07/10/18 審議参加と寄付金等に関する基準策定ワーキンググループ 平成19年10月18日議事録 審議参加と寄附金等に関する基準策定ワーキンググループ  議事録 1.日時及び場所   平成19年10月18日(木) 13:30〜   弘済会館 4階「椿」 2.出席委員(6名)五十音順     笠 貫   宏、 永 井 良 三、 西 島 正 弘、 樋 口 範 雄、     日比野 守 男、◎望 月 正 隆 (注) ◎座長   他 参考人6名   欠席委員(2名)    岩 田   太、 神 山 美智子   3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、   中 垣 俊 郎(審査管理課長)  他 4.備  考   本ワーキンググループは、公開で開催された。 ○総務課課長補佐 定刻となりましたので、ただいまから第2回「審議参加と寄附金等 に関する基準策定ワーキンググループ」を開催させていただきます。本日は、先生方に おかれましてはご多忙のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。  本日、岩田委員、神山委員がご欠席との連絡をいただいております。  なお、事務局ですが、医薬食品局長につきましては、本日、所用で失礼させていただ いております。黒川審議官につきましては、所用で中座させていただくことをお許しい ただければと思っております。それでは望月座長、議事進行の程、よろしくお願いした いと思います。 ○望月座長 早速議事に入りたいと思いますが、その前に配付資料の確認をお願いいた します。 ○総務課課長補佐 配付資料の確認をさせていただきます。お手元にまず座席表を1枚 置いておりますが、そのあと、議事次第の1枚、資料1として、ワーキンググループの 「名簿」、資料2として、現在の「申し合わせ」、いわゆる暫定ルールというものです。 資料3として、前回ご確認いただきました「今後検討すべき主な論点(案)」です。資 料4ですが、本日、ヒアリングに参加していただいております「関係団体からの意見書」 です。  なお、この意見書の最後ですが、ヒアリングにつきましては4団体ですが、当ワーキ ンググループに意見を提出したいという団体につきましてホームページにおいて意見を 募集しましたところ、日本製薬工業協会から意見の提出がございましたので、本資料の 末尾に付けさせていただいております。  資料5は、「日米欧の論点毎の対比表」ということで、横紙の3枚ものです。資料6 は、「第1回WGでの指摘を踏まえた海外調査結果概要」です。そのほか、参考として私 どもが用意させていただいたものとしては資料7-2ということで、前回使わせていただ いたEMEA及びFDAにおける利益相反の規定という冊子をご参考までに配付させていただ いております。黄色い冊子がお手元にあろうかと思いますが、これについては、本日の ヒアリング対象団体であります薬害オンブズパースン会議から配付を希望された資料で すので、席上に配付させていただいております。資料につきましては以上です。過不足 等がございましたら申し出ていただければと思います。 ○望月座長 ありがとうございます。委員の皆様、よろしいでしょうか。よろしければ 議題に入りたいと思います。本日は、前半は関係団体からのヒアリング、後半は、ヒア リング結果等も踏まえて論点に対する議論を予定しております。  議題1としまして、これから4つの団体の方々から、順次お話をお伺いしたいと思い ます。各団体ごとに大体7、8分以内でお話いただきまして、その後、委員の方々からの ご質問等にお答えいただきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。事務局 を通じてヒアリングの公募をいたしましたところ、4つの団体から申込みがありました ので、申込み順に1番目、全国医学部長病院長会議、2番目、薬害オンブズパースン会 議、3番目、全国薬科大学長・薬学部長会議、4番目、全国薬害被害者団体連絡協議会に ヒアリングをお願いし、各団体の方々からも、本日、ヒアリングにご協力いただけると いうご回答をいただきました。各団体の皆様方、先ほどお話しましたとおり、7、8分以 内という非常に短い時間ですが、後にまたいろいろお伺いしたいこともあるかと思いま すので、大体、そのような時間でお話をいただければと思います。よろしくお願いしま す。それではまず、全国医学部長病院長会議の河野茂様からご説明をよろしくお願いい たします。 ○河野様 長崎大学の河野でございます。資料4の1枚目に全国医学部長病院長会議か らの意見を書いております。最近、インフルエンザ治療薬タミフルの副作用報告を検証 する調査班の複数のメンバーが、当該製薬企業から所属大学への奨学寄附金を受けてい たという理由で委員を解任されたり、自ら辞任するという事態が発生しています。こう いったことで実は国立大学医学部長会議でこれに対する見解ということで意見を取りま とめまして、その意見を基に、ここに書いておりますところがその見解となりました。  そして今回、こういったものを全国医学部長病院長会議としてここに意見として述べ たいということです。奨学寄附金は学術研究に要する経費や教育の奨励を目的とする経 費にあてられるべきとされており、その主旨に沿った運用が大学当局で適正な管理の下 でなされています。そのため今回の問題の本質は、奨学寄附金の是非ではなく、「臨床 研究等にかかる利益相反対応策」の問題と捉えるべきであると考えています。即ち、科 学者が社会に対する説明責任を果たすための制度や組織としての環境整備が不備である ことにより起こった問題であると思います。  日本の科学技術基本計画の基本コンセプトとして、産学連携が国家戦略として推進さ れていますが、大学や研究機関、学術団体等における研究成果を社会に適切に還元して いくことは、我が国経済の活性化や国民が安全・快適な生活を享受する上で極めて重要 であると同時に、教育・研究の活性化を図る上でも大きな意義を持っています。この産 学連携活動を適正かつ社会の理解を得て推進するためには、学術機関や団体等が独自に 利益相反ポリシーを策定し、適正に対応していくことが必要不可欠です。  今回のこの問題を契機として、同様の調査研究班の任務を適正に推進するためには、 関係委員が所属する機関において適切に利益相反状態に対応することが求められます し、調査研究班を形成する機関も同様に、早急に利益相反ポリシーを策定し、利益相反 状態があると思われる委員について適切な対応策の下、公平性と透明性を担保に、専門 的な経験や知識を生かしての調査研究ができる環境をつくることがより必要な対策であ ると考えています。  このような観点から、平成18年3月に国立大学医学部長会議と国立大学病院長会議が 協力して「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」を作成しました。 現在、各大学等では、このガイドラインの基本的な指針や情報を参考に利益相反のルー ルづくりに取り組んでいます。このように研究者個人の利益相反状態に適切に対応する ことにより、適正な臨床研究の推進、さらには医学研究成果を社会へと還元させていく ことが国民の福祉や健康の増進、難治性疾患の克服につながっていくものと思われます。  他方、医薬品の製造認可過程にさらなる透明性(関係する審議会、委員、専門家の意 見や結果がどのように反映されているかの公表など)が確保され、この種の認可、決定 が社会に正しく認識され、正当に評価される環境が整備されることも重要な課題である という認識から、今般、厚生労働省が検討中の薬事審議会委員の審議参加と利益相反の ルールにより、一層の透明性の確保がなされることを期待しております。  実はこういった提言をまとめまして、ここで私たちが奨学寄附金と考えているものは、 いま述べましたように学術研究に要する経費や教育の奨励を目的とする経費にあてるべ きとされている、こういった使途を限定されない給付金(受入れ目的が教育・研究に限 られており、その使途は寄附者が特定することとなっている。)ということでして、こ れらは特定企業との産学連携とはまた別のものであり、この辺りの適正な理解も大変必 要ではないかと思っております。そういった上で例えば今回の問題などは、研究者個人 の利益相反のマネージメントの問題ではなく、例えば複数の企業から組織として奨学金 を受けている機関に所属する構成員がその職務を遂行する上でその寄附の恩恵を間接的 に受けている、そういった状態にあり、そのような構成員がその企業が関係するかもし れない社会問題について述べるときには、その意見が中立的であるとみなされるかどう かについても、社会もしくは意見を求める側がどのようにその中立性を確認するかとい う問題があると考えております。このようなことをここで全国医学部長病院長会議とし て意見陳述をさせていただきました。以上であります。 ○望月座長 どうもありがとうございました。ただいまのご発言あるいはこれからの論 点に関するお考えなどにつきまして、ご質問等はございますか。委員の先生方、どうぞ ご発言ください。 ○樋口委員 この検討会の役割は何かということをまず考えてみます。現在行われてい る暫定ルール、申し合わせ事項というのがあって、いまはとりあえずそれでやっている わけです、何カ月かの間。それを恒久的なものにするのか、あるいは全く新しくルール を考えていくのかというようなことが検討会の役割でもありますので、全国医学部長病 院長会議として、今の暫定ルールについてどのようなご感触を持っているのかというこ とを少し具体的に伺えたら助かると思いますが。 ○河野様 いまから私が述べますことは、まだ私がいままでのこの議論の中で大まかに 捉えていることでして、もちろん今後、全国医学部長病院長会議での了解が必要になる と思いますが、基本的には、いま述べましたように奨学寄附金と個人が受ける利益を明 確に区別していただきたいというのがそこの趣旨です。そして、その中で個人が受ける ような利益に関しては、いま議論されているような一定の基準づくりが当然必要になる だろうと考えております。 ○望月座長 よろしいですか。 ○樋口委員 はい。 ○望月座長 私からいいですか。奨学寄附金は大学当局で適正な管理の下でされている ということは、全国医学部長病院長会議傘下の大学では、奨学寄附金については大学が 全部適正に、厳正に管理していると理解してよろしいですか。 ○河野様 はい、そのように思っております。この意見は、まず倫理委員会に諮りまし て、そこでまとめて、各医学部長全員にこのコメントの確認を求めて、そして、そこか ら来ました意見をさらにまとめてここにこういった形にしているものです。 ○望月座長 学術と教育の奨励ということで目的がはっきり決まっているから、これは 別にすべきだというお考えですね。 ○河野様 はい。 ○望月座長 わかりました。もう1つお聞きいたします。国立大学医学部長と国立大学 病院長会議で平成18年3月から利益相反のルールづくりに取り組んでおられるというこ とで、これの進行状況といつごろに完成するか、完成しないものかもしれないのですが、 それについてはいかがでしょうか。 ○河野様 このガイドラインに関しましては、既に出来ていまして、文部科学省の賛助 も得まして全国に流しております。これで利益相反の委員会が各大学に立ち上げるよう にということで、このガイドラインを基にその動きが始まっているということです。 ○望月座長 近いうちに全国医学部長傘下の医学部にはそうしたものが出来上がると見 てよろしいですか。 ○河野様 はい、私たちもそれを100%、そういった委員会を作っていただくようにむ しろ強力に働きかけるべきだろうと考えております。例えば全国医学部長病院長会議に 参加している80の大学でそれが完成しているのはたぶんまだ10以下ぐらいではないか と思っておりますが、今後、それを全部に広めるような活動が必要になるだろうと考え ております。 ○望月座長 ほかにはどなたか、ご意見、ご質問はございますか。 ○樋口委員 今、ご説明を受けた利益相反ガイドラインというのは、つまり、そちらで お作りになっているものは、大学の研究者が研究に関与するときの、主としては経済的 利益だと思いますが、経済的利益相反関係がどうなっているかということを学内で精査 し、ところによっては利益相反委員会というようなところにちゃんと申告した上で臨床 研究、治験以外に自主的な臨床試験もあると思いますが、そういうものに当たろうとい うことかと理解しているのです。ところが、ここの場で議論しているのは、研究そのも のではなく、研究の成果として上がってきた、薬品なら薬品の承認を考えるような審議 会での委員のあり方の問題ですね。ですから私の理解では、局面が少し異なっていて、 共通する問題を抱えていながらと、しかし違った考慮を要求する問題でもあると、そう いう話だと思っているのです。  そこで2つお伺いしますが、1つは、先ほど来、つまり奨学寄附金というのは組織を 通してきちっとやっているもので個人の利益相反については、間接的には影響があると 思いますが、直接的にはその間の関係を切るような形できちっとやっているのだからと いうことですけれども、こちらの薬事審議会等における審議の場での話で結構なのです が、私の頭では3つの段階があると思っています。第1段階は、利益相反関係は、組織 のほうにお金がちゃんと来ているだけなので非常に間接的なものなので個人からは、デ ィスクロージャーも必要ないという考えがやはりあると思うのです。利益相反関係は、 本当は薄いものなのでディスクロージャーも必要ない。第2段階が、そうでなくやっぱ りディスクロージャーはしてもらわないと困る。その人が所属している組織にある製薬 企業からこれだけのお金が入っているということは、やはり堂々とディスクロージャー してその上で審議に参加してもらうという、ディスクロージャーという透明化のための 原則を確保するという考えもありうると思います。これに対し、第3段階はプロヒビシ ョンという、つまり禁止ルールで、それだけの利益相反があると、審議に参加できない か、あるいは審議には参加できるけれども議決には参加できないか、何らかの意味のプ ロヒビションを掛けるという、この3段階があると思うのです。先生はいま、奨学寄附 金について、薬事審議会等の審議について、ディスクロージャーまで必要ないという第 1段階のルールでいいとお考えでしょうか、個人的なことをお聞きしているのかもしれ ませんが。 ○河野様 いいえ、これは全国医学部長病院長会議でほとんどの方の意見だと思います が、ディスクロージャーはもうかなり一般的に受け入れられるものだろうと考えており ます。ですから、どの範囲のディスクロージャーかという議論はしておりませんが、少 なくとも、いまマスコミ等から各大学に奨学寄附金の状態はどうですかと質問が来てい ますが、それに関しては、ほとんどの大学が、もうそれをディスクローズしないという ことはたぶんあり得ないだろうと考えています。  ただ、いま言いましたものの禁止項目ですが、奨学寄附金のディスクロージャーされ たデータを基に、それで例えばこういった審議に参加できないとするのは、我が国の専 門家の現実的な状況からすると適正な審議に支障をきたすのではないかということで、 やはり個人的な関係、利益というのは、そこにはプロヒビションは、エリミネーション ですか、あるところは十分理解できると個人的に考えております。 ○樋口委員 すみません、もう1点だけ。 ○望月座長 はい、どうぞ。 ○樋口委員 これは要望みたいなものなのですが。国立大学の医学部長会議と病院長会 議でガイドラインを作成し、その運用に努めているという段階だと思うのですが、もち ろんガイドラインを作るというのは非常に立派なことでまず第一歩だと思うのです。し かし、次にはそれが実際にどのように運用されているかという話があって、具体的に、 例えば私なら私が医学研究者であって、しかし、何かの形で少し利益相反関係もあると いうような場合、利益相反委員会に持ち込まれて具体例として運用されるという、まず 大学内の何らかのより詳しいルールが具体例の中でだんだん形成されていきますよね。 私などは日本国内で全体としてあまり違ったルールで行われないほうがいいと思ってい ます。一方で、初めに画一的なルールを作れということでパッとやればいいのかと言う とそうでもなくて、それぞれの医科大学において実際の現場でどこまでの利益相反をど のように考えればいいかというようなことを積み重ねていって、ほかの大学の例も比較 検討しながらいいルールにしていくというようなことが考えられると思うのです。その ような方向性というか、ロードマップのようなものはおありなのでしょうか、今後のこ とですが。 ○河野様 いま、このガイドラインを基に各大学でその大学の独自色を生かした独自の 検討がなされています。ただ、たぶんどこでもやはり手探り状態ですのでいろいろな情 報を基に自分たちで作ろうとしていますから、ベースラインが全く相反するようなもの は出来ないだろうと。ただ、大学、研究機関の状況は、そこの独自の状況に合わせて策 定できるのではないかと考えております。 ○樋口委員 ありがとうございました。 ○望月座長 ほかの先生方はいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、どうもあ りがとうございました。次に、2番目の薬害オンブズパースン会議の水口真寿美様から ご説明をよろしくお願いいたします。 ○水口様 意見陳述をさせていただきます。薬害オンブズパースン会議の事務局長をし ております弁護士の水口です。陳述の機会を与えていただいてありがとうございます。 オンブズパースン会議は薬害防止を目的とするNGOでして、製薬企業等からの寄附は一 切受けずに10年間活動してまいりました。私個人としても、製薬企業との利益相反関係 はございません。利益相反問題は、薬害オンブズパースン会議が特に関心を持って取り 組んできたテーマの1つです。その活動を踏まえて意見を述べさせていただきます。お 手元の意見書(改訂版)を先日出させていただきましたが、それに従って意見を述べさ せていただきたいと思います。  まず、私たちの利益相反問題についての基本的な考え方、基本的な規制のあり方につ いて述べたいと思います。それは、一言で言えば、厳格な基準が設定されるべきだとい うことです。利益相反関係がもたらすいろいろな弊害については、既に各方面で指摘さ れていまして、アメリカのペンシルベニア大学のいわゆるゲルシンガー事件やカルシウ ム拮抗剤の安全性に関する論文執筆者と製薬企業の関係などが有名ですが、他にも多数 の実証的な研究があります。  今日、お手元に黄色い「利益相反」という冊子を配付させていただきました。これは、 私たちが過去3年間にホームページで海外の文献をずっと見て、その都度紹介させてい ただいておりました利益相反問題に関する海外の情報を集めたものです。10月1日に改 訂いたしました。これをご覧になると、利益相反問題の深刻さがわかるかと思います。 中でも、本ワーキンググループとの関係で言えば、利益相反関係が政策決定に及ぼす、 あるいは薬の承認に及ぼす影響ということで、それを端的に示す例としてこの冊子の45 頁に米国FDAの合同諮問委員会のバイオックス販売再開勧告と諮問委員会の利益相反と いうものについての記事を紹介しております。これは大変示唆に富んでいますので、後 ほど、是非ご覧になっていただきたいと思います。  ここに『産学連携と科学の堕落』という非常にショッキングな題名のシェルドン・ク リムスキー先生の執筆された本があります。ここでも指摘されていることですが、私ど もは活動してきて、「産学連携は善であり、利益相反ルールは、それを阻害しない範囲 で行うマネージメントの問題である」という考え方そのものに疑問を持つようになって おります。利益相反の問題はそれほど深刻であると受け止めております。  特にこのワーキンググループについて言えば、重要なことは、先ほどもご指摘があり ましたが、ここで決めようとしているルールは個別の医薬品の承認、副作用被害対策、 あるいはこれに関連する制度の創設や変更に関わる国の審議会や検討会の委員の利益相 反を規律するものであるという点だと思います。製薬企業が営利目的から安全性を軽視 しがちであるということは、私たちの国の繰り返された薬害の歴史が教えるところでも あり、国の責務は、それを監督する点にあるわけです。これまでの薬害事件においても、 製薬企業と研究者の利益相反関係、あるいは委員の利益相反関係が薬害の発生・拡大に つながって、国が監督責任を果たせなかった例があるということを肝に命じるべきだと 思います。  したがって、本ワーキンググループで策定する規制ルールは、とりわけ厳格なもので あることが必要だと考えております。この点で、大学における一般的な研究者の利益相 反関係を規律する基準とは同列には論じられないと考えております。また、先行する EMEAやFDAの規則も参考にはすべきですが、私どもは、これがベストな基準ではないと 考えております。  では、その規制の基本的枠組みはどのようなものかということです。まず第1点は、 例外なき申告と徹底した情報公開、これがまず基本的にいちばん重要なことであると思 います。基準を作る際に起こり得る利益相反関係をすべて想定して、それで審議参加に 関する基準を策定するということは実質上困難ですし、基準をいたずらに複雑化させて 国民からもわかりにくいものになるという恐れがあります。したがって、基本的な基準 を設けましたら、あとは基準に該当しない場合でも実質的な公平さを吟味できる、そし て、その結果、公平さが疑われる場合には参加を認めないということが可能であるよう な条項を設け、そして、実質的な審査ができるようでなければならないと思っておりま す。そのためには、その前提としてまず申告と公開の基準が審議参加の基準とは同一で ないということを前提に、申告対象については広く、申告対象期間については長くとる ということが必要であると思います。そして、委員から提出された申告書は、EMEAと同 様にWebサイトで公開して、国民が閲覧できるようにしていただきたい。国民の監視を 可能とするという観点からは、会議開催の2週間前を目処に、審議の結果や理由も付し て公開していただきたいと思います。例外なき申告と徹底した情報公開が実現するかど うかがこの利益相反ルールを本気で実効性のあるものにしようとするのかどうかという こと、その基本姿勢を測る試金石だと考えております。  基本的な枠組みの点で第2点目に強調したいのは、審議参加の基準を策定するに当た っては、金額の有無及び多寡にかかわらず、その地位に基づいて規制する場合と、一定 の金額に達したときに初めて規制するべき場合と2種類の類型があるということを念頭 に置くべきだということです。EMEAの基準も、金額の有無や多寡にかかわらず審議参加 が認められない類型があるということを示しているものと理解しております。この点、 暫定ルールや本ワーキンググループが設定された論点案では、金額の有無・多寡にかか わらず規制すべき場合があるということに対する認識が不十分なのではないかと私ども は考えました。  基本的枠組みの第3点は、基準に抵触する場合に、例外として参加を認める扱いはで きるだけ避け、安易に認めてはならないということです。特に「余人をもって代えがた い」という言葉は、規制を有名無実化する魔物であるということを指摘しておきたいと 思います。  第4点として、これも特にお願いしたいのは、参加の可否を決定する審査を行う独立 の委員会、仮称「利益相反に関する評価委員会」とでも言うべきものを設置して、そこ で検討していただくシステムを作っていただきたいということです。これは、先ほど申 し上げました例外なき申告と徹底した情報公開と並んで、特にお願いしたいポイントで す。ちなみに、EMEAには「利害申告評価部会」というものが設置されているようです。 