07/12/25 薬事・食品衛生審議会生物由来技術部会 平成19年12月25日議事録 薬事・食品衛生審議会 生物由来技術部会 議事録 1.日時及び場所    平成19年12月25日(火) 16:00〜    霞が関東京會舘「シルバースタールーム」 2.出席委員(11名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 小 澤 敬 也、 甲 斐 智恵子、○堺   晴 美、    澤 田 純 一、 土 屋 利 江、 西 島 正 弘、 貫 和 敏 博、   ◎早 川 堯 夫、 山 口 照 英、 吉 倉   廣、 (注) ◎部会長  ○部会長代理    他 参考人1名   欠席委員(4名)五十音順    岡 野 栄 之、 島 田   隆、 山 口 成 夫、 渡 邉   信      3.行政機関出席者    黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、     中 垣 俊 郎(審査管理課長)、 俵 木 登美子(審査管理課医療機器審査管理室長)、    村 上 貴 久(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、他 4.備考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○医療機器審査管理室長 定刻になりましたので、ただ今より生物由来技術部会を開催い たします。委員の先生方におかれましては、年末のお忙しい中を御出席いただきまして大 変ありがとうございます。本日は、委員15名のうち、ただ今8名の御出席をいただいて おりまして、定足数を満たしておりますことを御報告させていただきます。なお、飯沼委 員、小澤委員、吉倉委員については所用で遅れてお見えになるとお聞きしております。本 日の会議につきましては、非公開とさせていただきます。それでは、早川部会長、議事進 行をよろしくお願いいたします。 ○早川部会長 それでは最初に、事務局より資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。資料といたしましては、資料1「細胞・組 織利用医療機器の品質及び安全性に関する指針への適合」、資料1-2は当日配付となって おりますが、「諮問書」、参考資料1「ヒト由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全 性の確保に関する指針について」、資料2-1「ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の 品質及び安全性の確保に関する指針(案)」、資料2-2「ヒト(自己)由来細胞・組織加工医 薬品等の製造管理・品質管理の考え方(案)」、最後に番号のないものですが、自家培養皮 膚の専門委員リストをお配りしております。お手元に資料のない委員の方がいらっしゃい ましたら、事務局までお知らせください。 ○早川部会長 資料はおそろいでしょうか。続きまして、本日の審議事項に関与された委 員と、利益相反に関する申出状況について、事務局より御報告をお願いいたします。 ○事務局 本日審議対象となっている品目について、関与された委員はいらっしゃいませ ん。また、本年4月23日の薬事分科会申合せに基づき、利益相反に関する申出状況を確 認させていただきましたところ、御退室いただく委員、議決に御参加いただけない委員は いらっしゃいませんでした。以上です。 ○早川部会長 それでは議題に入ります。議題1「細胞・組織を利用した医療機器の品質 及び安全性の確認について」、審議を行います。本品目の審議に当たりましては、参考委 員として、聖マリアンナ医科大学形成外科学講座教授の熊谷憲夫先生に御出席をいただい ております。よろしくお願いいたします。まずは、議題1に関する制度の概要について、 事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 確認申請制度の概要について御説明させていただきます。参考資料1「ヒト由 来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針(概要)」に従い、この指 針の位置付けについて簡単に御説明させていただきます。  「1.目的」ですが、今回確認申請が行われておりますものが、この指針に適合してい るかどうかの確認をお願いするわけです。本指針は、ヒト由来の細胞・組織を加工した医 薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保のために必要な基本的要件を定めたものです。 本指針において、製造販売業者は、細胞・組織加工医療機器等の安全性及び品質の確保を 期すために、当該医療機器等が、この指針に適合していることの確認を厚生労働大臣に求 めることとされております。確認申請の内容ですが、「3.確認申請に当たって添付すべ き主な資料」にありますように、培地成分等を含めた製造方法の妥当性、安定性、非臨床 試験における安全性・性能、臨床試験の状況についてということです。  指針の位置付けですが、一般的な流れが「4.」のところにあります。製品開発や非臨 床試験に関するデータを基に、今回の確認申請がなされ、本日の生物由来技術部会で、治 験に入る前の品質、安全性の確認という観点から御審議いただいた結果、指針への適合性 をお認めいただきますと、薬事法に基づく承認申請のための治験のため、治験計画の届出 を行うことが認められることになっております。そして、治験に関する審査を経て、治験 が行われ、そのデータに基づき承認申請されると、総合機構の審査を経て、再度、薬事・ 食品衛生審議会の医療機器・体外診断薬部会の方で、当該医療機器についての御審議をい ただく形になっております。  つまり、本日御審議いただきますのは、この指針への適合性ということで、この部会に おける審議の結果が、直ちに医療機器の製造販売承認に結び付くというものではありませ んで、あくまでも治験に入る前に、このものの品質、安全性の確認ができるかどうかとい うところです。よろしくお願いいたします。 ○早川部会長 ありがとうございました。これは毎回説明をしていただいていますが、確 認申請の制度の概要についてはよろしいですね。それでは、今回議題1に上がっておりま す品目、「自家培養皮膚」の概要について機構から説明をお願いいたします。 ○機構 総合機構から御説明申し上げます。本品は、患者皮膚組織を原料として製造され、 表皮細胞層及びフィブリンを基質とした線維芽細胞層の2層構造を持つ自家培養皮膚で す。熱傷は、傷害が達している深さによりI度、浅達性II度、深達性II度、III度熱傷に分 類されますが、深達性II度熱傷では上皮化に約3〜4週間を要し、III度熱傷においては上 皮化は起こらないとされております。  熱傷創に対する既存の治療法は、自家植皮ですが、広範囲に及ぶ熱傷では、自家植皮の ための経皮部位が不足すること、自家植皮が複数回に及ぶことにより患者への侵襲が高く なること、創の閉鎖に時間を要すること等の問題があります。