08/02/01 第17回議事録 第17回医療情報ネットワーク基盤検討会             日時 平成20年2月1日(金)             13:00〜             場所 厚生労働省共用第8会議室 ○高崎補佐  ただいまから、第17回医療情報ネットワーク基盤検討会を開催させていただきます。 委員の皆様方には、年度末も差し迫まり、ご多忙のところご出席いただきまして、誠に ありがとうございます。本日の検討会は公開形式で行います。なお、本日厚生労働省医 政局長の外口は、公務のため欠席させていただいています。  最初に検討会開催に当たりまして、厚生労働省医政局研究開発振興課長の新木よりご 挨拶申し上げます。 ○新木課長  研究開発振興課長の新木です。委員の先生方には、大変ご多用中にもかかわらず、ご 出席いただきまして誠にありがとうございます。この検討会は第17回ですが、前回、16 回目においては医療に関する個人情報を取り扱うさまざまな施策について、いろいろな ところで議論が進行しています。その中で、医療情報の取扱いに関する責任のあり方、2 番目に、IT戦略本部評価専門調査会医療評価委員会からの提言である、処方せんの電子 化に関する事項、3番目に、無線LAN・モバイルといった技術に関する運用ルールに関す る事項について、ご議論をいただいたところです。その後、さらに詳細な議論が必要と いうことから、各々作業班を設けて、5回ないし6回程度の作業班で検討をいただいた ところです。作業班の先生方には、ご尽力いただいたことに関して、御礼を申し上げる 次第です。  本日は、これらの作業班における報告が取りまとめられまして、その報告の(案)に ついてご議論をいただく予定となっています。これらいずれの問題も、大変関心の高い 分野です。先生方の忌憚のないご意見をお願いしまして、甚だ簡単ではございますがご 挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。 ○高崎補佐  本日は、樋口委員よりご都合のため欠席されるとのご連絡を賜っています。また、中 川委員より到着が遅れるとの連絡も賜っています。マイクに関しては、目の前のボタン を押していただき発言いただければと思います。それでは、以後の議事進行を、大山座 長にお願いします。 ○大山座長  では、議事の進行をさせていただきます。議事に入る前に、まずたくさんありますの で、資料の確認を事務局からお願いします。 ○高崎補佐  資料の確認をさせていただきます。お手元の資料をご確認ください。まず、第17回医 療情報ネットワーク基盤検討会の議事次第です。続いて座席表、委員名簿、資料1-1と して「各作業班における検討概要」、資料1-2は「医療情報の取扱いと責任分界に関する 作業班の総括」です。資料1-3は「処方せんの電子化の検討に関する作業班の総括」、資 料1-4として「無線・モバイルネットワークに関する作業班の総括」です。なお、今回 ガイドラインの改定案を資料2、資料3として、新旧対照表をつけていますが、量が膨 大となることから、作業班における総括を作成しまして、資料1-2、資料1-4として付 けています。また、資料4として、「処方せんの電子化について」の案、報告書を取りま とめています。資料5として、第16回医療情報ネットワーク基盤検討会の議事録を付け ています。処方せんの電子化に関する検討結果につきましても、総括として資料1-3と して付けています。以上で資料の確認を終わります。なお、資料3の新旧対照表につい ては、委員の皆様方には配付させていただいています。もし資料の未配付など不備があ りましたら、事務局に申し出いただきますようお願いします。本来であれば、委員の皆 様方には事前に資料をお送り申し上げるところでしたが、当日配付となりましたことを、 この場をお借りしまして深くお詫び申し上げます。 ○大山座長  資料の過不足等ありませんでしょうか。よろしいですか。それでは、本日の議事に入 ります。先ほど事務局から報告がありましたように、中川委員が遅れる関係がありまし て、議事次第の順番を少し入れ替えさせていただきたいと思います。即ち、医療情報の 取扱いに関する事項というのは、中川委員をはじめとして皆様方のところにも配付され ていると思いますが、意見等が出ていますので、それについては後回しにさせていただ き、順番としては2番の「処方せんの電子化についての事項」から始めさせていただき たいと思います。その後、3番の議事を行い、1番に戻らせていただきたいと思います。 ご了解いただけますでしょうか。                  (異議なし) ○大山座長  ありがとうございます。それでは、議事の2になりますが、処方せんの電子化に関す る事項について、処方せんの電子化の検討に関する作業班の喜多班長から、報告書(案) の説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○喜多委員  処方せん電子化の検討に関する作業班の班長を務めさせていただいています、喜多と 申します。作業班の作業内容、報告書についてご報告させていただきます。資料1-1に 概要があります。資料1-3に統括があり、資料4に処方せんの電子化というのがありま すので、その辺りを使ってご説明申し上げたいと思います。  概要として資料1-1ですが、「処方せんの電子化の検討」に関しては、あくまで患者の フリーアクセスを阻害しないことを前提に、検討を開始しました。処方せんの電子化が もたらすメリットとデメリットを社会全体、医療機関、薬局、患者のそれぞれの観点か ら整理しました。処方せんの電子化は、その他の医療情報の電子化と併せて最大のメリ ットをもたらすため、部分最適とならないように配慮が必要である。紙媒体による現行 の制度、運用に照らせば、電子化に向かって課題が多く存在する。全体最適の観点から も、電子化するべきという結論に立脚すれば、それら課題自体は解決可能。電子化、ネ ットワーク化の基盤の進捗に併せて議論を進めることは将来的に有益ということで、非 常に前向きな形で検討させていただきました。  資料1-3の統括のほうでさらに詳しくご説明しますが、「検討の経緯」として、平成 16年9月30日の本ネットワーク基盤検討会の最終報告としては、「現時点においては、 処方せん自体を電子的に作成して制度運用することはできない」とされています。その 中でも、将来的に処方せんの電子的作成と制度運用が可能な環境を整備していくことが 望ましいということで、検討を続けるような形になっています。  処方せんの電子化(案)の3頁をご覧ください。この報告書としましては、段落の3 つ目ですが、本報告書の基本姿勢は目指すべき処方せんの電子化のあり方を見据えつつ、 患者及び現にその看護に当たっている者、医療機関等それぞれの視点によるメリットと 生じる課題について明らかにするとともに、課題克服の方策等をあげるということです。 現状として、前回の最終報告といろいろな社会的な環境が変わってきましたので、課題 克服の方策をあげるということで検討させていただきました。  この報告書の章立てですが、1章は「経緯」、2章はあとで詳しく説明させていただき ますが、現在の処方せん実施が単なる紙ではなくて、処方情報や疑義照会という形のい ろいろな使われ方がされているという現行の処方せんの流れについて、2章で説明させ ていただいています。3章では、さらにいろいろな処方せんを電子化することによって、 非常に大きなメリットが出てきます。将来はこのような形なのですが、それを目がけて まず進めるべきであるというような形で、3章は「期待される処方せんの電子化」とい うことで書かせていただいています。4章では、処方せんの電子化のメリットとしてど のようなメリットがあるか、さらにそういうことを行った場合に、いろいろな課題があ るということを書かせていただきます。5章では、そのメリットを受けるための「検討 すべき点」、克服すべき点等を示しています。6章で、「結論」という形になっています。  また総括に戻らせていただきますが、「検討の進め方」としては、最初のほうは、3章 の「あるべき姿」をまとめて総括させていただいています。処方せんに書かれている処 方情報の電子化として達成するという目的ということなのですが、実際の処方せんだけ の電子化、処方せんをスキャナで撮るための電子化ではなくて、処方せんそのものを電 子化するということで、紙と処方情報を別々にするということを議論すべきではないと いうことにしています。二次的には、処方情報そのものよりは調剤情報、処方したあと 実際に疑義照会や後発医薬品という形で、実際に処方された薬剤の情報を電子化して処 方に返すことの仕組みが期待されます。さらに、もっと将来的には、患者が実際に薬を 飲んだかどうかという服薬の情報も、患者の同意の下に収集することが可能となること が期待されます。このような処方情報、調剤情報、それから服薬情報とどんどん進んで いくための第一歩として、このような電子化が必要なのだという書き方になっています。 さらに服薬情報があれば、患者の生涯にわたる健康管理に極めて有用である。臨床治験 や公衆衛生、新薬開発ということまでが期待されます。日本で服薬情報が確実に得られ るとすれば、国際治験としても日本側は優位な立場に立てると思います。さらに、バー コードで医薬品のトレーサビリティをやることによって、製造から実際に患者の服薬ま での情報が掴めるようになって、患者安全の観点や医薬品の回収作業や効率が期待され、 経済的な効果の観点からも非常に計り知れないメリットが出てきます。