07/12/26 交通労働災害防止専門家検討会(第3回)の議事録            第3回 交通労働災害防止専門家検討会 日時 平成19年12月26日(水) 13:30〜 場所 労働基準局第1・第2会議室 照会先:厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課 物流・サービス産業・マネジメント班 電話 03-5253-1111(内線5487) ○高橋副主任中央産業安全専門官 お集まりいただきましてありがとうございます。開催に先だ ちまして、配布資料の確認をさせていただきます。  資料1「交通労働災害防止検討会開催要綱」、資料2は「第2回交通労働災害防止専門家検討 会議事要旨」、資料3は「新たな交通労働災害防止対策のための検討事項」です。お揃いでしょ うか。  ただいまから、「第3回交通労働災害防止専門家検討会」を開催します。座長、以降の進行を よろしくお願いいたします。 ○根本座長 議事に入ります。初めに次第の1「新たな交通労働災害防止対策の検討について」 ですが、ガイドラインの案が用意されています。資料3に、これまで2回の議論のポイントと、ガ イドラインの概要(案)があります。事務局から検討事項の3までを説明いただきたいと思いま す。 ○安井技術審査官 資料3です。資料3の構成ですが、検討項目は従来から同じ形になっていまし て、まず調査結果です。それから、前回までの議論のポイントをまとめています。その次に「ガ イドラインに盛り込むことが考えられる事項」として、「基本事項」「留意事項」と示していま す。  「基本事項」というのは、基本的にガイドラインそのものと思っていただければいいと思いま す。「留意事項」というのは、留意的に通達などで示すものを想定しているもので、重要な事項 については全部基本事項に盛り込むと考えていただければと思います。  参考資料については、現在あるガイドラインとか、国土交通省の省令項目とか、そういった関 係のものです。すべての項目につきまして、このような構成となっています。  まず、検討事項1-1の走行計画、走行管理についてご説明します。調査結果につきましては、 従来からご説明しているとおりで、走行計画遵守等については、効果があることは認められてい るわけです。前回までは、まず戸別配送という運行形態につきましては、走行計画の作成は難し いのではないか、計画というのはただ作ればいいのではなくて、変更を前提にすべきであるとい うご議論がありました。  それから、走行計画は1つに定める必要はなくて、運行の方法などに応じて、いろいろなパタ ーンがあることを示すべきではないかということと、運行形態の区分けについて議論がありまし た。  そういったご議論があったことを踏まえまして、2頁ですが、基本事項として示している部分 です。まず走行計画に関する一般事項として、これは前回もご議論がありましたが、走行計画の 作成遵守というものに、交通労働災害防止の効果があることを明示的に書いています。  それから、走行計画というのは基本的には柔軟に変更できるものであることを明示していま す。走行計画の作成及び走行計画に基づく走行の指示ということですが、こちらの運行形態及び 配送先の種類に応じて、次に掲げる事項を記載した走行計画を作成して、適切な指示を行うとし ていて、項目としては3つ挙げています。  (1)は走行の開始及び終了の時点及び日時で、スタートと終わりの時間と場所は、当然に定める べきだとしています。(2)は運転者の休憩時間に関する事項で、これについても定めるとしていま す。(1)(2)は、すべての運行形態について定めることは可能であるということです。  一方(3)ですが、走行の経路並びに主な経過地における出発及び到着の日時の目安です。これに ついては、戸別配送については難しいという議論がありましたので、戸別配送は定める必要はな いという整理をしています。  それから、走行計画の作成に当たっては、「改善基準に基づいて適正な労務運転時間等を設定 したものとする」と書いています。  走行経路の決定については、決定ができる場合ですが、その場合は道路の地図、過去の走行記 録、あるいは道路情報提供機関といったものからの情報を収集して、適切な走行経路を決める。  交通安全情報マップについては、運転に際して注意を要する箇所、あるいは制限速度等の交通 規制、休憩・仮眠・食事・給油等の場所を地図に盛り込んだもの、交通安全マップと言われてい るものですが、そういったものを作成して配布することを盛り込んでいます。  走行計画の変更ですが、これについては道路状況、荷主の依頼によって、走行計画に記載され ている事項に変更を生じることがあるわけですが、そういった場合については変更する。その変 更された計画の伝達については、携帯電話により行うことは基本的に望ましくないことから、運 転手からの定時あるいは中間報告のときに伝えるというやり方を書いています。これはいろいろ とご議論をいただきたいと思います。  あとは運転者から荷主に直接、こうしろああしろと情報が入る場合もありますので、その場合 は運転者から事務所に連絡をして、走行計画の変更の指示を仰ぐ形にしています。  乗務実態の把握ですが、これは走行計画どおりに走行されていたかどうかの把握をする必要が あるということです。原則として運行記録計を用いてやっていただくことを書いています。ま た、デジタル・タコグラフの場合は、その記録を使った適正な走行管理あるいは安全走行指導に も活用できるということです。  走行計画どおりに走行できなかった場合の措置ですが、これは運転者から理由を聴取する、あ るいはタコグラフの記録の解析等によって、なぜ遵守できなかったのかという原因を把握する。 それに基づいて、走行計画を見直す必要があれば見直す。あるいは運転者に疲労が蓄積している ようであれば、疲労回復することを書いています。  留意事項については、走行計画の作成に当たっての運行形態の区分を書いていまして、これは 国土交通省の法令上の許可の分類として、特定と一般があります。一般の中には特定積合わせ荷 物運送や普通の運送もあるということで、特別積合わせとルート配送については、運行計路等は 定めることはできるわけですが、一般における戸別配送というのは難しいという区分で書いてい ます。  あとカーナビゲーションシステムを使った先進的なものについて書いています。それから、走 行計画の変更についても、例えば電子メールもあるのではないかという提案をしています。乗務 実態の把握については、GPS付きのデシタル・タコグラフのシステムもありますという紹介をし ています。  次は検討事項1-2の走行管理(勤務条件関係)です。これについては、改善基準に基づく拘束 時間、休息時間といったものを守っていないと、事故が発生しやすくなることとの有意な関連が あったということです。前回までの議論のポイントとしましては、季節変動の関係もあり、月当 たり拘束時間、年当たり拘束時間は一生懸命守っている状態だということと、荷物の積み卸しま での待機時間は問題があるということ、あるいは高速道路を使用すると運転時間は短くできるけ れども経費の関係があって一般道を使うといったご議論がありました。ガイドラインに盛り込む べき事項としては、まず、適正な労働時間等の管理で、いわゆる改善基準に定められている運転 者の労働時間等の改善のための基準を遵守していただくことは当然です。それに加えて効率的な 走行ですが、適切な労働時間等の管理のために高速道路の適切な使用等、効率的な走行管理を進 めるということです。これについては荷主の方のご理解が必要なわけですが、荷主の方について の議論は後ほども出てきます。  留意事項や通達に対しては、先ほどご説明しましたような疫学的調査において、13時間以上の 拘束時間、8時間未満の休息については、労働災害が起こりやすくなることについて有意な関連 があるという調査結果があることに言及するということです。  次に検討事項2の走行前点呼です。各種の調査結果では、睡眠時間が5時間未満であるとか、勤 務時間24時間の総睡眠時間が6時間未満といったところについては、統計上有意に事故が増える ことが認められています。それから、複数の海外文献において、睡眠不足の蓄積と、ラプスと申 しまして視覚刺激に対して反応できなかった回数の増加が明確になっています。  こういったことを踏まえて、前回のご議論としましては、データ不足でありますが睡眠不足が 事故につながるということは言えるのではないか。では睡眠不足はヒアリングの形で把握するこ とが妥当であろう。ラプス測定の機器を使うことは可能である。それから、睡眠不足の状況によ って、多少の睡眠不足の場合は事後的な指導でいいだろう。ただ、睡眠時間が著しく短いような 場合には乗せる前の対策が必要ではないかという議論で、著しいという部分については、具体的 な数字では難しいのですが、そういった場合については適切な措置が必要ではないかということ です。そもそも睡眠時間が短かった場合に乗せないと困ったことになるので、そもそもそういっ たことのないようにしていく必要があるというご議論もございました。  そういったことを踏まえまして、ガイドラインに盛り込んでいく事項として、まず点呼の実施 です。安全な運転を実施させるため、自動車の乗務を開始しようとする運転者に対して走行前の 点呼等により報告を求めるという形です。その報告の項目としては、疾病、疲労、飲酒に加え て、睡眠不足の状況を入れています。その点呼の記録も取っていただくということです、点呼に ついては原則対面ですが、やむを得ない場合は電話でも構わないとしています。  点呼の結果ですが、体調が不調である、あるいは著しく睡眠不足である等、安全な運転に支障 があると認められる者に対しては、運転を禁止し休養をとらせるなどの交通労働災害を防止する ための必要な措置を講ずることを書いています。詳細事項としては、睡眠不足の影響に関する疫 学的調査の文献について紹介しています。  次は検討事項3の荷役作業です。調査結果については、荷役作業をほぼ毎回実施している、あ るいは中程度以上の負荷がある場合に、事故の発生のしやすさと有意な関連があったというわけ です。ただ、荷役作業と疲労に関する調査というのは数は少なくて、明確な関連についてまでは 明らかになっていないということです。  これを踏まえた前回のご議論としましては、荷役作業というのは休憩時間をとる必要がある。 ただ、荷役が行われることが事前に把握できないケースがあるという問題がある。最近は運転者 は高齢化していることもあるので、個人に対する配慮が必要ではないか。走行計画を立てる際に 荷役作業がわかっている場合は、それを反映しますけれども、わからない場合についてはわかっ た段階で計画を変更する、あるいは機械化とか、荷受人側の配慮による荷役作業の負担軽減も必 要ではないか。  これを踏まえてガイドラインに盛り込むべき事項として、まず荷役作業に対する配慮というこ とで、荷役作業を運転者に実施させる場合にあっては、事前に荷役作業の有無、運搬物の重量等 を確認するとともに、十分な休憩時間の確保について配慮する。それから、事前に予定していな い荷役作業を運転者に行わせる場合には、その場もしくはその後に、走行計画に必要な変更を行 って、必要な休憩時間の確保を図る。荷役作業による運転者の身体負荷の減少を図るために、適 切な荷役用具の車両への備え付け、安全な荷役作業方法についての協力を行う。荷の適切な積載 については、過積載、偏荷重を起こさないようにするということが書いています。詳細事項とし ては、疫学的調査の結果を紹介しています。3番までの説明は以上です。 ○根本座長 最初から順番にやっていきます。検討事項1-1の走行管理、走行計画関係ですが、 2頁の基本事項、留意事項、論点を横目で見ながら、議論を進めていきたいと思います。いかが でしょうか。  基本事項の2つ目の○のところです。これは何回か議論したところで、走行計画の作成及び走 行計画に基づく走行の指示に関して、今回は(1)(2)(3)でガイドラインの案を作っています。論点で 「戸別配送」「ルート配送」という言葉を使っていますが、「戸別配送」の「戸別」は、「個 別」ですか、どちらを使いますか。 ○三浦委員 「戸別」ではないでしょうか。 ○根本座長 用語の使い方として、(1)(2)(3)は事業者の方は了解できるのでしょうか。 ○安井技術審査官 ルート配送というのが一般的な用語なのかというのはあるのですが。書き下 せばいいのかもしれないです、ある程度決まった所に行くというイメージですよね。 ○三浦委員 そうですね。 ○安井技術審査官 これは特積みとは違うということですよね。特積み以外で決まった所に行く ということですね。 ○高橋委員 これは距離だけの問題ですか。 ○安井技術審査官 いや、距離ではないです。行き先が決まっているかです。 ○三浦委員 国交省の中でも、こういったものはあったでしょうか。 ○山崎オブザーバー 国交省の中の表現は、いま知見がありませんので。こちらで確認してみま す。 ○根本座長 概念としては、昔は車立てで、A地点からB地点まで特定荷主の荷物を運んでいま した。それが1人の荷主の依頼だけれども、あちこちに卸していくとか、あちこちから集荷して いくみたいなものも出てきています。さらに最近は、ある荷主の荷物を積んで卸して、別の荷主 の荷物を積んで卸すといったように、積合わせをしながら仕事をするようになってきて、昔のA 地点からB地点みたいなものは少なくなって、複数の荷主の荷物を積み卸しするようなケースが 増えているということはよく聞きます。  そういったときに、戸別配送というのはどこのことを言っているのか、ルート配送とはどこの ことを言っているのかですね。普通、どのように業界では言葉を使うのですか。 ○安本委員 ご説明のあったニュアンスで受け止めています。 ○根本座長 ルート配送というのは、毎日決まった所を走るというイメージが強いのですが、違 うのですか。 ○安本委員 そのとおりです。 ○根本座長 毎日違った所へ運ぶが、ルートが定まっていればルート配送でしょうか。しかしコ ンビニとかのように、いつも同じ所に行くみたいなケースもあると思いますが、それは全体から 見ればあまり多くはないのですね。 ○安本委員 毎日ではないにしても、複数のルートを持っていて、そのいずれかのルートで走っ ていくようなことをイメージしています。  見る側にとっていろいろな理解ができる言葉ではなくて、ちょっと注釈を入れたほうが間違い がないのではないかと思います。業界の人は大体そういったイメージを持っているのですが、業 界でなくて補助的な任務で配送業務をする所も含めての安全指針であれば、誤解のない言葉にす るために、注釈をちょっと添えるほうがいいのかと思います。 ○根本座長 これは必ずしも営業用だけではないからということも込めてですね。 ○安本委員 はい。 ○根本座長 自家用トラックも入るのですよね。 ○安井技術審査官 適用の議論につきましてはいちばん最後にあるのですが、自家用と申します か、個人事業主は入らないのですが、法人が使っているものであれば入れるということです。 ○根本座長 そうすると、この走行計画の作成辺りの書き振りだと営業用を主にイメージで書い ていますね。 ○安井技術審査官 はい。 ○根本座長 製造業者、大きなメーカーなどの自家用トラックみたいなものもカバーできるよう に、もう少し一般的に書いておいたほうがいいですね。 ○安井技術審査官 後でご説明しようと思っていたのですが、25頁に表があるのです。縦軸は業 種で、横軸はハードウェアなのですが、それぞれいろいろな業種、業態、用途、やり方というの がありますので、必ずしもすべてのところに走行計画を作るように義務づけるのは現実的ではあ りません。例えばタクシーに走行計画はあり得るかというと、極めて非現実的です。そこは業態 に応じて、走行計画を作っていただくところ、点呼まではやっていただくところ、走行計画も点 呼もやらないで教育だけをやっていただくところの3段階のレベル分けが必要ではないかと考え ています。  ですので、現時点では営業用の車両を念頭に置いてご議論いただいて、あとは営業用の車両用 に作った文書が、どこまで適用可能かというので、もう一度検討事項8に戻ってご検討いただけ ればと思います。 ○根本座長 実際のガイドラインを発表するときには、「このガイドラインはこういう趣旨のも のだ」というのは、最初のほうにあるのでしょうね。 ○安井技術審査官 はい、適用は明確にします。 ○根本座長 フルに必要であるだろう営業用を頭に置いて、考えればいいということですね。 ○安井技術審査官 はい。 ○根本座長 戻りますが、いろいろな運び方がある中で、定型型のルート配送の場合は走行計画 を作りましょうということは、理解できますが、戸別配送を除くというのは違和感があります ね。戸別配送というのはもっと計画がしやすくならないですか。 ○安井技術審査官 いわゆる宅急便のような、毎日走る場所が違って、順番が自分の思うとおり にならない。配送しても留守でまた戻らなければいけない、そういうことが想定される形態で す。 ○根本座長 用語の使い方の問題ですね。 ○安井技術審査官 もう少し注釈を入れて、イメージがわかるようにしたいと思います。  お聞きしたいのは、走行計画の(1)(2)はすべての運行形態でできるのかどうかですが、これはよ ろしいでしょうか。 ○根本座長 今日のところは、用語の問題はペンディングにして調べるとしておきましょうか。 ○安井技術審査官 はい。 ○根本座長 あとはいかがですか。 ○安井技術審査官 走行計画の変更のところですが、実際にどのような形で変更しているのかだ と思うのです。私が別件で伺った話では、中間報告のようなチャンスがあって、運転者から連絡 があるときに伝えるというのが多かったのです。それ以外に何か方法があれば教えていただきた いのですが、いかがでしょうか。 ○根本座長 これは走行計画の変更の理由が何かによるのでしょうけれども、ここでイメージし ているのは、荷主の都合で受け取ってもらえないとか、急な集荷の要請がきたりとか、そのよう なことがあって最初に予定した走行計画通りにいかないような場合を考えていますね。 ○安井技術審査官 はい。 ○根本座長 そうすると、そういうことを運転者側が知る場合と、事務所側に連絡が入って、事 務所側から運転者に伝える、その2通りがあるでしょうね。そのときに何か特段注意しておくべ きことがあるかないか。 ○高橋委員 その中間報告は、例えば深夜に走っていれば、誰かが電話等で連絡を受けるのです か。 ○三浦委員 大企業の場合はそうらしいのですが、すべてにおいてそれができるかはわからない です。 ○根本座長 ただ、夜の場合は荷主の都合で変更ということではなくて別の理由ですか。 ○高橋委員 事故とか、あるいは急に雪が降ってきたとか。 ○根本座長 道路とか交通の関係で、変更が余儀なくされる場合もありますね。 ○高橋委員 こういった場合、走行計画を変えなければならないときに、事務所の承認を受けて というのが、どのぐらいできるのか。 ○根本座長 それは必ず受けなければいけないとなると大変ですよね。 ○高橋委員 ガイドライン上は原則となっています。 ○安本委員 その計画を計画どおりに運行しているときはほぼ問題ないわけで、何らかの変更が 生じたときに、安全に対する配慮の指示を出すとか、情報を与えるというのは、小さな業者であ っても緊急連絡体制は必ず持っているはずなので、夜中であっても何かあったときに連絡を取れ ないことは今はないはずなのです。それをこういった指針で連絡をしなさいということであれ ば、すぐに連絡できる。運転手が遠慮をすることなく連絡しやすいということは言えると思いま す。 ○根本座長 そうすると、その交通障害の程度に応じて運転者が判断して、事務所側に連絡する ということでしょうね。 ○高橋委員 これも荷主から運転者に直接に入ることは結構頻繁にあるからですか。 ○安井技術審査官 頻繁にあるということです。例えば着いた後にあるらしいです。 ○高橋委員 それも危険な状態につながることが多いという意味で特記していただいたのです か。 ○安井技術審査官 そうですね。事務所を介さないで運転手がご自分で判断してやられているケ ースが多くて、それはかなり負担だという話は伺っています。あまり事務所のサポートがないと いうことです。 ○根本座長 そうすると、あまり直接やってほしくないという意図が込められているわけです か。事務所を通して適切な管理を徹底させたいという気持があるということですか。 ○安井技術審査官 ええ、少なくとも事務所に関与していただきたいということで、ドライバー 任せにするのは望ましくないのではないかと考えております。とりあえず荷主の現場に行って、 運転手がそこにおられるのに事務所に電話をしてくださいというのは難しいと思います。直接の 要望は運転手が受ける場合もあると思いますので、そういう場合は事務所に連絡をして、事務所 の指示を仰いでやっていただくのが安全ではないかと思います。 ○根本座長 それは事業者にとって望むところですか。 ○三浦委員 そうですね。 ○根本座長 荷主の無理難題を運転者だけでは拒否しにくい場合もあるだろうからということで ね。そうすると、この書き振りでいいのかもしれませんね。いままでのところは問題ないです ね。 ○安井技術審査官 乗務実態の把握というところは、従前のガイドラインは運転日報を原則とし ていたわけですが、運転日報による業務実態の把握が統計上交通労働災害防止の観点からあまり よくないというデータがありまして、運行記録計を原則とするよう書き替えているわけです。こ れは実際上可能なのでしょうか。すべての車にタコグラフが付いているわけではないと伺ってい るのですが、その場合は運転日報によらざるを得ない車はまだあるということでしょうか。 ○三浦委員 国交省で義務づけられている車両というのがありまして、総重量が8t以上の大型車 両と、特別積合わせの車両です。それについては義務づけられていますので、事業者としてはす べて付けないといけない。それに該当しない中・小型の車両については付ける義務はないので、 付けていないところは多いようです。 ○根本座長 これだと、なるべく付けなさいということを主張しているような感じですか。 ○安井技術審査官 そうですね、特にデジタルタコグラフは後ほど出てきますが、安全運転指導 に使えるとか、いろいろ発展性がありますので、できれば使用いただきたいと思っています。実 態に応じてとは思っていますが、できるだけというところは書ければと考えております。 ○三浦委員 前回議論になりましたドラレコですが、デジタコあるいはタコメーターの装着義務 のない車が安全走行をしているかチェックするために、ドラレコを入れている事業者も結構ある のです。 ○根本座長 その意味では、デジタル・タコグラフという言葉で、役に立つ特定のものという と、ドラレコなどは除外されてしまいますね。 ○三浦委員 そうですね。ニュアンスとしてはそのように私は受けたのですが。 ○安井技術審査官 ドラレコはカメラですよね、それで走行管理はできないですよね。 ○三浦委員 できるものもあります。 ○安井技術審査官 できるものもあるのですか。それはデジタコに近いものなのですか。 ○三浦委員 はい。 ○平川委員 ドラレコという定義ははっきりないのです。デジタル式タコグラフは、国交省の技 術基準という中できちんと決まっているのです。しかしドラレコは決まっていなくて、いろいろ なものがあります。カメラが付いているものが多いのですが、かなりデジタコに近いものもあり ます。 ○三浦委員 国交省の認証を受けているのがデジタコであって、認証外の車載機がドラレコとい うイメージでしょうか。 ○平川委員 いいえ、違います。デジタル式の運行記録計というのは、昔の円盤のアナログ式の 運行計に代わるものとして、デジタル信号によって記録するデジタコというものがあるわけで す。それを国交省で認定しているのです。  ドラレコというのは全く基準がなくて、まさに自由な中でいろいろとメーカーが工夫をして造 っているわけです。主には映像という部分が多いのです。だから、運行の軌跡はあまり重要視し ていません。 ○根本座長 型式認定されていないデジタコも市販されていませんか。 ○平川委員 あります。それは逆に運行記録計とは言わないのだと思います。 ○根本座長 アナログのデジタコは付けておいて、別に認定を受けていないデジタコのようなも ので実際の運行管理を昔はしていました。しかし、2年ぐらい前にデジタコの型式認定が使い勝 手のいい型に変わって、それでだいぶ状況が変わったと思うのですが、デジタコといって市販さ れているものは全部型式認定を受けているのですか。 ○平川委員 デジタル式運行記録計というものは、すべて認定を受けています。それでないと運 行記録計とは名乗れないです。 ○山崎オブザーバー まさに定義の問題だと思います。デジタル・タコグラフとして認定を受け ているものについては、装着義務がかかっているものについて、アナログのタコグラフの代わり に付けることができます。国交省側の話になりますが、そういう形になっています。  一方、先ほど三浦委員から言われた、これはたぶん認定を取っていないものなのですが、ドラ イブレコーダーの中でデータを取ることができるもの、そういうものも市場には存在していま す。  たぶんここで書きたいのは定義をどう置くかは別として、走行管理に使うようなデータを電子 的に取れるものについては、それを運行管理に活用してくださいという話なので、そこをどう書 くかということなのかなと思いました。 ○安井技術審査官 タコグラフ以外のもので、そういった走行記録を電子的に取れるものがあれ ば、それでもいいということを書くのは難しいです。ただ、義務づけられていないところでは、 それでもよろしいわけですよね。 ○山崎オブザーバー そうです。 ○安井技術審査官 それでも運転日報よりはいいでしょうということは言えるわけですね。 ○根本座長 義務づけられている車両でも、それはそれで付けておいて、ドライビングレコーダ ーを別途付けているかもしれません。それを駄目という必要もないですよね。 ○安井技術審査官 ないです。正規のデジタコがある場合は正規のデータを使えばいいと思いま すので、問題は正規のデジタコを付けていない車の議論だとは思うのです。  ドライブレコーダーを使った安全教育などが後ろに出てきますが、とりあえずここは運行管理 の話をしておりますので、デジタル・タコグラフがあれば走行管理上は十分です。 ○根本座長 安全教育は別のところですね。 ○安井技術審査官 また別のところです。 ○平川委員 ここで言っている乗務実態の把握というのは、どの時点で運行を開始し、休憩し と、それを言っているわけですね。 ○安井技術審査官 そうです。 ○平川委員 それであればタコグラフでないとできないです。ドラレコはそういう機能を備えて いないものが多いわけです。ここの乗務実態の把握という部分では、「運行記録計」という言葉 が適切でしょうね。 ○安井技術審査官 ただ、型式認定を受けていないけれども、運行記録を記録する機械というの は市場にはあるということです。それを排除する必要はないということです。 ○平川委員 わかりました。 ○根本座長 この段階だとデジタコである必要もないようですね。デジタコはスピードを細かく 見られたりするという点では、タコグラフよりも数段優れているわけですが、開始時期とか、休 憩ということだと、タコグラフと性能は変わらないということですか。 ○平川委員 そうですね。 ○根本座長 ただ、デジタルデータだから管理しやすいという意味で違いがあるということです か。 ○平川委員 そうですね。従来の針によるアナログ式のものに比べて、デジタル信号であれば管 理がしやすいということです。管理者がデータ化しやすいということです。 ○根本座長 その意味では「デジタル」という言葉を入れておいてもいいのですかね。 ○安井技術審査官 最近アナログ式のタコメーターはあまり売っていないと聞いたのですが。 ○平川委員 あることはありますが、付けるのであればデジタコという傾向が強いです。 ○安井技術審査官 新車にアナログ・タコメーターというのは、あまりないのですか。 ○平川委員 あります。メーカーはまだデジタコを付けるところまでいっていないです。装着を 義務づけられているものはアナログ式が多いです。 ○三浦委員 メーカーはアナログ式で付けています。ある業者が、デジタコを付けるのでアナロ グのタコメーターを外してきてくれという依頼をしても、外す費用を考えたら付けて納車したほ うが安いという考えです。ですから、両方付けています。 ○根本座長 両方付いてしまうのですね。 ○三浦委員 管理はデジタコのほうがいいですから。 ○中村委員 1つ戻って、走行結果の変更のところですが、留意事項のところで「電子メール等 での伝達方法」というのがあったり、その下の基本事項では、「携帯電話による事務所からの連 絡は控えるべき」とあって、ドライバーのほうからしなさいということが示されているわけなの ですが、この辺の理由を知りたいのです。単にここだけを見てしまって、もちろん電子メールで 伝達すれば音声的な妨害効果はないわけですが、逆にそれを運転中に見たいということも出てく るわけです。そうすると、かえって音声信号のほうが運転に対する妨害効果は少ないのではない か。本当は電子メールで取っておいて、運転していないときに見ないといけないのです。そこま でを明記しておかないと、電話では駄目でもメールだったらいいのだと理解し、携帯電話のメー ルなどでどんどん送ってしまうと、今度はドライバーはそれを見ながら運転することになってし まいますから、そのあたりの説明を追加する必要があるのではないかと思います。 ○根本座長 メールが来たことがわかると、何となく見たくなってしまいますね。 ○中村委員 止まって見てくれればいいのですが、運転中に見てしまうケースが出てくると、こ こで「電子メール等が望ましい」としてしまうことによって、逆の効果になってしまう。 ○安井技術審査官 おっしゃるとおりだと思いますので、運転中にメールを読んではいけないと いうことは入れたいと思います。 ○中村委員 あとは先ほども話がありましたが、会社側からドライバーに対して伝達するのでは なくて、ドライバー側から会社に伝達するのが望ましい、それを原則とすることとあるのです が、そこもバランスが難しいところだという気がするのです。  ドライバーからしてみれば、例えばある計画に基づいて走り出したのだけれども、その5分、 10分先で渋滞が始まっているという情報があった。そこでもう一遍止まったほうがいいのか、そ のまま走行したほうがいいのかというのは迷うと思います。ただ、走行しながら連絡はあまりし てはいけないでしょうから、止まらざるを得ないのか。ここで止まるぐらいだったら、計画変更 をしなかったことにしてそのまま行ってしまうのか。言ってみれば、ドライバー側からすれば、 走り出せばある程度になるまではできれば止まらずに行きたいという気持があると思うのです。 その辺りのところを加味して、書き振りを工夫したほうがいいのかという気がします。  内容にもよるのですが、以前に別の研究で、ある伝達情報について、その情報を聞くだけであ れば運転に対するディストラクション効果はあまり大きくはないけれども、聞いた内容に対して 何らかの反応をしなければならない、口頭で応えなければいけないことが起きた場合に、そこで 非常に運転に対する妨害効果が大きいという結果もあります。  そうなってくると、単に情報を受け取るだけ、言ってみればラジオやBGMを聞いているような 状況だけで情報を取り入れるということであれば、あまり問題はないのかもしれません。事務所 とドライバーの間で難しいやり取りをしなければいけない状況になってくる場合であれば、それ は走行中は避けるべきということになってきます。ちょっと検討する必要があるのかなと思いま す。 ○根本座長 ハンズフリーの携帯電話みたいなものをどのように使うかということでしょうか。 ○安井技術審査官 通常は無線などが多いのではないでしょうか。 ○根本座長 国交省ではハンズフリーについて、ガイドラインのようなものはあるのでしたか。 ○山崎オブザーバー 国交省としてはなかったと思います。私が記憶しているのは、たしか全日 本トラック協会さんだと思うのですが、別途コミュニケーションに関する検討をやられていま す。実は今日同じ時間にやっているのですが、その中では運転者と事業者の間のコミュニケーシ ョンツールというのは、携帯が相当普及しているという調査結果が出ているようです。 ○根本座長 車に乗っているときは、携帯をハンズフリー型にしてくださいというのは理解でき るところですが、ハンズフリーでも気持がそっちへ行っていると安全ではないのではないか、と いう議論が最近出てきて、ハンズフリーを許すかどうかという議論があります。ここでは、意図 的に携帯は駄目というべきでしょうか。 ○安井技術審査官 そうですね、望ましいものを書くガイドラインですので、あまり望ましくな いことは書きたくないというのがありまして、仮にハンズフリーであっても、走行中に携帯とい うのは書かないほうがいいのかなと思っております。自治体によってはハンズフリーを禁止して いるところがあると聞いておりますし、ハンズフリーだから安全だというデータもあまりないと 聞いていますので。 ○根本座長 聞くだけだったらいいといっても、ハンズフリーで双方向だと、向こうから質問が きたときに応えざるを得ないですから、一方的というのは難しいですね。 ○中村委員 あとは、運転操作に関連するところでいくと、その定義も非常に広いのですが、会 話の中身が空間的な情報、例えば「当初の目的地を変更して、その手前を2km行った後、もう一 遍左に曲がって、さらに右に500m」という言い方をされると、ドライバーというのはその話を聞 きながら言葉で覚えるのではなくて、空間的に認知的な地図を頭の中に描こうとするのです。そ ういった情報の場合には、運転行動そのものは空間的なタスクになってきますので、その会話内 容というのが大きく影響してくる。 ○根本座長 安全ではなくなるわけですね。 ○中村委員 安全でなくなる方向にいきます。 ○高橋委員 ここの場合は2km先をどうのこうのという細かい変更の話ではなくて、大雑把な、 走行前に計画されたものを大幅に変えなければいけないとか、それほど細かいものではないと思 うのです。 ○中村委員 ただ、それは字面を見るだけではわからないです。本当にやってほしいのは、事業 主側から連絡を入れたい場合、それをやるべきではないというのではなくて、例えば早急に連絡 したいことがあるから、なるべく早めに休憩時間を取って、すぐに事務所に連絡を入れてくれと 一言だけを入れる。そこで細かいことはあまり言わない。あるいは、2〜3時間後でいいから連絡 がほしいと言っておくとか、伝言程度です。伝言程度のものを入れてもらう分であれば、おそら く事業者側からドライバーに対してメッセージを送ることも、決して悪いことではないと思いま す。 ○根本座長 それが逆に安全に寄与するケースもあるかもしれませんね。 ○高橋委員 ただ、ガイドライン上は書くのが難しいですね。 ○安井技術審査官 緊急の場合をどうするかという議論は確かにあると思いますが、原則として 停車中に会話をしてくださいというのは、妥当ではないのかなと思います。  ただ、おっしゃるように緊急に連絡を取らなければいけない場合があるかどうかですが、ある のでしょうか。走行計画に関してそんな緊急性はないような気がするのです。 ○三浦委員 通常ですと、そんなに頻度はないですよね。 ○根本座長 ある車が故障で止まってしまったから、その車から荷物をピックアップして届けて というのがあれば、途中で連絡したくなりますよね。 ○三浦委員 作業の区切り、目的地に着いたときに「着きました」という一報を、事務所に入れ るとか、大体そのようなルールにはなっていると思うのです。「荷物を卸しました、いまから次 に向かいます」とか、定時連絡ですかね。そういった中で、臨機応変にカバーできるとは思いま す。 ○高橋委員 変更の程度が問題になりますね。 ○根本座長 走っている途中で、向こうに変えろというのは、そんなにあるわけではないです ね。 ○安井技術審査官 電子メールであれば、とりあえず送っておいて、どこかに止まって見るとい う意味では、準緊急な連絡はできると思います。 ○平野安全課長 いまの三浦委員のお話だと、事務所への連絡は荷物を卸したときにするという 話でしたが、運行中にどのように走るかに関しては、裁量が大きいということなのですか。 ○三浦委員 いや、運行計画に従って走っています。 ○平野安全課長 では、その運行計画どおりに、例えば12時から1時まで休憩を取るという運行 計画になっていたのが、道が混んでいて12時から1時までの間は休めなかったという場合には、 休めなかったので1時から2時まで休憩しますという連絡がくるという感じですか。 ○三浦委員 そうです。 ○安井技術審査官 三浦委員のおっしゃったように、区切りで連絡されるのが多いということ で、例えば荷物を卸したときとか、中間点ぐらいに差しかかったときは多いと伺っています。 ○根本座長 それでは、ハンズフリーか何かは別にして、基本的に走行中に携帯電話はあまり書 き込む必要はないかなということですね。他はいかがですか。 ○三井委員 走行計画の記載内容なのですが、1つは荷役の有無とか、具体的な内容です。これ が変更になることが多いということですので、それは走行計画の中にも入れておいたほうがいい のではないかというのが1点です。  それから、代替経路と言うのでしょうか、例えば事故が発生したときにどこを通行するのか。 高速道路で事故が起こった場合は下に降りて行くのですが、どういったコースを走行するのかと いうのは、ある程度計画の段階で決めておくというのも、1つの方法としてはあり得るのかなと 思います。 ○根本座長 荷役の話はいかがでしたか。 ○安井技術審査官 荷役のところで、おっしゃるように荷役作業があるかないかで、特に休憩の 関係の走行計画の変動があることは書いてあるのですが、どのように走行計画に書けというのは 書いていませんでしたので、検討させていただきます。 ○根本座長 それは検討するとして、2つ目の代替経路ですが。 ○平野安全課長 いまの案では、道路事情などでの代替の部分については、走行計画の変更で対 処しようというものになっています。だから、前もって計画の中に代替みたいなことを決めてお くのがいいのか、そういう事情が生じたときに計画の変更で対処するのがいいのかということな のだと思います。 ○安井技術審査官 一般的にはルートB、ルートCと決めておいて、電話で「ルートB」と一言で 済ませたほうがいいような気はしますが。 ○根本座長 どこでその事情が変わるか読めないから、なかなかその代替案を事前に用意するの は難しいです。 ○三井委員 主として高速道路で、大体そこに並行してある国道がほとんどだろうとは思うので すけどね。まあ、状況にもよるでしょうけど。 ○安井技術審査官 「それが望ましい」と書くかどうかは、そういった代替ルートまで検討をし ておいて、それもドライバーに伝えておいたほうがいいとまで書くかどうかですね。 ○根本座長 必要がなければそれはそれで構いませんが、いまの点、どうでしょうか。運転手の 頭の中には大体入っている可能性が高いのでしょうね。 ○中村委員 おっしゃるとおり、代替ルートを何本か準備しておくのは必要だろうとは思うので すが、確かに高速道路と一般道路という形で分けていっても高速道路のどの地点で完全ストップ になるのか、あるいは自分がどこにいるのかという、その相対関係もあると思うのです。それに よって代替ルートというのは、例えばここから大阪の間だけでも、たぶん数十本出来てしまうと 思うのです。そうすると、東京-大阪間を走るドライバーは、その代替ルートを数十本常に持ち 歩かないといけないのかとなってくると、あまり意味はないような気もします。場合によって は、この先で渋滞しているというのがわかっていても、いま手前のインターで下りて国道を迂回 するよりは、まだ渋滞にはまったまま、ゆっくりでもいいから移動したほうがトータルでは結果 としていいという場合もあるでしょう。そうしますと、必ずしもここで何かがあった場合には必 ずこっちということは前もって決められるものではないような気がするのです。そのときの状況 次第で変わってきますので、その辺りは広く走行計画の変更というところで読んでしまうという ぐらいのほうがいいのかなという気がします。 ○三井委員 変更する必要は誰かが決めなければいけないのだろうと思うのですが、ある意味で は、そのときの準備があるかどうかという問題なのだろうと思うのですね。 ○安井技術審査官 代替経路を事務所が事前に検討しておいたほうが、円滑な指示はしやすいで しょうね。 ○根本座長 それはそうです。あとは問題提起があって気がついたのですが、この留意事項の上 から2つ目の矢印の所で、「カーナビゲーションシステム」という言い方が出てきますよね。カ ーナビゲーションということは、最終的な経路の選択をドライバーがしてもいいよと思われます ね。基本事項のところでは、どちらかといえば、変更のあるときは事務所に相談しながら決めて いくと議論したところです。だから、むしろ事務所サイドで、カーナビゲーションを使うという ことであって、車の中のカーナビゲーションは使わないで、相談しながら決めてくださいという 方が良いと思います。現在の表現だと、ドライバーがカーナビゲーションで、どんどんルートを 選んで走ってください、と読めてしまうかもしれませんね。このカーナビゲーションというのは 車に付いているものですか。 ○安井技術審査官 これは三浦委員からご説明がありましたが、事務所にあるカーナビゲーショ ンを想定されているようなイメージです。 ○根本座長 カーナビゲーションですか。 ○安井技術審査官 走行計画の作成支援システムなので、私は車に積んでいるというイメージで はなかったのです。 ○三浦委員 違いますね。私が発言したのは配送システムと連携した場合には、一気通貫でシス テムが運用できるという発言はいたしましたが、こういった意味のカーナビゲーションという位 置づけでは発言しなかったと思います。 ○根本座長 配車・配送計画支援システムというのがありますね。 ○三浦委員 そうですね。 ○根本座長 カーナビというと、どうしても車に付いているほうをイメージする人が多いのでは ないですか。 ○安井技術審査官 おっしゃるように私のイメージでは、このカーナビゲーションシステムとい うのは、必ずしも車に付いていなくてもいいという意味で書いていますので、そこは明確に書い たほうがいいと思いますが、いわゆるコンピューターとしてのエンジンは、カーナビそのもの が、たぶん付いていると思いますので、そういう意味で書いたのです。 ○根本座長 では、これはあくまでも事務所側のシステムだ、ということがわかるようにしまし ょう。ほかにいかがでしょうか。 ○中村委員 いまの点ですが、確かに走行計画作成に当たっては、事業所側がある程度責任をも って、配送や何かのルートを決めていくのがいちばん良いことだと思うのです。では、各ドライ バーが自分の車に付いているカーナビの中での渋滞情報を拾い集めて、さらにそこからルート変 更をして、それで勝手に走っては困るのですが、その上で、いま現地は、この状況ではこういっ た情報が入っていて、確かにここが混んでいるから、こういうふうに変更したい、私のカーナビ で見たらこのルートが良さそうだということを例えば事務所に連絡をして、これでオーケーかと いうような方向であれば、正しい使い方だと思うのです。そういった意味では、カーナビが入っ ていてもいいのではないかという気もするのです。 ○中村委員 ある事務所の担当者1人が、今日出て行っている車50台分のルート変更を、1時間ご とに全部やってということになると、とてもじゃないですが、たぶん回しきれないでしょうね。 そうすると、あくまでも事務所側からの指示でないと駄目だという書き方にしてしまうと、で は、本来付いているこのカーナビは、ただの地図表示装置になってしまうというところもありま す。 ○三井委員 原則として渋滞情報などを集めて、何時何分はこの辺りが空いているのだろうとい うことを前提に、おそらく走行計画は組んであるはずなのですね。これを見ると情報や規制など を集めて、その時間帯のいちばんいいルート、要は走行経路そのものをどう選ぶかによるのかな と思います。もちろん突然の現象もあるでしょうけれども、原則は原則としてやられたほうが、 むしろいいのかなと思います。 ○安井技術審査官 極力ドライバーに負担をかけないほうがいいというのが一貫した考え方では あるのですが、いま言われたようにカーナビがあれば走行計画は要らないだろうという議論にも なりかねないですし、これは事業者の方である程度責任をもって管理するという姿勢のほうがい いのではないかと思います。 ○根本座長 実はいま、トラックにはそんなにカーナビは付いていないです。