本品は、重症熱傷患者を対 象として、少量の患者皮膚組織から、より広い面積の自家培養皮膚を作製し、深達性II度 又はIII度熱傷創に移植し、創を閉鎖することを目的としています。  本品の製造方法ですが、まず患者皮膚組織□cm2を採取して、表皮から表皮細胞を、真 皮から線維芽細胞を分離し、それぞれ培養します。次に線維芽細胞をフィブリノゲンと混 合し、フィブリンを形成させてシート状にし、その上に表皮細胞を播種してハイブリット 化した後、□日間培養することにより製造されます。  本品の品質管理は、皮膚組織の受入検査、製造過程における工程内管理試験、出荷判定 試験、そしてモニタリング項目、これは試験結果を得るまでに時間を要するため、出荷後 に結果が得られる試験ですが、これらが設定されております。  なお、事前審査報告書の8ページ及び9ページには、工程内管理試験の項目及び規格を 記載しておりますが、工程内管理試験10及び14の線維芽細胞の生存率の規格□%以上に ついては、申請者より実測データを踏まえて□%以上に変更するとの見解が、資料をお送 りした後に提出されております。  最終製品の安定性については、検討の結果、保存温度は□℃〜□℃、有効期間は出荷か ら□時間と設定されています。  安全性に関する特性については、培養による細胞の性質の変化に関する検討として、通 常の継代数を超えた細胞を用いて、形態観察、免疫染色による細胞純度の検討、軟寒天コ ロニー形成試験、DNAヒストグラム検査、染色体検査が実施され、問題はないとされて おります。  製品に残存する可能性がある物質については、測定値又は理論計算値に基づいて、残存 量に問題はないとされていますが、アナフィラキシー等のアレルギーの原因となる可能性 は否定できないことから、治験においては、それらの成分に対し過敏症の既往歴のある患 者には適用しないこととし、さらに、移植後も慎重な観察を続けることとされております。  効力又は性能を裏付ける試験としては、本品を免疫不全マウスに移植し、目視及び免疫 染色等による組織学的検査により、移植片が生着し、ヒト皮膚組織様構造が形成されるこ とが確認されています。  次に、機構の事前審査における主な論点を二点御説明いたします。一点目は、品質管理 試験についてです。品質管理試験においては、試験に時間を要するため、製品出荷後に結 果が判明する事項があります。これについて、試験実施時期の前倒しや、試験検体の変更 により、出荷前に結果を得ることが可能な試験はあるか検討するように申請者に求めまし たところ、製造工程のより早期のサンプルを検体とする試験が追加される等の措置が採ら れたことから、機構は品質管理に問題はないと判断しました。  二点目は、残存するウシ胎児血清の安全性についてです。本品は、製造工程でウシ胎児 血清が使用され、最終製品に残存するウシ胎児血清量は、ウシ血清アルブミン(BSA) として測定されています。その残存量は、本品1枚当たり□□μgであり、アナフィラキ シー等の原因になる可能性が考えられます。  しかしながら、現在の製造技術では、これ以上のウシ胎児血清の低減は、品質確保の観 点から困難であり、また、現在までに、皮膚の損傷面に貼付する製品において、残存する ウシ血清に起因する有害事象の報告はないこと、また、アナフィラキシー等のアレルギー 対策として除外基準を設け、ウシ由来製品に対して過敏症の既往歴がある患者には適用し ないこと、また、事前に血中抗BSA抗体価を測定し、陽性の患者には適用しないことと し、さらに、移植後のアレルギー反応を慎重に観察するとともに、万一発生した場合も適 切に対処できる体制をとるとされていることから、機構は、現時点で可能な対策は講じら れていると考えております。  ウシ胎児血清に関するリスクを含めた、本品に想定されるリスクの可能性に対し、期待 されるベネフィットとしては、少ない皮膚面積からより広い面積の自家培養皮膚を作製 し、創を閉鎖することが期待されます。また、本品は2層構造を有していることから、真 皮層が欠損した創にも生着する可能性が期待され、重症熱傷に対する新しい治療法を提供 する可能性が期待されます。  以上、提出された品質及び安全性に関する資料を評価した結果、現在の科学水準から、 治験において十分に安全性を確保する方策を講じることを前提に、治験を開始することは 差し支えないと判断いたしました。  なお、本品目の専門協議に御参加いただきました専門委員は、本日配付の資料にありま すとおり6名の委員です。また、本日は参考委員として、聖マリアンナ医科大学形成外科 学講座教授の熊谷憲夫先生に御出席いただいております。御審議のほどよろしくお願いい たします。 ○早川部会長 ありがとうございました。本品目は、重症熱傷患者を対象とし、少量の患 者皮膚組織から、より広い面積の自家培養皮膚を作製し、深達性II度又はIII度の熱傷創に 移植し、創を閉鎖することを目的としているということです。真皮層が欠損した創にも生 着する可能性が期待され、重症熱傷に対する新しい治療法を提供する可能性が期待される ということです。本日御欠席の委員から、事前に御意見等は寄せられておりますか。 ○機構 欠席の先生方から、特に意見等は提出されておりません。 ○早川部会長 それでは、参考委員としておいでいただいております熊谷先生より、専門 協議の委員としてのお立場から何かございましたらよろしくお願いいたします。 ○熊谷参考人 私も、別の培養皮膚といいますか、培養表皮といいますか、それを20年 以上前から既に500例以上の患者さんにやってきました。そのうち熱傷の患者さんは1割 強くらいです。確かに重症の熱傷、特に50%以上の深い熱傷の患者さんというのは、こ ういう再生医療の必要性は非常にあるかと思います。  今回の培養皮膚の特徴としては、線維芽細胞が入っているということです。私どもも同 じような手法で、一部シート化して移植することもありますが、一般的にはフィブリンに 線維芽細胞を懸濁し、それをあらかじめ患者の傷にまいて、その上で培養表皮を移植する という方法をやっています。そちらの方が簡便であるというか、比較的広範囲に細胞をま けるというメリットがあります。  そのような治療をやりますと、従来の単なる培養表皮移植とは違い、生着率といいます か、培養表皮の生着、皮膚に付くのが向上するといいますか、そのような印象を持ってい ます。  それから、真皮の欠損創にいかに培養表皮を接着させるかは非常に難しいところです が、この素材に関して、線維芽細胞を入れたから確実に良い成績が出るかどうかというの は、まだ私もよく分かりません。  ただ、フランスのバーンセンターで、培養表皮と、フィブリンに入れた同じような素材 ですが、培養皮膚をやったものでは、生着率は変わらないけれども、多少、移植後の組織 学的形態が違うというような報告は、既に5、6年以上前からあります。 ○早川部会長 ありがとうございました。委員の皆様より、御意見、御質問等をお伺いい たします。せっかく熊谷先生においでいただいていますので、先生に対する御質問も含め てお願いいたします。 ○吉倉委員 □cm2というのは、普通はどこから採るのですか。患者は既にかなり表皮の ダメージを受けている人なので、患者へのインフォームド・コンセントというか、その辺 はどうなのですか。 ○熊谷参考人 100%熱傷以外の患者はどこかに正常な皮膚があります。何年か前に経験 した患者の場合には、97、98%のIII度熱傷の子供でしたが、そのときには股のところから、 以前アメリカで最初に報告された患者の場合は脇のところから、というように比較的隠れ た部位から採りました。皮膚そのものはどこから採ろうが同じですから、どこかに良い皮 膚があります。  やけどした場合、1週間もすれば全身感染創になってしまいますから、できるだけ早く、 感染の起こらない時期に正常な皮膚を採る。正常な皮膚でも、1週間経てば既に表在性の 菌が繁殖していますから、できるだけ早く採ることが大切です。ここに□cm2と書いてあ りますが、重症になればなるほど、できるだけ最初に大きく採って、早く皮膚を育て上げ ることが大切かと思います。 ○吉倉委員 よく分かりました。先生がおっしゃったことというのは、この製剤を使うと きに注意すべきことなのだろうと思いますが、こういう製剤の認可の場合に、患者の合意 といいますか、その辺は全然考えなくていいのですか。 ○早川部会長 当然それは考えなくてはいけないと思います。どの段階で、どれだけの深 さのインフォームド・コンセントをつくるかというのはあると思います。機構から何か説 明はありますか。 ○機構 治験の段階におきましては、採取部位としましては、手の平とか足の裏のような、 皮膚が細胞を改修しにくいと考えられるところはできるだけ除いて、その他の健常な部位 であれば、確保できるところから採ることになっております。 ○医療機器審査管理室長 インフォームド・コンセントについては、治験届のところで付 けていただきまして、どういう形で患者に説明をするかについて、本日の段階では詳細は 付いておりませんが、治験届を見せていただくときに、その内容について確認を取ります し、もちろん承認の段階では、治験の間の情報も踏まえて、インフォームド・コンセント の内容についてもう一度検討することになろうかと思います。 ○澤田委員 教えていただきたいのですけれども、最終的な製品ができるまでに4週間掛 かるということですが、その間患者はどういう治療をすればよろしいのでしょうか。ずっ と待っているわけではなくて、ほかの治療もするわけですよね。 ○機構 4週間の間は、従来の治療方法にもありますが、同種皮膚や人工皮膚などの貼付 をして、できるまで待つというのが今の計画です。 ○熊谷参考人 III度熱傷といいますか、皮膚が完全に全層で壊死が起こった場合に、最近 は入院してからある程度深さがきちんと決まれば、4、5日くらいに第1回の手術をして、 やけどした皮膚を取り除いて、それからスキンバンクからの皮膚を移植します。重症の熱 傷の患者というのは免疫拒絶反応が比較的弱くなっておりますから、中には2週間、3週 間ずっと同種皮膚で傷がカバーされているということが往々にしてあります。  その間にできるだけ、デブリと言いますが、壊死した皮膚を切除するのは、体表面のせ いぜい20%くらいですけれども、そこに同種皮膚を置く。同時に、やけどしていないと ころから、患者本人の皮膚を採って、例えば3倍とか6倍のメッシュでほかの傷をカバー する。普通の自家植皮と並行しながら行うことが大切です。  この培養皮膚の一つの問題点としては、先ほど言いましたように、線維芽細胞を一緒に 培養しているものですから、その培養がある程度出来上がるのが、場合によっては1か月 くらい掛かるということです。コメントでも言いましたが、その点がちょっとネックであ るかなという感じがしました。  いずれにしても、従来の治療法と並行してやって、最終的に培養皮膚ができた段階で、 例えば同種皮膚のまだ残っているところを浅く削って、その創面に移植することが必要で す。また、培養皮膚というものは感染に弱いものですから、傷をできるだけ清潔に、感染 のない傷にしておくことが大切です。 ○貫和委員 専門ではないので分からない点なのですが、長期に生着という、先ほどの説 明のときに、通常の組織とは少し違う文献があるということをおっしゃっていました。広 い範囲の熱傷があって、それが治っていって、カバーされたところの皮膚のイメージがな かなか見えないのですが、それを少し説明していただけますか。 ○熊谷参考人 やけどした跡の、いわゆる瘢痕皮膚といいますか、線維芽細胞を入れても、 全く正常な皮膚に回復するというわけではなくて、傷跡として残ります。ただ、その中に は表皮の幹細胞がありますから、それが途中で脱落するということはなくて、自家であれ ば、患者は長期間そのままの状態で傷は永久的にカバーされます。 1984年に培養表皮が実際に臨床で使われて、既に25年くらいになります。その患者は子 供でしたが、特別トラブルもなく、問題なく生活しています。 ○吉倉委員 マウスの3T3細胞をフィーダーにして、今までかなり移植をやられていま すが、これと比べてこの手法はどうなのでしょう。今までのは深いやけどは余りうまくい かないかもしれませんが、その辺と、あとは費用の関係はどうでしょうか。従来の方法と 比べて値段の点とか、効果の点はどうなるのか。 ○熊谷参考人 マウスの3T3を使った培養というのは、ハーバード大学のグリーン教授 が開発した方法で、培養としては非常に良い方法であると思います。ただ、ゼノといいま すか、フィーダー細胞にマウスの細胞を使ったというのが特色であり、問題点になってい るところです。  今回報告された方法というのは、その後にBoyce&Hamという、3T3を使わない方法が 報告されたのですが、それについてもある程度我々もずっと昔に同じような方法でやりま したが、3T3よりは増殖とか細胞の分化はちょっと劣ります。それから、3T3細胞の 培養と違い、メラノサイトが一緒に入っていないという欠点というか、そういうことがあ ります。今はその二つの方法が世界で行われていますが、大半は3T3を使った培養です。 ○吉倉委員 今の件は、インフォームド・コンセントを得るときに、チョイスが二つある ことになるのか、適用がこちらの場合に決まってしまうのか、その辺はどうなっているの か分かれば教えてください。 ○早川部会長 そこは治験相談、あるいは実際の承認のところでどういう扱いになるので すか。 ○事務局 本日確認していただいた後には、実際に治験届という形で、治験の中身が適切 かどうかということを見ることになります。その際にはインフォームド・コンセントの文 書なども見させていただくことになります。普通、インフォームド・コンセントというの は、この治療についての説明と、この治療以外にどういう治療法があるかということも含 めて説明されることが前提だと思いますので、そういう中で確認していくことになるかと 思います。 ○西島委員 Fetal Bovine Serumの混入ということですが、熊谷先生の御経験から、先 生の場合にもFetal Bovine Serumを使われていると思いますけれども、今までにどの程 度問題があったかお分かりでしたら教えてください。 ○熊谷参考人 FBSに関しては、今まで臨床的に何か問題があったという報告はありま せん。ただ、昔、文献的に、採皮創といいますか、皮膚を採ったところに培養表皮を移植 し、そこに軽い炎症反応があった。それがFBSの影響なのかどうかというのはちょっと 分かりませんが。それ以外に、重篤な症状があったとか、そういう報告は聞いておりませ ん。  FBSに関しても、できるだけ安全な地域のFBSを使うということ、それから、あら かじめ放射線照射とか何かの処理をしたFBSを使うという方法もあるようです。いずれ にしても、BSEがこれで発生したとか、重篤なアナフィラキシー、あるいはアレルギー が起こったということは聞いておりません。我々の550例以上の患者に使っても、特別こ れに関して問題があったということはありませんでした。  FBSの残量が多いというのは、フィブリンを使っていますから、それを完全に洗うと いうのが、培養表皮などと比べたらどうしても難しいのではないかと思っています。 ○西島委員 今後、リコンビナントのアルブミンなどは十分使っていける可能性はあるの ですか。リコンビナントのヒューマンのアルブミンです。 ○熊谷参考人 そういうものができれば本当に鬼に金棒です。あとは、患者の血清を使う という考え方もあります。やけどというのは、大量に輸血をしたり、大量に輸液をしたり して、患者から血液を採るというのは不可能であるという気はします。正常な人とはちょ っと違いますから。 ○飯沼委員 FBSを使う理由がよく分からないのです。FCSではないのですか。Fetal Calf Serumではないのですか。Fetal Bovine Serumなのですか。 ○機構 FBSの方です。 ○飯沼委員 昔の知識で申し訳ないのですが、培養するときには一般的にFetal Calf Serumだと思うのです。 ○熊谷参考人 FCSとFBSは同じです。 ○飯沼委員 イコールですか。 ○熊谷参考人 Fetal Calf SerumとFetal Bovine Serumは同じです。普通の大人のウシ 血清では増殖率が非常に悪いです。 ○早川部会長 ほかにはよろしいでしょうか。本品目については、先生方からいろいろな 御意見、御議論をいただいたわけですが、議決に入ってよろしいでしょうか。それでは議 決に入ります。本品目について、本部会として、指針への適合性が認められ、確認して差 し支えないということで結論いたしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。あり がとうございます。この審議結果については、薬事分科会において報告いたします。  これで本議題は終了ですので、熊谷先生には御退室をお願いいたします。大変貴重なコ メントをいただきましてありがとうございました。 ── 熊谷参考人退席 ── ○早川部会長 審議事項は以上です。次に、報告事項に入ります。議題2「ヒト(自己) 由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保について」、事務局から御説明をお 願いいたします。 ○事務局 資料2-1と資料2-2について御説明いたします。本年9月にありました本部会 においても、現在ヒト由来の細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保の指針につ いて見直しを行っている旨と、当時出しておりました案についてパブリックコメントを開 始している旨を報告させていただいたところです。本日は、パブリックコメントで寄せら れた意見を踏まえて修正したものを席上に配付させていただきました。  事務局での成案という形になっておりますが、通知化する際に若干細かい法令上の文言 の修正等が入る可能性は残っておりますので、その辺は御了承いただければと考えており ます。それでは、パブリックコメントを経てどのような変更があったのかを含めながら御 説明いたします。  資料2-1のタイトル、それから指針全般についてです。今回のものが、ヒトの自己由来 の細胞・組織の加工医薬品等であるということから、自己由来であるということを全般的 に明記した方がいいという御意見等がありましたので、指針全体にわたって「自己由来」 という形でなるべく明記させていただいたところです。  3ページの「第2 定義」のところです。細胞の初期の加工の行為などが、いわゆる製 造の定義とか、製造と加工の概念の違いを明確にした方がいいのではないかという御意見 をいただき、定義の中の1に「細胞・組織の加工」ということで定義させていただくとと もに、2で「製造」ということで、こちらが明確になるように修文をさせていただいてお ります。  3ページの一番下に「(2)ドナーの感染症に対する留意点」という部分があります。こ れは、パブリックコメントの案では「ドナーの感染症に対する配慮」と記述させていただ いておりましたが、実際に取扱う「従事者の安全性を確保する観点等」という内容と必ず しも合っていないのではないかという御意見等をいただき、当初は「配慮」という言葉を 使っておりましたが、「留意点」と修正させていただきました。  5ページの「(1)細胞の培養を行う場合」のところの「(3)異種血清及び異種若しくは同 種の血清に由来する成分について」という部分です。これは、パブリックコメントの段階 では「異種の血清及び血清に由来する成分」としておりましたが、この辺りがちょっと分 かりにくいということがありましたので、後段の「血清に由来する成分」のところについ ては、異種のもの、同種のものがそれぞれ入るという形で明記させていただきました。  5ページの一番下の(4)、抗生物質の使用に関するところは多数の御意見をいただいてお ります。当初は「過敏症の患者が想定される場合には使用すべきではない」という案にし ておりましたが、こちらはそういう患者については除外するということもあるということ で、想定される場合すべてを駄目にするということではなくて、想定される患者に関して は除くという方法もあるのではないかということ、それから、体の表面や口腔など、いろ いろな菌がいる場所から採ってくる場合には、抗生物質の使用が避けられない場合もある ということがありましたので、製造初期の工程において使用が不可欠と考えられる場合に は、その後の工程で可能な限り漸減を図るということを書いております。  7ページの製造工程の妥当性に関するところで、「第2 製造工程」というのが中段に ありますけれども、ここについては「可能な範囲でその妥当性を検証し」というのが当初 の案でしたが、具体的に検証する項目について以下のようなものでいいのではないかとい う御意見がありましたので、「可能な範囲でその妥当性を以下の項目で検証し、品質の一 定性を保持すること」のように、パブリックコメントの意見を踏まえて修正させていただ きました。  8ページで、培養期間を超えて培養した場合の確認の意義です。