そういうことで、 処方せんの電子化をきっかけに、医療情報分野全体の電子化を総合的に進めていくこと は可能であるということで、これは3章の総括になっています。  2章に戻って説明させていただきますが、このようないろいろな問題点が起こるのは なぜかということで、ご存じの方は釈迦に説法になりますが。 ○冨澤室長  いま説明いただいているのは、資料4の4頁でよろしいのでしょうか。 ○喜多委員  これから説明するのは、資料4の4頁です。資料4頁を使って、少し処方情報の処方 せんの運用の形態を説明したいと思います。最後のほうに図が書いてありますが、それ を見ながら説明させていただきます。  まず「処方せんの交付」ですが、患者が医療機関を受診して医薬品の処方せんを受け 取るという流れがあります。この場合に、無診察行為が禁止されているとか、医師によ る記名押印が義務づけられています。それから、特定の薬局へ誘導することが禁止され ています。次に、「薬局への提出」ということになりますが、現在はファクシミリに限っ て、処方せんを提出前にファクシミリを電送して、薬局がそのファクシミリによって調 剤の準備を行うことができるとされています。薬局は、医師が交付した処方せんである ことを、健康保険に関わる処方せんの場合は、その処方せんの被保険者の給付を受ける 資格があるかどうかをチェックするとか、あとは有効期限が4日というのがありますの で、そういうものをチェックするということになります。「調剤」の場合には、疑義照会 を行って、薬剤師はその内容を処方せんに記載しなければならないというのがあります。  それから、「薬の提供」の場合には、分割調剤というのがあって、それは次の頁にあり ます。薬を全部一度に出すのではなくて、薬によっては複数回に分けて出したほうがい い、出さなくてはならないというものがあります。その場合には、分割した調剤を記録 して、さらに患者に処方せんを返すことができます。返した場合に、患者は必ずしも同 じ薬局に行くわけではなくて、また別の薬局でも構わないというような仕組みが保障さ れていて、その辺りを担保するという必要があります。  次に5頁です。後発品の変更を行った場合には、その内容を処方せんを発行した医療 機関に通知することになっています。「記録の保存」ですが、処方せんに保管して調剤録 というのがあるのですけれども、調剤済みの場合には処方せんに調剤済みの旨を書くこ とによって、調剤録を代用することができます。3年間調剤済みのものを保管すること が決められていて、こうしたことが5〜7頁にわたって条文を抜き出してありますが、16 項目の法律によって決められているという形になっています。ですから、単に処方せん をデジタル化する場合に、このようないままでの決められた業務を果たすような形で電 子化を行っていかないといけないということになります。  3章は先ほどの総括で説明しましたとおりの状況です。海外でも進められていて、そ の辺りは日本がフリーアクセスというような状況で、海外の場合は医師から薬局への調 剤の指示や診療報酬になっているといった制度の違いによって進めやすい状況ですが、 日本の場合は日本のフリーアクセスの習慣に合わせてやっていく必要があるということ になっています。  4章で、「メリットと生じる課題」について少し説明させていただきます。処方せんの 電子化にあたっては、直接の当事者である患者や公衆衛生のメリットをもたらす点では 検討は当然であるけれども、他方、患者や医療機器等のいずれにも過度な負担が新たに 発生しないことも、検討を加えるべきであろうということになっています。交通機関で ICカードが普及されていることがいい例になりますというような書きぶりになってい ます。  (1)として、「全体におけるメリットと生じる課題」としては、医療機関として入力 された情報が調剤情報となって、その調剤が再び医療機関に戻って再利用が可能となる というメリットがあります。さらに、医療機関間、医療機関-薬局間での情報の共有・共 用化が進む。医薬品相互作用やアレルギーの情報の管理に資することが可能になる。安 全確保の公衆衛生上の向上の一助となります。患者自身が公共性のある機関に情報を預 ける等を行うことによって、救急の医療や災害、医療関係者の患者等の常用している薬 剤を知ることが可能となるというメリットがあります。  こうした場合の課題としては、紙の媒体の場合には破損しても処方として機能する場 合が多いわけですが、電子化された場合にはいろいろな媒体やオンライン、記録装置や 情報の読み書きに関わる機器やオンラインとかいろいろな要素があって、障害となるこ とがあります。それから、調剤した薬剤が医療機関など3者に瑕疵がなくても、電子化 した処方せんを受け取れない可能性があります。3番目としては、何かインフラが必要 になって結果的にコスト高になるような可能性があるという課題があります。  次に11頁にいきます。「患者側のメリット」としては、遠隔医療等の活用により、医 療機関からの処方せんの受け取りを省力化できるということで、遠隔医療がある慢性期 や2回目以降は許されていますが、その場合に医療機関に行かなくても処方せんを取る というような省力化が期待されます。それから、いまファクシミリでやっているものを 原本として提出することが可能になることが期待できます。それと、患者自身が、薬剤 使用歴として自己管理ができる。自分の情報を他の医療機関に示すことが、紙で見せる よりも容易になることが期待されます。  この場合の課題としては、患者が、紙ですとすぐ見えるわけですが、何かの機器を使 わないと処方情報の確認ができないということがあります。恒常的に発行できない医療 機関があった場合には、患者が希望しても電子化した処方せんを入手できないというこ とが起きてきます。それから、薬局で恒常的に受けることができない場合には、フリー アクセスが阻害されるという問題があります。4番目は、患者自身が処方せんをどのよ うに取扱ったかを、本人が望まなくても第三者に確認されてしまう。例えば、紙の場合 ですと自分がたまたま同じ薬をもらってしまって、もう要らないといって破ってしまう とか、行かないということがあるわけですが、電子化の場合には残ってしまったりする と、行かなかったというのが誰かにわかってしまうかもしれない、その辺りのシステム の作り方をうまく考える必要があるという問題、課題があります。  「医療機関のメリット」としては紙媒体の処方せんで最近いろいろなコピーがしやす くなっています。電子化することによって、かえって処方せんの偽造や再利用を防止で きるということがあります。それから、処方せんを印刷するコストが削減されるという のがあります。薬局から処方せんへの疑義照会の内容、後発薬品への変更情報などが電 子化されて、医療情報システムへの反映の要因になるということがあります。  課題としては、電子化した処方せんを交付するとした場合に、紙媒体の処方せんと電 子化した処方せんが混在する場合には、事務手続きが煩雑となります。それから、電子 化した処方せんを発行するための機器の費用負担が必要になります。  「薬局におけるメリット」ですが、処方せんの電子化で偽造、再利用の防止ができま す。処方せんの再入力や労務経費軽減及び誤入力の防止が可能となります。運用形態に もよりますが、ファクシミリを用いないで行われている処方情報の事前通知を用いて行 われている処方情報の事前通知を電子的に受け取ることや、事前通知ではなくて処方せ んの原本を受け取ることが可能となります。それから、保管スペースが削減される、疑 義照会の医療機関へのフィードバックが容易になる。後発品の医療機関へのフィードバ ックが容易になります。  生じる課題としては、患者が希望した場合に混在する場合に、処方せんが混在すると いう問題があります。薬局は、処方せんの応需義務があるということと、フリーアクセ スを阻害しないために、両方に対応するというために、事務手続きが煩雑になるという 課題があります。電子化した処方せんを受領するための機器の費用負担が必要となりま す。このように、いま挙げました克服するための検討すべき点を、次章で記載しました。  5章は、「患者の利用するデバイス」として、ネットワークでやるにしてもカードでや るにしても、電子的なデバイスが必要になってきます。いずれの場合においても、何ら かの患者に物理媒体を配布する必要があります。現在検討中の社会保障カードが、この 物理媒体として利用できる可能性があります。2番目ですが、「患者等による薬剤の情報 の蓄積」に関しては、患者が蓄積した利用医療機関や薬局が閲覧などを利用する場合に、 オンラインで何らかの記録装置に処方を蓄積して、関係者で共有を行う運用体系が必要 となります。この場合の共有の形としては、電子私書箱やオンライン上の記録装置とし て利用できる可能性があります。「電子化した処方せんの閲覧」、患者がアクセスが可能 な場所に、電子化した処方せんを閲覧できる環境を整備する必要があります。  次に4番目ですが、「患者のリテラシー」が必要になります。それから、「障害時の対 応」で何か障害が起こった場合に何らかの代替の手段が必要になってきます。もう1つ、 「保健医療福祉分野の公開鍵基盤」ということで、署名押印が必要ということで、いま 厚生労働省でルートがありますHPKIに基づく電子署名が必須になってきます。  7番目は、「ネットワーク基盤の整備」ということで、全医療機関へ薬局間のネットワ ークの基盤の導入が必要ということです。現在のレセプトは、支払機関から医療機関な のですが、医療機関と薬局を結ぶネットワークがフリーアクセスを担保するには必要だ ということになります。  