障害者に対する就労支援の推進〜平成20年度 障害者雇用施策関係予算案のポイント〜

平成19年12月厚生労働省職業安定局 障害者雇用対策課 職業能力開発局 能力開発課

施策の概要

障害者雇用に関する状況をみると、平成18年度におけるハローワークの新規求職申込件数や就職件数が過去最高となるなど、障害者の「働きたい」という意欲がこれまでにない高まりをみせている。また、障害者自立支援法の下、障害者がその能力や適性に応じて自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう支援が行われるとともに、特別支援教育により、障害のある生徒等の自立や社会参加に向けた主体的な取組への支援も行われているところであり、福祉、教育の分野におけるこうした動向を踏まえ、障害者の希望や能力に応じて雇用に結び付けていく必要性が高まっている。こうした中、政府全体としても、障害者雇用に係る取組の充実が図られているところであり、最近の各種の施策の取りまとめにおいても、障害者雇用に係る取組が重要な位置付けとして盛り込まれているところである。このため、平成20年度においては、上記の状況を踏まえつつ、[1]雇用、福祉、教育等の連携による地域の就労支援力の強化、[2]障害者雇用促進法制の整備、[3]障害者雇用の底上げのための関係者の意識改革、[4]障害の特性に応じた支援策の充実・強化、[5]障害者に対する職業能力開発の推進により、障害者の雇用促進を図ることとする。

平成20年度予定額 16,780(13,882)百万円

1.雇用、福祉、教育等の連携による地域の就労支援力の強化

[1]ハローワークを中心とした、地域の関係機関との連携による「チーム支援」(「地域障害者就労支援事業」)の強化等[予定額 638( 129)百万円]

ハローワークが中心となって、地域の福祉施設、特別支援学校等の関係機関と連携して、「障害者就労支援チーム」を編成し、就職から職場定着まで一貫した支援を行う取組(チーム支援)について、関係機関との連絡調整等を担う「就労支援コーディネーター(仮称)」を配置する等、体制・機能の強化を図る。また、「就職ガイダンス」等の実施により、ハローワークのマッチング機能の充実・強化を図る。

[2]障害者就業・生活支援センター事業の拡充[予定額 2,509(1,242)百万円]

障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な相談・支援を行う「障害者就業・生活支援センター」について、「成長力底上げ戦略」において、全障害保健福祉圏域に設置することとされたこと等を踏まえ、設置か所数を大幅に拡充する。また、センターの支援対象者の増加を踏まえ、実施体制を充実するとともに、職場定着機能を強化する。     (設置か所数 135センター → 205センター)

[3]障害者の就労支援を担う人材の育成・確保のあり方に関する調査研究(新規)[予定額 11( 0)百万円]

障害者の就労支援を担う人材の育成・専門性の向上を図るため、雇用、福祉、教育等の各分野で就労支援を担う人材について、分野横断的な育成・確保のあり方について、幅広い見地から検討を行う。

[4]障害求職者と企業とのマッチング支援ツールの整備(新規)[障害者雇用納付金事業]

障害者と企業とのミスマッチを解消するため、障害者の適性・能力や適切な支援方法、アピールポイント等を記述できる「障害者マッチングシート(仮称)」を開発するとともに、特に中小企業において、障害者の雇用の体制・条件整備を促進するための「障害者雇用自己診断チェックシート(仮称)」を開発することとする。

[5]障害者トライアル雇用事業の拡充[予定額 1,072( 902)百万円]

事業主に障害者雇用のきっかけを提供するとともに、障害者に実践的な能力を取得させて常用雇用へ移行するため、短期間の試行雇用(トライアル雇用)を実施する。(対象者数 8,000人 → 9,500人)

2.障害者雇用促進法制の整備

[1]障害者雇用促進法制の整備(新規)[予定額 18( 0)百万円]

障害者雇用対策の充実強化に向け、短時間労働に対応した障害者雇用率制度の見直し、中小企業における障害者の雇用促進、福祉、教育等との連携による障害者の就労支援の強化等について、関係審議会の検討結果を踏まえ、障害者雇用促進法制について所要の整備を行う。

