07/12/19 第1回 人生85年ビジョン懇談会議事録 第1回 人生85年ビジョン懇談会議事録 日時:平成19年12月19日(水)11:00〜13:00 場所:厚生労働省9階省議室 ○小野政策統括官 定刻になりましたので、まだご到着になっていない委員もいらっし ゃいますが、会議を始めます。本日は、ご多忙のところご参集いただきましてありがと うございます。座長が選出されるまでの間、私が進行役を務めさせていただきます。よ ろしくお願いします。  初めに、舛添厚生労働大臣からご挨拶を申し上げます。 ○舛添厚生労働大臣 皆さん、おはようございます。厚生労働大臣の舛添要一でござい ます。本日は、ご多忙中のところ「人生85年ビジョン懇談会」にご参集いただきまし て、誠にありがとうございます。第1回会合の開催に当たり、一言ご挨拶を申し上げま す。本当にすばらしい皆様方にお集まりいただいて光栄に存じます。  日本は世界一の長寿国で、女性の平均寿命は85歳を超え、男性もほぼ80歳というこ とです。こうした中で、戦後のシステムは人生60年時代を前提にして、60で定年退職。 しかし、その後85歳まで生きるわけですから、この25年をどうするかをしっかり考え ておく必要があると思います。今日、午後に官邸で独法の改革をやるのですが、これは 昔の公社・公団です。これは天下りの問題なのです。だから、天下りの問題だけをその ことに特化して考えても、解決はできません。皆さん総論賛成なのです。では自分はと なったら、自分は再就職先を探したいということになりますから、人生85年ビジョン で、例えば私がいたフランスやイタリアのように、年金をもらったらあとは人生楽しむ と、天下りなどしませんから、そうすると天下り問題などなくなるのです。いま直近の 問題で非常に苦労していますが、こういう問題を解決するにあたっても、人生85年時 代の生き方、仕事の仕方、生活の仕方、趣味のあり方をきちんとやらないと、答えは出 ないと私は思っています。この長期ビジョンの皆さんのお力を借りる研究会は、実はい ま日本が直面しているさまざまな問題とは無縁のようではあるけれど、いちばん早い解 を出すことになるのではないかという思いがあり、皆さんにお願いしたわけです。いま ヨーロッパの例を出しましたが、それも1つのやり方だと思います。  しかし、働きながら老後というのも1つの形だと思います。江戸時代が好きなので江 戸時代の研究をしていますが、伊能忠敬にしても東海道五十三次の広重にしても、老後 を楽しむ、老後が本当の人生だということで江戸の文化、江戸の文化を老いの文化とい うのですが、これを実現したわけですから、こういうことも含めて雇用労働政策、社会 保障政策、生き方の改革を皆さんと一緒に議論したいと思います。近代の日本を考えた ときに、幕末はペリーがやってきた、昭和20年はマッカーサーがやってきた、だけど 外圧がなくてそろそろ日本を大改革しなければならない時期に来ているなと、その1つ のよすがとしてこの人生85年時代のビジョンを位置づけたいと思いました。  話が長くなりましたが、私の問題意識はそういうことですので、闊達なご議論を賜り、 是非これからの日本の指針を皆様方に作っていただく、これが大きな改革の糸口になる と思います。ペリー、マッカーサーに続く第3の狼煙がここから上がるという期待を込 めて、どうか皆さんよろしくお願いします。本日は誠にありがとうございました。 ○小野政策統括官 ありがとうございました。続きまして、委員の方々を私から50音 順に紹介します。石川英輔委員、岩男寿美子委員、岡田斗司夫委員、古賀伸明委員、小 室淑恵委員、残間里江子委員、清家篤委員、高橋靖子委員、萩原智子委員、フランソワ ーズ・モレシャン委員、茂木賢三郎委員、森戸英幸委員です。なお、ダニエル・カール 委員と高階秀爾委員に関しては、のちほどご出席されるとのご連絡を受けております。 また、本日は川勝平太委員、菊川怜委員、テリー伊藤委員、山崎章郎委員の4名がご欠 席となっております。事務局の出席についてはお手元の配席図のとおりですので、個々 の紹介は割愛します。  それでは、カメラの方はここでご退室をお願いします。大臣は所用で一度退席され、 またお戻りになるということですので、よろしくお願いします。 (大臣退席) ○小野政策統括官 それでは、資料の確認をします。資料1は「人生85年ビジョン懇 談会開催要綱」、資料2は「検討事項(案)」、資料3は今回の資料の参考資料で、大部 に渡っておりますが、「人生85年時代を巡る現状等について」ということで、いろいろ なデータをお配りしております。資料4が「今後の進め方について(案)」です。また、 資料として森戸委員からご提出いただいた資料をお配りしております。委員の皆様には、 今日ご欠席の山崎委員からのご意見ということで、1枚の紙をお配りしております。資 料としては以上ですが、ございますか。  先ほどご紹介しましたが、いま高階委員が到着されました。  資料1については最初にご紹介しましたが、懇談会の開催要綱をご説明します。目的 については、先ほど大臣からお話があったので詳細は避けますが、人生85年時代を迎 えていきいきと人生を楽しむ日本人の暮らし、働き方、人生設計のイメージを描いて、 併せてそれを支える仕組みをどうするのかについて、幅広い視野からご検討いただくと いうことで、大臣主宰の懇談会という性格になっています。検討事項はのちほど説明し ますが、ここでは3つあり、「いきいきとした人生のための基礎づくり」「自己実現に向 けた働き方の改革」「地域・社会参加によるいきいき人生の実現」の視点でご検討いただ いたらどうかと、事務局としては考えております。ご検討いただいた成果は、厚生労働 行政の中長期的な視点にしたいと思っていますし、広く国民の方々に提示して、議論を 喚起していきたいと考えておりますので、本懇談会の議事は公開させていただきます。  スケジュールについては5番目に書いてありますが、今日は第1回目ということで、 1月以降1カ月に1〜2回程度開催し、来年の3月ごろを目途に一定のご提言を取りま とめていただければと思っております。  続きまして、座長の選出に入ります。特に要綱では選出のルール等は決めておりませ んが、私どもとしては岩男委員に座長をお願いしてはどうかと考えておりますが、いか がでしょうか。 (了承) ○小野政策統括官 それでは、岩男委員には座長席に移動していただき、以後の進行を よろしくお願いします。 ○岩男座長 それでは、できるだけ有意義な会にしていきたいと思っておりますので、 皆様方、是非ご協力をお願いします。よろしくお願いします。  早速議題に入ります。最初に、検討いただく素材として事務局で資料をご用意くださ っているので、それに基づいてご説明をお願いします。 ○小野政策統括官 資料2「検討事項(案)について」をご覧ください。背景について は、先ほど要綱等で今回の目的などお話したことが書いてあります。(2)社会経済情勢 の変化ですが、これから検討いただくにあたっては、日本人の平均寿命の延伸はもとよ り、人口減少社会へ転換していくこと、あるいは人口減少の加速化が進むこと、団塊の 世代の方々の高齢化の問題、生活習慣の変化に伴う健康の問題、さらにはグローバル経 済化に伴う企業間競争の激化、働く環境の変化、自由時間の重視などの国民の意識や行 動の変化等、いろいろな変化が長期的に予想されていく中で、このような点にご留意い ただきながら検討をいただいたらどうかと考えております。  2、検討事項(案)ということで、先ほどお話した開催要綱の検討の3つの視点をブ レイクダウンしたものを書いております。Iとして「いきいき人生のための基礎づくり」 ということで、人生の各段階においていきいきとした人生を過ごすためには、若い時期 から健康を初めとする基礎づくり、あるいは基盤づくりが求められていると思いますが、 それに向けて今後どういった取組みを進めたらいいのかというのが、大きな論点になる のではないかと思っております。特に生涯にわたる健康確保は、若いときからの健康づ くり、生涯にわたる医療・介護・福祉等の社会保障サービスの確保の問題等々があろう かと思います。  2頁ですが、生涯にわたる学習機会の確保。長期休暇制度の普及等を通じて、文化活 動や遊びを通じた多様な経験、知識、技術、技能の習得等の学習の機会をいかに図って いくか、さらには高齢期も含めた安定した生涯にわたる所得の確保をいかに図っていく か。それは年金制度の問題もあると思いますし、生涯を通じたキャリアの形成をいかに 図っていくかという論点もあろうかと思います。  II「自己実現に向けた働き方の改革」ですが、人口の減少、健康寿命の延伸が進む中 で、人々が幸せな家庭生活を過ごし、子どもを生み、育てることができる環境、またす べての方が希望する働き方で安心・納得して働くことができる環境を作ることが、これ からの大きな課題になると考えております。その中で、働き方の問題として若者、女性、 高齢者、障害者等、働く意欲を持つ方すべてに対する就労支援のあり方をどのように構 築していくか、また、いまの我が国における大きな課題であるワーク・ライフ・バラン ス(仕事と生活の調和)の実現に向けた取組みなど、全体としての働き方の改革をいか に進めていくかが、ここの大きなテーマではないかと思っております。自己実現のため には、働く人一人ひとりの資質や才能を尊重しながら、それをいかに伸ばしていくか、 その支援のあり方をどう考えていくかといったことも、大きな論点なのではないかと思 います。  III「地域・社会参加によるいきいき人生の実現」です。すでにいろいろな所で言われ ていますが、人々の価値観が多様化して、会社や職場集団を重視したスタイルから、家 庭・地域社会への参加なども尊重した姿に変わっていく流れは、さらに強まっていくと 思われます。人生85年時代を見据えたときに、地域・社会参加を通じた人生設計のあ り方をどう構築すればいいかをご検討いただいたらどうかと思っています。そこには3 つほど書いていますが、地域コミュニティの再生・社会貢献活動、これは例として子育 て支援や介護、環境等いろいろな活動があろうかと思いますが、このような活動を通じ た人生の過し方、またそれまで培ってきた技能やノウハウを活かしながら、創業、コミ ュニティビジネス、文化活動やまちづくりと連動した事業展開という生き方もあるので はないかということです。自分の生まれた地域、あるいは豊かな自然の中で人生の後半 を過ごしたいというニーズが非常に拡大しており、これからも強まってくると思います が、そうしたニーズに応えていくために、地域医療の充実の問題や住宅の整備、地域の 活性化に向けた対策の推進も論点になるのではないかと考えております。  これはあくまでも議論の素材として、私どもが参考として作ったものですので、これ にとらわれることなく幅広い議論をいただければと思います。 ○岩男座長 ありがとうございました。先に進む前に、ダニエル・カール委員がご到着 になりました。 ○ダニエル・カール委員 おはようございます。大阪で用事がありまして、取り急いで 来たのですが、遅れて申し訳ありません。よろしくお願いします。 ○岩男座長 ただいま事務局から検討事項(案)について、大きく3つに分けてご説明 がありましたが、論客揃いですし、ユニークなアイデアをお持ちの方ばかりだと思いま すので、また、今日は第1回ですので、フリートーキングということでご自由にお考え をお話いただければと思います。なお、古賀委員が12時前にご退出と伺っております ので、古賀委員には少し早めにご発言をいただければと思っております。あとはご自由 に手を挙げていただいて、どなたからでもご意見をお述べください。 ○清家委員 この研究会は、いかにも舛添大臣らしいすばらしい着想だと思います。ご 承知かと思いますが、65歳以上の人を高齢者と定義しており、いまこれが20%を超え て、5人に1人が高齢者です。世界でいちばん高齢人口比率が高くなっていて、いまか ら6、7年すると、この人口比率は4人に1人が高齢者になるわけです。大学で学生諸 君に、「6、7年先には、渋谷のセンター街など人がいっぱい集まる所に行って石をポン と投げると、4回に1回は高齢者に当たるようになるよ」と言うと、彼らは「高齢者は あまりセンター街になどには出てこないから、そんなことはないのではないですか」と 言うのですが、センター街がどうなるかは別として、4人に1人が高齢者になる社会で 高齢者が来ない町であり続けたら、それは最初から客の4分の1を捨ててかかることに なるわけですから、日本が市場経済である限りそういうことはないはずなのです。  これは1つの例ですが、高齢人口が増えるということは、社会のあり方、あるいはビ ジネスのあり方を根本的に変えていくことになると思います。もう少し数字を言うと、 いま生まれた赤ちゃんが一人前になるころには、日本の人口の3分の1が高齢者です。 今世紀の半ばぐらいには40%ですから、5人のうち2人は高齢者になります。そもそも、 そのようなときに65歳以上の人がお年寄りで、特別扱いだと言い続けることはできな いわけで、これはこの研究会のテーマとは違うかもしれませんが、日本のような国で、 いつまでも65歳を高齢者の基準にして政策を考えていいのかなという気がしていまし たので、今回のこの人生85年時代というテーマを見て、まことに適切な設定だと思っ たわけです。  先ほど大臣がおっしゃったように、女性の平均寿命が85歳を超えているわけですが、 65歳の平均余命で見ると、男性でも18歳を超えているわけです。女性は23歳です。 これもよく学生に言うのですが、いま65歳になっている人は、これから生まれてから、 男だと高校を出ると同じぐらい、女だと大学院の1年生ぐらいまで高齢者と呼ばれて生 きるようになるけれど、どう思いますか、と。そういう面でも、85年ぐらいを射程に置 いて考えるというのは、いままでなかったと思うのですが、とてもすばらしい着想だと 思います。  いくつか申し上げたいことがあるのですが、時間がないので簡単にポイントだけ申し 上げます。このような長寿社会は、まさにいま大臣が苦労されている年金問題やいろい ろな問題を引き起こすのですが、忘れてはならないのは、これは日本の経済の成功の証 だということです。我々の先輩が努力し、経済を発展・成長させてくれたおかげで、寿 命がこれだけ延びたのです。1947年、大臣がお生まれになったころの日本人の平均寿命 は、男性が50歳、女性が54歳です。これは0歳児の平均余命ですから、乳児死亡率の 高さが非常に影響しているわけですが、それも含めて貧しい社会だったからみんな長生 きできなかったわけで、それがいまや男性も女性も80歳を超えようとしているという のは、その間いかに日本が豊かになったかの象徴なわけです。  『The Economist』という雑誌があって、毎週Obituaryという追悼記事が出るので すが、10年ぐらい前に、カルマンさんというフランス人のおばあさんで、122歳で亡く なったおばあさんの追悼記事が出ていたのですが、その中に面白いことが書いてありま した。それまで長寿の記録は日本人の泉重千代さんという方が持っていて、フランスは カルマンさんが泉さんの記録を抜いたあと、日本よりも人間が生まれてくるのに幸せな 国であることが証明され続けていると喜んでいたと書いてあるのです。1人のケースで はなく、平均寿命で見ると、フランスもすばらしいですが、日本のほうがずっと生まれ てくるのによいですよとも言いたくなるのですけれども、いずれにせよ長寿はどんなに 誇っても誇りきれない現象だと思うのです。戦後60年の間に、毎年0.5歳ずつ寿命が 延びてきたわけですから。問題は、経済の成長の結果としてみんなが長生きするように なったことを、真に喜べるように社会の仕組みを変えていけるかということです。社会 の仕組みはいくらでも変えられるわけですから、その1つが先ほど大臣がおっしゃった 人生60年時代の社会システム、年金も60歳から支給されていた、定年も60歳からと いうシステムなわけです。  私の専門分野の雇用でいけば、ピラミッド型の人口構造のときには、若い人がたくさ んいて年寄りが少ないわけですから、若い人を安い賃金でたくさん雇う雇用システムが いちばん合理的に決まっているわけですが、逆ピラミッド型になれば中高年の人をたく さん雇う合理性が高まってくる。より正確に言えば、中高年の人をたくさん雇っても、 企業としてそんなにコストが高くならないような雇用システムを工夫するという合理性 が出てくるわけで、そういう意味では、雇用制度1つ取っても抜本的な見直しが必要に なってくるはずです。  もう一つ言えば、社会が豊かになると、一般的には出生率が下がってきます。しかし、 ここまで極端に下がったのは、豊かになったのに、一方で雇用の仕組みや家族のサポー トの仕組みが昔どおりだったから、少子化がここまで進んでしまったわけです。そうい う面でも、抜本的な仕組みの見直しが必要になってくると思います。そのような意味で、 雇用の面でいままでの60歳の雇用の基準は厚生労働省でルールを変えて、65歳までの 雇用を原則とされたわけですが、まだ不十分なところがあって、少なくとも65歳まで 働くのを原則にしないと、若い人の負担もどんどん重くなってしまうし、高齢者に対す る給付も削らないといけなくなってしまいます。  先進国はどこでも高齢化が進んでいますが、フランスなどは60歳代前半の男性で働 く意志があると言う人は2割を切っています。これは先ほど大臣もおっしゃったように、 引退を楽しむにはいいのですが、日本ではそれとは違うモデルがあり得て、日本では同 じ60歳代前半の男性の中で働く意志を持っている人の割合が、まだ7割を超えていま す。去年厚生労働省が行った団塊の世代に対する中高年縦断調査でも、60歳を超えても 仕事を続けたいという人が7割以上でした。これを幸せと見るか、かわいそうと見るか はいろいろあるかもしれませんが、私はこれは活かすべきだと思うのです。つまり、働 く意志と仕事能力のある人ができるだけ長く働けるように、働く意志のない人は早く引 退できることも大切ですが、折角意志を持っている人については、これを活かせる仕組 みを作ることが大切だと思います。雇用における年齢制限、これは昔森戸委員とアメリ カに行って調査をしたこともあるのですが、場合によると雇用における年齢差別の問題、 ご承知のとおり、アメリカでは雇用における年齢差別禁止法がとっくの昔にできていま すし、森戸さんが詳しいので後でお話になるかもしれませんが、EUでも2000年のEU 指令で年齢差別の禁止が各国の国内法に盛り込まれていますので、この辺りもこれから 考えていく必要があるのではないかと思います。  もう一つ申し上げたいのは、人生が長くなるということは、それだけ余暇の時間も長 くなるということで、必ずどこかで引退して引退生活を楽しむようになります。昔は、 豊かな人を金持ちや有閑階級と言いましたが、日本ではこれからものすごいボリューム の有閑階級が出てくるわけです。いまは、世界中で金持ちは閑ではないですね。昔と違 って、資本家や地主が金持ちではなく、自分のアイデアや専門能力で稼ぐ人が金持ちだ から、金持ちは閑ではない。そこで、本当の意味での有閑階級はこれから高齢者になっ ていくわけで、その人たちがレジャーを楽しめるような条件が必要です。そのためには 健康でなければいけないし、若いころから余暇を楽しむノウハウを身につけておかなけ ればいけません。  最近、私どもの大学で大企業の経営者を辞めた方が、大学院にちゃんと試験も受けて 入ってきて、経済史の修士論文を書こうとしています。ある意味で、学問は究極のレジ ャーですね。そういうことも含めて、長い人生を楽しめるようなインフラを整備してい く、あるいはそのための若いころからの投資ができる環境を整えていくことも含めて、 85年の人生をできるだけ充実した形で過ごせるようなサポート、あるいは環境を、政策 的にも整備していかなければいけないと思います。この85年時代というのは、非常に チャレンジングなテーマだと思いますので、これからしっかり議論させていただきたい と思います。 ○岩男座長 ありがとうございました。清家委員の学生になったようなお話で、きちん としたご説明と枠組みをお教えいただいたので、本当によかったと思います。 ○古賀委員 いま清家委員からお話がありましたが、私は雇用の分野で清家委員とずれ ているとは思っておりません。いま思いつくままに考えておかなければならない課題は、 1つは清家委員や大臣がおっしゃったどんどん高齢社会になるということ、2つ目は日 本のコミュニティが崩壊しているのではないかということ、3つ目には、私たちは便利 さや快適さをどんどん追求してきましたが、その代償は払ってきたのだろうかというこ とです。その最たるものが、地球環境の問題になっているのではないかと思っています。  基本的な考え方は、先ほど清家委員がおっしゃったように、みんなが社会参画をしな がら、みんなで支え合う社会をどう作っていくかが非常に重要ですし、その根底には安 心や安定が要ると思うのです。それが社会保障であり、ということになると思うのです が、そういう考えをしていくと、日本は国、社会、あるいは個人の権利や責任が非常に 曖昧なままに、混沌とした中で社会が構成されてきたのではないかと思うのです。我々 は、私自身も反省しなければならないのは、よく言われる主体性を持つとか、本当に自 立しているのだろうかと、どこかに依存しているばかりのような状況がないだろうかと いうことです。当然、社会や組織はお互いが支え合いながら作っていく集団です。