07/12/21 第17回労働政策審議会議事録 ○第17回 労働政策審議会 日時:平成19年12月21日(金)11:00〜 場所:中央労働委員会事務局(7階講堂) 出 席 者 【公益代表】伊藤(庄)委員、今田委員、大橋委員、勝委員、菅野会長、清家委員、       林委員、平野委員 【労働者代表】河野委員、古賀委員、土屋委員、南雲委員、山口委員 【使用者代表】井手委員、加藤(丈)委員、紀陸委員、山内委員 【事 務 局】上村厚生労働審議官、松井総括審議官、草野審議官、村木審議官、        氏兼勤労者生活部長、大西監督課長、大槻職業安定局次長、        小野政策統括官、生田労働政策担当参事官 ○菅野会長 ただいまから、第17回労働政策審議会を開催いたします。議事に入りま す前に、新たに就任されました委員の方をご紹介させていただきます。労働者代表委員 として、JAM会長の河野委員です。 ○河野委員 河野です。よろしくお願いいたします。 ○菅野会長 全国電力関連産業労働組合総連合会長の南雲委員です。 ○南雲委員 南雲です。よろしくお願いいたします。 ○菅野会長 それでは、議事に移りたいと思います。本日の議題は、第1に「今後の労 働政策の基本的考え方について」、第2に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バラ ンス)憲章」等について、第3に「その他」となっています。  まず第1の議題ですが、前回(8月9日)の本審議会において、中長期的な雇用労働 政策の課題と基本的考え方について、ひとわたり「雇用労働政策の基軸・方向性に関す る研究会」報告書に基づきご議論いただきました。その際、事務局を中心に労使のご意 見を踏まえた一定の整理をお願いしたところです。本日は、その結果を報告という形で 取りまとめてありますので、事務局からご説明をお願いいたします。 ○生田労働政策担当参事官 資料1の4頁目にメンバーが書いてありますが、前回の審 議会において、会長のご指示を受けて、雇用労働政策の基本的考え方について、公益委 員の皆様、労使それぞれを代表する皆様にお願いいたしまして、こういった検討会を参 集させていただいております。こういった会議で何回かご議論いただいた結果として、 雇用労働政策の基本的考え方についてご意見をいただいています。  この内容を整理したのが資料1の1頁目からです。以下、内容を読み上げさせますの で、よろしくお願いいたします。 ○事務局(企画官) それでは、資料1を読み上げさせていただきます。  今後の雇用労働政策の基本的考え方について−働く人を大切にする政策の実現に向け て、−雇用労働政策の基本的考え方に関する検討会。本検討会は、「雇用労働政策の基軸・ 方向性に関する研究会報告書」を素材として、今後の雇用労働政策の基本的考え方につ いて議論を重ねてきたところであるが、今般、その結果を下記のとおり取りまとめた。  本検討会としては、労働政策審議会において、下記を踏まえ、今後の雇用労働政策の 基本的考え方に関する議論が行われるよう要望する。  記。我が国において、人口減少と一層の少子高齢化、グローバル化に伴う企業間競争 の激化、労働者の価値観の多様化等の構造的な変化が進む中で、労働力人口の減少と経 済活力の低下に伴う雇用への影響、多様な働き方の拡大に伴う雇用の諸課題、長時間労 働者の割合の高止まりに伴う健康や生活をめぐる問題等が顕在化している。  これらの問題を解決し、労働者生活の安定と生産性の向上による企業競争力の強化等 とを、同時に実現するとともに、労働者一人一人の仕事と生活の調和を実現し、働く希 望を持つすべての人が自ら希望する働き方により安心・納得して働けることを目指し、 就業率を向上させ、経済社会の持続可能性や安定性を高めていくことが必要である。  そのためには、適切なマクロ経済運営の下で、以下の基本的考え方に立って中長期的 に一貫性の高い雇用労働政策を策定し、中小企業支援を含む産業政策や教育政策との連 携や、税制・社会保障制度との整合性を相互に保ちつつ、その着実な実施に努めること が適当である。  1、公正の確保。豊かな活力ある経済社会にふさわしい「公正な働き方」を確保する。 具体的には、労使の間では交渉力や情報量に差が存在する中で、労使が、実質的に対等 な立場で労働条件を決定できるよう、集団的な労働条件決定システムの重要性を再認識 する。同時に働き方にかかわらず公正に処遇され、適切な労働条件の確保が図られるよ うにするとともに、このような労働条件確保の裏付けとなる生産性向上に資する職業能 力開発を推進する。  また、個別の労働条件を公正に決定するための仕組や紛争解決の仕組が十分機能する ようにするとともに、最低労働条件について必要な見直しを行うほか、労働市場に関し て必要な情報提供を推進する。  これらにより就業率の向上を図るとともに、性・年齢等による合理的理由のない差別 の解消、雇用機会や職業能力開発機会の均等を図る。  2、安定の確保。経済社会の変化の中で、職業経験の積み重ねを基盤として、生活の 安定と職業人生の発展が図られるよう、「職業の安定」、すなわち「雇用の安定」と「職 業キャリアの発展、安定」を確保する。  まず、「雇用の安定」は、労働者の生活の不安定化を防止し、少子化の進行を防ぐため にも、また、労働者の技能蓄積や士気の高い働き方を実現し、個々の企業のみならず社 会全体の生産性や競争力を確保するためにも、今後とも重要である。  こうしたことを踏まえ、企業内における適切なキャリア形成を支援するとともに、正 規労働者としての就労を希望するパートタイム労働者、契約社員、派遣労働者等に対す る正規労働者への転換支援、福祉から雇用・就業へ向けて関係機関・団体と緊密に連携 した総合的な支援等を推進する。  一方、非自発的な失業に伴い労働移動を余儀なくされる者だけでなく、自らのキャリ アの発展に向けて積極的に転職することを希望する者にも適切に対応していくことが必 要である。