07/12/13 厚生科学審議会科学技術部会第4回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会議事録 厚生科学審議会科学技術部会 第4回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会 議事次第 ○ 日時 平成19年12月13日(木)15:00〜17:10 ○ 場所 経済産業省別館 10階 1020会議室 ○ 出席者 【委 員】 金澤委員長 廣橋委員長代理       飯沼委員 伊賀委員 井部委員 江里口委員 川上委員 北村委員 倉田委員        河野委員 小林委員 佐藤委員 永井委員 藤原委員 本田委員 前原委員  丸山委員 谷内委員 【事務局】 新木研究開発振興課長 林治験推進室長 佐藤課長補佐 【大臣官房厚生科学課】坂本企画官 ○ 議 事:1.厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針(案)について 2.臨床研究に関する倫理指針の運用状況に関する予備調査報告について   3.臨床研究に関する倫理指針の改正に向けた骨子(案)について 4.その他 ○ 配付資料   議事次第 座席表 委員名簿 資 料 1 第3回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会の主な意見 資 料 2 厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest)の管理に関する指針(案)について 資料4−1. 臨床研究に関する倫理指針(改正に向けた骨子案) 資料4−2. 臨床研究に関する倫理指針(改正後のイメージ案) 資 料 5 前回資料の修正について 資料6−1. 欧州における臨床研究振興整備の動向(川上委員提出) 資料6−2. MCR事前アンケート集計報告(臨床研究医の未来を語る会)(川上委員提出) 参考資料1 臨床研究に関連する指針等 参考資料2 平成18年度臨床研究の倫理等に関する特別研究報告書 参考資料3 ヘルシンキ宣言 参考資料4 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令 参考資料5 臨床研究に関する倫理指針とICH−GCP比較 参考資料6 臨床研究倫理指針の遵守状況チェックシート案 参考資料7 疫学研究に関する倫理指針(平成19年改正後) 参考資料8 各補償制度の概要に関する資料・約款等 参考資料9 外国調査報告(米国)(山本 精一郎 参考人 提出) 参考資料10 外国調査報告(欧州)(山本 晴子  参考人 提出) 参考資料11 米英仏の臨床研究制度比較のまとめ(案) 参考資料12 臨床研究からみた臨床研究・疫学研究両指針の範囲のイメージ(案) 参考資料13 疫学研究に関する倫理指針Q&A ○事務局(医政局研究開発振興課) 定刻となりましたので、第4回「厚生科学審議会科学技術部 会臨床研究の倫理指針に関する専門委員会」を始めさせていただきます。委員の先生方におかれま しては、ご多用中お集まりをいただきまして誠にありがとうございます。本日は、委員19名のう ち、現在13名の委員にご出席いただいておりますので、本会議は成立していることをご報告申し 上げます。本日の会議は公開としておりますのでご了承いただきたいと思います。  本日は、議題の1番目で、厚生科学研究費に関する利益相反の関係の議題がありますので、大臣 官房厚生科学課より坂本企画官にご出席をいただいております。以降の議事進行は金澤委員長にお 願いいたします。 ○金澤委員長 議事に入ります。最初に、配付資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 机上に配付しております資料は、議事次第、座席表、資料1から資料6まで用意させて いただきました。資料4、資料6は枝番の1.2.がありますのでご留意ください。参考資料として、 机上のハードファイルの中に収めてあるものが、資料1から資料13まであります。 ○金澤委員長 議題1に入ります。先ほどご紹介がありましたように、厚生労働科学研究における 利益相反に対する管理の指針についてです。これは、資料2に基づいてパブリックコメント中と聞 いております。厚生科学課の坂本さんから説明をお願いいたします。 ○坂本企画官 資料2に基づき、厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI) の管理に関する指針(案)についてご説明させていただきます。このものについては、厚生科学審 議会の科学技術部会の下に、厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会を設け、そち らが5回開催されました。その検討結果に基づき、現在この案でパブリックコメントを実施してい るものです。  資料2の1頁のI「目的」のところですが、公的研究であります厚生労働科学研究の公正性、信 頼性を確保するために、この利益相反というものについて適正に対応する必要があるということで、 この指針は、利益相反について、透明性が確保され、適正に管理されることを目的として策定しよ うとするものです。  定義の1のところで、利益相反にはいろいろな概念がありますが、本文の3行目から4行目にか けて、本指針では、基本的に「狭義の利益相反」の中の「個人としての利益相反」を中心に取り扱 うとしており、この指針の中では、これを「COI」と表現しております。  段落が変わりましてCOIの説明が書いてあります。「COIとは、具体的には、外部との経済的な 利益関係等によって、公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる、又は損なわれる のではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態をいう」ということで、「公平かつ適正な 判断が妨げられた状態としては、データの改ざん、特定企業の優遇、研究を中止すべきであるのに 継続する等の状態が考えられる」ということを書いております。  定義の2としては、経済的な利益関係について、これは「研究者が、自分が所属し研究を実施す る機関以外の機関との間で給与等を受け取るなどの関係を持つことをいう」ということが書いてあ ります。  定義の3はこの指針が対象とするところについてです。この指針は、基本的には厚生労働科学研 究を実施しようとする研究者、それから研究者が所属する機関を対象とするものです。「なお」書 のところにありますように、研究者と生計を一にする配偶者及び一親等の者(両親及び子ども)に ついても、厚生労働科学研究におけるCOIが想定される経済的な利益関係がある場合には、後ろの ほうで規定しておりますCOI委員会等における検討の対象としなければならないといった規定を 設けさせていただいております。  2頁のIII「基本的な考え方」のところです。COIという概念は世の中でまだよく知られている概 念では必ずしもないと思われますので、基本的な考え方のところは少し詳しく記載させていただい ております。  基本的な考え方として、厚生労働科学研究におきましても、大学や公的研究機関等における研究 成果を社会に還元するため、企業との共同研究や技術移転といった産学連携活動は適正に推進され るべきものであるということを最初の方に書いております。その一方で、複数の業務が実施される 場合には、関係する個人・機関それぞれの利益が衝突・相反する状態が生じ得るということ。これ は、活発に研究活動が行われ、産学連携活動が盛んになれば必然的・不可避的に発生するものであ るということを書いております。利益相反というものは、このように複数の業務があれば当然起こ り得るものということを前提として、その下にありますように、いささかでもCOIの状態にあると 考えられる研究者をすべて排除すれば、COIが問題になることはないのですが、その一方で、活発 に研究を行っている研究者を排除することになり、各種研究事業を有機的に連携してできるだけ早 く研究成果を社会に還元しようとする動きをも阻害することになるといったこと等から、適切では ないと考えられるということを書いております。  (注2)のところで、解説的に、特定のCOIそのものが問題であることは、米国における検討に おいてもまれであると言われているということを書いております。問題は、むしろCOIへの対応で あって、ほとんどの場合、COIが明らかにされないか、評価又は管理されない場合に問題が発生し ているとされているという記載をしております。そして、アメリカの大学のCOIの対応の例につい て、こちらで例示もさせていただいております。  2頁の真ん中より下の「ただし」のところで、さはさりながら、そういう前提を置いても、公的 研究である厚生労働科学研究の信頼性を確保していく上で、COIを適切に管理する必要があり、公 共の利益、それから研究の信頼性を確保するために必要と判断されるような場合には、研究代表者 の交代等の厳重な管理が必要な場合もあり得るということも記載しております。  「また」のところで、大学においては、教育・研究という学術機関としての責任と、産学連携活 動に伴い生じる個人が得る利益との衝突・相反を管理するための取組みが既に行われており、と書 いております。こちらにつきましては、平成18年3月に、臨床研究の利益相反ポリシー策定に関 するガイドラインが文部科学省の21世紀型産学官連携手法の構築に係るモデルプログラムのほう で策定されており、既にこのガイドラインに沿った取組みが行われている大学もあると承知してお りますので、そういったものとの整合性を取る必要があるということを記載しております。  COIの管理においては、被験者が不当な不利益を被らないことをまず第一に考える必要があると いうこと、それから、公的研究であります厚生労働科学研究と、研究者・企業間のCOIについて、 透明性の確保を基本として、インフォームド・コンセント等に十分留意しつつ、科学的な客観性を 保証するように行うべきと記載しております。  3頁に、この指針は意欲ある研究者が安心して研究に取り組めるよう環境を整備する趣旨で策定 するということを記載し、原則として何点か書いております。3番目のポツにありますように、外 部の方をCOI委員会等に参加させる等、外部の意見を取り入れるシステムを取り入れること、以下、 法律問題ではなく、社会的規範による問題提起となることに留意し、個人情報の保護を図りつつ、 透明性の確保を管理の基本とすること、研究者はCOIの管理に協力する責任があり、所属機関は COIの管理責任と説明責任があることを認識し、管理を行うこと、それから、客観性、公平性を損 なうという印象を社会に与えることがないように管理を行うこと、そういったことを原則として示 しております。  (注3)のところですが、この利益相反というものには、実際に弊害が生じていなくとも、弊害 が生じているかのごとく見られる状況が含まれるということを記載しております。このような状況 であるとの指摘がなされても的確に説明ができるよう、研究者及び所属機関が適切な対応を行う必 要があること、潜在的な可能性を適切に管理し、説明責任を果たす必要があるということを記載し ております。  そして、データの捏造や改ざん等の不正行為は別途の指針等で対応し、被験者の保護等に関して、 ヘルシンキ宣言や臨床研究に関する倫理指針等の遵守は当然と、当たり前のことですが、そういう ことも記載しております。  IVからは、所属機関の長の責務、それから研究者の責務ということです。