しか し、そこに自立したものが相互依存をして、共鳴し合う社会や組織であるべきだと思う ので、その辺りの個人の責任や権利、社会としての責任や権利、国の責任や権利、もっ と言えば産業界や企業の責任や権利が曖昧なまま、いろいろな制度が組み込まれてきて いるのではないかという感じがしています。  私は海外に住んだことはありませんが、日本人は割とどこかに依存しています。この 組織だけに依存している人が多いとか、お上の言うことなら間違いないだろうと思って いたのがこのようなことになるから、国民がガタガタしているのではないかと思います。 我々自身も、与えられ、用意されたシナリオで生きるのではなく、自分たちが自分たち の生涯を自らどう作っていくか、どう意識改革していくかが非常に重要ではないかと思 います。ここに少し書いてありますが、一人ひとりが自分の人生とか自分の生き方みた いなことをどう描いていくかが非常に重要になってくるのでしょうし、その意味ではワ ーク・ライフ・バランス、仕事と生活の調和を現役世代のときから考えていかなければ ならないでしょうし、ここに書いてある長期休暇制度は非常にいいと思います。ある一 定時期にスパッと長い休暇を取って、その中で自分自身をリフレッシュするとか、異な ることをやって自分自身の幅を広げるとか、そのようなことが非常に重要なことだろう と思っています。  また、表現は悪いかもしれませんが、出入り自由な社会、例えば企業でも出入り自由 な社会ができないのかなと思います。この時期にはこういうことをしたいからこれをし た、次には企業に勤めてこれをした、何年かやったらもう1回大学で勉強したいと思っ たら、大学に行って勉強できるみたいなことができれば、個人も、あるいは企業として も社会としてもいいのではないかと思います。  最後に、利便性の追求の代償ですが、24時間コンビニエンスストアが本当にこれだけ 要るのだろうかと。何時に配達をしてこなければクレームをつける消費者。利便性をど んどん追求した裏には、そこに従事している人はどのような感じなのか。我々はよく冗 談で言いますが、運輸産業の方は「私たちはわがままを運ぶ運輸産業です」と言って、 なるほどと思うのですが、そういう社会構造も、1つの大きな課題としてあるのではな いかと思うのです。足元を見れば、労働時間等は一般労働者は恒常的にあるわけで、そ ういう意味では、もう少しワーク・ライフ・バランス、あるいは長期休暇についても非 常に魅力があるということではないかと思います。 ○高橋委員 私は、今日ご欠席のテリー伊藤さんから言われて参加したもので、サブカ ルの一員として発言するようにと言われたのですが、40年ぐらいフリーランスでスタイ リストの仕事をしているので、組織というものに加わったことがなく、いつも代理店や プロダクション、あるいはその上にある企業や大きな企業から与えられた仕事のいちば ん末端の所で、いちばん若い人たちといろいろな矛盾を感じながら肉体労働をして、い ま66歳です。今年の夏に66になったので、先ほど大臣がおっしゃった日本が直面して いる大問題を、私も個人で毎日直面しているわけで、これから85までどう生きるか、 どのように毎月所得を確保して生きていくかの勝負をしています。  私の場合、大臣が以前ご家族の介護の話を雑誌に書いているのは、いつも具に読んで おります。私は、親だけではなく自分の親族関係で、私はそれでも少し収入がよかった ので、がむしゃらにですが5人ぐらい介護をしています。それは本当に脳天気なことに、 自分でこれだけおもしろおかしい世界に生かされているのだから、この介護をやった後 でも自分でも取り返すことができると思って、すごくはかない確信で、55歳になって全 部の介護が終わったときに熟年離婚があったので、私はファッションだけではなく、な ぜ社会現象も先取りしてしまうのだろうと痛感し、この10年は本当に悪戦苦闘なので す。  たぶん、これからの20年は、皆さんは老後はリタイアした生活とおっしゃると思い ますが、私はこれからが自分のための勝負だと思っています。コミュニティや近所の方 とのお付き合い、老後に与えられる仕事と、いまは20代〜40代の人と同等の仕事をし て生き延びていますが、あと5年経って70過ぎたらそうはいかなくなってくると思う ので、自分もある程度リスペクトされながら、自分の生活を確保していきたいし、いま まで大変個人的に生きてきたので、このような個人的なことがどこまで行政などと結び つくか、たぶん皆さんと反対方向からこの問題を考えていくお役に立ちたいともがいて いる最中です。 ○茂木委員 おそらく、日本国民の多くは不満や不平や不安があっても、この国に生ま れてまあまあよかったと思っていると思います。厚労省からいただいた資料の中にも、 約3分の2ぐらいの人たちが、「非常に満足」ないしは「まあまあ満足」の人を加える と、大体60%を超えているというデータがありました。生活水準も昔と比べると非常に 便利になっていて、先ほど便利さの追求とおっしゃいましたが、我々の子どものころと 比べると、いまの日本の生活水準はどの先進国にも引けを取らないレベルになっている と思うのです。福祉も、自己負担の問題などは出てきていますが、アメリカなどと比べ て健康保険でほとんどの国民がカバーされている状況を見ると、安心感があるはずなの です。  しかし、そうは言いながらも何か不安感、あるいは不安定感、よく閉塞感という言葉 も使われますが、そういうものを私も感じているのです。特に、将来についてそのよう な感じを持っている人は多いのではないかと思うのです。それはなぜかというと、1つ にはいつ何が起こるかわからないような脆弱性がありながら、目の前の便利さと快適さ に、その裏に隠されている問題にあえて目をつぶりながら、毎日生活している面があり はしないか。それから、将来への不安感です。  具体的に挙げると、食品自給率がとうとう39%になったと、エネルギーに至ってはわ ずか5%ぐらいでしょう。原子力発電を国産エネルギーに勘定すれば、20%だという説 明をする人もいますが、それはいんちきだと思うのです。ウランは国の中では取れてい ないわけですから、5%というのは正しいのだろうと思います。また、最近ミサイル迎 撃実験が成功して、海上自衛隊の人が「やったぁ」とガッツポーズをしている映像が流 れましたが、安全保障の面でも相当不安感を持っている人がいるのではないかと思いま す。  国の将来について言えば、いままさに少子化が猛烈な勢いで進行していますが、これ は私ども企業社会にいる人間が、古賀さんが研究されているワーク・ライフ・バランス をきちんと実現することを不退転の決意で取り組めば、相当改善できると思います。し かし、一昨年は合計出生率が若干上向きに転じました。出生数も婚姻数も前年を上回り ました。しかし、去年は正確なデータを見ていませんが、また停滞傾向に戻ってしまっ たようです。先ほど、清家委員が将来40%が65歳以上になるとおっしゃいましたが、 これは2055年の予測ですね。  これは少子化の1つの原因にもなっていると思うのですが、最近格差問題が非常に話 題に上っております。もちろん、人それぞれに能力の違いがある以上、再配分税制、累 進税率を持った相続税ないしは所得税による富、所得の再分配が行われた後でも、ある 適切なレベルの格差があるのはむしろ当然で、なければおかしいと思うのです。しかし、 それがどのレベルがいいのかについてもっと検討しなければいけないと思います。さら に、いちばん問題だと思うのは、経済格差が教育格差につながりつつあるのではないか と思うのです。安倍前総理が経済格差の再生産を断ち切らなければいけないとおっしゃ っていましたが、私はいま再生産が起こりつつあるのではないかと思うのです。  その1つの原因が、公教育の質の著しい低下です。私は1カ月に1度以上、高等学校 や中学校へボランティアで出張授業に行きますが、公立の学校の質の低下は本当にひど いと思います。そうなると、逆立ちしても借金をしても、とにかく子どもを公立に入れ なければやっていけない家庭の子どもは、最初からハンディキャップを負ってしまうわ けです。さらに、特に公立の学校における基礎教育が非常に不徹底な状態になっている ので、大学で教えておられる先生方はどう感じていらっしゃるか、是非聞かせていただ きたいのですが、ある大学の理事長から昨日の晩、難儀節を伺ったのですが、とにかく 高等学校まででもう少しきちんと教えてもらわないと、大学教育ができないと言ってお られました。  私は、表現が穏やかでないかもしれませんが、日本の高等教育はいまや砂上の楼閣化 現象が起きつつあるのではないかと思います。公教育の劣化によって、教育の機会均等 という憲法や教育基本法で謳われている理念が、有名無実化しているのではないかとい う危機感を持っております。その結果、先ほど古賀さんが出入り自由の社会とおっしゃ いましたが、私は社会的モビリティがだんだん失われつつあるのではないかと思うので す。これが社会の公正性をなくしつつあると思っていて、何となくそれを国民全体が感 じているのではないかと思います。  また、今年の漢字は「偽」だそうですが、社会風潮、日本人が本来持っていたと思わ れる美徳がどんどんなくなって、礼儀正しさやエチケット、隣人愛、郷土愛、帰属意識、 あるいは倫理感、連帯感、規範意識といったものがなくなってきているのではないかと 思うのです。その原因は、昭和20年8月以来民主主義が導入されて、それは大変結構 だったのですが、非常に歪んだ形で教育などに反映されて、このような状況になってい るのではないかという気がしてしようがないのです。ゆりかごから墓場まで、まあまあ 満足という人が3分の2ではなく85〜90%になるためには、いま申し上げたことにつ いてきちんと対処して、その場その場の対処療法ではなく、根本的なところを直して日 本の国柄を考えていくことが非常に必要ではないかと感じております。 ○残間委員 私は団塊の世代の尻尾のほうなのですが、約800万人ともいわれる団塊の 世代がこの先どちらに歩みを進めるかで、日本国がかなり違うのではないかと言われて います。その辺りで、プロデューサーとしてはライフワークにシニアの人たちのことを、 もっと言えば新しいシニアのイメージを作ること、と同時にシニアのライフステージを 作りたいと思っています。  先ほど清家委員に、思わず「何歳でしたっけ」と聞いたのですが、たった4つしか違 わないのに「高齢者、高齢者」と連呼なさったのですが私はこの先65歳を高齢者と呼 ばないと、この懇談会から宣言してほしいと思います。生命と労働という大事な基軸を 持っている厚生労働省から、65歳を「高齢者」と言うのをやめようと言ってほしいので す。  各地で団塊世代の活動支援委員会が開かれていて、私も委員をやっているのですが、 東京都のある区では団塊世代の支援をしているのが大体高齢者支援課なのです。