08/01/31 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 平成20年1月31日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成20年1月31日(木)  14:00〜 厚生労働省専用第18〜20会議室 2.出席委員(14名)五十音順    新 井 洋 由、 飯 沼 雅 朗、◎池 田 康 夫、 庵 原 俊 昭、    岡   慎 一、 守 殿 貞 夫、 竹 内 正 弘、 田 村 友 秀、  土 屋 文 人、○堀 内 龍 也、 前 崎 繁 文、 三 瀬 勝 利、     溝 口 昌 子、 山 口 一 成   (注)◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(2名)   上 原 至 雅、 早 川 堯 夫、     3.行政機関出席者    黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、 中 垣 俊 郎(審査管理課長)、 豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、 村 上 貴 久(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、 丸 山   浩(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター次長)  森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻前ではございますが、先生方がすべておそろいでございますので、 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開催させていただきます。御多用中にもかかわら ず御参集いただきまして誠にありがとうございます。当部会委員16名のうち14名の委員 に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。 本日は岡委員、早川委員から御欠席という御連絡をいただいております。部会長の池田先 生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○池田部会長 先生方、お忙しいところ、どうもありがとうございます。それでは、本日 の審議に入りたいと思います。まず、事務局から配付資料の確認と資料作成、利益相反に 関する申出状況について報告をお願いします。 ○事務局 資料の確認をいたします。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿 を配付しております。議事次第に記載されております資料1〜9をあらかじめお送りさせ ていただいているところでございます。このほか、資料1-2といたしまして、本日の議題 1の追加資料、具体的には、諮問書の中に誤記がありまして、そのための差し替え、資料 10といたしまして、「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」を配付しておりま す。  平成13年1月23日の薬事分科会申合せ及び昨年4月23日の薬事分科会申合せに基づ く、資料作成、利益相反等に関する申出については次のとおりです。議題1「OPC67683」 に関しましては、退室委員はなし、議決には参加しない委員は池田委員、竹内委員、堀内 委員。議題2「多発性骨髄腫:Lenalidomide」につきましては、退室委員、議決には参加 しない委員ともにいらっしゃいません。議題3「骨髄異形成症候群:Lenalidomide」につ きましても、退室委員、議決には参加しない委員ともにいらっしゃいません。議題4「生 物学的製剤基準の一部改正」につきましては、報告事項議題1のヘブスブリンに関する件 ですが、退室委員、議決には参加しない委員ともにいらっしゃいません。  したがって、議題1につきましては、薬事分科会規程第5条第1項において、部会長及 びその職務を代理する者のないときは、当該部会員のうちから選任された者が、仮に議長 として会議を開くことができるとされておりますので、御選任をお願いしたいと思いま す。 ○池田部会長 議題1ですが、どなたか自薦あるいは他薦はございますか。事務局は何か 考えがございますか。 ○事務局 事務局といたしましては溝口委員にお願いしてはどうかと思いますが、いかが でしょうか。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。特に御異存はございませんか。ありがとうございま す。溝口委員、大変恐縮ですが、議題1の議事進行をお願いしたいと思います。ほかにも 事務局から何かございますか。 ○事務局 本日の審議事項議題4「生物学的製剤基準の一部改正」については、報告事項 議題1「ヘブスブリン-IH」に関連するものでありますので、議題4の審議と併せて御 報告させていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 本日は、お手元の議事次第にありますように審議事項が4議題、報告事項 が5議題となっております。それでは、早速、議題1から入りたいと思いますので、先ほ ど先生方に御承認いただきましたが、溝口委員に議題1の審議の進行をお願いしたいと思 います。溝口委員、こちらで代わっていただけますか。 ○溝口委員 それでは、議題1に入ります。事務局から概要の御説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは、OPC67683を希少疾病用医薬品として指定することの可否に関し まして、資料1に基づいて御説明いたします。資料1の一番上にあります「事前評価報告 書」のタグをお開きください。こちらに医薬品医療機器総合機構における事前評価報告書 を取りまとめております。こちらに基づきまして、対象患者数、医療上の必要性、開発の 可能性の三点について御説明申し上げます。品目の名称はOPC67683、予定される効能 ・効果は肺結核症、申請者名は大塚製薬株式会社です。  報告書の2ページの1.ですが、まず、対象患者数です。結核予防会が集計しました2005 年の統計データによりますと、2005年の結核の登録総数は68,508人であります。そのう ち、本剤の適応対象となります治療を必要とする活動性肺結核症の患者数は19,269人で ありまして、活動性肺外結核を含む活動性全結核を投与対象としても、対象患者数は 23,969人ということで、希少疾病用医薬品の指定要件である5万人以下を満たすものと 判断しております。  次に、医療上の必要性についてですが、今日の結核の化学療法は、初期2か月間はリフ ァンピシン、イソニアジド、ストレプトマイシン又はエタンブトール、及びピラジナミド の4剤併用とし、その後リファンピシンとイソニアジド及びエタンブトールなどの2ない し3剤併用を4か月間、合計6か月間による治療が標準的治療とされております。