そして、この委員会には、市民感覚から遊離した判断とならないように、評価委員会の 委員には、市民や薬害被害者を加えていただきたいと思います。それでは、駆け足でい ま申し上げました2つの類型に従って具体的に述べます。  まず、金銭の有無、多寡にかかわらず審議を認めるべきでないとされる地位に基づく 規制対象ですが、そこに書きましたように、コンサルタント、顧問、役員といった立場 にある方、治験責任医師や株式保有者等々ということです。特に企業から直接金員を受 領するのは露骨すぎるということで、NPO法人などを設置して、まずそこにお金を入れ るという形もありますので、製薬企業等の出資で運営されているNPO法人など、製造販 売業者との関連性が深い任意団体の役員等も、これに準じる扱いにすることが必要だと 思います。そして、この地位に基づく規制については、原則として期間は問わずに扱う。 競合品については5年程度でいいと思いますが、そういう扱いをお願いしたいと思いま す。  第2の類型、つまり地位による規制に抵触しなくても審議品目や製造販売業者から一 定の金額の受領があった場合に、審議参加を認めるべきではないとされる場合ですが、 ここがまさにこのワーキンググループで設定された論点ということになると思います。 これについては全部、意見書に1点、1点、具体的に書かせていただきました。  寄附金・契約金等の対象範囲について、暫定ルールが対象を広くとっていることは概 ね支持いたします。ただし、株式保有については、先ほど申し上げましたように、金額 の多寡を問題にするべきではないと考えております。  名宛人と使途決定者の関係については、決定権の有無を特に問題とすることなく、名 宛人になっていれば除外するべきではないかと考えます。  金額水準については、先ほど申し上げましたように、申告と情報公開については金額 の下限を設けないという扱いをしていただきたい。そして、審議参加を認めない金額に ついては、この暫定ルールに照らせば、年50万円ということを提案したいと思います。 この暫定ルールは、50万円という金額があれば議決に加わらないということが適切だと 判断されたものだと思いますが、私どもは、審議と議決をそれほど峻別することができ るのかという疑問を持っています。議決に至る意思形成は審議過程を通じて行われるわ けで、そこにおいて利益相反関係を有する委員が述べた意見が他の委員の意見構成に影 響を与える、そして公正さを失わせる可能性を考えると、この暫定ルールが、50万円が 公正さを失わせる可能性が議決に参加すべきでないとした以上は、それを審議参加の基 準とすることが適切かと思います。  競合企業については、EMEA等と同様に、本人と同様に扱うということです。考慮期間 については既に申し上げました。また、家族についても、本人と同様の扱いをしていた だきたいということです。  特に公表の扱いですが、議事録は、現在、2年間は委員名を伏せた形で公表するとさ れていますが、このルールの適用については排除していただきたい。根本的に私はこの 扱い自体について賛成しないのですが、特に利益相反問題については、これを適用しま すと、国民が不適切な参加を指摘する機会を失わせると考えております。あと3点だけ、 急ぎ足で付け加えさせていただきます。  論点設定にはありませんが、2つ。まずお願いしたいのは、虚偽申告に対しての制裁 として、委員の解任、審議参加への排除等をはっきり設けていただきたいということで す。参考人や結論に重要な影響を与える資料の扱いについても、利益相反関係を吟味で きるルールを何らかの形で考えていただきたい。抗癌剤イレッサについての「ゲフィチ ニブ検討会」において日本肺癌学会のガイドライン、これを周知徹底するということを 検討会は結論の一部としました。しかし、このガイドライン作成委員会の委員は、当該 医薬品ゲフィチニブを製造したメーカーと非常に密接な関係を持つ方が半分以上を占め ていたということがあります。ですから、こういうことについて何ら配慮をしないとい うことであれば、この審議会の利益相反ルールをいかに作っても無意味になると考えて おりますので、この点についても併せてご検討ください。  最後にお願いしたいことは、是非、このワーキンググループで実態調査をしていただ きたいということです。「今後検討すべき論点」には、厳しい規制を設けると「専門家 の選定が困難だ」「あらゆる委員が利害関係者になるのではないか」という懸念が記載 されていますが、それが本当なのか、これは客観的な根拠があるのでしょうか。こうい ったことについて実態を踏まえないで議論をしては、実効性のある、意味のある基準は 作れないと思っておりますので、是非この点をお願いしたいと思います。  私たちの国は、EMEAやFDAから遅れて、今ようやく利益相反に関するルールを設定す るところまできました。遅れたけれども世界に誇れる基準を作った、そのように言える ようになってほしいと心から願いまして、私の意見陳述を終わります。少し長くなりま して申し訳ありません。 ○望月座長 どうもありがとうございました。ただいまのご発言、あるいは論点に関す るお考えなどにつきまして、ご質問等はございますか。 ○樋口委員 これも教えていただきたいのですが。これは結局日本だけの問題ではなく なっていて、それこそ我々は遅れて来てこういう問題に直面している、あるいは今まで 十分気づかなかっただけなのかもしれないのですが。それは、一方ではとにかくいい薬 を開発して、それは患者のためにもなる、そのためには産業界だけでなくて学会も含め て産学連携とか産学共同という形でとにかく推進していかないといけないという国策が ありますよね。それがヨーロッパであれ、アメリカであれ、日本もそうですね。そうい う話になってくると産学連携を推進する体制の下では必ず利益相反問題が発生するとい う、どこでもこのディレンマにいま悩まされているわけで、それをどうやって解くかと いうのは、どこかにベスト・ソリューションが転がっていて、「はい、これだ」という のが本当はまだわからないような状況ですよね。  1つの例としては、金額的にあまりに小さな関与があるだけで影響されるわけはない のではないかという、ごく一般的な感じから、一定額以上になると、それはやはり気持 に、あるいは心に、判断に影響を与えるのではないか、というような形で金額ルールと いうのが出来てきているわけですね、結局。そこでアメリカやヨーロッパの、あとでま たこの紹介もこの会議であると思いますが、こういうルールが行われていますよという 話を我々もいま勉強している、わかっているという話で、そちらのご提案は、それより もずっと厳しくという話になっていますよね。 ○水口様 はい。 ○樋口委員 しかし、アメリカでも、ゲルシンガー事件その他、とにかく日本以上と言 っていいかどうかよくわかりませんが、はっきり弊害が出てきてこういうルール、ヨー ロッパの例は、私はあまりよく知らないのですが、同じようなことがあってこういうル ールというので、比較的似たようなルールが出来てきて、日本でどうしようかというと きに、このほかの所よりはずっと厳しいものにしないといけないのだというようなお考 えがおありだと思うのですが、こういう提案をするからには。その点、その理由をもう 少し補足的に説明していただきたいのです。 ○水口様 EMEAとFDAがあのようなルールを作ってその後の経験があるわけです。この 冊子や私どもの昨日アップしたホームページでも紹介しているのですが、ルールを作っ て、それがあまり有効に活用できていないというか、それが弊害の除去に役立っていな い、いろいろな矛盾も出てきているという経過も見ているわけです。そういうことを踏 まえて、遅れて来た者だから、逆に言うとそこで起きているいろいろな矛盾を、ルール が持っているいろいろな矛盾を活かした上でまたルールを作るということができる立場 にあるわけで、それを是非考慮の対象にしてほしいということです。  この50万円という基準は、私どもも、絶対これでなくてはいけないと申しているわけ ではないのです。どのぐらいの金額がこの日本という国で適切なのかということは、EMEA がこうだから、FDAがこうだからということではなくて、日本の実態やあるべき姿を考 えて、日本での実態調査を踏まえて設定すべきものではないかと思っています。ですか ら私どもがとりあえず50万円と提案した理由は、先ほど述べましたように、議決権行使 について「暫定ルール」が50万円というものに問題があるとお考えになった、公正さを 疑わせる可能性があるとお考えになったのであれば私どもは、議決権と審議参加をそれ ほど峻別して、審議に参加しているけれども決議のときだけちょっと席を外せばいいの だという考え方を採用いたしませんので、それで50万円という金額を出したわけです。 これが低すぎるということであれば、それなりの基準を設定していただければいいわけ ですが、その設定をするのにやはり実態の調査をしていただきたい。  私どもは、どのような実態調査が適切なのかと詰めた議論をまだしてはいないのです が、例えば現在の審議会の委員にアンケート調査を、匿名でもいいですから取ってみる。 それから、いろいろな大学に対して、全部は無理でしょうからいくつかサンプル的にア ンケート調査を取ってみる。そういうところから浮かび上がってくる実態も踏まえて、 それをまたパブリックコメント等を募集してルールを作っていく、ということで形成し ていっていただきたいと思います。お答えになっていますでしょうか。 ○樋口委員 ありがとうございました。 ○望月座長 ほかにはいかがでしょうか。 ○水口様 徹底した情報公開と第三者機関による審議と実態調査、この3本について特 に今日、私はお願いしたいと思っております。 ○望月座長 日々野委員、お願いします。 ○日比野委員 株や家族の問題では、ヨーロッパとアメリカでその扱いが違っています よね。 ○水口様 はい。 ○日々野委員 どちらかが家族も入れる、どちらかが入れないということですね。仮に 子どものそれを規制として入れようとする場合に、法律ではないから、その点はどのよ うに担保したらいいとお考えですか。 ○水口様 そこは基本的に委員の申告を信頼するということが出発点にならないと、こ の制度自体はやはり成り立たないと。ただ、全体として何か問題があれば、それは委員 会が改めて調査するということはあって然るべきだと思いますが、申告された内容に虚 偽があるかどうかということを調べることについて限界があるということは、これは克 服できない論点だと思います。  しいて言えば、疑問が湧いたときは調査をする権限を持つということと、いろいろな 意味で早めの情報公開、こういう申告をしていますということをホームページで明らか にしていただくことによって、いや、そうではありませんということがあれば、そうい う情報を寄せていただく方もいらっしゃるかと思います。その辺の申告内容に虚偽があ るかどうかということをどこまで検討できるかと言いますと、そこは非常に限界が大き いと。それだけに、何かの加減で虚偽の申告がわかった方は今後一切検討会委員にはな っていただけない、というような非常に厳しい制裁を持って臨むことが必要であろうと 思っております。 ○日比野委員 仮に親族まで含むとして、事前の申請を信用するとしますね。もしもそ れが虚偽の報告だとしたら、ばれたときにペナルティを課すというやり方も1つの方法 ではあるわけですよね。 ○水口様 そうですね。 ○望月座長 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。 ○審査管理課長 事務局からご意見を明らかにさせていただきたいと思います。第三者 委員会というものを提案されていますが、1つにはいまもある一定のルール、例えばい くら以下とかそういうルールを作ろうとしていて、そこは、申告には虚偽だという問題 はあるにせよ、そこさえなければ非常に明確なルールということになる。