すよとささやかれている。その後どうしたらいいだろう、3年の間に死んでくれたらいいんだろ うか、家族にとってはそこまで悩んでいる。そういう点で、保険者側として、きちんと見ていた だきたい。地域で見守っていくということと、逆に、今のままでは転換すれば生き地獄なんだと いうことを、現場としてどうやって整合性を持っていけばいいのか。  現在、私たち利用者としては、ますます不安が大きくなるばかりである。私たちが懸念してい ることが、現場ではもう先に起きているんだなということを感じている。そういう点について、 現場を預かっておられる方、市町村としても、ただ介護保険財政が安定だけすればいいという問 題では決してないと思う。在宅で頑張れと言っても、それに対する施策をしっかり示していただ かないと、私たちも、勿論家族も頑張るが、そういうこともやはり必要なのではないかと思うが、 そのことの御意見も併せてお聞かせいただきたい。 (森意見陳述人)  今、私ども自治体として、見守りを含めていかにして地域で支えていくか、そしてもう一つ、 実は、いわゆる介護保険のサービスだけでは、私はとても支えることはできないと思っている。 だから、私どもは、地域の中でどのようなインフォーマーサービスを生み出していくか。例えば それは、高齢者の居場所である宅老所であったり、あるいはちょっとしたことのお手伝いや見守 りを含めて。そして、実は私ども、「在宅・長寿の我がまちづくり」という一つのモデル事業に 取り組んでいる。これは、認知症をいかに地域で支えていくかということ、これはある面で、今、 勝田委員がおっしゃった、地域がどういうことができるかを住民の皆様方にお示ししなければ。 そういういわゆる高齢者施策を一般施策としてどのようにやっていくか。  そのときにこれから一番大きな役割を果たすのは、私は地域だと思っている。今、市内5小学 校区あるが、その5小学校区にそれぞれまちづくり協議会という、地域の皆さん方が、自分たち の地域の課題をどのように取り上げ、解決していくか、これは行政だけが一方通行でこうしよう と言ってもなかなかできるものではない。だから、認知症の場合はますます地域とのかかわりを 持ってやっていかなければ支えることはできない、今そのような考え方で進めている。おかげさ まで、それぞれの地域で、予防も含めて介護の問題にすごく大きな関心を持っていただいている。  そこにもう一つ今、団塊の世代の方たちが地域に帰ってきている。この方たちが地域とのかか わり方をいろいろとお考えになっていらっしゃる。そういう意味で、私は、地域がきちんとすれ ば、少しでも遅く、いわゆる後ろまで持っていくことができるのではないかということでいろい ろ実験をさせていただいている。答えになっているかどうか分からないが、それぐらいの決意を 持ってやっていかなければ、300万とか350万人というこれからの認知症の方々への施策は、なか なかできないのではないかと思っている。 (大島分科会長代理)  今のお話にも関連するが、私も愛知県なものだから、森意見陳述人のところの高浜市は、愛知 県の中でも、大きな病院があるわけでもないし、そんなに医療施設が立派にあるわけでもないの だが、介護、福祉の面で非常に評価が高いし満足度も高いと伺っている。  一方で吉岡意見陳述人のようなお話を伺っていると、危機意識も同時に感じる。どうしても議 論の軸がお金にあって、限度のあるお金の中で一体どういう制度を、どういろいろな隘路を見つ けていくのかということだが、吉岡意見陳述人のお話だと、もう限度を超えている状況で、それ こそ生き地獄が目の前に出てくるんだと、それも本当にそうではないかということが、相当実感 としてわかる。  そこで吉岡意見陳述人にお伺いしたいが、森意見陳述人がああいった形で地域の中で、これは 私、その細かいところまで実態を知っているわけではないが、本当に立派な医療施設があるわけ でもない中で非常に評価の高い充実したあり方を、インフォーマルな介護も含めてやっていると いうこと、これは非常に貴重な一つのモデルではないかと思うが、ああいうお話を聞かれてどう いうふうに感じられるか。 (吉岡意見陳述人)  私、実態がわからないが、やはり、そういう地域で支えられる部分というのはかなりあると思 う。ただ、認知症の方が身体的合併症を起こした場合どうするか。内科的治療、外科的治療、そ ういうときにどうするのかということになる。それから、認知症そのものが病気なのである。早 期診断して、治療すべきときに治療できるものもある。そういうところを私たちが今現在行って いるということを理解していただきたい。 (大森分科会長)  よろしいか。 (大島分科会長代理)  はい。 (大森分科会長)  どうぞ、ほかの方から。 (村川委員)  日ごろ医療施設、療養病床で御活躍いただき、敬意を表するものだが、3人の意見陳述人に御 質問申し上げたい。まず1つは西澤意見陳述人の関係だが、特別養護老人ホームへの転換を御希 望なさっている法人もあるということだが、これは、法的規制があったり、あるいは既にある特 養との競合などの課題もあるが、地域のニーズがあればという側面もある。現実にこの西澤意見 陳述人のグループの中では、何法人、何施設ぐらいが特養への転換をお考えなのか。