しかし ながら、6か月間という長い治療期間が必要でありまして、この治療期間の長さが服薬の アドヒアランスに悪影響を与え、不完全な服薬が薬剤耐性の進展につながることもあると 考えられております。また、近年、抗結核薬であるイソニアジド及びリファンピシンの両 剤に耐性のある多剤耐性結核症の増加も問題となっている状況であります。そのような背 景から、総治療期間の短縮、多剤耐性結核症に対するより高い有効性、投与方法等の改良 によるアドヒアランス向上等を可能にする新しい化学療法剤の開発が望まれているとこ ろです。  本剤につきましては、非臨床試験により既存の抗結核薬と比べより強い抗結核作用を有 し、既存の抗結核薬との交叉耐性のない新規の化学構造式と作用機序を有することが明ら かになっていることから、本薬により治療成績の向上や治療期間を短縮する可能性が期待 できます。以上のことから、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。  三つ目に、開発の可能性ですが、これまで海外において肺結核症患者を対象にした第II 相試験が実施されており、本薬投与後において菌量の減少が認められていること、また、 今後、日本と海外数か国共同で多剤耐性肺結核症患者を対象とする第II相試験及び第III相 試験を実施する予定となっておりまして、本剤の開発の可能性はあるものと考えておりま す。  以上、対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の三点を考えますと、本剤について は希少疾病用医薬品としての要件を満たすと判断しているところでございます。御審議の ほど、よろしくお願い申し上げます。 ○溝口委員 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見を頂戴したいと 思いますが、いかがでしょうか。 ○前崎委員 報告書の中にありますように、多剤耐性結核菌に有効だというのはよく分か るのですが、実際には結核の治療をやりますと多剤耐性結核菌はセカンドラインになって しまいます。このような有効な薬剤を多剤耐性結核菌以外の治療に使うということになり ますと、これに対する耐性の問題というものが出てきます。これが耐性になりますと本当 の治療薬がなくなるということになりますので、当面は多剤耐性、例えばリファンピシン 耐性の肺結核に対してこの薬剤を使うということはいかがなものなのでしょうか。 ○溝口委員 事務局からお願いします。 ○機構 ただ今、前崎先生から御指摘いただきました点は大変ごもっともな点かと思いま す。現在得られているデータはごく限られておりますが、in vitroの、試験管内のデー タでは、耐性は比較的獲得しにくいとはされているものの、臨床的に広く使った場合には どうなるかということは注意して見ていかなければならないと思っています。今御指摘い ただいた点も重々踏まえまして、今後の開発に際して治験相談等でアドバイスをしていき たいと思います。 ○前崎委員 もう一点よろしいでしょうか。結核の実際の治療期間というのは、排菌の塗 抹陰性か、あるいは培養陰性を確認して退院させるというのが一般的です。この報告書の 中で、菌量が2週間で非常に下がるというのは分かるのですが、実際にそれが例えば排菌 あるいは塗抹、培養の期間を短くするという報告はあるのでしょうか。そうしないと、そ の時点で確認しないと入院期間が短くなるというところにはなかなか結び付かないと思 うのですが、いかがなものでしょうか。 ○機構 現在のところ、今御指摘いただきました点について得られているデータは海外の 第II相試験のデータだけでありまして、それも菌数が減少したということになっているだ けです。排菌しなくなったとか、そういうデータではない状況です。しかしながら、減少 のカーブを見ていると、既存薬よりも早く排菌しなくなる可能性も示唆されるようになっ ておりますので、実際に排菌されなくなるまでの時間が短くなるものかどうかは今後の臨 床試験で確認させるようにしていきたいと思います。 ○溝口委員 ほかに御意見はありますか。 ○庵原委員 作用機序が明らかに異なるという文面があるのですが、この説明の中に作用 機序をうかがわすような説明がなかったと思うのです。もう一つは、構造も明らかに異な るという文面があるのですが、構造式も書かれていませんでしたので、一体どういう系統 のものでどういう点が作用機序であるかという、そこをお示しいただければと思います。 ○三瀬委員 私が持っている本では、大塚製薬が開発中なのはニトロイミダゾール誘導体 と書いてあります。それ以上の知見はありませんが、学会等でも発表されているようです。 日本臨床の新感染症学という本にもそのように書かれておりますので、それほど秘密では ないという感じはするのですが。 ○機構 ありがとうございます。構造といたしましては、名称のところにもありますとお り、今、三瀬先生から御指摘もいただきましたとおり、イミダゾール骨格を持った化合物 になります。 ○溝口委員 よろしいでしょうか。もし何でしたら、もう少し調べて。 ○庵原委員 作用機序がここには何も書いていないのですが。 ○機構 作用機序につきましても、確認して御返答申し上げたいと思います。 ○溝口委員 それでは、作用機序と化学構造についてもう少し詳しく調べて御返答をする ということでよろしいでしょうか。 ○堀内部会長代理 予定される適応症は肺結核症と、肺に限定されておりますが、対象患 者数のところにありますように、活動性の肺以外の結核症が4,700人あるわけです。これ は結核症全体を適応症とはしないのでしょうか。治験相談ではどのようになっているか教 えていただけますか。実際上、適応症が肺結核症となっていると、それ以外に使うと査定 されることが起こり得るので、かなり大事なところなのですが、いかがでしょうか。 ○機構 堀内先生から御指摘いただいた点は、私どもも、腎結核とか、数は少ないものの、 ほかの結核にも開発する必要性がないかということについて企業の方に話をしておりま す。しかしながら、現在グローバルに開発をしているということで、今の状況としては肺 結核ということで考えているということです。治験相談自体はまだ実施していないので、 今後の治験相談を通してほかへの適応、移行性等も考えながら検討するように進めていき たいと思います。 ○堀内部会長代理 2段階でなくて、できれば最初からやっていただければ有り難いと思 います。 ○審査管理課長 先生の御意見は医療の現場の実情を踏まえたものとしてよく分かるわ けですが、一方においてはスピードも問題となってくるのだろうと思います。すなわち、 より広い効能を目指せばデータもそれだけ積まなければならないということになってま いるわけですので、その辺りは国際的な開発をどのような形でやっていくのか等々も見な がら、昨今ではドラッグラグの問題も言われていますので、先生の御意見ももちろん視野 に入れながら、スピードも勘案しながらやっていきたいと考えております。