07/10/03 医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報等の活用に関する検討会 第2回議事録 第2回 医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報等の活用に関する検討会       開催日:平成19年10月3日(水) 10:00〜12:00       場 所:厚生労働省省議室(9階) ○ 開原座長   定刻でございますので、これから第2回「医療サービスの質の向上等のためのレセ プト情報等の活用に関する検討会」を開会いたします。   本日の検討会のメンバーにつきましては、橋本委員、廣松委員、日本医師会の中川 委員が御都合によって欠席されております。また、社会保険診療報酬支払基金の角田 委員がやはり御都合により欠席されておりますけれども、今回は、代理として安藤様 に加わっていただいて、総勢16名ということでございます。   開会に当たりまして、事務局に異動があったということでございますので、事務局 から御紹介をお願いいたします。 ○ 事務局(藤澤保険システム高度化推進室長)   本日は審議官が出席してございますが、8月に「白石」から「木倉」に変わりまし た。 ○ 木倉審議官    木倉でございます。よろしくお願い申し上げます。 ○ 開原座長   どうぞよろしくお願いいたします。それでは早速、議事に移らせていただきたいと 思いますが、この問題はいろいろ複雑な問題をはらんでおりますので、少し我々も勉 強をして、お互いの持っている情報を合わせておくという意味で、今日は勉強会的な 感じの会になろうかと思っております。まず事務局の方から資料の確認をお願いいた します。 ○ 事務局   今日は、資料を5種類御提示いたしております。配布資料一覧が議事次第の2枚目 についてございますが、資料1が諸外国の事例でアメリカでございます。資料2が韓 国です。資料3がフランスです。資料4が、今度は国内ということで、滋賀県の事例 の資料をいただいております。それから最後の資料5が諸外国の事例を先生方に御説 明いただく際のポイントということで1枚だけおつけしております。もし何か御不足 等ございましたらお伝えいただければと存じます。 ○ 開原座長   今日は、議事次第にありますように、今、御説明があったことでおわかりになると 思いますが、諸外国の事例を三つと、国内の事例を一つ御紹介いただくということに なっております。こういう議題にした趣旨は、前回いろいろな方から、「諸外国にはこ ういう事例もあるよ。」というお話もありましたし、また、「国内に事例もある。」とい うことがございまして、会の最後の方で私も申し上げたのですが、事務局からも今後 の検討のためにも一度海外の事例などについて紹介していただくことを御提案いただ きまして、皆様に御賛同いただいたと記憶しております。  というわけで、今日は外国から三つと、国内から一つの事例を、4人の御専門の方 から御説明をいただくということにしたいと思います。最後の方に質疑の時間を残し ておきたいと思いますので、できるだけ能率よくお話をいただきたいと思っておりま す。まず、それぞれの先生に御説明をいただく前に、何が問題なのかというポイント のようなものを事務局の方でまとめていただいております。何が問題かというのは、 この説明を聞くに当たって、こういう点を聞いておられると後で議論がしやすいので はないかという、そういう意味でございますが、その点を事務局の方から御説明をお 願いいたします。 ○ 事務局   最後に1枚だけついている資料5をごらんください。座長にも御紹介いただきまし たように、諸外国の事例について3人の方々にお願いをしておりますが、「できました ら、このペーパーに書きましたようなポイントをおさえて御説明をしてください。」と 先生方にお願いをしております。   まず、医療保険制度そのものが日本と他の国々は必ずしも同じではありませんので、 その概要に少し触れていただいた上で、全国レベルで収集されているデータの範囲、 内容、それからそのデータがどういうふうに流れているのかということをまず1番で 書いてございます。それから全国レベルで収集するデータの理念というのは何かとい うことが2番目でございます。3番目が、その理念に基づいて実際にデータを収集分 析している管理主体がどこかということです。   以上を前提とした上で、最後の4番は利用の具体的な仕組みということで、ここで 言っているのは3番目に書きました管理主体自身も含めてです。管理主体自身が利用 する場合も含めて、利用に当たってどういうルールになっているかということでござ います。 そのルールもどこでルールが決められているかという根拠、それから具体 的な内容があるかと思います。そのルールの内容として、具体的には主なものを右に 三つの四角で書きましたけれど、利用目的、ここでは例として行政での政策の推進、 あるいは疫学的研究というものをあげておりますが、利用目的をどういうふうにとら えているかということと、それから利用者、これは管理主体自身の場合と、それから 管理主体以外の場合、具体的には例えば国が使う場合、あるいは学術的研究機関が使 う場合などが考えられるかと思います。   それから利用する場合に利用できるデータ項目がどういうものかというのを最後に データ項目という欄で書いてございます。例えばこの利用目的、利用者、データ項目、 この三つはいずれも全然別個に存在するものではなくて、それぞれ関連するわけで、 どういう目的でどういう利用者が、どういう形でデータを使えるかというところがポ イントの一つではないかと思っておりますので、先生方にはよろしくお願いいたしま す。 ○ 開原座長   それでは早速発表の方に移ってもよろしゅうございますか。この三つを取り上げた というのは、他の国でも例があるのではないかとは思いますが、ちょうどこの委員の 先生方の中で、比較的この事情をよく知っている方がおられるという意味もありまし てお願いをしたということでございます。それでは特に御質問とかなければ、早速、 アメリカの事例から始めさせていただきたいと思います。アメリカの事例は、野口先 生がお話をいただくということになっております。 ○ 野口委員   国立社会保障人口問題研究所の野口と申します。私がいただきましたミッションは、 アメリカにおけるレセプト情報等の活用の仕組みということでございまして、私の乏 しい経験、あるいは私自身がアメリカのデータを使わせていただいた利用経験から、 ここにまとめさせていただきました。   まず、事務局の方からお話があったように、ポイントというのは誰が一体データを 集めているのか、どういったデータを集めているのか、あるいはどういうふうにそれ を収集し、どういうふうに管理運営し、誰がどういうふうに利用し、それがどういう ふうに社会に貢献しているのかというような流れでお話を進めさせていただきたいと 思います。   まず、簡単にアメリカの医療保険制度の仕組みについて話せということだったので、 それを話しだすと2週間ぐらいかかってしまうので簡単に言いますが、基本的に全く アメリカは日本と違います。先進国の中で唯一いわゆるユニバーサルシステム、国民 皆保険制度をとっていない国がアメリカです。   ただし、そうは言っても公的医療保障制度として、65歳以上の高齢者と障害者に対 するメディケアという医療保障制度及び低所得者層といった方々を対象としたメディ ケイドという公的医療保障が存在いたします。それでは64歳以下の人はどうしている のかというと、それぞれ個人であったり、あるいは事業主を中心とした保険、HMO とか、そういった保険に個々に加入しているということになるわけです。   2つ目のポイントといたしましては、今、日本でもいろいろ話題になっております が、ソーシャルセキュリティナンバー、社会保障番号と呼ばれる総背番号制がついて おります。例えば、私はアメリカで多少働いていた経験があるのですが、これはアメ リカに留学するなり、働きに行くと、みんな取らなくてはいけないのですね。私もソ ーシャルセキュリティナンバーを持っています。というのは税金であるとか、あるい は銀行口座をつくる、あるいはドライバーズ・ライセンスをとる、免許をとるにもこ のソーシャルセキュリティナンバーが必要なので、基本的にみんな背番号がついてい るということです。    したがって理論的には集められたデータというのは、出生、死亡、税金、あとは年 金、あるいは出入国記録などの行政データとのリンクが可能だということです。   3つ目のポイントといたしましては、医療データについては、1984年以降に完全に  オンライン化されております。したがって現在ではデータ収集、整理に対するコスト は非常に少なくて、安くメディケアデータ、メディケイドデータを収集しているとい うことでございます。   2番目に、では、誰が一体データを集めているのかということなのですが、医療情 報の収集と提供といいますのが、center for Medicare and Medicaid Service、通称 CMSというふうに呼ばれていますが、当初はHealth care Financing Administration (HCFA)という、日本語で訳すと保険財政庁というところがデータを収集してい るわけです。この機関はどういう機関かといいますと、アメリカの厚生労働省に当た るUS Department of Health and human service、HSSの一エージェントとして、 メディケアとメディケイドを包括的に管理統括する機関であるということです。そも そも低所得者層を対象にしたメディケイドというのは、州政府が管理していたのです が、HCFAからCMSへの移行とともに、連邦政府の一括管理統括となったわけで す。   それでは、その集めている理念は何かというと、この前に樋口先生も開原先生も非 常に強調されていたのですが、エビデンス・ベイスト・ポリシー、つまり実証に基づ く政策立案、またはその検証ということがあります。そういった理念のもとに、こう いった公的な医療保障の受益者に対する効率的かつ最新の医療サービスの提供を確実 にすること、さらに提供される医療サービスの質の向上を社会的に彼らのミッション としているわけです。   この前の橋本先生の御発言だったと思いますが、基本的にアメリカ人というのは、 政府のやること、あるいはそういった政策に対して疑ってかかっているのである、必 ず人間はミスを犯すものであるというお話がありましたが、基本的に政策を立てる上 でも何かしらのエビデンスが必要だ、その政策が実際社会にとってどういう影響をも たらしたかということに対しても客観的にエビデンスが必要だという、そういった理 念のもとにデータ収集、あるいはその運用が行われているわけです。   皆さんにお配りした2ページの4のところに短く書いたのですが、データの収集分 析の理念といたしましては、まとめますと、4番目のCMSによる社会的ミッション であるメディケア、メディケイド、両プログラムの質を向上させ、医療資源の効率的 な社会的再分配システムを生み出すことが目的であるというふうに、CMSの皆さん はホームページを開かれるとこの文言が書いてあります。   では、実際にどういったデータを集めているのかということを次にお話ししたいの ですが、お手元の資料の3−1というところをごらんになっていただきたいと思いま す。    CMSによって主に医療情報が収集され提供されているわけですが、大きく二つの ファイルに分かれます。一つは標準分析ファイル、standard Analytical Filesと呼 ばれるもので、これがいわゆるレセプトベース、今回かかわりがあるところだと思う のですが、請求書ベースのデータベースになっています。