07/11/22 平成19年11月22日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所    平成19年11月22日(木) 14:00〜 厚生労働省専用第18〜20会議室 2.出席委員(14名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 川 西   徹、 澤 田 純 一、○首 藤 紘 一、    鈴 木 洋 史、 千 葉   勉、◎永 井 良 三、 中 澤 憲 一、    成 冨 博 章、 西 澤   理、 野 田 光 彦、 長谷川 紘 司、    村 勢 敏 郎、 本 橋 伸 高 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(5名)    五十嵐   隆、 土 屋 文 人、 林   邦 彦、 松 井   陽、    村 田 美 穂 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)    中 垣 俊 郎(審査管理課長)、 川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全監理官)、 村 上 貴 久(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、 丸 山   浩(独立行政法人医薬品医療機器総合機構センター次長)、    森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻ですので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催したい と思います。本日は、お忙しい中を御参加いただきありがとうございます。当部会委員数 19名のうち14名の委員の御出席をいただいていますので、定足数に達していますことを 御報告申し上げます。本日は五十嵐委員、土屋委員、林委員、松井委員、村田委員から御 欠席という連絡をいただいています。  それでは、部会長の永井先生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○永井部会長 早速、事務局から配付資料の確認、資料作成、利益相反等に関する申出状 況について御報告をお願いします。 ○事務局 資料の確認をいたします。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名 簿を配付しています。議事次第に記載されている資料1〜6をあらかじめお送りしていま す。このほか、資料7として「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料8と して「専門委員リスト」を配付しています。  続いて、平成13年1月23日の薬事分科会申合せ、及び本年4月23日の薬事分科会申 合せに基づきます、資料作成、利益相反等に関する申出については、次のとおりです。  議題1「タリムス点眼液」については、退室委員、議決には参加しない委員、共にいら っしゃいません。議題2「ノベルジンカプセル」についても、退室委員、議決には参加し ない委員、共にいらっしゃいません。議題3「チャンピックス錠」については、退室委員 はなし、議決には参加しない委員は鈴木委員、永井委員、西澤委員、本橋委員です。議題 4「リコモジュリン点滴静注用」については、退室委員はなし、議決には参加しない委員 は西澤委員、本橋委員です。議題5「レバチオ錠」については、退室委員はなし、議決に は参加しない委員は鈴木委員、永井委員、西澤委員、本橋委員です。  なお、議題3「チャンピックス錠」、議題5「レバチオ錠」については、座長を首藤部 会長代理にお願いしたいと存じます。以上です。 ○永井部会長 ありがとうございます。本日は、審議事項5議題、報告事項1議題でござ います。早速、議題1について、機構より御説明をお願いいたします。 ○機構 議題1、資料1、医薬品タリムス点眼液0.1%の製造販売承認の可否等について、 機構より説明いたします。  本剤の有効成分であるタクロリムス水和物は、免疫細胞であるT細胞の活性化を選択的 に抑制することにより免疫抑制作用を示すことが知られており、本邦においては、本薬を 有効成分とするカプセル剤、顆粒剤及び注射剤が、移植領域での拒絶反応の抑制等に対し て、また軟膏剤がアトピー性皮膚炎に対して既に承認されております。今般新たに、アレ ルギー性結膜疾患である「春季カタル」を対象に本薬点眼剤の開発が行われ、抗アレルギ ー剤で効果不十分の「春季カタル」を効能・効果として承認申請がなされました。なお、 本剤は、2004年7月に「抗アレルギー剤で効果不十分の春季カタル」を対象として希少 疾病用医薬品に指定されております。  本申請の専門委員としては、資料8に記載されております7名の委員を指名いたしまし た。  審査内容について簡単に説明させていただきます。  品質、薬理、非臨床薬物動態、毒性に関する資料につきましては、特段の問題は認めら れないものと判断しております。  臨床成績に関しましては、本剤の用量は、0.01%、0.03%、0.1%の3濃度の比較の結 果、安全性については各濃度で大きな差はなく、有効性は0.1%が優る傾向が示されてい ること、また、用法は1日2回点眼と1日4回点眼の比較の結果、有効性に大きな差はな く、安全性は1日2回点眼群で本剤の主な副作用である眼部刺激感等の発現率がより低く 忍容性に優れていたことから、0.1%濃度、1日2回点眼を推奨用法・用量とすることが 適当であると判断しております。第III相試験は6歳以上の春季カタル患者56例を対象と して実施され、主要評価項目である臨床所見総合スコアのベースラインから投与4週後又 は中止時までの変化量について、プラセボ群に比べ本剤群で有意な改善が認められ、また 春季カタルに特徴的な巨大乳頭スコアの変化量についてもプラセボ群に比較し本剤群で 有意に優ることが示されていることなどから、春季カタルに対する本剤の有効性は示され ているものと判断しております。  安全性については、主な副作用として眼の異常感、眼刺激、流涙増加等の眼部刺激感が 申請用法・用量では64.0%と高頻度に認められております。