07/12/26 社会保障審議会 第1回少子化対策特別部会議事録 第1回少子化対策特別部会 議事録 日時:2007年12月26日(水) 14:00〜16:02 場所:経済産業省別館1020号会議室 出席者:  委員   大日向部会長、飯泉委員、岩村委員、内海委員、大石委員、小島委員、清原委員、   庄司委員、杉山委員、福島委員、宮島委員、吉田委員  事務局   大谷雇用均等・児童家庭局長、村木審議官、高倉雇用均等・児童家庭局総務課長、   小林虐待防止対策室長、朝川少子化対策企画室長、定塚職業家庭両立課長、   藤井家庭福祉課長、義本保育課長 議事次第:  1. 部会長選出及び部会長代理指名  2. 少子化対策特別部会の設置について  3. 「子どもと家族を応援する日本」重点戦略等について  4. 次世代育成支援に関する先行して取り組むべき制度的課題について 資料:  資料1-1 社会保障審議会少子化対策特別部会について  資料1-2 社会保障審議会関係法令  資料1-3 社会保障審議会少子化対策特別部会 委員名簿  資料2-1 「子どもと家族を応援する日本」重点戦略のポイント  資料2-2 「子どもと家族を応援する日本」重点戦略  資料2-3 「社会的養護体制の現状と今後の見直しの方向性」  資料2-4 社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会報告書  資料2-5 平成20年度少子化対策予算関係資料  資料2-6 平成20年度税制改正関係資料  資料3-1 次世代育成支援に関する先行して取り組むべき制度的課題について  資料3-2 次世代育成支援に関する先行して取り組むべき制度的課題について(参考資料) 議事: ○朝川少子化対策企画室長  時間になりました。それでは開会します。私は少子化対策企画室長をしています朝川です。 部会長選出までの間、議事の進行を務めさせていただきます。よろしくお願いします。議事に 先立ちまして雇用均等・児童家庭局長の大谷よりごあいさつ申し上げます。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長  会の冒頭に一言ごあいさつを申し上げます。年末のこのような押し迫った時期にお集まりい ただき大変心苦しく思っていますが、差し迫った話題だということでぜひお許しいただきたい と思います。  現在わが国においては急速に少子化が進行し、平成18年の合計特殊出生率が1.32。これは 国際的に見ても非常に低い水準であり、また昨年末に公表されました人口推計でも2055年の中 位推計による合計特殊出生率は1.26とされていることなど、今後より急速な少子・高齢化の進 行が見込まれます。こうした少子化の流れを変えるための取り組みに関しては、本年の2月か ら内閣官房長官の下に設置されました「『子どもと家族を応援する日本』重点戦略検討会議」と いう会議において検討が進められ、去る12月18日に重点戦略の取りまとめが行われました。 またそれと同じ日に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」憲章と「仕事と生活の 調和推進のための行動指針」というものも、労使・自治体のトップに入っていただいた会議で 決定され、そのトップの署名式の後、内閣総理大臣に直接手渡されたわけであります。  本日お集まりいただいているこの少子化対策特別部会は、この重点戦略の取りまとめを受け て、具体的な制度改革についての議論を行っていただくべく設置をさせていただきました。重 点戦略で示された問題は2点あります。詳しくは後ほど事務局からご説明申し上げますけれど も、その第1の点は国それから地方・事業主・個人の負担の組み合わせによって支える包括的 な次世代育成支援のための具体的な制度設計の検討について、直ちに着手の上、税制改革の動 向を踏まえつつ速やかに進めるという一つのポイントがあります。  それから第2のポイントは今申しましたポイントと並行して、子育て支援サービスの基盤整 備や、地域・事業主の取り組み促進等に係る課題について、平成20年度において先行して実施 するという二つの問題設定があります。  この社会保障審議会の少子化対策特別部会では、地方自治体関係者や労使関係者にもご参画 いただき設置させていただきましたが、地方の問題あるいは労使の問題も視野に入れながら、 働き方の見直しも含めた幅広い少子化対策について検討いただくという観点から、こういった 特別部会の形になったと考えています。よろしくご審議賜りたいと思います。  委員の皆様方におかれましては、非常に短い時間でお願いするテーマもあるだろうと思いま すけれども、ぜひ精力的なご審議をお願い申し上げる次第です。どうぞよろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  続いて、委員の皆様方のご紹介をさせていただきたいと思います。資料1-3として名簿を添 付させていただきましたのでご参照いただければと思います。五十音順にご紹介させていただ きます。  まず本日は遅れてお見えになる予定ですが、徳島県の飯泉嘉門知事に委員のご就任をお願い しています。  また本日はご欠席ですが、東北福祉大学の岩渕勝好教授に委員のご就任をお願いしています。  岩村正彦委員です。東京大学大学院法学政治学研究科の教授でいらっしゃいます。  内海裕美委員です。吉村小児科院長でいらっしゃいます。  次は大石亜希子委員です。千葉大学法経学部准教授でいらっしゃいます。  大日向雅美委員です。恵泉女学園大学大学院教授でいらっしゃいます。  小島茂委員です。日本労働組合総連合会総合政策局長でいらっしゃいます。  清原慶子委員です。三鷹市長でいらっしゃいます。 ○清原委員  皆様、こんにちは。よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  また本日はご欠席ですが、慶應義塾大学経済学部の駒村康平教授、東京大学社会科学部研究 所教授の佐藤博樹教授にも委員のご就任をお願いしています。  庄司洋子委員です。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授でいらっしゃいます。  杉山千佳委員です。有限会社セレーノ代表取締役でいらっしゃいます。  福島伸一委員です。日本経済団体連合会少子化対策委員会企画部会長でいらっしゃいます。 ○福島委員  どうぞよろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  宮島香澄委員です。日本テレビ報道局記者でいらっしゃいます。  また本日はご欠席ですが、大阪市立大学生活科学部の山縣文治教授、福岡県添田町の山本文 男町長にも委員のご就任をお願いしています。  最後に吉田正幸委員です。有限会社遊育代表取締役でいらっしゃいます。  委員の皆様方の辞令については、大変恐縮ながらお手元の封筒に入れさせていただきました ので、お納めいただきますようお願い申し上げます。  続いて事務局の紹介をさせていただきます。雇用均等・児童家庭局長の大谷泰夫です。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長  大谷です。よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  審議官の村木厚子です。 ○村木審議官  よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  総務課長の高倉信行です。 ○高倉雇用均等・児童家庭局総務課長  よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  職業家庭両立課長の定塚由美子です。 ○定塚職業家庭両立課長  よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  家庭福祉課長の藤井康弘です。 ○藤井家庭福祉課長  よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  保育課長の義本博司です。 ○義本保育課長  よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  母子保健課長の千村浩はただ今遅れて参ります。  虐待防止対策室長の小林洋子でございます。 ○小林虐待防止対策室長  よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  よろしくお願い申し上げます。  続いて資料の確認をさせていただきます。まず議題1〜2の関係で資料1-1から1-3まで。議 題3の関係で資料2-1から2-6まで6種類の資料を用意させていただきました。最後の議題と して資料3-1と3-2ということで2種類の資料を用意してあります。以上、お手元にあります でしょうか。よろしいでしょうか。  それでは議事に入らせていただきます。初めに議題1の部会長の選出です。社会保障審議会 令の第六条第3項において、部会長は当該部会に属します社会保障審議会の委員の互選により 選出させることとされています。本特別部会には社会保障審議会の委員として大日向委員、庄 司委員、山本委員の3名がいらっしゃいますが、あらかじめこの3名の委員の方々にご相談さ せていただいた結果、大日向委員に部会長をお願いするという結論に達していますので、本特 別部会の会長は大日向委員にお願いしたいと思います。それでは大日向委員に部会長席へのご 移動をお願いします。 ○大日向部会長  それではあらためて、大日向と申します。よろしくお願いします。  先ほど大谷雇用均等・児童家庭局長からのお言葉にもありましたが、この部会は先般取りま とめられました重点戦略を受けて、具体的な制度設計の検討、そして平成20年度において先行 して実施すべき課題の検討という大変重要な役割が課せられています。委員の皆さまのご協力 を得て、迅速かつ慎重で深いご議論をいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いし ます。それでは、ここから座らせていただきます。  早速ですが、引き続き議題1の部会長代理指名に移らせていただきたいと思います。社会保 障審議会令第六条第5項では、部会長はあらかじめ部会長代理を指名するということとなって います。本日はご欠席ですが、次世代育成支援に大変知見の深い岩渕委員にお願いしたいと思 い、岩渕委員からもご快諾をいただいていますので、そうさせていただきたいと思います。よ ろしくお願いします。  また委員の皆さまがご欠席される際に、代わりに出席される方の取扱いをお諮りしておきた いと思います。社会保障審議会運用規則第十条において、各部会の運用に必要な事項は、同規 則に定める他は部会長が定めることとされています。本部会としては、委員の皆さま方がご欠 席される際に代わりの方にご出席いただく場合は、事前に部会長の了解を得た上で当日部会に おいて承認を得ることにより、参考人として議論にご参加いただくということを例外的に認め るという取扱いにしたいと思います。参考人として意見を述べていただくことを認めますが、 定足数には算入せず議決権はないという取扱いにしたいと思います。