07/12/05 中央社会保険医療協議会薬価専門部会平成19年12月5日議事録 07/12/5 第44回中央医療社会保険協議会薬価専門部会議事録 1 日   時  平成19年12月5日(水)9:31〜10:42 2 場   所   ホテルはあといん乃木坂 フルール  3 出 席 者  遠藤久夫部会長 土田武史委員 庄司洋子委員 白石小百合委員     対馬忠明委員 小島茂委員 丸山誠委員     松浦稔明委員          鈴木満委員 中川俊男委員 渡辺三雄委員 山本信夫委員          向田孝義専門委員 長野明専門委員 渡辺自修専門委員         〈参考人〉 (日本製薬団体連合会〉 森田清意見陳述人 岡本康男意見陳述人 澤井弘行意見陳述人          禰宜寛治意見陳述人 (米国研究製薬工業協会) 関口康意見陳述人 アイラ ウルフ意見陳述人 (欧州製薬団体連合会〉 永田傳意見陳述人 (日本医薬品卸業連合会) 松谷高顕意見陳述人 福神邦雄意見陳述人 村井泰介意見陳述人          <事務局>          水田保険局長 木倉審議官 原医療課長 宇都宮医療課企画官           磯部薬剤管理官 他                   4 議   題   ○薬価制度改革の骨子(たたき台)          ○関係業界からの意見聴取について ○遠藤部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第44回中央社会保険医療 協議会薬価専門部会を開催したいと思います。  まず、委員の選任について御報告をいたします。  11月30日付で室谷委員が任期満了により御退任されまして、その後任としまして、翌 12月1日付で庄司洋子委員が発令されております。  中央社会保険医療協議会議事規則においては、薬価専門部会に属すべき委員は、中央社会 保険医療協議会の承認を経て、会長が指名することとされております。このため、本日の薬 価専門部会の開催に先立ち、この委員の異動を踏まえて、中医協の各委員に対し、土田会長 からこの専門部会に属するべき委員について御連絡させていただき、庄司委員を室谷委員の 後任として、本専門部会の委員として指名させていただいております。  それでは、庄司委員より一言御挨拶をお願いしたいと思います。 ○庄司委員 御紹介いただきました庄司でございます。ちょうど御議論真っ盛りの中に駆け 込みで入れていただくような形になりまして、当面はちょっと追いつくのに大変ということ になるかと思います。御指導、よろしくお願いいたします。 ○遠藤部会長 よろしくお願いします。  では、委員の出欠状況について御報告をいたします。本日は、全員がお見えです。  また、保険局長は公務のため途中欠席させていただく旨の連絡を受けております。  また、関係業界から意見聴取を行うこととしておりますので、  日本製薬団体連合会(日薬連)から、森田清日薬連会長、岡本康男日薬連理事・日本製薬 工業協会副会長、澤井弘行日薬連理事・医薬工業協議会会長、禰宜寛治日薬連流通問題連絡 会座長。  米国研究製薬工業協会(PhRMA・ファルマ)から、関口康PhRMA在日執行委員会 委員長、アイラ・ウルフPhRMA日本代表。  欧州製薬団体連合会(EFPIA・エフピア)から、永田傳EFPIA理事長。  日本医薬品卸業連合会(卸連)から、松谷高顕卸連会長、福神邦雄卸連副会長、村井泰介 卸連流通近代化検討委員会委員長。 に御出席をいただいております。  それでは早速、議事に移りたいと思います。  本日は、前回御議論いただきました「平成20年度薬価制度改革の骨子(たたき台)」に ついて、関係業界からの意見聴取を行いたいと思います。  順番でございますけれども、日薬連、PhRMA、EFPIA、卸連、この順序でそれぞ れ10分程度で御説明をお願いできればと思います。  質疑、意見交換につきましては、一通りの御説明をいただいた後、まとめて行うこととさ せていただきます。  それでは早速、日薬連からよろしくお願いいたします。 ○森田意見陳述人 日薬連会長の森田でございます。本日は、本会におきまして意見陳述の 機会をいただきまして、ありがとうございます。時間の限りもございますので、お手元の資 料の「次期薬価制度改革等に関する意見」ということでペーパーをまとめておりますので、 ごらんいただきたいと思います。  最初に、資料の1ページでございますが、上段のところで、薬価制度改革は、我が国の医 療とそしてまた経済・産業双方の向上・発展に資する制度と、これをぜひ我々は理念におい て実現したいということございます。以下5項目、8月1日の今会においても意見陳述させ ていただいているこの5つの理念を大切にしてやってまいりたいと思っております。  今日政府は、革新的医薬品創出のための5か年戦略、これを推進することとして、イノベ ーション創出を加速し、ドラッグラグを解消することにより、有効で安全な医薬品を迅速に 国民へ提供することが求められております。  また一方では、平成20年度の診療報酬改定の基本方針、これにおきまして、イノベーシ ョンの評価として革新的な新薬を適切に評価できる薬価制度を見直すことが盛り込まれてお ります。こういう状況下におきまして、今回「平成20年度薬価制度改革の骨子」、いわゆ る「たたき台」につきまして、特に新薬の薬価算定に関する具体的な策において、当連合会 より8月1日に申し述べましたことが今回のたたき台で反映されており、その一部につきま しては、イノベーションも評価するということで理解をいたしております。  しかし、これにつきましても、欧米のレベルに少し近づいていこうという水準であり、今 後先進的薬物療法の国民への提供と、医薬品産業がリーディング産業たり得る方向性につい てさらに評価を願いたいところであります。  また一方で、5か年戦略が計画どおり推進され、現在世界の売上のトップ100のうち、 約3割が日本においては未上場でございます。こういう我が国のドラッグラグが解消される 仕組みにつきまして、インフラ整備等が緒についた段階でございますから、この仕組みの中 で新薬が上市されるにはまだ2年、3年、5年という年月が必要であると、こういう認識で ございます。  したがって、こうした新薬の評価の恩恵は、即座に受けられるものではなく、また我が国 の医薬品市場に占める既収載品の比率が、当面は欧米先進国よりも高いままであるというこ とは、この3割の未上場ということも含めまして、当然のことであるという認識でございま す。  したがいまして、これから、この過去10年を見ましても、医療費が3割以上の上昇を続 けている中で、薬剤費はほぼ横ばいという状況でございます。これは、既収載品を中心とす る医薬品が医療現場において効率的に処方されていることを意味すると認識いたしておりま す。こうした状況の下で、既医薬品の薬価改定に関しましては、我々が過去より強く反対し てまいりました市場拡大再算定の範囲の拡大等が盛り込まれました、イノベーションの評価 という政府目標に逆行した、全く評価しがたい内容が今回も提案されております。  