07/12/27 社会保障審議会年金部会経済前提専門委員会(第2回)議事録 社会保障審議会年金部会経済前提専門委員会(第2回)議事録 日  時:平成19年12月27日(木) 16:00〜17:40 場  所:全国都市会館第1会議室 出席委員:米澤委員長、江口委員、小塩委員、権丈委員、駒村委員、樋口委員、      本多委員、増渕委員、山口委員 ○山崎数理課長 それでは定刻となりましたので、これより「社会保障審議会年金部会経済前提 専門委員会」を開催いたします。委員の皆様方には、本日御多忙のところお集まりいただき、あ りがとうございます。  議事に入ります前に資料の確認をさせていただきます。  議事次第、座席図、名簿のほか、次のとおりでございます。  まず資料1「諸外国の公的年金の将来見通しにおける経済前提について」。  資料2「アメリカの公的年金(OASDI)の将来見通し」。  資料3「カナダの公的年金(CPP)の将来見通し」。  資料4「スウェーデンの公的年金の将来見通し」。  資料5「高齢化関連支出予測の前提と予測手法(EU委員会)」。  資料6「平成16年財政再計算における経済前提の設定について」。  資料7「労働力人口の見通し〜雇用政策研究会報告書(平成19年12月)より〜」。  以上でございます。資料の不足はございませんでしょうか。  それでは議事に入ります前に、委員の追加がございましたので御紹介をさせていただきます。  小塩隆士委員。神戸大学大学院経済学研究科教授でいらっしゃいます。  次に、前回の委員会以降、厚生労働省の人事異動がありましたので紹介させていただきます。  大臣官房参事官資金運用担当の板谷でございます。  年金局総務課年金制度調整官の黒田でございます。  また、委員の出欠状況でございますが、本日、吉冨委員は欠席でございます。あと、樋口先生 が遅れて御出席の予定でございます。  それでは、以後の進行につきましては米澤委員長にお願いいたします。 ○米澤委員長 こんにちは。お忙しい中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。  それでは、議事に入りたいと思います。  本委員会では、平成21年までに行う財政検証における経済前提について、年金部会における 検討に資するために、専門的、技術的な事柄について検討を行うことになっております。今年の 3月に暫定試算の結果の説明を受けまして、そこで皆様方にいろんな御意見をいただき、また問 題意識をお聞きしたところでございます。  本日は、今後の本格的な検討に当たりまして、諸外国の公的年金の将来見通しにおける経済前 提について、事務局の方から整理していただきましたので、それの説明を受けたいと思います。  それでは、よろしくお願いいたします。 ○山崎数理課長 それでは、御説明申し上げます。  最初に、資料1、1枚紙でございますが「諸外国の公的年金の将来見通しにおける経済前提に ついて」をごらんください。  下の欄に表で掲げてございますが、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェ ーデン、そして日本ということで、主要先進国につきまして財政見通しの期間でございますとか、 経済前提、これは足元は違う数値を使っているところもございますので、最終的な長期の数値と いうことで並べてございます。あと、現時点での積立水準と積立金の運用方法ということで、表 に整理したものでございます。  何分、各国、将来の財政の見通しにつきましては、かなり情報は出ているのでございますが、 経済前提をどうやって設定したというところまで突っ込んだ形での情報は、なかなか得にくいと いうものがございまして、必ずしも十分に調べ尽くせたわけではないところでございますが、総 じて見ますと、方法論といたしましては、過去の長期的な実績の傾向を基に設定しているという ところが大半だと思われるところでございます。  一方、後ほど御紹介いたしますが、国際機関と言いますかEU委員会というところでございま すが、こちらで年金についても将来見通しが作成されて、その前提についての設定手法、こちら が日本の平成16年の財政再計算と、方法論的に類似した方法が使われているというものがござ いますので、こちらの方も後ほど資料で御紹介したいと存じます。  下の比較表を見ていただきますと、まず財政の見通し期間でございますが、アメリカ、カナダ、 スウェーデン、これらの国が75年。イギリス、フランス、ドイツといった辺りは、それよりも 少し短いということでございます。  積立金の状況を見ていただきますと、下から2段目の「積立水準」でございますが、アメリカ は年間支出の3.5倍。カナダが4倍。それから、ちょっと飛びまして右から2段目のスウェーデ ンが4.5倍ということでございまして、かなりの水準の積立金を持って、長期的な視点で財政を 行っているというところにつきましては、比較的長めの財政見通し期間を持っているということ が言えようかと存じます。  「経済前提」でございますが、見方といたしまして、物価上昇率に加えまして賃金上昇率、運 用利回りにつきましては、名目値と物価を差し引いた実質値というのがございますが、各国とも 基本的には実質値で考えていくというようなことで、実質値での表示というものが多くなってい るというところでございます。  アメリカ、フランス、スウェーデンにつきましては、それぞれ3通りの数値が載ってございま すが、一応真ん中にある数値が、日本でいうところの基準ケースと比較し得るようなものと考え ているところでございます。イギリスで括弧書きで書いてございますのは、1.5%というのが基 本のケースで、括弧の中にあります2.0%は参考までに試算している、こういう位置づけという ことでございます。  数値を比較いたしますと、まず実質の賃金上昇率で見ますと、アメリカの中位ケースでござい ますが、真ん中のケースで実質賃金上昇率1.1%。一番右の欄にございます日本の真ん中の基準 ケースでございますが、これもたまたま1.1%ということで、同程度になっているというところ でございます。カナダは1.2%でほぼ同じ程度。イギリスは1.5%。フランスが1.8%。ドイツは 名目で見ておりますので飛ばしまして、スウェーデン1.8%ということで、ヨーロッパ諸国は比 較的高めの1人当たりの賃金上昇率を見ている。北米諸国は、日本の平成16年再計算と同程度 ぐらいというような数値になっているところでございます。  それから、実質の運用利回り。この実質と申しますのは、物価上昇率を何%上回っているか、 名目から物価を差し引いたということでございますが、これで見ていただきますと、アメリカの 真ん中のケースで2.9%。カナダは4.1%。イギリスは基本的に賦課方式で、それほど積立金の 運用というのは重きが置かれていないんですが、一応、前提を置かれておりまして、これが3.5%。 スウェーデンが真ん中のケースで3.25%となっているところでございます。一方で、日本の場 合は真ん中のケースで2.2%ということで、諸外国よりもかなり低めの数字で設定されていると いう状況でございます。  一番下の欄「積立金運用方法」というところがございますが、イギリス、フランス、ドイツは 基本的にほぼ純粋な賦課方式に近いということで、特段、運用という形ではないのでございます が、カナダ、スウェーデンは債券、株式等市場運用を行っているということで、日本とほぼ同等 の運用方法ということになっているところでございます。一番左の欄のアメリカは、全額、非市 場性の国債・財務省証券に投資されているということで、市場に資金は出していないということ でございます。  続きまして、日本の経済前提の設定の参考に資するという意味では、積立金をかなりの規模、 持っていて、運用利回りが実質的に財政に影響を与えるような国ということで、アメリカとカナ ダとスウェーデン、この3か国につきまして財政の状況ですとか、あるいは経済前提の設定の考 え方というものにつきまして、できる限り調べてみたということで、まず資料2「アメリカの公 的年金(OASDI)の将来見通し」ということでございます。  OASDIは、御案内のように対象者としては被用者、サラリーマンですね、それから、年収 400ドル以上の自営業者ということで、非常に広範な範囲の国民をカバーしているということで ございまして、保険料率が被用者の場合は労使折半で、労6.2%、使6.2%、計12.4%。自営業者 はそれと同率を自ら負担するという仕組みになっているところでございます。  1枚おめくりいただきまして、給付の仕組みでございます。アメリカの場合は、社会保障税と いう名前でございますが、その拠出が個人ごとに記録されるという意味では、社会保険方式とい うことでございまして、保険料は保険料率12.4%ということで、完全な所得比例で保険料を取っ ているわけでございますが、給付の方はここに絵がございますように、低所得者ほど相対的に手 厚い乗率になっている、いわゆるベンド方式という方式になっておりまして、社会保険によりま して、所得再分配機能を持った年金制度を運営している。こういう仕組みになっているところで ございます。  3ページ「将来見通しの特徴」といたしましては、このOASDIという制度を管理いたしま す信託理事会が設置されておりまして、毎年、財政の現況と将来見通しというものが報告されて いるところでございます。  将来見通しにつきましては、長期75年間の見通しに加えまして、短期10年間の見通しが作成さ れております。短期10年間の見通しというのは、長期75年の足元10年間分とイコールなわけでご ざいますが、これはコストの低いケース、中ぐらいのケース、高いコストのケースと、3通りの 見通しが示されておるところでございます。