07/10/26 平成19年度第5回雇用政策研究会議事録 平成19年度第5回雇用政策研究会                     日時 平成19年10月26日(金)                        10:00〜                     場所 厚生労働省専用第21会議室17階 ○樋口座長 ただいまから雇用政策研究会を開会いたします。本日の研究会におきまし ては、今後の雇用政策の方向として、個別論点についてご議論いただくことになってい ます。本日は、産業・雇用のあり方、地域の雇用創出、高齢者・女性・障害者の働き方 のテーマについてご議論いただきたいと考えております。  本日は、議論のテーマも多いことから、まず事務局から、お手元の資料のご議論いた だきたい論点、それに関連した資料No.2〜No.4について、まず説明をお願いし、そのあと 個別論点について、皆さんでご議論いただきたいと考えておりますので、よろしくお願 いいたします。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 私から配付資料No.1〜No.4についてご説明いたします。資料No. 1に今日ご議論いただきたいと思っている論点を用意してあります。大きく分けて5つあ り、1点目は「人口減少下での産業・雇用のあり方」として、中小企業の話、あるいは 介護分野と今後ニーズが増大する分野への対応、やや産業政策的な部分もあるかもしれ ませんが、24時間営業や宅配便の時間指定配達など、消費者サービスのあり方について もご議論いただきたいと思っております。  まず1番に関連する資料No.2です。1頁の「産業構造の変化」は、左側に産業別のGDPの 比率を見たもの、右側にGDPの分類と併せた就業者数の推移です。ご存じのとおり、サ ービス業がGDPに占める割合は製造業に続いて高く、就業者数でも年々増加しています。 製造業は、現在においてもサービス業よりはGDPのウェイトは高いのですが、就業者は 減少しています。生産性の上昇などがあると思われます。  2頁は、国勢調査を使って、就業者数の増加が平成17年と平成12年を比べて、伸びの 大きい職種を上位5職種とったものです。ホームヘルパーあるいは介護職員といった介 護関係の職種の伸びが大きく拡大しています。  3頁は、そういった介護関連の職種の方々の給与水準を見たものです。福祉施設の介 護員あるいはホームヘルパーの給与は、勤続年数が短いので単純な比較は難しい部分も ありますが、それぞれ男性、女性の平均的な年収に比べて低いものになっています。  4頁に、そのようなことを反映した現状、その介護の分野で働いている方々の仕事上 の不満や悩みのアンケートを付けています。いちばん多い不満や悩みとして「給与等の 収入が低い」が約半分。そのほかにも「有給休暇を取りにくい」、「体力に不安がある、 業務負担が大きすぎる」といった労働条件に関する不満や悩みが多くなっています。  5頁は、少し視点が変わって3つ目の論点で用意している24時間営業の関係ですが、小 売事業所の営業時間の推移を、経産省の「商業統計表」を使って作ったグラフです。上 が営業時間別の事業所数の構成比で、下が営業時間別の従業者の構成比の推移です。全 体的に営業時間の短い事業所の構成比が高まる一方で、終日営業、長いほうも高まって います。従業者で見ますと、特に営業時間が長い事業所で働く方々の割合が高まってき ています。  6頁は、小売業の深夜・休日営業の実態ということで、同じ商業統計表で小売業の閉 店時刻を平成6年と平成16年を比較したものです。22時以降に閉店する事業所あるいは 終日営業の事業所は増加しており、平成6年には両者を足したものが7.4%だったので すが、10年後の平成16年には10.2%と1割を超えています。業態別に見ますと、百貨店 ・総合スーパーの分類において22:00〜0:00の分類らが増加しており、コンビニを含む 飲食料品小売業では、終日営業の割合が8.3%と増加しています。  7頁は、小売業における営業時間と雇用形態との関係を見たもので、営業時間が長く なるにつれて非正社員の構成比が高まって、正社員の構成比が低下します。終日営業の 事業所で見ますと、約9割が非正社員というデータです。  8頁からは中小企業の関係のデータをいくつか用意しています。1点目が、大きくブロ ック別で見た場合の中小企業の従業者の比率です。関東、東海、近畿など比較的大都市 圏においては、中小企業の従業者比率が8割台なのに比べて、その他の地域は9割台と、 地方に行けば行くほど中小企業の比率は高くなっています。  9頁は、中小企業における経営上の課題です。これは『中小企業白書』に載っていた ものです。経営上の課題として、水準として高いのは販売価格の低下・上昇難や同業者 との競争激化です。この調査を平成16年から平成18年にかけての伸び率で見ますと、景 気の回復もあるのでしょうが、従業員の確保難が中小企業において大きく上昇していま す。  10頁は、中小企業の人材ニーズを見た経産省の人材ニーズ調査のデータです。規模で 見ますと、50人未満の規模において、人材ニーズがかなり多く発生しています。一方で 右側にある規模別で人材がどのぐらい充足したかという比率を見ますと、小さい所では 充足率が低いという状況です。  11頁は、中小企業を支えるキーパーソンということで、これも『中小企業白書』に載 っていたデータです。キーパーソンごとの充足度と重要度ですが、重要度でいきますと、 マルで囲んでありますが、新しい顧客を開拓し、マーケットを拡大できる人材、あるい は新事業を創造し、実現化する人材が、比較的重要度が高いところにあるわけですが、 充足度で見ると、そういったところは低いというデータです。以上が資料No.2の「産業・ 雇用のあり方」に関する資料です。  今回、用意した2点目の資料は、地域雇用に関係する資料で、まず資料No.3です。資料 No.3は地域関係の資料をいくつか用意してあります。1点目が、都道府県別に見た転入超 過率を見たもので、総務省の人口移動報告です。これを見ますと、東京、愛知、神奈川 が転入超過が多くなっており、全体的に見れば、青森、長崎、秋田といった雇用情勢の 悪い地域の転入率が低くなっています。沖縄だけは平成17年度については上に出ていま す。  2頁は、都道府県別に労働者の賃金水準を見たデータです。これも高い所は東京、神 奈川、愛知で、青森、沖縄、宮崎といった九州、東北が低くなっています。  3頁は、都道府県別に見た求人倍率の状況で、直近の平成19年8月のデータで見ますと、 全国平均1.06倍で、この1.06倍という水準が平成4年8月を取った際の比較です。 平成4年と比べると、現在よくなっている所は群馬、愛知、大阪等が15年前に比べて、 大きくなっていますが、そのほかの地域においては、全国水準は大体同じですが、地域 別に見ると、だいぶ差があります。  4頁は、コンパクトシティという観点を、今日はご議論いただきたいと思っています が、コンパクトシティのニーズというデータを用意しました。中心市街地に対する考え 方という資料で、多かった回答としては、中心市街地というのは、住民・事業者にとっ ては便利な場所あるいは経済活動が効率的にでき、活性化する場所であるという所が高 くなっております。また高齢化の進展の影響もあって、高齢者が暮らしやすい生活環境 というのも27.6%と高くなっています。  5頁は、コンパクトシティの考え方と、我々でやっている地域対策のパッケージ事業 で、こうしたコンパクトシティに近い所に支援を行っている支援例を書いてあります。  6頁は、このようなコンパクトシティ的な考え方、集約型都市構造というのが基本的 な考え方になってきているという資料です。  7頁以下は、現在、厚生労働省でやっている地域対策の施策の概要です。7頁にあるの が自発的に雇用水準に取り組む地域に対する能力開発や、就職促進のメニューの委託事 業のスキーム図です。  8頁は、パッケージ事業と呼んでいますが、実際のパッケージ事業の活用例として、 北海道の倶知安ではオーストラリアからの観光客誘致に取り組む所に対する支援や、広 島の呉では造船業等の物づくりの関係の支援を行い、それぞれこのぐらいの雇用総数の 実績を出しています。  9頁は、地域雇用開発にかかる助成金のメニューです。  10頁は、今日ご議論いただきたいと思っている中に、Uターンもありますので、Uター ン政策の概要を付けています。  資料No.1ですが、こういった地域関係の今日用意した資料を基に、地域の関係で議論 いただきたい論点を、資料No.1-2で「地域における雇用創出について」4点準備してあり ます。1点目は、地域における雇用をリードしていく人材をどう育成していくかという 話と、現在ある問題として、地元における若者の雇用機会の確保を、雇用対策としてど ういう取組があるかをご議論いただきたいと思います。  2点目は、Uターン、あるいは定年後の就業場所の確保という観点から、団塊の世代を はじめとして、地方での就職を希望する方々の就業機会をどう確保していくかという論 点。3つ目は、コンパクトシティといった取組が、いくつかの自治体で出ておりますの で、こういったことも今後加速していくのかについてもご議論いただきたいと思います。  2頁に地域の関係の4点目の論点を立てておりまして、かなり大きな話ですが、人口減 少社会への対応として、いわゆる産業や社会資本、労働の需要がある所に労働を移動さ せるという考え方について、どう考えるかについても、ご意見をいただければと思って います。  資料No.4です。資料No.4で用意している資料は、あと3つ論点があって、高齢者・女性・ 障害者の働き方について、ご議論いただくための資料を用意してあります。資料No.4の1 頁は高齢者関係です。施策の体系図として大きく3つ整理してあり、1本目の柱が60歳代 の雇用の確保です。65歳までは改正高齢者法に基づく高齢者雇用確保措置の着実な実施 という部分と、今回、2030年までの推計を以前ご議論いただきましたが、60歳代後半を 視野に入れながら、70歳まで働ける企業の普及促進を書いています。  2点目は、中高年の再就職促進の対策として、この10月1日から改正高齢法により施行 された募集採用における年齢制限の禁止が入っています。  3点目は、いわゆる多様な就業社会参加ということで、各地にあるシルバー人材セン ター事業における事業の確保という3つの柱になっています。2頁からは高齢者の意識 です。2頁は「高齢期の就業に対する意識」で、高・障機構でやっている団塊の世代の 方々に対する調査で、そこで定年後の働き方として、定年後について、「働きたい」あ るいは「働きたくないが、働かざるを得ない」という回答をした方々について、どう働 きたいかと聞いた資料です。これで見ますと、団塊の世代の方々においては「いま働い ている会社で継続して働きたい」という方が半数というデータになっています。  3頁は、就業についての引退の時期を男女別・年齢別に見たものです。男女ともにす べての年齢階級で、「年齢に関わりなくいつまでも働きたい」という割合が高くなって います。その次にあるのは男性で見れば、すべての年齢階級において、65〜69歳ぐらい まで働きたい。