以上のような取扱いでよ ろしいでしょうか。ありがとうございます。そうさせていただきます。  それでは引き続き、議題2の「少子化対策特別部会の設置について」に入らせていただきま す。事務局より資料のご説明をお願いします。 ○高倉雇用均等・児童家庭局総務課長  それでは事務局から説明します。資料1-1をご覧いただきたいと思います。社会保障審議会 の当少子化対策特別部会について「設置趣旨」と「審議事項・スケジュール」をまとめたもの です。この「1設置趣旨」については、先ほど大谷雇用均等・児童家庭局長あるいは大日向部 会長のごあいさつの中でも既に触れられていますので、繰り返しは避けますけれども、2番目 の並びにありますように、今般取りまとめられた重点戦略において、ここの(1)と(2)の記載の 通り、二つの課題が示されたわけです。これらをご審議いただくために本部会を設置すること としました。  「2審議事項・スケジュール」の関係は、本部会においては概ね以下のようなスケジュール で進めていきたいと考えています。まず本日を含めて本年末〜来年初と書いてありますが、上 の(1)と(2)のうちの「先行して実施すべき」という(2)のことです。平成20年度において先行 して実施すべき課題について、次期通常国会へ所要の法案を提出することを念頭に置いて、法 律改正事項を中心に検討を進めていくということに沿ってお願いしたいと思っています。その 具体的な内容については、また後ほど議題4の中で説明させていただきますけれども、1点だ け付言しますと、本日後ほど議題3の中で参考のための報告予定の案件として、社会的養護に 関する課題があります。この課題については、社会保障審議会の従来から設置されている児童 部会の下に専門委員会が設けられ、別途検討されてきましたので、本特別部会で重ねての検討 は予定していないということです。  次に二つ目の、最後に書いてある部分ですけれども、この先行して実施すべき課題の検討終 了後速やかにということですが、包括的な次世代育成支援のための具体的な制度設計の検討に 着手していく。また税制改革の動向も踏まえつつ速やかに進めていくという考え方・スケジュ ールで議論を進めていこうと考えているところです。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。ただ今のご説明について、ご質問やご意見はありますか。よろし いでしょうか。それでは続いて議題3の「『子どもと家族を応援する日本』重点戦略等について」 と、議題4の「次世代育成支援に関する先行して取り組むべき制度的課題について」の二つに ついて、併せて議論に移らせていただきます。また事務局から資料の説明をお願いします。 ○高倉雇用均等・児童家庭局総務課長  ありがとうございます。それでは資料2-1をメインに重点戦略についてまず説明し、順次そ の後の資料についても説明します。やや議題3にかぶるということで、今一括で資料の説明と いうことですので、合計すると少し長めになるのではないかと思いますが、ご了承いただきた いと思います。  まず重点戦略です。本体をこの資料2-2、この厚めの資料ですが、ここに入れさせていただ いています。この中にいろいろと入っています。例えば重点戦略検討会議については、この厚 い冊子の18ページにあります。官房長官が筆頭ということで、関係大臣、また本日の特別部会 にも参画いただきました委員の方々も含めて、有識者の方々の重点戦略会議というものがあり ました。そして、これが去る18日、先週の火曜日の朝早く、総理臨席の下で最終的な取りまと めに至ったということで、お手元に配布の資料が了承されたということです。これについては、 さらに会議自体で決めただけではなくて、国の幅広い関係閣僚からなる少子化社会対策会議に おいて正式な政府の文書として決定するということで、現在手続きを進めているところです。 年内にさらに正式な、政府としての文書とするという予定ですが、内容はこの通りで確定して います。ポイントについては時間の関係で、資料2-1で内容の紹介をします。  まず大きな1番目は「重点戦略策定の視点」です。一つ目の○にありますように、これは今 後の労働力人口が急速に減少していくことが予想される一方で、国民の多くの方々の希望を伺 うと、結婚・出産・子育てについて大きな希望がある。しかしながら現実にはそのようになっ ていないという希望と現実との乖離(かいり)があり、かつそれが拡大している。  しかしながら次の○で、人口減少下で持続的に経済発展の基盤として必要なことは何かとい うと、二つ同時に達成すること。一つには若者や女性、高齢者の労働市場参加を実現すること。 もう一つは国民の希望する結婚や出産・子育てを実現することの同時達成が必要であると。そ のための鍵としては、現状はなかなか同時達成できず、就労を取るか、それとも結婚・出産・ 子育てを取るか。女性が置かれている状況の中では、二者択一構造になっていることを解決し ていかなければいけないという視点です。そのための方法論として上の方に書いてある二つの ことを、いわば車の両輪として速やかに軌道に乗せていきたい。一つは働き方の改革によって、 仕事と生活の調和を実現するということです。もう一つは右にありますが、そのような社会と なった場合に、それを支えるためのさまざまな社会的な基盤が必要で、それを構築していこう という二つです。  一つ目の仕事と生活の調和の実現の関係を、1ページ目の下のIIで書いています。これは冒 頭にありましたが、この仕事と生活の調和に関しては「子どもと家族を応援する日本」重点戦 略会議の外に官民トップ会議を設けて、そこで労使を含めて、また実際も含めて決めましたが、 その憲章により行動指針を作ったということです。これを重点戦略の中にも一つの大きな柱と いうことで位置付けて、少子化対策の視点からも整理しているというものです。具体的な憲章 と行動指針のポイントとしては、まず仕事と生活の調和が実現した社会の姿をきちんと整理し ましたというもので、大きく三つに分けてあります。  一つは「就労による経済的自立が可能な社会」であること。二つ目には「健康で豊かな生活 のための時間が確保できる社会」であること。そして三つ目に多様な働き方・生き方が選択で きる社会」であること。こういったことが目指す姿であるということを整理した上で、いろい ろと抽象的なことだけではいけないということで、それぞれの分野に関して具体的な、社会全 体の目標をできるだけ数値で具体的に作るという考え方から、ここに代表例で書かれているよ うな事項を含めて、幾つかの指標を抽出して目標設定をしたところです。  基本的な考え方としては、左端の例の就業率のところで申しますと、現在女性の方々の就業 率は64.9%ですが、10年後までには7割前後のところを目指そうということです。また中ほど の時間の確保の関係では、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を半減していこう。また年次 有給休暇の取得については完全取得を目指す。右端のところでは第1子出産前後の女性の継続 就業率38%ですが、これはそういった女性の方々の意識調査をすると、実は希望としては継続 したいという方々が相当数いらして、それらの方々すべての希望を実現した場合の数字として 55%を目指そうという目標を設定しています。また育児休暇の取得率あるいは男性の育児・家 事関連時間等についても、具体的な目標を設定しています。こういった目標数値を定めて、こ れがどこまでどう進んでいるかを順次把握・評価しながら政策に反映させ、実現を図るという もので、それを実現していく上では企業と働くその者、また国や地方公共団体のそれぞれの役 割があるということで、その役割についても整理して掲げているというものです。  2ページ目、次のもう一つの大きな柱として、そういう仕事と生活の調和が実現していった 場合に、これを支えるための社会的基盤として給付やサービスを充実していく必要あります。 それについて、大きく三つの分野に分けて、こういう考え方で新しい枠組みを構築していくべ きであるという整理になっています。  まず一つは「親の就労と子どもの育成の両立を支える支援」ということです。この考え方と して、就業希望者を育児休業と保育のところを切れ目無くつないでいける、カバーできる体制 や仕組みを作っていくべきであるということ。そのためには、それぞれの制度の弾力化を進め ていく必要があるということ。そして、またそういった乳児の段階だけではなくて、保育所か ら小学校に上がる時点での、放課後児童クラブへの切れ目無い移行が可能となるようにしてい くべきであるという考え方です。  2番目と3番目は、就労との両立というよりは、親が就労しているかいないかにかかわらず、 すべての子どもの健やかな育成を支えていこうというもので、対個人給付・サービスといった ようなものを書いています。特に一時預かりのニーズが高まっている中で、これをすべての子 どもの家庭に対するサービスとして構築していくべきであるという考えを示されています。ま た経済的支援の実施も掲げられています。3番目に整理しましたが、すべての子どもの育成で 社会のインフラ・基盤となるような取り組みを整備していく必要があるということで、具体的 には妊婦健診などについて望ましい受診回数の確保のための支援を充実すべきであること。ま た次の○にあるように、各種の地域の子育て支援を面的に展開していくこと。安全・安心な放 課後の子どもの居場所を設置していくこと。そして家庭的な環境における養護の充実なども整 備していくべきだということが掲げられています。  次にそういったサービス給付を充実していく上では、どうしても財政投入の増が必要になる ということで、その部分について具体的な試算を行ったということもこの重点戦略の特徴です。 具体的には中ほどの段ですが、19年度の時点で児童・家族関連の社会支出額が、これは国・地 方公共団体の公費プラス企業・個人の保険料などの総計ですが、約4兆3,300億円という数字 です。これは途中で少し触れましたように、希望者すべてが就業した場合には、例えば保育サ ービスがあとどれくらい必要になるのかといったことを聞いて希望を実現する。あるいはスウ ェーデン並みにしてみたらどうなるかという前提で計算して、1.5兆から2.4兆円くらいの追 加的な所要額があるのだということを提示したわけです。また参考で※印で書いていますが、 少子化対策に関しては大変成功を収めている国であるフランスの形を単純に日本に置き換えた 場合には、もっと大きな数字が必要だということも示して、効果的に、しかもきちんと財政投 入をしていくことが必要だと打ち出したわけです。その際のルートについて示して、ここでは 3点、ポイントを掲げています。  一つは給付・サービスを充実していく場合に、現金系の給付と現物系の給付があり、その関 係と優先順位です。これについては現金給付の充実ももちろん大事ではあるけれども、まず時 間的な優先順位としては、現物給付の実現を優先的に取り組む必要があるという整理をしてい ます。2番目の○は、こういった追加所要額というと、ついコスト、経費という見方もあるか もしれないけれどもそうではなくて「未来への投資」という積極的な位置付けで考えるべきだ ということが整理されています。