07/10/29 第28回社会保障審議会医療保険部会平成19年10月29日議事録 社会保障審議会医療保険部会(第28回)議事録 平成19年10月29日(月)                     合同庁舎5号館17階専用第18〜20会議室  磯部部会長代理 それでは部会長がちょっとおくれておられますので、私、部会長代 理の磯部でございますが、会議を開始させていただきます。  それでは、ただいまより第28回「医療保険部会」を開催したいと存じます。委員の皆 様におかれましては本日は御多忙のおり、お集まりいただき御礼を申し上げます。  本日の委員の出欠状況についてでございますが、本日は岩村委員、神田委員、河内山 委員、齊藤委員、西村委員、山本信夫委員、山本文男委員から御欠席の連絡をいただい ております。  続きまして、欠席委員のかわりに出席される方についてお諮りします。神田委員の代 理として愛知県健康福祉部健康担当局長の五十里参考人。それから河内山委員の代理と して市長会社会文教部長の猪塚参考人、山本信夫委員の代理人として日本薬剤師会常務 理事の岩月参考人、齊藤正憲委員の代理人として今井参考人、以上4方の御出席につき 御承認いただければと思いますが、よろしゅうございましょうか。    全員 異議なし。    磯部部会長代理 それでは議事に入りたいと存じます。本日の議題の一つ目として、 「被用者保険における格差の解消について」が挙がっております。これに関しましては 前回御説明いただいたところですが、今回も引き続き議論をしていただきたいと存じま す。それから議題の2つ目としては、「平成20年度診療報酬改定に向けた検討について」 が挙がっております。これに関しましては中医協の「あり方に関する有識者会議報告書」 に基づき、診療報酬の改定に当たっては社会保障審議会医療部会及び医療保険部会にお いて定める診療報酬改定の基本方針に沿って中医協において議論することとされており ます。平成20年度診療報酬改定に向けてこの診療報酬改定の基本方針を定める必要があ ることから、前回に引き続き議論していただきたいと存じます。  それではまず事務局より「被用者保険における格差の解消について」について説明を お願いします。多くの委員にできる限り御発言をいただくために、事務局からの御説明 はいつものように簡潔にお願いします。    深田課長 総務課長でございます。最初の議題の「被用者保険における格差の解消に ついて」ということでございますが、本日は前回と引き続きということになりますので、 前回御議論をいただく時間が十分に取れておりませんので、基本的には前回の資料を参 考として後ろにつけておりますので、それも見ながら御議論いただきたいと思いますが、 幾つか補足しますための資料を用意させていただいております。  最初に資料1-1でございますが、これまで関係団体の皆様からもいろいろ御意見をい ただいているところでございまして、特に財政調整についていろいろなある立場からの 御意見をいただいておりますので、その中から主なものについて事務局として考え方を 整理させていただいております。それに沿って最初に資料1-1について御説明させてい ただきたいと思います。  まず最初に意見でございますが、重立ったところ大きく言って3点ほどかと思ってお りますが、最初は一枚目にございますように、被保険者間の財政調整について唐突な提 案である、あるいは国庫の削減の肩がわり、あるいは負担の転嫁というのが目的ではな いのかということでございます。もう一つは、次のページにありますように、自主・自 立を基本とする保険制度の枠組みを崩すことになるんではないか。もう一つが、最後の 方にありまして、政管健保の経営の効率化を図っていくべき問題ではないのかという、 3つぐらいが大きな点かと思います。  最初の1ページ目でございますが、そもそもの考え方でございますが、被用者保険間 の負担の公平というものについては、従来、昭和30年代からずっと議論があるところで ございまして、これまでの対応の仕方としては政管健保に対する国庫補助、あるいは高 齢者医療について言いますと、財政調整を図るといったようなことで対応してきたとい うものでございますが、近年、前回の資料を見ていただいてわかりますように、被用者 保険間の所得水準などのいわゆる保険者がみずからの努力ではなかなか及ばない格差と いったものが拡大してきておりまして、新たな制度を導入するという機が熟してきてい るのではないかというように我々は考えているところでございます。  それで今回の財政調整は、後で資料1-2で御説明したいと思いますが、18年度改正 の時に政管健保でも財政の都道府県単位化といったようなことを考えて実施することに しておりまして、この延長線でものを考えていきたいというように考えているものでご ざいます。それで、しばしば所得水準などの保険者努力が及ばない要因といったことに ついて、健保組合だけが負担強になるかということでございますが、政管健保だけが、 あるいは健保組合が、どちらかが出して、もらい手に回るということではなくて、そう いう区分ではなく、個々の保険者の状況においてきめ細やかな調整を行っていくという ものでございますので、健保組合の中でも非常に幅広い範囲で保険料率が決まっており ますので、この中でも財政力が脆弱であるものについては支援を受ける側に回るという ことになります。それから政管健保について言いますと、被用者保険のいわゆる最後の セーフティネットの役割といったようなものも果たすことになるわけでございまして、 この安定的な運営を図っていくということが被用者保険全体の利益につながるというこ とではないかと思っているところでございます。  次に2ページ目でございますが、自主・自立を基本とする仕組みを壊すことになるので はないかということでございますが、今回の財政調整につきましては各保険者の自主性 を尊重しながら、保険者努力が及ばない格差について調整していこうということでござ いまして、被用者保険間の助け合いを強化するということを考えているものでございま す。  根っこにある考え方でございますが、健康保険は各企業の福利厚生といったとらえ方 ではなく、強制加入の公的保険制度ということでございますので、同じ給与水準である にもかかわらず所属する保険者によって保険料負担が著しく異なるという状況は、やは り是正が必要というように基本的には考えているものでございます。それで料率につい ては、これまでの制度と比べてより明確に医療費適正化努力が反映されるような仕組み というもので考えていきたいというように考えておりまして、所得水準などの保険者努 力が及ばない要素は調整をし、それ以外の要素は調整しないという形ではっきりさせて いったらどうかというように考えているものでございます。  それで3枚目でございますが、政管健保について申し上げますと、平成20年10月か らは非公務員型の公法人ということに移管されて、民間の経営ということで行われるわ けでございますが、当然その中では効率的な運営ということに転換していくという形に なろうかと思います。ただし、政管健保の保険料の収納率というのは18年度分で見ます と、現年度分につきましては99.5%というようになっておりまして、なかなか収納とい うことだけでも努力というのはなかなか限界があるのではないかということで考えてお ります。それから、今回の目的というのは被用者保険全体についての格差の解消という ことを考えていきたいと思っておりまして、その中で従来からずっと言われてきている ことでございますが、所得水準が低いといった政管健保の支援もその中で行っていくと いう形にしてはどうかというように考えているところでございます。  次に1-2をごらんいただきたいと思いますが、これはイメージ図でございますが、ど んな仕組みで考えていくのかというものをつくっているものでございまして、おめくり いただきまして2枚目でございますが、まず全国健康保険協会におけます県別単位の保 険料率の設定のイメージはどういうものか、というものをイメージしてつくったもので ございます。これは要するにどういうことかということですが、医療費の使い方が、こ の場合には政管健保の中ということでございますので、政管健保の平均的なものと同じ ということであれば年齢構成を調整し、あるいは所得水準を調整していくと。それで政 管全体との平均という形で、その差ということで調整していくと、最後に残りますのは ここに「地域差」と出ていますが、いわゆる医療費の格差、政管健保の場合には地域間 の格差という形になるかと思いますが、こういうものとして残るということでございま して、ここはそれぞれの保険者が努力するべき部分、あるいはできない部分は残ってい きますが、こういう形になっていくのではないかというように考えております。  次のページでございますが、医療費格差というのを具体的に今回の被用者保険全体で 行う場合のイメージをつくってみたものでございます。現在、提案しております財政調 整の仕組みというのは、調整対象となるいわゆる医療費を全国で総計した上に、保険者 ごとの総報酬額によって案分していくという形を基本としております。具体的に申し上 げますと、下の絵の方でございますが、全国平均一人当たりの医療費、これを年齢階級 別というのがありますが、これをA保険者の年齢構成はそれぞれ違ってまいります。当 然でございますが、これで年齢階級別に加入者数と一人当たり医療費を乗じて出した数 字を「平均医療費」というように呼んでおりまして、いわゆる全国平均と同じであれば A保険者の医療費というのはこの平均医療費と同じ数字が出てくるということでござい ます。これと実際の医療費との差が医療費の格差という形で出てくるということでござ いまして、こういうことを行うことによって医療費の格差が明らかになり、医療費適正 化の度合いというものも出てくるということではないかと考えております。  具体的に3枚目をごらんいただきたいと思いますが、考え方の基本ということでござ いますが、我々としては財政調整を導入することによって医療費適正化努力が当然促進 されていくのではないかというように思います。その理由でございますが、今言ったよ うな方式をとることによりまして、では実際の保険料率はどういうように、一人当たり で見ていって、具体的にはその報酬水準による格差や年齢構成による格差が十分に、ど れだけあるのかというのがわからない状態で決まっているということでございまして、 真ん中の四角で囲ってあるところでございますが、一口に保険料率が平均的にX0/00とい っても実情はいろいろでございます。