07/11/11 平成19年度第4回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の議事録について 平成19年度第4回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会安全対策調査会 日時 平成19年11月11日(日) 14:00〜 場所 全国社会福祉協議会灘尾ホール(新霞ヶ関ビル) ○事務局 定刻になりましたので、平成19年度第4回安全対策調査会を開催いたしま す。本日の調査会は、従前の取扱いと同様公開で行うこととしておりますが、カメラ撮 りは議事に入る前までとさせていただきますので、マスコミ関係者の方々におかれまし てはご協力をお願いいたします。傍聴者の方々におかれましては、傍聴に際しての留意 事項、例えば静粛を旨とし、喧噪にわたる行為はしないこと、座長及び座長の命を受け た事務局職員の指示に従うことなどの厳守をお願いいたします。  本日ご出席の先生方におかれましては、ご多忙の中をお集まりいただきましてありが とうございます。また、本日ご出席いただきましたすべての先生方におかれましては、 タミフルの国内製造販売業者である、中外製薬株式会社との関係で、事務局より事前に タミフルの承認以降、中外製薬株式会社より寄附金又は委託研究費を受けていないこと、 タミフルの治験に関与していないこと、また承認以降中外製薬株式会社の治験に関与し ていないことについてお尋ねし、これら実績がないことを確認させていただいておりま す。  本日ご出席の委員ならびに参考人の先生方をご紹介いたします。東京医科歯科大学歯 学部附属病院薬剤部長の土屋委員です。国立医薬品食品衛生研究所薬理部長の中澤委員 です。国際医療福祉大学教授の松本委員です。なお、安全対策調査会の委員でございま す、慶應義塾大学医学部教授の池田委員はご欠席です。  参考人として、社団法人日本医師会常任理事の飯沼先生です。東京都立豊島病院院長 の一瀬先生です。国立精神・神経センター国府台病院院長の浦田先生です。国立医薬品 食品衛生研究所副所長の大野先生です。国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部 先生です。国立国際医療センター名誉総長の鴨下先生です。国立国際医療センター国際 疾病センター長の工藤先生です。納得して医療を選ぶ会事務局長の倉田先生です。国立 医薬品食品衛生研究所生物薬品部第三室長の新見先生です。公立学校共済組合関東中央 病院皮膚科部長の日野先生です。明星大学理工学部教授の広津先生です。東京医科歯科 大学大学院心肺統御麻酔学教授の槇田先生です。東京大学医学部大学院医学系研究科国 際生物医科学講座教授の水口先生です。東京都済生会中央病院副院長の三田村先生です。 長野県立こども病院長の宮坂先生です。国立感染症研究所長の宮村先生です。自治医科 大学小児科教授の桃井先生です。  事務局をご紹介いたします。厚生労働省大臣官房審議官医薬担当の黒川です。安全対 策課長の松田です。安全使用推進室長の倉持です。独立行政法人医薬品医療機器総合機 構安全管理監の川原です。  これより議事に入りますので、カメラ撮り等はここまでとさせていただきます。以後 の議事進行は松本座長にお願いいたします。 ○松本座長 本日は、日曜日にもかかわらずご出席いただきましてどうもありがとうご ざいます。事務局から、本日の資料の確認をお願いたします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。議事次第、配付資料一覧、出席者一覧、 資料1-1は基礎WGの指示に基づき実施した非臨床試験及び自主的に実施した試験・解 析の結果について(その1)、これは中外製薬株式会社からの資料です。資料1-2は著作 権法上の理由により傍聴者にはお配りしておりませんが、ワシントン大学の和泉先生の 論文です。資料2-1は平成19年度厚生労働科学研究費補助金、「インフルエンザ随伴症 状の発現状況に関する調査研究」についてです。資料2-2は平成19年度厚生労働科学 研究費補助金、「インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動情報収集に関する研究」のお知 らせです。資料2-3は基礎的及び臨床的調査検討の進捗状況についてです。資料2-4は リン酸オセルタミビルに関する今後のスケジュール(案)です。  参考資料1は4月4日付のリン酸オセルタミビル(タミフル)の副作用報告等を踏ま えた当面の対応に関する意見です。参考資料2は6月16日付の、基礎WGにおける調 査検討の状況についての報告です。参考資料3は6月16日付の、臨床WGにおける調 査検討の状況についての報告です。参考資料4はタミフルの添付文書の写しです。 ○松本座長 議題1に入ります。議題1は、リン酸オセルタミビルの基礎的調査検討の ためのWGにおける調査検討の状況についてです。事務局から資料の説明をお願いいた します。 ○事務局 資料1-1です。中外製薬とRocheから提出された、今回基礎WGで議論した 試験の概要が、全部で57枚のスライドの形式でお手元に届いていると思いますので、 これを簡単にご説明させていただきます。  タイトルは、基礎WGの指示に基づき実施した非臨床試験及び自主的に実施した試 験・解析の結果について(その1)ということで、10月24日の基礎WGの時点までに 提出され、そこで議論された中身がこの概要に示されております。大きく分けて構成と しては、中枢神経系への安全性、心血管系への安全性という2つの大きい項目につき、 それぞれ各試験ごとに概要を作っていただいております。  めくりまして4枚目に、ラットにおける脳、脳脊髄液及び血漿中濃度の測定というこ とで、成熟ラットにおけるオセルタミビル及び活性代謝物の単回静脈内投与試験の結果 をご説明いたします。  5枚目に試験の目的、6枚目に方法があります。目的は、ヒト脳中のオセルタミビル、 それから活性代謝物の濃度の予測ということにあります。そこでこの試験では、成熟ラ ットを用い、用量を10mg/kg、それから100mg/kgの2用量、そしてデータポイントは 投与後5分から8時間までの濃度を取って薬物動態を見ている試験です。ただし、現時 点でこの試験は中間報告ですので、血漿と脳脊髄液のデータのみがいま出てきている状 況です。脳ホモジネートについては現在測定中で、後日提出される予定になっておりま す。  7枚目、8枚目で結果です。7枚目は活性代謝物を投与した後の薬物動態データです。 8枚目は、オセルタミビルそのものを投与した後のオセルタミビル、それから活性代謝 物それぞれの薬物動態データです。9枚目、10枚目に実際のデータが付いております。  そういうことで結論のほうにまいります。11枚目を見ますと、脳脊髄液中のオセルタ ミビル及び活性代謝物濃度は、血漿中濃度に比べて低値であったということです。  現時点での企業側の考察が12枚目に付いております。曝露量と安全域についてとい うことで、臨床での血漿中濃度との比較です。現段階では、脳内濃度がまだ出てきてお りませんので、脳内濃度と脳脊髄液中濃度が同じだという仮定のもとでは、予想される 臨床的脳内濃度はオセルタミビルで0.01μM、活性代謝物で0.12μM以下になるとい うことが示唆されますので、前臨床の安全性データと高い選択性を考慮すると、安全性 に問題はないだろうという考察が現段階ではされています。  オセルタミビルとその活性代謝物の脳内移行に及ぼす能動輸送機構の寄与ということ で、14枚目以降の試験をご説明いたします。中枢神経系への薬物移行性ということで、 能動輸送体の主な候補として脳血管関門を構成するP-糖蛋白質、乳癌抵抗性蛋白質及び ヒト多剤耐性関連蛋白2をターゲットにしてオセルタミビル、それから活性代謝物がこ れらの排泄トランスポーターで輸送されるかどうかというものを、トランスセルラー・ アッセイ・システムを用いて評価をしているということです。  結論ですが、18枚目、19枚目に具体的なデータを出していただいております。その 結果3種のトランスポーターのうち、オセルタミビル自体は、P-糖蛋白質の良好な基質 となる。しかしながら、その他の2種の基質となる可能性は低いであろうということに なっております。オセルタミビルの活性代謝物については、水溶性化合物のために、受 動拡散能が低いということで、なかなか結論を出すのが難しいが、トランスポーターの 寄与は少ないのではないかという結論が出ているということです。  22枚目以降で、幼若及び成熟ラット脳中におけるオセルタミビルの活性代謝物の動態 ということで、カルボキシルエステラーゼによる未変化体の代謝が起こるかどうかを見 た試験があります。こちらのほうは、脳中で検出された活性代謝物が、脳内での代謝産 物なのかどうかというのを見るために実施された試験です。  試験方法といたしましては7日齢と、42日齢の雌雄のラットの脳及び肝のオセルタミ ビル・エステラーゼ活性をin vitroで測定をしているということです。  