三つ目として、そういった大きな所要額ですが、このような 費用は次世代の負担によって賄うということではいけない。必要な財源をその時点で手当てし ていくことが必要だという考え方を整理して提示したところです。  そういう方向付けの下で、具体的な制度設計の検討と先行課題について、○が二つあります。 これは冒頭のあいさつ等で触れた、本特別部会における二つの課題ということで、(1)が全体的 な新しい制度設計を進めていくべきだということ。後段は20年度において先行実施すべき課題 ということです。これについては別の議題の中で、詳しく触れたいと思います。  4番目の柱としては、利用者の視点に立った点検・評価ということです。従来の点検・評価 がややもすると事業の進捗状況の量的な評価が中心であったのではないか。そうではなくて、 利用者の視点立った点検・評価手法を構築し、またPDCAサイクルという形で、実際の改善 につなげていくべきであるという方向付けがなされています。  最後のまとめは、せっかくこのようにまとめたので、施策の必要性と有効性について十分に 国民に説明し、理解を浸透させていく必要があるということ。そして自然に子育ての喜びや大 切さを感じられるように、社会全体の意識改革のための国民運動を進めていくべきであると、 このように重点戦略が取りまとめられたということです。  立て続けで恐縮です。中ほどに飛んで恐縮ですが資料2-5と2-6で、予算と税制についてポ イントを紹介させていただきたいと思います。  資料2-5、少子化対策の関係予算の資料です。先週末正式に復活折衝が終わって、予算案と して確定したということですが、その中の少子化関係予算の厚生労働省分を1ページ目に掲げ ています。総額でいうと一番上にあるように、厚生労働省分で1兆3,452億円ということです。 1ページめくっていただけますか。ちなみに政府全体では1兆5,714億で大半は厚生労働省関 係の予算ということです。全体としてこういう形で2ページ目の上に○があるように、全体が 厳しい歳出削減を求められている中で、少子化社会対策関係予算については前年度対約3.5% の増ということで、充実を図る予算が確保できたと考えています。  1ページ目に戻っていただけますか。その大勢を占める厚生労働省分の予算の柱立てを紹介 します。まず「仕事と生活の調和の実現」、重点戦略の二つの柱の1番目の柱です。ここに関し ては基本的に取り組み、いろいろな気運を醸成していく等が中心になりますが、「社会的気運の 醸成に向けた取組の推進」あるいは「中小企業への助成措置の創設」などで25億円。また「仕 事と生活の両立が図れる環境整備の推進」ということで、短時間勤務制度などの導入・定着支 援の拡充等で104億円の予算を計上しています。  2番目の柱として「地域の子育て支援の推進」です。時間の関係で細かくは申し上げません が、一つ目に「すべての家庭を対象とした地域子育て支援対策の充実」です。また二つ目には 保育所の関係で「待機児童ゼロ作戦の推進など保育サービスの充実」をしていくということ。  3番目は小学校に上がった後です。「総合的な放課後児童対策の着実な推進」です。  大きな3番目としては、いわば特別な課題を負っている子どもたちの関係です。「児童虐待へ の対応など要保護児童対策等の充実」で、具体的には虐待を受けた子どもなどを守っていく地 域ネットワークの機能強化などが盛り込まれています。  4番目には「母子家庭等の自立支援対策の推進」です。母子家庭の就業支援等の一層の推進 を盛り込んでいます。  5番目には「母子保健医療の充実」。特に近年いろいろと懸念されています「産科・小児科医 療の確保」のための支援あるいは子どもの心の問題に対するための診療拠点病院の整備、こう いったことも盛り込んでいます。また最後に※印で書かれているように、いわゆる国の予算そ のものではなくて地方財政措置というものです。今、都道府県の中ではある程度行われている ようですが、市町村になると一部の先駆的な自治体ではありますが必ずしも全体にわたってい ないものとして、自治体の中で総合的に少子化対策を実施するための体制を整えるということ。 それが必ずしも整っていないということで、自治体において少子化対策本部の設置など、そう いった総合的な少子化対策の推進体制を設けていただきたいということを呼びかけていくため に必要な地方財政措置を行ったということです。以上が予算の関係です。  続いて2-6で、税制改正の関係について報告します。20年度の税制改正大綱です。まず1ペ ージ目は大きな抜本的な改革関係の中から少子化対策に関係する部分を抜き取ったものですが、 基本的な考え方として2の2行目から「持続可能な社会保障制度とするために安定した財源を 確保する必要がある」ということを押さえた上で「このため、年金、医療、介護等の社会保障 給付や少子化対策に要する費用」も含めて、その見通しを踏まえつつ、こういった観点から税 体系の抜本的改革を行うということです。少子化対策に要する費用についても、税体系の抜本 的改革を行う際に踏まえるべき費用と見通しとして整理されています。  また「第四 検討事項」の、2行目の最後の辺りからです。「税制面においての少子化対策を 支援していくことが重要な課題となっている」ということで、一つには扶養控除の在り方を検 討するという検討事項とともに、もう一つは「少子化対策のための国・地方を通じて必要な財 源の確保について、税制の抜本的改革の中で検討する」と、このように整理されたところです。  2ページ目はそういった抜本事項とは異なり、目の前の先行すべき課題に関連して、(1)で「重 点戦略の策定に伴う税制上の所要の措置」、また(2)で「社会的養護体制の見直しに関する児童福 祉法等の改正に伴う税制上の所要の措置」ということで掲げられています。少し抽象度が高い ので解説しますと、(1)は実はまさに当特別部会において、これから皆さんに審議・議論いただ く重点戦略を踏まえた具体的な法案提出を念頭に置いた検討の中で、幾つかの子育て支援に関 する事業を、法律上きちんと位置付けていくことを想定していますが、法律上のきちんとした 位置付けの事業となった場合に、社会福祉事業との均衡で消費税等の減免の対象にするという ことが必要であるということで、その点を20年度の税制改正として行いたいということを登録 して認知されているということです。具体的には今後審議いただいた上で提出していく法案の 内容を見て検討するとされていて、(2)の社会的養護も同様に、法案の内容を見て検討という文 言で書かれています。これだけ見ると少しわかりにくいのですが、今後、具体的に法案を出し ていく際に位置付ける事業についての所要の税制改正を行うということで要望をして認知され ているという状況です。  私の方からは以上です。恐れ入りますが、引き続き社会的養護の関係について報告します。 ○藤井家庭福祉課長  あらためて、家庭福祉課長の藤井です。私の方からは資料の2-3に基づいて、社会的養護体 制の現状と今後の見直しの方向性について説明をさせていただきます。こういう横長の資料で す。先ほど高倉雇用均等・児童家庭局総務課長からも説明がありました重点戦略にも盛り込ま れているところですが、虐待をされた子ども等を中心とした、いわゆる要保護児童の養育・養 護について、どのようにして対応の拡充を図っていくかの議論です。専門委員会の報告書につ いて説明する前に、この資料に基づいて社会的養護の現状と課題について簡単に説明します。  3ページに「社会的養護の現状について」という資料があります。全国で約4万人程度が要 保護児童と言われる子どもたちですが、一番上はそのうちの約3,300人ほどで、里親制度の委 託児童数です。あとはその下の、幾つかの種類の施設で養育されている状況で、幾つかの施設 の中でも子どもの数として一番多いのが児童養護施設ということで、ここで3万人余りの子ど もたちが養育されています。こういった現状になりますが、次の4ページ以降に「社会的養護 の課題」として幾つか整理をしています。  まず一言で申し上げますと、戦後の孤児対策から始まった社会的養護は、今や対象となって いる児童が相当様変わりをしています。今はもう対象児童の9割以上が実親のいる子どもで決 して孤児ではないということですし、また6割が虐待を受けている被虐待児だということで、 いわば子どもの側のニーズが大きく変化をしています。それに従って、社会的養護の提供体制 も大きく変化していかなければいけないという状況であると、私どもは認識しています。  その認可の第1が4ページにあるように、まさに虐待の増加です。真ん中の折れ線グラフは 虐待の相談件数ですが、このように急増していますし、それに伴って、下にあるように、施設 に入所してくる子どもたちの中の虐待された子どもの割合も、児童養護施設で見ると6割を超 えているような状況です。  5ページは、先般の国会で児童虐待防止法の改正案が成立していますが、この中の附則第二 条の中で、虐待を受けた子どもたちが保護された後の養育についても、その下にありますよう に「必要な事項について速やかに検討を行い、その結果に基づいて必要措置を講ずるものとす る」といった記述がされています。  さらに6ページは子どもの背景の多様化ということで、発達障害をはじめとして、多様な背 景を抱えている子どもたちが増えているということがあります。6ページのグラフですと、平 成10年から平成15年にかけて、割り振りしたのが倍のようになっていますが、この数字は、 平成10年はまだ発達障害というものが必ずしも明確ではなかった時期で、平成15年において はかなり発達障害が議論になってきていたので、私どもが調査するに当たっては、例えばAD HDという発達障害の一つの類型を調査対象に加えています。恐らくその他の、例えばアスペ ルガーなどの発達障害については、その他の心身障害の中にかなり入ってきているという状況 です。逆に言えば、そういった発達障害も平成10年にもあったはずですが、調査対象にしてい なかったので挙がってきていないという状況だと思います。従って単純に倍になったというこ とではないと私どもも考えていますが、それにしてもかなり数が増えているということは間違 いのないところではないかと思います。それがこの6ページのグラフです。  7ページは養護体制の課題として、わが国の社会的養護体制の特徴として、里親委託が圧倒 的に少ないということが一つ挙げられます。そこに円グラフがありますが、大体9割以上が施 設で保護されているということです。その下の表にあるように近年少しずつ増えてきています が、まだ1割に満たない状況です。  次の8ページに諸外国と比較したものがあります。これは一般の書物から取ってきています ので私どもは正確性を確認しているわけではありませんが、それにしても他国と比べるとかな りの開きがあるということです。  また9ページにあるように、児童養護施設の中でもいわゆる大舎、大規模集団処遇をとって いる所が、まだ全施設の7割ほどになっているということです。この辺りも小規模化といった 流れをもっと進めていかなければいけないという課題となっています。  10ページの「退所後の状況」は、児童養護施設を退所した子どもの中で、6割以上が家庭に 戻っている現状です。これはどういうことかというと、家庭に対するケアがいかに重要かとい うことだろうと思います。