例えば上のケースで言いますと、本当は医療費が 高いのに報酬水準が高いということでX0/00になっているとか、あるいは医療費が低いけ れど報酬が低いためにX0/00、これは高めに出ているというケースだと思いますが、そう いう形で出てくるというケースもございます。一方、年齢構成による部分ということで ございますが、下の方の四角にありますように、見かけの医療費は同じぐらいであって も年齢構成が若いということでX0/00になっているケースもあれば、医療費が同じでも年 齢構成が高いというケースも当然あるわけでございまして、この場合であれば医療費適 正努力はかなり効いた姿になっているということではないかと思っております。  したがいまして、単純に加入者一人当たりの医療の水準、保険料率の水準だけで適正 化努力云々とはなかなかできないというように考えておりまして、ある保険者の医療費 の水準を見る場合には、年齢階級ごとに全国平均と比べてどうかというような姿を見て 議論していくということが必要ではないかというように思っておりまして、個々の保険 者の正しい事実認識のもとで適正化の努力が一層反映されたものとして出てきて努力も 進んでいくという形になるのではないかというように考えているところでございます。  以上でございます。    糠谷部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明や資料に関する質 問も含めまして、御自由に意見交換をしていただければと思います。どなたからでも結 構でございます。では対馬委員、どうぞ。    対馬委員 前回、10秒ほどしか時間をいただけませんでしたので、今回は共同意見書 という形で出しておりますので、2〜3分お時間をいただければと思います。  お手元に9月20日、水田保険局長宛の3団体の共同意見書があると思いますが、これ はたまたま前回の医療保険部会の当日の午後に提出した資料でございます。  それで中身ですが、上から4行目あたりですが、今回の案と言いますのは自主・自立 を基本とする我が国の医療保険制度の枠組みを崩しまして、制度の根幹にかかわる大変 重要な問題であろうというように思います。各健保組合は自主・自立の中で財政的に負 っているわけですが、それはおのおの国保でありますとか、政管でありますと、健保組 合、共済とそういう枠組みの中でやっているということですが、今回は一元化というこ ういうことであります。  それで2つの段落のところは、先ほど御説明がありましたが、唐突ではないかと。こ ういうことであります。この問題につきましては、医療制度改革の中で1年半ぐらい前 でしょうか、小泉首相みずからが、当時ですが、お答えいただきまして、一元化問題と いうのは所得の把握の問題とか事業主負担の問題等々から国民的な議論が必要ではない かと、こういうこともお答えいただいているわけでございます。  それから3段目の段落でありますが、中小を中心とする政管健保の国庫負担の問題で すが、これも先ほどお話がありましたとおり30年代後半から40年代、いわゆる3K赤 字の時代。米、国鉄、健保、健保というのは政管健保ですが、まさに政管健保の財政力 の弱さ、そこに国庫としてお金を投入していってそれでバランスをとっていくんだと、 こういう考え方であります。それを国庫負担を引き上げていって健保組合にということ は格差の是正ではなく、やはりこれは肩がわりそのものであろうというように思います。  それから政管健保の公法人化についてのお話もありましたが、政管健保の公法人化は いろいろな目的があると思いますが、一つは保険者機能を発揮していただきたいという ことが基本だろうと思います。それが今回のような財政調整ということであれば、保険 者機能を発揮する意欲、モラル、インセンティブ、こういうものが湧かないのではない かと思います。私どももまた出す方ですから、同じような問題があると、このように思 います。  それで、下から5行目あたりですが、安易な財政調整による格差是正案ですが、医療 費適正化などへの努力を減退させる、今申し上げましたとおりです。保険者機能という のが、先ほど申し上げましたとおり、今回の医療制度改革の大きな眼目であります。そ こが損なわれるのではないかということです。私どもとしては日経団連合ですが、強く 反対を表明したいということでございます。また後ほど、意見交換の時にも私個人とし ての意見をまた申し上げたいと思いますが、どうぞよろしくお願いします。    糠谷部会長 ほかにいかがでしょうか。逢見委員、それから岩本委員。    逢見委員 今の対馬委員からの共同意見についての説明がございまして、私ども連合 もこの共同意見に名前を連ねておりますので、これを補足する意味で私からも幾つか意 見を申し上げたいと思います。きょうの説明の資料1-1で、国庫削減の肩がわり、また は負担転嫁が目的ではないかということに対する事務局の考え方を説明されましたが、 これは率直に言って答えになっていないのではないのかと思います。被保険者間の格差 の是正、あるいは政管健保が被用者保険の最後の受け皿として安定的な運営が維持され る、そのために全体で支えていく必要がある、このことについては私どもも十分に理解 しております。だからこそ国が公的保険の維持・存続のために国庫補助による支援を行 っていく必要があるというように思います。政管健保というのは強制加入による法的保 険でありますが、しかし本来は組合健保に比べて、あるいは共済に比べて被用者保険の 所得が少ないといった特徴がある。したがって、それを国庫補助で賄ってきた。これは 健康保険法にもこのことがきちんと明記されているわけで、16%、しかしそれが今は 13%になっているわけでありまして、それを今、国庫負担を削減すると、格差が拡大し たからという理由で国庫負担を削減するということは全く理屈が成り立っていないとい うように思います。結局は2,200億のシーリングがあって、そのための手段として考え ているというように思わざるを得ないわけであります。  それで、私は当初この説明を聞いた時には、この被用者保険の財政調整というのは幾 つかの選択肢の一つであるというように聞いたわけですが、きょうの提案では唯一これ しか示されていない。一体ほかの選択肢としてどういうものが検討されて、なぜこれだ けが残ったのかということについて全く説明がないので、これは次回までにどのような 選択肢を考えて、結局これしかないという結論に至ったのは何なのかということについ てはきちんと説明していただきたいと思います。  それから社会保険という枠組みを維持しながら、しかしそこに国庫負担、すなわち税 財源を投入するということの考え方を、今回の説明だとそのことを否定するかのごとき 印象を受けるわけですが、社会保険という枠組みを維持する中で税を投入するというこ とについては、もともとそういう議論はきちんとした理屈があったはずであって、決し て財政に余裕があるからばら撒き的に投入したというものではないはずなんですね。そ のことの議論の経緯をきちんと踏まえなければ、今回、国庫負担を削減してもいいとい うことにはならないと思います。社会保障制度のあり方懇でも、この社会保険という枠 組みを維持しながらそこに税を投入することの意義について一定の結論がなされている はずでありますから、そのことと今回提案していることが食い違いがあるのか、あるい はないとすればなぜなのかということについても、次回で結構ですから、そのことにつ いての説明をしていただきたいと思います。  いずれにしても、現段階でこうした考え方に我々は賛成できないということを申し上 げておきたいと思います。    岩本委員 今回の提案に関しての私の反応は複雑なんですが、複雑と言いますのは、 本来は分けて議論しなければいけない2つの問題が一緒になっているがために、議論が 大変混迷しているというか、不幸な方向に向かっているように感じております。  分けなければいけない問題というのは、国庫負担を減らして、そのかわりに保険料負 担をふやすという問題と、それからもう一つは格差の解消というように前回に動議され ましたが、被用者保険の中での財政状況の差をどう考えるのかという問題です。それで、 この2つが一緒になったために、あたかも今回のシーリングを目的を達するために国庫 負担を減らして、そのつけ回しを健保組合に回すというそういう筋書きで理解されるよ うな形になって、先ほどのような反対意見が出されるような経緯になっているというこ とは、私個人の感想としては非常に不幸なことだというように考えております。  まず、その前者の問題なんですが、これは私はこの場では中立的というか、特に賛否 は申し上げないようにしたいと思いますが、これはシーリングと言いますのは昨年の骨 太2000のところで決まった、これからの財政赤字の解消に向けてやるべきことのさまざ まな手段の中の一つとしてこれが入ってきているということで、医療保険だけではなく 財政全体から考えていかなければいけない問題でありますし、またこれは保険者が払わ なければ別の主体である国が払ってくれるという話ではなくて、国民から見ますと税を 通して負担するのか、それとも保険料で負担するのかというその選択になりまして、国 民が負担することには変わりはない、その手段の選択だという問題について指摘してお きたいというように思います。  それで後者の格差の解消と言われる問題ですが、これは前者の話と切り離して、この 部分だけを真剣に議論して、医療保険がどうあるべきか、ということを考えると。そう いう議論の組み立てでこの場に、厚生労働省さんには御提案いただきたかったというよ うに思います。それが2つの問題が一緒になったがために、非常に不幸な形で誤解をさ れて、ここでボタンのかけ違いが生じますとどんどん議論が迷走していくことになるの ではないかということを恐れております。  それで、こちらの後者の考え方について、もしこれが切り離してこれだけを問われる のであれば、私はこれは改革として非常に意義がある賛成する提案であります。これは 被用者保険の中で、基本的には大企業で働いている労働省、中小企業で働いている労働 者の間、保険料の負担水準の違いというのはどうしても生じてしまうという問題になっ てくるわけでございます。