15頁、「電子化した処方せんの様式」としては、コンピュータの処理を念頭においた 処方せんの記述様式や、メッセージ交換方式の標準化が必要ということです。現在JAHIS でやられているHL7の処方情報の記述様式や、医療情報システム開発センターで提供し ている医療品のマスタというのが使われるために、積極的に利用を推進すべきものとし て挙げられています。あとは、現在医薬品のマスタとして、後発医薬品を念頭においた 一般名による処方が増加していますので、こうしたマスタの開発、コードセットの開発 が望まれています。また、このような医療機関や薬局において、標準化されたコードセ ットを利用する環境を整備する必要があります。「電子化した処方せんの運用スキーム」 についても、いろいろ考えないといけないということがあります。  10番目ですが、制度的に処方せんをいつ交付したかということについても、法解釈が 必要になってきます。現在、対面による服薬指導、情報提供が原則とされていますが、 患者が処方せんを薬局に直接提出する必要がなくなる可能性がありますので、今後この ような場面を想定した服薬指導や情報提供のあり方について検討が必要となります。  それから、「コスト負担」の面では、物理媒体も全国民に配布するということでコスト 高になってきますので、検討中の社会保障カードや電子私書箱を利用活用した総合的な 全体のことを考えた検討が必要だろうということです。紙媒体と電子媒体の処方の共存 は避けるべきだと考えています。  総括に戻りますが、2頁で検討すべき点を細かく説明させていただきましたが、3つに まとめて、患者が利用する物理媒体を含めて、患者等自らコントロールによる薬剤情報 の蓄積、閲覧等の活用方策と、認証や安全でコスト負担の軽減された、網羅的なネット ワーク基盤、その他の環境の構築が検討する点になります。記述様式やメッセージ交換 方式等の標準化、後発医薬品を念頭においた一般名による記載を考慮したマスタの開発 とすべての医療機関、薬局において標準化されたマスタを利用する環境の整備。最後に、 全体最適に鑑みたコスト負担や制度面での担保も踏まえた、電子化した処方せんの運用 スキームというのは、検討すべき点になります。  「結論」としては、現状において実現するには検討すべき点も多くあるため困難であ るが、想定される課題は、コスト−ベネフィットにも鑑みて実現しようとする際には、 いずれも解決不可能なものではなく、処方せん電子化に向けての障害となり得るもので はない。全体最適化の観点からは、医療機関等へのネットワーク基盤整備に関する医療 の情報化の取組みは、処方せんの電子化への対応を考慮しつつ進めることが有意義であ る。課題として挙げた各項目は、必ずしも一度にすべてを解決しなければならないとい うことではなく、環境の変化、準備の進捗状況を踏まえながら、電子化の段階的進展も あり得る。しかし、その際も安全を確保することが当然ながら、我が国の医療保険制度 の根幹である「患者による医療機関・薬局の自由な選択(フリーアクセス)」を損なわな い運用の確保が必要であるとともに、時代を経ても陳腐化しない、また部分最適化とな らないような特段の配慮が必要であるという結論にしました。以上です。 ○大山座長  ありがとうございました。ただいま処方せんの電子化の検討に関する作業班からの報 告をいただきました。これに関して何かご質問、ご意見等がありましたらお願いします。 いかがでしょうか。 ○原委員  まず作業班の委員の先生方には、処方せんの電子化について基本、かつ重要な課題等 の整理をいただきまして、本当に感謝を申し上げます。ありがとうございます。  (案)のところで何点か気になる部分がありました。用語というか、今回この処方せ んの情報の部分を整理する上で、処方情報、調剤情報、服薬情報、薬剤使用歴というよ うな、情報を扱う表現がいくつか出てきます。この(案)の中の整合とか正確に情報が 示す部分に、ちょっと誤解を招くような部分があるのではないかというような気がしま したので、少しお話させていただきます。  例えば(案)の10頁、4章の(1)「全体におけるメリットと生じる課題」の「(1)医療 機関で入力された処方情報が薬局において調剤情報となり」とありますけれども、情報 の質としては異なるものですし、データ的に見ればかなり近いものになるのかもしれま せんけれども、いわゆる発生している、生成している部署が違うということが、もう少 し明確に表現できればと思います。  同じ部分としては、13頁(2)の「なお、処方情報と調剤情報は必ずしも一致しない」 と、データ的に見て必ずしも一致しないということかもしれませんけれども、情報の質 としては異なるものですから、一致はしないということになるかと思います。  11頁の(2)「患者等におけるメリットと生じる課題」の「(3)提供された処方情報を患 者等が自ら保存・蓄積することで、薬剤使用歴としている」。これも処方情報は医師が作 成した情報ですし、薬剤使用歴というのは患者が実際に交付され使用する薬剤の情報と いう形になりますので、少し意味が異なるのではないかということで、文章中の整合を 少し取っていただけるといいかなと思います。よろしくお願いします。 ○喜多委員  どうもありがとうございました。 ○稲垣委員  歯科医師の稲垣です。大変便利なものだなと思って拝見させていただきました。ただ、 まだ歯科医療機関の場合、情報化というのは進んでいませんので、いきなりこういうの を持ってこられても、どれだけ対応できるかという、その辺の基盤整備の進み具合とと もに、こういうものが整備されたほうがよいかと思います。  それから、現在処方せんはワンウェイなのですけれども、例えば具体的な薬は申し上 げられないのですが、医科で処方された薬を歯科で何年間かお飲みになっている方で、 例えば歯科における外科処置をすると、重篤な骨の腐骨等が起こる薬もあります。そう いう医療安全の立場からも、処方せんという、今まで処方して、出して、薬局でという のではなく、もう少しその辺で情報の共有化を積極的に書かれるようなシステムにして いただきたいと思います。以上です。 ○足立委員  いくつかの観点からコメントをさせていただきたいと思います。1つは、患者の立場 に立つと、電子化された場合、どうやって見たらいいのだろうというのがあります。紙 で渡された場合、いつもの薬だなとか、これは飲んだことがありますね、というような ことが確認できるのですけれども、そういう確認手段がどうなるのだろうというのが、1 つ疑問としてありました。これは技術的にたぶん解決できると思うのですけれども、そ の辺りを加えていただければと思います。  あとは、電子的な授受について書かれている部分があるのですけれども、1つは薬剤 コードの統一などがあります。これはいま、ICHのほうでM5ということで、ドラッグ・ ディクショナリーを検討していますので、そういうものも1つの候補として考えられま す。いま医療機関で使われているコードが、全くばらばらになっているという問題もあ りますので、その辺りで国際的にハーモナイズされたものが、何か使えるかということ が1つあります。  もう1つは、HPKIの問題があります。当然、偽造防止、捏造防止のために必要な措置 でありますけれども、いかんせん残念ながらHPKIは高いというのがあります。これは治 験の電子化を検討しているときにも、やはり認証とかという問題を考えていく場合に、 いちばん使いやすいというかHPKIがとっつきやすいだろうと思うのです。しかし、何に しても高いものですから、治験をやっている先生にこれを取ってくれと、なかなか言え ないという問題があります。その辺りを考えていただきたい。  もう1つは、GPKIもHPKIもそうなのですけれども、これはいわゆる実印扱いですね。 ただ、いま処方せんを出すときに実印を押している先生は果たしているか、ちょっとそ の辺のことがあります。電子化したがために、セキュリティを上げなければいけないと いう議論はわかるのですが、どこまでが実用的範囲なのかを少し考えなければいけない かもしれない。些末ですけれども、コメントさせていただきました。 ○大山座長  ありがとうございました。喜多委員、今のことで何か回答はありますか。 ○喜多委員  伺っておきます。 ○大山座長  HPKIは高いという話ですが、そうなのですか。 ○山本委員  HPKIが高いのは、いま唯一発行している組織が高いということで、お聞きしていると ころでは、これ以外に発行を開始するというので、厚生労働省の監査を受けて始めよう とするところもあるので、値段の問題はそう遠からず解決します。  ポリシーを作った立場で申し上げると、普通の医師もしくは薬剤師が、職業に使う判 こを3年に1度買い換えるぐらいの値段で発行できないと、広まらないということで、 そういう運用が可能なようにポリシーを設計したつもりです。それは遠からずそういう ふうになるだろうと。今は非常に少ないので、コストが上がっているのだろうと思いま すから、それはたぶん解決できると思います。  ただ、実印レベル、本人確認の程度というのは、電子署名の場合、どうしても最初に 社会的信用を得るという意味で、現状は多少厳しい。確かにその辺の判こ屋さんで山本 の判こを買ってきて押すというレベルではちょっとない。そこはご指摘のとおりかと思 いますけれども、当面社会に対しての信頼を得ていく上では、ある程度やむを得ないの かなと考えています。 ○足立委員  ありがとうございます。ぜひそうなっていただくと、我々医薬品を開発する立場とし ても、その電子的なものとして同じPKIが使えますので大歓迎です。 ○廣瀬委員  今の作業班の検討されている処方せんの電子化の内容に関しては、患者と国民、医療 機関、薬局等にメリットのほうが非常に多く書かれています。