第1回 医薬品の販売等に係る
体制及び環境整備に関する検討会
参 考
資 料
平成20年2月8日

厚生科学審議会医薬品販売制度改正検討部会報告書(抜粋)

1.一般用医薬品をめぐる現状と課題

(4)医薬品販売制度の課題

(薬剤師等の常時配置)

現行制度においては、薬剤師等による店舗の実地管理、常時配置が求められているというのが従来からの行政の考え方であるが、必ずしも実態はそうでない場合もある。

(一律に情報提供を求めることの問題点)

専門家は、薬事法上、医薬品に関し、そのリスクの程度に関係なく一律に購入者に対して情報提供に努めることとされているが、現状を見ると、十分にこれが行われているとは言いがたい面がある。全ての医薬品について常に同じレベルの情報提供を行うことは、現代社会においては実効性があるとは必ずしも言えない。抽象的な一律の仕組みになっていることにより、かえって本当に情報提供が必要な、よりリスクが高い医薬品についての情報提供がおろそかになっているのではないかとの意見もある。

(購入者の誤解や認識不足)

専門家による適切な情報提供がなされていないために、購入者側において、リスクについて誤解したり、認識が不十分であったりすることもあると考えられる。身近な例で言えば、かぜ薬の代表的な成分であるアスピリンについては、小児の服用を避けるべきものであるが、「子供だから大人用のものを半分にして飲ませればいい」という誤った認識に基づき、子供に安易に飲ませてしまうようなケースなどが考えられる。

医療用医薬品との比較で言えば、一般用医薬品のリスクが概ね低いということは言えるが、副作用による健康被害が起こっていることも事実であり、そのことが広く購入者に認識され、服用前に添付文書を必ず読む等の適切な行動がとられるよう促していくことも必要であると考えられる。

店舗においては、購入者への啓発を行うとともに、購入者の視点に立って、医薬品の販売方法について理解を促すような環境を整備することも必要である。

2.改正の理念と基本的方向性

(2)改正の基本的方向

○ 医薬品の販売に際しては、リスクの程度に応じた情報提供及び相談応需(相談があった場合の情報提供)が必要であり、対応としては以下のようにすべきものと考えられる。

・  特にリスクの高い医薬品については、薬剤師による文書を用いた積極的な情報提供及び相談応需を義務付け、安全性を確保する。

・  リスクが比較的高い医薬品については、専門家による積極的な情報提供(努力義務)及び相談応需(義務)を求める。

・  リスクが比較的低い医薬品については、専門家による相談応需(義務)を中心とした体制を整備する。

○ 適切な情報提供及び相談応需のため、医薬品のリスクの程度に応じたラベル表示、陳列方法のルール作り、店舗での掲示など、購入者の視点に立って、医薬品販売に関わる環境を整備すべきである。

3.改正の具体的内容

(2)一般用医薬品のリスクの程度に応じた情報提供と適切な相談応需

[1] 対面販売の原則

○ 医薬品の販売時においては、販売者側からその医薬品に関する「適切な情報提供」が行われ、購入者に十分に理解してもらうことが重要である。また同時に、購入者の疑問や要望を受けた場合に「適切な相談応需」が行われることが必要である。

○ こうした「適切な情報提供」及び「適切な相談応需」が行われるためには、薬剤師等の専門家の関与を前提として、

・ 専門家において購入者側の状態を的確に把握できること、及び

・ 購入者と専門家の間で円滑な意思疎通が行われること

が必要である。

○ これらが確実に行われることを担保するには、購入者と専門家がその場で直接やりとりを行うことができる「対面販売」が必要であり、これを医薬品販売に当たっての原則とすべきである。

[2] リスクの程度に応じた積極的な情報提供

○ Aグループ医薬品は、一般用医薬品としての市販経験が少なく、一般用医薬品としての安全性評価が確立していない、又は、一般用医薬品としてリスクが特に高いと考えられる成分を含むものであり、

・ 販売時に購入者から特段質問がない場合であっても、販売者側から購入者に対し、「積極的な情報提供」を必ず行うよう義務付けるべきである。ただし、購入者が明確に説明を不要とした場合には、義務を免れるとすることもやむを得ないと考えられる。

・ 「積極的な情報提供」の実施に際しては、必ず文書を用いるよう義務付けることが適当である。

・ 情報提供を行うに当たっては、Aグループ医薬品が一般用医薬品としての安全性評価が確立していない等の性質を持つものであることも踏まえ、薬剤師が直接対応するべきである。

※ 販売時において購入者へ提供されるべき情報については、例えば、

・ 起こり得る重篤な副作用やその発生を避けるため留意すべき事項(服用してはいけない人、併用してはいけない薬剤等)

・ 一定期間服用しても病状が改善しない又は悪化した際には医療機関での診察を受けること(受診勧奨)