それが政管健保は政管健保で、そして組合健保は組合健保で 別々に制度をしてやっていくというのがこれまでの理屈だったんですが、もうそろそろ、 そのこと自体がいいのか悪いということをしっかり問う必要があるのではないかと思い ます。それで、政管健保の方では地域間、都道府県単位の保険料を導入するということ で、その中でどんぶり勘定にならないように、保険者の努力に帰すべき部分とそうでな い部分をしっかり分けてという形でいろいろ注意深い制度設計をしていますので、これ を適用すれば先ほど対馬委員から御説明があったような形で、保険者の医療費適正化の 努力を減退させるということには必ずしもならないのではないかというように考えてお ります。  むしろ、このことをしっかり考えていかなければいけなくて、要は問題は大企業の人 たちは中小企業に比べて所得が高い、その人たちが集まって独立で医療保険をやること によって、その負担能力があるわけですから、保険料率が低く抑えられるというような 状態を今までもそのまま認めてきたわけですが、これからもそういうことを認めるとい うことでいいのかどうかということをしっかり問いかけて、国民の間で議論すべき問題 ではないかというように思っております。これは最終的には与えられた医療費をどうい うルールで支払うかということになりますので、改革を行いますとだれかの負担が減り、 だれかの負担がふえるという、そういう負担の変更が生じるわけです。負担がふえる方 はもちろん反対ということを言うかもしれませんが、そこはこれは公平なルールという のはどういうものかということを改めて考え直すという視点に立っていただいて、そう いう改革をするならこれだけ負担増になるのは健保組合さんということになるんですが、 そういうところを公平なルールとはどういうものかということを考えるに至って、それ で健保組合さんには最終的には勇気ある御決断をしていただくような形に、きっちりと 議論を進めるべきではないかというように考えております。  そういう観点から言いますと、非常にボタンのかけ違いを招いたような今回の議論の 進め方は、私にとっては非常に不幸なことであるというように思いますので、仕切り直 しが本当にできるのであればしていただいて格差の問題を議論できればよかったかなと いうように思っております。以上です。    今井参考人 日本経団連でございますが、共同意見を一緒に出させていただいており ますので、基本的に対馬委員、逢見委員の御意見と全く同じでものでございます。  今回、財政調整の提案は独立した保険者間のものでございまして、政管健保の中に設 けられる都道府県間の財政調整の仕組みとは趣旨が異なるものと考えております。また、 財政の格差の調整ということでございますが、保険料というのは本来は保険給付に充て るものでございますので、むしろ国庫補助ということで、税金で行うという方が国民の 納得性が高いのではないかというように考える次第でございます。  また今回、資料にございます福利厚生などとは別のものという割り切りということで ございますが、これは事業主にしてみれば簡単にはしにくい面がございますし、また保 険者として責任を負わなくても済む範囲が広がれば、かえって医療費の合理化、節減努 力を鈍らせる可能性があるということもあわせて指摘させていただきたいと存じます。 以上でございます。    鈴木委員 医療現場はこういうことで混乱しているわけでありまして、経緯から申し 上げれば一元化というようなことは医師会として昔から主張していることでありまして、 今回のグランドデザインにおきましても83/1000にすればどういう結果になるかという ことを試算して、既にパブリッシュにしております。しかしながら、反対理由が唐突な 提案で国庫削減の肩がわり、あるいは負担転嫁ということであれば、医療制度改革医師 にとって同様に実はそうなんではないかというように考えます。医療現場はそのために これだけ5年間にわたりましてその制度改正によります削減の結果が3兆円を超えてお りますし、向こう5年続ければ約8兆円の削減効果が出るというような試算をしており ますので、もうそういう意味では行きつくところまで行っても、もうこれ以上のことは できないというところの話なものですから、どうにか国民の健康維持ということでも真 摯な御検討をお願いしたいと思います。    猪塚参考人 全国市長会の担当部長でございます。河内山柳井市長にかわって、きょ うは出席させていただいております。  まず国保の立場から全国市長会ですから申し上げますが、国保というと知事会も市長 会も町村会も、それから国保中央会も、医療保険制度の一本化ということを10年間ずっ と言ってきたわけです。それで実は今回の制度改正が行われる前の2年半前ですが、こ こに私が資料を持っていますが、平成17年4月に「医療制度改革に関する意見書」とい うのを1年間議論してまとめております。その中で、要は医療保険制度の一本化といっ ても、これは一朝一夕に行くものではないから、これは10年先の目標値だとすれば当面 はどうしたらいいかということで、給付と負担の公平化という視点から、今の制度を残 しながら、今の枠組みを残しながら財政調整をしたらいいんじゃないかという提案を2 年半前にしております。これは実は岩本先生にも専門委員として入っていただいて、河 内山柳井市長が委員長だったんですが、1年間で議論しまして、先ほど深田課長から御 説明があったような内容のことを私どもは2年半前にまとめております。  それで、どうやって調整するのかというのは深田課長がおっしゃったとおりで、所得 と年齢、年齢構成と所得の階層で分けるということです。それで先ほどもお話があった とおり、医療費の格差は対象としないと。要するに調整も対象としない。インセンティ ブを働かせるためです。それから、保険料の収納率の差についても調整はしない。調整 するのはあくまでも所得と年齢でもって調整していく。そういう考え方を2年半前に厚 生労働省にも提出させていただいておりますし、全国会議員にも配布しております。マ スコミにも当時取り上げられて、新聞の記事にもなっております。要は、被用者保険の 中で財政調整というのが、我々からすると納得のできないところでございまして、これ を国民健康保険まで広げて初めて国民全体の給付と負担の公平化という理念が図られる んじゃないかというように考えております。  そういう意味で、国の方でこういうようにお考えになったのはそれなりの根拠がある んでしょうけれど、全国市長会としては国保の立場からいってこの考え方には積極的に は賛成はできないということでございます。以上です。    五十里参考人 きょうは神田委員の代理ということでございます。全国知事会も先ほ ど市長会からお話がございましたように、従来から負担と給付の公平化、安定した制度 運営を将来にわたって確保するために、すべての医療保険制度の全国レベルでの一元化、 これをその具体的な道筋を早期に提示していただきたいというように要望してまいりま す。  したがいまして、やはり今回の被用者保険の財政調整のみの改正ということではなく、 やはり国民健康保険を含めた、非常に難しいかもしれませんが、将来の統合の姿をまず 示していただいて、その上で今回の位置づけ、あるいは意義を議論すべきではないかと。 このように考えている次第でございます。以上でございます。    対馬委員 いろいろな意見が出ていますが、今言われている意見は先般の医療制度改 革でもって随分議論して、またここの医療保険部会の中でも相当な時間を、2年ぐらい かけて議論しまして、一元化についても一応両論併記とこういう格好になったんですね。 それで今の医療制度改革というのは、まさに20年4月に高齢者医療制度もできますし、 また特定検診・保健指導もこれからやっていくというこういうタイミングでありまして、 それをまたまだやる前の段階でこういう根本にかかわるような議論をするというのがい ささか私どもにはよく理解できないんですが。  それはそれとして、ちょっと質問を2つほどと、要望を1点したいと思います。質問 は、資料の1ページ目の政管のところですが、政管の収納率が書いてありまして、「99.5」 と書いてあるんですが、これは通常は過年度分を含めて出すのが通常ではないでしょう か。例えば一般の国民年金などでも66.何%というのは、すべて過年度分が含めて入っ ていると思いますし、意図的にここは小さくしているようなきらいがあるんです。仮に 過年度分を入れればどうなるのかというのが一点。  それから2つ目が、すぐその下ですが、「今回の財政調整の究極の目的は」と書いてあ りますが、「被用者保険全体についての格差の解消」と書いてありますね。ということは、 今回は1/2をやろうということでの提案と私どもは受け止めたんですが、そうではな くて究極の目的は1/2ではない、すべてやるんだと、こういうことを意味しているん でしょうか。これが質問の2つ目です。  あと要望は、先ほど来、被用者保険だけでなく国保ということで、私どもは意味が違 いますがやはり国保の問題、特に国保組合についてはこれも2〜3年前に大分議論しま して、資料をお出しいただいて、その後はどういう状況にあるのか。どういう問題意識 かというと、国保組合は165の組合がありまして、約400万弱の被保険者、それに対し て国庫補助が約3千億円出されているわけです。これが本当にどうなのか。それで3千 億円出されていて、今現在、私どもが聞いていますのは3割負担ではない、つまり7割 給付ではない、それより優遇されている国保組合、これが16組合あると。こういうこと も聞いているわけです。そういうことがまさに先決ではないのかと。私どもはそう思い ますが、これは資料要求としてよろしくお願いしたいと思います。    糠谷部会長 では今の質問の部分だけでもすぐにできますか。    松岡課長 はい、政管の収納率でございますが、18年度末、過年度分も含めた数値で 申し上げますと、98.01%でございます。若干、過年度分を入れますと下がりますが、こ ういう状況でございます。    神田課長 国保組合の給付率のお話でありますが、確かに従来7割給付ではなく8割 ですとか9割の給付のところがございましたが、現時点で申し上げますと、7割でない ところが165のうちの2組合ということで、今私どもが確認している限りでは今年度中 に上乗せ給付は廃止する方向で組合会で議決する方針だというように伺っておりますの で、来年の4月までには上乗せ給付として8割という給付をする組合はなくなるという ように承知しております。    