所属機関の長はCOIの 管理に関する規定を策定しなければいけないこと、それらを周知しなければいけないということ、 それから、研究者はCOIの管理に誠実に協力するようにといった規定があります。  2番では、COI委員会を設けるように規定しております。こちらの設置についても、既にある委 員会にその任務を兼務させることができるとか、いろいろなパターンを考えて設置の規定を設けて おります。こちらの委員会のほうで、COIに関する審査・検討を行うことが一つのポイントになっ ています。  4頁では、外部委員を入れるということで、(注4)でどういう方が考えられるかという例示もさ せていただいております。  3のCOI委員会等への報告等というところで、経済的な利益関係の報告に関する記載もあります が、ここの金額については例示でして、先ほどご紹介した文部科学省のガイドラインの例示と整合 させた表現で例示しております。また、このCOI委員会等の意見等、厚生労働省等への報告といっ た規定を設けております。  5頁に、COIの管理に関しての管理手法についても7項目ほど例示しております。この上に書い てありますように、指導、管理の内容は、案件に応じて考えるものであって、これらに限られるも のではなく、案件によって適・不適があるということで、各COI委員会等において個別の研究課題、 及びCOIの状況等を踏まえて、適切な管理の方法を検討するようにということを記載しております。 また、適切な情報の開示等、透明性の確保には十分留意する必要があるということを記載しており ます。  関係書類の保存の義務については、5年間保存、それから、情報の保護の規定を設けております。 COIに関する説明責任として、各所属機関に説明責任があるということを記載し、機関の長は適切 に説明責任を果たせるよう、予め、十分な検討を行い、必要な措置を講じなければならないといっ た規定を設けております。  Vとして、厚生労働省による調査等という項目を設けております。6頁では、改善指導や改善指 導に対して適切に対応しなかった場合の措置に関する項目を設けております。  VI「その他」のところの1の経過措置ですが、機関の長は、できるだけ早期にCOI委員会を設置 するように努めなければならないとして、原則として平成22年度以降、厚生労働科学研究費補助 金の交付申請書提出前にCOI委員会を設置するように求める趣旨を記載しております。この辺につ きましては、COI委員会の設置等に関する大学等における整備状況がまだ必ずしも進んでいないよ うであるということも踏まえ、経過措置を設ける必要があるということから記載しております。  それから、今後、世の中の動きに応じて見直す必要があるということで、策定から5年以内に各 所属機関によるCOI委員会等の活動状況等を踏まえて見直しを行うという規定を設け、また、組織 としての利益相反といった課題もあるということをその他のところで書いております。  時間の関係もありまして簡単にご説明させていただきましたが、資料2に関しては以上です。 ○金澤委員長 機関の長というのは、いろいろな委員会を作らなければいけないので大変なのです けれども、そういうことのようであります。ご質問はないでしょうか。谷内先生から何かご意見が あるのでしたか。 ○谷内委員 私は、利益相反の管理に関するガイドラインを作る委員会にも参加させていただきま した。基本的には文科省のガイドラインと同じですけれども、違う点というか、より明確にした点 として、研究費との関連が出てきています。公的な研究費をいただいている所は、COI管理をちゃ んとしなければいけないという点と、それから機関の説明責任が明確にされています。この2点が より強調して記述されているところだと思います。それ以外は、基本的に文科省のガイドラインと 同じだと考えています。 ○金澤委員長 要するに厚労科研費で研究を行う場合はということで、この指針に沿った形で利益 相反を管理していくことになるかと思います。この委員会で、またこれについて議論することはよ ろしいですね。屋上屋を架さないことになりますが、それ以外の点をこの委員会では検討すること にいたします。 ○坂本企画官 本件につきましては、12月21日までパブリックコメントを受け付けておりますの で、もしお気づきの点等がございましたら、パブリックコメントのほうでも受け付けておりますと いうことを最後に申し添えさせていただきます。どうもありがとうございました。 ○金澤委員長 ありがとうございました。議題2に移ります。議題2は「臨床研究に関する倫理指 針の運用状況に関する予備調査報告について」です。前回、お2人の方に欧米の倫理審査の状況に ついて伺い、そして議論もしていただいたところです。今回は少し国内の状況について目を向けて みたいと思います。厚労省で、本年度から進めておられる医療機関に対する指針の運用状況に関す る予備調査をやっているようですので、その中間報告をお願いいたします。それに基づいて皆さん のご意見を伺いたいと思います。 ○事務局 資料3「臨床研究に関する倫理指針の運用状況に関する予備調査の報告について(案)」 ということです。こちらの予備調査については、本年度から指針の適切な遵守を現場に促すと いうことを目的とし、臨床研究に関する倫理指針の医療現場での運用状況というものを、実際に私 ども職員が現場の医療機関に出向き、実地調査にご協力をいただいているということです。とりあ えず、本日時点までに調査を行った5病院についてその中間的な取りまとめの概略をお示ししてお ります。  引き続きこういう調査については進めてまいりたいと思っておりますが、本日ご報告申し上げま すのは、2.の調査方法の概要にありますように、国公私立の5病院につき、指針の状況などについ ての調査を書面・実地等で行ったところです。  このやり方ですが、基本的に厚生労働科学研究費補助金を受けておられる研究事業をランダムと いいますか、そのうちの1つをピックアップし、それの研究計画書を基に、厚生労働省の担当官が 各施設を訪問するという形です。倫理審査委員会の事務局の方、そしてピックアップされた研究費 の研究を担当されている先生方、必要に応じて倫理審査委員会の委員長の先生にもお立ち会いをい ただき、倫理指針委員会の名簿、議事録等の書類の関係から、実際にその倫理審査委員会に、その 研究者が提出したような資料、また、その同意説明文書、その他実施するのに関連するような資料 について確認をさせていただいております。  この中で、実際に厚生労働科学研究費を応募してはいるのですけれども、まだ試験の実施に着手 していない所もありますので、着手していない部分については、一般的な倫理審査委員会の活動状 況ということで、それ以外の部分については、その研究課題により着目した形で、きちんとその対 応がなされているかといった部分の調査をしているところです。 具体的にはこの調査は8月から 実際に始めており、今回はそのうちスタートした最初の5病院ということでご報告申し上げます。 1頁めくりますと一覧表が付いています。倫理指針に係る運用状況ということで、概要をこちらで 説明しております。委員会の概要といいますか、どのような形でやっているか、その審議状況とい うこと。また、その施設内で指針を遵守するように積極的にどんな取組みをしているかというよう なところを大きく書いております。  まず個別の研究に着目しながら調査を行っているという部分もありますけれども、倫理審査委員 会での審議の状況、1回の課題数、そのうちの介入研究の数、どのぐらいの時間をかけているか。 また、その審議時間に対する認識、同意文書の保存方法、審査記録の保管について何らかの規定を 設けているか。そういうところは、この表の下のほうの部分に書いてありますけれども、我々が見 てきた5施設においては、1回の審査の中で、いわゆる医薬品を投与するとか、そういう介入的な 研究を行っているものの数というのが平均すると1〜3課題ぐらいです。その他の研究課題につい ては5〜10とか、10〜30ぐらいの課題をこなす中で、そういう介入研究の数をこなしているとい う状況です。1回に審議する時間は、いちばん多い所が2〜3時間ぐらい、また、1件当たりの審査 時間は20〜30分程度かけている所と、議題が多い所はもう少し少ないような時間でやっています。 審議時間が短いと感じているような施設もあるという状況です。  同意取得の関係も、少なくとも今回ピックアップさせていただいたような研究事業については、 適切にその同意もなされているというところも文書的に確認しておりますし、大体カルテと一緒に 保存されているようなケースでしたが、保存もしっかりしているという状況で、保管規定等を設け ているような機関もあったという状況でした。  委員会の概要ということで上に戻ります。倫理審査委員会の構成という部分ですが、見た目こう いうところが逆にわかりやすく取り上げられやすい部分です。委員の構成については概ねよろしい のですが、病院長が委員になっているようなケースが散見された部分はありますけれども、一般の 立場の委員の方を入れる努力も各所でされていました。いろいろな苦労をされてこういう施設の方、 学校関係の方、著述家を入れているような状況でしたが、努力されてきているということです。  補償の部分についてもいろいろなやり方はありますけれども、基本的に皆さん各施設ともそうい うものを説明するような努力をされています。あとは、有害事象の処理も経験されたような施設も あったということです。施設の積極的な取組みという部分では、有害事象報告ですとか、中止・中 断の報告、終了報告みたいなものについては、やはり研究者に手順等をわかりやすくしたほうがい いだろうということでいろいろな規定を整備している所とか、院内で研究者にお知らせするような 通知をする取組みといったこともされているということで、今回見てまいりました5施設について は比較的大きい医療機関から行っているという部分もありますけれども、わりと遵守されてきたの ではないかということです。 1頁に戻りまして、結果の概況が4番目にありますが、概ね科学性、 倫理性の観点から適切に議事録等も確認してまいりましたけれども審議がなされていて、全然審議 もしていないとか、同意も取っていないとか、そういうひどい状況というのは少なからずなかった ということです。  2頁の5番に課題があります。介入研究に対する審議時間というのをどのように重点化するかと いうことで、今回調査した医療機関の中では、あらかじめ倫理審査委員会の下に小委員会などを作 り、事前に前さばき的な部分をされて、より介入的なものに時間を費やそうというような取組みを されている所もありました。各倫理審査委員会からの意見として、この委員会を回していく上での 事務支援スタッフを充実させてほしいと。当専門委員会でもそういう意見はこれまでもいただいて おりますが、やはり同様のご指摘を受けてきました。あとは、よい方向で積極的な取組みというこ とで、いろいろ各種の運営規定等を整備し、研究者にとっても臨床研究の倫理指針の運用をやりや すいような努力も今後図っていくような必要もあるでしょう。  また、この倫理審査委員会の一般の委員の確保ということですが、この委員の確保というのは非 常に忙しい業務の中で、外部の方にも集まっていただいてというところで、非常に各倫理審査委員 会の事務局の方々もご苦労されているという状況です。こういう部分について関心を持っていただ いて、きちんと審議していただくような委員の確保というのも、各機関からの課題として承ってき ているところです。  最初の予備調査の結果としては以上ですが、これについても各先生方よりご意見をいただければ と思います。 ○金澤委員長 聞き落としたかもしれないのだけれども、どのぐらいの間隔で開かれているのでし ょうか。