諸外国では今回の検討の 内容に沿った形で、紙媒体と混ぜないとか、実際にここで言っているような処方せんの 電子化をやられている国は多いのでしょうか。 ○山本委員  急速に増えています。米国でも処方せんの70%は電子処方せんになっているとか、ヨ ーロッパでもかなり急速に進んでいます。ただ制度が違うので、それと同じように日本 に適用できるということでは決してないのです。そういう意味で申し上げているつもり はありませんが、処方せんが電子化されているという意味では、いま急速に増加してい ます。  どちらかというと、処方せんの電子化というのが一旦始まると、かなり急速に進んで いるような傾向があるようです。あくまでも諸外国の制度と日本の制度は違いますので、 そのままで適用できないということになります。 ○石垣委員  16頁のコスト負担のいちばん最後に、「全体的なコストを論じるのであれば」と前置 きにあって、「紙媒体と電子媒体の処方せんの共存は避けることが望ましい」と述べられ ているのですが、これは全体を通じてもそういうふうな思想なのでしょうか。もしやろ うとした場合、コストの面だけではなくて、いろいろな面で運用等も含めて、共存は避 けるというのか、どちらなのでしょうか。 ○喜多委員  例外を除いては、共存は避けるということです。絶対ゼロではないですけれども、一 緒にあるのはあまり効率的ではない。 ○石垣委員  ですから、このコスト負担という面だけではなくて、全体としてそういう方向性とい うことですね。 ○喜多委員  はい。 ○原委員  今回の作業班の取りまとめの中でもはっきり書いていただいていますけれども、いわ ゆる患者のフリーアクセスという視点は、どうしても押さえるべきことになります。い まいろいろご意見をいただいている中でもそうですが、まさに医療情報全体のネットワ ーク基盤というものがはっきり見える中で、処方せんというものが電子的なことが可能 になると思います。ぜひ全体的なネットワーク基盤をベースに、今後また段階を追って ご検討いただければと思います。 ○三谷委員  今回の検討会において、作業班でこういうテーマについてまとめていただきましたが、 平成16年9月の報告書では、まだ処方せん自体を電子化するのは難しいという報告でし た。しかし、将来的に処方せんの電子的作成と、その制度運用に向けての環境整備をし ていくという方向で、今回、いろいろ細かい課題を挙げていただき、意味があったので はないかと思います。  メリットと課題が挙げられているわけですが、今回の作業の位置づけというのは、先 ほどの報告書ではまだ難しいとされていたものが、今後実際に運用していくという方向 に向けて動き出したと受けとめてよいのかどうか、というのが1点です。  作業班の総括の中で、資料4でメリットと課題という形でわかりやすく整理していま す。この総括の下から5行目に「電子化された際のメリット、デメリットを社会全体、 医療機関、薬局、患者のそれぞれの視点から検討に着手した」とまとめていただいてい ます。  この「メリット、デメリット」というのをメリット、それから、デメリットではなく て、全体的にはメリットのほうが評価できるのではないかと思うのですが。課題という 言葉で書いていただいたほうがいいのではないかと思いました。  細かい質問になるのですが、処方情報の事前通知ということで、今はファックスが可 能になっています。これはファックス以外の形態、例えば処方せんをPDFあるいは画像 ファイルで読み込んで送るというのは、現行の制度でも可能なのかどうかを確認させて いただきたい。  ちょっと卑近な例で申し訳ないのですが、私は高血圧があって、最近新しい薬を追加 で処方されて、薬局に行くときにファックスで送ったのです。その新しく書かれた薬名 が、処方せんの紙に色が着いていて読めなかったということがありました。  ファックスで必ずしも情報が正しく伝わらなかったことを経験したので、ファックス で送るならば、より確かな伝送という意味で、画像ファイルにして送るということが可 能なのかどうかと思ったのです。回答がありましたら、よろしくお願いします。 ○高崎補佐  ご質問の趣旨は、この検討会の結果が処方せん電子化に向けて前に進んでいくのかど うかということですが、今回検討するに至った経緯として、IT新改革戦略の評価専門調 査会、及び医療評価委員会で、処方せんを電子化すべきではないかという提言がなされ て、今回検討した次第です。先ほどから各委員より発言がありますように、この処方せ んの電子化にあたっては、現行の患者による医療機関、薬局のフリーアクセスの担保が、 国民にとって最大限のメリットであるところを前提の上に、進めていく必要があると思 っています。  また、この報告書の最後にも記載してあるのですが、処方せんの電子化はすぐに実現 するわけではないというのが、現時点での結論です。その結論に至るまでに、患者にお けるメリットをいろいろ列挙させていただきまして、処方せんが情報化されることによ ってメリットが多分にあるのだという結論に至っております。今後これらの各制度の進 捗を見据えつつ、さらに挙げられた課題に対しては、具体的に詳細な検討が必要である のですけれども、進めていくべき検討事項であると思っています。  2点目のファックスについてのことですが、所管部局に確認して、追ってまたご連絡 したいと思います。 ○大山座長  まだご意見等はおありだと思うのですが、大きな検討すべきことがまだ2つあります ので、お許しいただければこれについてはここで打ち切らせていただきたいと思います。 ですから、ご意見等は次回までにメール等で事務局に上げていただくことを早急にして いただきたいと思います。これでご了承いただけますか。  よろしいでしょうか。それでは先に進めさせていただきます。続いて議事の(3)「無 線・モバイルを利用する際の技術的要件等に関する事項」について、無線・モバイルネ ットワークに関する作業班、篠田班長からガイドラインの改定案の説明をお願いします。 ○篠田委員  無線・モバイルネットワークに関する作業班の検討の内容について、ご報告します。 最初に資料1−4を用いて、全体的にどういう検討を行ってどうしたかということを紹介 します。その後で、資料2で具体的にどの場所にどう書いたかを報告したいと思います。  皆さんの中にも、すでに無線LANとか、それからいわゆるテレワークという使い方を して、ある施設の外で、個人が情報機器を使うことをしておられると思います。我々の 作業班では、その観点で無線LANとモバイルネットワークという2つの観点で検討を行 いました。  まず、無線LANに関して申しますと、これは非常に便利で、実際にケーブルを這わせ ることなく、システムに対してアクセスできるという、大きなメリットがあります。使 い方によっては、何分にも電波を使うので、盗聴や不正アクセスの脅威が存在すると言 われています。実際にそれに対してどういう対策を採らなければいけないかは、各社で 検討されています。  これは実際に医療機関だけではなく、各個人あるいは会社、企業等についても使われ ているわけなのですが、それを安心して使うために、実際に総務省からもガイドライン が発行されていて、「安心して無線LANを利用するために」には、具体的にどうすればい いかということも書かれています。  非常に便利である一方で、使い方によっては脆弱性がもたらされるということで、実 際にその脆弱性をどうやって回避するかを、具体的にこのガイドラインの第3班の(案) の中で述べています。結論から申しますと、今すでに暗号化を行って、安全に使うとい う手段は使われているのですけれども、使い方によっては脆弱性があるということなの で、さらに高度な暗号化が、実際に医療機関で使う場合には必要であるということで、 具体的にどういうことをすべきかということを書きました。  もう1つは、侵入とかそういうシステムに対する害というわけではないのですけれど も、回線が遮断することがあって、実際に医療機関で情報交換をしているときに、通信 が遮断されることによって、業務に障害が出ることがあります。無線LANにおいては、 通信障害ですけれども、具体的に挙げると、ある設定されたチャンネルに対して大量に アクセスがある場合に、通信障害が発生する、そういう場合があるということも注意を 喚起しています。  次のモバイルについては、先ほどテレワークと申しましたけれども、例えば医療機関 の外から医療機関の従業者が、自施設のシステムの中にアクセスすることが、いわゆる モバイルネットワークですが、この場合に2つの大きな問題があります。1つは、使え る端末が携帯電話を含めると、大きく分けると3種類ぐらいあります。携帯電話といわ ゆる可搬型の小さなPDAというソース網、それからいわゆるPCがあります。  最近は携帯電話に対しても、非常に高機能なものが使われていて、一般的にはスマー トフォンと言われるものがあります。そういう機器の違いによっても、脆弱性というか、 使い方によっては侵入あるいは改ざんというような、侵入された結果改ざんされるとい うことが生じることがあります。  一方、回線についていうと、非常に多様な回線があります。先ほど携帯ということを 申しましたけれども、一般の電話回線の他に、携帯電話も回線の範囲に入りますし、イ ンターネットもあります。そういう多様な回線がありますので、どの回線を使うかによ っては、危機が生じることがあります。そのためにどういう場合に対しては、どんな脅 威があるのか、それに対してはどういう対策を採らなければいけないかを議論して、明 確化しました。  