07/11/20 第2回腎疾患対策検討会作業班資料及び議事録 第2回腎疾患対策検討会作業班      平成19年11月20日(火) 経済産業省別館1028号会議室 ○日下課長補佐  それでは、定刻となりましたので、ただいまから第2回腎疾患対策検討会作業班を開 催させていただきます。作業班の皆様方には、お忙しい中お集まりいただきまして、ま ことにありがとうございます。  本日は参考人として、医療法人宮崎内科医院院長の宮崎正信先生、慶應義塾大学医学 部腎臓内分泌代謝内科教授の伊藤裕先生をお呼びしております。  それでは、班員の出席状況を御報告いたします。本日は全員御出席でございます。よ って本会議は成立となります。それでは、議事進行を飯野先生にお願いしたいと思いま す。飯野先生、よろしくお願いします。 ○飯野班長  それでは、議事を始めさせていただきます。まず、事務局から資料の確認をお願いい たします。 ○日下課長補佐  それでは、資料の確認をさせていただきます。資料1、「検討事項に対する主な意見(第 1回腎疾患対策検討会)(未定稿)」。資料2、「宮崎参考人提出資料」。資料3、「伊藤参 考人提出資料」。資料4、「生活習慣病対策の現状について」。参考資料として、前回の作 業班の資料を載せております。以上、不足しているもの、乱丁等がございましたら、事 務局までお申しつけください。 ○飯野班長  それでは、早速事務局から資料1の説明をしていただきます。よろしくお願いします。 ○日下課長補佐  それでは、資料1をごらんください。第1回腎疾患対策検討会で出された主な意見と いうことで、前回も説明させていただきましたので、詳細は省略させていただきますが、 大きく5つの項目があります。1つ目が一般国民に対する腎疾患に関する普及啓発、2 つ目が医療提供体制(受診勧奨、かかりつけ医と専門医の連携等)、3つ目が診療水準の 向上(ガイドラインの作成・普及等)、4つ目が人材育成、5つ目が研究開発の推進とい うことでございます。更に、その他として、評価に関する項目がございます。前回は、 普及啓発及び医療提供体制の受診勧奨というところ、そしてコメディカルの方を中心と した人材育成について御議論をいただきました。本日は、かかりつけ医と専門医の連携、 診療水準の向上、主に医師を中心とした人材育成について御議論をいただくということ で、参考人のお三方をお呼びしております。  説明は以上です。 ○飯野班長  ありがとうございました。今の資料の説明について何か御質問、あるいは追加はござ いますでしょうか。  ないようでしたら、前回にもお話ししましたが、この作業班は資料1の事項について 論点を明らかにして、今後の方向性をペーパーにする、そして素案をつくるということ が目的であります。今回は開業医の立場から、それから腎臓専門医以外のCKD専門医 から、それから生活習慣病対策室の方に来ていただいて、お話をお聞きするという趣旨 です。前にもお話ししましたように、この作業班で何か国民のために医療を動かしてい ただきたいということを、また確認させていただきます。  それでは、早速ヒアリングを行いたいと思いますが、我が国におけるCKD対策につ いて、かかりつけ医の立場からいろいろトライをしておりまして、先進的な取り組みを なさっています宮崎内科医院院長の宮崎先生から、御発表をお願いいたします。 ○宮崎参考人  宮崎でございます。よろしくお願いいたします。今日、お話しするのは、CKDの1、 2、3期への対策、主にかかりつけ医と専門医の連携についてということです。どうい う問題点があるかということを私なりにまとめさせていただきました。お手元の資料と スライドと数枚異なるのがございますがよろしくお願いします。  かかりつけ医に来る腎疾患患者というのは、(1)検尿異常、すなわちタンパクや血尿が 出る患者さん、(2)クレアチニンが高い、いわゆる腎臓機能が悪くなっている、高血圧や 糖尿病などの他の疾患の患者さん、そして(3)透析導入目前の患者さんがいます。主には (1)と(2)の患者さんが、かかりつけ医として扱う範疇だろうと思います。  CKDステージ1期は、腎機能が糸球体濾過値(GFR)という腎機能評価でいいます とほとんど正常で、検尿異常がある患者さん。GFRが少し低下して80〜60という第2 段階、第3ステージは、GFR60〜30という腎機能障害を持つ他の疾患、腎炎、高血圧、 糖尿病患者さんが入ります。そしてハイリスク群として、CKDを起こす可能性のある 高血圧、糖尿病、それからメタボリック症候群の患者さんが入ります。  これはお手元の資料にはございませんが、横軸に推算式のGFR、クレアチニンクリ アランス、縦軸が血清クレアチニンの値を示しております。このようにクレアチニンク リアランスが低下しても、採血、血液検査では全く正常範囲に入る人たちがいます。採 血をしても「正常ですね」と言われる方がいるわけです。この付近の全く無症状の方を どうするか。クレアチニンが急速に悪くなっていく手前がステージの3に入りまして、 全く無症状だけれども、非常に重要なステージとなるわけです。透析導入前のステージ 4で苦しい、きついと症状が出る前の患者さんをどうしようかということであります。  これも手元に資料がありませんが、今、日本腎臓学会が日本人における推算GFRと いうのを出しております。遠くの方はわかりにくいかもしれませんが、横軸が年齢です。 80歳の人でクレアチニンが1.2mg/dlという、ほとんど正常をちょっと超えたぐらいで も、実はもうステージ3に入ってしまうということであります。ですから、まさに高齢 化社会の中で、ほとんどの方がこのステージ2や3に入るCKDの患者さんという世の 中になってしまっています。CKDが非常に多くなっているということであります。た だ、これはほとんど御本人たち、あるいは現状の医療の現場では、全く認識されていな いグループです。  またプリントに戻りますが、かかりつけ医にとっての“CKD”とは何か。定義はそ こに書いてありますが、結局このインパクトは何かというと、腎組織に関係なくタンパ ク尿と腎機能で評価するという点です。普通いろいろな腎疾患の場合には、腎組織を見 ながら細かく診断をしていくわけですが、それは全く関係ないということです。そして 原疾患に関係ありません。糖尿病であろうが腎炎であろうが高血圧であろうが膠原病で あろうが、腎臓が悪くなった方はCKDのステージ分類からアプローチできるといった 概念です。そして、動脈硬化(心血管障害)の危険因子であるということが非常に重要 な点です。この付近がかかりつけ医の一般臨床の中では、腎臓が悪いと脳卒中が起こる、 心筋梗塞が起こりやすくなるといった認識が、まだまだ少ないのではなかろうかと思っ ております。  そこで現状と問題点ですが、CKDの認知度、病診連携が何を期待するのか、あるい はいつ紹介すべきか、CKD治療におけるポイントは何なのか、という3点を考えまし た。日本腎臓学会が今年は浜松の菱田教授が会長をされましたが、その中の特別企画と して「慢性腎臓病対策を進めるために〜地域での取り組みから学ぶこと〜を振り返って」 がありました。ここにおられる筑波の山縣教授と、福島県立医大の渡辺教授が座長でさ れた中に、今ホームページにそのスライドが掲載されています。それを使いながらこの 3点についてお話を進めていきたいと思っております。  お手元の資料にありますが、まずCKDに対する認識は何かという点です。一番左の 方に「CKD良く知らず」とあります。かかりつけ医の人の約半分の方が、CKDは何 かまだわからないということです。ほかのことは、いわゆるCKDの内容ですが、まだ まだ認知度が低いということです。CKDといった名前でさえ、一般のかかりつけ医の 半分の方がまだ知らないということですので、CKDをもっともっと広める必要がある のではないかと思います。これは浜松からのデータです。  2枚目のプリントですが、病診連携しにくい理由が示してあります。右上がかかりつ け医としての意見、左下が腎専門医としての意見です。かかりつけ医としてなかなか専 門医に紹介できないのは、対応をきちんとしてくれない、患者さんを紹介すると戻って こない、専門医がだれかわからない、患者さんに勧めても行きたがらない、どういう点 で紹介したらいいかわからないといった問題点があるということです。一方、腎専門医 の立場からいうと、患者さんを返せるかどうかわからない、逆紹介するのが不安という、 いわゆるかかりつけ医の受け皿の問題があります。導入紹介が遅いというのは、透析ぎ りぎりになってから紹介する患者さんが多いということです。腎専門医から逆に今度か かりつけ医にもう行きたがらない、かかりつけ医がだれなのかよくわからない、信頼で きるかかりつけ医かどうかわからない、心もとないといった、受け皿に対する問題点が 結構あるということです。  これも浜松からのデータですが、お互いに期待する役割は何かということを示してい ます。腎専門医に期待する役割は、治療方針を決定してほしい、透析導入をしてほしい、 確定診断をしてほしいということです。いわゆるCKDの1、2、3からいうと、治療 方針、あるいは確定診断をしてほしいというような期待があるわけです。一方、かかり つけ医に期待する役割としては、腎臓が悪くなる前にもっと早く、なった場合でも早く 紹介してほしい、透析導入をもっと早くしてほしい、腎機能が悪化したときに紹介して ほしいということです。  腎専門医の話としては、タンパク尿が陰性化、あるいは腎機能が安定化した場合にか かりつけ医に戻したいということです。  病診連携に必要なものは何かというのを、浜松地区でアンケートをとってあります。 青のバーがかかりつけ医、赤のバーが専門医です。やはり紹介基準をつくる、専門医の リストをつくる、役割の分担をきちんとするといった、手順としては当然かもしれませ んが、どこに返すか、だれが診るのか、どういうときにお互い患者さんのやりとりをす るのかといった基準が、まだまだはっきりしていないというのが現状だろうと思います。  これは、腎専門医の地域差を示しています。小さく書いてありますが、島根は9名し かいません。東京は542名です。患者さんを紹介しようとしても、島根県だとその腎専 門医9名を探すのがなかなか大変だということです。地域地域によって非常に大きく異 なっているということを念頭に置いておかないと、東京主導のものになってしまうかも しれないと思います。  これは、人口10万人当たりに対する腎臓医の割合を、北は北海道から南は九州、沖 縄まで書いてあります。東京は4.3人で非常に多いです。やはり都会は多いですが、岐 阜は0.9人と意外と少ない。島根は1.2人、九州は1.3〜2人ぐらいです。非常にば らつきがあるということは、腎臓の専門医と連携しなさいと言いながらも、受け皿の問 題があるということです。  では、病診連携の効果はあるのかという点です。これは名古屋の公立陶生病院のデー タです。腎臓内科が腎臓病教室を開くわけですが、この病院では他院からの紹介患者が 大体3分の1から2分の1あります。このような病診連携を行っていると、患者教育に よって緊急透析が少なくなるというデータです。  患者教育をした群は、計画導入といって悪くなる前に透析を導入して、緊急導入が少 なくなるというわけです。腎臓病教室に不参加群の方は緊急導入が圧倒的に多いという ことです。  実際の予後を見てみますと、緑が参加した場合、青が不参加群ですが、生命予後さえ も、患者教育を行うことで良くなるわけです。  では、かかりつけ医としてCKDの認識が少ないと言いましたが、CKDはまれなの でしょうか。これは筑波の山縣先生方が健診結果からまとめられたものですが、20万人 近くの健診患者をフォローしていると、10年間で約2割の方がCKDを発症するという ことが判明しました。来年から特定健診が始まりますが、かなりの方がCKDを発生し てくる可能性があるということです。  では、その発生母体は何かということですが、高血圧、高脂血症、肥満、喫煙、いわ ゆるメタボリックな要因を含む方々こそ、CKDを発生してくる可能性が高いというこ とを、もう少しかかりつけ医として認識しなければいけないのではないかと思います。  