よろしくお願 いします。 ○溝口委員 よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。 ○前崎委員 一つお聞きしたいのですが、我が国では、どちらかと言うと多剤耐性結核よ りも非結核性抗酸菌症(非定型抗酸菌症)の方が臨床的に問題になっているのですが、この 薬は非定型抗酸菌症にはin vitroで効果はあるのでしょうか。その辺が分かれば教えて いただきたいのですが。 ○機構 現在提出されているデータとしては、tuberculosis以外はbovisだけです。資 料といたしましてはウのタグの13ページに他の抗結核薬との比較という形で提示されて いますが、現在入手しているデータはこれだけでございます。 ○溝口委員 非結核性の抗酸菌症に関してはデータがないということでよろしいですね。 ほかに御質問、御意見はありませんか。私からお尋ねしたいのですが、これは世界共同開 発ということで、どこの国にもまだ承認されていない薬剤です。多剤耐性肺結核症とは別 に肺結核症に対する臨床試験を併行して行うということで、安全性がより詳細に検討され るべきものだと思いますが、これはそれからやることだと思います。世界共同ということ で、用量について教えていただきたいのですが、1日用量として200mgあるいは400mgと 書いてありまして、報告には副作用は大したものがないにしろ、量が多い方が多いようで す。日本人は体重が少ないのですが、これは世界共同で、同じ量で行われるのでしょうか。 血中濃度なども分かっているようですので、その辺で量が多少変わるということがあるの でしたら教えていただきたいと思います。 ○機構 今のところ得られているデータからは、日本人も外国人も同じ用量で試験を実施 する予定と聞いております。 ○溝口委員 分かりました。そのデータが出た後で量はまた検討される可能性があるわけ ですね。 ○機構 はい。 ○溝口委員 いかがでしょうか。ほかに御意見はありませんか。それでは、議決に入らせ ていただきます。なお、池田委員、竹内委員、堀内委員におかれましては、利益相反に関 する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。このOPC 67683を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、指定を可としてよろしい でしょうか。それでは、これを可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。どう もありがとうございました。 ○池田部会長 溝口委員、ありがとうございました。続いて議題2に入りたいと思います。 議題2はlenalidomideを希少疾病用医薬品として指定することということでございま す。事務局から概要を説明してください。 ○事務局 資料2を御覧ください。多発性骨髄腫を予定される効能・効果としてCC-5013 lenalidomideを希少疾病用医薬品として指定することの可否に関しまして、御説明いた します。資料2の上から二番目にある「報告書」のタグを御覧ください。こちらに医薬品 医療機器総合機構が事前評価を取りまとめております。こちらに基づきまして、対象患者 数、医療上の必要性、開発の可能性について御説明いたします。2ページですが、品目の 名称はCC-5013 lenalidomide、対象疾病は再発又は難治性の多発性骨髄腫(治療歴を有 する例に限る)、申請者名はセルジーン株式会社です。  まず、対象患者数ですが、多発性骨髄腫の総患者数は、厚生労働省の疾病別年次推移表 によりますと、2002年10月時点で約13,000人と推定されておりまして、年間推定罹患 数は、厚生労働省がん研究助成金による「地域がん登録」研究班の推計全国値データによ りますと、1999年時点で3,655人と推計されております。また、本邦での多発性骨髄腫 による死亡者数は、厚生労働省の2005年人口動態統計によりますと、3,785人とされて おります。これは申請者の推計ですが、この多発性骨髄腫の総患者数は13,000ないし 17,000人程度と推測しておりまして、本剤の投与対象は治療歴を有する患者であること から、この数をさらに下回るものと考えられます。以上より、希少疾病用医薬品の指定要 件であります5万人以下を満たすものと判断しております。  次に、医療上の必要性についてです。多発性骨髄腫の治療につきましては化学療法が中 心でありまして、一次治療としては特にメルファラン及びプレドニゾロンの併用療法であ るMP療法や、硫酸ビンクリスチン、塩酸ドキソルビシン及びデキサメタゾンの併用療法 であるVAD療法が多く用いられておりまして、そのほか、大量化学療法を実施できる患 者においては自家造血幹細胞移植も行われております。  一次治療によりまして約40ないし50%程度の奏効率が得られるものの、根治は得られ ず再発するということであります。再発例や治療抵抗性の患者に対する治療として、国内 では現在、ボルテゾミブが承認されているのみでありまして、新しい治療薬剤の開発が望 まれている状況です。  本剤は、名前からも分かるとおりサリドマイドの類縁化合物ですが、現在、この有効性 につきまして海外で二つの大規模臨床試験が実施されております。いずれも、再発又は難 治性の多発性骨髄腫患者を対象として、本薬及び高用量デキサメタゾンとの併用投与と高 用量デキサメタゾン単独投与を比較した第III相試験でありまして、いずれの試験におきま しても、奏効率、無増悪期間、無増悪生存期間で本剤の併用群が有意に優る結果が得られ ております。  また、安全性につきましては、これら2試験の結果、本薬の忍容性が確認されておりま す。なお、本薬と高用量デキサメタゾンの併用群で、デキサメタゾン単独群よりも高頻度 に発現した有害事象は、好中球減少症、血小板減少症、便秘、下痢、発疹、深部静脈血栓 症、筋痙攣、振戦、めまい等であり、特に、血栓塞栓事象の発現割合は、両試験の併合解 析の結果では併用群で12%、単独群で4%でありまして、併用群で高かったという結果 が得られております。以上、本薬の対象疾患及びこれまでの臨床試験成績から、本薬は医 療上特に必要性が高いものと判断しております。  最後に、本剤の開発の可能性ですが、本剤は「治療歴のある多発性骨髄腫患者における lenalidomideとデキサメタゾンによる併用治療」の効能・効果で2006年6月に米国及び 欧州で承認されております。また、我が国におきましても、現在、第I相臨床試験を実施 中でありまして、本薬の開発の可能性は高いと判断しております。  以上、対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の三点を考えますと、本剤について は希少疾病用医薬品としての要件を満たすと判断しております。御審議のほどよろしくお 願い申し上げます。 ○池田部会長 再発性・難治性の多発性骨髄腫を対象にしたlenalidomideの治療、これ を希少疾病用医薬品として指定していいかどうかということで、先生方から御意見を伺い たいと思いますが、いかがでしょうか。 ○堀内部会長代理 これは、先ほどお話がありましたように、サリドマイドと類似した構 造を持っているということですが、現在までのところ催奇形性は認められないというデー タになっていると思います。これからサルについてはやるということになっているかと思 いますが、外国でもサル等については実施されていないのでしょうか。このもの自体は新 生血管の造成抑制と言われていると思いますが、サリドマイドの器官形成において奇形を つくる場合にも、一つのメカニズムとしては血管新生の抑制が要因ではないかと言われて いると思います。同じようなメカニズムを持っているので、慎重にやる必要があるのでは ないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○審査第一部長 現在、日本におけるデータは皆無でありまして、基本的には海外で行わ れたデータです。その中でも、確か、サルにおけるデータはないというふうに承知してお ります。一方で、今もそうですが、今後の我が国における治験の際には、堀内先生からも 御指摘の催奇形性の問題等に非常に懸念があるということですので、市販後の流通管理シ ステムというのは、既にこれが承認されている国ではレブアシストというシステム名で運 用されていますが、それを我が国でも導入しながら、治験、その後の開発をやっていきた いというような申請者からの説明を受けているところでございます。 ○堀内部会長代理 外国では、使われていて特に問題はないのでしょうか。 ○審査第一部長 私どもが承知している限り、あるいは彼らからの報告では今のところ問 題が起こっているというのは聞いておりません。 ○池田部会長 これは実際に2006年6月にFDAで承認されてヨーロッパでも使われて いるわけですが、もちろん、妊婦には使わないということはきちんとディスクライブされ ているわけですね。 ○審査第一部長 御指摘のとおりでございます。 ○池田部会長 レブアシストというのはサリドマイドにおけるステップスと同じような 考え方で、非常に厳しい薬の管理をしましょうという、そういうことと理解してよろしい のですか。 ○審査第一部長 基本的にはその考え方でやっています。若干、その設計の詳細がサリド マイドにおけるステップスとlenalidomideにおけるレブアシストは異なっております が、基本的な考え方としてはきちんとした流通管理、あるいは妊婦への投与の防止、避妊 の徹底等につきましては同様でございます。 ○池田部会長 いかがですか。これは確認ですが、「(治療歴を有する例に限る)」と括弧 書きでありますが、未治療例には最初の段階では使わないということをはっきりさせると いうことですか。 ○機構 そのとおりでございます。現在、得られているデータは、治療歴を持たれている 患者を対象にしておりまして、基本的に、標準療法とされているMPあるいはVAD療法 の後ということをクリアにしたいというふうに申請者も考えております。 ○池田部会長 恐らく、サリドマイドとlenalidomideは常にこれからいろいろな意味で 比較されながら使われることになると思うのですが、サリドマイドの状況はどのようにな っているのか、ついでに御紹介いただきたいと思います。そういうことはないと思います が、仮にサリドマイドで使われ方について何か問題が出てきた場合に、ここにも影響が及 ぶと混乱すると思うのですが、その辺も含めていかがでしょうか。 ○審査管理課長 サリドマイドにつきましては一昨年の夏に承認申請がなされたところ です。その承認申請前においても、あるいはその後においても、個人輸入という形でサリ ドマイドが輸入されてきておりまして、承認申請がされたもの、あるいは個人輸入されて いるもの、これらの管理をどのような形でやっていくかということにつきまして、私ども としては安全対策課を中心に対策を打ち、また、検討をしているところでございます。  特に、今回承認申請されたものにつきましては、仮に承認するとすればどのような形で 安全管理システムを構築するかという観点から話合いを続けているところです。具体的に 申し上げますと、患者団体、あるいはサリドマイドで過去に健康被害を受けた方々、学会 の先生方、当然のことながら申請者である企業、これらの方々にお集まり願いまして、既 に数回にわたりディスカッションを積み重ねてきたところです。ほぼ案がまとまりつつあ りますし、また、試運転という形で幾つかの医療機関にも御協力を願って、うまく円滑に 動くかどうかを確かめている状況でありまして、私どもといたしましては、それらの結果 も踏まえて、この安全管理の問題を検討していきたいというふうに考えているところでご ざいます。  部会長から御示唆のあったlenalidomideとサリドマイドの関係、また、相互に影響し ていくのではないかという点につきましては、出てくるデータ、それは基礎試験も含め、 臨床試験も含め、また、国内だけではなくて外国の試験も含め、それらのものに基づきま して、先生方のお力を借りながら科学的な評価をするということがその原点にあるのだろ うと思います。それでもなお、予想されるようなリスク、特に催奇形性を中心としたリス クが残るようであれば、当然のことながらそれはサリドマイドとlenalidomideを同様に 考えていかなければならない点があるのだろうと考えるわけでございます。いずれにしま しても、その根っこにあるのは科学的な評価がどのような形になるかということですの で、私どももできる限りデータを提示したいと思いますし、先生方の御協力をいただきた いと思っております。よろしくお願い申し上げます。 ○池田部会長 いかがでしょうか。 ○堀内部会長代理 副作用で、デキサメタゾンと併用した場合に血栓塞栓症が12%くら い出る。これはかなり頻度の高い副作用ではないかと思いますが、日本人で治験をやった 場合にどうなるかについては重要だと思いますので、是非注意してやっていただきたいと 思います。 ○池田部会長 ほかにいかがでしょうか。多発性骨髄腫は非常に難治性で、実際に2006 年6月にもう承認されているというようなことで、患者団体としてもこの薬に対する期待 感は非常にあると思うのです。そうかといって、きちんと進めていかなければいけないと いうこともあるということです。ほかに御意見がなければ、議決に入りたいと思います。 このlenalidomideを希少疾病用医薬品として指定することに御異議はありませんか。御 異議がないようですので、指定を可として、薬事分科会に報告ということにさせていただ きます。  続いて、議題3に入りたいと思います。議題3は、骨髄異形成症候群による貧血を対象 疾病とするlenalidomideを希少疾病用医薬品として指定したいということですが、事務 局から説明をお願いします。 ○事務局 資料3を御覧ください。