それからもう1つ、モバイルで注意しなければいけないのは、例えば情報をUSBメモ リに入れて持ち運んで、例えば外にあるインターネットカフェとか、ホテルに設置され ている端末に情報を入れて、実際にアクセスすることも頻繁に行われるのではないかと いうことです。これについては、新聞等のニュースでよく見かけることなのですけれど も、情報のぞき見というのもありますけれども、その機器そのものを放置したために、 盗難に遭ったとか、あるいは置き忘れたというようなことがよく見られます。そういう ことの対策、これは主に使う側に対する注意ですけれども、そういうものもあるという ことを検討して記述しています。  資料2で、具体的にどこにそういうことを書いたかということを簡単に紹介させてい ただきます。第2版でも、無線LANとかモバイルについては、いろいろな回線について 記述されていますけれども、特に十分な検討を行いましたので、それに記述を付加して います。  具体的に申しますと、34頁の真ん中から下の段落を変えたところに、無線LANという ものが使われるという、非常に扱うことが便利だということを記述していますし、最近 はPLCという便利なものも出てきていますので、そういうことについても注意を喚起し ています。  具体的な無線LANを利用する場合についての対策なのですが、35頁の8.の「無線LAN を利用する場合」ということで、最低限のガイドラインとしては、こんなことをしなく てはいけないということを箇条書きにしました。  無線LANについては、いま申し上げたところにまとめて記述してありますけれども、 モバイルに対して6.9を新たに設けて、「情報および情報機器の持ち出しについて」、ど ういう場合に使い方があるかをまとめて、どのようなリスクがあるかを紹介した上で、 「最低限のガイドライン」として、10項目ほどまとめました。  具体的には、持出しをすることによって、先ほど申し上げたような盗難に遭うとか、 紛失したり、覗き見されること、実際に使うアプリケーションにも注意が必要というこ とを書いています。「推奨されるガイドライン」については、覗き見に対する対応を書い ています。  最初に回線の問題があることを申し上げましたが、それについては56頁のIIIで、「モ バイル端末等を使って医療機関等の外部から接続する場合」ということで、57頁の図に よって、どういう経路を通って医療機関等の内部のネットワークにアクセスされるかを 示して、それぞれどのような経路を使うかに対して、どのような脅威があって、それに 対してどのような対策をするかを、図を示しながら分類をして、58〜61頁のB-3まで説 明を加えています。その分析に従って、具体的に最低限のガイドラインをまとめていま す。簡単ですが、無線・モバイルのネットワークに関する作業を紹介させていただきま した。 ○大山座長  ありがとうございました。ただいま説明いただいた無線・モバイルネットワークに関 する作業班からの説明につきまして、ご意見、ご質問等があれば承ります。いかがでし ょうか。  現場では対応しきれないようなことはありますか。 ○篠田委員  現場で一斉に対応しなければいけないとなると、技術的な対応が必要になるのですが、 そこまで詳しく書くと、ここでは書き表わしきれませんので、例えば総務省のガイドラ インなどに具体的に記述されていますので、そういったものを参照してほしいというこ とにしました。 ○河原委員  資料2の19頁ですが、「標準的な用語集」とありまして、下のほうに3つほど例示が あります。これは例示ですから、他にもいろいろあると思うのですが、できましたら、 いま日本医学会で各学会の医学用語を統一しようとしていますので、その成果物として は、南山堂で『日本医学用語辞典』というものも出ていますので、それを例示の中に加 えていただければありがたいと思います。学会に投稿するときも、なるべくその用語に 合わせることを投稿規程に挙げている学会も出ていますので、お願いします。 ○山本委員  ここに挙げている標準病名マスタは、医学会に問い合わせて辞書と整合性を取るよう にして整理されていますので、大きな違いはないと考えます。 ○足立委員  コメントなのですが、ここに記載させていただくというより幅広い意味なのですが、 いま我々が所属しているような製薬企業でもそうですが、USBの使用がかなり制限され ている状況にあります。それは秘密漏洩があって、もし使う場合でもパスワード付きの USBを使いなさいと配られて、それでやっているわけです。43頁にも記載されています が、医療機関の先生方への情報の教育が、いちばん重要ではないかと思いますので、そ の辺りを強調されたほうがよいと思います。 ○篠田委員  失礼いたしました、教育についても触れております。 ○大山座長  ごもっともなご意見だと思います。他はよろしいでしょうか。なければ先へ進めます。 無線・モバイルの作業班の皆様方にも厚く感謝を申し上げたいと思います。  議事次第の(1)に戻って、「医療情報の取り扱いに関する事項」について、医療情報 の取扱いと責任分界に関する作業班の山本班長から、ガイドライン改定案の説明をいた だきます。お願いします。 ○山本委員  資料1-1の最初の塊が、「医療情報の取扱いと責任分界に関する作業班」のエッセンス のエッセンスのような形で書かれています。本来、この取扱いの作業班は、直接的には 情報の外部保存、オンラインによる外部保存をどこまで考えることができるかと。それ から、医療情報そのものの医療機関だけに留まらない広まりを現実に見せてきているの で、その取扱いに関して考慮すべき点ないしは規制すべき点を検討してきたわけです。  まず、責任のあり方を明確にするために、これまで旧第2版の6.10章にあった「外部 と医療情報を交換する場合」の項に書かれていた責任分界点という概念を、ガイドライ ン全体に適応するように、いままで自己責任の解説が書かれていた4章に移動して、全 面的に改編しました。  まず、「自己責任」という言葉はあまりにも抽象的なので、具体的に書くために「情報 保護責任」ということで、「通常運用における責任」と、「漏洩等の不都合な事態が起こ った場合の事後責任」の2つの責任に分けて、それぞれを説明する責任、運用管理をす る責任、見直して改善する責任、事故が起こった場合には事態の発生を公表して、原因 と対処法について説明をする責任と、原因を究明して再発防止策を講じて、損害賠償等 の善後策を講じる責任と分けて解説をしました。  外部に情報が提供される場合、医療機関の場合に、例えば検体検査を検査会社に委託 するような、委託の形態によるものと、紹介状を他の医療機関にお渡しする、ないしは 処方せんを患者に交付するといったように、医療機関から相手に提供する情報形態と2 つありますが、それぞれについての責任分界のあり方、特にITを使う場合には、真ん中 にネットワーク事業者といった民間の事業者が介在する可能性がありますので、そうい ったところでの責任分界のあり方を、できるだけ明確にしました。  これらを踏まえて、直接の動機であった診療録等をオンラインで外部保存するための 受託事業者による不適切な取扱いがなされないように、定めておくべき契約事項や規定 を明確にいたしました。資料1-2で細かく書いているので、これを中心にご説明します。  1で「電子的な医療情報を取り扱う際の責任のあり方」、第2版までは「自己責任」と いう抽象的な言葉で書かれていて、どこまでが責任なのかが明らかにされていませんで したので、ここでは、患者から情報を委任契約に準じてお預りして、それを管理する医 療機関としては、悪意のない善良なる管理者の注意義務を果たすことが求められるわけ ですが、このガイドラインでは、4章を含め6章以下、すべて医療機関の情報管理者が 果たすべき善良なる管理者としての注意義務を、できるだけ具体的に書いた、とスタン スを明確にしています。  責任分界点もそうです。複数の医療機関、医療機関とネットワーク事業者、医療情報 システムの構築ベンダー、保守ベンダー等、さまざまな事業者が情報に対して一定の関 与をすることが増えてきたわけですから、その際の責任分界点をできるだけ具体的に示 すことを、ガイドラインに書きました。  2番の4.1章が、具体的な責任についての記載です。後で頁はご紹介しますが、内容 は資料1に従ってご説明します。先ほど申し上げたように、事故がない状態を「通常運 用における責任」と呼びました。万が一にも情報事故が起こった場合の責任、その場合 にどのような責任を取るかで、「事後責任」として、この2つの責任に分けて整理してい ます。  「通常運用における責任」、つまり普段の責任は、医療機関等の管理者がなすべき事項 として3つ挙げています。まず、(1)として、患者等に対して、医療情報が適切に管理さ れていることを説明する責任、問われれば説明をする責任がある。(2)として、システム を適切に運用管理する責任、人任せにしないで自分できちんと運用管理をする責任です。 (3)として、定期的に状況を見直して、もし問題があれば必要に応じて改善を行う責任が あります。この3つを「通常運用における責任」として解説しています。  (2)の「事後責任」ですが、これは何らかの不都合な事態が生じた場合に、対処する ことを備えておかなければいけない責任です。1つ目として、まず事態発生を公表する こと。その原因と対処方法について社会ないしは患者等に対して説明をする責任。2番 目として、事故の原因を究明した上で、損害補填や再発防止策を実施するなどの善後策 を講じる責任がある。このように責任を分けて、より具体的に解説をしました。  