以上を踏まえまして、この場では、時間の関係もございますので、私といたしましては、 既収載品の薬価改定に関し、特に撤廃を求める市場拡大再算定及び先発品の特例引き下げ、 この2点に絞りまして、以下に、本日提出させていただいております資料に基づいて少し申 し述べたいと思っております。  一方で、今日はこの2点に絞らせていただきますが、提出資料全般にわたりましては、こ れに優先順位云々ということではなしに、すべてについて、8月1日以降今日に至るまで、 それぞれの実現を今後も検討を賜りたいと、こんなふうに思っております。  それでは、市場拡大再算定、この件につきましては資料の8ページでございます。資料の 2〜7ページは、新薬についての薬価算定に関する意見でございまして、今日はこの2〜7 ページまでは省略させていただきまして、本論であります市場拡大再算定、この資料8ペー ジをごらんいただきたいと思います。  再算定につきましては、価格設定の前提条件である使用方法等が変化し、薬価算定時の比 較薬との類似性が損なわれた場合など、かつてごく限られたものに適用するものであったと 私は認識いたしております。昭和57年以降の歴年の状況についてお示しいたしております。 したがいまして、平成7年に、市場規模の拡大を適用基準とする市場拡大再算定として実施 されましたが、その後は、使用実態の著しい変化が適用基準として存在してはいるものの、 売れたら下げるという、こういう仕組みに変貌してきていると認識いたしております。  さらに、本日のたたき台で示されました提案内容は、対象と異なる医薬品の類似薬までに それを拡大した上で、前提条件の変化の有無などにかかわらず、単に売れたら下げる仕組み にしようとするものを非常に残念に思っております。  新薬の開発・上市の遅延いたしております我が国において、イノベーション創出のための、 これを加速し、ドラッグラグを解消しようということは、衆目の一致として政府の方針とな っておりますが、本当にこの政府の方針がドラッグラグの解消やイノベーションの創出を薬 価制度のこの制度の中において実現しようとしているのか、このような提案がございますと、 日薬連会長としてもにわかに信じがたい心証でございます。イノベーションの評価には、新 薬の薬価算定に基づく収載時の評価と市販後の評価があろうと思います。双方が実現しなけ れば、イノベーションの創出の価値が、医薬品として本来享受すべき個々の患者さんの手元 に届かないのではないかと懸念をいたしております。市販後の評価には、真の臨床的有用性 検証などのエビデンスに基づく評価や、それらエビデンスをもとに、医師の先生方がこの新 薬を処方することによる実地医療における評価が、市場規模の拡大は、まさにそういう実地 医療における評価の集積であると、このように考えております。このような実地医療におけ る評価を軽視した新製品の上市が遅れている日本において、主に特許期間中の新薬において さえ、この強制的引き下げになるような市場拡大再算定は、今求められているイノベーショ ンの成果をそぎ取り、成長の芽をむしり取ってしまうものであると私は認識いたしておりま す。  さらに、たたき台で示されております補正加算の傾斜配分の見直しが加算率の縮小を意図 する、そういうものであるとすれば、市販後に真の臨床的有用性を検証した医薬品を過小評 価するものであり、その考え方はイノベーションの評価を充実するというより、薬価制度改 革の政府方針に逆行するものであると思います。  我が国において、2年に1回の薬価改定の実施により、特許期間中の新薬でさえも薬価は 循環的に下落することになっておりますが、アメリカにおいては上市後の新薬の価格は上昇 し、公的医療保険制度を有する欧州のイギリス、フランス、ドイツ等のこういう国におきま してさえも、2年に1回の実勢価格を調査して定期的に引き下げるようなルールは存在して おりません。また、これら欧州3カ国において、特許期間中の新薬について、個別薬剤や当 該薬理作用類似薬に対する、単に売れたら下げるというような強制引き下げルールも存在し ておりません。  このように、我が国における諸施策はイノベーションが適正に評価しているとは考えられ ないため、特にこの市場拡大再算定につきましては、18年度の当初に実施されましたが、 これで即時廃止ということを求めるものであります。  続きまして、資料の9ページをお願いいたします。先発品の特例引き下げでございます。 後発品のある先発品に対する特例引き下げにつきましては、市場実勢価格を割り込んで薬価 を引き下げようとするものであり、そもそも従前より撤廃を強く要望してきたものでござい ます。にもかかわらず、18年度の薬価改定において、一定率を拡大して実施した上に、過 去に特例引き下げを適用された品目にまで遡及して実施されました。先発品の特例引き下げ については、来春より実施見通しの処方せん様式のさらなる見直しにおいて、後発品の使用 が飛躍的に促進されようとしている状況下にあることを踏まえれば、これは当然存続される 必然性は全くないと考えております。2012年まで、後発品のシェアを倍増しようという 政府目標も明記されたわけでございますから、我々としてもこの倍増をいかにきちんと達成 するか、そして、これからは特許が切れた先発品の約半分は後発品に置きかわっていこうと、 こういう状況ではなかろうかとシミュレーションをいたしております。しかし、ここ何年に もわたって、良質廉価な後発品の使用促進策が講じられ、制度としてはずっと存在してきた わけでございますが、後発品が使用されてもよい仕組みの中で、依然として後発品の使用は 低いとされていますが、いよいよ今回の仕組みが実現すれば、一挙にスピードを上げて後発 品に転換されていこうと、そういう状況になろうと思っております。  こうした状況を踏まえれば、市場実勢価格をも割り込んで先発品の薬価を強制的に引き下 げる先発品の特例引き下げについては、この仕組みにつきましては即時撤廃すべきと考えて おります。  以上述べました市場拡大再算定、そして特例引き下げ、これにつきましては、時々の財政 事情もあろうかと思いますが、薬剤費抑制策として運用されたのだとすれば、それは市場の 健全な成長を阻害するものであり、今後、イノベーションの創出と加速とドラッグラグの解 消という政府の方針とは全く矛盾する施策であると考えられます。  有効で安全な医薬品を迅速に国民に提供するという真の政府目標を早期に実現するために も、この市場拡大再算定及び特例引き下げは、本当にこの18年度の実施で打ちどめという ことを重ねて強く要望するものであります。  日本における市場価格実勢価主義、それから調整幅によるそういう実施、これからはそし て新薬の価値に見合った価格、必須医薬品の安定供給、そして後発品の使用促進による医療 の効率化、こういうことがきちっとビルトインされて透明に運用されることが、この薬価制 度において、また、診療報酬の中において、国民からもわかりやすい制度になるようにぜひ 実行をお願いしたいと思っております。  