07/10/30 生活扶助基準に関する検討会(第2回)議事要旨 生活扶助基準に関する検討会(第2回)議事要旨 1 日時   平成19年10月30日(火) 17:30〜19:00 2 場所   商工会館6階G会議室 3 出席者  (1) 委員(敬称略、五十音順、◎は座長)      岡部  卓(首都大学東京都市教養学部教授)      菊池 馨実(早稲田大学法学学術院教授)      駒村 康平(慶應義塾大学経済学部教授)      根本 嘉昭(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授)     ◎樋口 美雄(慶應義塾大学商学部教授)  (2) 行政      中村社会・援護局長、木内大臣官房審議官、藤木社会・援護局総務課長、     伊奈川社会・援護局保護課長他 4 議事(○:委員の発言、●:事務局の発言) ○ 本日は基準体系の検証について議論していきたい。資料が2種類用意されており、 1つは資料1「基準体系の評価・検証に関する資料」、もう一つが資料2「前回委員よ り求めのあった資料について」。まず、資料2から説明いただき、質疑した後、体系に ついて説明いただきたい。  (事務局より資料2説明) ○ それでは、ただいまの説明について、御質問、御意見いただきたい。 ○ では1点。1の「年齢階級別の被保護人員変化率の要因分析」で、人口増要因が変 化率の中で1つの要素として入っているが、その他要因というのは具体的にどういう 要因を想定しているのか。 ● 数量的には分析ができていないが、一般的な意味でいうと、例えば0〜19歳が増え ているということは、お子さんがいる世帯の方が生活保護に入ってきたというような 要因とか、あるいはこの間の景気や経済状況といった要因が合わさって、その他要因 になっているのではないか。 ○ 例えば経済的な要因であるとか、制度的な要因であるとか、行政的な要因であると か、いろいろと要素はあると思うが、人口要因以外でどういうファクターが考えられ るのかということも、保護率の動向を考える上で1つの分析の大きな指標になる。今 後で結構なので、具体的に説明していただきたい。 ● 今後の検討課題とさせていただきたい。 ○ 人口増加要因というと、自然増的なところがあるが、その他というのが経済要因で あるとか、その中にはワーキングプアや母子世帯等の問題があるということが今回こ れで少しはっきりしてきた。単に第2次ベビーブーマーの人口がこの30〜39歳の年齢 にさしかかったため数が増えて、全体の被保護人員が増えたわけではないということ は確認できたが、その中身をもう少し精査してほしい、こういう要望だと思う。 ○ 2ページ目の世帯類型別の保護率は、平成7年を底にして上がっているが、その中 で上がり方が一番激しいのが「その他世帯」ということで、こちらも「その他」とな っている。その他のうちの傷病・障害の数は、分離して出せないのか。 ● その他世帯については、傷病・障害者世帯を分離して世帯保護率を計算しておらず、 まだ分析できていないのが実情である。 ○ 3ページを見ると、世帯は4分類になっている。その他というのが障害と分離して 世帯類型ができているのだから、世帯類型ごとにできないかという御指摘だと思うが。 ● 傷病・障害の保護率の分母の数字がない。分母の基となるのが国民生活基礎調査で あるが、障害・傷病の分母となる数字がないため、ここでは一緒にしている。いろい ろな方法を試すことはできるかもしれないが、保護率の出し方としてはここまでとい うことになる。 ○ 今の3ページを見ると、その他の中に占める傷病・障害のウェートは高い。だから、 総数でいうと47.2%のうち37%が傷病・障害世帯であるということから、10年前の 大体1.447倍がそれに起因するようになったと解釈したら大雑把過ぎるか。 ● 今、的確な答えができるだけの分析を行っていないので。 ● 確かに世帯数で言うと、傷病・障害世帯が全世帯に対して、平成16年度の数字が 35.1、それに対してその他世帯が9.4であるから、シェアは、傷病・障害世帯とその 他世帯は例えば4対1であるので、その他世帯が5分の1という感じである。   工夫が要ると思うが、どうすれば傷病・障害世帯が、その他世帯との4対1という 割合の中でどのぐらい寄与しているか、どうすれば分母が出せるかも含めて、もう一 度検討いたしたい。 ○ 持ち帰りの宿題がまた出て恐縮であるが、その点よろしくお願いしたい。   では、資料1について説明いただきたい。  (事務局より資料1説明) ○ それでは、ただいまの説明について御質問を受けたい。 ○ 前回専門委員会での1つの結論としては、入りやすくて出やすい制度にしていきた いとか、あるいは一般の方々にとって分かりやすい仕組みにしておこうというような こともあったと思う。そういう意味で、分かりやすいということが今後の作業の大事 な要素だと思うわけだが、今回の資料は、1人世帯を基軸とするということについて は非常に分かりやすい。特に、国民との相対性を追及するという前提で分かりやすい 資料であると思うが、その前に、一、二お伺いしたい。   まず1ページ。1類費についてもスケールメリットがあり、注1、2のところで0.95、 0.90という数字を逓減率として掛けているが、この数字の根拠。更に2類費も、1人 から4人までのところはある程度一般世帯との均衡を鑑みての比率になっていると思 うが、5人以上世帯において加算する520円という数字の根拠。この2つについてお 伺いしたい。 ● 多人数世帯の0.90、0.95の根拠であるが、前回の専門委員会のデータ分析の中で、 当時、家計調査を特別集計して、4人世帯、5人世帯のスケールメリットがどう効い ているかということを、当時の基準額と比較し、補正を行った結果が0.95、0.90とい う係数を掛けることとなった実情である。   2類費については、1人世帯から3人世帯は、昭和61年度以降、固定になっている。 4人世帯、5人世帯については、平成17年度に家計調査データを分析して、補正をし た結果が現在の数字である。 ○ 今言われた計算で、ほぼ一般世帯との均衡が図られることを前提としてこの0.90、 0.95という数字なのか。消費支出額の実態を見ると必ずしも均衡が図られていない。 これはある程度年次計画のようなものでやってきた、そのプロセスとしてこれがあっ たというふうに理解していいのか。 ● 当時、データ的にぎりぎりのところまで、一遍にはできないので、激変緩和をしつ つといった結果が現状である。 ○ 2ページ目の1類と2類の比率が65.9対と34.1になっている。この根拠は、先ほ どの家計調査等から出てきたのか。その部分と5ページ目の実態を3人世帯のところ で見ると、1類費相当と2類費相当の支出のところの費目別構成割合が48.1対51.9 になっている。現行制度の1類、2類の分け方の根拠は何か。   それから、2ページ目の2類のところで3人世帯が基軸となっているが、4人世帯、 5人世帯と、1人世帯、2人世帯の増やし方、減らし方の根拠は何か。先ほどの議論 と同じことかもしれないが、一応確認までにお願いしたい。 ● 1類費、2類費のこの区分については、現行と相当数字的にずれているという御指 摘であるが、もともとの家計調査のデータ、目標データ自体が昭和62年であって、そ の当時のデータに基づき、少しずつ変更してきたものが65対34となっているという のが現状である。   それから、2類のこの傾斜については、昭和61年度に固定されたデータのまま現状 まで来ているということである。 ○ 61年固定の根拠も家計調査か。 ● そうである。 ○ モデル世帯が3人世帯ということであるが、4ページを見ると、これまで5人、4 人、3人と変更されてきているが、必ずしもその類型の世帯が最も多いというわけで はない。現在モデルに置いている33歳と29歳の夫婦で子どもが4歳というような家 庭が、現実にどれだけ保護受給世帯で存在するのか、ごく少数ではないかと推察され るが、例えばモデル年金などもあるけれども、どのような意味での基軸であり、モデ ルなのかということを説明いただきたい。 ● 御指摘のとおり、3人世帯は全体の世帯の中でも5%程度しかないというのが実情 であって、現状の標準3人世帯というのが一般世帯の平均人員を見つつ設定されてい るので、ここもまた前回の専門委員会においても、単身世帯基軸の設定が適切ではな いかという御指摘もいただいている。むしろ、一般世帯の平均人員ではなくて、被保 護世帯の中心を基軸として見ていく方がよいのではないかということである。 ○ 確認であるが、今の4ページの構成割合、これは世帯構成割合、人員だと、例えば 2人世帯、3人世帯というのはウェートが2人、3人と乗ってくるわけだが、これは 世帯の構成比であるか。 ● 世帯の単位で見た構成比である。 ○ そうすると、人数で見るともう少しウェートが変わって、1人世帯のウェートが下 がり、人員の多い世帯のウェートが高まる、パーセントが高まるということか。 ● そういう御理解で結構である。 ● 今回御議論いただいているのは、前回の生活保護制度の在り方に関する専門委員会 の報告書に基づいて、生活扶助基準と低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られ ているか否か、定期的に見極めるために全国消費実態調査等を基に、5年に一度の頻 度で見直してほしいという提言をいただいて、今回初めてその見直しを行っていると いうのが第1点。   第2点は、こういう提言を前回いただいたわけであるが、これまで生活保護基準の 設定は一定のモデルを置いてやってきたが、モデルの適切性について必ずしもデータ に基づいて検証されてきたものではない。昭和60年代当初の調査に基づいたものを固 定して、毎年の保護基準の改定は、基本的には一般世帯の消費の伸びに合わせて伸ば している。モデルの設定自体が、もともとある時点で固定されたものを伸ばしてきて いるということ、伸ばし方も毎年の予算設定では詳細なデータがないことから、一般 世帯の消費水準の伸びで基本的に伸ばしてきた。伸びが下がったときに下げなかった というデフレ時期での政策的配慮はあるが、そういう査証をしてきた。   そういった経過で今日に至っているので、前回の専門委員会でも、3人世帯につい て見れば均衡しているが、そのモデルの中身については議論が及ばずに、人数や年齢 の話、あるいは単身世帯が7割超えていて、人数的にも半分程度が単身世帯であると いうことをどう考えるかということが宿題として残されていた。それで、全国消費実 態調査のデータの収集もそういう視点で整理してお出ししたのであるが、今回こうい う整理が初めてであり、むしろデータで見ると、まさに今のモデルなり、これまで固 定してきたものはかなり実態と乖離している。トータルで仮に合致したとしても、積 み上げは、たまたま一致しているというだけで、あまり正確でないということは、御 理解いただけたのではないかと思う。こういうデータを見ていただいて、これからど う考えるべきなのかということを御検討いただければと思う。   したがって、今までのモデルにこだわる気持ちもないし、データを踏まえた上でど うすべきかということは、これから考えていかなければならない問題だと思う。 ○ それでは、御質問がこれでよろしければ、御議論いただきたい。 ○ モデルについて、基軸をモデルと言うかどうかは議論としてあると思うが、今まで モデルの見直しが2回行われたわけだが、そのモデルを見直す際の哲学はどういうも のだったのか。例えば、5人世帯と言っても、当時の5人世帯は、60代の男性と30 代の女性と小さい子どもがいる世帯であるとか、4人世帯と3人世帯も構成している 年齢が違っている。こういうモデルの見直しというのはどういう哲学に基づいて行わ れたのかということ、仮に単身をモデルとする場合は、同じ哲学に基づくと、何歳が 基準になってくるのか。 ● 標準5人世帯というのは、64歳の男性、35歳の女性、そしてお子さん3人というの は9歳の男の子、5歳の女の子、1歳の男の子である。64歳男性と35歳女性という のは夫婦ではなくて、35歳女性は、いわゆる戦争未亡人だったのではないかと考えて いる。まさに戦後の時代状況を反映しているということだと思う。   その後の標準4人世帯というのは、35歳の男性、30歳の女性、9歳の男の子、4歳 の女の子であり、標準3人世帯は先ほど申し上げたような年齢ということである。例 えば標準3人世帯を取ってみると、お子さんが4歳だとすると、33歳の男性が結婚し てすぐお子さんができたとすれば、恐らく20代後半で結婚したことになる。女性の場 合も20歳代前半から25歳ぐらいに結婚するといったように、それぞれの時代の状況 を反映しているのではないかと考えられる。 ○ その当時の代表的な世帯という意味合いなのか、生活保護をもらっている代表的な 世帯という意味合いなのか。そこを正確に確認させていただきたい。 ● 今確認が取れないが、世帯人数は、一般世帯の世帯人数に関連が深いのではないか と思う。 ○ 国民にとってわかりやすいという意味からすれば、例えば将来自分が生活保護を受 給するときにどれぐらいもらえるのかと、いわば一種のPRのような形でモデルを設 定するのは、とても意味があることだと思うが、作業する上で最も妥当な世帯は何か ということは、別途考慮していくこともあり得るのではないか。結果として、国民に 対してモデルはきちんと提示しなくてはいけないと思うが、作業のプロセスにおいて はいろんな手法を取ってもいいのではないか。   先ほど事務局から提示された1類、2類の区分は必要ないのではないかということ であるが、少し資料を見ながら考えていくと、まず1ページ目に参考として1類費と 2類費の分類があるが、これを見ると、一般常識、わかりやすさからすると疑問に思 う部分がある。