培養期間を超えると、 細胞の増殖等に急激に機能低下が起こる場合もあるので、期間外のところまで検査を行う ということは混乱を招く可能性があるのではないかという御指摘がありましたが、培養期 間中における妥当性、品質の安定性等に関する妥当性を確認するという点では、少し培養 期間を超えたデータが必要ではないかということで、ここは当初の案ということにさせて いただいております。  9ページの中段に「2 最終製品の品質管理法」というのがあります。その(1)のとこ ろで、現在は「細胞数並びに生存率」となっておりますが、当初は「回収率」という表現 をさせていただいておりました。細胞数に直した方がいいという御指摘があり、「細胞数 並びに生存率」とさせていただきました。  すぐ下の「(2)確認試験」のところですが、意見としては、生化学的な指標、免疫学的 な指標などのほかにも、顕微鏡等での観察というような非破壊でできる形態学的特徴の観 察ということも考えられるのではないかという意見がありましたので、この「形態学的特 徴」という文字を、目的とする細胞・組織のところの確認試験の項目の中に記載しており ます。  10ページの(7)に「エンドトキシン試験」という記述があります。先ほども議論があ りましたが、原料となる少ない自己細胞を、検査などのために使ってしまうということは 問題ではないかという御意見等がありましたので、こういう試験の方法としては、培養に 使っている培養液の培養上澄みたいなものを用いることも可能であるということを、こち らはQ&Aの方でお示しして対応させていただくこととさせていただいております。  11ページの「第3章 細胞・組織加工医薬品等の安定性」のところで、中段くらいにあ りますが、「必要に応じて標準的な製造期間を超える場合や標準的な保存期間を超える長 期保存についても検討し、安定性の限界を可能な範囲で確認すること」というように、「可 能な範囲で」という文字を入れさせていただきました。  13ページで、臨床試験の関係です。第7章に臨床試験の項目があり、この中の5に先 ほど御議論のありました被験者への説明事項の案を入れております。パブリックコメント の意見としては、確認申請の段階においては、被験者への説明事項の案までは必要ないの ではないかという御意見がありました。研究班等で検討していただきました結果、確認申 請時において、品質及び安全性の評価を行うに当たり、リスクとベネフィットを勘案して 判断されることがあり、非臨床試験のみでは説明が不十分な点などがどうしても出てきて しまいますので、それらについて被験者にどのように適切に説明するかも踏まえて評価す る必要があることから、インフォームド・コンセントの概要についても案をお示しいただ くことが有用だということで、原文のとおりとさせていただきたいと考えております。  以上がパブリックコメント関連の意見ですが、パブリックコメント以外の意見として、 例えば確認申請については、申請してから1か月くらいで確認の可否について回答してほ しいという意見、あとは、こういう製品について特許を認めてほしいということ、それか ら、こういう指針が出た際には、説明会、研修会などを実施していただきたいという意見 も併せていただいております。これは参考までにお聞きさせていただくということで、パ ブリックコメントに関する対応としては対象外という扱いにさせていただきたいと考え ております。概要は以上です。 ○事務局 引き続きまして、監視指導・麻薬対策課より、「ヒト(自己)由来細胞・組織加 工医薬品等の製造管理・品質管理の考え方(案)」について御説明申し上げます。  資料2-2です。先に御説明のありました品質及び安全性の確保に関する指針の改訂作業 をしている中で、実際にこういう医薬品等を作製する製造所においては、従来より薬事法 に基づいてGMP、若しくは医療機器ですとQMSと言われる製造管理及び品質管理の基 準が適用されているところです。  そういう中で、ヒト由来の細胞・組織加工医薬品等の製造管理・品質管理に当たり、特 に自己由来の場合においては、患者本人から組織を採取するということで、品質管理に必 要な検体が必要最低限、患者の侵襲を抑えるという意味で制限されるということ、また、 患者個人から採ったものを増殖し、また患者に戻すというオーダーメイド的なものである といった、様々な特殊な観点があるので、実際にGMPの省令、若しくはQMSの省令の 運用遵守に当たってどのようにすればよいのかということを示してほしいという意見が 企業等からありました。  そういう意見を踏まえ、今後このような細胞加工医薬品等の製造管理・品質管理が適切 に担保されるように、GMP、QMSの遵守に当たっての考え方について、これは新たに 取りまとめを行おうとしているものです。  なお、この案については、今年の9月に約1か月間既にパブリックコメントをさせてい ただき、25件の意見をいただきまして、その意見に対しての内容を把握したものです。 先生方に御覧いただきますのは、1週間前に送付はさせていただきましたが、御説明は今 回の部会で初めてということですので、まず簡単に概要を御説明させていただきます。  第1の総論ですが、目的としては先ほど申し上げましたとおり、細胞・組織加工医薬品 等のGMP又はQMSの運用において考慮すべき点を示したという形にさせていただき ました。適用範囲については、細胞・組織加工医薬品又は治験のこういった製品を製造す るものについてのすべての段階、製造所においてこの考え方を考慮していただきたいとい う位置付けにしております。  2ページの3.の「定義」については、先に御説明申し上げました品質、安全性の確保 に関する指針と同様の語句の定義にさせていただいております。  第2以降に、実際に遵守していただくべき留意点について、各項目ごとに述べさせてい ただいておりますが、大きく四つに分けられております。一つ目は、自己由来のものであ るということで、その患者を識別するという意味でのドナーの識別情報の取扱いについて 留意すべき点を述べております。  3ページの「2.混同防止」として、異なる患者の組織と取り違えてしまったら大変と いうことがありますので、混同防止において、作業区域でどういうことを気にするべきか、 また、使用記録をどのように適切に取ればよろしいかといった各種留意点について述べて おります。  4ページの「3.汚染防止のための管理」として、製品に係る一連の作業に伴う感染性 因子等の除去に関する留意点ですとか、本品が生きた細胞であるということで滅菌がなか なかできないという点を踏まえ、原料の受入れ、若しくはその工程の管理において汚染を どのように防ぐべきかという点についての留意点を示しております。  「4.適切な加工等」として、生きた細胞を取り扱うに当たっての留意点、また、患者 への侵襲を最低限にする観点から試験検査に用いる検体が多数採れないということで、具 体的にその工程の管理、試験検査についてどのように行えばいいかという点を列記させて いただきました。  「5.