理容師養成施設及び美容師養成施設の適正な運営の確保に関する検討会
報告書

平成19年11月6日

第1 はじめに

理容師養成施設及び美容師養成施設(以下「養成施設」という。)については、理容師及び美容師の資質の向上等に資することを目的とした平成7年の理容師法及び美容師法の一部改正に基づき、平成10年4月1日より、入所対象者を原則として中学校卒業者から高等学校卒業者に改めるとともに、修業年限を1年から2年に改める等の新たな制度が整備され、質の高い教育の実施や資質の高い理容師及び美容師の養成が可能な仕組みとなったところである。

これらの制度が整備されてから概ね10年を迎えようとしている現在、理容及び美容に係る消費者ニーズの多様化及び高度化に伴い、養成施設における教育内容を時代に即したものに改める必要が生じているほか、その適正な運営及び指導監督を確保する上で見直しを検討すべき点も生じているところである。

こうした中、これらの諸課題に対して、今後の対応の方向性を明確にするため、「理容師養成施設及び美容師養成施設の適正な運営の確保に関する検討会」を開催し、現行制度における問題点に関する今後の対応などについて検討を行い、本報告書を取りまとめたものである。

第2 検討事項

I 教員に関すること

1 専任教員の配置基準について
(現状)

養成施設における専任教員は、当該養成施設において適切な教授を行うために、「一つの養成施設に限り専任教員となることができること」及び「教員数の2分の1以上が専任であること」とされている。

(今後の対応)

現行制度において、専任教員が常勤職員であることが必要かどうか不明確であるとの意見があることから、その位置付けを明確にする必要がある。

専任教員の位置付けにかんがみれば、生徒に対する適切な教授及び相談指導を確実かつ継続して実施できることが必要であるところ、その体制を十分に確保することが可能でありさえすれば、「専任教員」は必ずしも当該養成施設の「常勤職員」である必要はないものと考えられる。

なお、養成施設においては、指定基準に基づき、専任教員の適切な配置を行う必要がある。

2 通信課程における専任教員の配置基準について
(現状)

通信課程の専任教員は、2名を限度として昼間課程又は夜間課程の専任教員が兼任できることとされている。

(今後の対応)

通信課程の面接授業は夏休み及び春休みの期間を利用して実施されており、また、ほとんどの養成施設が添削指導に係る事務を(社)日本理容美容教育センターに委託していることから、運用上支障のない範囲で、通信課程のすべての教員を昼間課程又は夜間課程の教員が兼任できるようにすべきとの意見がある。

しかしながら、通信課程における教育の質を確保するためには、適切な数の専任教員を置く必要があり、適切な面接授業、通信授業及び生徒に対する相談指導を実施できる体制を確保する必要がある。

また、昼間課程又は夜間課程の専任教員がすべて兼任できるとした場合、その教授の方法によっては、昼間課程又は夜間課程の教育に影響を及ぼすおそれがある。

ついては、適切な面接授業、通信授業及び生徒への相談指導の実施を確保するため、定員に応じた適切な数の通信課程のみを教授する専任教員を置く必要があることから、昼間課程及び夜間課程の専任教員が通信課程の教員として兼任できる数は、現行どおり2名を限度とすることが適当である。

3 教員の資格要件の明確化について
(現状)

教科課目のうち、「関係法規・制度」、「物理・化学」、「文化論」及び「運営管理」の教員となることができる者は、「学校教育法に基づく大学の卒業者であって当該大学において○○学を修めた者」と規定されている。

(今後の対応)

「大学」について「短期大学」が除かれるか否か、また、「修めた者」について「修士等の専門分野を修了した者」を指すのか、それとも「一般課程を修了した者」を指すのかが不明確であるという意見があることから、現状及び理容師又は美容師の教育に携わる教員の資質を確保する観点を踏まえ、考え方を整理する必要がある。

現行制度においては、これらの課目について教員となることができる者は、「学校教育法に基づく大学の卒業者」として規定されており、学校教育法上の大学には短期大学が含まれている。

地方厚生局、都道府県、理容師養成施設、美容師養成施設、理容所及び美容所を対象として、平成19年8月に実施した「理容師養成施設及び美容師養成施設等の実態に関する調査」(以下「アンケート調査」という。)の結果をみると、半数の地方厚生局及び都道府県が「大学には短期大学を含む」として指導を行い、約4割の養成施設が短期大学を卒業した者を教員としている状況にある。

ついては、現行制度における養成施設に対する統一的な指導及び広範囲な分野から有能な人材を確保する観点から考えれば、現行制度の解釈を明確にすれば足りるものであることから、学校教育法に基づく大学(短期大学を含む。)とすることが適当である。

また、「○○学を修めた者」については、アンケート調査の結果をみると、一般教養課程を履修した者を教員としている養成施設が2割程度存在するが、養成施設における教員の質を確保するためには、担当教科課目の内容に関連する専門分野に係る学校教育法に規定された学位を有する者とすることが適当である。

これにより、短期大学を卒業した者が養成施設の教員となれることが明確にされるが、養成施設の生徒が理容師又は美容師としてどのような知識及び技術を身につける必要があるかを明確にするとともに、学校教育法に基づく専修学校及び各種学校の教員資格も参考にしながら、短期大学を卒業した者に対する実務経験要件の設定又は講習の実施、並びに専修学校の専門課程を卒業し専門士又は高度専門士の称号を有する者等現行の資格要件と同等の能力があると考えられる者に対する資格の付与のあり方について、引き続き検討を進めることが適当である。

4 教員の資質の向上について
(現状)

理容所又は美容所において3年以上の実務経験等を有し、厚生労働大臣が指定した研修の課程を修了した者に対しては、「衛生管理・保健」、「文化論」、「運営管理」及び「実習」の教員の資格を付与している。

(今後の対応)