そのデータはないのですか。 ○事務局 これは、各医療機関ごと、月1回平均というのはこの5施設ともすべて共通でした。 ○金澤委員長 ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。以前に谷内さんでしたか、機関 の長になかなか理解していただけないという話もありましたけれども。 ○倉田委員 4番目の、一般の委員の確保のところで、非専門委員の人選について提案があります。 私も一般人ですので、この一般の方たちを確保することについてどういう方法が良いかを考えてみ ました。大前提として、医療に興味や関心がある方で、社会貢献をしようと思っている方にお願い したいと思っています。それと、いままで何回かの委員会の中で、本会議以外に小委員会や事前の 打合せとか、かなり時間を使うようなお話を伺っていますので、その時間的な拘束があるというこ とを理解してくださるような方。それから、審査会の運営に良識的であるということです。良識的 というと、単に会議の内容についてイエスマンであってはよくないと思いますし、逆に強い主張で 会の進行にブレーキをかけるような方はふさわしくないと思っております。  具体的にどんな方たちがと考えてみますと、被験者をよく知っているような人たちがいいのでは ないかと思います。例えば、患者会とか、地域で医療情報を発信している市民のグループ、病院ボ ランティア団体に所属している方や、以前に看護師、薬剤師、ヘルパーなどとして働いていた方、 又はいま休職中であるような方たちがいいのではないかと思います。そういう方たちを探すに当た っても、選ぶ側の組織を作っていかなければいけない、そこから始めなければいけないと思います。  例えば、患者会の調査をし、支援をしているような会もありますし、いろいろな財団で助成金を 出している所もたくさんありますが、その助成金を出すためのジャッジをしているような方、全国 の患者会リストを作っているような方、そのような方に入っていただいて、選ぶ側の組織をまず作 らなければいけないのではないかと思います。  その一般委員の選び方なのですが、先回に諸外国の話を聞きましたが、全くの公募でも人は集ま ってくるという話でした。公平性からいえば、全くの公募がいいとは思いますけれども、あまりに も大規模な人数の中から選んでいかなければならないことになります。そこで例えば、ある会の Webサイトができていて、その更新を適切にしているような、Webで見ればその会の内容がわかる ような所の方を対象にする。また、審議会の審議の内容がパソコンでやり取りができるような方を 考えます。そして、全員に志望動機や、小論文を書いていただいたりし、いくつかのスクリーニン グをしながら人選をしていくのがいいのではないかと思います。  その非専門家委員養成の会ができたときには登録制にして、恒常的に人材を育成するような教育 プログラム。委員としての資質のための研修もしていかなければならないと思っています。そのよ うにして、倫理審査委員会だけではなく、治験の審査会も同じようにそこで培った人材を派遣でき ればいいのではないかと思います。 ○金澤委員長 非常に建設的なご意見をありがとうございます。各地域で作らなければいけないか ら大変な面もあるかもしれませんね。地域的に遠いと大変です。 ○藤原委員 研究開発振興課にやっていただいた運用状況の調査を見てみますと、最初の倫理委員 会による承認のところはしっかりされているようなのですけれども、施設内の積極的取組みという ところでは、例えば中止、中断とか終了の報告のところは5施設中2施設となっています。倫理委 員会の機能として大事なのは、試験が進んでいるところでのモニタリングとか、その試験が終了後 に適切に行われていたか、ということを事後で検証する監査というところになると思うのですが、 その辺りはいかがだったのですか。 ○事務局 先生ご指摘のとおりです。この辺りも、倫理研究倫理指針にはきちんと報告をしなさい とか、中断の際にも報告をするようにということは書かれています。それを、院内では積極的に担 保するような取組みとして、そういう規定等を作るという辺りはこれからの課題だろうと思います。 そういう部分についても、また先生方からご意見をいただければと思います。 ○金澤委員長 現場にいないのにこういうことを言うのはあれですけれども、もしそういうことに ついて報告をしていない。確かに5つのうち2つは何も書いていないことになります。なぜそうな のか、というのを聞いてもらいたいのです。単なる見落としかもしれない、そんなことはどうでも いいと思っているかもしれない、いろいろなグレードがあると思うのです。むしろ、それをきちん と調査してきてほしいと思います。 ○新木課長(医政局研究開発振興課) 規定がないということで、やっていないということではな いということです。ここに規定があるというのは、特別な報告をするための様式とかいろいろなも のを決めているということで、これがないからといって、報告をしていないということではないの です。報告がよりやりやすくなるというか、院内でシステマティックにされているというような結 果とご理解いただいたほうが適切だと思います。  報告をしなければいけないのはそうなのですが、それのためにより詳細な報告のいろいろなもの を決めている所があったと。ほかの決めていない所はやっていないかというと、別にやっていない わけではないということです。 ○金澤委員長 それならいいです。厚労省としてもいろいろな調査をやるのだろうと思いますから、 そのときの参考のためにも是非ご意見をいただきたいと思います。 ○廣橋委員長代理 いま、藤原委員が指摘されたフォローアップというのは非常に大事だと思いま す。規定のことでこのような結果であったということですが、実際にフォローアップがどの程度行 われているか、それが十分であるかどうかということについては何か情報があるのでしょうか。 ○事務局 フォローアップの状況ですが、基本的にはその辺りについて、すべての研究について今 回の調査の中で終了報告がなされているかどうかということを我々は検証してきているわけでは ありません。厚生労働科学研究の中でピックアップされたものを中心に行ってきています。現にそ れはまだ研究として動いているものを中心に見ておりますので、ご指摘いただいたような点も、こ れから先、調査に行く所については少し見てこられるようにしていきたいと思っております。 ○井部委員 この委員会というのは、臨床研究に関する委員会なのですか。つまり、臨床倫理委員 会とか、倫理に関することを審議する委員会がIRB等、病院の中には何種類か設置されているので はないかと思います。この委員会はどのような名称、あるいはどういう内容を扱う委員会だったの でしょうか。 ○事務局 今回調査に行かせていただきました所は、治験審査委員会と言われている部分ではない 所がまず前提です。治験は治験で薬事法の法の下での仕組みがあります。治験の下でのIRBのほう には今回は行っておりません。  基本的には、臨床研究倫理指針、いまご審議いただいている指針に基づいて作っております倫理 審査委員会をベースに私どもは調査をさせていただいています。医療機関においては、例えば疫学 研究指針における倫理審査と同じ委員会でやっていたりという実態等がありますので、それがどの 指針によるかという部分については必ずしも明確でない部分がありますけれども、基本的にこの倫 理指針をご審議いただいているものに係る部分での委員会ということでお願いをして調査をさせ ていただいているということです。 ○井部委員 どんな名前の委員会なのかも調べておいていただくといいのではないかと思います。 指針それぞれに委員会を作っていないのではないかと思いますので、それも教えていただければと 思います。 ○事務局 承知いたしました。 ○佐藤委員 いまの井部先生のご質問に関連することなのですが、1回当たりの審査課題数の中に、 臨床研究指針と疫学研究指針の対象があるかと思うのです。ヒトゲノムの解析の審査というのはあ ったのでしょうか。 ○事務局 私どもが見てきた範囲の中では、ヒトゲノムの審査についてはありませんでした。 ○北村委員 基本的にこの5施設の倫理委員会の構成委員の職種別と、男女といったもの。それか ら委員長を外部者にしているのか、内部者にしているのか。この倫理規定に全部合っていたのです か。内容、職種別の委員、それから男女別です。 ○事務局 基本的に私どもが見てきた所で、概ね合っている、言ってみれば指針に書いてある構成、 例えば職業的な構成、女性を入れるという部分、一般の方を入れるという部分においては、概ね合 っていたということです。中身を見てみますと、ここにも書いてありますように、院長先生が委員 となっているようなケースもあり、ここは厳密にいうと指針には合っていない部分かもしれません が、そういう部分が散見されたということです。 ○北村委員 病院長は委員に入ってはいかんというのは指針にありましたかね。委員長は別だけれ ども、委員ですよ。 ○谷内委員 いま北村先生が言われたのは、治験のことだと思います。治験は、確かに病院長が受 託者なので委員になれませんが、臨床研究のほうは確かに明確に記述されていません。ただ、通常 はオブザーバーとして入っている場合が多いと思います。 ○丸山委員 それを狙った規定は存在しますので。臨床研究指針の場合は18頁で第3として倫理 委員会とありまして、その(2)の細則の3です。明確にはなっていないのですが、これはゲノム遺 伝子解析研究の指針をモデルにしたと思われるものです。「臨床研究機関の長など、審査対象とな る臨床研究に携わる者は、当該臨床研究に関する審議又は採決に参加してはならない」と。これは 「長が臨床研究に携わるものであるとき」と読めるので、その点は指針策定のミスだと思うのです が。  これのモデルとされたヒトゲノムの指針のほうでは「研究を行う機関の長,審査対象となる研究 の研究責任者及び研究担当者は,その審議又は採決に参加してはならない」とありますので、実質 上やはり長は委員にはなれないという趣旨の規定だと理解されます。その点、文言に難があるので すが。 ○北村委員 ヒトゲノムは、ヒトゲノムの47頁からのものですが、いままで倫理とは違った範囲 ですよね。 ○丸山委員 ヒトゲノムのほうは、通し頁の68頁から「倫理審査委員会の責務及び構成」とあり、 その(1)から(4)までの規定の細則として、69頁の細則2の「・」の2つ目に「研究を行う機 関の長、審査対象となる研究の研究責任者、研究担当者はその審議又は採決に参加してはならない」 というのがあり,それがモデルとなって、先ほど指摘しました、臨床研究倫理指針の第3の(2) の細則3が作られていると思うのです。ヒトゲノムの指針のほうの文章のような趣旨と理解すると、 長は委員にはなれないというふうになる。 ○北村委員 今回のときには、ゲノムの審議はなかったと先ほどおっしゃいましたので、こちらの ほうに従えば確かに。ただ、1つ国立高度医療センターが入っていますが、そこの施設の長は総長 になっていまして、病院長は参加できるのではないですか。その辺は微妙なところがあるのかもし れません。 ○丸山委員 やはり、ちょっと難しいと。規定の狙い、目的に照らすと、管理者が倫理委員会のメ ンバーであるというのはまずいのではないかと思います。 ○北村委員 病院長は、倫理委員会に入らないほうがいいということですか。 ○丸山委員 倫理委員会に、この研究計画の承認をしてよいかどうか諮問するという立場になると 思いますので、先ほどの坂本企画官の話と少し重なるのですが、本人が二重の立場になってしまう という点で、機関の長がメンバーというのはまずいと理解されます。 ○新木課長 確かに、いままでのうちの倫理指針ですと、その辺は読み方によって入ってもいいし、 読み方によっては入ってはまずいのではないかという読み方がありますので、この際ですのでその 辺を含めて見直しが必要かと思います。それから、ナショナルセンターの場合は確かに普通の病院 とは違う位置づけのところがありますので、個別に考えなければいけないのかと思われます。一律 にほかの病院とは組織形態が違うというところがあります。 ○金澤委員長 あるいは、ゲノムと同じレベルで考えなければいけないことかどうかという問題も あろうかと思います。ここは、ざっくばらんに考え直していいのではないですか。いままではこう だった、しかしこれからはこうしようでも構わないと思います。どうぞご意見をください。 ○北村委員 例えば、国立循環器病センターでは、病院長は倫理委員会に参加しておりますが、 委員長は務めておりません。 ○金澤委員長 つまり、何のためにこの倫理審査委員会で検討するのかという問題なのです。いま までは、自分たちの中だけで終始していたものを、ほかの方々に見ていただいて、ご意見をいただ くというのがポイントなのであって、自分ではない研究グループの人たちがいるということが良い とか悪いとかいろいろ考え方があろうかと思うのです。これは、ブレーキとアクセルの問題ですか ら、その辺もバランスを取りながらご意見をいただきたいと思います。抜かすわけにはいかないの で、やはり書かなければいけないことですから、ある程度ご意見をいただいておかないと。 ○本田委員 遅刻してきましたので、これまでの議論をきちんと聞いていないので大変恐縮なので すが、いまだけの話を聞いている限りでは、一般の方に信頼してもらう臨床研究というものを、い ままではどちらかというと実験台にされるというイメージを持っている国民がまだまだ多い中で、 信頼性をかっちりしていって、国民に理解していってもらう。それで一緒に進めていくということ をしていくためには、その辺は厳しくみていく。国立医療センターの場合はいろいろな違いがある のかもしれませんけれども、院長のような方が入っているというのはどうして、とちょっと思うと いうことはありますので、この際そこは分けたらどうでしょうか。 ○永井委員 もし何か間違った判断をした場合の院長の責任は重くなります。そういうこともあっ て、院長に委員会から答申するというような形をとっている病院が多いのではないかと思います。 もちろん、自らが外部から評価を受ける必要があるということと、もう1つは倫理委員会の判断の 重みということを考えた場合に院長は外れていたほうが実際は動きやすいのではないかと思うの です。ちなみに、私たちは入っていませんでした。 ○廣橋委員長代理 私も、国立高度専門医療センターの1つである国立がんセンターの個別の例を お話しますと、私たちの所は病院長は倫理審査委員会に入っていますし、座長を務めることもあり ます。このことについてはいま検討をしておりまして、どうあるべきかいまの倫理規定等も併せて 考えておりますし、この委員会でどういう方向になるのかということを見ながらいま検討しようと しているところです。  確かにナショナルセンターにはいろいろな組織があるのですけれども、やはり臨床研究の中心が 病院であるということについては同じだろうと思うのです。そこでの倫理審査ということになると、 やはり病院長をそのまま委員長という形で置くのはどうかと考えております。 ○金澤委員長 どうやら委員長にするのはちょっとまずい、というのは共通のご意見のようです。 委員として入ることを、永井さんがおっしゃるような危険性も含めて、あるいは本田さんがおっし ゃるような意味も含めて、それもやめるべきかどうかということでしょうね。そこを明確化するか どうかでしょう。 ○江里口委員 先ほど永井先生が言われたことというのは、いま日本では途上であって、何か問題 が起きたときには必ず病院長が責任を取るということがどうしても表に出ますと、それまで倫理委 員会を開いている途中の微妙なニュアンスを理解しないで、院長がそこで急に報告を受けたりなど したときの対処の仕方というのが非常にまずくなると、そういう意味では院長としては金澤先生が 言われるようにまずいかもしれません。その最初の研究からの流れというものを、倫理というより もその流れを一応知っておくことは必要なのではないか。先ほど倉田委員が言われましたけれども、 あまり知らない人が入るというのも、先ほどのブレーキとアクセルではないですけれども、少し流 れを知っていたほうが、日本のいまの医療の現状としてはいいのではないかという気が私は個人的 にしております。 ○谷内委員 倫理委員会から、承認・不承認の結果を貰う前に、病院長などの、この指針ですと臨 床研究機関の長は、自分の手元に研究計画の提出を受けて、それを見た上で倫理審査委員会に、承 認していいかどうか、機関の長としては許可していいかどうかの意見を求めるのですから、全く茅 の外に置かれるというわけではないと思います。その主体としての機関の長が研究計画の提出を受 けて、それをどうすべきかを倫理審査委員会に諮問するのが原則ですから、関与していないことは ないし、またその結果が突然伝えられるということにはならないのではないかと考えます。 ○永井委員 まさに、私たちもそのように運用していました。出席するのは別に構わないと思うの ですが、審議は院長を外した所で行っていく。ただ、そこで問題が起こったときには病院長が当然 関与していくということです。 ○事務局 1点参考までに事務局からご紹介させていただきます。先ほどご指摘のありました治験 のIRBはどのようになっているかというと、わりとここは明確に書いてあります。「実施医療機関 の長は、自らが設置する治験審査委員会に出席することはできるが、委員となること並びに議決に 参加することはできない」というルールになっておりますので、こういうものもご議論の参考にし ていただければと思います。 ○金澤委員長 いまのは非常に参考になります。問題は、治験の委員会と、この臨床研究委員会と の位置づけといいますか、内容の問題をほぼ同等と見るのならばそれでもいいという考え方もあろ うかと思います。 ○新木課長 治験のほうは、病院長が治験の契約をする立場にありますので、そこは臨床研究とは 違うのかと思います。 ○金澤委員長 そういう議論をしてほしいのです。大体病院長の所に書類は上がりますので、そう いう意味では同じと考えることもできる。これを決めなくてはいけないのですが、その辺はどうで しょうか。 ○本田委員 たぶん、私が遅れたせいで先ほども議論はあったことだと思うのですけれども、関係 のない、一般のあまりわからない人を委員に入れるとブレーキになるのではないかという意見があ ったというお話でしたが、それは根本的に違うと思っています。確かに、全くわからないままそこ に入れても困るのですけれども、それはわからない人に、こういう仕組みでということを教育する システムをちゃんと持って、そういう一般の感覚を持った人を入れるということを大事にしないと、 いま、まさにこの検討会のことも、臨床研究とか治験を含めた全般のことに関し、市民団体とか国 会議員の先生方が興味を持っていろいろな議論を外でいっぱいされている現実がある中で、それは どうでしょうかという意見も聞こえてきています。そういう感覚を是非持っていただいて、そうい う人が議論ができるように支援するシステムをどうしようかという議論にしていただければと思 って、ちょっと場違いですけれども発言させていただきました。 ○金澤委員長 要するに、そういう方々の意見を何らかの形で取り入れるシステムが必要なのだろ うと思います。それは、委員になるかどうかとか、そういう問題は残ります。それも含めていろい ろ議論があったのだと思います。 ○谷内委員 いまの一般の方々のことに関して、治験ではいわゆる医学部だったら、医学部以外の、 いわゆる他研究科とか、他学部の先生は一応外部委員として扱うという局長通知があります。臨床 研究に関してはそのような通知や定義がないのです。私たちの所では完全に外部の人を入れていま すけれども、それ以外に文学部とか法学部の先生方にも入っていただいています。これを外部委員 として扱うかというのは倫理規定のほうには書いていないのです。可能であれば、その辺も含めて 外部委員の定義を考えていただくとありがたいのですが。当然一般の外部委員も必要ですが、部局 の違う方も外部委員として扱っていただけるかどうかを是非ご検討いただきたいと思います。私の 理解では、外部の委員に関して、治験では、総合大学の場合に関しては部局が違う方を外部委員と して認めるという局長通知があると思います。外部委員の定義に関して、臨床研究の倫理指針でも ご検討いただきたいと思います。 ○金澤委員長 いかがでしょうか。 ○伊賀委員 1点は外部の委員で入られる方は、特に倫理的な面を、別な立場で、専門だけで判断 するのではなくて、それで私は絶対必要だと思います。むしろ入って、きちんとその面で意見を出 していただくのが必要かということで、外部の方で、特にいまおっしゃったように一般の方など、 判断される場面が違う部分をきちんと見ていただければいいのかというのが1点です。  もう1点は、病院長は、私もやはりこれは外れるべきだなと思います。やはり責任者としての立 場を持っておられるので、病院で行われるわけですね。したがって、それはやはりそこの長たる者 の出席は可能であるだろうし、逆に言うと、微妙な流れは知らないほうがいいのかと。私は個人的 に、逆に判断されるときに、いろいろな先生方の微妙な意見をみんな知ってしまうと、逆に判断が 鈍るのではないかというのが私の場合は心情なのです。むしろ、全体の流れを知っておられて、判 断はきちんとされる立場だというように理解しています。 ○北村委員 我々の所では、委員長は外部の方です。臨床研究でいろいろ問題が生じた場合の責任 は、病院長がとります。その人が審議の経過を全く知らずに、委員会で決められたことが承認を受 けて臨床研究をやった場合に、委員長はその書類をしっかり読んで全部を把握しないと、問題が生 じたときの対応だけをやらせるのはやはり難しさもあるように思いますし、むしろ現実問題として は、その責任が自分に来ますので、最も厳しくてやり直してほしいということを言うのが、むしろ 病院長ですね。  外部の委員がたくさんおられますと、微妙なところの影響があるのかもしれませんが、自分の責 任となる人が抜け出てしまっているということであれば、その書類を全部、あの書類は膨大ですか らね。1回にこのぐらいあるんですよ。これを全部自分で見直せと言って、その責任をとりなさい というのは、現実、酷だなと思いますけれどもね。「発言」しないというのも、治験の場合はいい ですが、やはり参加させて、流れを十分に把握させて、責任を取る立場にあるのだろということを 自覚してもらうほうが、安全ではないかと思いますけれども。 ○金澤委員長 これは非常に大事な議論だと思います。それで、いまこのままで意見を決めるわけ にいかないと思います。したがって、これは継続、いいですね。非常に大事なことですので、また 改めて議論をしていただくことにします。改正に向けた骨子の議題でも、いまのポイントは議論し ていただくことになりますが、次に議題3の「臨床研究に関する倫理指針の改正に向けた骨子(案)」 です。前回は、主な論点としていろいろご意見をいただいたわけですが、今回は前回のご議論を踏 まえた上で、事務局が少し肉付けをいたしました。骨に肉が少し付きましたので、それを紹介して もらうことにします。 ○事務局 議題3の骨子についてですが、資料4-(1)が本日、事務局のほうで整理をした骨子案で す。この骨子案に入る前に、前回の「論点に対する意見」ということで、少し整理をするため資料 1です。