以下、主として中位の前提についてお示しするとい うことで、資料を用意してございます。  次、4ページ。まず足元2006年の収支状況と短期10年間の見通しということでございます。 受給者、拠出者はここに掲げた数字のとおりでございますが、足元の財政状況ということで申し 上げますと、「収入」のところ7,449億ドルと、大部分はこの社会保障税で占められておりまし て、そのほかに利子収入があるということでございます。支出の方も大部分が給付費で占められ ているということでございますが、支出5,554億ドルに対しまして、社会保障税の収入が6,256 億ドルでございますので、社会保障税の税収だけですべての支出を賄えていると、こういう状況 になっているわけでございます。  下にございますように、10年間の見通し(中位の前提)でございますが、10年間毎年、支出 の1年分以上の積立金を保有しているということが求められるわけでございますが、この見通し の下では、2016年におきましても4.07年分を持つ見通しということで、短期10年間で見れば、 財政状況は非常に安定的であると見込まれているところでございます。  続きまして5ページでございます。一方で、長期(75年間)の見通しはどうかということで申 しますと、2番目のポツを見ていただきますと、そもそも社会保障税率の12.4%という数値は、 1983年の年金改革の時点におきまして、向こう75年間にわたって、財政のバランスが図られるよ うにということで算定されたものでございますが、その後、この率そのものが見直されていると いうことはございませんで、毎年この12.4%の社会保障税率でやっていくと、その将来の財政は どうなるかという見通しが作成されているということでございます。  中位の前提に基づきます見通しはその下に掲げてございますが、「2017年に支出が社会保障税 収等を上回る。」。「等」と書いておりますのは利息ということではなくて、この「等」は、年 金課税の分が、年金受給者に対する所得税の課税の分が国庫、一般会計から回ってくる。そうい う収入が入ってくるわけでございますが、そちらを込めたものを上回る。  これが上回りますとどうなるかと言いますと、まずは積立金の利息が給付に当てられるように なる。ただ、これは市場に積立金を運用しているわけではございませんので、一般会計から、言 わば積立金の利払いがなされるようになる。2017年までは年金会計が一般会計を助けるような姿 になっていたのが、逆に一般会計から利払いを受けるようになる。その後、2027年までは、利子 収入を含めて支出が賄える状況ということでございますが、その後は積立金の取崩しが続く。こ の取崩しというのも、実態としては取り崩す分の額を一般会計から入れるということになるわけ でございますが、最後、2041年には、その積立金が枯渇するということで、この時点以降、 12.4%の保険料率のままでいくといたしますと、左下のところにグラフが掲げられているわけで ございますが、その一番左下の四角囲いの「2041」のところで「75%」と小さい字で書いてござ います。「Payable benefits as percent of scheduled benefits」ということで、予定された 給付のうちの75%しか、この純賦課方式、12.4%の社会保障税率では賄えないと、こういう見込 みになっているというところでございます。  足元10年間は非常に財政が安定的であるにもかかわらず、今後、このような形で急速に財政 が悪化するというのは、ベビーブーム世代が年金受給者の中核を占めていくためだということで、 アメリカの場合は、ベビーブームというのが第2次世界大戦後、20年間ぐらいずっと出生率の 高い状態が続いておりまして、ベビーブーム世代というのが非常に長い、大きい集団を占めてい るということが、1つの特徴ということでございます。その後も死亡率の低下ということもあり まして、コストというものは長期的に見ればかなり増える見込みだと、こういう状況になってい るというところでございます。  次、6ページでございますが、年金財政を見るに当たりましては、75年後に支出の1年分の 積立金を保有する。こういうことで健全性を見ていくという考え方でございまして、前提には不 確実性が含まれるために、低コスト、高コストの前提の場合の見通しも示されているところでご ざいます。下の表を見ていただきますと、低コストのケースの場合は、75年後におきましても 積立金は支出の4年分以上を確保しているということで、低コストのケースは出生率という面か らいきましても、あと経済という面からいきましても、いい状況になっているという場合であれ ば、75年後も1年分以上の積立比率を維持しているということになるわけでございますが、中位 のケースあるいは高コストのケースですと、それより前に積立金が枯渇する。こういう見込みに なっているというところでございます。  7ページ「将来見通しの前提」ということで申しますと、前提としては人口の要素と経済の要 素があるわけでございますが、基本的な考え方としまして、前提の数値は過去の傾向、それから 将来の見込み等に基づいて設定されるということでございます。かつ最近の実績から設定された 最終的な数値に向けて、2ないし25年かけて近づいていくという形で設定されるわけでございま す。  下の欄に、具体的な中位の場合、ローコスト、コストの低い場合、それからハイコスト、コス トがかかる場合という見通しが示されているわけでございます。右の欄に日本語を書いてござい ますが、真ん中辺りの「Intermediate」と書いてある、これが中位の見通しということでござい ますが、合計特殊出生率で2.0ということで、日本と違いまして少子化というものが見込まれて いない。実際、出生率はかなり高いということがございまして、移民につきましても、「in thousands」ですから年間90万人。それから、生産性上昇率が年率で1.7%等々という数字になっ ているところでございます。  次の8ページ「経済的要素の前提と設定手法」ということで、代表的な例といたしまして、賃 金上昇率設定の考え方は、雇用者1人当たりの平均所得というものをGDPの実質の伸び率、こ れを労働生産性の上昇率と平均労働時間の上昇率等々に分解するという形で分解していきまして、 それぞれについての見込みを重ね合わせるということで将来を見ているわけでございます。  下の表を見ていただきますと「労働生産性上昇率」につきましては、過去40年間の平均に準拠 いたしまして1.7%と見ている。  「平均労働時間上昇率」でございますが、過去40年間の平均ではマイナス0.3%ということ で、いわゆる時短が進んできたということでございますが、最近はそれほどこの辺が進んでいな いということで、最近のデータから合理的と考えられる見込みということで、今後は、平均労働 時間というものは変化していかないという見込みで、中位の最終値は置かれているということで ございます。  次の欄「GDPに対する労働報酬割合上昇率」ということでございます。この労働報酬と申し ますのは、雇用者についてのいわゆる事業主負担でございます。医療保険でございますとか、あ るいは企業年金も含めました法定及び任意の事業主負担を含んだ、GDP統計で言いますと雇用 者報酬と呼ばれるものになるところでございますが、これにつきまして、過去、非常に安定的な、 つまり、基本的に労働分配率が変化しない状況が続いてきた。下の「特徴」のところにございま すように、GDPに対する労働報酬割合というものは過去50年間でほとんど変化がなく、過去 30年間では58%で安定している。この状況を踏まえまして、これは変化しないということを見 込んでいるということでございます。  次の労働報酬に対する所得の割合。この所得と申しますのは、雇用者に関しましてはその賃金、 自営業者に関しては、必要経費を控除した後の、いわゆる所得ということでございまして、事業 主負担は除いた自分の財布に入る所得ということでございます。こちらにつきましては、過去 40年間の平均がマイナス0.3%ということで、下の「特徴」のところにございますように、非課 税の医療給付という辺りの労働報酬に占める割合が徐々に大きくなってきている。今後につきま してもその傾向は続くだろうということで、中位の最終値におきましても、これが将来的にマイ ナス0.2%ということで、労働生産性の上昇率のうち、この0.2%分はそちらの方にまわる。こう いう見方になっているというところでございます。  一番右が「GDPデフレータ上昇率」でございまして、過去は4.1%でございますが、将来は それより低い数字の2.4%という数字になってございますが、一番下の欄外の※にございますよ うに、消費者物価上昇率の前提は2.8%ということでございまして、GDPデフレータの上昇率 と消費者物価上昇率の前提に、0.4%の乖離があるということでございます。  過去の実績を見ると、やはりそういう乖離があるということで、原因といたしましては、対象 とするものがGDPの場合は最終需要全部でございますが、消費者物価の場合は最終需要の3分 の2ぐらいを占める消費ということで、対象が少し違うということ。あるいは指数のつくり方と いたしまして、消費者物価指数の場合はいわゆるラスパイレス指数という、割合を固定するよう な形で計算しているのに対しまして、GDPデフレータはいわゆる連鎖式を使っているというよ うなつくり方の違いというようなことがございまして、ここのところで、将来の見通しにおいて も0.4%差があるというような形で見込まれている。  