深田課長 資料1-1の3枚目の最後のところの、「究極の目的」のところでございま すが、当然、被用者保険全体についての格差の解消というのが大きな目的ということで ございますが、全部やるのか、1/2やるのかという以前の問題として、格差解消を進 めていくというのが目的であるということであります。今回は前回の資料を否定して書 いているわけではございませんので、1/2というのは前回出ておりますので、例えば 1/2であればこうだということで進めていきたいというように思っています。    対馬委員 国保組合についてはぜひ資料を次回で結構ですから、よろしくお願いしま す。    糠谷部会長 それではほかに御意見・御質問はいかがでしょうか。どうぞ。    磯部委員 私も、先ほど岩本先生がおっしゃったこととほぼ全く同じ意見でございま す。客観的な立場で、当事者性を持たずにこの話を聞けば、岩本先生も2つに分けてお られましたが、一つには中身の問題がありますが、もう一つには、今回のこの問題の出 され方というか、手順とか、段取りに関わって、いかにも唐突であるとか、もっと説明 があってしかるべきであろうというような、問題の出され方のプロセスにかかわる話が あると思います。そのようなプロセスの話と、もっと実体的な中身の話とは区別できま すし、ぜひ区別しておかなければならないと思われます。  この後者の方の中身の問題に関しましては、例えばこの資料1-2で、いろいろな絵が 描いてありまして、例えば3枚目で、一口に保険料率X0/00といっても、こういうふうに いろいろな違いがあるのではないかと、そのような違いを無視することは必ずしも合理 的とは言えないのではないかという話は、それ自体としては極めてリーズナブルな指摘 であると思われます。こういうような制度内在的な矛盾はぜひ調整・修正できるように 制度設計する必要があると思いますし、その方向性は正しいのではないかと思います。 もっとも専門家の方からすると、このようなプロセスが不十分という問題だけではなく て、中身の問題の指摘としても何か根本的におかしいところがあるのだということがご ざいますれば、これはぜひ教えていただいた方がいいのでなはいかという印象を持った 次第です。  それからもう一つの方の段取りが悪い、唐突に過ぎるというお話しだとか、もしも財 政調整のためにこれを実行するという話ならば、国保も含めた展望を示した上でやるべ きであるとか、そういう一連の話も出ているわけですので、これはもう一度、厚労省の 方としてきちんと御説明をいただいたらいいのではないかと思います。ほかの選択肢も あったのではないかというようなことも先ほど出ておりましたので、その辺はフランク に御説明をいただきたいなという感じがします。いろいろ申し上げましたが、要するに、 先ほど岩本先生が言われたことと基本的に同じ印象を持ったということでございます。    対馬委員 済みません、たびたびで申しわけないんですが、今お話がありましたこの 絵を見ますと、これが当然ではないかとこうおっしゃられましたが、これは健保組合、 例えば我々で言いますと1,500ぐらいあるんですが、いろいろな健保組合があるわけで すね。おのおのこれだけじゃなくて、さまざまな、例えば扶養家族なんかが非常に多い ようなところもあるんです。例えばちょうど40代、50代の方々は扶養家族が非常に多 いとか、いろいろなところがあるんですが、いずれにしろ自分の置かれた健保組合の中 で報酬が高かったり、年齢構成の問題、それから扶養家族の問題、あとは地域の医療の 状況、こういう中で全体的にみずからの加入者のために一生懸命に頑張っていくという のが基本なんですね。保険者のために。ただし、高齢者が日本全体で高齢化が進んでい くというようなことの中で、拠出金的なものは一定の範囲であれば負担しようじゃない かというのが基本だろうと思います。それが自分たちの問題ではなく、他所の例えば政 府管掌のために半分出せ、全部出せというのであれば、やはり自分たちが一生懸命に努 力してもそれはむなしいのではないかというのは当然だろうと思うんですね。  それで健保組合が1,500あると言いましたが、そのうちの200数十は総合健保と言い まして中小が集まった健保組合なんですね。それが約1千万人いるんです。その健保組 合が先般、全組合が集まりまして財政調整という今回の提案について断固反対だと、一 致して反対です。中小が多いものですから、財政的にはかなり厳しい組合が多いんです が、そういうところも一致して反対だと。というのは何ゆえかと言いますと、そういう 苦しい中で自前として一生懸命に努力してきたと。それが全部ガラガラポンにされてし まうと。ある意味、これは机上で見ますといいように見えますが、自分たちの現場にお ける努力というのも紙の上で足したり、引いたり、割ったり、掛けたりするようなもの なんですね。ですから、これは決して納得は得られないと思います。    岩本委員 議論の組み立てからの前提が、各保険組合が一生懸命に頑張って独立して やるということを前提としておられるようですが、健保連、日本経団連、連合の三者の 共同意見書の中にも最初の方に、「方針案は自主・自立を基本とする我が国の医療保険制 度の枠組みを崩し、制度の根幹にかかわる重要な問題である」というように書かれてお りますが、それが我が国の医療保険制度の枠組みであれば、それを崩してなぜ悪いんで しょうかという問いかけを私の方からさせていただきたいし、国民もそう思うんではな いでしょうかというように言わせていただきたいと思います。  ですから非常に恵まれた人たちがそれで自分たちを囲って、周りを見ないで医療保険 を運営していくという状態があって、それによって財政状況の格差が生じているという 状況が現に起こっているわけです。それを制度の基本である枠組みであるというように して、これからも維持していくという考え方が国民全体を見た場合にどれだけ支持を得 られるんでしょうかというように考えますと、健保組合の方々が全員反対というように おっしゃっても、それはその中だけの話であるということになるのではないかなと私は 思っています。    逢見委員 今でも財政調整はあるわけですよね。そのこと自体を一切財政調整をする なと言っているわけではないんです。ただ、今回は国庫負担を削減して、そのかわりに 肩がわりしろという中身になっているので、それは国の責任というのを棚上げしてしま うということを問題視しているわけです。最後に究極の姿みたいなことが書かれていて、 結局、国の責任ということを放棄するような考え方がもしこの提案の中にあるとすると、 それは絶対に我々は認められないということであって、自主・自立だから囲ってしまっ て、ほかのことは見ないということを容認しているわけではないんです。    対馬委員 健保組合だけが反対しているとか、お金のことだけかというとそんなこと はないんですね。我々もこれまで随分拠出金も出してきましたし、また今度の医療制度 改革の中では健保組合だけが1,100億円の負担増になるんです。これは厚労省の試算の 中でも出てきていますから、それら全部を含めて私どもとしては全体的に今回の医療制 度改革というのはやっていくべきだというこういう判断をしているわけですから、決し て他所は関係ない、我が方だけ見ればいいと、こういうことではないんですね。ただ、 今回の提案というのはもう余り申し上げませんが、余りに筋が悪いのではないかという のが私どもの率直な感想でもあり、印象でもあり、意見でもあります。    糠谷部会長 これは次回も引き続きということになると思いますが、今までの御意見 で事務局の方、次回までの宿題になったのももちろんあるわけですが、今の時点で何か お答えしておこうということがあれば伺いますが。    深田課長 幾つか御意見をいただいたりしていますので、また次回にまとめて御説明 させていただきたいと思いますが、今回提案しておりますものは被用者保険、それぞれ の保険者というのは入る方は、被保険者の方自体は選べるという立場にはないというこ とでございますので、そういう方ではございませんので、余りにも大きな所得、あるい は総報酬の格差というのは是正していくということは必要だというように考えておりま す。したがいまして、そういう観点での見直しはしていくべきだというように思ってお りますし、また国の責任ということで国庫補助の話が随分出てきておるわけですが、今 回、議論にしておりますテーマは高齢者の部分とか御協力いただいている部分とかを除 いた部分、最後の調整の残っている部分ということでございますので、65歳以下の部分 ということで考えております。それが一つと。  そもそも国の財政自体が非常に厳しいということはよく御理解いただいているかと思 います。既に国債だけでも25兆円出ておりまして、全歳出のうちの3割が借金で賄うと いうのが単年度でございますし、国・地方をあわせれば800兆円を越える借金を持って いるという状況でございますので、したがって私が言うのもあれですが、経済財政諮問 会議においてもやっぱり将来にわたる負担をどうやってしのいでいくかということで、 できるだけの2,200億という削減ということも求めるということになったということで ございますので、従来のような国がお金を出すことで維持していくというやり方ではな かなか維持しきれなくなっている、ということをどうか御理解いただきたいというよう に思っているところでございます。    糠谷部会長 それではこの問題は次回にも議論するわけでございますので、特段今の 時点でさらにということがございませんでしたら次の議題に移りたいと思いますが、よ ろしゅうございますか。それではそういうことで次の議題に移りたいと思います。  次に御議論いただきますのは平成20年度の診療報酬改定に向けた検討についてでご ざいます。では、事務局から説明をお願いします。    原課長 医療課長でございます。診療報酬に関しましては資料2-1、2-2、2-3と、 それから参考資料を準備しております。  まず参考資料でございますが、これは前回「後期高齢者医療のあり方に関する特別部 会」で議論していただきました診療報酬体系の骨子、前回もたたき台の案を出したんで すが、それの最終的なものがまとまったと。10月10日付でまとまっておりまして、そ れにつきまして参考資料としてお示しをしております。