その他」として、患者のオーダーメイドという観点から、製造手順、若しくはそ の規格についての逸脱の取扱い、また、個人情報の漏えいの観点からの留意点を示してお ります。  現在お示しした案はパブリックコメントの反映後という形ですが、主な考え方について のパブリックコメントの意見と、その対応について御紹介させていただきます。一つ目の 意見として、自己由来の細胞・組織加工医薬品等の加工、製造について、従来の通知等で 示された内容と、今回の本考え方の内容が異なった場合、本考え方を優先させてほしいと いう意見です。これに対する回答としては、資料2-2の1ページ、第1の総論、1.目的、 「本考え方は、ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の製造管理・品質管理が適切に行 われることを目的として、GMP省令又はQMS省令を遵守する際に考慮すべき点を示し た」ということですので、GMP又はQMSに係る一般的な考え方、事例等を示した既存 の通知との間に相違がある場合には、原則としてヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等 に関する部分については、本考え方に基づいて運用してくださいという形で差し支えない 旨の回答を行う予定です。  なお、GMP、QMSにおいては、この考え方に述べられているもののほか、構造設備 の基準、入退室管理の基準、また製造・品質管理の確保に関し、混同防止などに関する留 意点について、無菌の医薬品、また生物由来医薬品の各種基準がありまして、それについ ては、今回の考え方に合わせて、省令の基準として係るという形になっております。  その他の主な意見としては、資料2-2の3ページの混同防止の「(1)作業区域等」のと ころに、従前、同一空間で異なる複数のドナーに由来する細胞・組織は取り扱わないとい う旨を記載させていただいておりましたが、隔壁などで仕切られた空間で培養を行わなけ ればいけないということを原則にいたしますと、海外等で既に上市されている製品が大部 屋内で製造している現実からも極めて厳しい条件ですので、基本的には留意点に沿った対 応をとれば、作業区域内で異なる複数のドナーの細胞・組織を取り扱ってもよいこととし てほしいという意見をいただいところです。  その意見を踏まえ、この作業区域等におきまして同一空間の定義が不明瞭ということも あり、それを削除した上で、混同防止のために留意すべき点を2.の(1)に示しておりま す。また、併せまして4ページの3.の「汚染防止のための管理」ですが、この(2)の「原 料・工程の管理」の中の二つ目、「交叉汚染等の防止の観点から、同一培養装置内で異な る複数のドナーに由来する細胞・組織は原則取り扱わないこと」という形で、こちらにも 留意点を追加したところです。  簡単ではございますが、GMP、QMSの遵守に当たり、より適切な運用がなされると いう観点から今回こういう考え方の案を作成させていただいているという御報告でござ います。  なお、先の安全性の指針と同様、今後事務局により通知に当たって細かな修正等が有り 得ますことについて御了解をいただければと思います。以上でございます。 ○早川部会長 ありがとうございました。ただ今、資料2-1の品質及び安全性の確保に関 する指針、それから資料2-2の製造管理・品質管理の考え方について御報告をいただきま したが、御質問等がありましたら御願いします。 ○澤田委員 もうコメントが出た段階なので、今更言ってもしょうがないとは思うのです が、資料2-1の7ページ、組換えの「なお「ヒトの細胞等」若しくは」うんぬんの文章の 意味が私にはよく理解できなかったのです。これはどういう意味ですか。「なお」以降の 5行の意味が、ちょっと具体的にイメージがつかめなかったのですが。 ○事務局 これはこちらの指針の関係以外にも、御存じかと思いますが、遺伝子組換え生 物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)というもの がありまして、何か組換えたものを作る場合で、増殖する能力がそれぞれある場合などに ついては、事前にカルタヘナ法に基づく、例えば2種使用であれば外に漏れ出さないこと の確認ですとか、1種使用といって開放系で使う場合にもそういった生物による遺伝的な 多様性についての影響がないことの確認を事前にする必要がありまして、この手続が必要 であるという旨だけの記述をここに書かせていただいたものです。 ○澤田委員 要はカルタヘナ法に適用される場合は注意しろと言いたいだけなのですね。 ○事務局 はい。 ○早川部会長 この文章は多分、カルタヘナから引っ張ってきている。 ○事務局 そうです。カルタヘナの中でこういう場合は適用だということが書かれており ます。その文言を引っ張ってきた形です。ちょっと分かりづらい表現で恐縮ですが。 ○医療機器審査管理室長 表現をもう少し考えてみます。趣旨は、カルタヘナについても 留意が必要だということを、念のため付記しておきたいということです。 ○澤田委員 ちょっと考え過ぎまして、もう少し違うことを言っていると思ったもので、 確認をしたいと思っただけです。 ○土屋委員 確認ですが、資料2-1の6ページで、「(2)非細胞・組織成分と組み合わせ る場合」の(2)の「相互作用」というのは、あくまでもインビトロの工程での相互作用とい う意味ですか。 ○早川部会長 そういう理解ですが。違いますか。 ○医療機器審査管理室長 例えばスキャフォールドに細胞を入れた場合に、最終的に細胞 製品がスキャフォールドと一緒に適用されるときに、適用された臨床の場、患者さんの場 において、目的とする細胞・組織の性能であるとか、品質であるとかに非細胞成分が影響 を与えないことを確認しておく必要があるということです。 ○土屋委員 要するに、細胞をスキャフォールドに入れて細胞が死ぬようなことが起こっ たら困るとか、変異するようなものは困るとか、スキャフォールドは細胞を入れることに よって分解をするようなもので目的とする臨床適用の性質が損なわれるなどは良くない と、そういうとらえ方でよろしいですね。 ○医療機器審査管理室長 そういう影響を与えるようなものではいけないということで す。 ○土屋委員 もう一点よろしいでしょうか。10ページのエンドトキシンのところです。 まず一つは、何回も使用されるような再生医療品もあると思うのです。この間の幹細胞も 何回もインジェクションしたり、皮膚でも何回も貼ったり、皮膚の場合は場所によってか なりエンドトキシンの影響は違うのですが、そういう何回も行うものでも最終製品の1回 投与量を基にした安全域でよろしいのですか。何回もするとどう変わるという科学的な根 拠がないので、明確には言えないのですが。それから、専門家に聞きますと、血液の中の 値というのはそれほど安全域がないような値である、決められている規格値が発熱するも のとの安全域が比較的狭いと聞いているので、何回も投与することに対して、いつも1回 の投与量と言い切ってよろしいのかどうか。 ○早川部会長 それは例えば注射剤で、これに限らないのですが、普通の注射剤を頻回投 与していくときに、注射剤のエンドトキシン含量規定というのは、1回投与量で決まって いく。