このため、「職業キャリアの発展、安定」の観点から、雇用のセーフティーネ ットの整備、実践的な職業能力評価制度の整備や労働力需給調整機能の強化を図り、併 せて、職業生涯を通じて必要な教育訓練を受け、主体的にキャリアを形成していけるよ うにする。  3、多様性の尊重。多様な価値観やニーズを持った労働者の能力発揮や企業による有 効な人材活用に資する観点から、労働者が「多様な働き方」を自律的に選択できるよう にする。  具体的には、働き方にかかわらず公正な処遇を確保することにより、職業生涯の各段 階において様々な働き方の間を行き来できることを目指す。  併せて、女性・高齢者・若年者・障害者等の多様なニーズに応じた就業支援、仕事と 生活の調和を実現するための短時間正社員制度やテレワークなど多様な働き方の普及促 進、起業や創業に対する支援の強化等に取り組み、労使双方のニーズに対応した多様な 働き方の選択が可能となる基盤を整備する。  結び。以上のような基本的考え方に基づき、労働の現場において高い実効性を持つ雇 用労働政策を策定するためには、雇用労働の事情に精通し、また雇用労働の当事者でも ある労使の代表者が、幅広い知見を有する学識経験者とともに、公労使三者構成の審議 会における調査審議を積み重ねていくことが必要不可欠である。  そうした調査審議に際しては、公労使各側が、経済社会情勢の変化を通じて妥当する 基本的考え方の枠組みを共有した上で、相互の信頼の下、相互の立場を尊重しながら、 あるべき政策展開に向けて議論を積み重ねていかなければならない。以上です。 ○菅野会長 報告にもありましたが、本日の審議会では、この報告を踏まえ、「今後の雇 用労働政策の基本的考え方」に関するご議論をいただければと思います。  ただいまの説明について、ご意見、ご質問等がありましたら、お願いいたします。な お、「今後の雇用労働政策の基本的考え方」に関しては、本審議会としても、できれば取 りまとめを行うところまで整理できればと考えています。そうしたことも念頭において、 ご議論をお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。 ○加藤委員 いまのご説明は、これからの労働政策の基本的考え方をよく整理されたな と思います。公正の確保、安定の確保、多様性の尊重というのは当然ですが、やはりこ の中で、多様性の尊重をこれから特に重点的に取り組むべきであると思います。  前段の公正の確保も安定の確保も、これからの問題を考えると、いかに多様性を尊重 して取り組むかによって実現できるように思いますので、この点について、特に強調し ておきたいと思います。  そのためには、従来以上に、やはり労使の緊密な話合いが必要だと思いますので、こ の「結び」のところにあります公労使の審議機関で詰めていくことについても、これか ら重点的に取り組んでいただきたいと思います。この2点について特に強調しておきた いと思います。 ○菅野会長 そのほかいかがでしょうか。 ○古賀委員 先ほどご紹介がありましたように、私も、この検討会のメンバーですので、 まとめについては、その当事者です。最後の検討会でも申し上げたことと重複するかも 分かりませんが、3点ほど要望しておきます。  1点目は、この基本的考え方ということが、方向性が確認されたら、是非、労働政策 審議会各部会や分科会も含めて、このことをきちっとした政策の軸として決定されるよ う要望しておきます。  2つ目は、私は、言うまでもなく、労働政策、雇用政策の関係は、現在、厚生労働省 のみならず、内閣府とか経済産業省とか、もっと言えば、規制改革会議とかでも、論議 や検討がされています。  したがって、できればこれらの考え方、労働政策審議会としての考え方を、他の省庁 にもきちんと伝える必要があるのではないかと思います。その点についてのご努力を、 とりわけ厚生労働省にお願いしておきたいと思います。  3点目は、この基本的考え方は、これからの雇用労働政策に非常に重要な基盤となる ものですが、これまで取られてきた雇用労働政策が、この基本的考え方をベースにして、 どうであったのかの検証も非常に必要ではないかと考えています。是非、その旨のご検 討もいただければありがたいと思います。この3点を要望意見としておきます。以上で す。 ○菅野会長 そのほか、いかがでしょうか。 ○紀陸委員 ただいま、加藤委員から、この報告の内容評価について申し上げましたが、 我々としても、この内容を、今後のこの労働政策審議会の検討の方向性を大掴みで示し たものだと理解しています。  ただ、各分科会における議論、これは問題のテーマが様々ですので、この今回の取り まとめが、細かい点においてまで、各分科会の論議、検討を縛るものではないのだろう と、あらすじとしてはこの方向に沿って、各分科会としても論議が行われるのでしょう が、必ずしも個々の細かい点までということでもないのかなという認識をしています。 これは、念のためにということですが、もう一度言わさせていただければと思います。 ○菅野会長 ほかにいかがでしょうか。 ○清家委員 私も、加藤委員、古賀委員が言われた点が、とても大切だと思っておりま した。特に、この最後の「結び」のところで、この三者構成の審議会の意味をもう一度 再確認していただいたことは重要だと思います。特に、もちろん私ども学識経験委員も そうですが、この審議会に集っておられる労使双方の代表者は、もちろんそれぞれのお 立場を代表しているとともに、やはり雇用、あるいは雇用政策に精通している専門家と しての知見をここで述べていただき、また審議していただくと思っていますので、そう いう面で我々のこの三者構成の審議会というのは、いわば雇用、あるいは雇用政策につ いてのプロフェッショナルな、いちばんその内容が分かっている人たちの審議会という 位置づけになるかと思います。  先ほど、古賀委員も、さまざまないまの政治の中で、この問題について議論する場が あるという話がありましたが、その中でも特にこの雇用の問題については、専門的な知 見を、公労使すべてが有して議論を積み重ねていることをさらに強調していただきたい と思います。  