この後期高齢者医療の診療報酬 につきましては、この骨子を元に既に中医協で一部議論を始めさせていただいておりま す。  それから資料2-3は、前回の平成18年度の改定に向けての基本方針でございます。 それに対しまして実際にどのような形で診療報酬改定がなされたかについて一緒に書い てございます。囲みで書いてございます。例えば2ページ目をごらんいただきますと、 ここでは患者から見てわかりやすく云々の視点、その中の2つ目の○でございますが、 患者にとってわかりやすい体系とする視点に立って見直しを推進するべきということで、 例えば老人診療報酬点数表を簡素化したということ、それから指導管理料の名称を医学 管理に統一、このような工夫等をしております。そのほかの事項につきましてそれぞれ の項目のところに、枠内に改定した中身を書いておりますので、後ほどまた参照してい ただければと思います。  それでは資料2-1と2-2について説明させていただきます。まず資料2-1でありま すが、これから診療報酬改定の基本方針をつくっていただくわけでありますが、全体の 構成、1ページ目をごらんいただきたいと思います。全体の構成をどうするかにつきま しては、ここの論点1でございますが、平成20年度診療報酬改定の基本方針については、 平成18年度改定時の基本的な医療政策の方向性を踏まえつつ継続性を重視する観点か ら、前回の視点を基礎として整理することとしてはどうか。前回4つの視点が出されて おりまして、それらにつきましてはこのページの下段に1〜4まで述べております。こ のような視点に沿って項目をまとめていきたいと考えております。  それから論点の2でありますが、今回、地域医療の確保・充実のため、特に医師不足 が言われておりまして、そのために産科・小児科を初めとする病院勤務医の現状を踏ま えて20年度診療報酬改定においては、病院勤務医の負担軽減を図ることに特に重点を置 いてはどうかということを大きな項目として挙げております。  2ページ目をごらんいただきたいと思います。ここから各論に沿って、先ほどの視点 に沿って各論事項を書いておるんですが、その前に重点事項として先ほど論点2のとこ ろに書きました勤務医の負担軽減の項目、これについてまとめております。これの論点 に入ります前に資料2-2をごらんいただきたいと思います。前回も参考資料としてさま ざまなデータはお示ししましたが、時間の関係でほとんど説明できませんでした。それ で、今回はさらにそのデータに加えて工夫したデータ等も入れておりますので、少しご らんいただきたいと思います。  資料2-2の1ページでありますが、これは2ページ以降に書かれておりますデータを 大ざっぱにくくったまとめでございます。これはまた後ほど参考にしていただきたいと 思います。  2ページ目でございますが、これは医師数の年次推移ということで、全体として医師 は順調に伸びてきているわけでありますが、病院勤務医と診療所勤務医の比はどうかと いうことでありますが、いずれも近年増加しているのは確かなんでありますが、おおむ ね病院勤務医と診療所勤務医の比率は大きな変化はないんですが、例えば10年から16 年の間は若干病院勤務医の割合が少し減っているかなという感じであります。またこの 増加数の1万人強と9千人という比率は、先ほど言いましたように6割強が勤務医です から、そこの比率から言うと若干、最近は伸びとしては診療所勤務医がふえているとい う分析ができるかと思います。  それから3ページでございますが、これは都道府県別に見た人口10万人対医師数であ りまして、従事医師数で見ますと東京都が最大になっております。総医師数・従事医師 数とも最小なのは人口変化が大きかった埼玉県ということになっております。ただ、東 京、大阪、愛知の10万人対医師数の伸びというのは、全国平均に比べて低うございます ので、必ずしも大都市圏だけに集中しているということはこの表からは言えません。  4ページでございますが、これは各都道府県内の二次医療圏ごとに見た人口10万人当 たりの従事医師数であります。これでごらんになれますように、それぞれの都道府県の 中に相当な格差があるということで、都道府県格差以上に地域間の格差というのがこの 中でもはっきりと読み取れるのではないかと思います。  5ページをごらんいただきたいと思います。診療科別の病院勤務医数で、やや内科と 外科は全体が多いので省いておりますが、ここでは産婦人科の数、▲で描いてあります が、これが減少してきている。全体がふえている中では減少してきている。それから、 ここでは書いてありませんが、外科がやはりこれ以上に減少しているのは事実でござい ます。  それから6ページをごらんいただきたいと思います。施設別の医師の構成割合、先ほ ども申し上げましたが、約60%強が病院の従事者になっております。そのほか、介護老 人保健施設の従事者が既に1%のオーダーになっているということがごらんいただける かと思います。  7ページをごらんいただきたいと思います。病院の中でどのように医師が働いている かということなんですが、この表の一番下のところに「一般病院の医師数」、これで見ま すと14年と17年を比べますと3.4%ふえております。その一方で「新入院患者数」、上 から2段目でありますが、一般病床の新入院患者数が3.5%とふえておりますので、患 者さんの増加と医者の増加はまあまあパラレルであると。ただし、例えばここでは全身 麻酔でありますとか、開頭・人工心肺・悪性腫瘍を扱った手術実施件数などを見ますと、 10%を越える伸びになっております。それから悪性腫瘍手術も15%強伸びている。この ように非常に手厚い医療をしなければいけないようなものがふえているとともに、平均 在院日数が−10.8%ということは、非常に短期間でその患者さんを回転していくと。そ のような状況の中で、病院の医師は非常に従来に比べて疲弊しているのではないかとい うことがございます。  8ページをごらんいただきたいと思います。ここでは昭和50年と平成16年の年齢階 級別の医師数を書いております。右側の平成16年で見ますと、ちょうど50歳代の後半 あたりでガクッと断層がございます。ちょうど50歳代の半ばぐらいというのは、いわゆ る昭和40年代後半から50年代にかけてつくられました新設医大のブームで、ここで一 気に養成数が倍増したわけであります。その方々が今ちょうどこういう年代に達してい るということであります。また、この昭和50年と16年とかなり年代が離れたところの 下に表がございますが、例えば医育機関を除く病院従事者、いわゆる一般病院では医師 数は2.9倍伸びていると。それに対して診療所の医師は1.4倍ということで、病院従事 者は昔に比べれば確かにふえてはいるんですが、その中身が、病院の診療中身が変わっ てきているのではないかということが推察されます。  それから9ページでございますが、女性医師の就業状況ということで、ここは女性医 師だけをやっておりますが、ちょうど35歳ぐらいで約76%の就業率に落ち込みます。 この落ち込み方は一般の女性就業者に比べてはそれほど落ちてはいないんですが、それ でもやはりここで1/4程度が職場から離れている状況がわかります。また近年の女性 の医学部入学者は約30%強で推移しております。  それから10ページでございますが、勤務時間でありますが、ここでは平成18年の調 査から出しております。ここでは病院に勤務する、あるいは診療所に勤務する時間から 休憩時間や自己研修、研究時間は除いた時間で比較しておりますが、おおむね病院勤務 医、病院の常勤医師の勤務医が平均で週48時間に対して、診療所の場合には、これは診 療時間が中心ですが、週40時間を下回っているという状況でございます。  11ページでありますが、ここは病院の勤務時間のうちに何が多いかというと、外来が 1/4、入院が4割等々という時間になっているものでございます。  それから12ページをごらんいただきたいと思います。病床規模別に見た外来・在院患 者の比率です。入院か外来かの比率なんですが、20〜99床のところでは非常に外来数が 多くなっておりますが、それに対してこの100床、200床、400床で切ってみますと、病 床が大規模になるほど逆に外来が結構ふえているということがわかるかと思います。こ れはある意味で言えば、大病院の方に外来患者が集まってくる傾向があるということを あらわしているかと思います。  それから13ページでございますが、病院勤務医の負担の状況ですが、負担感としてこ こでは上のグラフは日本病院会の平成19年の調査、下が平成18年の厚生労働省の研究 費による調査であります。いずれもふえたというものと減ったというものを考えてみま すと、やはりふえている傾向があるということで、そのふえた理由ですが、上のグラフ でいきますと、患者数や診療時間がふえた割に医師がふえていない、あるいは書類を書 く時間がふえた、会議その他がふえたということでありまして、下の方の調査では病院 内の診療外業務、例えば会議、教育指導、あるいは外来患者数が増加している、入院患 者数が増加している。これらの理由が負担感の理由だと言っております。  それから14ページに、さらに病院の場合には夜間当直が必要になりますが、ここでは 5,600人に聞いたうちで、約70%が当直をやっているということであります。また1カ 月平均の回数でいきますと、5回以上という方が17%強おられまして、週1回以上夜間 当直をしているという方もこれだけおられるということであります。  それから15ページでありますが、この勤務医の負担を減らすにはどうしたらよいか。 当然ながら一番多いのは医師をふやすという方法でありますが、そのほかに医師以外の 職員に業務を移すということ、あるいはIT化などを使った組織の効率化を図ってはど うか、これが現場での先生方の意見だということであります。  16ページをごらんいただきたいと思います。平成16年度以降に休止した診療科の状 況でありますが、これは日本病院団体協議会の調査であります。休止した診療科がある という病院が16%ございまして、特に診療科としては産婦人科・小児科がやはり多くな っております。次いで精神科・耳鼻科という順番でございます。  そこで、あとは救急小児等について説明します。救急については、18ページでござい ますが、救急医療の体系図、一番上の段がいわゆる三次救急、2段目が二次救急、下の 段がいわゆる一次救急と言われる部分でありますが、それぞれのところの箇所数を書い てあります。