また、本剤の有効成分であ るタクロリムスは免疫抑制剤であり、長期投与時には眼部感染症の発現率が上昇する傾向 が認められていること、本剤点眼後に少量ながら血中でタクロリムスが検出される症例も あることから、眼局所の副作用のみならず、本薬の免疫抑制作用に関連する可能性のある 感染症等の全身性の副作用にも十分に注意する必要があると考えており、添付文書等にお いて注意喚起し、製造販売後においても引き続き検討するよう指示しております。  また、春季カタルは希少疾病であり、臨床試験における検討症例数も限られていること、 タクロリムスの血中への移行も認められていること、小児に繰り返し使用される可能性も あることなどから、本剤の安全性及び有効性に関するデータを血中濃度データも含め、早 期に収集する必要があると考え、製造販売後は一定数の症例が集積されるまでは本剤の使 用を眼科に限定し、全例調査の実施が必要と判断しております。  以上の審査を踏まえ、本剤については製造販売後の全例調査を実施することを承認条件 とし、抗アレルギー剤で効果不十分の春季カタルを効能・効果として承認して差し支えな いとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は 劇薬に該当し、新投与経路医薬品で、対象疾患が希少疾病であることから、再審査期間は 10年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。 薬事分科会には報告を予定しております。  よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。御質問、御意見をお願いいたします。春季カタ ルが希少疾患であるという説明でしたが、重篤な春季カタルがということですね。 ○機構 抗アレルギー剤で効果不十分ということが前提になりますので、重篤な春季カタ ルが主な対象ということになります。 ○永井部会長 いかがでしょうか。2年前、シクロスポリンの点眼液が、同じ春季カタル に対して承認されています。そのときは、シクロスポリンは血中に検出されないけれども、 今回は検出される。そこがちょっと論点になるということですね。 ○機構 そうです。ただ、血中濃度としては、申請用法・用量では最大でも2ng/mL以下 ということですので、暴露量としては高くはないものと判断しています。 ○永井部会長 そこは、小児でも特に問題ない濃度であると考えてよろしいのでしょう か。 ○機構 16歳以上と以下で分けた検討がなされているのですが、16歳以下の場合は血中 濃度が低くなる傾向が見られています。特に9歳以下になりますと血中濃度は検出されて いないという、臨床試験においてはそういう成績が得られています。 ○永井部会長 先生方、何か御質問はありませんでしょうか。 ○成冨委員 使用期間は特に制限は設けないのでしょうか。 ○機構 長期の継続試験で、平均的な使用期間としては1,000日程度という結果もありま すので、長く使用される例もあるかと思いますけれども、慢然と使用しないようにという 注意喚起を添付文書には記載しています。 ○成冨委員 抗アレルギー剤を使った後でないと使ってはいけないという縛りがあるの でしょうか。 ○機構 はい、「抗アレルギー剤で不十分」なケースが適用対象ということになります。 ○永井部会長 ほかに御質問はありませんでしょうか。もしなければ、議決に入りたいと 思います。承認可としてよろしいでしょうか。それでは、承認可ということで、分科会に 報告させていただきます。ありがとうございました。  議題2について、総合機構から御説明をお願いいたします。 ○機構 それでは議題2、医薬品ノベルジンカプセル25mg、同カプセル50mgの製造販売 承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。  ウィルソン病は、銅輸送膜たん白アデノシントリフォスファターゼ7B遺伝子の変異に より引き起こされる常染色体劣性遺伝の銅代謝異常症であり、肝細胞から胆汁中への銅の 排泄が損なわれることで、肝臓や脳などに銅が蓄積され、肝障害、腎障害、神経症状など を引き起こす疾患です。国内のウィルソン病治療薬は、キレート剤であるペニシラミンと 塩酸トリエンチンのみであり、それらキレート剤の投与によって症状の進行を抑制又は改 善することが可能であるものの、白血球減少症、無顆粒球症、間質性肺炎等の重篤な副作 用が報告されており、さらに催奇形性の報告もあり、小児や妊婦における安全性が明確で はないという問題があります。  本剤は、酢酸亜鉛水和物を有効成分とする銅吸収阻害剤であり、金属キレート作用を持 つメタロチオネインの生成を誘導することによって、食物に含まれる銅や消化液中に分泌 された内因性の銅を腸管内でメタロチオネインと結合させ、門脈循環中への移行を阻害す ることで効果を発揮する薬剤です。海外では、2006年12月31日現在、欧米の26か国で 販売されており、ウィルソン病の有用な治療薬として位置付けられています。本邦では、 2004年11月に希少疾病用医薬品に指定され、2006年5月、ウィルソン病に対する治療薬 として製造販売承認申請が行われました。  本品目の専門協議では、資料8に示す方々を、専門委員として指名させていただいてお ります。  本剤の品質、安定性、薬理、薬物動態及び毒性については、提出された資料に特段問題 となる事項がございませんでしたので、臨床試験成績について述べさせていただきます。  本剤の有効性については、ウィルソン病患者を対象とした国内第III相試験等において、 キレート剤から本剤に切替投与されたときに、肝機能、尿中銅排泄量などの銅関連指標や、 臨床症状等の増悪が見られなかったことから、本剤の有効性は示されていると判断いたし ました。  安全性については、臨床試験成績からは大きな問題は認められていないと判断いたしま した。しかしながら、日本人での検討症例は極めて限られていますので、製造販売後に本 剤が投与される全症例を対象に、本剤の安全性及び有効性を検討する必要があると考えて おります。  なお、国内の第III相試験とそれに継続する長期投与試験では米国の市販製剤が用いられ ましたが、その製剤と□□処方内容・□□製造方法による国内市販用製剤の開発が検討さ れたことに伴い、審査の過程において、米国の市販製剤から国内市販用製剤への切替試験 が実施され、国内市販用製剤へ切り替えても安全性及び有効性に違いがないことが確認さ れております。  以上のとおり、医薬品医療機器総合機構での審査の結果、本剤の「ウィルソン病」に対 する適用を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが妥 当と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年が 適当であると判断しております。