古賀委員が言われましたように、やはり、その政策を始める前に、その効果と副作用 等について基本的な分析が行われ、また政策が実施されたあと、その効果が本当に初期 の期待どおり上がったのか、あるいは副作用はそんなになかったのかどうかも精査する 必要があると思いますので、この審議会での議論と同時に、例えば厚生労働省傘下の政 策についての研究機関等で、そういった研究がさらにきちんと行われ、また、そういっ たところの研究がこの審議会の場にもフィードバックされるようなことをさらに強くお 願いしたいと思います。 ○菅野会長 ほかにいかがでしょうか。それでは、議論も尽たようですので、ただいま いただいたご意見はそれぞれご意見として、審議会の中で議事録等で明らかにしてテイ クノートさせていただきます。  この内容については皆様の合意が得られたと判断させていただきます。したがって、 ご異論がないようでしたら、厚生労働省設置法第9条第1項第3号の規定に基づき、こ の取りまとめた「今後の労働政策の基本的考え方」として、本日、当審議会としての建 議を行ってはどうかと思いますが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○菅野会長 ありがとうございます。それでは、建議の案文について事務局から配付し ていただきます。 (建議(案)を配付) ○菅野会長 それでは、建議(案)について、事務局から説明をお願いします。 ○事務局(企画官) ただいまお手元にお配り申し上げました建議(案)を読み上げさ せていただきます。  労審発第5。年月日。厚生労働大臣舛添要一宛。労働政策審議会会長菅野和夫。  今後の雇用労働政策の基本的考え方について−働く人を大切にする政策の実現に向け て−本審議会は表記について、公益代表、労働者代表及び使用者代表から構成される「雇 用労働政策の基本的考え方に関する検討会報告書」に基づく議論の結果、下記のとおり の結論に達したので、厚生労働省設置法第9条第1項第3号の規定に基づき建議する。  貴職におかれては、下記を踏まえ、中長期的に一貫性があり、かつ実効性の高い雇用 労働政策の実現に努められたい。  記以下は、先ほど資料1の報告と同文ですので、省略させていただきますが、先ほど 会長からお話があり、また、いま読み上げた厚生労働省設置法第9条第1項第3号は、 労働政策に関する重要事項などに関して、労働政策審議会が労働大臣または関係行政機 関に意見を述べることが所掌義務であることを規定しているものです。以上です。 ○菅野会長 ただいま読み上げましたような建議(案)でよろしいでしょうか。 (異議なし) ○菅野会長 ありがとうございます。それでは、当審議会として、厚生労働大臣に対す る建議を行い、中長期的に一貫性のある、実効性の高い雇用労働政策の実現を求めたい と存じます。  なお、本日の建議の内容は、事務局から各分科会・部会の委員の皆さんにもお伝えい ただきたいと思います。また、各分科会・部会においても、本審においてご議論いただ いた「基本的考え方」を踏まえながら、個別具体的な政策についてご議論を深めていた だければと思います。  事務局から何かありますか。 ○上村厚生労働審議官 どうもありがとうございました。いただきました建議について 重く受け取めて、また、いまこの場で各委員の皆様からいただいたご意見、会長からい ただいた意見も踏まえて、政策の実現に今後とも努力していきたいと思っておりますの で、引き続き各委員の皆様におかれましては、ご指導、ご協力をよろしくお願いいたし ます。 ○菅野会長 次の議題に移ります。第2の議題「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・ バランス)憲章」等、第3の議題「その他」について、まとめて事務局から説明をお願 いします。 ○生田労働政策担当参事官 お手元の資料3から資料7までと、参考1を用いてご説明 させていただきます。  まず、資料3からです。これは参考としてのご報告ですが、今年去る12月18日にワ ーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議という官房長官がトップの会議で、「仕事と 生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」について憲章、行動指針の策定がされました。 この会議は、作業部会として、「行動指針策定作業部会」という慶應大学の樋口先生が座 長をされている会議で何回か議論されて取りまとめられたものです。  1頁目に憲章と行動指針の意義が書いてあります。考え方として国民運動を行うため のものということで、憲章は国民的な取組みの方向性を提示する、行動指針は、企業、 働く方、国、地方公共団体の具体的な取組みを書くという考え方です。  真ん中あたりに3つぐらい、この憲章、行動指針を作るに至った背景事情が書いてあ ります。要約して申し上げますと、正社員以外の労働者が大幅に増えている、あるいは 正社員の労働時間が長くなっている、高止まりしているという状況で、正社員以外の労 働者の方については、経済的に自立できないといった問題、長時間労働を行われている 方については、心身の疲労あるいは家族との団欒が持てないような状態があって、そう いった状態を解消していくことが非常に重要ではないかという前提に立っています。  いちばん下に、今回の指針、憲章の目的が書いてあります。個人の生き方や人生の段 階に応じて多様な働き方の選択を可能にする必要、働き方の見直しが、生産性の向上や 競争力の強化にもつながるということで、「明日への投資」という見方をする必要がある のではないかという整理をしています。  2頁目、仕事と生活の調和が実現した社会の姿を大きく3つに整理しています。