平成19年11月6日

理容師養成施設及び美容師養成施設の適正な運営の確保に関する検討会
報告について

第1 経緯

平成7年の理容師法及び美容師法の一部改正に基づき、新たに理容師養成施設及び美容師養成施設(以下「養成施設」という。)に関する制度が整備されてから概ね10年を迎えようとしている現在、理容及び美容に係る消費者ニーズの多様化及び高度化に伴い、養成施設における教育内容を時代に即したものに改める必要が生じているほか、その適正な運営及び指導監督を確保する上で見直しを検討すべき点も生じている。

こうした中、これらの諸課題に対して、今後の対応の方向性を明確にするため、「理容師養成施設及び美容師養成施設の適正な運営の確保に関する検討会」を開催し、現行制度における問題点に対する今後の対応などについて検討を行い、今般、本報告書をとりまとめた。

第2 検討事項の概要

I 教員に関すること

1 教員の資格要件に関する「大学」及び「○○学を修めた者」の考え方について

現行制度における養成施設に対する統一的な指導及び広範囲な分野から有能な人材を確保する観点から考えれば、現行制度の解釈を明確にすれば足りるものであることから、「学校教育法に基づく大学(短期大学を含む。)」とするとともに、「○○学を修めた者」については、養成施設における教員の質を確保するため、担当教科課目の内容に関連する専門分野に係る学校教育法に規定された学位を有する者とする。

なお、短期大学を卒業した者に対する実務経験要件の設定又は講習の実施、並びに現行の資格要件と同等の能力を有すると考えられる者に対する資格付与のあり方について、引き続き検討を進める。

2 教員の資質の向上について

養成施設の教員として、より一層の適正かつ確実な教授を行えるようにするため、教員の資格を取得するための研修及び一定期間経過後の再研修など、その充実を図る必要があり、引き続き検討を進め適切な対応を講じる。

II 生徒に関すること

1 学則に規定された入所時期以降の入所者の募集について

入所時期は養成施設が学則に明示した月に限ることが適当であり、中途入学は認めない旨の措置をとる。

2 卒業の認定に必要な出席時間数について

卒業の認定に当たっては、できる限り数値化した基準を定めるとともに、生徒の出席状況を確実に把握し、出席状況の不良な者(例えば、欠席日数が当該学年の出席すべき日数の3分の1(実習にあっては5分の1)を超える者)については、卒業の認定をしてはならないことを明確にする。

3 昼間課程又は夜間課程から通信課程への転入について

養成課程を時間制から単位制に変更する見直しにより、同一の養成施設内における課程間の転入の際の履修の認定を容易にし、その履修状況に応じて養成施設が転入の適否を判断できるようにすることで、生徒に対する転入の機会を確保する。

4 養成課程の一部又は養成施設が廃止された場合の学籍簿等の承継について

養成課程の一部が廃止され、又は養成施設が廃止された場合は、厚生労働大臣(地方厚生局長)が学籍簿等の所在を確実に把握できるようにするとともに、関係法令等において所要の規定を整備した上で、適正な承継及び保管を義務付ける。

III 授業に関すること

1 単位制の導入について

単位制を基本とした上で、履修すべき単位数を明確にするとともに、単位制により行うことが困難な養成施設は、時間制で実施することも可能とする。

2 養成施設内で行う実習について

不特定多数の者をモデルとする実習が行われないよう明確にするとともに、その開始時期は、必修課目の学習状況並びに生徒の習熟状況を十分に確認した上で開始することとし、「入所後概ね6か月を経過してから」という制限は廃止する。

3 実務実習のあり方について

実務実習の効果を上げるためには、理・美容所での1日の業務の流れを経験することも必要であり、1日当たり2時間(必要に応じて4時間)以内という実務実習時間の制限は廃止するとともに、1人の理・美容師が同時に指導できる実務実習生の数を2人以下とする。

実務実習は、養成施設の作成した実施計画に基づく教育課程の一環であることから、実務実習生が一部の理容・美容行為を行うことを理由にして、料金の全部を無料とする又は料金を不当に低額にすることにより、周辺の営業者の営業を不当に妨害しないよう、十分な配慮が必要である。

専門教育課目の校外実習についても、実務実習に準じた方法により行うこととする。

4 通信課程における教育の充実について

eラーニングシステムを活用した通信授業の推進を図るとともに、その結果等を見据えつつ、通信課程の教育の充実を図るための方策を引き続き検討する。

通信課程の入所者のうち、理・美容所に非常勤として従事している生徒は、常勤として従事している生徒と同等の知識及び経験を有することが困難であることから、養成施設における面接授業の時間数の緩和は適用しないこととする。

5 中学校卒業者の講習課目について

中学校卒業者については、個別の入所資格審査により、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者は、個々の課目を免除又は時間数を緩和することができることとする。

6 学習指導内容の具体化及び教科書の見直しについて

教科課程の基準及び教科書について、理容・美容業務に関連の深い内容を中心に、達成すべき知識及び技能の程度をできる限り具体的に示すための見直しを行う。

エステティック等については、時代に即した消費者ニーズを勘案するとともに、関係法令の枠組み等も踏まえた上で、適切な教授ができるよう教科課程の基準に適切に反映する。

IV 施設及び設備に関すること

1 校舎の配置について

法令の規定により同一敷地内への校舎の増設が制限又は禁止される場合等、やむを得ない明確な理由がある場合に限り、別の敷地に校舎を設置することを可能とするが、教員及び生徒の移動を考慮して教育上及び学習上支障がない距離とし、併せて、生徒に過度の負担がかからないよう適切な措置を講じる。

2 消毒室の設置について

消毒の授業を実施するに当たっては、実習室等においても適切に行えることから、消毒室の設置の義務付けは廃止する。

V 申請等に関すること

1 都道府県が行う養成施設の指定又は指定取消事由の有無に関する調査事務の見直しについて

平成13年の地方厚生局の設置により、地方厚生局において調査事務を行うことが可能な枠組みとなっていることから、事務の統一性・効率性の観点を踏まえ、厚生労働大臣(地方厚生局長)が調査事務を行うことについて検討する。

2 養成施設に対する指導監督について

地方厚生局が設置され、養成施設に対する報告の徴収及び指示の権限を有するようになった現在、事務の統一性・効率性の観点を踏まえ、厚生労働大臣(地方厚生局長)が指導監督を行う。

3 承認及び届出事務の整理について

校舎の各室の用途及び面積並びに建物の配置図及び平面図を変更する場合は、厚生労働大臣(地方厚生局長)の承認を得ることとするとともに、生徒の定員を減ずる場合の厚生労働大臣の承認及びこれまで都道府県知事に提出されている届出を厚生労働大臣(地方厚生局長)への届出に変更する。併せて、届出時に学則を添付させる。

4 指定取消事由の追加について

指定の基準に生徒の定員の遵守及び適正な卒業の認定の基準を明確に規定し、これらが遵守されず、指定を取り消す以外に養成施設の適正な管理・運営を確保することが困難と認められる場合は、指定の取消しについても検討する。

5 広告規制について

すべての養成施設が同等な基準のもと適正に行われる必要があることから、新設の広告及び生徒の募集行為について、その開始時期及び方法を明確にする。

第3 今後の予定

厚生労働省では、本報告に示された養成施設の適正な運営の確保に関する見直しの内容を踏まえ、関係省令等について所要の改正を行い、適切な養成制度の実施を図る。


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