07/10/23 第48回労働政策審議会職業安定分科会議事録 第48回 労働政策審議会 職業安定分科会 1 日 時 平成19年10月23日(火)14:00〜15:00 2 場 所 厚生労働省職業安定局第1会議室 3 出席者 委 員(公益代表)            大橋分科会長、岩村委員、大沢委員、征矢委員、宮本委員 (労働者代表)            有村委員、斉藤委員、徳茂委員、長谷川委員、古市委員、堀委員 (使用者代表)            荒委員、石井委員、石原委員、市川委員、            川本委員代理(輪島氏)、尾崎委員代理(吉免氏)       事務局 太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、荒井審議官            宮野総務課長、宮川雇用保険課長、鈴木需給調整事業課長、            中村医政局総務課企画官 4 議 題 (1)労働保険の保険料の徴収等に関する法律の規定に基づき雇用保険率を変更する告 示案について(諮問) (2)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する 法律施行令の一部を改正する政令案等について(諮問) 5 議事内容 ○大橋分科会長 定刻になりましたので、開会したいと思います。議事に先立ち、委員 の交代がありましたのでご紹介いたします。使用者代表委員ですが、成宮委員に代わり、 全国中小企業団体中央会専務理事の市川委員です。次に、事務局である職業安定局の幹 部に異動がありまして、太田局長、大槻次長が就任されました。それでは太田局長より、 一言ご挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○職業安定局長 ただいまご紹介いただきました太田でございます。先般の人事異動で 職業安定局長を仰せつかりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。  雇用失業情勢全体としては改善傾向にありますが、まだまだ地域間の格差、若者の雇 用問題、あるいは、いわゆる非正規の労働問題など、さまざまな課題が残されていると ころでございます。これらの課題につきましては、当分科会において十分にご議論、ご 検討いただきまして、施策の円滑な推進に努めてまいりたいと考えておりますので、ど うぞよろしくお願い申し上げます。 ○大橋分科会長 次に、本日の委員の出欠状況です。 (出欠状況報告)  それでは議事に入ります。本日の議題は「労働保険の保険料の徴収等に関する法律の 規定に基づき雇用保険率を変更する告示案について」と、「労働者派遣事業の適正な運 営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令の一部を改正する政令 案等について」の、合計2議題です。最初の議題は「労働保険の保険料の徴収等に関す る法律の規定に基づき雇用保険率を変更する告示案について」です。それでは事務局か らご説明をお願いいたします。 ○雇用保険課長 資料No.1-1と資料No.1-2を使わせていただきますが、資料No.1-1は諮問 文ですので、資料No.1-2を使って内容を説明させていただきます。  雇用保険制度については法律上、雇用保険率が定まっております。その内容としては、 失業等給付に係るものが16/1000、雇用保険二事業に係るものが3.5/1000と、法律で 規定されておりますが、同じく法律の中にいわゆる「弾力条項」というものがあります。 この弾力条項と申しますのは、一定の要件を満たした場合に、雇用保険料率を引き上げ る、又は引き下げることができるという規定です。  具体的に資料No.1-2の1頁を使ってご説明申し上げます。まず、失業等給付に係る弾力 条項です。原則として16/1000という保険料率ですが、この式にありますように、分母 に失業等給付費、分子に積立金と当該年度の収支差を加えて、この比率が2倍を超えた 場合には、右端にありますように、保険料率を4/1000まで引き下げることが可能とな っております。ここには省かせていただきましたが、1倍を下回った場合には、保険料 率を4/1000まで引き上げることが可能となっております。  具体的にこの数式を計算したものが括弧の中です。平成17年度決算額による計算を行 ったところ、2.98倍ということで約3倍となっており、2倍を超えておりますので、平成 19年度現在の保険料率については、4/1000引き下げて12/1000となっております。 