以上でございます。 ○遠藤部会長 森田会長、ありがとうございました。 ○森田意見陳述人 引き続きまして、岡本理事から。 ○遠藤部会長 では、日薬連から続けてお願いいたします。 ○岡本意見陳述人 おはようございます。岡本でございます。本日は、新しい薬価制度につ きまして基本的な考え方を御説明させていただきまして、皆様方の御理解をちょうだいした いと思います。  お手元の資料につきましては、今森田の説明しました資料の後に別紙ということで「新薬 価制度案」という4枚物の資料がございます。この資料は、今日これから申し上げます私ど もの基本的な考え方を整理したペーパーでございまして、また、その基本的な考え方をイメ ージしたものでございます。これに基づきまして御説明しながら御理解を賜りたいと思いま す。  御承知のとおりでございますが、去る8月1日に、青木日薬連副会長から、私どもが提案 しております新薬価制度の概要について、この場で御説明をしておるところでございますが、 本日、再度このような機会をお与えいただきまして、お礼を申し上げます。  最初に、この提案の背景と基本的スタンスにつきまして御説明申し上げます。別紙の1ペ ージ目をごらんいただきたいと思います。森田のほうからも御説明いたしましたが、適切な 治療法が確立していない疾病がなお多く存在している中で、優れた新薬をより早く創出し、 患者や家族の期待にこたえていくことが、製薬産業、製薬企業の使命であり、そのために、 各企業は大変なリスクを負いながら研究開発に取り組んでいるのが現状でございます。  その研究開発の成果を評価する重要な指標は、とりもなおさず、製品の価格、薬価でござ います。このため、私どもの提案の基本的な考え方は、1つは、イノベーションの成果が適 切に評価される薬価の設定、もう1つは、特許期間中、あるいは再審査期間中は、その価格 が尊重される薬価制度を構築していただきたいということであります。  次に、スライドの2ページのほうに移らせていただきます。まず、新薬の薬価は、個々の 新薬に関するデータや知見を最も知り得る立場にあります企業からの意見などをもとにいた しまして、医学、薬学の専門的な観点から新薬を評価する組織が価値評価を行い、その結果 に基づいて、企業が届け出た価格について、中医協で御審議、御承認いただくことにしては どうかと考えております。  次に、特許期間中もしくは再審査期間中は、一定の要件を設定いたしまして、その要件の 下で価格の改定を猶予していただきたいということであります。  3番目に、特許失効後におきましては、後発品が上市された後の最初の薬価改定時に、特 許期間、エグゼンプト期間に猶予された率を一括で引き下げることにしてはどうかというよ うに考えております。  このような制度の下において、長期収載品の多くが、国のさまざまな後発品使用促進策と 相まって後発品に代替されていくであろうということは、私ども先発メーカーは当然甘受す る決意であると既に表明もさせていただいているところでございます。  次に3ページのほうに移っていただきまして、新しい制度のイメージにつきまして御説明 をしたいと思います。まず、上の図でございますが、新しい制度での薬価推移のイメージで ございます。実線が現在の薬価制度での推移、点線の部分が新しい制度での推移であります。 イメージでございます。図の中のイ、ウの段階が、従来の薬価の推移に比べて特徴的になっ ております。イで示したように、特許期間中は薬価改定を猶予し、後発品が出てきたウの時 点にそれまでの猶予分を一括して引き下げるという提案でございます。その下の図は、売上 高推移のイメージを示したものでございます。新しい制度では、点線のように数量の伸びが 売上高に反映されますが、特許期間終了後の薬価引き下げにより、後発品のある薬剤として 市場のこういうところに寄与することになると思います。このような制度設計をすることに より、特許期間中にその新薬の研究開発投資の回収を図り、次の新薬開発への研究開発投資 に早期につなげることができると考えています。  しかし、このような制度ができたからといいまして、医療保険財政に大きな影響が出るこ とは避けなければなりません。そのためには、個々の製品の生涯売上高は従来の制度下での 生涯売上高とほとんど同じとなるよう制度設計において留意しているところでございます。  次に、最後のページのスライド4のほうに移らせていただきます。平成9年度にこの制度 が導入されたとしまして、直近の時点までの保険薬剤費がどのように変化するかを、過去1 0年間にわたり薬価基準に収載されている全品目についての販売数量と薬価のデータを基礎 にしまして、幾つかの前提を置きながら試算しましたところ、その結果はマイナス1.8〜 プラス2.9%という水準になりました。これはあくまでも多くの前提を置いた試算でござ いますので、参考ということで御理解いただければ結構でございます。もちろん設定条件の 置き方によりましては、これ以上に数値が動くこともあると思いますので、さらに協議をし、 検討していく必要があると思っております。  以上、御説明させていただきましたように、このような提案は結果的には新薬を開発し続 けなければ企業は存続していくことができないという、業界みずからが生き残りをかけた厳 しい提案でございます。後発品の使用が促進される中で、研究開発型製薬企業が患者の待ち 望んでいる新薬の研究開発に積極的に取り組むために必要な仕組みであり、国民の利益、国 益の増大にもつながると確信しております。  本日説明させていただきました提案の細部につきましては、もちろんいろいろ御意見があ るものと思いますが、本日は、冒頭申し上げましたとおり、1つ、イノベーションが適切に 評価される薬価、2つ、特許期間中あるいは再審査期間中は、その薬価が尊重される制度、 この基本的な考え方について御説明させてもらったわけでございます。どうか皆様方の御理 解を賜りたいと存じますし、あわせて、今後の十分な御検討もお願いしたいと思います。  御清聴ありがとうございました。 ○遠藤部会長 ありがとうございます。以上で日薬連のプレゼンテーションは終了したと考 えてよろしいわけですね。ありがとうございます。  続きまして、PhRMAからよろしくお願いいたします。 ○関口意見陳述人 米国研究製薬工業協会(PhRMA)の関口でございます。本日はこの ような意見陳述の機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。それでは、お手元 の資料に従いまして御説明をさせていただきます。  まず、基本的考え方でございますが、2ページ目をお開きください。「革新的医薬品・医 療機器創出のための5か年戦略」が成功するためには、薬価面でのイノベーションに対する 適切な評価がなされることが極めて重要であると考えております。