虐待された子どもが家庭に帰って、その家庭が虐待していた当時と 同じような状況ですと、また虐待を繰り返すことになるのは十分想像されるところですので、 家族の再統合、親指導ということが、重要な課題として挙がってくるということです。  11ページの養護施設を退所した後の進学の状況も、まだまだ全体に比べますとかなり低い状 況になっているということが課題としてあります。  それから12ページは「入所児童の権利擁護」ということで、第三者評価等の取り組みがまだ まだ進んでいないということもありますし、施設内虐待が相次いで起こっているという状況も あります。  13ページに「社会的養護体制の整備状況と自治体間格差」とありますが、施設の定員に対す る入所率が相当増加している状況です。養護施設のところをご覧いただきますと、平成17年度 の全国平均が90%を超えているという状況です。それをさらに自治体ごとにご覧いただきます と、次の14ページで幾つかの県ではかなり100%に近い水準に達しているということもありま す。従って、社会的養護に対して量的にも整備を進めていく必要があるのではないかというこ とも課題になってきます。  こういった課題を踏まえて17ページを開いていただきますと、これまでの検討の過程という ことで簡単にまとめています。本年の2月に、学識経験者を中心とした検討会を設置して5月 に中間取りまとめをいただいています。また先ほど紹介した児童虐待防止法の附則において、 社会的養護の体制の拡充についても検討を進めることとされました。これを受けて、8月に社 会保障審議会の児童部会に社会的養護専門委員会を設置していただきました。そこで具体的な 方策について検討を進めていただいたわけですが、9月7日以降5回開催して11月22日に取 りまとめをいただいています。その取りまとめのポイントを19〜20ページに整理しています。 基本的な認識として、1番上にあるように社会的養護を必要とする子どもが増加している。ま た虐待等子どもの抱える背景が多様化・複雑化してニーズが変化してきている。そういったこ とを踏まえて、具体的な施策の方向として、ここでは三つの柱を掲げています。 最初の柱が「子どもの状態に応じた支援体制の見直し」です。その中の一つ目が「(1)家庭的養 護の拡充」です。(1)が「里親制度の拡充」で、里親委託を促進するための制度的な枠組みを整 備する。二つ目の○にあるように、里親支援を強化する。里親支援を専門的な支援機関を創設 する。そういったことが一つあります。(2)として、小規模グループ形態の住居における新たな 養育制度を創設してはどうか。(3)として、施設におけるケア単位の小規模化等、施設において も家庭的養護を推進するべきではないかと。「(2)施設機能の見直し」はそこにありますように 「子どもの状態や年齢に応じた適切なケアを実施できるように現行の施設類型のあり方を見直 しするとともに人員配置基準や措置費の算定基準の見直し等を含めてケアの改善に向けた方策 を検討」する。ただ「このような見直しを具体的に進めるためには必要な財源の確保が不可欠 であるとともに、現在施設内で行われているケアの現状を詳細に調査・分析することが必要」 であるとされています。この部分については、引き続き検討すべき課題であると専門委員会に 残されている格好になっています。  大きな二つ目の柱が「社会的養護に関する関係機関等の役割分担と機能強化及び地域ネット ワークの確立」です。一つが「児童相談所のアセスメント機能の強化」、二つ目が「家庭支援機 能の強化」です。  20ページの三つ目の柱が「自立援助ホームの見直しと自立支援策の拡充」として、特に年長 児童の自立支援のための取り組みを提言いただいています。次が「人材確保のための仕組みの 拡充」として、施設長・施設職員の要件の明確化や基幹的職員、スーパーバイザーと言います が、その配置・養成の在り方あるいは国と都道府県の研修体制の拡充などの提言をいただいて います。  大きな5番目は「措置された子どもの権利擁護のケアとケアの質の確保のための方策」とい うことで、施設内虐待の防止等の権利擁護に関する施策として、措置された子どもの権利擁護 を図るための体制整備・監査体制の強化とケアの質の向上のための取り組みの拡充。施設内虐 待等に対する対応として、施設内虐待が起こった場合に外部に知らせる仕組み、あるいは通告 した職員の保護などの仕組みを作るべきではないかという提言がされています。  最後の三つ目は「社会的養護体制の計画的な整備」です。社会的養護の提供量を確保する、 量的な整備を図っていくという観点から、都道府県において計画的に整備を行う仕組みの構築 を検討するべきであるという提言をいただいています。 この報告書を受けて私どもとしては、まずは先ほど高倉雇用均等・児童家庭局総務課長からも 説明がありましたように、重点戦略を受けて次期通常国会に提出を目指しています法案の中で、 必要な法的対応を行っていきたいと考えています。以上です。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは引き続き、議題4の関係の説明をします。資料の3-1と3-2を併せて見ながら説明 をします。ただ今、説明がありましたように、社会的養護の関係は先行して取り組むべき制度 的課題のうち、そちらについては児童部会で議論いただいていますので、今日用意した資料は それ以外の部分です。よろしくお願いします。  まず3-1を1枚めくっていただくと、大きく二つの課題に分けています。一つ目は基盤整備 の関係です。2ページ目は資料3-2の5ページ目を併せて見ていただきますと、資料のつくり としては左側に現状を書いて、右側の黄色のところは課題という形で整理しています。  その一つ目として保育サービスの基盤整備に関して、現状は待機児童の解消を目標に保育所 の整備を進めてきていますが、潜在需要が喚起されることによって待機児童の解消が進まない という現状です。一方、今後将来の児童数の減少が懸念されることによって、行政や事業者が 施設整備について少しちゅうちょするケースも存在するということ。さらには、この待機児童 の分布を見ると、3歳未満児あるいは大都市部を中心とした所に集中している。そうした地域 では用地確保の困難も指摘されているということです。 課題としては、女性の就業率の上昇。これは重点戦略会議で試算も示していますが、女性の就 業率の上昇を含めた中・長期的な需要動向を勘案して、各市町村で計画的なサービス基盤の整 備を進めていただく仕組みが必要ではないか。この点については、小学校に入って以降の放課 後児童クラブについても共通の課題として言えるのではないかというのは一つ目です。  次に資料3-1の課題の二つ目の○では、保育所という施設サービスだけではなくて、保育マ マといった提供主体の多様化に向けた対応が必要ではないかということで、課題を提示してい ます。その上で家庭的保育に関しては、自宅等で一人で実施するという性質もありますので、 そういったことを考慮して、一定の質を確保しながら事業の推進をしていくことが必要ではな いかということです。参考資料の8ページを見ていただきますと、ここでは家庭的保育を強化・ 充実するための条件をアンケート調査したものがあります。回答の多いものを見ていただきま すと、連携保育所と家庭的保育の連携強化、あるいは国・地方公共団体がもう少しこの事業に ついてのPRをするべきではないか。あるいは制度的な位置付けを、家庭的保育について与え る必要があるのではないか。保育者・利用者に必要な情報提供や助言・指導などを行う必要が あるのではないか。ガイドラインを示す必要があるのではないか。そのような条件が多く回答 されている状況です。  3-1の資料を1枚めくっていただいて、二つ目の課題として保育以外の子育て支援サービス 基盤整備についてです。現状として地域のつながりの希薄化で、育児に関しての孤立化、ある いは育児不安の増大というのが指摘されています。こういう社会背景もあって、児童虐待の件 数も増加を見ているということです。 参考資料の12ページに「各種子育て支援サービスの利用状況」という表を挙げています。表は 若干読み解きにくい表で恐縮ですが、左側は子どもが0歳のときに利用したサービスを、今の 年齢の子どもについて聞いているものです。緑色の方が保育サービスで、オレンジ色がそれ以 外の地域の育児支援サービスの利用状況を見ているものです。左側が0歳児、右が1〜2歳のと きに利用したサービスですが、子どもが小さいほどオレンジ色の利用の割合が増えているとい うことで、最近保育以外の育児支援サービスも利用の割合が徐々に高まってきているという傾 向が見て取れますが、まだまだ割合として一番高いところでも1〜2歳の12.6%ですし、右側 の子どもが1〜2歳のときに利用したというのを見ていただいても16.8%ですので、まだ利用 は必ずしも十分進んでいないという状況です。一方、14ページ目を見ていただくと、表の字が 小さくて恐縮ですが、その中で左側が幾つかの子育て支援関係の事業について、都道府県別に 事業実績を見たものです。これを見ていただくと、一番左がいわゆる地域の子育て支援拠点と いうことで、親子の交流の場を提供するつどいの広場事業等です。一番高いところは静岡県で 77.8%というのがありますが、まだまだ低い20%台のところもあります。東京都は8.9%で、 地域によってかなりばらつきがある状況です。一時保育・特定保育を見ても、かなりばらつき のある状況です。右側で、東京都内各区・市の状況を見ても、全体として低調な感じですが、 その中でもばらつきがあるという状況が見て取れます。  資料3-1に戻って、今、見ていただきましたように、就労の有無を問わず、一時的に子ども を預けたり、親子の交流をしてお互いにいろいろな相談をし合ったり、そういう子育て支援サ ービスは現状では市町村ごとの取り組み格差が大きく、かつ実施箇所数が十分な状況になって いません。これらの事業はこれまで予算事業として実施してきていますが、法律的な位置付け が必ずしも十分でないという状況です。  右側の課題は保育のみならず、そういうすべての子育て家庭に対する支援のサービスの充実 が必要ではないかということで、二つ目の○として、以下に掲げる三つの子育てサービスにつ いて、一定の質を確保しながら事業を推進するということが必要ではないかということで挙げ ています。一つは「訪問支援事業」ということで、今年度から国の事業としてもやっています。 「こんにちは赤ちゃん事業」ということで、生後4カ月までの全戸訪問事業。そこで要支援と 認められた家庭に対する訪問事業。二つ目が「一時預かり事業」。三つ目が「地域子育て支援拠 点」。こういったことについて、質の確保を図りながら事業の推進をする必要があるのではない か。さらには、こういうものの整備を計画的に図っていく必要があるのではないかということ です。  次に資料3-1を1枚めくっていただいて、大きい課題の二つ目として、次世代育成支援対策 推進法というのがあります。これについての現状と課題です。  さらに1枚めくっていただいた5ページ目ですが、前提として参考資料の15ページ目を見て いただくと「次世代育成支援対策推進法の概要」というのがあります。こんな法律だというこ とを大きく簡単に説明しますと、まず国レベルで行動計画の基本指針を策定する仕組みになっ ています。