これらの責任を複数の事業者、医療機関ないしは2つの医療機関、ないしは医療機関 と医療機関の間にネットワーク事業者がある、あるいは医療機関と患者の間にネットワ ーク事業者があるというような、複数の事業者が1つの情報に携わる場合の責任分界に ついて、4.2章で書いています。この責任分界については、大きく分けて、「委託」と「第 三者提供」があります。  「委託」は先ほど申し上げましたように、検体検査を検査会社に委託をする。この場 合は、実際は情報は第三者に渡るものの、委託を行った主体である委託元の医療機関が、 原則として管理責任をすべて負うことは、個人情報保護法で明記されておりますので、 そういう前提に立って、なおかつその説明責任、管理責任を負った上で、実質的に事故 があった場合に、どういった補償ないしは原因究明の分担をどうすればよいか、どうい う考え方を取ればよいかを記載しています。これが委託の場合です。  通常運用の場合は、とりあえずは委託元が患者に対しては責任を果たすのだと。それ から情報提供等の責任もあるのだと。委託事業者の実態を理解して、監督を適切に行わ なければならない。委託先での管理状況を定期的に見直して、改善を行う責任。これは あくまでも医療機関が、いつでもそれを可能とは限りませんから、もしも相手機関に依 存する場合は、これを契約事項に含めておく。それから、あらかじめ可能な限りの事態 を想定して、責任の分担について契約事項に含めておく。  事後責任は、医療機関の管理者が委託先事業者の選任監督、これは適切な事業者を選 んでなおかつ監督しているという意味です。選任監督に十分な注意を払っている場合で あっても、患者に対しての善後策を講ずる責任は、一義的には医療機関は免れることは できない。とはいうものの、責任の分担の程度は委託契約等に応じて別途考慮する必要 があって、委託事業者先で事故が生じた場合、最終的には委託先事業者が損害填補責任 等を負うのは原則である。医療機関等の管理者がすべての責任を負うことは原則として あり得ない。とはいうものの、事故がもし発生したら、どちらが責任を取るかを優先さ せるのではなく、まず原因を突き止めて再発の防止を優先させることを委託契約に明記 すべきである。それから、原因の程度や填補による損害分散の可能性などを考慮して、 損害填補責任の分担について委託契約に明記しておくことが必要です。  「第三者提供の場合」は、法律では、「一旦適法に提供された医療情報は、提供元の医 療機関に責任はない」となっていますが、一方で、提供先が適切に扱われないことを知 りながら情報提供するという場合は、共犯的なことにとられる可能性がありますので、 情報を提供する際は、相手にその情報が適切に扱われることが、ある程度類推される必 要があるということです。  IT化された情報の場合には、提供元と第三者提供を行う提供先との間に、情報処理関 係事業者が介在することがあります。その情報処理関連事業者に原因がある事故の責任 所在については、契約等で明らかにしておく必要があります。患者に対しては、情報が 提供先に到達するまで、つまり相手方に間違いなく情報が着くまでは、提供元の医療機 関等に責任があることになりますので、善後策を講ずる責任の分担を、この時点で情報 の提供が終了したということをあらかじめ明らかにすると同時に、その前の状態も、情 報処理関連事業者等が介在している可能性がありますので、善後策を講ずる責任の分担 をあらかじめ明確にしておくことが望ましい。医療機関にとって、ネットワーク上の事 故に関して、その原因を究明することは事実上不可能で、これはネットワーク事業者等 の情報処理関連事業者が行うしかないわけですが、それを行うことを明確にしておくこ とが望ましい。  提供元の医療機関等が、選任監督義務を果たしている。特に契約に明記されていない。 事故が情報処理関連事業者の過失によるものが明らかな場合は、情報処理関連事業者が すべての責任を負うのが原則である、ということをガイドラインで明記しています。  以上の責任分界点を明らかにしたという前提で、8.1.2章というのは、オンラインで 情報を外部保存を行う場合の受託先の選定基準についてのところです。その中で、1つ 目は、医療機関等が受託する場合です。2つ目は、公共機関が受託する場合です。3つ目 は、民間の事業者が受託する場合と、いままで第2版でなっていました。  民間の事業者が受託する場合は、前版では、医療機関等が持っている機器を外部に預 けることによって、機器自体は医療機関が管理しているということで、大災害等の危機 管理上の目的で外部保存を認めることになっていたのですが、4章で書いたような責任 分界点が明確にされた契約等を前提とすることによって、外形要因、つまりいままで個 人情報保護等の実績が十分にあって、なおかつ財務諸表等で経営が健全であるデータセ ンター等の事業者で、なおかつ慎重で十分な安全対策を講じている事業者であれば、医 療機関等が自ら危機を管理することに比べても、厳重に管理されることが多い。これは 一般的に言えると思います。これを利用することによって、セキュリティ対策の向上、 危機管理の推進、保存コストの削減等が期待できる。医療機関相互の情報連携や患者へ の適切な情報提供によって、より一層の地域医療連携の促進や患者の利便性向上も期待 できる。  とはいうものの、民間事業者は多くの医療従事者のように、法律で厳格な守秘義務が 課せられているわけではないことから、データセンター等の事業者の不適切な情報管理 による情報漏洩や不当な営利、利益を目的とした活用がなされることに対する、国民等 の危惧が存在することは事実であります。したがって、厳格な情報管理体制の確保や特 段の配慮をする必要があると考えます。  以上を踏まえて、(1)(2)に関しては、特に大きな変更はありませんが、(3)の「医療機関 等の委託を受けて情報を保管する民間等のデータセンター」の内容に関しては若干の変 更があります。(1)(2)(3)をそれぞれ、「1.保存場所に係る規定」、「2.情報の取扱い」、「3. 情報の提供について」ということで、考え方を整理しています。  最後が、情報保存機関にて情報管理体制確保のために備えるべき施設の外形要件、遵 守されるべき運用要件、これらを明確にしております。内容を具体的に資料2でご説明 します。  責任分界点については、12〜18頁に書いています。4.2章が総論で4.2.1で「責任分 界のあり方」ということで、4.2のAが「委託」、4.2のBが「第三者提供」、4.3は、で きるだけこの考え方をご理解いただくために、いくつかの例を示して考え方を整理して います。15頁をご覧ください。  4.3で、Aは「地域医療連携で患者情報を交換する場合」で、I、II、IIIと場合分けを しています。Bは「業務の必要に応じて医療機関等の施設外からの情報システムにアク セスする場合」です。これは自施設ではあるけれども、外部からアクセスをする場合で す。Cは「診療を目的とした第三者委託の場合」です。Dは「法令で定められている場合」 です。分けて考え方を示しています。以上が責任分界です。  内容は先ほど総括のところでお示ししたところです。それから、ガイドラインの改正 点で、いままで触れられていない部分も加えてご説明を申し上げますが、65頁をご覧く ださい。6.12章です。いままでは6.10章しかなかったのですが、6.9章で先ほどの情報 機器の持出しについての章が加えられましたので、1つずつずれて、「外部への情報交換」 が6.11章になっていますが、それにまた1つ加えて6.12章で、「法令で定められた記名・ 押印を電子署名で行うことについて」が入っています。これは、かつて7.4章にあった もので、電子保存をするに当たって、記名・押印が義務づけられているものに関して、 記載がされていたのですが、電子保存をするのではなくて、対外的に交付する書面であ っても、電子署名を行う必要のある書類があります。そういったものが、今後電子的に 扱われる可能性があることから、電子署名の部分を7.4章から6.12章、つまり情報シス テム全体にわたる章に変更しました。  67頁をご覧ください。以前、外部に情報を保存する場合も、真正性、見読性、保存性 という、7章の電子保存の要求事項を繰り返し説明していましたが、冗長であるという ことで、7章の「真正性の確保について」というところに、下から10行目ぐらいで、「一 方、ネットワークを通じて」から始まる1段落のように、真正性、84頁の7.2に見読性、 88頁の7.3に保存性。実際には89頁に該当カ所がありますが、こういった、電子保存 の真正性、見読性、保存性に関してのところに、内容は変わっていませんがネットワー クを通じて外部に保存する場合をそれぞれ追加をして7章に移しました。  したがって、8章は、外部に保存する場合に特段必要なことに絞っています。94頁は 何カ所か編集ミスが残っていますが、94頁の8.1.4「責任の明確化」に下線が引いてあ るところですが、これは「電子的な医療情報を扱う際の責任のあり方」という4章に集 約をしました。その次に「6.10」と書いていますが、章の番号が変わった訂正が不十分 で、6.11ですが、こちらに集約したと、8章で他の章に記載されている部分をポインタ ーにする形で移しています。  96頁は、8.1.2章で「外部保存を受託する機関の選定基準および情報の取り扱いに関 する基準」ということで、ここにはAの「制度上の要求事項」で、これは第2版と全く 同じ通知文が載せられています。96頁の下のほうの「さらには、蓄積された情報の保存 を受託する機関等もしくは従業者が、自らの営利や利益のために不当に利用することへ の国民等の危惧が存在する」。