具体的なデータが26枚目のスライドに出ております。結論といたしましては、幼若 及び成熟ラット脳でのオセルタミビルに対するin vitroカルボキシルエステラーゼ活性 は低かったということになっております。この代謝経路によって、脳内で活性代謝物が 生成される可能性、この実験はラットの場合ですけれども、これは低いことが示唆され ているということです。  29枚目以降ですが、オセルタミビル及びその活性代謝物のノイラミニダーゼ及び他の 分子標的に対する薬理学的作用の研究ということです。これは、もともとオセルタミビ ルが選択的なインフルエンザノイラミニダーゼ阻害剤であるということですので、非ウ イルス・シアリダーゼ、特にニューロン組織由来のシアリダーゼへの作用がないかどう か、それから、中枢性作用に関連する受容体への作用がないかどうかというのを調べた ものです。  こちらの結論といたしましては32枚目、具体的なデータが33枚目、34枚目等に記 載してあります。オセルタミビル、それから活性代謝物ともに以下のげっ歯類由来のノ イラミニダーゼ、それからラットの褐色細胞腫由来のPC12細胞由来のノイラミニダー ゼに対して作用を示さなかった。また、中枢作用系を含む155のターゲットについても 同様に影響を示さないということが確認されたという結論でした。  36枚目以降は、心血管系への安全性を支持する成績に関する報告です。37枚目は自 主報告になっておりますけれども、循環器系の基礎及び臨床試験成績で、これまでに得 られた成績をエキスパートレポートという形でもう一度振り返っていただいたというこ とです。その結果としては、基礎試験、臨床試験(これは臨床薬理試験、QT延長試験、 臨床試験、疫学研究)も含みますが、こちらの結論として公表された文献に掲載された、 成人及び小児のデータを精査した結果、前臨床試験、臨床試験、疫学研究のいずれにお いても、オセルタミビル投与と不整脈、他の心疾患及び突然死との間には関連性は認め られなかった、という結論になっております。  次も自主報告ですが、ウサギのプルキンエ線維を使った活動電位試験結果をより詳し く再解析をしていただきました結果が44枚目以降に記されております。こちらは、不 整脈に関連したイオンチャネルに対するオセルタミビル等の影響を評価するために、あ らかじめ実施いたしました試験について、より広範囲の活動電位パラメーターについて 検討を行っていただいたものです。  結果は47枚目、実際のデータが48枚目から51枚目に出ております。オセルタミビ ル及び活性代謝物を適用した場合に、正常頻度及び高頻度の刺激条件下においては、い ずれも生理学的パラメーターに対する有意な作用も認められなかった。ただし、非生理 学的な低頻度0.2Hzの刺激条件下ではオセルタミビル、オセルタミビルの活性代謝物の 高濃度で、わずかではあるが統計学的に有意なAPD50の延長が認められているという ことです。  ただし、これについては52枚目の結論にありますとおり、APD90に影響を与えてい ないということ。それから1及び2Hzでいずれも作用が認められていないということか ら、0.2HzにおけるAPD50の変化については催不整脈作用の増強を反映するものでは ないというように結論づけられております。  最後の試験も自主報告で、未変化体の代謝障害時を想定したPKシミュレーション解 析を行っていただいております。これは、活性代謝物への変換が起こらないという極端 な仮定をした場合の、オセルタミビルそのものの曝露量をモデル解析によって求めたも のとなります。  要約及び結論が56枚目に書いてあります。こういう極端なワーストケースにおいて も、75mgを1日2回投与した場合に予測される曝露量は、非臨床安全性試験の安全域 内でありました。臨床投与については、既に実施済み、及び進行中の臨床試験で、心臓 毒性が示されていない投与量における曝露量と同程度でありました。これは、具体的に は健常人への単回投与試験、それからQT試験などでの最大のCmaxと比較した場合に 同程度であったということです。こういうワーストケース、代謝障害を想定した場合で ありましても、現在得られているデータからは、臨床における心臓への作用の可能性は 示唆されませんでしたという結論になっております。  57枚目で総括として、これまで中枢神経系への安全性検討のために新たに実施した非 臨床試験からは、タミフルの中枢神経系への悪影響を示す成績は得られていない。また、 新たな非臨床試験及びモデリング試験成績は、タミフルの心血管系への安全性プロファ イルを支持しており、これまでの非臨床及び臨床成績と一致をしているという形になっ ております。  以上が資料1-1の説明でした。続きまして資料1-2をご説明いたします。こちらは10 月9日に発表されました『Neuroscience Letters』に掲載された、ワシントン大学の和 泉先生らの試験です。この論文は2つの試験で構成されています。1つは、in vivoでの オセルタミビルの50mg/kgの腹腔内投与ということを行った試験があります。この試験 については、オセルタミビルのみでは変化がなかった。ただし、エタノールを投与、こ れは3.3g/kgの投与になりますが、エタノールを投与した後に起こる正向反射消失作用 というものを、オセルタミビルは有意に抑制することがわかった、という試験を行って おります。この有意な抑制をもって、中枢を興奮させる作用があるのではないか、とい うことが導かれているということです。  もう1つの試験は、生後1カ月のラット海馬スライスを用いた試験です。これに神経 細胞への刺激をペアドパルスで21ミリ秒間隔で加えているという試験があります。そ の場合に、オセルタミビルとその活性代謝物は、1回目のパルスへの反応には影響しな かったのですけれども、2回目の反応、これは通常パルスへの反応が低下するのですが、 これを回復させる作用が見られたという結果でした。そこで、神経への興奮を増強させ る作用があるのではないかという結論を導いているということです。  その2つの試験の結果から、結果としてオセルタミビルは中枢神経系に影響があると、 また、ほかの薬物と一緒になって影響が増大することが考えられるという形の考察をし ていただいております。こちらについても、10月24日の基礎WGのほうで委員の先生 方にご議論いただきましたので、加えて説明をさせていただきました。 ○松本座長 本日は、基礎WGの座長である大野先生にご出席いただいておりますので、 10月24日に開かれたWGでの検討状況についてのご報告をいただければと思います。 ○大野参考人 いま事務局から説明していただいたところが中心なのですが、中外製薬 から出していただいた報告について、WGとしての報告をさせていただきます。資料1-1 の10頁に書いてあることで、原薬を投与したときの脳脊髄液の濃度を測っています。 先ほど説明がありましたように、脳内濃度はまだ測っていないということで、非常に残 念だと思っているところです。  12頁の結論というところで、脳内濃度と脳脊髄液濃度が同じと仮定すると、というふ うにしているのですけれども、それはちょっとあり得ないことなのです。いままでのデ ータから見ると、少なくとも10倍以上差があるものもあるのではないかと思います。 実際に脳に分布している量が確認できなければ、ほかの薬理作用を見たデータを十分解 釈できませんので、それを待っているところです。  それから、トランスポーターに関わる検討のところは、血液脳関門の機能に働いてい るP-gpというトランスポーターを介して脳に入ったのが出されているのだろうと。そ れが抑制されたときには当然脳内の濃度が高まる可能性があるわけです。その検討の結 果は間違いないのではないかと思っています。と申しますのは、同じようなデータが、 かつて高崎健康福祉大学の先生も出していますし、東大の杉山先生も出していまして、 同じような結果になっています。高崎健康福祉大学の先生の研究は論文になっています。 P-gpをノックアウトした動物では脳内濃度が、用量にもよりますけれども大体6倍から 10倍ぐらい高まるとなっています。逆に言えば、それしか高まらないということです。  あとのほうで、受容体とかイオンチャネルといったものに対するオセルタミビルのバ インディング・アッセイをしているのですが、これでは30μMで有意な作用は出てい ないと結論しています。それについては若干コメントもあるのですけれども、少なくと も臨床用量でのオセルタミビルの血漿中濃度は0.2μMぐらいですので、それの150倍 の濃度で処理しても、とりあえず薬理作用は出ないということです。  また、脳内濃度が血漿中濃度の何分の1になるかというのは前に出たデータと、今回 のデータでは若干食い違うところもあるのですが、同じように分布しているとしても、 それが10倍に上がったとしても、薬理的とか薬物動態学的に、いまのところオセルタ ミビルが中枢神経系に作用することを裏づけるようなデータは、基礎的なデータでは得 られていない、十分に作用が出るとはいまのところ言えないという状況です。  