理容師又は美容師のより一層の資質の向上を図るため、教員に対する研修内容の充実又は再研修の実施等、研修のあり方を見直すべきとの意見がある。

養成施設における教育の効果を高めるためには、教員のより一層の資質の向上を図ることが重要である。ついては、これらの者について、養成施設の教員として、より一層の適正かつ確実な教授を行えるようにするため、

[1] 教員の資格を付与するための研修について、技術理論・実習の時間数が他の課目と比較して短いため、時間数を拡大する等、その充実を図る

[2] 教員の資格を得るための当初の研修のほか、理容業務又は美容業務に係る技術水準を恒常的に確保できるよう、一定期間経過後に再研修を義務付ける

[3] エステティック、ネイル及びメイクアップに関する教員研修について、その継続した実施を推進するとともに、各養成施設の選択必修課目の設定状況を踏まえ、他の選択必修課目の教員についても、その資質を向上させるための研修を行う

[4] 理容師又は美容師の免許を受けた後、3年以上にわたり養成施設において教務を補助する者について、理容所又は美容所での実務経験を有する者と同等の知識及び技術を有し、教員として適切な教授が可能であるかの検証を行い、教員としての資格を満たすことを確保されれば、資格要件を付与する

など、引き続き検討を進め、適切な対応を講じることが適当である。

II 生徒に関すること

1 学則に規定された入所時期以降の入所者の募集について
(現状)

養成施設の入所時期は学則に明示することとされている。

(今後の対応)

一学年の生徒の数が定員に満たない養成施設においては、学則に明示した入所月以降においてもホームページにより新規入所者の募集を継続していることから、遅れて入所した生徒に対して適切な教授が行われていないおそれがあるとの意見がある。

ついては、各教科課目の適正な履修を確実なものとする観点から、入所時期は養成施設が学則に規定した月に限ることが適当であり、中途入学は認めない旨の措置をとる必要がある。

2 卒業の認定に必要な出席時間数について
(現状)

卒業の認定に当たっては、生徒が当該養成施設の定める教育計画に従って所定の教科課目及び所定の授業時間数を履修し、その成果が教科課目の教育目標からみて満足できると認められる者は、卒業を認定しなければならないとされている。

(今後の対応)

授業への出席日数に関わらず、養成施設の裁量で履修を認定できることになっているため、出席日数及び方法に関する具体的な規定を定めるべきとの意見がある。

ついては、卒業の認定に当たっては、各養成施設が教育目標及び教育計画に従って、できる限り数値化した基準を定めることが適当である。

また、生徒の出席状況を確実に把握し、出席状況の不良な者(例えば、欠席日数が当該学年の出席すべき日数の3分の1(実習にあっては5分の1)を超える者)については、卒業の認定をしてはならないことを明確にするとともに、欠席の日数が当該学年の出席すべき日数の3分の1(実習にあっては5分の1)以内の場合であっても、欠席の日数に応じた十分な補習を行った上で卒業を認めるものとすることが適当である。

3 昼間課程又は夜間課程から通信課程への転入について
(現状)

同一の養成施設内における昼間課程又は夜間課程から通信課程への転入についての規定が整備されていない。

(今後の対応)

経済的な理由等により昼間課程又は夜間課程から通信課程へ転入せざるを得ない生徒について、制度上の問題により、その希望をかなえられないことは問題があり、カリキュラム上支障のない範囲で、同一の養成施設内における課程間の転入を認められるようにすべきとの意見がある。

現行制度では、授業の進行度が課程ごと、あるいは養成施設ごとに異なることにより、転入の際の履修の認定が困難となっている。

そのため、養成課程を時間制から単位制に変更する見直しを行うことにより、同一の養成施設内における課程間の転入の際の履修の認定を容易にし、その履修状況に応じて養成施設が転入の適否を判断できるようにすることで、生徒に対する転入の機会を確保することが適当である。

なお、専修学校制度においては、通信課程は学校教育法に基づく正規の課程ではないことから、通信課程の履修を専修学校における履修とみなして昼間課程又は夜間課程に転入又は編入することはできないものとされており、専修学校である養成施設にあっては、この制約があることに留意する必要がある。

4 通信課程の入所者について
(1)通信課程の入所者に対する地域の限定について
(現状)

通信課程の入所者に関して募集する地域を制限する規定はない。

(今後の対応)

通信課程の入所者を全国から募集している結果、面接授業が適正に実施されていないとの意見がある。

通信課程は、地理的条件等によって就学が困難な者に就学の機会を与える制度として大きな役割を果たしているものであり、また、通信課程の生徒は、理容所又は美容所に従事している者が多いことから、養成施設は、生徒が仕事に従事していても面接授業が受けやすくするよう配慮し、面接授業を適正に実施することのできる体制を確保する必要がある。

面接授業の適正な実施の確保に資する方策の一つとして、入所者の地域を限定することが考えられるが、地域の限定は、通信課程への入所を希望する者の門戸を狭めることとなり、適当な手段とは考えにくく、むしろ、養成施設に対する定期的な指導監督を徹底することにより、面接授業が適正に実施される体制を確保することが適当である。

したがって、厚生労働大臣(地方厚生局長)は、指定申請書等に通信養成を行う地域及び授業の方法を適切に記載させることにより、指定等の際に、面接授業の実施場所及び実施方法について十分な確認指導を行うことが必要であるとともに、定期的な指導監督において面接授業の適正な実施を確保する必要がある。

また、養成施設においては、指定を受けた通信養成の地域を遵守するとともに、時間的又は経済的に当該養成施設の校舎で面接授業を行うことが困難な生徒に対しては、公共的施設等で面接授業を実施することにより、その適正な実施を確保する必要がある。

(2)通信課程の入所時期について
(現状)

通信課程の入所時期は学則に明示することとされており、多くの養成施設が運用上で10月としている。

(今後の対応)