先ほどと同じく、CC-5013 lenalidomideにつきま して、予定される効能・効果を骨髄異形成症候群による貧血としまして、オーファンに指 定することの可否に関して御説明いたします。資料3の上から二番目にあります「報告書」 のタグを御覧ください。こちらも医薬品医療機器総合機構が事前評価を取りまとめており ますので、それに基づきまして御説明いたします。2ページですが、この議題につきまし ては、対象疾病は5(q31-33)欠失を伴う(他の付加的細胞遺伝学的異常の有無を問わな い)低あるいは中間-1リスクの骨髄異形成症候群による貧血、申請者名はセルジーン株式 会社です。  まず、対象患者数ですが、骨髄異形成症候群(MDS)の国内の有病者数は、1991年の 厚生省特定疾患特発性造血障害調査研究班の報告によりますと3,000人、また、1998年 の調査結果として難病情報センターが掲載した情報によりますと7,100人と推定されて います。このうち、本剤の適応となる「5(q31-33)欠失を単独若しくは他の付加的細胞 遺伝学的異常とともに伴う低又は中間-1リスクのMDSによる貧血」と限定した場合の 国内の有病者数につきましては、公表資料が少ないため正確な把握は困難ではあります が、 1985〜1991年にMDS患者401例を対象に調査した結果では、第5染色体異常を有する 患者は46例だったとの情報、また、厚生労働省科学研究費補助金の突発性造血障害に関 する調査研究の平成18年度の報告書によりますと、5q欠失を有しますMDS患者116 例のうち、この低リスク及び中間-1リスクに分類されるMDS患者は46例だったとの情 報がありまして、いずれにしても希少疾病用医薬品の指定要件である5万人以下を満たす と判断しております。  次に、医療上の必要性ですが、MDSの治療につきましては、現在、輸血等の支持療法、 免疫抑制剤を用いた治療、化学療法、そして造血幹細胞移植等がありますが、免疫抑制剤 や化学療法により治癒を得ることは非常に困難でありまして、唯一の根治的治療である同 種造血幹細胞移植につきましては、本疾患に高齢者患者が多いため、実施可能な患者数は 少ないという状況です。したがって、MDSの治療の中心は支持療法になりますが、MD Sによる貧血に対しまして赤血球輸血を長期に繰り返し実施した場合には鉄過剰となる ことが問題となっております。鉄過剰により心筋障害、肝障害などの多彩な臓器障害を起 こすため、MDS患者の主な死因の一つになっているという状況でありまして、MDSに よる貧血に対する治療法の開発が望まれる状況にあります。  本剤の有効性ですが、海外で三つの第II相臨床試験が実施されております。最初の試験 でMDS患者43例に本剤を投与しまして、投与後の赤血球系細胞の反応を検討した試験 におきまして、赤血球系細胞の反応が44%(19例)認められております。その被験者のう ち、「低リスク又は中間-1リスクの患者」におきましてはすべての患者で反応が認めら れ、また、5(q31-33)欠失を単独若しくは他の遺伝学的異常とともに伴う患者におきま しては13例中9例に反応が見られたことから、この開発といたしまして本剤の予定効能 である5q欠失の患者であって低リスク又は中間-1リスク患者に絞りまして、以後、二 つの試験が実施されております。その結果、赤血球輸血非依存状態の達成率は、5(q 31-33)欠失を伴わない患者では21%であるのに対しまして、この欠失を有する患者では 64%と高く、5(q31-33)欠失を有する患者におきまして本薬の有効性が期待できると結 論付けられております。  また、本剤の安全性につきましては、これらの三つの第II相試験の結果、忍容性が確認 されております。なお、高頻度に認められる副作用として、好中球数減少、血小板数減少、 下痢、疲労、掻痒症、発疹等がありました。以上、本薬の対象疾患及びこれまでの臨床試 験成績から、本薬は医療上特に必要性が高いものと判断しております。  三つ目に、本剤の開発の可能性ですが、本剤は米国におきまして「5q(q31-33)欠失 性細胞遺伝学的異常を伴う(その他の細胞遺伝学的異常の有無は問わない)低リスク又は 中間-1リスクMDSによる赤血球輸血依存性貧血」の効能・効果で、2005年12月に承 認されております。また、欧州におきましては20□年□月に承認申請され、現在審査中 でございます。また、我が国におきましてはこの予定効能の患者を対象としました国内臨 床試験が現在実施中でありまして、本薬の開発の可能性は高いと判断しております。  以上のことから考えますと、本剤につきましては希少疾病用医薬品としての要件を満た すと判断しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○池田部会長 委員の先生方から御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。骨 髄異形成症候群(MDS)の中でも5q-を伴う低リスクあるいは中間リスクの患者を対象 にしてlenalidomideを使用するということです。 ○溝口委員 その希少疾病用医薬品として認めることには問題はないと思うのですが、作 用機序のことで伺いたいのです。私は、サリドマイドはベーチェット病などに使っており ますし、先ほどの多発性骨髄腫への作用を見ていますとサイトカインの産生を促したり免 疫学的な機序かと思っていたのですが、このMDSの場合はだんだん赤血球が増えてきた りして、何かレチノイン酸みたいな効き方のように思うのですが、この薬剤は細胞にレセ プターがあるとか、そういう作用機序が分かっているのでしょうか。あるいは、病気によ って作用機序が違うのでしょうか。変な質問で申し訳ありませんが、お分かりでしたらお 教えいただきたいのです。 ○機構 現時点では、はっきりしたことが分かっていないという状況でございます。 ○新井委員 様々な作用があることがすべて良いことなのか、特に分からないのは、幹細 胞分化の調節と言われると、何をどう調節しているのか、すごくあいまいな感じがして、 それも含めてメカニズムが全然分からなくていいのかなという気がするのですが。 ○機構 完璧に分かるという状況になっていないのが事実でありまして、もちろん、今後 検討していただきまして審査に至るようであれば、その辺に関しては詳しく検討させてい ただきたいと思います。 ○池田部会長 これは5q-が非常によく反応するということは事実として今まで報告さ れているわけですが、5q-がないMDSの症例でも効く症例があるということもまた事 実だと思うのです。そして、割に低リスクの患者には反応がいいというデータもあるよう にこれは読めるのですが、開発のストラテジーとしては5q-から始めようということで 理解していいのですか。 ○機構 そのとおりでございます。 ○山口委員 同じ質問なのですが、5q染色体は検査としては必須で、しかもこういう条 件でないと駄目だという理解になるのでしょうか。 ○機構 駄目だということにはならないのですが、開発者のストラテジーとして、米国等 でも承認されている内容でもあるということと、臨床対象とした患者で5q-の患者に効 果が非常に高かったというところがポイントかというふうには理解しております。