ただ、バインディング・アッセイをやったときに有意差はないとしているのですけれ ども、その判定基準として50%以上抑制するもの、としています。コントロールにおけ る結合をオセルタミビルが抑制するということで親和性があるだろうか、ということを 判定するわけですけれども、その50%という値に達しなくても、若干40%とか30%ぐ らい抑制しているものもあります。それらにはイオンチャネルとかいくつか薬理作用に 関わるものが入っていますので、それに対する作用はもうちょっと高濃度までやってい ただければありがたいと思っております。  それから、ノイラミニダーゼに対する作用はほとんどない、というのは間違いないの ではないかと考えています。神経細胞由来のノイラミニダーゼにも作用しないというこ とです。インフルエンザウイルス由来のノイラミニダーゼに特異的に作用しているとい うことです。  心血管系への作用に関しては、今回ウサギのプルキンエ線維細胞に対する作用で見て いますけれども、若干APD50という活動電位の持続時間に対する作用が、オセルタミ ビル7.5μM以上で延長しているという結果が出ていますけれども、APD90という値で は作用が認められていないという結果です。  不整脈の発生にいちばん影響があるというのはAPD90というところなので、そこに 対する影響が著明に認められていないということで、この結果から、少なくともウサギ のプルキンエ線維細胞に対しては作用はない。また、ヒトでの不整脈を示唆するような ものではないのではないか、という結論をWGでは出しています。  ただ、このデータは若干ばらついているところもありまして、それについてデータ整 理をもうちょっと検討する必要があるのではないかと考えています。いまのICHのQT 延長といったものに対する作用を検討するときには、これだけではなくてモルモットの 乳頭筋に対する作用も見るのが望ましいということになっていますので、それについて いま検討をお願いしているところです。それが出たところで、最終的な結論を出したい と考えております。  ヒトでは肝臓でオセルタミビルが活性化されているわけですが、その代謝障害を起こ した場合、いろいろな状況で代謝が起きると予想されますので、それが抑制されたとき にどのぐらい血中濃度が上がるかということをシミュレーションして掲載した結果を報 告していただいているわけです。それによれば、Cmaxが555ng/mLということですか ら、大体1μM強というところですけれども、先ほど申し上げましたように、30μMま でやって、薬理的な受容体とかチャネルとか、そういうものに対する作用はいまのとこ ろ有意ではないということですので、このぐらいの濃度の上昇というのは、それほどシ グニフィカントではないのではないかと考えているところです。  ただ、この計算のところがポピュレーションファーマコキネティクスという手法を用 いてシミュレーションしているのですけれども、若干報告書に入れたパラメーターの値 等いくつかわからないところがありますので、それについては計算をした人にこれから 尋ねて確認していきたいと思っています。いずれにしても、全体の結論としては、WG ではヒトでの中枢神経系の副作用と言われているものを直接的に支持するようなデータ は得られていないと考えているところです。 ○松本座長 それでは、委員の先生方からただいまの説明に関してご意見等をお願いい たします。 ○宮村参考人 私はよくわからないのですけれども、ブラッドブレインバリアのファン クションに関するP-糖蛋白の役割を、いまのプレゼンテーションの中ではin vitroで調 べています。大野先生に質問ですけれども、日本国内の人たちで、ノックアウトマウス のデータが出ている。いずれもP-糖蛋白の発現がうまくいかないことになると、オセル タミビル及びその誘導体の脳内の濃度は上がるけれども、それが6倍から10倍程度で しかないということですか。それは、コンシスタントのことでしょうか。 ○大野参考人 Rocheのほうで出したデータでは、関与するトランスポーターに関する 確認をしただけで、P-gpが関与しているということを言っただけです。高崎大学とか、 東大の先生たちは、P-gpをノックアウトした動物を使っています。それで6倍から10 倍上がるというのは、それらの先生方のデータです。 ○宮村参考人 Rocheのデータ、特にin vitroのデータの解釈と、国内の先生方のマウ スのデータとは一致していますか。 ○大野参考人 異なっているところはありません。両方ともP-gpが関与しているとい うことです。 ○工藤参考人 いまの質問に関係しているかと思うのですが、資料1-1のいちばん最後 の総括のところの太文字で2つの結論が出ています。その上段の2番目のところの「非 常に高濃度の検討結果において」と、これを直接導き出しているRocheの基礎データと いうのはどれに対応するのでしょうか。私の理解が悪かったせいかわからないのです。 ○大野参考人 今回の実験で、原体を100mg/kg投与した実験の結果が10枚目に出て います。Cmaxが3,020ng/mLということですから、3μg/ccぐらいということです。 100mg/kgというのは、臨床量が大体最大でも2mg/kgですので、その50倍ぐらい投与 しているわけです。それで、このぐらいしか上がらないということです。これは大体分 子量400ぐらいですから、300としても原体の脳脊髄液中の濃度は0.01μMぐらいです か、そのぐらいの濃度しか上がらないわけです。P-gpがやられたときに10倍ぐらい上 がるとしても、それでも0.1μMぐらいです。  ところが、ノイラミニダーゼに対する阻害作用というのは、33番のスライドに書いて ありますけれども、1mMの濃度までやってもほとんど何も出ていないと。抑制が出て いません。PC12に対するノイラミニダーゼを1,000倍以上の濃度でやっても抑制が出 ないということです。そういうことから、臨床の大体50倍ぐらいの量を静注しても脳 脊髄液は0.01μMぐらいしか上がらないし、それよりずっと高い濃度でも、ノイラミニ ダーゼに対する作用は出ないということで、こういう結論は特に問題はないのではない かと考えているところです。 ○松本座長 大野先生、先ほどのワシントン大学の和泉先生の報告についてコメントを いただけますか。 ○大野参考人 これについては、3μMという低い濃度で、血中濃度はオセルタミビル で0.2μMぐらいですから、10倍ぐらいの濃度で、in vitroで作用が出ています。そう いうことで、神経に対する興奮作用がこのぐらいの濃度で出ているということになると、 状況によっては問題になる可能性があると考えています。この実験で用いたオセルタミ ビルというそのものが、ここでは錠剤から抽出して使ったと書いてあります。ここで錠 剤と書いてあるのは、実際はカプセル剤で売っているので、カプセル剤の間違いではな いかと思っているのです。その中には、脂肪酸とかいろいろ添加物が含まれているので す。そういう添加物の作用なのか、このもの自身の作用なのかというのはちょっとわか らないところがあります。  それから、オセルタミビルとアルコールとを併用したときに、アルコールによる抑制 作用が若干解除されるという作用が出ています。そういう作用はあるということなので、 これについても、用量としてはかなり高い用量を使っているわけで、かなり重要な情報 だということで、さらにこれを確認していく必要があるのではないかと考えているとこ ろです。必ずしも否定はできないということです。 ○宮坂参考人 スライドの37枚目のところで教えてください。いちばん下のところに、 非生理的な高用量を麻酔下イヌに投与した1試験でQTcの変化はなかったということで、 全体の解釈はあまり変わらないとは思うのですけれども、どのぐらいの高用量で、何の 麻酔を使ったのかということがちょっと気になりました。情報をお持ちであれば教えて いただきたいと思います。 ○大野参考人 申し訳ございません。それは記憶に残っておりませんので確認したいと 思います。 ○宮坂参考人 お願いいたします。それは、資料1-2とも関係するのかもしれないと思 うのです。アルコールだけでも中枢神経に対する働きがあるわけですので、何かこれと 関係するのかどうかということ。  資料1-2もよくわからないのですが、3.3g/kgのアルコールというのはどの程度のも のなのでしょうか。 ○大野参考人 致死量よりちょっと低い程度、それに近い用量ということです。いまは 出ていませんけれども、要するに致死量に非常に近い用量です。 ○桃井委員 結論の総括のところの大過剰量に関して、31枚目のその他の155ターゲ ットにおいては30μMで検討されています。これは血漿と同じオーダーですので、脳 脊髄液と比べると桁が違いますけれども、ノイラミニダーゼのテストに比べてオーダー が3桁違いますので、ここだけオーダーを違えて実験を組んだ何らかの科学的な理由と、 やはりこの30μMという想定は、ここに大過剰量と書いてありますが、実際に想定さ れるもののどのぐらいの大過剰というオーダーなのかを教えてください。 ○大野参考人 先ほどちょっと申しましたけれども、大体この臨床量を投与したときの 血中濃度が0.2μMと報告されています。それと直接比べると150倍ぐらいの濃度にな るわけです。実際にもうちょっと高い用量までやったほうがいいのではないかと私ども が考えているのは、最初の申請資料の中に載っていたデータで、血液脳関門がまだ発達 していない時期の幼若動物に投与したときに、脳内濃度が血中濃度の1,000倍以上にな るというデータが出ています。それが、1g/kg投与したのですけれども、それを単純に 臨床量までリニアだと仮定したときに、臨床量が2mg/kgだとしますと、その500倍投 与しているわけです。500分の1に割ってみると、大体100μMぐらいになります。私 どもは、100μMまでやってほしいという希望を出しました。  ただ、こういうバインディング・アッセイというのは、ノンスペシフィックなバイン ディングが出てくると、データの解釈に非常に困ることがありますので、すべての状態 について100μMまでやるのは無理があるのではないかということは理解できますので、 とりあえず30μMでいいのではないかとしたところです。ただ、いくつかの状態に対 しては、この会社が有意として判定した50%の抑制量よりも低いということで、会社と しては有意として判断していないのですけれども、私たちが見ると、若干濃度依存的に 抑制しているようなところを認めますので、そのような状態に関しては、もうちょっと 高用量までやって結果を出していただきたいと思っているところです。  それについては、これから実際にその実験が可能かどうか会社と相談してみないと、 技術的な面で溶解性とかそういった問題がありますので、先ほど申し上げた非特異的な 結合といった問題もありますので、相談して決めたいと思っているところです。 ○松本座長 ほかにはよろしいでしょうか。引き続き基礎WGで詳細な調査検討を進め ていただければと思います。大野先生よろしくお願いいたします。それでは、議題2の その他について事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 資料2-1と資料2-2に基づいて、議題2のその他についてご説明申し上げま す。資料2-3は片手でご覧いただきたいと思います。資料2-3は、この後に調査全体の 進捗状況についてご説明申し上げますけれども、資料2-3の2頁に、臨床的調査研究に ついて、現在実施している調査研究の一覧があります。この臨床的調査検討の中の2.の 疫学調査等ということで2つ挙げております。インフルエンザ随伴症状の発現に関する 調査研究というのが、いまからご説明申し上げます資料2-1です。インフルエンザ様疾 患罹患時の異常行動の情報収集に関する研究というのが、いまからご説明申し上げます 資料2-2です。どちらも現在実施中ですけれども、その概要と進捗についてご報告申し 上げます。  まず資料2-1を1枚めくりまして別紙というところに、本研究について載せてありま す。資料2-1にお示ししておりますインフルエンザ随伴症状の発現状況に関する調査研 究ですが、これは平成18〜19年度のシーズンについて実施された調査の解析に係る研 究班です。インフルエンザ随伴症状の発現状況に関する調査研究としては、平成17年 度に横田班の研究があります。その中でタミフル服用時の異常行動と、タミフルを服用 していないときの異常行動の発現についての検討もなされているわけです。平成18年 度、平成19年度で行われております本研究につきましては、さらに症例数を増やし、 また薬剤の服用の時間的関係についても詳細なデータを取って実施されている研究です。  平成19年度の解析に係る研究班については、大阪市立大学の廣田先生を分担研究者 といたしまして、資料2-1の別紙の真ん中辺りに研究協力者をお示ししておりますけれ ども、こちらの先生方のご協力を得て実施されているものです。  平成18〜19年度のシーズンにかけて実施された調査の規模は、約700施設を対象と いたしまして、約11,600症例についての症例調査票を回収しております。なお、この 数については現在平成19年度の調査班の中で精査しているところです。これらの11,600 症例はインフルエンザの症例ですので、この症例の中で薬剤の服用状況や、異常行動の 発現状況などを現在精査をして解析を実施しているところです。なお、本研究の実施に 当たりましては、平成18年度に実施された調査における調査票を、現在お借りして実 施している状況です。  資料2-2で、インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動情報収集に関する研究について ご報告申し上げます。本研究は、国立感染症研究所の感染症情報センター長の岡部先生 を主任研究者として実施されている研究です。ここにお示ししておりますとおり、7月 30日付で都道府県を通じ、医療機関に対して調査への協力をお願いしております。調査 の内容は本調査はインフルエンザ定点観測医療機関を含むすべての医療機関の協力を得 て、インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動の症例事例を収集するものです。  本調査は2つの調査からなります。1つは重度調査です。重度調査における報告対象 となる症例については、インフルエンザ様の疾患と診断され、かつ重度の異常の行動を 示した患者に関する情報をご報告いただくものです。ここで言う重度な異常行動といた しましては、飛び降りたり、急に走り出すなど、制止しなければ生命に影響が及ぶ可能 性のあるような行動を対象としております。  この重度調査については、全国すべての医療機関にご報告をお願いしております。前 シーズン及び今度のシーズンということです。今度のシーズンについては、前向きにご 報告をお願いする。18〜19年度のシーズンについては医療機関の記録などからご報告を お願いするということで、前シーズンのものについて、都道府県などを通じて国立感染 症研究所にご報告をいただいておりまして、現在その集計・解析作業を行っていただい ているところです。  軽度調査について、報告の対象は、軽度な異常行動を示した患者です。軽度の異常行 動といたしましては、何かに怯えて手をバタバタさせるなど、その行動自体が生命に影 響を及ぼすとは考えられないものの、普段は見られないような行動を示した患者を対象 にしております。軽度調査は、インフルエンザの定点医療機関(全国約5,000施設)を 対象としております。本調査は今シーズンを対象としておりますので、これから前向き に実施されるというものです。  このいずれの調査についても、現在、両研究班におきまして精力的に実施していただ いている状況です。  引き続きまして資料2-3で、基礎臨床の進捗状況についてご説明申し上げます。基礎 的な調査検討につきましては先ほど基礎WGでの検討状況をご報告申し上げましたが、 資料2-3の1頁の一覧表の右の欄に検討状況をお示ししてあります。この資料番号が本 日すでにご報告をさせていただいたもの、「実施中」というものは引き続き企業によって 実施されているものです。  2頁目が臨床的調査検討の状況ですが、いまご説明を申し上げた2番目の疫学調査に ついては2つの調査が実施中です。それから「臨床試験」として、臨床WGから企業へ の実施が指示されている試験が1.に示してある2つの調査で、こちらの調査も現在実施 中です。  3.は「副作用症例について詳細な調査検討を行うこと」ということで、異常な行動及 び突然死の副作用について、例えば睡眠との関係、突然死については、心電図等の追加 情報などがないかという調査を企業にお願いし、実施したところです。現在その結果を 取りまとめ中であり、次回の調査会ではご報告できるものと思います。以上です。 ○松本座長 ただいまの説明について、何かご質問等はございますか。 ○岡部参考人 補足ではないのですが。資料2-2「インフルエンザ様疾患罹患時の異常 行動情報収集に関する研究」は一応私が主任ということでやらせていただいているので すが、今日ここにお出になっている桃井先生、小児科領域では宮崎先生、精神科領域で は内山先生らの協力をいただいて大体の骨子を作ってあります。前のシーズンに、報告 は130〜140例ぐらいいただいているわけですが、今それについての分析を行っていま すので、廣田先生の班の解析と合わせて報告ができると思います。これは只今分析中で す。  すべての先生方あるいは5,000定点の先生にお願いをしているというのは、文書上は 7月30日付でいっているのです。医師会の先生方の集まりあるいは学会のときに、でき るだけこういうことについて報告をお願いしますと私がお願いしてはいるのですが、実 際には現場の先生にまでなかなか伝わっていないところがあります。「ああ、そういうの があるんですか」といった調子なのです。