高等学校卒業後直ちに通信課程に入所を希望する者もいることから、4月入所も認めるべきとの意見がある。

アンケート調査をみると、養成施設において昼間課程及び通信課程の事務処理を重複して行うことが困難である等の理由から、また、通信課程の生徒は理容所又は美容所に従事している者が多いことから、多くの養成施設で入所時期を10月としている実態があるが、通信課程への入所を希望する者の中には、理容所又は美容所に従事していない者もおり、それらの者が高等学校等を卒業してから半年を待たないと通信課程に入所できないという状況は適当ではない。

したがって、養成施設においては、教育の目標及び計画に基づき、通信課程への入所を希望する者の状況を踏まえて、4月入所も視野に入れた適切な入所時期を定めることが適当である。

なお、多くの養成施設においては、(社)日本理容美容教育センターが行う通信授業を活用しているが、そのカリキュラムが10月入所に合わせて策定されていることから、(社)日本理容美容教育センターにおいては、4月入所の生徒に対する通信授業に対応できる体制の整備を進める必要がある。

5 養成課程の一部又は養成施設が廃止された場合の学籍簿等の承継について
(現状)

養成課程の一部が廃止され、又は養成施設が廃止された場合の学籍簿等の承継に係る取扱いについて規定が整備されていない。

(今後の対応)

少子化に伴い養成施設の入所を希望する者の減少が見込まれる中、今後、養成課程の一部の廃止又は養成施設の廃止が想定されることから、廃止された当該養成施設の学籍簿等の承継の方法について明確にすべきとの意見がある。

養成課程の一部又は養成施設の廃止に伴い、当該養成施設を卒業した者が、理容師国家試験又は美容師国家試験を受験する際に必要な卒業証明書を取得できず、当該試験を受験することができないということがあってはならないものである。

そのため、卒業証明書を交付するための確認書類となる学籍簿等学習の状況を記録した書類が適切に保管されるとともに、その所在を明確にする必要がある。

ついては、養成課程の一部を廃止し又は養成施設を廃止しようとする場合における、厚生労働大臣(地方厚生局長)への承認申請書の記載事項に「学籍簿等の保管者」を追加することにより、厚生労働大臣(地方厚生局長)がその所在を確実に把握できるようにすることが適当である。

また、養成施設を設置する法人自体が廃止された場合には、専修学校又は各種学校を設置した法人の学籍簿は都道府県知事が保管することとなっているが、それ以外の養成施設を設置した法人の学籍簿は、適切な保管者が存在し得なくなることも想定される。その場合、養成施設を指定した厚生労働大臣(地方厚生局長)、公益法人である場合にはその設立を許可した都道府県知事又はその他養成施設の設置者で構成される公益法人が、学籍簿等を保管する者として考えられるところであり、関係法令等において所要の規定を整備した上で、適正な承継及び保管を義務付けることが適当である。

III 授業に関すること

1 授業時間数の「標準」の取扱いについて
(現状)

養成施設は、各教科課目ごとに指定基準に規定された授業時間数を標準として、独自に設定する教育目標及び教育計画に基づき、適切な授業時間数を定めることとされている。

(今後の対応)

「標準」の解釈があいまいであり、教育の質を確保する観点から、最低限履修しなければならない授業時間数を規定すべきとの意見がある。

ついては、養成施設における十分な教育を確保するため、養成施設の指定基準に規定された授業時間数は最低限履修すべきであり、「標準」を「以上」と改め、履修すべき授業時間数を明確にすることが適当である。

2 単位制の導入について
(現状)

養成施設は、各教科課目ごとに指定基準に規定された授業時間数を標準として、独自に設定する教育目標及び教育計画に基づき、適切な授業時間数を定めることとされている。

(今後の対応)

時間制を改め、高等学校又は大学の教育課程の履修の際とられている制度である単位制を導入してはどうかとの意見がある。

単位制の導入は、生徒の編入所又は転入所等に際しての養成施設における履修の認定が容易になること等、そのメリットは高いものと考えられることから、養成施設における教育の充実を図るため、単位制を基本とすることとする。

しかしながら、専修学校設置基準においては時間制を基本としていること、聴覚障害者である者の教育を主として行う特別支援学校及び矯正施設についても養成施設として指定されている例があることから、単位制により行うことが困難な養成施設においては、時間制で実施することも可能とする。

なお、単位制を導入することにより、専修学校において教育上必要な場合に認められている「昼夜開講制」(同一学科において昼間及び夜間の双方の時間帯において授業を行うことをいう。)により授業を行いやすくなるが、その適否については、現行制度が昼間課程及び夜間課程という枠組みであることを踏まえ、引き続き検討を行う必要がある。

3 養成施設内で行う実習について
(1)モデルの範囲について
(現状)

養成施設内で行う理容実習又は美容実習のモデルは、その対象を生活保護法又は社会福祉事業法の適用を受ける生計困難者等とされているとともに、養成教育としての実習の本旨に則り、一般営業と区別が設けられるよう、その対象範囲を限定するなど、適切に取り扱うこととされている。

(今後の対応)

実習モデルとなる対象者の範囲については、社会福祉事業法のように既に廃止された法律を引用した通知により定められている。併せて、生計困難者以外の者を対象とした場合のモデルの範囲(生徒間の相モデル、友人、家族又は第三者等)を明確にすべきとの意見がある。

実習モデルとなる対象者の範囲については、意見のとおり現状とそぐわないものとなっていることから、生計困難者を排除する必要はないものの、当該通知は廃止することが適当である。

また、養成施設内で行われる実習は教育課程の一環として行われるものであり、生徒は理容師又は美容師の資格を有していないものであることから、実習モデルについては、現行の規定に基づき、一般営業と厳に区別するために、その対象範囲を、原則として生計困難者及び生徒間の相モデルに限定し、仮に拡大する場合であっても、当該養成施設の教員及び生徒の家族等にとどめるべきであり、不特定多数の者をモデルとする実習が行われないよう、明確にすることが適当である。