結果といたしまして、労働生産性の上昇率そのものは年率1.7%と見込まれているのでござい ますが、右から2段目の「労働報酬に対する所得割合上昇率」で△0.2%。あと、GDPデフレ ータと消費者物価上昇率の差が0.4%。0.2%足す0.4%で、都合0.6%分、労働生産性上昇率と 実質賃金上昇率との間に乖離が生ずるという見込みになっておりまして、労働生産性上昇率 1.7%に対しまして、右下にございます実質賃金上昇率は1.1%。こういう見込みになっていると いうのが、アメリカの状況でございます。  次の9ページ。その他の要素といたしましては、労働力率につきましては、増加率の方は、生 産年齢人口の増加率が低下するということを反映いたしまして、2016年のところまでですと年 率プラス0.8%でございますが、その後2021年までプラス0.4%。その後の期間は中位の見込み で0.3%ということで、伸びは低下していくんでございますが、将来に向けてずっとプラスとい うことで、労働力人口が減少するとは想定されていないという状況でございます。  それから、下の欄「GDP」でございます。実質GDPの成長率、こちらにつきましては雇用 者の伸び、生産性の伸び、労働時間の上昇率という形で分解されるわけでございますが、過去 40年間の実績で見ますと、年平均の上昇率3.2%。これは雇用者数の伸びの分がかなり大きいと いうことで、1.7%分を占めているというところでございますが、将来に向けてはこの伸びは鈍 化するということで、75年後の中位の場合、GDPの上昇率を実質GDP1.9%と予測している わけでございます。この3.2%が1.9%に下がったものの大きな要因は、雇用者数の伸びが0.3% にとどまっていることによるところでございます。  あと「利率」でございます。過去40年間の実質利率が年平均2.8%ということで、これを踏 まえたということでございますが、中位の場合の最終値は2.9%。CPIの上昇率が2.8%とい うことでございますので、名目の利率は5.7%。こういう見込みになっているところでございま す。  最後10ページでございますが、中位の場合の人口学的要素。合計特殊出生率は、ほぼ人口置 換水準でございます2.0ということでございます。あと流入から流出を差し引きました純移民数 が、年間で90万人ということを見込まれておりまして、アメリカの総人口3億人の約0.3%に 当たるという見込みになるところでございます。  ちなみに、日本の場合はおおむね総人口の0.05%程度のオーダーということでございますの で、1つオーダーが違うぐらいの規模の移民が見込まれているという状況でございます。  続きまして資料3をお開きいただきますと、「カナダの公的年金(CPP)の将来見通し」と いうことでございます。カナダの場合は、左側にあります「Old Age Security」が、いわゆる一 階部分の税方式の年金ということでございます。右側にございます「カナダ年金制度」が、二階 部分の社会保険による年金でございまして、保険料率が被用者9.9%、労使折半。自営業者は同 率を自ら負担するという仕組みになっているところでございます。  2ページ、二階建ての概念図というものが出てまいります。一階が税方式年金。二階が社会保 険による所得比例年金。アメリカと違って、ベンドポイントの仕組みにはなっておりません。  3ページ、CPPにおきましては、少なくとも3年に1度、数理レポートを作成して、年金財 政を再検証するということが義務づけられておりまして、将来見通しの推計期間は約75年間と なっているところでございます。  4ページ、これは制度の概要ということでございまして、社会保険による所得比例年金で、ほ ぼすべての給与所得者と自営業者等が加入ということでございまして、一番下にございますよう に、積立金はCPP Investment Boardという独立機関におきまして、債券、株式、不動産等に より運用されるということになってございます。  5ページ、足元の収支の実績でございますが、保険料収入の301億ドルに対しまして運用収入 130億ドルと、かなりの運用収入を上げているということで、支出は給付費で250億ドル。全体 で254億ドルでございますので、保険料収入で支出を上回っているような状況ということで、積 立金が増加していっているという状況でございます。  6ページ「財政方式」の考え方といたしまして、1998年にそれまでの賦課方式から部分的な 積立方式に移行するということで、現在、積立金が積み上がっていっている状況ということでご ざいます。  7ページ「将来見通し」でございますが、今後17年間で積立金は急激に増加する見込みとい うことで、積立度合につきましても、2021年には5.6へと上昇するという見込みでございます。 ただし、給付の方も増えてまいりますので、2021年までは保険料収入のみで支出を賄うことは できるわけでございますが、それ以降は運用収入も含めて、支出が賄えることになるということ でございまして、2050年の支出に占める運用収入の割合は29%ということで、運用というもの が非常に重要な役割を占めているという制度になっているということでございます。  8ページ、将来見通しの前提条件としての、まず人口学的要素でございます。「合計特殊出生 率」に関しましては、基本的に過去15年間の傾向が今後も続くという考え方に立っておりまし て、最終的な合計特殊出生率の見込みは、アメリカよりは低いですが、日本よりはかなり高い 1.60という数字になっているということでございます。  死亡率の改善も見込んでいるということでございまして、一番下の「国際人口移動」でござい ますが、2004年〜2015年の間は過去30年平均の数値を根拠といたしまして0.5%。アメリカが 0.3%と見込んでおりましたので、それよりも更に高い数字ということになっています。更に、 それ以降2020年まで労働力の不足によりまして、移民数の増加が見込まれるということで、徐々 に0.54%まで増加して、以後一定。こういう見込みを置いているということでございます。  9ページ、将来見通しの前提条件といたしまして、第2が経済的要素でございます。「労働力 率、失業率」につきましては、男性については足元値でほぼ一定ということでございますが、カ ナダも約20年分の世代がベビーブーマーとなっているわけでございます。この方々が引退した ときには労働力が不足するので、それを補うために労働力率が一定程度上昇するというような見 方、あるいは教育水準が上がることによりまして、長く働くようになって高齢者の労働力率が上 がる。このような効果を見込んでいるというところでございます。女性につきましては、男女差 が縮小すると設定しているということでございます。  また、失業率につきましても、労働力人口の減少が失業率の低下をもたらすという考え方で、 失業率の低下というものを見込んで、前提を置いているというところでございます。  「物価」につきましては、Bank of Canadaが設定をしておりますインフレターゲットが1〜 3%ということを根拠といたしまして、足元の前提は2.0%。ただ、2015年以降につきましては、 インフレ率が上がるだろうという見込みで2.7%という数値を置いている。これにつきましては、 労働力不足から生ずる賃金上昇の圧力が物価の上昇圧力をもたらす可能性、あるいはエネルギー コストの不確実性の問題等々が挙げられているところでございます。  10ページ「実質賃金上昇率」に関しましては、直近50年間の平均が1.2%だったということ で、それを根拠に今後1.2%で推移するということで、一応過去の傾向だけではなく、さまざま な長期経済見通し等を総合的に勘案して設定して、結局、この数値ということでございます。  あと「実質運用利回り」に関しましては、運用商品別の過去の実績平均、それから直近の運用 成績を基にして実質運用利回りを設定いたしまして、これにそれぞれの投資比率をかけ合わせる ことによりまして、全体の実質運用利回りを設定する。こういう手法で設定していると見ており ます。  次にスウェーデンで、資料4でございます。時間の関係もございますので、制度の概要は省略 いたしまして、2ページの絵だけで見ていただきますと、御案内のようにスウェーデン方式とい うことで所得比例年金、これは賦課方式部分、薄い線が入っておりますが、賦課方式部分を保険 料率で申しますと16%相当の部分。その上に乗っています所得比例年金の積立方式部分、これが 保険料率で2.5%相当分ということでございます。そのほかに左側にございます税財源での保証 年金というものが補足的に付いている。こういう形になっているということでございまして、 3ページを見ていただきますと、将来見通しにつきまして、いわゆるみなし拠出建てあるいは税 による保証年金の導入等、新たな年金制度が導入されました1999年の改正に伴いまして、2001 年から毎年公的年金についても、年次報告書が作成されておるところでございまして、そこでは 75年間の将来見通しが3つの前提に基づいて提示されるとともに、給付水準の調整が必要であ るかどうかを判断するために、ある種のバランスシートが作成されまして、均衡数値と呼ばれる ものが算出されると、こういう仕組みになってございます。  4ページ、バランスシートの具体的な姿ということでございます。右上の「バランスシート (2006年末)」という図を見ていただきますと、左側が「年金資産」となってございますが、積 立金はこのうちの0.858兆スウェーデンクローネとなっておりまして、大部分を占めていますの は保険料資産という名前の資産でございます。