インフルエンザのシーズンに入り、キックオ フデー等いくつかのきっかけを厚労省側も持っていらっしゃると思うので、こういう方 法での報告をお願いしているのだということを、そういったとき等いろいろな機会に併 せてお伝えいただければと思いますので、よろしくお願いします。 ○飯沼参考人 いまいただいた資料2-3の右側の資料のナンバーを見てやっと気がつく ようではいけませんが、1-1の資料は中外製薬とRocheが作った資料ですね。国内では この実験はやっていないのですか。売る会社側の資料をいくら取っても、しょうがない のではないですか。国内で実験を組んでいるのではないのですか。私はそういう理解を ずっとしていましたが。 ○安全使用推進室長 外国でではなくて、日本の検査機関でやっているのかということ ですか。 ○飯沼参考人 そうです。 ○安全使用推進室長 いま確認できるものとしては、その2頁目「臨床的調査検討」の 臨床試験として、いわゆる睡眠検査室試験と夜間の心電図に関する試験は国内の施設で 実施されております。 ○飯沼参考人 そういうこともあるかもしれないけれども、これと同じ実験をやられて、 先ほどからのお話を聞いていると、血清中と脳脊髄中はあるが脳内の濃度がないとか、 そういうことがあるわけでしょう。そして、これはいつの実験結果か日付が書いてない ので非常に判断がしにくいのですが、例えば脳内濃度について中外製薬に追加データを 求めるとか、そういうことを当然やっていいと思うのです。 ○安全使用推進室長 そこは説明が十分ではなかったかもしれませんが。例えば資料 2-3で、いまご指摘があったのは上から3つ目「ラットにおける脳、脳脊髄液及び血漿 中濃度の測定」のことかと存じますが、これは中外製薬及びRocheのほうで現在やって おります。今日は中間報告ということで、脳脊髄液と血漿中濃度の結果が報告されてお ります。ここのただし書きにもあるように、脳中濃度については現在中外及びRoche社 で実施中でございまして、次の回では脳中の結果も併せて報告され、脳脊髄液や血漿中 濃度の結果と合わせて議論される予定でございます。 ○飯沼参考人 先生のおっしゃることはわかりますが、これは一体いつの実験ですか。 2つの濃度が測られて2カ月とか3カ月経っているなら、当然データはあっていいでし ょう、別に難しいアッセイ方法をするわけではないのですから。 ○松本座長 もう少し早く結果が出てもよいのではないかということですが。 ○安全使用推進室長 脳中濃度の測定結果も近々報告されて、基礎WG及びこの調査会 においてご議論いただける予定です。 ○安全対策課長 すべて4月なり6月のこちらの調査会でご議論いただいて、その指示 に基づいて行われたデータばかりです。別にこれは昔やったデータではなくて、新たに 全部行いました。 ○飯沼参考人 それはわかりますが、例えば7月に終わっているなら、データは今日に 間に合うでしょうと私は言っているわけです。 ○安全使用推進室長 いまのところ、終わっていますということでいただいているデー タでございまして、企業のほうには、ほかのものも含めて、できるだけ早めに出すよう に指示しております。是非、次回のときには、もっと多くのデータについてご審議いた だきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○松本座長 ちょっと遅い感じがしているので、少し急がせてください。 ○審議官 いまの先生のご指摘ですけれども、例えばどういう所で行われていて、概略 どんなタイムテーブルでやっているのかといったことも調査いたします。ご案内のとお り、予備実験とか、いろいろあると思いますので、私どもが考えるよりは準備等に時間 がかかるようですが、そういった見方で私どもも指導するようにいたしますので、よろ しくお願いいたします。 ○松本座長 よろしくお願いいたします。ほかにご質問をどうぞ。 ○大野参考人 いまの先生のご指摘ですが、基礎WGでも、先生のおっしゃるとおり、 脳内濃度が入っていないのが不満でして、なるべく早く出してくるようにとお願いして いるところです。実際にこの日付を見ましたら、中間報告が出たのは10月4日です。 もう出ているころではないかと思いますので、入手し次第、WGで検討させていただき たいと思います。  それから、先ほど宮坂先生からコメントがあった、どんな麻酔薬を使っているのかと いうことについて資料がありましたので見たところ、ペントバルビタールで処置してい るということです。大体、薬物100mg/kgを全体として、1kg当たり4ccの量で30分間 かけてインフュージョンしているというデータです。 ○水口参考人 今回の異常行動の問題のポイントは、飛び出しと飛び降りにあると思っ ています。これまでいろいろな所から出てきたデータですと、飛び出し、飛び降りが、 特に統計を取った場合、圧倒的に10代の男の子に多いわけです。これまではタミフル を飲んで飛び降りたという現象が注目されましたが、最近のいろいろな研究で、飲んで いなくても飛び降りた症例も報告されている。その場合に、飲んで飛び降りたのと飲ん でなくて飛び降りたのとが同じ病気なのかどうかということが非常に大事なポイントだ と思います。もう10代の患者にはタミフルが投与されていることはほとんどないと思 いますから、岡部班の研究でそういう症例は出ないだろうと思っています。ですから、 これまでの廣田班に残っている飛び降りのデータと、これから得られるであろう岡部先 生の班の飛び出し、飛び降りに関するデータが比較できる形になっているということが 非常に大事かと思いますので、両者間のアンケート形式が比較検討可能な形になってい るのかどうか、その点を確認したくて質問させていただきました。 ○岡部参考人 デザインは横田班でやったわけですが、横田班、廣田班のデザインとは やり方が違うので、全く一対一での比較はできないと思います。私たちのほうでやって いるのは、プロスペクティブスタディになると思います。  確かに、10代での使用がなくなったということは、むしろ、ない状況でどういうこと が起こりうるのかということのバックデータにはなるだろうと思います。10代手前の小 児のグループでは、患者との話をしながらでしょうけれども、一部薬の使用はあるとい うことです。確かに10代に比べると少ないですけれども、これまでにも年少者での異 常行動がないわけではないので、その辺の比較で、直接廣田班とのマッチングといいま すか、同じような状況ではできないというのが今のスタイルになっています。 ○浦田参考人 いまのことに関連して追加の質問あるいはお願いです。今までにもらっ たデータや私が調べたところでは、インフルエンザは小さいお子さんで10万人当たり 0.1〜0.3例亡くなられた。お年寄りになると、その10倍以上。とにかく相当上がって いく。その間の5歳から60歳ぐらいまでの年齢だと10万人当たり0.1例以下である、 このような統計データが示されているわけです。タミフルを飲んで特に問題なのは5歳 から15〜20歳ぐらいまで。実際に異常行動とか異常行動による死亡が注目されている のはこの年齢である。異常行動だけで見ても、それから今までのデータで見る限り、5 〜15歳の男の子が半分以上を占めております。女の子も含めますと4分の3、75%近く がこの年代です。だから、この年代でこういう事故が起こったりして死亡されている患 者がかなり出ているのだろうと思います。でありますと、この年代の死亡率がタミフル を使ったことによって上がるのか、上がらないのかというのは、非常に基本的、疫学的 には大事な議論になる問題ではないかと思っているのです。この辺がどうなっているか は、今までのデータの中で検討されるのか、あるいは今後検討されるのかというところ で教えていただければと思います。 ○岡部参考人 従来のインフルエンザについて、死亡あるいはその原因というところま でサーベイランスデータでは上がってこないのです。ですから、実際にどういうものが 中心になっているかというのは国のサーベイランスからは分からないのです。例えば急 性脳症というようなのは分かってきていますが、異常行動で、たまたまぶつかったのか、 あるいは肺炎で起こしたかすらも、サーベイランスからはよく分からないのです。です から、そういう意味での統計は取れないと思います。ただ、全体の致死率に今回の変更 でどんな影響が出たかということについて、やってみることは可能であると思います。 従来のものとの比較で、そこのところはできると思います。 ○浦田参考人 異常行動だけではなくて、あるいはタミフルだけではなくて、インフル エンザそのもので亡くなられる。死因はどうであれ、インフルエンザの死亡率がタミフ ルによってどう影響したのか、つまりタミフルによってオンされたのかどうかです。た ぶんインフルエンザの流行の仕方そのものが一定期間の日本人全体の死亡率に影響を与 えるということがありますね。そういう意味で、逆にインフルエンザにかかった人で、 このぐらいは推定死亡率であろうが実際にはこんな死亡率になっている。