最初の 委員会で「なんで高齢者支援課に支援されなければいけないのかということで」紛糾し ました。これは去年の秋の統計ですが、日本では既に5,446万人以上もの人が50歳以 上だというのに、65歳以上を「高齢者」という括りにするなんて、時代錯誤だと思いま す。言葉は人の人生を概念として縛ります。だから、まずこれをやめてほしいと、切に 願います。  ○岩男座長 ありがとうございました。大賛成で、圏外の私は72歳です。ただ、日 本ほど年のことを言う社会はないというか、アメリカなどでは殆ど年齢が問題になるこ とはないのです。日本では審議会でも70歳までという規定があって、私は今年の1月 に社会保障審議会を退任したのですが、高年齢層の意見も反映されるべきで、年齢によ る排除をやめていただく必要があるように思います。 ○フランソワーズ・モレシャン委員 外国ではと、そのあとアメリカではと言わないで ほしいです。ヨーロッパもあるし、アフリカもあるし、中国もあります。日本では、外 国と言えばアメリカ。世界はアメリカだけではないです。それだけを申し上げたかった のです。 ○岩男座長 おっしゃるとおりです。 ○フランソワーズ・モレシャン委員 私は外国人で日本語もとても下手なので、大した ことを言えるかどうかわかりませんが、データを作ってくださってありがとうございま した。とても勉強になりました。ただ、昨日もらったので、勉強する時間がそんなにな かったのですが。舛添大臣は喜んでくださるかどうかわかりませんが、サルコジの時代 に合うのです。はっきり物を言われるのです。この会議で、大阪弁の言うとる、言うと るの会議でなく、本当に具体的な結論、明日からでもすぐ使うことができる結論までい けるのではないかと思いました。  私はフランス、ヨーロッパ、どちらかと言えばラテン系です。先ほど大臣からも先生 方からもあったように、向こうで仕事をやめてゆっくり人生を楽しむということは、年 金のレベルがもっと高いです。本当に貯金しなくても、亡くなるまで生きることができ ます。日本ではそれはない。私は71歳です。ですから年金をもらうようになりました が、生きていられないのです。結論から入りますが、私の友だちもそうですが、70代、 60代も毎月15万円では東京では住めない。東京で、外でもできないかもしれません。  そうすると、前から貯金をするでしょう。しかし、貯金があっても、ほかの国から「日 本人はいちばん貯金をなさってる、お金持ちですね」と言われるでしょうが、お金持ち ではないのです。なぜかと言うと、85歳まで教えてくれていいのですけれど、これから 私たちは元気でいかないといけないでしょう。フィットネスやらないといけないでしょ うし、ダイエットしなければいけないでしょう。85までではなくて95、100まで生き そうです。そうすると、私たちが貯金した分はどう分ければいいですか。20年で分けれ ばいいですか、35年で分ければいいですか。わからないから不安で不安で、心配で本当 に人生を楽しむことができないのです。私は90までいくとホームレスになるのです。 ホームレスに近い。東京でなくても、15万で四畳半でしょう。それは具体的なことです が、例えばラーメンでもいいから年上の方と楽しむ。でも、ラーメンでも人生を楽しむ ために、せめてもう少し年金がなければ楽しめないのです。  それから、バカンスを楽しむのも、日本やアジアは孔子から出てきた考え方があって、 考え方がまじめというか硬いというか。クリスチャンの社会はなぜ余裕があるか、今日 は説明する時間はありませんが、キリストやプロテスタントと関係ありますが、ものす ごく余裕を持っています。遊ぶことは義務ではないし自然。遊びましょうなどとは向こ うでは一度も聞いたことはないのです。遊ぶのは空気を吸うのと同じです。いいじゃな いと。たぶん、私たちの考え方は、日本と比べようとすると、関西に似ています。いい じゃないか、あほとちゃうかと。戦争のとき、また負けたのでしたか。フランス人も負 けるのですよ。  今日ははじめてですから、この次の会のために、もっとしっかりした合理的な話をし ますが、今日はそういう文化の違いも考えないと、私たち外国人の話は役に立たないか もしれません。ただやっぱり責任、私の話は終わらせていただきますけれど、一昨日新 聞で、私は最近あまり行かないから、ブッシュがいる間は私は行かないの。フランス人、 大体みんな決めました。サルコジ以外に。  例えば、ニューヨークで3割ぐらいの、特に若者たちは保険に入っていないの。あま り高いですから、ご存じのように。皆様のご専門ですから。 ○舛添厚生労働大臣 健康保険ですか。 ○フランソワーズ・モレシャン委員 健康保険、ごめんなさい。健康保険に入らないか ら、大体、ご自分で病気にならないように一生懸命頑張っています。だから、ヨガにつ いての流行とか、人気エアロビクスについて精神的にも、肉体的にも、健康を一生懸命 考える人たちは、逆に健康保険に高過ぎて入れないから頑張っているわけ。もちろん、 それは健康保険をなくしましょう、みんな頑張りましょうという意味ではないです。面 白いですね、人間の心理は。終わりです、よろしくお願いします。 ○岩男座長 ありがとうございました。 ○森戸委員 私は法律学者で、労働法や社会保障法を教えているので呼んでいただいた と思います。経済学者の清家先生と違って、同じ学者でもあまり夢のあることは言わな いという業界です。例えば、経済学者が渋谷で石を高齢者に投げてみたらというのに対 し、法学者は高齢者に「石など投げちゃいけないよ」ということを言う。そういうこと なので、あまり皆さんみたいに夢のある話ができなくて恐縮です。  最初ですので、何点かお話させていただきたいと思います。まず、「85年ビジョン」 というのは「なるほど」と思い、参加させていただきました。結局、確かに先ほどから 皆さんおっしゃっているように、人生60年、もしかしたら55年という前提で何か生き 急いでいるというか、密度濃く入っている人生、生き方を85年、もしかしたらもっと あるかもしれないのだから、少し密度を薄めて延ばすような感じですね。高齢者にはや っているらしいのですが、そば打ちみたいに生きてみたらどうかを問いかけてみる会か なと認識しています。「スロー・ライフ」とか、ちょっとビジネスくさくて嫌な言葉です が、そのようなことを言っているのかなと思います。  先ほどからエイジ・フリー社会の話とか、アメリカやEUの年齢差別の話など出まし たので、それについてもコメントいたします。確かに、世界的に年齢にこだわらない社 会で行こう、エイジ・フリーで行こうというトレンドはおそらくあるわけです。それは 法律的にもある。日本もいずれ、そういう方向に行かざるを得ないのだろうという気は しています。その点、日本のこれまでのシステムとどういうように整合させていくかだ と思います。  ただ、やはり、日本はセニョリティー、年功的な国、言われてみれば「高齢者」とい う言葉は確かにいろいろ問題がある。他方、年をとった人を敬まなければいけないとい う前提で来ているのでそういう区別があるというのもあります。私も清家先生にお会い すると、地べたに頭が付くぐらい頭を下げてご挨拶をします。それはやはり先輩だから でして、これを「よう、篤」とか言うと、多分もう一生どこにも出入りできなくなる。 そのような、1歳でも違ったら先輩・後輩の社会です。多分、その良い面、悪い面があ ると思いますが、そういう社会と年齢にこだわらない社会、雇用のあり方というのは最 終的には少し衝突するところがありますので、どうやってそこをうまく日本的に消化し ていくかという問題も考えなければいけないのかなと思います。  最後に今日、僭越ながら資料をお配りしました。「〜Think!ロウゴ2008〜」という チラ紙が3枚か4枚あります。これは簡単に申しますと、私が言い出しっぺ、フィデリ ティ投信という会社にご協力いただいて、実は厚生労働省にもご後援いただいています。 簡単には、大学生に老後のお金について考えてもらって、いろいろ勉強してもらう。政 策案みたいなものを作ってもらって、それを発表してもらおう。それをコンテストみた いにしよう。優勝したら、アメリカの研修ツアーに行ける。フランスも行きたかったの ですが、予算の関係で行けませんでした。すみません。モレシャン委員がスポンサーに なっていただければ、来年はフランスに行きたいと思います。アメリカしか行けないの ですが、そういう企画をやっています。  これは結局老後の話、年金の話など大事だけれども、むしろ全然関係ないと思われて いるような大学生のときにこそ、こういうものを考えてみるというのが、むしろ白紙の 状態でいいのではないかということで始めました。去年からやって、今年は2回目なの ですが、非常にユニークなアイデアが出てきています。いまちょうどやっているところ、 1月22日、23日に国際フォーラムで「提言発表会」、「審査会」を行います。去年、厚 生労働省は企業年金・国民年金基金課長にも来ていただいたので、お暇ではないと思い ますがもし大臣がいらっしゃられれば。当然、そのときも絶対大臣でいらっしゃると思 いますので、是非いらしていただければと思います。  なぜ、これを配らせていただいたかというと、結局人生85年、もしくはそれ以上生 きていくにはやはりお金が必要なわけです。モレシャン委員がおっしゃったように公的 年金ももちろん大事です。しかし、やはり企業年金とか、あるいは自助努力というもの が必要だと思います。やはり、老後所得保障システムがある程度信頼できるものとして あってこそ、85年、どうやって楽しく生きていくかを考えられると思います。少し地味 な話ではありますが、検討事項の中にもあるように、高齢期の安定した所得の確保とい うことも忘れずに考えて、その上で楽しい85年を送ってほしいという方向を考えてい ければと思います。  もう一言だけ最後に申し上げます。この企画で全国各地の大学、北大、阪大、神戸大、 東大とか、上智もですが、いろいろな大学のグループが10グループぐらい競っていま す。彼らにフィールドワークに行ってこいということで、東大のチームが巣鴨の「おば あちゃんの原宿」にヒアリングに行ったのです。アンケートを取りに行って、いろいろ 聞いてきてためになったわけです。そのとき、非常に印象に残ることを彼らが言ってい ました。アンケートでおばあちゃんに話しかけたらすごく喜んで答えてくれた。ただ、 そのときに言われたのが、皆さんみたいな若い人とはアンケートでしかしゃべったこと がないと言われたのを聞いてなるほどというか、ちょっと申し訳ないような現実を知り、 きっとそういうアンケートがいっぱい行くのだろうなと思いました。アンケートではな くて、自然に世代を超えたコミュニケーションみたいなものが図れるような社会がきっ と、85年楽しく生きていく秘訣にもなるのかなと思いましたので、このチラ紙と一緒に ご紹介させていただきました。