他の5 q-以外の因子等々に関してのMDSに対する期待が全世界的にはあったとは思うのです が、結果として得られている今の方向としては5q-には非常に高い効果が示されている というような理解で、開発としてはまず最初にそこを開発するというふうに理解しており ます。 ○山口委員 21%と64%ですか。そうすると、64%には当然使いたいわけですが、21% でも使いたいというふうに私などは思うのですが。 ○機構 いけないというふうには思っておりません。開発者のストラテジーはこちらとし ては理解したと御理解いただければと思います。どのような結果が得られるかというの は、もちろん、今後の開発の中で見極めていかなければならない点だと思いますが、それ が今現在として高い64%の結果に着目をしているというふうに理解をしております。 ○池田部会長 いかがでしょうか。海外でやられた第II相試験と同じやり方でもいいのか なという感じがしないでもないのです。恐らく、山口委員のお考えもそれに近いのだろう と思うのですが。 ○山口委員 サリドマイド系ですので、副作用がそれほどないのではないかなと期待して そういうことなのですが。 ○池田部会長 MDSですから、この5q-というものの特徴にこれは非常によく反応す るわけですが、それ以外にも免疫抑制という観点も、恐らく、このMDSへの反応性はあ るのではないかと思うのです。この試験をやるとなると、当然、骨髄異形成症候群の患者 は骨髄穿刺をしないと診断がつきませんので、診断をつけたら染色体の解析はほとんどや ることになりますよね。ですから、5q-は、あれば見付かりやすいと思うのです。ただ、 頻度が少ないので臨床治験が進むのかどうかという、そういう点も不安視するところもあ るような気はするのです。  そのほかに御意見はありませんか。先生方に特段御意見がなければ議決に入りたいと思 います。このlenalidomideを5q-を伴う骨髄異形成症候群の貧血を対象として希少疾病 用医薬品に指定することについて、御異議はありますか。今、幾つか委員の先生方から御 質問なり御意見が出たことを踏まえて、希少疾病用医薬品として指定をして、治験をやる に当たってはその点に留意していただくということでよろしいでしょうか。御異議がない ようですので、指定を可として、薬事分科会に報告をさせていただきます。二つ、三つ出 た意見を企業の方にも伝えて、その辺を頭に置きながら治験を進めるようにということで お願いしたいと思います。ありがとうございました。  続きまして、議題4ですが、生物学的製剤基準の一部改正についてです。先ほど事務局 からも説明がありましたように、議題4は報告事項1に伴うものですので、議題4と報告 事項の議題1について、機構から説明をしていただきたいと思います。 ○機構 それでは、審議事項の議題4と報告事項の議題1について、併せて御説明させて いただきます。順番が前後逆になりますが、まずは、報告事項の議題1「医薬品静注用ヘ ブスブリン-IHの製造販売承認事項一部変更承認について」から御説明いたします。資 料5を御覧ください。本剤は、生物学的製剤基準に収載されておりますポリエチレングリ コール処理抗HBs人免疫グロブリン製剤であり、現在は「HBs抗原陽性血液の汚染事 故後のB型肝炎発症予防」の効能・効果で承認されているものです。今般、株式会社ベネ シスから、「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」(平成11年2月1日付け 研第4号医薬審第104号、厚生省健康政策局研究開発振興課長及び医薬安全局審査管理課 長通知)に基づいて、医学薬学上の公知であるとして、「HBs抗原陽性のレシピエント における肝移植後のB型肝炎再発抑制」及び「HBc抗体陽性ドナーからの肝移植後のレ シピエントにおけるB型肝炎発症抑制」の効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変 更承認申請がなされたものです。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承 認して差し支えないと判断いたしました。  続きまして、審議事項の議題4として、今説明しました、報告事項議題1の効能・効果 の追加に関し、ポリエチレングリコール処理抗HBs人免疫グロブリン製剤の生物学的製 剤基準の一部改正について御説明いたします。資料4を御覧ください。3枚目を見ていた だきますと、現在、抗HBs人免疫グロブリン製剤の生物学的製剤基準における 5.1表示事項に、「HBs抗原陽性者に注射してはならない旨」が記載されています。今 般、先ほど説明しました、静注用ヘブスブリン-IHにおける効能の追加がされます関係 で、当該効能・効果の対象患者には「HBs抗原陽性者」が含まれていること、あと、国 内外のB型肝炎関連の肝移植時において、本剤又はほかの抗HBs人免疫グロブリン製剤 が使用されている現状にもかかわらず、本剤のHBs抗原陽性者に対する安全性において 現在特に問題とされる点は見いだせないことなどを勘案しまして、生物学的製剤基準を 「HBs抗原陽性者(肝移植施行患者を除く。)に注射してはならない旨」と変更すること が適当と考えるものでございます。この点について、御審議のほどよろしくお願いいたし ます。 ○池田部会長 審議事項としては生物学的製剤基準の一部改正ということでありまして、 お手元の資料4にある表示について、このポリエチレングリコール処理の抗HBs人免疫 グロブリンの中で、表示事項として「HBs抗原陽性者に注射してはならない旨」と書い てあるわけですが、報告事項1、資料5にある適応を追加することに伴いまして、括弧書 きで「(肝移植施行患者を除く。)」というものを、基準の中の記載として変更したいとい うことです。まず、資料5を御覧いただいて、この抗HBs人免疫グロブリンの効能・効 果の追加について何か御質問があれば受けたいと思いますが、いかがでしょうか。  HBs抗原陽性のレシピエントが患者として肝移植を受けたときに、この免疫グロブリ ンをB型肝炎の抑制に使いましょうということと、もう一つは、HBc抗体陽性のドナー から肝移植を受けた場合に、レシピエントに対してB型肝炎の発症の抑制をしましょうと いうことで、肝移植の患者に限って、肝炎抑制ということで、レシピエントとドナーの状 況に応じてこれを使っていこうということです。今回は肝移植ということに限っているの ですが、この報告1、資料5については御確認いただいたということでよろしいでしょう か。 ○山口委員 効能のことではないのですが、もしこういう形で認められた場合に、このH Bのイムノグロブリンの需要がどのくらい出るかという予測はされているのですか。 ○機構 現在の試算では年間100例程度の患者数が見込まれております。 ○山口委員 用法の1.に使われている量に比べて、例えば汚染事故などは。 ○池田部会長 血液の汚染事故での適用と比べるとどのくらいの。 ○山口委員 使う量は多分、多いはずですね。 ○審査第一部長 すみません。今、そこまで詳しいデータは手元にありません。正確な数 字がなくあいまいな答えを差し上げると混乱の元でございますので、後ほどきちんと申請 者に確認の上、山口先生に御報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。 ○山口委員 こういったHBの国内自給を目指すという一つの方向もあるものですから、 それとのバランスのことでの質問です。 ○池田部会長 高力価のHBsの人免疫グロブリンを国内自給で造るというのはそれな りの工夫をしなければいけないという、今、山口委員のおっしゃったこともありますので、 どのくらいのニーズが今後あるかということは正確な数字を山口委員の方に、あるいは委 員の先生方にもお知らせいただければと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、資 料5の報告事項1については御確認いただいたことといたします。  審議に入りたいのですが、議題4の生物学的製剤基準の一部改正について、何か御意見 はありますか。資料4の3ページ、4ページにアンダーラインで改正の文章が示されてい ますが、これについて御意見をいただけますか。「(肝移植施行患者を除く。)」というこ とを一言入れておくということです。  御意見がなければ議決に入りたいと思います。この生物学的製剤基準の改正を可とする ことについて御異存はありますか。ないようですので、この改正を可として、薬事分科会 に報告とさせていただきます。先ほど申し上げましたように、報告事項1も御確認いただ いたということで、先に進ませていただきたいと思います。  それでは、議題2以降で報告事項が四つありますので、事務局から順次説明をしていた だきたいと思います。 ○機構 それでは、議題2「医薬品ハーセプチン注射用60及び同注射用150の製造販売 承認事項一部変更承認について」御報告いたします。資料6を御覧ください。本剤は、ヒ ト上皮増殖因子受容体の2型に対するヒト化モノクローナル抗体であり、現在は、「HE R2過剰発現が確認された転移性乳癌」の効能・効果で承認されております。今般、中外 製薬株式会社から、「HER2過剰発現が確認された乳癌における術後補助化学療法」の 効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものでございま す。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断い たしました。  続きまして、議題3「医薬品ハベカシン注射液25mg、同注射液75mg、同注射液100mg の製造販売承認事項一部変更承認並びに同注射液200mgの製造販売承認について」御報告 いたします。資料7を御覧ください。本剤は、MRSAを適応菌種とするアミノグリコシ ド系抗生物質であり、現在は、「敗血症」、「肺炎」の効能・効果で承認されているもの でございます。今般、明治製菓株式会社から、「1日1回投与の用法」を追加する製造販 売承認事項一部変更承認の申請等がなされたものでございます。医薬品医療機器総合機構 における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。  続きまして、議題4「医療用医薬品の再審査結果について」御報告いたします。資料は、 資料8-1と資料8-2でございます。資料8-1は、一般的名称は「リュープロレリン酢酸塩」、 販売名は「リュープリン注射用3.75他」の医薬品再審査確認等結果通知書です。資料8-2 は、一般的名称は「ドセタキセル水和物」、販売名は「タキソテール注」の医薬品再審査 確認等結果通知書です。これらの品目につきましては、市販後の使用成績調査、市販後の 臨床試験、特別調査の成績等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14 条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、 効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定 したものでございます。 ○事務局 議題5、優先審査品目の指定でございます。資料9を御覧ください。優先審査 につきましては、薬事法上、承認申請された医薬品が希少疾病用医薬品、その他医療上特 に必要性が高いと認められるものであるときには、当該医薬品の審査を他の医薬品の審査 に優先して行うことができるという規定があります。そして、その指定に当たりましては、 資料9の3ページに示しておりますが、適応疾病の重篤性と医療上の有用性、これらを総 合的に評価して判断することとしております。  1ページに戻りますが、今回、御報告させていただくのは3品目です。1品目目は、医 薬品名はネクサバール錠200mg、一般名はソラフェニブトシル酸塩です。本剤は根治切除 不能又は転移性の腎細胞癌の効能・効果で、昨年10月に当部会において御審議いただき、 今月25日に承認されたキナーゼ阻害作用を有します抗悪性腫瘍薬です。今般、肝細胞癌 を効能として申請され、優先審査の要望があったものです。この肝細胞癌は、5年相対生 存率が17.1%と極めて低いことから、生命に重大な影響がある疾患に該当すると判断し ております。肝細胞癌の治療につきましては、外科的切除やラジオ波熱凝固療法などの経 皮的治療などがありまして、限局病変に対します根治的治療法は存在するものと考えてお りますが、一方で、その局所療法の適応とならない進行例に対しまして、標準的に用いら れる治療はないと判断しております。本剤ネクサバールにつきましては、海外において外 科的切除又は局所療法の適応とならない進行性肝細胞癌患者を対象とする第III相臨床試 験が行われており、その中間解析において全生存期間の中央値がプラセボ群214日に比べ て本薬群324日と有意に延長することが示されておりまして、そういった点からも適応疾 病の重篤性及び医療上の有用性を勘案し優先審査品目に指定することとしております。  続きまして、2品目目はプレベナー、一般名は肺炎球菌ポリサッカライド-CRM197結 合体です。こちらは肺炎球菌による侵入性感染症、肺炎、中耳炎の予防を予定効能として 申請されたワクチンでありまして、7種類の血清型Nの肺炎球菌の莢膜ポリサッカライド に不活化したジフテリアトキシンを結合したものを有効成分としているものです。この医 薬品の効能としている小児における化膿性髄膜炎等の侵入性感染症は、肺炎球菌が主要な 起炎菌として知られておりますが、死亡や後遺症等の重篤な転帰をたどることが少なくな いなど、生命に重大な影響がある疾患であると判断しております。本邦において小児で有 効性が確認されている肺炎球菌ワクチンは承認されておりませんで、本剤は、2か月齢の 健康乳児約30,000例を対象とした海外での第III相比較臨床試験におきまして、本剤投与 群15,000例での侵襲性肺炎球菌性疾患の発症が0例であったとの試験成績が得られてい ることから、本剤の医療上の有用性も高いと判断しております。