この箇所数については後ほどまた出てまいりますが、近年それほど大きく ふえているわけではございません。  19ページをごらんいただきたいと思います。これは消防庁の方の調査でありますが、 救急医療の現状ということで、平成8年度〜17年度までに約10年間で全搬送人員は1.5 倍を越えております。それだけふえたわけですが、それとともに軽症者の割合は若干伸 びて、それほど変わっていないと。したがって、全体の伸びとともに軽症者もふえてき ているということで、全般の中で軽症者が非常にたくさん来られているのも事実でござ います。あとは搬送時間等につきましては、下のグラフのとおり、大体夜の22時ぐらい までが非常に高い水準でいっていて、夜明け前というのはそれほど多いものではないと いう調査でございます。  20ページでありますが、これは先ほど申し上げました一次救急から三次救急までの施 設でありますが、一番下の救命救急センター、三次に関するところが若干伸びていると いう程度で、あとはほとんど横ばいという状況であります。  それから小児科でありますが、小児科医数と小児人口でありますが、これは小児科医 数は先ほども出ましたが、全体の数としてはふえていると。それから小児1万人当たり で見ますと、小児人口が減りますので、全体としても小児1万人当たりの小児科医数も 増加していると。こういう状況にあると。これは都道府県別に見ても大体そういう傾向 であって、必ずしも数的には小児科医は小児に対して不足しているわけではないという ことであります。  23ページでありますが、ここは勤務時間の適切なものがなかったので、ちょっと指導 課で調べたものを持ってきましたが、小児科医が常勤で複数おられるような病院で見ま すと、やはりどちらかと言うと小児科医の常勤が少ないところになれば、やはり一人当 たりの勤務時間が延びてくるということで、ちょうど小さいところが非常に負担感が強 いのではないかというように感じられました。  それから産婦人科でありますが、25ページでありますが、産婦人科医数は先ほども言 いましたように下がってきておりますが、出生数も少なくなっておりますので、出生あ たりで見ますと横ばい程度になっております。ただし、これにつきましては出生の中身 としてハイリスクの妊娠が非常にふえているということもありまして、中身的には先ほ どの病院全般と同じように、従来に比べて数だけではあらわせないしんどさがあるとい うように考えられます。  26ページでありますが、これは余り勤務状況のいい資料がなかったので、青森県で調 べられた調査を持ってまいりました。15施設の34人のお医者さんから聞いた結果、週 当たりの勤務時間は68時間、これは先ほどの小児科の専門病院等も同じなんですが、月 当たり当直が8回でありますし、さらに病院当直ではなく宅直では月当たり18回、オン コール体制ということで、ほとんど自分の時間が持てないというような状況が産婦人科 では日常のようでございます。  27ページ以降は緊急医師確保対策ということで、私どもの医政局でまとめているもの がございます。政府与党として今年の5月にまとめました28ページの1〜6番までの項 目につきましてそれぞれ新規の予算要求等々に行かせております。詳細については今回 は省かせていただきます。  それで資料2-1に戻っていただきまして、2ページをごらんいただきたいと思います。 重点事項として、地域医療の確保・充実を図り勤務医の負担を軽減するための項目とし て、1番目に産科・小児科への重点評価、先ほども言いましたように、産科・小児科は やはり全般的に医師不足という面もありますし、それから診療に過大な部分もございま す。非常にしんどさがふえているということもございますので、そういうことから産科 についてはハイリスク分娩管理加算について具体的に評価をもっと拡大してはどうか、 あるいは母体搬送が円滑に行われるための方策を検討してはどうか。また小児医療につ いても、必要に応じた手厚い評価を検討する必要があるのではないかというように考え ております。  それから診療所からの支援ということで、病院と診療所の機能分担、相互の連携とい うことから、勤務医の負担軽減を図るための何らかの病院と診療所の機能分担のための 初再診料や入院料等の基本料で何か工夫ができないか、そういうことを検討してはどう か。それから病院につきましても、やはり主として入院機能を担っていくべきであると いうことから、大病院が先ほども言いましたように、外来も非常に多くなっております ので、大病院が入院医療の比重を高めていくような促進策、こういうものの取り組みを 評価してはどうかと。それから医師の非常に負担感があります事務的なもの、これにつ いて事務負担の軽減を、特に病院について考えてはどうかということを挙げております。  3ページ以降、各視点、4つの視点から項目を述べております。視点1が、患者から 見てわかりやすく、患者の生活の質を高める医療を実現する視点ということで、1番目 が明細書の発行であります。平成18年度改定において、保険医療機関に対して医療費の 内容のわかる領収書の発行を義務づけたところでありますが、さらに患者の要請があれ ば医療機関が明細書を発行するということについて考えていってはどうかということ。  それから通院治療の質の確保ということで、患者の生活を重視する視点から言います と、外来で治療が受けられる方が、それに越したことはないということで、通院しなが ら治療を受けることができるように質を確保しつつ、外来医療への移行を図ることを検 討してはどうか。これなどはがんなどの化学療法、あるいは放射線療法についても外来 が一部は可能でございますので、そういうことを検討してはどうかということでありま す。  それから保険薬局の機能強化、これは患者の生活実態や休日夜間、救急外来のための、 診療はできてもそこで処方せんが出てもお薬が買えないという状況では困りますので、 そういう地域単位での薬局の取り決めというものについて評価を検討してはどうかとい うことであります。  視点2でありますが、質の高い医療を効率的に提供するために医療機能の分化・連携 を推進する視点でございます。1番目でございますが、まずは先ほどの重点事項3の再 掲でありますが、病院は主として入院機能を担っていくべきということから、大病院の 入院医療の比重を高めていくための取り組みの評価。それから重点事項2、それとペア になりますが、診療所からの支援という視点。それから3番目でありますが、質の評価 手法の検討ということで、医師の経験年数や有すべき施設といった、いわゆる施設基準 というものでこの質を従来は確保してきておりますが、また提供された医療の結果によ ってその評価をしてはどうかということで、新たな方法を検討してはどうかということ であります。  それから医療ニーズに着目した評価ということで、これは従来の医療従事者の配置や 医療行為について、真の医療ニーズに応じたものであるかどうか、これについて検討し ていってはどうか。これは若干わかりにくいわけでありますが、このあたりは7:1の 入院基本料、そのあたりについての条件づけなどを考えるというような視点でございま す。  5ページをごらんいただきたいと思います。それから在宅医療の推進ということで、 在宅医療については徐々にふえてきておりますが、今後はやはり緩和ケアに関するニー ズがどんどん高まっていくであろうと。そういうことも含めまして、在宅医療支援診療 所を中心に医療関係者の連携を図るようなそういう推進策を考えてはどうか。  それから産科・小児科への重点評価。これは先ほどの重点事項1の再掲でございます。 それから歯科医療の充実ということで、歯科診療に関する指針の見直し等がございます ので、それを踏まえた口腔機能を含めた総合的な管理、あるいは歯や口腔機能を長期的 に維持する技術等についての評価を考えてはどうか。それから重点事項4の再掲であり ますが、院内における事務負担の軽減。これによって医師が必ずしも行うことがないよ うなものについて、軽減することによって医師の本来業務を充実させるということはど うかということであります。  6ページでございますが、視点3、我が国の医療の中で今後重点的に対応していくべ きと思われる領域の評価についてであります。1つ目ががん対策であります。がんにつ いてはがん対策推進基本計画を策定しましたので、これについてさまざまな面での中身 を検討してはどうか。それから脳卒中でありますが、高齢化の進展とともにがんに比し ても脳卒中というのは患者数が急増してまいりますので、この脳卒中の発症後の早期の 治療からリハビリまでの医療提供体制を考えていってはどうかと。これは特定検診等、 あるいは保健指導等で予防事業はそちらの方で重点的にされますが、診療報酬の面では 発症後からリハビリ等に至るところまでをさまざまなところを評価してはどうかという ことであります。  7ページでありますが、自殺対策。平成10年以降、我が国の自殺者は年間3万人を越 える水準が続いているわけでありますが、そのための予防対策としてはそれを防止する ためにはやはり鬱の傾向がある方がふえているということも考えまして、この鬱病等の 適正な治療に結びつけていくということで精神科医療との連携、あるいは自殺企図者が 救急外来に来た際の精神科医療というものを評価してはどうかと。  それから精神科領域でもありますが、子どもの心の対策ということで、子どもの心の 問題についても、今はかなり狭い範囲ですが、もう少し広い範囲で今後は評価できない かということを考えていきたいということであります。それからもう一方で医療安全の 取り組みであります。医療安全につきましては平成19年4月から新たな義務化というも のが制度化されておりますが、さらにそれらを向上させるという意味からもその取り組 みについて検討してはどうかということであります。それから革新的な新薬等について も、イノベーションの評価でありますが、これについて薬価等の評価体系の見直し。ま た、あわせて後発医薬品の使用促進の環境整備を検討してはどうかということでござい ます。  8ページ、視点4でございますが、医療費の配分の中で効率化余地があると思われる 領域の評価のあり方。一つ目が、新しい技術等の評価であります。これはますます日々 進歩していきます医療技術につきまして、それの積極的な導入を図ることは必要であり ますが、相対的に逆に治療効果が低くなった既存の技術等については置きかえを考えて いただく必要があるのではないか。