この保険料資産というものは1年分の保険料収入 に給付までの平均回収期間、これは現役の平均年齢と受給者の平均年齢の差という考え方で、要 するに1世代分の年数、約32年ぐらいということでございます。これをかけたものを保険料資 産と称して、賦課方式の制度の下での資産だととらえているということでございまして、スウェ ーデンはこういう形でバランスシートというもので見ておりますが、決して積立方式でやってい るということではなくて、むしろ賦課方式の下で向こう32年分の保険料を制度にとっての資産 と見て、拠出するのはこれからの加入者の方なんですが、この対比される年金債務のところには 当然過去期間の、既に受給者になられている方、あるいは今、被保険者でも過去加入しておられ た分に対応する債務というものが入ってまいりますので、これからの保険料を過去の債務に充て るという形で予定している。そういうバランスシートを置いているということになっているとこ ろでございます。  右側の「年金債務」。受給者というのは勿論過去でございますし「年金債務(受給者以外)」 につきましても、これは過去の加入期間に対応する年金債務ということで、将来期間の分は入っ ていないということでございます。これで剰余が0.1兆スウェーデンクローネということで、均 衡数値が1.0149と、剰余が出ることによって均衡数値が1以上になっている。こういう姿になっ ているということでございます。  5ページ、向こう75年間の将来見通しということで申しますと、こちらの下の図のように基 準ケース、楽観ケースでは、積立金の割合は増大していくということで、健全な財政の見込みに なっている。  一方で、一番下の悲観ケースの場合には、積立金はだんだん減ってまいりまして、点々で書い てありますものは、仮に自動均衡装置なかりせばどうなるかということで、これは積立金がどん どんマイナスになっていくという姿です。実線で書かれているものが、自動均衡装置が作動した 場合ということでございますが、それでも2050年の辺りで若干積立金はマイナスになるというこ とで、自動均衡装置というものが必ずしも積立金がマイナスにならないことを保証しているもの ではないというところでございます。  次のページ「経済的要素及び人口学的要素の前提」ということで、スウェーデンの場合、どう いう手法で設定したというはっきりした記述は、レポートに見つけられなかったんでございます が、一応、こういう形で説明されておりますので、過去の長期平均をにらんで設定しているので はないかと考えているところでございまして、実質の所得上昇率は1.8%。実質の運用利回り 3.25%と設定されている。出生率が1.85。移民が2.6ないし2.3万人。これはおおむね総人口の 0.2%程度に当たるということで、アメリカ、カナダより若干低く、日本よりは数倍高い程度と、 そのような見込みになっているというところでございます。  続きまして、資料5、こちらがEU委員会が行った高齢化関連支出の予測に関する2005年の レポートということでございますが、国によって総労働力人口の見通しがさまざまある中で、そ の違いを反映するような形で将来の年金の見通しを立てるということで、コブ−ダグラスの生産 関数を使うような手法をとっているということでございます。  1枚おめくりいただきまして「労働生産性とGDP」ということで、上にその検討の過程を書 いた箱囲いがございます。一番左の枠囲い「労働生産性上昇率は、将来的に1.75%に収束」と 書いておりますが、こちらの方は2001年、前回のレポートのとき、どういう手法をとったか。 括弧内の「経済的基礎はない」というように、言わばにらみでつくった。No firm economic basis for the assumptions employed となっておりますので、確固たる経済学的基礎はないとい うことでございます。  それに対しまして、今回2005年のレポートを作成する検討過程で、四角囲いの中にあります ように、かなり大がかりな均衡分析を行うような考え方、あるいは機械的に過去の傾向を外挿す るような考え方、単純なやり方から非常に複雑なやり方まで、いろいろ専門家の皆さんが集まっ て検討した末、やはり長期的に見ていくには、複雑な均衡分析を行うよりも、骨格的な経済の基 本的な関係を使って、コブ−ダグラスの生産関数を用いた将来の見込みというものが適切ではな いかという結論が出されたと、記述されているところでございまして、中段にございますように、 労働生産性の上昇率というものを、全要素生産性の上昇率と資本分配率かける労働者1人当たり の資本ストックの上昇率という形で整理する。これは日本の16年再計算におきます経済前提の 設定と、全く同じ理論的基礎を置いているというところでございます。  3ページ、一方で利率の前提につきましては、今回2005年のレポートの基準シナリオにおき ましては、実質利率が3.0%。要するに、物価プラス3%の利回りというものを仮定していると いうことでございます。これは前の2001年のレポートでは4.0%だったということでございま すが、下の図にございますように、最近やや運用利回りが低下してきているというので、実績か ら見て4はやや高いので、3ぐらいという見込みを立てて、3と置いていると書かれているとこ ろでございます。  以上が諸外国の状況でございまして、資料6に、一応参考までに平成16年再計算における経 済前提の設定を資料にまとめたものがございまして、さっとポイントだけ申し上げます。  1ページ「1.設定の基本的考え方」といたしまして、平成11年の財政再計算におきまして は、過去の実績の平均を基に、経済成長率の将来予測などを総合的に勘案して設定する。諸外国 で今、とられているような方法でやってきたわけでございますが、一方で、前回の財政再計算の 時期には足元の経済、非常に不調でございましたのと、将来労働力人口が上昇から減少に転じる ということが見込まれている状況の中で、過去の平均をそのまま伸ばすという手法はとり得ない のではないかという御議論の結果、長期的な経済前提につきましては、当然、過去の実績は基礎 とするわけでございますが、日本経済の潜在成長率の見通し、あるいは労働力人口の見通し等を 反映した、マクロ経済に関する一定の試算に基づいて設定するということにしたところでござい ます。  足元につきましては内閣府の試算に準拠するということでございます。  6ページまで飛んでいただきまして、その際の「(1)推計の枠組み」といたしましては、コ ブ−ダグラス型の生産関数を用いるということで、今回、EU委員会がとったのと同じような方 法をとっているということでございまして、全要素生産性の上昇率、資本分配率、資本減耗率、 総投資率といったパラメータを設定することによりまして、労働力人口1人当たりの実質GDP 成長率、これを1人当たりの実質賃金上昇率とみなすということ。一方で、日本経済全体として の利潤率というものを推計する。一番下にございますように、その際、1人当たりの労働時間は 変化しない。アメリカと同様の仮定を置いているというところでございます。  7ページ、そのパラメータの設定におきまして、1つキーになりますのが全要素生産性の上昇 率ということでございまして、これにつきましては、平成16年の改正では足元では非常に不況 の下でございましたが、平成13年の年次経済財政報告におきまして、構造改革の実行を前提と して、長期的には0.5ないし1%に高まることは十分可能と記述されていましたことを踏まえま して、基準ケースで0.7%、好転ケースで1%、悪化ケースで0.4%、こういうふうに置いたと ころでございます。  なお、足元の状況でございますが、その後、景気は急速に回復したということでございまして、 内閣府によりますと、2005年度のTFPの上昇率、全要素生産性の上昇率は0.9%ということで、 好転ケースに近いような数字になっているという状況と承知しておるところでございます。  資本分配率、資本減耗率は10年間の実績平均に準拠。総投資率に関しましては、低下傾向が ございますので、その傾向を外挿して設定したという状況になっているところでございます。  8ページ、結果といたしまして、これは中位の基準ケースでございますけれども、2032年度 までの間で見て、1人当たりの実質賃金上昇率は1.1ないし1.2%。これで中位値を取って切り 捨てることによりまして、財政再計算における中位の前提、実質賃金上昇率1.1%というのが設 定されているということでございます。この間、労働力人口は平均伸び率マイナス0.5%という ことでございますので、実質経済成長率は0.6ないし0.7%と見ていることに相当するというこ とでございます。  9ページ、更に「(3)予定運用利回りの設定」ということでございますが、基本的に過去の 長期の平均的な金利の利回り、これは10年国債を指標としてとっているわけでございますが、 こちらに準拠するわけでございますが、これをそのまま使うということではなくて、マクロ経済 の見込みによりまして、将来の利潤率の低下が見込まれている。これは全要素生産性の上昇率を 0.7と控え目に見積もったということも影響してきているわけでございます。  上の表の右から2段目「利潤率低下割合」約0.6前後の数値が載ってございますが、これの分 だけ過去の実績に比べて将来の実質の長期金利は低下する。こういう見込みにおきまして、過去 3%台に乗るような実質長期金利だったものに、この利潤率低下の見込みを勘案して、一番右の 欄にございますように「実質長期金利」は2%前後ぐらいの数字になると見込んで、そこに更に 株式等分散投資により追加的に得られる収益率の見込みを乗せるというような形で、比較的固め に将来の運用利回りというものは設定されている。