さらに、腎臓が悪いというと、ドクターも「透析になるからだめですよ。ちゃんとし なさいよ」といったことしか言わないのですが、CKDを治すことが心血管系のリスク の軽減につながるんだということを、もう少し認識する必要があると思います。  心血管系のリスクとして極めて重要であると申し上げましたが、このグラフで横軸が GFRを示しており、この付近がステージの2〜3に当たる数字です。この青の右のバ ーが死亡率、左のバーは心血管事故を示します。だんだんとクレアチニンが上がってい って、ステージ2,3となっても全く無症状ですが、既に2倍ぐらいの死亡率の高さが あります。CKDステージ3だと、あなたは2倍の確率で命をなくすということを言って もいいぐらいなことを、きちんとかかりつけ医も認識しなければいけないということで あります。  これはビジーなスライドで申しわけありませんが、腎臓専門医の外来がパンクせずに、 紹介患者を診ることができる妥当な基準とは何なのかという点についてです。これは、 かかりつけ医の腎専門医への紹介基準というのを浜松の先生方が作ったものです。クレ アチニンが1.2ぐらいという数字をここに挙げてあります。クレアチニンが1.2ぐら いの患者さんは非常に多いので、私もいろいろなところで話をすると、「じゃ、先生のと ころに本当に紹介していいんですか。患者さんが多すぎて大変ですよ。」と言われてしま いますね。  例えば26万人ぐらいの透析患者さんがいます。CKDステージ3は60以下ですが、 日本人の場合はちょっと低目に50ぐらいが妥当ではないかと言われているのでGFR 50 で切ると該当患者数は420万人です。そうすると、腎臓専門医1人当たり1,482名のC KD患者さんがいるということになります。このように非常に多い患者さんをどうやっ て診るのかということが、今後問題になってくるということです。浜松で試算すると、 週1回、20名診ると、3カ月置きにその地区のCKD患者さんを診られるのではないか という試算は出ていますが、それでもこの患者数は少ないぐらいかなと思っております。  これまで問題点として、病診連携がうまくいっていないために、腎機能がどんどん悪 化してきて、透析導入する直前となって、はじめて腎臓専門医に紹介することになりま す。いわゆる腎臓専門医が今は透析導入医となっています。これでさえも今透析がふえ ているので大変ですが、こういうパターンだといつまでたってもCKDステージ2,3 の患者さんのマネジメントができないことになります。  いわゆるかかりつけ医と患者さんと腎臓専門医で、いわゆる腎疾患戦略チームが必要 と思っています。お互いのデータを共有して、ある一定以上のクレアチニンになったら 腎臓専門医としてのアドバイスをする。その後、クレアチニンが例えば5割上がった場 合、例えば1.1の人が2ぐらいになった場合、2の人が3になった場合には腎専門医に 再度紹介して、そこでもう一回チェックして返すといった、そういったチームをつくる ことが、腎機能がどんどん悪化するのを防ぐために必要だと思っております。  私自身は腎臓専門医として開業していますが、一般開業医としてもやっております。 いわゆる一般のかかりつけの先生から紹介していただくのは実に様々です。タンパク尿 だけとか、あるいはクレアチニンが1.2ぐらいの患者さんとか、中にはクレアチニンが 5とか6とかの患者さんもおられます。何とかあそこに行けば透析せずに済むのではな いかということで来られる患者さんもおられますが、結局は1回、2回診て透析をしな ければいけないというのも実情です。腎臓病とはどういう病気なのかという認識が、ま だまだかかりつけ医の中できちんと認識されていないのが実情だと思う次第です。  以上でございます。 ○飯野班長  ありがとうございました。では先生、席へ戻られて、大分早く終えていただきました ので、御質問がございましたら、あるいはコメントでもよろしいですが、自由にお願い します。  宮崎先生、私の方から一つ質問ですが、やはり今かかりつけ医のそういう認識が甘い というのが一つあると思うのですが、そのほかに専門医の認識というのはどうでしょう か。昨日もちょっとかかりつけ医の先生方の会に出ていたのですが、例えばかかりつけ 医から送ってもそのまま返してくる、何もしてこないというような意見もございますが。 ○宮崎参考人  かかりつけ医の方々は、おのおののニーズが異なるわけですよね。例えば患者さんを 説得して患者さんを大学病院なり、あるいは専門医に送るということは、患者さんも初 診料をもう一回払わなければいけないし、時間と金を費やすのですが、それで満足でき るような診察をしてくれるかどうかが問題です。例えばタンパク尿が1プラスでクレア チニンが1.2ぐらい、ちょっと悪くなったステージ2〜3の人に、「大丈夫。血圧さえ やっておけばいいですよ」という返事ですと、かかりつけ医と一緒ですし、結局は診療 時間は5分診療となります。「クレアチニンが1.2、じゃ、半年に1回、あるいは3カ 月に1回採血して、悪くなったらまたおいで」というような言い方をしてしまうと、患 者さんとしては納得いかないことになります。どうしてクレアチニンが1.2というのが 非常に重要なのか、ちょうどいいときに紹介してもらったですよねといって話してあげ ないと、患者さんは納得しません。一方、かかりつけ医としてもCKDが大事というけ れども、送っても結局は血清クレアチニンをはかって、悪くなったらまた紹介してくだ さいというのでは、今までと何ら変わりがないのではないかということになりかねませ ん。  例えば糖尿病は血糖が非常に上がったり下がったりが出やすいので、患者さんもわか りやすい一方、クレアチニンというのはそんなに上がったり下がったりしません。ジワ ジワと上昇していくわけで、その付近の患者さんは理解しにくいと思います。例えば血 圧を下げる、あるいはアンジオテンシン変換酵素阻害剤をやってタンパク尿がだんだん 減っていくといった、数字を使いながら示してあげるのが腎機能では難しい面がありま す。数字に反映されにくい面が多いので、かかりつけ医としても、あるいは患者さんと してもフラストレーションがたまりやすい点があると思っております。 ○飯野班長  はい。ほかには、先生方、何かございますか。秋澤先生。 ○秋澤班員  宮崎先生、ありがとうございました。「CKD診療ガイド」などができまして、かかり つけ医の先生方が健康診断で異常をもって受診された方を専門医に送る基準は明確にさ れておりますので、これはだんだん周知されていくと思いますが、問題になりますのが、 紹介された患者さんを専門医が今度逆紹介ですね、かかりつけ医にお返ししたときに、 そのかかりつけ医にどのような機能が期待できるかという点になると思います。  具体的に専門医が一体何をやるかといいますと、まず血圧のコントロールをする。そ れからACEやARBを処方する。それから、食事指導ということで、例えばたんぱく 制限、食塩の制限、こういったこともやるかもしれません。しかし、それが実際に効果 を上げているかどうかということは、日常の血圧を評価して、できれば24時間の血圧 を測定して、蓄尿をチェックして、尿中の尿素の排泄量から食事のタンパク制限が守ら れているかどうか,あるいは食塩の摂取量が守られているかどうか,こういったことを チェックして確認されます。こうした役割が、本来はかかりつけ医に求められることで はないかと思うのですが、こういったことが実際のかかりつけ医には可能でしょうか。 ○宮崎参考人  例えば24時間血圧に関しては器械を持っているかかりつけ医はまずいないと思いま す。蓄尿が可能かということに関しては、蓄尿の重要性をきちんと説明しないと、患者 さんは1回ぐらいで流してしまうことも少なくありませんし、全員に蓄尿を行うことは かなり難しいと思います。ただ、専門医の先生から例えば、蓄尿はこうやるんだといっ た具体的説明をして頂き、あなたの蓄尿のデータによって摂取した塩分は何グラムなの かといったところまでわかりますよというふうに患者さんのモチベーションを上げてい ただくと、可能な方もいらっしゃると思います。 ○秋澤班員  もちろん専門医の役割としては、モチベーションを上げるように、患者さんを啓発は させていただくけれども、そういう患者さんの意識さえあれば、かかりつけ医は時間的 にも労力的にもそういったチェックと確認が可能であろうと考えてよろしゅうございま すか。 ○宮崎参考人  時間的にはきついかもしれません。ただ、糖尿病の患者さんの半分は専門医ではない 一般医でみられているわけですが、なぜあれだけ自己血糖が盛んに行われているかとい うと、保険の点数の保証があるわけです。あれだけ糖尿病の専門医でない一般医のもと で自己血糖測定が行われているということは、そういった裏づけがあるということは大 きいと私は思います。 ○秋澤班員  つまり、インセンティブを持ってそういった形に誘導しないと、なかなか難しい面も あるかもしれないと。 ○宮崎参考人  そうです。 ○秋澤班員  ありがとうございます。 ○飯野班長  ほかにはございますか。はい、藤垣先生。 ○藤垣班員  先生、どうもありがとうございました。私も先ほどの浜松のいろいろなアンケートな どに携わった者ですが、一つは、CKD患者を腎専門医が診て、かかりつけ医の先生に逆 紹介でまた返すとき、診ていただける先生たちをリストアップしたいと思ったのです。 同じ内科でもいろいろ考え方がございますので、診ていただける方をリストアップでき ませんかということで、医師会の先生たちとその辺のお話をしたのですが、医師会の中 では、なかなかそれを言うのはできないとのことでした。そういうところが非常にネッ クになっていると思いました。もちろん顔の見えるかかりつけ医、顔の見える専門医の 関係であれば非常によくわかるのですが、なかなかそうもいかないところがありまして、 その辺は何か方策はございませんでしょうか。トップダウンで医師会の中からやるとか。 ○宮崎参考人  多分総論的に言うと、医師会としては、医師会員の取扱いは公平にして行きたいとい うことだと思います。しかし、最近はかかりつけ医の先生でも非常に熱心な方々がおら れるのは事実です。その熱心な先生方を中心とした小グループでのCKDフォローアッ プ勉強会などを、専門医との定時交換の勉強会のために行うとCKDのこともどんどん 進んでいくと思います。そういった生涯教育の中でCKDの勉強会というのをやってい くスモールグループといったのをつくっていくことが、ボトムアップにつながると思い ます。本来かかりつけ医の中からこういった要望というのが出てこなくてはいけないと 思うのですが、かかりつけ医も糖尿病を診たり、高血圧を診たり、消化器を診たりと、 いろいろなことを診ていると、なかなかCKDに費やす時間はないわけですよね。でも その中でやはりCKDに興味がある方、特に糖尿病、循環器の先生を中心にCKDフォ ローアップ勉強会というのを医師会の中でつくっていくことが、やはり一つの窓口かな と僕自身は思っていますし、そういった会をつくりたいなと思っています。 ○飯野班長  そうですね。やはりかかりつけ医と専門医というのは、これはCKDだけではなくて、 この班ではほかの専門医とかかりつけ医という関係も出てくると思うんですね。ですか ら、ドラスチックで実現可能な、そういう専門医とかかりつけ医の関係を何か新しく構 築するようなものをつくってほしいと思います。ですから、その点で具体的に何かアイ デアみたいなものはありますか。ドラスチックに日本の医療のシステムを変えるような、 それでこういうかかりつけ医と専門医の関係を非常によくする、それで国民の医療レベ ルを上げるという、そういうのはお考えでしょうか。 ○宮崎参考人  私も介護や在宅医療をやっておりますが、こういったものに必要なのはハードウエア ではなくてソフトウエアです。一つ一つのつながりに尽きるというふうに最近は思って います。ドラスチックに変えるのは難しいですが、とにかくCKDの芽を絶やさないよ うに、いかに浸透させていくかが大切だと思います。いわゆる足で歩ける人たちだけが CKDではありませんし。