この点におきまして、こ のたびの「平成20年度薬価制度改革の骨子(たたき台)」におきまして、随所に革新的新 薬の適切な評価に向けた具体策が織り込まれているということは、私ども高く評価するとこ ろでございます。  しかし一方で、ある薬剤の売上が当初予想を上回って拡大したという理由のみで薬価を引 き下げる、さらには売上が拡大した製品だけでなく薬理作用が類似するすべての医薬品も同 時に薬価を引き下げるといった、イノベーションを評価するという考えに逆行するような提 案もなされているところでございます。このようなそもそも問題のある市場拡大再算定の対 象を一方的に拡大するということに、PhRMAといたしましては強く反対するところでご ざいます。  また、医療費抑制とイノベーション促進の双方をバランスよく推し進めるためにも、後発 品の使用促進と同時に、薬価制度においてはイノベーションを適正に評価するということを セットで行うということが基本方針であると考えており、この方針を堅持し、一貫した政策 を展開していただきたいと考えております。  つまり、国民の有効で画期的な新薬へのアクセスの向上、医薬・ヘルスケア産業の国際的 競争力の強化、及び保険財源の公正かつ適切な配分を早期に実現するためには、現行制度の 部分的な見直しでは不十分であり、以下の2点を中心とする包括的な薬価制度の改革を早急 に行う必要があるタイミングに来ていると考えております。  1番目には、研究開発に多額の投資を要する先発品産業が、日本における事業展開を持続 し拡大できるよう、「先発品の価値に見合った薬価が設定され、後発品が発売されるまでの 期間を通じてその価格が維持されること」。  2番目は、薬剤費を適正化するため「知的財産権が保護される特許期間もしくは再審査期 間が完了した時点で、先発品よりも安価で、同等の質、適応、安全性を持った後発品の市場 参入が積極的に行われること」であります。この考え方は、基本的に日薬連さんの考え方と 同じでございます。  そして、平成20年以降の薬価制度に関する議論においては、薬価改定の頻度や市場拡大 再算定といった個別の議論だけでなく、包括的な薬価制度改革について継続的に議論を行い、 平成20年度中に結論を得るということを目標としていただきたいと強く希望いたします。  次に、具体的な個別の案件についてお話しさせていただきます。  まず、新規収載医薬品の薬価算定についてでございますが、類似薬効比較方式に関しまし ては、各種加算率の引き上げ、古い医薬品の比較薬からの除外など、短期的な改善策として 評価できるものであり、ぜひ実現していただきたいと思います。なお、比較薬の範囲につい ては、「原則として薬価収載後10年以内の新薬」とすることに加え、特例引き下げ等を受 けた医薬品も除外することとしていただきたいと考えます。  また、1日薬価に基づく補正加算の傾斜配分ルールについては、大変合理性に欠けること から、これは廃止すべきと私どもも考えております。  次に、原価計算方式に関してでございますが、適切な類似薬がなく原価計算方式が適用さ れる新薬はそもそも革新的な新薬であります。その革新性ゆえに発売後のリスクも高いとい うことが言えます。こうした薬剤に関しまして、営業利益率を±10ポイントの範囲で算定 するという提案は、平均的な利益水準より低く設定され得るという制度でもあり、革新的な 新薬の開発インセンティブを阻害することになりかねないと考えております。原価計算方式 で算定される新薬の革新性については、営業利益率ではなく補正加算で評価していただきた いと考えます。  次に、キット加算でございますが、まず、現行のキット製品の薬価算定方式が既存のキッ ト製品の薬価に基づいて算定されているものではないということを申し上げたいと思います。 したがいまして、このたび提案されている「他のキット製品と比較して、キットの構造・機 能に関する新規性が認められないものについては、キット加算の対象外とする」ということ は論理的な矛盾があり、このような不合理なルール変更は認められないと考えます。このよ うなルールが適用されると、同様の有用性を有するキット製品が複数収載される場合、2番 目以降のキット製品が最初に収載されたキット製品より低い薬価となり得ます。さらに、こ れまでキット製品がなかった医薬品のキット製品を新たに収載する場合でも、他剤に同様の キット製品があるという理由で、キット加算が適用されないということになり、キット製品 を日本で開発するインセンティブが損なわれることになりかねません。キット製品の価値が 正当に評価される整合性のとれた薬価算定方式を次々期薬価制度改革までに検討するという ことにぜひしていただきたいと思います。  次に、外国平均価格調整についてでございます。現行の運用では、年度版の価格リスト、 月刊の場合は4月版のみが用いられ、ウェブ版、電子媒体版を含むアップデート版、最新の ものですね、あるいは直近の月刊に価格が掲載されていても外国平均価格調整の対象となら ないこととなっております。しかし、このような運用は実態を反映しないばかりか、ドラッ グラグの解消に向けた取組にも逆行するものであり、外国価格については、月刊やアップデ ート版の価格リストも対象としていただくことを強く希望いたします。  また、平成18年度の改正で、一定の条件に該当する場合は引き上げ調整の対象から除外 することとされましたが、これは同様に、引き下げ調整の対象からも除外するというバラン スのとれたものとしていただきたいと考えます。  次に、既収載医薬品の薬価改定について御説明させていただきます。まず、市場拡大再算 定でございます。PhRMAは従来より、市場拡大再算定は、イノベーションに適切に報い るという考え方に反する不合理なものであり、廃止すべきであると継続して主張してまいり ました。今般のたたき台では、「市場拡大再算定が、公的保険制度における薬剤費の適切な 配分メカニズムとして機能している」とされていますが、市場で医師、患者さんに高く評価 された医薬品の薬価を特許期間中にもかかわらず強制的に引き下げるということは、イノベ ーションの促進に逆行するものであり、適切な配分メカニズムとは考えられないと思います。  さらに、ある医薬品が市場拡大再算定の対象となった場合、その医薬品を比較薬として算 定された医薬品も市場拡大再算定の対象となる現行ルールは、そもそも個々の製品に対する 市場の評価を無視した全く不合理なものと言わざるを得ません。しかるに、たたき台では、 「公平な薬価改定を行う」ことを理由として、再算定の対象をすべての薬理作用類似薬に拡 大することを提案しております。各製品は市場競争においてそれぞれに評価されるものであ り、そのような市場での評価とは無関係に一律に強制的に引き下げるという考え方は公平と は考えられないものであります。したがって、今般提案されている市場拡大再算定類似品の 対象拡大には強く反対するものであります。  また、「効能追加の有無にかかわらず」「市場拡大再算定の対象とする」といった考え方 が今後の検討ということで述べられておりますが、現行ルールが導入された論拠すら失わせ るものであり、これは認められるものではありません。