これは前回の専門委員会の主な意見ということで、2枚ほどにまとめたものです。前回の ご意見という部分では、主に倫理審査委員会のあり方についてのご意見を多くいただいており、(1) から(5)まであります。  (1)倫理審査委員会の活動のチェックということで、アメリカの例を参考に、何らか研究費の 支給と倫理審査委員会のチェックを連動したほうがいいのではないかというご意見。 (2)スタ ッフ、教育という点では、大多数の方から、倫理審査委員会の委員に対する教育システムなどとい ったものをサポートするような体制を、何らか設けるべきなのではないかというご意見がありまし た。  (3)審議の質的確保という部分においては、英国のようなSOPを倫理審査委員会に作ってはど うかと。これは先ほどの廣橋先生、藤原先生のご指摘とも関係しますが、SOPというのは日本語で 言えば規定みたいなものですので、そういうものを作ったほうがいいのではないかという部分です。 あと、当局による指導等も必要なのではないかと。学会等のご協力も当然必要でしょうし、それな りに倫理審査委員会を回していくには費用が必要であって、そういうサポートをするための予算措 置的なものも必要ではないかというご意見をいただいております。  (4)は指針の担保をどのようにしていくかということで、先ほどの(1)でもご紹介したように、 アメリカのように研究費をベースに、研究費でのペナルティを与えるようなやり方もあるのではな いかというご意見。しっかりやっていただくためにも、倫理審査委員会の運営経費に必要な経費が 賄えるような格好にするべきだと。  次頁ですが、そういうことで、研究費との結び付きという部分については、前回も多数の委員か らご指摘をしていただいているところです。特に臨床研究の現場でのマナーを守っていただくとい う点は非常に重要なポイントだと思いますが、そういう部分があります。 (5)多施設での臨床 研究をやる上で、例えば地域レベルとか、施設ごとではない形の倫理審査委員会、多くの施設で活 用できる、多施設共同研究の場合に使えるようなものを設置する必要があるのではないか、利用で きるようにする必要があるのではないかというご意見がありました。  2のインフォームド・コンセント(被験者に対する保護)という部分ですが、インフォームド・ コンセントのやり方という部分については、研究のタイプやその施設でどういう研究をやるかとい う部分、個々にいろいろと対応ができるような選択肢があったほうがいいとか、タイプごとにメリ ハリのあるインフォームド・コンセントの規定にしてほしいというご意見をいただいております。  3、研究計画の公開ですが、臨床研究に関するデータベースなど、既にあるものがありますので、 ポータル・サイトなども書いてありますが、データベースを通じた公開を推進してほしいと。  4、疫学指針との整合性という部分で、これまで何度もご意見をいただいておりますが、観察研 究における疫学指針との整合性という部分に不整合ができることによって、現場の混乱をなくすよ うにしてほしいということです。あとは移植医療そのものについての取扱い等々のお話、薬事規制 との整合性といいますか、少なくとも臨床研究指針のあり方を薬事法の治験と混同しないようにと いう意見もありましたが、そういう他制度との関連という部分についても、ご指摘をいただいてお ります。  前回の論点に対して、こういうご指摘もいただいたことを踏まえて、今回提出しているのが資料 4-(1)です。1の臨床研究の現状および今後の在り方については、説明を割愛します。  2の臨床研究の形態と倫理指針の範囲については、前回の論点の資料と同様ですが、種類、観察、 介入といったリスクに応じた形での対応、また諸外国との整合性の部分、疫学申請との整合性を考 慮に入れた上で、今後の方向ということで、(2)に書いてあります。被験者のリスクを考慮し、介 入研究、特に医薬品・医療機器の使用について、何らか上乗せ規定を設けるべきではないか。「被 験者へのリスクを考慮し」という部分かと思います。(2)観察研究および非介入の試験については、 疫学指針との整合性をとった見直しを行う。(3)医薬品・医療機器の承認の範囲内の使用であって、 かつランダム化、割付等を行わないような研究、これは観察研究・非介入研究として分類されるも のですが、そういう部分ではきちんと明確化をしたほうがいいのではないか。  3の臨床研究の信頼性の向上、これは特に倫理審査委員会の部分ですが、現状については本日も 先ほどの前の議題で紹介した部分もありますが、運営等の透明性の論点、質的に十分な審議ができ るか、多施設共同研究での場合のこと、事務の人的資源、教育の機会の論点、被験者等への情報提 供などというところがあります。(2)今後の検討の方向においては、諸外国並みの倫理審査委員会 に関する監督、質的向上策を行うべきではないか。例えばということで、まずは倫理審査委員会に 自己点検をやっていただく、そこを充実させるというもの。あとは外部的なチェックのやり方をど のようにするかという点を書き込んでいく。倫理審査委員の名簿、開催状況等についての公表など、 そういう透明性の向上も、併せて図っていく必要があるのではないかという点。(2)としては、この 活動をいかに支援していくかというもの。(3)ですが、施設外の倫理審査委員会の利用を認めるべき と。ここは薬事法のGCPにおいても、施設外の倫理審査委員会の利用を認める形での改正を行うと いうことですので、そういった部分はこちらのほうでも取り入れていってよろしいのではないかと いう議論です。  2頁ですが、倫理審査委員会に対する研修、情報提供を充実させるべきという辺りです。4番目 は、被験者の健康被害の防止および発生時の対応ということで、健康被害の防止という点で、何か 起こってからというよりは、むしろ防止的な部分をきちんと書いたほうがいいのではないかという ご意見もいただいておりましたが、そういう表題にしております。被験者の安全性確保の現状とい うことで、介入研究の計画の透明性を確保してくこと、有害事象等の取扱いをきちんとやっていた だくということ。やはり何か起こった場合の補償の水準というものを治験と比べてどうかといった ご指摘があるわけです。  今後の検討の方向としては、臨床研究計画の登録データベースとありますが、こういったものに 登録をする。また、それによる計画の透明性、公表に努めるべきということ。有害事象の処理につ いて、行政に報告をする、院内において、きちんと倫理審査委員会での対応をやっていただく。そ ういった研究者、また機関の責務を明確にする。また、先ほどの倫理審査委員会における部分での 規定の問題、SOP等といった部分とも関連してくると思うのですが、そういった部分を明確化した ほうがいいのではないか。あとは臨床研究、特に医薬品・医療機器の介入研究に関しては、薬事法 のGCPとの整合という部分もありますが、何らかの補償措置、損害保険等といったものを明記すべ きではないか。  5番目は実効性の担保ということで、これも前回以来ご指摘をいただいていますが、実効性の担 保として、改善指導等を行ってもうまくいかない場合については、研究費の不支給など、研究費と いう部分でのペナルティは1つ効果があるものとして検討すべきではないか。また、こういう指針 の周知の方法という部分についても、検討すべきではないかということで、いくつか具体的な論点 が挙がっております。  いまの骨子を少しビジュアルにわかりやすく整理したものが資料4-(2)で、横紙の「臨床研究に 関する倫理指針改正後のイメージ(案)」をお示しています。先ほどのように介入研究は少し厳し くというか、上乗せ的にしたほうがいいのではないかという部分と、観察研究については疫学との 整合性をとったほうがと、濃淡がある部分がありますので、(1)、(2)、(3)、(4)という研究の大きな性 質ごとに、少し表を区分しております。倫理審査委員会のチェック機能等については、基本的にす べてに共通するものとして横にベタッと書いてありますが、そういう格好です。  研究計画の透明性という部分については、現在でも臨床研究登録のデータベース、介入研究とい うことで、いろいろとシステムが動いておりますので、この介入研究までの範囲については登録と 公表に努めていくということです。同意手続、院内手続、その他については、観察研究については 疫学指針とより整合性がとれたものとしていくという部分。また、介入研究においては、特に有害 事象等についての対応責任、対応の責務というものの明確化、また行政への報告、処理結果がどう であったかという部分を透明にするような形にする、補償措置を明確にするという部分が上乗せ的 に入ってくると、そういうイメージでこの表はできております。  あとは全体的に改善指導を是正しない場合の研究費のペナルティということで、具体的に何か措 置を書く場合、指針外になるかと思いますが、いろいろな研究費等の法の規定で担保するとか、研 究費等の契約の中にこういったものを入れていく。そういう努力をしていくということで、ちょっ と色を変えてありますが、右のほうに矢印で延ばしたような格好の図になっております。今回こう いう概略的な考え方を示させていただいておりますので、またこれを具体的に書き込んでいく上で、 こういうところをもう少し書いたほうがいいのではないかなど、お気付きの点、ご意見がありまし たら、是非この場でご審議いただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○金澤委員長 骨子の説明をしてもらったわけですが、前原委員から同意について、インフォーム ド・コンセントのご意見をお願いします。 ○前原委員 前回もお話したのですが、外科の領域では、特に観察研究が非常に重要になってくる わけですが、資料4-(2)のイメージ図では、観察研究の、特にインフォームド・コンセントの所は、 疫学研究指針との整合性が示されており、既に疫学研究の指針は公表されているということです。 観察研究の中で、人体から採取された試料を用いる場合のインフォームド・コンセントが非常に重 要な点になります。  前回も例として申し上げたような、腸閉塞で腸が破れて、穿孔で手術をしたという症例を経験し ます。その患者は急患で運ばれて、生死にかかわる状況で手術をするわけです。腸の穿孔部を切除 して、吻合して手術を終わるわけです。なぜ穴があいたかという原因として、結局調べてみると悪 性リンパ腫が見つかった症例です。  実際調べてみると、私どもの科でそういう症例が2年間に1例ぐらいあって、そういう症例はた とえば10年、20年間をまとめて、5例なり10例として臨床研究、観察研究として報告することに なります。その時、悪性リンパ腫の遺伝子検査をすることになります。そういった場合、事前の同 意書取得、つまり手術の前に組織採取について詳細に説明することは、命にかかわる状況で組織を 使って臨床研究をしますと言うことは、まず現実的に不可能です。患者もそういうものに対して同 意はしづらいと思います。  そして、手術が終わって同意といっても、その組織がリンパ腫であることがわかった段階では、 もう既に患者は退院をされているという状況で、そこでインフォームド・コンセントをもらうのは 容易ではありません。そしてまた、さらには過去の例に遡ってといった場合には、患者が亡くなっ ている場合もあります。あるいは、いまのシステムでは、もう家族との連絡はとれないという場合 では、結局インフォームド・コンセントをとることは不可能であるという状況もあり得るわけです。 そういった場合に組織検体だけが残ってしまうことになります。現時点では稀な貴重な症例での遺 伝子検査では、倫理委員会で承認いただいて、研究しています。  