これが日本の平成16年財政再計算のときの経 済前提の設定の概略というところでございます。  御説明は以上でございます。 ○米澤委員長 どうもありがとうございました。  それでは、たくさんの資料が配られましたけれども、この辺どこからでも結構ですので、御意 見、御質問等がありましたら、お受けしたいと思います。いかかでしょうか。  江口先生、どうぞ。 ○江口委員 では、口火を切るという意味で幾つか御質問と意見を申し上げます。1つは、資料 1にアメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、日本と並んでいますけれ ども、質問はまず、先ほど御説明がありましたように、フランス、ドイツは賦課方式で積立金が ないわけですから、ここで用いている賃金上昇率は何の賃金上昇率なのか、つまり、年金の積立 運用を前提にする賃金上昇率なのかどうかというのをお聞きしたい。ここでフランスの場合1.8 とか、ドイツで平均値で2.5とありますが、これは何なのか。国の経済見通しみたいなものを用 いているかどうかというのがわかれば、教えていただきたいのが1点目です。  もう一点は参考意見なのですが、今、御説明にもありましたけれども、実はアメリカ、カナダ、 イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、日本と並びますと、アメリカ、カナダ、イギリス というのは長期的に人口は増えていき、減らないのです。スウェーデンも、先ほどの資料にあり ますように増えていく。ドイツなどは減るのですが、しかしEU経済の中にあって経済圏が一体 になっている。労働力も来年ぐらいから自由に移動できるようになる。そう考えると、日本だけ が純粋に人口が減っていって、非常に悲観的なと言いますか、多分並んでいる国の中では日本が 最も危機的な状況にあるということです。  そういった意味では、実は先ほど、最後に人口減少が0.5%平均だというお話がありましたけ れども、日本の場合にはやはり人口減少の見込み、経済前提だけではなくて、人口減少をどう見 込むかということが、今回の試算にも大きな影響を与えるのではないかと思われるのですが、人 口についてはあくまでも平成18年12月推計を用いるという前提なのかどうかというのが確認です。  以上です。 ○米澤委員長 では、お願いします。 ○山崎数理課長 まず最初の御質問で、フランスとドイツの賃金上昇率ですね。こちらの方が、 年金の推計のためだけに用意されたものか。それとも、国の経済見通しのようなものを別に引い てきたのか。恐縮ですが、そこは十分調べがついておりませんので、その辺、また調べましてお 答えしたいと思います。  それから、アメリカ、カナダ、イギリス、スウェーデンといった国々は人口が増えている。フ ランス、ドイツはEUの経済圏ということで、経済圏全体で見れば、必ずしも人口が減少してい ない。日本はその点、人口減少がはっきり見込まれているので、諸外国と比べても、そこは事情 がかなり違うのではないかということでございまして、勿論、そういう要素は十分考慮しないと いけないわけでございまして、そういう意味では将来を見込むに当たりまして、過去の平均でそ のまま伸ばしていくという手法はなかなかとり得ないというのは、そういう意味からも、ほかの 諸外国はそういうやり方でやっていても、日本はそういうわけにはいかないだろうということで す。  そういうこともございまして、前回平成16年の改正では、むしろEU委員会がやっているよ うな方式に切り替えたということがございまして、当然のことながら、人口が減っていきますと、 GDPの全体というものは投入される労働力量が減るので、当然その影響を受けて減るわけです が、賃金上昇率等で見ます、言わば1人当たりの賃金上昇率、1人当たり値で見たときにどうか というところは、ここについてもなかなか難しい御議論があろうかと思います。人口が余りに減 りますと、いわゆる規模の経済というものがきかなくなる程度になってきますと、1人当たりベ ースで見ても、経済に悪い影響を与えるのではないかという見方もございます。  一方で、人口が減ってくると、少数精鋭と申しますか、資本装備率というのは上がりやすいと いう面もあるので、そこはむしろプラスになる部分もあるのではないかという見方もあろうかと 思いますので、人口が減少していく場合に、GDP全体の伸び率というのは明らかにマイナスの 方向の圧力は加わるわけでございますが、1人当たりと見たときには、必ずしもプラスにいく、 マイナスにいくというのが絶対的なものはないということで、基本的に中立と考えても、それほ どおかしくはないのかなと思っているところでございますが、この辺はむしろいろいろ御議論を 賜りたいと思います。  あと人口で何を使うかということで、平成18年12月に人口推計が出たということで、過去の例 に照らしますと、やはりこれはかなり重きを置いて、これの中位、あと高位、低位とございます ので、その下で財政がどうかということをお示しするのは、1つの基軸になろうかとは思います が、経済前提を考えるために、やはり1つの基本は中位推計の下で、更に労働力率をかましてい ってどうなるのかというところが、基本になろうかと思います。いずれ年金部会の席でも、平成 21年の財政検証に向かって、人口はそもそも何で見ていくのかという御議論は生じてくるのかと、 承知しているところでございます。 ○米澤委員長 よろしいですか。  では、樋口先生。 ○樋口委員 いろいろ勉強させていただきまして、ありがとうございました。  海外でどういうふうに置いているかということは非常に参考になりましたが、要はこれを知る ことによって、ここでの検討会において、前提の置き方を適切に行うことができるかどうかとい うようなところに、参考になるかどうかということだろうと思うんです。  そうしたときに海外の事例というのも重要ですが、過去の日本において、これまで行ってきた ものが、果たして正しい前提を置くことができたのかどうかというような評価も、非常に重要に なってくるだろう。  そうした場合に、例えば前回に限らず、前回ですと、まだ年数が余り経っていませんので食い 違いがあるかと思いますが、これまでこういうような前提をこういうことを想定して置きました ということ。  ところが、実際に見ると、10年間経ってみましたら、この点がこういうふうに違っていまし た。どの点が大きく見間違ってきたのか。あるいは正しかったのかというようなことを考えない と、その経験を今度、将来を見通すときに生かせないというようなことになってきますので、是 非、そこでの評価といったものを、過去についての評価といったものをしていく必要が、我々は あるのではないかと思います。それが、まず1点。  もう一つは、運用利回りがほかの国に比べて、相対的に今回も低めに想定していると思うんで すが、これは日本国内での運用とか国債の運用というような、いろんな前提を置いての話かなと 思うんですが、ここら辺をどう変えていくのか。あるいはそれはここでのマターではありません となるのか。増渕さんどう考えるのかも含めて御議論いただくと、今、中位で2.2%という実質 利回りを想定しているわけですね。ところが、ほかの国はもうかなり高めのものを想定している。 ここのところが、結局はかなり重要なポイントにも、人口と同時に入ってくると思いますので、 これをどう考えていったらいいんだろうか。  中には、国内で運用するにしても、例えば環境に優しい企業についての株で運用するべきだと か、社会的責任をちゃんと評価した運用を、公的な資金についてもやるべきだとかという議論も 出てきているわけで、こういうところをどう考えていくのかというのは、ここでの議論の対象に なるのかどうかということについても、教えていただければと思います。 ○米澤委員長 これも事務局にお願いします。 ○山崎数理課長 では、最初にまず第1点を事務局として答えさせていただきます。  まさに諸外国を見るだけではなくて、歴史に学ぶ、過去はどうだったかということに関しての 評価が必要というのは、おっしゃるとおりでございまして、そういう意味では、平成16年のこ れを設定いたします際にも、それまでのやり方が、割と近い過去の何年平均みたいなものを、そ のまま伸ばしていくというようなやり方でやってきたというところがございまして、そうします と、結局、経済自体循環もしてまいりますので、すぐに合わなくなる。  短期で合わないことは余り重要ではないんですが、長期で外してしまうおそれがあるのではな いか。将来に向けての状況が平均的に見て余り変わらなければ、かなり長期の平均を使うという ことであれば、長期的に見れば安定する。5年ぐらいではずれているかもしれないけれども、20 年、30年の平均としては合ってくるということが言えるわけでございまして、諸外国は基本的 にそういう考え方で、過去平均をにらみつつということでやっているのかと思うわけでございま すが、日本の場合、まさに人口の見通しの方も今はちょうど峠に差しかかって減っているという 状況で、なかなか過去を踏襲するやり方では、将来を予測することが、さほど説明力が十分では ないだろう。ある意味、そういう反省に立って、こういうやり方に変えたということでございま す。  そういう意味では、樋口先生のおっしゃったような論点をむしろ反映して、前回平成16年で こういうやり方に変えた。このやり方に変えたことによって、これでどうかというのは、これか らそれを検証していくということになろうかと思っているところでございます。 ○米澤委員長 では、お願いいたします。 ○板谷大臣官房参事官 運用利回りにつきましては、財政再計算の基本的な数値ということで、 この委員会で定めていただくことになりますけれども、具体的に、それを基にどういう資産構成 で、それからそれぞれの資産をどういう利回りでというようなことは、運用サイドの方で、これ は別に検討するところもございますので、そちらの方で決めるということになるんだと承知して おります。 ○米澤委員長 ただ、その際に運用利回りも、基礎的な数字はこちらの方で決めるという理解で いるんですけれども、それはそれで細かな海外をどのぐらい増やせとか、そういうような議論は ここではないと思いますけれども、基本的な考え方をここで決めると理解していますが、それで よろしいですか。 ○山崎数理課長 平成16年のときの経済前提の設定の方法は、まずは運用そのものが基本的に 債券中心だということから、債券の指標である10年国債がどのぐらいというものの見込みを行 いました。ただ、当時の議論といたしましては、全額国債で運用しろという議論もありましたし、 一方で、そのとき既に行われているような市場運用を入れていくべきだという意見もあった。そ の辺、ある程度、両にらみで分散投資を入れていった場合、どのぐらい利回りに上積みできるの か。それは、現実に既に運用しているものの実績というか見込みに基づいて、0.5%ぐらい上積 みができる。一方、全額国債であれば、もう国債そのものだということで、その辺の幅を持った 形で、将来の経済前提における利回りを置くということをやったわけでございます。  今回、平成21年の検証に向けて経済前提を考える場合には、基本的に市場運用だということ の下で、ただ、それをどのぐらいまでリスクをとって、どのぐらいまでのリターンを狙うかとい うところに関しましては、今のポートフォリオの下での見込みでございますとか、そういうもの が1つ出発点となりつつ、一応、それでどれだけの利回りを見ていくんだというのを、こちらの いわゆる制度サイドで決めたら、それを最小リスクで実現するということのためには、どういう アセットミックスでやるのかというのが、まさに運用サイドの義務ということで、まず最初のと ころで、どのぐらいの運用利回りというものを想定するのかというところは、制度側、こちらの 側で御議論いただいて決めていくということになろうかと存じます。 ○米澤委員長 では、増渕さんどうぞ。 ○増渕委員 幾つかあるんですが、1つは最初に江口先生が質問され、数理課長が答えられた部 分が、実は一番クルーシャルではないかと思っておるんです。と言いますのは、結局日本の人口 が相当なスピードで減っていく、労働力人口だけではなくて、総人口です。  その中で、恐らくGDPは移民等の考え方を変えない限り、GDP全体としてのGDPは減っ ていかざるを得ないのではないかと思うんですけれども、そのことと、例えば資料1に出ている 数字、2004年の財政再計算における日本の数値と諸外国を見ると、非常に日本はリーズナブル というか、モディストな数字のように見えますけれども、GDPが減っていくという経済の中を 前提に考えたときにどうなんだろう。GDPの成長率がマイナスというような世界の中で考える とどうなんだろうということが、一クルーシャルなのではないかと思います。それが1点です。  もう一つ、先ほどの運用利回りというのは、もしそのことを経済前提の中に取り込んで考える ことができるのであれば、非常に長い期間をとって公的年金のようなものの運用を考えるときに、 日本のような経済成長を展望しにくい国での資産に主力を置いて運用するというのは、非常にリ スクの大きい運用の仕方で、そうではなくて、成長する世界経済全体の成長の果実を享受できる ような運用の仕方を考えれば、運用利回りは、例えば近似値としてですが、世界経済全体の成長 率のようなものになっていくと思いますので、はるかに高い運用利回りを見込めるのではないか と思います。  ということで、プラスもマイナスもあり得るという話に、私の頭の中ではなるんですけれども、 今のような点が非常にクルーシャルではないかと考えています。 ○米澤委員長 私は同感です。  山口さん、どうぞ。 ○山口委員 私も運用の関係なんですけれども、先ほどのカナダの場合ほどではないと思うんで すけれども、我が国でもやはり積立金の運用というのは、今後、非常に大きな問題になるだろう と思います。年金はどのような財政方式をとった場合でも、その保険料の収入と積立金の運用に よって給付を賄うという、いわゆる極限方程式というものが成り立つわけですけれども、積立金 の運用が大きくなれば、その分、保険料の減少だとか、あるいは給付の改善と、マクロ経済スラ イドを若干緩めるといったようなこともできるようになるわけです。  先ほどの御説明の中でも最後の方に、分散投資によって0.5%ぐらい上乗せできるといったよ うなお話があったんですけれども、実は私は企業年金を主にやっているんですが、企業年金の世 界でもそうなんですけれども、いわゆる長期の運用利回りの予測と、それから資産配分計画とい うものは実は裏腹の関係がありまして、どちらが先に決まるかというのは何か鶏と卵みたいな感 じがあります。  今回の運用利回りの予測では、長期国債をベースにした運用で、その上に0.5%程度の分散効 果を織り込んでいるというお話ですが、これは現在の資産配分計画に近いものを、ある程度前提 にして議論しているわけですね。それでもって、長期の運用利回りを決めている。そして、今度 は、また長期の運用利回りをベースに、それを一番少ないリスクで、効率的に達成するためのポ ートフォリオはどのようにするのがよいのかというような話になるわけで、そういう意味では最 初からある程度、0.5%という分散効果の設定の中に、現在の資産構成に近いものが想定されて いるといったような要素があると思うんです。  そういう意味から先ほど来、お話がありましたように、積立金の運用が非常に重要であるとす るならば、現在のような、余りリスクをとらない運用を継続して、今後、市場性運用の比率がど んどん高まっていくわけですから、そういう流れの中で、これまでどおりのやり方で果たしてい いんだろうかといったような観点からの検証といったようなことも、一度、やはりきちっとやっ ておく必要があるのではないかなと、私は感じております。  そういう意味では、分散投資効果が0.5%の場合もあるでしょうし、それからリスク資産比率 を変更した場合には、分散投資効果はもう少し上がるといったようなケースも含めて、これにつ いても、やはり幾つかのケースを想定して、そして全体をにらんだ上で、運用利回りといったよ うなものをどういうふうなところに落ち着けるのがいいのかといった議論が必要だと思います。 勿論、リスクを高めれば、単にリターンが上がるというだけの単純な話ではなくて、やはり被保 険者と言いますか、国民の方々にも納得していただけるという要素も必要になる訳ですから、単 純にリターンを高めるという議論だけではだめだと思うんです。少なくとも、現在の資産配分だ けをベースにして考えるのではなくて、もう少し幅広く、この問題については議論すべきではな いかなと、私は感じております。 ○米澤委員長 私自身、余りそのことは、最初頭に置いていなかったんですけれども、多分、今 回の我々の作業ですと、今、言った問題はやはり避けて通れないと思います。やはりもともとは 今、ちょっと説明があったように、基本はリスクフリーで国債、国債はリスクがあるわけですけ れども、そこをベースとして少し取るというところで、そこは結構突破口だったんですね。でも、 今、いろんな諸国を振り返ってみますと、年金で資産と入れても、もう少し大胆に運用している ところも、ノルウェーとかございますので、もう一回そこのところを必要があれば、ゼロベース で見直したら、国民世論から見てできることとできないこともあるかと思いますけれども、そこ は少し検討してみる必要があるのかもしれませんね。  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 ○駒村委員 これらの国の中で、いわゆる有限均衡型というような発想をとっている国というの はスウェーデンですね。日本もそういう意味では有限均衡型という発想ですね。ほかの国はそう いう発想は特にとらずに、積立金が増えれば増えるほどいいという、どこかで期間のエンドを決 めてやっている考え方ではないということでよろしいかということ。  今のように、積立金の運用リスクを中長期的にとった場合に悪い状態が続いて、積立金がかな り傷ついたときに、5年の見直しのタイミングによっては、有限均衡の発想で給付を抑えなけれ ばいけないというようなことが出てくるのかどうなのか。これは考え方の整理なんですけれども、 その点です。  例えば、スウェーデンの場合を見ていると、運用成績にとてもいい年もありましたけれども、 とても悪い年もあって、こういう状態が続いた場合、積立金がかなり期待できない。予想より期 待できなかった場合、こういう自動安定のような機能が発動するのか。動き始めるのか。  日本の場合、運用リスクをどういう形で考えているのか。均衡期間に2つのタイプがあって、 全く考えていないタイプと考えているタイプがありますので、それが何か影響があるのかどうか。 この辺をお願いできますでしょうか。 ○山崎数理課長 それでは、お答えします。  まず、有限均衡かどうかということでございますが、アメリカの場合は75年間の財政均衡期 間の最後の年に、1年分積立金を持つようにしたいということで、日本はそれがおおむね100 年となっておりますが、そういう意味ではアメリカは明らかに有限均衡。