これはタミフ ルを飲んでいて、だから大きいとか、それはあまり影響がないとかというようなデータ は出ないのかどうか。今後タミフルをどう評価するか、どのように使うかという上で、 基礎として重要なデータではないかと思っているのです。 ○岡部参考人 基礎的な死亡率、通常の死亡率を超えた部分での超過死亡という形では できているのですが、それのほとんどは高齢者の超過死亡であって、小児はそれを上回 るものにはたぶんなっていない。それは計算してみないと分からないのですが、明らか になっているのは高齢者だけです。死亡統計などで出てきているのは、インフルエンザ というのが小児の死亡の8位ぐらいに入ってきている年がありますが、それはインフル エンザ脳症が明らかになって、インフルエンザ脳症の症例が増えた年です。 ○一瀬参考人 先週インフルエンザが検出されまして、今年の流行は早いのではないか と病院で心配しているのです。資料2-1と資料2-2で、これから始まるインフルエンザ の流行に対しての疫学調査について計画が説明されたと思うのですが、1つお願いがあ るのです。  日本全国で、監察医務院制度が敷かれている所が7地域ありますが、例えば去年のシ ーズンで、飛び降りで亡くなった方も全部法医学会の言う「異常死」に入りますから、 必ず検視されているわけです。昨年、直接的に聞くわけにはいかないので間接的に監察 医務院制度の敷かれている地域で剖検があったかどうかとお聞きしてみても、うまくヒ ットはしていなかったようです。そこで、今年は是非、全国の監察医務院制度、異常死 をきちんと解剖されている全部の機関に対して要請状を出して、飛び降り死亡に関して データをきちんと取っていただきたいのです。  それから、飛び降りて亡くなったとかというものは全部異常死で、監察医務院制度の ない所では法医学教室で解剖されるということがあるわけです。病院で死んでいないの で病理解剖には当たらないわけですから、法医学教室で行われる。ですから、これは法 医学会でいいと思うのですが、そちらにも厚生労働省のほうから要請を出していただい て、飛び降り死に対して血液、脳実質、脳脊髄液等代謝物、あるいは、今年はだいぶ少 なくなると思うのですが、タミフルを飲んでいる方であれば、血中濃度などを後追いで きちんと検査できるようにお願いしておく。もう実際に当院でも、大人ですけれども、 1例インフルエンザが出て、まだタミフルは1人も出しておりませんが、すでに流行の いちばん初めのところへ来ております。是非、各地の監察医務院、法医学教室、日本法 医学会、そういう関係諸機関に注意喚起の要請を行っていただきたい。患者の家族にし か剖検結果をお知らせしないわけで、製薬会社を通じての調査でも浮かび上がってこな いという難点がございます。ですから、是非、関係諸機関に対する注意喚起、それから 情報が集まる仕組みについてお考えいただければと思います。疫学調査は非常に大事だ と思いますが、実際の貴重なデータに関して、我が国ではお互いの連絡が悪くて、うま くまとまらない、引っ掛からないというところもあるので、是非それをお願いしたい。 今ならまだ間に合うという思いで発言させていただきました。 ○松本座長 事務局、ご返事は何かありますか。 ○安全対策課長 どういう制度でできるかも含めて検討させていただきます。 ○工藤参考人 議論が前に戻るかもしれませんが、基礎的なデータということで要望を 申し上げます。タミフルを投与する臨床的な場面というのは、インフルエンザの感染を 確認してからです。そして、ある種病的な状態になったとき、患者が発熱したりする。 いま問題になっている脳炎云々という話もありますが、今まで基礎的なデータというの は正常な動物ですので、もしかしたら、ここでかなりギャップがあるのかもしれない。 要するにBBB(Blood Brain Barrier)がインフルエンザの感染によって少し障害され ているような状況があるのかもしれない。こういうことを想定して、もし動物実験で BBBを障害させる、あるいは破壊するような状態をつくれるならば、そういうモデルで 脳脊髄液の濃度、脳内の移行あるいはいろいろなものの活性を測れるならば、そういう 実験も追加していただければと思います。 ○松本座長 そこは大野先生のWGで考慮していただければと思いますので、よろしく お願いします。 ○日野参考人 先ほどもインフルエンザの発生があったとおっしゃいましたが、私たち の所でもすでにインフルエンザはかなり発生しておりまして、現場では、タミフル以外 の抗インフルエンザ薬は絶対大丈夫か、と患者たちに念を押されております。そこで、 疫学調査では、ほかの抗インフルエンザ薬も含めてプログラムを組んでおられるのでし ょうか。 ○岡部参考人 タミフルを使ったヒトでの異常行動を把握するのではなくて、インフル エンザ様疾患に伴った異常行動の把握です。クエスチョネアの中ではAという薬、Bと いう薬、Cという薬、Dという薬、そういう分類になっています。もし使われている薬 があれば、優位性が出てくるかどうか分かりませんが、特定の薬だけに偏って見ている わけではないのです。 ○日野参考人 今の状況はすでにインフルエンザの発生が起きているわけですが、今年 の流行に備えては参考資料1、4月4日付の報告が現時点での指針であると理解してよ ろしいのでしょうか。いずれここで今後のきちんとした抗インフルエンザウイルス薬の 治療指針が出るのでしょうが、当面はこれだと理解して対処してよろしいのでしょうか。 ○松本座長 参考資料に関しましては後で説明いたします。ほかにないようでしたら次 に進ませていただきます。事務局より、今後の予定に関して説明をお願いいたします。 ○安全使用推進室長 資料2-4「リン酸オセルタミビルに関する今後のスケジュール (案)」をご覧いただきたいと思います。基礎WG及び臨床WGにおける調査検討の進 捗状況につきましては、資料2-3ですでに説明しておりますが、非臨床試験(動物実験 の一部)や、いわゆる睡眠検査室試験といった臨床試験につきましては、現在、中外製 薬において実施中でございます。また、疫学調査につきましても、岡部先生をはじめ、 各研究者において、現在、結果の取りまとめに向けて鋭意ご努力いただいているところ です。  資料2-4にありますように、これらの試験あるいは調査の結果につきまして、安全対 策調査会は11月11日ということで本日やらせていただいていますが、今後臨床WGを 開催し、その後に、残された非臨床試験の結果などについて基礎WGでの検討が予定さ れており、基礎WGあるいは臨床WGの検討をいただく予定です。その後12月の上旬 から中旬までに安全対策調査会を開催して、タミフルの服用と異常な行動・突然死との 因果関係に関する評価を行う予定としております。なお、それ以降も引き続き疫学調査 や内外の安全性情報の収集などを行い、適宜WGあるいは安全対策調査会を開催し、フ ォローアップをしていくという予定で考えております。  この資料には記載はございませんが、この機会に報告することがございます。先般6 月16日に、タミフルに関して安全対策調査会を開催いたしましたが、その際、タミフ ルの販売開始から平成19年5月31日までのタミフルの副作用報告として「異常な行動」 が記録されている事例、いわゆる異常行動事例は211例、そのうち転落や飛び降りとい った事例は27例と報告しておりますが、その後も中外製薬からの報告についてフォロ ーをしております。次回の調査会において、臨床WGの指示に基づく睡眠との関係など の追加調査の結果等と合わせ、その後の報告状況を報告をする予定ですが、6月1日以 降の副作用報告の状況については、現在精査中でございます。  今年3月20日の緊急安全性情報を発出する前に生じた事例ですが、その後医療機関 から企業に、転落・飛び降りという報告が2例ございました。そのことをここにご報告 申し上げます。概要等は次回調査会で報告いたしますが、1例は10歳未満の男性のケー スです。これはドクターレターが出る前、昨年5月に発現した事例ですが、今年3月20 日の緊急安全性情報の発出後に医療機関から企業に報告があり、それを受けて、企業か ら厚生労働省に9月13日に報告されたものです。  もう1例は10歳代の男性のケースですが、これも同じく緊急安全性情報が出される 前、昨年2月に発現した事例です。これも緊急安全性情報が発出された以降に医療機関 から企業に報告があり、11月1日に厚生労働省に報告されたものです。いずれも2階か ら転落ないし飛び降りをしたという事例で、幸いなことに、2例ともに外傷等はないと いう事例でした。そういうことで5月31日以降2例追加になっておりますので、これ で転落・飛び降り事例は合計29例。その内訳は10歳代が23例、それ以外の年齢が6 例ということになりますので、ここに併せてご報告を申し上げます。 ○松本座長 今後の予定と現状、また、これまでの新たな事態について事務局から説明 していただきましたが、ご意見等はございますか。 ○宮坂参考人 岡部先生の先ほどの発言とも関わるのですが、「すべての医療機関」とい うのは、開業医も含むのですか。