それから、後発医薬品の使用促進。これは先ほどの 新しい革新的な新薬とともに、逆に後発医薬品への置きかえを着実に進む方策を検討し てはどうか。それから市場実勢価格の反映ということで、これは医薬品、医療材料、検 査等のいわゆる「もの代」については適正な評価を進めてはどうか。それから医療ニー ズに着目した評価ということで、これは先ほどの真の医療ニーズに応じたものであるか どうかについて検討してはどうかということであります。  9ページは後期高齢者医療の診療報酬体系の骨子の具体的検討、この中では先ほど申 し上げましたが、既に骨子が出ておりまして、それについて中医協で一部議論が始めら れております。その中の具体的な項目ということで、ここでは抜粋して3項目ほど述べ させていただいております。  ちょっと延びましたが、資料の説明は以上でございます。    糠谷部会長 ありがとうございました。それではただいまの説明や資料に関する御質 問も含めまして、御自由に意見交換をお願いします。それでは鈴木委員、どうぞ。    鈴木委員 初再診料や入院料等の基本料との対応を検討というのは、具体的にはわか りませんが、現在、OECDの、前回も申し上げましたが、22位という段階で、医師の 技術料を下げるということについてはまず反対させていただきます。なおかつ、現在、 医療費のパイというものが全く保証されていない段階でありまして、先ほども議論にご ざいましたシーリングの話も対応が全く立っていない。最終的にはそれも診療報酬で充 てると、ついてはここが必要だというようなこういうことに対しては、先ほど対馬委員 もお話しになられましたが、国庫削減の肩がわりを診療報酬でどれもこれもするという ような話は、全く医療の現場ということを考えてみれば本当にもう乱暴な話でございま すし、不可能な話でございますので、新たに勤務医の悲惨な状況を何とか救済して、国 民に対する医療を再構築するために新たな財源をもってきて勤務医に対してはそれを充 当するという姿勢でお願いしたいと思います。    糠谷部会長 ほかにいかがでございますか。どうぞ。    渡辺委員 確か前のこの会で3回にわたって医療費は引き下げを行ってきたというこ とで、もはやそれは難しいという御説明があったということを踏まえて、鈴木委員がお 話をされたように、医療費については何らかの形で重点評価する時には新たな財源が必 要ではないかと私は考えます。  さて、歯科の立場で歯科医療の充実ということで5ページに記載がございます。質の 高い医療、効率的な医療ということで、ここに記載の学会等で検討しております指針を 踏まえて、記載にあるような総合的な管理、あるいは口腔機能の維持管理というような ものを評価するのは非常に重要な新しい試みだろうというように認識しております。そ れと同時に、歯科医学的に必要な診療を患者さんに行ったことに対しての適切な診療評 価というもの、その検討というものも患者さんへの適切な診療を考えた時に、効率的な 医療も考えて必要だろうというように認識しております。  また視点1のところで、患者さんから見てわかりやすく、またQOLを高めるという 視点がございますが、まさにこれは重要なところだと思いますし、私たちの立場で考え ますと、やはり患者さんにわかりやすい歯科医療を提供する。同時にわかりやすい評価 でなければいけないというように考えております。QOLを高めるというのは、まさに 生きること、生活することの根幹は、食べること、話すことであり、それを支える歯科 医療という私たちの基本的な姿勢からしますと、この機能を高めることは患者さんにと って、特にこれから高齢者がふえていく中で在宅医療の推進もございます。その在宅医 療の中でも積極的にほかの医療関係者との協力を元に推進するというこの考え方は十分 に理解できるし、進めていっていただきたいと思います。  5ページの次に事務負担の軽減、これは病院内のという形で記載されていますが、効 率的な医療ということを考えますと、これは病院とか診療所ということにかかわらず、 やはり事務負担の軽減というのはあらゆる面で我々医療関係者として考えていかなけれ ばいけないと、そういう認識をしておりますので、そのことを申し上げたいと思います。 以上です。    糠谷部会長 はい、ありがとうございました。ほかにいかがですか。    多田委員 診療技術の導入の件ですが、前にもちょっとお話をしたと思いますが、従 来の技術に比べてコスト的にどんなものかということを相当突っ込んで検討していただ く必要があるんじゃないかと。その比較の仕方としては、例えば従来の技術であれば入 院期間が20日間ぐらいは平均かかるというようなものが3日になったということであ れば、そのコストも計算をして、そして1会計当たりというか、そういうものをモデル 的につくってでも比較して保険の支援の負担からいくと相当程度であるというところま で、できるだけコストを下げてくる努力を提供側にしてもらうということが必要ではな いかと思います。いいものだから高くてもいいやということでどんどん入ってくるので は、これは保険財政はとてももたないだろうというように思いますので、その辺の仕組 みを、今も相当考えていただいていると思いますが、しっかりと一つお願いしたいと思 います。    対馬委員 今回の全体的な構成の、前回改定の考え方を基礎としてということはその とおりだろうと思うんですね。また産科・小児科等々の今現在の状況もそうだろうと思 います。それで一つ要望しておきたいのは、視点1の中の「患者から見てわかりやすく」 というところがあるんですが、この中にぜひ診療報酬体系の簡素化の視点を入れていた だければというように思います。今回、後期高齢者の問題等も入ってきますので、恐ら く診療報酬は一段と複雑になってきやしないかという懸念があるものですから、全体的 に簡素化ということを常にもっていて、そのことがまた明細書の発行などと絡んでくる と思うんですね。明細書をもらったけれど診療報酬の体系が全然わからないということ は必ずしもいいことではありませんので、やはりそういう視点でということを織り込ん でいただけばと思います。    古橋委員 資料1-1の2ページでございますが、今朝、報道されておりましたのです が、産科医療に関しまして救急搬送を断ったことがある施設が、周産期センターでも7 割以上あるということで、その大きな理由はNICU整備が十分でなく、受け入れ態勢 の面で、できないという報道内容でした。私もNICUのある小児のセンターに勤めた ことがございますが、まずこれには医療機器整備に大変なお金がかかります。入院児一 人当たりのユニット一式は、家一軒建つに必要なぐらいの医療機器の費用がかかります。 この点からいきますと、産科の救急医療とか、母体搬送に関しては、診療報酬の側面だ けではなく、これはもう医療提供体制の課題と思いますが、NICU整備をどうしてい くかということが非常に重要ではないかと思います。診療報酬領域にはコスト調査分科 会がございますし、先日公表されました病院の医療経営の実態調査の結果などを見ます と、小児の病院が経営で大きな赤字を抱えながらやっている事実も明らかになりました。 診療報酬が決まっていく時に、コスト、原価ができるだけ反映されることがどうしても 必要ではないか、ことは多すぎるかもしれませんが、単なる配分というようなことでは なく、医療提供にあたる原価をきちんと考慮していく必要があるように思います。  もう一つは、この2ページに「外来縮小に向けた取り組みの評価」とございます。医 師が、入院患者、外来患者双方の診療で大変多忙なことは確かなのですが、一方、国民 の大病院の受診志向、受療行動をどう転換できるのかということがプログラムにないと、 こういうように掲げているだけではやっぱり国民の意識は動かないのではないかという 気がいたします。この点での根幹の議論が要るのではないかと思います。    逢見委員 資料2-1の2ページで各論に盛り込むべき事項として、「地域医療の確 保・充実を図り勤務医の負担を軽減する」ということが重点事項として取り上げられて いることについては、基本的に賛成です。資料2-2で示されているような、病院勤務医 の負担というのが非常に重くなっている。このことを軽減するための措置が必要だろう と思います。  そういう点で言うと、一つは産科・小児科医の重点評価ということなんですが、産科 医療については正常分娩が保険適用となっていないと。しかし正常分娩であっても次の 瞬間に異常分娩になる危険性もある。医療現場というのは常にそうした病態の急変に対 応できるような準備をした上で医療を提供しているわけですから、正常分娩が保険適用 となっていないことが逆に、行政や保険者の実態を把握できていないということにもな っているんじゃないかと。そういう意味で正常分娩、あるいはそれに関する健康診査等 についても保険適用とすべきだというように考えております。  それから外来縮小に向けた取り組みということが挙がっています。これも基本的に重 要で、やっぱり病院は入院に重点を置くということが必要だと思いますが、そのために は病院と診療所の機能分担を整理する必要がある。例えば外来の再診料が病院と診療所 で違うといったこととか、基本的に夜間・休日は診療所で診療を受けられないというこ とがあって、どうしても患者さんが病院の方に外来として行ってしまうということがあ るんじゃないかと思います。そういう意味で、診療所が外来を支えるという仕組みを連 携体制をつくっていく必要があるんじゃないかと思います。  それから3ページの視点1のところで、明細書の発行が論点として挙げられています。 これは領収書の発行の義務づけについては、これが施行されたことは評価しております が、やはり大事なことはレセプト並みに詳しい明細書を発行するということが当然だと いうことが前提にあるべきだと思います。ここは今は努力義務になっておりまして、連 合で調査したところでは、現在は努力義務であるということを理由にして、患者が請求 したにもかかわらず明細書の発行が固辞されているというケースがある。あるいは、中 医協の議論の中では有償で提供すべきだという議論もあるように聞いておりますが、患 者は3割負担しているわけでありますから、どのような検査が行われて、どのような治 療がなされて、それに一体幾らかかっているのかというのをきちんと示してもらうとい うことは当然の権利だと思います。