平成18年度決算がまとまって、その計算をいたしましたところ、2つ目の段落にありま すように、4.37倍ということで、これも2倍を超えたところです。したがって4/1000引 き下げることが可能となっているところですが、これを引き下げるためには、厚生労働 大臣が定める必要があります。その際、労働政策審議会の意見を聞くという形となって おりますので、本日の諮問案件はその内容となっております。具体的には今年度と同様、 来年度も16/1000から4/1000引き下げた、12/1000にするという内容です。  併せて雇用保険二事業の下のほうの弾力条項をご覧ください。こちらは分母に二事業 に係る保険料額、分子にいわゆる雇用安定資金に収支差を加えたものです。これが1.5 倍を超えた場合には、保険料率を引き下げるということになっております。これは法律 上決まっているわけです。計算の結果、平成17年度については1.54倍ということで1.5 倍を超えておりますので、平成19年度の保険料率は現在、3.5/1000から3/1000に引き 下がっております。平成18年度についても1.72倍となりましたので、これも1.5倍を超 えております。したがって平成19年度の二事業に係る雇用保険は、今年と同じく3/1000 になります。この12/1000と3/1000を足して、平成20年度は15/1000の雇用保険料と したいということが、本日諮問する内容となっております。それが資料No.1-1の裏側に ある別紙の内容です。平成20年4月1日から1年間、雇用保険率を15/1000とすること。 内容については以上です。 ○大橋分科会長 それでは本件について、ご意見がありましたらお願いいたします。 ○石井委員 雇用保険についてですが、いま4兆円の積立金があると聞いております。 その積立金は、いささか多いのではないかという感じを持っております。確かに景気の 悪いときと良いときとあるわけで、積立金が上下することは十分承知しております。し かし4兆円という金額は、やはり大きい。むしろ弾力条項をも含めた形で、雇用保険料 率を下げることも考える必要があるのではないでしょうか。法律の改正ということにな るので、かなり難しい問題かとは思いますが、4兆円溜まっているというのは、かなり 問題ではないかと思っています。  それから溜まった4兆円ですが、4兆円の元は企業が相当負担しているわけですから、 我々企業側にとっては非常にコストが高うございます。そういう意味でも下げてほしい。 しかも4兆円というお金に対して、一応財務省で運用されているとはお聞きしておりま すが、決して無駄に使っているとは思いませんが、運用状況についても情報提供を行っ てほしいと、私は考えております。 ○雇用保険課長 弾力条項の仕組みですが、ただいまお話がありましたように、今年の 法改正により、従来の弾力条項の変更幅であった±2/1000から±4/1000に拡大したと ころです。その際に雇用保険部会の部会報告の中で、現在の雇用保険の財政状況、ある いは給付水準などを勘案すると、失業等給付の保険料率について大幅な料率の引下げが 可能とも考え得る一方、今後の経済情勢の動きによって給付が大幅に増加することも十 分予想されることから、制度の健全な運営を確保しつつ、保険料負担者の負担軽減を図 っていくことが必要であるというような趣旨の文章が書かれており、今年から±2/1000 から±4/1000へと引き下げられたところです。  また4兆円という積立金残高については、過去の最高が4兆円を上回る形での積立金を 積み上げた上で、毎年1兆円ずつ取り崩すような事態が3年連続で続いたことも、実際に 過去にあったわけですので、しばらくの間は引き続きこの給付水準などを勘案しながら、 状況を見ていく必要があるのではなかろうかと思っています。  それからもう1点。運用状況についてはまさに今お話がありましたように、すべて財 務省にお預けしているという形になっております。運用状況については何らかの形で公 開というか、情報提供をしていくということを考えていきたいと思っております。 ○大橋分科会長 ほかにご意見はありませんか。 ○長谷川委員 私も石井委員の考え方と同じです。過去の例から言うと、4兆円がどう なのかという議論はあるとは思うのですが、雇用保険も含めて、積立金の金額が多くな ってくるときの運用のあり方については、この間もいろいろな所で指摘されているわけ ですので、これはきっちりと明らかにしてほしいと思います。  それから、1頁の平成18年度の決算額による計算が4.37倍というのも、本当にどうな のかということについては、私も若干疑問に思います。だったら、そもそも保険料率を 弾力条項ではなくて、引き下げたほうがいいのではないでしょうか。