1つ が、経済的自立が可能だということで、その下に文章で書いてありますように、「経済的 自立を必要とする者、とりわけ若者がいきいきと働くことができ、経済的自立可能な働 き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤確が 確保できる」ということです。  大きく2つ目の分類が、健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会で、働く人々 の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加の ための時間などを持てる豊かな生活ができるといったことです。  3番目が多様な働き方・生き方が選択できる社会ということで、性、年齢などにかか わらず、意欲や能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されている こと、子育てや親の介護が必要な時期など個人がおかれた状況に応じて多様で柔軟な働 き方ができること、その際に公正な処遇が確保されていることといったことが整理され ています。  右側に、それぞれごとに、いわゆる行動指針の中で数値目標が掲げられています。こ の数値目標は、資料5の7ページ目にフルバージョンが全部付いているのですが、代表 的なものがこの2頁目の右側に掲げられています。1の分類の経済的自立に関しては、 就業率を10年後、女性の25歳〜44歳について69%〜72%、高齢者の60歳〜64歳に ついて、10年後60%〜61%の数値、あるいはフリーターは、2017年には144.7万人以 下、これはピーク時は217万人だったのですが、その3分の2以下にするということで すが、そういった目標を掲げています。  真ん中の健康で豊かな生活のための時間の確保については、週労働時間60時間以上 の雇用者の割合を現状の10.8%から、10年後には半減させると、年次有給休暇の取得 率について、現状の46.6%を、2017年には完全取得にもっていくということです。  3番目の分類の、多様な働き方、生き方が選択できるという点については、第1子出 産前後の女性の継続就業率を、10年後には55%にもっていく。これは希望する方は継 続就業するということで55%になるということで、そういった数値を実現することです。 育児休業の取得も同様ですが、女性について2017年80%、男性では10%にもっていく ということです。男性の育児時間は、先進国並みの水準にすることで、フランスが2.5 時間で、日本の現状の60分を2.5時間にもっていくといったことを代表に10年後の姿 を示して、資料5の7頁目をご覧いただいたら分かるのですが、中間的な数値として、 5年後の目標も設定して、こういった目標に向かって取り組んでいくということです。  3頁目は、先ほどの行動指針の中で、企業と働く者、国、自治体が行うべきメニュー が整理されています。左側が企業と働く者が取り組むメニューで、総論として、経営ト ップのリーダーシップの発揮が大事だ、企業として目標を作って、計画的に取り組んで いく、企業で点検していくような仕組を作ることが重要だ、労使で働き方の見直し、業 務の見直し等を行うといったことが重要なことであると整理しています。  あと、就労による経済的自立、健康で豊かな生活のための時間の確保、多様な働き方 の選択それぞれについて、そういった内容を企業と働く者で協働して取り組んでいただ くということが大事であるという整理をしています。  国・地方自治体については、総論として、仕事と生活の調和の実現に向けた枠組みづ くりということで、国民運動の展開について、国・自治体それぞれが頑張るということ が整理されています。制度的枠組みの構築ということで、企業の次世代育成支援の取組 を促進するための制度、働き方に中立的な税・社会保障制度の検討が提言されています。 取組企業への支援、社会的評価で、政策的な支援をすること、あるいは評価で、いい所 については、顕彰という形で積極的に評価していく仕組も提言されています。関係法令 の周知、遵守のための監督指導の強化が提言されています。  それ以外に、就労による経済的自立、健康で豊かな生活のための時間の確保、多様な 働き方の選択について、それぞれそこに記載されている内容の提言がされています。  いちばん下に進捗状況への点検・評価と書いてありますが、こういった取組は、進捗 状況を点検、評価するため、実現度指標を設けて、PDCAでどういう状況になっている のかをチェックして、今後の対策に役立てていく枠組みを作ることが整理されています。  このワーク・ライフ・バランスの関係は、検討の主体としては内閣府にこういった会 議が設けられて検討されたわけですが、内容的には、全省庁一体となって取り組むとい うことで、当省だけでなくて、様々な省庁も取組をするということで、大きな方向性を 示すということでの取りまとめと私どもは考えています。  続いて、資料6です。これは、いまのワーク・ライフ・バランスも含めて、子どもと 家族を応援する対応ということで、総合的な取りまとめを行ったものです。検討の舞台 は「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議がありまして、そこで最終的には 12月18日に取りまとめられました。作業部会としては、この下に基本戦略分科会が設 けられて、東大の吉川洋先生を座長に7回ほど議論されて、最終的にこういう取りまと めに至りました。  Iに書いてありますように、重点戦略策定の視点ということで、今回、この戦略を作 った前提となっているのが、労働力人口の急速な減少、出生率が1.26で相当低いわけで すが、このままでいくと、1年間の出生数が、現段階では109万人ですが、2030年には 69.5万人になるのではないかという見通しもあり、そういった状況を解消していく必要 があるということです。  その前提として、希望と現実の乖離の拡大ですが、仮に子どもを産み育てることを希 望する方がそのままその希望が叶う場合には、出生率が1.75になるということで、現状 の1.26とのギャップが相当ありますので、それを解消するための方策を考える必要があ るということです。  