どういうレベルになっているのでしょうか。 ○岡部参考人 アイディアとしては、感染症発生動向調査の全数報告と同じですから、 医師であれば、診断した先生方すべてです。しかし今回の調査は法律に基づくものでは なく、あくまでもお願いです。またその母数が完全に把握できるわけではないと思いま すが、限られた所でアンケートを配ってやったというよりは広いのではないかと思いま す。  なぜ全数報告をしたかということですが、仮に10万に1ぐらいの非常に珍しい症例 であるとすると、アンケート調査で1〜2万やっても、たぶんゼロである可能性がある と思います。そういう意味では、むしろ臨床医の先生方がこれが異常だと思ったときに、 報告先が今まではないわけで、それを報告していただく受け皿をつくったつもりです。  もう1つは、特定の薬を使った場合は、その薬による副作用報告というような形での 上げ方ができますが、使わなかった場合、あるいはそういうものに全く関心のない薬が 使われていたような場合にはこれまた届先がないわけで、そういう場合の受取先をつく ったというつもりです。 ○宮坂参考人 もう1つは「インフルエンザ様疾患と診断され」というところなのです が、こう診断されるということは、やはり受診しているわけですね。それで、現実にあ るのは、お兄ちゃんが走り出した、でも病院にも行かなかったし、「よくあるんですよね」 というようなことがあったときに、今までは全く報告もされていない。そういうものも、 たぶん先生はつかまえたいですよね、科学的にはあれですけれど。 ○岡部参考人 もし兄弟で、弟を診ていたのだけれども、お兄ちゃんが何か事故を起こ した。しかし、その人は熱が出ていて、その先生が、これはインフルエンザ、間違いな く兄弟感染であると思われた場合には、届けていただいたほうがいいとは思います。た だ、あまりそれを広げていくと、結局何が中心になって届けられているかということも 分からなくなるので、そこのベースにあるのはインフルエンザ様疾患であるということ が考えられた人になります。もう少し付け加えると、インフルエンザ様疾患全部が迅速 診断等々でインフルエンザウイルスがはっきりしたものとは限らないので、あくまでも 臨床的なインフルエンザ様疾患がベースになります。 ○宮坂参考人 そういう趣旨がうまく伝わればよいのだと思います。 ○鴨下参考人 いまのことですが、重度の異常行動と軽度の異常行動とがあるわけで、 それぞれの報告機関が違っているというところが問題であるわけです。私が申し上げた いのは、軽度の異常行動を示す患者を報告する機関でも、もし重度の異常行動があった 場合には、当然報告されるという前提であり、そこをしっかりしていただく。5,000施 設ですと、どのぐらいかというのがある程度分かってくると思います。上のほうの「重 度の異常行動」というのは、それが相当はっきりしたものでないと自発的に報告されて こないという問題があるわけで、どちらかと言えば、むしろ下のほうを重視していただ きたい。  もう1点、これは現場での感覚ですが、タミフルの使用は今かなり減ってきているの ではないでしょうか。第一線の病院では前に使っていた先生たちも、聞いてみると、最 近はほとんど使わないという状況もありますので、薬の影響が、もし使用しなくても出 れば、その辺もはっきりしてくると思いますので、この調査は非常に重要であると思い ます。臨床WGは11月21日に開催されます。そこはテーマが違うようですが、今後、 その点ははっきりさせていく必要があると思います。 ○岡部参考人 「すべての医療機関」は5,000医療機関を除くのではなくて、5,000医 療機関は「すべての医療機関」に入ります。ですから、定点の先生方が重症患者を診れ ば、それは全数対象として報告していただきたいと考えております。  それから、必ずしもある薬を使ったことだけを目的にしているのではないのです。こ れは変な言い方になりますが、ひょっとすると、Xという全く違う薬が多く使われてい るということがあるかもしれませんが、それは処方率にもよりますので、そこら辺は分 析してから報告したいと思います。 ○倉田参考人 素人といたしましては、今年のインフルエンザはどうなっていくのだろ うというのが心配になっているところです。すでに学級閉鎖になっているところが数多 く見受けられるというようなニュースを聞きますと、今年は大丈夫かしらと思っている のですが、予防対策としては、まず第1にワクチンというお話を伺っておりました。た しか去年岡部先生も、診察した子どもでワクチンを打ったかと聞いたら、ほとんどの子 どもが打っていないと答えたというお話をしていただいたと思うのですが、今年ワクチ ンをどのぐらい打っているかということは分かるのでしょうか。また、このワクチンは 効くのでしょうか。さらに、これから打って、まだ間に合うのでしょうか。 ○松本座長 いま打ちつつあるわけですが、その統計は出ていますか。 ○岡部参考人 ワクチンが効くか効かないかは、毎年専門領域で喧々諤々であります。 大雑把に言うと、7割ぐらいは効いたような感じがするだろうというところで、必ずし も100%の効果があるわけではない。ポリオや麻疹のように、100%近く抑えられるわけ ではないということは前提で使わないと。効かないという人も当然出てくると思います。 またインフルエンザはその年の流行によって違いが出てきます。今のところ、今年流行 し始めているものについては、分離されているインフルエンザウイルスはワクチン株に 一致している。つまり、効果としては期待ができるのではないかと考えられます。  ただし、インフルエンザウイルスの流行はある点ではなくて、ずっと流れてきます。 動きによっては途中でウイルスが変化するというような状況も出てくるので、いつもご 質問いただいて、先の話になると「うーん」と詰まるところもあるのですが、しかし一 般的に申し上げて今からでもワクチンとして十分間に合います。予防するツールの1つ としてワクチンは重要ではないかと思います。ただ、これで100%大丈夫という過剰な 期待感を持ってお使いいただくと、逆に信頼がなくなってしまうのではないかと思いま す。 ○広津参考人 データ関連で2、3お聞きしたいのです。まず、ただいまの疫学調査な のですが、これはあくまでも異常行動を起こした例だけを集めるのでしょうか。あるい は対象となった医療機関から、インフルエンザ様疾患の例数がどのぐらいあったとか、 どういう薬が使われたとかいう他の指標もデータとして取られるのでしょうか。 ○岡部参考人 それが5,000定点にお願いした部分になります。5,000定点の先生方か らは毎週、何人ぐらいの患者をご覧になったかというようなことの報告をいただけるの で、一応それが母数にはなると思います。全数の場合はそこから推計した全国の発生数 ということになりますが、それは極めてアバウトですので、あまりピシッとはこないだ ろうと思います。また、先生方すべてが報告をしてくださるわけではないだろうと思い ますから、完全な把握にはならないと思います。 ○広津参考人 ある程度は得られるということですか。 ○岡部参考人 それを期待しています。その意味でも、是非いろいろな先生方にご協力 をいただきたいし、こういう制度があるということをいろいろな所でお伝えいただけれ ばと思います。 ○松本座長 是非お願いします。 ○広津参考人 基礎データで、APD50では有意差がいくつか見られるが、大事なAPD90 では何もない。ただし、データのばらつきがある程度あると言われました。そこでちょ っと分からないのですが、OPとOCの表を比べたときに、ベースラインは基本的に同 じものを測っていると思ってよいのでしょうか。OPとOCでベースライン値が随分違 うように思うのですが。 ○大野参考人 別のサンプルで測っていますので少しばらついているのです。 ○広津参考人 別のサンプルは分かりますが、基本的には同じデータと思ってよいので すか。 ○大野参考人 ウサギのプルキンエ線維を使ったということでは同じですが、使った個 体にはばらつきがあって、標本も違う。同じ動物から採っても、かなり違ってくるので す。 ○広津参考人 それは分かりますが、データとしては本質的に同じ種類のデータですね。 ○大野参考人 そうです。 ○広津参考人 その割には、横に書いてあるスタンダードエラーから見て、ちょっとば らつきが大きいという気がしますので、元データ精査をしていただきたい。場合によっ ては、本当にこのデータで結論を出してよいのかという気がいたします。 ○大野参考人 おっしゃるとおりだと私どもも考えています。例えばコントロールのデ ータに対する変化率で測ってみると、統計解析の結果がまた違ってきます。そういうこ ともありまして、いま指摘しているところなのです。モルモットのデータが出たところ で、そちらのほうが信頼できるということもありますので、このデータも合わせて最終 的に結論を出したいと思っているところです。 ○松本座長 改めてご検討をよろしくお願いいたします。 ○三田村参考人 今の時点でこれを申し上げても適切かどうか分かりませんが、一般的 なことでお願いです。