この第三者委 員会というのはそうではなくて、この例外扱い、抵触するのだけれども専門性があって どうしても欠かせないというような例外扱いをするときにこの第三者委員会で議論をす るというように考えればよろしいのでしょうか。 ○水口様 私が考えていましたのは、基本的に申告がございますよね、検討会があって。 申告があったときに、例えばそこの検討会を担当している事務局と座長が検討していく というような形では基本的なスタイルとして駄目なのではないかということです。第三 者委員会が、今おっしゃった例外の扱いだけでなく、要件に合っているかどうかという、 その最初のところから基本的に評価していく。しかし、形式的なところはそれほど時間 がかからないはずですから、その第三者委員会が本当に意味を持ってくるのは、例えば 申告自体は広く網をかけますので、形式的な基準から言うと該当しないけれども、これ、 ずっと見ているといかにも問題があるなとか、先ほどの家族とか親族の扱いとか、それ から、形式的基準と合わない部分について実質的な判断を必要とする場合に、たぶんそ の第三者委員会が果たす役割が基本的に大きくなっていくのだろうとは思います。です から、例えば各委員会の座長と事務局で見て、ここは例外に扱いたいと言ったときだけ その委員会にかけるというイメージではないのです。利益相反関係について基本的に扱 う委員会を設けるということではいかがかと思っています。 ○審査管理課長 私がわからないのは、形式的とか実質的とかいう言葉を使われておら れるわけですが、ルールは明確に、例えば家族の扱いも含めて仮に必要であれば、子ど もだといくらとかいう形で明確に作るわけですね。 ○水口様 はい。 ○審査管理課長 その基準に合っているか合っていないかというのは、そこは形式的に 誰でも判断できる。また公開もしろとおっしゃっているわけですから、誰でも判断でき る。ということはここには判断するものがない、第三者委員会として。だからあとは例 外扱いが残るのかなと、こう思ったわけですが。 ○水口様 今おっしゃっている例外扱いは、基準には該当するけれども参加を認めまし ょうという意味の例外扱いを念頭に置いておっしゃっているのだと思うのですが、それ だけではなくて、形式的な基準から言うと合格なのだけれども、例えばさっき言った任 意のNPO法人の役員をしているとか、そのNPO法人に対する企業の出資率がこのくらい だとか、そういった形式的にはクリアするのだけれども、やはりこの方の審議参加を認 めては会議の公正が疑われるのではないかという場合も起こり得るだろうと。そういう ものをきれいに排除できるようなルールを作ろうと思ったら、ものすごく細かくなるわ けです。FDAの最初の基準はものすごく複雑ですが。ですから、あまりいろいろな場合 を想定して網を張り過ぎるようなルールを作ろうと思うと、結局、見ていて何が基準な のかわからないということになりかねないので、ある程度シンプルな基準にならざるを 得ない。しかし、申告は広くしてもらうことによって基準に合致はしているように見え るけれども、やはり参加はご遠慮いただくべき場合のチェックも含めてその委員会でや るということを私どもは念頭に置いて、その第三者評価委員会というものを提案させて いただいた。両方ということで、実際の運用のことなどはまた考えていただくというこ とで、少なくとも私どもがいま念頭に置いているのはそういったことです。 ○望月座長 ありがとうございました。委員の先生方からほかにございますか。永井委 員、お願いします。 ○永井委員 第三者委員会の作り方はどうなのですか。その人たちを今度はどう選ぶの かとか、その人たちの利益相反をどう考えるのかとか。 ○水口様 そうですね、委員会の方については、やはり利益相反が全く問題にならない ような方に入っていただくしかないと思います。 ○望月座長 難しいですね。結局、その申告した内容をどうとるかということで、最初 におっしゃったように、原則としては正しいものとみなすし、審議会の委員というのは、 本来、皆さんが善意でやっておられる、自分の時間を削ってやっておられるので、本来 は善意でやって正しいものだろうと、だけど、問題が起こりうるということを考えます と。 ○水口様 そうしたことが制度の前提ですよね。 ○望月座長 はい、難しいと思いますね。笠貫委員、どうぞ。 ○笠貫委員 先ほど医学部長病院長会議からのお話にありましたように臨床研究等に関 する利益相反ですね。臨床研究というのは国民のためでもあり、一方で我々は利益相反 という観点から深刻な問題を抱えるわけです。先ほど間接的な関与、奨学寄附金ですが、 これは個人ではなくて大学という組織で間接的なものがあり得るとすると、その委員の 中立性を担保するために申告を広くし、そして評価委員会でそれを担保することになる と思うのですが、やはり形式の問題ですね。そうすると、形式のことで、確かに網を広 くすることが中立性の担保になることと、よりいい臨床研究により、国民にその医薬品 を含めて利益を提供するという意味で、どうバランスとなるかについては、何かお考え はございますか。 ○水口様 基本的に申告を広くして情報の公開をするということは、たぶん私どもと少 し違う立場をとられる方から見ても、基本的には臨床研究を阻害するとか、そういった ことにはつながらないと思います。情報の徹底した公開ということが、今おっしゃった 奨学寄附金の問題も含めて、組織として受けているさまざまな利益も含めてきちっとま ずは出していただくということが、現実的に何か研究を阻害するということはまず基本 的にはないと思います。審議参加をどのように制限するかというところではその論点は 問題になってきて、金額をどう設定するかによって、これでは本来委員になるべき人が なれないとか、そういった議論が出てくる場合もあるかもしれませんが、情報の公開と いう論点だけで言えば、そこは阻害事由にはならないのではないかと私は考えておりま す。  それと、奨学寄附金については私も不勉強でよくわからないのですが、議論するに当 たって各大学の奨学寄附金申請書というのを、ネット上でかなり公開されていますので、 私もとってみたのです。私の理解が間違っていればご指摘いただきたいのですが。確か に大学宛には申請していますが、特にこの研究とか、指定する研究者の氏名とか、そう いう記載欄のある申請書がありまして、全く何も限定しないというのもあるようですが、 実際にはここにという指定があって、特定の研究室なり特定の委員の方のところに行く という、つながりがちゃんと確保できるようになっているという指摘をされている方も あります。そういったことも含めて国民の側から見て実態はこうなのですということが わかるような実態の調査というか、現実をまず把握していただいて、そして、それに則 って適切なルールを作っていただくということをお願いしたいと思っております。 ○望月座長 ほかはよろしいでしょうか。どうぞ。 ○審査管理課長 ちょっとご意見だけお聞かせ願いたいのですが。私も、いまこれを読 みながら思ったのです。例えば競合品目の問題がございますね。高血圧の薬も薬理作用 に応じて、いまだと、おそらく4つ、5つに分かれると思うのですが、おそらく、広く 考えるのだとおっしゃられそうな気がするのですが、私が高血圧の専門家で、こういっ た薬の開発に全くタッチしていないということであれば、私の専門性というか、医薬品 分野における知見は非常に限られたものだと思うわけです。そこが非常に難しいかなと、 それとの関係をどうお考えかというのが1点。  2点目は、「親族」と書かれていますが、私もいま伯父、伯母がどういう活動をして いるかというのは、これは全く分からない。では、これのために聞けるのかというよう な問題もあるのではないか。さらに、そこで間違っていたら制裁を受けるというのは、 一体どのように考えればいいかと思ったのですが、ご意見があればよろしく。 ○水口様 基本的な考え方を示しておりますので。親族と一言に言っても、一体どこま でで線を引くかということについては、それはまたご吟味いただければよいと思います。 例えば同居の親族であるとかです。ずっと遠い血縁まで入れましょうと申し上げている わけではないのです。基本的な考え方を示していますので、そこはそういう趣旨だとご 理解いただければと思います。  競合品については、ご指摘のように、どの範囲にするかという非常に難しい問題はあ ると思います。ただ、アメリカでの例などを見ると、ある薬に逆に非常に否定的な見解 を述べた委員が競合品の製薬企業から大金を受け取っていたということがスキャンダラ スに報道されている例などもありまして、競合品を完全に除くという発想はやはりとれ ないのではないかと。ただ、そのときにどの範囲と見るのが適切かということは、やは り実態とか現実とかということは前提になってくるのだと思っているのです。  検討会の種類にもよると思いますが、いまアメリカではこのルールについての例外適 用があまりにも多くなりすぎて、米国議会で各委員会に例外は1例以上設けてはいけな いというルールを提案して、それが議論になっているということがありまして、昨日、 そのことを薬害オンブズパースンのホームページにアップして紹介させていただきまし た。ルールを作ると、例外がどうしても出てきますし、非常に厳しいルールを作れば、 例外が多くなるという部分もあって非常に難しい問題はあると思うのです。しかし、何 か頭の中でいろいろ想像して、誰かが「それではやっぱりなり手がいないよ」と言うか ら「そうですか」というのは、ここでやるべき議論ではないのではないかと。ですから、 やはり何らかの形でその理由が説明できる、EMEAがこうだから、FDAがこうだからとい うことではない説明ができる、そのための実態の調査をお願いしたいと思っております。  それで私どもの意見が非現実的だということであれば、それはそれでまた私どもも考 えたいと思っております。基本的な考え方を提案させていただいているということでご 理解いただければと思っております。 ○望月座長 それはアメリカやヨーロッパのそういう事例も参考にしながらルールを作 っていきたいと思っています。 ○水口様 参考にしながらですね、はい。 ○望月座長 どうもありがとうございました。 ○水口様 よろしくお願いいたします。 ○望月座長 次に、全国薬科大学長・薬学部長会議の堀江利治様からのご説明をよろし くお願いいたします。 ○堀江様 千葉大学の堀江です。よろしくお願いいたします。あらかじめ提出いたしま した意見書に沿って説明させていただきたいと思います。  ご存じのように大学はいま、大学で行っている先端的な研究成果を含めて、社会に広 く還元していくということが強く求められています。我が国では、近年の科学技術の著 しい進歩に対応して、また、世界をリードするような独創的・先進的な研究成果を生み 出すためにも、例えば薬の世界で言えば、難治性疾患をはじめとする種々の有効な治療 薬、新しい薬などを創り出していく、そういうために大学の「知」を有効に活用すると いうことが極めて重要だろうと考えられます。これは、かつて、産学連携ということが 大変否定的な見方をされていた時代がございました。しかし、いまは、産学連携は大学 の重要な役割、科学の進歩、そういうことに対して重要な位置づけをされていると考え ております。その産学連携は、活性化することが期待されている状況です。それは、人 類のためにという大きな目標の前提がございます。そのような中で大学は、それぞれの 特徴を活かしながら産官学の連携、知的財産の取扱いのルールを定めまして、その連携 に取り組んでおります。また、多くの大学で始まっています技術移転機関(TLO)を設立 しまして、さまざまな支援体制も整備されつつあります。  ところで、文部科学省の方針としましては、この産学連携につきまして独自の研究成 果と位置づけておりますし、そして、絶えざるイノベーションを創出していくというこ とが重要であると指摘しています。その持続的な発展、展開といったものを重視して、 国際的な産学連携の推進をはじめとする大学の体制整備を図り、大学などの研究成果を 基にした本格的な共同研究や技術移転に係る研究開発支援を推進することを強く提示し ております。  