(2)モデルを使用した実習の開始時期について
(現状)

養成施設内で行われるモデルを使用して行う理容実習又は美容実習(実務実習を含む。)の開始時期は、入所後概ね6か月を経過してからとされている。

(今後の対応)

モデルを使用して行う理容実習又は美容実習は、理容技術理論又は美容技術理論の学習状況及び生徒の技術習熟状況、又は着付け等人体に影響を及ぼさないと考えられる実習内容を考慮した上で、入所直後でもモデルを使用した実習を開始できるようにすべきとの意見がある。

ついては、養成施設内で行うモデルを使用した実習は、必修課目である「衛生管理」、「保健」及び「技術理論」の学習状況並びに生徒の習熟状況を十分に確認し、モデルを使用した実習を行うことが適当であると判断した上で開始することとし、「入所後概ね6か月を経過してから」という制限は廃止することが適当である。

なお、実務実習については、理容所又は美容所において、理容行為、美容行為及びこれらに附随する作業を行うものであることから、その開始に当たっては、養成施設において必要な課目を十分に習得してから、その習熟状況に応じて行う必要があるため、開始時期は現行どおり「入所後概ね6か月を経過してから」とすることが適当である。

4 実務実習のあり方について
(1)適切な実務実習時間について
(現状)

実務実習は、養成施設の教科課目である理容実習又は美容実習の一環として、年間60時間(通信課程の生徒のうち、理容所又は美容所に従事している者である生徒に対しては20時間)以内、1日当たり2時間(実務実習の実施計画、他の授業計画との調整及び受け入れ理容所又は美容所の営業状況を勘案して、その学習が効果的かつ有益であると認められる場合は4時間)を超えない範囲で、理容所又は美容所で行うことが望ましいとされている。

(今後の対応)

現在の養成施設において生徒が履修する理容技術理論・美容技術理論又は理容実習・美容実習のみでは、理容所又は美容所において即戦力にならないとの意見もあることから、入所期間内に実践的な技術を修得させるため、理容所又は美容所で行うことができる実務実習の1年間又は1日の時間数の上限の引上げを検討する必要がある。

実務実習は、管理理容師又は管理美容師を配置する理容所又は美容所において、理容師又は美容師の適切な指導監督の下、養成施設が作成した実施計画に基づく教育課程の一環として、理容行為、美容行為及びこれらに附随する作業を行うものである。

ついては、実務実習が、養成施設における実習では行えない実地に役立つバランスのとれた理容技術又は美容技術を身に付けさせるとともに、実務経験を通じて、専門的技術者としての自覚を促し、また、現場である理容所又は美容所を知るため、限定的に認められているものであることから、年間の実務実習の時間数は、現行どおり60時間(通信課程の生徒のうち、理容所又は美容所に従事している生徒に対しては20時間)以内とすることが適当である。

なお、実務実習の効果を上げるためには、理容所又は美容所の1日を通した業務の流れを経験することも必要であり、理容技術理論又は美容技術理論等の学習状況及び生徒の習熟状況を前提に、1日当たり2時間(必要に応じて4時間)以内という制限は廃止することが適当である。

また、年間の時間数を現行と同様の60時間(通信課程の生徒のうち、理容所又は美容所に従事している生徒に対しては20時間)以内とし、1日当たりの時間数の制限を廃止することにより、実務実習の回数が減る場合もあり得るが、養成施設においては、実務実習の目標を達成するための効果的な実施計画を作成するとともに、理容所又は美容所においても、養成教育という趣旨を踏まえ、適正かつ効率的な実務実習が行えるよう配慮する必要がある。

さらに、アンケート調査をみると、年間の実務実習を61時間以上行っている養成施設が17%もあることから、適切な実務実習を確保するため、厚生労働大臣(地方厚生局長)は年間の実務実習時間の遵守について、指導の徹底を図る必要がある。

(2)理容師又は美容師の適切な指導監督の実施について
(現状)

実務実習を受ける生徒は、理容師又は美容師の資格を有しておらず、独立して業務を行うことができないため、指導に当たる理容師又は美容師の十分な監督のもとで実習を行わせなければならないとされている。

(今後の対応)

指導に当たる1人の理容師又は美容師が、同時に多数の実務実習生を指導しており、養成施設が作成した実施計画に基づく適正な実務実習が行われていないおそれがあるとの意見がある。

実務実習を効果的に行うためには、養成施設が作成した実施計画に沿って、理容師又は美容師の十分な指導監督の下で行われる必要がある。

ついては、アンケート調査の結果を踏まえ、1人の理容師又は美容師が同時に指導できる実務実習生の数を2人以下とし、実務実習の質を確保することが適当である。

また、これらの措置により、実務実習を行うことができる理容所又は美容所が不足することとならないよう、理容所又は美容所に対して実務実習の必要性を周知し、その理解を得て、生徒の実務実習の機会を十分に確保する必要がある。

(3)実務実習生が行う無料の理容・美容行為について
(現状)

実務実習生が行う理容行為又は美容行為に関する料金の徴収については規定されていない。

(今後の対応)

実習機会の確保を図る観点から、実務実習生が行う理容行為又は美容行為を無料で行う理容所又は美容所があり、近隣の理容所又は美容所の営業を圧迫しているとの意見がある。

アンケート調査の結果をみると、実務実習により理容所又は美容所が経営を圧迫されている実態は少ないものの、一方では、経営の圧迫を受けたことにより紛争にまで発展した事例もあることから、実務実習の適正な実施体制を確保する必要がある。