女性は60歳代前半、後半で60歳代後半まで働きたいという割合が高くな っています。  4頁は、そういった労働者の意識を反映して、需要側(企業側)で高齢者をどのよう な分野で活用したいかというものです。左にあるのは60歳以上の方々の労働者の雇用を 増やす理由として企業が挙げているものです。多い理由としては、「高齢者の経験・能 力を活用したい」という答えがいちばん多くなっています。  具体的に右側の表は、企業による高齢者の能力評価を少し細かく見たものです。これ によりますと、高齢者に対する評価として高かったのが、技能を要する作業、あるいは 対外調整・折衝です。企業が期待する高齢者の分野としては、右下の図では、専門技術 的な業務、教育的・助言的な業務です。  5頁です。高齢者の雇用に逆に消極的な理由を見たものです。企業が60歳以上の労働 者を増やさない理由を聞いたところ、消極的な理由の中の1つは、若者・中年層の雇用 が優先されるというのも多いのですが、高齢者の場合は「体力・健康の面で無理がきか ない」という回答をした企業があります。こういったことについては、就業環境の整備 あるいは仕事のやり方の見直しで、何らかの対応が必要かと考えています。  6頁以下は施策です。先ほども若干お話しましたが、6頁は、そのうち60歳前半の雇用 確保措置の内容を詳しく書いたものです。7頁はこうした60歳前半の継続を中心とする 雇用確保措置の実施状況です。先週発表になり、今年の6月1日現在で調査した結果を見 ますと、改正高齢法に沿った高年齢者の雇用確保措置を実施している企業は92.7%とだ いぶ高くなっています。4番目にありますが、こうした企業のうち、希望者全員を対象 とする継続雇用制度を導入した企業も38.8%と4割まで高まっています。  8頁、9頁は、いわゆるシルバー人材センターの取組です。全国各地において日常生活 に密着した仕事あるいは臨時、短期的な仕事を提供している事業です。例として駐車、 自転車置場の管理、観光の案内、最近では子育て支援サービスなども提供しています。  9頁は、シルバーセンター事業の概要です。現在、会員数が全国で77万人、契約金額 で見ますと、3,067億円の事業を受注して実施しています。  10頁以降は高齢者の関係で、1回目は清家委員からもご議論がありましたが、前社会 保障制度みたいなところの議論を資料として用意してありますが、平成16年の年金改正 によって改正された在職老齢年金制度の現状の資料を付けてあります。平成16年の改正 において、それまでは在職中の年金が、一律2割支給停止の仕組みだったのですが、そ こをやや改善して、賃金と年金の合計額が28万円を超えた場合に、賃金2の増加に対し て年金1停止。そこからやや傾斜がかかっていくというように見直されています。70歳 以上についても、在職者について在職老齢年金は適用になっています。  11頁は、雇用保険の失業者給付でやっている事業ですが、高年齢雇用継続給付という 制度です。60歳時点で賃金が4分の1(25%)を超えて低下した状態で、同じ金額で雇用 が継続される高齢者に対して、雇用保険の中から60歳以降の賃金の15%を給付してあげ るという制度です。  12頁は、こうした在職老齢年金あるいは高齢者雇用継続給付に誤りがあって、実際の 平均給与額が50から60に行く間で、どのように下がっているかという資料を見たもので、 高年齢雇用継続給付は平成15年に改正されておりますが、それを挟んだ平成14年と平成 18年の時期を見ても、それほど違いがありません。  それが高齢者関係の資料で資料No.1に戻り、高齢者関係の今日用意した資料を基に、 資料No.1の2頁ですが、4点ご議論いただければと思います。1点目が、60歳代前半層の高 齢者の雇用の確保で、92.7%まで取組が進んできたわけですが、まだ高年齢者の雇用確 保措置の未実施の企業、あるいは継続雇用制度の対象者に基準を設けて絞っている企業 について、どのように雇用を拡大していくかというところのご意見をいただければと思 います。  2点目が60歳代後半層の70歳まで働ける環境の整備に向けて、今後4、5年にどのよう な取組ができるかという論点。3点目にシルバー人材センター、あるいは広くNPO、ボラ ンティアを含めた高齢期における社会貢献をどう考えるかという論点です。4点目は、年 齢にかかわらず、働き続けることのできる社会を目指す観点から、税・社会保障制度の あり方について、どう考えるかを議論していただきたいと思っています。  次に、女性の就業促進に向けた取組で、資料No.4に戻ります。資料No.4の13頁です。 女性の関係は第2回のワークライフバランスの関係のときに出した資料を若干活用してい ます。13頁は、第2回目にも資料を提出しましたが、出産前後で仕事を辞める女性の約3 割が両立環境が整わないことを理由に辞めている。難しかった理由としては、体力ある いは育児休業、保育園の関係が多くなっています。  14頁は、就業継続が困難な原因のデータです。左側にありますように、働き続けるの が困難となった原因として、育児・介護・家事が大きく、就業継続のために必要な事項 としては右側にあるように、両立できる環境の整備、育児や介護のための時間での配慮 に加えて、やりがいが感じられる仕事の内容も高くなっています。  15頁は、パートとしての働き方を選んだ理由の割合です。16頁は、円滑な再就職をす る支援のために必要な施策で、2回目に出した資料です。  女性についても、税・社会保障の現状の資料を用意してあります。まず17頁ですが、 パート労働と税制との関係です。所得税、住民税の関係と、配偶者控除の関係を用意し てあります。本人に対する課税については、所得税は103万円以上、住民税の所得割は 100万円以上となっていますが、問題になっていた配偶者控除の関係においては、制度 の改正によって、いわゆる手取り逆転現象は現在は解消されています。  18頁に配偶者控除、配偶者特別控除の改正後の仕組みが書いてあります。19頁でもう 1つ議論されるのは130万円の壁です。19頁には年金の関係の適用関係の資料を用意して あります。年収が130万円未満の場合に、第3号被保険者のところで扶養になっています。  20頁は、いま説明した税あるいは社会保障の関係が就業にどのような影響を与えてい るかということで、20頁に短時間労働者の就業調整の実態を用意してあります。20頁の 上の表を見ますと、年収又は労働時間を調整しているパート労働者の割合は、平成17年 では約3割が就業調整をしています。している理由の1番は、自分の所得税がかかる、2 番目が130万円の厚生年金の関係、3番目が夫の配偶者控除がなくなって、特別控除が少 なくなる、4点目はさらに会社の配偶者手当がもらえなくなるというのが多くなってい ます。  21頁に民間企業における扶養手当のデータです。家族手当あるいは扶養手当等を取り 入れている企業の割合は、近年、低下傾向にありますが、現状において69.6%となって います。  22頁は、2回目にもしましたが、現状の仕事と家庭の両立支援対策の概要です。これ が女性の関係の資料で、論点を資料No.1に戻り、2頁の4の「女性の就業促進に向けた取 組」です。1点目は、女性が育児や介護の場合でも、辞めないで働き続けることができ るようにするために、保育サービスの拡充あるいは職場の周囲の理解も含めたどのよう な対応が必要か。2点目は、育児が一段落したあとの再就職の段階での効果的な再就職 支援にはどのようなものがあるか。3点目は、税・社会保障制度の中立化についての議 論です。  最後に障害者の関係もご議論いただきたいと思っています。障害者の関係は資料No.4 の23頁からです。現状のデータを用意してあります。障害者の雇用者数があり、(2) の1.8%の法定雇用率が適用となる56人以上規模の企業の調査ですが、平成18年の調 査で、現在28万4,000人が働いており、そのうち8割超が身体障害者で、知的・精神障 害者がこのような比率になっています。  24頁は、雇用率全体のここ4年の動きです。平成16年、平成17年、平成18年と全体の 雇用率は1.46から1.52まで改善していますが、法定雇用率は1.8%ですので、まだまだ 下回っている状況です。  25頁は、雇用率を規模別・業種別に見たもので、規模別に見ますと、現状の水準もそ うですが、過去は大企業よりも300人未満の中小企業の雇用率が高かったという意識も ありましたので、近年、中小企業における雇用率の低下が課題になっています。  26頁は、ハローワークにおける障害者の就職件数の推移です。いま説明した経緯もあ って、ハローワークは近年だいぶ力を入れており、ここのところ就職件数は伸びていま す。  27頁は、現在、ハローワーク等で行っている障害者に対する支援策です。28頁は政府 の成長力底上げ戦略にも盛り込まれた障害者関係の施策です。  最後に、障害に対する論点として、資料No.1の3頁の5の「障害者の就業促進に向けた取 組」を用意しています。以上です。 ○樋口座長 本日は議論いただいてほしいテーマが多岐にわたりますので、資料に応じ て3つに分けたいと思います。まず資料No.2についてご議論いただくということで、「産 業・雇用のあり方」について、事務局からこれまで提出され、皆さんから議論いただい たことも含めて、議論していただきたい論点ということで資料No.1に書かれています。 もちろんこれ以外でも結構ですので、ご自由にご議論いただきたいと思います。あるい は質問がありましたらお願いいたします。 ○清家委員 これは中小企業に限らず、人材確保政策をどう考えるかということですが、 人材が確保できない雇主は、普通に考えれば、良好な労働条件を提示できないので人材 が確保できないことが多いと思います。もちろん賃金が安すぎる、労働時間が長すぎる など、さまざまな理由があると思います。  そういう労働条件が良くないために人材が確保できない雇主が、人材を確保できない ということは、当該事業主にとっては困るかもしれませんが、労働市場において、労働 条件を引き上げていくという観点からいえば、むしろ望ましいこともあるわけで、ここ で言う人材確保の定義というか、もともと何か理由があって人材確保できない。特に労 働条件が悪くて人材確保ができない事業主が、人材を確保できるようにするためには、 労働条件を引き上げてもらうしかないわけですが、それができない場合にはしょうがな いと考えるのか、それでも人材が確保できるようにしてあげましょうと考えるのか。そ こはどのように考えたらいいのでしょうか。 ○小川雇用政策課長 人材確保を考えるときに、本当に労働条件か悪くて人が来ないと いうのは、ある意味ではマーケットでしょうがないと思うのですが、一方でそこそこの 状況を出しているにもかかわらず、人が来ない分野もあるわけで、それについてどのよ うに考えていくのかという論点が1つあるだろうと思います。  もう1つは、ある程度良好な労働条件を提示できない理由として、企業間の取引関係 や、ある意味で企業ではいかんともし難いような問題で提示できないという問題があっ た場合は、それについても何らかの施策はあり得るのではなかろうかと考えています。 ○樋口座長 それが3番目のポツと関係しているということですね、わかりました。 ○加藤委員 今の清家委員の議論と同じようなところもあるのですが、最近ちょっと景 気が良くなってくると、どちらかというと大学生が新卒の市場では大企業志向というか、 今までの中小企業から大企業へ行きたいと。考えてみると、大学生が新卒で入ろうとす ると、条件を考えていて、逆に中小企業に景気のいいときに行ったらどうなるかなと考 えるのです。生産性のことを考えると、みんながみんな中小企業に行ってしまうと、な かなかいい条件が提示できない。企業にいい人材が行ってしまうと生産性が低下して、 さらにそれが悪化してしまうのではないかという議論を聞いたことがあります。確かに 供給側の問題もそうですが、需要側として、ただ単に闇雲に人を採用することによって、 逆に自分の首を絞めてしまうという側面はないのだろうかということを、質問を含めて 伺いたいことでもあります。 ○樋口座長 ここは事務局が答えるべきか、皆さんでご議論いただくのかということで、 まず皆さんにその点についてご意見がありましたらお願いします。いまの採用方法をど う考えるかということも含めてです。  雇用政策の観点から、いかに企業は採用あるべきかというのは、なかなか難しい話で、 そこはそれぞれ企業側に考えてもらうべきことなのだろうと思いますが、政策的に、あ るいは国の制度的に、そのような問題が起こっているとするならば、それは考えていか なければいけない、ここのテーマになるのかと思いますが、いかがでしょうか。 ○清家委員 いま加藤委員が言われたことと、政策との関係があり得るとしたら、企業 が短視眼的に、とにかく人を集めたいというときに、集まらない、集まらないと苦情が 出て、それを政策的に助けて、とにかくみんな中小企業に行って働きましょうと勧めた 場合、あとになって、そこで就職した人が困ったら、どうしてくれるのだということは 当然起き得ますよね。  先ほど小川委員が言われたように、1つは情報の不確実性というか、本当の意味での 労働条件とか、もちろん将来は誰も予測できないわけですが、多少長中期的にどんなこ とが起きるかについての情報ができるだけ労使双方に提供されることが重要なのではな いですかね。政策的にはハローワークとか、そういう所の話になるのかもしれません。 ○樋口座長 いまのは非常に大きなテーマで、具体的に大学の教員として困っているこ とは、これだけ早期に就職活動が始まったときに、就職協定が廃止されて、その後、景 気が低迷しているときには、必ずしも早期に内定を出すとか、就職活動を始めることは なかったわけですが、これだけ過熱して、特に人口減少という長期的な問題の中で、こ のようなやり方を社会的コストと考えるのかどうかという問題は起こっているのかもし れません。 ○小杉委員 大卒の採用の話がありましたが、高卒の採用でも時期がとても大きな要素 で、地元の中小企業が全然採れなくなって、大企業にみんな流れてしまう。その1つの 理由は大企業の採用は7月の初めに全部出て、それに対して地元の中小企業は卒業間近 になってポツポツ出てくるという状況です。目の前にすぐ決まる人がいると、どうして もそちらに流れてしまい、地元志向だった子もそちらへ流れてしまうという事態が起こ っています。  タイミングの問題は、ほかの市場とは違って、新卒の特徴的なものだと思います。出 る時期が決まっていて、それに向かってどうするか。大卒でも大企業採用はメディアを 使って、かなり早くから動き出すのに対して、中小になればなるほど採用計画が立たな いということでギリギリになってくる。  実はそのタイミングというのは、大卒でも全部が大企業に行くわけではないのですが、 大企業採用のタイミングにみんなが踊らされるのです。結果として、大企業採用のタイ ミングでどこどこに内定が出たというのがワーッと出る。そういう中で、早い時期に就 職を諦めるようなタイプが出るのです。今年の就職は終わってしまったのだと。ところ が、実際には卒業ギリギリにも中小企業のマーケットは広がっていますし、採用活動が あるのですが、その採用活動にもう少し長く頑張っていれば、そこまで採用のチャンス になって、チャンスがあったにもかかわらず、早い時期にやめてしまうとか、新卒の特 長的なタイミングというのは、かなり制度的な問題で、これを何らかの形でもう少しコ ントロールのしようがあるのではないかと思います。その点は政策的にも大事ではない かと思います。 ○樋口座長 高卒との関連でいうと、従来は1人1社制の職業紹介というか、紹介状を高 校が出すかどうかというのがありました。だいぶいろいろな取組を1社には限らないと か、県によってやるようになってきたと思いますが、現状はどうなのですか。 ○小杉委員 たくさんの高校生が一斉に就職するような学校(工業高校)などは、1人1 社制で相変らずやっています。それはそれで効率的ですし、求人もたくさんあります。  一方、都市の普通科などでは、インターネットで求人を見させて、同時に応募も可能 みたいなマーケットに近い状態の所もあります。それぞれに学校の中の市場の大きさ、 求人の状態などによって使い分けていますが、1人1社制が廃止されたというか、ある時 期から複数応募が可能になったというルールが浸透して、それを必要としない市場の人 たちとそれを必要とする市場の人たちがうまく使い分けているような感じがします。 ○樋口座長 高校生の場合、従来は直接企業を訪問してというのが制限されていました が、それは今もそうですか。 ○小杉委員 企業見学を積極的にするという方向に変わりましたので、いま見学はかな り進んでいます。ただ、学校によって最終的に希望する所に絞って見学させる所と、決 めるまでに2社、3社を回ることを指導する所など、いろいろあります。比較的1人1社制 という伝統的なルールでやっている所は、見学もするが絞ってやるというやり方をして います。見学に必要なコストがすごく高いのです。事業所に連絡をとって、何月何日に 誰が行くとか、そういうことをやらなければならないので、ある程度の規模で動かさな ければならないときには効率性を考えて、うんと小さくなるとか、そんな状況です。 ○樋口座長 その方法というのは堅持したほうがいいということですか。 ○小杉委員 事前に見学することに対しては、かなりの了承を得られています。ただ、 最近起こっていることは、インターンシップ型の採用を高校生にもしたいという企業が 出てきているそうです。つまり、3日間来いと。3日間働きぶりを見て、採用を決めると いうことで、それは高校生にはどうかという議論がハローワークでされているという話 を聞きましたが、見学することについては、みんなが了解しています。ただ、複数でき るかどうかは、それぞれによってしまい、高校生は自分の所のルールしか知りませんの で、その辺でみんな納得しているのです。 ○樋口座長 清家委員から出されたテーマで、事務局から説明のあった採用条件が悪い のは、その企業ではどうにもならないものの1つとして、ここに提示された論点ですと、 2番目の医療・介護のところのホームヘルパーを始めとする問題という形で出されたの かと思いますが、これについてご意見がありましたらお願いします。 ○清家委員 これは労働条件が向上されるように、介護保険制度を改正してもらうしか ないのではありませんか。つまり、サービスは欲しい、しかし、金を払うのは嫌だとい うのは許されないわけですから、もし本当に良質な介護サービスが、そういうニーズが あるのなら、それに見合った報酬が支払われるように、介護保険制度等を改正するとい うことではないかと思います。  つまり、私が先ほど申し上げたのは、どういう形で労働条件を改善するにしても、労 働市場が逼迫していて、人手が確保できないというのは、別の見方をすれば、労働条件 を改善する圧力が働いているということなのだから、それを殺さないようにというか、 あるいは何か施策をとることによって、折角市場の調整メカニズムで労働条件が改善し そうなのを弱めてしまうことがないようにしたほうがいいということで、介護保険等に ついてもいろいろな工夫はあるでしょうが、最終的には介護保険制度を変えていただく しかないのではないかと思います。 ○森永委員 清家委員がおっしゃるとおりですが、このように厚生労働省として考える 一方で、例えばインドネシアから外国人の介護労働力を今後入れていきますというのは、 たぶん矛盾しているのだと思います。供給をどんどん増やしていけば賃金が低下して、 折角、若者で介護福祉の分野で働きたいと言っいる人たちの労働条件を下げてしまうと 思うのです。だから、そこは整合性のある政策をとったほうがいいと思います。 ○樋口座長 小塩委員は、この問題をいろいろやっていらっしゃると思いますが。 ○小塩委員 確かに労働条件の問題は、供給サイドの議論をもう少しする必要があるの ではないかと思います。例えば、医療・介護でしたら、新しい大学で取り組んでいるの を見ますと、大体こういうところに力を入れようということが多いのです。新しい学部 も介護サービスあるいは医療分野に力を入れて人材を作ろうという取組が、一般的にな されています。私は医療・介護については、供給サイドはそれほど大きな問題はないと 思いますが、それ以外の分野で特に専門的な知識・技能を必要とする分野の人材の供給 はうまくいっていないのではないかという気がします。  先ほど中小企業の人たちに、どういう人材が必要かというアンケート調査の結果を紹 介していただきましたが、大多数は専門職、技能職ということですが、そういうの人た ちを教育現場でうまく育成しているかというと、ちょっと問題が多いという気がします。 そういう人たちの技能をちゃんと市場で一般的に見えるような形で評価するような仕組 みも必要ではないかと思います。 ○樋口座長 これは資格取得者の中で、医療にしろ介護にしろ、その資格を活かして就 業している人の比率がありましたよね。低かったように思ったのですが、資格は取った ものの、特に介護のところで。そのうち提示してもらえばと思います。いまの点で何か ありますか。論点でいうと、2番目のポツで。 ○加藤委員 森永委員がおっしゃったように、例えば、フィリピンから介護関係の人た ちが入ってきて、その人たちによって賃金が低下する可能性もあるかもしれませんが、 それは競争でやむを得ないのか。逆にそこの中で、いろいろ話を聞くと、フィリピンか ら来られる方々は、日本語もちゃんと研修を積んで、資格も取って来るということで、 そういう人たちと競争して負けてしまったとすれば、その人たちは医療・介護の分野か ら当然出ていくわけです。ここの話と直接関係するかどうかわかりませんが、そうなっ た場合には、その受け皿として、どちらか考えていかなければいけない。ただ単に賃金 が下がるという結果は生まないのではないかという気もするのですが、いかがでしょう か。 ○森永委員 いろいろな教育機関が介護労働力を作るために一生懸命教育をして、資格 も取って、そこで十分供給があるのに、いろいろな問題があって、ほかの業種に比べる と、実質的な賃金がすごく低いから、離職者が相次いでいるのだと思います。そこに新 たに供給を突っ込んで質的に十分かというのは、私は必ずしも十分ではなく、これから 来る人はもっとひどいと思っています。  