以上です。 ○高階委員 85年社会についていろいろ考えなければいけない点があります。これまで にもいろいろ皆様のアイデアがありました。今日は全体的なこととして、検討テーマと して「自己実現に向けた働き方」、「地域社会参加」という非常に大事な問題が出されて います。いままでのお話でも、一体我々85年、場合によってはもっと長い間、どこまで 働いて、そのあとリタイアしてゆっくりできるか。あるいは、1年のうちでどれぐらい 働いて、休暇をどれぐらい取るかというような、人間の生き方をどういうように分けて いくかを考えているだろうと思います。  そのために、働くのを辞めたあとで保障が必要であるとか、もちろんさまざまな問題 があります。その考え方は基本的に、一方では働くということがあって、これは社会に とっても大事なことです。ある年齢に達したら、自分のためにリタイアして好きなこと をやる。そうやって、自己実現に向けていくという考え方がいちばんもとにあるのだと 思います。  ということは、もう少し言えば働くことは大変、つらい。しかし、仕方がないから自 分のためにも、社会のためにも行く。ある程度まで行けば、どこが高齢者かわかりませ んが自分の好きなように生きるという、2つの生き方のどこでバランスを取るかと考え るのが言わず語らずのうちに、背後にあるような気がします。それが例えば生涯だけで はなくて、1年のうちでも長期休暇は1カ月がいいのか、日本は1週間も取れないから 大変だとか、1年の中で働く時間と余暇時間をどう配分するか。さらに言えば、1日の うちで8時間労働がいいのか、7時間労働がいいのか。これも1日のうちで7時間か8 時間は働いて、あとはゆっくり家に帰ってのんびりするか、あるいは遊びに行くかとい う、二分法で人間の生活を考えていくというのが何となく、我々の頭の中にいつの間に か入ってしまっていると思います。  ここでいろいろ問題が出されたとき、それだけではない考え方というか、ご指摘があ りましたが働くこと自体の中にもちろん生きがいもあるだろう。それから、高齢者でな くシルバー世代、最近はシルバーではないから「ゴールド世代」、ゴールドのほうが少し 年上らしいです。年を言っても仕方がありません。でも、役に立つ。実際に退職された 方が、新しい地域社会などでもシルバー・サービスをやっている。これは働いている方 にも、サービスされる方にもさまざま生きがいになるし、受ける側も大変便利だという ことがある。新しい職場がというか、普通の職場ほど時間や日程が決まっているわけで はないけれども、ある程度自由な時間に仕事もできるということが考えられることがあ ります。それも含めて、純粋に仕事の時間と余暇、ないしは働く時間と楽しみを分ける だけではなくて、むしろ中間のあり方というものが、これもある年代から以降に関して のみならず、あらゆる世代について考えていったらいいだろうと思います。  そのために、「自己実現」ということがしばしばここでも言われています。自己実現と いうのは、自分の好みのままに生きる。あるいは自分の趣味を活かす、学問をするのも そうかもしれません。定年になって暇ができてからさらに学校に行かれる、先ほど清家 委員のお話にあったような社会人参加の学校、私も一部関係していますが、それが増え てきています。そういうときに、一体それをどういう形で生活全体の中に組み入れてい くかを考えて、そのシステムを作っていったらいいと思います。そのとき、働くことと リタイアでも、趣味に生きるでもいいのですが、余暇との二分法ではなくて、その中間 の段階が多分あるだろう。  個人の生活で考えてみると、昼間は働いて、夜はゆっくり休むか、遊ぶかという、働 く時間と余暇時間が1日で分かれる。その働く時間と余暇の間の時間が実は、私など自 分のことを考えてみても、芸術関係の時間がそのころに集中するのです。音楽会に行く、 展覧会に行く、あるいはお芝居を見に行くといったようなことは、働いている時間に行 くというのは気が引ける。歌舞伎などお昼からもやっていますが、実際に職場にいると 気が引ける。家に帰って寝っ転がるときはもう終わりだ。その中間、仕事が終わってか ら家に帰る間の時間というのは、いわゆる文化的な催し物というのはそこに行われてい るわけです。それには人々は自分の好みもあるし、趣味もあるしということで行く。こ れはパブリックな、つまり仕事の部分とプライベートな自分がのんびりする時間の中間 の段階だと思います。  もちろん、自分の楽しみだからそう会社に縛られているわけではないが、家の中にい るほど自堕落ではいられない。一応、きちんとした格好で行かなければいけない。半ば パブリックで、半ばプライベートな場所、時間、それが非常に大事なことだろうと思い ます。  これが趣味に生きるとか、自己の好きなことをやることと結びついている。自己実現 というのは大変大事なのですが、常に1人だけでおたくのように引きこもってやるので はなくて、そういう場所でみんなと一緒にお芝居を楽しんでもいいし、あるいは楽しい サロンで会話をしてもかまわないのです。ある種の仲間が必要なのだろうと思います。  あとで地域社会が出てきます。コミュニティが壊れている、会社だけで慰安旅行に行 くのが少なくなっていると言います。それでは、個人だけで楽しめばいいかというと、 それだけでは十分ではないのです。人間が満足を感じるのは何か、必要なのは何かとい うのは生活のための衣食住、あるいは安全などというのは当然重要です。さらに、それ に加えて仲間意識というか、社会心理学で「自己承認」、周りから認められることが大事 である。それは何も、天下国家の問題ではなくて、お友だちと一緒になって「こういう ことは良かったね」と話し合うことでもいい。あるいは、ごく近所仲間でお手伝いして 「助かりました」ということでもいいのです。自己実現というのは決して一人ではでき ない。大げさに言えば周囲の社会ですけれども、仲間の承認が必要である。  それは先ほどのパブリックとプライベートの中間領域にある。それを一種の社交生活 というか、純粋に仕事で決められたものではないが付き合いのルールみたいなものがあ る。それは昔からそれぞれの国にあったし、日本は日本であったと思います。最初のお 話にも、かつての生き方みたいなものが参考になるかどうか。ここでは石川委員のよう に江戸の専門の方もいらっしゃいます。江戸時代だと、30代とか40代になるともう隠 居して、家督を譲ってしまう。しかし、すっかり引っ込むのではなく、実は趣味の仲間 と一緒に会合をやったり、あるいはそれこそ地域のために組合のようなことをやったり ということに生きがいを見つけられる方がいる。そのようなパブリックとプライベート の中間の領域で、文化もあるし、あるいは社会奉仕もある。あるいは、人々の間のコミ ュニティも成立する。そのような社会の仕組みがかつてはあったような気がします。  それがいまなくなってきて、一方では働かなければいけない、縛られる。これはなる べく時間を短くしようとか、そこには働いた分だけ取らなければいけないというような、 完全に仕事と収入の問題になってくる。あとは、自分一人で自分の好きなことをやると いうことになってくる。そういうものではないシステムが実際には文化活動など行われ ているので、やりやすいような形、地域であれば集まる場所が少ないとか、あるいは交 通が不便だというようなことが地方ではあります。そういうことも含めて、社会のあり 方、価値観のあり方を再考していくことが大事ではないか。厚生労働大臣からこういう 宿題を与えられたとき、今後考える1つの方向として考えられないかなと思った次第で す。 ○小室委員 ワーク・ライフ・バランスという会社をやっています小室と申します。私 は皆様のように有名ではないので、ちょっと自己紹介しなければいけないかと思います。 企業のワーク・ライフ・バランスのコンサルティングをすることを仕事としている者で す。まだ、この業界はあまりありませんので、ほかに同じような仕事をしている方は大 変少ない状況です。  ただし、企業の問い合わせは大変多いです。1度も営業をしたことがないのですが、 できて創業1年半の会社ですが必ず「うちのコンサルティングをしてくれ」というお問 い合わせがあります。待っているだけで仕事が来るというぐらい、企業はいまワーク・ ライフ・バランスに困っていらっしゃいます。  なぜ、そのように話題になったのか。しかも、2007年から急にさらに問い合わせが増 えているという状況の中で、1つ非常に大きいのは採用問題のようです。2007年になっ て、特に労働力人口がいない。もっと前からわかっていたはずなのですが、2007年にな ってそのときに気が付いたようです。団塊の世代が「2007年問題」で一斉に辞めて、仕 事だけ残ってしまって、その仕事を誰がやるのか。人を採ろうとしたら人が採れないと いうところで、「うちの会社の魅力とは」を考え始めたら、働きやすくないと人が採れな いというところでワーク・ライフ・バランスに非常に興味を持たれているのではないか と思います。  弊社がいつも、いろいろなお話の中で企業がびっくりされるのは、日本の労働生産性 の低さなのです。GDPで2位だから、経済的にも成功している国という概念をまだまだ 年齢の高い方はお持ちなのですが、労働生産性で見ると先進国でびり、19位は大変低い。 そのようなことを聞くと、「日本人は長く働いているけれども、だらだらやっているんだ ね」ということを認識されます。  だらだらやっているのかというと、私どもが考えるに、だらだらやっているのではな くて、ライフがなさ過ぎてしまうがゆえに。先ほど、高階委員のおっしゃっていたイン プットの時間がほとんどない状態になってしまった。かつて、1時間に10個物が作れる 人は10時間座っていれば100個できた。その時代に成功した方たちがアイデアの時代 になったのに、1時間に10個アイデアの出る人は10時間座っていたら10個出るよう な錯覚で働いているのではないかと思います。アイデアの場合、2時間ぐらい座ったら 出なくなってしまいます。ほとんどの方はそこから散歩してみたり、他人とディスカッ ションしてみたり、もしくは音楽を聞いてみたりするわけです。  それが広い意味でのライフの時間の重要性なのではないか。ライフの時間にインプッ トしたものでワークの時間のアウトプットをしているのに、生活のほとんどをワークが 占めたらみんなアイデア社会で、アイデアのない人の集まりという状態になっているの ではないか。会社は空の引き出しを持って押し寄せてくる大軍が出社してくるような時 代ですので、会議の時間も「俺はアイデアないけど、お前もないの」みたいな感じで、 ない中でいまから考えようかとうんと考えるから、会議が長い割に生み出される物が非 常に貧困の状態が起きているのではないか。  