そういう決まり方をしているものなので、そういう考え方でいいのではないかと思 っています。 ○土屋委員 注射剤の場合には吸収、排泄、代謝が比較的スムーズに流れますが、これは そういうものよりはある1か所にとどまっていますね。構造物として存在したり。そうす ると、必ずしも注射のような動態のキネティクスとは違うので、そこはもう少しぼかして 書いた方がいいのではないかと思うのです。 ○早川部会長 これは頻回投与するといっても、今あって次のという、そういう非常に素 早くということではないのではないでしょうか。つまり、蓄積したりすることによって悪 い影響が出るのではないかという御懸念ですか。何かエビデンスはあるのですか。 ○土屋委員 エンドトキシンは比較的吸着するとかいろいろ有り得るので、エビデンスと 言われますと。材料とは、ものによって非常に吸着しやすいものもあります。そうすると、 そういうものはそこに蓄積する可能性があると思います。 ○早川部会長 材料を使う場合には、その材料で決めなくてはいけないリミットを決めて いけばいいのではないでしょうか。 ○土屋委員 その材料が、何回か使用する場合でも蓄積しないということを確認すると か。 ○早川部会長 これは医療材料で例えばエンドトキシン量を決めるときに、今のことを考 慮しながら。もちろん医薬品とは違うケースもあると思いますが。 ○土屋委員 例えばコラーゲンの場合も1%以下くらいしか普通は抽出されないのでは ないですか。かなり吸着しやすいのではないですか。 ○早川部会長 そこは、そういう懸念があるのであれば、御検討いただいてということで。 ただ、今まで例えばコラーゲンはコラーゲンを使うときのルールできっと使っていると思 うので、コラーゲンを使うときはそういうルールですよと言っているだけで、何ら矛盾し ないと私は思います。この中身とおっしゃっていることと余りずれているとは思わないの ですが、どうですか。 ○事務局 実際に適用される臨床の場というのもいろいろなケースがありまして、必ずし も何十回も貼るというものでもないかと思いますので、やはりある程度はそのケースに応 じて、余りにも大量に貼るという場合にはそういったことも考慮しなければならないかも 知れませんが、通常の範囲であれば、1回、2回であればそれほどそこを考慮する必要も ないかと思います。いわゆる注射剤と同等程度のことでの対応でよろしいのかなという感 じがいたします。 ○土屋委員 細胞によってかなりエンドトキシンの影響を受ける可能性があると、例えば 骨分化が言われているので、明確になった時点で書いていただいても結構ですが、そこが ちょっと気になるところです。 ○早川部会長 細胞によってというのは、エンドトキシンが細胞に影響すると言う話です か。 ○土屋委員 エンドトキシンが細胞に影響する。骨分化はエンドトキシンによって差があ るとか、そういうことが言われています。 ○医療機器審査管理室長 もし規定を設けなければならないとすると、恐らく別の観点か らの規格として、臨床試験の結果も踏まえて設定しなければならない場合が出てくるのか と思います。 ○早川部会長 今の話は、エンドトキシンが細胞の中に、この製品の中に入っていて、そ のエンドトキシンが細胞にいたずらするという話ですね。この話は、投与する製品が投与 される人にどういう影響を与えるかという話なので、もしエンドトキシンが極めてスペシ フィックに細胞に影響を与えるということであれば、最後の細胞のキャラクタライゼーシ ョンというか、そこで影響が出てくるのではないでしょうか。 ○医療機器審査管理室長 そこで必要であれば規定を設けるという、別の観点からエンド トキシンの残存量について規定を設けることになろうかと思います。 ○吉倉委員 よろしいですか。研究をやっていて、エンドトキシンのアッセイというのは、 実際上は非常に面倒なのです。それから、エンドトキシンというのはLPSの根っこのと ころでしたね。そもそもリピッドの根っこのところなので、それが蓄積することが有り得 るかどうか。普通の生物学的に考えると、それが溜まるというのはちょっと考えにくいよ うに思うのです。それから、エンドトキシンそのものがこういうものでかなりたくさん入 るか。一般的に生物製剤のエンドトキシンアッセイというのがあるのですが、本当にこれ は意味がある項目かどうかということも疑問には思うのです。グラム陰性菌の、LPSの 根っこのところがエンドトキシンなのです。それがこの自己組織にどういう格好で入って くるか。グラム陰性菌がどこかでコンタミしてそれが残ったか。こういうことが実際にあ るかどうかですね。それは検定項目で残しておくのはいいのですが、現実の話として一体 何のことを言っているのか、これは非常に分かりにくい項目だと私は思います。 ○早川部会長 これは、生ものを扱うときにエンドトキシンというのが一つの測るべき検 査項目みたいな感じとして残っている。先生がおっしゃるように、確かに、どこからエン ドトキシンが入ってくるのかということに関しては比較的可能性は少ないのだろうと思 います。念のために確認をする位置付けだと思いますし、今まで生物製剤基準でも、いろ いろな基準でもエンドトキシンはありますが、ベースは1回投与量です。 ○土屋委員 実際、医療用具で使われているコラーゲン製品をサーベイしたらかなりコン タミがありまして、抽出液を試験すると発熱が出るのです。それで製品になっているので す。通常の薬局方の蒸留水では抽出されないのです。1%くらいしか抽出されていない製 品があります。そこでパスになっているのです。実際、医療用具で使われる生物由来のコ ラーゲン等は問題になってきます。アルギン酸もそうです。汚染されている。きちんとし た人は、きれいにしたものを使って試験をされて、使われています。それは組織工学では、 専門家の間ではかなり有名な話です。 ○早川部会長 今おっしゃっているのは、「日本薬局方で示されている」というところが、 限定的になってしまうという意味ですか。話がどんどん変わってきているのですが。 ○土屋委員 薬局方といいますのは、抽出法のところが蒸留水で抽出となっているところ が、コラーゲンではそれは全然意味がないということです。 ○早川部会長 コラーゲンの話は公定書か何かで決まっていますか。1回コラーゲンを使 うときに、エンドトキシン量が、コラーゲンを含んでいる最終製品ですが、どのくらいが 安全域だということは公定書で決まっていますか。 ○土屋委員 使用される部位によってこのくらいだというのは、我々は研究で、報告書で 出しています。皮膚では使われる部位によって炎症反応が違うので、皮膚ではどうである、 頭に埋めた場合はどうである、皮下ではどうであるなど、それを言うとかなり幅がありま す。 ○吉倉委員 古典的にはうさぎの肛門に体温計を入れてモニターをしてやるのですが、こ れはなかなか正確な測定が難しく、確か今はリムルステストを使っているのが普通だろう と思うのです。エンドトキシンのアッセイは、感染研でも非常に苦労した記憶があります。 