ただ、そのようにしていって下がらないかというと、介護事業者は、いい所と安けれ ば何でもいいやと思っているところが現実にはあるので、まともな介護事業者は、そう いう労働の力を使って悪いサービスを出さないと思うのですが、そうではない所がいっ ぱいあったというのは、ここ1年ぐらいのニュースでも随分報じられているので、やは り供給増は賃金低下の圧力になるのではないかなとは思います。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 今の介護事業の問題の中で、インドネシアとのEP Aについては、国内労働力の不足対策として考えたわけではなくて、EPA協定の全体の 交渉の中で、ああいう枠組みを作ったというのが1つです。  もう1つは、賃金の問題は2つあって、全体の供給が増えることによって、全体の賃金 水準が下がるかどうかという問題があります。これについては、私どもは全体としての 日本の看護師あるいは介護福祉士の労働市場における需要と供給の関係で賃金が下がる ことは基本的にあってはならないということで、何人入れるかという枠はきちんと決め ていくことにしています。  フィリピンについてもインドネシアについても、当初それぞれ2年間で看護が400人、 介護は600人という枠を決めていきます。この枠が何人であれば適当かどうかというの は議論があると思いますが、当初の2年間はそういう枠を付けました。  もう1つは、仮にインドネシアやフィリピンから安くても働く看護師や介護福祉士が 来ることによって、賃金が下がるかどうかということもあるかもしれません。これにつ いては入ってくる看護師にしろ介護福祉士にしろ、資格を取ったあとは日本人と同等賃 金という要件をきちんと付けておりますので、それぞれの病院あるいは福祉施設で、日 本人と同じ資格の人とは賃金を同じにしなければいけないという規定にしており、それ でも防げるような仕組みにはしているつもりです。 ○鶴委員 介護の話に限らず、人材確保をどうしたらいいかと言ったら、整理して考え てもやり方はそんなになくて、待遇を比例明示的に上げてあげれば、当然入ってくる人 がいます。  ここで問題というか潜在的就業希望者と書かれています、つまり、潜在的に育ってい る人たちをどうやって結び付けてやるのか。それは特に中小企業やいろいろな職種によ って情報の問題というのがあるので、そこをうまくマッチングできるようなことは、特 に中小企業などの話になってくると、非常に重要です。そのときに政府は、もしかした ら何かできるかもしれない。  もう1つは、介護の外国人労働者みたいな話も、潜在的にもっと安い賃金でやっても いいという人がいるが、入ってこられるか、入ってこられないか、いろいろあると思い ますが、問題です。そういうところをどうしたらいいか。潜在的に活用するにはどうし たらいいか。問題の深刻度で全部の方法を使ってやらなければいけない場合と、一部の 方法だけで対応できる場合がある。どれが駄目で、どれが何かという深刻度によって言 っていられない場合があるのだろうという印象です。 ○樋口座長 3番目のポツですが、これは前に清家委員から出されたテーマということ で事務局が用意してくださいました。これについて、何かご意見はありますか。24時間 営業の問題です。 ○森永委員 私はこれはとても大切だと思います。いま地方経済で何が起こっているか というと、ショッピングモールや大規模スーパーがどんどん出店して、それが24時間営 業して、年末・年始も全部営業してしまう。全部お客がそちらに持っていかれることに よって中心市街地の商店街がどんどんシャッター通りになっていくというのが日本中で 起こっているのです。これで本当に国民が幸せになったのかというのが大きな疑問だと 思います。  確かに便利にはなったのですが、例えば年末・年始だけを考えても、昔は年末になる と商店街が年末謝恩セールをやって、くじ引きをやっていました。田舎へ行くと1週間 とか、2週間とか商店街を閉めて、その間に家族みんなで過ごしていたわけです。それ がスーパーの従業員になることによって、年末も年始もずっと働き続けなければいけな いことに雇用面でもなっているのです。私は大店法の規制緩和自体が間違っていたと思 うのですが、雇用政策でも対応が可能なのだと思います。  昔の話をして申し訳ないのですが、私は小学校4年の時にウィーンに住んでいました。 デパートは日曜日は開けてはいけないので、開いていません。当時は、平日に学校が終 わってからデパートにミニカーを買いに行っていました。子どもだから迷ってしまうの です。迷って閉店時間ギリギリに、これでいいやというので、店員に「これ、ください」 と出したのです。出した瞬間に閉店のベルが鳴ったのですが、もうレジを打たないので す。「俺は閉店前に出したのだ」と言ったら、店員は「私はベルが鳴った時点で受け取 っていない」と言うのです。私は子どもだったので、床に転がって大泣きして大騒ぎし たのです。それでもその職場は違反になるからレジを打たないのです。  結果どうなったかというと、その百貨店の役員が下りてきて、「君は子どもだから、 特別に超法規的にルールを曲げて、僕がやろう」と、つまり、労働者は働いてはいけな い。そのぐらいきついことをやって、例えば深夜とか、休日の割増しをすごく高くする とか、そういうことをやれば、今みたいなどんどん24時間地獄の底まで働けという風潮 が、少し収まるのではないか。そうしないと、何をやってもいいですよという労働時間 の規制は、何をやってもいいわけではないのですが、今は緩すぎることが、結局国民を 過重労働に追いやっているのではないかという気がして仕方がないので、是非これは言 ってほしいと思います。 ○樋口座長 という意見が出ましたが、いかがでしょうか。 ○清家委員 国民の選択の問題だと言いたかったのです。つまり、自分たちが毎日どん どん便利になって、自分が消費者としてはとことん便利になりたいが、労働者としては 安定的な生活を送りたいというのは無理な話で、どこかにバランスがあるのでしょうが、 選んでくださいということです。それは最終的には国民の選択の問題ですよね。  問題は、それが選択される形で、例えばマニフェストなどに示されていないわけです。 自民党も民主党も、どちらも「消費者としてどんどん幸せになりましょう。労働者とし てもどんどん幸せになりましょう」と言っているわけですから、本来、その選択ができ ればいいのですが、選択できない状況があることは問題だと思います。  ですから、私も森永委員が言ったような世界ができればいいと思うのですが、それが 最終的に厚生労働省が労働時間規制でやりますと。もちろん最終的にはそうなるのです が、その前には国民の皆様の選択があるのではないでしょうか。もちろん情報としては 確かにみんなが忙しくて過労死が起きたりするような状況を何とかするためには、こう いうことも必要ですね、という情報を提供することは必要だと思います。国民の選択抜 きで休日・閉店法などと最終的にはなるのです。民主党なとが閉店法を出せば面白いと 思いますが、そうはいかないでしょうね。 ○樋口座長 とても出さないですね。 ○太田職業安定局長 今の点は、実は自民党の中でも与党の中でも、そういう議論があ って、雇用政策調査会の場で提案があって、議論があり、賛成する方もおられて、若干 公約で……という形になっているのですが、そういう形で国民のコンセンサスを求めて いくという議論がなされています。したがって、まさに国民の選択の問題ですので、こ の研究会でも、そういう問題提起をしていただいた中で、国民の選択を求める。それが 政治の場でもつながっていくという議論はあるのではないかと思います。 ○加藤委員 非常に議論が低いのですが、実は私の1年生のゼミで、この間なぜ深夜料 金に対して割増しを付ける業界と、付けない業界があるのかというのを調べたことがあ ります。例えばデニーズといったファミレスの場合ですと深夜料金が付く。しかしマク ドナルドは付かないし24時間営業のコンビニなども付かない。うちの学生がコンビニに 連絡して、何で24時間営業で割増賃金を取らないのですかと言ったときの回答が、お客 様の合意を取るのが非常に難しいという点と、アルバイトの人の中には、逆にそういう 時間に働きたいという人も結構いるということ。そういうことも踏まえてなかなか割増 賃金というのは取れないという話を聞いてきたというのがあります。直接これとは関係 ないのかもしれませんが、そういう意味では、選択の問題というところにあるのかなと いう感じがしないでもないと思います。 ○黒澤委員 1つ前のことに戻ってしまいまた、すべての人たちに、そういった適正な 割増賃金云々という議論とは少し乖離してしまいますけれども、例えば医療分野におい ても実は救急医療などが、いわゆる医療のコンビニ化などと言われるような状況になっ ています。そういった状況について政策的に関与する余地というのは、やはりあるので はないか。その最たるものとして子供病気休暇制度というものが、そもそも企業におい てない所が多いので、結局、働いている親御さんたちが、救急外来に行くことが多くな っている。それにプラスアルファして、乳児医療制度などがモラルハザードを招いてい る部分もあると思いますけれども、タダだということもあって夜中に救急にかかってし まう人が増えている。  実際に私もいくつか統計を見たことがあるのですが、大人が救急に行った場合は診療 後に診断があって、処置を受けたという比率が非常に高いですけれども、乳幼児で子供 が3歳以下だったかの場合はほとんどが処置なしで帰っている場合が多いのです。そう いったことも考えると、病気休暇制度を導入することを促進させるような政策が必要で はないか。それは大きく言えばワークライフバランスの推進ということになります。そ れ以外にも、すでに続々といろいろな政策が打ち出されていますが救急に電話する前の 相談サービスの一層の拡充とか、いろいろな政策が考えられるのではないかと思います。 ○小塩委員 この問題は非常に難しくて、先ほど清家委員が言われたように国民の選択 の問題だと思います。私は心情的には先ほどの森永委員の意見に賛成のところがありま す。コンビニエンスストアも、20時ぐらいで閉めていいのではないかという気がしてな らないです。ただ、それは政策サイドからなかなか言いにくい点だと思います。やはり それだけのサービスを消費者が認めているし、先ほど加藤委員のご紹介もありましたが、 そういう勤務状態でも働きたいという人がいるということなので、どうして規制する必 要があるのかという根本的な疑問につながると思うのです。  ただ、24時間営業で働いている人たちというのが非正規で、社会保障のセーフティネ ットにもちゃんと入っていない問題が深刻になっています。果たしてそこまでの社会的 なコストも払いながら、我々消費者は充実したサービスを受けていいのかどうかという のは、問題提起する段階に来ているのではないかという気がしてなりません。現に今日 配っていただいた論点メモでも、「過度に手厚いサービス」という価値判断がもう入っ ていますし、「例えば適正な割増料金」ということで、いまの割増料金が適正でないと いう一定の評価もなされています。