07/11/27 社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会(作業部会) 議事録 社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会(第3回作業部会) 1.日  時:平成19年11月27日(火)15:00〜17:00 2.開催場所:三田共用会議所 1階「講堂」 3.議事次第:(1)開会        (2)意見交換          ・国家公務員共済組合連合会          ・日本経済団体連合会          ・日本私立学校振興・共済事業団          ・日本弁護士連合会        (3)閉会 4.出席委員等    (委員)      大山永昭委員、駒村康平委員、田中滋委員、樋口範雄主査、南砂委員、      山本隆一委員                (五十音順、敬称略)    (オブザーバ)      山内 徹 内閣官房情報通信技術(IT)担当室内閣参事官      塚田桂祐 総務省大臣官房参事官(企画担当)    (厚生労働省)      薄井康紀 厚生労働省政策統括官(社会保障担当)      黒川弘樹 厚生労働省社会保障カード推進室長    (意見発表者)      藤塚 弘 国家公務員共済組合連合会顧問      原口正明 国家公務員共済組合連合会年金部長      遠藤寿行 日本経済団体連合会経済第三本部副本部長      加藤 豊 日本私立学校振興・共済事業団理事      金子 正 日本私立学校振興・共済事業団審議役兼企画室長      三宅 宏 日本弁護士連合会情報問題対策委員会委員長      清水 勉 日本弁護士連合会情報問題対策委員会副委員長      藤原宏高 日本弁護士連合会情報問題対策委員会委員                            (団体名:五十音順) ○ 樋口主査    定刻になりましたので、これから「社会保障カード(仮称)の在り方に関する検   討会」の第3回作業部会を始めさせていただきます。今月いっぱい、4回に分けて   さまざまな団体の方から社会保障カードに関して御意見をいただくという作業部会 を行っております。作業部会に限ってですが、議事進行役を務めさせていただいて おります樋口と申します。まだ委員の方で遅れておられる方がおられますが、こう やっている間においでになるということで議事進行させていただきます。本日は、 検討会の座長の大山先生もあとで参加される御予定であると伺っております。前回   と同様に意見交換ということで、まだ、しっかりした構想はまとまっておりません が、主な論点の整理というものをこの検討会で行っており、その点を中心にして、 それに特に関係のある団体の方々に御意見を伺うという趣旨であります。本日お越 しいただいているのは、4つの団体です。国家公務員共済組合連合会、日本経済団 体連合会、日本私立学校振興・共済事業団、日本弁護士連合会であります。よろし くお願いしたいと思います。まず、今日配付されている資料の確認からお願いした いと思います。事務局の方お願いいたします。   ○ 事務局    本日は資料を3点お配りさせていただいております。    ひとつめ、資料1は「主な論点の整理のまとめ」というものです。前回の意見交 換会と同様のものでございます。こちらは第2回と第3回の検討会で御議論いただ きまして、それをまとめ、それを踏まえて修正を加えたものでございます。この資 料につきまして、第1回の意見交換会で一部誤解のようなものがあったということ もあって、2点だけ御説明させていただきます。資料1の2ページ目の一番上です。 「 ICチップやカード券面にどのような情報を収録するか。カードの収録情報は、 できる限り本人確認のために必要なものに限定するべきではないか。」ということ   でございます。カードに何かたくさんの健康情報を載せるのではないかとお考えの   方もいらしたのですが、検討会の方向性としては、この記述のような方向で、必要   なものに限定するべきではないかという形になっております。2点目は同じページ   の真ん中ほどで、「3.カードの発行・管理のためのデータベース」というところ   でございます。カードに載せない分、データベースにアクセスして確認を行うとい   うことになれば、1つ目の・ですが、「各制度の保険者ごとに管理されているデー   タベースの資格情報を結びつけることについてどう考えるか。」ということがポイ   ントになるということでございます。こちらにつきましても、何か閲覧する情報を、   巨大なデータベースを作るのではないかというふうに思われた方もいらしたのです   が、基本的には資格情報を結びつけることをどう考えるかということであり、何か   ひとつ巨大なものを作るということとは異なっているということでございます。以   上の2点を念のため御指摘させていただきます。こちらが資料1となります。2つ   目が資料2です。こちらは第2回の検討会に提出させていただいた資料でございま   す。「社会保障カード(仮称)導入により目指す効果の例」というものでございま   す。資料3、3点目が本日出席いただいている団体の提出資料ということでござい   ます。本日は日本経済団体連合会様から御提出をいただいております。以上3点で   ございます。 ○ 樋口主査    ありがとうございました。早速、議事に入ります。本日の意見交換の進め方は、   過去2回と同じように今日いらしていただいた各団体の方々から、事務局からは1   0分程度ということでお願いしていると思いますが、ごく短い時間で恐縮ですが御   意見を伺いたいと思います。まとめて連続して4つの団体の御意見を伺う、その後   に委員の方々から御質問等をいただき、一緒に議論をしていくという形をとりたい   と思っております。最初に、国家公務員共済組合連合会の藤塚様と原口様から御意   見を承りたいと思います。 ○ 国家公務員共済組合連合会    国家公務員共済組合連合会の原口です。よろしくお願いいたします。本日は説明   の機会をいただきましてありがとうございました。早速、説明に入らせていただき   ます。まず、国家公務員共済組合連合会の概要を簡単に申しあげます。設置目的と   しましては、国家公務員及びその被扶養者の生活の安定と福祉の向上に寄与すると   ともに、公務の能率的運営に資することを目的としまして、国家公務員共済組合法   が制定されております。この国共法に基づきまして、各省庁等に現在21の共済組   合が設置されております。この各省庁等の共済組合では、厚生年金保険に相当する   長期給付事業のうち、保険料の徴収等の業務、健康保険に相当する短期給付事業及   び福祉事業を実施いたしております。私ども国家公務員共済組合連合会では、長期   給付事業のうち、給付決定・支払い、積立金の運用等の業務及び共同して行うこと   が適当な病院や宿泊施設の運営。といった福祉事業を実施いたしております。した   がいまして、私からは社会保障カードの対象分野のうち医療につきましては、各省   庁等の共済組合が実施いたしておりますので、年金に関して当会の現状や今後の取   り組みを説明させていただきます。当会では、年金の決定や支払いに関する業務を   的確に実施するため、組合員や年金受給者の情報を保有し管理いたしております。   情報の中身としましては、氏名、性別、生年月日、住所といった個人識別情報、い   わゆる4情報のほかに、組合員の資格取得年月日や資格喪失年月日等の組合員の資   格に関する情報及び給与や賞与等、組合員の標準報酬に関する情報といった年金額   の算定基礎となる情報を、資格を取得した時点で当会が個人ごとに付与いたしてお   ります長期組合員番号によって管理いたしております。また、組合員が年金受給者   になりますと、これらの情報のほかに所得税に関する情報や、支払金融機関に関す   る情報等が追加され、新たに当会が付与しました年金証書番号によって管理するこ   とになります。これらの情報に基づきまして、当会では年金を決定した際には年金   証書、年金を支払った際には年金支払通知書を、年金受給者に通知する方法で情報   提供を行っております。その他、年金の一部停止がされる場合がございますが、こ   の場合には一部支給停止通知書等、必要に応じて各種の通知書を送付しているとこ   ろでございます。また、これらの情報はすべて当会の電子計算機にデータベース化   された電子情報として登録しておりまして、当会の業務にシステムを活用するとと   もに、各省庁等の共済担当者が、ネットワークを介して年金見込額の試算をするな   どの業務を行っております。年金関係業務として、年金受給者に対して行っており   ます情報提供は、ただいまご紹介しました各種の通知書の送付がございますが、そ   のほかに、組合員や年金受給者に対して実施している年金記録情報等の提供サービ   スというものがございます。この中には、霞ヶ関WANを使った年金見込額の試算、   あるいは電子申請がございます。霞ヶ関WANを使った年金見込額の試算は、共済   組合の担当者向けに行っている情報提供でございまして、各省庁等の共済担当者が   所属する組合員から依頼を受けて、年金見込額の試算を行うものであります。これ   は霞ヶ関WANという非常にセキュリティがしっかりした枠の中で実施されており   ます。このシステムの個人情報保護がどうなっているのかということを申しますと、   当会より共済組合からお届けいただきました各共済担当者お一人ごとにユーザID   とパスワードを付与し、正当なユーザID等でログインした担当者のみが組合員等   の年金見込額の試算が行える仕組みになっております。次に電子申請でございます。   年金受給者が個人のパソコンからインターネットを活用して、連合会に年金に関す   る諸手続きを行うというシステムでございます。具体的には住所、払渡金融機関の   変更届、年金加入期間確認請求などがございます。このシステムの個人情報保護は、   年金受給者が当会ホームページの電子申請システムに入力した年金証書番号と生年   月日が、当会に登録されている内容と一致した場合のみ申請を受け付けるというこ   とにしております。また、この電子申請システムは、国で定めた汎用受付システム   の仕様に基づいて開発されておりまして、公的個人認証サービス等が発行する電子   証明書によって本人を認証する仕組みとなっております。ただし、年金受給者が高   齢のためかどうかわかりませんが、利用実績がごくわずかという状況が続きました   ため、現在は運用を休止しております。また、今後の情報提供サービスとして予定   しているものに、組合員本人がインターネットを通じて年金見込額や年金加入期間   を確認できるシステムと、年金見込額通知がございます。この組合員本人がインタ   ーネットを通じて年金見込額や年金加入期間を確認できるシステムは、基本的には、   先ほども申しました霞ヶ関WANによる年金見込額試算などと同じ仕組みを組合員   本人も使えるものとしようというものでございます。ただし、共済担当者の場合と   異なりまして、組合員本人以外の情報は一切提供しないという仕組みが必要になっ   てきます。また、セキュリティ対策としましては、ユーザIDやパスワードといっ   た霞ヶ関WANの仕組みや、本人確認のための長期組合員番号ですとか、基礎年金   番号といった本人が特定できる番号、及び生年月日等の照合という仕組みを取り入   れるほか、通信回線上のデータを暗号化することを予定しているところであります。   次に年金見込額通知でございます。現在、社会保険庁で実施しているねんきん定期   便と同様の通知を国共済でも行う予定としております。ただし、通知年齢等につき   ましては、組合員のニーズに応えたものにしたいと考えております。ただいま申し   あげましたような情報の提供を実施、あるいは計画しているところでございますが、   こうした業務を実施する上で重要なことは、情報提供先を確実に把握し、誤ってほ   かの人やほかの機関に情報を提供することを防止する仕組みでありまして、そのた   めには個人を識別する情報、個人ごとに設定された識別子が重要になってきます。   国共済では、長期組合員番号、年金証書番号が制度内でそれぞれ識別子として機能   いたしております。