具体的なデータを見ると、平成18年度には国公私立大学の民間企業との共同研究件数 が約1万5,000件あります。前年度に比べて1,700件、約13%増加しております。そし てまた、国立大学だけを見ても、前年度に比べて約1,000件、9%の増加です。これは、 文部科学省が昭和58年の調査を始めてから20年間、一貫して増加を続けております。 そして、平成18年度は過去最高となる1万2,500件を数えているということで、法人化 後も各大学で活発な活動が行われているという状況です。  これと関係して、受託研究についても増加を続けているという調査結果が報告されて おります。国公私立大学での受託研究数が1万8,000件、前年度に比べて約1,000件、6 %の増加となっており、共同研究同様に大学で活発な活動が行われているということで す。  さらに、医薬分野のイノベーションということが、我が国の重要な長期国家戦略の1 つとして挙げられており、今後、薬学における産官学連携がますます強力に推進される ことは間違いないと言われております。製薬企業等との連携において、共同研究、受託 研究、あるいは奨学寄附金等の寄附金制度がありますが、薬学を研究する者にとっては、 こういった制度は研究を推進する上で、一層重要性を増しているということが言えます。  一方、国立大学について申し上げると、平成16年度に法人化され、運営体制は大きく 変わってまいりました。運営費交付金は、毎年、減額され続けております。大変厳しい 状況にあるということもご存じだと思います。各大学は、これまで以上に教育・研究に おける自助努力が要求されております。競争的資金の獲得に向けて、各大学とも努力を 払っております。これは国公私立大学を通じた大学間に共通していることであり、大学 間の競い合いがこれまで以上に活発に行われるようになっております。そのような競争 的環境に置かれている国公私立薬科大学・薬学部にとっては、製薬企業との連携は研究 を推進する上でも非常に重要な意味を持ってまいります。  以上のような状況にあって、薬学研究者にとっては、製薬企業との連携は教育・研究 を発展させるためにも積極的に推進していくべきものです。したがって、それぞれの領 域において第一人者、指導的な研究者である審議会の委員の先生方は、企業との連携を 行っていないケースは極めて稀、あるいはほとんどないと考えてよろしいかと思います。 したがって、審議会の中立性・公平性、あるいは透明性を確保することは、非常に重要 であることは言うまでもないと思います。  こういった状況を考えると、4月23日に出された薬事・食品衛生審議会薬事分科会の 「申し合わせ」、ここに示された審議会委員の利益相反に関する取扱い、この具体的な 関与の程度・条件に関する対応、これは適当な内容であると考えられます。さらに審議 参加と寄附金等の基準に関する「今後検討すべき主な論点(案)」についても、この「申 し合わせ」を踏まえて妥当なものだと考えております。これは今後さらに詳細な審議を 経て完成されていくものだと考えております。以上が説明ということにさせていただき ます。 ○望月座長 ただいまのご発言、あるいは論点に関するお考えなどについて、ご質問等 ありましたらお願いいたします。 ○樋口委員 1点だけ、いちばん最後に、いまの暫定ルールが「概ね適当であると考え ている」という、その「概ね」というところが、どういうことなのかと思いました。例 えばですが、いまの暫定ルールでは、いちばん最初の参考人の方からの話で、奨学寄附 金の話が出ていて、奨学寄附金については、ここでは委員がその先生が実質的な受取人 として使途を決定し得るような奨学寄附金は含むのだという話になっています。そうい うことを含めて、その部分はもちろんそれでいいということなのだけれど、ということ でしょうか。 ○堀江様 私どもはそういうように判断しております。「申し合わせ」の2の部分は、 妥当な考え方であろうと理解しております。ただ、概ねと申し上げたのは、「今後検討 すべき論点(案)」のところに、私どもでは十分な情報もなく、理解しがたいところも あり、現状では判断しがたいところもあります。というのは、欧米の規定も踏まえて、 今後結果が出ていくだろうと思います。そういう意味での概ねということです。 ○笠貫委員 ただいまの共同研究の伸び方、委託研究の伸び方は、すごいスピードであ るということは、逆に言うと、それだけ厳しい利益相反に対する規則の制定が急がれる ということだと思うのです。そういう意味で、先ほどの「概ね」というところがちょっ と気になるのです。先ほどご指摘のあった申告の例外なきという意味も含めて、広い申 告と、評価委員も含めて、これだけ増えていくと先ほどのご質問の中にもありましたよ うに、本当に評価できる委員がいるのかというぐらいの伸び率だと思います。例えばい まの共同研究、あるいは受託研究についての伸びをどのように予測していて、それに対 して常に表裏一体の問題として存在するであろう利益相反については、どういう予測を 立てていらっしゃるのか。いまの案よりもいいというお考えか、これをさらに厳しく考 えていくということもあるのかご検討はなさっているのでしょうか。 ○堀江様 私どもでは具体的な検討はしておりませんが、いまの全体の薬学の世界の流 れを見る、あるいは科学全体を見て、きちんと厳しい条件をつけていったときには、お そらくいろいろなことが立ち行かなくなってしまうのではないか。つまり、ただいま申 し上げたように、科学の進歩はものすごい勢いで進んでいる。それがいろいろな形で連 携していくことによって、さらに優れた成果を生むだろう。それは新薬の開発にもつな がっていくことで、そして人類の福祉、健康に貢献できると、そこがいちばんの目的だ ろうと思うのです。そこに携わっていて、そして説明の中でも申し上げましたが、リー ディングサイエンティストというのはそうたくさんいるわけではないだろうと思います が、そういう方たちがいろいろなものを審議する立場に、あるいは選出されるようなこ とにもなるだろうと思います、高度な評価をするということになると。そうすると、そ こでなかなかきちんと区切りをつけて、ものごとを決めていくというのは難しい。だか らこそ、今回、申し合わせ等で出てきたような、柔軟性を持って、しかもそこにきちん と対応していくということは大切だろうとは思います。 ○笠貫委員 そうすると、前の方のお話の中にも、現実的にどのようにという問題は非 常に大事だと思うのです。ただ、これだけ大きく変革していくときに、これからの規則 を決めても実態調査が大事かと思うのです。実際の先生の立場で、これだけ共同研究、 受託研究が増えているときに、その内容についての実態調査的なものも進んでいらっし ゃる、あるいはそういうことが可能なのでしょうか。 ○堀江様 具体的な内容の実態調査ですか。 ○笠貫委員 これだけ増えている。その研究費がどうなっているかなどを含めて、これ は研究件数の話ですね。利益相反の話になると研究費の問題になると思うのですが、そ れについての実態の把握はできているのでしょうか。あるいはこれからそういうことを 実態調査することは可能なのでしょうか。 ○堀江様 私どものところではそういう調査はしておりませんが、あるいはそれは大変 なエネルギーになるだろうと思いますので、そういう調査をすることは現段階では難し いのではないかと思います。個々の内容まで踏み込んだ調査は難しいのではないかとは 思います。 ○望月座長 もうちょっと大雑把な調査だったら可能ですよね。大雑把と言ったらおか しいのですが、個々のというのではなくて、まとめて薬学なり医学なり大学なりがどの ような共同研究をしているかという。それは先生の立場、全国薬科大学長・薬学部長会 議がやることではなくて、どこか然るべき機関でする、国がやるべきこととは言っては いけないのですが、そういう方向だと思うのです。ほかにどなたかご意見はありますか。 ○永井委員 奨学寄附金というのは、必ずしも研究費だけではなくて、それを当てにし ている大学本体とか、学部などがあるわけです。そういうのはどのぐらい寄与している のかというのか、常に依存しているかですね。つまり、オーバーヘッドの問題なのです が、それはいまかなり大きい割合になっているのですか。それとも、そんなものはもう あまり大した額でもないというのか。 ○堀江様 それは大学によって違うかと思いますが、私どもの大学ではあるパーセンテ ージ、もちろんそれは1桁のパーセンテージですが、そういうオーバーヘッドがありま す。これはいろいろな研究をするためには光熱水料がかかるということになるわけです。 ですから、そういう意味を含めて、オーバーヘッドということはあって然るべきかと思 います。 ○永井委員 それの使い方は、かなり公平に決定されるのか、あるいは学部長に任され てしまうのか。 ○堀江様 それは私どもの大学でよろしいですか。それは全く公平に扱われます。学部 長なり機関長が独断で決めるということは全くなくて、公平に扱います。基本的には光 熱水料に当てていくという方針です。 ○西島委員 質問が2つあります。共同研究の件数がありますが、私はこれは科学全体 の件数と推測するのですが、薬学の中での件数は別途どんなものかということを知りた いということが1つです。あと、そういう薬学系の共同研究と医学系の共同研究では、 薬の開発のステージが随分違うと思うのです。そのステージの違いということを、どの ようにお考えになりますでしょうか。 ○堀江様 最初のほうのこの件数の中での薬学の割合というのは、そういう情報を持ち 合わせていないのと、おそらくそういう調査というのはまだできていないような気がす るのですが、ちょっと私が見落としているかもしれません。 ○西島委員 このデータは、工学などもすべて含めたということですね。 ○堀内委員 はい。研究のステージは、薬系だとかなり基礎的な部分だろうと思うので す。ですから、先端的な技術開発、そういうもののテクニックを駆使しながら、基礎研 究のところにコントリビュートしていくということだろうと思うのです。医学の場合に は、その部分も当然あると思いますし、臨床の治験等、その部分の貢献というのもある と思うのです。そこはだいぶ違っているということは言えるだろうと思います。 ○西島委員 私はその辺はちょっと考慮しなくてはいけない点だと思うのです。 ○望月座長 ほかにどなたかご意見はありますか。よろしいですか。それでは、どうも ありがとうございました。  最後になりましたが、4番目の全国薬害被害者団体連絡協議会の花井十伍様からのご 説明をよろしくお願いいたします。 ○間宮様 全国薬害被害者団体連絡協議会から意見を述べさせていただきます。このよ うな機会をつくっていただきまして、ありがとうございます。私は副代表世話人の間宮 清と申します。私自身は薬害サリドマイドの被害者です。全国薬害被害者団体連絡協議 会は、薬害被害者団体のみで構成されている連絡協議会です。現在は9薬害、11団体が 加盟しております。もちろん、これは日本で唯一の連絡協議会です。私たちは自分たち の薬害被害の体験から、二度と同様の被害を繰り返してはならない、自分たちの被った 被害をほかの人に味あわせたくないという思いを原点として、薬害根絶を目指して活動 をしています。  これまでの薬害被害の経験や事実検証の結果から、薬害を防止するという意思決定の 過程や、被害が起きて、その被害を止めるという意思決定のときに、必ずしも専門家の 委員の方々が適切な判断を下すことができなくて、その結果として行政がそうした適切 な判断でないものに従ってしまうということで、被害や悲劇を拡大してしまう場合があ ったと考えております。  薬事・食品衛生審議会は、医薬品の審査だけではなくて、市販後の安全対策など、さ まざまなルール、ガイドラインの策定に関して非常に重大な権限もありますし、責任も ある審議会だと思います。日本の薬事行政の中核に深く関与している審議会だと思いま す。