ここまで書くかどうか疑問なところがありますが、 少なくとも我々が求めているサービスが非常に大きな問題を片方で発生させているとい うのは、言っていいのではないかという気がします。 ○清家委員 私も前回、この問題を提起したのは、そういう問題提起をしたらどうかと いう意味ですが、ここで大切なのは要するに消費者対労働者の話でなくて、皆さん一人 ひとりが消費者でもあるし労働者でもあるのですよということなのです。だから誰かと 誰かの利害対立でなくて、1人の人間として、どういう社会がいいのですかという問い かけをしてほしいということです。 ○小杉委員 私は黒澤委員の言われたことにすごく共感するのですが、結局、私も24時 間営業の深夜のスーパーに行きます。なぜ行くかというと、それまで買い物ができない 状態だからそこで買わざるを得ないということです。消費者がわがままだと言いますが、 わがままにしなければならない理由というのも勘案しなければならない。そこに労働者 としての問題があるのではないかと思います。 ○樋口座長 その時に、たぶんここで割増料金をというのは残業割増や夜間割増で、賃 金のことはあまり想定していなくて、ここの売るというのでしょうか、その料金だけを 割増というところだと思いますが、雇用政策としてできることというのもまだ残ってい るのではないかと思うのです。例えば夜間割増の賃金についてのところは、相対的に雇 用主としては割安に労働者を考えるから、夜でもその人を雇ってとなり、だからそこで はコストベネフィットの計算をしているわけで、そこのところは消費者のニーズと同時 に、雇用主のほうの合理的な行動を規定することはなかなか難しいと思います。ただ、 それを作り出している制度、法律の問題点はあるのではないかと思います。無条件でコ ストパフォーマンスを計算しているわけではなくて、一定の制度の中でのコストパフォ ーマンスを、企業にしろ消費者にしろ判断していると思いますし、その制度をどうする かの議論はしておいたほうがいいと思います。 ○鶴委員 割増料金と言うときに、これはいろいろなやり方があって、私は適正な割増 料金をちゃんとみんな意識して、それを払わなければいけないという気持がないといけ ないと思っています。これを他のサービスとみんな合わせて均した形で料金設定し、結 果としてそれの分は企業として取っているやり方と、ある特定のサービスは非常に価格 差を付けて取るのと、両方のやり方があります。  あるいは、賃金のほうで非常に差を付けて結果的に最終価格にそれが反映される。も ちろんされない場合もあると思いますが、どこのレベルで、どういう形で割増料金とい うか、過剰なサービスに対しての負担をどこに付けていくのかというのは、いま樋口座 長が言われたようにいろいろなやり方があります。このやり方でなければ絶対駄目だと 決めてしまうのも、いいのかなと思うし、そこはコンセンサスづくりもある意味で必要 な一方、あまり勝手に政府がこうでなければいけないと、がんじがらめに縛るのもどう なのかなと思います。ただ、どんな形でも最終的に消費者が負担するような形というの は、たぶん望ましい。しかし、それは非常に難しいし、いろいろなやり方があるなと思 います。 ○樋口座長 ここについては、例えばいろいろな手段がありますよということで、これ にしなさいというのはのなかなか難しいと思います。例えばショップアクツの問題も、 ご指摘いただいたようなところで1つの選択肢だと思うし、そのほかの選択肢もあり、 その問題提起をするということではどうでしょうか。  次に資料No.3に基づいてお話いただきたいのですが、これは地域における雇用創出に ついてということです。どうぞ、ご順にお願いします。これも地域間格差の問題という 形で、いま注目されているところです。 ○清家委員 1つ質問と1つ意見なのですが、1頁ポツに書いてある「地域における雇用 をリードしていく人材」というのは、どういう意味なのでしょうか。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 ここは地域の町おこし、村おこしもそうですが、核となる人 がいないとなかなか盛り上がっていかないという意味で、キーマンというか、中心の人 を育成したほうがいいのではないかという意味です。 ○清家委員 わかりました。もう1つは「そもそも論」みたいになり、皆様方には釈迦 に説法ですけれど、雇用というのは生産からの派生事業ですから、地域で雇用機会を確 保しようとすることは、すなわち地域においてどういう生産活動を確保するかというこ とです。従来は工場等を誘致してということが1つありましたが、それはなかなか難し い。特に製造業の場合、地方は確かに日本の中では賃金が安いけれども、もっと賃金の 安い海外との競合もありますので、そうなると何らかのサービス生産というか、サービ スの生産活動から派生する雇用機会が中心になると思います。  問題は、サービスの生産というのは、そこにサービスを消費する人がいないといけな い。サービスは保存が効きませんからできないわけで、そこはイタチごっこです。つま り人が流出しているような所でサービスの生産をどういうふうにするかが、難しいとこ ろなのかなと思います。  ポイントは2つあって、1つは、いずれにしても、そうだとすると何らかの形の所得移 転というか財政政策が必要です。ずっと昔は例えば米価という形で地方に農業生産の機 会が確保されていたし、ごく最近までは公共事業という形で地方に雇用機会が確保され ていたと思いますが、その両方ともだんだん難しくなってくると、もう1つ考えられる 所得移転手段は社会保障政策で、これは小塩委員の専門です。4つ目のポツにあるよう に、人がいなくなる所はいいんだと考えれば別ですが、そうはいかないとなると何らか の形で所得を移転して、そこで生産活動を生むことを考えなければならない。  すぐに考えられるのは医療や介護で、もちろんそれもあるのですが、その前にいま非 常に不評の年金制度ですけれども、よく考えてみると物価が安いとか自然があるとか広 い家に住めるなど、個人が地方に住むメリットはいろいろあるわけです。ところが地方 に住む場合によくないのは、賃金が安いとか雇用機会がないことです。だけど年金につ いては、例えば都会で働いていて地方に移り住んだからといって、年金の給付額が減ら されることはない。物価スライドは全国一律でやっているわけです。  そうすると、年金生活者の人たちが、ここで書かれていたような例えばコンバクトシ ティみたいな所に多く移り住んで、その人たちがサービスの需要者となり、そこでサー ビスの生産が行われて派生事業が発生するシナリオが、1つは考えられると思います。 それがどれだけ有効かどうかはわかりませんけどね。だから、そういうことも含めて何 らかの形で移転所得があって、そこから何らかのサービス需要が発生し、そこから派生 的に雇用が地方に生まれるというシナリオ以外に、あまり地方で雇用は考えにくいので はないか。  それ以外にと言いましたが、それは結構いいことでもありますよね。そのためにもう 少し遠大なことを言えば、例えば都会で稼いで引退した人が、都会の家を貸して地方に 移り住めるとか、そういう仕組みもそこで必要になることはあると思います。いずれに しても、何かそういう所得移転のメカニズムみたいなものが1つあって、そこから発す る生産活動と派生需要としての雇用みたいなシナリオを、ちょっと考えたらどうかなと 思いました。これは単なる思い付きですけれども。 ○樋口座長 前に年金に伴う地域間所得移転の試算を、財務総研でやったことがありま す。そのときに我々が念頭に置いたのは、高齢者は地方のほうが大きいから、社会保障 において地方のほうが、コストベネフィットの計算は高いという前提でやったのです。 基礎年金は確かにそうなのですが、報酬比例部分が、逆に都市のほうが賃金が高いから 給付で言うとならされてしまうのです。だからプラスマイナスほとんど影響がないとい う結果になっていて、問題は、報酬比例が現役時代の賃金や保険料に応じて払われる仕 組みを取っている限り、清家委員が言われたように現役のときには都市部であり、もら うのは地方ですということであれば、こういうことはないのですが、そこに住んでいる 限りはあまり期待できなかったというのがあったのです。 ○清家委員 だから私が言っているのは人の移動です。 ○樋口座長 医療のほうはあるのです。医療保険の給付のほうは年収に応じて給付する わけではないからということです。小塩委員、どうでしょう。 ○小塩委員 これは難しいと思います。その前に質問ですが、最近、地域間格差の議論 がよくされていて、今日配っていただいた資料でも賃金の地域間格差というのがありま した。2頁の都道府県の労働者の賃金の格差です。時々、こういうタイプのグラフを見 るのですが、果たして意味があるのかちょっと疑問なところがあるのです。地域によっ て産業構造も違いますし、労働者の年齢構成も違います。そういうのを全部ならしてコ ントロールした上で、さらに地域間で格差がある所は大きな問題だと思いますが、もし そうでなかったら、地域で格差があるとはなかなか言えないと思いますから、是非、そ ういう産業構造や年齢構成の要因をコントロールした上での格差が、まだ残っているの かをチェックしていただければと思います。  所得再分配の話ですが、基本的に医療、介護というのは結構大きな潜在的インパクト をもたらす気がします。先ほど樋口座長が年金ではそれほど再分配がないと言われまし たが、確かにそのとおりだと思います。高齢化のペースも今は地方のほうが高齢化率が 高いですが、これから大都市のペースが早いのでキャッチアップしてしまうのです。こ れから数十年後にはそれほど大きな人口構成の格差はなくなってしまうので、ちょっと 問題なのです。医療や介護というのは政策的に地方に分散させることで、それを通じて 地域間格差の縮小につなげられる気がしてなりません。都会で働いていた人に政策的に 地域に移住していただいて、それで医療・介護サービスを受ける制度は考えていいと思 います。  ただ、その場合、いまの医療・介護保険の仕組みではちょっと難しいと思うのです。 医療・介護の給付を受ける人ばかり増えて、保険料を払う若い人が全然いない状況は非 常に困るので、そうなると今の保険の仕組みを改めることも別途考える必要があると思 います。 ○清家委員 私も全く賛成ですが、医療・介護の需要者になる前に、元気な年金生活者 が地方に移転して、そこで消費活動を行うことも大切でしょう。医療・介護だけだと地 方姥捨山みたいでイメージがよくない。そうでなくて、都会で稼いで結構いい年金をも らえるようになった人が地方に移り住み、自然をエンジョイしながら、コンパクトシテ ィだったら演劇も楽しめるし美術館もあるかもしれない。そういう所で消費活動を行っ て、その人たちの消費の対象となるサービスを。 ○小塩委員 そういうサービスを若い人が供給すると。 ○清家委員 そうそう。そこから雇用機会が生まれてくる。だから小塩委員が言われる ように医療や看護の形の移転は私も賛成なのですが、それだけだとイメージ的によくな いかなというか、それだけの話です。 ○鶴委員 いまの小塩委員の都道府県別の賃金の話ですが、産業を調整したり労働者の 属性ということで言われましたけれども、それとともに都道府県別で生計費や物価水準 が違うし、そういうのも含めて実質的な賃金レベルを見るとたぶん格差は縮小して、ど れぐらいのところまでいくのかを見たほうがいいのではないか。 ○加藤委員 話が先ほどのところからずれるかもしれませんが、地方における格差とい うので地方の話をしていますけれども、地方の中もいろいろあるのではないか。例えば 地方においても中心都市と周辺地域では、当然のように都道府県レベルで見るのとまた 違う問題がある。例えばコンパクトシティというのは私は賛成ですが、これから高齢化 が進んでいくと、確かに中心部においてはさまざまな雇用やサービスの供給はあり得て も、それを取り巻く周辺の地域になってくると、また事情が違ってくるだろうと思いま す。そういう意味で雇用をリードしていく、あるいは雇用を創っていくときに、地方の 中心都市において創って、そこに周りの地域から人を集めていく。人口が減少して高齢 化していくと高齢者は一人で住めませんから、逆に言うとコンパクトシティという概念 をより尖鋭化していき、中心都市と周辺地域との役割分担をもっと明確にしていくこと。 そしてその集積効果がまた雇用を膨らませていく。そういうプランも必要なのかなとい う気がします。 ○森永委員 現役世代を引退する前の段階でも、私はこのコンパクトシティというのは とても大切なのだと思っています。私の知人で田舎暮らしがいいというので農村部に5 人ぐらい移住したのですが、うまくいっている人もいますけれども、うまくいかない人 も多いのです。それは雇用機会がないだけでなく文化的刺激がなくて、どうしても都市 機能というのがほしいわけです。いま流行り出しているのが「都下田舎」という生活パ ターンで、うちもそうなのです。うちは都心から50kmぐらい離れていますが、そのぐら いの所というのは自然もあるし物価も安い。一応の都市機能も揃っているのです。ただ、 もう少しこれから変化していくと都下田舎をもっと広げられるのだと思うのです。例え ば今度新幹線が大阪から鹿児島まで通りますね。私は熊本の新聞に書いているのですが、 熊本はものすごい危機感を持っているのです。要するに購買力が全部流出してしまい、 単なる通過地になってしまうのではないかということです。  でも逆に言うと熊本を都下田舎にしていく、コンパクトシティにしていって、例えば 福岡に住んでいる人がそこに通えるようにする。新幹線を使えば不可能ではないのです。 ただ、いまの通勤交通費について会社は新幹線は認めないですし、たぶん税制上も、あ まり遠い所は非課税にしてくれる範囲から外れていると思います。だから、そこのとこ ろも技術が発達して交通網が整備されてきたら、現役世代の時からちょっと離れた所に 住むというライフスタイルを、100km圏ぐらいまで認めてあげるような仕組みを、きち んと作っていったらいいのではないかと思います。 ○樋口座長 そこはいろいろ議論があるところで、逆にその分だけ通勤時間が長くなっ てきて、むしろ企業のほうが地方に出て行くためには、通勤手当にちゃんと課税しろと いうのがある。あれがタダであるが故に、みんなその部分で外に外にということで時間 を犠牲にしていく。それが故に東京はどんどん大きくなっていったのだという話もある ので、賛否両論でいろいろな意見があると思います。 ○小杉委員 高齢者の話でなく若年の話で、若者の雇用機会の確保ですが、私は教育訓 練を通した地方への移転が大事ではないかと思います。高校生の就職の話で最近、あち こちに行って話を聞いているのですが、大都市の大企業に行ってしまうことのもう1つ の理由として、地元の中小企業が人を育てられない問題があると言うのです。就職させ た子たちにいろいろな事があったときに、大企業の場合には元の教員の所に話に来たり しますが、そこでうちの企業の訓練がよくなかった、もうちょっとこうしてあげればよ かったなど、大抵の大企業は自分の所の訓練をもっとこうやればよかったという話にな るのですが、中小企業だと、何でこんな子をよこしたんだ、学校の教育がなっていない。 もっと即戦力を付けてくれ、フォークリフトの運転免許を取ってから来てくれという話 になるのです。  つまり、地元の中小は人材需要はあるのですが、教育力がないために学校との接点が うまく持てない状態になっているのです。学校の先生もそういう所には就職させたくな いし、教育訓練してくれる所に就職させる循環ができてしまう。あと地方に残りたいと 思った子供も、そういうことなら行くというふうに動いてしまう。  ですから、教育訓練の機能を社会的に補完していくことで、実は地元にある人材需要 をうまく活かすことができるのではないか。教育訓練を公的にというのはもちろんあり ますが、それとうまく繋ぐ形で、地元の即戦力需要しかない所に何らかの形で教育訓練 がしやすい環境とか、あるいは教育訓練のやり方を外から提供する形で繋いでいくこと ができると思います。 ○樋口座長 事務局が用意してくれた地域の格差に関連するところだと、1つは賃金の 問題、もう1つは有効求人倍率に代表される雇用情勢です。これがたぶん清家委員が言 われたように、地域間の限界生産力格差というのが存在する限り、賃金の差を小さくし ようと思うと今度は雇用機会のほうが格差が拡大してくる。これは政策マターとしては すごく重要な問題で、例えば最低賃金の引上げの議論のときに、これ以上最賃に地域間 格差を付けていいのかという話が出てくるわけです。付けなければ、逆に今度は雇用の ほうで地方の雇用はできてこないということがあって、限界生産力を高めることがいち ばん重要なポイントになってくるわけですが、この点は論点になってくるのではないか という気がします。賃金差は小さいほうがいい。雇用情勢についても、有効求人倍率と の差が小さいほうがいいということなのだろうと思うけれど、往々にしてそれはトレー ドオフの関係があるわけで、どちらを優先させて政策的に考えていくべきなのかは、重 要なポイントになってくると思っているのです。  最賃の目安のところでは、賃上げ率に換算して今回はかなり差が出ましたけれども、 それにしてももっと差を付けたらという意見もあったように聞いています。ところが、 そうすると地域格差が拡大するではないかと言われるわけです。確かに賃金のところで はそうですが、片方で雇用のところを考えると、差を付けなければ地方でますます失業 問題が解消しないことが起こってくるので、そこら辺は意識しているのでしょうかね。 ○小川雇用政策課長 おそらくロジックとしては、地方にいても限界生産性を高めるの がいちばん正しい方向だと思いますし、論点的にいけば地方でのまちづくりとか、まち おこしができるような人間が出てくれば、自ずから地方の限界生産性は高まってくるの ではないか。例えば清家委員が言われたように、人がいなければ消費する人がいないか ら、なかなか難しいだろうということもありましたが、例えば観光など移動する人口な どにより、地方においてある程度の消費が確保できることもあります。本当に観光など について言えば、観光開発ができる1人のリーダーによって、ある観光地が興るという 例は多々ありますから、そういったことによって地方における生産性を高めることは可 能ではないかと思っています。 ○樋口座長 よろしいでしょうか。そしたら残りの資料No.4が高齢者・女性・障害者と なっていますが、個別に議論するより関連しているテーマがあるかと思いますので、こ の点については資料No.4で一緒にご議論いただけたらと思います。どのテーマでも結構 です。 ○鶴委員 高齢者の働き方のところで、高齢者はどういう形で雇用を拡大していくかの 取組みについて、説明ペーパーの4頁に企業の期待する役割をご説明いただきました。 私も全くの素人ですが、いわゆる原理的に考えると、高齢者はヒューマンキャピタルが 蓄積されているということで、労働ということになると、たぶんフローの労働投入でも のすごく長時間の労働をしてやるのはなかなか難しい。むしろストックのところで高齢 者は勝負をするべきだし、そこは活用される話なのだろうなと考えます。  いま、同じ企業での継続雇用の場合、どうしても賃金水準が下がるとか専門的なとこ ろで頑張ってくださいということですが、私が申し上げたいのは、高齢者と若い人、あ と地域の子供ということもあるのかもしれませんが、そこを有機的にリンクさせる考え 方や政策がどれぐらい行われているのか、そこをお伺いしたいなというのがあります。  というのは、企業の方は教育的、助言的業務も非常に期待しています。いまの状況を 見ると、この中でも議論があったかもしれませんが成果主義みたいなのが出てくると、 昔のように、上司が一生懸命部下を育てたり教えることのインセンティブが非常に低く なっています。阿部先生も最近、そんなことをお書きになっていたと思いますが、これ は非常に深刻だと思います。人が育ってこないし、若者のほうも、そういう所で教えを 受ける機会もなく意識も少なくなっている。そういうぽっかり抜けているところを、逆 に経験のある人が教育面や若者を育てることで、企業においても活用される部分は非常 に大きいのではないか。蓄積したヒューマンキャピタルを若い世代に還元すると言うと 変ですが、そうやってダイナミックに社会が発展していくところを、高齢者の方々も担 っているという意識を持っていただくと、賃金や企業の中での地位ではなくて、そうい うのが非常にやりがいになって高齢者の方を動かしていくのは、1つあるのかなと思い ます。  これは企業だけでなく、例えば地域を考えると文科省ということだと思いますが、私 は学校の中で社会の経験を持った人が、教員免許を持っている人と組み合わせる形でも いいと思いますけれども、何かいろいろな事ができないのかなと思います。放課後の子 供たちも地域で高齢者の方々と接触するなど、高齢者と若い人たちがダイレクトにリン クすることによって、社会が活性化しダイナミックになっていく形を、政策的にも考え られないのか。いろいろな機会にそういうことを考えることが多くて、具体的な考え方 や取組があるのか、ご意見を聞かせていただければと思います。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 企業の中の話と地域の話とあると思います。企業の 中の話としては、特に団塊の世代の技能者が抜けていく中で、企業の中でどういうふう に技能を伝承していくかの問題があります。大企業は自らの中でやっていきますが、中 小企業ではなかなかそういう形になっていかない部分もあります。政策的に言えば、要 するに団塊の世代の技術者、技能者が、新たに入ってくる若い人たちに技能伝承するよ うな形の部分について一定の助成金を出すとか、政策的にはそういうことはやってきた ということ。高齢者活用では、企業表彰などでみても、しっかりやっている中小企業は 高齢者をうまく使いながら、若い人を育てていく発想でやっています。それを更にどう やって進めていくかは考えていく必要があるだろうと思います。  地域の話としては、シルバー人材センターのシステムがあります。シルバー人材セン ターは高齢者の方々が登録していろいろな仕事をするわけですが、高齢者だけで集まる ということではなく、若い人との接点を持ちながらということが、できるだけ広がって いくことがいいことだろうと思います。