実務実習は、理容業務又は美容業務と異なり、養成施設の作成した実施計画に基づく教育課程の一環として、理容行為、美容行為及びこれらに附随する作業を行うことから、その行為自体は、顧客から料金を徴収するような性格のものではないと考えられる。

他方、アンケート調査の結果をみても、実務実習生により1人の顧客に対して最初から最後までの理容行為又は美容行為は行われておらず、実務実習生がすべての行為をできないことからも、最終的に理容師又は美容師が何らかの理容行為又は美容行為を行うことが必要となる。また、実務実習生が行った理容行為又は美容行為についても、教材費や光熱費のコストは発生することとなる。

そのため、実務実習生が理容行為又は美容行為の一部を行った場合にあっても、顧客からその料金を徴収することが適当であり、実務実習生のモデルを確保するために、実務実習生が一部の理容行為又は美容行為を行うことを理由にして、料金の全部を無料とする又は料金を不当に低額にすることにより、周辺の営業者の営業を不当に妨害しないよう、十分な配慮が必要である。

さらに、実務実習の意義等について、理容所又は美容所への周知と理解を求め、生徒の実務実習の機会を十分に確保する必要がある。

(4)選択必修科目(専門教育科目)における校外実習について
(現状)

養成施設が任意に設定できる選択必修課目のうちの専門教育課目(エステティック、カウンセリング、総合技術等)に関する校外実習の実施に当たっては、生徒の負担過重とならないようにするとともに、必修課目の授業時間が所定授業時間数を下回らないよう、時間数、実施時期、実施回数を考慮しなければならないとされている。

(今後の対応)

専門教育課目の校外実習については、その具体的な実施方法等について規定がないことから、校外実習の適正な実施体制を確保すべきとの意見がある。

エステティック及び総合技術等、専門教育課目の校外実習は、必修課目の実習の一環として行われる実務実習と同様に、実地に役立つバランスのとれた技術を身につけさせるとともに、実務経験を通じて、専門的技術者としての自覚を促すためのものであり、その実施に当たっては、適切な方法により行われる必要がある。

ついては、校外実習をより効果的に行うため、必修課目の実習の一環として行われる実務実習に準じた方法により行うことが適当である。

さらに、理容所又は美容所に対して周知と理解を求め、生徒の実習機会を十分に確保する必要がある。

(5)名札の着用について
(現状)

都道府県知事は、実務実習生を受け入れる理容所又は美容所に対し、実務実習者である旨の標識の着用を指導することとされている。

(今後の対応)

実務実習生が理容所又は美容所で実務実習を行う場合において、利用者に対して実務実習生であることの適正な周知が図られていないとの意見がある。

ついては、実務実習生が理容所又は美容所で行う実務実習は、養成施設の教育課程の一環として行われるものであり、理容師又は美容師の十分な指導監督の下、モデルとなる顧客の十分な理解を得た上で行われる必要があることから、これらを確保するため、実務実習生であることを明確にした名札の着用について義務付けることとし、厚生労働大臣(地方厚生局長)は養成施設に対し適切な指導を行うことが適当である。

5 通信課程について
(1)通信課程における教育の充実について
(現状)

通信課程における授業は、教材を送付又は指定し、主としてこれにより学習させ、併せて添削による指導を行う通信授業及び養成施設の校舎における講義、演習、実験又は実技による面接授業の併用により行うこととされている。

(今後の対応)

通信課程を卒業した者の理容師国家試験及び美容師国家試験の合格率が、昼間課程又は夜間課程を卒業した者と比較して低いことから、十分な通信教育がなされていないとの意見があり、通信課程における面接授業及び通信授業について、教育の質の向上を図る必要がある。

ついては、(社)日本理容美容教育センターで導入を開始したeラーニングシステムを活用した通信授業の推進を図るとともに、その結果等を見据えつつ、通信課程の教育の充実を図るための方策を引き続き検討すべきである。

(2)理容所又は美容所の従事者に対する面接授業の時間数の緩和について
(現状)

通信課程の生徒のうち、理容所又は美容所に従事している者である生徒に対する面接授業にあっては、理容所又は美容所に従事していることで一定の知識及び経験を習得できることから、特例措置として、「文化論」、「技術理論」、「運営管理」及び「実習」等の教科課目の面接授業の時間数を緩和することができるとされている。

(今後の対応)

通信課程における面接授業の時間数の緩和を適用するに当たって、理容所又は美容所における就業形態との関係があいまいであり、明確にすべきとの意見がある。

理容所又は美容所において、常勤として日々従事している者と非常勤として1週間のうち数時間程度しか従事していない者とでは、おのずと習得される知識及び経験にも差が生じるものである。

したがって、養成施設においては、通信課程の教育の充実を図る上でも、これらを十分に踏まえた上で面接授業を適切に実施する必要があり、理容所又は美容所に非常勤として従事している者にあっては、面接授業の時間数の緩和は適用しないこととすることが適当である。

そのため、養成施設は、入所決定時に、理容所又は美容所において常勤として従事している者であることを確認した上で、面接授業の授業時間数を緩和するとともに、入所途中で、理容所又は美容所の就業形態が常勤から非常勤に変更される場合があることから、定期的に当該生徒が従事する理容所又は美容所から、その証明の提出を受けることにより、通信課程における適切な教育を確保する必要がある。

さらに、入所前に、入所しようとする者及びその者が従事する理容所又は美容所に対しその趣旨等を周知し、理解と協力を得る必要がある。

(3)通信課程の実務実習の場所について
(現状)

通信課程の生徒のうち、理容所又は美容所に従事している者である生徒が行う実務実習については、通常の実務実習における実務実習先となる理容所又は美容所の選定基準が適用されており、実務実習場所を制限する付加的な条件は設けられていない。

(今後の対応)