この標準分析ファイルの中 には、例えばそこに書いてありますように、耐久医療機器であるとか、在宅ケアサー ビス、これは日本でいうと介護保険の部分に当たると思うのですが、あるいはホスピ ス、入院、外来、供給者パートBというのは、先ほど説明するのを忘れたのですが、 メディケアというのは基本的にパートAとパートBに分かれておりまして、パートA の方が入院です。パートBの方が外来診療に関してカバーをしているわけです。その 部分です。そして専門的看護施設等々の請求書ベースのファイルになっている。   もう一つの方は何かといいますと、通称私たちはメディパーと呼んでいるのですが、 医療供給者分析ファイルということで、医療施設に入院したメディケア受益者、入院 患者だけについて入院日から退院日までの在院日数ベースでその治療等々を追ってい くといったベースのファイルになっているわけです。   実際にこの二つのファイルなのですが、収集される内容というのは、その真ん中の 大きなところに書いてあります。メディケア受益者の氏名、これはほぼ公開されるこ とはないんですが、氏名があります。HICBIC、あるいはソーシャルセキュリテ ィナンバーといった個人のIDがあります。自宅の郵便番号、そして外来の場合は治 療日、入退院日、誕生日、人種、性別等々個人の情報、死亡日などが入っております。  そこから先が基本的に医療情報になるわけですが、ICD−10コードに標準化され た、これは非常に大事なことだと思うのですが、やっぱりこういった疫学データ、あ るいは政策データをつくる上で、こういった標準化された医療情報を用いるというこ とが何よりも重要なことなので、ICD−10はきちんとデータをクリンナップして診 断日が入っている。治療内容もICD−10という標準化された医療情報を共有してい るということです。当然、それに対する支出、治療を受けた医療施設のID、あるい は治療した医師のUnique Physician Identifierという医師の背番号がついているの ですが、(医療施設の)郵便番号、あるいは主治医の郵便番号といったものがすべてフ ァイルの中に入っているということになるわけです。   ちなみにこの「*」印をつけましたところは、非常に機密性の高いところなので、 そのデータを研究機関などに渡す際において非常に厳しい審査があるということを申 し加えておきます。   実際、こういったデータを研究者あるいは研究機関に、あるいは国ベースでもそう ですが、使用させるということになりますと、管理運用が必要になってくるというこ とです。どういうふうになっているかといいますと、今お話しした二つのファイルに ついて、CMSデータファイルというのは主に大きく二つに分かれます。この資料5 −1−1をごらんいただきたいと思います。   一つは、情報公開のための患者ファイル(PUFs)、これはパブリックユースファ イルと言われるもので、これは一般に厚生労働省さんの方でも出されているような、 いわゆる集計ベースのデータです。個人ベースのデータは一切含みません。ですから これはデータを購入するにしたって、使用者側のアグリーメントは必要なのですが、 基本的に例えば日本から私がネットを通じて申請してもいただけるというようなデー タですし、あるいはインターネットに既にアップされているというデータでもありま す。ここの部分はそれほど問題にならないんですが、問題はこの下の部分です。   使用許可を得たものを対象にした患者情報ファイル、この部分がいわゆる先ほどお 話しした個表ベースの情報が入ってくるわけです。皆さんにもお渡しした5−1の規 制的側面のところに書きましたが、基本的にこういった個人情報を含むデータという ものを管理する、運営する法律というのは、1996年8月に連邦法として制定された医 療保険の携帯性と会計基準に関する法律、私たちはこれをHIPPAと訳しておりま すが、樋口先生とか開原先生はこの法律を訳されたと思いますが、こういった法律に 基づいて管理運用がなされているということです。   一つは、Limited Data Set Filesと言われるもので、実はこれは受給者番号あるい はソーシャルセキュリティナンバーであるとか、HICBICというものが暗号化さ れております。要するに個人が全く特定できないようになっているわけです。そこの 部分で実はそのHIPPAが1996年、あるいは2000年以降に施行されてから、実は このファイルが二つに分かれたんです。   皆さんには、次の資料の5−1−2の三角形の図を見ていただきたいのですが、基 本的にこの真ん中の二つの部分で、一つはLDSの中でも個人が全く特定できず、い わゆる性別、あるいは人種、あるいは年齢等々、死亡日等々が全くわからない。つま り利用者が自分で、例えば男性で、糖尿病で、50歳から55歳の人がどうなっている のかということを調べようとしても、そういったデータの確保ができないファイルが あるわけですから、実質的にこの下から二番目のファイルというのは、個人情報ベー スなのですが、全く研究機関や研究者にとっては使うことができない、余り利用価値 がないわけです。自主的に研究者が申請していくのは、その上の段階からになります。   ですから、今言ったように、例えば50歳から55歳の糖尿病の人、他の副疾患がど うなっているのかであるとか、死亡率がどうなっているのであるとか、そういったあ る程度の調整ができる、自分でコントロールができるというファイルがその上のファ イル、受給者暗号化ファイルというところになっております。   もちろん言わずもがなですが、一番査定の厳しいファイルは、患者調査個人情報フ ァイルといいまして、これはHICBIC、ソーシャルセキュリティナンバー、ある いはジップコード、そういったものがすべて含まれておりますので、いわゆる個人の 特定をしようと思えば可能なファイルになってくるわけです。   では、実際CMSはどういうふうにこれらを利用者に分けているのかと申しますと、 受給者暗号化ファイルのところは、まずユーザーアグリーメントの非常に厳しい、例 えば、「この項目を破るとこういうことが起こりますよ。」、「罰金が発生しますよ。」、 「牢獄に行かなければいけませんよ。」というような罰則を書いた紙にまずサインをす る。そうした資料をつくった後に、一体なぜ自分がこのデータを必要とするのか、ど ういった目的で使おうとするのかというようなプロポーザルを非常に細かく書かなけ ればいけないのですね。そのデータ申請をCMSに対して行っていかなければならな い。   CMSの方は、もちろんどういうふうなデータ管理をその研究所がデータをもらっ た後にするのか、例えばコンピューター上で保存するのか、あるいは誰かちゃんとし た管理者がいるのかであるとか、そういったことを全部審査いたします。ですから非 常に審査期間も長くなるので、データを申請すると1年以上待たされるということに なります。    例えば、そのデータについても、非常に値段も高くなってきて、使う側としては、 いわゆる物理的にも時間的にも非常にコストがかかるということになってくるわけで す。   そういったもの、つまり法的なコストと物理的コスト、時間的コストを研究者に与 えて、それでもなおその審査をくぐり抜けた人がデータを使う権利を有するというこ とになってくるわけであります。   最後のところに書いておいたのですが、ただし、ここで注意しなければいけないの は、医薬品企業であるとか、医薬品企業が出資している研究所であるとか、そういっ た特定の利益団体とつながりのある研究機関には自動的にこのデータは下りません。 ですからその点もCMSの方は果たしてその研究機関、研究者がつながっていないか どうかということを厳正に1年かけて審査するということになってきます。   これは皆様の御参考のためなのですが、CMSは、実際、このデータに価格をつけ て売っています。ですから、お値段の方もここに書いておいたのですが、上の方がパ ブリックユースファイル、これは私どももインターネットで買えるというファイルで す。下の方が個人情報を含むファイルになっておりまして、見ていただくとわかると 思うのですが、非常に高額です。例えば、この3番目ぐらいのHome health standard Analytic Fileの4番目を見ていただくと、例えば価格なのですが、1993年から99 年のところに100パーセントのデータ、つまり全数を含むファイルで2,300ドル、つ まり1年間2,300ドルですので、例えばこれを20年間買うと膨大なお金が発生するわ けです。これだけでは分析できませんので、こういったファイルを少々積み上げて買 っていくと物すごい値段になるということで、もちろん研究機関や研究者にはこうい ったデータを使用することへの金銭的なコストもかかるということです。これはCM Sが販売をしているということになります。   以上のようなことなのですが、次に、実際にそういうふうにして研究者に提供され たデータを、実際に研究者側はどのように使っているかという一事例を6番に書いて おきました。1992当時にHCFAを中心に導入されたhealth care Quality Improvement programというのを政策プロジェクトとして発足したわけです。これは 医療の質を上げていくというプロジェクトでした。このプロジェクトは7疾病、急性 心筋梗塞、乳がん、糖尿病、肺炎、心不全、脳卒中、不整脈等々に関して、疾病ごと にメディケア受益者に対する医療の質と治療結果の改善を図っていくということを目 的にしたプロジェクトでした。   このプロジェクトのために、これは本当に一疾病ですが、急性心筋梗塞患者に対し て、もともとあったメディケアベース、メディケアのこのファイルをもとにして、C CPプロジェクトというのができたんですね。これが、実際、私が向こうで研究機関 におりましてそこで使わせていただいていたデータなのですが、それは最高機密のデ ータでしたので、ソーシャルセキュリティナンバーから郵便番号から全部入っていた データです。そのデータに関して、皆さんCCPというふうにウェブで入れていただ くと物すごい数の情報が得られるのですが、こういった医療評価に関するおびただし い数の研究業績が本当にあげられている、メディケアというところを入れただけでも 何万という数の論文が出てくるということです。   研究者にとっていいということばかりではなくて、実際にその急性心筋梗塞で入院 した方々の死亡率を10パーセントから15パーセント、20パーセント押し下げるのに 非常にこういった研究が役に立ったという事例がございます。このCCPというのは どういうデータかといいますと、メディケアファイルをもとに1995年から1996年に かけて、一人100ドルで20万人のカルテベースのデータを全部集めたわけです。それ はいわゆる全米の心臓学会等々の循環器学会等々の先生たちが政府と協力をして、150 ぐらいの心筋梗塞に関する重要な指標を選んで、それについて回答ベースでデータを 標準化し、それを収集して、それに基づいて死亡率を5年間で31.4パーセントから 27.4パーセントまで下げるのにガイドラインを作成し、それに対して各医療機関に政 策側からクオリティのチェックをし、また医療機関はそれに応え、そうした努力の結 果、いわゆる社会的に非常にCMSのミッションとして医療の質を上げていく、ある いは患者の死亡率を下げていくということに貢献をしたというようなことが実例とし てあげるかと思います。   最後になりますが、では実際使う研究者側、研究機関側はどういうふうに管理して いるかというのを、全く一事例ですので、こういった管理をすべての機関がしている とは限りませんが、全米経済研究所でしているデータ管理の方法を紹介したいと思い ます。   まずは、研究機関において、私たち研究員一人一人、職員一人一人の自覚を促すた めに、情報管理システムの安全性に対する会議が半年に一回ぐらい開かれているとい うことです。また、機密保持に関する契約書への署名を必ず年に一回はさせられます。 