また、現在は年金の併給調整等、他の制度との連携を必要とす   る事務処理が増加してきております。そのため、年金制度間の連携に基礎年金番号、   地方自治体との連携に住民票コードが機能しているところでございます。社会保障   カードが導入されることにより、組合員等に対してどのような効果があるかは、本   検討会での資料「社会保障導入カードによる目指す効果の例」でしか我々としては、   今のところは情報がございませんので、この範囲で意見を述べるしかできませんが、   組合員や年金受給者の利便性を考えた場合、一枚のカードで年金・医療・介護の分   野で被保険者証として使用できることは、確かに組合員等の利便につながることと   思われます。一方、年金面で考えてみますと、組合員に対する利便性を見てみます   と、資料に示されている内容は「年金記録の確認」という効果のみでございます。   先に当会の情報提供の現状を申しあげましたように、当会ではインターネットを利   用した将来の年金額情報の提供を予定しておりますが、この情報提供を社会保障カ   ードで行わないということになると、果たして組合員の利便性の向上につながるの   か疑問が生じます。このため、社会保障カードを導入する場合には、年金保険者間   において、よく検討し、利便性やサービスの向上といえる提供内容を目指すべきだ   と考えております。次に年金受給者の利便性について考えますと「住所や支払機関   の変更をオンラインでできる。」と資料に書かれておりますが、当会では、これら   の変更手続きは電子申請によりできる環境を整備しましたが、利用件数が極端に少   ないため、現在は見合わせているところでございます。その理由を想定してみます   と、年金受給者ということで、年齢的な問題からパソコンを活用している方が少な   いこともあろうかと思いますし、カードリーダや認証手続に要する費用など、利用   者側に負担が生じることが問題の一因になっているのではないかと思われます。し   たがいまして、事務の効率化につながることでございますが、利用者側のインフラ   整備をどのように構築するかも重要な課題ではないかと考えております。なお、組   合員等の利便性に関する情報提供やオンラインでの手続きは、現在においても各保   険者が実施あるいは予定している内容でございます。今後は、費用対効果の面を含   め、よく検討するべきものであると考えております。一方、事務の効率化の面を考   えますと、資料には年金面の効率化につながる具体的な事務は示されておりません。   事務の効率化は利用者本人のインフラや社会的環境が整えば、組合員や年金受給者   の利用度が増え、当会の事務の効率化が図れるものと推測されます。また、保険者   間の情報共有化の有無につきましては、今のところは不明でございますが、年金受   給者の例をとって見ますと、住所変更手続きを1保険者で行えば、他の保険者すべ   てにその情報が行き渡るというワンストップの仕組みも考慮するべきではないかと   思料します。最後になりますが、社会保障カードには厳格な本人確認手段、確実な   セキュリティ対策を求めたいと思います。以上で私からの説明を終わります。      ○ 樋口主査    ありがとうございました。続いて日本経済団体連合会の遠藤様お願いいたします。 ○ 日本経済団体連合会    日本経団連の遠藤でございます。お手元に私どもの資料が配付されていると思い   ますので、そちらを使いながら説明いたします。中身は概要版と本編になっており   ます。恐縮ですが本編の4ページをお開きください。社会保障制度ICT化促進の   ための提言ということでまとめたものです。したがいまして、社会保障カードのみ   ではなく幅広に説明いたしたいと思います。この報告書の提言を2月にまとめた際   の問題意識は、4ページの上の四角い枠の中にございます。4つに分けてあり、主   な課題は上の3つです。行政、省庁、医療機関など、社会保障制度に関連するさま   ざまな機関がありますが、その間の情報連携がもう少しスムーズにいって欲しい。   そのため、これらの間の連携が行われて欲しいという点が1つです。二つ目は国民   に対し社会保障制度に関するわかりやすい情報を提供するようになって欲しい。三   つ目は国民、企業にとって、行政サービスの手続が煩雑なものをできる限り軽減し   て欲しいというということです。これらの意図を持って、ここに掲げらたような提   案をしたわけです。中身の話は、4ページと5ページにわたっております。2つあ   りまして、ひとつは、社会保障、社会福祉に関するポータルサイト、仮想空間上で   情報提供が行えるようなサイトをつくります。ふたつは、ポータルサイトにおいて、   私どもで「社会保障個人勘定」と呼んでいるのですが、その中で、国民の一人一人   が社会保障に関する情報を見られるようにしてはどうかと提案しています。5ペー   ジの下の図表1でイメージしながら見ていただきたいと思います。左側に国民がい て、真ん中に社会保障ポータルサイトを作る。ここの場の中に社会保障個人勘定を 置き、国民がこの社会保障ポータルサイトを経て、社会保障個人勘定の中で社会保 障に関する情報の照会、申請、あるいは通知の授受などを可能にしていきたい。そ のとき、社会保障あるいは社会福祉に関する各制度、それの運営主体の間をつなげ て国民一人一人にカスタマイズされた情報の提供を行えないかと考えています。こ れは理想的な形ということで描いたものですので、今回の社会保障カードの検討会 で検討されているように、年金・医療・介護の部分からスタートすることも十分に あり得ると思います。将来的に広げていって欲しいという意味合いでこの絵を描い ているわけです。次に、社会保障個人勘定を説明させていただきます。その図表の 上です。今、申し上げましたとおりに、情報照会、申請あるいは通知ができるよう にするということを考えています。この場合、主にどのような情報が必要となるか ですが、次のポツに書いてあるような、社会保険庁で進めようとしているねんきん 定期便の電子化も考えられます。短期の医療・介護保険等につきましては、単年度 ごとの制度ごとの負担と給付の水準のバランスを示すということで工夫した形のも のを情報提供していけないかと思い思います。また医療ですと世帯単位という問題 もありますので、個人単位プラス世帯単位という工夫もできるような構想を上げた ところでございます。次に6ページをお開きください。この検討会でご検討いただ いております。ICカード、社会保障カードにつきましても、必要性を指摘してい   ます。マル2の共通基盤の整備の1つ目のところ、【国民・ポータルサイト間の共   通基盤】のところをご覧ください。パソコンを使える人はもちろんパソコンを使っ   ていただいて良いと思いますが、いろいろなところに端末が置かれていて、国民が   等しく使えるような形にしていく必要があります。パソコンだけではなく携帯端末、   地上波のデジタルテレビなども端末になり得るとのことで、アクセスの手段を多様   に広げて欲しいと思います。次のポツでは、それを使うときに、例えばICカード   のように、個人の認証がしっかりできるものを使っていただきたいと提言していま   す。個人特定の話ということで、私どもとしては、基本的にできれば統一して生涯   変わらない方法が望ましいのではないかと思っています。そのひとつの例として、   社会保障番号を提言いたしました。もちろん技術的にもっと優れていて、国民が使   いやすい他の手段があれば、そちらの検討もぜひやっていただきたいと思っていま   す。国民とポータルサイトの間だけではなく、ポータルサイトと社会保障の関係機   関の間も、非常に重要なテーマになります。ここの検討会の検討範囲とは少しずれ   るかもしれませんが、こちらの間もつなぐ仕組みも将来的には必要になってくるの   ではないかと思います。その場合には、特に国民や企業が行う事務手続の簡素化も   併せて考ていただきたいと思っています。7ページです。国家公務員共済組合連   合会さんからも御指摘がありましたが、安全性の確保について、私どもは非常に重   視しております。その場合ICカードですが、基本的にはこのカードの中にはデー   タを保管せず、電子上での身分証明書というような役割を果たすことでどうかと考   えております。データ交換が必要になる場合につきましては、PKIという御提案   があったと思いますが、その活用は、ぜひ進めていく必要があるかと思います。次   に(5)です。社会保障制度、あるいは社会福祉制度に使うことを申し上げましたが、   将来的に他の分野への活用も、電子政府をにらみますと必要になると私どもも思っ   ています。これが進みますと、事業主にとって、今回の年金・医療・介護だけに限   ってみても、社会保険分野での届け出、申請の手続を相当程度簡略化できると期待   しております。例えば、現在、年金手帳を民間会社ですと多くは事業主が保管して   いる場合がございますが、年金手帳をICカード化して個人に配りますと、個人に   保管いただくことになりますので、カードの保管制度が事業主から離れています。   それに伴いまして、例えば年金手帳の再交付、あるいは健康保険証の滅失届とか再   交付の申請等というものが、事業主あるいは被保険者が事業主経由で行うという場   合もありますが、これも基本的には個人個人の被保険者などが行っていただけるの   かと思っています。被保険者、国民年金の第三号被保険者、あるいは健康保険の被   扶養者の方々の住所、お名前、生年月日の変更につきましても、事業主を経る場合   がありますが、社会保障カード等を持っていらっしゃることからして、個人で申請   なり、あるいは変更手続等を行っていただけるような仕組みもとり得るのかと思っ   ております。この面からも、事業主側からすると事務負担等の軽減になるのかと思   います。電子政府がらみのことで、年金や健康保険におきましては、被保険者資格   の取得とか喪失に関し、年間で何百万件もの届出があります。これもいろいろな仕   組みを考えないといけないと思いますが、社会保障カードというようなものが作ら   れた場合には、事業主が行う資格の取得・喪失の手続を事業主が行う場合であった   としても、電子的な処理が可能となる形での取り扱いをぜひ考えていただきたいと   思います。日本経団連としては、こうした年金・医療・介護全体ICT化が進んだ   あかつきには、特に医療・保険分野での活用を通じて医療費の分析などを行った上   で、医療の標準化・透明化・合理化として社会保障給付費の合理化を図れるのでは   ないかと期待をしております。国民にとってのメリットということでは、当面、年   金・医療・介護の機能を持たせると伺っておりますが、関連することであるのであ   れば、国民へのお知らせする機能を持たせても良いのではないかと思っております。   例えば、妊娠・出産というイベントに関しては、健康保険の方で出産一時金とか出   産手当金が出ます。それに関連して、例えば雇用保険でいうと育児休業給付、ある   いは児童手当の給付がありますが、こうしたお知らせを併せて国民一人一人に行   なえば、よりメリットか多くなっていくのではないかと思っています。一人の人が   生まれて、学生から入社して、結婚、退職して、亡くなるまでの間、イベントごと   に、こうしたお知らせ機能をもたせれば、より幅広く国民にメリットが生じるので   はないかと思っています。以上です。 ○ 樋口主査    ありがとうございました。第3番目です。日本私立学校振興・共済事業団から加   藤様お願いします。 ○ 日本私立学校振興・共済事業団    今、紹介いただきました日本私立学校振興・共済事業団の加藤でございます。初   めに社会保障カードの在り方の検討を進めるに当たりまして、このように委員の皆   様、また関係団体の皆様と意見交換の場を設けていただけたことについて感謝申し   上げます。当事業団は、お配りしてあると思いますが日本私立学校振興・共済事業   団法及び私立学校教職員共済法に基づきまして、私学への経常費補助等、私学振興   の業務と、私立学校に勤務されている教職員に対して公的年金、これは私どもの用   語では長期給付事業と申します。医療保険、これは短期給付事業と申しま。