ドラスチックな解決はできないと思いますが、糖尿病、循環 器の先生方との連携というのが開業医の中でもっとできれば、非常に強いパワーになる と思います。CKDだけ見ても、いわゆる心筋梗塞で亡くなっても仕方がないわけで、 いかに循環器の先生とタイアップしていくかというのも大事なわけです。 ○飯野班長  わかりました。まだ質問があると思いますが、後でまた質問をしていただくとして、 次のヒアリングを始めたいと思います。腎臓専門医以外のCKDに関する専門医の立場 からということで、メタボリックシンドローム、メタボリック症候群の立場からCKD 対策を積極的になされている、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授の伊藤先生 から、よろしくお願いいたします。 ○伊藤参考人  慶應の伊藤でございます。「メタボリックシンドロームとCKD」ということで、実際 メタボリックシンドロームとCKDとのかかわりと、治療に関する最近の考え方という ことで、従来いわれている観点とは違った観点で少し基礎的なことも含めてお話しした いと思います。  後で出てきますが、実は糖尿病の方が大体1,600万人、高血圧が3,500万人、高脂血 症が2,200万人、肥満の方も2,300万人ぐらいです。大体2,000万人、3,000万人規模 の患者さんがいらっしゃるわけでございます。こういった方が実際には血管の病気で亡 くなっていく。その中でCKDをどのように位置づけるかという問題かと思います。特 に最近は肥満の方、糖尿病の方が非常にふえているということで、これは世界的な統計 ですが、10秒に2人が糖尿病になっていっている、10秒に1人の糖尿病患者さんが亡 くなっているという状況ですし、肥満の方も約20%ですね。5人に1人が肥満で、世界 の死亡原因の半分以上は、実はこういった病気にかかわることであるということであり ます。  メタボリックシンドロームの話ですが、こういった生活習慣病が重積するということ で、過去におきましては幾つかの名前が言われておりました。最初に言われたReaven 先生はSyndrome Xということで、これにはインスリン抵抗性、高インスリン血症が含 まれております。死の四重奏では、肥満ということが入っておりますが、1999年からメ タボリックシンドロームという言葉になっております。  これが診断基準になりますが、重要な点はメタボリックシンドロームの原因がやはり 肥満にあるとしているということであります。特に内臓脂肪の蓄積ということで、ウエ ストサイズとしてこれを臨床で評価しようとしている。85cm、90cm、これがいいのか どうか非常に問題ですがこれがあって、かつ脂質の異常と血圧の高値と耐糖能異常。し かもここが140あるいは90mmHg以上でないということ。130mmHg、85mmHgとい うことですので、これは一般の方の降圧目標値ですね。空腹時血糖も110mg/dlで、 126mg/dlでないということで、いわゆる耐糖能異常の段階の人から入れていこうとい うことで、この基準でいくと1,000万人の方がいらっしゃる。予備群というのはこの3 つのうち1つを満たす方で約1,000万人。両方で2,000万人ということであります。  そこでCKDをどう位置づけるかという中で、私のメタボリックドミノで考えると比 較的わかりやすいかと思いますので、簡単に紹介いたしますと、今申しました生活習慣 の揺らぎから肥満が起こって、高脂血症と高血圧と食後高血糖が起こる。まだここでは 糖尿病が起こっていないんですね。この段階がメタボリックシンドロームの始まりでし て、しかし現在の診断基準からいうとここ以降全部がいわゆるメタボリックになってし まいます。ここが今メタボリックシンドロームの議論が非常に大きいところです。メタ ボリックシンドロームのはじまりの段階は予防医学的にも非常に意味があるでしょうけ れども、かなり下流の段階ではメタボだと言ったとしても、従来糖尿病や動脈硬化等々 ということは非常にリスクであると言われていたので、あまり意味がないと思います。 CKDも実ははじまりのあたりが大事であるということが私の今日の結論です。メタボ リックシンドロームのはじまりの段階から糖尿病はここで初めて起こってくるというこ とであります。  したがって、メタボリックシンドロームの始まりというのは動脈硬化の予備群ですし、 それから糖尿病の予備群であります。その原因が肥満にあるということですが、これは 有名なフィニッシュスタディーで、糖尿病の方とそうでない方で比べると、当然心血管 イベントは糖尿病の方が高いのですが、糖尿病で初めて心血管イベントを起こす率が、 糖尿病でない方が一度起こしていて2回目を起こす率と等しいと。ですから、先ほどの ドミノの図でいいますと、糖尿病になっているということは、横を見ると既に動脈硬化 が進んでいる。心筋梗塞をいつ起こしていても不思議ではないということをきれいに示 すデータです。糖尿病がある、メタボ型の糖尿病の方というのは本当にかなり悪いので あるということの認識が大切です。  このメタボリックシンドロームというのが、CKDのリスクになるということのデー タが幾つかございます。これは久山町スタディーですが、メタボリックシンドロームの ある人とない人で、CKDのリスクが2倍ぐらい違うというのが、日本の今のデータで あります。少なくともメタボリックシンドロームの人は高率にCKDになるということ は確かであります。メタボリックシンドロームがない方というのは今後なっていく人な のか、あるいは全然違う経路からCKDになっていくのか、ここはわからないですが、 少なくともメタボリックシンドロームの方というのは、近々にCKDを起こしていく、 あるいはなっている確率が高いということであります。  これは沖縄のデータだと思いますが、横軸がメタボリックシンドロームの危険因子の 数で、やはり数がふえる、4つ、5つ、6つとなっていくに従いまして、CKDの率と いうのもふえていく。Odds ratioが2倍、3倍となっていくということですので、明ら かにメタボリックシンドロームはCKDのリスクであるということです。  糖尿病とCKDはどういう位置関係にあるのかということを考えますと、日本の CASE-Jというスタディーですが、糖尿病のリスクはこれです。ハザード比が2.5倍ぐ らいになる。やはりリスクが大きいのですが、実は、腎疾患というものは糖尿病と同じ か、あるいはそれよりもリスクとしては非常に高いということになってきます。  CKDの方というのは、そうでない人に比べて非常に心血管イベントを起こしやすい。 これはcardio- vascular eventsで、腎臓のイベントではないということで、心腎連関と 言われているのですが、ちょっとこれは本当は言葉が悪いですよね。心臓が悪くて腎臓 が悪くなることはまずない。腎臓が悪くなって心臓が悪くなる。腎心連関ですよね。私 はそう思うのですが。  ですから、CKDのステージ2、あるいは3を考えてみますと、どの辺にいるのかと いうと、恐らくこのあたりに来るだろう。糖尿病ということを含んだこのあたりがステ ージ2期、3期という形になってくるということで、その原因としてメタボリックシン ドロームをとらえるべきであります。しかも、メタボのとらえ方ですが、これは全体を とらえては意味がなくて、非常に初期の段階のメタボリックシンドロームをCKDの予 備群と申しますか、リスクとしてとらえるべきであります。もちろんCVD、心血管イ ベントというのはここですので、当然ここに重なりがあるということで、心腎連関、腎 心連関という問題ですが、この原因のとらえ方に関しては私の任ではございませんが、 恐らく共通の障害因子は確かにあるのです。  例えばここに書きましたように腎臓から発せられる情報ということが、逆に内皮機能 を悪くする。我々はADMAという一酸化窒素合成酵素の阻害剤に注目しておりますが、 腎臓が悪くなることで、そこからの情報が直接的に血管を悪くするという要素もやはり かなりある。逆に腎臓をよくすればこれがよくなるという可能性が出てくるわけです。  そういうふうにして考えてみて、先ほど少し議論がありましたが、GFR60で切って しまいますと2,000万人ということになるわけです。そうすると、これはメタボリック シンドロームの予備群も入れた人数と一緒ぐらいになってくるということで、この流れ からいっても少しこれは感覚的に多過ぎないか。だんだんドミノが進んでいくに従いま して、人数的には少なくなっていくはずですので、ですからやはり日本人の場合は、も う少しGFRの基準を下のところに設定すべきではないかという気はいたします。  ここら辺からは少し治療の話をいたします。レニン・アンジオテンシン系、話をして いきたいと思います。というのは、実際にCKDということをスペシフィックに見た場 合、治療法は一体何なのかということをまじめに考えた場合、そうチョイスがないわけ ですよね。腎臓が非常に悪くなってしまったら、タンパク制限や貧血管理、いろいろな ことを言いますが、では比較的早い段階の治療薬は一体何があるのと聞かれたら、皆さ ん答えるのは結局レニン・アンジオテンシン系の阻害剤というのもまた事実だと思いま す。レニン・アンジオテンシン系は、ACE阻害剤とARB、それからアルドステロン ブロッカーがございます。  それで、糖尿病で高血圧の患者さんで腎障害がある方というのは、本当は実はすごく 進んでいる。この段階でのレニン・アンジオテンシン系の関与は非常に大きいわけでし て、これは有名。2000年発表のRENAALという試験です。実際に糖尿病性腎症の方 でARBを使うと、さらにリスクリダクションができるということが報告されました。  これは最近行われた日本のCASE-Jスタディーです。これは血圧をしっかり 134mmHg、同じぐらい下げているわけです。これはかなりきちっと降圧できているわ けです。それをARBとカルシウム拮抗剤でやった。一次エンドポイントの発症率には 差がなかったのだけれども、腎症という観点から見ると、CKDであるGFRが60を 切ってくる群で見ると、レニン・アンジオテンシン系を阻害した群の方が明らかに予後 がいいということを考えてみますと、レニン・アンジオテンシン系阻害やはりBeyond blood pressure ということは、CKDの治療には言えてくると考えられます。  糖尿病からミクロアンギオパチー、ここでもレニン・アンジオテンシン系の阻害剤を 使うわけです。これはそのうちの一つですが、糖尿病性腎症2期の患者さんで、血圧を 同じぐらいに下げても、ARBで下げていく方がちゃんとタンパク尿が減ってくるとい うことです。ですから、レニン・アンジオテンシン系を阻害しようということですが、 大事なのはタンパク尿が減るということですので、これは治るということです。 Regressionがあるということであります。  これは滋賀医大の柏木先生たちのデータですが、同じくやはり血圧がちょっと高い人 で、最終的に131mmHg、75mmHgですから、先ほどのCASE-Jと同じぐらいきれい にARBとカルシウム拮抗剤で血圧を下げるわけです。それで、腎症を見てまいります と、どちらの群でも重要なことは、やはり血圧を下げていますのでRemission & Regressionがあったわけです。Regressionはアルブミン尿が減るわけですね。 Remission、治るというのはこの場合は正常アルブミン尿へ移行するということ、どち らの降圧群でもそうした事がおこることがまず重要であると。さらに大事なことは、A RBで下げていますと、さらにRemission & Regressionが大きいということですので、 こういった段階のことは、かかりつけ医の先生ができることなのです。逆に大学で、こ ればかりやっていられないというところで、このあたりはかなり一般の先生方ができる ような一つの治療パッケージを私はつくるべきだと思います。  もちろん糖尿病というのはその前の段階にありますが、糖尿病すらレニン・アンジオ テンシン系を阻害することによって抑制されるというデータ、これもACE阻害剤、A RBを使うとカルシウム拮抗剤や利尿剤を使うよりも、同じだけ血圧を下げていても糖 尿病になる人が2〜3割少ないということが言われてくるわけです。