それを数字 的にお示しいただく必要があるだろうということが一つと、もう一つは、ケアミックスというこ とを言っておられるが、多機能施設ということもアイデアとしてはあるのであろうが、逆に、基 本的な施設運営としてはわかりにくくなる点もあり、先ほど触れた特養の転換とは明らかに矛盾 する趣旨のようにも外側から見ると受けとめられるわけで、それについて御説明いただければと 思う。  2点目は、吉岡意見陳述人の大変御熱心な取組みは評価するものだが、御提出いただいたペー パーの資料1の4ページを拝見すると、下から4行目だが、認知症のランクづけでIV以上が 44.1%、Mが1割程度ということで、これは全国的な数字なのか。あるいは吉岡意見陳述人の上 川病院の数字なのか、あるいは幾つかの医療機関のデータなのか。そこを補足説明いただきなが ら、もし仮に認知症の方が5割を超える、あるいはもっとそこに特化していくということであれ ば、認知症の治療、療養病棟のあり方等として議論を立てていくこともできるのではないかとい う気もするので、この44%とか1割程度、このエビデンスについて、もう少し補足説明をしてい ただく必要があるのかなということである。  それから、3番目に安藤意見陳述人にお伺いしたいが、私も東京周辺で仕事をしていたり、ま た私どもの大学、学校の卒業生が介護施設等でお世話になっており、大都市部の介護人材の人件 費のあり方については悩ましいわけだが、御提出いただいたペーパーの中で、東京都の実態、現 行の介護報酬単価よりも引き上げるべきであるということで、私も何となく共感できる部分もあ るが、次の第4期目の介護保険料、どういう水準になるかまだよくわからないが、仮に4,500円ぐ らいの場合だと、この係数を単純に掛けてしまった場合には、全国が4,500円のときに東京の保険 料が5,000円になるとか、仮に全国平均の保険料が5,000円の場合には5,600円ぐらいになってしま うというような、保険料を支払う側とのバランスをどう見ていくべきなのか、そういったあたり について何か御感想があれば補足していただきたい。   (大森分科会長)  この順序でよろしいか。では、西澤意見陳述人から。 (西澤意見陳述人)  2点だと思うが、まず特養への希望だが、会員の何%いるか調査していない。御存じのように、 出てきたのが7月ごろである。その後すぐなくなった。そういうことで、私たち調査する暇も何 もなかった。急に出てきて、急になくなった。唖然としている。ただ、出てきたときに、やはり 会員から、特養にもなれるのかと。その場合、例えば今の社会福祉法人がやっている特養と医療 法人の特養とはどう違うんだとか、いろいろな質問はたくさん受けた。私は、まだ決まっていな いので何とも言えない、その議論の間で終わったということである。  ただし、今の療養病床の中には、ある程度医療の必要な人もいるが、実は、地方等では、施設 が少ないために、終の棲家、すなわち特養と同じような使われ方をしている療養病床もあるわけ である。そういうところは真剣に考えていたということである。  私は北海道だが、北海道では、特に地方において中小病院、これは民間だけでなく町立病院も 含め、非常に小規模で、一般と療養、しかも療養の中では医療療養と介護療養、それぞれを例え ば10何床、20床とか、そのように持ちながらやっているところがある。それが今、自治体病院が 今後そのあり方を考えることになり、自治体病院もどうしたらいいかというときにいろいろな選 択肢があり、病院全体を縮小するとか、あるいは集約化とかいろいろなことがされている。また、 その経営母体としては、自治体が今までどおり直接サービスを提供するのではなくて、医療法人 制度改革でも行われたが、これからは民がそういう役割を担うということも考えられている。そ ういういろいろなことを見たときには、やはり今までの特養は社福でないとできないとか、そう いうものは全部取っ払って、いろいろな設立母体が地域の方に一番合ったサービスを提供する、 これは当然ではないかと思っている。そういうことから要望しているということを御理解いただ きたい。  また、ケアミックスのところで、病棟単位、病室単位、かえっておかしいのではないかという ことだが、これは逆に機能を明確にした上ですべきということである。これからの単位は、やは り個人にどのようなニーズがあるかをきちんと調査することによって、個々のニーズがわかる。 そうすると、個々の方に対してどういうサービスをしたらいいか、これもわかるわけである。そ うすると、施設の中において、例えば医療がある程度必要な方が何人かいて、あるいはリハビリ 等をして在宅復帰する方が何人かいるということになれば、それに合わせたサービスは、例えば 病棟単位で固めることによって十分可能だということである。  職員にも、今後、質を高めるために、それに対応できるような教育を私たちはする。だから、 例えば基準が、施設で看護職員が何人とか介護職員は何人ではなくて、将来は、ある程度そうい うものは施設に任せてもいい時代が来るのではないかということである。諸外国の医療において は、日本のように看護職員の配置等々で決められていることはなく、あくまでも入っている方に 対してどの程度の医療を提供するかによって独自に決めていると聞いている。日本もそうなるべ きではないかと考えている。   (大森分科会長)  介護施設のあり方は全体として私どもも少し議論し始めて、将来に向かって大きな議論になる 可能性は十分あり、今の御意見もその一つで、大事な問題提起ではなかったかと思っている。  では、吉岡意見陳述人、恐縮だが。 (吉岡意見陳述人)  資料2の4ページ、表1だが、介護療養型医療施設の入所者像入所者の要介護度については、 厚生労働省作成、第43回社会保障審議会介護給付費分科会資料をもとに作成し、認知症ランクの 割合については、厚生労働省発表平成18年介護サービス施設・事業所調査結果の概況より作成し たものであり、私どもの病院だと、多分これは出せない。恐らくMの方がかなり多いだろうと思 う。  もう一つだが、先ほどお話したユニット型ケアに、認知症のターミナルを含め特化した施設に ならないかなと思って、これは介護保険ですが、今年ユニット型を48床つくった。1床2,000万円 かかった。 (大森分科会長)  それでは、安藤意見陳述人から。 (安藤意見陳述人)  今の御質問、ごもっともなことだが、介護報酬の地域加算を上げるというような、国でだめな ら、例えば都道府県で独自の補助制度を設けるのも一つかと思っている。現在、特養などには人 件費補助が出ているし、あるいは東京23区の中で新しくつくるところもある。それも、やはりマ ンパワー不足あるいは介護労働者の給料が非常に安いことへの懸念からだと思っている。もしそ ういうことができなければ、1つにはキャピタルコストの部分が関係するが、例えばハード面の 規制を緩和する、あるいは自由化するということも。全国一律同じような病室面積とか廊下の幅 というのは、今はもうナンセンスではないかと思っている。そんなことをするよりも、利用者の 満足度調査をきちんとやっていって評価をすることが大事だと思っている。  ある大都市部の場合は、低所得者の方は除いて、医療で言う特定療養費の拡大解釈のようにし ていくこと、さまざまな方法があると思う。そういうことで少しでもフェアなものにしていけれ ばいいのではないかと思う。 (大森分科会長)  よろしいか。どうぞ、池田委員。 (池田委員)  まず最初に、安藤意見陳述人と武久意見陳述人から御教示願えればありがたいが、療養病床の 地域差の問題についてである。高齢者10万人当たりの療養病床がどれだけあるのかと調べてみる と、全国平均で大体1,500弱というところか。一番少ないのが山形県で、これが700を切っている と思う。一番多いのは、これは有名だが高知県で4,000近いということで、およそ6倍近い差があ る。  徳島は非常にたくさんあるし、東京はかなり少ない部類に入るということでお伺いするが、例 えば徳島だと10万人当たり2,700〜2,800というところか。したがって山形の4倍あるということ になる。私がどうしてもよくわからないのは、こんなに差があって、例えば地域での重要介護高 齢者とか重度認知症高齢者とかが、難民化して大変なことになっているということを聞いたこと がない。一体これはどうなっているのだろうかということである。  徳島や高知のように療養病床がたくさんあるところは、ある意味で本当に大変だと思う。逆に 山形なんか、再編成されて新しい数字になってもほとんど関係ないというところがある。東京の 場合は少々ほかの事情があって、先ほど安藤意見陳述人がおっしゃったとおりに、コストの問題 がかなり大きいのかなということがある。恐らく療養病床の問題は全国一律のっぺらぼうにとら えてはいけない。つまり地域的に考えなくてはいけない。そういった意味では、先ほど藤谷意見 陳述人が言われたように、過疎地を放っておくのはまずいということも非常に重要なので、その 辺について御意見をお聞きできればありがたい。  もう一つは、吉岡意見陳述人にお聞きしたいが、これから認知症の問題は、今でも大きい問題 だが、数量的にも質的にも非常に大きい問題になっていくであろう。そうすると、例えば認知症 を自立度だけで考えるのはよくないと思うが、私の見るところ、認知症のIあるいはIIのA、B というのは十分在宅が可能であって、ケアというよりも地域の対応である。それと家族の対応、 それでかなりいけるはず。ところが、IVとかMになると、その辺では大変難しい問題があると思 う。したがって、先ほど吉岡意見陳述人がおっしゃったとおり、他の医療的な問題と複合的にな るから簡単には分けられないにしても、認知症も、のっぺらぼうに認知症として見てはだめだと いうことははっきりしているわけで、療養病床をひっくるめて、施設の役割分担みたいなものと 在宅、地域の役割分担みたいなもの、その辺、明確に線が引けるとは思わないが、イメージでも 出していただけると大変参考になると思う。  以上、2つお願いする。 (大森分科会長)  それでは、安藤意見陳述人からお願いする。 (武久意見陳述人)  田舎の方からいく。 (大森分科会長)  どうぞお願いする。 (武久意見陳述人)  池田委員は非常に重要なことをおっしゃったと思う。全国高齢化率がほとんど一緒であれば、 ほとんど同じだと思う。療養病床が少ないところはどこかが補完しているわけである。どこが補 完しているか、それは一般病床である。一般病床の中に実は慢性期高齢者がたくさん入っている。 これは、特定患者除外規定というのがあって、本当は一般病床は、平均在院日数が長くなると安 くなってしまうのだが、平均在院日数にも算定しないようなそういう人たちが、私の試算では約 10万人入っている。