現行の市場拡大再算定は、「収載時 に選定された比較対象薬との類似性が損なわれ、市場規模が大幅に拡大した場合」に薬価を 補正するという名目で実施されてきたものであり、この趣旨を逸脱し、薬価算定時の前提条 件が変化していないにもかかわらず、市場規模が拡大したという理由のみで薬価を引き下げ るということは、単に市場で評価された医薬品を罰するということにほかならず、イノベー ションを適切に評価するという政府方針に反するものと考えざるを得ません。  次に、市場拡大再算定時における加算の傾斜配分についてですが、1日薬価や市場規模と いうものはそもそもイノベーションの価値とは関係のないものであり、加算率をこれらによ って画一的に傾斜配分するという考え方には反対であります。  たたき台では、市場拡大再算定対象品目における補正加算の傾斜配分を「対象となる医薬 品の市場規模で行う」とされており、参考資料において、すべての新薬を対象とした中央値 というものが示されております。内用薬・外用薬におきましては50.9億円、注射薬にお いては20.3億円でございます。しかし、市場拡大再算定の対象は現行ルールでも年間販 売額が150億円を超える医薬品とされておりまして、先ほどの中央値のような少ない金額 を基準値として傾斜配分をかけるということは、補正加算の意義を大きく薄める結果になる というふうに考えます。  また、市販後に真の臨床的有用性が検証された場合の加算についても、このような市販後 データが得られるのは一定以上市場で成功し、売上を獲得した品目に実質的には限られると 考えられることから、イノベーションの価値を適切に評価する観点からも、市場規模等によ る画一的な傾斜配分は行われるべきでないと考えます。  最後になりますが、薬価改定の頻度についてでございます。特許等の保護期間中にもかか わらず、薬価が強制的に引き下げられるという薬価改定のルールは、そもそも世界に、他に 類を見ないものであります。そして、日本の薬価水準を急速かつ循環的に下落させてきた主 たる要因の一つであると考えられます。したがいまして、頻度の問題を議論する前に、この 薬価改定そのものの是非を含む包括的な検討を行う必要があるとPhRMAは考えるもので あります。  以上、PhRMAの意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。 ○遠藤部会長 関口委員長、ありがとうございました。  それでは引き続きまして、EFPIAからよろしくお願いいたします。 ○永田意見陳述人 本日は、このような意見陳述の機会を与えていただきましたことに御礼 申し上げます。本来は、会長のマーク・デュノワイエが私どもEFPIAの考えを述べさて いただくところではございますが、所用にて欠席させていただきますことから、私、理事長 の永田から発言させていただきます。  私どもEFPIAは、日本国民の健康増進に寄与する医薬品を開発・提供すべく、医薬品 の研究開発を振興することを目的とし、活動を行っております。本日は、欧州の研究開発型 製薬企業の団体の立場から、特にイノベーションの評価について意見を述べさせていただき たいと存じます。  まず、11月21日の薬価専門部会において種々の前向きな御提案がなされたことに敬意 を表したいと思います。  スライドの2に移ります。初めに、薬価制度について中長期的な視点を、次に短期的な視 点でEFPIAの考えを述べさせていただきたいと思います。中長期的には、本年8月1日 の中医協薬価専門部会においても述べさせていただきましたように、イノベーションを適切 に評価するためには抜本的な改革が必要であり、新たな薬価制度の導入が必要であると考え ております。その新たな薬価制度においては、新薬が市場に導入される際の薬価についてイ ノベーションが適切に評価されるよう、企業側の説明責任の下に新たな薬価届出制度の下で 設定されることを提案いたします。  また、そこで設定された薬価が知的財産の観点から適切に評価されること、つまり、後発 医薬品が市場に参入するまでは、薬価が安定的に維持されることが必要であると考えます。  そして、後発医薬品が市場に参入した後の先発医薬品の薬価を適切な薬価に設定すること を考えております。  これら3点をあわせたパッケージとして導入すべきだと考えております。  以上につきましては、現在検討されている平成20年4月の薬価制度改革の実施後引き続 き中長期的な視点での抜本的な薬価制度改革の議論を行っていただき、平成20年度内に結 論を得ていただきたいと希望いたします。  次に移ります。11月21日の中医協薬価専門部会で提出されました「平成20年度薬価 制度改革の骨子(たたき台)」につきまして、EFPIAから意見を述べさせていただきま す。時間の関係から、特に重要である項目についてのみ意見を述べさせていただきます。本 日この場で意見を述べない項目につきましても、添付としてお配りした資料に述べさせてい ただいておりますので、御一読いただきますようお願い申し上げます。  まず、市場拡大再算定について意見を申し上げます。EFPIAは、過去から一貫して市 場拡大再算定の廃止を訴えてまいりました。市場で評価されて売上が伸びたものに対して強 制的に引き下げる仕組みは、イノベーションの評価の観点から矛盾していると考えるからで す。今回のたたき台においては、その適用範囲を拡大することが検討されようとしています。 受け入れがたいことであると考えております。このルールがイノベーションの阻害に当たる との業界の意見を尊重していただき、いったん市場拡大再算定の運用を中断し、市場拡大再 算定の在り方そのものを中長期的な視点で議論すべきと考えております。  次は、総価山買いについてでございますが、我が国の薬価基準制度は、銘柄別収載が基本 であります。総価山買いはこの根幹をゆがめていると思われます。正確な市場実勢価が把握 されるためには、購入形態の改善も必要となりますが、当面はこのような総価山買いデータ を薬価調査の結果から除外していただきたいとお願いいたします。  次に移ります。続きまして、新規収載医薬品の薬価算定についてです。先日の薬価専門部 会での御提案では、全般的にイノベーションが評価される内容になっており、EFPIAと して評価しており、感謝の意を表明したいと存じます。  類似薬効比較方式における比較薬の選定に関しまして、選定の基準を見直し、原則薬価収 載後10年以内の新薬を用いるものとすることについては、イノベーションの評価につなが るものであり、評価しております。  加算の要件の緩和及び加算率の引き上げにつきましても、イノベーションの評価につなが るものであり、御提案を高く評価させていただきますが、運用の面についてお願いがござい ます。加算根拠となる資料は、基本的に審査報告書に記載されている内容で評価されていま すが、これに加えて、海外データや公表論文も加えていただき、より柔軟に評価されるよう 御配慮をいただきたいと存じます。  