この段階ではさら にRegressionさせるのではなくて、病気を起こらなくする、Preventionであるという 形になってきています。  これもCASE-Jの結果ですが、確かに日本人でも肥満になればなるほど、レニン・ア ンジオテンシン系をブロックしておきますと、糖尿病になるのが明らかに減っていると いうことですので、肥満ベースにしたドミノの流れ、糖尿病の発症やCKDの発症とい うのは、やはりレニン・アンジオテンシン系をベースにしたしっかりとした治療を、早 目に行うべきであるということが考えられています。  最後のところはさらに上流ということで、メタボリックシンドロームが起こるこの前 の段階でも、実はPreventionが可能であるということが最近動物実験でわかってきま した。ここもやはり今後はかかりつけ医の先生も意識すべきであると思います。これは 日本のメタボリックシンドロームというものの3つのコンポーネント、どれをもってメ タボリックシンドロームと診断されるかというのを、京大と札幌医大で検討したもので すが、日本は明らかに高血圧のコンポーネントが大きいですね。耐糖能でひっかかって くる人というのは、メタボリックシンドロームの診断のときにはないわけです。そうい う意味では、日本人というのは、3枚のドミノを同じところに並べましたが、実は高血 圧だけ少し早いのです。ですから、日本人は太ってくるとまず血圧が少し上がってくる。 その後、高脂血症や耐糖能異常が起こって、動脈硬化が進む。腎臓が悪くなりながら糖 尿病がここで起こってくるという考え方の方がいいと。ですから、プレメタボリクな状 況の肥満、高血圧の人を見逃さないということも、大事であるということです。  最近我々は、実は早い段階からレニン・アンジオテンシン系をブロックしたら、高血 圧の発症をブロックできるのではないかという話を考えています。例えばこれは動物実 験ですが、これは血圧が200mmHgぐらい上がっていく動物です。でも、この動物で高 血圧になってすぐのところでACE阻害剤、ARBをわずか2週間だけ投与して、薬を やめています。やめたとしても、それをやめた後でも血圧が低いままでいけるという、 このブロックされたメモリー現象が少なくとも動物実験であるということです。早目に 治療をしたら、やめるかどうかは別ですが、かなり治療効果ということがメモリーとし て残るというのが、今学会では非常にトピックスです。つまり、病気というのは Regressionできる。あるいはPreventionできる。しかも早目に治療したら、その治療 のメモリー効果が残るかもしれないということが言われているわけです。  これは腎臓障害でもそうです。高血圧の動物を糖尿病にして腎障害を検討したところ やはり、ある時期にレニン・アンジオテンシン系、あるいはアルドステロン阻害剤でブ ロックしておきますと、やめた後でも腎症の進展が少なく済んでいるということがわか りました。薬を実際治療でやめるかどうかは別にしても、早くやると非常に軽くなると いうことも、腎障害でも言えているということです。  ですから、治療戦略としては、やはりレニン・アンジオテンシン系をベースにした現 在の治療が行われていますが、早目から始めるとPreventionやRegressionができるの ではないかと思います。  そういう意味で、私は現在のCKDのステージ分類は非常に意議があると思います。 60という値にとらわれず、ステージ1を設けている。ハイリスク群を設けている。この あたりというのは、かかりつけ医の先生方が十分治療できる範囲なわけです。こういっ たところの患者に活用して少しそのステージの重要性をエデュケーションして、一つの 検査、治療パッケージをもうけた診療にしてやっていただくということが、比較的簡単 であると思います。ドミノの下流になると透析導入の問題や、あるいはカリウムが上が ってくるなど、いろいろな難しい問題が出て、ここら辺は専門医の方がやられたらいい わけで、もっと上流では糖尿病の先生がやるかもしれない、循環器の先生も考えた方が いい、かかりつけ医の先生もやった方がいいという気がいたします。  以上です。 ○飯野班長  ありがとうございました。では、先生、席に戻っていただいて。メタボリックドミノ からいろいろお話しいただいたわけですが、今お話を聞いていて思い出したのが、僕が 昔いたところのハーバードのボスのブレンナーは、ACE阻害薬を水道水にまぜればも っといいのではないかというのを昔言っていたのです。それは異常ですが、そういうこ とも考えられるわけですが。何か御質問はございますでしょうか。山縣先生。 ○山縣班員  伊藤先生、本当にどうもありがとうございました。先生、高血圧の患者さんが3,500 万人いて、では実際に現状において治療を受けている方がどのぐらいいるか。大体数字 が出るのでしたっけ。 ○伊藤参考人  そうですね。2分の1のルールというのが一応あって、全体の半数が高血圧と診療さ れている。さらにその半数が治療を受けている。さらにその半数がちゃんと治療を受け ているという、そういうことですので、治療を受けている患者さんというのは4分の1 ですね。 ○山縣班員  今の先生のお話ですと、3,500万人全員が、恐らく初期の段階からRAS系阻害薬を 服用すれば世の中は変わるということですよね。 ○伊藤参考人  そうです。極端かもしれないですが、かなり様子は違ってくる。そうするとCKDが 進まないと私は思うのです。 ○山縣班員  これは厚労省の立場から、3,500万人全員がRAS系阻害薬を飲み始めても、という 問題をどういうふうにとらえたらいいでしょうね。今きっとそういうサジェスチョンだ ったと思うんですよね。 ○伊藤参考人  治療の立場からいうと、逆に非常に初期の人ですと、治療に用いる量もすごく少ない ですよね。だから、そのコストベネフィットを計算してどうなるのかということだと思 います。 ○山縣班員  ですから、本当にコストベネフィットという点で今の問題が解決するのかどうか。も っと言うと、私たち腎臓の医者から見ると、例えば4万人毎年透析導入される方に対し て、実際に健診でひっかかる方はすごい数なのです。茨城で調べてもらっていますが、 一生懸命受診する様に指導しても、実際に病院にかかってくるのは、健診での異常者の 10%に満たない。そういう中でやっているのが現実で、でもこれを全員が受診した場合 の医療費ということになると、やはりそれなりの覚悟はかなりしなければいけないとい うことだと思います。 ○伊藤参考人  現状として、見つかった人をどうするのかということがないと、先ほど先生が言われ たみたいに、専門医に送っても専門医もちゃんと診てくれないとか、結局進んだ人しか 診ないわけです。そうしたら余り意味がないかなという気がしますが。 ○飯野班長  厚労省の方は何か御意見はございますか。はい。ではまた後で聞きましょう。ほかに は。松川さん、いかがですか。今メタボリックシンドロームですが、どうやって取り組 んだらいいか。やはり肥満が一番いけないということですが。 ○松川班員  メタボリックシンドロームの概念が出たのは昨年の4月で、CKDの概念が出たのは 今年の5月で、ここのところ2つ住民の健診結果から判断基準ができるようなものが出 たのは、一つには住民の人は自分で、一体自分はメタボリックシンドロームに該当する のだろうかとか、eGFRを出すことで自分はCKDなのだろうかということがわかる ような判断基準ができたことは、とてもいいことだなと思います。  ただ現実問題として、先ほどから先生方はかかりつけ医と専門医の中のお話をされて いるのですが、特にこれから特定健診・特定保健指導が始まると、受診率を上げなけれ ばいけないということは、同時に初めて受ける人がたくさん出てくるんですよね。初め て受ける方というのは、意外に継続受診している方よりも検査所見が悪いというのがわ かっていますので、初めて健診を受けながら、もう既にCKDがステージ3であり、耐 糖能異常があり、高血圧も中等症の高血圧があるということが健診結果で出たときに、 正直、では私たちはどこを紹介したらいいのだろうという迷いも、実は地域の中にはあ るのかなと思いながらお話を。先生方のところにお伺いする前の段階で、たくさんの方 が健診を受けて、いろいろな判断基準が出たのだけれども、では、その次に一体どうい う方たちを私たちは紹介することが一番間違いのない、人工透析を予防できるのかなと いうことをちょっと考えながらお伺いしていました。 ○飯野班長  伊藤先生、そういう点はいかがですか。 ○伊藤参考人  タンパク尿というのは、逆に言うと、メタボリックシンドロームから見ている人間に とってすごく意味があることなのです。もちろんメタボリックシンドロームで軽い段階 というのは、肥満を治すことがすべてなわけです。我々はそれを指導するわけで、それ で治っていくケースがほとんどです。では、その人が一体どこまで進んでいるのかの判 断は、意外とタンパク尿がどれだけ出ているのかというのが一番客観的です。ですから、 そのラインを引くのは医者によってまた違うと思いますが、あるラインを超えたら、先 ほどのドミノでいうとかなり進んでいるわけです。そうなってくると、やせなさい、や せなさいばかり言っていたらどんどん進んでいくということなので、ある段階からは薬 物治療も入れていく。そういう意味でも、CKDというのは我々の立場からしても客観 性を持った指標になり得るというので、それを幾つにするかということも考えていただ くと非常にプラクティカルになると思います。 ○飯野班長  はい、秋澤先生。 ○秋澤班員  高血圧患者を先につかまえて、それから治療を始めればかなり予防効果があるのでは ないか。大変興味深く伺いました。私たち腎臓の専門家にとって、高血圧患者が腎障害 を初めて発症したときには、微量アルブミン尿で検出するという問題があります。糖尿 病に関しましては、現在微量アルブミン尿は保険診療ではかれることになっております が、高血圧では測定することはできません。この辺については先生はいかがお考えでし ょうか。 ○伊藤参考人  そうです。ですから、それもコストベネフィットの問題が大きいと思うのです。ただ、 血圧に関しては必ずしも微量アルブミンだけではないと思います。微量アルブミンをは かるときに、糖尿病性腎症の疑いと書くのか、あるいは我々にしたら血中のBNP濃度 をはかったりする。では、心不全という病名を疑いでつけるのかというのはいろいろ問 題があるのですが、しかし、あるところを超えて薬物治療をするかどうかのときには、 客観性を持ったデータがないといけないと思います。 ○秋澤班員  本来であれば、高血圧性腎症の診断をつける、あるいは腎障害があるかどうかという ことを鑑別するために、アルブミン尿をはかるというのは正当な手段であると思うので すが、それを糖尿病性腎症という病名をつけなければできないということ自体に問題が ある,そういうことでよろしゅうございましょうか。 ○伊藤参考人  ですから、本当に何回はかるかという問題もありますが、先生が言われたとおり、や はり臓器障害の判定基準として、微量アルブミンというのはメタボリックすべてにおい て意味があることだから、必ずしも糖尿病という縛りをつけない方がいいのではないか なという気はいたします。 ○飯野班長  ありがとうございます。秋澤先生、非常にすばらしい御意見ですが、やはり今の保険 制度というのはいろいろ問題点があると思います。そこを変えないといけないと思いま すよね。今のでいい保険制度なのですが、やはりそういう細かいところで、運用の点で どういうふうにしたらいいかというのは、そこを変えて日本の医療をよくしてほしいで すね。宮崎先生、何かございますか。 ○宮崎参考人  いや、厚労省の方々は保険病名と診療病名の使い分けをしないようにと、私も開業の ときに耳にたこができるほど言われました。ただ、実際患者さんを診た場合に、やはり 保険で認められていなくても必要な検査があるわけです。そうした場合には、主治医の さじかげんが認められているのが現状だと思います。