なお、原体及び製剤は劇薬に該当し、また、生物由来製 品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。  薬事分科会では審議を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。御質問、御討論をお願いします。薬の作用機序 のことですが、腸管のメタロチオネインを誘導することによって吸収を抑制する、腸管内 への排泄を促進するという理解でよろしいですか。 ○機構 そうです。腸管内でメタロチオネインの発現を促進させて、そのことによって食 物中の銅や消化液中の銅とメタロチオネインを結合させ、それがそのまま体外に排出され るという、銅吸収抑制ということです。 ○永井部会長 従来のキレート剤との使い分けはどうなのでしょうか。 ○機構 ウィルソン病には、既に症状を発しているタイプと、例えば兄弟がウィルソン病 患者で、弟が現在は発症していなくても将来発症するおそれがある場合など、無症候性(発 症前型)の患者もいます。そういう患者は酢酸亜鉛が第一選択になるだろう。ただ、既に 症状が発現して、体内に銅が蓄積しているような患者の場合、まずはキレート剤で過剰な 銅を体外に出して、症状が落ち着いてから本剤に切り替えるという使い方がされます。 ○永井部会長 新たな蓄積はこれで抑えて、既に溜まっているものはキレート剤で排出す るということでしょうか。 ○機構 ただ、教科書によって使い方の書きぶりに若干の違いがみられます。 ○永井部会長 いかがでしょうか。副作用というか、サプリメントで大量に亜鉛を取った 例がどこかに書いてあったと思うのですが、その量は相当な量だったということでしょう か。重度の膵炎を起こしたということですが。 ○機構 これは、酢酸亜鉛の過量投与ではなく、グルコン酸亜鉛と硫酸亜鉛の海外の過量 投与例であり、審査報告書の42ページに書いてあります。例えば亜鉛として6g服用し た例であり、本剤の場合は成人の服用量は通常、1日150mgですから、それから比べると 亜鉛としての量もかなり多量になります。なお、服用されたものがサプリメントかどうか、 詳細は分かりません。 ○永井部会長 少なくともこの製剤で起こったということではないのですね。 ○機構 酢酸亜鉛ではありません。塩違いのものです。 ○永井部会長 その背景は分からないのですか。どういう症例だったか。ウィルソン病で 飲んだわけではなくて、何か別の理由で大量の亜鉛を摂取したときの中毒症状という理解 でよろしいのですか。 ○機構 服用の理由までは分かりません。どれくらい服用して、どういう事象が起きたか というのは添付文書の過量投与の項に書いています。今おっしゃられたことについては、 この製品の使用上の注意の解説において、ほかの塩ではありますけれども、過量投与の例 ということで注意喚起するようにしています。 ○永井部会長 キレート剤の場合には、小児用量がよく分からないということでしたね。 本剤のメリットは、そこが違うということを聞いたような気がするのですが、そういうこ とはないのですか。小児の用量がこちらの方が決めやすいとか、そういうことはないので すか。 ○機構 キレート剤と比べてということですか。 ○永井部会長 はい。 ○機構 米国と欧州で用量の設定が若干違うのですが、今回、国内の小児の用量について は米国と同様の用量を設定して、適宜増減の形で臨床試験を実施しました。結局、初期用 量でほとんどの患者が用量を変更せずに済みましたので、適宜増減ということは用法・用 量に書いていませんが、尿中の銅の排泄量、あるいは亜鉛の排泄量のコントロールの範囲 を設けて、その範囲内に収まるように患者個々で調節するという形で投与されます。一方、 キレート剤は小児に対する用量は設定されておりません。 ○村勢委員 過剰投与がやはり一番心配です。亜鉛はもちろん膵臓に一番高濃度に検出さ れるものだと思います。それと膵炎との関係というのは、審査報告書の43ページに書い てあります。問題は、硫酸亜鉛の過剰投与で急性膵炎による死亡例が報告されているとい うことです。本剤を投与する症例というのは余り多くないと思います。そのうちの1例か 2例かよく分かりません。恐らく1例なのでしょう。死亡例が報告されているということ です。その因果関係というものは、この症例の場合には報告されているのかどうか、もう 少し御説明いただければと思います。 ○機構 本剤と膵炎との因果関係につきましては明確にはなっていません。本剤を投与す ると膵酵素が上昇することがあり、国内の試験では、投与期間が長くなるにつれて膵酵素 に回復傾向がみられていますが、もし高い値がずっと続いた場合には器質的な障害も考慮 して、膵機能検査を考慮するよう注意喚起をしています。 ○村勢委員 例えば1,000人、2,000人に1人というのだったら話が分かるのですが、こ れを使う対象者というのは余り多くないと思います。この試験のときも37例と書いてあ りますので、そのうちの1人という報告ですと、頻度としては余りないがしろにはできな い数字になるかと思います。 ○審査第四部長 審査報告書の43ページの下に書いてあります「過量投与で急性膵炎に よる死亡例」というのは硫酸亜鉛の過量投与ということで、先ほど話題になっていました ように、亜鉛として6gという、極めて高用量を摂取された方ということでございます。 ウィルソン病に本剤を投与した上でこういうことが起こって亡くなられたということで はありません。 ○村勢委員 桁が違うわけですね。 ○審査第四部長 そうです。 ○成冨委員 薬剤の臨床的有効性を評価するというのは非常に難しいと思うのですが、ど ういう場合に臨床的に有効であるというように判断基準を設けておられたのでしょうか。 ○機構 海外の試験もそうなのですが、肝機能検査値、尿中の銅排泄量、亜鉛の排泄量、 血中の遊離銅、それから臨床症状(神経症状、肝の腫大等)を含めて総合的に判断する形に なっています。 ○成冨委員 銅の吸収を阻害するだけであれば、多分、神経症状は余り良くならないでし ょう。例えば肝機能も、薬剤自体で肝機能が悪くなる場合もあり得る。恐らく、血中銅の 値辺りが一番の指標になって、それ以外は有効性なのか、むしろ有害事象なのか分からな い点があるだろうと思います。この値をクリアすればこれは有効と、そういうきちんとし たものは多分ないのですね。 ○機構 一つの指標で明確に効いた、効かないを判断することは難しいと思います。 ○成冨委員 悪くならなければ良しというところでしょうかね。 ○永井部会長 ダイレクトに吸収がどれだけ抑制されたかというのは分からないわけで すね。血中濃度は従来蓄積されている量との関係でなかなか評価も難しいと思うのです が、毎日の尿中排泄量がある程度適正な範囲に入っていればよいということですか。 ○機構 そうですね。尿中の銅、亜鉛、肝機能も見ながらということになります。用量と しては、尿中の銅排泄量、亜鉛排泄量を見ながら、至適と考えられる範囲内に収まるよう に増減しながら使っていくということになります。 ○永井部会長 その臨床試験の成績を少し説明していただけますか。 ○機構 国内の臨床試験としては2.5の26ページに書かれています。まず、第III相試験 とそれに引き続く長期投与試験というものがあります。これは26ページの(4)の1)に書 かれています。27ページにいきますと、国内製剤切替投与試験というものがあります。 これは先ほど説明しましたように、国内独自の製剤を開発しなければいけないということ で、第III相試験、長期試験は米国の市販製剤で試験が始まりました。しかし、国内製剤の データが全くないのはまずいので、長期試験の中で、米国の市販製剤から国内製剤に切り 替えたときの有効性・安全性が同じ指標で検討されたということです。いずれにしても、 有効性の指標としてはALTを使い、副次評価項目に銅の排泄量、臨床症状等を設定して います。  国内第III相試験の対象患者としては、ほぼ半年間キレート剤で治療された患者、かつA LTが安定した患者を対象に、本剤に切り替えたときの有効性・安全性が検討されました。 その結果、特段、症状の悪化は見られなかった。ALTも安定していて、尿中の銅排泄量、 亜鉛排泄量等もある程度基準範囲に収まっていたことが確認できましたので、これらの試 験成績から、例数は少ないのですが、有効性・安全性が確認できたということで、国内製 剤で問題はないという判断をしています。 ○成冨委員 効くか効かないか、本当はよく分からないかなという気がするのですが、恐 らくウィルソン病の患者、あるいはその家族の方は、こういう薬剤が出てくることを非常 に渇望しておられるだろうと思いますので、悪くなければ良しという考えで問題ないので はないかと思います。 ○永井部会長 いかがでしょうか。確かにこの数字を見ても、本当に効いているのかとい う感じもしないでもありません。悪くはなっていないと思いますが。ただ、文献的には外 国でかなり使われているということですね。 ○機構 もしこのウィルソン病の治療を中断した場合には、6か月以内に肝機能が悪化し て、場合によっては死亡すると報告されています。国内では長期試験も含めて48週間み ていますけれども、肝機能、銅排泄量を含め、キレート剤から本剤に切り替えたときの症 状が安定して推移したということが言えます。もしこの薬が効かないとすると、かなり悪 化した例がみられたであろうと想像されます。 ○永井部会長 かなり抑えられて良くなっているところで評価しているために、効果が見 えていないというところはあるかもしれません。バックグラウンドで自然経過を考えれば 効いていると言えるのだろうと思います。  ほかに御意見はございませんか。ないようでしたら、議決に入りたいと思います。この 薬剤を承認可としてよろしいでしょうか。承認可ということでございます。新有効成分で、 既存の類薬がありませんので、薬事分科会に上程し、審議することになります。どうもあ りがとうございました。  議題3にまいります。これは首藤部会長代理に進行をお願いします。 ○首藤部会長代理 議題3でございます。総合機構から概要を説明してください。 ○機構 議題3、資料3、医薬品チャンピックス錠0.5mg、同錠1mgの製造販売承認の可 否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  本剤の有効成分であるバレニクリン酒石酸塩は、ファイザー社で開発された化合物であ り、海外では1999年より臨床試験が開始され、2006年5月に米国で承認されて以来、 2007年8月現在、本剤は米国、英国等50か国以上で承認されております。なお、類薬と してはニコチン貼付剤等があります。  本申請の専門委員としては、資料8に記載されております10名の委員を指名いたしま した。  審査内容について、御説明させていただきます。  品質、薬理、薬物動態及び毒性については、特に大きな問題はないと考えております。 なお、本剤の作用機序は、ニコチン受容体の一つであるα4β2受容体に親和性を示す部 分作動薬と考えられています。  次に臨床試験成績について説明させていただきます。  本申請はブリッジングコンセプトに基づき開発が行われており、海外で実施された後期 第II相用量反応試験をブリッジング対象として国内で後期第II相用量反応試験が実施さ れ、主要評価項目である第9〜12週の4週間持続禁煙率は、プラセボ群で39.5%、本剤 0.25mg群で54.7%、0.5mg群で55.5%、1mg群で65.4%であり、本剤群での値はいずれ もプラセボに対して有意に優れていましたが、1mg群で最も高値を示しておりました。 また、第9〜52週の持続禁煙率においては、本剤1mg群のみでプラセボに対し有意な結 果が得られており、これらの結果は、海外で実施された後期第II相用量反応試験の成績と 類似するものであることから、ブリッジングに基づき外国試験成績を外挿することは可能 と判断しました。  本剤の安全性については、主な有害事象として嘔気、嘔吐等の胃腸障害が用量依存的に 認められておりますが、投与開始4週以内に多く発現し、継続投与により発現頻度の増加 は認められていないこと、多くの事象は軽度〜中等度であったことを踏まえ、安全性上特 に問題ないと考えております。なお、製造販売後にこれらの事象については、重点的に調 査することとしております。  また、海外試験において、本剤12週間投与により禁煙成功例に本剤をさらに12週間延 長投与する試験が実施されており、本試験結果から本剤12週間投与後プラセボに切り替 えた群よりも本剤を24週間投与した群で第13〜52週の持続禁煙率が有意に高かったこ と、延長投与した場合でもリスクの増大は認められなかったことから、本邦では十分に検 討されていないものの、用法・用量に関連する使用上の注意の項に、延長投与について記 載することは問題ないと判断しております。  