本来、薬食審の委員の先生方には、中立で公正な先生方が任命されるということが 前提にあると思うのですが、現実的には先ほどから話もありますが、高度な知識とか研 究もたくさんされている先生方は、やはり企業やさまざまな営利組織と関係を持ってい ることは普通だと思います。実際、「企業から寄附も受けられないような先生が何がで きるの」という話もあると思います。ですから、そういうのが普通だと思うのですが、 やはり実際その先生の立場が非営利団体の肩書きを持つ委員であっても、いろいろな利 害関係から、完全に自由になることは極めて難しいとは思います。  私たちは、これまでも薬害被害者でもある薬食審の委員を通じて、透明性を確保する という意味で、委員の利害関係を公開することを原則とするとともに、決議や意見を述 べるなど、意思決定の関与の度合や直接的利益相反か間接的利益相反かなど、利害関係 の性質を整理して、一定の基準を定めた上で、拘束力のある形で運用することを求めて きたわけです。  しかしながら、こうした主張は必ずしも厚生労働省のみならず、親部会である薬事分 科会でも全然議論されることなく実現していませんでした。今回、薬食審薬事分科会が ワーキンググループを設置して本格的に開始したということは、私たちは非常に高く評 価していて、期待もしているところです。  これらの経緯を踏まえて、代表の花井のほうから説明をいたしたいと思います。 ○花井様 代表世話人の花井十伍です。いま間宮副代表のほうから私たちの立場につい て解説いただきましたが、具体的な提案については私たちの意見書に沿って、順番に説 明していきたいと思います。  1に関しては、先ほどちょっと論点が出ていましたが、配偶者を含めて検討というこ とです。これは先ほどオンブズパーソンから親戚はどうかという意見がありましたが、 例えば配偶者がベンチャービジネスの社長をやっていますと、これは駄目でしょうとい うのは明らかにわかるわけです。したがって、そういうところをどこかで線引きするも のを作ってくださいという趣旨です。  2がいまいちばん議論になっていて、組織的利害を含む。個人的利害、組織的利害、 両方するというときに、先ほどの研究費の問題などが出ているわけですが、これも具体 的には、例えば研究所をやっていても、そこの事業費と運営費が多くのパーセンテージ を民間企業に依存している場合と、大学全体の中で一部研究を、しかもそれは大学の中 で公正にやっている場合とではおのずと違うので、そこを一緒くたに、「だから、大学 には研究費がたくさんいるんだから仕方ないよ」などという整理ではなく、やはりそこ を極めて注視して考えるべきであると。組織利害という意味で言えば、極端なことを言 えば、私どもは患者会も参加しておりますが、今後は患者会ですらそういう問題が生じ てきかねない。特に患者会などというのは、メーカーからお金を多くもらわなければ運 営できないという場合もありますし、私どもはNPOなので、運営に関して非常に厳しい わけです。  そういうときに、やはりいわゆる企業からのお金が流れというものを明確にした上で、 それぞれの発言でと。だから、私どもは自分たちのことを顧みないことではなく、すべ てのお金の流れを把握した上で、それぞれの意見がどういう立場によって言われている かということをはっきりするためには、組織的利害というところをあまり大雑把に、日 本の研究費の現状はこうだし、NIHみたいな組織もないのだからというような整理で、 見過ごしていただきたくないと考えております。先ほどの樋口委員のような指摘は、そ れに関連して非常に重要だったと私どもは考えております。  3は、営利企業のみならず、要はトンネル財団、もしくはトンネル団体というのがあ ります。こういうものを排除しなければどうしようもない。ルールづくりは難しいかと 思いますが、ある財団なりNPOなりの事業費、運営費の中の何パーセントが民間企業か、 どこかから入っているということがあれば、それはある程度線は引けるのではないか。 トンネルを許してしまうと、これは事実上、完全にルールは形骸化しますので、ここは やはり非常に重要な点ではないかと思います。  4は、医薬品の審査、審査ということはいちばんわかりやすいケースですが、実は薬 食審というのは、市販後安全対策、ガイドライン策定、行政指導全般について強い発言 力を持っている。極端なことを言うと、その部門に関して言えば、薬食審の委員は国会 議員並みの権限があります。行政官に対して、いろいろな書類を調査させたりなどとい うことをやっているわけですから、重大な権限を振るうということからしても、やはり これは重要である。  それから、関連したような意見ですが、そもそもこのアドバイザリーボードは、薬事 法上は大臣が決断するためのアドバイスを設けているという趣旨なので、実は審議会の 運営自体、もしくは任命の仕方自体とかかわる問題ではあるのです。いまの時点で考え られるのは、この審議会自体がかなりの権限を持って、行政はともすれば「審議会がそ う言ったから」と、逆に審議会に責任を振られる場合もあります。しかし、逆に審議会 からすれば、最終決断は行政というような、ちょっと曖昧さも気になるところではあり ますが、現状を踏まえると、やはり審議会の発言力、もしくは権限の大きさを考え、全 般的な権限について対処をすべきというのが4の趣旨です。  5は、いままで議論された内容で、このようなものということです。特に私どものと ころで、細かいと思われるかもしれませんが、海外出張の宿泊費、これは細かい話をこ こで書いているわけではなく、大体1学会、出張費をメーカーに丸抱えしていただくと 100万を超えてしまうのです。飛行機のクラスも結構良いチケットが送られてきたりと いう例が現実にあるように聞いておりますというか、見聞きをしております。そんな細 かい話までと考えずに、一般市民感覚からすれば、何十万のチケットプラス、わりと良 いホテルをバッと出されたら、これは金額に載せておかないと、もちろん全年収がたく さんある専門家にとってみればそこは一部かもしれませんが、国民の感覚からすれば、 これは政治資金規制法とも似たところですが、こういったところを見過ごしてはならな いと考えております。  6は、先ほど偶然にもオンブズパーソンのほうから似たような議論が出ていましたが、 やはりグレーゾーンがあるだろうと。そこについて、例外を認める場合がありますし、 この委員を外してはちょっと議論が成り立たないというときと、一見、ルールに合って いるけれども、ちょっとこの委員はバイアスがかかっているという例はどうしても出て くるのではないか。そういった意味では、ある種、第三者的な委員会が必要ではないか。 この枠組みについては、私どもも特にこうあるべきというところまでは議論したわけで はありませんが、こういうクライテリアをマネージメントしようとすると、どうしても そういうパートが要るのではないかと考えています。これは別に行政の部門のほうに作 っていただいてもいいのではないかと思っています。  7は暫定的といいますか、私どもとしてはこんな感じかというのを金額として挙げて います。具体的金額が入っていますが、これはご参照ください。これは金額に強く拘る というわけではありませんが、基本の500万というのはちょっと多いのではないか。EU などの基準もあるかもしれませんが、やはりこのぐらいは要るのではないか。  8は、最も重要ではないかと。実態調査すべきだという議論も出ていて、それには私 どもも実に賛同するわけですが、要は委員のデータベースを作って、ネットに公開する。 私は薬害エイズの被害者なのですが、審議会の議事が公開になったのも、ちょうど薬害 エイズ以降、私も審議会に加わるようになったころに大体公開が進んできたという理解 です。その中で、最初は資料が公開されていなかったりとか、それがだんだん公開が広 がってきた。それをみんながアクセスできる状態になった今、ここに発言しているこの 人はどういう人だろうというときに、こういうデータベースを参照すれば、たとえ審議 に参加していても、「あっ、この人はこういうバイアスがかかっているのではないか」 という問題が生じたときに、それを問題とすることが可能なわけです。  ですから、これはすごく嫌な人も多いかもしれませんが、一定の基準以上、つまり7 に準じて考えるべきだと思いますが、それを金額は書かなくてもいいのですが、基準に 入っていて、どこのメーカーと、メーカーを全部出す。これをすると、かなり透明性は ある。先ほどディスクロージャーと言いましたが、私どもはやはりディスクロージャー のほうを重視します。ディスクロージャーした上で、さすがにひどいとか、いや、もっ と緩くしていいということは、国民のコンセンサスの上でルールづくりが変動していく と理解していますので、まず実態、そして公開ということになろうかと思います。  事実、私もこの下の血液事業部会でここ何年もやっていますが、そこの委員同士では わかる。だんだんなじんでくる。血液で言えば日本赤十字とか、限られたメーカーなの ですが、そことの関係でわかっているのです。わかりつつ、ちょっとバランスを欠いて いるなとか、これはちゃんとしているなというのは、委員をやっている人は何となく相 場観ではわかるのです。しかし、それは国民には与かり知らないところで、そういうこ とだからいいのだなどということを言っている時代はもう過ぎたということで、やはり 国民のコンセンサスを得てこれを進めたいと考えております。  最後に付言ですが、公開ルールについて、今後の論点が出ているようですが、これは 原則公開とした上で、非公開とする場合には、その理由、非公開にしたい人が誰なのか。 まず、行政官がこれはもう非公開にしなければ、ちゃんとした議論ができないという判 断をしたから非公開。あるメーカーが「うちの知財がばれるから勘弁してくれ」と言っ たから非公開、もしくはある委員が「ちょっとこれは非公開にしてくれ」と言ったから 非公開ということを、実はいままでは薬食審の運営では、あうんの呼吸でやってきてい るのです。あうんの呼吸というのも、これはもう通じない話で、やはり原則公開にした 上で、非公開の場合はこういう理由により、もしくはここからこういう非公開の要請が あったからと、それを明らかにするということにしていただければ、ディスクロージャ ーという意味ではより高まるのではないか。  こうした議論は、実は実質審査をしているPMDAの運営に関してもギチギチとやって、 そういうところではかなり整備もされてきていますし、薬事・食品衛生審議会の薬事分 科会のみですが、こういったルールをきちんとすることによって、ゆくゆくは私どもは 薬事分科会のみならず、厚生労働省関連の医療、いろいろなことに関する審議会の問題 として、薬事分科会が範を示し、さらにはそれがスタンダードな審議会のルールになっ ていくということを非常に期待しているわけです。以上です。 ○望月座長 ただいまのご発言、あるいは論点に関するお考えなどについて、ご質問等 はありますでしょうか。事務局にお尋ねするのですが、最後にちょっとおっしゃられた、 原則公開の原則ですが、この審議会関係で公開・非公開の原則というのはどのような基 準になっているのでしょうか。 ○総務課課長補佐 基本的には企業秘密に該当する部分がある、あるいは個人情報、特 に被害救済の関係の部分もありますので、そういう個人情報に該当する部分があると、 そういった場合に会議を非公開にすることができるということです。 ○望月座長 というルールでやっておりますので、あくまでも公開にすることによって 被害を受ける方がいる場合には非公開という形かと思います。 ○花井様 ただ、私どもが実際上、審議会に参加してきた経緯で非公開の場合もあった のですが、必ずしも企業の知財にかかわらないのにちょっと気を使いすぎて、わざわざ 非公開というケースも結構あるのです。実際に企業がこれは勘弁してくれと言ったので あれば、それを受けて「ああ、そうだね」という話があるのに、そういう相場観でやっ てしまっている。