個表データの使用権限を持たない職員に対する対応といたしましては、プロジェクト ごとにいわゆる自分がアクセスできるデータが限られているわけですね。   例えば、私がかかわっていないプロジェクトに用いているデータにアクセスしよう とすると、全部拒否をされるということです。例えば私が許可を得ていないデータを 使おうとするということが、全部ロジに残るわけです。そういったデータ上、いわゆ るコンピューター上の精度設計を非常に小さな研究機関でもやっていました。データ は、必ずネットから切り離したところにおいていく等々の細かい対策を私たちはうっ ていたわけです。こういったデータを実際使用している機関についても、年に一回H CFAなり、CMSの職員がいらっしゃって、どういうふうにチェックをしているか ということで、管理状況をチェックする、あるいはそこで研究者を前にして情報管理 のお話をいただくというようなプロセスを毎年行っておりました。   以上が、アメリカのCMSが提供するレセプトデータ、メディケア、メディケイド ファイルに対する情報の一連の活用の仕組みに関するお話でした。どうもありがとう ございました。 ○ 開原座長   どうもありがとうございました。時間の関係で御質問などは最後にまとめてやりた いと思いますので、次に韓国の事例を御説明いただきたいと思います。 ○ 岡本委員  保健医療科学院の岡本です。それでは韓国の事例について説明させていただきます。 まず、最初の写真ですが、これは韓国語で、「コンカン・ボホム・シムサ・ピョン グァウィン」、そのまま漢字に直しますと健康保険審査評価院という建物です。これは 訪問時に撮影した写真ですが、西暦2000年7月に韓国の医療保険制度が一本化された と同時に設立され、韓国全体のレセプトを収集し、審査し、さらにそれをデータウェ アハウス化している機関です。ごらんのように建物も非常にモダンな、まさにITの 固まりのような機関でありまして、審査も日本の審査支払機関のように紙が山積みさ れているというのではなくて、ほとんど画面審査で行っています。当然ながら出入り も非常に厳重です。   まず韓国の医療制度の説明ですが、一口で言いまして、先のアメリカとは異なり、  韓国の医療保険制度は我が国と非常に類似しています。  現在ではわが国同様、皆保険制をとり、国民全員が医療保険に加入しています。 しかも公的保険が中心である。医療機関も、むろんハングル語ではレセプトという 言葉は使いませんが、医療費の請求書を審査評価院に送って支払いを受けるという点 も同じです。ですから、もっぱら両国の違いだけをかいつまんで説明します。 まず、第一の違いは、医療保険が一本化されていること。しかし、最初から一本化  されていたわけではなく、もともとは、わが国のように分立していたのですが、西暦 2000年7月に国保も社保も被用者保険も自営業者も含めまして、国民健康保険公団と いう一つの保険者に一本化されました。ですから、保険者は一つですから、その請求 書、レセプトも最終的には公団に全部集中することになります。   第二に、データ活用上どうしても触れておかなければならないことは、アメリカも social security numberという総背番号制がありますが、韓国もまた国民一人一人に 生涯不変の住民登録番号と呼ばれる総背番号制があるということです。アメリカでは 「理論上は」他のデータとリンク可能という話がありましたが、韓国では理論上では なく「実際に」年金や入国記録等と現にリンクしています。むろん「どんなものでも」 リンクできるというわけではありませんが、少なくともレセプトだけのデータウェア ハウスではないということです。   三つ目は、これは重要な点ですが、既にほぼ100パーセントのオンライン化は達成  されており、毎月毎月審査評価院の建物には、年間約6億件ものレセプトデータが集 積されつつあり、診療報酬点数表が非常に体系的にできているということも有利な条 件となって、盛んにデータ活用が行われているということです。   では、その電子化されたレセプトのデータベースは、どこが主体となって、どのよ  うに収集されるか? 先ほど医療保険が一本化されており、どこが保険料を集めて運 営しているかというと、国民健康保険公団という機関であると述べました。しかし、 医療機関からのレセプトすなわち請求書を受けつけ、審査するのは最初にお見せしま した審査評価院という組織が別個に行っています。   なぜ保険者から分離したかというと、審査の中立性とか、そういったことも事情と  してあったようです。いずれにしましても、最初に見せました審査評価院、略して審 評院(しんぴょういん)が医療費の審査ならびに、これがポイントなのですが、医療の 適正性評価を行っています。審評院は公法人であり、国の直接の機関ではないのです が、職員はみなし公務員という規定があり、実質的には国の機関と考えていいだろう と思います。 収集されるのは、レセプトの全データ。ですから入院、外来、調剤、漢方、あらゆ るレセプト情報が含まれます。当然ながら、レセプトは医療機関から直に来るわけで すから、個人情報として請求されます。傷病名ももちろん記載され、二つ三つとたく さんの病名が書かれているという点も日本と同一です。ただ、違うところは、オンラ イン請求時にすべての病名をICD−10のコード化して出すことが義務づけられて るということ。診療行為、薬剤、氏名や住民登録番号と呼ばれる総背番号も全て含ん で直接オンラインで提出されるということです。   審評院が発足した2000年の7月当時、オンライン化はまだ100パーセントではなか  ったのですが、ほぼ2〜3年前に完全オンライン化が達成され、データが全部データ ベース化され「データウェアハウス」と呼ばれるようになっています。韓国の人口は 約5,000万人、そこから出てくるレセプトの件数が年間約6億件ですが、発足しても う7年ぐらいたちますので、永久に残すのも大変なので5年間は蓄積するということ です。そのメモリーの大きさは100テラバイトと言われております。   さて、審査評価院がレセプトを集めてデータウェハウス化する法的な根拠はどこに  あるのか? これは国民健康保険法、むろん韓国の国民健康保険法です。ハングル語 は日本語に近く、特に法律の条文などは自動翻訳をかけても、ほとんどそのまま日本 の条文と同じくらいに正確に訳されるので、比較は簡単です。その国民健康保険法第 56条に審査評価院の業務が規定されております。   審査評価院は、次の各号の業務を管掌する。一番は療養給付費用の審査・・・これ  は日本と一緒だろうと思いますが、二番は療養給付の適正性に対する評価、これが重 要なところです。そして三番に審査及び評価基準の開発、そしてこれらの業務にかか わる調査研究及び国際協力といったことが定められています。 細かい点は省令で定められます。ちなみに日本の政令に当たるのが大統領令で、向 こうは厚生労働省ではなくて保健福祉部といっていますので、省令に当たる施行規則 は保健福祉部令と言っていますが、その第21条には適正性評価のやり方が書いてあり ます。     審査評価院が療養給付の適正性を評価する場合の仕方は、医薬学的側面と費用対効 果的側面の両面から、医療給付の内容が適正かどうかを評価しなければならない、さ らにその結果を公表せよとあります。後で示しますが、評価結果はホームページでも 公表されております。その評価の方法は「療養機関別に行え」つまり韓国の病院は平 均してこうだというのではなく、A病院はこうだ、B病院はこうだというふうに療養 機関別に評価しています。その他、診療科目とか傷病別にも分析していますが、医療 機関そのものの評価である、ということが明記されております。   審査評価院のホームページをみますと、まず基本的なレセプトの統計に当たるもの  が公表されています。ここに示しましたのはその一つ、がん患者数の表です。これは 非常に詳細で単にがんというだけではなくて、どの部位か、例えば子宮頸がんでも上 皮内がんか、それとも普通のがんなのか、というふうにがんだけでも109もの分類で 載っており、全部載せたら何ページにもなりますので、一番患者数の多いものと少な いものだけ示しました。   表中にレセプトの件数や日数が示されていますが、これらのデータは日本でもわか  ります。注目すべきなのは真ん中の「実人員」です。つまり現在韓国で、例えば、中 皮腫――アスベストが原因で起こる肺がん――非常に稀ながんですが、それは韓国内 で2006年中147人が少なくとも一回は受診していると書かれてあります。   この数値は関係者でしたらオッと思うでしょう。日本ではレセプトが何件かという  ことはわかりますが、一人の人間があちこち複数の病院にかかっても、それは同一人 なのかどうか区別できない。しかし、韓国では住民登録番号という個人情報があるの で、それで名寄せを行い、本当にがんにかかっている人は何人かということがわかる。 そういう点で非常に疫学的に有力な情報源になっているということです。   これは、2年前に公表されました心筋梗塞の死亡率の評価です。心筋梗塞や脳梗塞  とか脳出血の入院後の死亡率というのは、OECDが提唱している医療の質の指標に も含まれておりますが、これは2003年のデータですが、入院後の院内死亡の数が9.65 パーセントと示されております。この数値は比較するのは非常に難しく、ちなみにO ECDが提唱している国際比較のためには、入院後30日以内の死亡率に限定されてい ます。韓国のこの数値は期間を定めていませんので、その分多めに出ると思います。 先ほどのアメリカの数値はもっと高かったですが、あれはデータ源であるメディケア が65歳以上高齢者だけの制度なので、当然65歳未満の若い心筋梗塞は含まれないの で、それも影響しています。   ちなみに日本の99年のデータは10.3パーセントという数字でしたが、より重要な  問題は、この審査評価院に出す数値は、患者数をきちんと数えているが、日本の患者 調査とかは個人を特定しないので、たとえばある病院に入って1週間入院した後に別 の病院に転院し、その病院で死んだという場合、明らかにこの患者は最初の入院から 30日以内に死亡しているにもかかわらず、最初の病院では1週間で生きて退院してい ますから、一人の患者さんが二人にカウントされてしまい死亡率は50パーセントと、 実際よりもよく見えているという可能性もあるということです。   もう一つ、これは脳梗塞に対する評価結果で、先月ホームページに掲載されたばか  りのホヤホヤ情報です。分量が多いので一部だけ紹介します。脳梗塞は、発症直後に 血栓溶解療法をやった方がいいと言われております。その実施率は日本が来年度から の医療計画の一つの指標としても例示されていますが、これは韓国の141の大学病院 や総合病院において、どの程度投与されたかという割合が示されています。   以上が、審査評価院がみずからの法律に基づく業務として行っている最近の成果で  すが、その他にも、法律に明確な規定があるわけではありませんが、学会とか大学の 研究でも条件が合う場合には、審査評価院の判断によりデータを提供しています。ホ ームページには「このような場合にはデータを提供しますので、こういう手続をとっ てください」ということが書いてあります。   「レセプトの診療データを保健医療分野の公共研究の目的ならびに国家行政機関、  大学、研究者など、公共機関で要請する場合は、以下の手続によって評価し提供しま す」とあります。利用者は最初に相談をし、研究企画書を出し、それが妥当であれば 最後はそのデータを抽出して提供するということです。   どのような場合に提供されるのか? もちろんどんな場合でももらえるというもの  ではありません。重要点は、行政機関とか学術研究機関が、公益性の高い研究を行う 場合、ですから逆に言うと「教授とか学生、大学院生などが個人の興味で論文を書き たいから要請するという場合は対象にならない」ということですが、学会とか公益性 が高い場合は認める。   