次に、原価計算方式についてですが、本来、原価計算の対象となる品目は新規性・革新性 を有しており、薬価算定上の比較薬が存在しないために原価にて算定されることになってお ります。つまり、原価計算方式の対象となる品目は、イノベーションの観点からの評価がよ り必要な医薬であります。今回のたたき台においては、営業利益率でメリハリをつけるが、 プラスマイナスの査定があり得るとの記載になっておりますが、これはイノベーションの評 価に矛盾し得るものを含んでいるとも考えられます。イノベーションを評価する意味では、 新規性・革新性を有する品目に対しましては、別途、有用性加算(I)に準じた加算を手当 てしていただきたいと存じます。  引き続き添付資料に記載しました項目につきまして2点ほど意見を述べさせていただきた いと思います。まず、6ページの1−4でございますが、キットの構造・機能に関する新規 性が認められないものについて、キット加算の対象外にすることが提案されていますが、そ のキットの機能・構造の新規性以外にも、その製品が示す疾病の特性や患者への有用性と利 便性といった製品全体のメリットを考慮した評価をしていただきたい。キット化することに よるイノベーションの評価が損なわれることがないよう、また、日本でキット製品を開発・ 上市するインセンティブが損なわれないよう御配慮いただきたいとお願い申し上げます。  次に、同ページの1−1ですが、小児適応または希少疾病の効能追加または用法・用量追 加を行った場合、または市販後に真の臨床的有用性を検証したデータが公表された場合、 次々期薬価制度改革時に市場実勢価格に基づく算定値に加算することが御提案されておりま す。小児や希少疾病への効能効果または用法・用量追加について加算すること、新たに証明 された価値を評価し加算することを歓迎したいと思います。新たに証明された価値によって は従前の薬価を上回ることも考えられますが、このようなケースにおきましても受け入れて いただきますようお願い申し上げます。  以上、EFPIAから意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。 ○遠藤部会長 ありがとうございました。  それでは引き続きまして、卸連からお願いいたします。 ○松谷意見陳述人 日本医薬品卸業連合会の会長を務めております松谷でございます。流通 の立場から、次期薬価制度改革等について御意見を申し上げさせていただきます。  基本的な考え方として、我が国の国民皆保険制度は世界に誇る制度であり、その維持・充 実を図ることに最大限の努力を払うべきであると考えております。  薬価基準制度は、公的医療保険制度と市場経済をつなぐ役割を担い、国民皆保険制度の運 営に重要な機能を果たしています。したがって、その運用に当たっては、公的医療保険制度 と市場経済の調和を図るため、安定・公正のための規制と、自由・効率の尊重という、時に 矛盾する理念の実現が要求されております。医療用医薬品流通は、市場経済の中にあって、 これらの理念に照らして改善しなければならない種々の問題を抱えています。  今回、流通改善懇談会は長年にわたる流通問題の解決のための緊急提言を公表いたしまし た。医療用医薬品流通の中核を担う卸業としては、これを真摯に受けとめ、メーカー及び医 療機関・薬局との誠実な価格交渉等を通じて、流通改善懇談会の緊急提言を実現するために 努力したいと考えております。  中央社会保険医療協議会をはじめ行政、医療関係者、医薬品産業関係者の御理解と御指導 をよろしくお願いいたします。  薬価基準制度の在り方についてでありますが、薬価の合理的な設定、有用な医薬品の安定 的な供給、新薬開発の促進等を主眼にして国民医療の確保・向上を促進するように設計する ことが必要であると考えております。  どのような薬価基準制度を採用するにしても、薬剤の償還価格基準としての機能を果たす 限りにおいては、市場実勢価格主義の原則を堅持することが重要であると考えております。 しかし、新薬開発のインセンティブを強く求められていること、診療報酬支払いの包括化、 DPCの普及などにより、出来高払い制度の縮小が進行し、薬剤の償還価格基準としての意 義が少し後退していることなどに伴い、薬価基準制度の設計・運用は新しい視点で検討され る必要性が高まっていると考えております。  薬価基準制度の見直しに当たっては、現行制度の問題点を検証した上で関係者の意見を十 分踏まえ、透明性のある議論が確保されることを強く要望いたします。  3番目に、市場実勢価格主義の尊重についてであります。薬価基準制度の大きな原則は、 市場実勢価格主義であります。その原則を堅持するためには、市場を通じた取引により形成 された価格がその医薬品の価値を反映した価格であることが肝要であります。取引当事者に は、市場実勢価格の適切かつ公正な形成のために努力が求められているものであります。  したがって、専ら財政的な見地に立って、薬価調査で得られた市場実勢価格によらない長 期収載医薬品の特例引き下げや不合理な市場拡大再算定による引き下げを行うことは、薬価 基準制度に対する関係者の信頼を著しく裏切るものであると考えております。また、本来、 特例措置として行われたものであるにもかかわらず、特例引き下げがあたかもルール化して いるというような扱いについては大きな疑問を感じております。  次回の薬価改定ではこのようなことがないように強く要望いたします。  次に調整幅についてであります。薬価基準制度の安定的運営の見地から、現行の流通安定 のための調整幅2%を維持すべきであると考えております。  調整幅の趣旨は、銘柄内の包装間格差等による合理的な流通コストの差異をカバーするこ とにより逆ざやの発生を防ぐことにあり、医療機関・薬局の経営原資となっていた過大な薬 価差益の段階的解消を図るために設けられたR幅とはその性格を異にするものであり、この 点について関係者の御理解が不十分であり、今後の調整幅の在り方やその水準について、議 論を深める必要があると考えております。  なお、調整幅については医療機関等の薬剤管理コストは含まれていないが、薬剤管理コス トは診療報酬・調剤報酬の内容として検討すべきものであると考えております。  総価取引の是正について。「競合品のない新薬であっても現行薬価制度のもとでは、総価 取引の影響などで薬価が循環的に下がっていくことをどのように考えるか」ということが 「次期薬価制度改革主要検討事項」の一つとされました。指摘のとおり、医薬品の価格を取 引の対象とする他の医薬品とまとめて決める総価取引は、個別の医薬品の価値に見合った市 場価格が形成されず、競合品のない新薬であっても価格が際限なく低下する可能性がありま す。  これは、流通改善懇談会の緊急提言にあるように、価値と価格が反映された取引によって 新薬開発の原資となる資金が回収されるという循環的サイクルの成立を阻害することになり ます。