通信課程の生徒のうち、理容所又は美容所に従事している者である生徒について、十分な理容技術又は美容技術の習得を容易とするため、当該生徒が従事している理容所又は美容所で実務実習が行えるようにすべきとの意見がある。

現行制度においては通信課程の生徒が従事している理容所又は美容所において実務実習を実施することは可能であり、通信課程における入所者の地域を限定しない以上、実務実習先となる理容所又は美容所の地域の限定も行わないこととすることが適当である。

なお、養成施設においては、実務実習が行われる理容所又は美容所が、実務実習先となる理容所又は美容所の選定基準に適合している旨の確認を十分に行うとともに、実務実習先となる理容所又は美容所と十分な連携を図ることにより、実施計画の策定及び提示並びに実務記録による評価を適切に行う必要がある。

さらに、理容業務又は美容業務が、理容師又は美容師の資格を有する者のみ行うことができる業務独占資格であることを踏まえ、理容所又は美容所においては、実務実習生であることを明確にするために名札を必ず着用させ、実務実習生に実施計画を逸脱した理容行為又は美容行為を行わせないよう、十分留意する必要がある。

6 中学校卒業者の講習課目について
(現状)

中学校卒業者に対しては、必修課目の授業を補助するため、「現代社会」、「化学」及び「保健」の課目について、各課目35時間の講習を行うこととされている。

また、中学校卒業者であって18歳に達しているものについては、個別の入所資格審査により、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者は、講習を免除することができるとされている。

(今後の対応)

養成施設における中学校卒業者の受入れを容易にし、かつ、入所に当たって、中学校卒業者の負担を軽減する観点から、講習に必要な課目及び時間数について見直しを検討する必要がある。

中学校卒業者に対する講習は、

[1] 養成施設の入所資格を中学校卒業者から高等学校卒業者に引き上げた平成7年の理容師法及び美容師法の改正が、理容師又は美容師に対する高度な技術の付与とさらなる衛生水準の維持向上を図るためのものであったこと

[2] 当該講習が、改正法附則で認められている養成施設に入所しようとする中学校卒業者の障壁となってはならないこと

[3] 当該講習は、必修課目の授業を補助するために設けられているものであること

[4] 講習内容の緩和により、必修課目についていけず、十分な知識の習得ができない結果、理容師国家試験又は美容師国家試験に合格できない生徒が増えることになってはならないこと

を踏まえた上で見直しを行う必要がある。

ついては、中学校卒業者又は高等学校中退者についても、高等学校在籍時の履修状況等を踏まえた個別の入所資格審査を適切に行い、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者は、個々の講習課目毎に、その課目の免除又は時間数の緩和をすることができるとすることが適当である。

7 学習指導内容の具体化及び教科書の見直しについて
(現状)

養成施設において教授する教科課目は、教科課目の基準において、その実施方針、内容及び指導上の留意事項が定められ、教科書は当該基準に沿って作成されている。

(今後の対応)

教科課目のうち、

[1] 特に「保健」又は「物理・化学」は、その学習内容が高度なものを求めすぎている

[2] 「実習」のカットについては、教科課程の基準に「カッティング」としか規定されておらず、どの程度理解させればよいかが明確でない

[3] 理容師及び美容師が行うエステティックについて、その業務内容を明確にした上で、適切な教授を行う必要がある

との意見があり、その達成すべき知識及び技能の程度を具体的に示した学習指導要領を定める必要がある。

ついては、教科課程の基準及び教科書について、理容業務又は美容業務に関連の深い内容を中心に、達成すべき知識及び技能の程度をできる限り具体的に示すこととし、関係者の意見を聞きつつ、その具体的な内容についての見直しを図るため、引き続き検討を行う必要がある。

また、エステティック等については、理容又は美容をめぐる時代に即した消費者ニーズを勘案するとともに、関係法令の枠組み等も踏まえた上で、それらについて適切な教授ができるよう内容の充実を図り、教科課程の基準に適切に反映することが適当である。

IV 施設及び設備に関すること

1 校舎の配置について
(現状)

養成施設の施設及び設備は、原則として同一構内にあって、それらが有機的に関連性をもって配置され、その構造は堅ろうであって、学習上、保健衛生上及び管理上適切なものであることとされている。

(今後の対応)

近年、別の敷地に校舎を設置する養成施設があり、どのような場合であれば基準に適合すると判断するのかの基準を明確にすべきとの意見がある。

養成施設の校舎は、適切な授業を実施するために同一敷地内にあることが必要とされるが、生徒の定員の増加による施設の増設等を行う場合にあって、法令の規定により同一敷地内への増設が制限又は禁止される場合等、やむを得ない明確な理由がある場合に限り、別の敷地に設置することを可能とすることが適当である。

また、別の敷地に設置する校舎は、学習上、保健衛生上及び管理上適切なものとするとともに、当該校舎の場所は、教員及び生徒の移動を考慮して教育上及び学習上支障がない距離とし、併せて、生徒に過度の負担がかからないようにするための適切な措置を講じることも必要である。

2 消毒室の設置について
(現状)

養成施設の校舎は、教員室、事務室、消毒室、図書室、同時に授業を行う学級数を下らない数の専用の普通教室及び適当な数の専用の実習室を備えるとともに、消毒室の面積は6.61平方メートル以上とされている。

(今後の対応)

器具等の消毒に関する授業を実習室で行っている養成施設が多いことから、消毒室の設置を義務付ける必要はないとの意見があり、アンケート調査をみても同様の結果となっている。

消毒の授業を実施するに当たっては、消毒に必要な器具等を用いて適切かつ安全に実施する必要があるが、現状の消毒室は、標準として同時に授業を行う生徒数である40名が同時に授業を行うに十分な広さを確保しておらず、また、消毒に関する授業は実習室等においても適切に行えることから、消毒室の設置の義務付けは廃止することとが適当である。