現実的には、Aという遺伝子、Bという遺伝子、Cという遺伝子、そしてまた時代が変われば、 さらにもっといろいろな遺伝子が明らかになってきて、振り返って検索をすることになるわけです。 そういった場合に、臨床の場面では、包括同意といいますか、手術の同意のときにいろいろな組織 が採取された場合の検索の方法として、包括的にいろいろなものを調べるという同意が現実的だと 思いますし、それでないと現実として研究は不可能だと思います。  そこで、疫学研究指針を見ると、観察研究を行う場合、人体から採取された試料を用いる場合の 規定がされておりますが、必ずインフォームド・コンセントを取得すること。そして、包括同意は 原則的には認められていないということですので、その整合性となると、非常にブレーキ面といい ますか、私どもからしますとそういう面が強調されて、実際研究ができないという印象を受けまし た。以上です。 ○金澤委員長 前原先生からまたあとでご意見を伺うようですが、その前に皆さんからいまのこと に関して、何かご意見はありますか。それでは、また同意の話が続くようですので、あとでご意見 をいただくことにしましょう。丸山先生どうぞ。 ○丸山委員 いまの前原先生のケースは、疫学研究倫理指針のインフォームド・コンセントの所の 規定ではなくて、そのあとの固いバインダーの通し頁の42頁の「既存試料の利用」の規定が適用 されるように思います。その場合、42頁の上から2行目の(2)「人体から採取された試料の利用」 で、本則は「研究者等は、研究開始前に人体から採取された試料を利用する場合には、研究開始時 までに研究対象者から試料の利用に係る同意を受け、及び当該同意に関する記録を作成することを 原則とする」。原則は同意をいただくということなのですが、それが難しい場合については、その 下の(1)で「当該試料を匿名化する」ということで、追跡情報が不要な場合であれば、匿名化で対応 できるのですが、新たな追跡情報もその試料の情報として追加したいということであれば、(3)で「当 該試料が(1)および(2)に該当しない場合においては、下の要件、3つあるものを満たしていることが 必要」ということです。  1つが「当該疫学研究の実施について、情報を公開していること」です。個人情報保護法の改正 の際に、その前の「資料の利用目的を含む」という言葉が入ったのですが、基本的には研究につい ての情報公開です。2つ目の要件として、「研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否で きるようにすること」。平たく言うと、積極的な同意は要らないのですが、本人、あるいは遺族等 がやめてほしいとおっしゃられれば、その拒否権は認めましょうと。3つ目は、「公衆衛生の向上 のために特に必要がある場合であって、研究対象者等の同意を得ることが困難であること」という ことで、たぶんこの要件は満たすことはできることになるかと思います。  疫学研究倫理指針の改訂の過程において、包括同意で試料の利用を認めるような体制を作ること について議論もされたのですが、その点については現時点ではそこまでは必要ないということにな りました。ですから、一般論としては前原先生のご意見とは異なる立場をとっているのですが、既 存試料の利用の際に、特に同意の要件を緩和することを通して、規定の仕方から言うと、バックド アから試料を利用しやすくしているというので、包括同意でするのとどちらがいいかというと、個 人的には、私はあらかじめ患者、あるいは協力者から同意を得ておくほうが、説明という点でもよ ろしいのではないかと思うのですが・・。その点については、またこの委員会で検討されることが あると思いますが、とりあえず疫学研究倫理指針でも、既存試料の利用という形で可能、というこ とになっております。 ○金澤委員長 丸山先生のご意見というのは、いまのことですか。 ○丸山委員 いや、個人的な意見としては、前原先生の一般的なご意見と同じで、診療申込時に自 分から出た体液、臓器など、通常捨てられるものについて、医療機関あるいはその医療機関と直接 関係のある大学等の研究機関が研究上必要とされる場合については、治療に必要な摘除以外のもの はされては困るのですが、治療に必要なものとしてなされた摘除によって生じたサンプルについて は、研究利用を認めますという、いわゆる包括同意のシステムをとるほうが、そして包括同意を患 者から得ておいて、あとは放たらかしというのではちょっとまずくて、当該病院なり、当該大学で 包括同意に得られた試料で、どういう研究がなされているか、情報公開をしていただいたら、その ほうが患者のほうとしても、自分の体から治療のために取られた臓器組織等が研究に活用されて、 このように使われているのだなということを認識してもらえるので、システムとしたら臓器や組織 などを取ってから倫理委員会の承認でOKとするよりも、あらかじめ患者等の了解を得ておくほう がよいのではないかと思います。  国立がんセンターとか、いくつかの大学病院等ではそのシステムの導入を始める計画とか、始め られたなどというように伺いますので、そちらのほうがいいのではないかと、個人的には思うとい うことはあります。 ○廣橋委員長代理 いまの丸山先生の意見に賛成で、まだ将来どんな研究に使われるかわからない けれども、いまの段階で診療の過程で得られたような、あるいはそのままだったら廃棄されてしま うような試料を有効に活用して、研究を進めることに同意していただいておくということは非常に 意味があることだと思っています。それを進めてきているのですが、いまのこの倫理規定の解釈で は、それに加えて既採取試料であるという要件の所を読んで、併せてそれで倫理審査委員会で審査 していただいているという状況です。  今回も、本当はそこの問題を正面からもう1回議論したかったのですが、疫学研究の倫理指針は 既に確定しているのですね。そことまたこちらのその部分だけ臨床の倫理規定がぶつかると非常に 難しいことになるので、そこをうまく調整していただきたいと思っております。 ○金澤委員長 普通は、いま先生が説明されたようなものを包括的な同意と言っているのだけれど。 ○小林委員 実はうちの大学で、がんの患者から肝臓や小腸を取って、いま問題になっている薬物 の遺伝子多型などを調べています。そのときには、事前に外科の先生と一緒になって、あるいは本 当はコーディネーターがやるのですが、事前に同意を取る。ただ、その時は何を調べるか、細かい ところまではわからない場合もあるのです。こういうものを調べますということは言えますが、細 かいところは言えない。そうなってくるとそれは包括同意だろうと言われてしまうと包括になって しまうのです。  いま先生方がおっしゃっているように、治療のために取るのか、研究のために取るのかとなると、 誤解が生じて困るので、ちょっと面倒くさいのですが、必ず摘出した臓器を写真に撮って、「ここ を取りましたよ。ここを研究に使いますよ」ということまでやっているのです。なおかつ、退院す るときに、「やはりこれを研究に使っていいですか」ということを再確認しているのです。このよ うなやり方で、ほとんどノーと言う方はいらっしゃらない。  しかしこのやり方ではすごく手間がかかる。そのために何人もの人がいるということになってき て、結構大変なことになります。ですから、原則的にはこういう形でいいと思いますので、やはり やりやすくしないといけないといつも思っております。 ○前原委員 疫学倫理指針を見ると、いまの議論では通らないようにも理解できるわけですね。現 場では、いまのようなお話で進んでいると思うのですが、ここを今回の臨床試験の改定ではもう少 しわかりやすく、文章化していただくということで、その場合に疫学研究との整合性をとっていた だいてということを、強く望むわけです。そして、いま丸山先生からお話いただいた42頁の当該 試料の場合ですが、現実にこれを見ると、例えばアには(2)の(3)で、当該試料が1および2に該 当しない場合が現実的なところだろうと思うのです。そうすると、以下の条件を満たすということ は、アもイもウも満たすことになるわけですね。 ○丸山委員 その3つの要件すべてということです。 ○前原委員 そうすると、アという場合に、「情報を公開」ということのこの「公開」の意味合い は、どういうものをもって公開ということになるのでしょうか。 ○丸山委員 作りますときは、当該病院、あるいは大学の研究室のWebなり、あるいは当該教室の 担当診療科の待合いでの掲示などを考えておりましたが。 ○前原委員 わかりました。イの場合に、拒否できるようにするということとなりますが、先ほど 申し上げましたように、患者が亡くなられて、家族とも連絡がとれないことも起こり得るというこ とですが、そういう場合には拒否できるかどうかすらわからないという現実がある。 ○丸山委員 これは拒否がなければ同意があったものと考える、扱うという趣旨なのですが。 ○前原委員 それは理解はできるのですが、非常にわかりにくいように思います。 ○金澤委員長 わかりにくい文章なのですよね。前からお話を伺っているのですが、丸山先生は非 常によく理解してくださっているのですよ。文章化すると、こういうことになるのですね。だから、 現場はわからないわけですよ。 ○前原委員 そうですね。いまのこれを見るともう全然使えないような印象を受けます。 ○金澤委員長 そこがこの倫理指針としての1つの問題なのです。 ○本田委員 素人の質問で恐縮なのですが、この「当該試料が匿名化されている場合」というのは、 私も大して問題ないと感じているのです。私自身、ある公的病院で血液検査をしますね。ある程度 採って、それを全部捨てないで何かのときに使うように、何かというのはわからないけれどもとい う、○×付け。「はい」と渡されて、つい「はい」と○を付けたのですが、そういうのが実際にあ ったりするときに、あとでフッと思ったのですが、匿名化されたり、もしも亡くなってしまった場 合等というのはちょっと違うかもしれませんが、私がずっとまだ生きていて、それが私だというこ とがちゃんとわかっていて、ある遺伝子等、いろいろな検査をしていて、その場合に私がほかに絶 対知られたくないような、例えば難病の何かの原因がわかってきてなどという場合でも、私だとい うことを追っているわけですよね。そういうのが漏れることはないと理解していいのですか。 ○金澤委員長 どなたかお答えいただけますか。ゲノムの話とは限らないですね。ただ、1つゲノ ムを例にして。 ○本田委員 ちょっとわかってしまったと。 ○金澤委員長 例にしてもいいのですか。 ○本田委員 はい。 ○金澤委員長 だったら、それは連結可能か、不可能かということで、まずは区別しますね。 ○本田委員 何かの役に立つように使ってもらうことには全然賛成なのです。ただ、そういうとこ ろの担保だけが不安だと、ちょっと自分のことをと思ったときに思ったので。 ○北村委員 遺伝子についてですか。 ○本田委員 例えば。 ○北村委員 それは78頁のB群試料に入ってくるのではないですか。遺伝子は、また別のガイド ラインがありますから、そのガイドラインで遺伝子の場合にはちゃんと明確に、何の遺伝子を調べ ますということが記載していない限り、研究所は使ってはならないのです。ただ、連結不可能匿名 化があって、誰も何の損害も受けないということがあったり、倫理委員会がそれを認めて何か除外 項目があれば良いのかもしれませんが、本質的には利用が明示されていない研究について、ゲノム 遺伝子解析研究は許可されない。 ○本田委員 ゲノムの場合はしっかりと。 ○北村委員 はい。昔うちはそれで大きな新聞沙汰をやっています。 ○本田委員 ゲノム以外で、そういうことは、いまのところは考えられないということですか。 ○北村委員 問題は、遺伝子の名前まで挙げろとなっています。ですから、新しくどんどん見つか ってきた場合、もう一遍、全部同意を取り直さなければいけない。 ○金澤委員長 あれは非常に問題だと思いますね。 ○丸山委員 一般的には個人情報の保護ということで、研究者が匿名化されていない試料を用いて、 見出した患者についての情報などを漏らしてはいけない、という個人情報保護の趣旨の規定が2004 年の改正で盛り込まれましたので、そこで秘密の遵守は、一応、制度的には保証されているという ことなのですが、現実の個人的体験で言うと、院内のいろいろな人ですね。  特に医師や医療者については、刑法や各資格法に守秘義務が規定されておりますから、多かれ少 なかれ、秘密を漏らしてはいけないという認識はあると思うのですが、事務の方やアルバイトの方 というところまで視野を広げると、何か心許ないところがあるのも現実ですので、その点はやはり こういう指針のところで秘密厳守を強く謳うというか、何らかの有効な確保の手段が必要だと思い ますが。 ○前原委員 いまの本田委員のご質問の中で、認識しておかないといけない点は、ヒトゲノム遺伝 子研究解析はジャームラインといって、親から子へずっと遺伝をしていくような変化などというも のの解析です。先ほどの、組織を取得してがん遺伝子を調べるような研究は、同じ遺伝子解析とい う言葉でも、体細胞遺伝子変化で、ある遺伝子が多く発現している、もしくは発現が減少している、 あるいはがんで変異が認められているという、がんにおいて形質として、どのように変化している かを調べているのです。  先ほどの薬剤の効果にかかわる遺伝子の発現の解析は、先ほどのように進んでいるということで す。同じ「ヒトゲノム遺伝子解析」という言葉を持つ中で、一般的にはそこの2つが誤解されやす いです。母から子へというものについての研究は、しっかりとゲノム指針で規定されています。一 方で、臨床研究として用いる発現解析というものは、通常の包括同意の中でできるのではないかと いうことで、お話をしたということです。 ○谷内委員 先ほどの包括的同意の問題は、多くの倫理委員会でよく議論になるところです。先ほ ど丸山先生が指摘された疫学指針の42頁の(3)で、アの「利用目的を含む情報を公開していること」 と出ていますが、公開の仕方に関しては特にQ&Aはないという理解でよろしいでしょうか。  例えば倫理委員会のホームページでもいいし、研究者のホームページでも構わないという理解で いいかどうかお聞きしたく思います。包括同意の問題というのは、結構事例がありますので、毎回 議論になるのは情報の公開の仕方に関してです。何かQ&Aが出ているかどうか確認したく思いま す。ちょっと私は確認できていなかったものですから、たぶんないのではないかと思っています。 先ほどの丸山先生のご意見は、倫理委員会のホームページでも構わないし、研究者のホームページ でも構わないという理解でよろしいでしょうか。 ○丸山委員 この情報公開というのは、本人の拒否権の保障を実効性あるものとするためのもので あるという側面があります。ですので、できれば試料を提供した人がよく見るような、病院ホーム ページなり診療室での掲示というほうが望ましいということはあると思います。それから、ちょっ とおぼろげな記憶なのですが、同じような規定が、先ほど北村先生から挙げられたゲノムの指針に B群試料、C群試料についてあって、そのゲノムの指針のQ&Aに載っていたのではないかと思いま す。失礼しました。 ○廣橋委員長代理 先ほど示していただいた全体のイメージ図なのですが、確かに介入研究と観察 研究を分けて、より危険の高い介入研究に関して、倫理審査の体制を厳しくして、フォローアップ も十分にして、補償の措置も付けられて、そういう研究がしっかり進められて、エビデンスが出て いくようにしていこうということでいいと思うのです。  一方で、指導に対し、改善しないときには、最終的にこの指針の枠外だけれども、研究費などで ペナルティがあるべしということも書いてあるのです。ということは、逆に左側に倫理審査委員会 が十分に活躍できるようなサポートを行うと書くべきでは。補償するということを明記するといっ ても、例えばそれが研究費の中から十分支出できるという支援が必要です。倫理審査委員会の機能 をチェックするので、透明性を向上するというだけではなくて、チェック体制を作るということは、 どこかでそういうものを全部見ていくような組織を作って見ていくわけでしょうから、そういった ものにもかなり投資が必要ですよね。そういった研究者、あるいは組織への支援投資の部分を絵に 描いていただくといいと思うのですが、いかがですか。つまり、ペナルティだけで縛るということ では進まないのではないか。やはりサポートもしていただいてでないと、進まないのではないか。 ○新木課長 ご指摘のとおり、これは指針のためのものですので、そこだけ書いてありますが、本 当は外のこの頁の欄内に書かなければいけないのかもしれません。研究費等で、特に間接経費の充 実などもありますので、それが支払えるような研究費の運用、これを可能にすることを考えなけれ ばいけないでしょう。  また、補償の話も、民間の保険会社の皆さんとも引き続き検討していかなければいけないと思っ ておりまして、我々行政として整備しなければならない環境支援の1つだと思っております。した がって、指針そのものではないですが、これと併せて、我々は予算措置などの中で現在検討をして いるところです。 ○藤原委員 資料4-(2)の改正後のイメージ図の下のほうの脚注の所で、介入研究の定義をされて います。「患者の割付やランダム化等を行うものが介入研究」という定義がここでは案として出て いるのですが、再生医療、細胞医療、遺伝子治療など、非常に早期の段階の医療の臨床研究で割付 やランダム化を行わない場合はどうなりますか。こうした臨床試験をやる場合はかなり危険性も高 いところもあると思いますが、この規定だけでいくと、そういうのは介入研究として見ないことを 意識されているのかというのが1つです。  その下に、「医薬品・医療機器の承認事項の範囲の使用で」というのが書いてありますが、適応 外、あるいは未承認薬を使うにもかかわらず、割付、ランダム化もしなければ、それは介入にする のか、非介入にするのか、どちらにされるのかがちょっとイメージとして湧かないので、2点を教 えていただきたいと思います。 ○事務局 このイメージ案の下の脚注の部分ですが、おそらく例えば藤原先生がご指摘の再生医療 のようなもので、これまで使ったことがないようなものを初めてヒトに使うなどというケースは、 当然のことながら介入研究という部分だろうと、皆さんもご認識いただいているものだと思います。  ただ、ここで注を付けたのは、割付、ランダム化等を行うものかどうかというところに、比較的 混乱されている部分があるようでしたので、そこだけに着目して注を付けたということで、おそら く一般的に介入研究として考えられている部分については、当然読めるものだとして、ここでは略 されているというイメージかと思います。これはまだ案の段階ですので、いまのご指摘の点も踏ま えて、きちんと書かせていただいたほうがよろしいかと思います。  あと、割付、ランダム化を行わないような場合はどうかという部分で、当然、承認の範囲内でお 使いになる部分については、改めてその行っている部分の行為については、特段、臨床研究という ことではなくて、ここはそれに付随する観察的な部分が観察研究という意図で書かれているものか と思います。したがって、適応外で使うようなケースになると、この脚注の事例からは少し離れて くるものかと思いますので、その辺りは個別にこういう事例がありましたら少し教えていただきつ つ、また次回アップデートする場合に内容を考えさせていただければと思います。 ○永井委員 いまのは下のほうですね。「承認事項の適用の範囲で、割付、ランダム化を行わない ものは観察研究」とおっしゃいましたが、これは単なる診療なのではないかという気がするのです。 まさに診療行為と観察研究のボーダーのところに関わってきます。これは普通の診療ではないので しょうか。 ○事務局 そこは全くそのとおりで、それだけで完結する部分は診療で、そこに研究的要素を加え て、観察研究としてレポートされるとか、そういうものが付いてきたときに、はじめて研究ですの で、単に診療をやられるという部分について、それを臨床研究だという趣旨で書いたものではあり ません。そこも、この短い脚注が非常に言葉足らずになっている部分かと思いますので、また訂正 をさせていただければと思っております。 ○藤原委員 先ほど廣橋総長がおっしゃったのに対して、新木課長が答えられて、間接経費の運用 とおっしゃられたところについてです。今年の1回目のこの委員会でも示したと思うのですが、EU でEU臨床試験指令が出て、GCPが全部の臨床試験にも適用になったときに、経費がどのぐらいア ップしたか、今年の始めのnature medicineに出ていたのです。  あれを見ると、経費は大体75%とか100%の増加です。つまり、経費が2倍近くになっているの です。いまの間接経費でいくと、30%が上限なので、間接経費だけの運用をされるときはそれ以上 は出せません。でも、こういうきちんとした被験者保護などに配慮する場合には、経費も倍近くか かる。アメリカのようにNIHのブランドであれば、かなりの部分を間接経費で見ています。3割な どではなくて、もっと大きい額を間接経費として施設側に払っているはずなので、アクセル側とし て、研究費を広げる場合には、いまの3割では不十分で、2倍ぐらいにして、半分は施設に入って、 それが倫理委員会などの設備に回るというように注意していただきたいと思います。  もう1点は、資料4-(1)の4で「健康被害の防止および発生時の対応」ですが、「有害事象の処理」 という記載が見受けられるのですが、これは現行の臨床研究倫理指針では「重篤な有害事象」と、 わりと絞っています。引き続き重篤な有害事象だけを取り扱うという理解でよろしいでしょうか。 これは確認です。臨床研究の倫理指針で対応を求めるのは重篤なものに限るという感じでしょうか。 細々とした有害事象全部を挙げていくと、非常に大変なことになると思うのですけれども。 ○事務局 基本的には、この論点については、いまの報告対象の範囲を前提として書かれているも のという理解です。そういう範囲のものでも、きちんとそれが対応されているかということをいか に確認していくかという、この骨子についてはそういう趣旨で書かれているとご理解いただければ と思います。 ○川上委員 資料4-(1)の2の(1)の範囲の現状ですが、ここには医薬品・医療機器についてはGCP 等の薬事制度、諸外国との整合性の論点と書いてあります。その下に、(2)の今後の検討の方向で、 (1)に被験者へのリスクを考慮し、介入研究、特に医薬品・医療機器の使用について、規定を上乗せ すべきと書いてあります。資料4-(2)を見ると、(1)の部分が先ほど藤原先生もおっしゃっていたよ うな再生医療など、承認の新しい医薬品や細胞移動などの行為が入ってくると思うのですが、本当 にこれだけで患者の健康、あるいは倫理的妥当性が担保されるのかという気がします。  規定の上乗せについて、イメージの中では、(1)では(2)の予防介入研究と医薬品・医療機器のもの と同じと考えたときに、GCP等の薬事制度、諸外国との整合性の論点という観点と、もう1つ、以 前、光石先生に参考人としてお話いただいたときのように、これは諸外国で日本以外の国がもうや っているように、中央で審査することが必要かと思います。少なくとも厚生科研でやるものに関し て、中央で審査するようなことは必要ないのでしょうか。 ○新木課長 まず、いまのお話ですが、新しい医薬品の大変リスクの高いものについては、ほかの 物よりも強力な安全担保措置が必要ではないかというのは、これまでもご議論になっておりますの で、我々も問題意識として持っております。具体的にその内容をどうするのかについては、いろい ろな方法があり得ると思います。いま厚生科研費の部分での審査、チェックをアイディアとして提 示していただきましたが、そういうことを基に、またほかにもアイディアがあればここでもご議論 いただいて、書いてあるのは、全部一律に扱うという意味ではありません。もちろん、この議論の 発端がリスクに応じて観察研究と介入研究、介入研究の中でも、いろいろな介入のレベルがあるだ ろうというのがこの議論の前提ですので、引き続きご議論いただければと思います。  それから、間接経費の弾力化というのは、大変重要な問題だと思っておりますが、限られた研究 費の中で、間接と直接にどう振り分けるかという財源の話もあります。またこの財源の話になると、 全体で研究費がどのぐらい伸ばせるのかという話もあります。アクセルの部分について、もっとア クセルを大きくしようというお話だと思いますので、我々もこれから毎年、予算要求でできるだけ の努力をしていきたいと思いますが、なかなかすぐに単年度で全部解決できるという問題でもあり ませんので、方針としては、やはり臨床研究の重要性を踏まえて、十分なアクセルを踏めるような 燃料装置を作っていきたいと思っております。その辺はちょっと言い訳がましいですが、引き続き、 我々の検討課題と認識しているところです。 ○金澤委員長 現実の問題を聞きたいのですが、普通、間接は3割ですよね。いま厚生科研費の全 部について、3割が付いていますか。いまどのぐらい付いているのですか。 ○事務局 現状は、研究費の総額が一定以上のものについて3割ということですが、その総額いく ら以上という、そこの制限については撤廃していく方向で、いま検討を進めているところと聞いて おります。 ○金澤委員長 予算要求はしているということですか。 ○事務局 これは予算要求とルールの問題ですので、ルールの改正を併せて行っていくということ です。 ○金澤委員長 いま3,000万ぐらいですか。 ○事務局 3,000万が一応の基準ということになっております。 ○伊賀委員 研究費のペナルティのところの実効性に関して、いまのお話の中にもあったのですが、 これは基本的には公的なものの中の、しかも厚生科研に対する申請という意味ですか。例えばアメ リカの場合は、NIHのブランドで明記されていて、これは非常に大きく、アメリカの場合基本的に はそれがほとんどですよね。我が国の場合は、研究費と言われてしまうと大変幅広いです。公的な ものでは科研費がいちばん大きいと思うのですが、ここで言われているのは厚生科研のみについて ですか。それとも、一般的に公的、あるいは準公的なものに対する、それを駄目だとするのですか。 ○事務局 いまのこの案は、一応研究費というように漠然と書いてありますが、当然のことながら、 厚労科研のみならず、臨床研究には文部科学省の研究費も使われている部分もあるでしょうし、関 係する省庁の研究費については、同じような扱いにしていただけるように、我々厚生労働省として も関係省には働きかけていきたいと考えているところです。○伊賀委員 例えば仮に脚注で「公的 な研究費」とでも書いていただければ、会議に出ている方はこれでイメージがわかるのですが、ペ ナルティにすべての研究費というのはあり得ないわけで、やはり実効性ですよね。それを担保する ためには、逆に言うと、そこがもう少し明確になったほうがいいということです。 ○金澤委員長 最後の所は、おそらく疫学研究指針との整合性ということの具体性の問題なのだろ うと思うのです。仮にこちらで非常に良いものができたときに、疫学指針にそれをぶつけてみて、 そこの部分だけはもう1回考え直してもらうことは、不可能なのですか。あり得ないわけでもない のですか。 ○新木課長 疫学研究を所掌する所と話をして、まさに座長がおっしゃいましたように、もの次第 だと思います。致命的な欠陥があるようでしたら、我々もやっていかなければいけないと思います し、運用でQ&Aなどで解決できればそのような形になると思います。 ○金澤委員長 少なくともこれだけはお願いしたいのですが、現場の人間がわかりやすいものにし てもらいたい。それだけは絶対にお願いしたいですね。時間がなくなってしまいまして、必要とあ らば、また議論していただきたいと思います。今日の議論を踏まえて、事務局で骨子に肉付けをい たします。それをまたここで議論していただきますので。 ○井部委員 確認したいのですが、資料4-(2)を見ていると、ほとんどが医学に関する研究を対象 にしているイメージがあるのです。厚生科学研究もそうですが、例えば遷延性意識障害の患者の看 護プログラムを介入群とし、あるいは対象群を置いて、看護のプログラムは効果があるのかといっ たことを研究したり、あるいは乳がんの術後のリンパドレナージのマッサージは効果があるのかど うかということを、対象群と実験群を置いて研究したり、あるいは認知症のケアのプログラムの効 果を見たりという研究があると思うのです。それは介入研究として(2)に入るのかどうか。この書き 方だと、そうした医学研究以外の、いわゆる介入と言われるような研究が、どこにちゃんと入るの か心配なのですが、どのように考えたらよろしいのでしょうか。 ○事務局 いまのご質問ですが、もともとの臨床研究の倫理指針の定義の中の臨床研究は、医療に おけるさまざまな研究においての医学系研究と書いてあります。関連する指針の厚い部分の7頁の 3「用語の定義」(1)臨床研究の脚注ですが、「医学に関する研究とともに歯学、薬学、看護学、リ ハビリテーション学、予防医学、健康科学に関する研究が含まれる」ということです。ということ で、井部先生からご指摘いただいた部分はここに含まれるということですが、もし実際の研究の実 態の中でこの表に当てはめていったときにどうなるのだろうという部分がありましたら、少しご意 見をいただいて、また次のバージョンに反映させていただければと思っております。 ○金澤委員長 ありがとうございました。それでは、議題4「その他」、前回資料の訂正ですが、 簡潔にお願いします。 ○事務局 前回、参考人として国立がんセンターの山本精一郎先生に米国の視察報告をいただいた のですが、資料の一部について、この専門委員会の中でも記載内容に関するご指摘がありまして、 その部分を訂正したものを、本日資料5としてお出ししております。各委員の先生方には新旧対照 表が付いておりますが、一応、中身を確認して適切な形に修正されているということで、これが前 回の本委員会での検討資料ということです。修正版をホームページにアップロードするということ で、ご了解をいただければと思っております。 ○金澤委員長 時間が延びてしまいましたが、川上委員から欧州視察の概要と臨床研究の実施にお ける障害について、お願いします。 ○川上委員 資料6-(1)の2頁ですが、これは皆さんご存じで、前回、山本精一郎先生のものに出 ていたと思います。ヨーロッパでは2001年にいわゆるEC臨床試験指令(臨床研究指令)が出 て、この中で2004年以降は、下に赤字で書いてあるように、商業的であろうが、非商業的だろう が、承認目的だろうが、そうでなかろうが、必ず規制当局、中央で審査をすることが決まったとい うことで、欧州EUは全部これで動いています。下に書いてありますが、関西に設立された中央IRB の研修会でもこういった話をしています。  4頁です。先ほど藤原先生からアクセルの話が少し出たと思うのですが、実際イギリスでEC臨 床試験指令のあと、臨床試験が進みづらくなりました。なぜなら、資料やお金が膨大にかかるよう になったからです。それを受けて、国民の声として、産官の共同でベター・ヘルス・スルー・パー トナーシップというものができました。いちばん下ですが、今年は約12億ポンド、3,000億円の 予算規模で臨床研究がサポートされることが決まっています。 5頁ですが、臨床研究指令塔オフ ィスというのが政府にできました。これはOSCHRと言われて、Office for Strategic Coordination of Health Researchで、DIUS、DoHと左下に書いてありますが、要するにイギリスに健康省とイノ ベーション省という省がバラバラに、日本で言えば厚生科研、文部科学省の科研費と出していたよ うなものを統合して、財務省へ概算要求をしたり、順位付けをしたり、進捗管理をするようなオフ ィスができました。臨床研究の指令塔オフィスとして活躍しています。  6頁にはUKCRN、これは2007年、今年の夏から実働しているのですが、疾患領域別、あるいは地 域領域別に、開発や薬事のアドバイスをするような公的なネットワークができました。  7頁ですが、MHRAというのはイギリスの医薬品等の規制当局なのですが、ここでは大学等の臨床 研究の審査をする部署があります。3つ目の中ポチですが、臨床研究の25%は大学からの申請で、 行政当局から無料で規制に関するアドバイス等を受けることができるということで、臨床研究の振 興と審査をしています。  あとは興味があれば、フランスのリオンの状況やメディコンバレーというスウェーデンとコペン ハーゲンが大同団結した、臨床研究集積地域があるのですが、そういう話も書いてありますので、 ご覧いただければと思います。資料6-(1)はこれで終わります。  資料6-(2)ですが、我々京都大学では、臨床研究の専門医養成(MCR)コースをやっています。 今年の段階で、卒業生・在校生を合わせて20名ぐらいいるのですが、ほとんどが医師免許を取っ て卒後5年から10年の医師が、我々のほうで臨床研究を学んでいただいて、各大学や医局、一般 病院に戻っていただくという仕組みです。  最後のほうですが、我々のレベルではなくて、特に実際に一般病院で臨床研究をやっていらっし ゃる若い医者が、何を考えているかということが書いてあります。15頁ですが、臨床研究が普及 するかということを若手の医者はどう思っているかというと、「あまりそう思わない」とみんな思 っています。16頁ですが、それが何故かというと、まとめ(1)で、厳しい現実で時間がない、研究 どころではない、登録者がいない、研究費がないということを皆さん言っていて、特にこれは臨床 疫学研究というか、観察研究や医薬品・医療機器等の介入研究以外の研究領域が中心ですが、こう いった問題意識が非常に多いというのが現場の声となっています。  18頁ですが、折角、京大に半年間いらっしゃって、臨床研究を学ばれても、各医局に戻ると、 熱意があっても実際にはできない。こういったことについて、国から是非サポートをしていただき たいと。お金あるいは大学病院をサポートして、自分たちが研究できるような環境にしてもらうな どといったことが非常に必要ですと、ちょうど今週、在校生の集まりと卒業生の集まりがあって、 そういった結果が出ていましたので、ご報告します。ありがとうございました。 ○金澤委員長 一字一句から学ばなければいけないことはたくさんあるのですが、今日は時間がな くなってしまいました。またいつか議論させていただけると、ありがたいと思います。最後に、事 務局から今後のスケジュール、その他、よろしくお願いします。 ○事務局 本日はご多用中、また遠路よりご参加ありがとうございました。次回の予定は、新年1 月16日10時からとさせていただきます。またよろしくお願いいたします。 ○金澤委員長 司会の不手際、誠に申し訳ない、こんなに時間が延びてしまうとは思いませんでし た。皆さんのご協力を感謝いたします。ありがとうございました。