療養病床が少ないところはそういうところが補完している。  徳島県で言うと、実は、公的急性期病院というか公的病院のベッド数が10万人当たり700床もあ る。よそを調べてみたら150か200床しかない。公的病院が療養病床に入るような患者をどんどん 見ている、そのような状態で、まだ療養病床はどちらかというと空いている。空床がある。都会 では、療養病床が少ない場合には居住系サービスに行っている可能性が十分あると思う。そうい うわけで、療養病床だけの転換を考えるからややこしいことになる。全体の病床をシャッフルし て、全部、患者の病状によってベッドを分けないといけない。そういうふうにすると、高齢化率 に対する適正な病床数というのが出てくると思う。 (安藤意見陳述人)  東京の話をさせていただく。たしか東京の場合、療養病床の整備の状況が47都道府県中41位か 42位、介護施設全体から考えると47都道府県中45位ぐらいだと思う。それで、東京でも23区と多 摩ではちょっと違う状況があり、療養病床はどちらかというと23区や板橋等に多い。そういうと ころでは利用者は大分利用しているが、23区の特に新宿とか港区とか、ほとんど療養病床がない ような地域があり、そういうところの方は、多摩に行ったり、あるいは他県を利用する。千葉、 埼玉、神奈川とか。そういうことで何とかしのいでいるような状況がある。  あと、私も新宿区に老健施設があるが、そこの状況として、療養病床がないために、頑張って、 しんどい思いをして、大変重い在宅をされている方が多い。そういう医療必要度の高い方もいら っしゃるので、例えば老健施設に入っても、すぐ多摩の療養型に行かれたりとか、あるいは一般 の急性期病院の方に行かれたりという形になっていると思う。大都市部の療養病床の少ないとこ ろの方は、本当に大変な思いで頑張っていらっしゃる。 (大森分科会長)  お2人についてよろしいか。 (池田委員)  よくわかったが、介護保険の施設給付は全部リアルタイムでわかるし、都道府県ごとだけでな く保険者ごとにもわかる。もう一つ、老人保健制度の、これは70歳以上ということになってしま ったが、老人医療の入院費というのがある。ただ、2年以上遅れた上にペーパーレベルでしか手 に入らないという状況なので、大変手間がかかったが、その2つで連結決算みたいなことをやっ てみた。そうすると、やはりかなり大きな格差がある。ということは、武久意見陳述人がおっし ゃっていることが一つの構造をついているとは思うが、多分その双方を足して、やはり大きな地 域格差があるので、そこのところを厚生労働省も少し調べて提示してくれるといいなという感じ がした。おっしゃっていることはよくわかった。 (大森分科会長)  吉岡意見陳述人お願いできるか。 (吉岡意見陳述人)  実は私の曾祖母が認知症であり、私もがんか高血圧か脳卒中か心筋梗塞にならなければ、多分 認知症になると思う。それは確信しているが、おっしゃるとおり、IとかIIの方々、在宅で十分 やれる方がおられると思う。その場合に、やはり老年精神科医の問題が一つあるのではないか。 薬物療法、非薬物療法を含めて、その辺がもう少し、かなりよくなってはきていると思うが、そ れは地域で十分やっていけるが、どこかに認知症に関して信頼のおける医師が必要かなというこ と。  それともう一つは、やはりさっきお話したように、IVとかMで、なおかつ合併症がある方、あ るいは非常に問題症状というか、BPSDが強い方は、果たして在宅にいることが幸せなのかど うか。結構、御家族も共倒れになっているような状況があるわけである。それでもやっておられ る方もおられるわけで、そのあたりは、私は、もっと施設ケアのいいところで暮らしていただい た方が、両方ともハッピーなのではないかと思っている。 (池田委員)  関連してよろしいか。認知症ケアについては、介護保険が始まったにもかかわらず、私は、遅 れに遅れてきたと認識している。なぜ遅れてきたか理由を幾つか考えてみたら、それは、認知症 を介護の面でしか見ようとしていないということがずっとあったと思う。つまり、医療の方から の観察が非常に少なかったということが、結果的に、ある意味で経験則的な認知症ケアが横行す る事態をつくってしまったのではないかと思う。  ところが、今、脳科学あるいは高次脳機能障害の医療が目をむくような形で動いている。それ こそ高浜のそばにある大府の国立長寿医療センターの田平先生のアルツハイマーワクチンは、恐 らく10年以内に実用化する可能性もある。そうすると、維持から進んで改善まで行く可能性があ る。向こう10年でがらっと変わってくると思う。  もう一つ、医師というのは3000年前から、言ってしまえば、人間の命を救う、あるいは健康を 回復することを使命とされて働いていらっしゃる。それは崇高で、絶対否定すべきことではない と思うが、裏返してみると、治らない病気に興味を示さないという傾向は否定できなかったと思 う。老年医学や認知症ケアがある意味で遅れてきたのは、そういうはざまに置かれていたから。 ところが、例えばアルツハイマーワクチンができたとしたら、がらっと変わって、医師がどっと 入ってくる。そうすると、今の認知症ケアレベルの延長で向こう10年、20年を見ると問題が起き てしまう。  