ただ、現実にそうなる ようになっているのかといいますと、今の保険料と今の給付はそこが見合っていないということ でございますが、考え方としては、アメリカは有限均衡ということでございます。  スウェーデンの場合は期間を何年という定め方では必ずしもないんですが、バランスシートそ のものが、過去の加入期間に対応する年金債務を見ているということでございますので、そうい う意味では、今まで入った期間に対応する給付というのは、有限の期間で出終わってしまいます ので、何年という形ではないんですが有限の期間で払い終える債務を見ている。それに対して、 現在ある積立金と保険料を向こう32年分ぐらいの保険料ということで、均衡を見ているという ことになるわけでございますので、無限の将来までを見込んでいるということではないと言えよ うかと存じます。  それから運用の成績によりまして、給付にどういう影響が出てくるのかという辺り、スウェー デンでどうか、日本でどうかということでございますが、スウェーデンの場合、バランスシート で均衡数値が1を割ると、そこでスライドの調整がかかるということなんですけれども、年金資 産の中で、現実の実態積立金というものも何割かを占めているわけでございますので、そこは現 実の運用によって変動するわけでございます。  実際のところ、スウェーデンの均衡数値は1をわずかに上回るぐらいの数字でございますので、 スウェーデンのもともとの財政見込みでは、中位の見込みだと自動均衡装置はずっと発動されな いような見込みだったんですが、現実には、これがほとんど発動されるのではないかと危惧され た時期があったんです。幸い、最後、年末に締めたときに運用利回りがある程度よかったんで、 それを逃れたというようなことがございますが、現実の運用利回り、毎年年のものがどうなるか によりまして、それが落ち込んだときには給付のスライド調整がなされることがある。  ただ、スウェーデンの場合、1回調整がされても、その後、運用がよくなって戻ってくると、 それでへこんだ分を元に戻すというような規定がございますので、短期的に悪くなったときは一 時的に給付が抑えられても、それは後で取り戻すというものは付いてきている。  ただ、長期的にずっと下がっていった場合には、それは戻ってこないで、給付が抑制されて財 政の均衡は保たせると、そういう仕組みになるというわけでございます。  日本の場合で申しますと、スウェーデンのようなバランスシートの方式ではなくて、5年ごと に財政の現況と見通しというもので見ていくということ。あと、スウェーデンのように、非常事 態のときにスライドを調整するということではなくて、そもそも今、予定しております保険料の 引き上げの下では、現在の給付水準では、人口が減っていくのは見えておりますので、将来的に 財政は安定しないわけでございます。マクロ経済スライドで徐々に給付を調整していくというも のは、既にビルトインされているわけでございますが、これをどこまで続けて、どこでマクロス ライドの調整を止めたら、そこから先が安定するかということを、財政検証によって見込むとい うことになっているわけでございます。  したがいまして、運用が悪くて、現在、持っている積立金が思ったほど増えない、かつ将来の 見込みの上でも、それは余り運用が振るわないということで、結局、向こう100年の計算をした ときに、収入と支出が見合わないということでございますと、今の仕組みの下では、マクロ経済 スライドをもう少し延長するというようなことになる。  ただ、50%に5年以内に達するというようなことになりました場合には、そこのところで、ま た改めて制度改正について検討するという仕組みになっているところでございます。逆に運用が よくて、今、足元でかなり予定よりも多い積立金がたまっている、たまたま、今、そういう状況 になっているわけでございますが、かつ将来の見込みも今までよりも高い、一方で、人口の見込 みの方も変わってくるわけでございますので、そういうものを全部組み込みまして、向こう100 年間を見ていってどうかということを5年ごとに財政検証を行っていく。それによりまして、マ クロ経済スライドがいつぐらいまで延長していって、どのぐらいの給付水準で将来安定させられ るのかということを、5年ごとに見込んでいく。これが日本の方式ということでございます。 ○米澤委員長 ありがとうございます。  権丈委員、どうぞ。 ○権丈委員 カナダのところなんですけど、9ページ目で、物価が2004年〜2008年の前提は 2.0で、2015年以降は2.7%。その上昇の理由として「将来の労働力の不足から生じる実質賃金 の上昇圧力が、結果として物価の上昇圧力をもたらす可能性がある。」。2番目に「将来のエネ ルギーコストの不確実性」というのが書いてあります。こういういろんな将来に対する不確実性 を、我々はいろいろ考えなければいけないんですけれども、経済前提の中の物価上昇率、賃金上 昇率、運用利回りというのが試算するときに出てくる指数になるんですが、どこにエネルギーコ ストの不確実性などを反映させるのかというところで、このカナダの方式を、私は非常に面白い なと思ったんです。  将来のエネルギーコストの不確実性とか、わからないものをここに全部投げ込む、こういうの が結局試算の中でどういうふうに影響していくのかというところを教えていただければと思いま す。よろしくお願いいたします。 ○米澤委員長 わかりますか。 ○山崎数理課長 よろしいでしょうか。  「カナダの公的年金(CPP)の将来見通し」の1ページを見ていただきますと、「年金額の 改訂」というところが下から3段目にございまして、「カナダ年金制度」で見ていただきますと、 裁定時は平均賃金による再評価ということでございます。裁定後は物価スライドということです。  ただ長期的に見ますと、こういう仕組みの下でも、給付の全体は賃金の伸びに応じて伸びてい くわけでございますけれども、賃金と物価に差がございますと、それによりまして、収入の方は そもそも賃金で伸びていくという予測。裁定後は物価スライドという要素によりまして、その辺 に差があれば、それだけ財政というものは変わってくるという要素がございますので、将来を計 算する際には、やはり物価が幾らで、賃金が幾らというものを設定すれば、それはおのずと幾ら か変わってくる。一番基本になるのは、勿論賃金の上昇率でございますが、補助的には物価もど のぐらいというものもある程度は関係してくるということで、前提は置く必要がある。  その際に、カナダは、向こうの記述にあるものはそのまま書いてあるわけでございますが、不 確実であれば、それだけインフレ率が上がるのか。それを定量的に何%と見込むという部分はな かなか難しい話かなと思うわけでございます。  ある程度過去の状況を見て、要するに、過去このぐらい物価が安定していた時期は長く続かな かったではないか。もっと上がったではないかというような見方を、全体総合的に勘案してそう いうふうになっているということでございますが、一方で、つい最近までは世界的なデフレ、デ ィスインフレ傾向というものもあったりということで、ただ、最近は非常に資源の関係で物価が 上がり始めているとか、世界的な傾向がございますので、そういうものを将来の長期の見通しに どう織り込んでいくかというところは、やはり日本一国だけではなくて、ある程度世界を見渡し た視点が必要かと存じます。 ○米澤委員長 小塩先生、どうぞ。 ○小塩委員 済みません。今日、初めてですので、ピント外れのことを申し上げるかもしれない ですが、幾つか申し上げます。  今日は、諸外国の経済前提の試算の仕方を紹介していただいたんですけれども、それと比べて、 日本のやり方はどうかということなんですけれども、私の感じでは平均点をはるかに上回ってい るというように考えていいと思います。ほかの国から学ぶべきものがあるかと言われると、特に ないような気がいたします。  私も昔、こういう将来予測のことをやった経験があるんですけれども、余り方法を精緻にしな い方がいいです。というのは、精緻にすると外生変数がどんどん増えていくんです。予測をしよ うと思って精緻にするんだけれども、そのために更に予測をしなければならないというパラドッ クスに陥ってしまいますので、なるべく単純明快の方がいいと思います。  その場合、ポイントが2つありまして、1つはいろんな変数、予測の間の整合性を確保すると いうことです。これについては、今、日本でもベースにしていらっしゃるコブ−ダグラス型の生 産関数というのは、非常にロバストで使いやすいと思います。勿論、モデルはクローズドで、海 外とのやりとりを無視しているというような大きな問題点があるんですけれども、いろんな変数 を土俵に乗せる。そのためには、非常にいい仕掛けだと思います。  ただ、その場合、ほかの国の例を見て非常に感じるのは、いろんな変数の中で実質金利につい ては、リンク、整合性が確保されていないということです。EUの例も紹介していただきました けれども、フローチャートは先ほど見せていただいたんですけれども、そこでも金利については 別扱い。4%はちょっと高いので3%にしましょうと、非常にアドホックなやり方をしておりま す。  日本はどうかということなんですけれども、リンクを張ろうという努力をなさっているのはよ くわかります。過去の利潤率と関連づけるという工夫をなさっていると、非常に興味深いことな んですけれども、ここはもう少しエラボレートする余地があるのではないかと思います。先ほど 来、いろいろ議論が出ていますけれども、積立金からの運用利回りというのは毎年ばかにならな いようなレベルですので、ここはもう少し議論の余地ありと思います。