特に、競合品のない新薬などは単品単価取引を原則とし、総価取引が行われる場合で あってもその対象から除外する措置を講ずる必要がある。総価取引の是正は、市場実勢価格 主義を尊重する観点からも極めて重要であると認識しております。  したがって、流通改善懇談会の緊急提言に即し、総価取引の是正を図る必要がある。つい ては、卸をはじめとする流通当事者の努力は当然として、公的医療保険制度の適正な運用の 観点から、行政の適切な関与・指導と中医協の御理解と支援を求める次第であります。  次に、採算性の乏しい医薬品について申し上げます。採算性の乏しい薬価となってしまっ た局方品や補液などのエッセンシャルドラッグの一部、漢方薬などは、医療上不可欠で有用 であるにもかかわらず生産中止のおそれが出てきて、卸による供給が困難になるおそれも生 じております。  いまだ最低薬価が設定されていない製品の最低薬価の設定や、最低薬価が設定されていて もその水準では採算性の乏しい製品の最低薬価の引き上げ等、最低薬価制度の適正な運用を 図り、国民医療に必要な医薬品の確保に支障のないよう御配慮をお願いいたします。  なお、流通改善懇談会の緊急提言にもありますように、採算性の乏しい医薬品についても、 競合品のない新薬と同様に、総価取引の影響により市場実勢価格がその本来の価値に反して 低下することを防ぐため、総価取引の対象から除外する必要があると考えております。  後発品の使用促進についてでありますけれども、後発品の使用促進は、重要な行政課題で あり、卸としても可能な限り協力してまいりたいと思っております。ついては、後発品の使 用促進を図るための行政の施策の充実を希望しております。  卸が後発品の普及に取り組む上で、同一成分の後発品の品目数が多いため、すべての製品 を品ぞろえすることが困難であります。同一成分の後発品の品目数の上限設定など適切な措 置を講じていただきたいと考えております。  最後に頻回改定について申し上げます。薬価改定は、診療報酬改定と同時に行うことが適 切であるという議論もあり、薬価の頻回改定については、少なくとも、未妥結仮納入問題等 が改善し、薬価調査の信頼性が確保されることを前提に検討されるべきであると考えます。  すなわち、中医協の要請に基づき流通改善懇談会が取りまとめた緊急提言に従い、メーカ ー、卸及び医療機関・薬局の流通当事者が共通の認識に立ち、指摘された問題点を改善する ことが重要であり、薬価の頻回改定は、このような未妥結仮納入や総価取引の改善・是正の 取組の成果等を確認した上で議論することが適当であると思います。また、薬価改定そのも のには多大な社会的コストを要します。相応の財政的措置が講じられないのであれば、これ まで以上の頻度を上げる改定については、卸としては反対いたします。  したがって、当面、流通当事者の真摯な努力を注視していただき、あわせて、行政当局の 適切な関与・指導を望みたいと思っております。  以上でございます。 ○遠藤部会長 ありがとうございました。  それでは、ただいま4つの団体から御意見をいただいたわけでありますけれども、この御 説明につきまして御質問、御意見があれば、お願いしたいと思います。  御発言の冒頭で、御質問なのか御意見なのかをおっしゃっていただきまして、もし御質問 であれば、どの団体に対する御質問なのかをおっしゃっていただくと議事の運営上非常に助 かりますので、よろしく御協力のほどお願いいたします。それでは、御自由にどうぞ。 ○鈴木委員 米国研究製薬工業協会に対する質問です。4ページの「原価計算方式」の2行 目ですけれども、新薬が「革新性ゆえに発売後のリスクも高い医薬品」というのは、これは 副作用のことを言っていますか、それとももっとほかのファクターがあるのでしょうか。 ○関口意見陳述人 御質問ありがとうございます。ここで申し上げております「発売後のリ スク」というのは、画期的新薬であるがゆえに、本当に、その製品が市場で、あるいは医師 の先生方、患者さんに十分受け入れられるかどうかということは非常にはっきりしないとこ ろがございます。さまざまな努力も必要でございます。したがいまして、営業利益率といっ た観点では、十分な利益率が確保できるかどうかということに関していいますと、大変リス クが高いということを申し上げているつもりでございます。そういう中では、当然有害事象 といった点に関しましても、適正使用を徹底するというようなことでのさまざまな努力が必 要だということで、より費用がかかっていくといったような観点があるということを申し上 げたいということで、このように申し上げました。 ○遠藤部会長 よろしゅうございますか。  ほかに御意見、御質問ございますでしょうか。 ○丸山委員 何も質問しないで終わるのもちょっとあれなので、個人的にちょっと親しい岡 本さんの説明で質問するのを許していただきたいのだけれども、「新薬価制度案」の3ペー ジの表です。ずっと岡本さんの御説明を聞いていると、非常に耳ざわりよく聞こえてすっと 行くのですが、よく考えると、後発品上市から薬価をずっと落とすわけですね。すると、こ れ、従来よりも落とす。この下の黄色いグラフのほうを見ると、意図的かどうか、点線が後 発品よりも下回る。これはどうでもいいのですが、かなり下回っていくと、後発品を促進す ると言うし、先発品で、後発品が出た後の先発品の、要するに、マーケットへの投入の競争 が始まる。これは必ず実勢価格競争になりますよね。そのときに、先発品、特許期間中に高 い評価をして、高い評価という言葉は悪い、適正な評価をして、ある意味では収益を得て、 特許が切れるとこうなる。このときに、非常に重要だと思うのは、価格競争になって不採算 になっても、マーケットに存続しておいてもらわないといけない、そういうルールはどうい うふうに考えておられるのか、そこのところをちょっとお聞きしたいのです。 ○岡本意見陳述人 親しい丸山さんからの御質問ということでお答えするのですが、今の御 質問は、まだまだこれから検討しなければならない問題でありまして、今日は基本的な考え 方を申し上げてそれを具体的にどうするかということでありますので、だから、あまりその あたりについて、具体的に数字のイメージを入れたり、あるいは先発品や後発品の価格云々 というところまで議論しますね、これはかえって混乱するのではないかなと、こんなふうに 私は思っておりますので、今日はちょっと、そういう御質問をいただいたということで受け とめて、基本的な考え方についてのみ御説明させてもらうということでよろしくお願いした いと思います。 ○遠藤部会長 丸山委員、よろしいですか。 ○丸山委員 もう1つ。第一感として、そういうところに非常に危惧の念がありますので、 ぜひそこが納得できるようなことをひとつ考えていただくと、この案も生きてくるように思 います。 ○遠藤部会長 ありがとうございます。 ○小島委員 では私も、その岡本さんに。御説明いただいた新しい薬価の考え方なのですけ れども、私も、今御説明いただいた資料の3ページの上のほうの図なのですけれども、やは り特許期間中は公定価格を維持しろという御主張です。