、それ   と福祉事業、福祉事業の中には人間ドック等の保健事業、宿泊施設事業及び病院事   業、こういう福祉事業を一体的に行っている共済組合類型法人ということでござい   ます。なお、私学振興業務につきましては、法律によりまして独立行政法人の手法   が適用されるということになってございます。今回は第3回の作業部会ということ   でございます。前2回までの作業部会までの内容を考慮して簡単にお話をさせてい   ただきたいと思います。医療保険者としての立場から見た場合、気にかかることは   保険証のことでございます。当初、社会保障カードはICチップ付きのカードと伺   ったときに、ICチップにはさまざまな膨大な情報を収録していくものと考えてお   りました。これまでの会議等における黒川室長の御説明等をお伺いいたしますと、   ICチップには多くの情報を収録するのではなく、別に設けられる情報センターの   データベースで基本的な情報を収録し、詳細な情報は各保険者等のデータベースに   アクセスするような方向で検討されているように伺っております。このことから、   社会保障カードの表面上に従来の保険証と同様の記載事項がないとすると、保険証   を確認するすべての保険医療機関及びすべての医療保険者において、事前にインフ   ラの整備がされていることがそういう効果をあらしめるための前提になるように思   います。このインフラ整備が一部でもなされていない、未到達の場合につきまして   は、社会保障カードとは別に保険証が今と同様に必要ということになりまして、医   療保険者としてのそういう意味でのメリットがないのではないかと思えます。次に   この打ち合わせ会の中でこういう社会保障カードを導入した場合の1つのメリット   として、加入者資格あるいは組合員資格を喪失したあとの受診による医療費の過誤   調整の改善について、それが改善されるのではないかという事項として取り上げら   れているようではございますが、このことは、もう既に前2回の作業部会でもあり   ましたように、本人もしくは事業主、私どもの場合には事業主は学校でございます   が、私立学校から被保険者への届出によって資格喪失を保険者が把握するものです   ので、社会保障カードを導入したことで、その手続きが、今、私どもが行っている   ものと変わるものではなく、導入がそのまま学校と我々保険者との関係におきまし   て、それが改善につながるものではないというふうに思われます。また、社会保障   カードは、一般的には個人が情報閲覧やそれぞれの個人情報についての手続きなど   を、認証の観点では効果が高いということは、各関係団体からも御指摘のとおりで   ございます。私どもはそれについて異議はございません。次に私どもは、医療保険   事業を行うとともに、年金保険者としての立場もございます。現在、御案内のよう   に提案されている法案の審議自体は棚上げにはなっておりますが、被用者年金制度   の一元化に向けていろいろと法案が作成され検討されている過程において、各保険   者の役割及び機能を前提として、年金制度全体で情報の共有を図り、ワンストップ   サービスを実現するということが、年金制度一元化に伴う制度改正の内容として大   きな前進点として掲げられております。今回の社会保障カードの在り方について考   える場合も、各医療保険者が現に今、有している役割や機能を踏まえた方向で検討   していただくということをお願いしたいと思っております。最後に、私ども保険者   が保有する個人情報は、その主要目的を明確にして、保険者と加入者との信頼関係   を前提に管理しております。社会保障カードによりまして、閲覧可能とする医療や   年金の情報や用途の検討に当たりましては、個人情報を管理する責任主体を明確に   し、情報の一元管理に対する国民の不安を一掃することが前提的に必要であると思   っております。今後の社会保障カード導入の検討に当たりましては、その導入方法   や形態により、多額の費用が必要となるという問題もあると思いますが、私どもと   しても当然ながら掛金で事業を運営している立場からして、加入者や学校法人等へ   の大きな説明責任がございます。つきましては、各保険者や医療機関やサービス提   供事業者等の十分な意見交換の機会を今後とも引き続き設けていただけるように要   望したいと思います。以上でございます。 ○ 樋口主査    ありがとうございました。最後に、日本弁護士連合会、日弁連からお3方にいら   していただいております。三宅様、清水様、藤原様、よろしくお願いいたします。 ○ 日本弁護士連合会(三宅氏)    日本弁護士連合会の意見を聞いていただける機会をお作りいただきましてありが   たく存じます。日弁連では、これまで個人情報の保護に関しては個人情報の保護法   の制定に当たり、プライバシーの保護の観点から問題があるのではないか。という   ことを指摘してまいりました。今回の社会保障カードの在り方に関しましても、こ   れが社会保障番号を導入するということであれば、そのつけ方いかんによっては、   プライバシーに対して重大な脅威をもたらすのではないかと懸念し、10月23日   付で社会保障番号制度に関する意見書というものを取りまとめて公表したところで   ございます。本日は、この社会保障番号につきましては、既に意見書がお目にとま   っていると思いますので、ここでICカードである社会保障カードについての意見   について述べさせていただきたいと考えているところです。清水副委員長と藤原委   員から具体的な意見を述べさせていただきたいと存じます。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    副委員長の清水から説明させていただきます。お手元に私のメモが届いておりま   すか。これは私どもの委員会の中で議論をしている最中で、私と隣の藤原が主にま   とめ役なので、私の名前となっております。相当程度委員会で議論をしているとこ   ろですが、日弁連の意見ということではありません。結論としましては、社会保障   カードは、年齢・判断能力等を問わずすべての人々に所持させるものとして実行す   ることが予定されているものでありまして、多くの問題が考えられるところから、   そういう諸問題について検討し、修正する必要があると考えております。まず、結   論に至った理由については、はじめに書きました。次の所持の強制と自己責任とい   うことです。ICカードが本人確認というところと結びついているカードであると   考えた場合、かつ国民全員、さらには在留外国人についても全員に所持させるとい   うことからすると、自己管理責任ということが非常に重要なポイントになってくる   と思います。今回、対象者がすべての人になるために、果たして適切に管理できる   かどうかという問題が、事実上、法律上で起こりまして、実際に社会保障カードを   利用するものは、本人ではなく親子とか兄弟、姉妹、介護者、知人、友人、近所の   人になることが当然に予想されるわけです。その人間関係は常に良好とは限りませ   んし、所持者が本人の利益に反し、所持者のために利用することはないという保障   もありません。そういう状況で、社会保障カードにおいてカードを所持する本人の   自己責任という考え方はとりにくいのではないか、という根本的な問題点があるか   と思います。次にカードのセキュリティについてです。これまで私どもの委員会と   か日弁連では住基カードについても検討してきたわけです。それとの対比で、今度   は社会保障カードについても考えております。恐らくこの社会保障カードについて   検討されてきた方についても、住基カードを踏まえたものとしてこのカードを考え   ておられると考えます。まず、カードの表面からカード所有者の個人情報が読み取   れない仕組みにする、ということが必要かと思います。住基カードですと券面で個   人情報が読み取れる、顔写真つきで読み取れるものとそうでないものがあります。   読み取れる形というのは、好ましくないのではないかと考えます。また、カードI   Cチップの中からカード所有者の個人情報が引き出せない仕組みにしておく必要が   あるだろうと考えています。暗証番号等で本人が第三者に脅されて引き出すことが   できるというのは、日常的に容易に想像できることであります。脅されなくても、   さまざまな言葉をかけられて、あるいはもともとは悪意のない形でそれを知ってし   まい入手できるということが想像されますので、そういう点からも問題があるだろ   うと考えます。結局は、どこまでカード端末機の使用者を制限するか、カードの使   い勝手に多大な影響がありますので、メリットとデメリットを慎重に比較検討する   必要があると思います。つまり、ここを余り制限しすぎると、自宅からということ   はおよそ無理になり、かといって自宅からでも簡単に見られるということになると、   それはそれで非常に問題が起こると考えます。次に、カード所有者自身も自らの識   別情報を知らない仕組みが良いだろうと考えます。カードに記録されている識別情   報を他人に悪用されないためには、カード所有者自身も自らの識別情報を知らない   仕組みにする必要があると考えます。カード所有者が覚えやすい統一番号を導入す   るということをしますと、アメリカでは解決困難な状態になっている社会保障番号   制度があるがゆえの成りすましの問題で、これの被害をなくすということはおよそ   不可能な状態にアメリカは陥っているわけです。そういうことが起こらないように   するには、カードの所有者自身が識別情報を知らないという仕組みにする必要があ   る。識別情報は単純な番号である必要はないと考えております。住基ネットとの関   係で言いますと、これは断絶をしておくべきであると考えております。地方自治体   が把握している個人情報を収集して一元管理している住基ネットが、今の仕組みは   そうなっていますが、そういうものとは完全に独立して独自に電子証明発行のため   の認証機関を構築するべきである。ということです。これを、また別に作ることに   よって費用等の問題があるかもしれませんが、それ自体の費用の問題をどう考える   かはともかくとして、住基ネットとリンクさせるべきではないのではないか。社会   保障カードの社会保障番号、社会保障カードの説明の中には、住基ネットと関連づ   けるかのような選択肢もあるという説明があったと思いますが、その点は切り離す   べきであるというのが我々の考えです。個人情報を検索して名寄せをすることがで   きない仕組みにする。これは、この検討会でも議論されてきていると思いますが、   この点は名寄せはできない仕組みにする必要がどうしてもあるだろうと思います。   被害を最小限度にくい止める制度の必要性ということで、これは個人情報が漏洩し   ない、幾らカードが完璧であるといいましても、それを扱う人間は完璧ではありま   せん。被害がどこから漏洩するかということは保障の限りではありませんので、被   害が発生するとしてもそれを最小限にするという仕組みにする必要があると考えま   す。そのためには、それぞれの制度で個人情報の分散処理をすることが必要であっ   て、かかる分散処理による個人情報の管理が国民によるカードの使い勝手を阻害す   ることは少ないのではないかと考えます。カードに記録されている個人情報をバッ   クアップする必要性。この点については個々人がバックアップするということは負   担が大きくなりますので、これは制度としてバックアップの仕組みをとる必要があ   ると考えます。今、申しあげた内容といいますのは、社会保障カードの問題に限っ   てということでありまして、三宅委員長も言いましたように、社会保障番号制度と   リンクした上での社会保障カードということになりますと、社会保障番号にそもそ   も非常に大きな問題があると考えています。 ○ 日本弁護士連合会(藤原氏)    藤原から若干補足をさせていただきます。3つの制度を1枚のカードにするとい   うことは物理的には可能なわけです。それは3つの制度にそれぞれ対応した電子証   明書をそれぞれ格納しておけば良いわけであって、3つの制度に対応した電子証明   書を共通化する必要は何もない、というのが1つのポイントです。