こういったことが認められている うちは救われると私は思いますし、やはりそれが日本のレベルを上げていると信じてい ます。 ○飯野班長  僕もICDの委員をちょっとやっておりますが、日本だけですよね。正確に統計して も本当の病名の疾病分類が出てこない、その頻度が出てこないというのは。ほかの国は きちっと出てくるのに、日本は保険病名で出てくるから、本当の医療の頻度がわからな いというのはやはりおかしいですね。おかしいと思うことは変えていくべきでしょうね。 これはちょっと関係ないですが。  では、時間になりましたので、次に引き続き、我が国における生活習慣病対策につい て、厚生労働省の健康局総務課生活習慣病対策室の山本さんに、いろいろ生活習慣病の ことについては頑張っていらっしゃる方なので、よろしくお願いいたします。 ○生活習慣病対策室  ただいま御紹介いただきました、生活習慣病対策室の山本といいます。それでは座っ て失礼させていただきます。先ほど伊藤先生の方から、メタボリックシンドロームの前 段階からの対策をという話がございましたが、やはり運動、栄養、生活習慣の改善が一 番ベースだと思っておりますので、そのあたりも含めて生活習慣病対策の全体像を、簡 単にですが御紹介させていただければと思っております。私が本日お話しさせていただ く内容は大きく3つでして、生活習慣病の現状と、対策については大きくポピュレーシ ョンアプローチとハイリスクアプローチの2つに分けられると思いますので、それぞれ 御説明をさせていただければと思っております。  まず1枚にすべてをまとめたスライドですが、対策の現状としては、今お話しさせて いただいたとおり、「健康日本21」を初めとして、普及啓発活動、国民の健康づくり運 動をポピュレーションアプローチとしてやっているということ、健診・保健指導をハイ リスクアプローチとして、これらの2つをうまく組み合わせてやるということが重要だ ろうと思っておりまして、従来はその対策を進めてきたというところです。  その結果、どういう状況があるかといいますと、「健康日本21」の項目で改善してい る項目もあるのですが、その一方で肥満者の割合が増加していたり、日常生活における 歩数が減少していたり、生活習慣病の方が増加しているという状況が見られ、さらにま た医療費も増加してきているという状況があります。  課題として、そうすると今後どういう方向性で向かっていくかというところでござい ますが、やはりそこはターゲットをあれもこれもというのではなくて、ターゲットを絞 っていくという話。また、ハイリスクアプローチをやっていく上では、市町村、医療保 険者の役割分担を明確にしていこうというところなどが指摘を受けております。  今後の方向性としては、ポピュレーションアプローチとしてはやはりメタボリックシ ンドロームの概念を導入して、我々としても日ごろから運動や食事について生活習慣の 改善に取り組んでいただけるように、エクササイズガイドや食事バランスガイド等を作 成しておりますので、どこかの場に行かないとできないというのではなくて、日常から 取り組んでいただける形をつくっていく必要があるのだろうと考えております。  また、ハイリスクアプローチはもう何度も出ておりますが、今後、医療保険者が特定 健診・特定保健指導を実施していくという形でやらせていただいて、目標としては平成 27年度までに生活習慣病の該当者及び予備群を25%以上減少させていこう。それによ って国民の健康増進・生活の質を向上させ、医療費の適正化をやっていこうというのが 全体の方向性になっております。  それを少しかみ砕いて、個別に御説明をさせていただければと思います。生活習慣病 のもとになる生活習慣については、先ほどお話をさせていただいたとおりで、特に男性 の肥満者の割合がベースラインでは24.3%であったところが、本来であれば目標はかな り下げていく方向で設定をしておったわけですが、むしろ中間評価では増加傾向にある など、やはり生活習慣の欧米化等々に伴いまして、生活習慣の状況が悪化傾向にあると いうのが一つ言えようと思っております。歩数の増加もそうでございますし、運動習慣 についても目標を定めておったのですが、やはりなかなか平成22年の最終年度に向け て達成できない、むしろ悪化している項目が多くあるというのが現状だろうと思ってお ります。  生活習慣ではなしに、実際に生活習慣病を発症しているという人につきましても、糖 尿病が特に挙げられますが、有病者が740万人、予備群が880万人で、よく言われるの はこの5年間で1.2倍にふえてきていると。やはりこの増加をどうにかしていかないと いけないというのが大きい課題だろうと思っております。  医療費と死亡に占める割合を見てみますと、がんを入れましても医療費では3分の1 程度は生活習慣病が占め、悪性新生物を除きましても4分の1は生活習慣病が占めてい ます。死亡につきましても、がんを入れると3分の2、除いても約3分の1は生活習慣 病が占めているというように、国民のQOL、また医療費の両面の観点から、対策は重 要だろうと思っております。  なぜ重要なのかというのは、やはり生活習慣病というのはその名のとおり、予防可能 な部分が当然あるというところで、きちっと対策をとることによって発症の予防、医療 費の適正化ができるのだろうと考えております。  これは医療費右肩上がりの図ですので省略をさせていただいております。  医療費がふえていく要因は、数がふえていくということと、平均の在院日数がふえて いると。数の増加と平均在院日数、いろいろ分析の仕方はあるのだと思いますが、いず れにしても生活習慣病の予防ということをやることによって、医療費の増加の伸びを抑 えることはできるのではないかと考えております。  そのために、先般行われた医療制度改革で生活習慣病対策というのが大きい柱の一つ とされまして、メタボリックシンドロームに着目した健診・保健指導を医療保険者に義 務づけていくという流れができたわけであります。  そういう形で、「健康日本21」で進めていたり、また医療制度改革という大きい背景 がある中で、今後どういう対策を打っていくかというところで、ポピュレーションアプ ローチについてまず説明をさせていただければと思っております。ポピュレーションア プローチは従来「健康日本21」でやらせていただいていたのですが、やはりターゲット を明確にしていかないといけないだろうということで、「健康日本21」のうちの運動、 食事、禁煙の3つに焦点を当てて、さらに重点化した国民運動、「健やか生活習慣国民運 動」、これは仮称でありますが、これを進めていきたいと思っております。  具体的に何をやっていくのか、今後のスケジューリングについては、まさに今オンゴ ーイングで取り組んでいるところですが、やはりいろいろな団体からの参加を募りまし て、すぐれた事例の収集等々、今年度末にプレイベントをやって、本格始動は20年度 ですが、国民運動を盛り上げるための準備をしっかり19年度中にやり、来年度以降、「健 やか生活習慣国民運動」という、この栄養、運動、禁煙の3つに大きく絞った国民運動 を、さらに充実して展開していきたいと思っているわけであります。  その上で、我々政府としてとった対応でございますが、やはり都道府県がきちんと調 整役を担っていただく必要がございますので、健康増進計画の改定をしていただきたい と思っております。いろいろと内容を定めているのですが、大きいのは生活習慣病に関 した目標項目を新たに設定していただいております。  それが一体何かというのを、この生活習慣病の進展に合わせて説明をさせていただけ ればと思います。大きく5つのステージに分けて考えておりまして、検査結果に異常が ない不適切な生活習慣のフェーズ、まだ病気にはなっていないけれども境界域と言われ る状態、さらに生活習慣病を発症し、さらには今回問題になっている透析を含めた重症 化・合併症のフェーズ、さらに要介護、死亡というところで、それぞれに対して最初の 段階でいえば野菜摂取量ですとか、境界域やこの疾病を発症した段階であれば、血圧や 脂質の有病者・予備群がどれぐらいいるかという指標を立て、さらに合併症であれば糖 尿病の新規透析の導入率がどれぐらいなのかという、フェーズごとに目標値を設定して いくという形をとっております。  先ほどポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチの話をさせていただいた のですが、ポピュレーションアプローチは当然全体に対する普及啓発という形で、国民 一人一人に取り組んでいただくことが重要だろうと思っております。ハイリスクアプロ ーチは、今回特定健診・特定保健指導を後ほど御説明いたしますが、やはり生活習慣に 幾ら取り組んでいただいても、境界域になっていく方はいらっしゃいますので、健診を やり、さらに生活習慣の改善が必要な方に対して保健指導をやっていくという対策を、 ハイリスクアプローチとして予定しているという状況であります。  具体的に医療保険者がやるというお話をさせていただいたのですが、内容を簡単に御 説明させていただければと思っております。医療保険者が実施するというのはよく御存 じだと思いますが、対象者は40〜74歳の加入者で、約5,600万人が対象ということに なっております。特定保健指導は全員にやっていくわけではありませんで、実際一定の 基準に該当する約25%の方に対して実施していく形になっております。そして、実際の 保健指導をし、生活習慣の改善をしていただくことによって、生活習慣病の発症を予防 し、医療費の適正化につなげていきたいと考えているわけであります。  具体的に健診項目や保健指導対象者をどうやって選定していくのかというのを、御説 明させていただければと思います。老人保健事業の基本健康診査をベースに見直しを行 っておりますので、メタボリックシンドロームの診断基準である腹囲の追加等がされて いるものが、大きい変更点だろうと思っております。  保健指導対象者、先ほど25%が対象になってくるとお話しさせていただいたのですが、 だれに対して医療保険者は保健指導をやっていくのかと申しますと、最初の段階で腹囲 が一定基準以上あるかどうか。これはメタボリックシンドロームの診断基準であります。 もしくは従来肥満の基準であるBMI25、いわゆる内臓脂肪に着目した肥満の方がまず ベースの対象になってまいります。その上で、血糖、脂質、血圧、喫煙という脳・心臓 疾患のリスクというのを評価しまして、肥満の有無と脳・心臓疾患のリスク、これらを 掛け合わせて特定保健指導対象者となるのかどうか、特定保健指導対象者のうち、介入 レベルをどうするのかというのを決めていく形になっております。  具体的な話はまた後ほどさせていただきますが、いわゆる肥満でない方や、肥満であ ってもステップ2でリスクのない方というのは、情報提供レベルという形で、原則健診 結果の通知等を行っていく形になります。リスクの重なり具合に応じて、例えば腹囲が 基準値以上の方で、ステップ2のリスクが1つあれば動機づけという比較的低いレベル の介入をし、2つ以上重なってきますと積極的支援という形で、密な介入をしていくと いう制度になっております。  ポイントは、多分今日の話にも関係してくると思いますが、基準を満たしていても、 医療機関で既に治療を受けられている方というのがいらっしゃると思いまして、その方 については結論としては特定保健指導の対象にはならないという形になっております。 それはやはり服薬治療も含めて総合的に医療機関で管理する方がよろしいだろうという 御指摘等もございましたので、特定保健指導対象者は現在医療機関に受診していない方、 プレの部分に対応していただくという形になっております。  具体的な保健指導の内容を簡単に御説明させていただければと思います。基本的には 動機づけ支援と積極的支援という2つのレベルがございまして、それぞれどういった内 容でするのかを説明させていただければと思います。  動機づけ支援というのは、基本的には1回面接を行っていただく形になっておりまし て、1対1でやる場合には20分以上、8人以下のグループでやる場合には80分以上と いう形の支援、介入を行っていただき、6カ月後に評価をしていく。