資料4-2  

日本製薬団体連合会における地球温暖化対策の取り組み

平成20年 1月31日
団体名 日本製薬団体連合会

目標

2010年度(第一約束期間の平均値)の製薬企業のCO排出量を1990年度レベル以下にする。

1.目標進捗

エネルギー消費の推移と目標

  2004年度 2005年度 2006年度 2008〜2012年度目標
原単位(売上高:億円) 75,434 77,584 81,268
エネルギー消費量(万kL)
(原油換算値)
118 116 112
エネルギー原単位
(万kL/原)
       
CO2排出量(万t-CO2) 239 236 223 165
CO2原単位(万t-CO2/原)        

CO2排出量のみで目標管理している。

● 日本製薬団体連合会の業界概要(平成18年度)

業界全体の規模 業界団体の規模 自主行動計画参加規模
1342社   計画参加数 66社(5.0%)
規模   94,468億円 規模     規模 81,268億円
(86.0%)

1997年より、日薬連および製薬協が傘下団体・企業に自主行動計画フォローアップ参加を呼びかけ、
66社が毎年実施しているアンケート方式によるフォローアップ調査に回答している。

業界全体の規模(売上高)は、「医薬品産業実態調査報告 2003年(厚生労働省)」による。

自主行動計画参加規模(売上高)は、2007年度アンケート調査による各社回答の合計である。

医薬品売上高の約80%が医療用医薬品である。

医療用医薬品は、高齢化の進行等により生産量が増加している。

  1990年度 1995年度 2000年度 2005年度
医療用医薬品 51,672(100) 57,932(112) 59,127(114) 70,214(136)
医薬品全体 60,485(100) 67,334(111) 67,360(111) 76,886(127)

単位:億円 出荷額

● 目標指標の選択

製薬産業は、エネルギー多消費型産業ではないが、産業界の一員として応分の努力義務がある。
京都議定書で排出量の削減が目標となっていることとあわせ、1990年度の排出量をベンチマークとしたCO2排出量削減目標とした。
また、医薬品は多種類多規格の生産であること、研究開発から製造、保管の段階において厳格な品質管理等が必須であり、そのための空調等に使用するエネルギー使用の割合も多く、生産量原単位指標を用いる管理は適切ではないと考えている。製薬企業では大規模な工場は少なく設備投資のコスト効率を考慮する必要はあるが、設備機器更新時に省エネルギータイプの導入やボイラー燃料を重油からLNGへの転換等のハード対策でもCO2排出量削減の余地は残されていると思われる。

2.対策とその効果(目標達成への取組み)

● 目標達成のためのこれまでの取組み

医薬品の研究開発・製造・流通には厳しい管理(「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」等)が要求されることから、空調設備等に使用されるエネルギーは増加傾向にある。
こうした中で、CO2排出量削減の取組みとしては以下のような対策を実施した。

・燃料転換

・空調設備の運転管理強化(温度、喚起回数、清浄度、運転時間の適正化等含む)と高効率化

・省エネルギータイプの設備転換

・コージェネシステムの導入

・ヒートポンプ・蓄熱システムの導入

・熱交換による廃熱の回収

● 2006年度に実施した温暖化対策の事例

【対策の実施状況】

区分 対策項目 対策採用数
2005年度 2006年度
ソフト改善 基準値、設定値の変更(温度、換気回数、清浄度、照度、運転時間等) 13 13
設備機器の運転、制御方法の見直し(起動、停止、スケジュール、間欠、台数運転等 33 30
社内活動による意識向上 15 10
空調設備 熱交換による排熱の回収(熱交換器による全熱、顕熱の回収)
エネルギー エネルギーの代替(重油、LPG等から都市ガスへ) 12
コージェネレーションの導入
機器の改善 高効率機器の選定 23 22
インバーター(VVVF)装置の設置(送風機、ポンプ、攪拌機、照明等) 22 19
機器及び配管への断熱による放熱ロスの低減
漏水、漏洩対策の実施(配管修理、メカニカルシールへの変更等)
その他 製造工程の見直し
生産効率の改善(収率の向上等)
変圧器無負荷損失の低減(コンデンサーによる力率の改善)

3.CO2排出量増減の理由

● 基準年度〜2006年度のCO2排出量の要因分析

【1990年度〜2006年度のCO2排出量の要因分析】

    万t-CO2 基準年度比 %
CO2排出量 1990年度(基準年度) 165.0 100.0
2006年度 223.0 135.2
 増減 58.0 +35.2
(内訳) 生産(売上高)活動の寄与 131.5 +79.7
企業努力による削減分 ▲72.1 ▲43.7
CO2排出係数の変化 ▲1.4 ▲0.8