そういう中で働いていると、働いている側もアイデアを求めながら、求められて自分 は からっぽですから苦しい。長時間働いて苦しい本人と、本人を長時間働かせている割に 儲からない会社というような、お互いが損している状況なのではないかと感じています。 いま生産性を上げるために、むしろライフをいかに持つことが重要かを企業も薄々は感 じてきているように思います。  私自身、いま、1歳半の子供がいます。会社ができて1年半なのです。起業しようと 思った瞬間に自分の妊娠を知りましたので、1年起業を延ばして、出産して3週間で復 帰して起業したというような状況でした。子供を育てながらいまの会社をやっているの で、夫との連携になります。  1つ目に、いまの少子化の原因を私自身が痛感したのは、子供を産んで2カ月目のと きでした。夫は実は経済産業省に勤めています。ただ、このことは声を大にして言いた いのですが深夜まで帰ってこないのです。行政からまず残業をやめないといけないと思 います。  そのとき、どの子供も大体6時ぐらいから気難しくなって、何をしても泣くという状 態がずっと続いて、2時ぐらいになると疲れて深く眠ってくれる。どうしてそんなに泣 きやまないかがわからず、私自身も泣いて、夜中の2時まで一緒にずっと泣き続けて、 2人とも疲れて眠るという生活をしていました。  誰と誰の子なの、育児ってどうして私だけがこんなに大変なのと思ったときに、両親 とも遠くに住んでいますので、 なぜこのようなことが起きるのか。もう、2人目は無理とそのときは思いましたし、周 りにも子育てがいかに大変かという話ばかりしてしまいました。これは少子化の原因だ なと思います。  夫は幸いにして、当時、ある日帰ってくると「俺はこれからワーク・ライフ・バラン ス王子になるから」と言い出して、夜中の2時に帰ってきていたのを12時に帰ると言 うのです。  朝8時に飛び起きて、ご飯も食べずに会社に行っていたものを朝3時間、家事・育児 をすると言い出したのです。いまでは毎日、息子を左手に抱えながら、右手で朝食をつ くってくれます。初めて料理をした人がそこまで変貌して、土日も3食つくってくれ、 朝からお風呂に子供を入れてくれるという生活になった瞬間、朝3時間を夫がやってい て、夜3時間私が育児をしていますので、同じだと思えた瞬間に楽になった。「この人 は精一杯やってくれている。だったら、2人目もほしいな」という、生活が回り出して しばらくしてやっと思えたのです。  いま、晩婚化とか子供がほしくないという話も聞きます。それが本当の少子化の原因 なのではなくて、実際にその人が持ちたくないと思った理由がかつての子育ての人から 発信された情報にあって、1人目を産んだ人がこりたからだと思います。1人目を産ん で育児トラウマになってしまうような社会で少子化が解決されるわけはこれからもない と思っています。どんなに育児の支援金があっても、お金の問題ではなくて、2人で育 てられるような時間に夫が帰ってくるかどうかということはすごく重要だと思います。 1人でやっているとあれほど大変な育児が、帰ってきて渡すと泣きやんだり、夫も限界 になって「もう無理だ」と言って私に渡すと泣きやんだりする。子供はちょっと不思議 で、ちょっと環境が変わったりすると気嫌が直ったり、1人でやっているとつらいのが、 2人でやっていると「泣き顔がおかしい」と言って2人で笑って、とても楽しいのです。  そのように、誰かと育児ができる状況にならないとと考えると、いま少子化問題は男 性問題なのかなと思います。男性も調査をしてみたら「帰りたい」とは言うのです。で すので、最後はどこかというとやはり企業の問題、企業の働かせ方になるのだろうなと 思います。  企業のほうも非常にいま困ってしまっているというか、気づいた企業から最近ワー ク・ライフ・バランスに深刻になり始めていると思います。これを私は「もう1つの2007 年問題」と呼んでいます。先ほどから皆様より出ている介護の問題だと思います。2007 年に団塊の世代があれだけ辞めるということは、15年から20年したら、一気に75歳 の年齢にぐっと入ってくる。要介護に入るのが大体、75歳から80歳がいちばん年齢的 に多い。施設がいまでも足りないような状況のところに、団塊の世代が一気に入ってき たらもう介護難民だらけである。それを見るのは間違いなく団塊ジュニアなのだろうな と思います。私は団塊ジュニア、32歳です。団塊ジュニアの私たちは育児で1回キャリ アがへこみ、介護で1回キャリアがへこみということを男性も、女性も同じように体験 すると思います。  特に、試算してみると非常に面白いのが、いま7:3で団塊ジュニアの男性が多く働 いているのと、未婚率が大変男性のほうが高いので、15年後に介護に直面する人を絶対 数で働いている人間で計算すると男性のほうが多いのです。男性で未婚のひとりっ子と 言ったら自分は直介護の担い手なのです。企業の管理職の人を並べて、未婚でひとりっ 子の管理職を探しましょうと言ったら結構な数います。「人が休んで困る」、短時間勤務 者は使えない、育児休業のあとはキャリア横ばいでいいだろう、そういう話題が企業の 中でささやかれますが、実際には15年後、休業者と言うと、男性で介護休業者のこと を指すような時代が来ると見えてきたのです。  こういうようなことを企業さんにお話すると、人事部長が急に変わって、「その問題を やらなければいけないのか」と言い出すのです。それまでは、女性で育児の話だと短時 間勤務は困るななどという話があるような企業でも、やはり介護の話になってきたとき にトップも動きますし、人事部長の目の色も変わるのです。おそらく、今後の企業の働 き方ということに、もっともっとこれから厚生労働省としても発信が出てくるのではな いかと思います。やはり、介護の問題と育児の問題を1つ、人の働き方の柔軟性が必要 な理由としてセットにして、誰にとっても「明日は我が身なのである」ということがわ かるような発信の仕方が必要ではないかと思います。  どうしても未婚だった女性だとか男性は、育児の問題に対して自分は我が身ではない と思っています。でも、介護においては自分が中心ということについて、想像すればわ かる話なのですが、もっとダイレクトに、介護の問題に目を閉じたいという気持もあっ て見えないのだと思います。見える形にして伝えられたらいいのではないか、というと ころが私が仕事を通じて感じている問題意識です。長くなって申し訳ありません。 ○岩男座長 すみません、座長というのは憎まれ役で。折角、良いお話をされておられ るのに、口をはさまなければいけないので申し訳ありません。石川委員、お願いします。 まだご発言いただいていない方が4人おられます。 ○石川委員 私は多分、江戸時代の専門家として呼ばれたのだろうと思います。皆さん のお話を伺って、いまの状況がどういうものかということがよくわかりました。本当に、 江戸時代のこととは違い過ぎていて、参考にならないのではないかと思います。この資 料の16頁を見ていてびっくり、びっくりする私がおかしいのかもしれません。要する に、就業者中、お勤めする人たちが86%に達しているというのは、「そんなに多いのか」 と思いました。  江戸時代と現在のこういう問題を考えるとき、いちばん違うことは2つあります。1 つは、昔はそれほど長く生きる人がいなかったということです。  江戸時代と言わずに、私の両親も昭和20年代に亡くなりました。母は52歳、父は 57歳で、老後の心配をするまでもなく死んでしまいました。おかげ様でいま、私は介護 問題とは一切関係なく毎日を送っています。家内もちょうど11年前に亡くなり、子供 もいませんので、74歳の老人が1人のうのうと、大変気楽に暮らしています。だから、 老人と言われると、腹が立つぐらいピンピンしています。  江戸時代はあまり、老後の問題は集団としてはありません。30歳の平均余命が30数 歳、これは「宗門改帳」が日本中に残っており、それを調べてくださった方がいらっし ゃる。町も農山村もあまり関係なしに、30歳の平均余命が35歳弱ぐらいです。30歳ぐ らいまで生きると還暦まで生きる人がかなり多い。50歳の平均余命が25歳ぐらいです から、50歳まで生きると70代ぐらいまで生きる。ですから、老人がいないわけではな いのですが、大体30歳、50歳まで生きる人がそういない。いまのように、つくだ煮に するほど、老人がうじゃうじゃいるという世の中にはならないわけです。長生きをして もそれは個人的な問題ですから、いまのような社会問題としては考えられない。  いちばん違うのが雇用者の数です。いまはともかく86%という、大変な数の人が人に 雇われています。いまの皆様のお話を伺っても、会社に勤めていて、定年退職するとい う前提でほとんど、高橋委員以外は全部そうです。江戸時代にこのような統計はありま せんが、常識で考えてわかりますのが多分これぐらいが自営業者だったと思います。な ぜわかるかというと、純粋なサラリーマン、つまり上からの命令で働くという組織に属 している人は武士階級だけです。これは軍隊ですから集団訓練を受けています。武家人 口というのは武家の家族、おじいさん、おばあさん、赤ちゃんまで入れても、多分5% と10%の間だろうと思います。この人たちは純粋なサラリーマンです。  農林水産業というのは自営業です。自分でやるより仕方ないことですから。その間に 武士ではないサラリーマンがいたかというと大店、大きな店に勤めている店員ぐらいの もので、あとの人はほとんど全部が自営業なのです。  私も50歳まで会社の経営をやっていました。50歳で会社を人に任せて、50以後は専 業作家を24年やっています。これも高橋委員と同じで、専業作家というのは零細企業 中の零細企業です。1人ですからこれ以上の零細企業というのはありません。ですから、 私が失業しているのかしていないのかというのはわからないわけです。  作家というのは誰でもなれます。「私は作家」と言った途端、その人は作家です。ただ、 所得があるかどうかは全然別の問題です。2週間ぐらい仕事がないと、その期間は私は 失業しているわけです。仕事がどんどんくれば就業しているということになる。  ところが、江戸時代というのは、人口の大部分がそのような組織に属していない人た ちでした。ですから、隠居するといってもいろいろな隠居の仕方がありました。例えば 農村ですと、ごちゃごちゃみんなと一緒に暮らしていますから。つまり、農民というの は体力がなくなっても、経験を活かすことができますから、こういうように虫がついた ときにはどうすればいいだろうということに関しては、老人のほうが知っている場合が あります。そういうように、ある日をもって団塊の世代がどかっと出るという社会構造 にはなっていないのです。  江戸のような町ではどうかというと職人が非常に多い。