それが1つです。  もう一つは、将来のことなのでわからないので、むしろ正確に当てるということをあきらめて しまって、リスク管理に力を入れた方がいいと思うんです。人口の予測が上に外れるか、下に外 れるか知らないです。それから、金利もどちらに外れるかわからないんですけれども、どこまで 外れても今の制度はロバスト、維持できるかというのを逆に計算するという、そういうアプロー チもメインのシナリオを設定するのと同時に、力を入れてやるべきだろうと思うんです。  例えば人口を見た場合、合計特殊出生率が1を下回ったら、今の制度はもうアウトですとか、 金利がここまで下がったらもう運用できませんとか、そういうのをはっきりとさせるような仕組 みを、試算上ちゃんとつくっておいて、そこで今の制度のロバストネスをチェックする、あるい はセンシティビティーをチェックするという、そういう方法もあっていいのではないかと思いま す。  以上です。 ○米澤委員長 今のは極めてごもっともで、承っておけばいいのかな。  特に前半に関しましては御指摘のとおり、日本国内で運用するということを主たる対象として いますので、どうしても国内の金利、国内の利潤率というところで、多分引っ張られているんだ と思います。そこのところをもう少し考え方を変えると、少し違ったような推計の方法も出てく るのではないかなと思っております。  それから、後者は極めてそうで、そうなんですけれども足元の数字が一時的なのかパーマメン トなのか。人口の出生率もちょっと上がったんで、これが一時的なのかどうか。それから収益に 関してはもっと振れるので、そこのところはなかなか難しいのは難しいんですけれども、先ほど の駒村先生がおっしゃったように、どうなるのかということも含めて、やはりその分、対応をき ちっとしておく必要がありますので、加えてポリティカルリスクもたくさんありそうですので、 大変かなと思っています。  この問題は、前回の3月のときにも意見が出れば幾らでも出てくるような話題でございますの で、とりあえず今日はこの辺で、我々がレクチャーを受けたということで、次回以降に反映させ たいということでよろしいでしょうか。  では、短めにどうぞ。 ○権丈委員 私、小塩先生の御意見にごもっとも、第2番目の「正確に当てることはあきらめて、 リスク管理に力を入れた方がいい」というのは特にごもっともと思っております。  5年に1回の財政検証における試算は将来のことを当てるのが目的ではなくて、先ほどのマク ロ経済スライドのところの話もありましたように、5年に1回見直していく予測なんです。たと えば、少子化対策を今のうちにしっかりとやっておかないと将来の給付水準はここまで落ちるぞ というようなことを、将来のために今できることを判断するために、5年に1回見直していく推 計なんだということを考えていけば、どの辺りのところが妥当な前提になっていくかというのは、 おのずと出てくるのではないかと思います。  将来のことを当てるとか、そういう話ではこれから先、我々には重過ぎますので、将来のため にやらなければいけないことを今、どれだけやるかということを見定めるためにやる推計なんだ けれども、これは5年に1回見直していく推計なんです。その辺りのところを、まず前提に置い て考えていただければと思います。 ○米澤委員長 多少、肩の荷が下りると言いますか、ありがとうございます。 ○樋口委員 前の点なんですが、コブ−ダグラスを置くというのは、ほかの国では労働分配率が 一定の値を、景気に左右されないというようなことで、アメリカ辺りでもいいんだろうと思いま すし、EUでも彼らの国は妥当だと思うんですけれども、日本は、これは景気に物すごく分配率 は依存するわけです。  そうしたときに、コブ−ダグラスのスペシフィケーションというのは、果たしていいのかどう かというのは議論の余地があるだろう。扱いやすいのは間違いなく扱いやすいんです。ただ、5 年という形で見ると、どの年を取るかで全く違ってしまうという可能性がありますので、そこは 検討していただきたいと思います。 ○米澤委員長 それから、分配といっても長期的に、中国がとかとなると、全く話が違ってくる ので、要素価格均等化の話がありますので、ややこしい問題ですね。  よろしいでしょうか。それでは、もう一つの今日のテーマ「労働力人口の見通し」についてで す。これも事務局の方から説明をお願いしたいと思います。 ○弓場数理調整管理官 それでは、お手元の資料7「労働力人口の見通し」でございます。  厚生年金、国民年金の財政検証、従来の財政再計算ですけれども、ここで年金財政の将来見通 しを作成いたします上で、被保険者数の将来見通しというものが基軸になってまいります。そし て、この被保険者数の将来見通しを立てる上でベースとなりますのが、労働力人口の将来見通し ということでございます。また、先ほどの経済前提の設定にあたりましても、労働力人口の見通 しが関係してくると、こういう状況でございます。  そういうことでございますけれども、一昨日、今週の火曜日の12月25日に、雇用政策研究会か らある報告書が公表されました。その研究会の報告書自体は、本格的な人口減少への対応といた しまして、すべての人々が能力を発揮し、安心して働き、安定した生活ができる社会の実現とい うことにつきまして、とりまとめられたということでございますけれども、資料の2枚目にござ いますように、その中におきまして、若者、女性、高齢者、障害者など、すべての人々が意欲と 能力に応じて働くことのできる環境が整った場合の労働力人口の将来見通しが示されております。  それはどういうものかと申しますと、資料の2枚目の青字の部分にございますように、まず、 ベースとなる人口推計は、将来的に、より人口減少や少子高齢化が進行する平成18年12月の 人口推計ということでして、その上で、労働力率が今後2006年と同じ水準で推移したとした場 合には労働力人口は2006年と比較しまして、2017年では約440万人の減、2030年では約1,070 万人の減と見通されているところ、高齢者、女性、若者への就業支援といった各種施策が講じら れた場合には、先ほどの数字が2017年では約100万人の減、2030年では約480万人の減に抑 えられることになるという内容の将来見通しが示されているということでございます。  そういう状況でございますけれども、この報告書は先ほど申しましたように、もっと大きなテ ーマを扱っているわけでございまして、報告書の中の労働力人口の見通しの部分につきましては、 その考え方、より具体的な推計方法、あるいは詳細な推計結果というものが労働政策研究・研修 機構の報告書という形で、近々とりまとめられるということのようですので、それができ上がり ましたところで、内容をこちらでもよく分析させていただきますとともに、この委員会におきま して報告をさせていただきたい、その上で、厚生年金、国民年金の財政検証におきまして、どう いった労働力人口の見通しをベースにすべきなのかということを議論させていただければと考 えております。本日は、このような見通しが公表されたということの御報告ということでござい ます。  以上でございます。 ○米澤委員長 どうもありがとうございます。  これに関して、関係者である樋口先生と小塩先生は、この段階で何かつけ加えることはござい ますか。 ○樋口委員 私が主査をしていたのであれなんですが、どういうふうに言ったらいいか。私より 小塩さんの方がいいかもしれませんが、人口を見ますと、2017年というのはこれから10年ちょ っということで、もう人口については確定しているわけです。2017年で15歳以上というのがあ れですから、既に5歳になっている人たちを考えているわけで、人口についてはもう確定してい る数値。予想による外れというのは、まず考える必要はないだろう。  要は、各年齢層における労働力率がどうなるかということで、現在の各年齢層における労働力 率をそのまま維持したとするならばどうなるかというのが、労働市場への参加が進まないケース というようなことで、それに政策がどれだけ上乗せすることができるかということで、2本のも のを用意しているわけです。やはりかなり差があるんです。440万と100万の検証ということで すから、政策の取り方によっては340万ほど増加させることができるということでありますので、 ここでこの見通しを使うときに、どういうような政策が取られるかということを想定しないと、 これをそのままの数字では使えませんよということだけは、申し上げておいた方がいいのではな いかと思います。 ○米澤委員長 どういうふうにしたらいいか、状況はよくわかりました。この段階で何か御意見 はよろしいですか。これは、もう一度議論させていただくということで、今、言ったようなリマ ークすべき点があるということを、テイクノートさせていただきたいと思います。  それでは、今日予定していたものは以上でございます。時間も限られておりますが、これ以外 の点で何か是非付け加えたいという点はありますか。よろしいですか。  それでは、どうもありがとうございました。予定の時間にもなりましたので、本日の審議を終 了したいと思います。  次回の日程につきましては、追って事務局より連絡するということで、今日はこれでよろしい ですね。終わりということにしたいと思います。どうも御苦労様。ありがとうございました。 ○渡邉局長 年末押し迫ったところ、本当にありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省年金局数理課 03−5253−1111(内線3355)