その理由は、そ   れぞれの電子証明書は一生涯変わらないものと、途中でどんどん変わるものと、失   効するものと、かなり性格が違う。運命が違うわけであります。ですから、その3   つの電子証明書をそれぞれ入れざるを得ないと考えている理由です。年金は一生涯   変わらないということでは良いかもしれません。健康保険はどこに加入するかによ   って全部変わってくるわけであります。その都度、電子証明書は失効するわけです。   つまり失効することによって必ず証明検証者が失効しておりますと、再発行の問題   になるということで運命が違うということを指摘したいと思います。次の問題は、   カードを所持していなかった場合に、どのようにイレギュラー処理をするのかとい   うことについては、ちゃんと手だてを考えておかないといけないということです。   そのときにカードの表面に何か書かせることによって、紙としてのアナログ処理に   戻すということは避けがたいと思います。そのときにカードの表面に何かわざと余   計なことを書かせて、その場合には従来のように紙の健康保険証と同じように使わ   せましょうとか、紙の年金手帳と同じように使わせようという形でやりますと、結   局はカードの表面に書かれてアナログ情報が流通することになる。したがって、電   子的に使うというように決めたときには、電子的にだけ使うべきであって、持って   きていないときには本人確認を別途、従来のやり方でやるか、本人確認を別途でし   てやるということで、カードを使わない処理ということを常に考えていただきたい。   ここがなかなか制度のバランスが難しいと思います。具体的にどういうやり方をす   るかについては、そのくらいの点を突っ込んで考えないと、PKIの電子証明書を   使うから安全であるということには到底ならないと思っているわけであります。 ○ 樋口主査    ありがとうございました。では4つの団体から、今のように御意見を伺いました   ので、この作業部会の委員との間の意見交換あるいはとりあえず委員の方から幾つ   かの質問をいただきたいと思います。質問ないしコメントです。コメントと質問の   区別をせずに以下議論を展開していきたいと思います。委員の方いかがでしょうか。    ○ 田中委員    最後の日弁連の方に伺います。大変に興味のあるお話を伺いました。アメリカの   社会保障制度番号では、後戻りが不可能なほどの悪用がいろいろあるというのは、   具体的にどのようなことが行われているのでしょうか。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    アメリカの社会保障番号の場合には番号は紙に書かれたものとして、もともとは、   社会保険の給付や保険料徴収事務の効率化を図るために個人識別方法として個人単   位でつけた番号ですが、それが制限なしに使われる。アメリカの場合には戸籍がな   いので、それが身分証明のような形でさまざまなところでクレジットに使ったりと   か、お店で物を買ったりとか、不動産を買ったりとか、いろいろなところでその番   号で買うわけです。すると、その番号とその人は同一の人である、そういうデータ   が蓄積されていき、そのデータを集めてそれを商売にする人が出てきたりとか、あ   るいはその名前とか番号がわかっていると、実際には身分証明とかは、固い意味で   の戸籍のようなものがないわけなので、その番号で名前ということになるとその人   である、そういうことでクレジットカードが作れたりしてしまう。例えば、本人が   海外に何年間も行っている間に、その人の番号と名前で多くの借金が作られてしま   ったり、買い物をされたりという問題が多発しているということです。これが、今、   アメリカの連邦の議会などでも証言者が出て、非常に詳しい証言がなされておりま   すので、そちらを参照していただけると詳しくわかると思います。 ○ 田中委員    ありがとうございました。もう1点です。今度は質問です。カードの表面から個   人情報が読み取れない仕組みは確かに重要だと思います。しかし、現在の紙ベース   の健康保険証などでも他者は内容を読めます。現在の紙ベースの健康保険証を拾っ   た人でも読み取れます。それと比べてカードになると何か危険が増すとの意味でし   ょうか。それともカードでも同じだから気をつけろということでしょうか。 ○ 日本弁護士連合会(藤原氏)    問題は、定期券に入れて定期のように日常持ち歩くことを想定するかどうかの問   題になろうかと思います。 ○ 田中委員    私は健康保険証を持ち歩いております。 ○ 日本弁護士連合会(藤原氏)    そこは若干考え方があるのではないか、人によって理解の仕方が違うのではない   かと思います。個人情報が書いてあるから、あえて持ち歩かないという選択肢も今   の制度ではできるわけですね。 ○ 田中委員    逆に個人をアイデンティファイするために必要で、例えば、私は年齢証明が求め   られるときに用います。ドライバーズライセンスと同じです。いずれも個人情報が   載っております。住所も。それと、この社会保障ITカードの危険の差は何を指摘   なさるのでしょうか。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    それは住基カードを作るときも、最初は券面に写真のないものだけを考えていた   ようですが、普及を考えると身分証明の代わりができた方が良いだろうということ   で、御承知のように顔写真と住所と氏名が書かれたものというものも作りました。   それの問題点というのは、券面に書いてあること以外にも使えるカード、非常に価   値のあるカード、という意味をもっております。例えば、表に何も書いていないも   ので、端末に入れないと誰のものかということが分からない状態であれば、本人に   しか、これは自分のものであるというのはわからないわけです。しかし、例えば、   落としたときに、それが私のものである。あるいは藤原のものであるということは   誰にも分からないわけです。それを表に書いていない限りは、これは私のものであ   るという使い方はできないわけです。そのカードでね。ICカードはどういう利用   範囲を持つのか、端末の管理の在り方がどうあるかによっては、表に見えることに   よって中身でアクセスできる人が誰かということが表上から分かってしまうわけで   すから、それはプライバシー上で問題があるということですね。 ○ 田中委員    ICカードではなく単なる紙でも、それで、もしかすると消費者金融金から金を   借りることはできる。    ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    それにしか使えませんし、医療機関にいったときに、それを持っていったとして   も、そこに書かれているものとこの人は違う人ですから、医療機関がそれを端末に   入れてデータを出すということもできませんよね。    ○ 田中委員    本体の中に入っている方の情報を引き出せるかどうかの技術によって危険である   という御指摘ですね。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    端末の管理の仕方と、そこからアクセスできる情報がどういうものか。 ○ 田中委員    そこがもし仮に完璧にシャットアウトできるとしたら、今あるカードとのリスク   度は同じになりますね。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    完璧であればですね。 ○ 田中委員    ロジックとしてはそうなりますね。完璧かどうかわかりませんけどね。 ○ 日本弁護士連合会(藤原氏)    そこは1点、国民感情というか、例えばカードを落としたときに、君のカードを   持っているのだが、ちょっと逢いたいといわれたら、単に紙のカードであればそう   いうことは嫌だから捨てて再発行を頼もうと思うかもしれないが、そこから何か引   き出されたら困ると思ったら、不安を感じませんかということです。つまり、単に   紙が、捨ててなくなるそこに書いてあるものだけではなく、それをコンピュータに   つなぐことによっていろいろなアクセスが引き出せるものであるということになる   と、付加価値を持ってきて、逆に不安感を感じないかということです。    ○ 田中委員    おっしゃるとおりです。常に本体の情報との壁がそこでどれくらい入るかどうか   にかかっているという議論ですね。ありがとうございました。 ○ 山本委員    日弁連ばかりで申しわけないのですが、3つの機能を別々に装備する1枚のカー   ドにする以上は、更新等の問題が生じるわけです。もう1つ、この委員会で時々、     問題になっているのは、現状では問題がある。つまり、紙の健康保険証と年金手帳   と介護手帳。介護手帳をふだん持っている人は少ないでしょうが、私も健康保険証   は毎日持ち歩いていますし、年金手帳は家に置いてあります。例えば健康保険証だ   と、ある人が継続して一人の人であるということを、本人が知られたいにもかかわ   らず、それを知ることができない状況というのが、特に医療の場合には起こってお   ります。つまり、現状の健康保険証ではできない機能がある。それが例えば、5年   前にここに入院した人が、今日、病院の前で倒れているかどうかというのが、本人   にとっては、それが知られた方がはるかに早く処置ができるのに知られない。本人   は健康保険証を持っているにもかかわらず、その間に例えば職を2度も変わってい   れば、まず追跡は不可能です。同姓同名はいくらでもいらっしゃいますから、病院   では名前でその患者さんを識別することはできない。すると過去の情報と、現在の   情報を御本人が希望するにもかかわらず、ないしは希望していたにもかかわらず照   合できないということは、これから特定検診も始まりますが、検診分野とか、子供   のときに打った予防接種が将来どういう問題を起こすのかという話を含めると、現   状は、非常に保健医療の分野ではできていない状況がある。それを可能にするため   には、リンク情報をずっと追跡できないといけない。もちろん御本人が希望すれば、   リンクを切れば良い。ですが御本人が切らないで欲しいと言っている限りは、追跡   できるということが必要だと私は考えております。その点に関してはどうお考えに   なりますか。    ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    技術的な部分については議論をしておりますが、今のようなサービス内容をどう   するのかということについては、十分に議論をしていません。これまでいろいろな   ところで議論をしてきたことを、私の意見ですが、そういう選択をされる方はいる   と思います。ただ医療機関ということでもさまざまな医療従事者がいて、個人デー   タをきちんと管理するところから非常にルーズなところまでさまざまあります。ど   の端末からもすべてのその人の医療データが出てくるという仕組みにせざるを得な   い。 ○ 山本委員    誤解があると思います。現在の社会保障カードで、その人の医療情報にアクセス   できるなどということは、ここでは一度も議論されていないし、多分不可能だと思   います。要するに、被保険者としての情報を保険者のデータベースにあるのを確認   できる。年金加入者としての情報を確認できる、介護保険の管理者としての情報を   確認できる。ICカードの機能としては、今、ここで議論をしているのはそれだけ   です。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    そうだとすれば、それは利便性を感じる人はいると思います。今、おっしゃられた   のは、そういうことで利便性を感じる方はいらっしゃるということですので、私も   それは認めます。国家公務員と民間を行き来したりする人もいますし、地方公務員   と国家公務員の間を行き来する人もいます。そういう制度間を動くということは、   当然ながら念頭において、そこはつながっていくようになっていた方が便利である   ということは仕組みとしては言えると思います。 ○ 山本委員    前回の意見交換会で、健康保険組合の方にお聞きしました。