その指針に即して、地方公共団体と事業主が、それぞれ行動計画を作るという仕組 みになっています。 地方公共団体の方は市町村・都道府県それぞれ全市町村、全都道府県に策定義務が係っていま す。策定する際には、左下にありますように、次世代育成支援対策地域協議会という、地域の 事業主や社会福祉協議会関係者などに入っていただいて、協議をしながら計画を作っていただ く仕組みになっています。  一方、一般事業主、民間の事業主の行動計画については、大企業301人以上従業員のいる企 業については策定の義務付けがされていて、300人以下の企業については努力義務という形で す。もう一つ、特定事業主行動計画というのがあって、これは国・地方公共団体がその職員向 けに作る計画ですが、これについては策定の義務付けあるいは策定した計画の公表義務が係っ ています。右下にあるように一般事業主の行動計画の策定について、事業主団体等によって、 相談あるいは支援・援助をする組織体として、次世代育成支援対策推進センターというものが、 法律上位置付けられています。  もう1枚めくっていただいて、現状ですが、左上にあります地域行動計画の方は、既に5カ 年計画として21年度までの計画がすべての都道府県・市町村で策定済みになっています。一般 事業主、右側の方は、法律上概ね2〜5年の計画として策定していただくことになっています。 行動計画を策定・実行して一定の要件を満たした企業は、厚生労働大臣が認定するという仕組 みがあります。この認定する仕組みというのは、さらに2ページめくっていただいた18ページ 目です。いろいろと流れがありますが、まず策定いただいてそれを労働局に届けていただき、 届けた計画にのっとって企業の中で計画を実施する。計画が終了して目標を達成した場合は、 厚生労働大臣に認定の申請をして認定されるという仕組みがあります。認定されますと下の方 の真ん中に「くるみん」という赤いマークが付いていますが、こういうマークを使うことがで きる仕組みになっています。認定基準については右下に四つほど書いていますが、作った計画 の目標を達成する、男性の育児休業取得者がいるというような認定基準が幾つか設けられてい ます。  また2枚戻っていただいて16ページの策定状況は、大企業はほぼすべての企業において策定 済みです。中小企業については7,811社という状況で、認定企業については19年9月末現在で は366社という状況です。一方、特定事業主の方の行動計画は、下の方にあります。国と都道 府県はすべて策定済みですが、市町村は策定義務付けがされていますが残念ながら89%という ことで、約1割の市町村ではまだ策定がされていない現状にあります。  本体の3-1の資料に戻って、この次世代育成支援対策推進法に関する課題として、一つ目は 「地域における取組の促進(1)」ということですが、一つ目は再掲です。地域の行動計画で現在 いろいろな各種保育サービスや放課後児童クラブ、地域の子育て支援拠点などの目標を定めて 計画的な整備を進めてきていただいていますが、もう少し女性の就業率の上昇などを含んだ潜 在需要も勘案した計画作りをしていただく必要があるのではないかというのが一つ目の課題で す。  二つ目は、今、見ていただいた地域行動計画については策定の義務付け、しかも公表まで係 っていますが、フォローアップについては必ずしも十分されている仕組みになっていないとい うことで、右下にあるように、重点戦略でも点検・評価分科会で議論いただいてまとめていた だいています。利用者の視点に立った点検・評価を定期的に実施して、それを計画あるいは次 世代育成の具体的な措置に反映していく仕組みが必要であるという課題を挙げています。  1枚めくっていただいて「地域における取組の促進」の二つ目です。左側の現状を見ますと、 地方自治体の取り組みは当然ですが、子育て支援サービスの基盤整備に力を入れていただいて いるということです。一方、今日も説明申し上げましたように、仕事と生活の調和の憲章ある いは行動指針というものが新しく定まりましたので、さらに一層その働き方の見直しについて、 地方公共団体レベルでも取り組みをしていただく必要があるということで、右側の課題に「地 方自治体においても、仕事と生活の調和の実現に向け、地域と一体となって取り組んでいく必 要があるのではないか」と整理しています。さらに「また」ということで、そのために地域に おける関係者、地方の労働局もありますし、地方自治体・都道府県・市町村もありますし、次 世代センター、労使といったところの連携の仕組みが必要ではないかと整理しています。  現状の方の二つ目、課題の方の二つ目に書いていますのは、特定事業主の行動計画、これは 先ほど説明した通り市町村でもまだ1割が未策定の状況ですので、早急な対応を促すことが必 要ではないかと整理しています。  1枚めくっていただいて7ページ目は「一般事業主行動計画に基づく取組の促進」について です。現状として策定状況は先ほど説明した通りですが、四つ目の○で、行動計画を自主的に 公表している企業は少数だということで、参考資料の19ページを見ますと、国でも「両立支援 の広場」というホームページを用意していて、ここに自社のホームページには体力的に載せづ らいということであれば、こちらに載せていただく仕組みもあります。ここの登録企業は今288 社です。  その1個下の○は、この計画の策定について、好事例の提供や同業他社の取り組みについて、 もう少し情報をオープンにしていくことが必要ではないかというのがあります。  一番下はさらに広く国民が知り得る制度にすべきという指摘があるということです。この指 摘はあとで参考資料の25ページ目にそういう関連の指摘を付けています。  7ページの右側の課題は四つ整理しています。一つ目は、現在努力義務となっている300人 以下の企業、中小企業における策定・届出に向けた取組の促進が必要でないか。二つ目の○は、 中小企業における行動計画の策定の促進に向けた支援を強化する必要があるのではないか。三 つ目が他企業の参考となるように、広く社会への情報開示となるよう行動計画の公表の促進が 必要ではないか。さらには企業内の労働者へ周知の必要があるのではないかという課題を整理 しています。関連する資料として参考資料の20〜21ページ目を見ていただきますと、20ペー ジ目に行動計画の策定のメリットをアンケート調査でしたものがあります。企業の規模ごとに 分類して整理されていますが、上の2行に書いてあるように、メリットとして多く挙げられて いるのは、人材の定着や社員の意欲や満足度の向上、社会貢献企業としてのイメージの向上、 そういったところにメリットがあるとされています。  1枚めくっていただいた21ページでは、一方で計画策定に当たってその妨げになる点は何か と聞いたところ、多く挙がっているのは、どのような計画を作ればいいのかわからない。ある いは人手が不足して計画・策定にまで手が回らないという声が高くなっています。計画の中身 というよりも、その策定の手間がネックになっているという傾向が見て取れます。  本体の3-1の資料に戻っていただいて8ページ目の「一般事業主行動計画に基づく取組の促 進」の二つ目です。現状の一つ目は先ほど「くるみん」についての認定の仕組みがあると申し 上げましたが、現在366社という状況です。現状の二つ目ですが、マークについて、直接消費 者の目に触れる商品やそのパッケージ、宣伝・広告等への利用が現状としては少ない。三つ目 は認定要件に「男性の育児休業取得者1名以上」という要件がありますが、大企業にとっては 不十分ではないかという意見がある一方で、中小企業に満たしていただくには、対象者がなか なかいない、難しいという意見があります。  これに関連して参考資料の22〜23ページをご覧いただきますと、22ページでは「認定取得 に向けた取組の効果」として、このグラフの認定を申請する考えがあるという二つ目のところ を見ると、青いところが男性の育児休業取得について対策をとっているという企業が22%ぐら いで、今後検討する予定があるというのが35.7%ぐらいあります。合わせると5割を超えると いうことですので、この認定の仕組みは、男性の育児休業取得促進について、一定の効果があ るということが見て取れると思います。  1枚めくっていただいた23ページ目は、実際に認定を受けた企業での男性の育児休業の取得 の状況を整理したものです。左のグラフを見ますと一番上が大企業です。色はその企業におい て男性が育児休業を何人取ったかというものです。オレンジ色が1人、青が2人、緑っぽいも のが3〜5人という感じですが、大企業においては複数人取っている方が半分くらいいる一方で、 半分くらい大企業においても1人であるという状況です。中小企業は圧倒的に1人である状況 です。右側は、認定企業における男性の育児休業取得の期間です。これは認定の仕組みが1日 以上でいいということになっていますが、大企業ではそれなりに1日、2日、3〜5日というの は割合としては少ないですが、1カ月未満を合わせると5割を超えている状況で、中小企業は、 非常に限られた期間の取得期間になっているという状況が見て取れます。 本体の3-1の資料に戻っていただいて、右側の課題は「認定取得に向けた取組の促進が必要で はないか」というのが一つ目の○です。二つ目は、認定を受けるメリットあるいはそのマーク の活用方法について検討が必要ではないか。三つ目は企業規模を問わず、認定に向けた取り組 みが進むように、左の男性の育児休業取得者の要件にあるような認定要件の柔軟化等の見直し が必要ではないか。さらに中小企業などを含めて考えると、センターが作成の支援をする機能 を持っていますが、そのセンターの一層の機能の発揮を促進する必要があるのではないかとい うふうに整理をしています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。先ほど事務局から資料説明が始まって間もないころに、徳島県の 飯泉知事が到着になられましたのでご紹介します。 ○飯泉委員  どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○大日向部会長  ただ今、議題3〜4の資料の説明を一括していただきました。まず議題3、重点戦略ですが、 この説明を伺って、私は今まで国はいろいろな少子化対策を打ち出してきましたが、今回はか なり1歩も2歩も踏み込んだ、非常に重みのある重点戦略をまとめられたと思います。今まで 仕事か子育てかというVS構造、二者択一構造であった。ここが少子化の根源であることを明確 に突き止めて、そしてVS構造ではなくするための働き方の見直しと、保育を含めた包括的な次 世代育成支援という二つを打ち出され、しかも現物給付の実現を優先課題とするという少子化 対策の明確なストーリー性が描かれていること。そして、そのために必要なコストは単なるコ ストではなくて、未来への投資だとして、それに必要な財源をどうするかということまで踏み 込んで書いていただきました。  さて、この重点戦略を受けてこの部会は何を検討するかということですが、私はあまりにも 膨大な資料と説明をいただいて頭が飽和状態になっていますので、少し一緒に整理をしたいと 思います。  