具体的な面接の中 で何をやっていくかといいますと、健診結果や問診の内容から、生活習慣の改善が必要 な点を抽出していただいて、改善をその中で促していただく。指導を受けられた方は自 宅に戻られて、指導を受けた内容に従って改善に取り組んでいただくという形になりま す。  積極的支援につきましては、初回の面接でやることは同じでございますが、やはり生 活習慣の改善を継続していくのはなかなか難しい部分もございますので、3カ月以上に わたって面接であったり電話であったりeメールであったりと、形を変えた継続的な支 援を行っていただくという状況になっております。あくまで20分や80分というのは最 低要件でございまして、これをやれば終わるというものではありませんので、医療保険 者の判断等によってそれに上乗せをしてやっていただくということは、十分可能な制度 になっております。  実際に保健指導をやっていただく方には、やはり様々なスキルが求められると思いま すので、我々の方で研修のガイドラインというのを策定させていただいておりまして、 それに沿った研修を受けていただくことが望ましいと考えておりますので、ぜひきちっ と研修を受けていただいて、効果のある保健指導をやっていただき、今お話がありまし たように、やはり医療機関に行く前にきちっと生活習慣の改善をするということも、生 活習慣病対策としては重要だろうと思っております。  先ほどの最初のスライドに戻るのですが、生活習慣病対策としてはやはり異常がない 段階での健康づくりだったり、異常が出てきた段階でもちゃんと健診・保健指導を受け て、こちらの上流に行かない流れをつくる。糖尿病や高脂血症を発症してしまったとし ても、そこはきちんと治療を受けられたりして、合併症の発症や重症化を予防していく。 すべてのフェーズで必要な対策をとっていくということが重要なのだろうと考えており ます。  以上であります。 ○飯野班長  どうもありがとうございました。スライドの中に伊能忠敬が出ていますが、それは何 ですか。せっかく書いてありますから、ちょっと説明していただけますか。 ○生活習慣病対策室  歩いて地図をつくって、要するに生活習慣の改善、運動を生きがいの一つとして取り 組んで、健康を維持するし、心も幸せになるしという、健康づくりを人生の中で取り組 んでいかれた例として取り上げさせていただいているということでございます。 ○飯野班長  ありがとうございました。それでは、今いろいろとお話しいただきましたが、何かコ メント、あるいは質問はございますでしょうか。松川さん、特に関係していますが、い かがですか。 ○松川班員  6ページのところにある新しい特定健診・特定保健指導の必須の検査項目の中の、特 にこちらでいくと尿検査、やはりタンパク尿が腎疾患の発症と判断基準にもとても大事 だということが載っているのですが、一応こちらで尿糖と尿蛋白しか載っていないので すが、先生方も含めてですが、例えば尿潜血というのは腎疾患の中では……。特にクレ アチニンが今回残念ながら検査項目にはなっていませんので、現実的には尿蛋白と尿糖 とか、尿蛋白の中で腎臓の早期介入をしていかなければいけないのですが、一つには尿 潜血というものはどんなふうに見ていったらいいのか。 ○飯野班長  そうですね。山縣先生、その辺はどうですか。潜血についてですが。 ○山縣班員  一応茨城県でこれを昔検討したことがあるのですが、やはり高齢で初回の異常に関し ては、その中に悪性腫瘍も含めて危険性を否定できないので、初回だけは調べることに しております。ただ、前年度から引き続くものに関しては、基本的には精密検査までは 不要と考えております。ただし、そのときに指導が重要で、肉眼的血尿が出てきた場合、 あるいは尿路刺激症状が出てくるような場合、こういうような場合には必ず受診をする ように話しております。一応これはまだコンセンサスではありますが、尿潜血単独陽性 者の事後処理は、茨城県ではこの様に行っております。 ○飯野班長  山本さん、どうですか。 ○生活習慣病対策室  今回5,600万人が対象ですが、健診項目として一律にやっていく上では、有効性、有 用性、偽陰性、偽陽性の問題、すべて総合的に考えていく必要があると思っていまして、 今後、尿潜血がそういうことをすべて含めて本当に必要というエビデンスが出れば、ま た検討の値が出ると思いますが、やはり偽陰性の問題等を含めて、もう少し検証が必要 な部分があるのではないかと考えております。 ○山縣班員  もう一つ重要なことは、茨城県では尿潜血陽性率が10数%と高い。一方、尿路の悪 性腫瘍に関しては女性は男性の10分の1程度ですから、陽性率の高い女性に対して悪 性腫瘍は圧倒的に少ないという事実もあり、中〜高齢者の検尿検査において、尿潜血検 査の必要性意義が問われるのだと思います。 ○飯野班長  ほかには。はい、どうぞ、伊藤先生。 ○伊藤参考人  ちょっと質問ですが、今の特定健診のことですが、一つはこれは最初の腹囲やBMI でひっかからなかった人は、もう全然この対象外になりますか。 ○生活習慣病対策室  スライドの中で省略をしてしまったのですが、お手元の資料、通し番号でいうところ の3ページ目の右下のスライドを見ていただいてもよろしいでしょうか。今回、従来老 人保健事業でやっていた事業のうち、医療保険者が引き継ぐものについては、高齢者医 療確保法に基づき医療保険者が実施することになります。それ以外の事業については、 市町村が健康増進法に基づく事業としてやっていくことになっておりまして、例えば肥 満でない高血圧の境界域の方がいらっしゃると思いますが、それらについては市町村の 事業として個別健康教育等をやっていくことになっておりまして、今現在予算要求をし ているという状況になっております。 ○伊藤参考人  これは糖尿病の値を下げられたというのはすごく意味があると思うのですが、いきな り糖尿病の人がいるじゃないですか。高血圧の人とか。そういう人に関しては、こうい う指導ということではなくて、すぐに専門医へという、そういうパスがあるのですか。 ○生活習慣病対策室  今回の検討会の報告書の中で書かせていただいておりますのは、健診結果に基づいて 直ちに医療機関を受診する必要性というのは、やはり医師が判断をして、従来どおりこ れはやっていくことだと思うのですが、医師の判断を健診結果の通知書に記載した上で、 御本人にお返しするというのは当然引き続き行われていくことだろうと考えております。 ○飯野班長  ほかにはございますでしょうか。はい、どうぞ、宮崎先生。 ○宮崎参考人  CKDの方からこの特定健診を見た場合に、先ほどの伊藤教授の話でもあったように、 CKDはかなり重要な位置づけだと思うのですが、厚労省の代表的な指導要項のスライド で見ても、単に透析を防ぐというような観点からしかタンパク尿というものをみていま せん。これは腎臓学会の方にもお願いしたいのですが、もう少し特定疾患におけるタン パク尿陽性の意義や実際の指導法、特に心血管のイベントとの関連を強調した患者指導 のためのツールを用意して頂きたいと思います。そういうのをしないと、結局この特定 健診は生活習慣病の方に重点を置かれてしまい、CKDの観点がなくなってしまいます。 ○飯野班長  そうですね。特定健診は最初は検尿も入っていなかったわけですから、そういうとこ ろは学会の責任もあるわけですね。それだけ主張しなかったという点は反省すべきだと 思いますが、クレアチニンが落ちているというのも学会の力が弱いというところがある のでしょうけれども、ただ国民の健康を守る点では、やはりフェアに考えていく必要が あるかなという気がします。やはり学会主導でいろいろ提言するというのは必要だと思 います。  今の山本さんの発表について、ほかには何かありますか。はい、どうぞ。 ○伊藤参考人  伊能忠敬ですが、こういう場で言うのはあれですけれども、これは実際に僕らがメタ ボの人を見ていると混乱を招くのです。やはり肥満の解消ということは、皆さん伊能忠 敬をやったらいいかという話になってしまって、「1に運動」ということは我々から見た らあり得ないんですね。運動してやせるはずがないわけです。だから、そこら辺はちょ っと認識を変えてもらわないと。ちょっと太っている、じゃ、運動しましょう、という のは間違いだと思います。 ○飯野班長  どうですか。伊藤先生はいい意見ですが、それを具体的にどうするかですね。 ○生活習慣病対策室  伊能忠敬の件はちょっとあれですが、国民に対して正確な情報提供をしていくという のは非常に重要だろうと思っておりまして、本当にいろいろな情報がはんらんしてきて いるとは思っておりますので、やはり正確な情報を提供していくことが何より重要だろ うと。 ○飯野班長  伊藤先生がおっしゃっているのは、多分肥満の方は運動するような人ではないと。だ から、そういうインセンティブがない人にどういうふうに対応するかというのが問題だ ということで。そうではないですか。 ○伊藤参考人  いや、そうではなくて、要するに肥満を解消するという意味は、食事療法しかないん ですね。そのことがだれもわかっていない。要するに患者さんも自分はいっぱい食べた いだけ食べて、じゃ、運動しましょうという、そういう発想になっていたら、いつまで たっても肥満の対策ができない。生活習慣病全体に関しては運動がいいのはもちろん当 たり前ですが。 ○飯野班長  どうですか、松川さん。 ○松川班員  そうですね。生活習慣を指摘された方、例えば私だと肥満の方にいきなり運動を勧め るとひざが痛くなってしまって、逆に痛くて運動しなくてという悪循環の方もあるので、 やはりその方その方に応じて食事や運動のことに入っていかなければいけないかなとは 思いますが。 ○飯野班長  ほかにはございますか。まだこれからディスカッションはしますが何か。秋澤先生、 言いたそうですね。はい、どうぞ。 ○秋澤班員  7ページの「保健指導対象者の選定と階層化(その2)」というところで、前期高齢者 については、積極的支援の対象となった場合でも動機づけ支援とすると書かれています。 こういう形で年齢による区別が行われているわけですが、この理由として、予防効果が 多く期待できる65歳までに、特定保健指導が既に行われてきていると考えられること とされています。しかし、こういうシステムはこれからできるということですね。そう しますと、65歳までにこういったものが行われているという前提にはならないのではな いかと思うのですが。 ○生活習慣病対策室  そこは御指摘の部分はあると思っております。これはちょっと今回話を省略させてい ただきましたが、高齢者医療支援金の加算、減算を把握する上では、特定保健指導の実 施率をカウントする必要がありまして、その上で何をやったら特定保健指導をやったと みなすのかというところがあります。そういう意味では、最低限やらないといけないラ インというのは一つ必要なのだろうと思っております。それで、話の中でもお話しさせ ていただいたのですが、これ以上やってはいけないというわけではございませんで、生 活習慣の改善の上で必要であれば、上乗せをやっていくことは十分可能な制度になって おりますので、一律みんなに積極的支援をやるということではないというふうに御理解 をいただければと思っております。 ○飯野班長  よろしいですか。ほかに御質問は。はい、どうぞ。 ○藤垣班員  実際に保健指導をやる病院だとかそういうところの確保や、やる方たちの確保など、 その辺はどのように考えられておられますか。実際現場ではなかなかこれは大変なこと で、研修に行ってということで、かなり混乱している部分もあるのですが。 ○生活習慣病対策室  ここはもう御指摘のとおりだと思っておりまして、医療保険者が今回義務づけをされ るわけですが、実際にやれない場合にはアウトソーシングをしていく形になろうと思っ ております。それぞれ自前で抱えられているところもありますし、ないところは今後、 今御指摘のようなお話もあると思いますので、人材の育成等も含めて取り組んでいかな いといけないとは考えております。 ○飯野班長  ほかには。はい、山縣先生。 ○山縣班員  今の具体的な人材の育成ですよね。やはり本当にそこはちょっと気になるのですが、 何かプランというか、現状で進んでいるところはあるのでしょうか。 ○生活習慣病対策室  まず、当然すべて国が研修をするわけにはいきませんので、今年の5月に国立保健医 療科学院の方で都道府県や自治体、医療保険者等々に対して研修をさせていただいてお ります。あとは関係団体等がその研修を踏まえて、一定の研修をまたやっていただくと いう形です。 ○山縣班員  指導者を今現在養成しているのですか。すなわち、保健指導する方に指導法を伝授し ているということですか。 ○生活習慣病対策室  根本的な話ですが、そのために保健師という資格があってということがございますの で、今まで取り組んでこられた方もいらっしゃいますし、そういうリソースが今から1 から必要ではないということは一つあるのだろうと思っております。しかし、今回新し い制度が始まって、特化してやっていく部分がございますので、そういう研修は国立保 健医療科学院を初め、やらせていただいているというふうに御理解をいただければと思 います。 ○山縣班員  5,600万人の25%に指導が必要だからおよそ1,000万人、1,000万人の指導をするた めに何人ぐらい指導者が必要と考えておられますか。 ○生活習慣病対策室  5,600万人のうち、健診の受診率、保健指導の実施率、さらに対象者になる率、あと 実際に医療保険者は最初から100%実施するわけではございませんで、ちょっと言葉に 語弊がありますが、5年間の計画の中で第1期の目標で、すべて70%の健診であれば、 保健指導であれば45%を目標にしていきましょうという形でさせていただいておりま すので、いきなり今御指摘のあった数字をすべてやるわけではないということは、ひと つ御理解をいただければと思っております。しかし、何人必要かという試算は、ちょっ と済みません、手元にありませんが、積極的支援、動機づけ支援を今御説明をさせてい ただいた形でやっていきますので、ある一定の数が必要だというのは事実だと思います ので、その確保に向けては実際にやっていただく団体等で確保していただくとともに、 人材育成等は進めていかないといけないと考えております。 ○松川班員  恐らく先生方たちだと、治療効果やエビデンスの部分で、例えば肥満、メタボだけの 人に保健指導をしたらこういうふうに下がりましたとか、そういう事実の効果をお知り になりたいのかなと思うのですが、実はそれについては現在の老人保健法では、効果を 求めている結果の出し方ではないので、どこにもまだそのデータがないのです。ただ、 来年から始まる特定健診・特定保健指導は、本当に現在でいうとメタボリックシンドロ ームの該当者が何人減っていったかとか、治療中の者の中断者が何人いたかということ を、事細かに報告するようになってきますので、逆に言うと向こう5年間かけて、特定 保健指導の各地域の保健師や栄養士の指導が、本当に住民さんのために役立っているの かというあたりは検証されてくるのかなと思うのですが、現実的にはまだそういう数字 を持っているところは恐らく少ないのではないかと思います。 ○飯野班長  評価システムのない対策というのは無意味ですよね。ですから、今後はきちっと評価 をしていかなければいけないということです。あと、こういう体制をつくっても、やは り今コンビニとかそういうところで脂質が多いものとか、いろいろ日本人の食生活環境 がもう変わってきていますよね。それに対する対策というのは同時に考えないのですか。 そういうところをやっているところは厚労省ではあるのですか。日本の国民の健康を守 るために、どのくらいそういう油っこい食品を少なくしようとか。 ○生活習慣病対策室  直接の御回答になっていないかもしれませんが、最近成分表示ですとかそういうもの が進んできているので、そういうのを通して、あと食事バランスガイドの普及等々を通 じて、取り組んでいく課題ではないかと考えております。 ○飯野班長  アメリカでは学校のそばにマックをつくらないとか、甘いものをベンダーに入れない とか、いろいろやっていますが。それはまた別の話になりますけれども。  では、あと30分ありますので、本日のヒアリングをしていただいて、かかりつけ医、 あるいは腎臓専門医以外のCKD関連専門医の方、それから生活習慣病対策室の方に検 討していただいたわけですが、今日は資料1の2)医療提供体制の中でかかりつけ医と 専門医の連携等について、3)診療水準の向上にはどうしたらいいか、4)人材育成の 部分に関連すること、この3つの点について10分ぐらいずつ皆さんに討議していただ きたいと思います。各項目について、まず2)ですが、かかりつけ医と専門医の連携等 についてのディスカッションを行いたいと思います。ここに書いてありますように、か かりつけ医に対する普及啓発が重要ではないか。CKD診療ガイド等を普及させるべき ではないか。地域連携の先進的な取り組みから、他地域に応用できるシステムを検討し てはどうか。地域連携の先進的な取り組みについて、取り組み事例を集積してはどうか。 地域で連携パスを作成し、取り組み事例の検討を行うとともに、その結果を勉強会、講 習会等で活用してはどうか。地域の実情に応じた病診連携体制の確立には医師会等の協 力が不可欠ではないか。専門医による診療支援をインターネット、メール等を活用して 行ってはどうか。  というようなことですが、このほかに項目の追加、あるいは内容について、どういう ふうにしたらいいか。何か御意見はございますでしょうか。参考人の方でも構いません ので、いろいろ言っていただければありがたいと思います。秋澤先生、いかがですか。 ○秋澤班員  地域で具体的にどのように取り組みが行われているか,先進的な地域の事例といえる 形で、具体的なものが挙がってこなかったように思うのが第1点。  それから、パスについても具体的なことが、今回の聞き取りでは十分得られなかった のではないかと思いますが、これら具体的な事例についてはいかがですか。 ○飯野班長  松川さん、その辺はどうですか。松川さんのところはよくやっていらっしゃると思う のですが、ほかにどういうところでやっているかですね。あるいは、宮崎先生、何かそ ういうCKDに対して、地域連携をやっているところがあるのか。 ○松川班員  私の方でお伺いしているのは、浜松医大のある静岡の方では、一般内科の先生と腎臓 内科の先生が勉強会か何かをなさって、その中でGFR50を切ったら、一度は腎臓内科 の専門の先生にコンサルするようにという形で勧めてきたというふうにお伺いしている ので、その中で地域の保健師も換算GFRを出したら、かかりつけ医の先生を通じて専 門の先生にということはお伺いしています。 ○飯野班長  藤垣先生、何かございますか。 ○藤垣班員  CKD対策の方針というものが今出始めたばかりなので、浜松全体としてはまだ始ま っていない、これから始めていくというのが現状ですね。それから、浜松地区は先ほど 宮崎先生がお話になられたように、浜松西部というのは静岡の中でも専門医が少し多い ものですから、そこで計算してどのぐらいの人だったら診られるかということで出して いる部分がありまして、やはり地域ごとにかなり状況が違うので、本当に各地域のいい ところをほかで利用できるかというのはかなり疑問だとは思います。まだまだ始まって いないというのが現状だと思います。 ○飯野班長  はい、宮崎先生。 ○宮崎参考人  あと、体制の難しさは、腎専門医といってもヘテロというか、受け取る側の専門医の 認識がまだきちんとしていないのも問題です。長崎は我々のグループの内で、患者教育 も含めての標準化をしていかないと、かかりつけ医からの受け皿になり得ないというこ とを考えています。透析導入だけでなく、むしろCKD全体をとらえて、腎専門医がま ずレベルアップをもっとする必要があると思っております。 ○飯野班長  そのとおりだと思います。僕も専門医のマッピングをしたり、腎臓専門医もやったこ とがあるのですが、やはりいろいろな地域の偏在と、それからレベルですよね。そこが 違っている。ですから、それをどういうふうにするか。具体的には強制的にある程度あ る地域に専門医を何人というふうに決めてしまうとか、そういうことができるかどうか ですね。その辺まで厚労省がやるかどうかですが。いや、厚労省がやっていいのかどう か。学会がやるかどうかですね。民間主導でいかなければいけないです。そういう点も 今後課題になると思います。ほかには何かございますか。山縣先生。 ○山縣班員  まず今のCKDの地域連携パスに関しては、各地域で少しずつ始まっているところで すよね。今、筑波地区でもやっています。それで、今の専門医という点では、実は腎臓 学会の専門医を持っている方が腎臓の専門家かというと、必ずしもそうではないという ことがもう一つ重要で、特に資格をお持ちでないですがかなり詳しい方、あるいはその 地域で腎臓を代表的に診られている先生が必ずしも専門医ではない場合がありますので、 そこら辺の見分けがまず必要だなということを感じました。  それと、ちょっと話が違うのですが、宮崎先生のところでも話が出たのですが、専門 家に紹介されても何もなく戻されてしまうケースが多い。これは具体的な数字でいいま すと、例えばGFRが50で尿蛋白が出ていなくて、もうほとんど腎機能の変動がない ような高齢者を紹介されても、恐らく何もやることはないですし、という実態があるの です。本当に重要なことは、ほうっておいたら腎不全になる可能性の高い症例とそうで ないものの違いを見きわめることが重要です。したがって、今後のガイドラインには、 CKDのステージが進行する危険性の高い患者とそうでない患者の違いなどを示すこと も専門医とかかりつけ医の連携をよくするために必要と思います。 ○飯野班長  ありがとうございます。ほかには何かございますでしょうか。 ○藤垣班員  よろしいですか。先ほど申しましたが、やはりかかりつけ医に返したときに、かかり つけ医がどう診ていただけるかというところが、浜松での開業医の先生たちとのミーテ ィングではとても心配なところでした。医師会の協力は当然必要だと思います。そのと きに、やはり先ほどの特定保健指導のように、スキルを獲得するための何かそういうシ ステムを国としてつくっていただけないかとか、そのようなことができたらなと思いま す。  私たちもかかりつけ医と顔を見てということがやはり非常に大切だと思いますので、 出ていって講習会をするのですが、何回目かにはいつも同じ方が数人来ているだけとい うことになって、全員には広まっていないなということが非常に実感としてありますの で、その辺を何かできないかなと思います。 ○飯野班長  どうですか。厚労省にお願いしますか。我々がつくるか、それを動かしていただくか ですね。宮崎先生。 ○宮崎参考人  僕自身は、CKDというのは5段階まで本当はあるので、その全体を含めて患者教育 は非常に大事だと思っています。そのためのNPOを作りたいと今思っています。医師 会の中でやろうとするのはなかなか難しいと思うので、そういった別のグループで取り 組んでいかないと、均一的な利益を求める団体ではなかなか難しいことも多いのではな いかと思います。腎臓以外の糖尿病、循環器を巻き込んだ形のシステムが必要かなと、 今それを描いているところです。 ○飯野班長  ありがとうございました。はい、秋澤先生。 ○秋澤班員  専門医による診療支援をインターネット、メール等を活用して行ってはどうかという 点。これは可能性のある方法だと思います。腎臓学会のホームページに診療ガイドが出 ていたり、そういった形では利用していると思いますが、個々の診療上の問題点に対す るコンサルテーションみたいなことについて学会として取り組む、そういったことが腎 臓学会では行われる予定はあるでしょうか。 ○飯野班長  予定はないですが、いい提案だと思います。提案してみた方がいいかもしれないです ね。ここでそういうインターネットなど何か新しいものを使って、これからやっていく というのは重要なことだと思います。だから、システムはこれから10年後は全く変わ ると思いますね。10年、20年たつと。そこまで見据えてこの対策を立てていくという のは必要だと思います。いいアイデアだと思いますので提言してみましょう。ほかには ございますか。  