以上の審査を踏まえ、本剤のニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助に対する効能 ・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当 と判断いたしました。本申請は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、 原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しな いと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。  また、11月20日に米国FDAで本剤の市販後に自殺念慮、攻撃的及び常軌を逸した行 動、傾眠等の事象が認められており、投与中に注意が必要であるとの見解が示されており ます。これらの事象については、本剤との因果関係は明らかではなく、禁煙そのものによ る影響も考えられ、現在の添付文書でも禁煙時には、いらだち、不安、精神症状の悪化が 認められる旨を「その他の注意」の項で記載しております。本剤投与時には精神症状等に ついても慎重に観察することが必要と考えておりますが、本件につきましては、今後の米 国FDAの動向も確認しながら、具体的な注意喚起方法を検討したいと考えております。  以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○首藤部会長代理 チャンピックス錠でございます。禁煙補助剤ということだと思いま す。御質問、御意見、いかがですか。 ○本橋委員 報告書の57ページを見ますと、ブリッジング・スタディの結果を国内と国 外で比較しています。ここで精神障害の率が我が国と国外で非常に違っている。特に、睡 眠障害の問題が随分違っています。この背景は何に基づくと考えればよろしいでしょう か。ここに少し書いてはあるのですが、今一つ理解できないものですから教えていただけ ればと思います。 ○機構 総合機構より御説明させていただきます。有害事象の、特に精神障害の、異常な 夢、不眠症等の睡眠障害の発現の違いというところですが、確かに国内では低く、海外で 高く認められています。その理由としては、国内と海外で治験を実施した医療機関が大き く異なっており、国内では呼吸器、内科等を専門に治療されている禁煙外来等の診療科で 見られています。それに対して、海外の方では薬物依存とか精神科というようなところも 治験の実施医療機関として入ります。そこの医療機関で重点的に見られたということもあ るのか、背景できちんとそういうことを押さえられていると考えられるというのが一点で す。 ○本橋委員 そうすると、国外で対象となった患者の中には、ニコチン依存以外に、精神 科的な併存症のあるような方もいらっしゃった可能性があるのですか。 ○機構 その点については不明ですが、今後日本で実施させていただく製造販売後調査の 中でも、睡眠障害、異常な夢等を重点調査項目としてきちんと検討していただくように、 企業の方に指導しているところです。 ○首藤部会長代理 今の問題について、外国の添付文書にはどのようなコメントがあるの ですか。 ○機構 特に、そこに関しては問題がないと。 ○首藤部会長代理 何もコメントしていないのですか。 ○機構 はい。 ○首藤部会長代理 委員の指摘のように、確かに外国で大変多い状況です。国内ではない からいいか、ということなのでしょうかね。よろしいですか。  今、気が付いたことがあります。効能・効果なのですが、「ニコチン依存症の喫煙者に 対する禁煙治療」というのは言葉遣いとしては正しいでしょうか。 ○機構 機構より説明させていただきます。審査報告(1)に書いてあるものは申請時の効 能・効果であります。最終的には、これに関しては「ニコチン依存症の喫煙者に対する禁 煙の補助」というように専門協議を踏まえて対応させていただいています。 ○中澤委員 非臨床の薬理のところでお伺いします。効力を裏付ける試験で、ニコチン受 容体に対する選択性を調べているのですが、α4β2、α3β4、α7、あとは筋肉型ですか、 この4種類に絞って行っているというのは、何か特に理由はあるのですか。 ○機構 説明させていただきます。本薬に関しては、当初からニコチンの受容体、特にこ の四つのサブタイプに限定してやった理由に関しては、ニコチンのどの受容体に結合する かを確認していった中でこれだけのものしか見ていないというところになっていると思 います。 ○機構 補足させていただきます。今、ニコチン代替治療という、ニコチンそのものによ る禁煙治療補助が行われていますが、開発のコンセプトとして、ニコチンそのものではな いようなものを探索しようと。そういう中で、ニコチン受容体における選択性を検討しα 4β2受容体へ高い選択性を有している薬物を見出したということです。  それ以外のリガンドもいろいろ探索しています。中枢神経系のGABA、グルタミン酸 受容体、いろいろな受容体との親和性を検討していますけれども、ほとんど結合しないと いうことで、比較的、ニコチンのα4β2に選択性の高い薬物ということが判りました。 さらに探索していくと、これがパーシャル・アゴニスト的な作用を有しているということ で、禁煙治療に適しているのではないか。そういう考え方に基づいて開発されてきた薬物 というように御理解いただければいいのかなと思います。 ○中澤委員 資料の「2.4非臨床に関する概括評価」の10ページ、「2.4.2薬理試験」で、 ニコチン依存症形成に関与するのはα4β2型であるということで参考文献を引用してあ ります。その文献のタイトルを見ると、β2サブユニットが入っていなければならないと 書かれていて、α4β2であるとは言っていないと思われます。別にこの薬だけでなく、 ほかの薬で既にα4β2に効くものがこういった働きを持っているということはかなり明 らかになっていると考えてよろしいのでしょうか。 ○機構 そこのところがどこまで明らかになっているかというのは、多分、我々の理解の 中では、α4β2というものがどこまで必要かということは明らかになっていなくて、選 択性を探している中で、一応ここに選択性を持っている薬物が出てきて、それを臨床開発 に乗せると、むしろ禁煙治療に向いているという状況です。多分、本当にα4β2を探し に行ったわけではないと思います。 ○中澤委員 分かりました。ありがとうございました。 ○首藤部会長代理 ほかによろしいですか。 ○川西委員 この場で最終的な回答をいただく必要はないのですが、製法の方の記載が、 デザインスペースを本格的に使った非常に先進的な品質管理、これの承認申請書の記載は 詰めた結果としてこうなったわけですか。 ○機構 現時点ではこの品目に関し、デザインスペースとは言いながら、いろいろなとこ ろを審査の中で確認していまして、書きぶりとしては、このような形に落ち着いたところ です。今後出てくるものに関して、またいろいろと対応があるかもしれませんが、また別 途確認しながら対応させていただこうと思っています。 ○川西委員 分かりました。今、議論しているところなので、これで表し切れていないよ うな気がちょっとしています。それはまた、継続的な議論の中で詰めていった方がいいの ではないかという気がしました。 ○首藤部会長代理 ほかにいかがでしょうか。議論がないようでしたら、議決に入りたい と思います。鈴木委員、永井委員、西澤委員、本橋委員におかれましては、薬事分科会の 申合せに基づき、議決への参加は御遠慮いただきたいと思います。残りの方、承認可とし てよろしいでしょうか。御異議がないようですので、本件チャンピックス錠0.5mg等を承 認することにいたします。本件は薬事分科会に報告ということになります。 ○永井部会長 議題4にまいります。機構から御説明をお願いいたします。 ○機構 議題4、資料4、医薬品リコモジュリン点滴静注用12800につきまして医薬品医 療機器総合機構から説明させていただきます。  本剤の有効成分トロンボモデュリン アルファは、ヒトトロンボモジュリンの活性部位 を含む細胞外ドメインのみからなる可溶型分子であり、動物細胞を用いて産生される遺伝 子組換え体であります。今般、旭化成ファーマ株式会社により、国内臨床試験成績等に基 づき、「汎発性血管内血液凝固症(DIC)。ただし、DICの基礎疾患が造血器悪性腫瘍 あるいは感染症の患者に限る。」を予定効能・効果として、製造販売承認申請がなされた ものです。本剤は、比較的低濃度から、プロテインCの活性化を介したトロンビンの生成 抑制作用を示し、高濃度になるとトロンビン直接阻害作用も示しますが、今回の申請用法 ・用量では、トロンビン直接阻害作用を発揮するのに必要な血中濃度に達する可能性は低 いものと考えられております。  なお、本剤は、海外においては、DICを伴う敗血症について開発がなされております。  本品目の審査に関しまして、専門委員として、資料8に記載されております委員が指名 されております。  それでは、本品目の審査の概要について、国内臨床試験成績の評価を中心に説明させて いただきます。  造血器悪性腫瘍又は感染症を基礎疾患とするDIC患者を対象とした、投与期間6日間 の国内第III相試験において、有効性の主要評価項目とされた「投与7日目又は投与中止時 におけるDICからの離脱率」について、本剤0.06mg/kg/日の30分間点滴静注により、 類薬の未分画ヘパリン8U/kg/hrの24時間点滴静注に対する非劣性が示されました。  安全性につきましては、主として投与開始14日目までの有害事象発現状況が観察され、 いずれの群においても貧血が約70%の患者に発現するなど、全症例で有害事象が認めら れました。出血症状に関連する有害事象の発現率では、投与開始7日目までにおいて本剤 群43.1%、ヘパリン群56.5%と本剤群の方が有意に低く、投与開始14日目までにおいて も同様の傾向が認められました。また、本剤による出血の危険因子として「高齢」、「血 小板数低値」、「線溶系の過度な活性化状態」等が考えられ、本剤投与中は、血小板数、 凝固線溶系マーカーを慎重にモニタリングしつつ、出血傾向に注意を払う必要があると考 えられました。  この成績を踏まえ、本剤の第一義的な投与対象は、国内第III相試験で対象とされた基礎 疾患によるDIC患者とするのが基本と考えられましたが、本剤がDICの基礎疾患に対 する治療を成功に導くために、DICの症状等をコントロールするための薬剤であるこ と、基礎疾患によらずDICの本態は血液凝固系の異常亢進であり、薬理学的に本剤が効 果を示すことが期待できること、国内第II相試験で造血器悪性腫瘍及び感染症以外を基礎 疾患とするDIC患者においても一定の有効性及び安全性が示されたこと等から効能・効 果を造血器悪性腫瘍及び感染症を基礎疾患とするDICに限る必要はないものと判断し ました。以上、本剤投与が適切と考えられる対象患者に対し、投与中注意すべき事項等が 守られた上で、適正に使用されれば、本剤の承認の可否に影響するような重大な問題はな いと判断し、製造販売後に適切な情報収集を行う必要はありますが、本剤を「DIC」の 効能・効果で承認して差し支えないと判断しました。  なお、製造販売後には、全例調査による使用成績調査を始め、特定使用成績調査及び臨 床試験等が実施され、基礎疾患等の患者背景の異同が、本剤の有効性及び安全性に及ぼす 影響について確認される予定です。  本剤は、新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年とすることが適当であると判 断しております。また、原体及び製剤は毒薬又は劇薬に該当せず、生物由来製品に該当す るものと判断しております。薬事分科会では審議を予定しております。御審議のほどよろ しくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいた します。 ○首藤部会長代理 質問ではないのですが、結構珍しい例かな、こうあるべきかなと思っ ているのですが、効能・効果について、もともと申請者は造血症と感染症に限ると。それ を機構が外してくれたということで、これは珍しい例だと思うのですが、合理的と判断さ れたのだろうと思います。合理的と判断されるときは、そのほかの疾患でもこういうよう にやっていくべきかと思いますので、私のコメントとさせていただきます。 ○永井部会長 機構から何か説明はありますか。 ○機構 今回につきましては、DICは、すべて凝固亢進が本態にあるものですから、本 薬の作用機序から有効と考えられること、それから、現在抗凝固薬であるヘパリンが主に 使われているのですが、これについては基礎疾患によらず使われている経緯があります。 この辺も踏まえ、今回はこのような結論になっているということです。 ○永井部会長 薬の作用機序なのですが、1.5-9にシェーマがあります。可溶性のトロン ボモデュリンは、トロンビンをトラップするというように書いてありますけれども、先ほ どの説明ではプロテインCをダイレクトに活性化するということです。