人口減少下で持続的な経済発展の基盤として必要なこととして、まず、現状、できる だけたくさんの方、就業を希望される方については働いていただく、労働市場に参加し ていただくことが、まず大事であるということが最初の・に書いてあります。若者、女 性、高齢者の労働市場参加の実現、国民が希望するように結婚、出産、子育てができる というこの2つを同時に達成することが重要で、そのために、現在働いておられる方が、 就労だったら就労だけ、結婚、出産、子育てだったら、結婚、出産、子育てだけという どちらかを選ぶという構造を解決していくことが大事ということです。  そのための車の両輪として、先ほどの仕事と生活の調和が大きな一つの柱としてあり まして、もう一つが親の就労と子どもの育成の両立で、これについては、保育サービス の利用等が重点だと考えていますが、そういった社会的基盤を構築することが大事で、 この2つを同時に回すということです。  最初のワーク・ライフ・バランスは、先ほどご説明しました1頁目の後段部分に書い てありますので、説明は省略します。  2頁目です。包括的な次世代育成支援の枠組みということで整理をしている部分をご 説明いたします。大きく3つを実現する必要があるということです。  最初の(1)は、親の就労と子どもの育成の両立を支えるということで、最初の○に育児 休業と保育で切れ目なくカバーできる体制、重要性が書いてあります。2つ目の○にあ りますが、そのための制度の弾力化ということで、短時間勤務、育児休業取得、家庭的 保育といった保育サービスの提供といったような工夫をする必要があるということです。 最後の○にありますように、保育所から、放課後児童クラブ等、そういった仕組への切 れ目のない移向が大事ということです。  (2)は、すべての子どもの健やかな育成を支える対個人給付・サービスで、これについ ては、重点は、一時預かりの問題、子育て世帯への経済的支援といった問題が整理され ています。  最後の(3)は、すべての子どもの健やかな育成の基盤となる地域の取組で、代表的なも のとして、妊婦健診、14回が理想だと言われていますが、受診回数の確保のための支援、 各種地域子育て支援、地域の子育て支援拠点の整備、安全・安心な子どもの放課後の居 場所の設置、これは放課後子ども教室といったようなことを想定しています。それから 家庭的な環境での養護の充実を整理しています。  こういったことをやるために、どれだけ財源が必要かを、この会議では検討していて、 効果的な財源投入ということで、いま現在の財政支出が大体4兆3,300億円程度ですが、 これについて、希望者すべてが就業した場合には、1.5兆円〜2.4兆円と書いてあります が、1.5兆円のほうが希望者すべてが就業した場合で、2.4兆円のほうがスウェーデン並 みの就業率で、スウェーデン並みの保育のサービスをする場合を想定しているのですが、 その個人給付という現金給付ではなくて、現物給付を充実する場合に、これだけの費用 がかかるということで、現金給付はここに含まれていないという整理です。  その下に※で、フランスの家族関係支出を日本の人口規模に換算するとということで、 約10.6兆円と書いてありますが、これについては、現物給付と現金給付をフランス並み にした場合に10.6兆円ということで整理しています。  こういった財政投入の必要があるということですが、その下の枠の中に書いてありま すように、こういった財政支出は、未来への投資ということで、効果的な財政投入をし ていく必要がありますし、これについては次世代の負担で賄うのではなくて、必要な財 源はその時点で手当てしていく必要があるといった提言がされています。その際の制度 設計の検討は、公費負担、事業主、個人の子育て支援に対する負担・拠出を、どういっ た形で賄うのがいいのかといったことについて検討していく必要がある、それについて は、税制改革の動向を踏まえた検討が必要であるといったことが提言されています。  その次の○は、次世代育成支援の行動計画に基づく取組の推進のための制度的な対応、 社会的養護体制の充実といった課題について、平成20年度に先行的に実施すべきだと いったことが書かれています。  最後の4番目は、利用者の視点に立った点検・評価で、先ほどのワーク・ライフ・バ ランスも同様の内容が盛り込まれていますが、全体的に定期的な点検・評価をし、毎年 度の予算編成、事業実施に反映していくとの指摘が出されています。  最後のところ、「おわりに」ということですが、これは国民の理解と意識改革が大事と いうことで、国民全体の理解を求めていくということが大事だという指摘がされていま す。これも、内閣府で整理された問題ですが、当省だけでなく各省に跨る問題というこ とでの整理ということです。以上です。  続いて、参考1です。「第168回臨時国会における法案の審議状況について」という ことで、当審議会でご議論いただいて、国会に提出されて審議された法案の状況です。  労働契約法が、Iに書いてありますが、11月28日に成立させていただきました。若 干の修正が入っていますが、12月5日に公布しています。施行期日は3カ月を超えない 範囲内で政令で定める日ということです。本年度内の施行を想定しています。  労働基準法は、まだ成立していません。国会の会期は1月15日までですが、なかな か成立は厳しいのではないかという状況です。  3番目の最低賃金法は、11月28日、契約法と同じ日付で成立しています。若干の修 正は加わっています。公布も契約法と同じ12月5日ですが、この施行期日は公布の日 から1年を超えない範囲内で政令で定める日の施行です。  最後ですが、『人にやさしい社会』という色刷りの資料、日本経団連から提出いただい ている資料です。『ワーク・ライフ・バランス関連資料』、緑色の資料ですが、連合から 出していただいている資料です。