これは労働側も自 分たちで負担しているものですし、そうでなくても、最近さまざまな税金が非常に高く なっている折、雇用保険料率を下げることも、検討が必要ではないかと思っております。 ○雇用保険課長 繰り返しになりますが、まず運用の状況については、先ほども申しま したように、何らかの形での情報提供を考えてみたいと思います。  それから倍率ですが、4.37倍という数字、あるいは4兆1,000億円という現実の数字の 評価については、さまざまなご意見があろうと思います。今後とも雇用保険部会などに おいて、またご議論いただければと思います。当面の考え方といたしましては、先ほど も申しましたように、今後の経済情勢などによって給付が大幅に増加することも、一方 で十分予想されるところですので、現在の仕組みの中で状況を見ながら、引き続き必要 に応じてご議論いただくという形ではなかろうかと考えております。 ○大橋分科会長 ほかにご意見はありませんか。 ○大沢委員 この保険料率に直接かかわる問題ではないのですが、雇用保険の本来の趣 旨というのは、安全ネットを作って、失業したときにも生活が安定して次の仕事が探せ るような状況になるために、労使あるいは国が三者で合意して作った制度のように思う のです。その安全ネットが果たして機能しているのか、一部の非正規労働者や自営の方 々といった、その中から漏れている人たちもいるわけですから。雇用保険だけではなく て、日本の中に合った安全ネットというものが果たして機能しているのか、あるいは、 それをもう一度考える時期にあるのか、そこら辺も今後の課題として考えていくことが 重要だと思っています。 ○雇用保険課長 先ほどご紹介いたしました、今年1月に出していただいた雇用保険部 会の報告の今後の課題の中にも、マルチジョブホルダーなど、就業形態の多様化に対応 した雇用保険の適用範囲について、今後とも議論すべきであるという趣旨が書かれてお ります。この点は大沢委員のご発言の内容に通ずるものがあるかと思います。先ほども 申しましたように、雇用保険は給付と負担という形でできております。したがって両者 が相まっての議論という形になろうかと思いますので、そういう中での1つの課題では なかろうかと思います。 ○大橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。弾力条項を±4に変えたのは、まだ最近です ので、しばらく様子を見て、4兆円が大きな額かどうかを。大きな額には違いないのです が、これからもいろいろな情勢がありますので、ここのところはとりあえずこれでよろ しいかと思いますが、よろしいでしょうか。                  (異議なし) ○大橋分科会長 それでは当分科会として、厚生労働省案を妥当と認め、その旨、私か ら労働政策審議会長にご報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。                  (異議なし) ○大橋分科会長 それでは事務局から、報告文の案をお配りいただきます。                 (報告文案配布) ○大橋分科会長 お手元に配布していただいた報告文案により、労働政策審議会長宛に 報告することとしてよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○大橋分科会長 では、お認めいただけたというように報告させていただきます。  それでは次の議題、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件 の整備等に関する法律施行令の一部を改正する政令案等について」に入ります。これに ついてはあらかじめ、労働力需給制度部会においてご議論いただいております。労働力 需給制度部会の部会長は清家委員が務めておられますが、本日はご欠席ですので、事務 局よりその議論の内容も含めてご説明いただき、その後議論を進めていただきたいと思 います。 ○需給調整事業課長 資料No.2-1が諮問文ですので、資料No.2-2と資料No.2-3に沿ってご 説明したいと思います。まず資料No.2-3の1頁をご覧ください。これは今年5月31日に政 府・与党で合意した緊急医師確保対策です。これは昨今の医師不足等を鑑み、政府と しても、ここにあるような政策を講じていこうというものです。  具体的に言いますと1にありますように、医師不足地域に対する国レベルの緊急臨時 的医師派遣システムの構築ということで、「医師不足地域に対し、都道府県からの求め に応じ、国レベルで緊急臨時的な医師の派遣を行う体制を整備する。