職人もある日をもって、今日 からあなたは大工をやってはいけないという世界ではありませんから、ずっと出来る限 りはやっているわけです。ちょっと、いまの世の中とは比べようがないのです。私は多 分、雇用者は70%ではないかと思っていたのが86%という多さには。それも昭和43年 が60%ぐらいだった。高橋委員、少し勤めている人が多過ぎるとお思いになりませんか。 やはり、自営業者が多ければ、世の中はずいぶんこういう問題も変わると思います。  もう1つ考えるのは、確かに勤め人が多いほうが上の人はコントロールしやすいと思 います。集団として何々省の職員、何々会社の社員という形で括れますから。私みたい な者は何にも属していないし、嫌なら仕事しないし、お金がなくなれば働くしという人 間がいちばんコントロールしにくい。これはもう学校教育からそうです。江戸時代の寺 子屋の絵がたくさんあります。これはみんな、子供たちはあらゆる方向を向いています。 とにかく360度、任意の方向を向いています。  女の子の寺子屋の絵を見ると、女のほうがやはり昔から少しお行儀が良い。机を直角 に並べてあらゆる方向を向かう。男の子は360度、あらゆる方向を向いて教室の中にい ます。教師は1人ひとり教育します。入学式もありません、卒業という概念もない時代 です。1人ひとりに字の読み書きを教えるのが目的ですから、その子1人ひとりの進み 具合に合わせて教えます。だから、子供のうちからバラバラなのです。江戸時代という と封建時代で、みんなが整然としてと思いがちですが全く逆です。徳川幕府にはそんな 人数はおりませんし、江戸100万をコントロールしている町奉行所とかには僅か290人、 プラスお奉行様2人、292人、警察官が12人しかいない町ですから。  いまとあまりにも違い過ぎてちょっと比べようがないのですが、私はあまりにもいま の日本人というのは依頼心が強過ぎると思います。あるところまで働いたら、あとは誰 かが見てくれるというのはできっこないのです。無から有が生ずるのは昔の社会主義ぐ らいのものでして、普通の世の中というのはやはり自分で会社を辞めて、どこからも給 料がもらえなくなって、好き好んでやっているわけですから別に文句を言うわけではあ りません。こうやって働いていますと、それこそ年齢がいくつになったらどうなんて関 係ないですよ。仕事をくださる方も、「石川さんは70を越したから仕事を出すのをやめ よう」などという編集者はいません。結局、年齢関係なしに、多分皆さんは私がいくつ かなどということは関係なしに仕事をくださると思います。隠居しようと思えばできま す、その程度の貯えはありますから。でも、やはり働いているほうが面白いですからね。 貧乏性なもので。やはり、もう少し、自営業者が増えるように世の中を持っていかない とますます社会経費がかかってしまう。「国が病」と言っているのですが、「国がしてく れる、国がしてくれる」というのは、自分が100円税金を払えば100円以上のことをし てもらえないのですから。多分、江戸時代から学ぶことがあるとすれば、この問題に関 してもうちょっと自営業者を増やしたほうがいいのではないか。私はもうすぐ死にます からいいですけれども、あまりにも勤め人が多過ぎるように思います。 ○萩原委員 萩原と申します。20代のアスリート、スポーツ代表として意見を述べたい と思います。  はじめに、私は競泳競技を長年やってきました。2004年に引退して、いまは生涯スポ ーツを通じて、水泳を生涯スポーツの一環で幼児からお年寄りの方、人生の先輩までい ろいろ指導を行っている最中です。さまざまな各地に出張という形で行っているのです が、やはりスポーツ、水泳がもとなので水泳の話になってしまうのですが、水泳をやっ ていらっしゃる方は本当に活き活きしていらっしゃる。年齢よりも見た目がものすごく 若くてびっくりするのがいつも思うことです。いま、人口が減少する、超高齢化社会に なるといった枠組みの中で、いちばん大事になってくるのは人々のコミュニケーション ではないかと感じています。  その中に、スポーツというものが中心にあってほしいと思っています。もちろん、人 生を楽しんで謳歌するためには元気な身体がなければいけないし、元気な楽しい気持も なければ豊かな生活は送れないと思っています。その中で健康、生きがい、教育、コミ ュニケーションといった要素がスポーツの中には含まれているなと思います。  特に、私は今年の2月に行われた、「東京マラソン」にも参加いたしました。市民の 方々が全国各地から来られていたのですが、全く交流がなかった70代、80代といった、 人生の先輩の方々とのコミュニケーションがその場で図れた。そして、いろいろな話を していると近所だったということがありました。そこからまた輪が広がって、さまざま な方の趣味であったり、そういった意味でどんどんコミュニケーションが広がっている のを感じています。  いろいろな、教育といった意味でも健康づくりでお年寄り、年齢が高い方、例えばお ばあ様が水泳に来られていて、それにつられてお子さんとかお孫さんを引き連れてプー ルに来られる方もたくさんいらっしゃいます。そこで私がよく目にするのは、お子さん やお孫さんは受付を素通りしていくのですが、おばあ様が「お願いします。今日も元気 で泳ぎますのでお願いします」という挨拶をされるのです。それをまた子供たちが見た りとか、孫が見て、親の背中を見て育つと言いますけれども、そういった教育もそこか ら生まれている。次の回になると、子供たちも「お願いします」、「ありがとうございま す」と、当たり前のことが当たり前に言える子供が育っているなと私自身すごく感じて います。  水泳が中心になってしまうのですが、いまマスターズといって、競泳ではなく、趣味 でやられている水泳で試合に出られる方の人数がものすごく増えていらっしゃいます。 けがをされて、60代、70代からリハビリで水泳を始めて、そこからたくさん泳いでい らっしゃる方がいるので、私も「マスターズ水泳で記録に挑戦してみたい」という方が いらっしゃる。日本の中で、マスターズの世界記録なども作っていらっしゃる方がいま 引っ張って、健康づくり、生きがいづくりに取り組んでいらっしゃるという姿も見まし た。  やはり、これから先、健康でいることという中で、僕は、私は健康保険を一度も使っ たことがないと言っていらっしゃる、60代、70代、80代の方もいらっしゃいます。そ ういった意味では、豊かな生活を送るためにスポーツが中心であってほしいと思います。  日本体育協会とか文部科学省での「ふれあい事業」といったものがあります。各地に 行って指導をしたりといった場を作っていただいています。できたら、いろいろなとこ ろが連携し合って情報交換をする中で、そういった事業が増えていくことが望ましいと 思っています。そこからまた健康、生きがい、コミュニケーションであったり、教育が 広がっていくのではないかと思います。 ○岡田委員 117キロから65キロに、1年間で52キロ落として本を出したのでおそら くここに呼ばれたのだろうと思います。メタボとかダイエット専門の色物担当というこ とになると思います。  ダイエットとかしか語れません。総合的な話は無理なので、単品オーダーのみお答え します。健康なら何とかなるし、長生きとか、ここから先どういうようにするのかとい うのは身体が動けば何とかなる。まず、国民の健康問題を何とかしましょう。そのため に、いちばん効率が良い方法が自分の体重コントロールを何とかしてもらいましょうと いうことだと思います。  これは日本だけの問題ではないのです。今世紀の特徴というのは、人類の歴史始まっ て以来、肥満人口が飢餓人口を超えてしまいました。いま、世界で飢餓で苦しんでいる 人は8億人しかいません。これはものすごい勢いで減っています。かつて40億人、飢 えで苦しんでいたのがいまは8億人、10年後には5億人になります。  これに対して、いま肥満人口は13億人います。10年後には25億人を超えると言わ れています。飢餓人口のいまの8億人も食糧が足りないからではなくて、食糧の分配問 題で苦しんでいるというのがほとんどです。1950年代、60年代の穀物の遺伝大改造、 「緑の革命」による成果です。  ぶっちゃけて言うと、いま、世界では食糧が不足していないのです。余っている。お まけに、世界的にみんなデブで苦しんでいるというのが実情なのです。先進国だけが太 っているのが悩みなのかとよく言われるのですが、そうでもないのです。発展途上国ほ ど肥満が多い。世界中を回っているカメラマンの方がおっしゃるのですが、これまでは 貧困国に行くとやせた子供たちの写真が取れるから絵になったのですが、いま貧乏な国 ほどデブが多いのです。メキシコなど、10年ぐらい前まで、統計値に現れない程度しか 糖尿病患者がいなかったのですが、3年前の調査では国民の13人に1人が糖尿病患者で す。これぐらい、大変な勢いで太っている人間が増えています。  これはもちろん、それぞれの国の医療費を圧迫し、おまけに身体が動かない人が増え てしまうわけですから成人病にかかる率も増える。そうすると、介護する人も大変にな ってくる。なぜ、貧乏な国なのに肥満が増えるのかというと、皆さんもご存じのとおり 食生活がどんどん変わっている。その国がもともと持っていたマーケットや市みたいな ものがどんどんつぶれて、アメリカ型のスーパーマーケットになり、そこで最初に売れ るのが糖分を多量に含んだジュースや清涼飲料水なのです。あと、たんぱくや植物性の 油脂などをとることによってどんどん肥満者が増えてくる。肥満している人間は身体が 動きにくいから、働ける職業も限られてくる、働けなくなるという、悪いスパイラルが どんどん悪くなってしまう。  この辺、日本はまだ間に合うので、何とか日本の国から始めていって、肥満人口をち ょっとずつ減らしていこうではないかというのが私の懇談会に呼ばれた理由だと思って います。次回以降、そういう話をしたいと思います。  かつて、日本は資源小国でした。資源が少ない国で、それが資源大国になろうとして、 よその国を覇権しようとして帝国化して失敗した。第二次大戦で負けてしまったわけで す。いま、若者人口が減って、老人人口が増えているから、少子化対策だと言って国民、 特に若者、子供の数を増やそうという、資源が少ないけれども資源を増やそうと同じよ うな、どこか外れているような気がします。資源が少なかった日本がどうやって戦後復 興したのかというと、工業国化していった。つまり、資源が多い国を利用して、自分た ちは資源が少ないのだけれどもそれを利用する国になって何とか国益を守ってきた。  若者小国にこれからなる日本がこれからどうするのかというと、子供を増やすのでは なく、若者大国をもう1回目指す。私の見当なのですが、6,000万人国家ぐらいの良い 数の国民数に軟着陸するのがいちばんいいのではないかと思います。