『子育てサポート中小企業応援マニュアル』で、中小企 業団体中央会から出していただいている資料ですが、こういった資料は、先ほどご報告 しましたワーク・ライフ・バランスの問題、子どもと家族を応援するといった問題に関 連する資料として出していただいているものです。ご紹介は以上です。 ○菅野会長 ただいまの説明について質疑に移りたいと思いますが、提出資料も出して いただいていますので、そのご紹介も含めてどなたからでもお願いします。 ○山口委員 ただいま報告をいただきました「仕事と生活の調和憲章並びに行動指針」 が策定されたことについては、よく策定まで到達したという気持があります。大変議論 が、争論、賛成、各論がいろいろあって到達が難しかったというような状況を考えます と、よく策定できてよかったと思っています。いましがた紹介もいただいたのですが、 私ども連合の代表がこの議論に参加させていただいていると同時に、組織の中でもワー ク・ライフ・バランス社会実現に向けてということで議論を重ねてまいりましたので、 若干報告させていただくことと、それを踏まえての要望を申し上げたいと思います。  グリーンのものを配布させていただきましたが、連合として、労働者の代表として、 このワーク・ライフ・バランスというものをどう考えるかということを、5月ぐらいか ら半年ぐらいかけて議論をさせていただきました。この基本的な考え方の中でまとめま したのは、ワーク・ライフ・バランスというフレーズはいろいろなところに飛び交って いるわけですが、それぞれ思いが違っているというようなことで、やはり統一をしなく てはいけないのではないかということです。私たち働く者にとって、ワーク・ライフ・ バランス社会はどういうものなのかということを、1頁から6項目ほどに整理させてい ただいています。描くべきところの共通認識が持てたその次のステップとして、それが 実現できていない現状の労働の現場にどのような問題があるのかという視点で、特に長 時間労働の問題あるいは非正規労働者の増による不安定、低所得の労働者の増の問題、 それから先ほど子どもと家族を応援するという基本会議の中でも出ましたが、結婚や出 産に対して希望するライフスタイルが実現できない国民、労働者の立場といった問題も、 整理しました。  次の段階として、それでは目指すべきワーク・ライフ・バランス社会に向けるために は、整理をしたいま現存する課題をいかに解決していくのかというようなところで、こ れは例えば労働組合だけ、企業だけといったそれぞれ個々の組織が取組んだだけでは解 決できない、総体的に取組まなくてはいけないのだということで、それぞれ各分野の担 うべき項目なども整理しました。それと同時に、解決のためには政策も個別の政策では なくて、パッケージとしての政策がデコボコなくといいますか、総体的にその政策パッ ケージがとられなくてはいけないというようなことをまとめました。これは、まとめた だけではなくて、その中で労働組合としての役割を、憲章、行動指針が策定されたこと もありますので、具体的に自分たちの役割を担う、果たすために、2008年度春期生活闘 争の中でも、このワーク・ライフ・バランス社会実現に向けて、労使協議の場で課題に するというようなことも、私たちの取組みの基本スタンスの中に入れています。  また、これも先ほど報告がありましたが、数値目標等につきましても、労働組合とし ていかにこれを実現していくのかという労働マップ的なものも、考え方の次の段階で整 理をしていかなくてはいけないと考えています。そこで、先ほども申しました要望とい いますか、私たちは労使関係の中で課題解決をしていくというツールがあるわけですが、 目指すべきワーク・ライフ・バランス社会の中で私たちも整理しましたように、すべて の男女労働者に等しく、このワーク・ライフ・バランス社会というものが保障されると いうような視点でいえば、大変先進的に進められている企業はもうクリアしていると思 います。しかし、多くの中小企業などで働く労働者も、このワーク・ライフ・バランス が享受できるように、これは企業のリーダーシップや政府の応援も必要だと思います。  一方では、都市部と地方との現存する格差等を考えますと、地方でもむらなくこのワ ーク・ライフ・バランス社会が実現できるというところであれば、地方においてもこの 話題あるいはこの論議が盛り上がるようにということで、特にこの各地域での議論が進 められるようにという視点で申し上げますと、やはりそれは厚生労働省の果たす役割は 大変大きくなると思いますので、是非そこも漏れなく取り組んでいただきたいというこ とをお願いしたいと思います。以上、報告と要望です。ありがとうございます。 ○井出委員 私も、この仕事と生活の調和に関しての憲章と行動指針が策定されたとい うことは、大変意義深いものだと思っています。このことで、優秀な人材が確保でき、 また育成をし、更に生産性が向上して競争力も強化されるということで、企業にとって も大変この取組は重要と認識しています。  これまでも、そうした観点から、お手元に経団連から「人にやさしい社会」というこ とでパンフレットが配られています。ここでは、6社の事例が出ていますが、各企業が それぞれの実態に合わせて、仕事と子育ての両立支援というような形で取組みをしてい ます。また、こうした情報を相互に交換できるような企業間のネットワークといったも のもできています。自分の企業にとってどのような形が最も望ましいかということで取 り入れているというのが現状ではないかと思いますし、またそのような活動を今後も強 く継続していくべきだと思っています。  この中で、やはり企業と働く者が、一緒に生産性を向上させていくのだということが 非常に重要だと思っています。