ですから、この図 は直しておいた方がいいと思います。私も今まで図のように理解していたのですが、ソリ ュブルフォームであってもプロテインCをダイレクトに活性化するということのようで す。 ○機構 本剤の作用機序は天然型と同じです。ありがとうございます。 ○永井部会長 これはネイティブフォームとは全く同じと考えていいのですか。抗原性の 問題はないということでしょうか。 ○機構 細胞外ドメインとしては全く同じアミノ酸配列でございます。しかし、本剤に対 する抗体が実は臨床試験では見られております。ただし、それは中和抗体であったことは ありません。抗体ができた患者で例えば免疫学的なアレルギーとか、そういった症状が現 れたということもありません。ただ、その辺は心配ではありますので、例えば再投与につ いては特段の注意を喚起していますし、効かなくなることがないか今後も見ていかなくて はいけないと考えています。 ○永井部会長 いかがでしょうか。有効性の評価は、ヘパリンに比べて有意差があると考 えてよろしいのでしょうか。 ○機構 国内第III相試験のデザインは非劣性の検証を目的としていますので、一義的には 非劣性が検証されたというものです。数値だけを見ると、確かに95%信頼区間の下限が プラス側ですので、有意に勝ったと言えないこともないのですが、審査報告書の中にも詳 しく書かせていただきましたが、この臨床試験の対象疾患のばらつきとか、比較対照とな ったヘパリンの用法・用量が確立されていないということも含め、そこまで言えるほどの 試験デザインと規模ではなかったのではないかと考えています。あくまでも、今回の成績 は非劣性を示したものと考えています。 ○永井部会長 いかがでしょうか。 ○機構 先ほどの作用機序に関する回答について誤解のないように補足いたします。本薬 を含め、トロンボモデュリンにはトロンビンを直接阻害する作用もございます。そして、 本薬とトロンビンの複合体がプロテインCを直接活性化して、フィードバックをかけて、 トロンビンの産生を阻害する作用もあるという、2種類の作用を併せ持つということであ ります。 ○永井部会長 これは国内の開発品なのですね。もし御意見等がありませんようでした ら、議決に入りたいと思います。西澤委員、本橋委員におかれましては、薬事分科会申合 せに基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。このリコモジュリン点滴 静注用を承認してよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、承認可といた します。新有効成分で、既存類薬がありませんので、薬事分科会に上程し、審議というこ とになります。どうもありがとうございました。  議題5は、首藤部会長代理に進行をお願いします。 ○首藤部会長代理 議題5に入ります。総合機構から御説明いただきます。 ○機構 議題5、資料5、医薬品レバチオ錠20mgにつきまして医薬品医療機器総合機構 より説明させていただきます。  本薬は、シルデナフィルクエン酸塩を有効成分とするホスホジエステラーゼ5(PDE 5)の選択的阻害薬であり、男性勃起不全治療薬として、「バイアグラ」の商品名で1998 年に米国と欧州において25、50及び100mg錠が承認され、本邦では1999年に25及び50mg 錠が承認されています。その後、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の病理にPDE5が関与す ることから、本薬のPAHの効能取得を目的とした臨床開発が進められ、米国では2005 年6月に、欧州では2005年10月に承認され、2007年10月現在、米国及び欧州連合諸国 を含む45か国においてPAH治療薬として承認されております。  今般、ファイザー株式会社より、「肺動脈性肺高血圧症」を予定効能・効果とする希少 疾病用医薬品として、製造販売承認申請がなされたものです。  本品目の審査に関しまして、専門委員として、資料8に記載されております委員が指名 されました。  本薬の薬物動態、有効性及び安全性に民族的要因が及ぼす影響の検討により、PAH患 者に対する本薬の有効性及び安全性が日本人と欧米人で大きく異なる可能性は低いとさ れ、海外臨床試験成績を主たる評価資料として、国内自主臨床研究データを含むデータパ ッケージにより申請がなされました。また、日本人PAH患者を対象に本薬20mgを1日 3回経口投与したときの薬物動態、有効性及び安全性を検討することを目的とした臨床試 験が現在実施中であり、日本人PAH患者6例の薬物動態の中間解析結果が提出され、本 薬の薬物動態は個人間変動が大きいものの、国内外で大きくは異ならないことが確認され ております。  本品目の審査の概略について、海外臨床試験成績を中心に説明させていただきます。  有効性については、海外第III相試験において、本薬20mg、40mg及び80mg又はプラセボ が1日3回12週間投与され、主要評価項目とした「6分間歩行距離」のベースラインか らの変化量のプラセボ群との差は、本薬20mg群:45.3m、本薬40mg群:46.1m、本薬 80 mg群:49.7mであり、本薬群はいずれの用量においても、プラセボ群に対する優越性が 確認されましたが、用量反応性は認められませんでした。  安全性については、海外第III相試験及び長期投与試験において、発現した有害事象とそ の頻度に関し、プラセボ群と比べ大きな差は認められず、20mg1日3回投与が臨床推奨用 量として選択されました。  これらの成績より、本薬の有効性及び安全性は確認されていると考えられ、日本人PA H患者に対する一定の有効性は期待でき、頻度の低いまれな有害事象として、突発性難聴、 非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)、薬物相互作用として硝酸剤及びNO供与剤との 併用での血圧低下、及び強力なCYP3A4阻害薬による本薬の血中濃度上昇に関する注意喚 起が必要ではあるものの、適正に使用されれば、安全性に特段の問題も少ないことから、 本薬は本邦のPAH治療における新たな薬物療法の選択肢になり得るものと判断いたし ました。  