ただ、その一方で、金融情報、信用情報、通信情報は事実 として保存・管理を当該事業者以外の外部事業者に委託されており、合理的に運用され ている。金融・信用・通信にかかわる情報と医療にかかわる情報を一概に同様に扱うこ とはできないが、医療機関等の本来の責務は情報を活用し健康の維持・回復を図ること で、情報の管理はそのための責務にすぎない、ということで、一般に実績のあるデータ センター等の情報の保存、管理を受託する事業者は、慎重で安全な対策を講じており、 医療機関等が自ら管理することに比べても厳重に管理されていることが多い、という背 景理解で、医療機関が機器を保持するという条件を緩和しています。  99頁をご覧いただきたいのですが、「考え方」のところで、(3)「医療機関等の委託を 受けて情報を保管する民間等のデータセンターに保存する場合」です。これは本項で定 める外部保存受託事業者が医療機関等からの委託を受けて情報を保存する場合の情報閲 覧、分析等を目的として取り扱うことはあってはならず、許されない。事業者の自らの 判断での情報利用は一切禁止する。  それを具体的にやる方法としては、契約等があるわけですが、それ以外には、情報そ のものを暗号化して蓄えるとか、複数の事業者に分散保管することによって意味のある 情報として利用できないようにする、といった技術的対策も考えられるわけですが、そ の場合に注意しなければいけないのは、このような対策を取った場合に、暗号化をして 暗号鍵を医療機関だけが持っている場合に、仮に医療機関に火災が起こって鍵を焼失し た場合に、ここに蓄えられている患者の情報は二度と見ることができなくなる。これは 避けないといけないので、そのような対策を十分に取った上で、このような対策を取る べきだと書かれています。  具体的なガイドラインですが、102頁で、101頁にあるように最低限のガイドラインの 102頁の中段、(3)「医療機関等の委託を受けて情報を保管する民間等のデータセンター」 に外部保管する場合の最低限のガイドラインですが、(ア)から(ケ)まであります。「厳 重な契約を結ぶこと」とか、そういったことが書かれています。「保存を受託する事業者 の判断で情報を利用することは絶対にあってはならない」とか、(エ)に「管理する外部 保存受託事業者が外部保存に必要な技術及び運用管理能力を有することを、プライバシ ーマーク制度や過不足なく適用範囲を定めた適用宣言書に基づくISMS認定制度による 公正な第三者の認定を受けていること」。(キ)「いかなる形態であれ、外部保存受託事業 者が保存した情報を分析、解析等を実施してはならないこと。匿名化された情報であっ ても同様であること。これらの事項を契約に明記し、医療機関等において厳守させるこ と」。つまり、契約に明記するだけではなくて、それが守られていることを監督すること が、ガイドラインに書かれています。  103頁の(ケ)ですが、選任監督義務の選任のほうです。事業者を選ぶ条件として、 少なくとも4点については確認して事業者を選びなさいと。(a)で、基本方針や取扱規 程が、その事業者できちんと整備をされている。体制が十分に整っている。実績がある、 つまり一定期間、金融情報とか、そういったものの保存を運用していて、事故が起こっ ていないという社会的な信頼性があること。(d)は財務諸表等に基づく経営の健全性、 医療情報の場合は可用性が重要ですので、いきなり倒産するような事業者を選んではい けないことを確認することが条件になっています。  「推奨されるガイドライン」では、(ア)は医療機関の場合、(イ)と(ウ)は行政機 関等公的機関です。(エ)は民間事業です。必須ではありませんが推奨される方法として、 受託機関の管理者といえども、通常はアクセスできない制御機構を持つこと。これも暗 号化を行うとか、情報分散管理をするということを推奨されるガイドラインに含めてい ます。  これに伴って10章の運用管理規程の書き方、資料にはありませんが付録の運用管理規 程を作るための表も、一部変更されておりますが、基本的には、いまご説明申し上げた 内容に従って変更されています。以上です。 ○大山座長  ありがとうございました。ただいま、医療情報の取扱いと責任分界に関する作業班か らの報告の説明をいただきました。この医療情報の取扱いについては、稲垣委員、中川 委員、原委員から、私宛てに意見をいただいていますが、これは読み上げますか。 ○高崎補佐  代読させていただきます。「医療情報の取り扱いに関する事項」の検討に関する意見と いうことで、大山座長宛てに、稲垣委員、中川委員、原委員より、ご意見をいただいて いますので、読み上げます。  今般の医療情報ネットワーク基盤検討会においては、「医療情報の取り扱いに関する事 項」が検討されており、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に反映さ れていると考えられます。この検討事項の中には、診療録等を医療機関以外に保存する、 いわゆる「外部保存」の要件に関しての項目が含まれており、一定の条件緩和が提起さ れていると思われます。  本検討会が平成15年に開催され、この外部保存を取り扱った際には、医療情報を外部 に保存することによる医療機関等や患者、国民のメリット以上に、情報の漏えいや不適 切な情報の取り扱いに関する懸念が存在したため、一定の条件を付与したものと理解し ております。  一方、当時に比べ情報技術を使うことに対する環境の変化や情報技術の進歩により、 診療録等を外部に保存することは、医療機関等の利便性向上のみならず、情報技術を用 いた地域医療連携、患者への情報提供等に寄与する可能性が出てくるなど、より一層の 患者、国民視点の医療提供という意味から、一定の理解を示すこともできます。しかし、 残存する懸念もあることから、外部保存に関する要件について、以下の事項を意見とし て提出いたします。  それで下の「記」のところですが、1.今般の検討によって、外部保存について一定の 条件緩和が提起されていると想定します。しかし、それはあくまでも患者、国民視点の 医療提供という観点から行われるべきものであって、条件緩和されたとしても、医療情 報を保存する事業者等が不当な営利や利益のために医療情報を取り扱うことは認められ ません。したがって、検討会としてそのことを表明し、ガイドラインに反映できる事項 は明確に反映すべきと考えます。  2.医療情報の外部保存を事業者が行う場合、厚生労働省のガイドラインにおいても上 記1の事項が明記されれば一定の指針は存在することになりますが、より安心な環境を 構築するという観点から、事業者に対するルール作りも必要であり、厚生労働省から事 業者を所管する他の省庁にも働きかけをすべきと考えます。  3.本来的には、事業者が医療情報を保存する際のルールだけではなく、医療情報を取 り扱う者に対し、医師等国家資格保有者と同等の守秘義務や罰則も含めた特段の措置を 講ずべきと考えます。しかし、現状ではこのような観点を含む措置について検討するに 至っていないことから、少なくとも厚生労働省のガイドラインや上記2で示した事業者 に対するルールを関係者に広く周知させ、その遵守を働きかけるべきと考えます。以上 です。 ○大山座長  ありがとうございました。至極まともなご意見をいただいたと理解しますが、おっし ゃるとおりかと思います。このことについては、山本班長もかなりの面で案に反映され ているのではないかと思いますが、一方では2に関係する、厚生労働省から事業者を所 管する他の省庁ということもあり、経済産業省、総務省、内閣官房にもお出でいただい ているということではないかと、徹底するというのは当然のことだろうと思いますが、 そのようなことを踏まえた上で、ここで皆さん方からご意見、ご質問等をいただきたい と思います。いかがでしょうか。 ○山本委員  今回の第3版のガイドラインの改定では、民間事業者の扱う範囲が、ハウジングサー ビスから事業者による利用を許さないホスティングサービスにまで広がったということ では広がったと思うのですが、96頁の8.1.2の「制度上の要求事項」は、第2版と変わ っていないです。作業班としては、現状ではここの通知を直接緩和するには、少し時期 が早いのではないかというのが、稲垣委員、中川委員、原委員からいただいたご意見の 2番で、厚生労働省のガイドラインはあくまでも厚生労働省が管轄されている医療機関 ないしはそれに関連する機関に対しての指針になりまして、もちろん契約等で相手の事 業者に影響を与えることは可能なわけですが、それ以外に、例えば総務省、経済産業省 のほうで、直接事業者に対する明確な指針というものを作っていただく必要があるだろ うということと、もう1つは、総務省ではASP・SaaS事業者における情報セキュリティ に関するガイドラインが、我々がこの作業班で検討している最中にパブリックコメント にかかっておりまして、その中で健康情報を扱う場合、実質的にはASPサービスで外部 保存を行ってよいとは、この通知からは読めないわけですが、単にレセプトを作るだけ の外部保存を伴わない、ASPサービスは現実には存在するわけです。そういったものに 対して、健康情報を取り扱うためのセキュリティ指針がパブリックコメントに出されて いました。いまパブコメは終了しているのですが、まだ正式にリリースされていません。  経済産業省では、情報経済課で、一般事業者に対してこういった個人情報、特に機微 な個人情報を取り扱うためのガイドラインの検討を開始されているということで、我々 としては、その検討結果並びに結果として出てきたものの実施状況、周知状況を確認し た上で考えないといけないということで、現状はかなり慎重なガイドラインになってい ると思います。 ○稲垣委員  昨日は他の検討会で、レセプトの情報を保険者から、国がこれからいままでなかった ぐらいのデータを蓄積するというニュースもありますし、医療情報の外部保存も極めて 厳しい条件が付けられていますが、民間事業者がまたそれを保存する形で、いずれにし ても、この辺のことは国民に対してきちんと説明がないと不安を感ずるのだと思います。 そういう意味では、この辺の厳格なルールと、わかりやすい患者、国民への説明も必要 かと思います。 ○足立委員  このガイドライン案の18頁に、我々製薬企業としては気になる言葉が1つ入ってきた ので、意図を確認させていただきたいのと、できれば扱いを検討いただきたいものがあ ります。Cの1行目に「治験等」という言葉が入ってきたのです。いままでのガイドラ インには治験という言葉は入っていなかったように認識しているのですが、診療目的と した第三者委託の場合ということで、「治験等」という言葉が入っているのですが、特に 治験の場合は診療を目的とした第三者委託にはならないのではないか、逆に治験依頼者 から医療機関側に委託をしていることになるのと。  もう1つは、治験の場合はすべてが匿名化されていて、このガイドラインの趣旨は、 高度な個人に当たるからこのようなガイドラインを作りましょうとなっているのではな いかと考えていて、治験がここでいう趣旨に当てはまるのかどうかは、私としては腑に 落ちていないのが現状です。  なぜかと言いますと、いま政府の方針もあって、治験の活性化というところで、1つ の起爆剤とならないのかということで、同じ研究開発振興課で考えられていますが、治 験のIT化というところがあって、これが相反するようなところで受け取られかねないと いう懸念があります。片や治験でのIT化を推進しようというところで、片や公益性があ るということで、相反する動きにならないか。  というのは、いままでもそうなのですが、こういうガイドラインが出ると、拡大解釈 される方がどうしても出てきて、「こういうことがあるからうちは出せないのです」とい う動きになると、せっかく気運が高まっているところが削がれるのかなというのがあり ます。治験も一部かかわるであろうということは認識できるわけですが、その辺りで記 載として配慮をいただけないかと思う次第です。 ○山本委員  治験は、確かに治験を行う事業者が医療機関に委託する行為ですが、それはこの行為 の委託を言っているのではなくて情報の扱いですので、医療機関で患者から得る以上は、 医療機関が主体的に取得した情報ですので、これを外部に出す場合は、委託ないしは第 三者提供のどちらかに分類されます。  読んでいただければわかるのですが、やってはいけないとか、そういうことを書いて いるわけではなくて、責任分界がこういったところにあるということを記載しているだ けで、むしろこういったことを明確にしないで、多くの機関が参加する治験等が行われ ることのほうが、それを推進することを阻害する可能性はあるのではないかと思います。 逆に言うと、治験だけの別のガイドラインを医療機関で作れば、医療機関はまたそれを 読まなければいけなくなるということで、少なくとも診療情報の取扱いに関しては統一 であるべきではないかと考えます。ここは特に制限をするということで書いているわけ ではなくて、普通の診療情報と同じような扱いをするだけの話です。  匿名化の問題は非常に複雑で、治験情報の完全な匿名化ということは、そうは言えな いと思います。診療情報の場合も、患者氏名、住所、生年月日を消せば匿名化かという と、多くの場合は匿名化ですが、そうではない場合もあります。したがって、匿名化で あるかないかというのは、その情報を見て実効性を求めることが、この親のガイドライ ンである「医療・介護事業者における個人情報保護の適切な取扱いのためのガイドライ ン」に書かれていますし、このガイドラインでもスタンスとしてはそうであって、匿名 化、いわゆる一定の手法による匿名化が完全な匿名化とは常に限らないということで、 慎重な扱いを求めるという意味では確かにそうです。  いずれにしても、治験のことが書かれているからといって、他のことは一般の診療に かかわることで、治験が一般の診療より特に難しくなるような書き方はしていない。も しもこのガイドラインによって、一般の診療に差し支えるほうが、よほど問題だと思い ますので、それ以上のものではないことをご理解いただければと思います。いかがでし ょうか。 ○足立委員  私の懸念は、山本委員がおっしゃることは重々承知の上の発言で、時として拡大解釈 をされてしまうということで、このようなガイドラインがあるから治験情報は電子的に は出せない、という判断が行われるのがいちばん懸念されているところです。そこら辺 の配慮をいただければということですが、いまの山本委員のご説明が後々我々も使える のかなとは思っているところですが、一部配慮いただければということです。 ○大山座長  いまの話は正式な回答と位置づけられるのかわからないところはありますが、少なく とも考え方の整理を山本委員にしていただき、これは完全に議事録として残るので、そ の意味では、考え方としてはしっかりできているのではないでしょうか。書き振りにつ いては、いろいろな工夫をすることがよいのはわかるのですが、別の取り方をする人も いるので、書けば書くほど何を言っているかわからなくなってしまうこともあるのでは ないかと危惧します。  私も山本委員のお話のとおり、ガイドラインの性格、それから前のほうから見ていた だく限りにおいては、扱いは同じではないかと思いますが、これはあくまでも私見です。 皆様方、いかがでしょうか。あるいは、足立委員が残すということでご了解いただけれ ば、すごくありがたいところですが、皆様方いかがでしょうか。 ○足立委員  私のほうでももう一度持ち帰って、次回までに整理させていただいて、もしこのよう な記載ができないかという案を提示させていただけるのであれば、させていただければ と思います。それが私のほうでまとまらないようであれば、いま山本委員からご説明さ れたのが議事録として残ると思いますので、それを用いて、何かトラブルがあった場合 に対応させていただくことにさせていただければと思います。 ○大山座長  いまここで打ち切るつもりはないのですが、いまのお話があるとすると、次回の予定 を先に説明いただいた上で、それでよろしいかということをさせていただきたいと思い ます。 ○高崎補佐  事務局より今後の日程について説明いたします。今回17回に出た意見を、2月7日に 予定している第18回検討会にて、今日出たご意見を考慮した変更点をご提示させていた だいて、ご了解をいただけるようでしたら、年度内に本ガイドラインは発出したいと予 定していますので、逆算しますと、2月中頃にパブリックコメントにかける必要があり ますので、次回までにこのガイドラインの案を固めたいと思っていますので、タイトな スケジュールで恐縮なのですが、そのように事務局として準備しているところを斟酌い ただきまして、ご議論いただければと思います。 ○大山座長  ということですので、事務局と打合せはしていませんが、通常の会議の進め方から見 ると、遅くとも次回の会議までにはお出しいただき、できればその前に皆さんに配付し たいと思います。難しければ次回までに出していただき、提案をいただく場合にはこの 場で皆さん方に説明をしていただいた上で、そこで議論が起きるようでしたら、改めて メールによる再審議という形を取るのではないでしょうか。  7日だから14日で、もう1週間ぐらいは後ろへいっても何とかなりますよね。ぎりぎ りですが、総意をもって出さなければいけませんから、そこはどうですか。 ○高崎補佐  座長のおっしゃっるように、ぎりぎりまで何とかまとめていただければと思います。 ○大山座長  というのが私からの案ですが、いかがでしょうか。皆さん方も、まだご意見等がおあ りと思いますが、それについても同じようにメール等でお出しいただき、次回たくさん 出てきて、さあどうしようとなると収拾がつかなくなる可能性もありますので、早めに お出しいただければと思います。時間の余裕があれば、私から事務局あるいは班長との 間で相談させていただいて、準備を整える形を取れるのではないかと思います。 ○高崎補佐  大変ご多忙の委員の方々であられると存じ上げていますので、18回以降に会議体を開 くことが現実的に困難であると思いますので、恐縮なのですが、メール等何らかの方法 でご意見をいただければ、18回までに集斂したものをお出ししたいと思っていますので、 メール等によりまして情報をいただければ対応させていただきたいと思いますので、よ ろしくお願いいたします。 ○大山座長  他に何かありますか。今後の進め方等も含めてご説明させていただきましたが、よろ しいでしょうか。事務局からは追加はございますか。 ○高崎補佐  ピンクのファイルがお手元にあろうかと思いますが、こちらはお荷物にもなりましょ うから、席上にお残しいただいて結構でございますので、よろしくお願いいたします。 また、本日の資料につきまして電子媒体でご希望の方は、事務局に申し付けいただけれ ば、お配りいたしますのでよろしくお願いいたします。 ○大山座長  最後にもう一度お聞きしますが、何かご発言はございますか。ありがとうございまし た。本日は熱心なご議論をいただきまして感謝申し上げます。これで第17回医療情報ネ ットワーク基盤検討会を終了いたします。 (了) 照会先 医政局 研究開発振興課 医療機器・情報室 企画開発係 山瀬 TEL 03-5253-1111(内 2588) FAX 03-3503-0595