副作用に関しての詳細な調査が12月に検討される予定になって いますが、先ほど飯沼先生もおっしゃられたように、この種の検討というのは、もっと スピードがあって然るべきだと思っています。6月ごろの時点で、特に事例に関する詳 細なデータをということが次のステップにつながることなので、前のシーズンのデータ が次のシーズンの初めに出てくると、すでに遅いというぐらいの印象を受けています。 また、そこで問題が上がったときに、今度は次に反映させないといけないということが ありますので、是非、そういったデータのアップデートは早めに知らせていただきたい と思いますし、また、それを検討できたらと思います。 ○松本座長 そのことを含めて、事務局から説明していただきます。 ○安全使用推進室長 現在、追加調査の結果などにつきましても整理しておりますので、 資料が取りまとまり次第そうさせていただき、ご検討いただきたいと考えておりますの で、よろしくお願いいたします。 ○桃井参考人 このデータ等とは直接関係がないのですが、一般的にはエイビアンイン フルエンザのために使用が想定されている薬に関して、日本ではしばしばシーズナルイ ンフルエンザで使用されている、そういう記述が英文論文のアブストラクトにもありま したように、日本では普通のインフルエンザにじゃんじゃん使う、という世界的に稀な 使い方をしているわけです。この前そのようなことを申し上げたところ、タミフルの参 考資料4に一応は書いてあると。「すべての患者に対しては必須でないことを踏まえ、 患者の状態を十分観察した上で本剤の使用の必要性を」と。「踏まえ」の後は書いてあっ ても無くても、使うのは48時間以内ですから、「状態を踏まえ」も何もないわけです。 「状態」は大体高熱が出ているという状態なわけですから、そこで医師が判断する材料 はほとんどないわけです。  効能・効果関連の所に明確にエビデンスとして出ているのは、発熱の1.5日の短縮。 死亡に関してはシーズナルな動揺がありますから、それが死亡率の低下に関して本当に 明確なエビデンスになっているかどうか私はわかりませんが、明確なエビデンスとして 出ていることを「効果」にきちっと明記していただいて、発熱1.5日の低下に関して、 すなわちシーズナルインフルエンザに関して、普段健康な者に使う必要があるかどうか の考えが患者にも分かるように。大体は患者の要求に屈しきれなくて医者が処方すると いうことが今まで行われていましたので、患者にも十分情報として伝わるような広報を、 厚生労働省にも是非していただきたいと思います。医療の現場では「薬があるじゃない か。何で処方しないのか」と。これからはそういうことはないと思いますが、今までは 患者のほうが要求して、ちゃんと出さない所に患者は行かないというような感じの医療 があったわけです。それが原因であるとは申しませんけれども、世界に類を見ないよう な薬の使い方をしたことが基盤にあることは確かでありますので、是非明確な、エビデ ンスとして明らかになっている今のメリット、これをシーズナルインフルエンザに使う ことのメリット、国民の健康を守る上でのメリットは一体何なのかということを明確に、 載せられる範囲で能書きにも書いていただきたいと私は思うのです。  もう1点。先ほどワクチンの話が出て、国民の健康を守るためにワクチンは一定程度 有効であるので推奨するというお話がありました。しかしながら現場で見ますと、小児 がインフルエンザのワクチンを接種して、かなり重篤な有害作用に関連していると思わ れるような、免疫が関係していると推定される健康被害の事例があるわけです。しかし ながら、定期接種ではありませんので、高齢者以外はその健康被害に関して全く保障が されないわけです。ですから、是非、国民の健康のためにインフルエンザワクチンを推 奨するのであれば、小児も含めて、その他の年齢に関しても、健康被害に関しては厚生 労働省が何らかの対策をとっていただければありがたいと思います。 ○松本座長 事務局からご返事はありますか。 ○安全使用推進室長 能書きの件ですが、参考資料4にタミフルの添付文書がございま す。その4頁目以降に、臨床成績ということで、日本における成績と治療の試験成績、 5頁目に予防での試験成績が記載されております。例えば4頁の右側にインフルエンザ 罹病期間についての表がございまして、タミフルとプラセボでの罹病期間の中央値につ いて、このような差があるということ等が紹介されておりますが、患者にどのような形 でその辺をご理解いただくか。情報提供は非常に重要だと考えますので、その辺のやり 方などについては十分検討したいと考えております。 ○審議官 調査会などのスケジュールについては資料2-4にお示しした形で進む予定に なっておりますが、一方で作業に時間がかかっていることもございます。それから、何 人かの先生方のご指摘にありますとおり、インフルエンザの発生も、散発的のようでは ありますが、あるわけで、私どもも週報などに常々注目しながら進めているわけです。 さらにはインフルエンザワクチンの接種時期も迎えつつあるところです。これらの状況 を考えますと、来る次のインフルエンザシーズンの前に再度、現在講じられている措置、 これは基本的には本年4月4日の調査会でご議論いただいた内容になると思いますが、 これを改めて医療機関に情報提供いたしまして、医療従事者をはじめとして、関係者の 注意喚起を行う必要があると考えております。企業に対して、そのような指示をしたい と思います。  具体的に4月4日の内容は、・10歳以上の未成年の患者は、合併症や既往歴などから ハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えるこ と。・小児・未成年者は、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれ があること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未 成年者が1人にならないように配慮することについて、患者・家族に対し説明を行うこ と。要すれば、このような内容をお伝えくださいということです。・インフルエンザ脳症 等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、同様に説明を行うこと、これ がポイントとなると思いますが、こういったことについて改めて周知徹底を図るように したいと考えます。 ○松本座長 このスケジュールに沿って進めていただければと思いますが、少し速めて いただければ尚更ありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ここで岡部 先生より発言の申出がありましたので、岡部先生、よろしくお願いいたします。 ○岡部参考人 お願いとご報告です。先日アメリカのFDAから、アメリカのFDAと米 国小児科学会でジョイントミーティングをやって、そのときに日本のインフルエンザの 状況が非常に話題になった。情報を知りたいので来てくれないかというリクエストがあ りました。それは日本のインフルエンザのサーベイランスとインフルエンザ脳症の問題 なのですが、併せてタミフルの使用状況と、現在お前がつかんでいる情報はどういうも のかというようなことも問われています。そこで、もしよろしければ、この調査会での データはある程度オープンになっている面があると思いますので、その件については海 外で発表することになると思うのです。その辺のご了承をいただきたいと思います。も ちろん、現在の段階で分からないものは分からないし、あまり曖昧なデータを出すとい うのは私自身もしたくないとは思っています。 ○松本座長 ただいまの件につきまして、ご了承いただけますか。   (異議なし) ○松本座長 ご了承いただいたことにさせていただきます。ありがとうございました。 ほかに意見はございますか。 ○安全対策課長 先ほど桃井先生からお話がありましたインフルエンザワクチンの救済 の件ですが、今は医薬品医療機器総合機構が行っている救済対象になりますので、その 点、よろしくご了解いただければと思います。  次回調査会の日程ですが、現在実施中の研究や調査の進捗を見ながら、後日改めて日 程調整の上ご連絡を申し上げますので、よろしくお願いいたします。 ○審議官 改めてお礼でございます。今日は日曜の午後でございます。医薬品の安全性 の問題に関しまして、先生方には本当にお疲れのところ、貴重なお時間を賜りまして活 発なご議論をいただきましたこと、改めてお礼を申し上げる次第であります。 ○松本座長 本日はWGからの報告だけで簡単に終わるという話だったのですが、活発 なご議論をいただきまして、どうもありがとうございました。全体を通じてご意見等が ないようでしたら、本日の会議をこれで終了させていただきたいと思います。皆さん、 どうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省医薬食品局安全対策課 電 話:03−5253−1111 2