そういった意味で、私は、認知症ケアというのは、経験則的な介護の面だけから見ないで、脳 科学と精神医療と、それから介護という3つが重ならない限り本当のケアはできないと考えてい るわけだが、その辺に向けて、先ほど意見陳述人がおっしゃったように、投薬は、うまくやれば 大変いい効果を示す。安藤意見陳述人は、その辺よく御存じだと思うが、そういう啓蒙を地域で やっていただく、あるいは地域の、例えば高次脳機能障害をきちんとやっていらっしゃる医師を 軸にして、最終的にそこへ持っていけばいいので、その窓口等をつくるということはどうか。こ れは、医師や病院自身が取り組まれていくことはお考えになっているかということを聞きたい。 (吉岡意見陳述人)  誠におっしゃるとおりだと思う。ただ、本当に認知症のワクチンが成功したら、それはハッピ ーで、私の役割もなくなるわけで、それはいいことだが、それに関しては、私は少々悲観的であ る。いずれにしろ認知症ケアというのは、確かに、もともと特養が得意だった分野で、医療が後 から来たというところがある。ただ、ケアと医療が同時に認知症の方にかかわれば非常にいいわ けである。だから、特養のプログラムを持っている療養型があれば、そこは認知症の方にとって もすごくすばらしいところだと思う。  実は医師が、BPSD、問題症状を引き起こしているケースがある。つまり、不適切な投薬に よってBPSDが出ているという報告が多々ある。そのあたりを何とかしなければいけないと私 は思っている。それから、啓蒙等もやはりやっていかなければいけないだろうと思ってはいる。 (大森分科会長)  では、天本委員からどうぞ。 (天本委員)  今の啓蒙の問題、これは日本医師会としても、認知症の人たちが非常に多くなってきていると いうことで、制度上云々というよりも、自らやっていかなければいけないと。認知症を年のせい にしている医師がまだまだ医師会の中にもいるという御批判も重く受けとめながら、平成18年か ら、教育していこうという動きを、国や医療機関側、大島委員のところなども含めてやっている と思う。しかしながら、制度から見ると、医療保険と介護保険は同時に行っていかなければいけ ないのに、お互いに譲り合っているというか、先日も、認知症というものが通院性診療法になる かならないかといった問題さえ、まだ議論になっているといったような段階であったり、あるい は医療保険の中から認知症を外すといった対応がどんどん進んでいる。  その受け皿をどうするかというと、今度は介護保険になると思う。しかしながら、介護だけで はないわけである。今日皆様がおっしゃった中には、やはり医療と介護をその人に合わせた個別 なニーズに沿って対応する、もう箱によって色分けする時代ではないという貴重な意見をいただ いている。やはり、療養病床の再編成においても、取りあえず介護の療養病床を外そうというこ とが強引に進んでいるという問題も、非常に重要だろうと思う。  認知症の問題は、やはり医療で対応して、介護と一体的になって、最後はやはりまちづくりだ ろうと思うので、森意見陳述人のところのモデル的なものもだが、普遍的にどうするかという議 論が非常に重要だろうと私は思う。保険者側だと、とかくどうしてもお金、保険料、財源、そし て計画的に数を制限する。その影響がまた医療に入って、社会的入院を減らそうと思ったものが、 介護保険をつくったにもかかわらずまた医療の方へ戻っているということもあるので、医療保険 と介護保険というのは、常々述べているが、やはり一体的な対応、整合性のある対応をしていた だきたいと思う。 (大森分科会長)  それでは、木下委員、木村委員。   (木下委員)  最初に、池田委員の発言で、医師は治らないものには興味を示さないとおっしゃったが、確か に急性期の医師はそういうところがあるかもしれないが、療養病床に勤める医師は、生活の質を 上げるためにどういう医療をやっていけばいいかという視点でやっているということを、まずお 伝えしておく。  それから、先ほど村川委員から質問があった認知症のMの割合がどれぐらいかということで、 私どもの協会でこの1月に368病院、1万2,000床程度の介護療養型医療施設を調べたところ、平 均で12.6%、Mが30%以上いるところが10.2%、50%以上が6.3%という数字が出ているので、御 報告しておく。  それから、確認をしたいところだが、武久意見陳述人の資料(1)の2ページ目に病院と老人保健 施設の耐火構造についての資料があるが、それをもう一度御説明いただければ。  それから、吉岡意見陳述人が、認知症で、特に合併症のある認知症は大変なんだということを おっしゃって、それは医療と介護両方必要なんだというお話だが、そういう方はどういう施設で 見ていくのが一番いいというお考えがあったら、お聞かせいただきたい。  それから、藤谷意見陳述人が最後に、一般病床からの受け皿としての療養病床なり老健が必要 だというお話をされた。しかし、一方では費用を抑制しろということなので、バランスがどうも 難しいかなと。一方では機能と質を求めていて、しかも費用を安くしろということは、ある面で は矛盾しているが、その辺はどういうふうにお考えなのかをお聞きしたい。 (大森分科会長)  それでは、お三方からお願いする。 (武久意見陳述人)  それでは資料(2)、時間がなくて簡単に行ったが、要するに、病院と老健では規定が違う。