それだけではなく事   業所が変わるだけでも番号は変わっていくのですね。したがって健康保険証番号、   記号番号というものを、確実な本人の識別に使うというのは恐らく不可能ですね。   医療というのは本当に個人に対してある意味では侵襲的なことをするわけです。病   気を治すためということでね。そういうことをするのに、本当にこの人がどの人か   わからない状態でやらないといけないというのは、医療従事者としては、非常に不   安に思うところであるし、恐らくそういうことをもし真剣に考える一般市民の方が   おられたら、もちろん過去のことを知られたくないという気持ちは当然いろいろな   方にあるので、御本人の希望によって、それはリンクを切らなければいけないとい   う機能は当然だと思いますが、希望する方には情報をつなげていける仕組みという   のは、制度としてあっても良いのではないかと考えますが、全くそれはだめだとお   っしゃられたので、その辺は全くだめなのか、オプショナルなのか、つまり拒否は   できるがあっても良いのか、というところがちょっと御意見をお聞かせ願えればと   思います。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    そこのところは選択としてあり得るのではないでしょうか。もともとの社会保障   カードというのは、すべての人にというベースになっているので、選択性というの   は、今までの資料としてはどこにも説明されていない。ICカードによるサービス   というのは選べるというところ、入ります・出ますというところができるというと   ころで、プライバシー保護の機能も果たしているわけです。おっしゃるように、私   はこれを選ぶという場合には、意識的にある面では何らかのリスクは伴っても利便   性を優先するということはあり得ると思います。    ○ 山本委員    カードを持つことが選択できるか選択できないかということは議論をしていない   のです。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    そのサービスですね。 ○ 日本弁護士連合会(藤原氏)    今の点は、全く個人の意見として思うところをお話させていただきます。従来、   議論をされている健康保険証IC化については、多大なメリットはある。逆にいう   とチップの中にもっといろいろなものを入れて緊急時に読み出せるようにしたい、   という構想が当初あったように思います。そういう制度と、問題は年金をつけると   いうことによって、逆に非常に片一方が立てば、片一方が立たないということにな   らないか、そういう気がしているわけです。それは法律論ではないので、僕らは立   ち入らないというように思っております。問題は、所持を強制する制度として考え   るか考えないかで、まるで違うと思っています。僕たちの今までの検討は、所持を   強制されるものであるという前提ですべて考えてきています。今の話のように選択   性ではどうだといわれると、建てつけが全然違うと思っております。    ○ 山本委員    誤解があってはいけませんから申しあげます。所持を強制するか強制しないかと   いうのは、委員会として議論をしたわけではなく、カードの中に情報を入れるとい   う議論は余りないのです。以前、大昔に健康保険証ICカード化のときに最低条件   のアレルギー情報とかを入れるということがあったのは承知しておりますが、ここ   ではそういう議論はほとんどされていなくて、どちらかというと、本人の識別情報   だけを格納するというような議論が主体です。しかも、カードを持っておられても、   例えば、ある時点から過去の情報とのリンクを切るようにするべきではないか、議   事録を見ていただければわかります。それは議論されていて結論が出たわけではな   いのです。御理解をいただくためには、要するに、自分のここからここまでの健康   情報に関しては、知られたくないから切ってしまうということが選択することがで   きた方が良いのではないか、という発言は委員からございました。そういうことを   前提にしても、そうではない人のために追跡をするためのリンク情報、簡単にいう   と共通番号ですが、それがあってはいけないのか、良いのか、ということをお聞き   したかっただけです。今、お答えをいただきました。それで結構です。    ○ 樋口主査    ほかの委員の方いかがでしょうか。 ○ 駒村委員    経団連の遠藤副本部長にお聞きします。資料3のこれは経団連が考えてICT化   ということでございますが、いま我々で議論をしているのは資料1のような形の年   金の加入記録、レセプト情報、特定健康検診情報というようなものを今、載せると   いう議論をしています。こういうものについて、こういうカードについて民間で活   用するという可能性というのは、どういうシチュエーションを想像して良いのかと   いうことです。こういう個人情報を民間企業が知ることによる経済的な価値という   のはありますでしょうか。    ○ 日本経済団体連合会    質問の趣旨が一般的な事業会社がこのカードを使う場合ということかと思います   が、社会保障分野の情報を民間企業で使って事業化することを想定している会社は   あると伺っています。例えば、フィットネス産業などですと、どのような健康状態   の方なのかということは、フィットネスのメニューを組む上で非常に大切な情報に   なってまいります。もちろん個人的に情報提供をしていただき、それに沿った形で   メニューを組むことは当然あり得ると思います。それ以外に、社会保障に関する情   報、特に医療とか介護の分野かもしれませんが、それを使ってその人個人にあった   ものを作ることを事業化することは、当然ながら発生し得ると思っております。 ○ 駒村委員    例えば、本人しか見られない状態であるとしたとしても、それが何らかの形で印   字ができたりということができるときに、例えば年金の過去の加入記録や特定検診   の情報のようなものを見せてくださいということによって、顧客のセレクションの   ようなことで使う可能性というのは、企業サイドから見るとありますでしょうか。 ○ 日本経済団体連合会    セレクションと申しますと、お客様にあった形の情報提供、あるいは例えばフィ   ナンシャルプランナーであれば、この方のこれまでの年金加入記録に基づいて、公   的年金はこれくらいもらえるからこの方にあったフィナンシャルプランを作って差   し上げることも考えられます。そういう意味では、情報提供をしていただければ、   非常に民間企業としてもやりやすくなるのではないかと思います。医療の分野、介   護の分野、それぞれ個人のプライバシーにかかわる情報ですので、提供の仕方につ   いては十分に慎重にならないといけないと思いますが、それを使った形でどう事業   化していくかは、十分にあり得る話だと思っております。 ○ 田中委員    経団連の遠藤さんにもう1つお聞きします。社会保障個人勘定を創設することの   意味です。これがどういう意味を持つのか。年金の場合には負担と給付のバランス   といわれた理由は極めて重要ですね。医療費の通知は、今でもすでに健保組合から   きますが、それも意味があると思います。しかし、負担と給付のバランスでいうと、   医療保険の場合には多くの場合には負担だけだと思います。健康な人は1年間保険   料を払い続けて給付ゼロが一番ハッピーな状態ですよね。そういう人が個人勘定通   知をもらって、私はこんなに負担だけで世の中に貢献をしてハッピーだと思わせる   ためにくるのか、何も使わないと損と思わせるためにくるのか。介護もそうです。   1号被保険者の65歳から75歳の方の場合には、ほとんど負担しかしていないの   です。そういうことを明らかにすることの社会的意義はどこにおかれるのでしょう   か。 ○ 日本経済団体連合会    おっしゃるとおり、個人別に見たときに、私は負担する一方で給付などは使った   ことはないという方はたくさんいらっしゃると思います。私どもとしましては、短   期の医療保険とか介護保険については、制度全体としてどのくらいの給付があって、   それに対してどこからどのようなお金が回っているか、制度全体の負担と給付の状   況を国民の皆さんにも知っていただくことが非常に重要と考えています。それを期   待しているわけです。      ○ 田中委員    それなら大賛成です。個人勘定と書いてあったので質問させていただきました。 ○ 日本経済団体連合会    恐縮ですが資料の5ページ、マル2の社会保障個人勘定の創設の2つ目の点です   が、年金については個人別の勘定というのは当然ですね。ただ短期保険としてのも   のについては、制度ごとの負担と給付の状況について国民に深く知っていただくた   めの情報提供という形でやったらどうでしょうか。   ○ 田中委員    わかりました。安心しました。それなら応援できます。ありがとうございました。 ○ 樋口主査    今日、4つの団体の方にお話を伺っていて、ごく大ざっぱに、私の理解か間違っ   ているかもしれませんが、社会保障カードというのはまだはっきりした形をとって   いるわけでもないので、御意見を伺うのがなかなか難しい段階でもあると思います。   どちらかというと積極的な経団連、どちらかというと消極的な日弁連、保険者の立   場の方はセキュリティとコスト、コストに見合うメリットが保険者側としてどれだ   け見込めるのかというのがなかなかわからない、そういう条件をいろいろと考えて   詰めていきたいというようなことかと思います。とにかく限られた時間しかお与え   することができませんでした。あと30分程度ありますので、さらに突っ込んで私   の理解の足りないところとか、御意見を積極的に伺うことができればと思います。   そちらの方からも、せっかく行政の担当者がここにいらっしゃるので、直接の質問、   答えられる範囲のことは答えていただけると思いますので、そういう形で以下を進   めたいと思います。御遠慮なく御発言ください。    ○ 南委員    日弁連の方、アメリカのお話がありましたが、確かにアメリカの成りすまし事件   などのことをよく聞きます。日本と違って戸籍がないからそういうことが起こりや   すいというように、社会の違いということも言われましたが、日本は戸籍があるの   でそういう心配はないのか、アメリカと社会は確かに違いますので、日本で実現し   た場合にも同等の危険がかなりあるのかどうかというあたり、どのように分析して   いらっしゃるのでしょうか。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    そこは本人確認をどういう方法でするのかという手段の問題です。従来ですと住   民票だけで良いです。さらにいうと、戸籍もくださいというようにして、例えば私   どもの家事事件のような場合には、非常に厳重に親子関係の裁判とか夫婦関係の裁   判だと、そういうものをそろえないと、その夫婦が本当に夫婦の裁判なのか親子の   裁判なのかということがわかりませんから、そういうものを用意する必要があるわ   けです。片方で、普通の日常的なデパートへの買い物とかですと、誰であるという   必要はまったくないわけです。ところが不動産を買うときには、場合によっては「   印鑑証明が必要です。戸籍も必要です。」ということになることもあるわけです。   それは本人確認の必要性というのは、実は取引の場面によって非常に千差万別です。   日本の場合には、非常にかたい部分の場合には、「住民票、戸籍謄本もください。   印鑑証明もください。」というように、必要な書類が揃えられる人ほど本人の確実   性が高くなるという関係性があるわけです。ところがアメリカの場合には、そこの   戸籍というものがありません。印鑑証明の代わりには、それはシグネチャーという   ことになるということになるのでしょうけど、日本の国籍のものがない分、しかし   本人確認というものができた方が良い、あるいはできた方が便利である、データマ   イニングということは御存じかと思いますが、特定の個人の情報を集めることによ   って、それが商売として成り立つというのがアメリカの社会ですので、それは同時   に、どういう人だということについて成りすましが非常にやりやすくなる環境があ   るわけですね。