上記の実施に伴い、 規制緩和等の所要の措置を講じる」というものです。この医師派遣については、例えば 病院から退職して不足地域の病院に再就職するという形もあり得るわけです。労働者派 遣が必須のものではありませんが、派遣元に雇用を継続したまま不足地域の病院に行く、 というニーズが一定程度あることから、労働者派遣の制度を使って、医師派遣システム の一定のシステムを構築するという趣旨です。  2頁が、今回考えている医師派遣のシステムです。上半分が医療法の体系、下半分の 三角形が派遣法の体系という格好になります。右側の「医師不足が深刻な医療機関」と いうのがもともとの始まりで、ここから医療法に基づく組織である都道府県の「医療対 策協議会」に医師派遣の要請が行きます。医療対策協議会においては状況把握の上、医 師確保の是非の検討をするなどして必要と認めた場合には、その地域における医療対策 協議会の構成メンバーである医療機関、例えば日赤や済生会といった公的機関を中心と して検討しておりますが、そういった所に医師派遣を要請するわけです。ここで、どこ の医療機関からこちらの医療機関へ、医師をいつまでに派遣するという協議が整ったと ころで、医師不足地域の医療機関が派遣先となるように、派遣法のシステムを作ります。 具体的には派遣先について、政令、省令等の措置を講じて、派遣先の医療機関を大臣が 告示で示すことによって、医師派遣を可能にしていくものです。  3頁の図は、都道府県内で医師の確保ができない場合、医療対策協議会からの要請で 厚生労働省の「地域医療支援中央会議」を利用することにより、都道府県の枠を越えて 医師派遣を行うものです。こういうものですが、これについて今回、派遣法の一定の手 当てを行うものです。  資料No.2-2の2頁をご覧ください。医療関連業務については、実は派遣法第4条に基づ く政令の第2条で、派遣の適用除外業務となっております。したがって医師の業務につ いては派遣法上、原則派遣ができないという形になっております。しかし下の四角にあ りますように、例えば紹介予定派遣や社会福祉施設等で行われる医師の業務、産前産後 等の代替業務、へき地の病院における医師の業務などの一定の業務については、適用除 外の例外規定ということで、現在は派遣が可能になっております。今回の改正では適用 除外の例外業務について、医療対策協議会が認めた病院といったものを付け加えます。  では1頁に戻ってください。今回諮問している案は、派遣法施行令の一部改正及び施 行規則の一部改正です。まず医師の禁止業務についての例外規定を設けるために、派遣 法の施行令を改正する必要があります。この例外規定として設ける派遣就業の場所を「 地域における医療の確保のためには医業に業として行う労働者派遣により派遣労働者を 従事させる必要があると認められるものとして厚生労働省令で定める場所」というよう に規定して、具体的な場所は厚生労働省令で定めることとしております。  その内容については(2)に2つあります。(1)は「都道府県が医療法第30条の12第1項 の協議を経て同項の必要な施策として地域における医療の確保のためには医業に業とし て行う労働者派遣により派遣労働者を従事させる必要があると認めた病院又は診療所」 となっております。これがすなわち医療対策協議会が医師の確保が必要と認めた病院又 は診療所であって、厚生労働大臣が定めるものです。(2)は、当該病院等に係る患者の居 宅についてです。いわゆる往診ができないとまずいわけですので、病院等と居宅を並べ るという形になっております。  (1)の病院等については、派遣法では派遣先の地域を指定していくという適用除外の構 造になっておりますので、派遣先の病院を厚生労働大臣が定めます。具体的には告示で、 病院等を指定していくという形の改正案です。この案について、労働力需給制度部会に おいては8月28日、9月19日、9月27日、10月15日と4回にわたり議論をいたしました。  その際に、委員から意見が出ました。私どもの構想では派遣元、派遣先とも、病院又 は診療所を予定しております。これについては都道府県の医療対策協議会で、病院から 病院へということを前提に指定をいただくということを考えていました。ただ派遣法の 政令、省令、告示では、派遣先を指定するというところまでしかできませんので、派遣 法の現在のシステムでは、派遣元については特定することができません。しかしながら 病院から病院へということであれば、派遣元についても病院等であるということを、政 省令レベルで明確に定めるべきであるというご意見が出ました。  これに対しては、資料No.2-3の7頁にあります。