どのようなものを提供するかというと「あくまでレセプトの記載事項内でデータリ  ンクして提供する」です。医療機関ごとの治療成績もウェブサイトで閲覧できるよう になっており、クリックすれば地図まで表示されるほど公表されていますが、そうい う「個人情報や個別の法人や団体の名前は、これは識別不可能な形で提供する」とあ ります。ただし「同一患者可否を区分するための別途索引コードを付与する」とも。 ハングルのネイティブな人にもチェックしてもらったのですが、これは個人を識別 する、つまり誰かはわからないけれども、最初に入院した病院から、途中から他病院 に転院したと場合も、同一患者として数えられるようにするということだそうです。 また手数料を徴収するとありますが、先ほどのアメリカとは違い載って価格は載っ てなくて単に「規定による」とのこと。   具体的にどのような成果が出ているかは略しますが、皆様のお手元の配布資料には、 例えば、手術の実施件数と治療成績の関係、今、中医協でも問題になっている重要問 題で、手術の件数の多いところほど成績はいいのかとか、高齢者における降圧剤の服 用状況とか、喘息の有病率とか、糖尿病の治療の受療状況といったものがあります。 この発表者は保健所の所長であり、こういった公益目的の場合にはおそらく手続を 経て提供してもらった上で分析しているのだろうと思われます。   データウェアハウスができて7年になり、最近ではこういう成果が続々と、ハング  ル語の学術誌だけでなく国際誌にも発表されるようになってきています。以上。 ○ 開原座長   どうもありがとうございました。それでは引き続きまして松田先生にフランスの事 例をお願いしたいと思います。 ○ 松田委員   産業医大の松田でございます。きょうはフランスにおけるレセプト情報の活用とい うことでお話をさせていただきます。特に個人情報保護への対応をどういうふうにや ってきているかということを中心に少しお話をさせていただきます。   これは、フランスの医療保険制度ですが、日本と同じような国民皆保険で、社会保 険制度でやっておりますが、一つ違うのがいわゆる償還制であるということです。こ こにありますように、すべての国民は何らかの形で大きく分けると三つの保険がある わけですが、いわゆる被用者保険、自営業者保険、農業者保険というのがあるわけで すが、そのどれかに属しています。かつては、被保険者の保険料と企業からの保険料 で賄われていたわけですが、最近、フランスでは、この保険料に関して一般福祉税化、 税金化が進んでいます。   かつては、企業が12パーセント、被保険者が6パーセントぐらいの保険料を払って いたのですが、これが被保険者に対しましては、すべての所得に対してCGSという一 般福祉税がかかりまして、この一般福祉税をもとにして医療保険を賄うという形にだ んだん変わってきています。   これは、いわゆる資産所得によって収入を得ている人たちが非常に多くなってきた ということと、高齢者がふえてきたということがあります。患者さんが何らかの形で 医療機関にかかった場合には、原則として償還制ですので、一たん全額を支払います。 保険でカバーされている部分を保険者に償還請求を行って償還を受けるという形で賄 われてきました。   あと、もう一つ大きな特徴は、補足保険制度というのがございます。これは何かと いいますと、いわゆるNPOだったり民間保険だったりするわけですが、自己負担分 をカバーすることとされています。また、現在では、CMAという制度が入りました ので、国民の95パーセント以上がこの補足保険制度を含めて医療保険、公的な保険で 賄われているという仕組みになるわけです。  次に、診療報酬制度ですが、これは日本と同じような、いわゆる診療報酬制度に基 づいています。これはどういうふうに決まるのかというと、全く日本と同じように、 医療者の代表者と保険者の代表者が協議を行って診療報酬を決めるということをずっ とやってきているわけです。   しかし、この診療報酬を決めるという作業はしばしば政治問題化したために、より 合理的に決めるために医療情報の活用が必要だということが1980年代の後半ぐらい から議論になってきます。その議論の中で、医療情報というのは非常に貴重な厳密な 管理を要求する個人情報ですので、特にプライバシーに関心の高いフランスにおいて、 これをどのように活用していくかということが問題になりました。医療における個人 情報保護という観点では、その医療職に関して厳格な守秘義務が課せられています。 この守秘義務違反はかなり重いものになります。   例えば、日本と同じようにフランスにも産業医制度があります。日本の産業医とい うのは、企業に所属していたりとか、いわゆる保険者に所属していたりするのですが、 フランスの産業医というのは全く中立的な立場になります。ですから、いわゆる健康 診断が得られた情報というものは、産業医が管理をするという形になります。したが って、事業主が見ることはできません。そういう非常に医療情報に関しては厳格な守 秘義務が課せられているというのがフランスです。   医療政策において情報が必要となってきた理由の一つは、悪性コーポラティズムの 回避です。診療報酬の決定に際しては各関係者が価格交渉等を行うのですが、本当に これが安いのか高いのか、実際に医療のニーズとしてどのぐらいあるのか、そういう 情報がない状態で、政治的ないろんな駆け引きで点数が決まるということが非常に悪 い影響を及ぼしてきました。例えば、医療費の配分が悪くなってきたことが1980年代 に問題にありました。具体的には病院医療、特に公的病院に対する配分が非常に少な くなってきたという問題がありました。それからもっと大きな事項としては、本当に 標準的な医療が行われているか、医療の質への関心の高まりがあります。   医療の質というものをどのように確保していくのかということを踏まえて、医療の 情報化というものをやらなければいけないということが1990年代の前半ぐらいから 非常に大きな流れとなってきました。そして、具体的には1996年当時のジュペ首相の ジュペプランというものの中で医療情報を電子化して、いろんな分析に使えるように しようということが出てきたわけです。   ただ、その時に非常に注意されたのが、乱用を回避した上での適正利用ということ です。実際、それを担っているのは何かといいますと、CNILという「情報と自由 に関する全国委員会」というものです。これは何かといいますと、医療情報を含めて 個人情報の利用に関しては、このCNILというものが事前の承認を行うという、そ ういう手続が定められています。このCNILというのは独立性が保障されていまし て、一応5年を任期とする、ここにあげたような委員から構成されています。   このCNILの役割というのは、記名情報の自動的な処理、その分析自体の資料に 問わず、とにかくいわゆるプライバシーにかかわるような情報に関しましては、この CNILによる審査がなければ活用ができないという仕組みを作っています。ただ、 それを全部厳格にやってしまいますと、日常の業務に非常に支障がきたしますので、 日常的に行われているような情報処理については、CNILが承認のための簡略手続、 いわゆる承認用のフォーマットというのを定めて、それに記載をして審査を受ければ 情報が使えるという形になっています。実はそれが何かというと、公私を問わず日常 的に行われているような種類の情報処理、まさにレセプト情報の処理ということにな ってくるわけです。  CNILの提出処理の内容ですが、このようになっています。誰がその情報処理に 決定権を持っているのかとか、情報処理の目的及びその名称、特にここの部分で、い わゆるこういう情報を分析することの公益性の評価が行われます。これを行うことが、 その医療政策とかそういうものに関してどのような、あるいは患者さんの医療の質に 関してどのような公益性があるのか、そういうことが審査されるわけです。   診療行為及び予防行為の評価分析を目的とした個人記名情報の扱いについては、ま ず保険者による償還及び監督を目的として行われる場合には、これはいわゆる保険者 の業務の一環ですので、これはいわゆるCNILの規制の対象になりません。ただ、 その病院情報部門とか自由開業セクター、診療所ですが、この医療保健職に提供され る情報及び疾病金庫によって提供される情報については、これについての集計された 情報形式、あるいは個人が特定できない形式のみでしかその診療行為の評価及び分析 を目的とした統計情報として用いることはできないという形になっています。要する に事後的に連結不可能な状態で、個人が特定できないという条件のもとでいろんな分 析が行われる仕組みになっています。   今日のところは混乱してしまいますので、病院の方は簡単に触れたいと思うのです が、病院の方はいわゆるDRGに基づく活動報告というものを、保険者の方に提出す るのですが、もう一つ地方病院庁というところにも提出しなければいけません。これ は何をやっているかというと、この地方病院庁というところは、その地域の医療計画 の進行状況というものをチェックしています。   この医療計画の中では、各医療機関がその地域においてどのような医療機能を果た すのかということを明記した、いわゆる病院計画というものを持っているのですが、 その病院計画にそった活動を行っているのかどうかということをこの地方病院庁とい うものはチェックをします。それに対していろんな予算が組まれたりするわけですが、 仮にもし効率性とか質に問題がある場合には、その施設は、経済的に統廃合が誘導さ れるというようなことが規定されています。  地方病院庁に情報として提出されるのが、退院時要約票といわれる、いわゆるミニ マムデータセットです。病院内ではこのような情報が全部作られるわけですが、外に 出す時には、生年月日ですとか、あるいは入院日ですとか、退院日ですとか、そうい う情報はすべて除かれます。要するに個人が特定できないような形で、地方病院庁の 方に情報が提供され、また日本におけるDPCの様式に相当するものですが、そうい う形で情報が提供されているということです。   今日の話の中心は、開業医療の方になりますが、かつて開業医療というのは、この ような支払い方式になっていました。患者さんが診療所に受診しますと、そこで診療 所の医師は、領収書を発行します。この領収書を患者自身が疾病金庫、あるいは共済 組織に提出することで償還を受けるという、こういう仕組みでやっていたんですが、 これが現在はこのICカードに基づいて支払いを行うという仕組みになっています。   これは何かといいますと、患者さんが診療所にかかりますと、かつては患者さん自 身が請求を行っていたわけですが、今はこの診療所がRSSという、いわゆる社会保 障ネットという専用回線があるのですが、これを通じて疾病金庫に直接請求するとい う形になっています。これは、実は年間10億枚もの簡易ベースの償還請求が今まで行 われていたわけですが、これは非常に莫大な事務負担がかかる。もう一つは、正確性 と迅速性の問題もあります。そういうことで医師の診察室において情報が行えるよう な仕組みができました。   それは何かというと、医師が自分のICカード、CPSというものを持っていまし て、これを読取機に挿入します。さらに患者さんが患者自身のICカードというのを もっています。この中にはいわゆる基本情報が全部入っています。いわゆる社会保障 番号とか、そういうものが入っているわけですが、この二つが入った状態でないとア クセスができないのですが、この仕組みを使って情報を入れていくという形になるわ けです。1日の診察終了後に医師がこれを入れますと、コンピューターの中にあるソ フトが入っていまして、それをまとめてそれぞれの金庫にこの社会保障ネットを通じ てデータを送信するという仕組みになっています。   これに対していろんな問題がありました。