日本が戸籍というものを必要としない取引分野では、そういうこと   は相対的に起こりやすくなるという意味では、アメリカと完全に同じになるとは思   いませんが、日本のようにいろいろな書類が必要としますという部分が軽減化され   ていく、あるいは除くとなっていって、片方では、社会保障番号なり、あるいは住   民票コードというものが非常に重要な意味をもってしまうとなると、それで、さま   ざまなところで取引ができるようになると、「戸籍はいりません。住民票もいりま   せん。あなたの社会保障番号と名前と住所だけで結構です。」という環境が進んで   しまうと、いつの間にか、かなり大きな取引の場合でも成りすましが簡単になって   しまう。アメリカと一遍に同じになるとは言いませんが、だんだんとそういう危険   になる可能性はある。ひとつの番号でさまざまなところと取引ができるということ   になるとね。そういうことです。 ○ 日本弁護士連合会(藤原氏)    もう1点補足します。その番号が、誰でも見られる番号として社会的に認知され   ていくということになると思います。すると番号を提示した先は必ずその番号は控   えていく。それがデータベース化されるということですから、あらゆるところで個   人が番号づけで管理されることになる。それはすごく簡単なことで、すごく便利な   ことではありますが、紙の社会で成り立っている仕組みなのです。アメリカはロー   コストの中で紙のカードでやってきたことを、わざわざ日本でやる必要はないので   はないかと思うわけです。    ○ 日本弁護士連合会(三宅氏)    社会保障番号に関連するお話になったと思います。アメリカだけではなくスウェ   ーデンなどでも、ひとつの番号が本人の特定ということになってしまうので、役所   の書類などは基本的に名前を書かずに番号だけで通ってしまうということがある。   しかも、あそこも確か10桁の生涯不変の番号を持つのですが、生涯不変の番号を   持つことによって、一旦それが漏洩すると、なかなか回復か困難であるということ   になっているということです。これは住基カード、住民票コードの導入の際に、日   弁連でいろいろと調査をしたときに、私もスウェーデンに行って行政高等裁判所の   所長をされていた方が、当時個人情報保護の責任者でしたのでお話を聞きにいった   ことがありました。その観点からすると、日本の住民票のコードの方は11桁にし   て、漏れてもそれは番号を変えられるという仕組みにしておりますので、そのあた   りはスウェーデンとかの経験も踏まえて工夫はされていると評価はできると思いま   す。幾つも番号を持つというのは、結構煩わしいことでもありますので、そのあた   りをこれからどのようにお考えいただくのか、私どもも十分に考えていきたいとこ   ろであると思っております。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    私たちの委員会の中でもそうですが、実は日弁連全体の中では、プライバシーに   対する考え方にかなりの差があります。これは恐らく国によっても歴史によっても   かなりの違いがある。この国のインターネット社会におけるプライバシーは、日本   の社会をどうするのか、ということを考えないといけないと思います。これをやる   とローコストでいけます。これをやるとサービスがいけるという先に、3年後とか   5年後、一人一人のプライバシーが守られているのか。守られているという場合に、   そういうものはいらないという人から、それで追い詰められる人まで、さまざまな   人がいるということを考えた場合、どういうリスクがあるのかということは、制度   を作る側は、想像力をたくましく持っていかないといけない。プライバシー侵害の   恐れがあるからだめだと考えているのではない。どういう仕組みにすると、どうい   うメリットがあって、しかし、どういう危険か起こるのか。住基カードの場合と違   って、今回の場合にはすべての人に持たせるというものだけに、すべての人にとっ   て利便性というと、同時にすべての人を危険にさらすという意味も持つ。判断能力   のない人から、きちんと判断できる人から、さまざまな人がいるわけですので、得   をする人と損をする人、非常に深刻な被害にあう人が出ないような形にしなければ、   法的にさまざまな問題が出てきてしまう。すると、制度そのものが信頼を失ってし   まって、社会保障カードの次にまた違うカードが出ようとしたとき、もうそういう   カードは日本の社会では信用できないとなってしまっては、この国内ICカードは   普及しない。日本のカードは世界的にも信用できないとなってしまえば、この国の   社会の在り方としても信用を落としてしまう。作るのであれば、世界にも通用する   ようなカード、そういう仕組みとして考えていきたいと考えております。海外はど   うであるとか、ここは法的にもっと考えた方が良いのではないかということを、い   ろいろとケチをつけるように思われるかもしれませんが、先々利用していって、こ   れで良かったと思ってもらえるようなものにしたいと考えております。さまざまな   注文は出せるものは出して、克服できるものは克服しながら進んでいくのが良いの   ではないかと考えております。 ○ 樋口主査    まさにそのとおりです。こうやっていろいろと注文をつけていただくというのが、   その注文の内容が場合によってはこちら側の説明不足ということもあり、その点で   も大事なことであると思っております。だから先ほど申し上げた「消極的」という   のも悪い意味で使っているわけではないのです。例えば日弁連の今日のメモのとこ   ろで、所持の強制になるというご指摘と、何でも自己責任で本当に良いのかという   疑問の提示がありどちらも重要です。逆に、例えば、経団連の側では1つのメリッ   トとして年金の事業主の方からしても、なかなか大変なことがあるが、カードを持   って自己責任でやってくださる範囲が広がるのは、事業者側からみればメリットか   なというのです。しかし、これは他方の面からみれば、そういう負担に耐えられな   い人もいらっしゃるわけです。こういう所持の強制と自己責任というようなことを   基本原則にして、こういうカードが走っていくのは如何なものか、そういう御議論   からスタートしております。この点については行政当局としては如何でしょうか。   室長何かコメントありますか。今の時点で。嫌な人にも持たせるようなカードをこ   こでは今後考えていくのだという話と、責任の持てないようなというか、新生児か   ら高齢者まで、精神能力、日本語言語能力など、個人の判断能力を問わず持たせら   れる、そういうものはちょっとどうかという御意見が出ております。 ○ 日本弁護士連合会(藤原氏)    たまたま論点が、そこのところにいきましたので申しあげます。誰が使うのかと   いうときに、実際に全国民を対象にすると難しい問題が起こります。なぜかという   と、自分で操作できない人がかなり出てしまうわけです。ですから、自分で操作で   きない人が出てしまうのに使ってくださいということは、例えば、おじいちゃんと   か、おばあちゃんは子供たちがそのカードを使う。実際にはパソコンに入れるとい   う操作を大前提のように制度設計をせざるを得ないわけです。だから家族の中での   成りすましは当然起こらざるを得ない。そういう前提でものを考えるのか考えない   かは、非常にこの制度が難しくなるところです。ですから、好きな人だけ、自己責   任であるといえる人だけを対象に制度を設計すれば、そう難しい問題はないと思い   ます。特に介護とか、ほとんど痴呆症になりかけた人にも持たせると、ぼんぼん忘   れるし、どこにいったかわからない。では保険証がないのをどうするのかというこ   とで現場はすごく混乱すると思います。そうなると例えば少なくとも、健康保険と   介護はカードがなくてもその場の応急処置と受けざるを得ないと思います。あとか   らカードを持ってきてくださいとなる。では年金はどうするのか。年金は自動的に   お金は払っていきますから、その場でカードがないと突っぱねることはできる。そ   ういうわけでかなりそこは三者三様で違うのではないか。特に年金については、子   供が親の年金をとるという問題も起こりますし、カードを御老人が自宅の金庫にこ   っそり持っていて必死で守っている。ということもあり得るわけです。それは家族   間でも共用させて良いのかという問題もあるわけです。そういうことをよく御議論   いただきたいなと思っているわけです。 ○ 社会保障カード推進室長    今の話はごもっともです。ただ前回のヒアリングのときには、高齢者の方という   のは、年金手帳と介護保険証と健康保険証の3つを1つにして大事に持っている。   介護保険証について言えば、健康保険証もそうですが、そういう方については、従   来から御本人が判断できないとか、そういう方にも交付されている訳でして、だか   ら、その延長で考えるのであれば、3つのものが1つのカードになったからといっ   てリスクが増えるわけではないのではないか、という御議論もいただいたところで   す。だから、いずれにしても今日御指摘いただいたようなリスクなども考えながら   検討していきたいと思います。    ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    あと1点です。問題は、持ってこなかったときのイレギュラー処理です。どっち   がイレギュラーかということが逆転するようなことになったら、幾ら設備投資をし   ても全部パーになるわけです。つまり、すべての医療機関に膨大な投資をして、端   末を整備したところで、かなりの人がカードを持ってこないということになったら、   なんの意味もなくなってしまう。その意味ではどうやったら持っていってもらえる   かということは、なくしたときも安心だという国民感情を考えていただきたいと思   う所以です。 ○ 日本弁護士連合会(藤原氏)    3種類のものが1枚のカードになっていれば便利というのは、逆の話を私は聞く   ことが多いのです。1つのものを落としても、まだ、2つのものを持っているとい   うことで、一遍になくさないで済むわけです。今ですと、ここにいる多くの方は健   康保険証については持っていらっしゃる方はいると思いますが、これを落としても   年金手帳や介護手帳をなくすことにはならないわけです。ですから、健康保険のと   ころの手続さえ再発行をお願いすれば良いわけです。さまざまなサービスを1つの   ものにしてしまうと、全部の手続をしないといけなくなって、全部の手続が場合に   よれば、このカードがないと使えませんというようになってしまうと、非常に不便   になってしまう。ですから、藤原も言いましたように、なくしてしまったりとか持   ってこない人が相当数出るであろうということを想定として、その場合に、今まで   よりも不便性を感じさせないような、連続性をもって使えるようにしないと、なぜ、   あんなものを作ったのだということになってしまう。幾らこういうカードを持って   きてくださいと言っても、健康保険証だって持ってこない人が医療機関には相当数   いらっしゃるはずです。いろいろな事情で持ってこられない人もいたりするわけで   す。そういうときに、医療をストップしてしまう、そうすることによって、次から   持って来ないとだめということで強制することはできますが、それが果たしてこの   カードが目指そうとしているものかというと、きっとそうではない。うまく機能す   ればこうなるではなく、サービスが1つのものになっても、落としたときに、その   人はどうなってしまうとか、持ってこなかったときに、その人に対するサービスは   過不足なく連続性をもってできるのかとか、そちらも合わせて考えなければいけな   いのかなと思います。 ○ 日本弁護士連合会(三宅氏)    自己責任の在り方に関して、清水の方が言ったこういうカードを持つことが1つ   の社会の在り方とか国の在り方にかかわってくるという点です。ここからは私の個   人的な意見です。