病院 の場合は3階以上の場合も簡易耐火でいいが、老健の場合は2階でも耐火でないといけない。そ ういうことがあって、簡易耐火で来ている病院が、老健という名前に変わった途端に2階は耐火 でないといけないとなってくると、これはもう、実際上つくり直さないといけない。特に、厚生 労働省管轄範囲内だけのものであれば、多分省内で融通がきくと思うが、国土交通省等と関連し ている項目については、調整がうまくいくのかなと大変心配しているところである。 (吉岡意見陳述人)  認知症の合併症療養だが、私は、現在は体が診られなくなった。かつては体を診られて、なお かついろいろなことができるのが老年専門科医ではないかと言っていたが、今、私どもの上川病 院は医師に人気があり、かなりレベルの高い内科医たちが来てくれている。それで、老年精神科 医と、ある程度のレベルのある内科医との連携で合併症療養をやっている。  一つ大事なのは、やはり環境が大事ではないかということだと思う。住居、住む環境。そこで ユニットケアみたいなところがいいのではないかと思って、というか、もともとやりたかった。 以前、木下委員が来られたときに、自分のところと同じような谷間だとおっしゃって、実は、彼 のところに行ったらびっくりした。すごい広さなのである。うちは少々土地が狭くて。でも、よ うやく十分な土地を手に入れることができたのでユニットケアをつくった。こういう中で認知症 の合併症療養やターミナルケアをやっていけないかと、今、私は新しい挑戦をしている最中であ る。 (藤谷意見陳述人)  療養病床の再編について、我々は、保険者としても反対をしているわけではない。ただ、現実 に保険者として保険料を算定したときに、現在、我々のところで平均約5,000円弱になっている。 今、高齢化が進む中で、やはり保険料が平均で5,000円を超えていくのではないか。そうすると、 1号被保険者、住民の理解がなかなか得られなくなる。毎期ごとに我々はそういう説明を被保険 者にしているのだが、それともう一つ、市町村財政も確かに厳しくて、12.5%負担している。今 回の再編について、やはり報酬や加算について国の方で十分留意していただきたい。そうしない で保険料自体が上がると、介護がもたなくなるのではという懸念がある。そういうことで先ほど 発言した。 (木下委員)  そもそもこの介護保険が始まるときに各保険者が保険料を試算したと思うが、当時、かなり高 い額が出ていたように記憶している。介護保険を始めるのに、どうしても3,000円以下にしないと スタートできないということで、初期にかなり保険料が抑えられた、そういう弊害がどうも今出 ているような感じがするので、それはどうかなという気がしている。 (木村委員)  まず、今日、意見陳述人のお話を伺って、必要なときに必要な医療と介護サービスが、まさに マネジメントされてしっかりつながっていなければいけないんだということを、また新たに確信 した。  2つ質問があるが、安藤意見陳述人が、ふだんからの病棟での薬剤師の仕事というか、薬剤管 理指導料を評価してくださり感謝する。実際、今は病院の薬剤師の人員配置という形で配置され ていると思うが、転換されると300対1になっていくと思う。実質的に転換型の老健になったとき の薬剤師がどれぐらいの配置になるべきかという御意見をお聞かせ願いたいことと、2つ目に、 武久意見陳述人にお願いしたいが、療養病床で介護支援専門員が、特に看護師資格を持っている 人たちが物すごく苦労していると聞く。その状況と、更に転換した老健の中で介護支援専門員の 役割が移行したときどのようになっていくかということ、そのときの人員配置が、今は100対1に なっているが、それがどれぐらいになるべきかということをお聞かせ願いたい。  まず、質問2つということでよろしくお願いする。 (大森分科会長)  よろしいか。では、お願いする。 (安藤意見陳述人)  やはり薬剤管理は高齢者医療にとって非常に大事なものであり、私の資料の23ページにも書か せていただいたが、高齢者は多くの疾患を持っている。あるいは併発症で、いろいろな薬を飲ん でいるから、その副作用や相互作用が出てくる。そのことをきちんとわかっているのは、やはり 医師と看護職員、それと、大きいのは薬剤師。薬剤師がそれをしっかりやってくれれば、その分 だけ医師や看護職員も本来の自分たちの仕事に専念できる。それだけではなく、多業種が共同で 1人の患者を見ていくことが非常に大事である。  ここにも書いているが、可能であったら、週に1回患者からいろいろな話を聞ければと思うの で、それを逆算して、今計算はしていないが、大体人数がわかるのかなと思っている。これは、 日本療養病床協会でも、以前から、薬剤は専門の委員会もあるし、木下会長も、是非チーム医療 として取り組んでいかなければいけないということである。 (大森分科会長)  では、武久意見陳述人。 (武久意見陳述人)  木村委員御指摘のことはごもっともであり、グループホームは9人に1人要求されている。施 設は100人でも150人でも1人でいい。本当にできるのかというと、できない。しかし、大きな施 設や病院は、看護職員やいろいろな職種がいる。やはり病院だけでなく、老健も全部チーム医療 なのである。ケアマネジャー1人ではケアプランが立てられない。ケアマネジャーのもともとの 職種、医療系か福祉系かによってもプランが全然変わってくる。