最初にご説明いただきました資料1-1をお出しいただくと、四角で囲んで「2 少子化対策特 別部会における審議事項・スケジュール」と書いてあります。そこに本年末から来年初めまで において検討すること。それは「平成20年度において先行して実施すべき課題について、次期 通常国会へ所要の法案を提出することを念頭に、法律改正事項を中心に検討」とあります。本 年末というのは今日ですね。来年初めというのは年が明けて早々に予定されているこの部会の ことですので、この2行に書かれていることをあと4時近くまでご議論いただきたいと思いま す。  具体的に何かということは、資料の2-1重点戦略のポイントと書いてあるものを1枚めくっ て2枚目の、IIIの一番下の四角のところに先行して取組むべき課題ということで、「制度設計の 検討とともに、家庭的保育の制度化や一時預かり事業等の法律的な位置付けの明確化、地方公 共団体や事業主が策定する次世代育成支援の行動計画に基づく取組の推進のための制度的な対 応」等と書いてあります。ここを議論すればいいということですね。ということですので、具 体的には資料3-1、3-2と今の資料の2-1のめくったところをお手元に置きながらご議論をいた だければと思います。今日は時間が少し限られていますが、どうぞご遠慮なくご意見をお聞か せいただければと思います。 ○小島委員  連合の小島です。この少子化対策特別部会に与えられた任務として二つあるということで説 明をいただきまして、とりあえず当面の、先行して実施すべき課題ということで、法改正を含 めてということで、具体的な資料については、3-1の資料のところで、二つの課題が指摘され て、一つは2ページにあります保育サービスの基盤整備についてというところです。これは現 状と課題と書いてあります。2ページの課題の二つ目の○で指摘しているのは、保育サービス、 まさに現物サービスの提供主体の多様化というところで、具体的には家庭的保育、保育ママの 整備・制度化というところが課題として指摘されています。この点については、まさに主体は 何と言っても保育所を中心とした保育サービスがメインであることは間違いないと思っていま す。そういう中で、現状の中でも待機児童等がいるという実態の中で、当面先行してできるこ とについては、一つのメニューとして保育ママ、家庭的保育の制度の充実ということは必要だ と思いますが、これによって待機児童がすべて解消できるという話ではないと思いますので、 そこはやはり今後二つ目の課題で、次の総合的な財源対策を含めて、本格的なことについては 議論するということがあります。とりあえず先行的に実施できるということについては、この 保育ママのところが整備が必要だと思いますが、ここに過度に期待をかけることはできないと 思っています。これだと少し少子化対策に国全体で取り組む中で、先行的制約があるにしても 少し寂しいという気がします。  一つ質問したいことがあるのですが、現在この保育ママの制度、参考資料の3-2の6ページ に家庭的保育事業についての実施状況の推移があります。18年度の国の予算措置で実際やって いる児童数として319名、保育ママの数としては105名と。下の方には地方単独事業として実 施している児童数1,400名程度ということになっていますが、中でも増えていないということ で、これについては次の7ページに課題として指摘されています。この中には保育ママ自身の 人材が集まらないという課題、それから利用希望者も少ないということが指摘されています。 多分そういうことだろうと思いますが、ここの最大の要因は予算上の制約ということもあると 思いますが、その辺について分析・評価というのがまず一つ必要ではないかと思います。国の 予算上は付けているけれども、それを担う人材が集まらない。あるいは人数がそんなにないと いうことなのか。ここは予算を付ければいいという話ではないと思いますので、それなりの評 価をどう見ているのかというのが質問です。  もう一つ、3-1の2ページの課題の一つ目の一番上にある※印に書いてありますが、放課後 児童クラブについても共通の課題だとありますので、これについてもきちんとした対応が必要 だと思っています。確か、この放課後児童クラブの問題については97年に児童福祉法の改正に よって法制化されはしましたが、その運営基準についてきちんとしたものが出されていなかっ たということで、今年10月にやっと局長通知でガイドラインという形で運営基準が示されたと いうことで、その内容については、児童の数を35名くらいという規模で運営するというガイド ラインが示されましたが、内容的にどれだけきちんと徹底するかが課題だとあります。あるい はそれに対する予算措置も必要だと思います。ガイドラインをさらにもう少し格上げして大臣 告示あるいは法制化するという措置も必要だと思っています。それについては、ぜひご検討い ただければと思っています。そこが保育サービスについての基盤整備についての課題で、1点 意見と質問をしました。  次に、4ページ以降の地域における取り組み及び次世代育成支援のところでの。 ○大日向部会長  すみません。一つずつ切ってよろしいでしょうか。家庭的保育に関しては他の方もご意見が あるかと思いますので、まずは集中的に家庭的保育に関してご意見があればいただければと思 いますが、いかがでしょうか。では清原委員、お願いします。 ○清原委員  三鷹市長の清原です。三鷹市でもいわゆる保育ママにご活躍をいただいていますが、人口17 万5,000人の市で、今、保育ママは4名ということです。それでも拡充をしてきました。私が 大変重要だと思っているのは、こうした家庭的保育の意義について否定される方はいないと思 うのですが、やはり保育ママの負担という考え方をするならば、その役割や機能を奨励する、 あるいは支援するネットワーク型の取り組みが重要だと思っています。私は直接保育ママさん と市長としてお目にかかってご意見を伺うこともありますが、いわゆる公立保育園の保育士の 皆さんとの連携、あるいは公的な施設を利用しやすくすることが必要です。、家庭的保育と言っ ても、公園の利用あるいはその他の子育て支援施設との密接な連携も不可欠なわけですから、 家庭的な保育事業をする際には、よりその事業の意義が生かされるような他の機関、あるいは 専門家とのネットワークを保つことによって、その力量が発揮されるとともに、いざというと きの対応が、医療・福祉・保健、それぞれから果たされていくことが大事だと思います。  なぜ保育ママが増えないかという要因は、私は、子育ての喜びや、家族でなくても次世代の 子どもたちを養育する喜びを、専門家としても、あるいは地域に根ざした活動としても自覚さ れている方がいるとしても、やはり急病のときの対応や、何らかの事故等への対応、本人が疾 病等にかかったときの補完、あるいは代替の取り組みなどの課題があると思います。そうした ことについて、もちろんきめ細かく市町村単位の自治体が果たすべき部分はあると思いますが、 いわゆる県レベルでの何らかの総合的な支援対策なども必要かもしれません。この良い機能が 発揮されるための条件整備については、量的な拡充を図る以上は、国がこれを推進するのであ れば、質的な支えの取り組みをしていく必要があります。その場合にはモデル的な地域でこう したものが円滑に進むには、どのようなネットワークや体制が必要なのかといったことも、短 期間であっても数年間検証していくということが重要ではないかと思います。  併せて、小島委員もおっしゃいましたように、こうした家庭的保育事業ができるときは3歳 未満児が主として対象ですが、どうしても0〜1歳が公立保育園でも定員がなかなか不十分なと ころがあります。しかし家庭的保育事業が、その後にどうつながっていくかと言えば、他の保 育施設に円滑に橋渡しができていくことが重要ですので、これは「子どもと家族を応援する日 本」重点戦略検討会議でももちろん議論されたことですが、これに即効性があるという趣旨で はなくて、こうした日本的な良いものを生かしつつも、やはり保育の在り方そのものについて 総合的な、マクロな取り組みがなければいけないのかなと思います。もう一つだけ付言します と、いわゆる子育てをしながら働く女性、あるいは保育がなかなか不十分である対象者にこの 保育事業があるだけではなくて、先ほどの報告がありましたが、今は家庭で保護者が保育をし ている場合でもやはり相談事業が必要ですし、あるいは虐待等に至らないための、家庭的保育 をしている方への支援も重要だと思います。一時保育というニーズもまさに働く方ではない方 に生じているわけですから、働く女性のための子育て支援サービスと、そうでない方のための 子育て支援サービスを明確に分類するのではなくて、それぞれについての主たる対象はそうだ としても、実際には、例えば保育園が働く女性のための保育機能を果たすだけではなくて、今 では家庭保育をしている保護者、とりわけ母親への相談事業などを展開していくことが圧倒的 に多いわけですから、そうした総合的な視点を絶えず持って、この家庭的保育事業を位置付け ていくことが有効ではないかと考えます。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。今お二人のご意見はIに関して、地域の保育サービスをどうする かということで、小島委員から家庭的保育に関してご質問が出され、懸念が出されて、清原委 員からは家庭的保育に対する検討課題と同時に、在宅家庭の方を含めた地域の一時預かり事業 に対しても言及いただきました。ありがとうございます。  後でまとめて義本保育課長にお答えいただくと思いますが、どうぞよろしく。Iのことを集 中的に、ご意見をいただいた後に小島委員が言いかけられてストップをかけたIIに移りますの で、若干お待ちくださいませ。 ○飯泉委員  徳島県知事の飯泉です。今、清原委員から例えば都道府県レベルでの広域的な支援というお 話もありました。先ほどの説明の中で、少子化対策の総合的推進という予算の説明がありまし たが、この中で最大のところを占めるのが待機児童ゼロという数字があるように、予算の内容 としてロットはかなり増えてきたと思っていますが、まだまだ量としてももう少し増やしてい く必要があるのではないか。そして今、ご意見がありましたように、その中でも質的な充実が 求められるのではないかと思います。  まず今、清原委員からお話がありました、病後児保育あるいは病児保育の関係については、 徳島県内においても、例えば認可保育所の中でもそうした子どもは預かってもらえませんよと。 そうした場合に、どうしていくのかということになりますと、全県レベルにすぐ飛んでしまっ て、先ほど虐待の児童の例で乳児院などが出てきましたが、徳島にも赤十字の徳島支部で、乳 児院をやっていますが、そうした所で病後児保育、病児保育を全県的な窓口として行ってはど うかということになる。しかし本来でしたら、それぞれの地域ごとにそうした拠点がやはりあ るべきだと思います。  またもう一つは、いろいろと分けるのではなくてワンストップでという話もありました。そ うした意味では、子育て・核家族化がどんどん進んでいるので、昔でしたらおばあちゃんに、 あるいはお母さんに聞けばいいものを、若いお母さん方は相談する相手がいないということで、 最近では児童相談所などに早い段階で相談をしていただける駆け込み寺というのか、あるいは ワンストップサービスと申し上げた方がいいのか。