例えば、電話通信料が個人単位ではなくて世帯単位であるとか、交際 費が世帯単位であるとか。   それから、先ほどの逓減率の問題、あるいは5人以上世帯についての加算額の在り 方など、現状に必ずしもこだわることはないと考えた場合に、やはりその辺は問題が あるのではないか。   更に、2ページ目の65.9%という1類費の全体に占めるウェートがあまりに高過ぎ るのではないかということが、いろいろな意味での無理にもなっているような気がす る。これらを踏まえると、少なくとも現在の状況の中では、1類、2類という区分け を少し検討してもいいのではないか。むしろ区分けがあることによる問題点が大き過 ぎるのではないか。先ほどの65%という数字をフィフティ・フィフティにウェートを 更にまた今後何十年かけてやったとしても、それほど意味が本当にあるのかどうか。 ○ 4ページにある標準世帯の推移については、標準5人世帯というのは、明らかに生 活保護のモデルを考えていた。標準4人世帯、標準3人世帯というのは、一般勤労者 世帯の典型的なモデルとして設定しているということで、この標準5人世帯と標準4 人世帯とは明らかに考え方の転換があった。したがって、このモデルを、一般勤労者 世帯の典型的な世帯を1つのモデルとして標準世帯とするのか、単身者のような生活 保護の最も代表性のある世帯を1つのモデルとして考えていくのか、これは大きな開 きがあるので、そこの考え方を少し整理する必要があるのではないか。 ○ 1ページの1類、2類の分類の話であるが、これも考え方ということで理解してい ただきたいが、生活保護制度の目的というのは、最低生活の保障と自立の助長にある。 今回は、この生活扶助基準という最も代表的な扶助の基準の算定方式をどうするかと いう議論がされているが、自立の助長との関連もある。   これは何故かというと、8つの扶助の中に生業扶助というのがあるが、生活保護の 在り方専門委員会の中で、自立を就労自立と日常生活自立と社会生活自立の3つに分 けて考えている。この就労自立に対応するものとしては、主として生業扶助の中で、 その自立を促進する技能習得費等も含めて新たに対応している。つまり、需要に扶助 が対応している。しかしながら、日常生活自立と社会生活自立に対しては、新たに扶 助対応していない。そのため、これは、生活扶助の中で対応するという考え方になる。   そうすると、1ページのところで見ていただくと、被服費であるとか履物であると か、交通・通信、教養・娯楽、その他の消費支出というのが対応する項目になる。し かしながら、これらについては消費の実態に合わせて均衡を図るという考え方からす ると、齟齬が生じる。生活保護の在り方専門委員会の中で、大きくは2つ、1つは基 準の見直しと、もう一つは自立の考え方の再構成があったかと思う。これは政策的な 話になるが、現行の生活扶助の中で、社会参加あるいは日常生活にかかわるような費 目を入れていくのか、あるいは別の新たな扶助を考えていくのかという検討も必要に なってくると思う。   就労自立に対する生活需要だけ対応しているということは、他の自立は少しウェー トが低いのか、あるいは特に需要がないのかということになる。これは自立そのもの の持っている意味合いが変わってくる。特に生活保護の受給者の5割を高齢者が占め ている。これは、社会生活自立と日常生活自立が非常にかかわるところで、そこの費 目が特に当てられていないということが果たしていいのかどうか、という議論になっ てくると思う。その点について、考えだけでも聞かせていただきたい。 ● 生活保護の2つの柱のうち、1つが自立の助長促進であるが、自立というのは、就 労促進だけではなく、日常生活、あるいは社会生活の自立というものもあり、現在も それぞれ取り組んでいるところである。   そういった点を踏まえた上で、生活保護、生活扶助の基準に立ち返った場合に、今 の御指摘は非常に貴重な点を含んでいると思うが、今回の分析から実際考えるに当た って、一般の方の場合は、例えばどういった費目で賄われているのかと。つまり、ど のような具体的な需要があるのかということが生活保護の場合重要であるので、そう いった点で、このデータを見てみる必要があるのかもしれないというのが、とりあえ ずの問題意識である。   その点から言うと、現在、生活扶助基準相当指数の中には、例えば交際費であると か、あるいは教養娯楽といった社会との接点を持つに当たっての費用も入っており、 今回のデータでもお示ししているところであるが、その辺りについてどう考えていく べきか。 ● 生業扶助の件については、実は生業扶助費というのがあり、これは自立支援の関係 で次回資料をお出ししたいと思うが、150万人近い被保護者の中で、平成16年までは 年間利用者が1,000人、あるいは1,000人弱といような状況であった。   しかしながら、平成17年には2万9,000人となっている。これは、就学扶助、高等 学校等就学費を認めることになり、それで2万9,000人に増えたということである。 17年から生活保護でも自立支援プログラムという枠組みをつくって、これは保護費以 外に一般財源も用意して、ハローワークと連携して、ハローワークで生活扶助を受け ている方の就労支援などや様々な取組をやっている。   まず、その全体像を次回御紹介して、2本の柱の1つである自立支援の部分につい て御説明いたしたい。 ○ 生活保護の目的の自立助長との兼ね合いで、この保護基準の内容に自立助長をどう 反映させるのかということは、重要な問題である。今後の議論になると思うが、一般 消費支出との関連で相対的なとらえ方であるということかもしれないが、場合によっ ては相対的貧困か絶対貧困かという議論にもつながるテーマではないかと思っている。   それとは別に、生活保護法上、世帯単位の原則というものが保護実施上の1つの原 則となっているが、世帯から考えていくか、その世帯を構成する個人から考えていく かで、何か違ってくるような気がしている。その世帯も、複数の構成員からなる世帯 をイメージして、そこから生活扶助を組み立てていくとなると、やはり第1類的なも のと第2類的なもの、その中でも、例えば鉄道には一人ひとり乗るけれども、電話は みんなで共有であるとか、新聞はみんなで見るとか、そういった発想になりがちなの ではないか。モデル世帯とは言わないが、複数人員からなる世帯を念頭に置いて、世 帯単位で生活扶助基準を組み立てるという発想がやはりあるのではないか。それが反 映されているのが1類、2類ということかと思うが、常識的に考えても1人分の御飯 をつくるのと2人分をつくるのでは、2倍かかるわけではない。どちらかというと個 人一人ひとりを基礎に置いて、場合によって逓減していく費目もあるだろうし、個人 をベースにして組み立てた方が今の時代には合うのではないか。社会保障全体が個人 単位化しているところと直ちに結び付けようとは思わないが、基本的にはモデル世帯 的な発想から離れた方がいいのではないか。   それとの関係で1点、非常に細かい話で恐縮であるが、例えば8条の2項で、「前項 の基準は要保護者の年齢別、世帯別、世帯構成別、所在地域別、その他保護の種類に 応じて必要な事項を考慮した云々」となっているが、具体的にこの1類、2類という 区分けが、例えばこの世帯構成別というこの文言から反映されたものという理解だっ たのか、つまり、1類、2類的な区分けが生活保護法の8条2項を直接反映させたも のであるのか、その辺が分かれば聞きたい。 ● 当時の議論を確認させていただいて、お出しできるものがあれば次回にでもお出し したい。 ○ 今日の論点として、1類、2類の区分についての議論がある。このスタートとして は、6ページの現行の基準額と相当支出額のギャップが多人数世帯で起きているとい う事実があり、これを解消するならば、この1類、2類の区分をなくして、相当額に なるように調整するという方法もあれば、現行のフレームワークの中で、先ほどの1 類、2類のバランスを現状に合わせて変えてみて、その結果、相当額に接近できるの かどうなのか、という2つの接近方法があると思う。   1類、2類を区分するかしないかということについては、あまりこだわってはいな いが、この1類、2類の区分を考えた背景というか、理由というか。恐らく、最初に 1類がカロリー計算などから出てきてやりやすかった。しかし、間接コストが統計的 にはなかなかこれだというものが出てこなかったので、そこから推計したもので2類 というものが便宜上出てきたという、当時の統計的なものやデータ的なものの制約か ら1類、2類という区分が出てきたということであれば、今、その統計の精度が高ま った中で、見直しをしてもいいとは思う。   しかし、1類と2類の構成というのは、絶対貧困をめぐる思想的なものが前提とし てあるということであれば、統計からその組み合わせを動かすのは必ずしもいいとは 言えないと思うので、1類、2類を一足飛びに、規模の経済が共に似たような動き方 をしているから統合していいというのか、それとも1類、2類というのは別の哲学的 な政策的な意味があるので、残しつつ、しかし現状の1類、2類バランスを当てはめ て、実際の生活と接近できるかということを確認してみるのか、2つぐらい考え方が あるというふうに思っている。 ● 1類費、2類費という区分は、当初からあったようである。次回確認した上でお答 えしたいと思うが、やはり最初のころのマーケットバスケットであるとか、あるいは エンゲル方式といったものにも関係している可能性があり、少し我々の方でも勉強し てみたい。 ○ 今日の議論で基準体系についての議論は、水準の議論をするのとは違って、要は保 護を受けている人の間において、有利な人、不利な人というのが出てきていないかと いう問題だと思う。それを例えば年齢基準とか、あるいは世帯人員基準というもので 見たときに、どうも世帯人数基準でいうと、大人数の世帯の方が相対的に有利になっ ていて、逆に人数の少ないところが不利になっているのではないかという問題提起が あったのだと思う。   例えば6ページのグラフでは、実際の第1類費と、第1類比相当支出、消費実態と いったところから見ると、これは第1類費相当支出の方が低い水準にある。ところが、 第2類費では逆転している。個別に見るとかなり差があるということだが、それを足 し合わせた生活扶助の相当支出計と生活扶助基準額計、これを見ると、その差が小さ い。つまり、それぞれ費目ごとに見るとバランスが崩れているけれど、1類と2類を 足し合わせた結果としてはバランスがうまくとれていたということで、これを1類、 2類ごとにバランスを取っていく必要があるのかどうかということを今日議論してい るということになると思う。   その一方で、年齢についてどうかというところが気になるところである。今のグラ フは人数で、世帯人員で書いてあるのでこうなっているが、年齢で見てもやはりこう いったことは起こっているということなのか。特定の年齢層が、例えば高齢層の方が 有利になっているとか不利になっているとか、そういうことが一般世帯と比較して起 こっているのか。 ● 資料の7ページの話かと思うが、ここではあくまでも傾きということであって、た またま60〜69歳を1に置いて、他の年齢を見ているということで、こういった数字に なっているという点はまず御留意いただきたい。そういった点から全体としての傾き がどうか言うと、この70歳以上という点を見ると、60代と比べると70歳以上の方が 基準の方はやや高めに出ているということになる。   あと、60未満のところがどうかという点からいうと、今度、基準の方が少し低めに 出ているということで、あくまでもこれは傾きであるので、水準のことは切り離して 見るべきだと思うが、そういった点がここから出てくる。 ○ 例えば世帯人員のどこの世帯、例えば現在は3人世帯が基準だということであるが、 要は何を100にするかという意味での基準であれば、どこに置いても同じことである。 3人世帯を100として、相対的に1人世帯、2人世帯はどうなっているかと見ても、 逆に今度は1人世帯を100にして見ても、相対的なものというのは変わらないもので あるので、議論には影響はないだろう。   昔のコンピュータも発達していない時代に計算尺でやるということであれば、これ は何を基準に置いて、それからベースでどう離れたらということでやっていく。   ところが、これだけコンピュータが発達している時代であれば、例えば年齢と人数 をクロスで取ってもいい。別に1類、2類どちらもクロスでというような考え方もあ るわけで、今までの発想は1類、2類、これは今の議論としては区別する必要がある かどうかということだが、1類は年齢を基準として、人数を掛けようと。片方は人数 を基準にしようと。そういうことだったわけだが、もはや全部に目を配るなら、年齢 掛ける世帯人員というクロス項で見ていこう、1類も2類も同様であるということで あれば、もうそれで話は終わることではないかと思うが、どうか。 ● 非常に鋭い御指摘だと思うが、今回と前回とを分けて考えると、一応前回の資料は、 今の生活保護の水準が直近の全消のデータと比べてどうなのかというデータをお示し したが、これは今の1類、2類を前提にしている。今回の資料は、どういう体系が考 えられるのかということで、例えば単身世帯からスタートした場合に、どういう設定 の仕方があるのかということでお出ししているので、作業としては、こういった単身 世帯から出発した姿が妥当な姿になるのかどうかというところまで最終的にはたどり 着いて、そして考えてみるということになるのではないかと思っている。 ○ 話としては単身世帯からスタートしようと、3人世帯からスタートしようと、その 比率を見るということであれば、同じである。3人と2人、1人、その差をどうつけ るかという話で、1人からスタートしても、結論としては、相対的な位置関係という のは変わらない。水準を議論するときにはその議論が出てくると思うが、どうか。 ● こういう言い方は僣越だが、今日の議論は、体系論であるということと、今の議論 にあったように、今までの1類と2類の比率とデータとは齟齬があるとか、6ページ のグラフに出ているように、足し合わせるとそれほど差はないけれども、やはり今後 の世帯人数別で見ると多人数の方がやや有利になっているとか、そういうことの検証 をしていただいたということと、それから、標準とは何かということ。国民の皆様に 御説明するときに、この組み合わせの家族であれば今の保護基準でどれだけ支給され るという説明標準として考えるのか、あるいは議論のいわば物差しとして、基準点と して考えるのかと、考え方によって違いが出てくると思うので、1回目の議論と今回 の議論とを重ね合わせて一度整理してみる必要がある。したがって、3回目には、そ の点も含め、今日御指摘のあった資料についても出せるものについては、お出しした い。 ○ 今の6ページ目の資料だが、1つの方向として、非常に乖離のある部分と、そうで ない部分があるが、我々がこれから行う検証は、要するに、生活扶助相当支出計とい うこの黒丸に近づけるということで相対性を追及しようとするのか、それとも1類に おいてもこれだけ差があるので、1類も、2類もここに近づけるということをやるの か、それで検討の中身や作業の内容その他が随分変わってくると思う。そこをどうす るのか、そのためにはいろいろと作業をまずやっていただいた上で、検討するという ような手法もあると思うが。 ○ 基軸というのがどういう意味合いが出てくるのか。単身世帯、先ほども年齢の話に 多少触れたが、例えば高齢単身世帯を基軸にして考えていいのかどうなのか。生活保 護の水準というのは、ある種ポバティラインとして、ほかの社会保障政策全体の水準 にも影響を与えるので、単身と一概に言っても、生活保護世帯に高齢者が多いから高 齢者の方に寄った形で基軸を置いてしまっていいのか。   それから、ポバティラインとしての保護の水準の話と他の制度の低所得者ラインと 一緒にしていいかどうか、少し考慮しておかなければいけない点があるだろうと思う。 ○ 第1回の検討会から相対的貧困と絶対的貧困について言っているが、この消費水準 で見ていくと、貧困層、とりわけ貧困高齢者というのは、地域の中で社会的に孤立し ている像が見えてくる。それは何が制約になっているかというと、やはり経済的な支 出が十分達成できない。この問題については、この生活扶助基準の中で、教養娯楽費、 通信費や交通費などが対応してくる。相対的に考えることは大事だが、1つは先ほど 標準世帯あるいは一般の標準の高齢者とどれだけ近づけるような生活扶助の基準の設 定にするかということも大事なことであると思う。先ほどの体系論の中では、年齢的 な基準をどうするのかということにもかかわってくると思う。   生活保護の基準というのは、生活保護制度だけではなく、社会保障の関連制度ある いは税制にも関連するので、この基準をポバティラインとイコールであるという考え 方もあるが、例えば最賃であるとか税制の課税最低限と、その見合いをどう考えるか という観点からも非常に重要なことである。   それから、かつては、中央社会福祉審議会の中に生活保護の専門分科会があって、 生活保護の基準や運用、体制などを議論する場があったが、社会保障審議会になり、 社会保障の根幹となる生活保護の議論の場が常設されていない。これは、社会保険な どであれば、保険数理が基本であるということで、委員会が常設されている。保険数 理は社会保険制度を考える上で非常に大事なことである。生活保護の基準というのも、 今回こういう議論がされることは非常に嬉しいことであるが、恒常的に議論される場 を設けることが、要するに国民生活を国家が保障するという1つの姿勢を示すことで もあるので、是非、そういう常設の委員会を設けることも考えていただきたい。 ○ 議論の前半部分は基本的に、単に基準とか標準というのはピンポイントで押さえる だけではなくて、それ自身が何をイメージするかという意味があるという御指摘だっ たと思うし、同感である。 (了) 【照会先】 〔生活扶助基準に関する検討会事務局〕   厚生労働省社会・援護局保護課   TEL 03-5253-1111(内線2827)