シルバー人材センターの中でも育児支援や授業 の補習など、要するに地域の中で若い人と触れ合うものを、できるだけ進めていきたい ということで、その部分を特に支援するようなこともやったりしています。まさに高齢 者だけが固まるということでなく、どうやってそういう形で進めていくかというのは非 常に重要だろうと考えます。 ○加藤委員 私は技能の伝承は非常に大事だと思いますが、いちばん大事なのは、技術 系の場合ですと上の人から下の人に技術は伝承できるし、そういう人たちが教育や助言 的な業務をするのは可能なのです。文科系と分けてはいけないのかもしれませんが、実 際にライン以外で働いていた人たちが、どういう役割を持つかは非常に曖昧なところが あると、よく聞きます。  例えば、高齢者のすべてがそうだと言いませんが、さまざまなIT技術なり、もっと言 えばコピーやファックスのレベルまで考えていくとなかなか対応できない。つまりその 人たちが活躍するためには、彼らを受容する側も必要なわけです。そうすると受容する 側が、文科系の彼らがどんな技能を持ち、どういう経験や知識を持っているのか。そう いうものが客観的にわかるシステムがないと、文科系の人を簡単に使うのは難しい。例 えば学校に呼ぶことは私もすごく大事だと思いますけれども、何のために、誰を、どの ような形で呼ぶか。そこら辺の仕組みは政策的にできることかなとも思ったりします。 ○清家委員 いま出ている話で1つ言うと、ソフトでもよく出てくるのは刑事さんです。 年輩の刑事と若い刑事を組み合わせるのがいいという話は聞きます。ここに書かれてい る論点について申し上げたいのですが、人口が高齢化していく中で、働く意志と能力の ある人が、できるだけ長く働くことができる社会をつくることが大切だというのは、た ぶんコンセンサスになっていると思います。そういう意味で高齢者の雇用を促進するこ との重要性を、ここで確認することはとてもいいと思います。  その際に当面の政策から言うと、65歳までのところとそれ以降は分けて考えたほうが いいのではないかと思います。65歳までのところについては既にご承知のとおり、改正 高齢法で雇用を確保する措置を講ずる義務が雇い主に生じているわけですが、これは先 ほどの資料にもありましたように、まだ定年延長という形でやっている所はそれほど多 くないわけです。今はまだ段階的に厚生年金の定額部分が63歳まで引き上げられたとこ ろですが、最終的に2013年度あたりに65歳になった時に、もちろん報酬比例部分のとこ ろは更に先ですが、やはり定年は60歳で65歳までは継続雇用制度でもたせるというのが いいのではないか。定年制度というのは企業の私的制度であるとはいえ、一種の社会的 な制度でもあるわけで整合性を持ちにくいと思いますから、やはりそこはかなり強力に というか、高齢法の再度の改正は早計に言えませんが、私は年金の支給開始年齢と定年 の年齢を接続していく方向で、政策を考えていくことが必要だと思います。年金の支給 開始年齢が65歳に最終的になれば、65歳までは普通に働くのが標準だという考え方にな っていくのではないか。あるいはそうせざるを得ないのではないかと思います。  逆に、この支給開始年齢の引上げの議論も少し出てくるかもしれませんが、65歳以上 のところについてはもう少し多様な働き方というか、これは先ほど岡崎部長も言われた シルバー人材センターなども含めて、多様な働き方で、働く意志のある人の能力を受け 止めていくことが大切なのだろうと思いますので、そこを分けて施策は考えたほうがい いと思います。もうちょっと言うと、これは余計なことかもしれませんが、65歳までの ところが十分に固まる前にあまり先々に行くと、そこまでのところが不十分になってし まうきらいもあるかもしれないので、その辺は注意していただいたほうがいいという感 じもします。  もう1つは政策的なことですが、先ほどご説明があったように、在職老齢年金や雇用 継続給付金は私は見直す必要があると思います。ただ、材料については、結果的に支給 開始年齢が65歳に最終的に引き上げられれば問題がないというか、もともと受給資格自 体がない人には悪影響はありませんからいいのですが、ここは私はスウェーデン型みた いに、つまり生涯で受け取る年金額が、いつ引退するかによって変わらないような形が いいと思います。寿命が仮に一定だとすれば、長く働けばそれだけきちっと上乗せされ て受け取る。早く引退した人は低い年金を受け取るというように、引退時期に対して中 立的な年金制度にしていく必要があると思います。  雇用継続給付金は、いろいろご異論があるでしょうが、私はできるだけ早くやめたほ うがいいのではないかと思います。あの制度は60歳代前半の人は賃金が安くてもやむを 得ないと、そういうことを前提に制度を作っているわけで、もし先ほど言ったように65 歳までは定年を延長して、普通に働くのが標準ですよという方向性を出すとすれば、も ちろんすぐに辞めるとかではないとしても、それとの整合性で言えば、廃止の方向で見 直していくのが筋としては合っているのではないかと思います。ちょっと細かいことで すけれども。 ○森永委員 いま清家委員が言われた点で私は違うことを考えていて、今年の4月25日 に、厚生労働省が社会保障審議会に出した年金給付の将来シミュレーションを見ると、 団塊の世代のところで65歳でもらう厚生年金のモデルケースだと、現役世代の手取りの 何パーセントもらえるかという所得代替率が58%あるのです。ところが、賃金スライド をやめたおかげでずっとそれが一貫して下がっていって、85歳のときは41%まで下がる のです。所得代替率が5割を切るというのはもう貧困なので、結局、いまの年金制度が そのまま続くと70代後半以降は貧困水準に落ちてしまうのです。年金財政が苦しいから そうせざるを得ないのだということであれば、いまのパターンだと70代後半以降は雇用 もないし年金も貧困水準に陥るというのは、私は絶対よくないと思います。  だから、どうしても年金が回らないのだったら、例えば70歳支給まで思いっ切り支給 開始年齢を繰り下げて、そこからは所得代替率が下がらないようにする。そちらは基本 的に年金で面倒を見る。ただ、70歳までは雇用政策で面倒を見ますという決断をしない と、国中みんな貧困になってしまうような気がして仕方がないのです。 ○清家委員 私も最終的にはそれは賛成です。先ほど話したのは当面の話で、最終的に はおっしゃるとおり、もうちょっと支給開始年齢を引き上げて、しかし年金をもらう時 にはちゃんとした年金給付にするほうがいいと思います。そこは森永委員に賛成です。 ○樋口座長 所得代替率を個人ベースで考えるのか、それとも社会としての所得代替率 という形で、例えば60歳代後半と70歳代と考えていくのかによってだいぶ違って、要は 報酬比例部分を残すかどうかの議論になっていくと思います。だから代替率と言ったと きに両方で使うから、個人のベースでの代替率の話をしているのか、社会的なというの は。 ○森永委員 私が言っているのは個人のです。 ○樋口座長 個人ベースですよね。 ○加藤委員 ただ、現役に対する賃金の代替率というのは、いま計算されていますよね。 年金のシミュレーションというのはある。ですから40%が現役の労働者の賃金に対して 40%ですから、それが高いか低いかというと、そんなに低くないように個人的には思い ます。 ○森永委員 でも、あのシミュレーションだと38万円なのです。その4割になってしま うということは夫婦で15万円ぐらいです。 ○加藤委員 将来的にずっと進んだ後ですよね。いま50.2%が徐々に下がっていくので すが、当然、それは物価水準も変わってきますし現役世代の賃金も変わってくるので、 どうなのですかね。あまりその話に入ったら本当はいけないのでしょう。 ○森永委員 そうなのですけれども。 ○樋口座長 ほかに、どうでしょう。 ○小塩委員 年金は難しいと思いますが、私も雇用政策と高齢者向けの政策をリンクさ せる必要があると思います。今まで我々がずっと議論していたのは大体60歳代前半の話 だったと思います。ところが、清家委員が先ほど言われたように65歳まで定年が延びる と、今まで特に労働経済学の分野で議論されていた在職老齢年金が、雇用にどれだけイ ンセンティブを及ぼすかの話の重要性が弱まってくるのです。そうなると、これから議 論しないといけないのは60歳代後半ではないかという気がするのです。  先ほどからも出ているのですが、70歳を過ぎたらできるだけ安定した老後を送ってい ただきたいというのは、年金を研究している人に共通した認識だろうと思います。とこ ろが、65歳から70歳というのは中途半端な状況に人々が置かれるということです。働く のも65歳以降はわからないし、年金もひょっとすると67歳とか70歳に支給開始年齢が引 き上げられるとなると、非常に不安定な状況に置かれます。そこら辺の議論がいまの制 度の体系では空白になっています。在職老齢年金も65歳までを念頭にしていますし、ほ かの制度もそうだろうと思います。そこら辺は、これから意識的に設計する必要がある のではないかという気がします。 ○樋口座長 産業構造の転換との関連で考えると、割と最近成長しているサービス業に おいては高齢者は少なくて、逆に、かつて高度成長期に成長した所にたくさんの高齢者 がいる。そこで更に雇用継続といったときに、採用意欲のある所であれば高齢者を確保 しながら、また若いところを考えるのでしょうが、その問題というのはどう考えていっ たらいいのか。  ほどほどに産業構造の転換というのはしていかないといけないし、すごいスピードだ と若い人たちは、成長している産業に新規採用で入っているから、ここでは高齢者問題 はほとんどないわけです。片方で特に重厚長大の所は、かつて団塊の世代を大量に採用 したけれども、そこで景気がよくなってくればいいのですが、そうでないから本当は排 出していきたいと思っているのに、雇用責任を追及されていくことの意味がどうなのか。 平均値では語れないような問題があるような気がするのです。 ○清家委員 そこは非常に重要なポイントです。従来も産業構造の転換はあったのです が、ピラミッド型の人口構造のときには主として、いま樋口座長が言われたように、若 い人の就職先の比重が変わることで全体としての労働力の再配置が行われたわけですが、 人口構造が逆ピラミッドみたいな形になってくると、その中で少なくとも従来と同じ程 度に産業構造が転換するとしても、既にどこかで長年働いた人たちが産業間を移動しな いと、従来と同程度の産業構造の調整もできない。しかもいま樋口座長が言われたよう に、変化のスピードがもっと速くなれば、さらにそこのところを促進しなければいけな い。ですから、そこは一方で高齢者の雇用を促進しながら、もう一方、ここはちょっと 微妙なところですけれども労働市場の流動性を高めて、一定の年齢になっても産業間、 職種間の移動ができる仕組みを作っていかなければいけない。両方やらないといけない のではないでしょうか。 ○樋口座長 制度上、退職金の税制上の長期勤続者への扱いはまだ残っていますよね。 あれは比例的にしようとか、いま議論としては進んできているのですか。 ○太田職業安定局長 議論としては、長期勤続に有利な仕組みに見直そうという議論は ありますが、まだそれほど具体的になっていません。