では、時間も迫っておりますので、次の3)ですが、診療水準の向上に関してのディ スカッションをお願いしたいと思います。ここに書いてあるのは、医療計画の対象疾患 に含めることも考えてはどうか。かかりつけ医が簡単に利用できる小冊子があれば便利 である。CKDについて縦割りとならないように関係する学会(糖尿病、高血圧等)と 診療ガイドの作成で連携すべきではないか。糖尿病、高血圧等の患者手帳は関係学会ご とにつくるのではなく統一することが望ましい。みんな当然のことで、やられていると ころも大分あると思いますが、ほとんど動いているとは思うのですが、何か御意見はご ざいますでしょうか。  具体的には「CKD診療ガイド」はもう小冊子ができていて、腎臓学会でも次のガイ ドラインというのをやっておりますから、次々には出てくると思います。それから糖尿 病学会、高血圧学会とも連携をしていますし、また糖尿病学会の先生が腎臓学会に入っ ていますし、高血圧の方も腎臓学会に入っているという連携は、縦割りというのがあり ますけれども、そこのところは少しずつ改善していると思うのですが、山縣先生、何か 御意見はございますか。 ○山縣班員  普及というところが一番大きな問題かなと。内容が立派なものをつくると同時に、そ の普及法が課題かなという気がします。特に、講演等々にはなかなか来られないような かかりつけ医の先生、何かいい方法を考えなければいけないなと。 ○飯野班長  それは何かインセンティブをつくらないとだめだと思うんですね。そういうことを委 員の方には今後考えていただいて、提案をしていただきたいと思いますが、そういう問 題点があるということですね。この点についてほかにはございますか。松川さん、どう ですか。そういうガイドなどが実際には役に立つ。 ○松川班員  ガイドというのはもう一般に販売された段階で、一般の市民ももちろん手に入れられ るし、私たちのようなコメディカルも手に入れることで、例えば私たちがかかりつけ医 の先生に、CKDなんて全く御存じないような高齢の先生にも、新しくこういうふうな 考え方が出て決まったんですという意味では、持っていけるという意味では、やはり学 会のつくっているガイドというのはすごく大きな意味合いがあるのだなとは思っていま す。ただ、やはりちょっと内容は私たちにも難しいので、「糖尿病治療のエッセンス」の ような、糖尿病のガイドラインがもうちょっと小さくなったようなものがあったので、 CKDもあんな形でもうちょっとエッセンスだけを取り入れたようなものがあると、も しかしたら地域にいらっしゃるお年を召した開業の先生でも、薬局、薬剤屋さんを通じ てなど、何かの形でごらんになることが可能なのかなとちょっと思いました。  あと、手帳に関していうと、血圧が高くて糖尿がある方は、血圧の手帳も糖尿の手帳 も持っていらっしゃるんですよね。もう一つ、地域では今の老人保健法の中では健康手 帳というのも出しているので、そうすると3つ手帳を持って歩いて、血圧はどこに書い たらいいのだろうなどということも、現実的には1人の患者さんの中では起こってくる のです。でも、体全部を通したときに、どういうふうな記録が残ればいいのかというの は、また地域の中でも考えていかなければいけない課題なのかなと。 ○飯野班長  重要な御指摘ですよね。だから、今後ディスクやUSBに入れるなど、個人情報の問 題もありますが、そういういろいろなシステムが必要になってくるかもしれません。そ うすると、非常に大量のデータが全部入るかもしれませんね。ほかにはございますか。 よろしいですか。  では、次の人材育成です。ここは非常に重要だと思いますが、かかりつけ医の中で特 にCKD診療を担う人材を育成するかどうか。育成すべきですよね。腎疾患に関し、あ る程度対応可能な知識を普及させるべきではないか。保健師を含めたコメディカルにつ いても適切な知識を普及させるべきではないか。インターネットを通じた教材の提供が 有用ではないか。関係学会(糖尿病、高血圧等)との連携が必要ではないか。教育に際 しては縦割りとならない留意が必要ではないか。というようなことが挙げてありますが、 いかがでしょうか。何か御意見はありますか。人材は非常に重要だと思いますが。宮崎 先生、どうですか。 ○宮崎参考人  ここは開業医ではなくてかかりつけ医と書いてありますが、かかりつけ医の定義は難 しいとは思います。いろいろな患者さんを相談相手になりながら診ていくドクター、た とえば総合医なのかどうかわかりませんが、だれかに聞かなければいけないときに、専 門医でなくても、開業医のグループの中でも、お互い質問し合えるような、かかりつけ 医のネットワークがあれば、わざわざ紹介状を書かなくてもいい場合もあるわけです。 こういう場合、紹介した方がいいかな、あるいはまだ紹介しなくてもいいよと連絡し合 えれば、わざわざ患者さんに初診料を払っていただいて、時間を費やして専門医まで行 って頂かなくてもいいわけです。そういう意味ではある程度開業医の中でのいわゆる専 門病院、専門医同士のネットワークというのが始まっているところもあるわけですよね。 実際大学病院にわざわざ送らなくても、循環器は彼に送れば、心カテはできないけど、 十分だというように。グループの中で、CKDのことに少し詳しい開業医の先生がいれ ば、何も全員が腎臓専門医に行かなくてもいいわけです。そういう意味でCKDの普及 とある程度の診療を担う人材を育てるため、学会でも例えば日曜日にCKDの生涯教育 の場を設けるとか、各地域の中でそういったものを開いていくというのは、必要ではな いかと思います。  だから、CKDをもっと開いて、もっと開業医の先生方が来てくれるような、開業医 の先生を馬に例えては申しわけないですが、やはり水場に来ていただかないとCKDを 理解していただけないので、そういったのをもう少し開いて。ガイドはよくできている と思いますが、松川さんがおっしゃったように、やはりちょっとよく書かれ過ぎている がゆえにヘビーな部分もあるものですから、その件はもう少し考える余地があるかなと 思います。 ○飯野班長  水場に来てもらうというのはインセンティブですね。それをどういうふうにつけるか ですね。はい、秋澤先生。 ○秋澤班員  この検討会の議論がどういう推移で行われたか私はわかりませんが、ここに書かれて いる1番目と2番目の項目は、「特にCKD診療を担う人材」と「対応可能な知識を普及 させる」、これはちょっと書かれている意味が違うように思います。2番目に書かれてい る点は、例えば日曜日にそういう講習会をやって、対応可能な知識を一般的に啓発する, こういう形で可能かもしれませんが、1番目に書かれている「特にCKD診療を担う人 材」という意味は、これは専門医に該当するような方々を育成すべきではないか、こう いう提言ではないかと思います。先ほど島根県では9名しか専門医がいないとか、そう いう地域偏在という問題を解消するためには、こういうことが必要ではないかという意 味ではないかと理解するのですが、いかがでしょうか。 ○飯野班長  日下さん、どうですか。 ○日下課長補佐  まさに先生がおっしゃったように、1つ目の○の「CKD診療を担う人材」というの は、専門医が余りいないようなところでこういった人たちをどういうふうに育成するの かという話で、2つ目の○についての「対応可能な知識」というのは、専門医というわ けではなく、かかりつけ医として対応すべき最低限の知識をどういうふうに普及させる のか、という意味合いで書かれたというふうに認識しております。 ○飯野班長  その点について具体的にはどうですか。 ○秋澤班員  学会の専門医というのは、現在は大学とか大病院などの医育機関にいる人たちを対象 にやっているわけですね。そうではなくて、実際にかかりつけ医、現在開業なさってい る先生方を、専門医レベルに教育できるような育成システムを考えるべきだと、こうい うことではないかと思います。 ○飯野班長  そうすると、腎臓学会の専門医というのを変えないといけないですね。今、病理医が 専門医になっているところもあります。臨床医できちっとした、例えば基礎の先生も専 門医になっているわけですね。私もやっていましたが、腎臓の尿細管のトランスポート をやっている人も専門医です。ですから、臨床でこういうCKDを診られる、診療でき る人を本当の腎臓の専門医にしなければいけないわけですね。はい、伊藤先生、どうぞ。 ○伊藤参考人  さっき宮崎さんがいみじくも言われたのですが、私の教室は糖尿病専門医もいるし、 今度高血圧の専門医もできますし、それから腎臓専門医もいるわけです。結局、では腎 臓の専門医の人がちゃんと糖尿病を診られるかといったら診られないですよね。高血圧 専門医でもそうです。糖尿病を診られないというのが現実なわけです。そうしていると、 多分CKDというのを本気で診られるような人はいないはずなのです。逆に言うと、C KDというのも非常に雑駁な概念です。例えば腎炎もあるわけですし、それは多分恐ら く最初の段階から腎臓専門医が診ないといけないと思いますが、メタボリックと重なっ たCKDというのは、本当は総合的にいろいろなことがある程度診られる先生が担当す べきです。それは意外とかかりつけ医の先生や開業医の先生がやるべきことであって、 そういう総合的な知識をちゃんと持った、それをメタボリックシンドロームあるいはC KD専門医と呼ぶかどうかは別ですが、そういうのを今つくっていくということは、プ ラクティカルでもすごく意味があると思います。 ○飯野班長  非常にいいアイデアですよね。ですから、この医師会の中でそういうキーパーソン的 な人を、特にトレーニングをしてつくっていただいて、その人にその地域ではメタボが ある人はちゃんとコンサルテーションするとか、今度治療が困ったときにはコンサルテ ーションするとか、そういうシステムですね。CKDに関してもそうだと思います。そ ういうものをつくっていくかどうかですね。はい、どうぞ、山縣先生。 ○山縣班員  やはり医師の中にCKD専門の、腎臓専門医ではないかかりつけ医の中で腎臓を診る 専門家と、同じようにナース、あるいは保健師の方、栄養士の方でもそうですが、CK D専門の何らかの講習や実習を受け、実力を備えた方を養成することが必要だと思いま す。その人材養成を誰が行うのか。恐らく学会、地方公共団体が養成するということに なるのですが、そういう形でやる。そこにあとインセンティブをつける必要があります。 一方、その様なインセンティブをつけることにより受診する患者さん側は負担がふえま すから、そこら辺の兼ね合いをどうやって考えたらいいか、もう一つ課題かなという気 がします。  かかりつけ医向けの講習として各学会や医師会の生涯教育講習会という形でやってい ると思いますが、そういうものの延長上にCKDに特化した講習を何か設けて、それを 何回以上受ける、更に細かい規定を設けるなどが必要だと思います。 ○伊藤参考人  特定健診でかなり悪いといいますか、治療が要るような方を、そういう人たちに積極 的に紹介するということはインセンティブになるかもしれないと思います。 ○飯野班長  ありがとうございます。ほかには何かありますか。いろいろ勉強させていただいて、 今後は今後の方針を決めていかなければいけないわけですが。それでは、今日はいろい ろヒアリングさせていただきまして、本当に参考人の方、ありがとうございます。それ で、次回はこういう意見をもとに、腎疾患対策の方向性についてのたたき台ですね。あ くまでもこれは委員会の作業班ですので、たたき台をつくっていただいて議論したいと 思います。次回の方向性の素案については、班員の先生方に事務局を通じて私までお送 りいただいて、準備をする予定です。  それでは最後に事務局から、今後のスケジュールについてお知らせをお願いいたしま す。 ○日下課長補佐  次回の日程については、来月12月25日の15〜17時に開催を予定しております。各 班員の先生方におかれましては、日程等の確保をよろしくお願いいたします。場所につ いては現在未定ですが、確定次第御連絡いたします。 ○飯野班長  ありがとうございました。では、これで本日の作業班を閉会といたします。どうもあ りがとうございました。 <了> 1