いまお話もありましたように、ワーク・ライフ・バラン スの理解が人によっていろいろ、概念が難しい、幅が広いということもあるのかもしれ ませんが、仕事と生活というのがあまり対立するものというか、仕事が何か非常につら くて悪いものだから、豊かな生活をするためには仕事をもう少し絞るというような理解 のされ方ではなく、今後これが憲章ということで国民に広く周知されるという過程の中 で、充実した職業生活をおくることが豊かな個人生活に繋がり、またその豊かな個人生 活が更に就業の生産性を向上させる良循環になるのだというイメージを、職業観の醸成 にも繋がることだと思いますので、是非お願いをしたいと思います。  それから、多様性の尊重の中で、子育て期の人たちが短時間勤務や育児休職といった 勤務形態を選ぶことができるわけですが、企業間の技術の変化や競争の激化などで、仕 事を中断することが逆に個人の成長の機会を奪うといいますか、本人が伸びるチャンス を損なってしまう。決して選びたくて短時間勤務を選んでいる状態ではないのだけれど も、育児の延長保育がないために選ばざるを得ない状況もまだまだありますので、先ほ ど説明がありましたが、国や地方公共団体の取組みの中で、非常にこのことを強化して いただくことでより本人が望む働き方ができるのではないかと考えますので、よろしく お願いします。以上です。 ○山内委員 新しい働き方というのをテーマに、各企業ともワーク・ライフ・バランス の推進に取り組んでいますが、さまざまな施策を実践しやすい環境作りが最も重要だと 思っています。そのためには、まずは経営トップ、そしてそこで働くメンバーの意識改 革が重要で、労使が一体となって各企業の実状に合った自主的な取組を進めることによ って、意識改革を促進できると思います。企業として、さらなる生産性の向上を目指し て、優秀な人材の確保、育成、そして多様化するメンバーのニーズへの対応を積極的に 図るためにも、一層この取組を進めていく必要があると実感しています。  今回策定されました憲章と行動指針をきっかけに、この取組が加速されまして、国民 全体の働き方に対する意識改革が促進されると期待しています。設定された数値目標で すが、社会全体として達成することを目指す目標であり、個人や個々の企業に課せられ るものではないと位置づけされています。あくまでも、これは労使が主体的に取組むこ とが重要であると十分認識していますので、国の規制強化等で鈍ることがないようにお 願いしたいと思っています。  また、行動指針の国の取組で、次世代育成に対する企業の取組、促進のための対策の 検討を進め、生活の時間の確保や多様な働き方を可能とする雇用環境整備を目指した制 度的枠組みを構築する、とあります。既に、次世代法を改正して一般事業主の行動計画 の開示を義務化するという提案がされていると伺っています。また、ただこの行動指針 というのは、開示を前提として策定していませんので、行動計画の開示等の検討につい ては、他の審議会の要請にもなるかと思いますが、是非企業の取組等もしっかり聞いた うえで、内容、方法については慎重に審議をしていただきたいと思っています。以上で す。 ○土屋委員 説明を受けたのですが、必要とされる諸条件に関係しまして、健康で豊か な生活のための時間が確保できる社会となっているわけです。私はトラック運輸の産業 の組合の出身でして、トラック運輸産業については国民生活に欠くことのできない産業 と自負をしています。残念ながら、私どもも含めて社会へのアピール、パフォーマンス が下手くそということもありまして、産業的にはその社会的地位は決して高いものでは ないという状況にあります。あえて申し上げたいのは、まさに少子高齢化の社会の中で、 トラックドライバーについて大変危険が伴う、あるいは長距離ドライバーであれば3、4 日家に帰らないということもあります。そういう意味が1つあるのですが、加えて賃金 水準のことは今日は触れないことにしても、要は年間2,600あるいは3,000時間を超え る長労働時間の実態がある、労働環境があります。この中で、ある調査によりますと、 若者もそうでありますが、少子化時代の中でご両親もトラックドライバーになることに ついて反対、あるいはなりたくないという職業の1つに、実は挙げられています。ご案 内のとおり、宅配便があるわけですが、ここにも書かれているのですが、単身者あるい は共働きで留守が増えているということで、なかなか夜中でなければ家に受け取る人が いないという状況にもあります。このような状況ですから、労働時間に関していえば短 縮、いろいろいま発言がありましたが、労使で主体的、自主的な環境づくりといっても、 この産業においては業界労使間だけの自助努力だけでは、目標達成は大変難しいと思っ ています。そういう意味で、言いたいことは、コンビニ、スーパー、デパート等のサー ビス産業もそうですが、やはりこの日本の文化なり商取引慣行なり、利便性、日本の我 がままを変えない限り、なかなか仕事と生活の調和というのは大変難しい、厳しい産業 だということを私は訴えたいわけです。  いずれにしても、労使、労働組合も取り組んでいくわけですが、特に交通渋滞、環境 対策面、あるいは生産性、更にはやはり働く人たちに優しい物流体系なり、今後のサー ビスのあり方についても、抜本的な見直し、方向転換というのが不可欠であろうと思っ ています。  いま連合の方針についての考え方について説明されましたが、その中でも国レベルの 課題として、24時間365日サービスの提供体制の見直しということで提起をしています。 そういう意味では、意識改革も必要ですが、国あるいは地方、それぞれの業界も企業も 含めて、それぞれの役割分担をより掘り下げた取組についても、是非要請をしたいと思 っています。以上です。 ○河野委員 私はJAMという産業別労働組合の会長をやっています。JAMは、中小企 業を主体として、全体の構成の85%が300人未満、60%が100人未満という構成にな っています。業種は、主として一般機械加工が主体となっています。  私は、要望意見として3点申し上げたいと思います。先ほどの雇用労働政策の基本的 考え方の論議の際にもいろいろな意見は言わせていただきましたが、今回のこのワー ク・ライフ・バランスの関係もそうですが、いわゆる中小企業がさまざまな形で、こう いった制度への対応力が非常に厳しい環境におかれているという状況にあります。