1990年度に対して2006年度のCO2排出増加量は58.0万tであった。内訳としては、生産量(売上高)の増加により131.5万t-CO2排出量が増加した。一方、工場や研究所におけるエネルギー効率の向上などにより72.1万t、またCO2排出係数の低下により1.4万tのCO2排出量が削減された。

● 2006年度のCO2排出量増減の理由

増加の理由 減少の理由
生産量(売上高)の増加 エネルギー効率の悪化 設備稼働率の悪化 気候の影響 生産量(売上高)の減少 エネルギー効率の向上 設備稼働率の向上 燃料転換 その他(電力原単位の改善など)
27社 1社 2社 17社 14社 28社 17社 16社 9社

アンケート調査による2006年度のCO2排出量増減の理由(重複回答あり)の中であげられたエネルギー効率の向上等の具体的内容は、下表の対策事例を参照。

2006年度の対策実施事例とCO2排出削減効果

2006年度実施項目 件数 削減量t-CO2
基準値、設定値の変更(温度、換気回数、清浄度、照度、運転時間等) 13 9,867
高効率機器等の選定 22 8,093
エネルギーの代替(重油、灯油から都市ガス、プロパン等) 12 7,642
設備機器の運転、制御方法の見直し(起動、停止、スケジュール、間欠、台数運転等) 30 4,410
インバーター(VVVF)装置の設置(送風機、ポンプ、攪拌機、照明等) 19 1,642
コージェネレーションの導入 1 697
熱交換による排熱の回収(熱交換器による全熱、顕熱の回収) 4 391
漏水、漏洩対策の実施(配管修理、メカニカルシールへの変更等) 4 177
社内活動による意識向上 10 164
機器及び配管への断熱による放熱ロスの低減 9 76

(各社から報告された対策事例とそのCO2排出削減効果の合計値)

「基準値、設定値の変更」「設備機器の運転、制御方法の見直し」といったソフト面での対策が件数として多い。

「高効率機器等(モーター、蛍光灯など)の選定」が2005年度に21件報告され、2006年度においても22件が実施されている。

4.目標達成に係る自己評価

2006年度実績で、目標を58.0万t-CO2(基準年比135.2%)上回っており、2007年度調査でCO2排出量が「2006年度実績で既に1990年度以下」と回答した企業は11社、「2008〜2012年度の5ヵ年平均値は1990年度以下」とする企業は5社であり、目標達成可能な企業は16社にすぎないことなどから、目標達成は非常に厳しい状況である。

2008〜2012年度の5ヵ年平均予測値は215万t-CO2で、基準年と比較し50万t- CO2(30%)増加と予測している。

※2007年度以降2012年度までのエネルギー使用量予測を回答してきた企業は42社。2006年度を基準として、66社分の2006年度のエネルギー別合計値を、2012年度まで集計できた42社の2006年度のエネルギー別合計値で割り、年度毎の42社分のエネルギー別推計値を乗じて66社の予測値を暫定的に拡大推定した。

5.CO2以外の排出削減対策

これまで、CO2を含めた6種類の温室効果ガス排出量を算定する場合の組織境界や活動範囲を検討してきたが、定量噴霧エアゾール剤(MDI)に用いるHFCを除いて、業界として算定できる状況になっていない。

● 目標:

2010年度のHFC推定使用量の2/3を削減する。(定量噴霧エアゾール剤)

● 目標採択の理由:

喘息及び慢性閉塞性肺疾患の治療に用いられる定量噴霧エアゾール剤(MDI)や粉末吸入(DPI)等の定量吸入剤は,吸入療法の普及に伴い、年々処方数が増加している。定量吸入剤として永らくCFC含有MDIが使用されていたが、オゾン層保護の観点からCFCフリー代替製剤への転換が行われた。CFCフリー代替製剤にはHFC含有MDIと噴射剤を使用しない粉末吸入剤(DPI)があり、1997年度に最初のHFC含有MDIが発売されて以来、2005年度末には出荷される定量吸入剤は全てCFCフリー代替製剤となった。

1996年に、HFC含有MDIに転換後、対策を講じない場合、2010年度にHFC排出量は540トンになると推定した。2005年度まではCFC含有MDIからCFCフリー代替製剤への転換中であったため、削減の自主目標を25%とした。2006年度以降はこれまでの実績を考慮して目標を改訂し、対策を講じない場合の排出量の2/3(360トン)を削減することとし、2010年度の自主目標を180トンとした。2010年度の排出削減自主目標のうち、噴射剤を使用しないDPIへの転換・新規開発が1/2、HFC含有MDIの製剤改良によるHFC量の削減が1/6と見込んでいる。

● HFC排出量推移:

1997年度以降CFCフリー代替製剤への転換に伴ってHFCの排出量は増加したが、DPIの普及により2006年度のHFC排出量は112.7トンとなった。

【表−定量噴霧エアゾール剤由来のHFC排出量(単位:トン)】

年度 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 10
HFC-134a 0.0 0.0 1.1 2.6 17.1 37.1 44.6 46.6 47.6 50.5 62.8 70.4  
HFC-227ea 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.8 8.2 12.7 22.9 42.3 47.3 42.3  
HFC合計 0.0 0.0 1.1 2.6 17.1 38.9 52.8 59.3 70.5 92.8 110.1 112.7 540.0
目標値                         180.0

*)推定値

6.環境マネジメント、海外事業活動における環境保全活動等

● ISO14001に関する取組み

2006年度における、独自システムを含む環境マネジメントシステム導入企業は53社246事業所、その内、ISO14001導入は45社177事業所であった。

7.CO2排出削減対策に係る好事例

2008年3月に「省エネ温暖化防止対策事例集」を発行予定

<付加資料>

業務類型別による対策と効果

○ オフィス部門

本体企業の本社ビルでは、2006年度のCO2排出量51.3千t-CO2、床面積当り72.5 kg-CO2/m2であった。2004年度と比較すると、床面積は22千m2増、CO2排出量は1.9千t-CO2減で推移し排出原単位は改善されている。その主たる要因はA重油の削減と推察される。

一方、本社ビル以外の支店・営業所等は、テナントビル入居が進んだこともあり、エネルギー消費量を詳細に管理している事業所は少数で、報告可能な有効データの取得には至っていない。

【表−本体企業の本社事業所に係るCO2排出量及びエネルギー内訳】

項目 単位 2004年度 2005年度 2006年度
延べ床面積 千m2 685 696 707
エネルギー消費量 GJ 1,213,016 1,178,029 1,165,660
CO2排出量 t-CO2 53,200 53,148 51,284
エネルギー原単位 GJ/千m2 1,770 1,693 1,648
CO2排出原単位 kg-CO2/m2 77.6 76.4 72.5
購入電力量 千kWh 106,288 102,106 101,835
都市ガス 千m2 5,629 5,766 5,753
灯油 KL 65 65 58
A重油 KL 556 428 199
LPガス  t 19 21 17

○ 物流部門

2006年度の自家物流活動状況を調査した結果、トラック保有は5社15台で、CO2排出量は662tであった。殆どの企業が委託物流に移行している。なお、この内、トンキロの報告は1社のみで排出量原単位の算定は困難であった。

一方、委託物流の活動状況を把握する手法として、先の改正省エネ法によるトンキロ算定に着目し調査を行った。本体企業については31社から回答が得られ、その内、3000万トンキロ以上の特定荷主には6社が該当した。一方、連結子会社については21グループ企業の60社について回答が得られ、その内、33社がトンキロを把握し、特定荷主には何れも該当しない。

更に、政府が提唱する3PL、共同輸送およびモーダルシフトをはじめとする排出抑制対策の導入状況について調査した結果、徐々にではあるが着実に排出抑制対策が推進されていることが窺えた。

【表−2006年度委託物流実態調査[1](本体企業)】

有効回答企業 31社
本体企業トンキロ合計 736,488万t・km
特定荷主該当企業 6社

【表−2006年度委託物流実態調査[2](関連子会社)】

有効回答関連子会社数 60社
トンキロ把握関連子会社数 33社
関連子会社トンキロ合計 4,285万t・km
特定荷主 該当0社

【表−物流からの排出抑制対策】

  2004年度 2005年度 2006年度
有効回答企業数 66社 66社 66社
3PL推進 10社 12社 19社
共同輸送推進 11社 11社 17社
モーダルシフト推進 7社 7社 12社
製品荷姿標準化推進 12社 12社 13社
製品小型軽量化推進 15社 16社 20社

○ 営業活動部門

多くのMRを抱え、営業車両からの排出量が比較的多いのは製薬業の特徴といえる。2004年度と2006年度の比較において、車両台数は18%増加に対して排出量は13%増加に留まった。その排出抑制要因の一つとして、対策の一環として取り組んでいる低公害車導入が寄与した結果と考える。

【表−営業車両からの排出状況】

  単位 2004年度 2005年度 2006年度
営業車両台数 36,937 42,939 43,767
低公害車 8,656 12,611 16,392
低公害車導入率 23 29 37
消費ガソリン KL 74,078 82,519 83,816
消費軽油 KL 58 77 79
熱量 GJ 2,565,305 2,858,047 2,903,017
CO2排出量 t-CO2 172,079 191,717 194,733

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