以上のことから、優先審 査品目に指定することといたしました。  続きまして、3品目目はサーバリックスです。こちらはヒトパピローマウイルス16型 及び18型の感染を予防することによりまして、子宮頸癌の発症を予防することを目的と するワクチンです。有効成分としましては、HPV-16及び18の抗原蛋白質を有効成分 としているものです。適応疾患である子宮頸癌につきましては、早期がんの場合の予後は 比較的良好ですが、進行がんに対する治療効果は限られておりまして、そういったことか ら生命に重大な影響がある疾患であると判断しております。また、本邦におきまして子宮 頸癌を予防するワクチンは承認されておらず、本剤は、15歳〜25歳の健康女性約18,000 例を対象とした海外の第III相臨床試験におきまして、HPV-16型及び18型に起因する 子宮頸部上皮内腫瘍を主要評価項目としまして、プラセボ対照の比較試験が行われており ます。その結果、本剤投与群では対照群に比べて90.4%の有効性が示され、また、副次 評価項目であるHPVの持続感染についても16型で84.1%以上、18型で74.0%以上の 有効性が示されるなどの試験成績が得られていることから、本剤は医療上の有用性がある と判断いたしまして、優先審査品目に指定することといたしました。 ○池田部会長 ありがとうございました。議題2〜議題5を事務局の方から説明していた だきました。まず、議題2ですが、先生方の御意見、御質問を伺いたいと思います。議題 2はハーセプチンですが、いかがでしょうか。適応の追加ということで、「HER2過剰 発現が確認された乳癌における術後補助化学療法」ということです。御質問、御意見が特 になければ、御確認いただいたということで進めたいと思います。  次に、議題3、ハベカシンです。これは投与量の変更ですが、成人への投与と小児への 投与でそれぞれ1日1回、必要に応じて2回に分けることもできるということです。この ハベカシンの製造販売承認事項の一部変更と200mgの製造販売承認について、御質問、御 意見はありますか。 ○堀内部会長代理 審査報告書の6ページに「感受性の推移」というところがあります。 これを見ると、経時的に感受性がどう変わったかを薬剤ごとに記載されていますが、新し くなると感受性が上がっているデータになっているように思います。MRSAについて は、最近、感受性がだんだん下がってきて、海外でも倍量投与が行われるようになってお り、日本でも同様な傾向が出てきているのではないかと思います。このような場合に副作 用等がどうなるかということも今議論されているところだと思いますが、この薬剤に対し ては逆に感受性が上がっているように思います。そうすると、それほど投与量を上げるこ とは必要ないだろうと思いますが、いかがでしょうか。 ○機構 この「感受性の推移」のところにつきましては、どのような患者さんから分離さ れたMRSAかということが明確となっているデータではありません。ですので、この数 値だけをもって、感受性全体が良い方に向かっているというふうには私どもは考えており ません。世の中の状況としては、今、堀内先生が御指摘されたような状況がもっともだと 思います。ですから、感受性の推移を厳密な意味で検討するのであれば、患者の背景、重 症度とか、その前に投与された抗菌薬の種類とか、患者情報も見ながら、それらの患者情 報がフィットしているデータで比較検討していかなければならないと思っています。今回 の審査に関しましても、そういうデータがあればそれを比較したかったのですが、なかな かそのようなデータがなかったので、このような入手できたデータで確認をしたという次 第です。したがいまして、私どもとしても、今後も感受性の推移については本当の意味で 比較検討が可能なデータを引き続きウオッチしていくようにしたいと思います。 ○前崎委員 基本的にはまだ、本邦におけるMRSAの耐性菌というのは非常に少ないの です。いわゆるブレイクポイントといいますか、ある一定の濃度以下であれば、例えば 0.1でも0.2でも臨床的には効くわけです。ですので、数字的には少し感受性に差があり ますが、臨床的にはブレイクポイント以下にありますから、耐性菌というようには判断し なくていいのではないかと思いますので、そういう理解でよろしいのではないかと思いま す。 ○池田部会長 そのほかにいかがでしょうか。先生方から特に御質問がなければ、議題3 も確認していただいたということで進めたいと思います。ありがとうございました。それ では、議題4の再審査結果についてですが、リュープリンとドセタキセルの2剤の再審査 報告について御質問、御意見はありますか。特にないようですので、この再審査結果につ いても御確認いただいたということで進めさせていただきます。  次に、議題5、資料9ですが、優先審査品目指定の審査結果で、3品目の優先審査の指 定がありました。これについて御質問、御意見はありますか。肝細胞癌に対するネクサバ ール錠と、肺炎球菌の感染に対するプレベナーと、パピローマウイルスに対する感染予防 のサーバリックスですが、いかがでしょうか。特に御異存がなければ、議題5についても 先生方に御確認いただいたことといたします。  報告事項についてはすべて御確認いただいたということですので、本日の議題はこれで 終了したことになりますが、先生方から御質問や御意見はありますか。特にないようでし たら、事務局から報告をお願いいたします。 ○事務局 先ほど、山口先生からヘブスブリンに関しまして、抗HBs人免疫グロブリン の供給量がどうなるのかという御質問があったと思いますが、平成18年度の需給状況を 確認したところによりますと、年間2万バイアルという状況でございます。今回のこの効 能追加に関しましては、そもそもこれは公知で使用実績も非常にあることから、追加した 分がそのまま上乗せするのではなくて、使用された実態もありますので、それほど大きな 違いは生じないのだろうと思っておりますが、これは需給計画を作成するところも含め て、メーカーに対してもこれによって需給計画に漏れがないように注意をするようにとい うことは指導したいと思っております。 ○池田部会長 適応追加にしてもそれほど大きな影響はないということですね。そのほか に事務局から何かありますか。 ○事務局 次回の部会ですが、既に御案内のように、2月28日(木)午後1時から開催さ せていただく予定でございますので、よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 次回の第二部会は2月28日の午後1時からということで、よろしくお願 いしたいと思います。それでは、本日はこれで終了させていただきたいと思います。どう もありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 河野(内線2734)