そう いう意味では、行政を含めて3点要望したいと思っています。  まず、中小企業の経営の安定化、または人材の強化といいますか、技能、技術の伝承 といったものを具体的に展開していくためには、中小企業の経営の安定はどうしても必 要となってきます。経営安定の非常に重要な部分としましては、これは経営者団体にも お願いしていますが、やはり取引きの下請け2法の厳格な運営で、契約書がない発注の 方法や途中で返品が出るなど、いろいろな法律の厳格な運用がされていない部分があり ます。その部分が、やはり経営側の経営を非常に圧迫している。取引きの問題と合わせ て原料が非常に高くなっている点が価格の安定ができないということです。この取引き の関係については、特に厚生労働省の所管ではありませんが、経済産業省、中小企業庁 をはじめ、取引きの適正化に取り組んでいるということがありますので、中小企業の経 営を支える1つとして、法律の趣旨に則ってそのことが運用されるように、適切な運営 を是非お願いしたいと思っています。  2つ目は、中小企業に対する技術支援の問題です。私たちJAMも、労使でいろいろな 話し合いをしている中において、いま推進している内容が2つあります。1つは、産学 官が持っているいわゆる特許などの技術情報の開示の問題です。中小企業は、基礎研究 ができる体制も資金もありませんので、そういった加工方法やさまざまな材料の研究な ど、そういう産学官でやられている技術情報の開示をすることを、是非やっていただき たいと思います。いまも各都道府県単位でやっておられますが、中小企業がなかなか利 用しにくい、アドバイザーの面もありますので、是非技術情報の開示、推進を行ってい ただきたいと思います。もう1つは、例えばいちばん利益が少ないプレス加工や鍍金と いった分野における技能の高度化法という法律に基づいて、国からの支援を受けてJAM も20社ぐらいそこに参加しています。そうした技能の高度化についての後押しも是非 行っていただきたいと思います。  3点目は、技能、技術の伝承の問題です。中小企業は、ご存じのようになかなか労働 条件も高くありません。ワーク・ライフ・バランスの話ではありませんが、非常に過酷 で長時間な状況にもなっているわけです。そのようなところは、なかなか大卒の工学部 の出身者や工専の出身者は雇うことができません。労働時給が低いために来てくれない のです。そういう意味では、経営基盤を安定し労働条件を引き上げていくことは、非常 に重要なことになります。そのためには、中小企業の技能、技術の支援が非常に重要に なってきます。そこで厚生労働省所管の技能士、高度技能熟練工の1級技能士が、これ まであらゆる産業分野でかなりの数にのぼっています。昔は、それぞれの大手の企業の 中においても、中学校を卒業されて、企業の中における技能学校で1級技能士を取る制 度もあったのですが、いまはほとんどそれがありません。しかし、中小にとってはそう いった技能の伝承というのは非常に大きな問題になっていますので、1級技能士の活用 を行政の立場で考えていただいて、是非中小企業へのプレス加工や精密鋳造など、さま ざまな工程で、いわゆるドイツで言うマイスターのレベルを持った人たちが定年退職で おられない状況になっていますので、そういった点での活用を今後行って、中小企業の 経営基盤をしっかりしていくことが、こうしたさまざまな政策を実現するベースとなっ ていきますので、この3点について要望意見とさせていただきます。 ○勝委員 あまり時間もないようですので、簡単に2点だけ意見を申し上げます。既に、 相当議論がされているわけですが、このワーク・ライフ・バランス憲章に関しては、先 ほど議論しました上質な市場社会に向けてというところとも合致するもので、非常に重 要なテーマであるだろうと思います。重要なことは2点ありまして、1点目はそれに積 極的に取り組んでいる企業が評価されるという枠組みを作っていくことだろうと思いま す。大企業の場合はSRIではないですが、そういったところは企業の業績がいいという ような、そう考えるということもいわれています。やはり、重点をおくべきは、既に出 てきましたが、中小企業と地域といったところに、こういった考え方をどのように根付 かせていくかが、非常に重要だと思います。  2点目は、こういったワーク・ライフ・バランスの憲章は最大の少子化対策であると 思われるわけです。先ほどの説明ですと、近い将来日本の1年間の出生数が、60万人ぐ らいにまで減ってしまうというお話がありましたが、やはり早く対応していく必要があ るだろうと思います。その面からいえば、予算の、社会的なコストという試算がありま したが、平成19年度推計で約4兆3,300億円ということです。これについても、昨日 平成20年度の予算が出たばかりですが、積極的に働き掛けていくことが非常に重要な のではないかと思います。以上です。 ○菅野会長 ありがとうございます。そのほかにいかがでしょうか。事務局からは何か ありますか。 ○生田労働政策担当参事官 いまたくさんのご意見をいただきましたが、十分私どもと して受け止めて、対応できるものはきちんと対応したいと思いますし、関係省庁に繋ぐ ものは繋いでいきたいと考えています。 ○菅野会長 よろしいでしょうか。それでは、本日は時間がまいりましたので、この辺 りで審議を終了させていただきたいと思います。本日、特に建議を取りまとめていただ いたことにつきましては、会長としても大変ありがたく、本審議会として意義があるこ とだと思っています。本日の会議に関する議事録につきましては、当審議会の運営規程 第6条により、会長ほか2人の委員に署名をいただくことになっています。つきまして は、労働者代表委員の土屋委員、それから使用者代表委員の加藤委員に署名委員になっ ていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。本日はどうもありがとうござ いました。