それは中に参加している者はわかるのですが、相場観でやってしまっ ているところを、企業の名前を出すことすらはばかれるのであれば、企業から「今回は 知財なりそういうものがあったので、非公開」と、このプロセスを公開してほしいとい う意見です。 ○望月座長 はい、わかりました。ほかに先生方、ご意見はありますか。 ○笠貫委員 先ほど議事と議決の峻別が難しいという意見が出されたと思うのですが、 このご意見の7では、寄附金の額によって議事と議決というように分けて書いてありま す。これはどういう理由といいますか、根拠というか、何かありますか。 ○花井様 実際には薬事法に基づき薬品を認可するか、しないかということなので、そ こについては明確に誰が賛同したかという話と、それから意見を言うという話はちょっ と性質が違うのではないかという考え方から、一応このような区別を考えました。先ほ どオンブズパーソン会議の意見のほうで、必ずしも難しいではないかということをおっ しゃっていましたが、私どももそれはそのとおりだと思います。  ただ、何らかのルールを作るときには、責任の度合として、つまり医薬品を出すか出 さないかは、必ずしもエンプリカサイエンスや統計学だけで確定せず、トランスサイエ ンス的なディシジョンなわけですよね。だから、そこのところを責任をちゃんと明確に して、誰が賛同したかを確認する話と、そこでいろいろ意見を言った話は別です。意見 を言ったにせよ、先ほどの公開データベースであれば、それと参照すれば、どうもこの 先生はこういう立場でお話されているなということがあとからは検証可能なので、もし その医薬品に重大な瑕疵があると、端的に言えば薬害という場合にも、そういうことは 検証して、最終的にはやはりそのときの誰かの責任とか、直接ではないにせよ、責任を 問うなどということの経緯などが検証しやすいと、こういう理解です。だから、決断を したという重さを考えて、このように考えました。 ○望月座長 ほかにはいかがでしょうか。 ○審査管理課長 まず、2番目の「組織的利害」の所で、先ほどご説明の中でもありま したので、おそらくその組織の性格、あるいは規模などといったいろいろな要素を持っ て、ここを判断していくのだろうというご主張なのかと思いながら聞いているわけです が、例えば東京大学が130周年か何かで100億か何か集めようとしている。そうなると、 1社1,000万円寄附するかもしれないけれども、東京大学の先生方にとってみると、全 く関係ないというところがあるのだろうと思います。慶應も早稲田もそういうことをた くさんやられていると思いますが、そういうところまで考えておられるのではなくて、 かなり個人への影響が見込まれるような性格であるとか規模であるとか、そういう点を 考えておられるのかどうかというのが1点です。  4番目の「審議の内容」で、いまは市販後安全対策やそれ以外のものについても、特 定の品目について議論する場合においては、この暫定ルールを適用しているのですが、 そういう考え方でいいのか。それともガイドラインでいうと、例えば高血圧のガイドラ インをやるときに、高血圧薬を販売しているメーカーすべてということでお考えになら れると、高血圧の専門家というのはほとんど1人も参加できないという話になってまい るわけです。要するに特定の品目にある程度絞られる場合も、この市販後安全対策、ガ イドライン等でという形でよろしいのか、そこについてのご意見があれば教えていただ きたいと思います。 ○花井様 後者からお答えしますが、ガイドラインも含めるべきだと考えています。先 ほど高血圧の例を出されましたが、ガイドラインに関して、事実上、いわゆる科学的な ご意見を賜る話と、ガイドラインを策定して、最終的にガイドラインをこれでいきまし ょうという話は、ちょっとディシジョンメークの質が違ったりすると思います。こちら は血液しか経験がないので、ほかの典型的な審議会は知りませんが、例えば血液事業部 会と安全技術調査会の先生方が専門領域で話すのですが、最終的にある献血基準のクラ イテリアなどを定めるときに、「じゃあ、どうするんだ。献血制限をするのか、しない のか」、これは科学ではないですね。そのときに、私たちも委員だから、結局、患者の 立場はどうなのだということになるわけですが、そういった決断はおのずと違っていて、 科学的な問題について、まさに専門性の部分については専門家ほど詳しい人たちはいな いのです。これは間違いないです。しかし、審議会では専門性以外の部分に、かなりの 責任を負わされているというのが現実なのです。  先生方も「それ、どうするんですか」と言われても困るわけです。科学的にはバリエ ーションがこうなってわかっていると。だから、ほぼ安全だと思いますが、「じゃあ、 いいんですか」と言うと、「いや、それは答えられない」と、こうなってしまうわけで す。そういったことも踏まえると、科学的なアドバイスについては、なるべく専門性の 高い方のアドバイスを得、そしてディシジョンメークについては、中立性ということを 審議会マネージメントで考えながら考えるべきで、したがって、そういう工夫をしてガ イドライン等も含めるべきというように考えております。  それから、前者については、私はあまり利害がないので言いたいことを言うわけです が、東大・慶應などというところであれば、例えばそういうところから申告していただ いて、「うちはこういうルールでやっていますよ。こういう形でやって公正ですよ」と いうことを出してもらえば、問題なかったりする場合もあろうかと思いますが、大学に よっては、そのルールの運用自体が怪しいところもあります。それを一緒くたに全部い いというのはおかしいと考えていて、そこは皆さんいろいろなところの代表だから言い にくいかもしれませんが、私どもから言えばNIHみたいなので全体としてある基準をも って、研究費が公正、あれもいろいろあります。例えば、そういう仕組みだとしましょ う。大学自体にそれを振って、大学自体が公正性を担保していればいいと言えるのです が、それは誰が確認するのという話に、どうしてもなってくるのです。そこはひと工夫 必要ではないかと。  だから、各大学の自治の中でそういう公正性を担保するのであれば、各大学で先ほど 言ったディスクロージャーとか、ルールがちゃんとやられていることを主張していただ くような基準が何かないと、どこもいいのだとすると、どうもやはり大学ごとに事情が 違うという私どもの認識からすると、一蓮托生は無理というように考えています。以上 です。 ○望月座長 いかがでしょうか。いまいろいろな大学はそういう方向に動いていると思 いますけれどもね。 ○花井様 そうですね。 ○望月座長 ほかはよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。以上でヒア リングを終わりにしたいと思います。  続きまして、議題2の「論点に関する議論」に移りたいと思います。まずは、論点に ついての確認も含めて、第1回のワーキングの際に出された宿題事項等について、事務 局のほうで調査した結果についてご報告いただき、その後ご討議いただきたいと思いま す。事務局より、欧米の状況の調査結果および日米欧の対比表について、説明願います。 ○総務課課長補佐 資料No.5、資料No.6に基づき、簡単に説明させていただきます。資料 No.5は、前回のこのワーキングの場において、論点ごとに日米欧の対比表を作ってもら えないかということでしたので、論点ごとに、いちばん右側は日本の暫定案を載せた形 にして、アメリカの現在の基準、アメリカでの現在のガイダンスの案、ヨーロッパEMEA の現在の基準という形で並べたものです。  先に資料の構成関係だけ申し上げると、この情報については資料No.6の後段の部分、3 頁以降の所ですが、具体的にアメリカFDA、ヨーロッパEMEAの担当者に質問事項を投げ て、その回答を直接いただいております。基本的にはその情報を基にして、足りないと ころは既存の資料などを参考にして、この資料No.5をまとめているという形になってい るものです。  資料No.5の論点に沿って、簡単にご紹介させていただきます。まず、論点1は寄附金 ・契約金の範囲はどこまで含めるかということです。これについては、アメリカ・ヨー ロッパとも、個人的なもの、組織的なもの等々、ここにあるようなものを含めていると いうことです。  論点2ですが、株式の評価の問題です。アメリカについては、「時価で株式などを評 価する」という回答になっております。ヨーロッパですが、若干、論点と回答がずれて おりますが、基本的には「自己申告」という回答になっており、括弧書きで「評価しな い」というのは自己申告に従うということで、EMEAとしてそれが正しいかどうかはあえ て評価しないということです。それから、投資信託と年金計画は除外するということも、 併せて回答をいただいております。  2.名宛人と使途決定権との関係についてです。これは論点の部分と回答の部分、若干 ずれている部分もあろうかとも思いますが、いわゆる組織の利益相反の部分についての 回答になろうかと思います。特に臨床研究あるいは臨床試験、臨床研究の費用あるいは 臨床試験の契約、あるいはその費用について確認したところ、アメリカ・ヨーロッパと も組織と契約していると。扱いとしては組織の利害関係という形で対応するという回答 をいただいております。  3.金額水準です。ここについて、若干補足をさせていただければと思っておりますが、 我が国においての暫定ルールをいちばん右に書いてあります。上にあるような項目をす べて足し合わせた額が年間500万、あるいは講演執筆料のみの場合には50万以下の場合 は除外するという金額についての基準を作って、これが暫定ルールになっております。 先ほどのヒアリングの中で、地位の関係があります。そこの部分については、この暫定 ルールはあくまでも平成13年の「申し合わせ」のさらに上乗せという形になっておりま して、もともとのルールの中に、特定の企業の顧問という形で継続的な収入がある場合 は、そもそも審議会の委員になれないということ、あるいは治験の責任医師等々で、特 定の品目の審議資料の作成関与委員になっている場合も審議に加われないという形で扱 っておりますので、その部分は一部既に考慮していることを少し補足させていただきま す。  その上で、金額水準ですが、アメリカの現在の基準がすべて網羅できませんので、主 なものをここに書いております。現在パブリックコメントを終了したアメリカのガイダ ンスの案では、それらのものをすべて金額で評価して、5万ドルを超えるかどうかで水 準を置いているということです。それから、ヨーロッパEMEAについては、先ほどのヒア リングにもありましたが、経済的利益という部分については5万ユーロ、(2)から(5)にあ るようなコンサルタント、治験責任医師という立場の場合には、除外という形で評価す るという地位的評価を取り入れているということです。  2頁ですが、受入額(収入ベース)で捉えるか、あるいは必要経費を除いた実収入ベ ースで捉えるかということです。アメリカは収入で評価するという回答をいただいてお ります。ヨーロッパは特に区別せずということで、自己申告に基づいて、ややそこは曖 昧になっているという回答かと思います。  4.競合企業です。我が国においては、いまのところ競合企業を評価しておりませんが、 アメリカ・ヨーロッパとも、基本的には影響のあるといいましょうか、承認に当たって 市場で競合すると考えられる医薬品など、あるいはヨーロッパにおいては、同じ効能・ 効果を目的とする医薬品、この辺りを競合製品、それを扱っている競合他社という形で、 評価に当たって勘案しております。実際の運用をどういう形でやっているのかというこ とについては、括弧書きに書いてあるように、アメリカ・ヨーロッパに引き続き調査を かけているという状況です。  5.考慮対象期間ですが、アメリカは過去1年、ヨーロッパは過去5年となっておりま す。  6.家族の取扱いですが、アメリカは委員に加え配偶者、未成年の子供が申告対象とな っています。