国民生活審議会の個人情報保護部会の委員をここ3〜4年やらせ   ていただいております。個人情報保護法の改正の点で、個人情報の保護のために、   ヨーロッパの各国にあるような独立した個人情報保護のための第三者機関を作って   欲しい。ということを何度も言っております。行政改革の折から政府は、全くそこ   は難しいということでそれはできない。つまり、個人情報の保護に関して、利便性   を追及することによる弊害をカバーできるだけの国のシステムが日本はまだできて   いないと思っております。その意味では、こういうカードで3つのものを兼ねる。   3つの手帳をもっていらっしゃるのは同じであるからそれを1つのカードにしよう   という利便性を追及したときに、それによって個人情報が漏れたときに、国が面倒   をみてくれるのか。というところのシステムができていない以上は、私としては消   極的にならざるを得ない。日本の社会の在り方全体からみて、それだけ慌てて利便   性だけを追及するという形で結論を急いでいただきたくないというところがありま   す。もう少しいろいろなシステムをみて、個人情報保護のための全体のシステムが   構築されているのかどうかという点からも、少し見直していただく、考えていただ   くという議論も必要かと思います。    ○ 山本委員    つまらない話ですが、健康保険証を持ってこないから診療しないということは、   医師には許されないのです。これは法律で、できないことになっております。ただ   し、保険診療をするかしないかは別です。それは実費で全部をいただく場合もある   でしょうし、一般にやられているのは、御本人をみて、間違いなくこの人は忘れた   のだということであれば、一部をいただき保険証を持ってきてくださいと、いう話   になる。そこは、保険証がどんな形態であろうと同じだと思います。3つ一緒にな   るからリスクが大きいということも確かにそうかもしれないのですが、例えば、紙   の保険証には、これを私がどこかに落としてくると、紙を自分で見つけて破りにい   くまでは紙のままとしては存在するわけです。したがって、それを保険者まで確認   しない限り、その保険証は本物として存在するのです。電子的にICカードを使う   としたら、ICカードを紛失した時点でICカードにリンクするデータは全部切る   ことができる。ICカードを発見しなくてもICカードは本物ではなくなるという   こともできるわけです。ですから、リスクはきちんと評価するべきであると私も考   えておりますが、失うものと、失うものに対する対策のコストと、絶対になくして   はいけないもの。そういうものを考えた上で対応すべきだという意味では賛成です。   個人情報保護は非常に重要です。こういう問題で最も国民の理解を得る上で重要な   ことは、プライバシーをどう保障するのかということだと思います。自分をアイデ   ンティファイするものがないために失われる個人情報・プライバシーというものも   当然ながらあるわけです。ですから、紙の保険証だと成りすませますし、処方せん   も今は普通の紙ですから、それをコピーして、保険証もコピーして本人ですと持っ   て歩けば、そのように、本人のものとして違う人の情報を取り出せることは極めて   危険が大きいわけです。それに比べると、例えばPIN番号ICカードとか、もっ   と厳格にしたければ、PIN番号ICカード+生体認証とかにすると、御本人以外   は、まず、アクセスできなくなって、それがないとその人ICカードには入ってい   ないが、その人のデータベースには届かないというようになると、紙よりも容易に   守れる場合もある。ですから、それによるきちんとしたリスク分析をした上で、ど   ちらがより合理的であるのかということを考える必要があると思います。ここから   先は皆さんに質問です。とはいうものの、いかにリスク分析をして合理的にセキュ   リティマネージメントをして、一応説明できる安全性を担保したからといって、感   情としての不安はなかなか消せないのですよね。これが最も大きな障害になって、   選択性でICカードをとる人がほとんどいない。これは住基カードでもそうです。   持ってもらえない。それは漠然とした不安があって、それは説明としてはできてい   るのだが、その説明だけでは不安が消えていないという状況があります。それに対   してどういうことをすれば、その不安を和らげることができるのか。ということも   議論をしていかないといけないと思うのです。そのようなことに関して、何か、も   しも、リコメンデーションがあればお聞きできればと思います。世の中にはそうい   うことは、たくさんありますよね。理論的には安全であるが不安であるということ   ですね。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    1つは三宅が言いましたように、こういう意見交換会、今日も非常に意味がある   と思っておりますが、制度を一度作ったらそこで終わりということではなく、恐ら   く、ずっと制度を監視、運用も監視していかないといけない仕組みであると思いま   す。ですから、法律ができて制度がスタートして、すべての端末でヨーイドンで始   まりましたといったらお役御免というよりも、むしろ本当に始まるのはそれからに   なる。そのときの適正な運用が確保されているのかということ、個人データの管理   がきちんとされているかどうか、そのチェック機関というものをどうするのかとい   うところまで考えないと、行政の監督庁がいますといっても、それは親分が子分を   みているのと同じようなものであって、それは第三者機関のチェックになっていな   い。日本が国際基準になっていくためには、こういう仕組みを全国民、外国人を含   めて国内にいる人全部について、こういう仕様のものでやりますという以上は、管   理が適切に行われているために、それを制度的に担保する。日々問題が起こっても、   それを半年とか一年検討してそれから結論を出しますということではなく、数日内   のうちにこうしましょうということが出せる機関というものを作る必要があると思   います。それは最低限必要だと思います。 ○ 日本弁護士連合会(藤原氏)    別の観点からです。山本先生がおっしゃるように、医療情報については、かなり   使いたいという人はいると思います。ですから、それは逆にいうと医療分野につい   て切り離してカード化をしていけば良いのではないか。ところが年金については、   親子間でもとられたくないといって非常に恐れている親が結構いるわけです。家族   間での成りすましは防げないのです。全国民に配付する以上はね。ですから、その   辺で非常に抵抗感を生むのではないかと心配するわけです。健康保険証については、   家族間で常時共有しても誰も怖くない。皆が普段からそういう生活でやってきてい   るわけですから、違和感もないわけです。ですからICカード化したところで、従   来の使い方にそう違和感はないと思います。しかし、年金は、それが重要な自分の   老後の糧だといって死守したいという御老人もいるわけです。それに対して家族間   で暗証番号が使えたりとかというのは、非常に怖いと思います。例えば、いくらも   らっているかも子供に教えたくないという人もいるかもしれない。しかし、暗証番   号は覚えられない。痴呆症になってしまうとね。すると紙に書いて子供に預かって   もらったりしたときに、今度は、子供が見られるわけです。その暗証番号を使えば   ね。すると、そういう制度は安心して持てるのかということになろうかと思います。   つまり、制度間で違うのではないかというところです。 ○ 樋口主査    関連しますが、これは別の団体のヒアリングのときに、その団体の方はこういう   年金・健康保険・介護保険という3つを一緒にするということが理解できない。今、   問題になっているのは、まさに年金なので、年金のところこそ、個人でチェックで   きるようなシステムが必要かもしれないが、ほかの2つは不要なのではないかとい   うことで、いま藤原先生がおっしゃったことと少し違う御発言を別の団体はしてい   るのですが、どうなのでしょうか。 ○ 日本弁護士連合会(藤原氏)    その点は、家で見られる必要はないのです。家庭で見られるということは、一般   のインターネットで見られるということで、膨大なリスクがあるわけです。例えば   社会保険庁に端末を置いて、そこの端末だけで見るということにしておけば、職員   が本人かどうかを、例えば子供が来ていないかとかチェックのしようがある。見て   いる現場をね。そして、そこでは不正利用はできない。なぜかというと社会保険庁   の建物の中で見せるとかね。ですから制度的な工夫はできると思います。それを裸   のインターネットとするから非常に難しくなると思います。    ○ 駒村委員    社会保障カード、これは年金が引き落とせるわけではないわけですから、確かに   家族内での情報共有というのは、プライバシーの問題でも難しいところはあると思   いますが、現在でも、親の年金の額を知ろうと思えばちゃんと通知は来ているわけ   です。銀行にも振込が出ているわけです。親がもし仮に認知症になった場合、子ど   もがかわりに年金や財産を管理するわけですから、いまでも状況は同じではないか   と思います。 ○ 日本弁護士連合会(藤原氏)    問題は、別に子供を信用していてそれで良いという人は何も問題はないわけです。   しかし子供には絶対に年金手帳は見せたくないという人もいることは事実だと思い   ます。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    それと家族とは限らないわけです。自宅というのは、割と自宅から見られるのは   便利ということで、自宅というのは安全と思われがちですが、家というのは誰が入   ってくるか、犯罪的に考えると、例えば布団商法とか何にしても老人が1人で住ん   でいるところに入り込んできて、家庭の中の状況は全部知っている。通帳の中身も   全部知っているという商売の仕方もする人たちというのは、全国に跋扈(ばっこ)   しているわけです。家庭が安全な場所と考えるべきではなく、それは、ひとつの閉   ざされた危険な犯罪が起こり得る場所である、と法律家としては考えるわけです。   そういう場合に、家から見られるようにする利便性というよりも、家からだったら   誰でも見ることができるという仕組みになっているところで、本人以外の人にとっ   ては価値がないもの、本人にしか価値がないものという見えるものにしていかない   といけないのかなと思うのです。年金のことについていうと、私たちの委員の中で   はどちらかというと、別に自宅から見られる必要はないということです。それは家   族に見られたくないということもあるでしょうが、それは、ほかの制度でもそうで   すが、お金を預かる側は預かった側の責任できちんと管理をするべきであって、例   えば、銀行が定期的に入出金状況を一月に一回教えてくれといえば教えてくれる仕   組みになっているように、年金についても、それなら年に一回とか半年に一回通知   してもらうという仕組みにすれば良いだけです。いつでも見られるようになってし   まうということは、誰でも見られるようになってしまうという仕組みでもあるので、   限りない利便性を求めるべきではない。限りなく本人だけが見られるような環境の   もとでのサービスとした場合には、いつでも自宅で見られるというよりも、そうい   う限定的なもの。しかも、お金のことであろうが、ほかの個人データであろうが、   これは仕事をする人間として、責任をもって管理をして、責任をもって説明をする   べきであって、それが制度的にパンクをしていたというのは、社会保険庁自身がお   かしいのであって、それを改革するためにこういう自宅から見られるようにすると   いうのは、私たちは違うと思います。 ○ 駒村委員    ここに書いてある話は、受給前の人の年金の加入記録、今、極めて重要な問題と   受給後の年金の通知と2種類の話がある。後者の方はどうなるのかというのは、ま   だ明記されていないのではないかと思います。今、問題になっているのは、受給前   の人にとってみれば、実は毎月知りたいくらいの意味もあるわけです。