今回の医師派遣のシステムについては、 医療法に基づく医師派遣の仕組みが前提ですので、当分科会の所掌ではありませんが、 医療法施行規則のほうで派遣元を担保していこうという提案をしております。これにつ いてご説明しますと、まず○の1つ目は、医療対策協議会で医師派遣を決定するときに、 派遣元は病院又は診療所に限るということを、医療法施行規則において規定するという ことです。下の○は、今回の派遣先となる不足地域の医療機関が派遣労働者を受 け入れる場合には、個別に医療対策協議会の協議を経るということを義務づけて、これ も医療法施行規則に規定するということです。  派遣元については、医療対策協議会で病院等に限るとした上で、派遣先についても、 受け入れる場合には医療対策協議会の決めたところ、すなわち病院等からしか受け入れ られないという形を、医療法施行規則のほうで作ってはどうかという提案を申し上げま した。そして政令・省令案については10月15日に、当部会としては「労働者派遣事業の 適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令の一部を改正 する政令案要綱」等について、これを妥当と認めるというご報告を取りまとめいただい たところです。 ○大橋分科会長 それでは本件について、ご意見をお願いいたします。 ○徳茂委員 質問をいくつかよろしいでしょうか。まずは今回のスキームについての質 問です。医療法に基づいて、医療法の世界で派遣元は病院に限定するというご説明だっ たように思いますが、派遣元になる病院が派遣法上の派遣事業者という性格も併せ持つ ことになるというように理解いたしました。医療法に抵触さえしなければ、施行規則で 病院でさえあればいいということになれば、もし仮にその病院が一般の派遣業者のよう に、たくさんの医師を抱えて、派遣業としての医師派遣をやるということも可能なのか どうかという質問が1つ目です。病院が大々的にそういうことを業としてやろうという ことが、可能になるのかどうかです。  派遣元となるほうの病院も、私が考えますに、ほんの一部の病院を除いては、そんな に潤沢に医師が余っている状況ではないと思います。日赤にしても済生会にしても公立 病院にしても、公的な病院がそんなに潤沢という感じは受けていないのです。このスキ ームの中で送り出すかどうかについての判断は、派遣を要請されて派遣元になる病院側 のほうに、裁量がちゃんと確保できているのかどうか。そちらの医療体制を崩してまで、 送らなければいけないようなことは起きないのかというのが2つ目の質問です。  それから、これは運用に関連する今後の要望ということになるかと思います。医療対 策協議会を構成するメンバーが、先ほどの資料の中にあったと思います。医業の世界に ついて詳しい方が揃っていらっしゃるとは思うのですが、労組法、労働者派遣法、労働 基準法といった労働関係法令については、必ずしも十分な専門的な知見を持った方々が 構成メンバーに入っているとは言えないと思っております。  実際に派遣ということが行われるときに、派遣される医師、雇用主たる病院との労使 関係に、今までとはかなり違う大きな変更があると思うので、労使関係に関連する知見 が十分に発揮されないといけません。実行的には医療対策協議会が調整の役割を担うこ とになるわけですから、そこでは労働関係法規を十分熟知した運用が確保されないとい けないと思います。そこはどのように担保されているのですか。あるいは医政局と職安 局が共同で、運用の内容について監督するような通知とか、そういうことを予定されて いるかどうかについて、教えていただけたらと思っております。  その関連で言いますと、医療対策協議会の構成について、もう少しその観点からの補 強が必要です。例えば労使代表が入るなどというのも、アイデアの1つだと思います。 そういう補強が要りはしないかということを提起させていただきたいと思っております。  それから、派遣元における使用者の責任です。いままでの病院における雇用主として の責任とは異なる、新たな責任が発生すると思いますので、そこについても齟齬がない ように。派遣される医師の本人の意思確認などが疎かにされたりすることはないとは思 いますが、そういうことについての医政局の十分な監督というのでしょうか、そういう ものが発揮される体制を是非取っていただきたいと思っております。それらもひっくる めて、新しい事態ですので、一定の期間後にきちんとした検証が行われるようにしてい ただけたらと思います。 ○需給調整事業課長 1番目の質問と4番目の質問に対してお答えいたします。