そうしたことを行っていくことによって、 児童虐待の早期発見・防止にも役立つのではないかと。そうした意味で各市町村で取り組まれ るもの、ボランティア、NPOの皆さんが取り組まれるものに対して、県内でまとめるという か、ワンストップサービス的に全県を束ねる児童相談所などを中核として、都道府県レベルで、 相談のワンストップサービスの窓口を設けていく。こうした点もこれから広げていく必要があ るのではないかと思っています。今、広域的な取組という話がありましたので、ご紹介させて いただきます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは大石委員、お願いします。 ○大石委員  千葉大学の大石です。こちらの家庭的保育について私個人の意見を申しますと、施設保育は ある意味低年齢児に限定した経過的な保育の形態として位置付けるのが適切ではないかと思い ます。ある程度の年齢になりましたら、集団の中で育つということが重要だと思いますので。 その一方で低年齢児、特に乳児の間ですと、集団でいるとかえって病気にかかる確率が高いと いうことがありますので、そういう意味では補完的な位置付けをした方がいいと思います。  二つ目は、責任の所在です。どこまでが保育者の責任で、どこからが市町村あるいは自治体 の責任なのかは明らかにする必要があるだろうと。そうでないと保育ママになる方が対両親、 対利用者とのかかわりの中で、個人的にリスクを負い切れないケースも出てくるのではないか と思うのです。そこは行政がしっかり保障することが必要だと思います。  三つ目は、保育ママの拡充をもって、保育所を中心とする施設保育を拡充しない理由にしな いということです。施設保育の拡充もするし、多様な手段として保育ママの拡充もするしとい うことであれば、大いに進めていただいてよろしいのではないかと思っています。保育ママへ のなり手が少ないという清原委員の実態のご報告もありましたが、保育ママになるのは、ご自 分の子育てがある程度終わった年齢の方だと思います。そういった年齢の方は市場労働に出る か、保育ママになるかという仕事の幾つかの選択肢の中で決めているはずです。したがって、 それなりに保育ママの待遇や条件が整っていなければ、能力のある方は市場労働に出てしまう だろうということは当然予想されるわけです。そういう意味では質の高い方に保育ママになっ ていただくための条件整備を、市場における女性労働の状況と比較しつつ決めていく必要があ るのではないかと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。庄司委員、その次に杉山委員の順でお願いします。 ○庄司委員  いろいろなご意見が出ているので、ごく簡潔に感じていることを申し上げたいと思います。 家庭的保育については、東京や大阪を中心に既に十分な歴史があり、これを守ろう、あるいは 進めようという団体もあって、そういう中でいろいろなことが言われてきているわけですから、 それにもかかわらず、なぜこれがあまり伸びなかったかということをきちんと一度分析してい く必要があると思います。私はそれなりの意見がありますが、それはここでは申し上げないと しても、そういう分析をきちんとする。つまり家庭的保育の良さというのはある程度言われて いることですが、その良さを本当に守り切るためには極めて手厚い、やはりお金のかかること を考えないといけないのです。けれども位置付けとしては施設保育の足りない部分を補完する というふうにしているために、どうしても本気でお金をかけて、あるいは丁寧な検証をしなが ら推進するというふうにならなかったということでしょうね。もしこの議論を本気でする場合 には、ぜひともその辺を相当突っ込んで、きちんとした形で進めていきたいと感じています。 以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。杉山委員、お願いします。 ○杉山委員  今、庄司委員に私が申し上げたいことをほとんど代わりに言っていただいたというところが あります。つい最近も保育ママのことをずっと研究されている先生からお話を伺ったりする機 会があったのですが、ここで言われるほどに全国的に広まっていない。数もそんなに多くない。 今まで光がほとんど当たってこなかったという現状があって、にわかにワーク・ライフ・バラ ンスを進めなければならないという中で、でも保育所を新たに作っていてはお金がかかるから というところで、「家庭で保育」という着眼点で出てきた部分というのは多分あるのだろうと思 います。だから、ではすぐに広まるかというと多分そうではなくて、先ほどおっしゃられたよ うに、なぜ広まってこなかったのかという部分を確認するということと、保育所で保育士をす るよりも、保育ママとして家庭でお子さんを預かる方がリスクも高いし大変だし、ご自身のマ ネジメントもしないといけないし、それから労働という意味で見たときの雇用の確保であった り将来性であったり、そういうことも全部自分で考えなければいけないということを考えると、 「補完的」といったときに、もちろん低年齢児の部分を保育ママでという部分の補完はいいと 思うのですが、保育所の補完という位置付けでは、この問題の解決はできないと思います。や はり急いだ方がいいと思いますが、丁寧な議論というのは必要だと思います。  もう1点は資料3-1の3ページのところ、子育て支援制度の基盤整備の方で「訪問支援事業」 「一時預かり事業」「地域子育て支援の拠点」事業等を推進していく必要があるのではないかと いうのは本当にその通りだと思いますので、どんどん推進していっていただきたいのですが、 参考資料ということで、資料3-2で14ページに実施状況を見ると自治体間の差が大きいという 指摘も先ほどあったと思います。本当に地方によって実情が違うので、それを全部並べて、こ こはこれだけ進んでいてという数字だけを見るのはどうなのだろう。もう少し深めて、いわゆ る過疎地域で子どもが本当に少ないので、常設のつどいの広場をするよりも、むしろ出向いて いって公民館などで出前広場をする方が有効といった地域もあるという話も聞きますので、そ の辺りを丁寧に見ていく。それには、これらの事業を何のためにするのかをきちんと確認して、 だからこれが必要で、そのためにこの箱を作るのではなくてこの事業を、ソフトをどのように 進めていくのかという辺りを丁寧に見ていく必要があると思いました。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。吉田委員が先にお手をお挙げになりましたので、その後に福島委 員、お願いします。 ○吉田委員  議論ばかりしていてはいけないと思いますが、全然違う視点でご検討いただきたいのは、保 育ママは家庭的保育機能でいうと、ファミリーサポートも家庭的保育機能だと思いますし、ベ ビーシッターも家庭的保育で、ベビーシッターは民間ですが、こども未来財団が一定の条件で 料金の割引クーポンのようなものを確か発行しているという意味では若干かかわりがある。そ ういった意味で、広い意味での機能としての家庭的保育にどう網をかけるのか。あるいは自治 体ベースのいわゆる保育ママとベビーシッターやファミリーサポートとどう仕分けをして、ど うバランスを取るのか。あるいは品川でありますが、病児保育、病後児保育に特化してNPO が家庭的保育をしているという、いろいろなケース・形態があるので、その辺をせっかくの機 会ですので、大きい網をかけて全体を整理した中での家庭的保育を一度検討していただくとい いと思います。 ○大日向部会長  それでは、福島委員のところで一度この議論は止めさせていただきます。 ○福島委員  手短に、2点ほど。一つは保育サービスを量的に増やすために、施設だけではなくて提供主 体の多様化をするというのは、私は結構なことだと思います。ただ、今、専門家の先生が言わ れたように、家庭的保育の場合はいろいろな事故やトラブルやリスクが実はたくさんあるので はないかと思いますので、どのような形でやっていくかは行動をしながらやっていく必要があ ると思います。一定のバランスを図りながら子育てを経験している方ができるだけたくさんか かわっていくという、底上げというのでしょうか。それをできるような仕組み軸をぜひ考えて いくことが必要だというのが1点です。  もう1点は少し違うのですが、現在家庭的保育と一時保育、それから地域の子育て支援につ いては、児童育成事業の枠組みの中で、国費分は国の一般財源だけではなく事業主の拠出金で 実は運営されています。これをいろいろ考えれば国、地方、事業主、個人それぞれがいかに負 担をしていくかということは、全体のワーク・ライフ・バランスの取り組みや他の制度もよく 考えながら、その辺のところを整理していく必要があると思います。問題提起ということでお 話をしました。 ○大日向部会長  ありがとうございました。活発なご意見をいただき、ありがとうございました。最後の方の 吉田委員と福島委員が家庭的保育あるいは一時預かりという言葉に対して、多様なイメージを お出しくださいました。多角的な観点でこの議論を進めていくことは確かにに吉田委員の言う ように必要だと思います。  ただ、私はファミリーサポートセンターの提供会員やベビーシッターの提供会員の保育の在 り方と、ここで言われているいわゆる施設型保育の代替として提案されている家庭的保育はか なり違うだろうと思います。ファミリーサポートやベビーシッターは1日数時間、テンポラリ ーな保育なのです。ところが家庭的保育は施設型保育というものを代替するものとして、そこ に家庭的保育の良さを生かしたというような提案です。そうしますと、ある家庭の中でかなり 長期的にわたって朝早くから夕方まで、親の就労時間に合わせて預かる保育をイメージして提 案をされています。そうしますと大石委員や庄司委員や杉山委員が言われたように、保育の質 をどのように担保していくかということを非常に慎重に議論してほしいとおっしゃることはそ の通りで、保育の質というのが家庭的保育ママになられる方の雇用という問題も含めた、質の 担保ということにもつながっていくだろうと思います。それもあって庄司委員が言われたよう に、家庭的保育に関してこれまで歴史的ないろいろな経緯があり、そこをきちんと私たちが勉 強した上で、この議論に何らかの提案ができるのではないかということはもっともだと思いま す。また今いろいろと言われているフランスの家庭的保育ママというのも一体どのようなもの だろうかという、研修時間が120時間と言われていますが、日本で考えようとしているものと 一体どういう違いがあるのか。その辺りもぜひ、できればこの部会で何らかの形で勉強する時 間をいただければと思います。  今、私が言ったことはともかく、今までの委員がおっしゃったことすべてを踏まえて、でき ましたら義本保育課長に何か一言おっしゃっていただければと思います。 ○義本保育課長  4時まで時間も迫っていますので、手短にさせていただきます。よろしくお願いします。 8人の委員の方々から非常に活発な議論をいただき、ありがとうございました。家庭的保 育事業については、特に国の事業としては参考資料の6ページにあるようにやっていまし た。国の事業は12年から始め、主に待機児童解消ということでやっています。