ヨーロッパは本人のみという形です。  3頁の7.審議不参加の具体的取扱いと特例扱いですが、アメリカは5万ドル、現在で は利益相反の可能性がある場合は参加不可、ただし特例許可を与えられた場合は参加可 能となっております。ガイダンスの案は、それが5万ドルとなっていると理解しており ます。ヨーロッパはリスクレベルを3、2、1と3段階に分けて、リスクレベル3のいち ばん高い場合には、そもそも参加できない、2の場合は議決には参加できませんが、審 議には参加し、意見等は述べることができるという形です。  8.公表の扱いです。アメリカについては議事録に記載、ヨーロッパについては会議の 最初に利益相反について宣言を求め、そのすべての宣言内容を議事録に記載するという 形で、実際上扱っていることを確認しているという状況です。資料No.5については以上 です。  続いて資料No.6です。3頁以降は先ほど申し上げた個別の回答で、資料No.5、あるいは この資料No.6の1頁、2頁の基になる回答になっております。1頁、2頁については、前 回のワーキングのときに、具体的に調べるべしということでいただいている宿題事項で す。1頁の1ですが、そもそもこの利益相反ガイドラインは、欧米においてどういうプ ロセスを経て策定したのかを調べております。詳細は3頁以降をご覧いただければと思 いますが、アメリカ・ヨーロッパとも、結論的には職員です。アメリカの職員、ヨーロ ッパEMEAの職員が素案を作って検討しているということです。作成過程で、いずれも特 定の企業、業界などからのヒアリングは実施せずに作っているということです。ただ、 パブリックコメントは行っているということです。  2.ですが、欧州のガイドラインは、大学関係者が非常に厳しく評価されているのでは ないか。それで、実際のルールと実際の運用では若干違いがあるのではないかというこ とについての問いかけです。回答としては、ルールどおり運用しているわけですが、そ れに従って、きちんとリスクレベルは1、2、3、それぞれに再分類された形になります ので、ルールと違う運用をしているという回答は特段いただいていないということです。  3.は、先ほどの回答と重複になります。繰り返しになりますが、ここでは委託/共同 研究、臨床研究が組織の利益になるということを、再度お話させていただければと思い ます。  2頁の4.ですが、現在示されているアメリカのガイドラインの案においては、例えば 個別の品目の審査であるとか、安全対策という「特定の事項」についての評価になって いるわけです。「一般的事項」についてはどうなのかと問いかけたところ、結論的には 特定の事項でないならば、利益相反に関する法律は適用されないという回答です。  5.株式の中で特に投資信託の評価ですが、これは基本的に両者とも除外されるという ことです。  6.組織の利益相反についての評価です。回答が抽象的で、なかなかわかりにくいので すが、アメリカについては雇用主における潜在的な経済的利益相反についても、知り得 る限り個人として報告されてくることを期待しているという回答です。ヨーロッパは、 先ほど臨床研究や治験などというものは組織と契約していて、組織の利益相反と考える べきという回答がありましたが、そこはそういう地位、治験責任医師あるいは治験分担 医師という形で関与しているということで、組織の利益相反みたいなものを結果として 評価しているという回答でした。駆け足でしたが、資料No.5、資料No.6に関しては以上で す。 ○望月座長 ただいまの事務局からの説明にご質問等ありましたら、よろしくお願いい たします。 ○樋口委員 いろいろなことを調べていただいて、ご苦労されてありがとうございまし た。ただ、私にはいまの説明でもわからないところがいくつかあって、とりあえずその うちの1つを申し上げます。利益相反の範囲について、ヨーロッパもアメリカも、もち ろん個人を対象として、個人がFDAの何々委員会に入るか、EMEAの業務に携わるかとい うときの当該個人の利益相反ということを非常に考えて、いろいろルールを作っている ということなのですが、その個人が属しているところの組織との利害関係の話の区分が、 ちょっと私にわからなくて教えていただきたいのです。だから、この臨床試験の契約な どは全部組織のほうでやっているから、個人の利益相反の関係ではカウントしない。こ れはそういう話だと理解してよろしいのでしょうか。 ○総務課課長補佐 詳細は、アメリカ・ヨーロッパ、それぞれに再度確認しているとこ ろです。現段階の理解としては、例えば臨床研究、あるいは受託研究もそうですが、契 約は組織としているということを明確に回答してきています。そのものについての評価 の仕方ですが、まずヨーロッパは、それについて例えば費用がどうかということにかか わらず、臨床試験の治験責任医師、あるいは治験分担医師という形でかかわっている。 組織として治験をやっているわけですが、そこの責任医師をやっているということで、 そういう地位についているということで、そもそも関係があるという形で評価している ということです。  アメリカの場合は、現在示されているガイダンスの案では、そこの部分もやはり金額 換算しているのではないかと思っております。トータル的に5万ドルを超えるのか、超 えないのかということで、最終的な利益相反があるのかどうかを判断していると思って おります。 ○樋口委員 それは、つまり例えば5万ドルの臨床試験か受託研究か何かがあった場合 に、組織と契約しているけれども、当該個人との利益相反関係で、ちゃんと5万ドルを カウントしていますよと、そういうご理解なのですか。 ○総務課課長補佐 カウントしている、金額換算しているのだというように理解をして おります。実はそこはあまり明確になっていないところですが。 ○樋口委員 ヨーロッパのほうも、治験担当医師になっていれば、それは金額は関係な く、たぶん問題ですから、その人が承認などというのにすぐ関与するのは、ちょっとど うかと思います。でも、ヨーロッパだって、それ以外の何らかの研究費というのは大学 宛か何かであると思うので、そういうところのものは、ここでは触れていないように見 えますよね。だから、そっちが組織の話なので、個人のところではヨーロッパではカウ ントしていないようにも聞こえるか、見えるかなのですが、そういう理解が正しいかど うかということなのです。 ○総務課課長補佐 研究などをやっていても、金額換算はしていないというように理解 しています。 ○樋口委員 それで、アメリカのほうは、何とか金額換算して入れているという理解な のですか。 ○総務課課長補佐 そのように理解しておりますが、そこをいま再度確認しているとい う状況です。 ○望月座長 ほかによろしいですか。本日のヒアリングと、これまでの調査結果等を踏 まえて、論点等に関して自由にご発言いただければと思いますが、これについていかが でしょうか。 ○水口様 すみません。1点だけよろしいでしょうか。表の整理について、発言は許さ れないでしょうか。 ○望月座長 いかがでしょうか。発言を認めますか。 ○審査管理課長 議事進行の問題ですから、今日、参考人で来ていただいているわけで すので、もしよろしければ。 ○望月座長 簡単にどうぞ。 ○水口様 ありがとうございます。手短に申し上げます。表の中の「公表の扱い」の整 理の仕方について、ご検討いただければと思うのですが、EMEAの所に「各会議の開始時 に、議長は参加者全員からの利益相反の宣言を求める。すべての宣言を議事録に記載す る」とあります。以前こちらの資料として配られたEMEAの利益相反規定についての冊子 の8頁の記載によると、専門委員データベースというのがあり、まずここにおいては基 本的な利益相反関係は申告文書、それ自体が公開文書としてWebサイトで掲載されて入 手できる、という記載があります。その下に、「特定の利益相反については、将来的に 透明性に関する規定および続く管理委員会による審査について公開されるだろう」とい う規定があります。ここは特定の利益相反関係だけについて書かれているのかもしれま せんが、専門委員データベースに基本的な利益相反関係は入力されて、それ自体は基本 的に公開されているということは、やはり整理の中で明確にしていただいたほうがよろ しいのではないかと思い、意見を述べさせていただきました。 ○望月座長 ありがとうございました。事務局で検討していただいてよろしいでしょう か。 ○審査管理課長 ご意見はわかりました。 ○望月座長 ほかには何かありますか。 ○永井委員 自主臨床試験の場合、よく財団を通すということがありますが、そういう のはどのように扱われているのでしょうか。アメリカだと、たぶんNIHなどということ になるのでしょうけれども、日本ではまだ財団を通す自主臨床試験というのがあります ね。 ○総務課課長補佐 自主臨床試験であっても、臨床研究、臨床試験という形になると思 いますので、企業から直接何らかの費用が入っていれば、それをカウントして、金額換 算して評価していると理解しております。 ○審査管理課長 資料7-2ですが、私がこれを読む限り、当該企業または競合企業とい うところしか出てまいりません。先生がおっしゃっているのは、先ほど参考人のどなた かがおっしゃっておりましたが、財団から、あるいはそれがいわゆるトンネルになって いるのではないかという指摘もあるわけです。そういう話は、少なくともアメリカ・ヨ ーロッパにはないのか、あるいは明文化されていないのかわかりませんが、私が読んだ 限りにおいては、当該企業、競合企業以外のものというのはなかったかと思います。 ○望月座長 よろしいですか。ほかにどなたかご意見はありませんか。いまの財団法人、 あるいはNPOに関連して、そこの公正性ということで、1つの企業がそれを全部運営し ていると、それは公正ではないと、そういう括りがちょっと意見として出たのですが、 私は1つの企業がやっていても、非常に公正に運営している財団もあるような気がする のです。それも全部排除してしまうのが本当に良いのかどうか、そういう点はやはりこ のワーキンググループで検討すべきことなのですかね。 ○審査管理課長 基本的には、財団あるいは社団というのは、公益法人として整理がさ れて、それに基づく指導・監督が、それぞれの省あるいは地方自治体で行われていると いう理解です。ですから、本来ベースで申し上げると、それは公益法人自体の問題です し、その公益法人を指導・監督している省庁、あるいは都道府県の問題だと思いますが、 先ほどのような指摘も含めて、またこのワーキンググループのお知恵も借りたいと考え ているところです。 ○望月座長 ほかにどなたかご意見はありますか。 ○笠貫委員 永井委員からご指摘がありました、企業がある薬の開発、有効性・安全性 のための臨床治験というものと、医師主導型という医師が企業の薬の開発とは別に、医 師自らがその有効性・安全性を検証しようという臨床研究です。医師主導型の臨床研究 は、新しい枠組みができて、それは推奨されていると思うのですが、これについてどの ように経済的基盤をもってくるかということは、日本のこれからの臨床研究のあり方と して非常に大事だと思うのです。それがいまEMEA、FDAにはなかったということなので、 日本にとっては非常に大事な問題としてこのワーキンググループで検討する必要がある かなと痛感いたしました。 ○望月座長 確かだと思いますので、これも検討していきたいと思います。ほかにどな たかご意見はありますか。ご意見もほぼ出尽くしたものかと思いますので、本日はこれ で閉会としたいと思います。次回については、11月1日(木)の午後を予定しておりま す。場所等については、改めて事務局を通じて文書等でご連絡申し上げますので、よろ しくお願いいたします。本日は、長時間にわたりどうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 総務課 課長補佐 菊池(内線2714)      - 1 -