なお、消毒に必要な薬品については、消毒室を設置しない場合であっても、当然、専用の保管場所を設けるなど、安全な保管及び管理を行う必要がある。

3 学習上必要な備品(機械器具)の見直しについて
(現状)

学習上必要な機械器具、標本及び模型、図書並びにその他の備品を有することとされ、指導要領に規定された機械器具を標準として整備することとされている。

(今後の対応)

指導要領には、現在、使用することがない機械器具等が見受けられるため、見直す必要があるとの意見があることから、学習上必要な機械器具について、現状に合わせた器具とするとともに、教科課程の基準の見直しに応じた見直しを行うことが適当である。

V 申請等に関すること

1 都道府県が行う養成施設の指定又は指定取消事由の有無に関する調査事務の見直しについて
(現状)

養成施設の指定を行う場合に必要な調査及び指定を受けた養成施設に関する指定取消理由の有無の調査に関する事務(以下「調査事務」という。」)は、都道府県が行うこととされている。

(今後の対応)

法令の委任を受け、都道府県知事が行うこととされている調査事務は、地方厚生局が設置される以前に創設された規定であり、 「十三大都道府県環境衛生関係主管課長会議」から、養成施設に関する事務を国において一元的に実施するよう要望が提出されているとともに、アンケート調査の結果においても、47都道府県すべてが厚生労働大臣(地方厚生局長)が行うべきと回答している。

元々、都道府県知事がこれらの調査事務を行うこととされたのは、かつて地方厚生局がなく、厚生労働大臣が現地調査を全国的に行うことが困難であったという事情によるものと考えられるが、平成13年に地方厚生局が設置され、地方厚生局において通常の指導監督を行うようになった現在、地方厚生局において調査事務を行うことが可能な枠組みとなっていることから、事務の統一性及び効率性の観点を踏まえ、厚生労働大臣(地方厚生局長)が調査事務を行うことについて検討する必要がある。

他方で、このような国と都道府県の事務分担を考える上では,政府全体で議論が進められている地方分権の推進といった観点についても考慮する必要があり、また、都道府県が調査事務を行うことについては、法律の委任を受けた政令で規定されている事項でもあることから、制度改正を行おうとする場合には、関係機関との十分な調整が必要となる。

なお、本件についての検討及び調整に時間を要する場合であっても、従来から都道府県において調査事務に付随する事務という位置付けで行われている養成施設に対する現地での指導監督や養成施設からの変更届の受理に関する事務を厚生労働大臣(地方厚生局長)が実施することとするなど、事務の統一性及び効率性を確保するための運用上の見直しについては、早急に行うことが適当である。

また、厚生労働大臣(地方厚生局長)と都道府県の事務分担が見直される場合であっても、双方の事務が円滑に行われるよう、引き続き、十分な連携が図られる必要がある。

2 養成施設に対する指導監督について
(現状)

養成施設に対する指導上必要な現地での指導監督について、調査事務に附随する事務等として、都道府県が行っている場合がある。

(今後の対応)

地方厚生局が設置され、報告の徴収及び指示の権限を有することとなった現在、養成施設に対する現地での指導監督は、地方厚生局が主体となり実施すべきとの意見があり、アンケート調査の結果においても、養成施設に対する指導監督を行っている21都道府県すべてが地方厚生局で行うべきと回答している。

また、調査事務については、「十三大都道府県環境衛生関係主管課長会議」から、養成施設に関する事務を国において一元的に実施するよう要望が提出されているところである。

元々、都道府県知事が指導監督事務を行うこととされたのは、かつて地方厚生局がなく、全国の養成施設に対し、厚生労働大臣が現地に直接赴き指導監督を行うことが困難であったという事情によるものと考えられるが、地方厚生局が設置され、養成施設に対する報告の徴収及び指示の権限を有するようになった現在、都道府県知事が指導監督を行う積極的な意義が乏しいことから、事務の統一性及び効率性の観点を踏まえ、厚生労働大臣(地方厚生局長)が行うことが適当である。

また、厚生労働大臣(地方厚生局長)は、地域間の格差が生じないよう統一的かつ計画的な指導監督を実施するとともに、引き続き、都道府県知事と十分な連携が図られる必要がある。

3 届出事務の整理について
(現状)

養成施設の教員等の変更を行った場合は、その変更する内容によって、厚生労働大臣(地方厚生局長)又は当該養成施設所在地の都道府県知事に届け出なければならないとされている。

(今後の対応)

指導監督事務の見直しと併せ、指導監督事務の統一性を確保する観点から、教員の変更に伴う氏名の届出等、これまで都道府県知事に提出されている届出を厚生労働大臣(地方厚生局長)への届出に変更することが適当である。

4 生徒の定員変更を伴わない構造設備の変更について
(現状)

養成施設の所在地を変更した場合は、その旨を記載した届出書を当該養成施設所在地の都道府県知事及び厚生労働大臣(地方厚生局長)に提出しなければならないとされている。

(今後の対応)

所在地を移転した養成施設の構造が指定基準に適合せず、再度、改修工事を行う事態が生じる事例があるとの意見があることから、そのような事態を生じさせないよう、適切な教育環境を確保するためには、事前に施設の構造が指定基準に適合しているかどうかの確認を行うことが必要である。

ついては、養成施設の所在地を変更する場合を含め、新たに、校舎の各室の用途及び面積並びに建物の配置図及び平面図を変更する場合は、厚生労働大臣(地方厚生局長)の承認を受けることとすることが適当である。

5 定員の減に伴う厚生労働大臣の承認について
(現状)

養成施設の設立者は、当該養成施設における生徒の定員を変更しようとするときは、2月前までに、その旨を記載した申請書を厚生労働大臣(地方厚生局長)に提出し、その承認を得なければならないとされている。

(今後の対応)