なお、今般の申請は、海外臨床試験成績に基づき申請されたものであり、国内において、 申請用法・用量である本剤1回20mg、1日3回経口投与により有効性及び安全性を確認 した治験症例がないことから、製造販売後、一定症例数に係るデータが集積される間は、 全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握する とともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを収集し、本剤の適正使用に必要な措 置を講じることを承認条件とする必要があると判断いたしました。  以上のような検討を行った結果、全症例の使用成績調査を承認条件として付した上で、 本剤を「肺動脈性肺高血圧症」の効能効果で承認して差し支えないとの結論に達し、医薬 品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。  本薬は原体、製剤ともに毒薬、劇薬に該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品に 該当しないと判断いたします。また、希少疾病用医薬品に該当することから再審査期間は 10年とすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しており ます。  御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○首藤部会長代理 委員の先生方から御質問、御意見をいただきたいと思います。テーブ ルの上に見本が出ていますけれども。 ○機構 テーブルの上に製剤見本を配付しています。このものの有効成分としては、既に バイアグラ錠が男性の勃起不全の治療薬として承認されています。それが社会的にも認知 されていますことが、逆に今回のPAH患者、女性の患者や子供の患者に対して、バイア グラを人前でそのまま飲むには抵抗があり、社会的苦痛を感じると、その点に配慮された もので、製剤の色、形、名称を変えて販売する予定になっています。 ○首藤部会長代理 いかがですか。これは成分はシルデナフィルで、バイアグラと同じで すけれども、販売名が違うもので、用量も違うもの、新効能ということでございます。 ○永井部会長 これは今まで、多少議論があった薬剤だと思いますが、医師主導臨床試験 で、余りたくさんの症例でなくて認めようということだと思います。今後もこういう方向 でいいのかどうか、その辺りの考え方はどうなのか。この程度であればもっと早く実施す ればよかったのにとも思います。掛けた時間の割には、海外のデータを参考にして、少数 例の医師主導臨床試験で承認の方向へ持っていく、そういうことは今後もあり得るという ことでよろしいのでしょうか。 ○機構 本来であれば、日本人におけるきちんとしたデータを提供するのが本筋だと考え ています。今回の申請についても、実は申請者が早期に臨床試験を開始する時間的余裕が 若干あったこともあって、その辺については、我々審査側としても申請者が早期に着手し ていただければ、今回実施中第1期の症例数20例、第2期が50例の国内臨床試験の結果 も見て、実際に日本人症例と外国人症例との比較をしっかりできたということもありま す。本件についても、時間的余裕があれば国内臨床試験をもう少し早く実施できたことは 残念に思っています。  ただ、先生のおっしゃるように、この作用機序の薬が肺動脈性肺高血圧症の治療薬とし て国内では承認されていないことを非常に重く見まして、海外のものを評価して承認に至 るというプロセスに進んできたものと理解しています。今後もできる限り、可能であれば、 日本人の症例は医師主導治験、あるいは臨床試験を通して、しっかりしたデータを積み上 げるようにお願いしていきたいと思っています。 ○首藤部会長代理 いかがでしょうか。それでは、議決に入りたいと思います。鈴木委員、 永井委員、西澤委員、本橋委員におかれましては、薬事分科会の申合せに基づきまして、 議決への参加は御遠慮いただくことになっています。レバチオ錠20mgの製造販売承認に ついて、承認可としてよろしいでしょうか。それでは、本件は皆さんに御承認いただいた ことにいたします。これは薬事分科会に報告という品目であります。 ○永井部会長 どうもありがとうございました。報告事項にまいります。機構から御説明 をお願いします。 ○機構 報告事項、議題1「医療用医薬品の再審査結果について」2件続けて御報告いた します。  まずは、資料6-1の、医薬品再審査確認等結果通知書「フェロジピン」でございます。 本件については、承認の効能・効果の、「高血圧症」が再審査の対象の効能・効果になっ ているものです。当該品目につきましては、市販後の使用成績調査の成績、特別調査の成 績等に基づいて、再審査申請が行われ、医薬品医療機器総合機構の審査の結果、薬事法第 14条第2項第3号イ〜ハに掲げられています承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、 すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー 1」と判定したものでございます。  続いて、資料6-2の、医薬品再審査確認等結果通知書「カルペリチド(遺伝子組換え)」 を御覧ください。本件については、承認の効能・効果の、「急性心不全(慢性心不全の急 性増悪期を含む)」が、再審査の対象の効能・効果になっているものです。当該品目につ きましては、市販後の使用成績調査の成績等に基づいて、再審査申請が行われ、医薬品医 療機器総合機構の審査の結果、薬事法第14条第2項第3号イ〜ハに掲げられている承認 拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項 について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものでございます。以上です。 ○永井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問をお願いいたします。 ございませんでしょうか。もしないようでしたら、ただ今の事項については御確認いただ いたということにします。  本日の議題は以上です。事務局から連絡事項等はありますでしょうか。 ○事務局 次回の部会の日程ですが、既に御案内のように、来年1月30日(水)午前10時 から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。以上です。 ○永井部会長 これで終了いたします。どうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 河野(内線2746)