ただ、どのぐらい の耐用年数かはわかりませんが、安くなっていって、リアルタイムの交通情報に応じてルートを 指示してくれるようなものが、だんだん出てきています。そういうものが安価になったら、ドラ イバーと事務所で、どういうふうに役割分担しながらルールを決めていくかというのは、まさに 今日的な話題になってくるかもしれませんね。ただ、値段も高いし、まだそこまでいっていない 感じですね。 ○安井技術審査官 次世代システムということであれば、もっと通信を使ってリアルタイムに把 握してとか、たぶんそういう世界になっていくと思います。事務所と車の連携が飛躍的に向上し てくれば、また全然、事情は違ってくると思いますが、そこまで先進的なことを前提にできない のです。 ○根本座長 そうしたら、カーナビゲーションというのはあまり書かないほうがいいかもしれま せんね。 ○平野安全課長 大原則は、運行計画を立てたのであれば、そのとおり行きなさいということで はなくて、柔軟に変更ができ、その情報を双方で確認しておくことだろうと思うのです。 ○根本座長 では、そういうことにいたしましょう。次は、1-2、勤務条件です。これは時間の 管理です。 ○安井技術審査官 これにつきましては、改善基準を守ってくださいというたった一言です。あ と、効率的な走行につきましては、改善基準をただ守ればいいということではなくて、より短い ほうが望ましいわけなので、できるだけ効率的な走行、これは労使双方にメリットがあるといい ますか、労働者にとっては労働時間が短くなりますし、経営者側としては当然早く着くわけで、 ガソリンが少なくなるわけですから、双方にとってメリットがあるということで、いかに効率を 上げるかということは書いておきたいと思います。 ○根本座長 高速道路を使ったほうが、例えば3回転しかできないのが4回転できるようになると か、そこで効率の改善が見込めるときは高速道路を使うことがあると思うのです。ただ、収入が 増えたり、コストが削減できなかったりすると、高速道路代だけプラスアルファーになってしま うこともあると思うのです。一方的に高速道路を使ったほうが効率的になるというのは、必ずし も言えないかもしれません。ケースバイケースだと思います。その意味では、高速道路を使った ほうがいいよという形になっているのは、ひょっとしたら言い過ぎかもしれません。 ○高橋委員 いま深夜の高速が少し安くなっている。 ○安井技術審査官 トラックの利用者には安くなっていて、割引されるということもあります。 ○根本座長 そうですね。 ○安井技術審査官 ETC使用者だけでしょうか。 ○根本座長 ETCだけですが、総体的には安くなる方向に少しずつ動いていて、使いやすくなっ ていると思うのですが、一般道路を走るのと高速道路を走るのでは、その部分の費用はかかると いうことですね。 ○安井技術審査官 これはおっしゃるように、高速道路の費用の側面については、荷主との交渉 の問題が相当あって、運輸事業者にとってみれば、高速を使ったほうが速くて効率がいいので す。ただ、あとはそれだけの料金を回収できるかというところだとは思います。一般論として、 ドライバーにとってみれば、高速を使ったほうが運転時間が短くなりますし、燃費も一般論とし ては良くなります。 ○三井委員 安全ですね。 ○安井技術審査官 そういう側面もあります。 ○三井委員 高速道路のほうがおそらく事故の発生率は少ない。 ○安井技術審査官 ですから、高速料金まで含めて効率的かと言われると、おっしゃるようにケ ースバイケースだと思いますが、ここで言っている効率というのは、純粋なお金のベースの効率 性だけではなくて、もっと広い意味の効率性を書いています。 ○根本座長 そういう意味では、高速道路をなるべく使いましょうということを謳ってもいいの ではないかということですね。安全のことを言うと、それはよく理解できる。 ○安井技術審査官 そうですね。労働時間も短くなり、走行の難易度も下がり、なおかつ燃費も 良くなるわけですから、お金さえかからなければ非常にいいものなのです。ただ、それが経済的 に見て、お金のベースで見て効率的かというと必ずしもそうでない場合が、あると思います。 ○根本座長 そこは逆に私は質問をしたいのですが、厚労省のスタンスとして、例えばある工場 があって、その工場が機械を買う、その機械を買うと労働時間が少し短縮できるし、少し安全に なるけれども、この機械が高い。しかしこの機械を買いなさいと言うときのスタンスですね。こ の機械は高いけど買ったほうがいいよと、どこまで言えるかということだと思うのです。 ○安井技術審査官 一般的な話はしにくいところがございますが、特に安全衛生行政は、経済的 な話は極力しないようにしています。やはり人命尊重の観点から、危険な機械を使うのは避ける べきだと。ですから、どちらかといえば、危険な機械を使い続けることによるデメリットのほう を強調するような指導をすることが多いですね。しかしながら、いや、我が工場はお金がないの でこれは買いませんということもあります。そこは粘り強くご理解をいただくよう説得する。ど ちらかというと、社会公益的な側面から説得を試みることが多いですね。 ○高橋委員 ここも全般的に、高速道路の使用を推奨しているわけではなくて、状況に応じて適 切に、という判断が1つ入っているわけですよね。 ○安井技術審査官 そうですね。1つは例示ということもあるので、ほかに例示があればそれで もいいですが、ただ、高速道路の適切な使用というところに「適切な」を入れておりますので、 適切に使えるのであれば、それは使ったほうがいいということです。 ○中村委員 例えば「高速道路の適切な使用など」とありますが、「高速道・一般道などの適切 な使い分け」などぐらいだったら、もっとしっくりいきますかね。 ○根本座長 そちらのほうがむしろ、私はわかるような気がするのですが、どうですか。 ○安本委員 最近のETC割引などのシミュレーションをしていないのですが、何も割引のない状 態で東京-大阪間の高速を走ったら、コストは倍かかるのです。だから、使いたくても使えない という業者が多かったのです。だから、選択肢として使える場合は使いなさいということを、あ る程度、幅をもって審議していただいたほうがいいと思います。使いたいのだけれど使えないと いう所がまだまだ多かったものですから。 ○安井技術審査官 この「適切に」というところを、もう少し文章に書き出すなり、留意事項に 入れるなりしたいと思います。 ○根本座長 他はいかがでしょうか。ここはこんなところですかね。事前の打ち合わせの中で、 基本事項と留意事項と、どう使い分けるかという話の中で、今回、この研究が科学的なデータに 基づいて、疫学的なデータなどを引用しながらディスカッションをしてきたわけですが、事業者 の方によく理解してもらうために、この留意事項のポイントとなるようなところは、基本事項に 格上げして目に触れるようにして、そして、多少、啓蒙しながら、この基本事項の遵守をお願い していくことが非常にいいのではないかと思いますがいかがでしょうか。  この基本事項と留意事項で伝統的に使い分けの仕方が役所であるのでしょうから、あまりガイ ドライン、本体そのものには細かい根拠となるような話までは入れないのだよみたいなことがあ って、いまこういうふうな仕分けになっているのかなと思いますが、何かご意見があれば、留意 事項のうち、これは面白いから基本事項に少し入れておいたらということがあったら構わないの ですかね。 ○安井技術審査官 例えば2頁のいちばん上の部分の、走行計画に関する一般事項のところです が、「走行計画の作成および遵守には、交通労働災害防止の効果が認められる」という記載を入 れている部分もありますので、こういった程度の表現であれば、それぞれ散りばめることが可能 だとは思います。 ○根本座長 そうですね。効果があるよ、災害が減るよという情報はできるだけ配慮して入れて おいたほうがいいかもしれませんね。  では、次に行きます。次は、走行前点呼で7頁、ガイドラインは8頁です。過去の議論では、睡 眠時間のことが結構問題になって、睡眠はもちろんきちんととってもらわなければいけないので すが、とっていないことがわかったときどうするのだという話が、少し議論になりました。 ○安井技術審査官 こちらに関しましては睡眠不足の状況も含めてですが、基本的にはその報告 を求めるという形にしているので、いわゆるヒアリングです。点呼のときに簡単な問いかけをし て、向こうから答えてもらうというのを想定しています。 ○根本座長 著しく睡眠不足の者は、運転を禁止するということですね。 ○安井技術審査官 そうですね。これは例示で、「禁止し、休養をとらせる等」なので、ほかの 何か方法があればいいわけですが、実際はなかなか難しいと思いますので、禁止を原則にしてほ しいと思います。 ○根本座長 事業者としては、こういうものがあると、運転手に対していろいろ指導をしていく 上ではやりやすいですか。 ○三浦委員 現実的にはもう、朝の点呼のときに顔色を見ながらやっています。 ○根本座長 睡眠不足は顔を見れば大体わかりますか。 ○三浦委委員 いやいや、それとヒアリングです。そういった中でやっています。 ○根本座長 こういう書き込みをしても、実務上問題ないし、むしろそういうことをちゃんと裏 付けるガイドラインになるからいいということですかね。これは数字でコントロールするのは難 しかったのですよね。 ○高橋委員 そうですね。ここにある基本的事項の書き方が、非常にうまい書き方になっていま す。 ○安井技術審査官 留意事項に就床3時間程度が連続した場合はよくないとか、そういう客観的 なデータについては書いてあります。ただ、一体何日間連続したら駄目だとか、かなり個人差も ありまして、なかなか書き込めないですね。あるいは極めて著しい場合を、あえて書くという手 もあるのですね。いちばん低いデータですが、就床3時間で7日間はもう駄目だとか、本当に誰が どう見ても著しい程度を書くというのはあるかもしれません。 ○高橋委員 睡眠の研究では、徹夜した後がどうなるかなどという研究はもう何十年とやられて きているのですが、たかだか何時間かの睡眠不足が幾夜も続いた慢性的睡眠不足については、こ の数年にようやくデータが出始めたばかりです。前回示したように、1〜2週間、3時間とか5時間 が続けばと安全性が低下することが、ようやくわかりはじめてきた段階なので、文言的にはこう いう形かなと思います。 ○根本座長 わかりました。これも数値例を書いてしまうと、では、そこまではいいのだなと逆 の効果を生むということがあるかもしれません。 ○高橋委員 もう1つは、前回も議論になった5時間とっていればいい、7時間とっていればいい のかという問題と、もう1つ睡眠障害の問題等も絡んできます。7時間、8時間寝ていても、睡眠 のご病気を持たれている方では、いい睡眠がとられていない場合がある。そうなると問題がさら に複雑になるので、ある程度総体的というのでしょうか、まとめて抽象化した形で書くのが現実 かなと思います。 ○根本座長 よろしいですか。 ○三井委員 おそれの有無について報告を求めるということは、ほとんどの場合はおそれ無しに なるのだろうと思うのです。これは、要するにその状態を聞くということではなくて、全部の回 答が「おそれ無し」というようになってしまうのではないでしょうか。ちょっと細かい話なので すが、「点呼等により、運転することができることのおそれの有無について報告を求める」とい うことは、点呼とは少し違うのかなと思います。点呼というのは、「大丈夫か」「オーケー」と いうことイメージがあります。どういう書き方かはわかりませんが、その状況ですから、「どれ くらい寝たの、十分睡眠をとっているか」、「とっています」というものですね。おそれの有無 というと、みんな無し、無しの報告になってしまう。細かい話で恐縮なのですが、これはどうい うものを記録して残しておくのでしょうか。例えばきちんと結果を記録して、「あなた、ちょっ と睡眠不足の日が多いね」とか、それを安全運転の指導に使う目的であるならば、単に有無だけ ではなくて、もう少し何か残しておくものがあるのかもしれない。この辺がちょっと曖昧という か、わからない部分があるかなと思ったのです。むしろ体調のチェックを行うほうがわかりやす いのかなという感じはするのです。 ○安井技術審査官 睡眠不足の問題もそうですが、例えば疾病の場合ですね。「私はこういう持 病があって」ということを聴き取るまでの必要はたぶんなくて、とりあえず私はいま風邪をひい ているので運転できないと思います、という事実を把握すれば事業者としてはいいのではないで しょうか。要するに病名など、そこまで押さえる必要があるのかというと、プライバシーの問題 もありますし、若干疑問があります。睡眠不足も、8時間寝たという事実を把握する必要はなく て、睡眠不足で今日は運転は難しいと思います、というおそれを聴き取ることです。 ○三井委員 「おそれがあります」と言う運転手はいるのでしょうか。 ○中村委員 関連するところだと思いますが、点呼に来ているという段階で、もうおそれはあり ませんというつもりでたぶん来ていることはあると思います。本当に体調が悪くて、今日はとて も無理だと思えば、家から電話をして休む形になるでしょうから。ただ、ここで大事になってく るのは、本来この場の議論とは別かもしれないのですが、逆にドライバー自身がそこで、「私は できます」ということを宣言することも、1つ自覚をもってもらうことでもあり、また体調管理 を自分の責任でやってくださいというところの、1つの現れにもなるのかなと思うのです。 ○根本座長 そうすると、その有無を言わせるのはいいということですね。おそれがないです よ、大丈夫ですよと。ただ、そのときに「2時間しか寝ていないですが、私は絶対大丈夫です よ」と言ったときはどうするのですか。 ○中村委員 そういう場合も出てくると思います。そこまで遡って、本当にその人が何時間寝た のかと、前の日のデータを出して見せなさいというわけにもなかなかいかないでしょうから、そ の辺り、罰則規定や何かの話に絡んでくるところはあると思うのですが、そこで虚偽の申告をし たドライバーに対しては、どうするのだということが出てくると思うのです。 ○根本座長 虚偽ではなくて、「2時間しか寝ていないが、私は絶対大丈夫です」と言ったとき はいかがでしょうか。 ○中村委員 もちろん大丈夫かもしれない。 ○安井技術審査官 おそれの有無は、必ずしもドライバーがおそれが有るか無いかを判断する必 要はなくて、やりとりの中で事業者がおそれがあると判断しても、別にいいと思うのです。 ○三井委員 ただ、これだと、「有無について報告を求め」ですから、おそらく運転者が有無に ついて報告するという意味ですよね。 ○高橋委員 これは運転者が報告することになっていますよね。  ○三井委員 そうですね。 ○根本座長 それに基づいて最終判断、つまり運転席に乗っていいかどうかを判断するのは事業 主にしたらいかがでしょうか。 ○安井技術審査官 そうですね、おっしゃるとおり「私は2時間ですが、おそれがない」という 申告を仮にドライバーがやったとして、それを踏まえて、著しく睡眠不足であり、安全な運転に 支障があると認めるというのは、事業者が認めるわけなので、ドライバーが「私、大丈夫です」 と言っても、事業者が「いや、駄目です」と言えるようにはなっています。 ○根本座長 そうすると、遡って何時間寝たかということも同時に聞かないと、本人からのおそ れの有無を自動的に信用するわけではないのですね。 ○安井技術審査官 おっしゃるとおり、「睡眠不足の状況により安全な運転をすることができな いことのおそれ」ですから、状況を聞いて判断するということにはなると思います。 ○高橋委員 結局その辺は、いわゆる数字の独り歩きが懸念される部分もあって、7時間がその 人にとって必要十分なのかどうか、では6時間は駄目なのか、8時間なのかという議論になって、 きりがなくなってしまうと思います。だから、おそらく7時間とか8時間でいい数字なのではない かとは思うのです。しかし、例えば50代の労働者が7時間、8時間寝るのは確かに厳しい。 ○根本座長 だから、微妙な7時間、6時間、5時間は個人差もあるだろうし、そこで切るという ことはなかったとしても、3時間より少ないと駄目ですよねという明らかなところがあるわけで す。ここのところで睡眠はいくらとってあるのですかと聞くことは、3時間より少ないか多いか ぐらいの、大雑把な評価のためには必要だから、一応、数字は聞いておくことにしたほうがいい のではないですか。 ○高橋委員 アメリカだったかヨーロッパだか忘れたのですが、10〜20代前半の若者の話で、ス ピードを出していると事故が起こりやすいし、彼らは睡眠不足のまま、徹夜で走ったり遊びに行 ったりしますので、事故の責任を問うときに、2時間という1つの閾値を設けようとしているとこ ろもあるそうです。もし、ここのガイドラインの中で3なり4なりという数字を出せれば、安全的 には一歩前進するようには思います。 ○三井委員 これは法律上の責任に波及するわけですか。 ○中村委員 ただ、その辺を明確にしておかないと、例えば3時間とラインを決めたときに、で は2時間59分では駄目で、3時間01分であればオーケーだというふうにならないはずですよね。そ ういった意味では、数字を明確に出すことの難しさがあります。たとえ十分なレベルの数字の値 を出そうにも、ここから先は駄目ですよという値を出そうにも、その扱いとしては非常に難しい ところはあるのではないだろうかと思います。  逆に先ほどご発言があったように、法的な意味で、どういった処罰まで含めるのかというとこ ろの議論まで踏み入って、1つこういう基準を作ろうということであれば、3時間以下の睡眠時間 の場合には、一切乗務させない、乗務させた場合には事業主にもその責任を問いますといったも のまで作ってしまうというのであれば、数字を出すことの意味はあるかもしれません。 ○根本座長 ガイドラインには、そこは重いですね。 ○三井委員 難しいですね、例えば飲酒とか疲労とか睡眠とか、総合的に判断するのだろうと思 います。睡眠だけ例えば4時間とっていても、非常に疲れていると、総合的に見て運転はやめた ほうがいいのではないかという話になるので、1つの項目だけで決めるのは、なかなか難しい。 要するにチェックというか状況を見て、「昨日、酒飲んだのか」とか、あるいは「疲れている か」などを聞いて、最終的に事業者が顔色を見ながら判断する、いまも通常そういう形でやって いますが、そのような形になるのではないかと思いますね。 ○根本座長 改めてこれを読んでみて、どうすればいいのでしたか。ここのおそれの有無の所 は、ドライバーの判断を確認すればよいのでしたか。 ○安井技術審査官 そうです。聞くだけですから、これはこれでいいのかなと。 ○根本座長 それで最終的に判断するのは、事務所側ですよということがわかりやすくなってい ればいいということですね。 ○高橋委員 あとは文言の「おそれの有無」の「おそれ」というのをいま入れるかどうかという 問題かなと思っていまして、事実をここでは聞くだけで、運転者に今日できるかどうかを聞いて もいいですし、報告をさせてもいいですが、最終的にそのおそれがあるかないかは事業者は判断 しなければなりません。 ○根本座長 おそれの代わりに、ここは何という言葉を入れておくのですか。 ○高橋委員 聞くべきことをリストアップしてはどうでしょうか。 ○根本座長 こういうことに影響しそうな項目について報告を求めるということですか。 ○高橋委員 報告を求め、結果を記録する。それに基づいて最終的にいろいろ総合判断をして、 乗せていいかどうか判断する。それは文言の問題です。 ○安井技術審査官 実は、国交省は点呼の省令で「おそれ」を入れているのですが、疲労・疾病 について聞けと言われても、医者ではあるまいし、個別の病名を聞いて判断できないと思いま す。疲労なんて、なかなか表現できないですよね。「私は昨日何時間重労働をしました」とか言 われてもよくわかりません。結局体感しているものとしては、自分の体調も含めて、運転に支障 があるか、おそれがあるかどうかというところぐらいしか、ドライバーはたぶんわからないと思 うのですね。 ○高橋委員 先ほどの議論で、プロのドライバーとして、自分の責任の下でできますと言うの が、1つの意味があるという議論であれば、このままでもいいと思います。 ○安井技術審査官 それで、おっしゃるように、「おそれがありますか」という設問は1つだけ あって、「おそれはありません」と答えることは実際はおそらくないと思いますので、睡眠不足 のように見えれば、昨日は何時間寝たのだという会話に当然なっていくと思います。ただ、ぎり ぎり言えば、例えば疾病を把握しろということになると、では、診断書を持ってきなさいという ほうに、どんどん行ってしまいます。 ○三井委員 疾病や、それぞれが持っている病気などというのは、健康診断が後のほうで出てき ます。例えば高血圧など、事業所としてはきちんと把握しておいて、スケジュールを考えてあげ るのが当然の義務だと思います。申告してこない限り事業所は知らないから、予定通り運転業務 を実施してもらうというのは、むしろおかしいのではないかとは思うのです。それはプライバシ ーという問題ではなくて、その人の安全を確保するためには、当然のことではないのですか。 ○安井技術審査官 それは健康管理の議論ですね。 ○三井委員 そうです。 ○安井技術審査官 後ろのほうに出てきますが、当然、健康診断に基づいて、適切な健康管理上 の措置をとっていただかないといけません。 ○三井委員 当然それと関連しているわけですね。 ○安井技術審査官 それとは関連しますが、どちらかというと、点呼においては持病という側面 もありますが、風邪をひいて熱があるなど、突発的な病気を主に把握することだと思うのです。 毎日把握しなければいけないところは、まさにそこにあるわけです。持病であれば半年に1回な りの健康診断で把握すればいいわけです。これは、どちらかというと、そういった突発的な疾病 をメインにしています。  その場合、いま何度の熱があると言ってきたり、運転できるかどうかというのは、医師の診断 でないとできないですから、事業者の中では何度とかいう客観的な数字をもらっても判断しきれ ないです。そこは自己診断というか、自分の判断を聞かせてくれというところなのではないかと 思います。 ○安本委員 事業者側として、その任務を拒否できる数字というのはありますよね。例えばアル コールチェッカーで、アルコールが検出できた場合とか、高血圧であるとかいった明確な数字 で、これは危ないから勤務をさせないと言うことはできると思うのです。点呼の場合でできる把 握の仕方というのは、数字で把握できるもの以外に顔色のチェックであるとか、日常からずっと 見ているわけですから、今日の様子で疲れているなということも把握できるので、そういう包括 的な意味で把握しなさいという意味の点呼と受け止めれば理解できるのではないかと思います。 ○根本座長 いま血圧のことを言われましたが、血圧がこれ以上だと危ないよという数字みたい なものはあるのですか。 ○安本委員 例えば建設業であれば、高所作業禁止の血圧は160です。 ○安井技術審査官 それは社内的に決められているもので法令上での定めがあるわけではないの です。 ○安本委員 そういうことを指導される医者が多いということです。別にその基準があるわけで はないのです。 ○安井技術審査官 この辺りにつきましては、著しいという数字をどこまで書けるかも含めて、 再度、検討したいと思います。あと、若干お伺いしたいのは、記録をどこまで取ればいいのかと いうことなのですが、これは非常に簡単に考えれば、点呼をしたという事実だけを記録すればい いという考え方と、おそれがなかったという極く簡単なことを書けばいいのか、あるいはもう少 し具体的に、例えば睡眠不足はなかったと、そういうところまで記録する必要があるのかとかい った問題はあるのですが、実際は点呼の記録を行った事実がほとんどではないのかなと思うので す。 ○根本座長 誰と誰が点呼に来て、きちんと確認しましたよということが記録に残るだけです か。 ○安本委員 業務日報か何かで、健康チェックという項目があって、健康チェック「○」とか、 「睡眠不足」などと書くようにはなっています。 ○根本座長 それは一人ひとりについて書く欄があるのですか。 ○平川委員 運送業においては、点呼簿というのがありまして、その点呼簿にドライバーが誰 で、何月何日の何時に運行管理者の誰が点呼をしたという記録があるわけです。その中に疾病・ 疲労・睡眠不足・飲酒という欄もあって、そのチェックをするというのが一般的な点呼簿として 備えられています。それはほとんどの事業所においては日ごとにあるのです。乗務に当たっての 運転前の点呼ということです。点呼というのはある意味、プロドライバーであればプロドライバ ーとしての、運転を開始するに当たって、要は自己管理的な部分で疾病などいろいろなものに対 して、まず報告を求めて、その点呼のときに運行管理者は自分の経験の中で判断をして、運行の 可否というか、乗務を認めるというものが点呼なのです。ですから、記録は記録として残して、 その結果どうであったかというものを記録していくのが点呼簿であったり点呼なのです。まさに ここに書いてあるとおりです。 ○根本座長 運行管理者はただチェックをするだけではなくて、そこの帳面にメモを書き入れた りするのですか。 ○平川委員 点呼簿の様式もいろいろありますが、一般的には先ほど申し上げたように、何月何 日の何時何分、ドライバーが誰で、点呼実施者が誰で、そして疲労・疾病・睡眠という部分をチ ェックする欄があって、その他、指示事項があるのです。そのドライバーに対しての指示事項と か、運行に当たっての指示事項があります。この指示事項は何をしたか記録をする点呼簿が備え られているのです。 ○高橋委員 その点呼簿の中では、睡眠がかなり不足しているなど、睡眠状況が悪かったという ことも、ほとんど聞いていますか。 ○平川委員 それは要するに聞き方なのですが、例えば睡眠は何時間程度とりましたかなどと聞 く事業所もあります。設問の方法はいろいろなのです。いずれにしてもそういうことを確認した 上で、それを記録するということです。 ○高橋委員 問うべき項目の1つとして睡眠はほとんどの事業所で入っていますか。 ○平川委員 入っています。また、飲酒もそうです。最近はアルコールチェッカーを使います が、アルコールチェッカーが普及する前は「飲酒等についてはどうですか」ということも聞いて います。 ○根本座長 現状の仕組みで、かなり対応できているということですか。 ○平川委員 ええ、それがここに書かれているような内容です。 ○安井技術審査官 そういったものであれば、点呼簿というのを、どこまでガイドライン上書く かはまた別ですけれども、記録についても若干記載したいと思います。 ○根本座長 次は荷役作業です。これはどういう論点でしたかね。 ○安井技術審査官 これにつきましては、結局明示的にどうしようという議論はなかったわけで すが、とりあえず休憩が必要ではないかということで、十分な休憩時間の確保ということを重点 に書いています。 ○根本座長 荷役作業を終わった後で運転をする前に、休憩時間をとってから運転をしなさいと いうことですね。 ○安井技術審査官 当然、後だとは思いますが、その直後である必要は必ずしもないかもしれな いです。ただ、ではどれぐらいの頻度で、どれぐらい時間をとればいいのかというのは、目安に なるものがお示しできないのです。 ○根本座長 荷役作業がどの程度のものかわかりませんからね。基本的には問題はないと思うの ですが、いかがでしょうか。例えばドライバーが「荷役作業をしました。休憩時間を2時間くだ さい」と言ったら、事業者は困るでしょうか。 ○三浦委員 まず、そういうのは現実的にはありません。 ○根本座長 では、そこは心配することはないですね。 ○安井技術審査官 休憩時間はもともととらなければいけない。改善基準上も2時間に1回とらな ければいけない。ただ、それ以上とらせるかどうかというところまで踏み込めないですね、最低 基準を上回るところは。 ○根本座長 いまでも休憩時間というのは運転時間に対して何分ですか。 ○安井技術審査官 一般的に労働基準法上は、休憩時間というのはあるのです。どういう作業を 行っていても一定の程度で休憩を入れなければいけないという最低基準はあるわけです。ですか ら、それ以上、与えるかどうかというのは難しいです。 ○根本座長 運転時間に対して休むというのと、また労働時間に対して休むということは決まっ ているのですね。 ○安井技術審査官 そうですね。 ○根本座長 それ以上のことを、これは言っているのですかね。それ以上のことは言っていない のですか。 ○安井技術審査官 それ以上とは書いてないですね。 ○根本座長 その両方が満たされていれば、問題はないかもしれないし、それは荷役作業の程度 によりますね。 ○安井技術審査官 程度によります。 ○平川委員 適切な荷役用具というのは、台車などというイメージなのですか。 ○安井技術審査官 そうですね。台車もありますし、テールゲートリフターとか、場合によって はクレーンというのもあると思います。 ○根本座長 欧米の荷役と比較して、日本の場合は手積みが多いですね。なるべく機械を使いま しょうと、これは先ほどの高速道路をなるべく使いましょう、というところとある意味一致して いますね。 ○安井技術審査官 そうですね。 ○高橋委員 それによって腰痛予防にもなりますね。 ○根本座長 確かに日本みたいに賃金が高い所で、荷役機械もそんなに普及していないというの は不思議ですね。何で普及しないのですか。 ○高橋委員 なんだかわからないですね。 ○根本座長 道路が貧弱でトラックが小さいから、パレットで荷役できないというところもある のではないですかね。小さなトラックを有効に活用するためには、ぎっちり積まなければならな い。パレットで無駄な空間がいっぱいあると、効率が悪くてというようなことがたぶんあるよう な気もしますね。三浦さん、何で機械が入らないのですか。 ○三浦委員 やはり積載効率を考えてのことだと思いますね。パレットに積み替えるよりもその ほうが積載効率がいいですから。 ○根本座長 トラックが大きくなれば大丈夫ですね。欧米のように30tが普通のトラックになれ ば、考え方がちょっと変わってくるかもしれないですね。 ○三浦委員 欧米の場合、運送事業者というのは、車上で荷物を積んでもらって、A地点からB地 点に運んだ時点で、それで作業は終わりなのです。卸しはもう別の契約になっているのです、別 の業者がやるとなっています。日本の場合は、これもやって、あれもやってということになって きまして、車自体にいろいろな付帯設備が付くようになってきている。それは1つあるのです。  あとは、さっき言ったように、積載効率が悪くなる。生鮮食品などは、市場も、荷役そのもの の設備が非常に悪いですね。だから、これは日本国の現状に合わせたような表現になっていて、 非常にわかりやすいのではないでしょうか。 ○安井技術審査官 とりあえず、最低の休憩の基準を上回るかどうか。いずれにしても、最低基 準がそもそもどれぐらいのものなのかを書き込めるかどうかと。荷役機械の例示とか、そういっ たものはちょっと入れたいと思います。 ○根本座長 そんなところでよろしいですか。それでは、3番目まできましたので、ちょっと休 憩をとりましょう。30分まで10分間休憩をとって、4以降、またやっていきたいと思います。 (休憩) ○根本座長 では、後半の部を始めさせていただきます。約束の時間が4時半までなので、ここ からはちょっとスピードアップして進めていきたいと思います。まず原案ですか、検討事項4以 降のガイドラインの案のご説明、よろしくお願いいたします。 ○安井技術審査官 11頁からご説明いたします。検討事項4、安全衛生教育です。調査結果とし ましては、教育の項目、そういったものが増えれば増えるほど事故が減る傾向があるということ でしたが、前回の議論としましては、最近の警察庁、あるいは国土交通省で行われている運行管 理者教育や適性診断等いろいろあるということです。最近の流れとしては、デジタル・タコグラ フを使った教育、ドライブレコーダーを使った教育があるということです。あるいは、安全マッ プを作るのにもGPS付きドラレコを使うといったものがあります。そういった最新の教育につい てご説明いただきました。  ガイドラインに盛り込むべき事項としましては、まず、雇入時教育というのがあります。これ は、新規に雇い入れた運転者、あるいは、作業の変更を行うような場合に行う法定の教育です。 そこの項目として12頁に入れております。  アとしては、いわゆる交通法規、あるいは運転時間、運転時の注意事項といった、これはいわ ゆる普通のプロドライバーとして当然必要な内容という意味です。イ、これが今までの議論を反 映したもので、改善基準の遵守、十分な睡眠確保、睡眠時無呼吸症候群等、こういった問題の適 切な治療の必要性、あるいは体調の維持、そういったものの必要性に関する事項をきっちり教育 するということです。  日常の教育につきましては、これも日常教育、あるいは、関係団体が実施する講習会に参加さ せることでもいいわけですが、項目としては3点あります。  第1点は、先ほどと同じ改善基準等です。イが前回ご説明いただきましたデジタル・タコグラ フ、あるいはドライブレコーダー、そういったものの記録を使って、少なからず個別具体的に安 全に対する教育をするということ。それから、法令等の改正は随時行われていますので、そうい ったものについても日常の教育でカバーするということです。それから、いわゆる交通危険予知 訓練、いわゆるKYTですが、これについては、効果があるということが確認されていますので、 引き続き、従来どおり行う。もう1つ、運転者認定制度です。これも、行うと効果があるという ことが確認されている制度ですので、運転適性に応じた一定の教育指導を行う、あるいは認定試 験に合格した者、そういった方に対して運転業務を認めるというような運転者認定制度導入は望 ましいということを一応明記しております。ただ、教育指導、認定試験の内容については、当 然、各事業場において定めるという形にしております。  15頁、安全意識の高揚です。これにつきましても、調査結果としましては、安全意識の高揚に 対する取組が増えれば増えるほど事故は減る傾向ということでした。前回のご議論としては、い わゆる労働安全衛生マネジメントシステムや運輸安全マネジメントシステムなどは安全意識の高 揚にも役に立つ、危険マップの作成も安全意識の高揚に役に立つ、そういった議論があったわけ です。  ガイドラインに盛り込むべき事項としましては、ポスター、標語といった、従来、一般的に行 われているもの。2つ目には、新しい項目として、交通事故の発生情報、デジタコ、ドライブレ コーダーの記録、ヒヤリ・ハット事例の収集、そういったものを示した交通安全情報マップを作 るということを明確に入れております。こういったことを通じて安全意識の高揚を図っていくと いうことを入れております。  17頁、荷主・元請との関係です。これにつきましては、荷主からの要求の重要度が高さが、事 故が増えることと関連性があるわけです。前回の議論では、荷物の積み卸しまでの待機時間の問 題、高速道路を使用すると、運転時間は短くできるけれども経費の問題でなかなか難しい、パー トナーシップガイドラインの荷主に対する周知は必ずしも十分でないのではないか、重層下請構 造になっているので元請、下請関係にも記載すべきだ、そういった議論がありました。  ガイドラインに盛り込むべき事項としましては、次に掲げる事項ということで、何点か挙げて おります。そういった交通労働災害防止を考慮した適切かつ安全な運行の確保のための必要な事 項について、「実際に運搬する事業者と荷主と元請が共同して取り組む」という記載にしており ます。取り組む内容につきましては、安全運行パートナーシップガイドラインの基本的に主要な ものをそのまま記載しております。  1番目は運送する貨物の量を増やすような急な依頼、過積載にならないようにということ。2番 目は到着時刻の遅延がある場合の対応。3番目は、改善基準告示に違反して安全運行が確保でき ないような無理な運行依頼は行わないということ。最後が、積み込み、荷卸しの作業による遅延 で予定時間に出発できない場合はそのあとの適切な処置をとってください、こういった観点につ いて入れております。記載内容につきましては、パートナーシップガイドラインをほとんどその まま引き写しております。  19頁、安全管理体制です。安全管理体制につきましては、労働安全衛生マネジメントシステム の導入が効果があるということがわかっているわけですが、一方、さまざまな規程、推進計画、 あるいは災害防止担当管理者の選任、そういったものについては、残念ながら効果は確認できな かったわけです。前回までの議論としましては、警察庁には安全運転管理者の制度があります、 国交省のほうには当然、運行管理者という制度や、運輸安全マネジメントシステムといったもの があります、そういったご議論がありましたので、今回、ガイドラインに盛り込む事項としまし ては、いわゆるPDCAサイクルを回す形を前提にしており、第1点としては、方針の表明、目標の 設定及び計画の作成・実施・評価をやっていこうではないかということを書いております。それ ぞれ、方針の立て方、目標の立て方、そういったことが書いてあります。  その計画の項目についてはア、イ、ウで書いておりますが、走行計画の作成、それに基づく走 行管理、点呼等の実施といった日常の活動に関する事項を計画に盛り込む。それから、安全意識 の高揚のための活動、教育の内容及び実施時期に関する事項、こういったものを計画に盛り込ん でPDCAサイクルで回していくということです。  20頁、管理体制です。従来は何々担当者といったものを置いていたわけですが、警察庁の安全 運転管理者、あるいは運行管理者という制度がありますが、ここでは労働安全衛生法上に明定さ れている安全管理者、安全衛生推進者、これは必ずしも運行管理のための者ではなく、安全に関 して全般に責任を負う者ですが、そういったものの役割、責任及び権限をきちんと定める、その 管理・監督者はきちんと教育をしなさいという一般的な規定に留めております。  安全委員会は労働安全衛生法上、法定の委員会ですが、それが設置されている事業場において は、当然、交通労働災害防止も含めた調査審議を行うということです。  健康管理につきましては、健康診断を実施して、それに基づく措置を行う、心身両面にわたる 健康の保持増進、運転時の疲労回復というところを盛り込むようにしております。これは今、と りあえず仮置きで、前回のとおりのものを入れておりますので、これにつきましては、最近の状 況を踏まえて、また見直しを考えております。  25頁、運転を主たる業務としない自動車運転者に対する措置です。先ほど若干ご説明しました が、この適用関係の表は、縦軸が業種、横軸がハードウェアです。それぞれの業種の中にいわゆ る運転者と言いますか運転を主たる業務としている人と、そうでない人(一般)、それぞれに分 けて書いております。  まずトラックにつきましては、(1)と書いてあります。これは、走行計画も点呼も当然、基本的 にはやってもらいます。ただ、建設業や製造業におけるいわゆる自家用ですね、配達でやるよう なもので運転を主たる業務としないような人の場合は、走行計画はちょっと馴染まないのではな いかということで、点呼だけを義務づけております。  バスにつきましては、いわゆるプロドライバー以外は考えにくいということですので、走行計 画は当然立てるべきとしております。  タクシーに関しましては、走行計画は現実的ではありませんので点呼のみを行うこととしてい ます。  一般乗用車につきましては、営業等を行う場合に点呼をするというのもなかなか現実的ではあ りませんので、これにつきましては、教育等を行っていただければいいとしています。  ただ、建設業や林業などで、ワゴン車などで送迎するような場合があります。これは、事故が 相当多いということもありますので、人をたくさん乗せるような場合については、点呼はやって いただきたいということです。  二輪車につきましては、通信業というのは郵便局の配達で、商業その他というのは新聞配達と 思っていただければいいのですが、これにつきましても走行計画を立てるのはちょっと馴染まな いわけですが、点呼については実施可能ではないかと考えております。  最後、検討項目9です。従来、自動車の点検などもあったわけですが、これにつきましては、 現時点では除いた形で、異常気象等の際の措置ということで、異常気象が起きた場合の措置だけ を入れております。これにつきましては、検討する時間がまだ十分にありますので、追加する必 要があれば、ご議論いただければと思います。 ○根本座長 それでは戻りまして、11頁の下の所からガイドラインが書かれていますが、いかが でしょうか。まず、デジタル式運行記録計ですかね、走行記録計ではなく。 ○安井技術審査官 そうですね。 ○根本座長 あと、「交通安全情報マップ」というのは、言葉の使い方としてどうでしょうか。 警察庁のほうで「交通安全情報マップ」という言葉に対して何かご意見はございmますでしょう か。 ○神戸オブザーバー これは特に一律の用語はないと思うのです。 ○安井技術審査官 「危険マップ」と言う場合と、危険という言葉はよくないから「交通安全マ ップ」と言う方もおられまして、単なるマップではないから情報を入れるべきではないかといろ いろな声がありまして、最大公約数的に「交通安全情報マップ」になっているのです。 ○根本座長 いちばん落ち着きがよさそうなところでね、なるほど。 ○安井技術審査官 別にこれは特定のものではありませんので。 ○根本座長 特定のものを指しているわけではなくて、一般的な感じでこのようになっている。 ○安井技術審査官 ええ、項目につきましては、むしろ15頁の意識の高揚の2つ目の黒ポツにこ ういった情報を入れたマップと、ここにどちらかという定義的な内容は書いてあります。 ○根本座長 わかりました。11頁、12頁辺りはいかがでしょうか。運転者認定制度というのは、 皆さん、営業関係で大体事業所ごとに持っているのですか。 ○三浦委員 日通や佐川といった大手については、そういった教育する場所をそれぞれ持ってい まして、全国からドライバーを集めて教育する場所はあるのですが、中小は、そういった場所も ないですし、いま、その認定制度をそのまま取り入れるという環境にはないと思うのです。です から、ガイドラインとしてはこれでいいのでしょうが、あとは、実際にできるような場所や制度 をある程度構築しないとできないのではないかとは思っております。 ○根本座長 営業関係でしたら、全日本トラック協会のような所がそういう仕組みを作ったりす るのがいちばんわかりやすいですか。 ○三浦委員 それも一案だと思います。そういった協会や団体を核にしながらやるというのもあ るとは思いますね。 ○根本座長 自家用トラックの場合には、ハードルがまた高くなってしまいますね。 ○安井技術審査官 この認定制度につきましては望ましいことという形になっていますので、ガ イドライン上も、「やりなさい」と書く予定はありません。 ○根本座長 では、いいですか。 ○三井委員 「運転適性に応じた」というのを加えた理由は、交通事故対策機構でやっている運 転診断をイメージしているのですね。 ○安井技術審査官 ええ、いわゆる運転適性診断です。そういったものも含めてというふうに考 えております。ただ、ここに「運転適性診断」と書いてしまうと、何か教育指導というふうに、 わかりにくいということもありましてちょっと書き下してありますが、心は、いわゆる運転適性 診断とその後の個別指導を前提にしています。 ○根本座長 よろしいですか。それでは、次に移ります。安全意識の高揚です。15頁にガイドラ インがあります。これも説明を伺っている限りでは特に問題がないような気もしましたが。よろ しいですか。では、何かありましたらまた後でということで、特に論点になりそうなことがあま りなさそうですね。  次に、検討事項6、荷主・元請との関係です。17頁の下の所ですが、「到着時刻の遅延に対す るペナルティ付与にあっては柔軟に対応すること」というのは、国交省のほうの文言を借りてき たのですかね。 ○安井技術審査官 はい、ほとんどそのままです。 ○根本座長 この「柔軟に対応すること」というのは、もう変えられてしまいましたが、何か微 妙な表現ですね。到着時間の遅延のペナルティというのは、実際にはどれぐらい実施されている ものですか。 ○三浦委員 実際はそんなにたくさんの事例はないと思います。 ○根本座長 そうですよね。 ○安井技術審査官 製造業のほうでは時間指定がかなり厳しいと聞いています。いついつまでに というのはかなり厳しいと伺いますが。 ○中村委員 以前聞いたところでは、遅延が発生した翌日からもう契約打切りというところもあ るようです。 ○根本座長 そういうのもあるのですか。 ○中村委員 聞いたところでは。要は、遅れたことによって、もうあなたのところには運ばせま せんということもあるようです。 ○根本座長 それが例えば大きな事故とか、何か理由がつくものはいいと思いますが、理由なく 遅れたときの措置ということでしょうか。 ○中村委員 逆に、渋滞などがある場合であっても遅れないでくれという荷主もいます。 ○根本座長 普通の渋滞だったら折込済みで、それはちゃんと計算に入れてもらわないと困りま すが、地震のようなものもありますよね。そこまでいかなくても、普通はやはりいろいろな事情 を考慮しませんか。 ○中村委員 でも、契約書上は、おそらくそこまで書けないと思うのです。ただ、原則として、 ここからここまで運ぶのに前後プラス・マイナス30分、それ以外の時間であれば契約は打ち切り ますとするケースもあります。 ○高橋委員 その余裕の幅は、マイナスはいいでしょうが、プラス30分ですか。遅れは30分まで 許容ということでしょうか。 ○中村委員 早く来ても駄目なのです。 ○高橋委員 待っておけばいいのではないですか。 ○中村委員 逆にそこに車を置いてもらっていたのでは困るからです。 ○高橋委員 まさにオン・タイムですね。 ○根本座長 どういった場合そのような時間指定をされるのでしょうか。 ○安本委員 特定の荷主さんだろうと思うのです。ジャスト・イン・タイムで生産ラインを運行 している工場ですね。 ○根本座長 自動車みたいにですか。 ○安本委員 これは特定の契約のことだろうと思うのです。一般輸送の場合は、いまはそういう ことはほとんどないですね。 ○高橋委員 今日のお昼のニュースでも、いま原油が非常に高くなって、ガス代が高くなって、 その運行賃が非常に高くなっているのだけれども、それを荷主になかなか申し開けないと、トラ ック業界が非常に困って荷主の団体に陳情に行ったというニュースが流れていました。走れば走 るほど現状は赤字になってしまって困っているのだと、困窮の状況を言っていたようです。 ○根本座長 それが象徴するように、時間に関しても荷主の言ったことになかなか逆らえないと いうか、そういうことですか。 ○高橋委員 まさにこのパートナーシップというのは非常にいい言葉ですし、いいメッセージか と思うのですが、それがここに書いているように、荷主あるいはその重層構造のもっと上のほう の層にいる方々がどのぐらいに士気を高めてくださるか、あるいは本当にそういうパートナーシ ップをつくろうと思うかどうかですね。 ○根本座長 ただ、ちょっと引っかかるのは、付加価値のものすごく高い輸送サービスの場合で す。要するに振動はさせないとか、温度はちゃんと管理するとか、時間は守るとか、常に追跡し て場所がわかるとか、そういういろいろな付加価値の高い輸送サービスなのだからたくさん運賃 をもらいますよ、それに見合った運賃をもらいますよということはあると思います。サービスの 質の高いのと運賃が連動していれば、それは民民の契約の問題なのだから、そこで役所が「そん な契約、止めなさい」と言うのはおかしいと思うのです。そのときに時間の問題も、「ちゃんと 守って遅れないようにしてくださいよ、その代わり、ちゃんとお金払いますから」と言われれ ば、それはトラック事業者もウエルカムではないかと思うのです。そこをどう考えるかというこ とはあるのではないですか。 ○安井技術審査官 ケースバイケースだと思うのです。例えば事故で通行止めになってしまえ ば、走れないわけであって、事業者の自主努力ではどうにもならない遅延というのもあるわけで すよね、ここで言っている遅延はたぶんそれをかなり言っているのではないかとは思いますが。 ここで挙げている理由は、どちらかと言うと、運送事業者単独では如何ともしがたいケースを列 記しているところだと思うのです。例えば貨物の量が急に増えれば、どうしようもありません し、トラックの容量を上回る発注があれば、過積載せざるを得ません。あるいは、例えば、いつ いつどこまでに行きなさいと言ったら1人のドライバーでは絶対に基準違反になってしまうよう な発注の仕方とか、あるいは、荷積み、積み卸しで出発が遅れたのに「到着時間はそのとおりに したまえ」とか、それは難しいというか、少なからずもうどうしようもないというものについて 挙げているのではないかと。 ○高橋委員 過積載などで事故が起きた場合に、オーダーした荷主の側は、責任は一切問われな いですか。 ○__ 過積載は我が省ではありませんのでわかりませんが。 ○__ おそらくあまり問われないのではないかと。 ○高橋委員 現状はそこまでではないと思います。あくまでもイエスと言って運んでやった人が 違反を問われると思います。 ○安井技術審査官 たぶん、道交法上はそうですよね。 ○高橋委員 飲んでしまった人のほうの責任になりますしね。 ○中村委員 もしそこで、それこそ脅迫か何かをして無理矢理積ませたというのだったら別の脅 迫罪か何かでやるのかもしれないですが、道路交通法違反では取られない。 ○根本座長 過積載が原因で事故が起きて、その事故がある特定の荷主が頼んだ場合に頻発した 場合は、重大事故に関しては荷主の名前を報告させるといった議論がありませんでしたか。それ は国交省のほうでしたか。重大事故を何回も起こしたときには、荷主の名前をどこかに書いて事 故報告書みたいなものをやらなければいけないと。そうすると、日通みたいにトラックをたくさ ん持っている所は、確率的にどうしても事故の数も多いわけです。そうすると、荷主の名前が出 るのは嫌だなと、何かそんな話を聞いたことがあります。 ○三浦委員 荷主を公表するというのはなかったと思うのですが。 ○根本座長 なかったですか。 ○三浦委員 ちょっと調べましょうか。 ○根本座長 たしか、重大事故の報告書に荷主の名前を書くとか書かないとかということの議論 が1年前にありましたね。あれが最後にどう決着したのか、私はわかりません。もちろんトラッ ク事業者は、そういうことで荷主の名前が出てしまうと困るのでそれには抵抗していましたが、 最後にどう決着したのでしょうか。 ○安井技術審査官 重大事故報告書というと、たぶん国交省ですね、貨物輸送事業法に基づくも のです。お帰りになりましたが、また、聞いておきます。 ○根本座長 ちょっと調べてみてください。全般的に荷主に責任を少し感じてもらおうという雰 囲気はだんだん出てきていると思いますよ。話は別ですが、改正省エネ法などでもやはり荷主が どれだけ出しているのかと、荷主は関係ないよとは言えないようになってきているとか、安全や 環境などで荷主さんも少し意識しましょうというのが出てきていると思うのですね、世の中の流 れとして。 ○安井技術審査官 このガイドラインは、基本的に主語が「事業者は」ということになっていて 運輸事業者を主語にしているのですが、ここの項目だけ「荷主及び運送業の元請は」にしている のですね。ですから、ガイドラインは必ずしも運輸事業者だけのガイドラインじゃないよという のを明確にしているつもりではあるのです。 ○根本座長 荷主の所も、それこそ自家用のトラックもあるでしょうし、このガイドライン自 体、荷主も見なければいけないガイドラインなのですよね。 ○安井技術審査官 そうですね、見ていただきたいのです。 ○根本座長 緑ナンバーの事業者だけが読むガイドラインではないということですね。 ○安井技術審査官 ええ、これはもともと営業車両に関わらないガイドラインですから。 ○根本座長 そうするとこの項目は、当然、荷主としての立場としてこういうのはやっぱり大事 だね、ということもそこでまた読んでもらえばいいかもしれませんね。 ○安井技術審査官 そうですね。 ○高橋委員 それともう1つは、先ほどの遅延したら次回から契約を切られてしまったという件 と同じですが、無理な運行依頼が来たときに事業者としてどうするかという部分も一方であるか と思うのです。現実に、調査によれば、それを受け入れがちというところはもうリスクは高まっ ているということなので、荷主の問題もそうですし、それを受けてしまう側の問題、両方の問題 ですよね。 ○根本座長 文言としては大体こんなところですかね。では、次にいきましょうか。検討事項の 7は、19頁の下の所から20頁に続いています。これは、今、枠組みの安全管理者とか安全衛生推 進者のようなもの、あるいは安全委員会のようなものがあるのだから、それを活用して安全管理 体制をつくってください、というのがいちばん大事なポイントですね。 ○安井技術審査官 そうですね、特定の管理者に責任を押しつけるのではなく、司は司と言いま すか、それぞれのいわゆる管理・監督者がそれぞれの役職と責任を明確にして対応していただく ということです。あとは、体制以前にPDCAサイクルを回そうというのがメインにはなっていま す。 ○平川委員 20頁のアの部分で安全管理者、安全衛生推進者の例を挙げているわけですが、例示 としてはトラックの運送事業の緑ナンバーであると、運行管理者というのがわりとピンとくると 思うのです。だから、運行管理者というものも入れたほうが運送事業はわかりやすいのではない かと思うのです。 ○根本座長 それはいかがですか。 ○安井技術審査官 入れるのはいいのです。そうすると、安全運転管理者という感じでどんどん 横に広がっていくのですが、あえて全部書くか、あえて全部書かないかというところはあると思 うのです。そこはちょっと検討させていただきます。 ○平川委員 安全管理者というのは、労働安全衛生の関係ですか。 ○安井技術審査官 そうですね、労働者の安全、一定の規模の事業場ですが、もともと交通労働 災害も含めて、安全管理全般的に責任を負う者が置かれていないといけないと思います。 ○平川委員 では、これはマネジメントの関係とも関連しているわけですね。 ○安井技術審査官 そうですね。必ずしも例示がなくても、「安全に関する管理・監督者」のよ うな抽象的な表現で押さえる手もありますし、あるいは、思い切って知っている限り全部列記す るという手も逆にあるのですが、ちょっと検討させていただきます。 ○根本座長 これは、どういう単位で安全管理者1人を置くことになっているのですか。運行管 理者だと、営業所ごとに決まっていますね。 ○平川委員 ええ、5両以上とかという基準がありますね。 ○根本座長 安全管理者というのは、会社で1人なのですか。それとも、営業所ごとになってし まうのですか。 ○安井技術審査官 労働安全衛生法は基本的に事業場単位ということになっていますので、例え ば工場があれば工場単位、運輸業であれば営業所単位と思っていただければいいと思います。労 働者の数が一定の規模以上の場合にはそれを置かなければいけないという形になっています。基 準は、労働者の数と業種で決まっています。 ○根本座長 そうすると、大概、運行管理者と同じ人がやることになるのでしょうね。 ○安井技術審査官 それが実はちょっとはっきりしていないのです。 ○三浦委員 事業者としては、厚労省の法律の流れがあって、あと1つは国交省の法律の流れが あって、こういう責任者の呼称についても非常に戸惑う部分はあるのですが、私どもでは、安全 管理者は、その事業場全体の安全を統括する責任者という位置づけなのです。運行管理者という のは、車両の運行のみの安全管理をする責任者という位置づけにしております。このほかに、事 業場規模によって総括安全衛生管理責任者とか、いろいろな責任者がいるのですが、安全の最低 の単位で言うと、安全管理者が組織のいちばんの安全を司る人という位置づけにはしているので す。ですから、安全管理者と運行管理者の両方を置いております。 ○根本座長 機能として別だというのはわかるのですが。例えば営業所というのは1つの営業 所、大きい営業所、小さい営業所とあるでしょうが、例えばドライバーが30人ぐらいいたという 所だと、運行管理者はぎりぎり1人でいいですか。 ○三浦委員 ドライバーの数によっても管理者の数は違うのですが。 ○根本座長 その具体的なイメージというか、役割はどんな形ですか。同じ人がやっているなら いいのですが、もし違う人が役割分担をしながらやるのなら、どのように機能上の違いがあるか ということがわかるほうが本当はいいですね。 ○安井技術審査官 安全管理者のほうが所掌事務が広いのです。その方が交通事故だけを見てい るわけではなく、事業場内における全般について責任を負っていますので。そういう意味では、 事業場の規模によると思いますが、1人で全部やるというのは難しいかもしれないですね。た だ、もともと安全管理者を置かなければいけないのは相当な規模の事業場となっています。 ○根本座長 何人以上ですか。 ○安井技術審査官 50人以上です。 ○根本座長 それで、安全衛生推進者は何人ですか。 ○安井技術審査官 10人以上です。 ○根本座長 10人以上だったらこれを置かなければいけないのですか。 ○安井技術審査官 はい。安全衛生管理体制は、事業場の規模にもよりますし、業種、業態によ ってもたぶん違うと思うのです。ですので、1人の管理者を置けばそれでいいということではな く、どちらかと言うと、事業場全体として管理体制をつくってほしいという意図にしたいと考え ております。ですので、例示は確かに入れてしまっていますが、いわゆる管理・監督者という押 さえ方をして、管理・監督者のそれぞれの役割と責任と権限をちゃんと定めて、それぞれがそれ ぞれの役割を果たしてください、といういわゆるマネジメントシステムの考え方を前面に出すべ きではないかと考えています。調査結果でいろいろな管理者を置いているという単独の事実だけ では、統計上、事故が多い・少ないというのはなかなか出なかったもので、そこは総合的な対応 をしたいと思います。 ○根本座長 前のガイドラインのところで走行計画、時間勤務関係、時間管理とか、これは本当 に運行管理そのもので、運行管理者がそれをちゃんと見なければいけないよということで、ガイ ドラインを読んでほしい人はわりと思い浮かぶわけです。ところが、最後のほうで「安全管理 者」となっていると、あれっ、運行管理者じゃなかったのか、安全管理者かというので。そうし たら、それの関係がわかるようにしておいたほうがいいかもしれませんね。 ○安井技術審査官 そうですね。 ○根本座長 最初の運行関係の所は、「これも安全管理者がやるのですか」のようになってしま うと、このガイドラインの意味がわかりにくくなるというか、どうすればいいのでしょうね。 ○安井技術審査官 基本的には事業主の方に読んでいただくつもりで書いていますので、広い意 味ではそれに尽きるのですが。それぞれの部署の例えば誰が読まなければいけないかというの も、なかなか特定できないとは思うのですよね。 ○高橋委員 ですから、まさに組織が読むのですよね。 ○安井技術審査官 利用者側、要するに管理する者が読んでくださいということです。それが運 行管理者という名前であったり、安全管理者という名前であったり、安全衛生推進者という名前 であったりするわけですが、名前はともかく、読んでくださいということですね。 ○根本座長 でも、このガイドラインがいちばん売りにしたいのは最初の検討事項1、2、3の辺 りで、やはり交通事故を減らしたいのだということですよね。