まず派遣 元が業として行う場合に、いろいろな所に派遣できるのかというご質問ですが、今回の スキームにおいて、派遣元となる病院については、一般もしくは特定の派遣の許可の申 請又は届け出をしていただいて、派遣元になっていただくことになります。これは現行 の派遣法の枠内で行っていただくものです。先ほど現在の派遣法の医療業におけるスキ ームをご説明いたしましたが、例えば紹介予定派遣、産前産後、へき地等への派遣につ いては、現在でも病院等が許可ないし届け出を受けて派遣することが可能です。そうい った意味では今回の政令、省令の改正を行っても、病院が派遣元となってその範囲内で いろいろな所に派遣するということは、現在もできますし、今後もできます。  4番目の、派遣元における使用者の責任が変わるのではないかという質問です。病院 等における使用者責任はこれまでもありますが、それに加えて、派遣法に基づく派遣元 事業所としての責任は、当然派遣法に基づいて負っていただきます。派遣労働者である ことの明示とか、派遣法にはさまざまなことが載っておりますが、これを併せて果たし ていただくことにより、当然、派遣事業所の許可等を受ける場合には、派遣元責任者の 講習等も受けていただきます。 ○医政局総務課企画官 今ご質問いただいた2番目と3番目について、私からご説明申し 上げたいと思います。今ご指摘がありましたように、確かに派遣に協力していただく派 遣元となる病院も、そんなに余裕を持って医師を抱えられている状態というのは、正直 申し上げて少なかろうと思っております。今そうした中で、より深刻な状態にある病院 を助けていただくために、各都道府県の医療対策協議会という場での議論を経て、協力 をお願いしているというのが現実です。それについては今後も変わりません。したがっ て、今回の改正によって協力が義務化されるとか、自分のところの体制を犠牲にしてま で協力いただくということは、なかなか難しいわけで、「苦しいながらも協力しましょ う」と言っていただける場合に、初めて医療対策協議会での調整が成り立つというのが 前提です。  それから医療対策協議会のメンバーですが、資料No.2-3の4頁をご覧ください。「構成」 ということで、左側に法律で定めている構成メンバー、右側に省令で定めている構成メ ンバーがあります。ここに掲げてあるメンバーは医療対策協議会に必要とされるメンバ ーですが、その他の関係者をメンバーとして加えることについては、各都道府県の裁量 があります。したがって、私どもとしては、今回お認めいただいた場合は今のご指摘も 踏まえて、それをまた各都道府県にきっちりと周知しなければいけません。労働者派遣 法の細かな運用、あるいは留意点についても、きちんと明らかにしなければいけないと 思っておりますので、そうした機会をとらえて、またご指摘の点も踏まえて対応してま いりたいと考えております。 ○大橋分科会長 その他、ご意見はありますか。ご質問でも結構です。 ○石井委員 いまは医師不足で、派遣元のほうでも余裕がないという話でした。そうい うことから考えますと、現行の派遣法によれば3年まで拡張できるにしても、派遣期間 が1年というのが基本ですよね。しかし、そういう規制が果たしていいのかどうか。そ れから3年以上だと正規の人にしなければいけないといった、いろいろな規制があるわ けですが、そういう規制があるというのはいかがかと思います。また、医師に余裕がな いということになれば、派遣元のほうから選択できなくなります。必ずしも良い医師と か悪い医師という定義をしてはいけないのかもしれませんが、受ける側の選択の自由と 言うのですか、事前に面接ができるということは、ある程度許してもいいのではないか と思うのです。いかがでしょうか。 ○需給調整事業課長 いわゆる派遣の期間制限や事前面接については、現在、需給部会 のほうで議論を行っているところです。これについては今回の医師派遣も含めて、全体 的な中でご議論させていただいております。特に期間制限については、使用者側委員か らは緩和すべき、もしくは撤廃すべき、逆に労働側からは、そもそも派遣というのは一 時的、臨時的な需要に応えるためのシステムとして、特に平成11年改正で開かれた非26 業務について、そういう性格を持っているので、この期間制限は継続すべきだというご 意見がありました。  事前面接についても、実際に派遣先で働く以上、一定程度の面接と言いますか、打合 せはやってもいいのではないかというご意見がある一方で、本来、派遣というのは派遣 元が労働者を選んで送り込むべきものであるので、少なくとも特定につながるものはや るべきではないというご意見もあります。