つまり、老人大国 になろうということです。若者小国になってしまう日本がこれから健全な国民バランス で、健全な人口ピラミッドを作るには時間もないし、それをやっていたら大変なことに なる。国民に「子供を産め」ということになる。それはあまりにもいろいろな負担が多 過ぎるし、無理が多過ぎるし、いまの国民感情とも離れていると思います。何とか老人 大国となって、若者大国からうまいこと彼らに仕事をやらせて、何とかやっていける方 法を模索したほうがいいのではないか。6,000万人国家への軟着陸を考えたほうがいい のではないか。これは余談でした。 ○ダニエル・カール委員 いちばん最後に入りましたダニエル・カールです。肩書きが 「山形弁研究家」ですので年金の話とか、85歳の人生という話になりますと、私は見方 が複雑なのです。どちらかというと地方の社会をよく見てきているので、日本の都会と 日本の地方が全く別世界ということは言えないことはないと思います。先ほど、古賀委 員が言っていたと思うのですが、甘えの世界がまだ地方のほうにも強いかもしれない。 気が付かないうちに、日本の都会に住んでいる、特に若い人たちはどんどん個人主義の 文化になりつつある。年をとったら人に頼りたくない、自分の力で生きていきたいとい う点、もちろん皆さんご存じの点だと思います。  1つ、私の考えは根本的にポジィティブ・シンキング主義なんですよ。「人生85年の 時代」になるのでしたら、日本は既に理想に近い国になっていると思います。まず教育 制度や保育制度、特に教育制度ですけれども、学校に行きたければ行ける。すごく単純 なことなのですが、この素晴らしさはほかの国ではなかなか自慢できない。国によって は「あなたはお金がないから学校へ行けない」、「あなたは女の子だから学校に行けない」 という国は未だにたくさん残っているところに、日本はまず教育制度がすごく充実して いると思います。  また、交通網は世界一なのです。全国、どこへ行こうと思っても、自分で運転しなく ても行ける。このようなことが自慢できるのは世の中で日本しかないだろうと私は思っ ています。  また、治安が良い。私は犯罪大国アメリカから来ているのですが、やはりこれほど安 心して暮らせる国は世の中にないのです。27年間もこちらに暮らしているのですが、1 度も犯罪に遭ったこともないし、私の友だちや知り合いの中でも1度も遭っている人は いないのです。もちろん、たまには変な事件とかいろいろある、あってはならないよう な事件がある。でも、あるのだからがっかりしてはいけないのです。治安は先進国の中 でもこれが1つ自慢できる。日本で85歳まで生きていくためには、もう既に理想的な 社会になっているのです。  年金制度についても皆さんが最近ボロボロにいろいろ言われています。でも、年金が あるというか、年金制度そのものがあるということ自体が奇跡的なことではないですか。 もちろん、ところどこに調整しなければならないところがあります。でも、ネガティブ なところばかりを考えていて、舛添大臣をボコボコに言う人が出ていることが、非常に 不公平だと思っています。  既に理想に近いような国になりつつあるのだから、ならばどうするか、これから国と して何ができるのか。1つだけ日本に文句を言えるのが物価が高い、物が高い。とにか く、長生きするにはお金が足りなくなってしまうだろうという不安感が何よりです。  これが国としてできることの唯一と言ってもいいぐらいかもしれない。例えば、日本 人はもうちょっと遊びが足りない、もう少しバカンスを長くしたらいい、私の親父も大 体年に3回ぐらいクルージングに行っています。カリブ海をグルーッと回って。それを 半年前ぐらいからインターネットで調べて予約すると、大体1泊が50ドルぐらいなの です。普通のそこら辺のホテルよりはるかに安くて、船に乗ってメキシコとか、カリブ 海をいろいろ回っていて、食べ放題、スロットマシーンも入っているんですよ。船の上 に。とにかく楽しくて仕方がない。  そのような遊び上手なアメリカ人、遊び上手なフランス人、遊び上手なイタリア人と 比べようと思っても、国では何もできないんですよ。日本人も十人十色だから、自分の 遊びたいこと、自分のやりたいことがバラバラなのです。どうやってもっと遊ぶ国民に するか、国が手を出す問題ではない。そのうち、任せれば日本人は自分の遊びを見つけ るんだ。これほどよく歌う、これほどよく笑う国民は世の中にあまりないですよ。九州 とか行けば、ハミングしただけで突然みんな踊り出すんです。すごい国なのです。ハッ ピーなのです、日本は。その部分は任せればいい。国としてあまりできない、指導をす る必要はない。そのうち、じいちゃんやばあちゃんは自分の幸せを見つけることができ る。  ただ、国として何ができるか。1つは年金制度、みんなが安心感がありますようにシ ステムを強化するというのが1つです。あと、これからのことなのですが、私もビジネ スマンですから一言だけ言わせていただきます。規制緩和をもっともっとやってくださ い。新しいビジネスを立てるにはこれほど面倒くさい国というのは世の中にないと思い ました。ただ、だんだん良くなってきているんですよね。株式会社は1円で立てられる ようになりました。とても良い傾向なのですが、まだまだできることは山ほどあります。 聞かれたら答えますけれども、それぐらいです。 ○岩男座長 ありがとうございました。大変、いろいろなご意見が出たわけです。私も 一言言わせていただきたいと思います。  冒頭、清家委員が学生たちにいろいろご質問されて、日本の社会の姿を描かせておら れました。しかし、彼らが描く姿が基本的に日本人だけで日本社会を作っているという イメージになっている。それでは少子高齢社会日本の繁栄は維持できないのです。1つ、 いままでのお話の中で出てこなかったのは、日本が非常に多様化するというか、いろい ろな国のいろいろな文化的背景の人、いろいろな年齢の人が一緒に住む共生社会日本を どうやって作っていくのか。それを1つ考えた上で「85年」を考えていかなければいけ ない、それが1つあると思います。  考える上での基本的な姿勢、枠組みなどについては大変たくさんご指摘がありました。 次回からはもっと具体的なお話になるわけで、1つだけそういうことを考えながら申し 上げたいのは、日本の働き方というのは大体、大学の教師だったらずっと大学で教え、 定年退職後は別の大学で教える。ビジネスでも同じようなことでしょう。官僚であると、 関連のところに「天下り」するという問題が起こってくるわけです。  そこで、定年退職後急に新しいことをするというのは、そういう才能を持っている方 もありますが、なかなか難しい。才能を伸ばす機会をもっと早い時期から作るべきだと 思います。それを具体的に進めている国々はあるわけです。実はそれを「ジョブ・シェ ア」という形で実現可能にしています。つまり、1つの仕事を通常2人で分けるという 形をとる。例えば、私は月・火・水は大学の教師をするけれども、木・金は陶芸をやっ ている。大学を辞めたあとは陶芸のプロになる。人間は多様な才能をもっているに違い ないので、それを発見して、発見するだけでなく具体的に磨いてビジネスその他につな げていく。現在はその機会が与えられていないのを可能にするのがジョブ・シェアなの です。  このシェアは五分五分で分ける場合もありますし、それこそ7:3で分けてもいい。2 人で話し合いで決めていくことである。ジョブ・シェアを入れることは、私は雇用環境 その他、生き方を変えるずいぶん大きなとっかかりになると思っています。  例えば、イギリスにこれをどうやっているのかを見に行きました。私が訪ねていった お役所は、全員の職員名簿の右端に、例えば「月水金」に出勤する人は「MWF」と書 いてある。それが出勤日なのです。そして、オフィスにいないときはどこにいるかとい う連絡先がみんな書いてある。局長以下、ジョブ・シェアをしている人がこんなに多い のか。私は大変に驚いたわけです。ただ、これがどういうわけか、日本にちっとも入っ ていない。これが入れば、天下りの問題などはちゃんとしっかり受け皿ができてくると いうことだと思います。  もう1つは日本が高齢化で幸か不幸か世界のトップランナーであるから、世界が「日 本でああいうことをやっていることが素晴らしいアイデアだから、自分のところにも取 り込もう」という形で、国際貢献ができるようなことも少し考えていければと思ってい ます。例えば、1つはパラリンピックと同じような形で、「シニアも参加できるオリンピ ック」と言うのでしょうか、そういったスポーツの祭典みたいなものを国際的に作って いく。国体でも違うバージョンを考えることができると思います。何か励みになるよう な、仕組みづくりというものを次回からは考えて、具体的な環境づくりができればいい のかなと思っています。既に時間を超過しています。今後の進め方について、まだ課題 が残っていますので事務局からご説明いただきたいと思います。 ○小野政策統括官 資料4をご覧いただきたいと思います。これも事務局のアイデアと いうことでお聞きください。次回、冒頭申し上げたように、1月から2月にかけて、大 体3回程度開かせていただいてはどうか。そのやり方については、ご意見いただきたい と思います。何人かの委員の方からご発表いただきながら議論をするとか、そういう形 のやり方を取ったらどうかと思っています。  そういった議論を重ねた上で、3月の上旬ごろにそれまでの論点整理、取りまとめに 向けての素案の議論をいただき、3月の下旬ごろに取りまとめをいただければという段 取りを想定しています。このあり方についてはまたご意見をいただければと思います。 ○岩男座長 ただいまのご説明について、何かご意見がありますか。こういう形で進め ていってよろしいでしょうか。何人かの方にテーマに沿ってご発表いただき、それに基 づいて議論をするということにしたいと思います。                   (了承) ○岩男座長 それでは、そのように進めていきたいと思います。次回は1月の前半ごろ を目途に、日程調整をすることになっています。また、ご協力をお願いいたします。そ れから、発表をお願いする方についても事務局を通じて調整をさせていただきますので、 どうぞよろしくお願いいたします。  本日は実は時間をオーバーしているのですが、舛添大臣、何かご発言があれば最後に どうぞ。 ○舛添厚生労働大臣 皆さん、どうも本当にありがとうございました。最後の話は「ね んりんピック」というものが既にございます。私もこの前行きましたが、世界的にもそ ういうものがあります。また、今日のご意見を賜って、今後ともよろしくお願いいたし ます。ありがとうございました。 照会先 政策統括官付労働政策担当参事官室 調整係 内線7715 - 1 -