最初のところでは、日本でも今問題にな っているように、電子化に対応できない先生方はどうするのだという話があったので すが、これについては、疾病金庫に電子化の費用を支払うことで、大体1枚400円ぐ らいだったと思いますが、金庫側が電子化を行う、いわゆる代行入力ということをや ることによって、すべての医療機関に対応したということです。   もう一つ大事なことは、実はこのPCを導入するに当たって、疾病金庫の側から各 診察、診療所の先生方に非常に安いお金ですが、PCを買うための財政的な補助金と いうのも出されました。あとはこのソフト自体は国がフォーマットを定めていろんな プロバイダーが提供しています。   こういう情報の中で特に重要になってくるのが、各患者さんに医師がどのような医 療行為を行ったかという内容の把握です。かつての領収書ではこれはわからない形に なっていました。これをわかるような仕組みにしないと医療の適正性が評価できない ということで、今、このCCAMという、新しい診療行為分類というのが導入されて います。例えば、ここにHJBJ001というのがありますが、これは何かというと、 Hでバイオプシーをやった、Jというのは腎臓のバイオプシーをやった、Bは経皮的 にやった、超音波のガイドを用いた、この行為は何番目にやったのかという形で、ど のような病態に対して、患者さんに何をやったのかということをコーディングして、 それを疾病金庫に送るという形式になりました。   こういう情報を使って何が行われているのかということを次に説明します。フラン スの社会保障財政は非常に厳しい状況になっています。そこで、現在は、社会保障財 政法というものに基づいて、毎年五つの部門別に医療費の支出目標額を設定すること が行われています。これは、ONDAM(オンダム)といいますが、社会医療部門、公的病院 サービス部門、私的病院部門、開業医部門、それに医療連携部門それぞれについて、 それまでの実績と各地域の、いわゆる公衆衛生診断の結果に基づいて、どのぐらいの 医療費がかかるのかということに関する予想を立てて、支出目標額というものを毎年 国民議会で決定するということをやっているわけです。   この決定額に関しまして、例えばその年のオンダムを0.75パーセントぐらい超過す るようなことが起こってきますと、それに対して疾病金庫の理事長が警告委員会とい うところに対策を提言することができます。これは今年初めて出されたわけですが、 そうやってこの支出目標額の遵守状況を、モニタリングするということが出るわけで す。   ここからが具体的な事例ですが、ただ、その医療保健情報システム、SIAMとい うのがございます。これは、被保険者の給付提供のデータベースなのですが、これに はICカード全部の情報が入ってきますので、被保険者の基本情報、これは保険者の 事業ですが、医療者の情報、給付額と給付内容、そして給付内容についてはどのよう な医療行為を行ったのか、どんな検査を行ったのか、どんな医薬品が処方されたのか ということが、すべてのデータとして入力されています。  では、これを用いて例えばどんな分析ができるかというと、基本的なまず一つの目 的は、医療の質の確保です。実はフランスではHASという高等医療庁というところ がございまして、そこがいろんなガイドラインを出しています。例えば、糖尿病の診 療のガイドラインというのがあるわけですが、実際に地域の開業医の先生が行ってい る、その糖尿病診療というものがそのガイドラインにそったものかどうかという質の 評価をする。   そのために例えば、ガイドラインにそってHbAlcの検査をどのぐらいやってい るかとか、あるいは眼科の診察をどのぐらい受けているかとか、そういうのがあるわ けですが、そういう分析をこのSIAMで集めているデータに基づいてやっています。   そうやってみるとこんな感じですが、一回も検査をしない人というものが、98年に は58パーセントもいたのですが、2000年になるとだんだんガイドラインが浸透して きて、これは40パーセントぐらいに減少しているという形で、実際にどのような医療 の質のサービスが行われたかということを、こういう形でモニタリングをする、その 結果を医療者に返すことによって、より質の高い医療を提供するように働きかけると いうことが保険者の業務として行われているわけです。   実は、CNAMTSの中にはかなり、いわゆる疫学者という方がいらっしゃいます。  その方たちは、例えばパリ大学の教員を兼任していたりしていますので、そういう 人たちがそういう分析結果というものをいろんな学術雑誌に掲載するということも今、 行われているようです。もちろんオンダムの問題がありますので、開業医療費あるい は公的病院医療費、それごとにこういう形で実際はどのぐらい医療費が伸びてきてい るのかということをモニタリングしております。その結果に基づいて、例えば疾病金 庫理事長がその対策を提言するというようなことが今実際に行われています。   こういうことをやることによって、例えば薬剤でいいますと、フランスには代替処 方、つまり、これはジェネリックの代替処方ですとか、あるいは今は、参照価格制と いうのが導入されています。そういうものの効果がどうだったのかが検証できます。  あるいは診察に関していいますと、フランスの場合には、非常にゆるいものですが、 かかりつけ医制度というものが入っています。これは何かというと、16歳以上のすべ てのフランス人は自分のかかりつけ医を指定しなくてはいけなくて、かかりつけ医を 通って医療機関にかかった場合には、その診療報酬表のとおりの請求が受けられるの ですが、かかりつけ医がなかった場合には追加の料金を払わなければいけないという 仕組みが今実際に導入されています。そういうものの政策の効果を評価するためにも、 こういうデータベースが使われているということになるわけです。   あるいは、こういう形で薬剤率の償還額みたいに、どのぐらい使われているのか、 これは処方量も出てくるわけですが、実際どういう薬がどのぐらい使われているかと いうことが、すべての薬についてデータベースとしてあがっています。これは例えば どういう評価に使われるのかというと、フランスの場合にはいわゆる代替処方という ものが認められていますので、あるいは医師に対して何パーセント以上なるべくジェ ネリックを使いなさいということが指針として出されているわけですが、そういうも のを医師がどのぐらい遵守しているのかということを、これは全国データですが、個 別の医師別に評価をすることも可能になっています。   まとめとして、我が国への示唆ということですが、医療に関する情報というのは極 めて個人的な情報ですので、やはりその保護には十分な配慮が必要だろうと思います。 ただし、合理的な医療政策の上には情報が不可欠で、特に質の保証ということを考え た時には、やはり情報というものをきちんと集めて分析するという仕組みが必要だろ うと思います。そういう意味で国レベルの情報利用に関する指針が必要ですし、国レ ベルでCNILのような組織というものが必要ではないかなと思います。   レセプト情報の標準化と電子化、これはやはり避けて通れない問題ですが、フラン スでもこれがうまくいったのは、いわゆる発生源における情報の精度と代表性をきち んと確保したということが大事だろうと思います。それは先ほどの韓国とアメリカも そうですが、ICD−10というものが入ってきた、それから外来に関してはCCAM という、これは実はアメリカのRBRVSみたいなものが入ってきて、そこでの精度 と代表性をきちんと確保したということが大事だろうと思います。  それから、保険者における情報分析体制、やはりここが基本的にはまずきちんとや らなければいけないところだと思うのですが、フランスはこのCNAMTSという被 用者保険のところが、実は、国民の80パーセントをカバーしていまして、さらにそこ が農業者金庫とか自営業者金庫のデータも含めて分析をするということが可能になっ ています。   これは標準化された電子情報としてレセプトがあるために、1カ所で分析すること が可能になっているということです。   ただ、やはりこの評価の中立性をどのように担保するかということが実はフランス でも問題になっています。病院の場合には、ATIHという病院情報技術庁というの があって、これはエージェンシーとして中立的な組織であって、そこが病院情報の分 析をやっています。しかし、開業医医療に関して、今はそれがございませんので、A TIHがすべて集めて中立的な立場で分析をするということが今、議論として挙がっ ています。こういう情報機構というのは我が国も必要だろうと思うのですが、この中 立的な第三者機関というものが、目的に応じて情報の確保と提供を行っていくという、 こういう仕組みが必要ではないかなというふうに考えています。以上でございます。  ○ 開原座長   どうもありがとうございました。以上で外国の事例の御説明を終わりまして、最後 に上島先生から国内でレセプトを活用された御経験をお話をいただこうということで ございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○ 上島委員   滋賀医科大学の上島です。時間が押してきましたので、20分の範囲内でお話をした いと思います。まず私ども、滋賀県における国保連合会からの依頼を受けて、医療費 の分析を行ってまいりましたが、その背景から御説明をいたしたいと思います。   一つは、滋賀県の国保連合会が「地域健康づくり検討委員会」というのを立ち上げ まして、その中で県民のうち、国保に加入している人々の健康づくり運動を支援して ほしいというところから始まりました。私は、滋賀医大に平成元年に赴任しましたが、 それからしばらく国保連合会と保健師の教育等を含めまして交流がありました。その 交流の中で平成5年度にこの「健康づくり検討委員会」を立ち上げて、医師会と各部 門の代表者、あるいは県の担当課を入れまして、県民の健康づくり運動を国保連合会 として、何をどういうふうにしていったらいいか、あるいはやってほしいということ で、このような委員会が立ち上がりました。それが平成5年度であります。そこで国 保加入者の健康づくりを支援するということが第一の目的であります。   それからすぐに予防活動に当たりまして、被保険者の健康増進を図るわけですが、 国保の財政の健全化にも貢献する分析もしてほしいという依頼が検討委員会にあがり まして、医療費の分析が加わったという経緯がございます。当然のことながら、大学 が医療費のレセプトの情報を分析するなんて思ってもできない、到底困りますという ことになるわけで、私たちから働きかけたのではないということから始まって、その ために逆に可能になったということであります。したがいまして、実際は10年間活動 いたしましたが、委員会そのものは報告書も含めまして、17年度まで活動をいたしま した。だから12年ぐらい活動いたしました。   「健康づくり検討委員会」での最初の活動ですが、すぐにいろんな医療費の分析を やったわけではないので、最初にはやはり「健康づくり虎の巻」という報告書を作成 しております。これは先ほど第一の目的に言いましたように、保健医療従事者の質の 向上という、健康教育等ができるための質の向上ということを支援しましたので、当 然これに関します私たちの今までの大学等がもっております技術等を伝えていくとい うことで報告書をつくり、研修会等を行いました。   それから、その次に加わってまいりましたのが医療費の分析でありますが、医療費 の分析の報告書の例も後でお見せいたしますが、最終的には論文も作成して、もう一 つ大事な点は、ここに被保険者への成果の公表、パンフレットの作成でございますが、 医療費の分析の結果を被保険者に返して、そして保健医療の予防活動に役立つという 視点がないとやっぱりいけないわけでして、私たちは皆さんが保険料を払って、例え ば、「たばこを吸っているとこのように医療費は使われますよ。」