というのは、   何も社会保険庁だけがミスをするわけではないわけで、場合によっては企業によっ   ては、ミスもあれば、払っていると言っておきながら払っていない。つまり、今、   重要な問題になっている消えた年金の可能性もある。それから払っている金額を偽   っている。これは加入者にとってみれば、毎月毎月知りたいような情報です。一方   、受給者にとってみれば、1年で毎月毎月年金額が変動するわけではないわけです   から、1年に1回いくら、または、これから始まる高齢者医療の保険料の部分の天   引きとか介護保険料の天引きの部分があるかもしれませんが、それがどのくらいに   なっているのかというのを知るのは、1年に1回で良いと思います。その話という   のは分けて考えていかなければいけないのかなと思います。ただ、今の状態でも受   給者は紙ベースで、1年に1回家に来るわけですよね。そこで家族の中で仮に認知   症に親がなった場合には、子供が代わりにそれをチェックするわけです。今でもカ   ードにならなくても、今でも十分にカードの問題ではないと思いますが如何でしょ   うか。    ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    カードだけの問題ではないことは間違いないです。紙でもそういうリスクがある   のはそうです。紙の場合には、どこかにしまっておくことはできます。でも、自宅   から見られることができる端末というのは、特に隠しておくことができるわけでは   なく、見せてねと親切な声を掛けるなどをされると、簡単にそれで見られるよとい   うことで簡単にできてしまうというところが、人間の行動としてついやってしまう。   それがずっとしまっておくということになると、そこまでアクセスしてそれを取り   出して見せるというところまで時間的な問題がありますから、そこで考える時間な   り、あるいは、誰かに相談するとか、大丈夫かとか考える時間があるというのは、   それなりに意味のあることかなと思います。ですから、今ではないことがICカー   ド化されると起こると思ってはいません。ただICカード化されて自宅からも見ら   れるようになると、さらにこういう新しいリスクが生まれるのではないかと考えて、   そこの部分をどうするのかということも考えておいた方が良いということです。    ○ 薄井政府統括官(社会保障担当)    誤解があるといけないのですが、年金の記録問題はいろいろと御指摘がございま   した。今でも個人が年金の情報を知りたいということで、今、カードはないのです   が、個別に御申請いただきIDとパスワードを発行する格好で、自宅のパソコンか   ら自分の年金の記録を呼び出せる。もちろんそこのセキュリティ管理の問題はござ   います。それにカードというものをつけ加えることによって、さらに逆に成りすま   しによるものを防ぐ、そういう効果、これは制度の設計の仕方ですが、それもでき   るのかなと思っております。 ○ 駒村委員    先ほどのこういう情報の経済的な価値について、経団連の方にお願いします。い   ろいろな対人的なサービス、フィナンシャルとか、健康管理のアドバイスにも使え   るということでした。しかし逆に保険に入りたいとかいろいろなローンを組みたい   ときに、あるいは転職のときに、企業側から「皆さんはこれを持っていますよね。   それを持っていらっしゃい。」というようなインセンティブは、経済的な意味です   ね。つまり顧客が良い顧客か、悪い顧客かを選ぶときに、使えるほどの経済的な価   値があるのかなという点を、企業の立場にたって経団連の方からお聞きしたいと思   います。 ○ 日本経済団体連合会    大変に微妙なご質問です。ある企業にとって価値が生まれてくる、生まれてこな   いことについて、最終的には本人がどのように出すか、出さないかという価値判断   だと思います。どのような情報に価値があるのかどうかは、御本人と企業との間で、   合意の上で相対で決めていくしかないと、私どもとしては思っております。 ○ 駒村委員    例えばローンを組むとかいろいろなときに、いろいろな審査をできるだけ簡易化   できれば簡易化した方が企業のコストは安くなるわけですよね。持ってきてくださ   いねといって、いや持ってきませんねといった瞬間に、この人はその意味で将来コ   ストのかかるリスクのあるお客であると判断されてしまうのではないか、というこ   とを心配しています。その辺はどうかと思います。 ○ 日本経済団体連合会    民間企業での活用の仕方については、ご指摘のとおりの問題は発生しうる可能性   はあると思います。この公的な情報についての使い方については、民間での活用の   場合に当たっては、非常に慎重になるべきと、私どもも思っているところです。 ○ 駒村委員    先ほどのお話を聞いていると、使えるケースがかなり限定的にした方が安全なの   かなと、つまり対人サービス、ファイナンシャルサービスとか、健康サービスとか、   どうしても必要不可欠な状況のサービスにおいてはあるかなと思いますが、やたら   にこれを皆さんが持っているから持ってきてくださいということを求めることは、   制限した方が良いのではないかと思います。きちんと整理していないと、こういう   ものが出てくると規制緩和の問題とかがまた始まる、やや危惧はしているところで   す。 ○ 日本経済団体連合会    どのような情報が入ってくるのかという話と、それをどのように使うかというこ   とについて、いろいろな検討会の場があると思います。ここのカード検討会だけで   はなく、電子私書箱の検討会でも使い方の検討が行われております。情報のセキュ   リティの在り方等詳しく検討されておりますので、そこと連携して良い結論が出さ   れることを期待したいと思っております。 ○ 樋口主査    ほぼ予定していた時間になりました。よろしいでしょうか。では本日の作業部会   を終了したいと思います。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    ひとつだけよろしいでしょうか。先ほど山本委員との話では、医療に関していう   と統一的な番号というのは必要ではないか、という御意見ですが、それは、必要か   もしれないという感想を持ちました。冒頭にも申しあげたように、社会保障番号と   いうものの制度の中の1つとして社会保障カードというものを位置づけて、その中   の一部として議論されているのか、社会保障番号というのは、今日の資料とかに全   く出てこないわけです。それとは全く無関係のものとして、あるいは、なかったこ   とにするのか、どういう位置づけになるのか確認したいと思います。 ○ 社会保障カード推進室長    社会保障番号そのものは議論していません。資格情報を結びつける、必要最小限   の結びつけを考えるということで、その中で、今、制度ごとに番号が付番されてい   るわけですが、ひとつの考え方としては、3制度にまたがる共通の番号を導入した   方が良いという考え方もあるのではないか、そういう御意見もある。それを比較検   討して整理していくということかと思います。 ○ 日本弁護士連合会(清水氏)    すると、ここの検討会では社会保障番号のことも含めて議論をするのでしょうか。   それとも私も今まで傍聴させていただいたこともあるのですが、社会保障カードと   いうことで私たちの委員会も検討してきました。最初は、昨年の政府資料では社会   保障番号というものがあって、その中に社会保障カードのことが書いてあったので、   社会保障番号と関係づけて社会保障カードを考えないといけないかと思っていたの   です。私たちの方では、社会保障カードだけで十分に議論はできるし、制度として   も成り立つのかなと考えていました。山本委員のお話も聞いて、医療ICカードが   あり得るのかなということも考えるだけに、もっと柔軟に議論をした方が良いのか   な。つまり、番号ありで社会保障カードを考えてしまうと、生理的な反応のことも   あって、非常に難しくなる。ある分野でこれは、ICカードとしてあった方が非常   に利便性が高まる、しかも、そこに持つのは全部持たせるとしても、その中に入れ   るあるいは接続できる情報というものをつなげたり、つながないという選択ができ   る仕組みにしていけば、かなり賛同を得られる仕組みとして立ち上がるかなという   印象を今日、持ちました。それをほかの3つの制度、場合によってはほかの制度を   含めて共通番号でやりますというように、それをその上につけてしまうと、途端に   そちらに対する不安が強くなってしまって、ICカードの方で非常によい議論がで   きて良い仕組みができそうなのに、そちらが潰れてしまわないかという不安という   か考えがありました。別に完全に切り離して考えて良いのかどうか、そこを確認し   たかったわけです。 ○ 社会保障カード推進室長    まず、番号を導入することを前提として議論しているわけではない。今日の論点   の中にもございましたが、あくまでも資格情報の結び付けという話であって、健康   情報とか閲覧情報がデータベースとして蓄積されるようなところもあると思います   が、それをこの際、国で管理しようとかということを考えているものではない。そ   れが2点目として言えます。また、資格情報については、各制度の保険者ごとに管   理されており、それを前提に考えましょう。新たに国で統一的なデータベースを作   るというよりは、現在、保険者ごとに管理されているデータベースにアクセスする   形で資格確認をしていく。カードに収録する情報も必要最小限ということかと思い   ます。ただ、3制度にまたがるカードとして一人一枚という形でやっていくために   は、各制度の保険者ごとの資格情報というものを、何らかの形でリンクさせるよう   な方法を考えていかないといけないということです。今日御説明いただいた加入者、   カード所有者自身も自らの識別情報を知らない仕組み、そういう仕組みも当然なが   ら選択肢としてあり得る話であると思います。それも考えていきたいと思っており   ます。一方で、この際そういう共通番号を導入した方が効率的ではないか。特に今   日、非常に参考になったというか、我々も非常に頭を悩ましているとこすですが、   単にカードを紛失するだけではなく、持って来ないとか、現実に社会全体に端末な   りカードリーダのようなものが普及していない過渡期において健康保険証として使   えないとしたら、そういう場合にどういう対応をするのかというようなこととか、   カードを落としたら再発行すれば良いのですが、再発行するときに、どういう形で   本人確認をして再発行をするのか。そういうことでいろいろとコストがかかるわけ   ですが、統一番号があって、その番号を1つ言えば、それは危ないということをお   っしゃっていただいたのですが、簡単であると言えば簡単です。そこはリスクとコ   ストの低さ、そういうところを整理してこういう選択肢であれば、リスクは低いが   コストは高いかもしれないとか、そういう形で整理をして議論をしたいと考えてお   ります。 ○ 樋口主査    ありがとうございました。今日の御意見をまた来月に開催される検討会に反映さ   せる形で議論を続けていきたいと思っております。今日ヒアリングにお出でくださ   った方々には感謝申し上げます。ありがとうございました。もう1回作業部会があ   るので、次回の予定について事務局からお願いいたします。    ○ 事務局    今後の日程でございます。本日は第3回の作業部会ということでございます。第   4回が明日、大江委員を主査とするグループでございますが28日水曜日2時から   4時ということです。場所は同じく三田共用会議所1階講堂にて行います。来月の   検討会につきましては、近々、正式にお知らせさせていただきます。以上でござい ます。 ○ 樋口主査    本日はこの作業部会を終了させていただきます。皆様ありがとうございました。                                    (以上) 【照会先】  厚生労働省   政策統括官付社会保障担当参事官室               西川、釜崎   電話番号 03−5253−1111              (内線2244)