等を中心とすることが考えられる。

※「積極的な情報提供」に際して用いる文書としては、当該医薬品の添付文書を基本とすることが考えられる。

○ Bグループ医薬品は、まれにではあっても、日常生活に支障を来すおそれがある成分を含むものであり、

・ 販売時に販売者側から購入者に対し、当該医薬品に関する「積極的な情報提供」に努めるよう義務付けるべきである。

・ 「積極的な情報提供」の実施に際しては、文書を用いることに努めるよう義務付けるべきである。

・ 「積極的な情報提供」に関与する専門家としては、薬剤師以外に(3)で述べる資質の確認を受けた者も認めることが適当である。

○ Cグループ医薬品は、日常生活に支障を来すほどではないが、副作用等により身体の変調・不調を生じるおそれがある成分を含むものであり、

・ 販売時に販売者側から購入者に対し、当該医薬品に関する「積極的な情報提供」を行うことは望ましいものの、努力義務として法令上規定するほどではないと考えられる。

・ 「積極的な情報提供」に関与する専門家としては、薬剤師以外に(3)で述べる資質の確認を受けた者も認めることが適当である。

[3] 相談応需

○ 購入者から販売者へ質問、相談等がなされた場合には、購入者は、専門的知識に基づく回答や助言を求めており、販売する医薬品のリスクの程度に関係なく、専門家による相談応需を義務付けるべきである。

※ ここでいう「相談応需」には、病状が改善しない等の場合に医療機関での受診を勧めることも含まれる。

○ 相談応需については、販売時のみならず、販売後にも適切な対応が求められる。このため、購入者に店舗等の連絡先を伝えることも重要である。

(3)資質の確保

[4] 管理者の設置

○ 現在、薬種商販売業や配置販売業においては、薬局や一般販売業と異なり、管理者についての規定は存在しないが、今後、業態にかかわらず、販売に関する必要な資質を持った者を置かなければならないという仕組みに改めた場合、同様に管理者を置くことが適当と考えられる。

○ この管理者が行うべき業務としては、従事者の監督、物品管理に関すること等が考えられる。このような業務を行うためには、管理者は薬剤師又は資質の確認を受けた専門家であることが必要であると考えられる。

(4)適切な情報提供及び相談対応のための環境整備

[1] リスクの程度に応じた表示

○ 一般用医薬品について、そのリスクの程度について、購入者が判別しやすいよう、外箱に何らかの表示を行うべきである。ただし、その場合の具体的な方法・内容については更に検討が必要であると考えられる。

[2] 陳列

○ 医薬品については、リスク分類ごとに分けて陳列すべきである。特に、Aグループ医薬品については、いわゆる「オーバー・ザ・カウンター」(注3)を義務付けるべきである。

(注3)専門家が関与した上で医薬品の選択・購入がなされるよう、販売側のみが医薬品を手にとるような方法で陳列を行うことをいう。

○ Bグループ医薬品については、オーバー・ザ・カウンターとするよう努めるべき(努力義務)である。ただし、Bグループ医薬品のうち、別紙2の中で*の付された成分(「相互作用」又は「患者背景」において特に注意すべき「禁忌」があり、その要件に該当する者が服用した場合に健康被害に至るリスクが高まるものや依存性・習慣性がある成分等)を含む医薬品については、オーバー・ザ・カウンター又は積極的な情報提供を行う機会をより確保することが可能となるような陳列・販売方法とすべきである。

[3] 購入前の添付文書閲覧

○ 医薬品の添付文書の内容に関しては、できる限り、購入者が購入前に閲覧できるように環境を整備することが望ましいと考えられる。

[4] 着衣・名札

○ 着衣の有無や色、名札等により、専門家と非専門家、専門家の中での資質の違い(薬剤師とそれ以外の者の区別)を購入者が容易に認識できるように工夫することも重要である。

[5] 掲示

○ 購入者への啓発を行うとともに、制度(情報提供・相談対応)の実効性を高める観点から、店舗に必要な掲示をさせるべきである。また、掲示は、店の外からも見えるようにすることが適当である。

○ 掲示すべき内容としては、リスクの程度によって販売方法が異なることや扱っている医薬品の種類、相談対応可能な時間帯等が考えられる。

[6] 苦情処理窓口の設置

○ 制度の実効性を高める観点や薬事監視の限界を考えると、販売方法等(例えば、Aグループ医薬品を販売する際に説明を行わないなど)について、購入者からの苦情を処理する窓口を設けることも重要である。

苦情処理窓口を設ける機関としては、業界団体や、医薬品販売業の許認可権限を有している都道府県等が考えられる。

(5)販売形態について

[2] 情報通信技術の活用

○ 情報通信技術の活用については、行政、製造業者等による啓発や情報提供については積極的に進めるべきである一方、医薬品の販売については、対面販売が原則であることから情報通信技術を活用することについては慎重に検討すべきである。

○ Aグループ医薬品については、対面販売とすべきであり、情報通信技術を活用した販売は認めることは適当でないと考えられる。

○ Bグループ医薬品及びCグループ医薬品については、対面販売を原則とすべきであるが、購入者の利便性に配慮すると、深夜早朝に限り、一定の条件の下で、テレビ電話を活用して販売することについては、引き続き認めることも検討する余地はあると考えられる。

○ Cグループ医薬品については、リスクの程度や購入者の利便性、現状ある程度認めてきた経緯に鑑みると、薬局、店舗販売業の許可を得ている者が、電話での相談窓口を設置する等の一定の要件の下で通信販売を行うことについても認めざるを得ないと考えられる。


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