一方で、そ れ以前から東京・横浜・近畿も含めてやっている歴史があります。 ご意見がありましたが、家庭的保育者へのなり手の方々のリスクや負担の問題についての ケアが十分でなかった。特に家庭的保育については孤立あるいは孤独という面があります。 もう一つは日本が施設保育中心で発展してきた経緯の中において、利用する保護者の方の 意識においても家庭的保育に対する理解が十分浸透していないという利用者サイドの面、 それからもう1点は、行政もそうですが、清原委員からネットワークあるいはサポートの 話がありましたが、制度として質も含めたそういった体制ができていなかったという経緯 があって、今の状況が出ているのではないかと思っています。 この点について参考資料の8ページにありますように、私どもとしては、バックアップ体 制の問題やなり手の方の研修や待遇の問題、それから制度化をきちんとしてガイドライン を作るといった形で、国として仕組みを整えた上で質を確保していくというような、いろ いろな面での取組みをしていくこととしています。その一歩として制度化ということがあ ると思います。ですから、いろいろな委員の方々からご指摘をいただきましたように制度 を作ればすべて終わりというわけではなくて、なり手の方々の養成や状況、清原委員から ご指摘をいただいたように、先行しているところの事例を見ていくなど、いろいろな取組 みを総合的にすることが大事だと思います。  ちなみに家庭的保育事業の予算ですが、20年度の予算は今19年度で2億円くらいですが、 それを3.5倍して7億円ということでまだ十分ではありませんが、家庭的保育者の方々の保育 の単価のアップや、事故が起こった場合の、例えば損害賠償の保険の負担を含める。その他、 バックアップする体制について強化するというようなことを少し盛り込んでいます。それも含 めて、次回に資料として出させていただければと思います。ありがとうございました。 ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは次回義本保育課長から、この家庭的保育や地域の育児一時 預かりに対して、制度化に向けて私たちが安心して制度化ゴーと言えるための、いろいろな検 討の資料のご提案をいただけるということですので、よろしくお願いします。  今日はIの検討だけで終わりそうですが、IIに関して先ほど小島委員がおっしゃりかけたの にストップをかけてしまい、大変失礼しました。次回へ宿題のような形で先ほどおっしゃりか けたことをおっしゃっていただいて、その小島委員の発言で多分終わりだと思いますので、よ ろしくお願いします。 ○小島委員  次回の議論につながるか心配はありますが、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の 策定について、これはそれなりの効果が出てきているだろうと思っています。育児休業法に基 づいて3歳未満の方の育児のための短時間勤務が制度化された法律がありますが、それが実際 に実施されている事業所について、これは私どものデータを幾つか調べてみました。3歳未満 の子どもがいる方の育児のための短時間勤務の措置が、301人以上いる企業で、2004〜2005年 は4割程度だったけれども、2006年になりますと事業所の数で5割を超えると。これは次世代 育成支援対策推進法の行動計画に基づく計画策定がスタートした結果ではないかと思っていま す。そういう意味で行動計画の作成というのは、これからもきちんと位置付けをしていく。徹 底すべきではないかと思っています。現在は策定義務が301人以上の事業所ということがあり ますので、それについてもう少し規模を中小規模まで下げて実施するということが、これから のこの行動計画を含めての、次世代育成支援の基盤になると思っています。  それと私どもが、この計画の作成が2005年4月以降、1年しばらくして、労働組合を通じて 各事業所が行動計画を策定したかどうかという調査をしたのですが、その301人以上の事業所 で見ますと、組合を通じて行動計画を策定したというのは8割強なのです。作っていない、あ るいはわからないというふうに答えたのが2割弱です。実際は2006年の10月くらいに調査を 終了していて、そのときには301人以上の事業所ではほぼ100%近く計画が策定されているの ですが、労働組合がそれを認識していないということは、当然従業員についてもそれが知らさ れていないということだと思いますので、そこは従業員に知らせるということはこれから一般 事業所では必要な措置だろうと思っています。それから労働組合も、策定や見直しについて労 使協議ということがかかってくるということを、結果的に従業員に知らせることになって、せ っかく作った計画を利用することにつながっていくと思いますので、そういうことがこれから 必要だと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。今日は初回で、皆さん一言ずつと思っていたら、まだごめんなさ い。宮島委員と内海委員がまだ一言もおっしゃっていないので、限られた時間で申し訳ないの ですが、お2人から一言ずついただけますでしょうか。 ○内海委員  内海です。保育サービスの待機児童ゼロは選択肢が広がっていいのですが、小児科の立場で 日々母親たちを見ていると、そういうサービスが広がれば広がるほど余計に忙しくて、余計に 大変になって、何かとてもかわいそうなのです。別の子育て支援サービスがもっと充実してい れば、いろいろな選択肢の中で特に0歳児、女性の就業率が高いと言われているスウェーデン は0歳児保育は基本的に公的にはありません。特別な事情のある人だけは私的に自分のお金を 払って0歳児保育を頼んでいますが、国の責任で0歳児にとって親の養育が必要だという確固 たる国の考えがあって、それに所得保障をして、親が親になる時間、親子が築ける時間を保証 しているわけです。そのことは日本では無理かもしれないけれども、目指すところはどこなの か。0歳児の2カ月・3カ月を預けて、みんなが働く社会になるのか。0歳児は個別に育てて、 それから集団保育に入れた方がいいのか。そこのところを十分考えないままに、生活のために 0歳児保育がなし崩しに広がり、病後児保育がなし崩しに広がり、このまま進んでいっていい のかなと、私は親子を見ていてそう思います。だから、もちろん選択肢が充実するのに必要だ と思いますが、私たちが子どもを育てるときに、子ども側からどういう子育ての社会が働く親 にとってではなくて、育ててもらっている子どもにとってどちらを目指していくのかというと ころを押さえられないと、あまりいい方向に進まないのかなと思っているのですが、その辺の ところを考えながら、こういう審議会も進めてほしいなと。 ○大日向部会長  わかりました。継続審議とさせていただきます。それでは宮島委員、お願いします。 ○宮島委員  宮島です。私は今回参加していて特に関心を持っているのが、利用者の視点に立った評価・ 点検をいかに構築できるかです。先ほどからお話に出ている保育サービス、保育ママ制度はど うしてこんなに広まらないのかとずっと思っていましたし、次のページにある一時預かり事業 などは、非常にいいシステムがありながら、例えば予約の仕方や何日前に頼まなければいけな い、何時間までしかいけないという具体的な使い勝手が悪いために、現実には全然使えないと いう声をよく聞きます。放課後児童クラブが広がっていて、放課後児童クラブ自体は専業主婦 の子どもと働く母親の子どもを分けないという意味ではいい事業だと思うのですが、現実問題 として保育園では7時半まで見てもらえたのに、学童保育になって6時になって、小学生にお 迎えが必要というのは私は実はショックでした。私の地域では6時ですとお迎えが必要で、し かも6年生までお迎えが必要だったりするのです。本当にこの事業が何を目指して、何を解決 するためにやっているのかということを、実際にそれをやっている人たちが理解しているのか、 と思いましたし、事業の役割と運用があっているのか、疑問を持ちました。さらに母親の立場 でその疑問をどこかにぶつけたくても、具体的にどこに言えばいいのかわからない。投書箱な どはあるのかもしれませんが、声を上げたところで利用者の意見がどう話し合われ、どう参考 にされたということがわからない状況です。利用者の声が反映する点検・評価システムを構築 することによって一つ一つの施策を改善していきたいと思っています。 ○大日向部会長  限られた時間で申し訳ありませんでしたが、貴重なご提言をありがとうございました。清原 委員、何かおありですか、それではお願いいたします。 ○清原委員  飯泉知事と私は自治体の代表でもあると思いますので、今後の議論のときにご配慮いただけ ればと思う点がございますが、ちょうど今、予算編成の大変重要な時期で、来年早々の会議は ひょっとしたら出席がままならないことがあるかもしれませんので発言させていただきます。 今回いろいろな制度を提案されるときに、国と地方公共団体の公費負担もやはりテーマになる と思います。これまでさまざまな児童手当等の施策を国が進められるときに、国だけが全部お 支払いただくのではなくて、県単位および市町村単位で地方の負担があります。私たちは大変 苦しい財政の中で経営していますので、国がこうした良い施策を提案されたとしても、例えば 交付団体と不交付団体とで負担の仕方が違います。一般には交付団体の方が交付税措置をされ、 不交付団体は自分たちが捻出しなければならないので、そこでそうした公費負担のバランスを 間違えて提案されますと、まさに地域格差が生じます。良い事業であればあるほど地域格差が あってはいけないので、このような提案をされるときも、事業の内容の質の維持を支える公費 負担の在り方についても念頭において議論が進めばありがたいなと、このことを一言だけ申し 上げます。ありがとうございました。 ○大日向部会長  今、清原委員が言われたことは先ほどご説明しましたが、資料1-1をもう一度ご覧いただき たいと思います。今日と来年の年明けに先行する課題について議論いただいた後に、公費負担 等含めた財源問題、財政改革等について議論の予定ですので、そのときもう一度ご発言いただ ければと思います。  時間が若干回りました。本当に時間が少ない中で活発な議論をいただき、ありがとうござい ます。きっとまだまだ皆さんには言い足りなかったことがたくさんあると思いますので、でき ましたら次回まで、こういうことをもっと話し合ってほしい、こういうヒアリングをほしいと いうご要望がありましたら、事務局にお届けいただければと思います。 それでは熱心な議論をありがとうございました。これで事務局にお返しします。 ○朝川少子化対策企画室長  本日は年末の大変お忙しい中、熱心に議論いただき、誠にありがとうございます。次回の日 程については2月1日(金)を予定しています。引き続き、先行して実施すべき課題についての 議論をお願いしたいと考えていますので、部会長はじめ委員の皆さま方におかれましては、今 後ともご協力の程をよろしくお願いします。また今後の開催に向けた日程調整表は机の上に配 布していますので、ご記入の上、事務局あてに送付いただきますようお願い申し上げます。ど うもありがとうございました。 ○大日向部会長  それでは、これで閉会とします。ありがとうございました。