特に今回の医師派遣については、緊急対策と いうことで、ある意味、派遣元の病院に若干無理を言って派遣していただくものなので、 あまり長く行っていただくことは、なかなか難しかろうという事情もあります。どちら にしてもご指摘の点については、部会のほうで議論を続けさせていただいて、一定の結 論が出ましたら、またこちらの分科会のほうにも報告させていただきます。 ○大橋分科会長 いかがでしょうか。ほかにありませんか。これは派遣という枠組みで 構想されていますが、基本的には応援体制という意味で、それを派遣法の枠組みでやっ ておられるわけです。いろいろ考えられて、この枠組みでということになったのだろう と思いますし、委員としては応援体制ということで、地域によっていろいろな医師の偏 在等々もありますので、こういったものが構想されたと思うのです。これが有効に機能 すれば、大変喜ばしいことですが、とりあえずこれでスタートさせるという意味で、お 認めいただきたいと思うのですが、いかがですか。 ○徳茂委員 1つだけ。要望になるかと思いますが、緊急避難的にすぐにでも対策が必 要である事情は、私もよく承知しているつもりです。そのことがうまく解決してほしい と思う一方で、医師の派遣についてはこの間も大変慎重な対応をしてきましたから、こ のことでこれまでの議論の土台が崩れるような結果に、安易につながってほしくないと いう思いもあります。しかも病院の職場は、医業については皆さん大変こだわりを持っ た態度をお取りになりますが、労働関係については必ずしもそうではない。労基法違反 と言ってしまっては差し障りがあるのでしょうけれど、それに近い事柄もよく指摘され ている業界です。  そういう所に派遣の仕組みがより拡大していくという現状については、よりよい職場 環境をつくることが、今回の対策の本旨です。医師もちゃんと働けるようにしたいわけ ですので、快適な職場になるような施策を併せて厳密に対応していただきたい。それに ついては、医政局と職安局が共同で通知文を出すようなことが必要だろうと思っており ます。先ほど指摘を踏まえた対応をするというお答えもいただいておりますが、重ねて 是非お願いしたいと思います。 ○長谷川委員 私は部会の委員でもありまして、この医師派遣については、非常に慎重 な立場で対応してきました。いま徳茂委員も申し上げたように、何が問題かと言います と、是非私は安定局と医政局できちんとした指導文書を流してほしいのです。問題は、 医師が病院で「あなたは宮古の病院に行ってくれ」と言われたけれど、それがどういう 性格を持つものなのかです。自分の所の病院が使用者であって、そこがまた派遣元でも あると。自分が今までいた所から宮古の病院に行くときの行き方については、労働条件 の変更があるわけですから、その扱い方については病院と個人との契約関係、派遣元と しての病院と労働者との関係、それから派遣元と派遣先の関係について、どういう関係 が成立するのかということを、医政局はしっかりと病院に知らせてほしいのです。  部会では、1年後にその実態についての詳細を報告するという確認がされておりますの で、このスキームを使って、トラブルが起きないような注意を図っていただきたいと思 います。この制度に対して、私はいまでも非常に慎重です。医師不足に対してこの制度 で解決できるとは、いまだに思っていません。派遣法を安直に使うのではなくて、医政 局はどうやったら日本の医師不足が解決できるのか、どういう制度がいいのか、もっと 別なスキームについて、是非、引き続き検討していただきたいと思います。 ○大橋分科会長 ほかにありませんか。今後いろいろと始められて、検討すべき点も出 てくるかと思います。ほかにご意見がないようでしたら、当分科会としては厚生労働省 案を妥当と認め、その旨を私から労働政策審議会長にご報告申し上げたいと思いますが、 よろしいでしょうか。                  (異議なし) ○大橋分科会長 それでは事務局から、報告文の案をお配りいただきます。                (報告文案配布) ○大橋分科会長 お手元に配布していただいた報告文案により、労働政策審議会長宛に 報告することとしてよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○大橋分科会長 それでは、そのように報告させていただきます。その他、何かご意見 等がありましたらお願いします。いかがでしょうか。  特にないようでしたら、本日の分科会はこれで終了いたします。 (署名委員指名) どうもありがとうございました。 (照会窓口)                        厚生労働省職業安定局総務課総務係 TEL:03-5253-1111(内線 5711)