、「肥満しているとこ のように医療費が使われますよ。」という情報は、今までなかったわけです。   そのなかった点を埋めて、例えば、「血圧が高いと脳卒中になりますよ。」というの が私たちの多くの仲間の疫学調査で出ていました。これに加えて、「医療費もこれだけ かかりますよ、だから予防活動に注意しましょう。」という視点を入れました。そのた めにパンフレットの作成というのが最終段階になりました。   実際にどのようにして医療費というレセプト情報に接触してデータファイルができ あがったか、分析を行ったかであります。まず、委員会で方針の決定がなされました。 学術委員からの代表が私でありましたので、私が委員長でもありました。委員会で基 本的には決定されました。国保連合会では固有のレセプト情報があるわけですが、私 たちはもともと平成元年から滋賀医大で市町村と共同事業として検診を行い、それを 追跡する対象の集団として、コホート研究と呼んでいますが、コホート研究を行って いました。差し当たり7町1村を対象にやっていたわけであります。   そこでこの検診のデータはもともと市町村と私たち大学にありました。ところが大 学にはレセプト情報はもちろんないわけですので、これをどういうふうに突合するか という問題ですが、倫理的な問題等を解決するために、首長からの承認と依頼という ことを受けて、私たちがもっている健診データをレセプト情報と突合していいですよ という取り決めをしました。   もともと、国保連合会の集まりは市長ですので、当然、これは同じなのですが、国 保連合会からは「国保連合会でやります、依頼します。」というのを検討委員会に出し て私たちが行う、ただし、データの情報が漏洩するという危険性がありますので、そ ういったことが起こると大変です。それですべての突合作業は国保連合会の中で行い ました。私たちはデータは提供しましたが、突合作業は国保連合会の中の電算機の中 でやるということです。   それで突合が完了しますと、それを個人が特定できないデータのファイルにして、 滋賀医大で分析が可能なようにいたしました。すなわち、私たちのコンピューターの 中に入っている情報は数字の羅列だけということで、誰が誰かは個人は特定できない、 だけど個人の情報が血圧値、医療費等全部入っているという状態で分析を行ってまい りました。   当然、この頃、1990年代の初めからは全国の大学等で倫理委員会の設立が相次ぎま したので、成立された段階で倫理委員会の承認を得ているという作業が行われてまい りました。実際に最初の頃、保健師の教育等とか、私たちのノウハウを伝えてきた集 積の報告書として健康づくり虎の巻というのをつくりました。ここの目次にあります ように、 例えば、第3章は効果的な健康診断の実績と評価とか運動指導と肥満の予 防、第5章は栄養指導、第6章は適正飲酒指導と、このようになっていますので、い かに保健指導を行うかという私たちの情報を集積したものであります。   この中で例えば、第2部のところに書いてありますが、健診成績とその後の受療状 況の関係とか、給付データの有効活用のためにということで、医療費の分析の準備が なされているところが伺い得ると思います。虎の巻はIVまでいきましたが、「健康づく り虎の巻のII」ですが、健診情報の分析と医療費の分析がここから少しずつ始まって おります。   基本的に私たちは、平成元年度の健診成績から、それを追跡開始時の健診成績とし て、その後の10年間の医療費を全部個人的につなぎました。したがって個人の健診デ ータから、その後の10年間の医療費、外来、入院、総合医療費を全部集積して、1年 当たり、あるいは月当たりにどれだけ医療費を使ったかということが分析できるファ イルをこの委員会の中で作成いたしました。   さらに成果を保健指導の保健医療従事者の専門家だけではなくて、基本的には被保 険者の方々が疾病の予防等の動機づけになるようにということを委員会で目論見とし ておりましたので、国保連合会から委員会に被保険者にわかりやすい情報の公開作成 伝達をお願いしたいということがありました。   そこで、被保険者に配るパンフレットの作成が第三の段階になって出てまいりまし た。実際にお見せいたしますが、ここにありますように健康な毎日を過ごすために、 生活習慣病を予防しようということで、現在既に出ておりますのが「高血圧編」、「肥 満編」、「喫煙編」、「飲酒編」、「糖尿病編」、「高血圧と糖尿病の合併編」というふうな 形で作っておりまして、まだこれも続いております。   一つの例として、「生活習慣病を予防しましょう、高血圧編」をお見せしますが、例 えば従来の単なる知識として提供されている今までのガイドライン等々で出ている知 識は、最初の表、この高血圧の定義とか分類が書いてありまして、ここまではよくあ ったわけですが、「血圧のランクがあがってまいりますとリスクが高くなりますよ。」 とか、「脳卒中の死亡のリスクが高くなりますよ。」というのは、これは、私たちの別 のコホート研究からの成績を入れて、こういうパンフレットは、ここまではよくやる わけですが、その次に出てきたのが今回の委員会での分析です。「血圧が高いと医療費 も高くなりますよ。」という情報を伝達しました。ここが違いますね。   今までのは、前の1ページの分までは私たちのもっているノウハウでできるわけで す。次の3のところは、この委員会でのレセプトとの突合及び分析がないとできない という情報になります。医療費の情報がここで使われて、被保険者に私たちのやった ことが返されております。そして窓辺のところで高血圧を予防するためにはというこ とで、締めくくられて、発行が国保連合会、監修の責任が私ということになって配ら れております。   論文の一つを紹介したいと思います。これは例えば高血圧、糖尿病等、国民健康保 険医療費の関連ということで、去年、国際誌に報告したものであります。例えば高血 圧のありなし別、糖尿病のありなし別に、なしを基準にしますと、他のが高くなって、 二つ重なると医療費が月当たり円にしてかなり高くなるということがおわかりいただ けると思います。もちろんこの情報は年齢とか肥満とか喫煙とか飲酒とか、総コレス テロールとかという情報を考慮した分析結果であります。   なぜ、この考慮ができるかといいますと、私たちは自分たちの健診データに基づい て、その情報を持っていて、医療費と突合していますので、健診データからこういう 情報はきちっと入っていますので、分析して出せるということになります。   まとめます。滋賀県の国保連合会から県民の被保険者の健康づくりに支援してほし いという要望があって、「地域健康づくり検討委員会」というのが立ち上がりました。 そこで私ども医療費の分析の一つの目的として、予防の動機づけの一環として、医療 費の分析を行う価値があるというふうにも判断いたしまして、それを実際やってまい りました。そして県民の被保険者にその結果を戻してまいりました。   また、きょう個別には今お見せいたしませんでしたが、市町村からの、例えば要望 があって、「高額医療費が発生しているけど、それはなぜなのか分析してほしい。」と いった依頼も国保連合会の中でありまして、例えば、特定して透析の医療費はどれぐ らいになっているかというような分析もこの報告書の中にはございますし、また、そ の透析の中で、糖尿病性腎症から起こっていることがわかった時に、それをどう予防 するかという観点で分析もいたしました。また、死亡する3カ月前に非常に多くの医 療費が使われるということもつかんで、その原因は何かを探るための分析等も個別に はそういった分析も行いましたし、がん全体としてはどれぐらいかということはでき ますので、例えばそういったことも実際にはその委員会の中ではいろいろ要望を受け てやってまいりました。以上、簡単ですが御報告申し上げます。 ○ 開原座長   どうもありがとうございました。4人の委員の方の御説明をいただいたわけでござ いますが、あと残された時間が30分少々ございますので、それは質疑に使いたいと思 います。ただ、松田先生が11時45分にはここを御出発にならなければいけないとい うことでございますので、松田先生に対する質問がありましたら、なるべく早い段階 で御質問なりコメントなりをいただきたく思います。   それでは特に順序だててということはいたしませんので、どうぞどなたからでも御 質問をいただければと思います。いずれにしても、これは他の国の例でありますので、 これをそのまま日本にもってきたらいいというようなことを考えているわけではない わけでありますが、ただ、他の国でもそれなりの努力をしているということは、私ど もがこの問題を考えていく上で参考になるのではないかとは思います。それではどな たからでもどうぞ。 ○ 尾崎委員   私は、前回、国が情報を集めるということについての懸念、特にプライバシー権と の関係で憲法上の問題があるということを述べましたが、引き続きその観点から本日 の発表についてのコメントを述べさせていただきます。  今回、諸外国の事例が出て、座長が整理されたとおり、単純に諸外国の制度をその まま入れればいいというものではないことは当然の前提としても、「諸外国でやってい る施策について、いいものは日本でも取り入れていけばいいじゃないか。」というのが 普通の考え方だと思います。しかしながら、「憲法問題については、依然として、難し いな。」というのが本日の発表をお聞きした感想です。  そもそも、この事業で、何でプライバシー権が問題になるかというと、プライバシ ー権の中で一番基本的な内容であります「自分のプライバシー、特に病歴等を国家に 知られたくない。私は自分の病歴を国家に知られるのが嫌だ。」という権利主張をされ ると、今回の事業は立ち行かなくなるわけなのですね。   こういった問題の憲法解釈について、他の国がどう努力しているかというと、その ような努力は全くしていない。それはなぜかというのはちょっと考えればわかるので すが、日本だけ他の国と憲法の性質が違って、日本の憲法は平和憲法なのです。他方、 本日発表のあった国々は徴兵制があるか、あるいは最近まであったのですね。だから、 これらの国々では、国民の健康情報収集・管理というのも国家・国防上の兵力管理の 一環として、憲法上、正当化できる話なのです。   個別に言いますと、「アメリカはベトナム戦争以降、徴兵制が停止されている。」と 思っておられる向きも多いのですが、実は Selective Service System は現在でも機 能していて、それと、事実上の戸籍であるソーシャルセキュリティナンバーと結びつ けることによって「国防兵力たる国民の健康」を国家が管理するというのは国家とし て自然な発想です。したがいまして、「むしろ国家がそんなもの持っているのだから、 その情報を国民や企業に公開しろ。」というところから、本日の野口委員の発表内容も スタートをする訳です。そう考えればさきほどのお話もわかりやすいですね。   フランスでも90年代半ばまでは徴兵制があったわけですし、韓国では――――昨日 (平成19年10月2日)38度線を大統領が越えるという政治イベントがありましたが ――――、停戦してはいますが、国際法上は交戦状態ですね。   というような国々なので、国家権力によるプライバシー権の侵害という問題につい て、「諸外国の事例が日本での問題解決のヒントになるか?」というと、実は全く参考 になりません。   実は、この類の憲法問題についていいますと、徴兵制が歴史上全くない国というの は大洋州を別にすると、アイスランドとインドぐらいしかなくて、日本として参考に なるような海外事例というのが存在しないのです。   それからもう一つ、本日の発表をお伺いして個別法の整備についての問題に気づき ました。   これは仮に法律があっても、その法律が違憲無効になってしまうかもしれないとい う前提なのですが、そうはいいましても、本日の事例に出てきた三国はかなり真正面 からそのための法律を作っているわけですね。