そういう意味では、患者が要求すれば、請求すれば 無料で明細書を発行するということがきちんと課せられなければいけないと思っていま す。以上です。    今井参考人 基本方針の策定に当たりましては、その前提として給付と負担のバラン スを考慮する必要があるかと存じております。指摘されておりますような、将来に対し まして適切に対応していくというためにも、その他の分野で適正化すべきところは適正 化していきながら、全体を見回していくということが求められると存じております。今 後の医療保険制度の持続性の確保という視点から、効率的な医療提供が促進されるよう な方向での改定を目指すべきであり、前回の基本方針でも盛り込まれました国民の安心 や制度の持続可能性を確保し、経済・財政とも均衡がとれたものとするという観点は引 き続き堅持していくべきだと考えております。  以上のような観点から申し上げれば、今回の基本方針におきましては例えば在宅医療 の推進でございますとか、後発医薬品の使用促進といった取り組みを促していくような 方向性を示していくことが重要ではないかと考える次第でございます。以上でございま す。    鈴木委員 ちょっとコメントさせていただきたいんですが、まず勤務医の評価という ことに関しては、これは不可欠だと思います。それから病院の赤字というところも事実 だと思います。しかしながら、開業医も皆、前回調査よりも経費率を下げて利益を出し ていますが、その赤字の大きな病院というのは人件費とか、あるいは医薬品等の購入費 の比率というものがパラレルで下がっておりません、上がっているところもございます ので、それで赤字になるというのはやはり構造的なものが考えられるのではないかと考 えます。  それから病院の外来でございますが、今ちょっと試算をしましたら、病院の外来を全 部やれということではないと思いますが、仮にすべて診療所で請け負った場合に、今よ り診療所の数が1.6倍必要になるという計算になります。やはり診療所も医師不足なん です。そういうところを御理解いただきたいと思います。  それから最後の明細書の努力義務の問題ですが、個人負担が3割ということではなく て、本来的にはこういうものが求めに応じて出てくるというのは当然だと思いますが、 開業医の平均年齢が59.4歳なものですから、IT対応というものが非常に困難な先生方 もおられますので、その辺のところで努力規定を「義務」とすると非常に現場は困りま す。レセプトのIT化による請求さえも一定の高齢の先生方にとっては問題で、それが 顕在化しておりますので、ぜひあわせてその点も御理解いただきたいと思います。    五十里参考人 現在の地方の中での最重点課題の一つが、これが御承知のように医師 確保でございまして、各都道府県もできることはいろいろな知恵を出し合いながらやっ ているんですが、やはり診療報酬改定というのは国の制度設計ということでございまし て、国の方にあらゆる機会を通じまして要望させていただいているわけですが、今回の 基本方針、それらの要望の多くが反映されているというように考えております。  それで、産科・小児科、あるいは診療所からの政策医療に対する支援と、そういうよ うなものに対する評価、これはもちろんお願いしたいわけでございますが、とりわけ院 内における事務負担の軽減という点につきまして、確か国の来年度の概算要求でモデル 指標を要求しているということも承知しているわけでございますが、一つこちらの方で は「検討する必要があるのではないか」と書いてありますが、診療報酬における評価を 早期に導入していただきたいということをお願いしたいと思います。以上です。    岩月参考人 薬剤師会の山本の代理であります岩月でございますが、おおむね前回の 18年改定を踏襲するということで、その中で我々薬剤師がどう評価していただけるのか ということでございますが、先ほど2-2の資料でありましたように、病院の入院期間が 短縮された中で医師の手術とかいわゆるタスクがふえているということを考えますと、 医療安全の観点から見ましても病院・診療所に勤務する薬剤師の業務を評価していただ けることをぜひお願いしたいと思いますし、そのことが今、適正に医療費を使うという 観点から言いますと、薬剤師は在宅においても同じようなことでありまして、適正な医 薬品を供給することと安全使用ということを確保するための仕事が在宅も含めて、先ほ どの1-1の資料にもありましたが、緩和ケア、麻薬の使用が多分これからかなり進んで いくだろうと思われますので、そういうことを評価していただけるということをお願い すると同時に、きちんとした体制が維持できるように診療報酬体系をつくっていただく ようお願いしたいと思います。    糠谷部会長 ほかにいかがでございますか。はい、多田委員、どうぞ。    多田委員 一つ伺っておきたいんですが、後期高齢者の診療報酬で、今この議題に触 れてもいいんですか。お許しいただけるなら、ちょっと。  要するに、主治医に情報がどういうように集まって主治医が全体情報をつかめるのか という点ですね。これはほかのお医者さんにかかったら、そのお医者さんから主治医に 通報するというか、情報を提供するという仕組みがないとなかなかうまく集まってこな いんだろうと思うんですが。それをまた情報提供料プラスにしてしまうのか、どういう 仕組みになりそうなのか、もし既に決まっていれば教えていただきたいと思います。    糠谷部会長 事務局はいかがですか。    原課長 それについては中医協で具体的な議論をしていただくことになると思います が、普通の場合には主治医から専門の、ほかの医療機関に紹介状を書きますと、普通は 返事が返ってきますので、それで情報は確認できる。それを診療報酬で評価していくの かどうか、そこのあたりについては中医協でも議論していただく。それをより積極的に 確実に推進してもらうためにやはり評価を幾分つけるのかとか、そのあたりは中医協で 議論していただきたいと思います。    糠谷部会長 ほかに御意見・御質問はいかがでしょうか。    古橋委員 5ページの在宅医療でございますが、特に後期高齢者の医療制度ではこの ことも大きなテーマになっておりますが、後期高齢者ばかりではなく、がんの方、ある いは小児などでも在宅医療が徐々に開かれてきております。その時に財政調整とか、い わゆる財源の理由から在宅が進むんだというようなことでは、国民の納得という点から はやっぱり抵抗感があろうかと思います。医療現場から見ておりますと、皆さんが全部 在宅に行けるわけではありませんが、さまざまな支援に基づいて在宅が進んだ方の中に は、この選択に大変納得をなさり、看取りというようなところでも、まだまだ数は少な いんですが、非常に納得度が高い例もございます。在宅医療が推進することは、日本の これからの医療では重要だと思いますので、そういう点では国民に届く情報、在宅医療 でここまでできる、こういう風に在宅医療が組み立っていけるんだという情報発信をあ わせて、厚労省からも大いにわかりやすいそういう情報発信がなされることが大変重要 で、診療報酬ということのほかに在宅医療に関して、このことに非常に力点を置くこと が大事ではないかと思っております。  また、在宅医療のリーダーはやはり医師ですが、これこそチームでやっていくもので すから、医師から裁量をゆだねていただき、薬剤師、看護師、リハスタッフ、栄養士等々 の業務の再編というようなこともあわせて行われることが大変重要と思っております。    糠谷部会長 ありがとうございました。ほかにございますか。次回が取りまとめとい うことになりますので、御意見がございましたらできるだけきょうのうちに言っておい ていただいた方がと思いますので。大体よろしゅうございますか。きょうはちょっと遅 い時間に始めましたので、あるいは若干時間はまだ余っておりますが、特段ございませ んでしたら。事務局の方で何か今までの御意見で御説明しておいた方がいいというのは ありますか。    岩渕課長 済みません、先ほど逢見委員から出産の保険適用の話がございましたが、 ちょっと今の仕組みだけ御説明申し上げたいと思いますが。  健康保険法上、その出産を保険給付の対象外にしているわけではございませんで、健 康保険法の第1条で、目的の中で「この法律は労働者の業務以外の事由による疾病、負 傷、もしくは死亡または出産等々、に関して保険給付を行い」と書いてございまして、 疾病や負傷とは別に出産というのは保険給付の対象にはしているということでございま す。その給付としまして具体的には、一つは被保険者が出産した時には出産育児一時金 を支給するということで、今は35万円でございますが、この出産育児一時金は正常分娩 も異常分娩も両方が適用の対象になるということでございますし、それから所得保障の 意味で出産手当金という制度もあるということでございます。  それで委員がおっしゃっているのは、診療報酬の対象にならないという意味だと思い ます。それは、そもそもこの法律の立て方が疾病・負傷ということで立てているもので すから、疾病・負傷以外についてこういう診療報酬の対象にするということは、例えば 検診でありますとか、その他の問題の関連もございまして、今は対象になっていないと いうことでございます。    糠谷部会長 それでは大体よろしゅうございますか。では、若干時間がまだございま すが、本日のところはこの程度とさせていただきたいと思います。平成20年度の診療報 酬改定に向けた検討については、これまで2回にわたり御議論をいただいたところでご ざいます。本部会における今までの議論、及び医療部会における議論を踏まえまして、 次回に向けて事務局で具体的な基本方針の案を作成していただき、取りまとめに向けた 議論をしてまいりたいと、こういうように思っております。  それでは、本日のところはこれで終わりにさせていただきたいと思います。今後の開 催時期でございますが、まだ未定でございますが、開催が決まり次第、事務局より御連 絡をすることにしたいと思います。本日は御多忙のおり、遅くまでありがとうございま した。ではこれで終わりにします。                                  (終了)       (照会先)                          保険局総務課企画調査係                          TEL.03(5253)1111                                (内線5219)