これを徹底させるためにどうすれ ばいいのかということを今回のガイドラインの中心に据えるとすれば、運行管理者という言葉も やはりここにちゃんと入れておいたほうがいいのかもしれないですね。「安全管理者」と言う と、何かぼけてしまうような感じがしないでもないですね。 ○安井技術審査官 全部入れるか、思い切って抽象的な表現にするかですね、安全に関する管理 ・監督者のように抽象的にするか。そこはちょっと検討させていただきます。 ○安本委員 労働安全マネジメントシステムをこれで機能させなさいよというときには、この表 現のほうが非常に馴染みやすいですよね。 ○安井技術審査官 そうですね、馴染みますね。 ○高橋委員 マネジメントシステムの入口の部分ですからね。 ○三井委員 省庁がまとまると、ちょっとやりにくい部分がありますね。国交省の定めているこ ととの関係もありますし。 ○安井技術審査官 おっしゃるとおり、運輸安全マネジメントシステムというのがありまして、 そこでの管理者の呼称というのはまた、運行管理者であったり、そういう別の呼称を使っていま すので、それと整合性があるようにしたいとは思います。あえて書かないか、全部列記するか、 どちらかにしたいと思います。 ○中村委員 何かそのほかの、こういったマトリックスな形で、厚労省ではこうで、国交省では こうで、それぞれの管理担当者はこうで、みたいなものを整理できればいいのですが。 ○安井技術審査官 ただ、25頁の表で言いますと、運輸安全マネジメントシステムが適用になる のは上の2つの業種、交通運輸業と陸上貨物運送業だけなのです。そういう意味では、それ以外 のものについては、労働安全衛生マネジメントシステムだけでやります。そういった事情もあり ます。 ○根本座長 では、そこはちょっと検討いただいて、ほかはいかがですか。 ○安本委員 7項目は安全管理体制の話ですからこれでいいのかもしれませんが、労働安全衛生 法では、「作業者は」というくだりがありますね。これは全部管理サイドの話で、交通安全に関 する運転者の責任の度合いが非常に大きいわけですから、そこのところ、作業者あるいは運転者 は、自分の健康を保持したり道交法を守ったりということを一言付け加えたらどうかなと思うの です。管理体制のところだからこれでいいということであれば、それはそれで理解するのです が。 ○安井技術審査官 そうですね、運転者の責務についてどこまで記載するのかというのは、確か にご議論いただきたい点ではありますね。 ○高橋委員 ただ、運転者に関しては、1、2、3と前のほうでかなり、自分で整えるというのは 掲載されているように思います。ここはむしろ、職場組織として何を担保しなければいけないの かという部分の位置づけがあるように思うのですが。 ○安井技術審査官 安全管理体制の中に運転者の責務を入れるというのはちょっと馴染まないで すね、名前がマネジメントですから管理側のシステムですので。ただ、別項目を立てるかどうか という議論だと思うのです。国交省の法令では、運転者責務というのはかなり出てきます。労働 安全衛生法でも一部出てくる部分もあるのです、保護帽をかぶらなければいけないとか。やはり 限定的なのですね。そこは、ちょっと違うところではあります。この入れる・入れないというの はいかがでしょうか、議論をいただいたほうが我々も決めやすいのですが。 ○高橋委員 もちろん酒を飲んで運転するというのは言語道断で、これはまさに個人の責任だと 思うのですが、先ほどの荷主あるいは元請と運送事業主ではほとんど相対的に運送事業場のほう が立場が弱いという議論、それを以ってすれば雇用主と運転者と言うと、運転者のほうが立場が 弱いと思うのです。自分のトラックで事故を起こしたいなどという運転者はおそらくゼロだと思 うのですね。むしろいま頻発している事故の多くは、それ以外の要因も大きいように思います。 だから、ここで職場組織あるいは安全衛生管理体制という部分も重視するというのは、非常に重 要かと思っています。そもそも、眠りたくても眠れないような勤務体制が現実は多いように思う のです。 ○三井委員 道路交通法では、事故を起こしたり過労運転をしたら、まず、その運転者の責任な のですよね。とにかく運転者が、まず責任になるわけですよね。それから、背後として事業主に なる。荷主にまではおそらく遡らないと思うのですが。 ○高橋委員 ただ、その人を運転席に乗せたという事業者の判断もあるわけですよね。 ○三井委員 ありますが、やはりいちばんの元は、そもそもそれで運転して事故を起こした本人 にいちばん責任があるのです。本人に責任がなくて事業者だけに責任あるということはおそらく なくて、まさにその本人がそもそも注意して、あるいは、必要ならば休みをとる。計画を変更し てでも、自分が運転できないということであれば、それは休んで運転するのがそもそもの運転者 の基本的な義務ですよね。そういうことなので、事業主だけを事故の主な原因であるとはできな いと思います。 ○高橋委員 だから、いま、相対的にはという話をしているのです。 ○三井委員 ええ。ただ、相対的にはやはり運転者です。そうでないと、責任が問えなくなって しまいます。事故を起こして、それは事業主がいけないのだと言われたら、それはちょっと困り ます。 ○中村委員 労働安全の中で考える安全管理というところでは、マネジメントできる範囲と言い ますか、環境であったり労働条件であったりというものを、事業主にせよ、労働者側にせよ、お 互いにもっとコミットする、やりとりができる状況をもともと想定していると思うのです。  ところが、運輸・輸送業の場合になってくると、極端な話、車で営業所を出てしまうと、そこ で一生懸命に遠隔管理をしようとするのですが、言ってみれば、ハンドルを握っているその人間 を操り人形のようには使えないわけです。そういった意味では、通常の労働現場とはちょっと違 った部分があると思います。  確かにその意味でドライバーの責任というものを、あなたはプロフェッショナルですからこれ だけ責任があるでしょう、というところをどこかに入れ込むべきだろうというご意見もあろうと 思うのです。ただ、それをやりだすと、それだけでたぶん倍増するぐらいの分量になってしまう のかなという気がするのです。逆にそういったところは、国交省であったり警察庁であったり、 通常の運転免許の資格試験や何かも含めて、あるいは一般的な社会人としての部分は、当然常識 としてお持ちのはずなわけですから、この段階ではあえてそこにまで立ち入らなくていいのかな と思います。むしろ高橋委員からお話があったように、最初の1、2、3ぐらいの段階で、事業主 は運転者にこれこれこういう教育を受けさせなさい、あるいは、こういうところの管理をさせな さいといった文言が入っているところを考えれば、あえてここでドライバーとしての責任云々と いうところまで別立てするほどの大きな扱いにまで持っていかなくてもいいかなという気がしま す。でも、何か、どこかでやっぱり入れたいなという気がしなくもないのですが。 ○三井委員 このガイドラインのそもそもの目的をどこかに明確に書いておく。あくまでも事業 主とか運転者のことは、そのように最初に明確にしておけば、それはそれでいいのだろうと思う のですが、単に交通事故を防止するための一般的なガイドラインですという話になると、そうい う話になるような気がします。 ○平野安全課長 これは、あくまでも交通労働災害を防止する上で事業主としてどういうことを やってくださいということをまとめるというのが基本です。その上で、さはさりながら、やはり 交通労働災害に関しては労働者の責任と言いますか、労働者に自ら頑張ってもらわないと減らな い、防止できない面はあるので、例えば、そういう考え方を書くということはあり得るのだろう と思うのです。  しかし、いま中村委員が言われたように、労働者が守るべきことを詳細に書き出したら、これ は大変なことになってしまいます。ただ、労働者がそういう安全運転に努めるとともに、事業者 としてはこういうことをやってください、というまとめ方もあるのだろうとは思います。 ○安井技術審査官 まだ書いていないのですが、ガイドラインの冒頭にいわゆる前書きが付きま すので、そこで運転者の責務についても触れるというのは可能かと思うのです。ただ、いわゆる 本文の中にガリガリと書き込むのはちょっと難しいと思います。 ○高橋委員 国交省のこのパートナーシップの中に個人の要素は入っていますか。 ○安井技術審査官 パートナーシップの中にはないです。 ○高橋委員 ただ、安全を担保するためのパートナーシップと言えばいいのではないですか。 ○安井技術審査官 いいえ、パートナーシップは、あくまでも荷主と運輸業者のいわゆる事業者 ・事業者のパートナーシップなものですから、労働者が入っていないのです。ただ、国交省の省 令レベルで見ると、労働者の責務は出てくるのです。 ○高橋委員 ただ、いまの課長の話で言えば、要するに、事業者が何をし、荷主が何をし、運転 者が何をしと、全体でパートナーシップを組んで安全を高めていくということだと思うのです が。 ○安井技術審査官 パートナーシップではそのようにはなっていないですね。それは事業者間の パートナーシップになっていますね。今回のこっちの、我々の中では、その位置づけをどうする かということです。 ○高橋委員 そこは「事業者間の」にしておいたほうがいいかなとは思うのですが。 ○根本座長 そうですね、やはり事業場として、システムとしてその安全性を高めていくと。ド ライバーを運転免許で縛るとか、酒を飲んだら運転してはいけないよとか、そういうものは別の 法律とか別の制度で十分カバーされているところでもありますし、ここでは、軸足はやはり事業 場のシステム的な安全管理体制というほうが主なのでしょうね。 ○安井技術審査官 指示は守る、教育を受けたことを遵守するといったことは、当然必要ですの で、そういった抽象的な表現で前文に入れるのは問題ないかと思います。ただ、逆に言うと、指 示するのも教育するのも事業者責任だという書き振りにはなると思いますが。 ○根本座長 では、その前書きのほうを次回辺りに議論しましょう。 ○安井技術審査官 次回は前書きを議論したいと思います。適用の関係などがそもそも出てきま すので、今日のご議論を踏まえてから作ろうかなということです。 ○根本座長 さて、検討事項8は、ガイドラインには直接は載らないわけですか。 ○安井技術審査官 いいえ、これが適用という形でガイドラインのかなり前の部分に記載されま す。 ○根本座長 これが、それこそ前書きに出てくる。 ○安井技術審査官 この形の表では出てきませんが、ここで議論を整理したものが文章に落ちる という形になろうかと思います。 ○根本座長 いかがですか。では、これは、また前書きが出た段階でもう一度検討するというこ とにしましょうか。 ○安井技術審査官 そうですね。次回の検討会までにヒアリングを考えております。そこは、で きるだけ今日お集まりでない業種の方、通信業、建設業、製造業、商業といった方々に現実問題 としてどこまでできるのかというお話を伺って、それを踏まえて、再度改訂したいと考えており ます。 ○根本座長 あと、検討事項9には異常気象のことが特に記載されていますが、これはガイドラ インに入るのですよね。 ○安井技術審査官 そうですね。参考資料に出ていますが、自動車の点検とか異常気象の際の措 置とか、あるいは、その自動車に装備する安全装置とか応急用器具とか、かなり詳しく書いてあ ったわけなのですが、厚生労働省のガイドラインという観点から見ると、ちょっと馴染まないの ではないかというところもありまして、いまのところ、ハードウエアにはあまり拘泥しないほう がいいのかなと考えております。そうなると、この異常気象の措置は残る。ハードウエアであり ませんので。 ○根本座長 これは何か突発的な運行計画の変更とかなり似ていますね。 ○安井技術審査官 そうですね、これは特記事項と言いましょうか、従来のシステムでは対応で きないようなことを想定しているのだと思うのです。 ○根本座長 何かこれ、1個だけ付いているのが唐突な感じがしないでもないですが。 ○安井技術審査官 そうですね。実際は、入れる場所については、たぶん走行計画のそばに付く と思いますが。 ○根本座長 あるいは、「その他」の項目でこういうことに言及しておいたほうがいいのではな いかということがあれば、それを今日思いつくのは難しいかもしれませんが、今週あるいは来 週、お正月休みに考えていただいて、追加意見などがありましたら、今週中に電子メールで事務 局宛ご連絡ください。よろしくお願いします。  さて、一応全体を見ましたが、何かご意見はございますか。追加的に何かご意見があれば伺い たいと思いますが、もしなければ、事務局から連絡事項、今後のスケジュールをお話いただけれ ばと思います。 ○安井技術審査官 先ほどちょっとご説明しましたが、次回の検討会までにヒアリングを行いま す。運輸業の方にもヒアリングをいたしますが、それ以外のいろいろな業種につきましても、実 際、どこまでできるのかというところについてヒアリングをいたします。その内容につきまして も、ご意見を幅広く伺って、必要な修正があれば、次回までに行って、またそれをご議論いただ くという形でお願いしたいと思っております。 ○根本座長 次回はいつでしたか。 ○高橋副主任中央産業安全専門官 次回は、1月24日(木)13時半ということで4回目をセットし ております。  それと、4回目の検討状況を見てということになりますが、5回目の開催の可能性があるという ことで、先週末、皆様方にお知らせをしました。今日、すべての委員の先生方から日程をいただ きました。日程を拝見しましたところ、2月27日の午前中が皆さん、ご都合がいいようなので、 もし問題がなければ、2月27日(水)の午前10時からお昼ごろまでという予定で5回目を行いたい と思います。実際に開催するかどうかは次回、4回目のスケジュールを見てということで、予備 日的なイメージでその日程を確保していただければと思うのですが、いかがでしょうか。 ○根本座長 可能性としては、開催する可能性が高いのですか、開催しない可能性が高いのです か。 ○安井技術審査官 ヒアリングをこれから行っていきますので、そこでどれぐらいのコメントが 出るかというところによると思います、かなり大規模に直さざるを得ないということであれば、 もう1回ではちょっと無理かもしれないですので。 ○根本座長 そういうことですね、わかりました。 ○高橋副主任中央産業安全専門官 一応27日の予定なのですが、会議室の都合もありますので、 早急にご連絡を差し上げるようにしますが、仮に会議室が取れない場合には6日、あるいは11日 の可能性もありますので、仮に押さえておいていただけると。 (日程調整) ○根本座長 わかりました。 ○高橋副主任中央産業安全専門官 事務局からは以上です。 ○根本座長 では、よろしくお願いいたします。 ○高橋副主任中央産業安全専門官 長時間、ありがとうございました。 ○根本座長 どうもありがとうございました。