そうすると、その間の実勢価格との 乖離というのは相当開いていくのではないか。このことをどう考えるかということがあると 思うのです。実勢価格、メーカーとしては、すべてその公定価格が収入として、売上として 入ってくるわけではありませんので、公定価格を維持した間の実勢価格との乖離が出た場合、 これをどういうふうに考えるかということです。この辺はどうお考えなのですか。 ○禰宜意見陳述人 日薬連の禰宜でございます。お答えさせていただきます。  一応、今お話しございましたように、特許あるいは再審査期間につきましては、薬価改定 をある条件の中で猶予していただきたいというように考えております。その条件の中に入っ ておる場合につきましては、特許が切れて、そして、後発品が上市された段階で、その猶予 された率のものを引き下げをさせていただくというような考え方をとっておるわけでござい まして、基本的には、市場実勢価格を踏襲しながらその期間については猶予していただきた いと、そのように考えております。  以上でございます。 ○遠藤部会長 小島委員、よろしいですか。 ○小島委員 はい。 ○対馬委員 日薬連のほうにまず質問ですけれども、最後のページにシミュレーションの結 果が出ていますね。このシミュレーションについては、公表はされているのでしょうか。例 えば、インターネットか何かで検索すれば出るようになっているのでしょうか。 ○禰宜意見陳述人 いえ、これにつきましては、試算しているということでございまして、 公表はしておりません。 ○対馬委員 何らかの形でもって、この前提条件なりこの計算の結果についてお出しいただ ければ、もっと議論が深まるかなと、こういうふうに思いますので、何か工夫していただけ ればということが1点です。 ○遠藤部会長 では、そのような御意見がありましたので、日薬連、お答えをお願いします。 ○岡本意見陳述人 ありがとうございます。随分と、小島さんも含めて、関心を持っていた だいたようで大変喜んでおりまして、皆様方の御質問を聞いておりますと、基本的な考え方 を是とした上というか、それがわかった上での御質問のように受けとめましたので、大変私 もうれしく思っているのでございますが、御意見の趣旨あるいは試算のデータ等については、 これからいろいろな御議論を賜る中で、我々も皆様方の御意見をちょうだいしながら、必要 なものについては試算もし、また御説明していきたいと思っておりますので、ひとつ御理解 賜れればと思います。ありがとうございました。 ○対馬委員 あと感想が2つほどあるのですけれども、1つは、今回については「改革の骨 子(たたき台)」、これは、全体に画期性加算でありますとか有用性加算でありますとか、 相当上げているのです。そういう中で、私ども支払側からしますと、本当にそれで大丈夫か なと、こういった懸念も実のところはあるわけなのですけれども、そういう中で、市場拡大 再算定については断固反対だと、絶対反対だと、こういうことなのですけれども、全体の予 算編成は極めて厳しくて、私ども被用者保険にも被害が及んでいると、こういう状況なので す。そういう状況の中では、やはり全体をセットで、ないしはパッケージというのでしょう か、そういったことも含めてちょっとお考えいただければ大変ありがたいなという感想が1 つです。感想であり、また多少意見にもなるかもしれません。  それからあと流通のほうですけれども、前に伺ったときにやや流通の当事者としての改革 への意気込みというのがあまり感じられずに、質問をしたり、意見もしたこともあるのです けれども、今回のお話を伺いますと、流通としては真摯な努力をやっていきたい、見ていた だきたいと、こういうことですので、ぜひそういう心構えでもって、また実際にも実効が上 がるように御努力をお願いしたいと思います。 ○遠藤部会長 ありがとうございます。  ほかに御質問、御感想はございますか。 ○山本委員 感想といいましょうか、意見というか、特に質問ではないのですが、皆様の御 意見を伺っておりますと、基本的には、現行の薬価基準制度については、仕組みはともかく、 そういう在り方はよいのだろうと、ただ具体的な運用上問題があるという御指摘のように理 解をしています。その中で、いわゆる画期的な新薬をどう評価するかということについては 今回一定の方向が出たということを評価されつつ、他の部分について意見を述べられていて、 それぞれお立場が違いますので、御主張につきましては理解できる部分と、私には理解でき ない部分が多少あるわけであります。  一点問題は、イノベーションのかかったといいましょうか、大変イノベーティブな薬を評 価するという反面で、そこは一定の市場の中で、今ほど対馬委員がおっしゃったように、全 体の費用から考えますと、後発品をどうするかということが今回の大きな目的でありますか ら、そうした部分を考えていくと、どなたかもおっしゃったバランスというのは大変必要だ と思うのですが、その中で、薬価基準制度が一定下がり続けるという御指摘があったように 思います。それは確かに私も、薬を扱う者としては大変悲しいことだと思いますけれども、 一方で、単に売れたからというだけではなしに、それはもちろん要因ではあると思いますが、 実際には、基準価格と実勢価格の乖離というのもやはり、その下げの原因というふうにある のではないかと理解していますので、その部分について、やはり皆さんがおっしゃったよう に、新しくできた薬を価値に見合った価格をつけろと言いながら、それが急速に実勢価との 乖離がある中では、今の御指摘がなかなかしにくかろうと思うので、もし本当にイノベーテ ィブな薬を評価するのであれば、その価値に見合った使い方、あるいはプロモーションとい うものがきっと要るのではないか。それがなしに単に下がることだけを議論されても少し理 屈がなかなか通りにくいかなという感じがいたしましたので、おっしゃることは、そのイノ ベーティブな薬を評価することにつきましては、私は賛成でありますが、ただその一方で、 やはりどう売っていくかということもぜひお考えいただきたいというふうに考えています。 ○遠藤部会長 ありがとうございました。  ほかにございますか。よろしゅうございますか。  それでは、一通り御意見、御質問をいただいたということでありますので、本日のディス カッションはこのぐらいにさせていただきたいと思います。  日本製薬団体連合会、EFPIA、PhRMA、卸連の皆様、長時間ありがとうございま した。  次回でございますが、12月12日水曜日を薬価専門部会は予定しております。ここでは これまでの御議論、本日の議論も含めまして、平成20年度薬価制度改革の骨子の案につき まして、引き続き御議論をお願いしたいと思います。  それでは、本日はこれにて閉会いたします。引き続き基本問題小委員会を開催いたします ので、準備が整うまでの間、しばらくお待ちください。ありがとうございました。 【照会先】 厚生労働省保険局医療課企画法令第二係 代表 03−5253−1111(内線3276)