養成施設における生徒の定員を減ずる変更をしようとする場合は、構造設備の変更を伴わない事例もあることから、その負担の軽減を図るため、厚生労働大臣(地方厚生局長)に対する届出に変更すべきとの意見がある。

ついては、生徒の定員を減ずる場合であって、構造設備等の変更が生じない場合は、他の資格制度のあり方も考慮しつつ、厚生労働大臣(地方厚生局長)への届出に変更することが適当である。

6 変更届における学則の添付について
(現状)

養成施設の入所資格等を変更した場合は、その旨を記載した届出書を厚生労働大臣(地方厚生局長)又は当該養成施設所在地の都道府県知事に提出しなければならないとされている。

(今後の対応)

養成施設の入所資格等の変更については、学則で明確に位置付ける必要があることから、届出時に学則の添付を位置付けるべきとの意見がある。

養成施設は学則に基づき適正な運営を行うこととされており、学則に明示すべき事項の変更を行う場合にあっては、学則に適切に反映させる必要があることから、他の資格制度のあり方も考慮しつつ、厚生労働大臣(地方厚生局長)に対する届出に学則を添付させることが適当である。

7 在学生の保護規定について
(現状)

養成施設の設立者は、当該養成施設の養成課程の一部を廃止し、又は当該養成施設を廃止する場合の入所中の生徒の処置については、通知により、原則として他の養成施設に編入所させなければならないとされている。

(今後の対応)

少子化に伴い養成施設への入所を希望する者の減少が見込まれる中、今後、養成課程等の廃止が想定されることから、養成課程の一部を廃止し、又は養成施設を廃止する場合の入所中の生徒の処置について、省令又は告示において明確にすべきとの意見がある。

養成課程の一部を廃止し、又は養成施設を廃止する場合は、当該養成施設は、在学中の生徒の学習の機会を保護するため、他の養成施設に編入所させる措置を適切に講じなければならない。

ついては、厚生労働大臣(地方厚生局長)は、当該措置が適切に実施されているかの確認を行った上で廃止の承認を行う必要があり、他の資格制度のあり方も考慮しつつ、廃止しようとする時の承認申請書の記載事項として省令等において明確にすることが適当である。

8 指定取消事由の追加について
(現状)

厚生労働大臣(地方厚生局長)は、指定された養成施設が指定基準に適合しなくなったと認めるとき等は、その指定を取り消すことができるとされている。

(今後の対応)

養成施設においては、

[1] 養成施設側が行う試験の結果により、国家試験に合格できないと見込まれる生徒を卒業させず、高い合格率を維持する

[2] 指定を受けた学年定員を超えた数の生徒を入所させていることが公にならないよう、卒業させるべき全員を卒業させていない

という実態があるのではないかとの意見がある。

養成施設における適切な教育の確保は、理容師又は美容師の養成制度の根幹であることから、養成施設の理容師国家試験又は美容師国家試験の高い合格率を維持するために適切な教育が行われないことは重大な問題であり、厳正な対応が必要である。

ついては、他の資格制度のあり方も考慮しつつ、養成施設の指定基準中に、生徒の定員の遵守及び適正な卒業の認定の基準を明確に規定することが適当である。

また、これらを指定基準に追加することにより、これらが遵守されない場合、指定取消事由に該当することとなるが、報告の徴収及び指示等の方法により、厚生労働大臣(地方厚生局長)から数次にわたる指導があり、その改善のために十分な時間的余裕があったにもかかわらず、なお、その改善が図られない実態があるなど指定を取り消す以外に養成施設の適正な管理・運営を確保することが困難と認められる場合は、指定の取消しについても検討すべきである。

なお、厚生労働大臣(地方厚生局長)は、学則に基づく適正な教育が確保されるよう、養成施設に対し十分な指導を行うことにより、生徒の定員の遵守及び卒業の認定の適正な実施を確保する必要がある。

9 広告規制について
(現状)

指定を受けようとする養成施設の設立者は、養成施設を設立しようとする日の1年前までに設置計画書を、4か月前までに指定申請書をそれぞれ厚生労働大臣(地方厚生局長)に提出しなければならないとされているが、養成施設を新設する旨の広告及び生徒の募集行為(募集要領の配布及び入学試験等の実施)についての規定は整備されていない。

(今後の対応)

養成課程又は養成施設の新設若しくは定員の変更の申請に伴い、養成施設が行う養成課程又は養成施設の新設の広告若しくは生徒の募集行為については、養成施設に入所しようとする者が養成施設を選択する際の判断材料となることから、すべての養成施設が同等な基準のもと適正に行われる必要がある。

ついては、他の資格制度及び学校教育法等関係法令も考慮しつつ、新設の広告及び学生の募集行為について、その開始時期及び方法を明確にすることが適当である。

第3 おわりに

理容業や美容業は、国民の日常生活に身近で、欠かすことのできない営業であり、年々多様化する利用者のニーズへの適切な対応や公衆衛生の維持向上への配慮が強く求められている。

養成施設は、このような理容業や美容業の次代を担う理容師や美容師の養成の中核的役割を担っており、養成施設の教育内容が、理容業や美容業の将来を左右すると言っても過言ではなく、今後その役割は益々重要になるものと考えられる。

本検討会では、5回にわたり、養成施設における養成内容を時代に即したものに改めるとともに、適正な運営及び養成施設に対する指導監督等を確保する上で見直しを検討するべき諸課題について検討を行い、今後の対応の方向性を明確にしたところである。

厚生労働省においては、当該報告に基づき関係制度を見直し、養成施設に対する適正な指導監督及び助言を行うとともに、引き続き検討を行う必要があるとした課題について、関係各機関における検討状況等も踏まえながら、方向性を明確にする必要がある。

また、養成施設においては、その適正な管理・運営を行い、次代を担う理容師や美容師の養成に、より一層尽力されることを切に期待する。


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