問題意識はかなり強く感じている みたいです。 ○樋口座長 女性、障害者も少し議論いただきたいと思います。いまの制度との関連で 言えば、女性のところでは第3号の問題を避けて通れない気がします。特に年収調整を している、労働時間調整しているというのが、この統計だと20頁にあるようにかなり増 えているのです。22.6%だったのが32.5%です。その中身として何を調整理由として挙 げているかというと、税金のほうは割と小さくなったのに対し、健康保険と厚生年金の 2つの項目は平成13年に比べて平成17年は増えている。これが22.6%から32.5%に引き上 げているわけで、ここのところはかつて議論しましたが、そのままになっているような 気がします。いかがですか。いまどんな動きになっているのでしょうか。 ○高倉雇用均等・児童家庭局総務課長 女性の雇用の関係ということもあって、ここで 状況のご紹介をさせていただきますが、資料の中では19頁に現行制度の130万円の下限 の状況が出されています。この点については現在、国会提出中の年金保険法等の改正法 案の中では、これを変えようということで、4分の3以上という要件は20時間以上という ことに切り換える。一方で、いまの案では賃金の要件は設けるということで、現在の厚 生年金、健康保険の下限である月額9万8,000円以上の賃金の場合に乗ることになります から、ものすごい低い年収でも厚生年金に入るということにはなりませんが、いまの13 0万円よりはかなり低いほうのたしか100数万円だったでしょうか、、そのあたりまでは 20時間以上働き、かつ100数万円ぐらいの収入があると、厚生年金、健康保険の適用対象 にするという改正案が、いま出ているわけです。  従来、イメージとしては、やや受給が高めの職種の方で4分の3以上働くと130万円を 超えそうだなということで、そこで収入調整している方が20頁の表の中に結構入ってい るのだろうと思われますが、そういった方がなぜそこで止まっているかというと、例え ば20数時間の就労でも年収130万円を超えることは、特に薬学などいろいろな有資格職 種では大いにあることなのですが、そういった方が手前で止めている。これはなぜかと いうと、それを超えてしまうと厚生年金適用は4分の3ルールがあって、30時間以上ぐら い働かないと事業主負担してくれない。にもかかわらず年収が130万円を超えてしまう と、国民年金が3号の世界から1号の世界にいって、自分で月々1万数千円の保険料を払 って、初めてそれまでの3号と同じ給付である基礎年金しかもらえないという、すごい 厚い壁になっていたわけです。そこのところを時間要件の4分の3を20時間までに小さい ほうにずらすことにより、ここの130万円の壁は薄い壁になった。自分の保険料負担が ちょっとは増えますが、事業主が半分持ってくれるし、厚生年金2階部分が付くことに なりますから、この130万円の壁の問題は今回の被用者年金一元化法案の中に入ってい ますが、それが無事成立すれば、そこのところはかなり前進する状況です。ただ、まだ 審議入りしていませんのでこれからの議論です。 ○森永委員 いまの話は従業員数3人以下でしたか、零細の部分もそうなるのですか。 ○高倉雇用均等・児童家庭局総務課長 本則は適用事業所ですが、経過措置、付則の世 界で301人未満です。300人以下は当分の間、別に法律で定める日まで適用しないという ことになっています。 ○森永委員 いま超零細は、そもそも厚生年金に入っていないですよね。 ○高倉雇用均等・児童家庭局総務課長 業種によりますけれども、かなりの業種は、例 えば法人であれば1人であっても適用ということになっています。 ○森永委員 そうなのですか。 ○高倉雇用均等・児童家庭局総務課長 ただ、非適用業種というのがあって、例えば飲 食業などいくつかの業種においては、個人経営である場合には適用除外となっています。 だから零細の所にはそういうのが多いです。 ○森永委員 そこのところもやらないと、大きな効果は出てこないと思います。 ○高倉雇用均等・児童家庭局総務課長 課題は、かなりまだ残っているのは間違いない 事実です。ただ、いま申し上げた現在適用業種になっている所のパート適用拡大要件見 直しについても、樋口座長にはワーキングでいろいろやっていただき、かなり抵抗があ ったのは事実ですが、そこは一歩前に出ようという状況になっています。 ○樋口座長 いまの第3号の問題というのは、年収調整という意味では在職老齢年金と すごく似ている問題があるわけですが、同時にこの問題の重さというのは、雇用主のほ うの負担を考えたときに、こういった働かせ方をしたほうが、コストが安くて済むとい うところでの問題が残っているわけです。それを考えていかないと、正規・非正規の問 題やパートの問題というのは、制度が作っているようなところが無きにしも非ずと思っ ているので、そこのところは考えていく必要は絶対あると思うのです。 ○清家委員 それは無きにしも非ずでないでしょう。業界が大反対しているということ は、それを利用しているということを言っていると同じでしょう。これは、いまの問題 プラス、もちろん第3号の対象になりそうな人はいいとしても、もっと言えば雇用形態 が多様化している中で、ある種の働き方をしている雇用者には、将来、被用者年金が支 払われないということです。だからその人たちは、自営業でずっと働けるかもしれない 人たちを念頭に作った年金に加入するか、それとも全く年金に加入しないということだ から、それはもちろん女性の問題もあるけれど、そういう多様な働き方を一方で認めて おきながら、そういう多様な働き方をしている人には、被用者としての将来の年金権が ないことが非常に大きな問題なので、これは次回、抜本的な改革をしていただきたいと 感じます。今回は、もちろんこれで通していただく必要があると思います。 ○鶴委員 いちばん最後のポツの女性の就業促進ということで、中立的な税、社会保障 制度ということですが、いま税と社会保障の一体改革と言われていますし、2つ一緒に 考えないといろいろなことができない状況になってきていると思います。たぶん年金だ けの問題ではなくて、福田総理は温もりのある改革、格差に配慮してということですが、 ある意味で所得が低い人たちも子育てに頑張っているとか、一生懸命働いている人たち に対し、必要な人に必要なサポートができるようなことは、少し考える必要があるのだ ろうと思います。  その中でいろいろな学者の先生方の中には、アメリカやイギリスの勤労税額控除、給 付付の税額控除みたいな話をする方も多いのですが、そういう問題もいろいろ考えてい くと、いまの非常に歪みがあるところで、いまも出ていた税だと配偶者控除の話です。 そういうところから所得移転みたいなことを考えると、子供のいない専業主婦の家庭が 厳しくなる。その代わり低所得者で子供がいて、それで一生懸命働いて頑張っている人 のほうに何らかの所得移転がいくような仕組みは、ひとつ考えられると思います。  そうしたときに、いま、子供がいなくて専業主婦というライフスタイルは駄目なんだ よねと、はっきり言えるところまできているのか。それとも、ある意味で高度成長期の 日本の家庭の典型的な姿として、お母さんがしっかり家を守り、子供がいる、いないは また別ですけれども、そういうことを明示的にペナルティを与えるようなところまでき ているのか、そこまではっきり言うのは難しい感じなのか、大ざっぱな話で恐縮ですが、 たぶん全部つながっている話だと思うのです。それは、先生方からご示唆いただければ ありがたいと思います。 ○加藤委員 一言だけ、実は鶴委員の話に非常に賛成で、もしかしたら児童手当はそう いう位置づけができるのではないかという気がしています。例えば年金制度に対して、 できるだけ貢献した人たちに対して本当に出さなければいけないけれど、なかなか出せ ない。そういった分、子供を産んだ方々に年金を出す代わりに児童手当として出す。そ ういう代替制を考えると、まさに年金と税と児童手当等、そういった社会政策を全部ま とめて考えていくのは賛同できる考え方ではないかと思います。 ○小塩委員 税と社会保障を一緒に議論しないといけないというのは、確かにおっしゃ るとおりですが、現行の仕組みは特に税の場合、所得控除が中心になっているので、低 所得の人々に対しては、マイナスの税金をかけるというのはそもそもできないことにな っているのです。その一方で国民年金や国民健康保険というのは定額の部分があります。 もちろん所得に応じて減免措置があります。統計を見ると、税金はしっかりと累進制が 働いていて所得の低い層は税負担が低いのですが、その一方で、社会保険料の負担が多 めになっているという逆進性が結構働いているのです。これは結構大きな問題です。こ れだけ貧困の問題が深刻になると、税と保険料をミックスして、特に子育てが大変な所 得の低い層を助ける仕組みは、意識的に考えていいと思います。  それを鶴委員は先ほど、専業主婦で子供がいない家庭にペナルティをかけると言われ たのですが、ペナルティではなく、将来の社会保障の財源を支えてくれる人たちを育て ている世帯を、社会全体で助け合いましょうというふうに捉えれば別に問題はないと思 いますので、そこら辺は改革の余地があるのではないかという気がします。  よく議論されるのですが、所得控除から税額控除に移行して、還付つきにして、さら に還付した分を社会保険の拠出実績とみなし、セーフティネットから外れないような仕 組みを作ることは、考えていいのではないかという気がしてなりません。 ○樋口座長 還付がつけば負の所得税というか、移行できるわけですからね。 ○小塩委員 もちろん、そうです。 ○樋口座長 障害者のところについても、ご意見をいただけたらと思います。なかなか 雇用率が上がっていかないことに対して、どう考えるかという指摘です。考られるのは ペナルティの強化なのです。ここも問題点が多々あるということで、これについては時 間も来ているので次回なり、あるいはメール等でご意見があったらいただくことにした いと思います。時間が来ていますので今日はこれぐらいにしますが、次回は、これまで の5回にわたる議論を踏まえ、研究会報告書の取りまとめに向けて研究会報告骨子(案) を事務局から提示いただき、皆さんでご議論いただけたらと思います。事務局から予定 をお願いします。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 次回の日程についてご案内します。第6回ですが、いま座長 からお話がありましたように報告書の骨子案を、これまでの議論を踏まえて用意させて もらいます。日程は11月9日(金)の夜6〜8時、場所は6階の第1会議室となっています。 前回同様お弁当を用意させていただいていますので、よろしくお願いします。 ○樋口座長 本日はお忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございました。 以上で終了したいと思います。ありがとうございました。 (照会窓口)    厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係    TEL:03-5253-1111(内線5732)