どこからエンドトキシンが入るかをよく考えて今の議論をした方がいいのではないかと 思います。 ○土屋委員 我々の試験は、スパイクしてわざわざそういうものの製品、きれいなものに スパイクしたものを作って、それをいろいろな場所に埋めて生体反応、組織反応を見たの です。 ○審査管理課長 土屋委員からお示しされている御意見は、いろいろな研究報告であると か、論文などがあるようでございますから、そういうものを出してもらって、研究班で今 一度、この点について検討してもらうことにさせていただきたいと思います。この場で口 頭でおっしゃって、そこで掛け合いをやっていてもなかなからちが明かないと思いますの で、その点はそういう処理で御了解願えればと思います。 ○早川部会長 そういうふうにさせていただきたいと思います。ほかに何か御意見はござ いますでしょうか。 ○甲斐委員 今回のことは、読んでみましても全然問題はないと思います。FBSをどう しても使わなければいけないということもよく分かりましたし、アナフィラキシーショッ クの危険性を抑えるために何回も変えてその量を低減する処置が行われていて、この申請 自体には問題はないと思います。しかし、1枚当たりμg以下にされていますし、過去の 事例で50μg以下なら大丈夫という報告もあったようですが、これから治験に回って例え ばこの皮膚を10枚貼るとかそういうことはないのかなと思いまして、そのようなデータ はこれから蓄積されて報告されるということなのでしょうか。 ○早川部会長 最初の皮膚のお話ですね。 ○甲斐委員 1枚当たりμgでも、10枚いくと50μgになってしまいます。それ以上貼る と報告の量より超えます。そういうデータはこれから蓄積されて、そういう注意は考えて いただけるということですよね。ありがとうございました。 ○澤田委員 これは直接関係はない話ですが、この前の培養の皮膚の話を聞いていると、 実際の臨床の場でなかなか使いづらい気がしているのです。実際にお医者さんから、こう いうものをキット化していただいて、それを自分で臨床の場で使いたいという要望はない のでしょうか。  例えば簡単な加工であれば、現場でできるわけですね。その材料をキットにして、実際 にお医者さんか薬剤師さんが操作をして、現場ですべて済ませてしまうということが将来 起きないかなと予想をしています。その場合、その定義としてこういう医薬品はどういう 扱いになるのかなと、今ちょっと思いましたので、御参考までに。 ○早川部会長 薬事法のかぶせ方の話かと思います。こういうものを参考にして、院内で お医者さんが自らという話ですね。 ○医療機器審査管理室長 培養キットみたいなものを製品化してということですか。そう いう製品ができたとすると、培養キット自体が恐らく、培養器も含めて医療機器として、 工程も評価を受けることになりますので、審査を受けることにはなると思います。 ○澤田委員 ただ、細胞医薬品ではないですよね。 ○医療機器審査管理室長 はい。院内で培養するということであれば、出来上がってきた 細胞自体は医薬品なり医療機器ということではございませんが、こういう培養方法でこう いう工程を経れば、こういうふうに生着率の高い皮膚ができますよということでその培養 キットを売るのだとすると、その培養キット自体が医療機器としての審査を受けることに なって、その中で工程の管理については評価を受けるということになると思います。 ○澤田委員 医療現場ではGMPの適用は受けないです。 ○医療機器審査管理室長 薬事法上のGMPの適用を受けることはないですが、出来上が ったものの品質管理は、キット全体の使い方として確保していただく必要はあります。 ○澤田委員 キットの製造までは、もちろんGMPの適用を受けますが、キットが1度売 られると、それ以降は臨床のお医者さんが好きなように使えるという話になる。 ○医療機器審査管理室長 好きなようにというか、きちんと審査を受けた培養工程に従っ て、品質管理の下で作っていただきます。実際に作っていただくのは先生の責任になりま すが、決められたとおりに作っていただくことになるかと思います。 ○澤田委員 何となく将来そちらの方が販路が多い気がしました。いちいち運搬で製造元 まで戻して、またするのは大変ですよね。 ○医療機器審査管理室長 培養も大変です。最終的な、患者さんに適用する場合の品質管 理を各病院でどこまでできるかということもあります。 ○澤田委員 培養が非常に簡単な場合もあります。 ○医療機器審査管理室長 培養工程が非常にシンプルで、例えば特定の細胞を分離するだ けで使えるものというのは、もしかしたらそういう可能性はあるかとは思います。 ○土屋委員 培養装置のことですが、今いろいろなところが培養装置を作っていまして、 その滅菌に過酸化水素滅菌とか、そういうものを使用しているようです。日本ではエチレ ンオキサイドガスとオートクレーブくらいしか確か認可されていないと思うのですが、こ ういった日本で認められていない滅菌方法で滅菌されている培養装置を使って培養した ものというのは、いろいろこの試験で通ればよろしいということなのでしょうか。 ○事務局 恐らくそちらの機器は承認申請をしていただくことになると思いますので、そ の過程で適切にされているかということも含めて評価をさせていただくことになると思 います。要するに、培養自体がもし医療機関でなされるのだとすると、その培養行為自体 は医療行為の中に入ってしまいますので、そこに提供する機器について、適切な製造法が なされているかということで、その製造機器の滅菌、その他については、機器としての性 能の評価の際に審査をさせていただくことになるかと思うのですが。 ○医療機器審査管理室長 今のはキット製品の話ではなくて。 ○早川部会長 滅菌の仕方です。 ○審査管理課長 確認申請の段階でどのような滅菌をするのかというのも出てくると思 いますし、そういった形でまた審査をしていくのではなかろうかと思います。 ○早川部会長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。それでは、今御報告いただい た事項につきましては、一点確認すべき点はあるかと思いますが、日本薬局方に限定する のか、「等」を入れるのか、もしどうしてもということであれば、「等」を入れればいい のではないかと私は思いますが、それについては少し検討をするということで、その他の 点については御確認いただいたものとしたいと思います。  それでは、本日の議事は以上で終了といたしたいと思います。事務局から連絡事項等は ございますでしょうか。 ○事務局 連絡事項は特にございません。今のところ次の部会の日程は決めさせていただ いておりませんので、先生方の御都合をお伺いして、改めて日程の調整をさせていただき たいと思います。その節はどうぞよろしくお願いいたします。 ○早川部会長 それでは、以上で本日の生物由来技術部会を終了させていただきます。活 発な御議論をいただきましてどうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 専門官 田中(内線4221)