ここはやはり立派なところです。その 法律自体はそれぞれその国の憲法の構造が違いますから、違憲にならない範囲で法整 備しているのだと思いますが、ここで日本の方へ振り返りますと、今、根拠にしよう としている法律は、前回の資料2で配られたとおり、「高齢者の医療の確保に関する法 律」、これでやっちゃおうということなのですね。   この中で医療費適正化計画というのを策定することになっていますから、ポジティ ブな施策、たとえば予算を確保して健診サービスをしましょう、というような結構な 話については解釈を広げて、計画に盛り込むなりして、結果として高齢者の医療の確 保につながればいいではないかというロジックでいけると思います。そこまではいい のですが、しかし、プライバシー権を主張する人達に対して、「そこは我慢してくださ いよ。」と基本的人権を制限するのに、「高齢者の医療の確保に関する法律」一本で押 し切れるのかどうかということに関しては「非常に疑問である。」と言わざるを得ませ ん。   本日学んだように、憲法上、もっと簡単に、国家・国防のためということで個人情 報を集めることができるような国々においてさえも、きちんとした法律を正面から整 備している。というあたりからすると、「このまま突っ走って大丈夫なのかな?」とい うことで、むしろ、諸外国より問題はもっと大きいのかな、という感じを受けました。   以上コメントと感想でございます。  ○ 開原座長   どうもありがとうございました。ただいまの尾崎委員の御意見も含めて、どなたか らでも御質問なりコメントなりをお願いをいたしたいと思います。 ○ 稲垣(明)委員   大変貴重な御講演というか、大変おもしろく聞かせていただきました。それぞれの 国の色が出ているというか、いろんな憲法とか国民性とか制度に関係しているのだと 思いますが、お聞きするとアメリカというのは非常に自由性がある、韓国は規制の面 が非常に強いかな、フランスはやはり個人情報保護というものがきちんと配慮されて いるかなと思っているのですが、全部お聞きするわけにはいきませんので、一つだけ アメリカのことなのですが、データを有料化して販売しているという形でございまし て、この辺、各研究者がどのようにこの辺の予算をとってくるのかということと、そ れから公益的な研究であるならば、本来はこれは無償が適当なのではないか、むしろ 有償化することによって利権とか企業の利益と結びつきやすいのではないか。   今回も薬剤の問題の一つの研究例がありましたが、結果的には製薬企業のこれがま た売り上げにつながるようなこともあるので、この辺がいかにもアメリカ的ではある のですが、データの有料ということと、どうしてもやはりこの辺は企業の利用という ことが少し見えるような気がする。その辺の制限と規制というのは、どのように行わ れているか、教えていただきたいと思います。 ○ 野口委員   御質問ありがとうございます。このあたりが日本の社会と決定的に違うところだな と私も思っておりますが、まず先ほどは余りお話ができなかったのですが、アメリカ のCMSがそのデータの使用を許可する前に、実はレスダックといいまして、皆さん にお渡しした資料の方にはそのことについても御説明申し上げたのですが、2枚目の 5−2の教育的側面というところで取り上げたお話ですが、ミネソタ大学に実はその リサーチデータアシスタントセンターといいまして、日本語に訳すると医療研究デー タ使用援助センター、そういうふうな教育機関が設置されております。  各研究者、研究機関といいますのは、まずCMSにデータを申請する前に、このミ ネソタ大学の機関に必ずその申請書を提出して初期審査を受けなければいけない。そ の際、これはどういうところにデータを提供するかという文面の中に、はっきり書い てあるのですが、その企業、おっしゃったような製薬会社、あるいは製薬企業が出資 をしていることがわかる、あるいはその出資が何か関連がある、例えばそのプロジェ クトチームの中の製薬会社の研究所の研究員が入っているとか、あるいはグラント、 いわゆる研究資金を援助を受けているであるとか、そういったことがいわゆる申請書 の中に全部書かなければいけないのですね。  そういったことが見えるものに関しては、徹底的にこれを排除するといいますか、 その利益団体と密接につながりのある、特に製薬会社なのですが、これをはっきりと 書いてあります。つながりのある研究機関や研究者にはデータは一切提供されないと いうことです。ですからその審査を、何らかのつながりがある場合は審査をクリアす るのが非常に難しいだろうということです。レスダックの初期審査を通過するのが難 しいだろうということです。   二番目の点なのですが、お金に関してですが、まことにこういう個人情報を国家が 売るというのも何なのですが、基本的にこうした予算はどこに使われているかという と、メディケアのこうしたデータをやはり整理整頓するのに何と言っても非常に多額 なコストがかかるわけですね。例えばそういった審査をするにも、あるいはそのデー タをクリンナップするにも、あるいは研究機関から依頼を受けて、例えば他の死亡診 断書であるとか、そういうものと突合するにしても、人件費ならびにコストが非常に かかる。そういったコストに充てているわけですから、そういったデータ処理にかか る費用に使うお金だというような認識をみんなが持っている。   一つはその点で、研究者が実際そのお金をどうしているかといいますと、日本でも 厚生科学研究費等々、文部科学研究費等々ありますが、研究者は必ずこのデータ申請 をする前に確実に研究費を自分たちはとっているのだという証明を出さなければいけ ないのですね。ですから、ちょっとお金がグルグル回っている感じもしますが、いわ ゆる政府がそういった厚生労働科研費のような提供するグラント、研究資金を必ず研 究者、研究機関は必ずとって、それをとっているから安心してデータをお任せくださ い、分析をきちんとやります、あるいはそのデータ管理をきちんとこのお金でやりま すということを証明しないとデータが下りないということになっているので、お金が グルグル回っている感じもしますが、そういうシステムになっているという次第です。 ○ 稲垣(明)委員   わかりました。ただ、こういう薬の開発でも何でも、産官学といいまして、日本で もそうなのですが、やはりそれぞれの連携というのは必ず保たれた上でのそういうも のの開発なので、なかなかこういうものに対する分析研究の公平性、公益性というも のを保つということが難しいんだなというふうに感じました。以上です。 ○ 開原座長    他にどなたでもどうぞ。 ○ 井原委員   私は立場上、医学的な面からコメントをしたいのですが、まず皆さんの発表を聞き まして大変に参考になったのですが、アメリカは大変審査が厳しいですよね。私の友 人も向こうでやっていますが、審査が厳しすぎて必要なことも十分にやれないという ぼやきも聞こえてきます。逆に韓国は日本の制度を参考に、思い切って簡潔化された 制度にしたわけですから、この場合に審査がどのレベルまで行われているのかなとい うのがちょっと気になるところでございます。   ですから、外国の例を参考にするということは、先ほど座長もおっしゃったように、 その国の歴史ですとか文化ですとか国民性ですとか、何より医療保険制度の違いです とか審査チェックシステムというものを十分に考慮に入れなければいけないと思いま す。   と申しますのは、先週松田先生も御出席のもとで中医協DPC分科会のヒアリング がございまして、私は参考人として呼ばれまして、DPCレセプトのコーディングに ついて説明をさせていただいたのですが、まだまだ日本の審査チェック体制というの は多くの問題点があるという現状がございます。東京都の支払基金では、月に450万 件、多い時には500万件近いレセプトがあるわけですが、そのうちICDコーディン グされているのは0.5パーセントにも満たない2万件弱なのです。DPCという特殊 な事情を考慮に入れましても、これを審査しただけでもかなりコード選択に疑問があ るレセプトがあるというのが現状でございます。ましてや、30パーセント程度が未コ ード化病名であることを考えると、日本の現状では、コード化するということ自体が まず、一つの問題だろうと思いますし、心筋梗塞のコード選択に疑問がある病院も当 日ヒアリング対象となっております。   前回、岡本委員から心筋梗塞の治療成績について国際比較の話がございましたが、 それはある視点から見れば正しいというのは当然だと思うのですが、ちょっとまた別 の視点から見ますと、心筋梗塞というのは皆さん御存知かどうかわかりませんが、心 電図だけで診断がつくというのは60パーセントもあるかどうかとも言われているわ けで、我が国ではこれに対する補助診断というものが非常にゆきわたっているわけで す。ですから余りにも治療成績がよすぎるとか、データがよすぎるとか、入院期間が 短いというのは、本当にそもそも筋梗塞の症例だったのかというような疑義があるわ けで、審査基準などを統一しないで、単純に治療成績だけを比較するということは、 本当に公平で正確な比較なのだろうかという疑問を循環器の先生方は、持つわけです。   いささか私の話は医学的視点にすぎるとは思うのですが、やはり日本ではまだIC D−10コードと、薬剤を医療保険で使用する際の薬事法承認事項の整合性一つとって も、これは全く整理されていないわけです。ですから先ほど松田先生も御指摘になっ たように、まず一部負担金を支払う患者さんや国民の皆様の立場や、あるいは相当な 金額を負担していらっしゃる保険者さんの立場からしても、まず診断名の確実な把握、 そのコーディングの正しさ、そしてそれを審査チェックするシステムをきちっとまず 確立して、それを初めとしていろいろな基盤整備をまずやって、正しいデータベース を作り、そこから分析をしないと、私は審査を担当している現場のものとして現状の まま行われてしまったら、北極点を飛行している飛行機を操縦しているような心境で して、どちらに向かっていっていいかわからないような、そんな危惧すら覚えている のが正直な感想でございます。以上でございます。 ○ 開原座長   どうもありがとうございました。ただいまの井原委員の御意見に関しては、実は前 回も同様の趣旨の御発言がございまして、これは実際にこの問題を進めていく上では 大変大事な問題だと思っておりますので、次回にこういうことを日本でやった時には どこにネックがあるのかということを中心にして、少し議論していただけないかなと いうふうに思っておりますので、次回にもう少し井原委員には詳しくお話をいただく ことになるのではないかと思っております。これは後で次回をどうやるというのを本 当は御相談しなければいけないのですが、今のところ少しそんなことを考えておりま すので、ちょっと申し上げました。それでは他にどうぞ。   松田先生はまもなく御退席になるので、一言だけ私から伺いたいのですが、フラン スの場合には入院のデータと開業医さんたちから集まってくるデータと、その間は一 緒にされているんですか。それともそれは全く別々に分析されているのですか。 ○ 松田委員   まず、保険者の方には両方のデータがやってきます。両方のデータがやってきます ので、外来も、いわゆる開業医医療も病院医療も全部分析ができます。ただ、それを じゃあ個人別につないで今分析ができているかというと、まだそこまではいっており ません。ただ、特殊な領域、例えば、がんに関しましては、第三者が個人の特定を事 務的にできない状態で個人情報、個人のIDを暗号化するという技術を使って、がん の治療を受けた方たちがその後どのような診療を受けているのか、例えば胃がんの手 術を受けた方がその後放射線治療を受けているのか、あるいは化学療法を受けている のか、それを受けている時にはどこでどのような治療を受けているのかということを ずっと時系列を追えるような仕組みというのはつくって、そういう形のある種,医療 の質に関する研究事業みたいなものですが、そういうことは部分的に今行われていま す。 ○ 開原座長   どうもありがとうございました。それでは他にどなたでも御質問なりコメントなり ございますでしょうか。 ○ 稲垣(恵)委員   健保連の稲垣でございます。特に質問ということではないのですが、3カ国の御報 告を伺った中での感想ということで一言述べさせていただきます。各国ともやはり診 療の適正性についての評価と医療の質向上ということで相当深く取り組んでおられる ということを十分確認することができたというふうに思っています。そういう意味で 医療サービスというのはどうしても質のばらつきというのが否定できないわけなので、 無駄もあるわけでしょうし、そういう意味でデータによる評価、それによる標準化と いったものがやはり必要ではないかと思います。個人情報の問題については、十分慎 重に取り扱わなければいけないわけですが、最終的には患者の利益になるということ は間違いないというふうに思っています。   私どもは保険者としても、いわゆるレセプトの点検ということで、診療ルールに基 づいた点検を行っているわけです。しかし、質という部分については、これまでなか なか立ち入っていかないというのが現状でございます。ただ、今後、オンライン化で、 全てのデータが保険者に入るということで、我々、保険者といたしましても、それか ら第三者機関というところで議論されることも必要ですが、先ほどの滋賀県の例もご ざいましたが、我々といたしましても患者さんの教育というか、啓発といった面も含 めて、このデータを活用していくということが非常に大事であると思っています。   先ほど、国保組合の例が出ておりましたが、健保組合といたしましても各個別の健 保はこれまでも個々に医療費分析という観点で行っていたわけですが、個々の集合体 の全体でのまとめというのはできていなかった。今回、特定健診・特定保健指導が始 まりますので、健保連として同業務処理をするためのシステムを整備(ASP方式) するとともに、同システムを利用することでデータが標準化されますので、各健保組 合のデータを集約して、これを特定健診等の保健指導に生かしていくとともに、これ らデータを私ども保険者から見た医療の質の向上に役立てていけたらいいなというふ うに思っております。   そういう意味で、国ベースでの進展について積極的に進めていただきたい。そのた めには、先ほど井原先生からも話がありましたように前提整備ということで、先ほど のレセプトの様式の問題等も含めて、基盤整備というものが必要だと認識をしており ます。以上です。 ○ 樋口副座長   私は、どういう立場かというと、この会議では単に患者の一人だというつもりで出 ておるのですが、きょうのお話は本当におもしろかったですね。非常に参考になりま したし、知らないことばかりでしたから、外国の事情、滋賀県の事情等も本当にそれ ぞれいろんな努力をされていて、滋賀県は日本の中ですが、やっぱり日本も負けては いられないという、そういう感じがいたしました。そこで、コメントと質問なのです が、きょうの話でアメリカのところではやっぱり研究を中心にして第三者利用という か、研究機関が利用という話なのですが、あとの韓国やフランスのところでは、はっ きりと医療監視というのですか、つまり大きな意味では、医療の質を向上させるため にエビデンスベイストでいろんな研究、政策の立案についても、その情報をもとにし てやらないといけないという、大きな流れという点ではみんな一緒なのですが、その 中で、今日の御報告を聞くと、アメリカではその研究のところだけご報告がありまし た。しかし、メディケイドその他で診療報酬の不正請求その他、あるいはメディカル フロードとかいう話は有名なので、不適切な利用について厳しい監視があるに決まっ ているわけですから、その時にこういうデータを使っているとは思うのですね。   私の素人的な考えとしては、こういう情報を使って、これは一般論ですが、まだ日 本でそういう情報の制度というのが一番大事だと松田さんもおっしゃったので、基盤 整備が一番大事だと思いますが、しかしとにかくある程度ちゃんとした情報が出てき た時にそれをどういう形で利用できるのだろうかという話が、一方で研究機関、学術 研究を通して医療の質という話と、それから政策決定機関のところで、あるいは保険 者のところでそれを利用して、いろんな医療監視、それが全体的な話もあるし、個別 の病院、個別の医師ということもあるのだけれども、これは二つなのか、二極と言っ てもいいのか、そういう話だけなのか、本当はもう少し広がりのある話なのか、二つ だって大変なことだと思うのですが、そういうことが全体として一番初めに藤沢さん が配ってくれたポイントでいうと、その利用目的が政策の推進と学術的疫学的研究と いう2つの軸の他にあるものかどうかが最初の問題です。関連して、あとは情報の利 用者が国と学術的機関という、また、データの項目にいたっては、データ項目の内容 や量という、このデータ項目の内容の中身がイメージとしてはもう少し具体化されて、 こういう形で利用は考えられる、しかしそれに伴ってまだいろいろな問題点があると いうような形で整理し直すことができ、それを教えていただくと本当はいいのかなと いう気がいたしました。  日本との比較の点では、フランスや韓国の話は、やっぱり医療監視の話が中心だっ たので、対病院とか対医師という話になっていたのに、滋賀県のところに来るとやっ ぱり対患者というのですか、一般的な滋賀県民の啓発という話のところにこういうデ ータが使われる。今回のプランで情報の分析により、誰を対象にした成果を期すかと いう点も問題になりそうですね。最後は質問にしますが、やっぱり今我が国のデータ の質とそれから標準化の程度の少なさというのが問題になっていて、いきなり例えば 来年とか再来年ぐらいからこういうものが始まった時に、本当に何がやれるのかとい う話をもう一つ教えていただきたいということが一つ。   最後に、きょうの御発表者の中で上島先生には、日本の状況の中でこれだけのデー タ、5,000件ですけれども、本当は国保の関係者だけですよね。データだって5,000 といえば相当だと思いますが、偏りのあるデータで、しかもいろんなそれこそ法律的 な規制もあり、いろんな御配慮されているのはわかったのですが、そういうものがな い状態だったら、本当はこういうこともやれたけれど、しかし、今はこういうことだ という、そういう御経験が10年以上あるわけだから、日本でこれから何をやれるかに ついて大きな示唆を与えることになるので、その点をもう少し、今日でなくてもいい のかもしれないのですが、教えていただきたい。  ○ 開原座長   上島先生、今の樋口先生の質問について私もちょっとそれに追加させていただくと、 上島先生は、多分あそこのデータをお出しになるまでの間に、日本はデータが標準化 されていないし、電子化もされていないので、おそらく非常に誰かが苦労したのでは ないかと思うのですね。他の国はデータが全部電子化されているから、データベース ありきということで、それをどう利用するかということなのですが、日本は、上島先 生のようなことを今やろうとすれば、自分でデータベースを作って、それから利用す るという、その両方苦労しなければいけないと思うのですが、その前半の苦労の部分 を余りお話にならなかったのですが、樋口先生の御質問を含めて、その辺をちょっと お話しいただきたいと思います。 ○ 上島委員   結論からいいますと、10年間の前半から3分の2ぐらいは大変苦労しました。労力 的にもかなり専任の研究者を割り当てて、大学院生も動員して、そしてプライバシー に配慮しながらあちこちから後で法律違反を指摘されないような格好で倫理的な問題 を解決するという気持ちをもって当たりました。   井原先生があげられました、例えば、保険病名での問題点等を克服するために、私 たちは保険病名をすぐに使って分析はわざとしなかったのですね。ただ、総医療費と か、入院医療費とか外来医療費を目的にして分析をするしかできなかったのは、その ためです。しかし、私たちは健診のデータを持っていますから、その健診のデータは 我々が標準化して集めたデータですので、そこと突合することによって先行事例とし てそれができたというふうに考えております。そのために、限界はありました。   しかし、今度もし法制化されて、そこのところがうまくいくようになるとしますと、 もう保険者が健診データと医療費の突合が容易にできるのでしょうが、専門家の支援 と標準化という問題は依然として残っています。特に保険病名をすぐに使えるという 状況ではないと思います。   ただし、私たちが事例で高額医療費とかをあげて、やっぱり国保連合会ですから適 正な医療費の使い方というのも見てほしいというのは当然要望としてあったわけです。 したがって、例えば、「高額医療費が生じている原因は何か調べてほしい。」という要 望も委員会の中でありましたので、それでどういう高額医療費が使われているかとい うのもあの中で限界はあったけれども、分析はいたしました。   まとめますと、私たちはやっぱり手作りでやってきたというか、法的な整備が整わ ない段階で倫理的問題を克服してやってきた。したがいまして、今後は、今、先生は 大きく二つに分けて言われましたが、いろんな視点から、最終的には国民の医療費の 使い方が適正になり、また国民にとっても予防活動に役立つような行動を支援できる ような分析、あるいは方向がうまく制度が整えれば、私はできるのではないかなと思 います。ただし、いろんな注意点について、専門家の中でお持ちの方がいるだろうと 思いますし、それを論議していくことが大事だと思います。 ○ 開原座長   どうもありがとうございました。まだいろいろ御質問もあろうかと思うのですが、 時間もそろそろまいりましたので、次回のことを御相談させていただいてきょうは終 わりにしたいと思いますが、その辺について事務局の方から少しお話をいただけます か。 ○ 事務局   次回につきましては、先ほど、井原先生からコメントがあり、また座長からもコメ ントをいただきましたように、前回何人かの方々から現行のレセプトをそのまま分析 に使う場合に留意しなければいけない点について御指摘がございましたので、今日と 同じような形で一度時間をとってもう少し詳しい御説明をお願いしたいと考えており ます。   次回の具体的な日程につきましては、きょう皆様の席上にスケジュールを御照会す る表をお載せしておりますが、それを踏まえまして、後日、また別途御連絡させてい ただきます。以上でございます。 ○ 開原座長   座長から補足いたしますと、今日は他の国の事例をいろいろお話しいただいて、「そ れはいいな。」というので、すぐに飛びついてしまったら大変なので、次回は、むしろ 日本の現状に合わせて、「それじゃあ日本は一体どういう問題があるのか。」というこ とについて、その最大の問題は、井原先生のおっしゃった標準化の問題とか、そうい う問題もあると思うのですが、それだけではないとも思いますので、次回は日本の現 実に目を据えて、みんなの知識のレベルをそろえておきたいと思います。そうしない と後の議論が錯綜いたしますので、そういう意味で次回も多少勉強会的な色彩をもっ た会合にさせていただきたいと思っておりますが、そのようなことでよろしゅうござ いますでしょうか。また具体的なことはお願いすると思います。   それから、できれば次回と次々回の日程をもう決めてしまいたいと思っておりまし て、年末にもなりますので、皆様、お忙しいと思いますので、会合を開いてまたその 次とやっていると、なかなか合う日がなくてどんどん先へ延びてしまってもいけない ので、できればあと年内に二回ぐらいの日程が組めるようなことを考えていただけれ ばありがたいと思っております。   それでは、他に特に御発言がなければ、今日の第2回の検討会はこれで終わらせて いただきます。大変ありがとうございました。 (終了)