3.障害者雇用の底上げのための関係者の意識改革

[1]障害者雇用の底上げのための意識改革・支援ネットワーク形成推進事業(新規)[予定額 234( 0)百万円]

障害者の一般雇用への移行を促進するため、関係者から国民一般に至るまで幅広い層の意識改革を図るため、インターネットを通じた情報の共有・流通、障害者雇用支援優良企業による積極的な働きかけや働く障害者からのメッセージの発信他地域の事業主集団による意識改革セミナーの開催等により、働く障害者を支援するネットワークを構築・強化し、障害者雇用の取組の推進を図る。

[2]地域の事業主団体を活用した「障害者雇用に関する意識改革促進事業」の推進(新規)[予定額 72( 0)百万円]

地域の事業主団体を活用して、「意識改革セミナー」を開催し、企業における具体的な障害者雇用の取組を促進するとともに、地域の福祉施設・特別支援学校等関係者との交流等を通じた意識改革を図り、地域の関係者が一体となった障害者雇用の取組の推進を図る。

4.障害の特性に応じた支援策の充実・強化

[1]精神障害者の特性に応じた支援策の充実・強化(「精神障害者ステップアップ雇用奨励金(仮称)」の創設等)(新規)[予定額 290( 0)百万円]

精神障害者の障害特性を踏まえ、一定程度の期間をかけて段階的に就業時間を延長しながら常用雇用を目指すことができる制度(「精神障害者ステップアップ雇用奨励金(仮称)」)を創設するとともに、「精神障害者就職サポーター(仮称)」を配置し、ハローワークにおける精神障害者のカウンセリング機能を強化することにより、精神障害者の雇用促進のための包括的な支援を実施する。

[2]医療機関等との連携による精神障害者の就労支援の推進[予定額 45( 47)百万円]

医療機関等を利用している精神障害者を対象に、就職活動のノウハウ等を付与するジョブガイダンスを、ハローワークが実施するとともに、医療から雇用への移行を促す就労支援モデルを構築する。

[3]若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラムの推進[予定額 85( 89)百万円]

ハローワークにおいて、発達障害等の要因によりコミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、その希望や特性に応じた専門支援機関に誘導するとともに、障害者向け専門支援を希望しない者については、きめ細かな就職支援を実施する。また、専門支援機関である地域障害者職業センター及び発達障害者支援センターにおいて、発達障害者に対する専門的な就労支援を効果的に実施する。

[4]発達障害者の就労支援者育成事業の推進[予定額 12( 13)百万円]

発達障害者支援センターにおいて、医療、保健、福祉、教育等関係機関の発達障害者支援関係者に対する就労支援ノウハウの付与のための講習等を実施するとともに、発達障害者と支援者による体験交流会を開催する。

5.障害者に対する職業能力開発の推進

[1]民間を活用した機動的かつ実践的な職業訓練の推進[予定額 1,800(1,487)百万円]

障害者の態様に応じた多様な委託訓練の拡充により職業訓練機会の充実を図るとともに、特別支援学校と連携したより早い段階からの職業能力開発を行い、一般就労に向けた切れ目のない支援を実施する。(対象者数 6,600人 → 8,150人)

[2]政令指定都市における職業能力開発推進基盤の強化[予定額 217( 55)百万円]

教育、福祉の実施主体である政令指定都市において、特別支援学校の生徒及び就労移行支援事業利用者等の態様やニーズを踏まえた職業訓練をより一層推進する第2期障害者職業能力開発プロモート事業を実施する。(実施箇所数 6か所 → 17か所)

[3]一般校を含めた公共職業能力開発施設における障害者職業訓練の推進[予定額 4,023(4,287)百万円]

障害者職業能力開発校において、職業訓練上特別な支援を要する障害者に重点を置いた支援を実施するとともに、一般の職業能力開発校において知的障害者等を対象とした訓練コースの設置を促進し、身近な地域での職業訓練機会を拡充する。

[4]発達障害者に対する職業訓練の推進[予定額 106( 53)百万円]

一般の職業能力開発校における発達障害者対象の職業訓練コースを拡充するとともに、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の運営する障害者職業能力開発校において、発達障害者の職業訓練を本格実施する。(実施箇所数 3か所 → 8か所)


トップへ