だから、個人的な考えでは、50 人に1人のケアマネジャーが要ると思うが、ケアマネジャー単独で任せるのではなく、チームで 会議をしながらケアプランを立てていくというのが、施設及び病院、老健の特徴だと思う。その ようにしていった方がいいのではないかと思っている。 (木村委員)  最後に一つ要望だが、森意見陳述人のお話を伺って、いろいろなところで気が付くのは、愛知 県高浜市だからできるということである。また、介護給付費分科会委員には稲城市の石川市長も いるが、やはり全国津々浦々1,800の自治体が森意見陳述人のようなことをやっていっていただか ないと、地域住民が本当に困ってしまうという状況にあるので、是非市長会、町村会を挙げて、 自治体としての、保険者としての本当の責任を果たしてもらうようここで要望したい。よろしく お願いする。 (大森分科会長)  では、沖藤委員。 (沖藤委員)  各意見陳述人から大変示唆に富んだ現場のお話を伺い感銘を深くしている。私などは利用者の 立場なのだが、各意見陳述人は私たちが将来に考えるべき方向性を示してくださっている。それ で、武久意見陳述人は、新しい施設の創設という言葉で、先ほど老健とは別の施設がいいという ことをおっしゃったので、そのことについてもう少し深く伺いたい。  あともう2人の意見陳述人への質問があるので、先に申し上げさせてほしい。  吉岡意見陳述人と西澤意見陳述人だが、御両人ともに、偶然のように介護認定の話が解決策の 中に出ている。西澤意見陳述人で言えば、「介護施設の今後のあり方」という資料の2ページ目 に、「現行の要介護認定よりも、より精緻化されたケースミックス分類による見直しが必要」と いうことが解決策の最後の行に書かれている。吉岡意見陳述人も、「現実的な解決策の提案」と いうところの下の段に、やはり、「要介護認定制度を活用し」云々の中で、「個別的な処遇を行 えば、社会的入院の是正にも通じる」ということで、介護認定に触れられている。  それで、ここの詳しい御説明がなかったのだが、やはり利用者として介護認定は非常に関心が 深いところなものだから、両意見陳述人からここの部分の御説明をいただきたいということで、 まず武久意見陳述人からお願いする。 (武久意見陳述人)  新しい施設と言うが、私は遠い将来、介護施設はほとんど一つのジャンルになって、少し機能 の異なった経営者型の開業単位になるのではと思っているが、資料でお見せしたように、今現在、 病院はあれだけのことをやっているわけである。それをいきなり違う老健へ、老健という名前に ばさっと持っていくというその乱暴なやり方がどうかと言っているわけである。取りあえず病院 を介護施設の方に移して、医師が3人要るところを1人プラスアルファにして、ワンクッション 置いて、そこで十分その施設の醸成を図った上で徐々にシフトさせていくということが、私は適 当かと思って介護療養施設を提唱している。 (沖藤委員)  介護認定について、吉岡意見陳述人、西澤意見陳述人、どちらからでもいいが、お願いする。 (吉岡意見陳述人)  では、私の方からまず、医療区分1、2、3というのは、そもそもよくわからない。介護療養 型医療施設を廃止するためだけにつくられたようなものではないかと思っている。介護度5の人 は、結構医療が必要なのである。だから、せっかく介護認定制度があるなら、そこで、医療区分 1、2、3ではなくて、現実的にこの人は医療がどれぐらい必要なのか、それこそ主治医の意見 書の中に書かれるわけである。そうすればみんなで、ああ、この人はやはり入院が必要なんだな、 医療が必要なんだなと。そうすると、中途半端な施設で果たしてこの人を見ていいのかという議 論になると思う。だから、医療区分1、2、3というのは、私には全然わからない。 (沖藤委員)  わかった。 (西澤意見陳述人)  私が言っているのは、今、要介護認定は5段階、要支援ができて少し増えているが、それでも、 要介護認定を受けたら一応施設に入れるが、どの施設にということは決まっていない。たまたま 近くに特養があるから特養、あるいは療養病床があるから療養病床、それぞれ要介護認定が例え ば同じ4であっても、身体障害なのか認知症かわからないのに、その人のニーズに合わない施設 に入っている場合があると思う。だから、これはある程度ケアマネジャーが選択することもでき るが、私は、要介護認定でできるのではないかと思っている。  在宅なら5段階でいいが、入院・入所に関しては5段階だと余りにも少な過ぎる。これをきめ 細かくすることによって、その人のニーズができる。そうしたら、そのニーズに合ったところに 入ることができるのではないかということである。極端に言うと、10とか20とか30とかの段階に なり、その認定のある段階に行ったときには、入院・入所が必要であって、しかも老健がふさわ しいとか、そこまでわかるようなものがあってもいいのではないかと。  私がイメージしているのは、アメリカのナーシングホームで使われているラブスリーというも のである。 (沖藤委員)  よくわかった。最後に1つつけ加えさせていただきたいが、すべての医師ではないが、ケアマ ネジャーに聞くと、なかなか意見書を書いてくれなくて、たった1行か2行の意見書を書いても らうのに、1カ月机の上でたなざらしになっているというようなこともよく聞くので、医師の 方々、その点、医療的コメントを介護認定のときにきちんと入れてくださるように、ここで、何 か少々ピント外れな要望かもしれないが、ついでなので申し上げさせていただく。 (大森分科会長)  もう時間が迫っているので、お2人で終わりにする。川合委員。 (川合委員)  ここに座っているドクターはみんな老健を持っている。図らずも会長という職責をいただいた が、そこで昨年5月以来話してきたことは、制度を知ってください、老健というのはこういうこ とをしていますということを述べてきた。転換型老健が問題になってきたが、私が今日感謝申し 上げたいのは、各意見陳述人がおっしゃっていた、西澤意見陳述人が2枚目に書いておられる今 後、あるいは武久意見陳述人がおっしゃったシャッフルしてはどうかという御意見。走りながら 考えるということで我々押し切られてきたが、もうそろそろ3年先、5年先を見据えて腰のある 議論を、できたら私、力不足なので、毎回参考人として来ていただくとありがたいが、そういう ことも踏まえ、本当に今日はありがとうございました。 (大森分科会長)  では、小島委員。これで最後にする。 (小島委員)  私は一つだけ、これからの介護施設の将来の姿について、もし御示唆をいただければ。西澤意 見陳述人のペーパーには、将来的には一元化したらどうかという方向性について触れられている ので、まず西澤意見陳述人には、その際に、介護保険と医療保険の関係をどう考えるかについて、 お考えがあれば伺いたい。  それから、武久意見陳述人も、将来の姿としては一つのジャンルという方向性とのお話だった ので、吉岡意見陳述人は、介護施設の将来について、今のような3施設を類型で残すべきか、あ るいは西澤意見陳述人がおっしゃるような形で将来的には一元化していく方向で考えるのか。私 は、介護保険施設の整備に当たって、将来的にはやはり介護保険は施設を一元化してカバーすべ きではないかと考えている。介護保険と医療保険の役割をどうするかというのはこれから検討す べきであると思うが、その辺についてどう考えるのか。  最後に、森意見陳述人には、介護保険の保険者として、施設の将来的な姿についてどんなふう に考えておられるか。もしお考えがあれば。 (大森分科会長)  それでは、順次、お願いする。 (西澤意見陳述人)  非常に難しい問題をいただいた。私たちの協会では、今の医療保険、介護保険では、やはり両 方、二本立て、介護は介護、医療は医療でと主張している。ただ、これは協会ではなくて私個人 の意見だが、これから医療保険の保険者の再編が行われたときに、介護保険の保険者と医療保険 の保険者は同一ということが望ましい。そうなった場合には、2つの保険を分けている必要があ るのかという議論はどこかで必要ではないか、そのように考えている。 (吉岡意見陳述人)  私も、財源がどこにあるかは別にしてシャッフル説というのは賛成である。ただ、そこに医療 を担保していただきたいということ。施設であろうと何であろうと、私は別にこだわらない。介 護療養型医療施設というのは、世界にない、24時間医療つきナーシングホームなのである。  よく考えたら、意外と安い。日本は、確かに一般病床が多過ぎる。だから、私はあえて、頑張 っている介護療養型医療施設をなくすことにどこに意味があるのだろうと思っている。将来的に は、別に特別養護老人ホームが医療タイプをやりたいと言えばやればいいのであって、ただ、民 間の有料老人ホームとかでやるとするならば、これは非常に金がかかる。多分、入居金3億円と かそういう話で、これはやはり公的なものでやっていかなければいけないのではと思っている。 財源については、国民の皆さんがもう少しこのことを理解して、議論して、「こうしてくれるな らばお金を払ってもいい」という施設を私はつくっていきたいと思っている。 (森意見陳述人)  保険財政の視点から申し上げると、やはり施設系サービスが増えれば、当然、保険料が上がる ということをどのように皆さん方に御理解いただくか、これが私どもに課せられた役割だと思っ ている。先ほど申したように、均衡ある保険財政にしていく、施設系と在宅系のサービスができ るだけ均衡していることが大事だが、最終的には、利用者の方たちがどのように自分のサービス を選択することができるか、そういう選択をきちんと担保していなければ、私はこの介護保険制 度そのものが崩壊してしまうと思っている。 (大森分科会長)  ちょうど時間であり、多分まだ議論が尽きないのではと思うが、今日はお忙しい6人の方がお いでくださり、大変貴重な御意見を賜ったと思っている。介護給付費分科会が、これからある種 の決定をしなければいけないものだから、十分いろいろなことを考えながらと思っている。  今日は、本当にお忙しいところありがとうございました。  それでは、恐縮だが、一応、ヒアリングは終了ということにさせていただき、次回について事 務局から連絡がある。 (鈴木老人保健課長)  次回は、2月20日、水曜日だが、10時から半蔵門のグランドアーク半蔵門で行う。次回は、今 までの御議論の結果、そして今日のヒアリングの結果を踏まえ、事務局から改定の全体像につい てお示しし、次々回には具体的な単位を入れて御議論いただければと思っている。よろしくお願 いする。 (大森分科会長)  それでは、そういうふうにさせていただく。  これで散会する。 18